本発明は超音波流量計に関し、特に超音波を利用してガス、水道等の流体の流速、流量を計測する超音波流量計に関する。
従来、都市ガス、水などの流体の流量を計測する流量計測装置として、超音波を利用して流速を測定する超音波流量計が知られている。その際の測定原理として、一般には、「伝搬時間差法」が用いられる。これは、流路の流体の流れ方向上手側および下手側に一対の超音波送受信部(超音波素子)を設け、超音波信号の送受信を交互に切り替えて、流れ方向上手側の超音波送信部(送信側超音波素子)から流れ方向下手側の超音波受信部(受信側超音波素子)に到達するまでの時間(以下、順方向到達時間という)と、流れ方向下手側の超音波送信部(送信側超音波素子)から流れ方向上手側の超音波受信部(受信側超音波素子)に到達するまでの時間(以下、逆方向到達時間という)とを計測して、両者の時間差から流路を流れる流体の平均流速および流量を求める方法である。
特開2004−239868
特開2003−329502
特開昭58−167918
従来の超音波流量計では、送信側超音波素子に電気的に超音波発振信号(駆動パルス)を印加し、電気−機械変換させることにより、超音波素子内の圧電体が動作し始め、圧電体の動作により超音波を発振させ、発振させた超音波が音響整合層を通過して流体に送出されるまでの送信遅延時間Ttが存在する。
一方、受信側超音波素子でも、流体中を伝搬してきた超音波が受信側超音波素子の端面に到着してから、音響整合層を通過し、超音波素子内の圧電体で超音波が検出され、圧電体が機械的動作をすることで、機械−電気変換され、出力された受信波が検出可能レベルとなる受信第3波のゼロクロスポイントまでの時間を含む受信遅延時間Trが存在する。
送信遅延時間Ttおよび受信遅延時間Trが存在し、かつ、送信遅延時間Ttおよび受信遅延時間Trは、温度や経年変化により変化する。実使用環境下で、送信遅延時間Ttおよび受信遅延時間Trを正確に計測できれば、計測精度を低下させることはなく、より正確な流量演算が可能となるが、実使用環境下で、送信遅延時間Ttおよび受信遅延時間Trを実際に計測するのは、回路規模、コスト、電力などの観点から現実的ではなく、極めて困難である。
流量演算に必要な伝搬時間は、超音波が流体中に送出され、一方の超音波素子の端面から他方の超音波素子の端面まで伝搬する時間であり、この時間は流体の音速cや流速vによって変化する。
上記の時間を整理すると、流れ方向上手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから超音波が出力されるまでの上手側素子送信遅延時間Ttaと、流れ方向上手側の超音波素子から超音波が流体中に送出されて、流れ方向下手側の超音波素子に伝搬するまでの順方向伝搬時間Tudと、流れ方向下手側の超音波素子から超音波が検出されるまでの下手側素子受信遅延時間Trbとである。これらを含んで計測した順方向片道計測時間Ta1は、下式となる。
Ta1=Tta+Tud+Trb
一方、流れ方向下手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから超音波が出力されるまでの下手側素子送信遅延時間Ttbと、流れ方向下手側の超音波素子から超音波が流体中に送出されて、流れ方向上手側の超音波素子に伝搬するまでの逆方向伝搬時間Tduと、流れ方向上手側の超音波素子から超音波が検出されるまでの上手側素子受信遅延時間Traとである。これらを含んで計測した逆方向片道計測時間Tb1は、下式となる。
Tb1=Ttb+Tdu+Tra
一対の超音波素子間の伝搬長をLとすると、順方向片道計測時間Ta1および逆方向片道計測時間Tb1より求めた流速vは、数1となる。ただし、θは、一対の超音波素子間を結ぶ直線と流体の流れ方向とのなす角(測線角)を表す(図1参照)。
数1で、送信遅延時間差(Ttb−Tta)=0、かつ、受信遅延時間差(Tra−Trb)=0ならば、ほぼ正しい流速vは求められるが、実際は、送信遅延時間差(Ttb−Tta)≒0、かつ、受信遅延時間差(Tra−Trb)≒0であり、流速vが大きい場合、つまり、伝搬時間差ΔT=(Tud−Tdu)>>(Ttb−Tta),(Tra−Trb)であれば、これら送信遅延時間差(Ttb−Tta)および受信遅延時間差(Tra−Trb)はほぼ無視できるが、流速vが小さい場合は、無視できなくなる。
また、順方向片道計測時間Ta1および逆方向片道計測時間Tb1で音速cを求めると、数2となる。
その後、流体の絶対温度τを検出しようとすると、数2で、送信遅延時間和(Tta+Ttb)および受信遅延時間和(Tra+Trb)がゼロでなければ、絶対温度τを正確に求められない。
本願出願人は、特許文献1で、超音波素子の端面で反射される超音波に着目して、より正しい伝搬時間を求める方法を確立した。ここでは、流体にさらされている時間のみを計測しようと試みたが、各超音波素子の遅延時間を排除するには至らず、一方の超音波素子が超音波を発振してから他方の超音波素子で超音波を受信するまでの直接到達時間を求めるとともに、他方の超音波素子で反射した超音波を一方の超音波素子で受信するまでの反射到達時間を計測しただけで、超音波素子の送受信の遅延時間を考慮した流量演算および超音波素子特性の温度ドリフトや経年変化対策についての検証が十分ではなかった。
他の例として、特許文献2がある。これは、一対の超音波素子の特性差と、各超音波素子の過去の特性とを記憶しておき、現在の特性を検出し、それらの値を比較することで、自己診断するものである。特性検出の一つとして反射波を検出し、その出力を包絡線検波したり、駆動信号と反射信号との定在波比などを検出したり、反射波の位相などを検出したりすることで、特性差および各超音波素子の特性を検出している。しかし、両超音波素子の反射波を検出し、共振周波数における入力インピーダンスと送信回路の出力インピーダンスとを等しくすることが前提条件であり、仮に、両超音波素子の特性として、入力インピーダンスが同一で、反射波が完全に一致したとしても、温度変化や経年変化により、超音波素子の特性は変化する。このため、特許文献2は、特性変化分を反射波の包絡線検波することにより検出しているが、その変化分に対する具体的補正方法がなく、あくまでも故障判定手段に過ぎない。
また、特許文献3は、一対の超音波素子をほぼ同時に駆動し、ほぼ同時に放射された超音波パルスがそれぞれ他方の超音波素子に受信されるまでの時間差を検出し、他方の超音波素子で受信されるまでの時間差を計測し、反射波が受信されるまでの時間差を差し引き、係数を乗じて流量を求めるものである。特許文献3では、超音波素子の駆動を同時に行い、超音波が超音波素子間を伝搬するその往復時間に差が生じていれば、それは、流量ゼロ時のオフセットと等しいとしている。しかし、厳密には、超音波が超音波素子間を伝搬するその往復時間差をΔα0とすると、下式となる。
Δα0=(Tta−Ttb)+(Tra−Trb)
一方、直接伝搬された超音波伝搬時間差Δβ0は、下式となる。
Δβ0=(Tta−Ttb)−(Tra−Trb)
往復時間差Δα0は、各超音波素子の送信遅延時間差(Tta−Ttb)と受信遅延時間差(Tra−Trb)との和時間であり、超音波伝搬時間差Δβ0は、各超音波素子の送信遅延時間差(Tta−Ttb)と受信遅延時間差(Tra−Trb)との差時間であり、Δα0≠Δβ0である。これらが等しくないため、流量ゼロのオフセット項として流量演算できない。
本発明の目的は、上述の点に鑑み、超音波素子固有の遅延時間を排除して、超音波の真の伝搬時間が得られるようにした超音波流量計を提供することにある。
課題を解決するための手段および発明の効果
