JP2006284769A - 光アイソレータ素子およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐環境性に優れ、小型化、薄型化が可能で、組立て部品点数が少なく、量産性に優れ、大幅な低価格化が図られる光アイソレータ素子およびその製造方法を提供する。
【解決手段】光アイソレータ素子1は、対向した一対の主面を有するファラデー回転子2と、ファラデー回転子2の各主面上にそれぞれ接合され、樹脂フィルムに二色性物質を吸着配向させた偏光フィルム3,4と、偏光フィルム3,4の外面にそれぞれ接合された一対の透明基板5などで構成される。
【選択図】 図1
【解決手段】光アイソレータ素子1は、対向した一対の主面を有するファラデー回転子2と、ファラデー回転子2の各主面上にそれぞれ接合され、樹脂フィルムに二色性物質を吸着配向させた偏光フィルム3,4と、偏光フィルム3,4の外面にそれぞれ接合された一対の透明基板5などで構成される。
【選択図】 図1
Description
本発明は、小型の光通信機器等に好適に利用され、各種光学素子や光ファイバに結合する際に生じる戻り光を除去するために用いられる光アイソレータ素子およびその製造方法に関する。また本発明は、こうした光アイソレータ素子を備える光アイソレータ付き光ファイバに関する。
レーザーダイオード(LD)等の光源から出射した光が、各種光学素子や光ファイバを透過する際、光の一部が界面等によって反射または散乱して、光源側へ戻ることがある。こうした戻り光を遮断するための光学部品として、一般には、光アイソレータが用いられる。
典型的な光アイソレータは、2枚の偏光子の間に平板状のファラデー回転子を設置し、これら3つの部品を3つの部品ホルダを介して筒状の磁石内に収納することにより構成されている。通常、ファラデー回転子は飽和磁界内において所定の波長をもつ光の偏光面を45°回転する厚みに調整され、また2つの偏光子はそれぞれの透過偏光方向が45°回転方向にずれるように回転調整されて構成されている。
このような構成の光アイソレータは、ファラデー回転子と2つの偏光子に別個のホルダが必要であるため、部品点数や組立工数が多くなり、各部品間の光学上の調整作業が煩雑でコスト高を招き、また小型化が難しい。
一方、平板状のファラデー回転子の両面にそれぞれ平板状の偏光子を接着一体化して光アイソレータ素子を構成し、この光アイソレータ素子を筒状磁石の内部中央に配置した光アイソレータが提案されている。
図4は、従来の光アイソレータの一例を示す部分破断斜視図である。これは、下記特許文献1に記載されたもので、光アイソレータ15は、ファラデー回転子16およびファラデー回転子16の両側に配置された一対の偏光子17,18とを含む光アイソレータ素子20と、ファラデー回転子16に磁界を供給するための円筒状の磁石21とを備える。ファラデー回転子16と各偏光子17,18の間には、光透過性が良く、適切な屈折率に制御された光学接着剤が充填され、光学素子同士を接着固定している。
各偏光子17,18は、通過する光の一方向の偏波成分を吸収し、その偏波成分に直交する偏波成分を透過させる機能を有する。また、ファラデー回転子16は、飽和磁界強度において所定波長の光の偏波面を約45度回転する機能を有する。また、各偏光子17,18は、それぞれの透過偏波方向が約45度ずれるように配置されている。
偏光子17,18は、ガラス基板内に金属粒子を分散させたガラス偏光子が用いられる。ガラス偏光子は、サブミクロン程度に長く延伸させた金属粒子をガラス自身の中に一方向に配列させることにより偏光特性を付与したガラスである。金属粒子の延伸方向に垂直な偏波面を持つ光が透過し、平行な偏波面を持つ光は吸収される。ガラス中の金属粒子は、ハロゲン化金属を還元処理することにより析出させるため、ガラスの両表面の50μm程度厚みにおいて、ハロゲン化金属が還元され金属粒子となり、偏光特性を示す。
図5は、図4に示す光アイソレータ素子20の製造方法を示す説明図である。まず図5(a)(b)に示すように、10mm角程度のガラス偏光子23、磁気光学基板22、およびガラス偏光子24を接着一体化して、積層基板25を得る。ここでガラス偏光子23の透過偏波方向は、磁気光学基板22のある一辺を基準線として平行な方向に設定され、ガラス基板24の透過偏波方向は、この基準線に対して45度の方向に設定され、磁気光学基板22およびガラス偏光子23,24の基準線が平行になるよう接着される。接着剤として、光学的に透明な樹脂、例えばエポキシ系やアクリル系の有機系接着剤が使用される。
ここで、光アイソレータ素子20に高いアイソレーションが要求される場合は、ファラデー回転子22の偏波回転角度45+α度に対し、ガラス偏光子23とガラス偏光子24の回転ズレを45−α度に精密に調整する必要がある。具体的には、光を逆方向から(偏光子基板24側から)入射し、透過してくる光が最も小さくなるように偏光子基板23と偏光子基板24を回転調整する。
