JP2006291370A - 抄網構造体、抄紙用円筒シリンダ、抄網構造体を備えた抄紙機及び脂取り紙の製造方法 - Google Patents

抄網構造体、抄紙用円筒シリンダ、抄網構造体を備えた抄紙機及び脂取り紙の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】手漉きによる風合い等を発揮させるとともに肌触りや皮脂の取れ性に優れた脂取り紙を製造するための抄網構造体、抄紙用円筒シリンダ、抄網構造体を備えた抄紙機及び脂取り紙の製造方法を提供する。
【解決手段】抄紙用シリンダの周面上に設けられる抄網の構造体であって、同構造体は第1の抄網として5〜40メッシュからなる最上網15と、前記第1の抄網の下に重ねて配置される第2の抄網として60〜100メッシュからなる上網14とを有する。この抄網の構造体を、5〜40メッシュの下網13が張られたシリンダモールドの上に張り重ねて抄紙用円筒シリンダとし、この円筒シリンダを備えた抄紙機を用いて脂取り紙用の原紙を抄紙する。抄紙後に原紙を乾燥させ、更に箔打ち或いはスーパーキャレンダー加工等による高密度化処理を行った後に裁断、製本して製品としての脂取り紙を得る。
【選択図】 図2

Description

本発明は、抄紙機の抄紙用シリンダモールド上に配置される抄網構造体、抄紙用円筒シリンダ、抄網構造体を備えた抄紙機及び脂取り紙の製造方法に関する。
従来より顔の皮脂等の除去に化粧用脂取り紙が用いられている。この化粧用脂取り紙は古くは手漉きにより製造された箔打ち紙の再利用として用いられてきた。しかし最近ではコウゾ、三椏、麻やウール、シルク等の天然繊維に無機填料、例えば、クレー、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン等を混合させ、特殊な定着剤を投入した原料を円網抄紙機等の抄紙機によって抄造し、スーパーカレンダー加工により紙密度を高めるいわゆる機械的手法により量産している。
一方、前記の機械的手法により大量生産された化粧用脂取り紙では従来の手漉きにより抄造された化粧用脂取り紙の風合いを出すことが難しいため、手漉きによる風合い等を発揮させるためあえて抄紙時に紙の表面に凹凸が形成されるように目の粗い抄網を使用した抄紙機を用いて抄紙を行っている。このような機械的手法による脂取り紙の製造方法については例えば以下の特許文献1及び2がある。
特開平10−1900号公報 特開2001−258641号公報
ところが、特許文献1、2に示される化粧用脂取り紙では、紙表面に凹凸を形成するために使用する抄網はそのサイズが5〜40メッシュで、かつ線径が0.1〜1.0mmという比較的目の粗いものを使用して抄紙を行っている。このため、同抄網を用いて製造した紙には凹凸が形成されるものの、皮脂を吸着する無機填料や長さの短い繊維は5〜40メッシュで、かつ線径が0.1〜1.0mmというサイズの抄網を通り抜けてしまうため脂取り紙の肌触り等の風合い、また脂取り紙に要求される皮脂の取れ性や使用後の脂取り紙の透明感等について劣る場合がある。
上記事情に鑑みて本発明は、手漉きによる風合い等を発揮させるとともに肌触りや皮脂の取れ性等に優れた脂取り紙を製造する抄網構造体、円筒シリンダ、抄網構造体を備えた抄紙機及び脂取り紙の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を解決するために請求項1に記載の発明では、抄紙用シリンダの周面上に設けられる抄網の構造体であって、第1の抄網として5〜40メッシュからなる金網と、前記第1の抄網の下に重ねて配置される第2の抄網として60〜100メッシュからなる金網とを有する抄紙用シリンダにおける抄網構造体を要旨とする。
また、請求項2に記載の発明は、第2の抄網の下に下網として5〜40メッシュからなる金網を有していることを要旨とする。
請求項3に記載の発明では、円筒シリンダのシリンダモールド周面上に、第1の抄網として5〜40メッシュからなる金網と、前記第1の抄網の下に重ねて配置される第2の抄網として60〜100メッシュからなる金網とを有する抄紙用円筒シリンダを要旨とする。