請求項1記載の超音波流量計は、流体が流通する流路に、前記流体の流れ方向上手側または下手側に向けて超音波を発振することが可能であって、流れ方向上手側または下手側から到来する超音波を受信することが可能な一対の超音波素子を設け、超音波がそれら超音波素子間を伝搬する時間を時間計測手段にて計測し、その計測結果に基づいて流量を求めるようにした超音波流量計において、流れ方向上手側の超音波素子から超音波が流体中に送出されて、流れ方向下手側の超音波素子に伝搬するまでの時間を順方向伝搬時間Tudとし、流れ方向下手側の超音波素子から超音波が流体中に送出されて、流れ方向上手側の超音波素子に伝搬するまでの時間を逆方向伝搬時間Tduとしたときに、流れ方向上手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから、流れ方向下手側の超音波素子で超音波が検出されるまでの順方向片道計測時間Ta1と、流れ方向上手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから、流れ方向上手側の超音波素子で超音波が検出されるまでの順方向往復計測時間Ta2と、流れ方向下手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから、流れ方向上手側の超音波素子で超音波が検出されるまでの逆方向片道計測時間Tb1と、流れ方向下手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから、流れ方向下手側の超音波素子で超音波が検出されるまでの逆方向往復計測時間Tb2と、を計測する時間計測手段と、予め流量ゼロでの超音波素子の受信遅延時間差ΔTr0を、ΔTr0=(Ta2−Tb2)−(Ta1−Tb1)で求めておき、流量に比例する伝搬時間差ΔT=Tdu−TudをΔT=(Ta2−Tb2)−(Ta1−Tb1)−ΔTr0で求め、この結果を用いて、流量演算を行う演算手段とを備えることを特徴とする。請求項1記載の超音波流量計によれば、流れ方向上手側の超音波素子を発振することで、超音波を伝搬し、流れ方向下手側の超音波素子で超音波が伝搬するまでの順方向片道計測時間Ta1と、かつ、同時に流れ方向下手側の超音波素子で反射した超音波を流れ方向上手側の超音波素子で受信するまでの順方向往復計測時間Ta2と、流れ方向下手側の超音波素子で発振することで、超音波を伝搬し、流れ方向上手側の超音波素子で超音波が伝搬するまでの逆方向片道計測時間Tb1と、かつ、同時に流れ方向上手側の超音波素子で反射した超音波を流れ方向下手側の超音波素子で受信するまでの逆方向往復計測時間Tb2との4つの時間を計測して、計測した4つの時間より、超音波素子固有の受信時の遅延時間を排除することが可能になり、超音波が流体中を伝搬され、流れに沿う順方向の伝搬時間と逆らう逆方向の伝搬時間とである真の伝搬時間を求めることが可能となり、流量演算精度の向上が期待できる。
請求項2記載の超音波流量計は、流体が流通する流路に、前記流体の流れ方向上手側または下手側に向けて超音波を発振することが可能であって、流れ方向上手側または下手側から到来する超音波を受信することが可能な一対の超音波素子を設け、超音波がそれら超音波素子間を伝搬する時間を時間計測手段にて計測し、その計測結果に基づいて流量を求めるようにした超音波流量計において、流れ方向上手側の超音波素子から超音波が流体中に送出されて、流れ方向下手側の超音波素子に伝搬するまでの時間を順方向伝搬時間Tudとし、流れ方向下手側の超音波素子から超音波が流体中に送出されて、流れ方向上手側の超音波素子に伝搬するまでの時間を逆方向伝搬時間Tduとしたときに、流れ方向上手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから、流れ方向下手側の超音波素子で超音波が検出されるまでの順方向片道計測時間Ta1と、流れ方向上手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから、流れ方向上手側の超音波素子で超音波が検出されるまでの順方向往復計測時間Ta2と、流れ方向下手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから、流れ方向上手側の超音波素子で超音波が検出されるまでの逆方向片道計測時間Tb1と、流れ方向下手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから、流れ方向下手側の超音波素子で超音波が検出されるまでの逆方向往復計測時間Tb2と、を計測する時間計測手段と、予め流量ゼロでの超音波素子の送信遅延時間差ΔTt0を、ΔTt0=(Ta2−Tb2)+(Ta1−Tb1)で求めておき、流量に比例する伝搬時間差ΔT=Tdu−Tudを、ΔT=(Tb2−Ta2)+(Tb1−Ta1)+ΔTt0で求め、この結果を用いて、流量演算を行う演算手段とを備えることを特徴とする。請求項2記載の超音波流量計によれば、流れ方向上手側の超音波素子を発振することで、超音波を伝搬し、流れ方向下手側の超音波素子で超音波が伝搬するまでの順方向片道計測時間Ta1と、かつ、同時に流れ方向下手側の超音波素子で反射した超音波を流れ方向上手側の超音波素子で受信するまでの順方向往復計測時間Ta2と、流れ方向下手側の超音波素子で発振することで、超音波を伝搬し、流れ方向上手側の超音波素子で超音波が伝搬するまでの逆方向片道計測時間Tb1と、かつ、同時に流れ方向上手側の超音波素子で反射した超音波を流れ方向下手側の超音波素子で受信するまでの逆方向往復計測時間Tb2との4つの時間を計測して、計測した4つの時間より、超音波素子固有の送信時の遅延時間を排除することが可能になり、超音波が流体中を伝搬され、流れに沿う順方向の伝搬時間と逆らう逆方向の伝搬時間とである真の伝搬時間を求めることが可能となり、流量演算精度の向上が期待できる。
請求項3記載の超音波流量計は、流体が流通する流路に、前記流体の流れ方向上手側または下手側に向けて超音波を発振することが可能であって、流れ方向上手側または下手側から到来する超音波を受信することが可能な一対の超音波素子を設け、超音波がそれら超音波素子間を伝搬する時間を時間計測手段にて計測し、その計測結果に基づいて流量を求めるようにした超音波流量計において、流れ方向上手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから超音波が出力されるまでの時間を上手側素子送信遅延時間Ttaとし、流れ方向上手側の超音波素子から超音波が流体中に送出されて、流れ方向下手側の超音波素子に伝搬するまでの時間を順方向伝搬時間Tudとし、流れ方向下手側の超音波素子から超音波が検出されるまでの時間を下手側素子受信遅延時間Trbとし、流れ方向下手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから超音波が出力されるまでの時間を下手側素子送信遅延時間Ttbとし、流れ方向下手側の超音波素子から超音波が流体中に送出されて、流れ方向上手側の超音波素子に伝搬するまでの時間を逆方向伝搬時間Tduとし、流れ方向上手側の超音波素子から超音波が検出されるまでの時間を上手側素子受信遅延時間Traとしたときに、流れ方向上手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから、流れ方向下手側の超音波素子で超音波が検出されるまでの順方向片道計測時間Ta1=Tta+Tud+Trbと、流れ方向上手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから、流れ方向上手側の超音波素子で超音波が検出されるまでの順方向往復計測時間Ta2=Tta+Tud+Tdu+Traと、流れ方向下手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから、流れ方向上手側の超音波素子で超音波が検出されるまでの逆方向片道計測時間Tb1=Ttb+Tdu+Traと、流れ方向下手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから、流れ方向下手側の超音波素子で超音波が検出されるまでの逆方向往復計測時間Tb2=Ttb+Tdu+Tud+Trbと、を計測する時間計測手段と、予め流量ゼロでの超音波素子の受信遅延時間差ΔTr0を、ΔTr0=2(Tra−Trb)=(Ta2−Tb2)−(Ta1−Tb1)で求めておき、流量に比例する伝搬時間差ΔT=Tdu−TudをΔT=(Ta2−Tb2)−(Ta1−Tb1)−ΔTr0で求め、この結果を用いて、流量演算を行う演算手段とを備えることを特徴とする。