JP2006289535A - トルクレンチ - Google Patents

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Abstract

【課題】 締付けトルクの範囲に対応して有効長が異なるものでありながら、締付部以外の箇所の主要部品を共用することを可能にしたトルクレンチを提供する。
【解決手段】 ラチェット等の締付部10と、前側カバー部21と後側グリップ部22との二分割構造になったハウジング20と、ハウジング20内に設けられており且つ締付部10を取り替え可能に連結された起歪体30と、起歪体30に設けられ且つ締付部10の締付力に伴う起歪体30の歪み量を検出する歪みセンサ40と、予め用意されたトルク基準値及び歪みセンサ40の検出結果に基づいて締付部10の締付けトルクを演算する等の機能を有したチップマイコン100と、締付けトルク等を出力する出力部300とを具備している。
【選択図】 図1

Description

本発明はラチェット等の締付け工具の締付トルクを歪みセンサを用いて測定するトルクレンチに関する。
従来のトルクレンチにおいては、ラチェット等の締付け工具がレンチ本体に固定されており、レンチ本体のハンドル部に取り付けられた歪みセンサの出力に基づいて締付けトルクを演算し、この演算結果が予め設定された締付けトルク設定値になると警報等を発し、これにより適正な締付けトルクを確実に得ることが可能な機能を有したものがある(例えば、特許文献1参照)。
特開昭62−176777
しかしながら、上記従来例による場合、メーカーの立場からすると、締付けトルクの範囲が異なる多種類のトルクレンチを提供することが必要であるものの、締付けトルクの範囲に対応して有効長が異なると、レンチ本体等の主要部品を共用することができず、この点で生産コストの低減化を図ることが困難という問題がある。
本発明は上記事情に鑑みて創案されたものであり、その主たる目的は締付けトルクの範囲に対応して有効長が異なるものでありながら、締付部以外の箇所の主要部品を共用することが可能なトルクレンチを提供することにある。
本発明のトルクレンチは、締付部と、先端部に締付部が取替可能に連結された起歪体と、締付部の締付力に伴う起歪体の歪み量を検出する歪みセンサと、締付部の締付けトルクを演算するのに必要なトルク基準値が予め用意されており且つ当該トルク基準値及び歪みセンサの検出結果に基づいて締付けトルクを演算するトルク演算部と、少なくともトルク演算部の演算結果を締付けトルク測定値として出力する出力部とを具備している。
起歪体がハウジング内に収容された形態の場合、ハウジングについては、締付部の基端部が挿入される穴が先端面に形成された筒状体であり且つ起歪体の先端部を収容する前側カバー部と、起歪体の基端部を収容する筒状体であり且つ締付部の締付力に直交した方向に延びた軸が内部に設けられた後側グリップ部とを有した二分割構造となっており、後側グリップ部が前側カバー部に対して若干傾斜可能なように起歪体が前記軸で軸支されている。
上記した形態の場合、ハウジングの内部に設けられており且つ締付操作にて後側グリップ部が前側カバー部に対して所定角度傾斜をしたか否かを検出する傾斜検出器と、傾斜検出器の検出結果に基づいて出力部に測定エラーを出力させるエラー監視部とを備えることが望ましい。
また、締付けトルク設定値を設定するための設定部と、トルク演算部の演算結果が示すトルク測定値が設定部を通じて設定された締付けトルク設定値に近いか又は達したか否かを判定するとともに、出力部に当該判定結果を出力させるトルク判定部とを備えることが望ましい。
さらに、ハウジングには後側グリップ部が前側カバー部に対して傾斜しないように解除可能にロックするロック機構を設けるようにすると良い。ロック機構の一例としては、後側グリップ部の後端部に回動自在に設けられたロック部材を有し、前記ロック部材には起歪体の後端部が挿入される移動規制用の長穴が形成された構成のものがある。
本発明の請求項1に係るトルクレンチによる場合、締付けトルクの範囲に対応して有効長が異なるときには、基本的にトルク基準値をその有効値に応じて変更するだけで、締付けトルクの正確な測定結果が得られる。即ち、締付けトルクの範囲が異なる多種類のトルクレンチを提供するに当たり、締付部以外の箇所の主要部品を共用することが可能であり、それ故、生産コストを抑えることが可能になる。