次に、図5(c)(d)に示すように、ダイシング等を用いて、積層基板25を小さなチップ状に分割することによって、多数個の光アイソレータ素子20を作製する。この場合、大型のガラス偏光子と大型の磁気光学基板を交互に積層して、接着完了後にこれをカットして多数個の光アイソレータ素子20を得るといった方法を用いることにより、作業性や生産量が向上する。
一方、特許文献2に示す光アイソレータは、磁気光学素子の入射面および出射面において偏光機能を付けた偏光膜を有しており、この偏光膜は、平行な金属格子と、金属格子の隙間を埋める誘電体とで構成されている。
特許文献2に示す光アイソレータは、金属格子と誘電体を用いた偏光膜を使用しているが、具体的な作製方法は明記されていない。一般に、平面基板上に金属格子を形成する手法として、磁気光学素子にマスキングを行う方法や金属格子のための溝を切削加工することも考えられるが、前者ではマスキングの塗布、除去のため1面の偏光膜を作製するためには2回以上の蒸着が必要で、後者は溝を切削加工するため加工精度が厳しく加工時間も長くかかり、いずれも量産性が悪い。また、多層膜にすることも可能であるが、その場合は更に加工時間を要する。
本発明の目的は、耐環境性に優れ、小型化、薄型化が可能で、組立て部品点数が少なく、量産性に優れ、大幅な低価格化が図られる光アイソレータ素子およびその製造方法を提供することである。
また本発明の目的は、こうした光アイソレータ素子を備える光アイソレータ付き光ファイバをを提供することである。
上記目的を達成するために、本発明に係る光アイソレータ素子は、対向した一対の主面を有するファラデー回転子と、
ファラデー回転子の各主面上にそれぞれ接合され、樹脂フィルムに二色性物質を配向させた偏光フィルムからなる一対の偏光子と、
各偏光子の外面にそれぞれ接合された一対の透明基板とを備えることを特徴とする。
ファラデー回転子の各主面上にそれぞれ接合され、樹脂フィルムに二色性物質を配向させた偏光フィルムからなる一対の偏光子と、
各偏光子の外面にそれぞれ接合された一対の透明基板とを備えることを特徴とする。
本発明において、樹脂フィルムはポリビニルアルコール系フィルムからなり、二色性物質はヨウ素からなることが好ましい。
また本発明において、各透明基板の外表面には、反射防止膜が形成されていることが好ましい。
さらに、本発明に係る光アイソレータ素子の製造方法は、ファラデー効果を示す磁気光学基板の両面に、第1および第2の偏光フィルムをそれぞれ接合する工程と、
第1および第2の偏光フィルムの外面に、第1および第2の透明基板をそれぞれ接合して、積層基板を作成する工程と、
得られた積層基板をチップ状に分割することによって、多数個の光アイソレータ素子を製作する工程とを含むことを特徴とする。
第1および第2の偏光フィルムの外面に、第1および第2の透明基板をそれぞれ接合して、積層基板を作成する工程と、
得られた積層基板をチップ状に分割することによって、多数個の光アイソレータ素子を製作する工程とを含むことを特徴とする。
上記の偏光フィルムの接合工程において、第1および第2の偏光フィルムの透過偏波方向を互いに光軸周りで45±2度回転させ、各偏光フィルムの延伸方向に張力を加えた状態で、磁気光学基板の両面にそれぞれ接合することが好ましい。
さらに、本発明に係る光アイソレータ付き光ファイバは、上記の光アイソレータ素子が、光ファイバの端面に接合されていることを特徴とする。
本発明によれば、偏光子として、樹脂フィルムに二色性物質を吸着配向させた偏光フィルムを用いることによって、従来のガラス偏光子と比べて偏光子の低コスト化が図られるため、実用上良好な光学特性を示す光アイソレータを低コストで実現できる。
さらに、各偏光子の外面に、ガラス板などの透明基板をそれぞれ接合することによって、偏光フィルムの耐熱性、耐湿性、強度等を確保できるため、良好な耐環境性を示す光アイソレータを実現できる。また、透明基板を配置することによって、反射防止膜が形成可能になるため、光アイソレータの挿入損失を低減できる。
また、本発明に係る製造方法によれば、大面積の光アイソレータ積層基板を作成した後、チップ状に分割することによって、品質のばらつきが少ない光アイソレータ素子を低コストで量産することができる。
さらに、偏光フィルムの接合工程において、透過偏波方向を調整しつつ、偏光フィルムの延伸方向に張力を加えた状態で、磁気光学基板の両面にそれぞれ接合することによって、良好な偏光特性を維持しながら磁気光学基板に密着させることができる。
こうして得られた光アイソレータ素子は、小型化、薄型化が図られるため、光ファイバの端面に接合することが可能になり、より集積化された光アイソレータ付き光ファイバを実現できる。
