JP3945585B2 - 円網抄紙機の円筒シリンダ、脂取り紙の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、円網抄紙機の円筒シリンダ、脂取り紙の製造方法に関する。
従来より顔の皮脂等の除去に化粧用脂取り紙が用いられている。この化粧用脂取り紙は古くは手漉きにより製造された箔打ち紙の再利用として用いられてきた。しかし最近ではコウゾ、三椏、麻やウール、シルク等の天然繊維に無機填料、例えば、クレー、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン等を混合させ、特殊な定着剤を投入した原料を円網抄紙機等の抄紙機によって抄造し、スーパーカレンダー加工により紙密度を高めるいわゆる機械的手法により量産している。機械的手法による脂取り紙の製造方法については例えば以下の特許文献1〜3がある。
特開平10−1900号公報 特開2000−144600号公報 特開2001−258641号公報
これら特許文献1〜3に示された機械的手法による脂取り紙の製造には抄紙機として円網抄紙機が使用されるのが一般的である。この円網抄紙機では抄槽内に円筒シリンダを回転可能に支持させ、抄槽内の紙料液を一定方向に流しながら紙料液を円筒シリンダの抄網で濾すことにより紙料液中の繊維等を抄網上に蓄積させて湿紙を形成させていく抄紙方法をとる。この円筒シリンダは表層に配置された抄網と基本骨格となるシリンダモールドとから構成されている。
図11及び図12に従来のシリンダモールド50を示す。このシリンダモールド50は、シリンダ回転軸の軸方向に所定間隔をもって複数配置されたシリンダフレーム51と、シリンダフレーム51間に多数配置された円状の平板リング52と、シリンダの径方向と直交する方向(回転軸と平行な方向)に沿って平板リング52の内周面に当接して設けられた多数本の円柱状の平行ロッド53を有している。各平行ロッド53はシリンダフレーム51の外周の円環部分を貫通して固定配置され各シリンダフレーム51同士を連結するとともに、各平行ロッド53は各平板リング52の内周側に当接してその接触部分は溶接等によって固定されて平板リング52同士も連結している。したがって、これら各シリンダフレーム51と各平板リング52とは平行ロッド53を介して相互に固定されることにより円筒シリンダ全体が強固に保持される。このため、平行ロッド53は、円筒シリンダの全円周に亘って所定間隔(例えば数十mm間隔)で配置されている。なお、図示は省略しているがシリンダモールド50の表面には本来抄網が張られており、抄紙時にはこの抄網にて湿紙を形成する。
湿紙形成最初期には、抄網上に繊維はほとんど蓄積されていないことから紙料液が抄網を通り抜ける際の流入抵抗となるのはシリンダモールド50を構成する抄網(図示しない)、シリンダフレーム51、平板リング52、平行ロッド53である。そして、これらは湿紙形成最初期の段階では流入抵抗として無視することができ、流入時の紙料液の流れもほとんど阻害されることなく均一な流れとなって繊維の配向性(各繊維の向き)も一定のものとなる。
一方、湿紙形成後期の段階では既に抄網上にある程度の湿紙が形成されていることからこの形成された湿紙それ自体も流入抵抗の要因として加わることとなる。特に、目の細かな抄網を使用している場合には繊維長が比較的短い繊維も抄網上にとどまって湿紙を構成することとなり流入抵抗が大きくなる。また、抄造する紙の坪量も流入抵抗に影響する。少ない坪量(例えば数g)と大きな坪量(例えば数十g)とでは後者の方が抄網上に形成された湿紙の流入抵抗が大きくなる。
したがって、湿紙形成後期には前記の構成に加えて抄網上に形成された湿紙が流入抵抗として相乗的に作用することとなり、この流入抵抗は流入速度の低下を招くとともに抄網を通り抜ける紙料液の流れが乱されて、結果として形成される湿紙の繊維配向性が湿紙形成最初期に比して相対的に悪くなる。
よって、抄網上に形成された湿紙のうち抄網側の湿紙は繊維の配向性が一定であるのに対して、反対側に形成される湿紙では繊維の配向性に乱れが生じ、結果として紙の表裏における繊維の配向性に差が生じることとなる。そして、このような紙の表裏に生じる繊維配向性の差は表面及び裏面の寸法変化率の変化に結びつく。
紙の表裏における繊維の配向性に差が生じた場合、それが紙としての実用上問題とならない場合もあるが、その差が顕著な場合には表面及び裏面の寸法変化率も大きく異なることとなり繊維の寸法変化に伴って立体的な変形(カールやゆがみ、以下「カール」という。)が生じる。すなわち、紙の一方の面では繊維の配向性(繊維の向き)が一定であるため、その面側は一定方向に顕著に伸縮し、直交方向への伸縮はほとんど行われない。一方、繊維の配向性が一定ではない面側では繊維の向きがランダムであることからその面側は伸縮方向もランダムとなる。この結果、紙の一方の面のみが特定の方向に伸張或いは収縮することとなって平坦であった紙に立体的な変形であるカールが生じることとなる。
ところで、前記した機械的手法によって製造される脂取り紙の主原料である天然繊維は吸放湿性を有し、湿度の変化に応じて繊維の寸法もわずかに変化する。
特に、脂取り紙の製品化に当たっては約10センチメートル四方の正方形に裁断し、更にそれらを十枚程度重ねて一束とした冊子状に製本し、更にビニル袋に入れられて密封し完成品(商品)となる。
そして、完成品を入手した使用者がこのパック状の脂取り紙を使用する際には、まずビニル袋から冊子状の脂取り紙全体を取り出し、更に冊子内の束の中から必要な枚数を切り取って使用される。ビニル袋にて密封されている状態の脂取り紙は袋内の湿度もほぼ一定に保たれているが、ビニル袋から取り出されることによって袋内とは異なる湿度環境に置かれることとなる。
ビニル袋内と外部との湿度環境の差が少ないときには脂取り紙に生ずるカールはそれほど顕著に生ずるものではないが、湿度の差が大きなときには目視によっても十分把握することができる程度に顕著なカールが生ずることとなり、かかる脂取り紙にカールが生じた場合には製品としての脂取り紙の品質低下という問題が生じる。