本発明の請求項2に係るトルクレンチによる場合、ハウジングの後側グリップ部を手に持って締付操作を行うに際し、そのグリップ位置が適切である限り、締付力が軸を通じてのみ起歪体に直接に作用する。即ち、起歪体に対する力点が一点であることから、歪みセンサにより締付力を精度良く検知することが可能になり、これに伴って締付けトルクの測定精度が向上する。
本発明の請求項3に係るトルクレンチによる場合、ハウジングの後側グリップ部を手に持って締付操作を行うに際し、その力点位置が適切でなく、これに起因して後側グリップ部が前側カバー部に対して大きく傾斜し、ハウジングの内面が起歪体に部分的に接触等して、起歪体に対する力点が複数点になったときには、測定エラーの出力が行われるようになっている。よって、たとえ不慣れな者が締付け作業を行ったとしても、締付けトルクの正確な測定結果が得ることが可能になる。
本発明の請求項4に係るトルクレンチによる場合、測定された締付けトルクが予め設定された締付けトルク設定値の近いとき又は達したときにはその旨が出力されるようになっているので、締付け作業を円滑に行うことが可能になる。
本発明の請求項5又は6に係るトルクレンチによる場合、後側グリップ部が前側カバー部に対して傾斜しないように解除可能にロックするロック機構が設けられているので、トルクレンチとして使用しないときは、後側グリップ部が傾斜しないようにロックすると、トルクレンチ以外の締付け作業を円滑に行うことが可能になる。また、後側グリップ部がロックされると、前側カバー部等に接触するときに発生し得る音を防止することが可能になり、この点でも使い勝手が良好になる。
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図8を参照して説明する。図1はトルクレンチの正面図及び側面図、図2は図1中A−A線断面図、図3は同トルクレンチの内部構造を示す模式図であって正面側から見た図、図4は同トルクレンチのロック機構の分解斜視図、図5は同ロック機構を構成するロック部の裏面図、図6は同トルクレンチの電気的構成図、図7は同トルクレンチのセンサ部の回路図、図8は傾斜検出器の変形例を示すための図であって、トルクレンチの後側グリップ部の内部構造を示す模式図である。
ここに掲げるトルクレンチは、ラチェット等の締付部10と、前側カバー部21と後側グリップ部22との二分割構造になったハウジング20と、ハウジング20に設けられたロック機構αと、ハウジング20内に収容されており且つ先端部に締付部10を取替可能に連結する起歪体30と、起歪体30に設けられており且つ締付部10の締付力に伴う起歪体30の歪み量を検出する歪みセンサ40と、ハウジング20の内部に設けられており且つ締付操作にて後側グリップ部22が前側カバー部21に対して±5°傾斜したか否かを検出する傾斜検出器60と、締付けトルク設定値等を設定するための設定部70と、歪みセンサ40の検出結果に基づいて締付けトルクを演算する等の機能を有したチップマイコン100と、締付けトルクT等を出力する出力部300とを備えた基本構成となっている。まず、図1乃至図5を参照してトルクレンチの機械的構成について説明する。
なお、図1中に示すようにハウジング20の後側グリップ部22に作用する締付力Fにより締付部10がQ方向に回転するが、締付力Fが作用する方向をRとして表し、これと直交する締付部10の回転軸方向をPとして表す。
締付部10は先端部に締付工具がP方向に向けて設けられた軸状部材であって、締付工具の種類としてはラチェット、スパナやモンキーレンチ等がある。図示例の締付部10の締付工具はラチェットである。このような締付部10がハウジング20の前側カバー部21の先端部に取り付けられた状態でトルクレンチの有効長は締付工具の種類に関係なく同一となっている。
ハウジング20は樹脂成型品であり、前側カバー部21と後側グリップ部22とを有した二分割構造となっている。前側カバー部21は起歪体30の先端部31及び中間部32を収容する筒状体であって、締付部10の基端部が挿入される穴211が先端面に形成されている。一方、後側グリップ部22は起歪体30の基端部33を余裕を持たせて収容する筒状体であって、P方向に延びた軸50が内部に設けられている。