図1は、本発明の一実施形態を示す斜視図である。光アイソレータ素子1は、ファラデー回転子2と、ファラデー回転子2の両側に配置された2つの偏光フィルム3,4と、各偏光フィルム3,4の外面にそれぞれ接合された2つの透明基板5などで構成され、典型的には、図4に示したような円筒状の永久磁石の内部空間に収容される。ファラデー回転子2、偏光フィルム3,4および各ガラス板5は、接着剤を用いて一体化される。
ファラデー回転子2は、YIG単結晶やBi置換ガーネット結晶など、ファラデー効果を示す材料で構成され、対向した一対の主面を有する板状に形成される。ファラデー回転子2の厚みは、所定の波長を持つ入射光線の偏光面がファラデー効果によって45度回転するように設定される。ファラデー効果に必要な磁界は、一般には永久磁石(不図示)から供給されるが、ファラデー回転子2の材料として、磁気ヒステリシスが非常に大きく、磁石がなくても自磁力を保持する磁力保持型の材料、例えば(TbBi)3(FeAlGa)5O12等を用いれば、永久磁石を省くことができる。
偏光フィルム3,4は、特定方向の直線偏光を通過させる透過偏波方向を有し、ファラデー回転子2の各主面にそれぞれ接合される。偏光フィルム3,4の各透過偏波方向は、ファラデー回転子2を挟んで、光軸周りで相対的に略45゜回転するように設定される。
本実施形態では、偏光子として、樹脂フィルムに二色性物質を吸着配向させた偏光フィルム3,4を使用している。偏光フィルム3,4は、入射光の1方向の偏光成分を吸収する機能を有する吸収型偏光子として機能する。詳細には、延伸された二色性物質を樹脂フィルムの中に一方向に配列させることにより、偏光特性を付与しており、フィルムの延伸方向に垂直な偏波面を持つ光が透過し、平行な偏波面を持つ光は吸収される。
偏光フィルム3,4に用いる樹脂フィルムとして、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムあるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルムが使用でき、一般には、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、これらをエチレン、プロピレンなどのオレフィンやクロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等で変性したもの、EVA樹脂(エチレン−ビニルアセテート樹脂)、ケン化EVA樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂などからなる高分子フィルムを採用することができる。
また、偏光フィルム3,4に用いる二色性物質として、例えば、色素原子または金属粒子または二色性染料が使用できる。色素原子としては、ヨウ素(I)、金属粒子としては、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)などを採用することができる。また、二色性染料として、アゾ系染料、アントラキノン系染料、キノフタロン系染料、ペリレン系染料、ナフトキノン系染料、テトラジン系染料などを採用することができる。
特に、樹脂フィルムとしてポリビニルアルコール系フィルムを使用し、二色性物質としてヨウ素を使用した偏光フィルムが好ましく、これによって安定した品質で低コストの偏光フィルムを実現できる。特に、偏光フィルムは、液晶パネル等のディスプレイにおいて安定した品質で量産されているため、従来のガラス偏光子と比べて大型で安価なものが容易に入手できることから、積層基板の大型化による生産性の向上が図られる。
本実施形態に係る偏光フィルム3,4は、任意の方法で製造することができ、例えば下記に示すような手法が採用できるが、本発明はこれに限定されるものではない。
ヨウ素または二色性染料の水溶液、またはさらにこの水溶液にヨウ化カリウム及び/または硫酸を加えた水溶液を常温もしくは加温(30〜60℃)しておき、該水溶液にポリビニルアルコール系フィルム、またはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルムを含浸染色し3〜5倍に延伸するか、またはあらかじめ延伸フィルムを上記含浸液に浸漬して染色する。得られたフィルムは緊張を保ちながらアルコール、または水で表面を洗浄し、乾燥して偏光フィルムを得る。偏光フィルムの厚みは約50μm程度で40dB以上の十分な消光特性を有する。逆に偏光フィルムの厚みが100μmを超えると、光通信波長の1.31μmあるいは1.55μmに対して損失が0.3dB以上となり、本発明の光アイソレータの用途としてはあまり望ましくない。従って、偏光フィルム3,4の厚みは、100μm以下が望ましい。