そこで、本発明は、上記した問題点に鑑みて、カールが生じにくい円網抄紙機の円筒シリンダ、脂取り紙の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明では、円網抄紙機の円筒シリンダであって、該円筒シリンダはその周方向の全周に亘って前記円筒シリンダの軸方向に沿って配置された整流板を有しており、該整流板はその先端が円筒シリンダの内側を向き、かつ整流板の基端に対して整流板の先端が円筒シリンダの回転方向反対側を向いて傾斜し、整流板の板厚は基端から先端に向かうほど順次薄くなっている円網抄紙機の円筒シリンダを要旨とする。
また、請求項2に記載の発明では、前記円筒シリンダに用いられている抄網は、5〜40メッシュからなる第1の金網と、第1の金網の下側に配置される60〜100メッシュからなる第2の金網からなる抄網である。
請求項3に記載の発明では、天然繊維を主成分とする原料を、円網抄紙機の円筒シリンダにて湿紙を形成し、同湿紙を乾燥処理して脂取り紙用原紙とし、さらに同脂取り紙用原紙をスーパーキャレンダー又は箔打ちにより紙密度を0.7〜1.2g/cm と高密度化する工程を備えた脂取り紙の製造方法であって、前記円網抄紙機が備える円筒シリンダとして、その周方向の全周に亘って前記円筒シリンダの軸方向に沿って配置された整流板を有しており、該整流板はその先端が円筒シリンダの内側を向き、かつ整流板の基端に対して整流板の先端が円筒シリンダの回転方向反対側を向いて傾斜し、整流板の板厚は基端から先端に向かうほど順次薄くなっている円筒シリンダを使用することを特徴とする脂取り紙の製造方法を要旨とする。
請求項4に記載の発明では、天然繊維を主成分とする原料を、円筒シリンダを二基備えた円網抄紙機の各円筒シリンダにて形成した湿紙を重ね合わせて二層構造の湿紙とし、同二層構成の湿紙を乾燥処理して脂取り紙用原紙とし、さらに同脂取り紙用原紙をスーパーキャレンダー又は箔打ちにより紙密度を0.7〜1.2g/cm と高密度化する工程を備えた脂取り紙の製造方法であって、前記円網抄紙機が備える各円筒シリンダとして、その周方向の全周に亘って前記円筒シリンダの軸方向に沿って配置された整流板を有しており、該整流板はその先端が円筒シリンダの内側を向き、かつ整流板の基端に対して整流板の先端が円筒シリンダの回転方向反対側を向いて傾斜し、整流板の板厚は基端から先端に向かうほど順次薄くなっている円筒シリンダを使用することを特徴とする脂取り紙の製造方法を要旨とする。
請求項5に記載の発明では、請求項3又は4に記載の脂取り紙の製造方法にて使用される円筒シリンダは、5〜40メッシュからなる第1の金網と、第1の金網の下側に配置される60〜100メッシュからなる第2の金網とからなる抄網を備えていることを特徴とする脂取り紙の製造方法を要旨とする。
本発明によれば、カールが生じにくい脂取り紙を製造することができる。
以下、本発明を具体化した抄紙機及び抄紙方法の一実施形態を図1〜図10にしたがって説明する。図1は抄紙機1の概要側面図である。この抄紙機1は円網を備えたいわゆる円網抄紙機であり基本構成において従来のものと変わりはない。なお、図1の抄紙機1において右を下流、また左を上流という。この抄紙機1は大きく分けて上流側に配置されるウェットパートWと、下流側に配置されるドライパートDとから構成される。
ウェットパートWとは、ウェットフェルト2が走行する範囲を指し、シリンダの表面上に湿紙Pを形成させる工程(抄紙工程)と、形成された湿紙Pをウェットフェルト2上に移行させてこの湿紙Pを脱水しながら搬送し(搬送工程)、プレスロール5で最終段階の脱水を行ってドライパートDへと受け渡す工程(プレス工程)を受け持つ。プレスロール5はウェットパートWとドライパートDとの境界部分であり両パートに属する。
このウェットパートWは、ウェットフェルト2、第1シリンダ3及び第2シリンダ4、第1抄槽6、第2抄槽7、第1クーチロール8、第2クーチロール9、プレスロール5、及び複数のガイドローラから構成されている。
本実施形態において第1抄槽6及び第2抄槽7は連続して直列配置されており、各抄槽の内部にはそれぞれ1台ずつ円筒シリンダが回転可能に配置されている。抄紙機1の下流側(図1中右側)にある第1抄槽6に配置されているシリンダを第1シリンダ3、上流側(図1中左側)の第2抄槽7に配置されているシリンダを第2シリンダ4という。なお、抄紙機1の最も上流側にはヘッドボックス10が配置されており、このヘッドボックス10から第1抄槽6及び第2抄槽7に対して紙料供給用の配管が延びている(図示しない)。
第1シリンダ3及び第2シリンダ4のそれぞれ上部には小径のロールである第1クーチロール8及び第2クーチロール9が配されている。これら第1クーチロール8及び第2クーチロール9は自らの位置を上位置と下位置とを個別に変更することができる構成となっている。例えば第1クーチロール8を下位置にて固定した場合には、ウェットフェルト2を下方に押圧してウェットフェルト2を第1シリンダ3の上面に圧接させることとなる。また、第1クーチロール8を上位置にて固定した場合にはウェットフェルト2の押圧が解除され、ウェットフェルト2は第1シリンダ3から離間して両者間の接触は生じない。これは第2クーチロール9も同様である。なお、クーチロールの表面はゴムに覆われて所定の弾性力を有している。
ウェットフェルト2はエンドレス状に形成された毛布であり、第1シリンダ3及び第2シリンダ4の表面に形成された湿紙Pをウェットフェルト2上へと移行させて、湿紙Pを支持しながらプレスロール5へと搬送し脱水、更にドライフェルト11への移行を行うものである。なお、ウェットパートWにおいては、ウェットフェルト2が図示しない駆動機構により駆動される構成であり、第1シリンダ3及び第2シリンダ4はこのウェットフェルト2の駆動に伴って従動する構成である。したがって、例えば第1クーチロール8を上位置に固定してウェットフェルト2を第1シリンダ3から離間させた場合には第1シリンダ3は回転しない。図1に示した状態は第1クーチロール8及び第2クーチロール9をともに下位置としてウェットフェルト2を第1シリンダ3及び第2シリンダ4に圧接された状態である。
