JP2006290805A - モノマーの回収方法および回収装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む樹脂材料から、比較的高純度のアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを高収率で回収する方法および装置を提供する。
【解決手段】 アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む樹脂材料と、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとを混合する工程と;樹脂材料とアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとの混合物をろ過する工程と;ろ液を加熱して、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を熱分解する工程とを有するモノマーの回収方法、これら工程を行う手段を有するモノマーの回収装置。
【選択図】 図1

Description

本発明は、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む樹脂材料からアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを回収する方法および装置に関する。
アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂は、加熱することによって解重合を起こし、モノマーに熱分解されることが知られている。また、アクリル系樹脂またはスチレン系樹脂の廃棄物を熱分解させることで、比較的高い収率で、これら樹脂を構成するモノマーを回収することが行われている。
しかし、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む廃棄物には、これら樹脂以外の他の樹脂が含まれていることがある。該廃棄物を分別することなく熱分解すると、回収されるアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーに、他の樹脂の分解物が混入し、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーの純度が低下することになる。
廃棄物を、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂と、他の樹脂とに分別する方法としては、樹脂の比重の差を利用した比重差法(湿式比重差分離、乾式比重差分離)および樹脂の種類による帯電性の差を利用した静電気分離法が知られている。
しかし、比重差法では、原理的に比重差のある樹脂だけが分別でき、比重差に大きな差がない場合には分別できない。静電気分離法では、原理的に帯電性に差がある樹脂だけが分別でき、帯電性に大きな差がない場合には分別できない。すなわち、これらの方法では、完全に他の樹脂を除去できず、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーに、他の樹脂が多少なりとも混在する問題がある。
他の分別方法としては、キシレン等の溶媒を用いて、廃棄物に含まれる特定の樹脂を溶解する方法が知られている(非特許文献1)。この方法は、キシレン等の溶媒で特定の樹脂を溶解し、溶解液から使用した溶媒を除去することで樹脂を回収し、樹脂をそのまま再利用する方法である。
しかし、溶解液中のアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを熱分解してアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを回収しようとした場合、溶媒がモノマー中に混入することになり、純度の高いモノマーを得るためには、蒸留等が必要となる。
「プラスチックリサイクル技術の新展開」、東レリサーチセンター出版、1992年12月1日発行、p.63−64
よって、本発明の目的は、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む樹脂材料から、比較的高純度のアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを高収率で回収する方法および装置を提供することにある。
本発明者らは、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む樹脂材料から、高純度のアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを高収率で回収するためには、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを樹脂材料の溶媒として用い、モノマーに溶解しない他の樹脂をろ過により除去してから、ろ液に含まれるアクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を熱分解する方法が有効であることを見出した。
すなわち、本発明のモノマーの回収方法は、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む樹脂材料と、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとを混合する工程と;樹脂材料とアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとの混合物をろ過する工程と;ろ液を加熱して、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を熱分解する工程とを有することを特徴とする。