請求項3記載の超音波流量計によれば、流れ方向上手側の超音波素子を発振することで、超音波を伝搬し、流れ方向下手側の超音波素子で超音波が伝搬するまでの順方向片道計測時間Ta1と、かつ、同時に流れ方向下手側の超音波素子で反射した超音波を流れ方向上手側の超音波素子で受信するまでの順方向往復計測時間Ta2と、流れ方向下手側の超音波素子で発振することで、超音波を伝搬し、流れ方向上手側の超音波素子で超音波が伝搬するまでの逆方向片道計測時間Tb1と、かつ、同時に流れ方向上手側の超音波素子で反射した超音波を流れ方向下手側の超音波素子で受信するまでの逆方向往復計測時間Tb2との4つの時間を計測して、計測した4つの時間より、超音波素子固有の受信時の遅延時間を排除することが可能になり、超音波が流体中を伝搬され、流れに沿う順方向の伝搬時間と逆らう逆方向の伝搬時間とである真の伝搬時間を求めることが可能となり、流量演算精度の向上が期待できる。
請求項4記載の超音波流量計は、流体が流通する流路に、前記流体の流れ方向上手側または下手側に向けて超音波を発振することが可能であって、流れ方向上手側または下手側から到来する超音波を受信することが可能な一対の超音波素子を設け、超音波がそれら超音波素子間を伝搬する時間を時間計測手段にて計測し、その計測結果に基づいて流量を求めるようにした超音波流量計において、流れ方向上手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから超音波が出力されるまでの時間を上手側素子送信遅延時間Ttaとし、流れ方向上手側の超音波素子から超音波が流体中に送出されて、流れ方向下手側の超音波素子に伝搬するまでの時間を順方向伝搬時間Tudとし、流れ方向下手側の超音波素子から超音波が検出されるまでの時間を下手側素子受信遅延時間Trbとし、流れ方向下手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから超音波が出力されるまでの時間を下手側素子送信遅延時間Ttbとし、流れ方向下手側の超音波素子から超音波が流体中に送出されて、流れ方向上手側の超音波素子に伝搬するまでの時間を逆方向伝搬時間Tduとし、流れ方向上手側の超音波素子から超音波が検出されるまでの時間を上手側素子受信遅延時間Traとしたときに、流れ方向上手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから、流れ方向下手側の超音波素子で超音波が検出されるまでの順方向片道計測時間Ta1=Tta+Tud+Trbと、流れ方向上手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから、流れ方向上手側の超音波素子で超音波が検出されるまでの順方向往復計測時間Ta2=Tta+Tud+Tdu+Traと、流れ方向下手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから、流れ方向上手側の超音波素子で超音波が検出されるまでの逆方向片道計測時間Tb1=Ttb+Tdu+Traと、流れ方向下手側の超音波素子に超音波発振信号を印加してから、流れ方向下手側の超音波素子で超音波が検出されるまでの逆方向往復計測時間Tb2=Ttb+Tdu+Tud+Trbと、を計測する時間計測手段と、予め流量ゼロでの超音波素子の送信遅延時間差ΔTt0を、ΔTt0=2(Tta−Ttb)=(Ta2−Tb2)+(Ta1−Tb1)で求めておき、流量に比例する伝搬時間差ΔT=Tdu−Tudを、ΔT=(Tb2−Ta2)+(Tb1−Ta1)+ΔTt0で求め、この結果を用いて、流量演算を行う演算手段とを備えることを特徴とする。請求項4記載の超音波流量計によれば、流れ方向上手側の超音波素子を発振することで、超音波を伝搬し、流れ方向下手側の超音波素子で超音波が伝搬するまでの順方向片道計測時間Ta1と、かつ、同時に流れ方向下手側の超音波素子で反射した超音波を流れ方向上手側の超音波素子で受信するまでの順方向往復計測時間Ta2と、流れ方向下手側の超音波素子で発振することで、超音波を伝搬し、流れ方向上手側の超音波素子で超音波が伝搬するまでの逆方向片道計測時間Tb1と、かつ、同時に流れ方向上手側の超音波素子で反射した超音波を流れ方向下手側の超音波素子で受信するまでの逆方向往復計測時間Tb2との4つの時間を計測して、計測した4つの時間より、超音波素子固有の送信時の遅延時間を排除することが可能になり、超音波が流体中を伝搬され、流れに沿う順方向の伝搬時間と逆らう逆方向の伝搬時間とである真の伝搬時間を求めることが可能となり、流量演算精度の向上が期待できる。
請求項5記載の超音波流量計は、請求項1または請求項3記載の超音波流量計において、予め受信遅延時間差ΔTr0の温度特性を超音波流量計内部に記憶する記憶手段を備えることを特徴とする。請求項5記載の超音波流量計によれば、予め、受信時における各超音波素子の受信遅延時間差ΔTr0の温度特性を内部に記憶しているので、環境温度が変化した場合でも、計測した環境温度よりその値を参照して、容易に流量演算が可能となる。
請求項6記載の超音波流量計は、請求項2または請求項4記載の超音波流量計において、予め送信遅延時間差ΔTt0の温度特性を超音波流量計内部に記憶する記憶手段を備えることを特徴とする。請求項6記載の超音波流量計によれば、予め、送信時における各超音波素子の送信遅延時間差ΔTt0の温度特性を内部に記憶しているので、環境温度が変化した場合でも、計測した環境温度よりその値を参照して、容易に流量演算が可能となる。
請求項7記載の超音波流量計は、請求項3ないし請求項6のいずれか1項に記載の超音波流量計において、前記演算手段が、前記順方向片道計測時間Ta1,前記順方向往復計測時間Ta2,前記逆方向片道計測時間Tb1,および前記逆方向往復計測時間Tb2より、伝搬時間和(Tud+Tdu)=(Ta2+Tb2)−(Ta1+Tb1)を計算し、前記上手側素子送信遅延時間Tta,前記下手側素子送信遅延時間Ttb,前記上手側素子受信遅延時間Tra,および前記下手側素子受信遅延時間Trbをキャンセルし、伝搬時間和(Tud+Tdu)より、温度を算出することを特徴とする。請求項7記載の超音波流量計によれば、流れ方向上手側の超音波素子を発振することで、超音波を伝搬し、流れ方向下手側の超音波素子で超音波が伝搬するまでの順方向片道計測時間Ta1と、かつ、同時に流れ方向下手側の超音波素子で反射した超音波を流れ方向上手側の超音波素子で受信するまでの順方向往復計測時間Ta2と、流れ方向下手側の超音波素子で発振することで、超音波を伝搬し、流れ方向上手側の超音波素子で超音波が伝搬するまでの逆方向片道計測時間Tb1と、かつ、同時に流れ方向上手側の超音波素子で反射した超音波を流れ方向下手側の超音波素子で受信するまでの逆方向往復計測時間Tb2との4つの時間を計測して、真の上下流方向の伝搬時間和(Tud+Tdu)=(Ta2+Tb2)−(Ta1+Tb1)を計算し、送信遅延項である上手側素子送信遅延時間Tta,下手側素子送信遅延時間Ttb、および受信遅延項である上手側素子受信遅延時間Tra,下手側素子受信遅延時間Trbをキャンセルでき、求めた伝搬時間和(Tud+Tdu)より、環境温度を正確、かつ、容易に算出することが可能となる。