ウェットフェルト2の配置ルートを図1に基づいて説明する。まず、第1シリンダ3及び第2シリンダ4とそれぞれの上部に配置されている第1クーチロール8及び第2クーチロール9との間を通され、第2クーチロール9を軸にしてほぼ180度反転し、搬送面(湿紙Pを載置する側の面)を上にしながら第2抄槽7、第1抄槽6上をほぼ水平に下流側へと導かれる。また、第1抄槽6上を抜けた所で複数のガイドローラを経てプレスロール5へと案内され、更に複数のガイドローラを経由して第1シリンダ3へと戻る経路となる。なお、ウェットフェルト2の移動方向は図1中時計回りの方向である。
ウェットフェルト2の搬送経路上においてプレスロール5の直前にはサクションボックス12が配置され、ウェットフェルト2の下側から吸引を行うことによって湿紙Pの脱水を促進している。プレスロール5は、一対のローラが対向して配置された構成をなし、このローラ間にウェットフェルト2とドライフェルト11とを挿通してウェットフェルト2及びドライフェルト11を押圧させる構造となっている。ローラ間の押圧(ニップ圧)により湿紙Pの脱水を行うとともに、湿紙Pをウェットフェルト2からドライフェルト11へと移行するものである。なお、第1シリンダ3及び第2シリンダ4からウェットフェルト2への湿紙Pの移行及びウェットフェルト2からドライフェルト11への湿紙Pの移行は、いずれも湿紙Pが有する表面密度が高いものへ移る性質を利用しているため、ドライフェルト11はウェットフェルト2より表面密度の高いものが一般的に使用される。
ドライパートDとは、プレスロール5においてウェットパートWから移行された湿紙Pを乾燥させる工程である。ドライパートDは、プレスロール5、エンドレス状のドライフェルト11、タッチロール13、ヤンキードライヤー14、及び複数のガイドローラから構成されており、かかる構成は従来からの抄紙機におけるドライパートの構成と変わるものではない。
第1抄槽6及び第2抄槽7はバットとも呼ばれ、上方が開放された箱状をなしている。その内部には紙の原料となる繊維材料及び填料等からなる紙料が水に分散された懸濁液(紙料液)として貯められている。この紙料液中をシリンダが回転することによって抄紙が行なわれる。なお、第1抄槽6及び第2抄槽7の上流側にはヘッドボックス10からの供給管の吐出口が形成されており、また第1シリンダ3及び第2シリンダ4には各シリンダ内に流入した紙料液(正確には紙料液を抄網によって濾した白水であり、繊維はほとんど含まれない。)を吸引する吸引機構が設けられている(吐出口及び吸引機構については図示しない)。そして、吸引機構によって吸引した紙料液をヘッドボックス10に戻すとともに、再度紙料等を添加して所定濃度の紙料液として調整し、供給管から第1抄槽6及び第2抄槽7に同紙料液を供給する。この循環により槽内に一定方向の紙料液の流れを付与するとともに紙料液の濃度の均一化を図っている。
第1シリンダ3及び第2シリンダ4はその表面に張られている抄網の構成が異なるのみであり他の構成は同じである。したがって、共通する構成については第1シリンダ3についてした構成が第2シリンダ4にも当てはまる。第1シリンダ3は、その基本骨格をなすシリンダモールド20を備えている。シリンダモールド20は、図2に示すように中空の円筒形状であり、その中心軸21にはシャフト22が貫通配置されている。第1抄槽6内において図示しないブラケットによりシャフト22が支持されて第1シリンダ3が所定位置に保持され、ウェットフェルト2の駆動に伴って第1シリンダ3は紙料液が貯まっている第1抄槽6内を回転する。
シリンダモールド20は、中心軸21の軸方向に所定間隔毎に配置された複数のシリンダフレーム23と、同シリンダフレーム23の外周面に当接し、かつ周方向に所定間隔毎に中心軸の軸方向に沿って多数配置された整流板24と、整流板24に当接して配置された多数の平板リング25とを有している(図2,図3)。シリンダフレーム23は、中心軸21から花弁状に延びるステー26を有し外周には円環部分を有するように形成された鋼鉄性の部材であり、シリンダフレーム23は中心軸21の軸方向に所定間隔毎に複数配置されている(図2,図3)。このシリンダフレーム23は強度面からシリンダモールド20の基本骨格となるものであり、整流板24や平板リング25よりも肉厚かつ強固に形成されている。なお、図3に示すようにシリンダフレーム23のうちシリンダ両端部に配置されるものは同部以外に配置されるシリンダフレーム23に比して円環部分が大径に形成されている。
整流板24は、シリンダ両端を除く各シリンダフレーム23の円環部分の外周面に当接して配置されている。この整流板24は従来の平行ロッドに変わるものであり、整流板24はそれぞれがシリンダの中心軸21の軸線に平行に(第1シリンダ3の軸方向に沿って)配置されており、かつ整流板24はシリンダフレーム23の外周面の周方向全体に亘って所定間隔で配置されている。したがって、第1シリンダ3には第1シリンダ3の周方向の全周に亘って、かつ中心軸21の軸方向に沿って多数の整流板24が配置された構造となっている。
各整流板24は第1シリンダ3の全長に亘る長さ、すなわち軸方向の長さとほぼ同じ長さを有する細幅の長尺状の板材であるが、図5にその断面拡大図を示すように各整流板24はシリンダの径方向外側にある辺(図5に示されている各整流板24の下側で基端ともいう。)から同内側にある辺(図5に示されている各整流板24の上側で先端ともいう。)に向かうにつれてその厚みが順次薄くなるようなテーパ状に形成されている。