前側カバー部21の裏側面には、締付部10を起歪体30に固定するための取付ネジ212がP方向に向けて設けられている一方、その正面側には出力部300及び設定部70が設けられている。前側カバー部21の内部には電池90が取り外し可能に収納されている。なお、出力部300及び設定部70の奥側にはチップマイコン100等の電子部品が配置されている。
後側グリップ部22の先端部のP方向の面には長方形の切り欠き222がR方向に向けて延びて形成されている。後側グリップ部22の後端部には略円板状樹脂成型品であるロック部材23が回動自在に取り付けられている。ロック部材23の内側には移動規制用の長穴231が形成されており、長穴231には起歪体30の後端部34が挿入されている。
前側カバー部21の内部には傾斜検出器60の構成部品であるアクチュエータ61及び傾き検出用スイッチ62、63が設けられている。前側カバー部21の内部の切り欠き222に対向する位置にはアクチュエータ61がR方向に移動自在に設けられている。アクチュエータ61は接触片611を有する断面略凹状の樹脂成型品であり、起歪体30の中間部32を跨ぐ形で配置されている。アクチュエータ61の接触片611は後側グリップ部22に形成された切り欠き222に入り込んでおり、切り欠き222の両端面に当接可能になっている。前側カバー部21の内壁の起歪体30の両側面の対向面には傾き検出用スイッチ62、63がアクチュエータ61の両端部が当接し得る位置にサブ基板を介して各々取り付けられている。傾斜検出器60の詳しいことについては後述する。
起歪体30はハウジング20より若干短めの長さを有した円筒状の金属製の長尺弾性体であって、ハウジング20の内部に収容されている。起歪体30は、前側カバー部21の内側に位置する先端部31及び中間部32と、後側グリップ部22の内側に位置する基端部33と、ロック部材23の内側に位置する後端部34とを有した構造になっている。起歪体30の後端部34は、先端部31、中間部32及び基端部33に比べて小径の軸となっている。なお、本実施形態においては、加工性及びコストの面から起歪体30として円筒状のものを用いたが、角柱状、円柱状であってもかまわない。もっとも、起歪体30が軸50で軸支され、その弾力方向が一定であることから、角柱状のものが最適である。
起歪体30の先端部31には締付部10の基端部が挿入される穴311が長さ方向に形成されている一方、その側面には取付ネジ212が螺着されるネジ穴312がP方向に形成されている。これにより締付部10が起歪体30の先端部31に取り替え可能に連結されるようになっている。
起歪体30の中間部32にはR方向の両側面に窪み321が各々形成されている。窪み321の一方(又はその両方)には歪みセンサ40が合計2つ固着されている。
起歪体30の基端部33にはボスである軸50がP方向に向けて設けられている。軸50の両端部は後側グリップ部22の内壁面に各々形成された軸穴221に軸支されている。即ち、起歪体30は後側グリップ部22が前側カバー部21に対して傾斜可能なように軸50で軸支されている。本実施形態においては、図1に示すように後側グリップ部22が前側カバー部21に対して±5°傾斜可能なフリーな構造になっている。締付操作を行うに際し、後側グリップ部22が前側カバー部21に対して±5°傾斜したときは、起歪体30の基端部33(又は後端部34)が後側グリップ部22の内壁面(又は長穴231の端面)に部分的に接触する。即ち、後側グリップ部22の傾斜角度が±5°未満であるときには、起歪体30に対する力点は軸50のみの一点であるものの、後側グリップ部22の傾斜角度が±5°に達すると、起歪体30に対する力点が複数点になるようになっている。
ロック機構αは後側グリップ部22の後端部に回転自在に取り付けられたロック部材23を中心とした構成となっており、後側グリップ部22が前側カバー部21に対して傾斜しないように解除可能にロックする構成となっている。即ち、長穴231がP方向に向くようなロック部材23の回転角度であるときには、図5(a)に示すように起歪体30の後端部34が長穴231により移動規制された状態になり、その結果、後側グリップ部22が前側カバー部21に対して傾斜不可となり、前側カバー部21と後側グリップ部22とが直線状を維持するようにロックされる。