請求項4に記載の発明では、複数の抄紙用シリンダを備えた抄紙機であって、前記抄紙用シリンダの少なくとも1つは請求項1又は請求項2に記載の抄網構造体を有する抄紙機であることを要旨とする。
請求項5に記載の発明では、植物繊維を主原料とした紙料を、第1の抄網として5〜40メッシュからなる金網と、前記第1の抄網の下に重ねて配置される第2の抄網として60〜100メッシュからなる金網とを有する抄紙用シリンダにて抄紙し、形成された湿紙を乾燥した後に高密度化処理により紙密度を0.7〜1.2g/cmとする脂取り紙の製造方法を要旨とする。
本発明の抄網構造体、同抄網構造体を備えた抄紙機によれば、手漉きによる風合い等を発揮させるとともに肌触りや皮脂の取れ性に優れた脂取り紙を製造することができる。
以下、本発明を具体化した抄紙機及び抄紙方法の一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。図1は抄紙機1の概要側面図である。この抄紙機1は円網を備えたいわゆる円網抄紙機であり基本構成において従来のものと変わりはない。なお、図1の抄紙機1において右を下流、また左を上流という。この抄紙機1は大きく分けて上流側に配置されウェットフェルト2が走行するウェットパートWと、下流側に配置され湿紙Pを乾燥させる工程であるドライパートDとから構成される。
ウェットパートWは、ウェットフェルト2、抄槽3、円筒シリンダ4、クーチロール5、プレスロール6、及び複数のガイドローラから構成されている。抄槽3の内部には1台の円筒シリンダ4が回転可能に配置されている。なお、抄紙機1の最も上流側にはヘッドボックス7が配置されており、このヘッドボックス7から抄槽3に対して紙料供給用の配管が延びている(図示しない)。円筒シリンダ4の上部には小径のクーチロール5が配されている。このクーチロール5はウェットフェルト2を円筒シリンダ4の上面に圧接させるものである。
ウェットフェルト2はエンドレス状に形成された毛布であり、円筒シリンダ4の表面に形成された湿紙Pをピックアップして湿紙PをドライパートDへと搬送するものである。なお、ウェットフェルト2は図示しない駆動機構により駆動され、円筒シリンダ4はウェットフェルト2の駆動に伴って従動する。ウェットフェルト2の配置ルートは図1に示されるように円筒シリンダ4とクーチロール5との間を通った後、複数のガイドローラを経てプレスロール6へと案内され更に複数のガイドローラを経由して円筒シリンダ4へと戻るもので、図1中時計回りの方向に回転する。
ウェットフェルト2の搬送経路上にはサクションボックス8が配置され湿紙Pの脱水を促進している。プレスロール6は一対のローラから構成されローラ間の押圧(ニップ圧)により湿紙Pを脱水し、湿紙Pをウェットフェルト2からドライフェルト9へと移行するものである。なお、円筒シリンダ4からウェットフェルト2への湿紙Pの移行及びウェットフェルト2からドライフェルト9への湿紙Pの移行は、いずれも湿紙Pが有する表面密度が高いものへ移る性質を利用しているため、ドライフェルト9はウェットフェルト2より表面密度の高いものが一般的に使用される。
ドライパートDは、プレスロール6、エンドレス状のドライフェルト9、タッチロール10、ヤンキードライヤー11、及び複数のガイドローラから構成されており、かかる構成は従来の構成と変わるものではない。
抄槽3はバットとも呼ばれ上方が開放された箱状をなし、内部には紙の原料となる繊維材料及び無機填料等からなる紙料が水に分散された懸濁液(紙料液)として貯められている。この紙料液中をシリンダが回転することによって抄紙が行なわれる。なお、抄槽3の上流側にはヘッドボックス7からの供給管の吐出口が形成されており、また円筒シリンダ4にはその内部に流入した紙料液(正確には紙料液を抄網によって濾した白水であり、繊維はほとんど含まれない。)を吸引する吸引機構が設けられている(吐出口及び吸引機構については図示しない)。そして、吸引機構によって吸引した紙料液をヘッドボックス7に戻すとともに、再度紙料等を添加して所定濃度の紙料液として調整し、供給管から抄槽3に同紙料液を供給する。この循環により槽内に一定方向の紙料液の流れを付与するとともに紙料液の濃度の均一化を図っている。
