以下、本発明の電気式動力舵取装置の実施形態について図を参照して説明する。なお、以下の各実施形態では、本発明の電気式動力舵取装置を自動車等の車両の電気式動力舵取装置に適用した例を挙げて説明する。
まず、本発明の電気式動力舵取装置の実施形態のベースとなる技術として、電気式動力舵取装置10の主な構成を図1に基づいて説明する。
図1に示すように、電気式動力舵取装置10は、主に、ステアリングホイール11、ステアリング軸12、ピニオン軸13、トーションバー14、角度センサ15、16、減速機17、ラックピニオン18、モータ回転角センサ19、モータM、ECU20等から構成されており、ステアリングホイール11による操舵状態を検出し、その操舵状態に応じたアシスト力をモータMにより発生させて操舵をアシストするものである。
即ち、ステアリングホイール11にはステアリング軸12の一端側が連結され、このステアリング軸12の他端側にはトーションバー14の一端側が連結されている。またこのトーションバー14の他端側にはピニオン軸13の一端側が連結され、このピニオン軸13の他端側にはラックピニオン18のピニオンギアが連結されている。またステアリング軸12およびピニオン軸13には、それぞれの回転角(ステアリング角θ1、θ2)を絶対的あるいは相対的に検出可能な角度センサ15、16がそれぞれ設けられており、各々がECU20に電気的に接続されている。なおこれらの角度センサ15、16としては、例えばアブソリュートエンコーダ、レゾルバ等の絶対角度センサや、インクリメンタルエンコーダ等の相対角度センサが用いられる。
なお、トーションバー14の両端には、マニュアルストッパと呼ばれる機械的な回転制限部が構成されているため、トーションバー14のねじれ角は一定角度(例えば±6゜)で規制されている。これにより、ねじれ量の過剰増加によるトーションバー14の破損を防止している。
これにより、ステアリング軸12とピニオン軸13とをトーションバー14により相対回転可能に連結することができるとともに、ステアリング軸12の回転角(ステアリング角θ1 )を角度センサ15により、またピニオン軸13の回転角(ステアリング角θ2 )を角度センサ16により、それぞれ検出することができる。そのため、ステアリング軸12の回転角を角度センサ15によってステアリング角θ1 として検出することができるとともに、角度センサ15によるステアリング軸12のステアリング角θ1 と角度センサ16によるピニオン軸13のステアリング角θ2 との角度差(偏差)や角度比等からトーションバー14のねじれ量をねじれ角として検出することができる。
また、このピニオン軸13の途中には、モータMにより発生する駆動力を所定の減速比で伝達する減速機17が図略のギアを介して噛合されており、当該減速機17介してモータMの駆動力、つまりアシスト力をピニオン軸13に伝え得るように構成されている。さらにこのモータMにも、その回転角を検出し得るモータ回転角センサ19が設けられており、このモータ回転角センサ19もECU20に電気的に接続されている。このモータ回転角センサ19にも、例えばアブソリュートエンコーダ、レゾルバ等の絶対角度センサや、インクリメンタルエンコーダ等の相対角度センサが用いられる。
これにより、角度センサ15、16、モータ回転角センサ19により検出された回転角信号をECU20に送出することができるため、ECU20ではこれらの各回転角信号に基づいてモータMにより発生させるアシスト力を次述するように決定することができる。なお、ラックピニオン18の両側には、それぞれタイロッド等を介して図略の車輪が連結されている。
次に、電気式動力舵取装置10を構成するECU20等の電気的構成および動作を図2に基づいて説明する。
図2に示すように、ECU20は、主に、アシストトルク決定手段21、電流制御手段23等により構成されており、具体的にはCPU、メモリ素子、各種インタフェイス回路等から構成されている。
アシストトルク決定手段21は、角度センサ15により検出されたステアリング角θ1 と角度センサ16により検出されたステアリング角θ2 とに基づいて、モータMにより発生させるアシスト力を決定するものである。例えば、ステアリング角θ1、θ2の角度差(偏差)や角度比等に対応して予め設定されたアシスト電流指令IA *のマップや所定の演算処理等によって、アシスト電流指令IA *を求めている。