請求項8記載の超音波流量計は、請求項7記載の超音波流量計において、前記演算手段が、前記算出した温度を用いて、前記求めた流量に対する温度補正を行うことを特徴とする。請求項8記載の超音波流量計によれば、前記順方向片道計測時間Ta1,前記順方向往復計測時間Ta2,前記逆方向片道計測時間Tb1,および前記逆方向往復計測時間Tb2を計測したことにより求めた温度を用いて、前記順方向片道計測時間Ta1,前記順方向往復計測時間Ta2,前記逆方向片道計測時間Tb1,および前記逆方向往復計測時間Tb2より求めた流量に対する温度補正が容易に行え、流量計測精度が向上する。
請求項9記載の超音波流量計は、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の超音波流量計において、一方の超音波素子で発振させた超音波を、他方の超音波素子で受信するまでの前記順方向片道計測時間Ta1,または前記逆方向片道計測時間Tb1を計測し、かつ、超音波が他方の超音波素子で反射した後、一方の超音波素子で超音波を受信するまでの前記順方向往復計測時間Ta2,または前記逆方向往復計測時間Tb2を計測し、その後、予め設定した遅延時間を設けた後、再び、上記動作を複数回繰り返すことを特徴とする。請求項9記載の超音波流量計によれば、反射時間計測を粗クロックで計測することが可能になり、回路制御および流量演算が容易になる。
請求項10記載の超音波流量計は、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の超音波流量計において、一方の超音波素子で発振させた超音波を、他方の超音波素子で受信するまでの前記順方向片道計測時間Ta1,または前記逆方向片道計測時間Tb1を計測し、かつ、超音波が他方の超音波素子で反射した後、一方の超音波素子で超音波を受信するまでの間に、一方の超音波素子の残響を低減することを特徴とする。請求項10記載の超音波流量計によれば、一方の超音波素子で送信した超音波を受信するときの受信信号のS/N比が確保でき、計測精度が向上する。
請求項11記載の超音波流量計は、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の超音波流量計において、一方の超音波素子で発振させた超音波を、他方の超音波素子で受信するまでの前記順方向片道計測時間Ta1,または前記逆方向片道計測時間Tb1を計測し、かつ、超音波が他方の超音波素子で反射した後、一方の超音波素子で超音波を受信するまでの前記順方向往復計測時間Ta2,または前記逆方向往復計測時間Tb2を求めるため、受信される超音波変換信号をサンプリングし、サンプリングした出力からノイズ成分を除去した後、補間処理を行うことで前記順方向往復計測時間Ta2,または前記逆方向往復計測時間Tb2を算出することを特徴とする。請求項11記載の超音波流量計によれば、受信時のS/N比が確保でき、補間処理により、さらに高精度な反射伝搬時間の計測が可能になる。
請求項12記載の超音波流量計は、請求項11記載の超音波流量計において、前記補間処理が、サイン補間であることを特徴とする。請求項12記載の超音波流量計によれば、超音波受信出力はほぼサイン波と判断できるため、補間処理をサイン補間としたことで、より正確な超音波変換信号が再現でき、正しい伝搬時間が求められる。
請求項13記載の超音波流量計は、請求項1ないし請求項12のいずれか1項に記載の超音波流量計において、流量ゼロ時に、前記受信遅延時間差ΔTr0の計算結果、または前記送信遅延時間差ΔTt0の計算結果、もしくは前記受信遅延時間差ΔTr0および前記送信遅延時間差ΔTt0の一方または双方の計算結果を更新することを特徴とする。請求項13記載の超音波流量計によれば、経年変化により超音波素子の特性差が変化しても特性差を検出することで流量補正が可能になり、経年変化に対して影響を受けない超音波流量計を実現できる。
請求項14記載の超音波流量計は、請求項1ないし請求項13のいずれか1項に記載の超音波流量計において、前記受信遅延時間差ΔTr0がΔTr0=0、および前記送信遅延時間差ΔTt0がΔTt0=0となるように前記一対の超音波素子のペアリング特性を一致させたことを特徴とする。請求項14記載の超音波流量計によれば、初期時に超音波素子の送信遅延時間差ΔTt0および受信遅延時間差ΔTr0を一致させ、ペアリング特性を一致させているので、流量計測精度が確保できる。
次に、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る超音波流量計1の基本構成を示すブロック図である。本実施例1に係る超音波流量計1は、一般住宅用ガスメータ等として用いられる超音波流量計であり、一対の超音波素子(超音波トランスジューサ)2a,2bと、流量測定用の流路3と、送信手段5および受信手段6を含む切替手段4と、増幅手段7と、マスク時間設定手段8と、ゼロクロスポイント検出手段9と、時間計測手段10と、演算手段11とを含んで構成されている。
超音波素子2aは流路3の流れ方向上手側の壁面に、超音波素子2bは流路3の流れ方向下手側の壁面に互いの端面を対向させるように取り付けられている。超音波素子2aおよび超音波素子2bを取り付けたときに流体の流れ方向となす測線角をθとし、超音波素子2aの端面と超音波素子2bの端面との間の距離をLとする。
流路3には、流量測定用ガス(流体)が、図1中の矢印で示すように、流れ方向左から右に流通(平均流速v)している。流路3は、少なくとも超音波素子2a−超音波素子2b間において流れ方向に沿って、軸断面の形状および断面積が流れ方向において同一に形成されている。測定対象がガスの場合、流路3の軸断面形状は壁面により閉鎖された空間を形成するものであればよく、例えば、円形状、楕円形状、正方形状、矩形状等のいずれを採用してもよい。図1に示す流路3は、矩形状に形成されているものとする。
切替手段4は、流れに沿う順方向に超音波を送信する場合には、超音波素子2aを送信側とするために送信手段5と超音波素子2aとを接続する一方、超音波素子2bを受信側とするために受信手段6と超音波素子2bとを接続する。また、切替手段4は、流れに逆らう逆方向に超音波を送信する場合には、超音波素子2bを送信側とするために送信手段5と超音波素子2bとを接続する一方、超音波素子2aを受信側とするために受信手段6と超音波素子2aとを接続する。
増幅手段7は、受信手段6により受信された超音波を所定の増幅率で増幅し、増幅された超音波変換信号をマスク時間設定手段8に入力する。ただし、増幅手段7は、送信側の超音波素子から送出された超音波を受信側の超音波素子で直接受信した場合の直接波用の増幅率と、送信側の超音波素子から送出された超音波が受信側の超音波素子で反射されて、反射された超音波を送信側の超音波素子で受信した場合の反射波用の増幅率とを切り替えることができる。もしくは、直接波と反射波の増幅率は同じとする。
マスク時間設定手段8は、ノイズ対策のため、超音波素子2aまたは2bより超音波を送出してから、流路3を伝搬される超音波が到達しない最低の時間を設けるものである。
ゼロクロスポイント検出手段9は、受信した超音波の第3波のゼロクロスポイントを検出する。