そしてこの状態からロック部材23を90°回転させると、図5(b)に示すように起歪体30の後端部34が長穴231に沿って図示矢印通りに移動可能になり、これに伴って、後側グリップ部22が前側カバー部21に対して傾斜可能になる。このように、ロック部材23を90°回転させて、該90°の回転を元に戻すことで、ロック状態、解除状態(フリー状態)にするようになっている。
次に図6及び図7を参照してトルクレンチの電気的構成について説明する。
歪みセンサ40については本実施形態では起歪体30の歪み量に応じて抵抗値が直線的に変化する歪みゲージを用いており、起歪体30の片面(窪み321の一方)に合計2個取り付けられている。その関係上、センサ部200については図7(a)に示すような回路構成となっている。
センサ部200はブリッジ接続された歪みセンサ40a、40b及び固定抵抗210a、210bと、基準電圧を生成して歪みセンサ40a、40b等からなるブリッジ回路に出力するリファレンス部220と、同ブリッジ回路から電圧として出力されたアナログ値をデジタル値に変換するA/D変換部230とを有しており、A/D変換部230の出力値Dをチップマイコン100に出力するような構成となっている。
リファレンス部220から出力される基準電圧は初期設定時にチップマイコン100によりセンサ部200の出力値Dが零を示すように制御されている。よって、センサ部200の出力値Dは起歪体30の歪み量の大きさを示し、ひいては後側グリップ部22に作用する締付力Fの大きさを示すようになっている。
なお、起歪体30の両面(窪み321の両方)に合計2個の歪みセンサ40を取り付ける場合には、センサ部200として、図7(b)に示すような回路構成のものを用いると良い。
傾斜検出器60は、上記したようにアクチュエータ61、傾き検出用スイッチ62、63を有し、後側グリップ部22の傾斜角度が+5°に達したときには、アクチュエータ61が一方向に移動して傾き検出用スイッチ63の接点出力がオンになる一方、後側グリップ部22の傾斜角度が−5°に達したときには、アクチュエータ61が上記とは反対方向に移動して傾き検出用スイッチ62の接点出力がオンになるように構成されている。傾き検出用スイッチ62、63の検出信号はチップマイコン100に出力されている。
設定部70はメモリ選択、締付けトルク設定値及び電源オンオフ等が設定入力可能になっており、これらの入力データをチップマイコン100に出力するようになっている。本実施形態では4つの押しボタンスイッチを用いている。
出力部300については、本実施形態では測定された締付けトルクTや測定エラー等を表示出力する液晶パネルであるLCD310と、電源のオン時やオフ時、測定開始可能状態になったとき、締付けトルクTが締付けトルク設定値に対して90%に達したとき、締付けトルク設定値を超えたとき、それぞれの状態を使用者に知らせるブザー320及びLED330とを有している。
メモリ部80については、本実施形態では締付けトルクTを演算するのに必要なトルク基準値R(=T0/D0,T0:基準荷重での締付けトルク,D0=基準荷重でのセンサ部200の出力値)等が予め記録されており、チップマイコン100のバスラインに相互接続されている。本実施形態においては、メモリ部80として不揮発性メモリであるEEPROMを用いている。
特にトルク基準値Rに関しては、例えば基準荷重を500[N・m]として実際に測定を行い、そのときに得たトルク基準値Rをメモリ部80に予め記録するようにしている。締付部10は多種類取り替え可能であるものの、歪みセンサ40に発生する出力は軸50にかかる力にのみ依存するため、1種類のトルク基準値Rを用意すれば良い。
電池90については、チップマイコン100だけでなくセンサ部200及び出力部300等に対して電源電圧を供給している。本実施形態においては二酸化マンガンリチウム電池を用いている。