また、各整流板24は図4及び図5に示すように基端と先端とを結ぶ線がシリンダの半径方向の線(中心軸から半径方向に延びる線)に対して傾斜して配置されているが、その傾斜角度は第1シリンダ3が回転する方向との関連性を有している。図4及び図5に示す第1シリンダ3は図中反時計回りに回転するものであり、整流板24は基端に対してその先端がシリンダの回転方向に対して反対となる方向を向いて傾斜している。
本実施形態の整流板24は、その基端とシリンダフレーム23の中心とを結ぶ線(図5の一点鎖線)に対して約35度の角度(α)をもって傾斜している。前記傾斜角度(α)は20度から70度程度の範囲に設定することが流入抵抗を軽減させ整流効果を発揮するために好ましいが、高速抄紙に用いるシリンダでは前記角度大きく設定することによって整流板24をより寝かせた状態にした方が好ましい。
各整流板24の先端とシリンダフレーム23の円環部分における外周面との当接部分は溶接により固定されているとともに、各整流板24の長手方向両端部分はシリンダの両端に位置する円環部分が大径に形成されたシリンダフレーム23の円環部分側部に当接しており同当接部分にて溶接固定されている。なお、図4、図5に示されているシリンダフレーム23はシリンダモールド20の両端に配置される円環部分が大径のものであるため、整流板24の先端は該両端部に配置されたシリンダフレーム23の円環部分側部に当接する形となって同当接部にて溶接固定されている。
整流板24の基端の外側には多数の平板リング25がその内周面を当接して配置されている。本実施形態の第1シリンダ3においてはこの平板リング25の外周面上に金網が張られることとなる。平板リング25は中心軸21の軸方向に所定間隔をもって規則正しく配置されている。各平板リング25は厚みが薄い円環状の板に形成され、また外周端部分の断面は丸みを帯びた形状となって、第1シリンダ3の回転時(抄紙時)における紙料液中での回転抵抗を軽減するとともに第1シリンダ3内への紙料液の流入抵抗の軽減を図っている。この整流板24と平板リング25との当接部分は溶接によって固定されている。シリンダの周方向における整流板24の配置間隔は従来から用いられている平行ロッドと同じ程度でよいが、シリンダ全体の強度が低下しない程度にその配置数及び配置間隔を増加或いは減少させるように変更することは可能である。
第1シリンダ3及び第2シリンダ4には、平板リング25の外表面に線径及びメッシュ数の異なる複数枚の金網31、32、31〜33が重ねて張られている金網層を有する。このうち第1シリンダ3に張られている金網31、32は下網31及び抄網としての上網32からなる二層金網である(図6(a))。一方、第2シリンダ4では下網31と、抄網としての上網32の上に更に抄網として一層の金網(最上網)33が重ねて張られた三層金網となっている(図6(b),図6(c))。
第1シリンダ3及び第2シリンダ4においてシリンダの円筒部分の周面全体を覆うように張られている下網31は金属製ワイヤを平織りして形成した金網であり、その金網のメッシュ数(1インチ当たりの金網を構成するワイヤの本数)は8〜16メッシュ、金網に使用されるワイヤの線径は0.4〜0.7mm程度である。
下網31はシリンダの円筒部分全体を覆うべくエンドレス状に張られており、下網31の両端部同士は銀鑞によって継いである。この下網31は上網32保護のために用いられるものであり、下網31それ自体は抄網としての機能を有していない。また、下網31は抄網としての上網32とシリンダモールド20(本実施形態においては平板リング25)との間に間隙を形成することにより抄紙時に抄網がシリンダモールド20に当接する箇所において外から内への紙料液の流れが阻害されないよう抄網面における紙料液の流れを均一化するものである。
下網31の上には重ねて上網32が張りつけられている。この上網32が抄網として機能するものであり、第1シリンダ3、第2シリンダ4の外側から内側へと紙料液が通過する際に液体はこの上網32の目を通り抜けてシリンダの内側へと流入する。しかし、繊維である紙料のほとんどはこの上網32の目を通過することなく濾されて上網32の表面に留まってしまい、結果として上網32に湿紙Pが形成されることとなる。
上網32も下網31同様に金属製ワイヤを平織りして形成された金網が使用され、下網31全体を覆うように張られた上で両端部は銀鑞継ぎされてエンドレスとされている。このように抄網(上網)32が側面から見て円状になることからこのような形態の抄紙機1は円網抄紙機と呼ばれている。
繊維を上網32表面に留まらせる(付着させる)ために、上網32として使用される金網は下網31よりも目が細かくかつ線径が細いものを使用する。具体的には、上網32として用いられる金網はそのメッシュ数の範囲が60〜100メッシュであり、この範囲のメッシュ数に対応する金網の線径は0.1〜0.3mmである。
本実施形態では、第1シリンダ3は下網31と抄網としての上網32の二層の金網が重ねて張られる二層構造の金網を有している(図6(a))。一方、第2シリンダ4では下網31及び抄網となる上網32の外側(上側)に更に一層の金網(「最上網」ともいう。)33が張られており、シリンダモールド20上の金網は合計三層となっている(図6(b)、図6(c))。
この第2シリンダ4に用いられる最上網33は、上網32よりも目の粗いものが使用される。具体的には抄造される紙の原料、坪量等に合わせて金網のメッシュ数が選択されるが、採りうる範囲は5〜40メッシュであり、線形は0.1〜1.0mmである。このように、上網32よりも目の粗い金網33を上網32の上に張ることにより、換言すれば最上網33よりも目の細かい網を上網32として下側に張ることにより、抄紙時に比較的長い繊維は最上網33の上に留まる。また、繊維長の短い繊維は最上網33によっては阻害されないが上網32の上に留まることとなる。これにより図9に断面図で示したように抄紙段階では最上網33のメッシュ数と線径に応じた凹部が湿紙Pに形成されることとなる。これは、上網32に吸着される紙料をその厚み方向において部分的に阻害することにもなる。