時間計測手段10は、超音波素子2aを発振することで、超音波を伝搬し、超音波素子2bで超音波が伝搬するまでの順方向片道計測時間Ta1(図2参照)と、かつ、同時に超音波素子2bで反射した超音波を超音波素子2aで受信するまでの順方向往復計測時間Ta2(図2参照)と、超音波素子2bで発振することで、超音波を伝搬し、超音波素子2aで超音波が伝搬するまでの逆方向片道計測時間Tb1(図3参照)と、かつ、同時に超音波素子2aで反射した超音波を超音波素子2bで受信するまでの逆方向往復計測時間Tb2(図3参照)との4つの時間を計測する。
演算手段11は、予め流量ゼロでの超音波素子の受信遅延時間差ΔTr0を、ΔTr0=(Ta2−Tb2)−(Ta1−Tb1)で求めておき、流量に比例する伝搬時間差ΔT=Tdu−TudをΔT=(Ta2−Tb2)−(Ta1−Tb1)−ΔTr0で求め、この結果を用いて、流量演算を行う。また、演算手段11は、予め流量ゼロでの超音波素子の送信遅延時間差ΔTt0を、ΔTt0=(Ta2−Tb2)+(Ta1−Tb1)で求めておき、流量に比例する伝搬時間差ΔT=Tdu−Tudを、ΔT=(Tb2−Ta2)+(Tb1−Ta1)+ΔTt0で求め、この結果を用いて、流量演算を行う。
図2は、流れ方向上手側の超音波素子2aから超音波を送出した場合における、各点での超音波のタイミングチャートを示す。
図3は、流れ方向下手側の超音波素子2bから超音波を送出した場合における、各点での超音波のタイミングチャートを示す。
図4は、本実施例1に係る超音波流量計1における流量計算処理を示すフローチャートである。
次に、このように構成された実施例1に係る超音波流量計1の動作について説明する。
例えば、流路3内の流れが、図1中の矢印で示すように、左から右としたときに、まず、演算手段11は、順方向片道計測時間Ta1(図2参照)を計測するために、切替手段4により、送信手段5と超音波素子2aとを接続する一方、受信手段6と超音波素子2bとを接続する。
次に、演算手段11は、送信手段5より超音波素子2aに超音波発振信号(駆動パルス)を印加する。すると、超音波素子2aより超音波が送出され、流体中を流れの順方向に進む。
超音波素子2aから送出されて、超音波素子2bまで到達した超音波は、超音波素子2bで機械−電気変換され、超音波変換信号が受信手段6により受信されて、増幅手段7に入力される。
増幅手段7は、受信した超音波変換信号を直接波用の増幅率で増幅し、増幅された超音波変換信号をマスク時間設定手段8に入力する。
マスク時間設定手段8は、超音波素子2aより超音波を送出してから、流路3を伝搬される超音波が超音波素子2bに到達しない最低の時間をマスクする。
マスク時間設定手段8により設定された時間が経過したならば、ゼロクロスポイント検出手段9は、増幅された超音波変換信号の第3波のゼロクロスポイントを検出する。
時間計測手段10は、送信手段5により超音波素子2aに超音波発振信号(駆動パルス)を印加してから、ゼロクロスポイント検出手段9により超音波の第3波のゼロクロスポイントが検出されるまでの順方向片道計測時間Ta1を計測する(ステップS101)。この順方向片道計測時間Ta1は、図2に示すように、超音波素子2aの端面から超音波が出力されるまでの上手側素子送信遅延時間Ttaと、超音波素子2aから超音波が流体中に送出されて、超音波素子2bの端面に伝搬するまでの順方向伝搬時間Tudと、超音波素子2bの端面から超音波が検出されるまでの下手側素子受信遅延時間(受信第3波のゼロクロスポイントまでの時間)Trbとを含む(式(1)参照)。
Ta1=Tta+Tud+Trb (1)
超音波素子2aより送出された超音波は、超音波素子2bの端面に到達すると、超音波素子2bで機械−電気変換されると同時に、超音波素子2bの端面で反射され、流体中を流れに逆らう逆方向に進む。このため、演算手段11は、順方向往復計測時間Ta2(図2参照)を計測するために、切替手段4により、送信手段5と超音波素子2aとを切り離し、受信手段6と超音波素子2aとを接続する。
超音波素子2bの端面で反射されて、超音波素子2aまで到達した反射波は、超音波素子2aで機械−電気変換され、超音波変換信号が受信手段6により受信されて、増幅手段7に入力される。
増幅手段7は、入力された超音波変換信号を反射波用の増幅率で増幅し、増幅された超音波変換信号をマスク時間設定手段8に入力する。
マスク時間設定手段8は、超音波素子2bで反射されてから、流路3を伝搬される反射波が超音波素子2aに到達しない最低の時間をマスクする。
マスク時間設定手段8により設定された時間が経過したならば、ゼロクロスポイント検出手段9は、増幅された超音波変換信号の第3波のゼロクロスポイントを検出する。
時間計測手段10は、送信手段5により超音波素子2aに超音波発振信号(駆動パルス)を印加してから、超音波素子2aで受信された反射波の第3波のゼロクロスポイントがゼロクロスポイント検出手段9により検出されるまでの順方向往復計測時間Ta2を計測する(ステップS102)。この順方向往復計測時間Ta2は、図2に示すように、超音波素子2aの端面から超音波が出力されるまでの上手側素子送信遅延時間Ttaと、超音波素子2aから超音波が流体中に送出されて、超音波素子2bの端面に伝搬するまでの順方向伝搬時間Tudと、反射波が超音波素子2aの端面に伝搬するまでの逆方向伝搬時間Tduと、超音波素子2aの端面から超音波が検出されるまでの上手側素子受信遅延時間(受信第3波のゼロクロスポイントまでの時間)Traとを含む(式(2)参照)。
Ta2=Tta+Tud+Tdu+Tra (2)
次に、演算手段11は、逆方向片道計測時間Tb1(図3参照)を計測するために、切替手段4により、送信手段5と超音波素子2bとを接続する一方、受信手段6と超音波素子2aとを接続する。
続いて、演算手段11は、送信手段5より超音波素子2bに超音波発振信号(駆動パルス)を印加する。すると、超音波素子2bより超音波が送出され、流体中を流れに逆らう逆方向に進む。
超音波素子2bから送出されて、超音波素子2aまで到達した超音波は、超音波素子2aで機械−電気変換され、超音波変換信号が受信手段6により受信されて、増幅手段7に入力される。
増幅手段7は、受信した超音波変換信号を直接波用の増幅率で増幅し、増幅された超音波変換信号をマスク時間設定手段8に入力する。
マスク時間設定手段8は、超音波素子2bより超音波を送出してから、流路3を伝搬される超音波が超音波素子2aに到達しない最低の時間をマスクする。
マスク時間設定手段8により設定された時間が経過したならば、ゼロクロスポイント検出手段9は、増幅された超音波変換信号の第3波のゼロクロスポイントを検出する。
時間計測手段10は、送信手段5により超音波素子2bに超音波発振信号(駆動パルス)を印加してから、ゼロクロスポイント検出手段9により超音波の第3波のゼロクロスポイントが検出されるまでの逆方向片道計測時間Tb1を計測する(ステップS103)。この逆方向片道計測時間Tb1は、図3に示すように、超音波素子2bの端面から超音波が出力されるまでの下手側素子送信遅延時間Ttbと、超音波素子2bから超音波が流体中に送出されて、超音波素子2aの端面に伝搬するまでの逆方向伝搬時間Tduと、超音波素子2aの端面から超音波が検出されるまでの上手側素子受信遅延時間(受信第3波のゼロクロスポイントまでの時間)Traとを含む(式(3)参照)。
Tb1=Ttb+Tdu+Tra (3)
超音波素子2bより送出された超音波は、超音波素子2aの端面に到達すると、超音波素子2aで機械−電気変換されると同時に、超音波素子2aの端面で反射され、流体中を流れの順方向に進む。このため、演算手段11は、逆方向往復計測時間Tb2(図3参照)を計測するために、切替手段4により、送信手段5と超音波素子2bとを切り離し、受信手段6と超音波素子2bとを接続する。
超音波素子2aの端面で反射されて、超音波素子2bまで到達した反射波は、超音波素子2bで機械−電気変換され、超音波変換信号が受信手段6により受信されて、増幅手段7に入力される。