円筒シリンダ4は基本骨格をなすシリンダモールド12の上に金網が張られた抄網構造体を有している。この抄網構造体は線径及びメッシュ数の異なる複数枚の金網が重ねて張られた金網層であり、内側から下網13、第1の抄網としての上網14、そして最も外側の第2の抄網としての最上網15の三層金網層となっている(図2(a)、図2(b))。
下網13は金属ワイヤを平織りして形成された金網であり、シリンダの円筒部分の周面全体を覆うように張られてその両端部同士は銀鑞に連結されてエンドレス状になっている。下網13として使用される金網のメッシュ数(1インチ当たりの金網を構成するワイヤの本数)は5〜40メッシュの範囲で選択可能であり、この場合のワイヤの線径は0.1〜1.0mmであればよいが、下網として強度確保の点から好ましい範囲はメッシュ数が8〜16メッシュ、ワイヤの線径は0.4〜0.7mmの金網である。
この下網13は、上網14保護のために用いられる金網であって下網13それ自体は抄網としての機能を有していない。また、下網13は上網14とシリンダモールド12との間に間隙を形成することにより抄紙時に抄網がシリンダモールド12に当接する箇所において外から内への紙料液の流れが阻害されないよう抄網面における紙料液の流れを均一化するという機能も発揮する。
下網13の上には重ねて第2の抄網としての上網14が張られている。この上網14が抄網として機能するものであり、円筒シリンダ4の外側から内側へと紙料液が通過する際に紙料液のうちの液体(水)はこの上網14の目を通り抜けてシリンダの内側へと流入する。しかし、繊維である紙料のほとんど及び無機填料の多くはこの上網14の目を通過することなく濾されて上網14の表面に留まってしまい、結果として上網14に湿紙Pが形成されることとなる。
上網14も下網13同様に金属製ワイヤを平織りして形成された金網が使用され、下網13全体を覆うように張られた上で両端部は銀鑞継ぎされてエンドレス状とされている。このように抄網が側面から見て円状になることからこのような形態の抄紙機1は円網抄紙機と呼ばれている。
繊維及び無機填料を上網14表面に多く留まらせる(付着させる)ために、上網14として使用される金網は下網13よりも目が細かくかつ線径が細いものを使用する。具体的には、上網14として用いられる金網はそのメッシュ数の範囲が60〜100メッシュであり、この範囲のメッシュ数に対応する金網の線径は0.1〜0.3mmである。なお、脂取り紙の肌触りの良好性を確保する点において好ましい範囲はメッシュ数が80〜90メッシュ、ワイヤの線径は0.12〜0.2mmの金網である。
本実施形態では、円筒シリンダ4には下網13及び上網14の外側(上側)に更に一層の金網が張られており、金網は合計三層となっている(図2(a)、図2(b))。
この最外層の金網である第1の抄網としての最上網15は第2の抄網としての上網14よりも目の粗いものが用いられる。具体的には抄造される紙の原料、坪量等に合わせて金網のメッシュ数や線径が選択されるが、採りうるメッシュ数は5〜40メッシュ、線径は0.1〜1.0mmである。また、好ましい範囲はメッシュ数が16〜20メッシュ、ワイヤの線径は0.1〜0.5mmの金網である。なお、金網の材質は限定されずステンレス、鉄、銅等でよい。
このように抄網として最上網15とこれよりも目の細かい上網14とを備えることにより、抄紙時に比較的長い繊維は最上網15の上に留まる一方、無機填料や繊維長の短い繊維の多くは上網14の上に留まることとなる。これにより図4に断面図が模式的に示されているように抄紙段階では最上網15のメッシュ数と線径に応じた凹部が形成された湿紙Pを得ることができる。これは、上網14に吸着される紙料をその厚み方向において部分的に阻害することにもなる。