またアシストトルク決定手段21では、このようなステアリング角θ1、θ2の角度差等に対応して予め設定されたアシスト電流指令IA *のマップ等とは別に、ステアリング角θ1、θ2のいずれか一方からアシスト電流指令IA *を求め得るマップや所定の演算処理等を設けている。これにより、ステアリング角θ1 またはステアリング角θ2 のいずれか一方から、トーションバー14のねじれ量をねじれ角として検出することもできる。
電流制御手段23は、アシストトルク決定手段21により決定されたアシスト電流指令IA *をモータMに流れる実電流IA に基づいて電圧に変換して電圧指令V* を出力するものである。即ち、電流制御手段23では、モータ電流検出手段27により検出されたモータMに流れる実電流IA を負帰還させることによって目標とする電圧指令V* を出力するように制御している。
モータ駆動手段25は、PWM回路24とスイッチング素子Q1〜Q4とにより構成されている。PWM回路24は、ECU20とは異なるハードウェアにより実現されるパルス幅変調回路で、電流制御手段23から出力される電圧指令V* に応じたパルス幅をもつパルス信号をU相、V相ごとに出力し得るように構成されている。これにより、出力側に接続されるスイッチング素子Q1〜Q4の各ゲートに対応するU相、V相のパルス信号を与えることができるので、パルス幅に応じてスイッチング素子Q1〜Q4をオンオフ動作させることにより、任意にモータMを駆動制御することができる。
このように本実施形態のベースとなる技術に係る電気式動力舵取装置10では、ステアリング軸12とピニオン軸13とをトーションバー14により相対回転可能に連結し、ステアリング軸12のステアリング角θ1 を角度センサ15により、またピニオン軸13のステアリング角θ2 を角度センサ16により、それぞれ検出する。そして、アシストトルク決定手段21により、ステアリング軸12のステアリング角θ1 およびピニオン軸13のステアリング角θ2 の少なくとも一方に基づいて、モータMにより発生させるアシスト力を決定する。これにより、ステアリング軸12のステアリング角θ1 を検出することができるとともに、ステアリング軸12のステアリング角θ1 とピニオン軸13のステアリング角θ2 との少なくとも一方からトーションバー14のねじれ量をねじれ角として検出することができるので、例えばセルフアライニング制御を要求される場合等において、ステアリングホイール11の操舵角を考慮したアシスト制御をすることができる。したがって、操舵角に基づくアシスト制御をし得る効果がある。
[第1改変例]
次に、このような電気式動力舵取装置10の第1の改変例(以下「第1改変例」という)に係る電気式動力舵取装置を図3および図4に基づいて説明する。
図3に示すように、第1改変例の電気式動力舵取装置では、角度センサ15により検出したステアリング角θ1 と角度センサ16により検出したステアリング角θ2 との偏差(θ1−θ2)であるトーションバー14のねじれ角ΔθH を演算手段33により求め、このねじれ角ΔθH に基づいてアシストトルク決定手段31によりアシスト電流指令IA *を算出する。この点が、本第1改変例のECUの電気的構成において、前述したECU20の電気的構成と異なる。したがって、第1改変例に係る電気式動力舵取装置の機械的な構成は、前述の電気式動力舵取装置10と同様であるので、その説明を省略し、また必要に応じて図1を援用して説明する。
図4に示すように、第1改変例では、アシストトルク決定手段31を位相補償部31aとアシスト電流演算部31bとにより構成する。これにより、アシストトルク決定手段31にステアリング軸12のステアリング角θ1 とピニオン軸13のステアリング角θ2 との偏差(θ1−θ2)、つまりトーションバー14のねじれ角ΔθH が入力されると、位相補償部31aによってトーションバー14のねじれ角ΔθH ついて位相補償した後、位相補償されたねじれ角ΔθH ’に基づいてアシスト電流演算部21bによりマップや所定の演算処理等にてアシスト電流指令IA *を算出する。ここで、位相補償部21aの((1+T2 ・S)/(1+T1 ・S))において、T1 、T2 はフィルタ定数を示し、Sは微分演算子を示す。