また、本発明のモノマーの回収方法は、樹脂材料とアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとの混合物をろ過する工程の後に、ろ液中のアクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの合計が、ろ液中のアクリル系樹脂とスチレン系樹脂との合計100質量部に対して200質量部未満となるように、ろ液中のアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを除去して、モノマーが減量されたろ液を得る工程を有することが好ましい。
本発明のモノマーの回収装置は、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む樹脂材料と、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとを混合する手段と;樹脂材料とアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとの混合物をろ過する手段と;ろ液を加熱して、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を熱分解する手段とを有することを特徴とする。
また、本発明のモノマーの回収装置は、樹脂材料とアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとの混合物をろ過する手段で得られたろ液からアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを除去し、モノマーが減量されたろ液を得る手段を有することが好ましい。
本発明のモノマーは、本発明のモノマーの回収方法によって回収されたものであることを特徴とする。
本発明のモノマーの回収方法によれば、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む樹脂材料から、比較的高純度のアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを高収率で回収することができる。
本発明のモノマーの回収装置によれば、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む樹脂材料から、比較的高純度のアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを高収率で回収することができる。
(形態例1)
図1は、本発明のモノマーの回収装置の一例を示す概略構成図である。このモノマーの回収装置1は、供給されたアクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む樹脂材料と、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとを、撹拌装置11によって撹拌、混合し、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂をアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーに溶解させる溶解槽12と;移送管13を通ってポンプ14によって供給された樹脂材料とアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとの混合物をフィルター15によってろ過し、ろ液と、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーに溶けなかった不溶分とに分離する分離槽16と;分離槽16からのろ液を貯留するろ液受け17と;移送管18を通ってポンプ19によって供給されたろ液を加熱して、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を熱分解する熱分解槽20と;排気管21を通って熱分解槽20から排出されたガスを冷却し、凝縮させて回収液を得る冷却器22と;回収管23を通って冷却器22から移送された回収液を貯留する回収槽24とを具備して概略構成されるものである。
フィルター15としては、金属メッシュ等が用いられる。フィルター15の目開きのサイズは、不溶分の平均サイズの10〜80%が好ましく、20〜60%が特に好ましい。目開きのサイズが小さすぎると、フィルター15にかかる圧力が過大となり、フィルター破れを生じるおそれがあり、大きすぎると、ろ液中に不溶分が混入するおそれがある。
熱分解槽20は、ステンレス等の金属製容器、ガラス製容器等の耐熱性容器に、ジャケット、流動層、赤外線ヒーター、赤外線ランプ等の加熱装置が設けられたものである。
冷却器22としては、コンデンサ、水スプレー塔、スクラバー等が用いられる。
以下、モノマーの回収装置1を用いたモノマーの回収方法について説明する。
まず、溶解槽12に、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む樹脂材料と、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとを供給し、撹拌装置11によって撹拌、混合することにより、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂をアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーに溶解させる(混合工程)。