チップマイコン100については、本実施形態ではその入力ポートにセンサ部200、傾き検出用スイッチ62、63、設定部70等が接続されている一方、その出力ポートに出力部300等が接続されている。そして内部メモリ上のソフトウエアを逐次処理することにより、以下に説明するトルク演算部110、エラー監視部120及びトルク判定部130としての機能等を発揮するようになっている。
トルク演算部110はメモリ部80上のトルク基準値R及びセンサ部200の出力値Dに基づいて締付けトルクT(=R×D)を演算し、この演算結果を締付けトルク測定値として出力部300に出力するようになっている。これがチップマイコン100のトルク演算部110としての基本的な機能である。本実施形態では、上記のように演算された締付けトルクTの瞬時値をLCD310に出力している。また、上記LCD310に出力されている瞬時値は設定部70を通じたスイッチ操作により、ホールドした値を解除することが可能である。N・m以外のトルク単位が設定部70を通じて設定されたときには、締付けトルクTを設定されたトルク単位に換算した値をその単位表示も含めてLCD310に出力することも可能である。
エラー監視部120は後側グリップ部22の傾斜角度が±5°に達したことを傾斜検出器60の検出結果が示すときには、出力部300に対して測定エラーを出力させるようになっている。本実施形態では、トルク演算部110が機能している最中に傾き検出用スイッチ62、63の接点出力がオンに変化すると、トルク演算部110としての機能を停止させ、その代わりにLCD310に所定時間ERROR等を表示出力させるようになっている。これがチップマイコン100のエラー監視部120としての機能である。
トルク判定部130はトルク演算部110の演算結果が示す締付けトルクTが設定部70を通じて設定された締付けトルク設定値の90%に達したか否か、締付けトルク設定値を超えたか否かを各々判定し、これらの判定結果をブザー320及びLED330を通じて出力させるようになっている。これがチップマイコン100のトルク判定部130としての機能である。
なお、チップマイコン100は上記機能以外に設定部70を通じて設定される締付けトルク設定値を内部メモリに保持するメモリ機能、センサ部200の出力値Dに所定時間変化が現れないときは低消費電力状態になるスリープモード等がある。
以下、上記のように構成されたトルクレンチの使用方法及びその動作について説明する。
まず、設定部70を通じて電源がオンされると、チップマイコン100等に電源電圧が供給されて動作状態になり、チップマイコン100はメモリ部80上の設定に必要な固有値を読み込み、これによりセンサ部200に対する零点制御も含めて初期設定の処理を行う。
この状態で設定部70を通じて締付けトルク設定値又はトルク単位等が設定入力されると、チップマイコン100は内部メモリに保持する一方、センサ部200の出力値Dに所定時間変化が現れないときは低消費電力状態になるスリープモードに移行する。
トルクレンチを用いて実際にボルト等を締付けるときは、後側グリップ部22を手に持って締付部10をQ方向に回転させるようにする。この際のグリップ位置は、起歪体30に対する締付力Fの力点が軸50に一致するように後側グリップ部22の中心付近とする。言い換えると、上記トルクレンチは、この正規のグリップ位置でもって締付け作業が行われた場合にのみ正常なトルク計測が行われるようになっている。
即ち、正規のグリップ位置でもって締付操作が行われた場合、締付力Fに応じて起歪体30の全体が所期の通りに歪む。すると、チップマイコン100はメモリ部80上のトルク基準値R及びセンサ部200の出力値D等に応じて締付けトルクTを演算し、この演算値等をLCD310に出力する。LCD310には締付けトルクTが内部メモリ上のトルク単位で表示出力される。
締付けトルクTが内部メモリ上の締付けトルク設定値の90%に達すると、その旨がブザー320及びLED330を通じて出力される。その後、締付けトルクTが内部メモリ上の締付けトルク設定値を超えると、その旨がブザー320及びLED330を通じて出力される。このようなブザー320の音やLED330の点灯により警告が行われる。使用者はこの警告を確認しながらボルト等の締付け作業を行うことができることから、締付け作業を円滑に進めることが可能になる。