このように第1改変例による電気式動力舵取装置では、ステアリング軸12とピニオン軸13とをトーションバー14により相対回転可能に連結し、ステアリング軸12のステアリング角θ1 を角度センサ15により、またピニオン軸13のステアリング角θ2 を角度センサ16により、それぞれ検出する。そして、アシストトルク決定手段31により、ステアリング軸12のステアリング角θ1 とピニオン軸13のステアリング角θ2 との偏差(θ1−θ2)に基づいて、モータMにより発生させるアシスト力を決定する(図1、図3参照)。これにより、ステアリング軸12のステアリング角θ1 を検出することができるとともに、トーションバー14のねじれ量をねじれ角ΔθH として検出することができるので、例えばセルフアライニング制御を要求される場合等において、ステアリングホイール11の操舵角を考慮したアシスト制御をすることができる。したがって、前述の電気式動力舵取装置10と同様、操舵角に基づくアシスト制御をし得る効果がある。
[第2改変例]
次に、前述した電気式動力舵取装置10の第2の改変例(以下「第2改変例」という)に係る電気式動力舵取装置を図5および図6に基づいて説明する。
図5に示すように、第2改変例に係る電気式動力舵取装置では、角度センサ15、16のそれぞれの異常を検出する角度センサ異常検出手段43を備え、この角度センサ異常検出手段43により、角度センサ15、16のいずれか一方に異常を検出した場合、正常な角度センサにより検出されたステアリング角θに基づいてアシストトルク決定手段41によりアシスト電流指令IA *を算出する。この点が、本第2改変例のECUの電気的構成において、前述したECU20の電気的構成と異なる。したがって、第2改変例に係る電気式動力舵取装置の機械的な構成は、前述の電気式動力舵取装置10と同様であるので、その説明を省略し、また必要に応じて図1を援用して説明する。なお、図5には、角度センサ16に異常を生じた場合の例が示されている。
図5に示すように、第2改変例の電気式動力舵取装置は、角度センサ異常検出手段43を備えており、この角度センサ異常検出手段43により角度センサ15、16の異常を検出し、検出信号をアシストトルク決定手段41に送出し得るように構成されている。角度センサ15、16の異常検出は、例えば、所定間隔ごとに行われるタイマ割り込み処理により実行され、角度センサ15、16から出力される回転角(ステアリング角θ1、θ2)の値が一定の範囲内(例えば0゜以上12゜以下)にあるか否かを監視することにより行われる。当該所定範囲内になければ当該角度センサに異常が生じたものと判断する。
図6に示すように、アシストトルク決定手段41は、位相補償部41a(41c)とアシスト電流演算部41b(41d)とから構成され、角度センサ15、16から入力されるステアリング角θ1、θ2ごとに用意されている。即ち、角度センサ15、16のうち、正常な角度センサから入力される一方のステアリング角に基づいてアシスト電流指令IA *を算出することができるように、ステアリング角θ1、θ2ごとに位相補償部41a、41cおよびアシスト電流演算部41b、41dが構成されている。
これにより、例えば図5に示すように、角度センサ異常検出手段43により角度センサ16の異常が検出された場合には(図5に示す角度センサ16の×印)、正常な角度センサ15からステアリング角θ1 が入力されるので、位相補償部41aによりステアリング角θ1 について位相補償した後、位相補償されたステアリング角θ1 ’に基づいてアシスト電流演算部41bによりマップや所定の演算処理等にてアシスト電流指令IA *を算出する。ここで、位相補償部41a(41c)の((1+T2 ・S)/(1+T1 ・S))において、T1 、T2 はフィルタ定数を示し、Sは微分演算子を示す。
一方、角度センサ異常検出手段43により角度センサ15の異常が検出された場合には、正常な角度センサ16からステアリング角θ2 が入力されるので、位相補償部41cによりステアリング角θ2 について位相補償した後、位相補償されたステアリング角θ2 ’に基づいてアシスト電流演算部41dによりマップや所定の演算処理等にてアシスト電流指令IA *を算出する。
なお、アシスト電流演算部41b(41d)で用いられるマップや所定の演算処理等は、正常な一方のステアリング角θ1(θ2)からアシスト電流指令IA *を求めるものである。そのため、前述したアシスト電流演算部31bによるものよりも、算出されるアシスト電流指令IA *の精度が低下する場合もあり得るが、故障した他方の角度センサが回復するまでの間、暫定的にアシスト電流指令IA *を求めてモータMによるアシスト力を発生させることができる点も、本第2改変例の電気式動力舵取装置の特徴である。