増幅手段7は、受信した超音波変換信号を反射波用の増幅率で増幅し、増幅された超音波変換信号をマスク時間設定手段8に入力する。
マスク時間設定手段8は、超音波素子2aで反射されてから、流路3を伝搬される超音波が超音波素子2bに到達しない最低の時間をマスクする。
マスク時間設定手段8により設定された時間が経過したならば、ゼロクロスポイント検出手段9は、増幅された超音波変換信号の第3波のゼロクロスポイントを検出する。
時間計測手段10は、送信手段5により超音波素子2bに超音波発振信号(駆動パルス)を印加してから、超音波素子2bで受信された反射波の第3波のゼロクロスポイントがゼロクロスポイント検出手段9により検出されるまでの逆方向往復計測時間Tb2を計測する(ステップS104)。この逆方向往復計測時間Tb2は、図3に示すように、超音波素子2bの端面から超音波が出力されるまでの下手側素子送信遅延時間Ttbと、超音波素子2bから超音波が流体中に送出されて、超音波素子2aの端面に伝搬するまでの逆方向伝搬時間Tduと、反射波が超音波素子2bの端面に伝搬するまでの順方向伝搬時間Tudと、超音波素子2bの端面から超音波が検出されるまでの下手側素子受信遅延時間(受信第3波のゼロクロスポイントまでの時間)Trbとを含む(式(4)参照)。
Tb2=Ttb+Tdu+Tud+Trb (4)
ここで、式(1)−式(3)を求めると、下式(5)となる。
Ta1−Tb1=(Tta+Tud+Trb)−(Ttb+Tdu+Tra)
=(Tta−Ttb)+(Tud−Tdu)−(Tra−Trb) (5)
また、式(4)−式(2)を求めると、下式(6)となる。
Ta2−Tb2=(Tta+Tdu+Tud+Tra)−(Ttb+Tdu+Tud+Trb)
=(Tta−Ttb)+(Tra−Trb) (6)
さらに、式(6)−式(5)を求めると、下式(7)となる。
(Ta2−Tb2)−(Ta1−Tb1)=(Tdu−Tud)+2(Tra−Trb) (7)
流量ゼロでは、Tud=Tduなので、式(7)より下式(8)となる。
ΔTr0=2(Tra−Trb)=(Ta2−Tb2)−(Ta1−Tb1) (8)
そこで、流量ゼロでの受信遅延時間差ΔTr0=2(Tra−Trb)を求めておく。
一方、受信遅延時間Tra,Trbは、受信時の超音波素子2a,2b固有の遅延なので、流速vには依存しない。
よって、演算手段11は、式(7)より、伝搬時間差ΔT=(Tdu−Tud)を式(9)として求める(ステップS105)。
ΔT=(Tdu−Tud)=(Ta2−Tb2)−(Ta1−Tb1)−ΔTr0 (9)
他方、流速演算式は、数3で求められる。
よって、演算手段11は、式(9)で得られた伝搬時間差ΔT=Tdu−Tudを、数3に代入することにより、真の流速vを計算する(ステップS106)。
最後に、演算手段11は、得られた流速vに流路3の断面積Sを乗算することにより、流量Qを、Q=S・vで求める(ステップS107)。
実施例1によれば、順方向片道計測時間Ta1,順方向往復計測時間Ta2,逆方向片道計測時間Tb1,および逆方向往復計測時間Tb2の4つの時間を計測したことにより、超音波素子2a,2b固有の受信遅延時間Tra,Trbを排除することが可能になり、順方向伝搬時間Tud,および逆方向伝搬時間Tduを求めることが可能となり、流量演算精度の向上を図ることができる。
本発明の実施例2に係る超音波流量計1も、図1に示した実施例1に係る超音波流量計1と同様に構成されているので、図1およびその説明を流用して、その詳しい構成の説明を割愛する。
また、このように構成された実施例2に係る超音波流量計1の動作は、図1に示した実施例1に係る超音波流量計1の動作とほぼ同様になるので、相違する点だけに着目して簡単に説明する。
実施例1において、式(6)+式(5)を求めると、下式(10)となる。
(Ta2−Tb2)+(Ta1−Tb1)=(Tud−Tdu)+2(Tta−Ttb) (10)
流量ゼロでは、Tud=Tduとなるので、式(10)より、下式が得られる。
ΔTt0=2(Tta−Ttb)=(Ta2−Tb2)−(Ta1−Tb1)
そこで、流量ゼロでの送信遅延時間差ΔTt0=2(Tta−Ttb)を求めておく。
一方、送信遅延時間Tta,Ttbは、送信時の超音波素子2a,2b固有の遅延なので、流速vには依存しない。
よって、演算手段11は、式(10)より、伝搬時間差ΔT=(Tdu−Tud)を式(11)として求める(ステップS105)。
ΔT=(Tdu−Tud)=(Tb2−Ta2)+(Tb1−Ta1)+ΔTt0 (11)
次に、演算手段11は、式(11)で得られた伝搬時間差ΔT=Tdu−Tudを、数3に代入することにより、真の流速vを計算する(ステップS106)。
最後に、演算手段11は、得られた流速vに流路3の断面積Sを乗算することにより、流量Qを、Q=S・vで求める(ステップS107)。
実施例2によれば、順方向片道計測時間Ta1,順方向往復計測時間Ta2,逆方向片道計測時間Tb1,および逆方向往復計測時間Tb2の4つの時間を計測したことにより、超音波素子2a,2b固有の送信遅延時間Tta,Ttbを排除することが可能になり、順方向伝搬時間Tud,および逆方向伝搬時間Tduを求めることが可能となり、流量演算精度の向上を図ることができる。
図5は、本発明の実施例3に係る超音波流量計の基本構成を示す説明図である。本実施例3に係る超音波流量計1も、図1に示した実施例1に係る超音波流量計1とほぼ同様に構成されているが、予め、受信遅延時間差ΔTr0の温度特性を記憶する記憶手段12が付加されている点だけが相違する。したがって、特に言及しない部分には、同一符号を付して、それらの詳しい説明を省略する。
また、このように構成された実施例3に係る超音波流量計1の動作は、図1に示した実施例1に係る超音波流量計1の動作とほぼ同様になるので、相違する点だけに着目して簡単に説明する。
実施例3に係る超音波流量計1では、予め、受信遅延時間差ΔTr0の温度特性を超音波流量計1の内部の記憶手段12に記憶されているため、演算手段11は、超音波流量計1の環境温度τが変化しても、その環境温度τに対応する予め記憶した受信遅延時間差ΔTr0の値に基づき、受信遅延時間差ΔTr0を求めることができる。
そして、演算手段11は、記憶手段12に記憶された温度特性から求めた受信遅延時間差ΔTr0を式(9)に代入することにより、伝搬時間差ΔT=Tdu−Tudを求める(ステップS105)。
以下、実施例1に係る超音波流量計1と同様にして、流速vおよび流量Qを求めることができる(ステップS106,S107)。
実施例3によれば、予め、受信時における超音波素子2a,2bの受信遅延時間差ΔTr0の温度特性を記憶手段12に記憶しているので、環境温度τが変化した場合でも、計測した環境温度τよりその値を参照して、容易に流量演算が可能となるという効果がある。なお、経年変化に対するドリフトに関しては、使用形態がガスメータである場合、明らかに未使用である遮断弁を閉栓した状態など、流量ゼロ時に受信遅延時間差ΔTr0を計測し、記憶手段12に記憶された受信遅延時間差ΔTr0の値を更新しておけば、計測精度はさらに向上する。
本発明の実施例4に係る超音波流量計1も、図5に示した実施例3に係る超音波流量計1と同様に構成されているので、図3およびその説明を流用して、その詳しい構成の説明を割愛する。ただし、記憶手段12に予め記憶されているのが、受信遅延時間差ΔTr0の温度特性ではなく、送信遅延時間差ΔTt0の温度特性である点だけが相違する。
また、このように構成された実施例4に係る超音波流量計1の動作は、図1に示した実施例1に係る超音波流量計1の動作とほぼ同様になるので、相違する点だけに着目して簡単に説明する。