上記した抄紙機1は、第1シリンダ3と第2シリンダ4の二基のシリンダを備えた構成であり、第1シリンダ3及び第2シリンダ4をともに回転駆動させることにより二層の紙を製造することができる。
一方、これら第1シリンダ3及び第2シリンダ4は個別に駆動させることも可能である。すなわち、前記したように第1クーチロール8及び第2クーチロール9は個別に上位置と下位置とに位置変更可能な構成である。それぞれを上位置に移動させた場合にはウェットフェルト2は第1シリンダ3或いは第2シリンダ4から離間されることとなる。このため、第1クーチロール8を上位置として第2クーチロール9を下位置とすると第2シリンダ4のみが回転して一層の紙を製造することが可能である。また、反対に第2クーチロール9を上位置として第1クーチロール8を下位置とすると第1シリンダ3のみが回転して同様に一層の紙を製造することが可能である。この場合、同じ一層の紙でも抄網の構造が異なるため得られる紙は異なる性状を有する。
したがって、上記二基のシリンダを備えた抄紙機1においては二基のシリンダの双方を駆動させることにより二層の紙を製造することができ、また、二基のシリンダのうちいずれか一基のシリンダを休止させて他方の一基のシリンダを駆動させることにより一層の紙を製造することができることとなる。よって、上記抄紙機1では合計3パターンの紙を製造することができる。
次に上記の実施形態における抄紙機1を使用した二層の脂取り紙の抄造方法に具体化して説明する。
脂取り紙の原料として用いるのは、天然繊維、すなわちマニラ麻、亜麻、黄麻、雁皮、楮、三椏からなる靱皮繊維や木材パルプ等の植物繊維、または羊毛、シルク、カシミア等の動物繊維を主成分(50重量%以上)とすることが好ましい。50重量%を下回ると脂取り紙として使用時の脂の取れ方の点で好ましくない。
天然繊維を原料として使用するにはビーター等の叩解機にて所定の叩解度に調成し、更に、吸油性を高めるためにクレー、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機質填料を添加する。また、必要に応じて定着剤や抗菌剤を含有させることもできる。なお、本実施形態における一連の製造工程において「抄紙」とは第1シリンダ3、第2シリンダ4によって抄かれた紙(もの)、及び抄紙機によって紙を抄くこと(方法)の双方をさす場合がある。
抄紙機1の第1抄槽6及び第2抄槽7には所定濃度に調整された紙料液が規定量投入され槽内を循環している。また、第1クーチロール8及び第2クーチロール9はいずれも下位置とされウェットフェルト2を第1シリンダ3及び第2シリンダ4に圧接させている。この状態でウェットフェルト2の駆動搬送が開始され、併せてシリンダ内部から吸引を行う吸引機構も駆動が開始され、紙料液が第1シリンダ3及び第2シリンダ4の外側から内側へとそれぞれ積極的に流入する。
ウェットフェルト2の駆動開始に伴い第1シリンダ3と第2シリンダ4とはそれぞれ同期して図1中反時計回り方向に回転する。この状態で吸引機構が作動するとシリンダ外側にある紙料液がシリンダ内側に流れ込むこととなる。
このとき、第1シリンダ3の外側にある紙料液は金網31,32を通って内側に流入するが、紙料液中に存在する繊維のほとんどは第1シリンダ3の上網32を通り抜けられず上網32上に付着することとなり、これにより第1シリンダ3の表面に湿紙P1が形成される。
そして、湿紙形成最初期には、第1抄槽6内から第1シリンダ3内部への紙料液の通り抜けにおいて流入抵抗となるのは第1シリンダ3の構成そのものにすぎないためその流れが乱れることはほとんどなく、初期に抄網上に形成される湿紙P1は繊維の配向性も一定のものとなる。
一方、湿紙形成の後期になると、第1シリンダ3の構成に加えて形成された湿紙P1そのものも前記紙料液の通り抜けにおける流入抵抗の要因となりうる。しかし、第1シリンダ3には整流板24が設けられているため、紙料液の流入時における流入抵抗が軽減されるとともに、第1シリンダ3内側に流入した試料液をその整流板24の板面に沿って一定方向のまま内側へと円滑に案内する。
第1シリンダ3の抄網32上に形成された湿紙P1は、第1シリンダ3の回転に伴って紙料液中から引き上げられ、第1シリンダ3の頂部方向へと搬送される。一方、ウェットフェルト2は第1クーチロール8によって第1シリンダ3の頂部に押し付けられているため、湿紙P1は第1シリンダ3とウェットフェルト2との間に挟まれた形となる。よって、湿紙P1は第1クーチロール8の圧接力によって脱水されるとともに表面張力によって第1シリンダ3上からウェットフェルト2上へと移行する。
この状態を図7に示す。なお、同図では説明上金網31,32のメッシュ数及び線径を現実に使用されるサイズより誇張して大きく表現している。したがって、この金網31,32によって抄紙されている湿紙P1も実際のものよりも全体の厚み等において誇張して表現したものである。湿紙P1は、表面張力によってウェットフェルト2の下面に付着したまま第2抄槽7の方へと搬送されていく。この第2抄槽7でも同様に第2シリンダ4の内側から紙料液の吸引が行われ、回転する第2シリンダ4表面に湿紙P2が蓄積されていく。
第2シリンダ4では、上網32の更に外側に最上網33が重ねて配置されているため、紙料液中の繊維のうち繊維長の長い繊維はまず最上網33上に付着する。一方、この最上網33をすり抜けてしまう程度に繊維長が短い繊維はより目の細かい上網32に付着する。このため、第2シリンダ4上に形成される湿紙P2は、外面側はフラットに形成される一方、内面側(金網に接している側)は最上網33により厚み方向における紙料が部分的に阻害されて凹部となり、上網32の上に均等に堆積された部分が凸部となることにより断面が均等な凹凸として形成されることとなる(図8)。なお、より細かな繊維は紙料液とともに上網32をすり抜ける。