これに対し正規のグリップ位置ではなく、後側グリップ部22の後端部付近を手に持って締付操作が行われた場合、起歪体30に対する締付力Fの作用点が軸50に一致せず、後側グリップ部22の前側カバー21に対する傾斜角度が±5°に達すると、このときは、起歪体30に対する力点が複数点になり、起歪体30の歪み具合が所期の通りではなくなる。ところが、後側グリップ部22の傾斜角度が±5°に達すると、傾き検出用スイッチ62、63の接点出力がオンに変化することから、チップマイコン100により、締付けトルクTの演算が中断され、ERROR等をLCD310に表示出力される。
このように正規のグリップ位置でもって締付操作が行われた場合にのみ締付けトルクTがLCD310に表示出力される。その結果、締付けトルクTの正確な測定が行われ、不慣れな者であっても適正な締付け作業を実現することが可能になる。
締付工具を別のものに交換することが必要であるときには、取付ネジ212を外して締付部10を付け替えるようにすると良い。交換後も有効長に変化はないことから、上記と全く同様に締付けトルクTを測定することが可能である。ラチェット以外にモンキレンチやスパナ等の工具を用いた締付け作業にも使用することができ、その用途が拡がる。
ただ、トルクレンチとして使用しないときは、ロック部材23を回転させて後側グリップ部22を前側カバー部21に対して傾斜しないようにロックすると良い。トルクレンチ以外の締付け作業を円滑に行うことが可能になる。また、トルクレンチ非使用時だけでなく保管時に後側グリップ部22をロックするようにすると、後側グリップ部22が前側カバー部21等に接触するときに発生し得る音を防止することが可能になり、使い勝手が良好になる。
上記したようなトルクレンチによる場合、締付けトルクTの範囲に対応して有効長が異なるときには、メモリ部80上のトルク基準値Rのデータを書き換えるだけで締付けトルクTの正確な測定結果が得られる。即ち、メーカーが締付けトルクTの範囲が異なる多種類のトルクレンチを提供するに当たり、締結部10以外の部品を共用化をすることができ、それ故、生産コストを格段に抑えることが可能になる。また、後側グリップ部22を手に持って締付操作を行うに際し、その締付力Fが軸50を通じてのみ起歪体30に作用し、このため、起歪体30は所期の通りに大きく歪むようになっている。よって、歪みセンサ40により締付力Fを精度良く検知することが可能になり、これに伴って締付けトルクTの測定精度が向上する。
なお、本発明に係るトルクレンチは上記実施形態に限定されず、以下のように設計変更してもかまわない。締付部10については、形状、工具の種類及び起歪体30への連結方法等が問われず、前側カバー部21を通じて起歪体30の先端部31に連結する形態であっても良い。起歪体30については、材質や形状等が問われず、先端部31を露出させる形態であっても良い。歪みセンサ40については、取付位置及び種類等が問われず、ハウジング20の内壁に設ける形態であっても良い。
トルク演算部110、エラー監視部120及びトルク判定部130については、アナログ回路等により同一又は類似の機能を実現する形態であっても良い。特にトルク演算部110については、各有効長に対応した複数のトルク基準値Rをメモリ部80に予め記録する一方、設定部70を通じて締付部10の種類を選択入力可とし、選択入力された締付部10の種類に対応するトルク基準値Rをメモリ部80から読み出し、これを用いて締付けトルクTを演算する形態であっても良い。
出力部300については、トルク測定値、測定エラー及び判定結果等の出力形式等が問われず、トルク測定値がトルク設定値に近いか又は達したかの判定結果を単に光、音、振動等で知らせる形態であっても良い。ハウジング20については、想定される衝撃に耐え得る材質であれば良く、そして、その形状についても問われず、起歪体30の基端部33を後側グリップ部22の内部にて単に保持する形態であっても良い。