ついで、樹脂材料とアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとの混合物を、移送管13経由で、ポンプ14によって溶解槽12から分離槽16に移送する。分離槽16において、混合物をフィルター15によってろ過し、ろ液と、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーに溶けなかった不溶分とに分離する(ろ過工程)。分離されたろ液は、ろ液受け17に一旦貯留される。
ついで、ろ液を、移送管18経由で、ポンプ19によってろ液受け17から熱分解槽20に移送する。熱分解槽20において、ろ液を加熱して、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を熱分解する(熱分解工程)。
熱分解槽20にて発生したガスを、排気管21経由で冷却器22に排出する。冷却器22において、ガスを冷却し、凝縮させて回収液を得る(回収工程)。回収液は、回収管23を通って回収槽24に送られ、ここで貯留される。冷却器22において凝縮しなかったガスは、排気管25を通って外部に排気される。
アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを重合してなる重合体、またはアクリル系モノマーおよび他のモノマーを重合してなる重合体である。アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーに溶解する範囲で、架橋した樹脂であってもよい。
アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、およびそれらのエステルが挙げられる。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル等が挙げられる。メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル等が挙げられる。
他のモノマーとしては、無水マレイン酸、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
アクリル系樹脂は、モノマーを高収率で回収する観点から、アクリル系樹脂を構成するモノマー単位(100質量%)中、アクリル系モノマー単位を50〜100質量%有するものが好ましく、70〜100質量%有するものが特に好ましい。
また、アクリル系樹脂は、モノマーを高収率で回収する観点から、アクリル系樹脂を構成するモノマー単位(100質量%)中、メタクリル酸メチル単位を50〜100質量%有するものが好ましく、70〜100質量%有するものが特に好ましい。
スチレン系樹脂は、スチレン系モノマーを重合してなる重合体、またはスチレン系モノマーおよび他のモノマーを重合してなる重合体である。スチレン系樹脂は、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーに溶解する範囲で、架橋した樹脂であってもよい。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレンが挙げられる。
他のモノマーとしては、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、アクリロニトリル等が挙げられる。
スチレン系樹脂は、モノマーを高収率で回収する観点から、スチレン系樹脂を構成するモノマー単位(100質量%)中、スチレン系モノマー単位を50〜100質量%有するものが好ましく、70〜100質量%有するものが特に好ましい。
また、スチレン系樹脂は、モノマーを高収率で回収する観点から、スチレン系樹脂を構成するモノマー単位(100質量%)中、スチレン単位を50〜100質量%有するものが好ましく、70〜100質量%有するものが特に好ましい。
樹脂材料は、プラスチック廃棄物である場合、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂以外の他の樹脂を含んでいることがある。他の樹脂としては、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。
樹脂材料は、充填剤を含んでいてもよい。充填剤としては、水酸化アルミニウム、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、タルク、クレイ等が挙げられる。充填剤の含有量は、通常、樹脂材料(100質量%)中、0.1〜75質量%である。
また、樹脂材料は、充填剤以外の各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、顔料、染料、補強剤、各種安定剤等が挙げられる。
混合工程において、樹脂材料の溶解に用いる溶媒は、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーである。アクリル系モノマーとしては、上記アクリル系樹脂を構成するアクリル系モノマーと同様のモノマーであり、かつ混合工程における温度で液体のものが挙げられる。スチレン系モノマーとしては、上記スチレン系樹脂を構成するスチレン系モノマーと同様のモノマーであり、かつ混合工程における温度で液体のものが挙げられる。
アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂は、アクリル系モノマーに溶解される。一方、PC、COP、PP、PE、PET、PVCは、アクリル系モノマーに溶解されない、または難溶である。