実施例4に係る超音波流量計1では、予め、送信遅延時間差ΔTt0の温度特性を超音波流量計1の内部の記憶手段12に記憶させているため、超音波流量計1の環境温度τが変化しても、演算手段11は、その環境温度τに対応する予め記憶した送信遅延時間差ΔTt0の値に基づき、送信遅延時間差ΔTt0を求めることができる。
そして、演算手段11は、記憶手段12に記憶された温度特性から求めた送信遅延時間差ΔTt0を式(11)に代入することにより、伝搬時間差ΔT=Tdu−Tudを求める(ステップS105)。
以下、実施例1に係る超音波流量計1と同様にして、流速vおよび流量Qを求めることができる(ステップS106,S107)。
実施例4によれば、予め、送信時における超音波素子2a,2bの送信遅延時間差ΔTt0の温度特性を記憶手段12に記憶しているので、環境温度τが変化した場合でも、計測した環境温度τよりその値を参照して、容易に流量演算が可能となるという効果がある。なお、経年変化に対するドリフトに関しては、使用形態がガスメータである場合、明らかに未使用である遮断弁を閉栓した状態など、流量ゼロ時に送信遅延時間差ΔTt0を計測し、記憶手段12に記憶された送信遅延時間差ΔTt0の値を更新しておけば、計測精度はさらに向上する。
本発明の実施例5に係る超音波流量計1は、実施例1ないし実施例4に係る超音波流量計1において、順方向片道計測時間Ta1,順方向往復計測時間Ta2,逆方向片道計測時間Tb1,および逆方向往復計測時間Tb2より、伝搬時間和(Tud+Tdu)=(Ta2+Tb2)−(Ta1+Tb1)を計算し、上手側素子送信遅延時間Tta,下手側素子送信遅延時間Ttb,上手側素子受信遅延時間Tra,および下手側素子受信遅延時間Trbをキャンセルし、伝搬時間和(Tud+Tdu)より、温度τを算出するものである。よって、本発明の実施例5に係る超音波流量計1も、図1または図5に示した実施例1または実施例3に係る超音波流量計1と同様に構成されているので、図1または図5およびそれらの説明を流用して、その詳しい構成の説明を割愛する。
また、このように構成された実施例5に係る超音波流量計1の動作は、図1に示した実施例1に係る超音波流量計1の動作とほぼ同様になるので、相違する点だけに着目して簡単に説明する。
時間計測手段10は、順方向片道計測時間Ta1,順方向往復計測時間Ta2,逆方向片道計測時間Tb1,および逆方向往復計測時間Tb2を計測する(ステップS101〜S104)。
演算手段11は、伝搬時間和(Tud+Tdu)=(Ta2+Tb2)−(Ta1+Tb1)を計算する。
一方、数4で、音速cを完全に求めることができる。
よって、演算手段11は、伝搬時間和(Tud+Tdu)=(Ta2+Tb2)−(Ta1+Tb1)で求めた値を数4に代入し、空気であれば、空気の音速簡易式c=331.5+0.61τにより、環境温度τがほぼ完全に求められる。
実施例5によれば、順方向片道計測時間Ta1,順方向往復計測時間Ta2,逆方向片道計測時間Tb1,および逆方向往復計測時間Tb2を計測して、伝搬時間和(Tud+Tdu)=(Ta2+Tb2)−(Ta1+Tb1)を計算することにより、上手側素子送信遅延時間Tta,下手側素子送信遅延時間Ttb、上手側素子受信遅延時間Tra,および下手側素子受信遅延時間Trbをキャンセルでき、求めた伝搬時間和(Tud+Tdu)より、環境温度τを正確、かつ、容易に算出することが可能となる。
本発明の実施例6に係る超音波流量計1は、実施例5に係る超音波流量計において、演算手段11が、算出した温度τを用いて、求めた流量Qに対する温度補正を行うものである。よって、本実施例6に係る超音波流量計1も、図1または図5に示した実施例1または実施例3に係る超音波流量計1と同様に構成されているので、図1または図5およびそれらの説明を流用して、その詳しい構成の説明を割愛する。
また、このように構成された実施例6に係る超音波流量計1の動作は、図1に示した実施例1に係る超音波流量計1の動作とほぼ同様になるので、相違する点だけに着目して簡単に説明する。
実施例6に係る超音波流量計1では、演算手段11は、実施例5で求めた温度τを用いて、求められた流量Qの温度補正を行うことができる。
実施例6によれば、順方向片道計測時間Ta1,順方向往復計測時間Ta2,逆方向片道計測時間Tb1,および逆方向往復計測時間Tb2を計測したことにより求めた温度τを用いて、順方向片道計測時間Ta1,順方向往復計測時間Ta2,逆方向片道計測時間Tb1,および逆方向往復計測時間Tb2より求めた流量Qに対する温度補正が容易に行え、流量計測精度を向上させることができる。
本発明の実施例7に係る超音波流量計1は、実施例1ないし実施例6の超音波流量計1において、一方の超音波素子2a(または2b)で発振させた超音波を、他方の超音波素子2b(または2a)で受信するまでの順方向片道計測時間Ta1(または逆方向片道計測時間Tb1)を計測し、かつ、超音波が他方の超音波素子2b(または2a)で反射した後、一方の超音波素子2a(または2b)で超音波を受信するまでの順方向往復計測時間Ta2(または逆方向往復計測時間Tb2)を計測し、その後、予め設定した遅延時間を設けた後、再び、上記動作を複数回繰り返すようにしたものである。よって、本実施例7に係る超音波流量計1も、図1または図5に示した実施例1または実施例3に係る超音波流量計1と同様に構成されているので、図1または図5およびそれらの説明を流用して、その詳しい構成の説明を割愛する。
また、このように構成された実施例7に係る超音波流量計1の動作は、図1に示した実施例1に係る超音波流量計1の動作とほぼ同様になるので、相違する点だけに着目して簡単に説明する。
実施例7に係る超音波流量計1では、実施例1に係る超音波流量計1において、一方の超音波素子2a(または2b)で発振させた超音波を、他方の超音波素子2b(または2a)で受信するまでの順方向片道計測時間Ta1(または逆方向片道計測時間Tb1)を計測し、かつ、超音波が他方の超音波素子2b(または2a)で反射した後、一方の超音波素子2a(または2b)で超音波を受信するまでの順方向往復計測時間Ta2(または逆方向往復計測時間Tb2)を計測し、その後、予め設定した遅延時間を設けた後、再び、上記動作を複数回繰り返し、シングアラウンドループを構成する。
実施例7によれば、順方向片道計測時間Ta1(または逆方向片道計測時間Tb1)を計測し、かつ、超音波が他方の超音波素子2b(または2a)で反射した後、一方の超音波素子2a(または2b)で超音波を受信するまでの順方向往復計測時間Ta2(または逆方向往復計測時間Tb2)を計測し、シングアラウンドループを構成したことにより、シングアラウンドループにおける時間の計測は水晶発振子などの基準クロック数をカウントすることにより行うので、超音波反射時間を粗クロックで正確に計測することが可能になり、回路制御および流量演算が容易になるという効果が得られる。このため、超音波の伝搬時間を低コストで精度良く測定することができ、ひいてはシングアラウンド法を汎用の超音波流量計にきわめて経済的に適用することが可能になる。
本発明の実施例8に係る超音波流量計1は、実施例1ないし実施例7に係る超音波流量計1において、一方の超音波素子2a(または2b)で発振させた超音波を、他方の超音波素子2b(または2a)で受信するまでの順方向片道計測時間Ta1(または逆方向片道計測時間Tb1)を計測し、かつ、超音波が他方の超音波素子2b(または2a)で反射した後、一方の超音波素子2a(または2b)で超音波を受信するまでの間に、一方の超音波素子2a(または2b)の残響を低減するものである。本実施例8に係る超音波流量計1も、図1または図5に示した実施例1または実施例3に係る超音波流量計1と同様に構成されているので、図1または図5およびそれらの説明を流用して、その詳しい構成の説明を割愛する。