傾斜検出器60については、取付位置、検出傾斜角度及び種類等が問われず、図8に示すような形態のものを用いても良い。即ち、起歪体30の基端部33の面上に突起片331、331をR方向に並べて設ける一方、後側グリップ部22の内壁面に突起片331、331の近接を各々検出する位置検出スイッチ65をサブ基板64を介して取り付けるようにする。図8に示す実施形態では、後側グリップ部22の内壁が起歪体30に接触し、起歪体30に対して複数の力点位置が発生するよりも前の段階で位置検出スイッチ65の接点状態がオンになるように設定されている。具体的には後側グリップ部22の傾斜角度が±4.5°に達すると、位置検出スイッチ65の接点状態がオンになるようになっている。
ロック機構αについては、取付位置及び種類等が問われず、後側グリップ部22の内部にロックピンを入れて、起歪体30が動かないようにロックする形態であっても良い。
本発明の実施の形態を説明するための図面であって、(a),(b) はトルクレンチの正面図、側面図である。 図1中A−A線断面図である。 同トルクレンチの内部構造を示す模式図であって正面側から見た図である。 同トルクレンチのロック機構の分解斜視図である。 同ロック機構を構成するロック部の裏面図であって、(a),(b) はロック状態、フリー状態を示す図である。 同トルクレンチの電気的構成図である。 同トルクレンチのセンサ部の回路図であって、(a),(b) は歪みセンサを起歪体の片面、両面に取り付けた場合に使用する回路図である。 傾斜検出器の変形例を示すための図であって、トルクレンチの後側グリップ部の内部構造を示す模式図である。
符号の説明
10 締付部
20 ハウジング
21 前側カバー部
22 後側グリップ部
23 ロック部材
231 長穴
α ロック機構
30 起歪体
40 歪みセンサ
50 軸
60 傾斜検出器
70 設定部
80 メモリ部
100 チップマイコン
110 トルク演算部
120 エラー監視部
130 トルク判定部
200 センサ部
300 出力部

Claims (6)

  1. 締付部と、先端部に締付部が取替可能に連結された起歪体と、締付部の締付力に伴う起歪体の歪み量を検出する歪みセンサと、締付部の締付けトルクを演算するのに必要なトルク基準値が予め用意されており且つ当該トルク基準値及び歪みセンサの検出結果に基づいて締付けトルクを演算するトルク演算部と、少なくともトルク演算部の演算結果を締付けトルク測定値として出力する出力部とを具備したことを特徴とするトルクレンチ。
  2. 起歪体がハウジング内に収容された請求項1記載のトルクレンチにおいて、前記ハウジングは、起歪体の先端部を収容する筒状体であり且つ締付部の基端部が挿入される穴が先端面に形成された前側カバー部と、起歪体の基端部を収容する筒状体であり且つ締付部の締付力に直交した方向に延びた軸が内部に設けられた後側グリップ部とを有した二分割構造となっており、後側グリップ部が前側カバー部に対して若干傾斜可能なように起歪体が前記軸で軸支されていることを特徴とするトルクレンチ。
  3. 請求項2記載のトルクレンチにおいて、ハウジングの内部に設けられており且つ締付操作にて後側グリップ部が前側カバー部に対して所定角度傾斜をしたか否かを検出する傾斜検出器と、傾斜検出器の検出結果に基づいて出力部に測定エラーを出力させるエラー監視部とを備えていることを特徴とするトルクレンチ。
  4. 請求項1、2又は3記載のトルクレンチにおいて、締付けトルク設定値を設定するための設定部と、トルク演算部の演算結果が示すトルク測定値が設定部を通じて設定された締付けトルク設定値に近いか又は達したか否かを判定するとともに出力部に当該判定結果を出力させるトルク判定部とを備えていることを特徴とするトルクレンチ。
  5. 請求項2、3又は4記載のトルクレンチにおいて、ハウジングには後側グリップ部が前側カバー部に対して傾斜しないように解除可能にロックするロック機構が設けられていることを特徴とすることを特徴とするトルクレンチ。
  6. 請求項5記載のトルクレンチにおいて、ロック機構は、後側グリップ部の後端部に回動自在に設けられたロック部材を有し、前記ロック部材には起歪体の後端部が挿入される移動規制用の長穴が形成された構成となっていることを特徴とするトルクレンチ。
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