また、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂は、スチレン系モノマーに溶解される。一方、PC、PP、PE、PET、PVCは、スチレン系モノマーに溶解されない、または難溶である。
また、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂は、アクリル系モノマーおよびスチレン系モノマーの混合物に溶解される。一方、PC、PP、PE、PET、PVCは、アクリル系モノマーおよびスチレン系モノマーの混合物に溶解されない、または難溶である。
溶剤として用いられるアクリル系モノマーおよびスチレン系モノマーの合計量は、樹脂材料に含まれるアクリル系樹脂およびスチレン系樹脂の合計100質量部に対して、30〜1000質量部が好ましい。アクリル系モノマーおよびスチレン系モノマーの合計量が樹脂材料に含まれるアクリル系樹脂およびスチレン系樹脂の合計量に対して少なすぎると、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂が溶解しにくいことがあり、多すぎると、熱分解工程で要するエネルギー消費が過多になる。
混合工程における混合物の温度は、30〜200℃が好ましく、50〜100℃が特に好ましい。混合物の温度を30℃以上とすることで、溶解に要する時間を短くすることができ、200℃以下とすることで、混合工程におけるアクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂の分解を抑えることができる。
混合工程における混合時間は、2時間〜8時間が好ましく、3時間〜5時間が特に好ましい。混合時間が短すぎると、樹脂材料中のアクリル系樹脂およびスチレン系樹脂が、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーに完全には溶解しないおそれがある。混合時間が長すぎると、混合工程で要するエネルギー消費が過多になる。
ろ過工程においては、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーに溶解したアクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂と、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーに溶解しなかった他の樹脂、充填剤等の不溶分とが分離される。
熱分解工程においては、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂の解重合が起こり、解重合によって得られるアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーと、溶媒として用いられたアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーと、他の分解生成物等とを含むガスが発生する。
熱分解工程における温度は、250〜600℃が好ましく、320〜450℃が特に好ましい。温度が低すぎると、反応が非常に遅く、また未反応残渣が多くなる。温度が高すぎると、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーの分解反応が起こりやすくなる。
熱分解工程は、窒素等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
冷却工程にて回収される回収液には、解重合によって得られるアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーと、溶媒として用いられたアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーと、他の分解生成物等とが含まれる。
回収液は、樹脂を製造する原料として再利用してもよく、混合工程における溶媒として繰り返し使用してもよい。
(形態例2)
図2は、本発明のモノマーの回収装置の他の例を示す概略構成図である。このモノマーの回収装置2は、図1に示すモノマーの回収装置1に、ろ液受け17に貯留されたろ液中のアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを気化させ、ガスを発生させる気化装置(図示略)と、排気管31を通ってろ液受け17から排出されたガスを冷却し、凝縮させて回収液を得る冷却器32と;回収管33を通って冷却器32から移送された回収液を貯留する回収槽34とを追加したものである。図1に示すモノマーの回収装置1と同じ構成のものには、同じ符号を付し、これらについての詳しい説明は省略する。
気化装置としては、真空ポンプ、減圧ポンプ等が挙げられる。
冷却器32としては、上記冷却器22と同様のものを用いることができる。
以下、モノマーの回収装置2を用いたモノマーの回収方法について説明する。
混合工程、ろ過工程については、モノマーの回収装置1を用いたモノマーの回収方法と同じため、詳しい説明は省略する。
ろ液受け17に貯留されたろ液中のアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを、気化装置(図示略)によって気化させ、ガスを発生させる。このようにして、ろ液からアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを除去し、モノマーが減量されたろ液を得る(モノマー除去工程)。ろ液受け17にて発生したガスを、排気管31経由で冷却器32に排出する。冷却器32において、ガスを冷却し、凝縮させて回収モノマーを得る。回収液は、回収管33を通って回収槽34に送られ、ここで貯留される。