第2シリンダ4においては、抄網は上網32と最上網33の2層金網の構成となっており第1シリンダ3に比して抄網の目がより詰まった状態といえる。したがって、第2シリンダ4は、湿紙P2が形成されていない状態であっても紙料液の流入抵抗は第1シリンダ3に比して大きく、湿紙P2が形成された状態であればその流入抵抗はより大きく、液の流れが乱れやすくなる。
しかし、第2シリンダ4においても第1シリンダ3と同様に整流板24が設けられているため、紙料液の流入時における流入抵抗が軽減されるとともに、第2シリンダ4内側に流入した試料液をその整流板24の板面に沿って一定方向のまま内側へと円滑に案内することとなる。
このため、第2シリンダ4にあっては流入抵抗が大きな三層構造の金網を有しているものの吸引の際には紙料液の流れが乱れることなく一定方向に整流されることとなる。したがって、第2シリンダ4の抄網上に湿紙P2が形成される際にも紙料液の通り抜けにおける乱流化を抑制することができる。
第2シリンダ4の最上網33上に形成された湿紙P2は、第2シリンダ4の回転に伴って紙料液中から引き上げられ、第2シリンダ4の頂部でウェットフェルト2との間に挟まれて脱水、及びウェットフェルト2への移行が行われる。なお、ウェットフェルト2上には既に下流側の第1シリンダにおいて形成された湿紙P1が移行していることから、第2シリンダ4により形成された湿紙P2は湿紙P1上に重ねて移行される。このとき、既にウェットフェルト2上にある湿紙P1に対して同じ向きにて湿紙P2が重ね合わせられることとなり、仮に湿紙の表裏のうち抄網面側を表面とした場合には、湿紙P1の表面と湿紙P2の裏面とが重ね合わされることとなって、いわゆる二層構造の湿紙Pがここで形成されることとなる。
この状態を図8に示す。なお、同図でも説明上金網31〜33のメッシュ数、線径、及び抄造された湿紙P2の表面形状も実際のものよりも誇張表現している。二層構造に形成された湿紙Pは、第2クーチロール9の周面に沿って搬送方向及び天地が反転され、ウェットフェルト2上に載置されたまま下流側へと搬送される。
図9(a)に抄造された段階の湿紙の模式図を示す。これは抄紙後に第2クーチロール9にて簡単に脱水されてウェットフェルト2上に移行された湿紙Pの状態であり、湿紙P中の水分率が高くいわゆるペースト状となっている。なお、当初は図8に示すとおり凹凸のある側を下に向けており、第2クーチロール9を経由した後に天地が逆転し図9(a)に示す状態となる。また、上網32及び最上網33によって形成された凹凸は搬送中でも残存しており、湿紙Pを構成する個々の繊維同士は既に互いに絡まっているため、その凹凸の程度は軽減されるものの凸部が崩れて凹部に移行するなどによって完全な平坦になることはない。
湿紙Pは二層構造(P1,P2)のままウェットフェルト2上に載置されてプレスロールへ5の方へと搬送される。プレスロール5では湿紙Pの上側からドライフェルト11が重ねられ、下からウェットフェルト2に、また上からドライフェルト11に覆われた状態となり、更にそれらの上下からプレスロール5で加圧されて脱水が行われる(図9(b))。
その後、湿紙Pはウェットフェルト2からドライフェルト11へと移行し、ドライフェルト11に搬送されてヤンキードライヤー14にて乾燥処理され巻き取りロール15に巻き取られる。更に脂取り紙として使用する場合には紙密度が0.7〜1.2g/cmの範囲となるように高圧処理が施され、所定の大きさに裁断、正本されて脂取り紙の製品となる。
以下、実施例及び比較例により本発明を説明する。
原料及び抄紙機の構成について
「原料」
マニラ麻パルプ(ビーターにてSR30°に叩解) 100重量部
マイクロタルク 20重量部
ファイレックスRC−104(明成化学工業株式会社) 0.5重量部
ファイレックスM(明成化学工業株式会社) 0.5重量部
「抄紙機の構成」
上記実施形態にて説明した抄紙機1を使用し、第1シリンダ3及び第2シリンダ4については以下の抄網を張った(各実施例及び各比較例共通)。
*第1シリンダ 下網として16メッシュで線径0.5mmの金網
上網として90メッシュで線径0.132mmの金網
*第2シリンダ 下網として16メッシュで線径0.5mmの金網
上網として90メッシュで線径0.132mmの金網
最上網として16メッシュで線径0.2mmの金網
実施例1
実施例1では、上記抄紙機のうち第2シリンダ4を休止させ(第2クーチロール9を上位置としてウェットフェルト2と第2シリンダ4とを非接触とさせた。)、第1シリンダ3のみで一層の紙を抄紙した。紙の坪量は20g/mとした。また、第1シリンダ3には整流板24を備えたシリンダモールドを使用した。
第1シリンダ3にて形成した一層の湿紙をドライヤーにて乾燥処理したのみで箔打或いはスーパーカレンダー加工等の高密度化処理を施していない状態の紙を脂取り紙用原紙(単に「原紙」という。)とした。また、この原紙を21センチメートル四方に切断した上、原紙とハトロン紙とを交互に重ね合わせて一束とし、槌の重量16kgのベルトハンマー機で束面から打撃速度毎分約500回、箔打ち時間105秒の条件で箔打ち処理を行い、箔打ち加工脂取り紙(単に「加工紙」という)を得た。
比較例1
一方、比較例1として、第1シリンダに図11、図12に示す従来の平行ロッドを備えたシリンダモールドを使用し一層の紙を抄紙した。それ以外は実施例1における条件と同じである。また、抄紙後に実施例1と同様の方法で原紙及び加工紙をそれぞれ得た。
実施例2
実施例2では、上記抄紙機のうち第1シリンダ3を休止させ(第1クーチロール8を上位置としてウェットフェルト2と第1シリンダ2とを非接触とさせた。)、第2シリンダ4のみで一層の紙を抄紙した。紙の坪量は20g/mとした。また、第2シリンダ4には整流板24を備えたシリンダモールドを使用した。第2シリンダ4にて形成した一層の湿紙を実施例1と同様の方法で加工し、原紙と加工紙とをそれぞれ得た。
比較例2