金網が張られるシリンダモールド12は、シリンダ回転軸方向に所定間隔をもって複数配置されたシリンダフレーム16と、シリンダフレーム16間に多数配置された円環状の平板リング17と、シリンダ回転軸と平行な方向に沿って平板リング17の内周面に設けられた多数本の円柱状の平行ロッド18を有している(図3)。各平行ロッド18はシリンダフレーム16の外周の円環部分を貫通して固定配置され各シリンダフレーム16同士を連結するとともに、各平行ロッド18は各平板リング17の内周側に当接してその接触部分は溶接等によって固定されて平板リング17同士も連結している。
したがって、これら各シリンダフレーム16と各平板リング17とは平行ロッド18を介して相互に固定されることにより円筒シリンダ4全体が強固に保持される。抄槽3内において図示しないブラケットによりシャフト19が支持されて円筒シリンダ4が所定位置に保持され、ウェットフェルト2の駆動に伴って円筒シリンダ4は紙料液が貯まっている抄槽3内を回転する。なお、このシリンダモールド12の形状それ自体は従来のものと何ら変わるものではない。
次に上記の実施形態における抄網構造体を備えた抄紙機1を用いた抄造方法について脂取り紙を例として説明する。
脂取り紙の原料として用いるのは、天然繊維、すなわちマニラ麻、亜麻、黄麻、雁皮、楮、三椏からなる靱皮繊維や木材パルプ等の植物繊維、または羊毛、シルク、カシミア等の動物繊維を主成分(50重量%以上)とすることが好ましい。50重量%を下回ると脂取り紙として使用時の脂の取れ方の点で好ましくない。天然繊維を原料として使用するにはビーター等の叩解機にて所定の叩解度に調成し、更に、吸脂性を高めるためにクレー、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機質填料を添加する。また必要に応じて定着剤や抗菌剤を含有させることもできる。なお、本実施形態における一連の製造工程において「抄紙」とは円筒シリンダ4によって抄かれた紙(もの)、及び抄紙機によって紙を抄くこと(方法)の双方をさす場合がある。
抄紙機1の抄槽3には所定濃度に調整された紙料液が規定量投入され槽内を循環している。また、クーチロール5は下位置とされウェットフェルト2を円筒シリンダ4に圧接させている。この状態でウェットフェルト2の駆動搬送が開始され、併せてシリンダ内部から吸引を行う吸引機構も駆動が開始され、紙料液が円筒シリンダ4の外側から内側へとそれぞれ積極的に流入する。ウェットフェルト2の駆動開始に伴い図4に示すように円筒シリンダ4は図1中反時計回り方向に回転する。この状態で吸引機構が作動するとシリンダ外側にある紙料液がシリンダ内側に流れ込む。
円筒シリンダ4には上網14の更に外側に最上網15が重ねて配置されているため、紙料液中の繊維のうち繊維長の長い繊維はまず最上網15上に付着する。一方この最上網15をすり抜けてしまう程度に繊維長が短い繊維や無機填料はより目の細かい上網14に付着する。このため、円筒シリンダ4上に形成される湿紙Pは、外面側はフラットに形成される一方、内面側(金網に接している側)は最上網15により厚み方向における紙料が部分的に阻害されて凹部となり、上網14の上に均等に堆積された部分が凸部となることにより断面が均等な凹凸として形成されることとなる(図4)。なお、より細かな繊維や無機填料の一部は紙料液とともに上網14をすり抜けてシリンダ内部へと流入する。
円筒シリンダ4の最上網15上に形成された湿紙Pはシリンダの回転に伴って紙料液中から引き上げられ、円筒シリンダ4の頂部でウェットフェルト2との間に挟まれて脱水及びウェットフェルト2への移行が行われる。
この状態を図4に示す。なお、同図では説明上下網13、上網14、最上網15のメッシュ数、線径、及び抄造された湿紙Pの表面形状も実際のものよりも誇張表現している。形成された湿紙Pは、クーチロール5の周面に沿って搬送方向及び天地が反転され、ウェットフェルト2上に載置されたまま下流側へと搬送される。上網14及び最上網15によって形成された凹凸は搬送中でも残存しており、湿紙Pを構成する個々の繊維同士は既に互いに絡まっているため、その凹凸の程度は軽減されるものの凸部が崩れて凹部に移行するなどによって完全な平坦になることはない。