ついで、モノマーが減量されたろ液を、移送管18経由で、ポンプ19によってろ液受け17から熱分解槽20に移送する。熱分解槽20において、ろ液を加熱して、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を熱分解する(熱分解工程)。
回収工程については、モノマーの回収装置1を用いたモノマーの回収方法と同じため、詳しい説明は省略する。
除去工程における気化方法としては、減圧脱揮、真空脱揮、フラッシュ脱揮が挙げられる。
モノマーが減量されたろ液中のアクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの合計量は、熱分解工程の安定性を考慮すると、アクリル系樹脂とスチレン系樹脂との合計100質量部に対して200質量部未満である。
アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの合計を200質量部未満とすることで、ろ液が過度に膨張または発泡せず、熱分解工程を安定に行うことができる。膨張・発泡とは、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂の分解、およびアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーの蒸発に伴い、ろ液全体が膨れあがり、泡を発する現象である。アクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの合計量が200質量部を超えると、この膨張・発泡現象が著しく、熱分解工程での不安定な運転の原因となりうる。
また、ろ液の取扱性等を考慮すると、アクリル系樹脂とスチレン系樹脂との合計100質量部に対するアクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの合計を30質量部以上とすることが好ましい。
以上説明した本発明のモノマーの回収方法によれば、樹脂材料に含まれるアクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を溶解させる溶剤として、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを用いている。そのため、プラスチック廃棄物等からなる樹脂材料に含まれるアクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を選択的に溶解させることができ、他の樹脂を分別できると同時に、樹脂の熱分解によって最終的に得られる回収液中に含まれる他の樹脂の分解物を最小限に抑え、かつ回収液中にモノマー以外の溶剤が含まれることがなく、結果、回収液中に含まれるアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーの純度が高くなる。
以下、実施例を示す。
実施例においては、以下の樹脂材料を用いた。
樹脂A:メタクリル酸メチル(以下、MMAと記す。)からなる単独重合体(三菱レイヨン(株)製、アクリライトLを破砕して得た大きさ約3mmの破砕物。
樹脂B:スチレン(以下、STと記す。)からなる単独重合体(アルドリッチ社製、品番18242−7、質量平均分子量:28万)の大きさ約3mmのペレット。
樹脂C:MMA80質量%とST20質量%からなる混合モノマーを、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて重合して製造される樹脂(質量平均分子量:30万)を粉砕して得た大きさ約3mmの粉砕物。
樹脂D:ST80質量%とMMA20質量%からなる混合モノマーを、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて重合して製造される樹脂(質量平均分子量:30万)を粉砕して得た大きさ約3mmの粉砕物。
PC:ポリカーボネート(アルドリッチ社製、品番18162−5)の大きさ約3mmのペレット。
PE:ポリエチレン(アルドリッチ社製、品番42803−5)の大きさ約3mmのペレット。
PP:ポリプロピレン(アルドリッチ社製、品番42902−3)の大きさ約3mmのペレット。
COP:シクロオレフィンポリマー(日本ゼオン(株)製、商品名:ゼオノア)の大きさ約3mmのペレット。
PET:ポリエチレンテレフタレート(アルドリッチ社製、品番20025−5)の大きさ約3mmのペレット。
PVC:ポリ塩化ビニルからなるチューブ(アズワン社製、品番6−610−01)を大きさ約3mmに粉砕したペレット。
モノマーの回収装置としては、図1または図2に示す装置を用いた。
溶解槽12としては、ダブルヘリカル翼を有する撹拌装置11付きの5L釜を用いた。
フィルターとしては、目開きが0.5mmの金属メッシュを用いた。
熱分解槽20としては、底12cm×14cm、高さ6cmのSUS製容器の上面に、石英ガラスをはめ込んだものを用い、石英ガラスより1cm上方に赤外線ランプ(アルバック理工(株)製、RHL−Ps35VP)を設置した。
回収液中のMMA濃度、ST濃度(質量%)は、ガスクロマトグラフィーで測定した。
MMA収率、ST収率は、以下の式で計算した
(樹脂Aおよび/または樹脂Bを使用した場合)
MMA収率(質量%)=回収液の質量(g)×回収液中のMMA濃度(質量%)/(樹脂Aの質量(g)+樹脂材料の溶解に使用したMMAの質量(g)−モノマー除去工程で除去したMMAの質量(g))