一方、比較例2として、第2シリンダ4に図11、12に示す従来の平行ロッドを備えたシリンダモールドを使用し一層の紙を抄紙した。それ以外は実施例2における条件と同じである。また、抄紙後に実施例2と同様に原紙及び加工紙をそれぞれ得た。
実施例3
実施例3では、上記抄紙機の第1シリンダ3及び第2シリンダ4を双方駆動させ二層の紙を抄紙した。紙の坪量は各シリンダで10gとし、合計20g/mとした。また、第1シリンダ3及び第2シリンダ4の双方に整流板24を備えたシリンダモールドを使用した。第1シリンダ3及び第2シリンダ4にて形成した二層の湿紙を実施例1及び実施例2と同様の方法で加工し、原紙と加工紙とをそれぞれ得た。
比較例3
一方、比較例3として、第1シリンダ及び第2シリンダに図11、12に示す従来の平行ロッドを備えたシリンダモールドを使用し二層の紙を抄紙した。それ以外は実施例3における条件と同じである。また、抄紙後に実施例3と同様に原紙及び加工紙をそれぞれ得た。
カール試験方法について
実施例1〜3及び比較例1〜3によって得られた原紙及び加工紙(合計6パターン)について、それぞれ以下の方法にて放湿試験及び吸湿試験を行いその試験後に生じるカールについての評価を行った。
前処理(調湿)
上記方法にて作成した各実施例及び比較例の原紙及び加工紙を100ミリメートル四方の正方形に裁断したサンプル紙片を多数作成し、これらのサンプル紙片を平板上に載置して摂氏23度、湿度50%の環境としたデシケータ中にて4時間放置させて標準状態とした(JIS8111に準拠)。
上記標準状態に調湿した各サンプル紙片に対して放湿試験又は吸湿試験を行った。放湿試験としては、前記調湿後の各サンプル紙片を平板上に載置し、摂氏23度、湿度20%としたデシケータ中で4時間放置した。また、吸湿試験としては、前記調湿後の各サンプル紙片を平板上に載置し、摂氏23度、湿度90%としたデシケータ中で4時間放置した。上記放湿試験或いは吸湿試験の試験時間経過後にデシケータから各サンプル紙片を取り出して平坦な測定台に載置した上でサンプル紙片に生じているカールについて以下の項目を測定した。なお、測定は取り出しによる環境の変化によってカールの状態も変化する可能性があることからデシケータから取り出した15秒以内に行った。また、各パターンのサンプル紙片のうち上側に向かってカールが形成されたもののみ10枚を測定の対象とした。
図10にカールが形成されたサンプル紙片の状態を示す。図10(a)〜(c)中の左側は弱いカールが形成されたサンプル紙片、右側は強いカールが形成されたサンプル紙片の模式図である。図10(a)はサンプル紙片の平面図、図10(b)は図10(a)のサンプル紙片の上辺を紙面上方向から見たカールの状態、図10(c)は同サンプル紙片の下辺を紙面下方向から見たカールの状態である。
*測定項目1 接地面の長さ(mm)
図10(a)に示すようにカール(巻き)の方向と直交する側の辺のうち一方の辺の接地部分の長さ(a)と他方の辺の設置部分の長さ(b)の平均を小数点以下四捨五入として測定した。
*測定項目2 カールの角度(度)
図10(b)、図10(c)に示すように、カールが開始される接地部分とカール部先端とを結ぶ線が接地面に対してなす角度(β)を一の位を四捨五入して測定した。なお、図10のように一枚のサンプル紙片上にカールが2箇所以上形成された場合(図10(b)と図10(c))には、複数の角度(β)のうちより角度が高い方のカールの角度を対象とした。したがって、図10の左側のサンプル紙片では図10(b)に示す角度(β)をカールの角度とした。また、図10(b)及び図10(c)の右側に示されるようにカールの角度が360度或いはこれを超えるものは互いのカール同士が干渉しあい正確なカール角度が不明となるため360度以上とした。
実施例1乃至3及び比較例1乃至3の各サンプル紙片それぞれについて上記測定項目1及び測定項目2を測定し平均値を出した。
上記測定項目1及び2についての測定結果を以下の表1−1〜1−6に示す。
Figure 0003945585
表1−1乃至表1−6からも明らかなように、実施例1〜3の原紙及び加工紙には吸放湿によって紙にカールが生ずるものの、その程度はそれぞれ対応する比較例1〜3の原紙及び加工紙に比して極めて軽微である。また、一基のシリンダによって抄紙する場合ならびに二基のシリンダによって抄紙する場合にかかわらず、シリンダに整流板を設けることにより平行ロッドを設けたシリンダに比して脂取り紙原紙或いは脂取り紙に生ずるカールが軽減されることが明らかとなった。
実施例3及び比較例3は、いずれも個別に形成した二層の湿紙について一方の表面に他方の裏面を貼り合わせるようにして重ね合わせ一層の紙としたものであり、一方の湿紙の表面と他方の湿紙の裏面(湿紙における繊維配向性の良い面と悪い面)とを張り合わせた構造である。このため、比較例3では該貼り合わせ部分にてカールが相殺され、比較例1〜3の中では吸湿及び放湿のいずれの試験結果も良好である。しかし、実施例3に示すように更に整流板を設けた円筒シリンダを使用することによって、同整流板を設けない場合(比較例3)よりも良好な試験結果が得られ、いわゆる二層抄紙においても整流板による効果が認められた。
上記形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1).第1シリンダ3及び第2シリンダ4の外周部分に整流板24を設けた。このため、紙料液がシリンダの外周に張られた抄網を通り抜ける際に整流板24に沿って流れるため、流入時における流れが整流化されて乱れにくくなり、抄網上に形成される湿紙の繊維配向性が一定なものとなる。
(2).形成された湿紙のうち、抄網側に蓄積された側の繊維の配向性とその反対側の繊維の配向性との差が少なくなり、湿度変化により紙に生ずるカールがより軽減される。
(3).整流板24を傾斜して設けている。このため、シリンダが回転しながら吸引を行う際に整流板24の板面が流入抵抗となることがない。