湿紙Pはウェットフェルト2上に載置されてプレスロール6の方へと搬送される。プレスロール6では湿紙Pの上側からドライフェルト9が重ねられ、下からウェットフェルト2に、また上からドライフェルト9に覆われた状態となり、更にそれらの上下からプレスロール6で加圧されて脱水が行われる。
その後、湿紙Pはウェットフェルト2からドライフェルト9へと移行し、ドライフェルト9に搬送されてタッチロール10にてヤンキードライヤー11に圧接されながら乾燥させられ巻き取りロールに巻き取られる。更に、脂取り紙としては紙密度が0.7〜1.2g/cmの範囲となるように箔打ち、スーパーカレンダー、高圧プレス等或いはこれらの組み合わせによる高密度化処理を施し、更に所定の大きさ(9cm四方)に裁断、製本されて製品としての脂取り紙となる。以下、実施例及び比較例により本発明を説明する。
実施例
「原料」
マニラ麻パルプ(ビーターにてSR30°に叩解) 100重量部
マイクロタルク 20重量部
ファイレックスRC−104(明成化学工業株式会社) 0.5重量部
ファイレックスM(明成化学工業株式会社) 0.5重量部
「抄紙機の構成」
上記実施形態にて説明した抄紙機1を使用し、円筒シリンダには以下の金網を張った。
*下網として12メッシュで線径0.56mmの金網
*上網として90メッシュで線径0.132mmの金網
*最上網として16メッシュで線径0.20mmの金網
実施例では上記のように三層の金網を備えた円筒シリンダで一層の紙を抄紙した。また、抄造する紙の坪量は20g/mとした。そして、抄造した湿紙Pをヤンキードライヤーにて乾燥処理した原紙を21センチメートル四方に切断した上、原紙とハトロン紙とを交互に重ね合わせて一束とし、槌の重量16kgのベルトハンマー機で束面から打撃速度毎分約500回、箔打ち時間105秒の条件で箔打ち処理を行い、紙密度0.9g/cmとした。その後に所定の大きさ(9cm四方)に裁断、製本して製品としての脂取り紙を得た。この方法で製造した脂取り紙を実施例品という。
比較例
一方、比較例として実施形態にて説明した抄紙機1を使用し、実施例と同じ原料を用いた。実施例とは抄紙機1の円筒シリンダに以下の金網を張った点で相違する。
*下網として12メッシュで線径0.56mmの金網
*上網として16メッシュで線径0.20mmの金網
比較例では、上記のように二層の金網を備えた円筒シリンダを用いた以外は実施例と同じ原料及び同じ抄紙機を用い、また湿紙の形成後から製品としての脂取り紙を得る工程も実施例と同じ条件を用いた。この方法で製造した脂取り紙を比較例品という。
上記により得た実施例品及び比較例品のそれぞれの脂取り紙について、モニターとして10代から50代までの女性22人に対して所定の項目についての使用テストを行った。以下に試験項目、モニターの属性、テスト時の脂取り紙使用方法を示す。
*試験項目
1.「肌触り」・・・脂取り紙を顔に当てたときの触感を「(触感が)良い」「普通」「悪い」の3段階で評価した。
2.「使用後のファンデーションののり」・・・脂取り紙で顔を拭った後にファンデーションがうまくのるかどうかを「(のりが)良い」「普通」「悪い」の3段階で評価した。
3.「使用後の紙の透明感」・・・脂取り紙で顔を拭った後の脂取り紙の透明感(視覚的に皮脂がとれたことの確認)を「(透明感が)ある」「ふつう」「ない」の3段階で評価した。なお、透明感があるとは脂取り紙が皮脂を吸収し視覚的に皮脂がとれたことを意味する。
4.「皮脂の裏抜け」・・・脂取り紙で顔を拭った後に脂取り紙の裏面へ皮脂が移行したことを視覚的に確認できるかどうかを「(裏抜けが)ない」「少しある」「ある」の3段階で評価した。
*モニター(女性22人)の属性
1.年齢(10代=5人、20代=6人、30代=4人、40代=4人、50代=3人)
2.肌質(乾燥肌=7人、ふつう肌=5人、脂肌=10人)
3.一日の脂取り紙使用量(0=9人、1〜2枚=5人、3〜4枚=6人、5枚以上=2人)
*テスト時の脂取り紙の使用方法