偏光フィルム3、4に用いるポリビニルアルコール系フィルムは、長時間の高温高湿雰囲気下において吸水率が大きく、吸水するにつれ偏光物性の低下が起こって、いわゆる耐湿性や寸法安定性に問題が生じたり、また、高温下におかれると偏光度も低下して、耐熱性が損なわれたりする可能性がある。
そこで、本発明においては、偏光フィルム3,4の外面に、例えば、ガラス板などの透明基板5を接合することによって、偏光フィルム3,4への水分の浸入を防いでいる。
透明基板5として、使用する光波長に対して透明な光学材料、例えば、ガラス、石英、水晶等の無機材料や、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、トリアセテート(PAC)、ポリイミド等の高分子材料が使用可能であり、特に、屈折率が1.4〜1.6で、光学的に透明で、水分に対して耐白やけ性が高いガラス、例えば、BK7等を用いることが望ましい。
また、偏光フィルム3,4の外面に、透明基板5を配置することによって、例えば、誘電体多層膜などの、対空気の反射防止膜を形成することができる。こうした反射防止膜を施すことにより、透明基板5の端面での反射損失を防ぐことができ、光アイソレータ素子1の挿入損失を低減できる。
ファラデー回転子2、偏光フィルム3,4および透明基板5を接合するための接着剤は、公知のものが任意に使用できるが、例えば、ポリビニルアルコール及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子、あるいはアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が好ましい。
図2は、本発明に係る光アイソレータ素子1の製造方法を示す説明図である。まず、図2(a)に示すように、10mm角程度のファラデー効果を示す磁気光学基板22を用意して、磁気光学基板22の両面側に偏光フィルム33,34を配置する。このとき、偏光フィルム33,34の透過偏波方向を互いに光軸周りで45±2度回転させ、各偏光フィルム33,34の延伸方向(図2(a)の矢印A)に張力を加えた状態で、接着剤を用いて磁気光学基板の両面にそれぞれ接合する。
次に、偏光フィルム33,34の外面に、透明基板として2枚のガラス基板31を接着剤でそれぞれ接合して、ウエハ状の光アイソレータ素子を構成する積層基板35を作成する。
次に、図2(c)(d)に示すように、ダイシング等を用いて、積層基板35を小さなチップ状に分割することによって、図1に示すような多数個の光アイソレータ素子1を作製する。その際、偏光フィルム33,34は、従来のガラス偏光子と比べて大型で安価なものが容易に入手できることから、積層基板35の大型化により1バッチ当たりの製品個数が増加して、生産性を向上させることができる。
また、ガラス基板31は、偏光フィルム33,34を保護する役割を有することから、ダイシング加工時に使用する水や振動によって偏光フィルム33,34が損傷したり、劣化するのを確実に防止することができる。
図3は、本発明に係る光アイソレータの実測特性の一例を示すグラフであり、図3(a)はアイソレーション特性、図3(b)は挿入損失を示す。ここでは、波長1280〜1340nmの範囲の測定光を用いたときの実測値をプロットしている。
図3(a)に示すアイソレーション特性は、従来のアイソレータと同等で良好な特性を示している。また、従来のアイソレータの挿入損失は0.3dB程度であるのに対して、図3(b)に示す挿入損失は0.5dBと若干劣っている。これは、偏光フィルム内での光の吸収が影響していると考えられるが、この程度の損失の増加は、実用上全く問題ないレベルである。
以上説明したように、本発明によれば、偏光子を偏光フィルムで構成することにより、光アイソレータの小型化、薄型化が可能となり、量産性が良く大幅な低価格化が実現できる。また耐環境性のよい光アイソレータが実現する。
また、こうして得られた光アイソレータ素子は、小型化、薄型化が図られるため、光ファイバの端面に接合することが可能になり、より集積化された光アイソレータ付き光ファイバを実現できる。
本発明に係る光アイソレータ素子を評価するために、A)本発明として、図1に示した光アイソレータ素子(偏光フィルムおよび保護ガラス)、B)比較例1として、図1に示した光アイソレータ素子(偏光フィルム単体、保護ガラス無し)、C)比較例2として、図4に示した従来の光アイソレータ素子(ガラス偏光子)をそれぞれを試作し、その特性と信頼性について比較した。各部品と構成について以下に説明する。
比較例2として、従来の光アイソレータは、ガラス偏光子として、コーニング社製のポーラコア(製品名)を用い、サイズは10mm角で厚み0.2mmのものを使用し、入射側のガラス偏光子は基準辺に平行な偏波方向を透過し、出射側のガラス偏光子は基準辺に対して45度の偏波方向を透過するように設定したものを使用した。ファラデー回転子基板は、ビスマス置換ガーネットを用い、サイズは10mm角で厚み0.25mm、飽和磁界強度中における偏波回転角は45度であった。いずれも波長1.31μmの光に対して動作する素子であり、ファラデー回転子基板の両面には対接着剤(n=1.5)の反射防止膜が施されている。