また、このように構成された実施例8に係る超音波流量計1の動作は、図1に示した実施例1に係る超音波流量計1の動作とほぼ同様になるので、相違する点だけに着目して簡単に説明する。
実施例8に係る超音波流量計1では、一方の超音波素子2a(または2b)で超音波を発振し、他方の超音波素子2b(または2a)で超音波を受信するまでの順方向片道計測時間Ta1(または逆方向片道計測時間Tb1)を計測し、かつ、超音波が他方の超音波素子2b(または2a)で反射した後、一方の超音波素子2a(または2b)で超音波を受信するまでの間に、一方の超音波素子2a(または2b)の残響を低減しておく。
実施例8によれば、超音波が他方の超音波素子2b(または2a)で反射した後、一方の超音波素子2a(または2b)で超音波を受信するまでの間に、一方の超音波素子2a(または2b)の残響を低減するようにしたので、反射波受信時に高S/N比で受信可能となり、一方の超音波素子2a(または2b)で送信した超音波を受信するときの受信信号のS/N比が確保でき、計測精度が向上する。
本発明の実施例9に係る超音波流量計1は、実施例1ないし実施例8に係る超音波流量計1において、一方の超音波素子2a(または2b)で発振させた超音波を、他方の超音波素子2b(または2a)で受信するまでの順方向片道計測時間Ta1(または逆方向片道計測時間Tb1)を計測し、かつ、超音波が他方の超音波素子2b(または2a)で反射した後、一方の超音波素子2a(または2b)で超音波を受信するまでの順方向往復計測時間Ta2(または逆方向往復計測時間Tb2)を求めるため、受信される超音波変換信号をサンプリングし、サンプリングした出力からノイズ成分を除去した後、補間処理を行うことで順方向往復計測時間Ta2,(または逆方向往復計測時間Tb2)を算出するものである。よって、本実施例9に係る超音波流量計1も、図1または図5に示した実施例1または実施例3に係る超音波流量計1と同様に構成されているので、図1または図5およびそれらの説明を流用して、その詳しい構成の説明を割愛する。
また、このように構成された実施例9に係る超音波流量計1の動作は、図1に示した実施例1に係る超音波流量計1の動作とほぼ同様になるので、相違する点だけに着目して簡単に説明する。
実施例9に係る超音波流量計1では、一方の超音波素子2a(または2b)を発振させた後、他方の超音波素子2b(または2a)で超音波を受信するまでの順方向片道計測時間Ta1(または逆方向片道計測時間Tb1)を計測し、かつ、超音波が超音波素子2bで反射した後、超音波素子2aで超音波を受信するまでの順方向往復計測時間Ta2(または逆方向往復計測時間Tb2)を求めるため、受信される超音波変換信号をサンプリングし、サンプリングした出力からノイズ成分を除去した後、補間処理を行う。
実施例9によれば、受信時のS/N比が確保でき、補間処理により、受信波に埋もれるノイズを除去することが可能となり、さらに高精度な反射伝搬時間の計測が可能になって、計測時間の精度が向上する。
本発明の実施例10に係る超音波流量計1は、実施例9に係る超音波流量計1において、補間処理が、サイン補間であるものである。よって、本実施例10に係る超音波流量計1も、図1または図5に示した実施例1または実施例3に係る超音波流量計1と同様に構成されているので、図1または図5およびそれらの説明を流用して、その詳しい構成の説明を割愛する。
また、このように構成された実施例10に係る超音波流量計1の動作は、図1に示した実施例1に係る超音波流量計1の動作とほぼ同様になるので、相違する点だけに着目して簡単に説明する。
実施例10に係る超音波流量計1では、実施例9に係る超音波流量計1で超音波変換信号をサンプリングし、求めた受信波形をサイン補間する。
実施例10によれば、超音波受信出力はほぼサイン波と判断できるため、補間処理をサイン補間としたことにより、より正確な受信波が検出でき(より正確な超音波変換信号が再現でき)、伝搬時間の計測精度が向上して、正しい伝搬時間が求められる。
本発明の実施例11に係る超音波流量計1は、実施例1ないし実施例10に係る超音波流量計1において、流量ゼロ時に、受信遅延時間差ΔTr0の計算結果、または送信遅延時間差ΔTt0の計算結果、もしくは受信遅延時間差ΔTr0および送信遅延時間差ΔTt0の両計算結果を更新するものである。本実施例11に係る超音波流量計1も、図1または図5に示した実施例1または実施例3に係る超音波流量計1と同様に構成されているので、図1または図5およびそれらの説明を流用して、その詳しい構成の説明を割愛する。
また、このように構成された実施例11に係る超音波流量計1の動作は、図1に示した実施例1に係る超音波流量計1の動作とほぼ同様になるので、相違する点だけに着目して簡単に説明する。
実施例11に係る超音波流量計1では、経年変化による超音波素子2a,2bの特性変化を考慮し、初期特性として記憶した流量ゼロ時の受信遅延時間差ΔTr0または送信遅延時間差ΔTt0が初期特性より変化する可能性がある。超音波素子自体が経年変化しているにもかかわらず、初期時に記憶した流量ゼロ時の受信遅延時間差ΔTr0または送信遅延時間差ΔTt0をそのまま使用していると、求めた流量計測精度が低下するので、それを防止するために、流量ゼロの状態における受信遅延時間差ΔTr0または送信遅延時間差ΔTt0を逐次更新する。
実施例11によれば、経年変化により超音波素子2a,2bの特性が変化しても、特性差を検出することで流量補正が可能になり、特性値を逐次更新することで、計測精度の低下を防止でき、経年変化に対して影響を受けない超音波流量計を実現できる。
本発明の実施例12に係る超音波流量計1は、実施例1ないし実施例11に係る超音波流量計1において、受信遅延時間差ΔTr0がΔTr0=0、および送信遅延時間差ΔTt0がΔTt0=0となるように、一対の超音波素子2a,2bのペアリング特性を一致させたようにしたものである。本実施例12に係る超音波流量計1も、図1または図5に示した実施例1または実施例3に係る超音波流量計1と同様に構成されているので、図1または図5およびそれらの説明を流用して、その詳しい構成の説明を割愛する。
また、このように構成された実施例12に係る超音波流量計1の動作は、図1に示した実施例1に係る超音波流量計1の動作とほぼ同様になるので、相違する点だけに着目して簡単に説明する。
実施例12に係る超音波流量計1では、実施例1における送信遅延時間差ΔTt0をΔTt0=0、および受信遅延時間差ΔTr0をΔTr0=0となるように、一対の超音波素子2a,2bのペアリング特性を一致させる。
実施例12によれば、初期時に一対の超音波素子2a,2bの送信遅延時間差ΔTt0および受信遅延時間差ΔTr0を一致させ、ペアリング特性を一致させているので、流量計測精度が確保でき、実地設置当初より計測精度が十分に確保された超音波流量計1が実現できる。
以上、本発明の各実施例を説明したが、これらはあくまで例示にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づく種々の変更が可能である。
本発明の実施例1に係る超音波流量計の基本構成を示す説明図。
図1中の流れ方向上手側の超音波素子から超音波を送出した場合における各点での超音波のタイミングチャート。
図1中の流れ方向下手側の超音波素子から超音波を送出した場合における各点での超音波のタイミングチャートを示す。
本実施例1に係る超音波流量計における流量計算処理を示すフローチャート。
本発明の実施例3に係る超音波流量計の基本構成を示す説明図。
符号の説明
1 超音波流量計
2a,2b 超音波素子
3 流路
4 切替手段
5 送信手段
6 受信手段
7 増幅手段
8 マスク時間設定手段
9 ゼロクロスポイント検出手段
10 時間計測手段
11 演算手段
12 記憶手段