モニターそれぞれに実施例品と比較例品とを一枚ずつ渡し、まず実施例品で右顔或いは左顔のいずれか一方を拭い、続いて比較例品で実施例品では拭っていない方の顔(例えば実施例品で左顔を拭った場合には比較例品では右顔)を拭ってもらった。拭い方は通常の脂取り紙の使用方法と同じであり、具体的には拭う方の手(左顔なら左手)に紙を持ち、特に顔のうち頬の部分を中心に紙を顔に押しつけながら移動させることにより顔の皮脂を脂取り紙に吸着させた。
実施例品及び比較例品についてそれぞれ顔を拭ったあと、上記各項目について3段階の評価を行い、各評価に得点(表1に示す)を乗じて合計点を算出した。以下に表を示す。
Figure 2006291370
上記表に示したようにテスト項目のすべてにおいて実施例の抄網構造体を用いて抄造した脂取り紙の方が比較例の抄網構造体を用いて抄造した脂取り紙よりも高評価であった。
上記実施形態の抄紙構造体を備えた抄紙機によれば、以下のような効果を得ることができる。
○第1の抄網としての最上網の下により目の細かな第2の抄網としての上網を備えている。したがって、抄紙時に最上網には付着しないような比較的目の細かな繊維が上網には付着されるため最上網の目をすり抜けるような細かな無機填料も上網或いは上網の上に付着堆積した細かな繊維を含む湿紙に阻害され、多くの無機填料が湿紙に含有されることとなる。したがって、この抄網構造体を備えた抄紙機にて抄造した脂取り紙は上記実施例に示したように手漉きの風合いを有したままで更に肌触りがよく、皮脂の取れ性がよいものとなる。
○同様に上記実施形態の抄網構造体を備えた抄紙機にて抄造した脂取り紙は無機填料を多く含有し、この無機填料は皮脂を吸着する機能を有する。このため脂取り紙に吸着された皮脂が脂取り紙内部で毛細管現象によって拡散することを抑制することができる。したがって、皮脂の裏抜け(皮脂の脂取り紙裏面への移行)が少なくなる。
○同様に脂取り紙内での皮脂の拡散を抑制することができるため、一枚の脂取り紙を使用することができる回数が増え、脂取り紙の使用枚数を低減することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○上記実施形態では、一台の円筒シリンダを備えた抄紙機を用いて一層の紙を抄造したが、二台以上の円筒シリンダを直列的に配置して二層以上の複層の脂取り紙を抄造してもよい。
○上記実施形態では脂取り紙を抄造したが、脂取り紙以外の紙の抄造にも適用することができる。
本実施形態の抄紙機の概要図。 金網層の模式図、(a)は三層金網構造の断面模式図、(b)は部分斜視図。 シリンダモールドの斜視図。 円筒シリンダにおける抄紙の概念図。
符号の説明
1・・抄紙機、3・・抄槽、4・・円筒シリンダ、12・・シリンダモールド、13・・下網、14・・第2の抄網としての上網、15・・第1の抄網としての最上網、P・・湿紙

Claims (5)

  1. 抄紙用シリンダの周面上に設けられる抄網の構造体であって、第1の抄網として5〜40メッシュからなる金網と、前記第1の抄網の下に重ねて配置される第2の抄網として60〜100メッシュからなる金網とを有する抄紙用シリンダにおける抄網構造体。
  2. 前記第2の抄網の下に下網として5〜40メッシュからなる金網を有している請求項1に記載の抄紙用シリンダにおける抄網構造体。
  3. 円筒シリンダのシリンダモールド周面上に、第1の抄網として5〜40メッシュからなる金網と、前記第1の抄網の下に重ねて配置される第2の抄網として60〜100メッシュからなる金網とを有する抄紙用円筒シリンダ。
  4. 複数の抄紙用シリンダを備えた抄紙機であって、前記抄紙用シリンダの少なくとも1つは請求項1又は請求項2に記載の抄網構造体を有する抄紙機。
  5. 植物繊維を主原料とした紙料を、第1の抄網として5〜40メッシュからなる金網と、前記第1の抄網の下に重ねて配置される第2の抄網として60〜100メッシュからなる金網とを有する抄紙用シリンダにて抄紙し、形成された湿紙を乾燥した後に高密度化処理により紙密度を0.7〜1.2g/cmとする脂取り紙の製造方法。
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