これに対して本発明の光アイソレータでは、偏光子としてPVA(ポリビニルアルコール)をヨウ素で染色した偏光フィルムで、厚み0.05mm、サイズは50mm角のものを用い、これにあわせて、ファラデー回転子基板も従来と同じ材料で50mm角のものを用いた。保護ガラスは、厚み0.1mmのBK7のガラス板を用い、光の入出射面には対空気のAR(反射防止)コートを施した。接着剤は、水分の浸入を防ぐためにアクリル系の透明樹脂を用いた。磁石は、サマリウムコバルトからなるドーナッツ形状のものを用いた。
また比較例1として、上述の光アイソレータにおいて、偏光子としてPVAをヨウ素で染色した偏光フィルムで、厚み0.05mm、サイズは50mm角のものを用いた。保護ガラスは接合していない。
いずれの光アイソレータも、ダイシング装置にて1mm角のチップ状に加工した。その結果、従来の光アイソレータは1バッチ処理で64個、本発明の光アイソレータは1936個のチップの作製が可能となり、数量として30倍、時間にして1/10のタクトタイム短縮がはかられた。
また試作した光アイソレータの厚みは、従来の光アイソレータが0.65mmに対し、本発明の光アイソレータは0.55mmと薄型化が実現した。
このように試作した3種類の光アイソレータの特性を抜き取りで各20個測定したところ、従来のアイソレータ、本発明のアイソレータとも挿入損失は0.5dB以下、アイソレーション40dB以上の良好な特性が確認できた。またこれらの光アイソレータを85℃85%の高温高湿で500時間放置したが、いずれの光アイソレータとも特性の劣化は見られなかった。また、本発明の光アイソレータにおいても、偏光フィルム部のはがれ、膨潤によるしみ等は見られなかった。以上の評価結果を下記(表1)に示す。
このように本発明によれば、偏光子として偏光フィルムを使用することにより、光アイソレータの小型化、薄型化が可能となり、量産性が良く大幅な低価格化が実現できる。また耐環境性に優れた光アイソレータが実現し、改善効果が十分確認できた。
本発明は、実用上良好な光学特性、耐久性、信頼性を備えた光アイソレータ素子を実現できることから、産業上極めて有用である。
1:光アイソレータ素子
2:ファラデー回転子
3,4,33,34:偏光フィルム
5:透明基板
22:磁気光学基板
35:積層基板
31:ガラス基板
2:ファラデー回転子
3,4,33,34:偏光フィルム
5:透明基板
22:磁気光学基板
35:積層基板
31:ガラス基板
Claims (6)
- 対向した一対の主面を有するファラデー回転子と、
ファラデー回転子の各主面上にそれぞれ接合され、樹脂フィルムに二色性物質を配向させた偏光フィルムからなる一対の偏光子と、
各偏光子の外面にそれぞれ接合された一対の透明基板とを備えることを特徴とする光アイソレータ素子。 - 樹脂フィルムはポリビニルアルコール系フィルムからなり、二色性物質はヨウ素からなることを特徴とする請求項1記載の光アイソレータ素子。
- 各透明基板の外表面には、反射防止膜が形成されていることを特徴とする請求項1記載の光アイソレータ素子。
- ファラデー効果を示す磁気光学基板の両面に、第1および第2の偏光フィルムをそれぞれ接合する工程と、
第1および第2の偏光フィルムの外面に、第1および第2の透明基板をそれぞれ接合して、積層基板を作成する工程と、
得られた積層基板をチップ状に分割することによって、多数個の光アイソレータ素子を製作する工程とを含むことを特徴とする光アイソレータ素子の製造方法。 - 偏光フィルムの接合工程において、第1および第2の偏光フィルムの透過偏波方向を互いに光軸周りで45±2度回転させ、各偏光フィルムの延伸方向に張力を加えた状態で、磁気光学基板の両面にそれぞれ接合することを特徴とする請求項4に記載の光アイソレータ素子の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の光アイソレータ素子が、光ファイバの端面に接合されていることを特徴とする光アイソレータ付き光ファイバ。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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2005
- 2005-03-31 JP JP2005102776A patent/JP2006284769A/ja active Pending
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