(4).上記実施形態では、第2シリンダ4に抄網として20メッシュの金網33の下側に90メッシュの金網32を重ねて配置している。このため、ムラのない均一な紙を抄造することができる。
(5).脂取り紙を二層構造(P1,P2)として抄造した構成としているため、抄造する際の坪量、原料等を層毎に変更することにより異なる風合いの化粧用脂取り紙を作ることができる。
(6).抄造された脂取り紙には最上網33のメッシュ模様が形成されている。このため、視覚的にもよい風合いを得ることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○上記実施形態においては、第1シリンダ3及び第2シリンダ4を備えた抄紙機1のうち、第2シリンダ4のみを三層の金網31〜33としたが、第2シリンダ4の金網を二層31,32とし第1シリンダ3の金網を三層31〜33としてもよい。また、第1シリンダ3及び第2シリンダ4の金網とも三層31〜33としてもよい。
○上記実施形態では、第1シリンダ3及び第2シリンダ4に整流板24を設けたが、二層にて抄紙する場合には第1シリンダ3の整流板24は省略してもよい。第1シリンダ3は二層金網構造であるため三層金網構造を有する第2シリンダ4に比して流入抵抗が小さいため、第2シリンダ4に比して第1シリンダによって形成される湿紙の表裏に生じる繊維配向性の差は小さい。
○上記実施形態の抄紙機1においては第1シリンダ3及び第2シリンダ4の二台を備えた構成としたが、三台以上の円筒シリンダを備えた抄紙機を用いてもよい。この場合、少なくとも流入抵抗の大きな抄網を備えた円筒シリンダに整流板24を設ける。
○整流板24は板幅方向における板厚が一定のものを使用しても良く、また例えば板幅方向に沿ってリブ状突起を形成することも可能である。これによっても整流効果を発揮することができる。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について追記する。
(a)第1の抄網として5〜40メッシュの金網を用いるとともに、第1の抄網の下に第2の抄網として60〜100メッシュの金網を重ねて張った抄網構造を備えた抄紙機を用いて抄紙する紙の抄造方法。
この(a)に記載の発明によれば、ムラのない紙を抄造することができる。
本実施形態の抄紙機の概要側面図 本実施形態のシリンダモールドの斜視図 本実施形態のシリンダモールドの正面図 図3のA−A線断面図 図4の部分拡大図 抄網の概念図、図6(a)は下網と上網からなる抄網、図6(b)は更に最上網を備えた抄網、図6(c)は同図(b)の斜視図 第1シリンダ3における抄紙の概念図 第2シリンダ4における抄紙の概念図 二層構造の紙の断面図、図9(a)は湿紙の状態、図9(b)は加圧した状態 カールが形成されたサンプル紙片の模式図、図10(a)はサンプル紙片の平面図、図10(b)(c)はそれぞれ(a)のサンプル紙片のカールを示す模式図 従来のシリンダモールドの斜視図 図11のB−B線断面図
符号の説明
1・・抄紙機、3・・円筒シリンダ(第1シリンダ)、4・・円筒シリンダ(第2シリンダ)、6、7・・抄槽、10・・ヘッドボックス、20・・シリンダモールド、23・・シリンダフレーム、24・・整流板、25・・平板リング、31・・下網、32・・上網、33・・最上網、W・・ウェットパート、D・・ドライパート、P・・湿紙。

Claims (5)

  1. 円網抄紙機の円筒シリンダであって、該円筒シリンダはその周方向の全周に亘って前記円筒シリンダの軸方向に沿って配置された整流板を有しており、該整流板はその先端が円筒シリンダの内側を向き、かつ整流板の基端に対して整流板の先端が円筒シリンダの回転方向反対側を向いて傾斜し、整流板の板厚は基端から先端に向かうほど順次薄くなっている円網抄紙機の円筒シリンダ。
  2. 前記円筒シリンダに用いられている抄網は、5〜40メッシュからなる第1の金網と、第1の金網の下側に配置される60〜100メッシュからなる第2の金網からなる抄網である請求項1に記載の円網抄紙機の円筒シリンダ。
  3. 天然繊維を主成分とする原料を、円網抄紙機の円筒シリンダにて湿紙を形成し、同湿紙を乾燥処理して脂取り紙用原紙とし、さらに同脂取り紙用原紙をスーパーキャレンダー又は箔打ちにより紙密度を0.7〜1.2g/cm と高密度化する工程を備えた脂取り紙の製造方法であって、
    前記円網抄紙機が備える円筒シリンダとして、その周方向の全周に亘って前記円筒シリンダの軸方向に沿って配置された整流板を有しており、該整流板はその先端が円筒シリンダの内側を向き、かつ整流板の基端に対して整流板の先端が円筒シリンダの回転方向反対側を向いて傾斜し、整流板の板厚は基端から先端に向かうほど順次薄くなっている円筒シリンダを使用することを特徴とする脂取り紙の製造方法。
  4. 天然繊維を主成分とする原料を、円筒シリンダを二基備えた円網抄紙機の各円筒シリンダにて形成した湿紙を重ね合わせて二層構造の湿紙とし、同二層構成の湿紙を乾燥処理して脂取り紙用原紙とし、さらに同脂取り紙用原紙をスーパーキャレンダー又は箔打ちにより紙密度を0.7〜1.2g/cm と高密度化する工程を備えた脂取り紙の製造方法であって、
    前記円網抄紙機が備える各円筒シリンダとして、その周方向の全周に亘って前記円筒シリンダの軸方向に沿って配置された整流板を有しており、該整流板はその先端が円筒シリンダの内側を向き、かつ整流板の基端に対して整流板の先端が円筒シリンダの回転方向反対側を向いて傾斜し、整流板の板厚は基端から先端に向かうほど順次薄くなっている円筒シリンダを使用することを特徴とする脂取り紙の製造方法。
  5. 請求項3又は4に記載の脂取り紙の製造方法にて使用される円筒シリンダは、5〜40メッシュからなる第1の金網と、第1の金網の下側に配置される60〜100メッシュからなる第2の金網とからなる抄網を備えていることを特徴とする脂取り紙の製造方法。
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