ST収率(質量%)=回収液の質量(g)×回収液中のST濃度(質量%)/(樹脂Bの質量(g)+樹脂材料の溶解に使用したSTの質量(g)−モノマー除去工程で除去したSTの質量(g))
(樹脂Cを使用した場合)
MMA収率(質量%)=回収液の質量(g)×回収液中のMMA濃度(質量%)/(樹脂Cの質量(g)×樹脂C中のMMA比率(質量%)/100+樹脂材料の溶解に使用したMMAの質量(g)−モノマー除去工程で除去したMMAの質量(g))
ST収率(質量%)=回収液の質量(g)×回収液中のST濃度(質量%)/(樹脂Cの質量(g)×樹脂C中のST比率(質量%)/100+樹脂材料の溶解に使用したSTの質量(g)−モノマー除去工程で除去したSTの質量(g))
(樹脂Dを使用した場合)
MMA収率(質量%)=回収液の質量(g)×回収液中のMMA濃度(質量%)/(樹脂Dの質量(g)×樹脂D中のMMA比率(質量%)/100+樹脂材料の溶解に使用したMMAの質量(g)−モノマー除去工程で除去したMMAの質量(g))
ST収率(質量%)=回収液の質量(g)×回収液中のST濃度(質量%)/(樹脂Dの質量(g)×樹脂D中のST比率(質量%)/100+樹脂材料の溶解に使用したSTの質量(g)−モノマー除去工程で除去したSTの質量(g))
(実施例1)
図1に示すモノマーの回収装置1を用いて実施した。
樹脂材料1300g(樹脂A1000g、PC50g、PE50g、PP50g、COP50g、PET50g、PVC50g)と、MMA1500gとを、溶解槽12に供給し、内温70℃とし、撹拌装置11にて攪拌回転数100rpmで5時間撹拌した(混合工程)。混合物を分離槽16に移送し、ろ液側の圧力を2kPa(絶対圧力)にしてフィルターで減圧ろ過し、PC、PE、PP、COP,PET、PVCを不溶分として全量取り除いた(ろ過工程)。ろ液は、樹脂AがMMAに溶解したものであり、その粘度は30℃において9.5Pa・sであった。
ろ液を熱分解槽20に移送し、ろ液をSUS製容器の底面から5cmの高さまで投入した。SUS製容器中を窒素雰囲気とし、赤外線ランプの出力を65%とした。SUS製容器には100mL/minの流量で窒素を流した。赤外線ランプにより加熱し、SUS製容器中のろ液が完全になくなるまで加熱を行った(熱分解工程)。1回の熱分解工程に要した時間は、約1時間であった。熱分解槽20から出てくるガスを冷却器22にて冷却し、樹脂Aの分解物および溶媒のMMAを含む回収液を得た(回収工程)。冷却器22には5℃の冷媒を流した。熱分解工程および回収工程を、ろ液受け17中のろ液がなくなるまで繰り返し行った。回収液は、2446gであった。回収液中のMMA濃度は98.8質量%であった。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1と同じ組成の樹脂材料1300gを、そのまま熱分解槽20に入れ、実施例1と同様の熱分解工程および回収工程を実施した。1回の熱分解工程は、実施例1と同じく1時間とした。回収液は、1132gであった。回収液中のMMA濃度は85.1質量%であった。熱分解工程に用いたSUS製容器の底面には、PC50g、PE50g、PP50g、COP50g、PET50g、PVC50gの合計300gの内、約150gが分解せずに残っていた。PC50g、PE50g、PP50g、COP50g、PET50g、PVC50gの合計300gの内、残り150gは分解して、その分解物の一部は樹脂Aの分解物であるMMAと一緒に回収され、残りは凝縮せずガスとして外部に排気された。結果を表1に示す。
(実施例2)
図2に示すモノマーの回収装置2を用いて実施した。
MMAを2000gとした以外は実施例1と同様な操作を実施して、ろ液を得た。ろ液の粘度は30℃において3.0Pa・sであった。このろ液から減圧脱揮(10kPa(絶対圧力))により、MMAを500g除去した(モノマー除去工程)。モノマーが減量されたろ液を用いて、実施例1と同様の熱分解工程および回収工程を実施した。結果を表1に示す。
(実施例3)
樹脂材料を1250gとし、その組成を、樹脂B1000g、PC50g、PE50g、PP50g、PET50g、PVC50gとし、MMAの替わりに、ST1500gを用いた以外は、実施例1と同様の混合工程およびろ過工程を実施した。ろ過により、PC、PE、PP、PET,PVCを不溶分として全量取り除いた。ろ液の粘度は7.8Pa・sであった。ついで、実施例1と同様の熱分解工程および回収工程を実施した。結果を表1に示す。
(実施例4)
樹脂材料を1250gとし、その組成を、樹脂B1000g、PC50g、PE50g、PP50g、PET50g、PVC50gとし、MMAの替わりに、ST2000gを用いた以外は、実施例2と同様の混合工程およびろ過工程を実施した。ろ液の粘度は2.1Pa・sであった。ついで、実施例2と同様のモノマー除去工程を実施し、ST500gを除去した。ついで、実施例2と同様の熱分解工程および回収工程を実施した。結果を表1に示す。
(実施例5)
樹脂材料を1250gとし、その組成を、樹脂A500g、樹脂B500g、PC50g、PE50g、PP50g、PET50g、PVC50gとし、MMA750gおよびST750gの混合モノマーを用いた以外は、実施例1と同様の混合工程およびろ過工程を実施した。ろ過により、PC、PE、PP、PET,PVCを不溶分として取り除いた。ろ液の粘度は8.3Pa・sであった。ついで、実施例1と同様の熱分解工程および回収工程を実施した。結果を表1に示す。
(実施例6)
樹脂材料を1250gとし、その組成を、樹脂A500g、樹脂B500g、PC50g、PE50g、PP50g、PET50g、PVC50gとし、MMA1000gおよびST1000gの混合モノマーを用いた以外は、実施例2と同様の混合工程およびろ過工程を実施した。ろ液の粘度は2.4Pa・sあった。ついで、実施例2と同様のモノマー除去工程を実施し、MMAおよびSTを合計500g除去した。除去したモノマー混合液500gのうち、MMA307g、ST193gであった。ついで、実施例2と同様の熱分解工程および回収工程を実施した。結果を表1に示す。
(実施例7)
樹脂材料を1250gとし、その組成を、樹脂A1000g、PC50g、PE50g、PP50g、PET50g、PVC50gとし、ST1500gのモノマーを用いた以外は、実施例1と同様の混合工程およびろ過工程を実施した。ろ過により、PC、PE、PP、PET,PVCを不溶分として取り除いた。ろ液の粘度は8.5Pa・sであった。ついで、実施例1と同様の熱分解工程および回収工程を実施した。結果を表1に示す。
(実施例8)
樹脂材料を1300gとし、その組成を、樹脂B1000g、PC50g、PE50g、PP50g、COP50g、PET50g、PVC50gとし、MMA1500gのモノマーを用いた以外は、実施例1と同様の混合工程およびろ過工程を実施した。ろ過により、PC、PE、PP、COP、PET,PVCを不溶分として取り除いた。ろ液の粘度は7.2Pa・sであった。ついで、実施例1と同様の熱分解工程および回収工程を実施した。結果を表1に示す。
(実施例9)
樹脂材料を1250gとし、その組成を、樹脂C1000g、PC50g、PE50g、PP50g、PET50g、PVC50gとし、MMA750g、ST750gの混合モノマーを用いた以外は、実施例1と同様の混合工程およびろ過工程を実施した。ろ過により、PC、PE、PP、PET,PVCを不溶分として取り除いた。ろ液の粘度は8.0Pa・sであった。ついで、実施例1と同様の熱分解工程および回収工程を実施した。結果を表1に示す。
(実施例10)
樹脂材料を1250gとし、その組成を、樹脂D1000g、PC50g、PE50g、PP50g、PET50g、PVC50gとし、MMA750g、ST750gの混合モノマーを用いた以外は、実施例1と同様の混合工程およびろ過工程を実施した。ろ過により、PC、PE、PP、PET,PVCを不溶分として取り除いた。ろ液の粘度は8.2Pa・sであった。ついで、実施例1と同様の熱分解工程および回収工程を実施した。結果を表1に示す。
Figure 2006290805
本発明のモノマーの回収方法および装置によれば、複数種類の樹脂を含むプラスチック廃棄物等の樹脂材料から、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを選択的に、かつ高純度、高収率で回収することができ、樹脂材料のリサイクル法としてたいへん有用である。
本発明のモノマーの回収装置の一例を示す概略構成図である。 本発明のモノマーの回収装置の他の例を示す概略構成図である。
符号の説明
1 モノマーの回収装置
2 モノマーの回収装置
12 溶解槽
16 分離槽
17 ろ液受け
20 熱分解槽
22 冷却器

Claims (5)

  1. アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む樹脂材料と、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとを混合する工程と、
    樹脂材料とアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとの混合物をろ過する工程と、
    ろ液を加熱して、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を熱分解する工程と
    を有するモノマーの回収方法。
  2. 樹脂材料とアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとの混合物をろ過する工程の後に、ろ液中のアクリル系モノマーとスチレン系モノマーとの合計が、ろ液中のアクリル系樹脂とスチレン系樹脂との合計100質量部に対して200質量部未満となるように、ろ液中のアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを除去して、モノマーが減量されたろ液を得る工程を有する、請求項1に記載のモノマーの回収方法。
  3. アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を含む樹脂材料と、アクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとを混合する手段と、
    樹脂材料とアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとの混合物をろ過する手段と、
    ろ液を加熱して、アクリル系樹脂および/またはスチレン系樹脂を熱分解する手段と
    を有するモノマーの回収装置。
  4. 樹脂材料とアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーとの混合物をろ過する手段で得られたろ液からアクリル系モノマーおよび/またはスチレン系モノマーを除去し、モノマーが減量されたろ液を得る手段を有する、請求項3に記載のモノマーの回収装置。
  5. 請求項1または請求項2に記載のモノマーの回収方法によって回収されたモノマー。
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