このように第2改変例による電気式動力舵取装置では、角度センサ異常検出手段43により、角度センサ15および角度センサ16のいずれか一方に異常を検出した場合、アシストトルク決定手段41は、正常な他方により検出されたステアリング角θ1(θ2)に基づいてモータMにより発生させるアシスト力を決定する(図1、図5参照)。これにより、角度センサ15または角度センサ16のいずれか一方に異常が生じても、正常な他方により検出されたステアリング角θ1(θ2)に基づいてアシスト力を決定することができる。したがって、一の角度センサに異常が生じても、適切なアシスト制御をし得る効果がある。
[第3改変例]
次に、前述した電気式動力舵取装置10の第3の改変例(以下「第3改変例」という)に係る電気式動力舵取装置を図7および図8に基づいて説明する。
図7に示すように、第3改変例に係る電気式動力舵取装置では、角度センサ15、16のそれぞれの異常を検出する角度センサ異常検出手段53と、車速Vを検出または推定する車速センサ55と、を備え、この角度センサ異常検出手段53により、角度センサ15、16のいずれか一方に異常を検出した場合、正常な角度センサにより検出されたステアリング角θと、車速センサ55により検出または推定された車速Vと、に基づいてアシストトルク決定手段51によりアシスト電流指令IA *を算出する。この点が、本第3改変例のECUの電気的構成において、前述したECU20の電気的構成と異なる。なお、図7には、角度センサ16に異常を生じた場合の例が示されている。
また、前述した第2改変例の電気式動力舵取装置の電気的構成と比較すると、車速センサ55を備え、この車速センサ55により検出または推定された車速Vにも基づいて、アシストトルク決定手段51によりアシスト電流指令IA *を算出する点が異なる。したがって、第3改変例に係る電気式動力舵取装置の機械的な構成は、前述の電気式動力舵取装置10と同様であるので、その説明を省略し、また必要に応じて図1を援用して説明する。
図7に示すように、第3改変例の電気式動力舵取装置は、角度センサ異常検出手段53と車速センサ55とを備えている。
この角度センサ異常検出手段53は、第2改変例で説明した角度センサ異常検出手段43と同様、角度センサ15、16の異常を検出し、検出信号をアシストトルク決定手段41に送出し得るように構成されている。例えば所定間隔ごとに行われるタイマ割り込み処理により、角度センサ15、16から出力される回転角(ステアリング角θ1、θ2)の値が一定の範囲内(例えば0゜以上20゜以下)にあるか否かを監視し、当該所定範囲内になければ当該角度センサに異常が生じたものと判断する。
一方、車速センサ55は、車速Vを検出あるいは推定し得るもので、検出信号または推定信号をアシストトルク決定手段41に送出し得るように構成されている。車速Vの検出または推定も、角度センサ15、16の異常検出と同様、例えば、所定間隔ごとに行われるタイマ割り込み処理により実行される。
図8に示すように、アシストトルク決定手段51は、位相補償部51a(51c)とアシスト電流演算部51b(51d)と車速補正ゲイン演算部51eと乗算器51fとから構成されている。このうち位相補償部51a(51c)およびアシスト電流演算部51b(51d)は、第2改変例で説明した位相補償部41a、41cおよびアシスト電流演算部41b、41dと同様、角度センサ15、16のうち、正常な角度センサから入力される一方のステアリング角に基づいてアシスト電流指令IA0 * を算出することができるように、ステアリング角θ1、θ2ごとに用意されている。
また、車速補正ゲイン演算部51eには、車速センサ55により検出または推定された車速Vに対応して所定の特性、例えば一定以上の車速Vの増大に対し車速補正ゲインGV が減少する特性(0≦GV ≦1)を有する車速補正ゲインGV を出力し得るマップや所定の演算処理等が予め設定されている。そして、車速補正ゲイン演算部51eから出力される車速補正ゲインGV は、乗算器51fを介してアシスト電流演算部51b(51d)から出力されるアシスト電流指令IA0 * と乗算処理されてアシスト電流指令IA *として出力される。つまり、車速に基づくアシスト電流指令IA *を出力している。
これにより、例えば図7に示すように、角度センサ異常検出手段53により角度センサ16の異常が検出された場合には(図7に示す角度センサ16の×印)、正常な角度センサ15からステアリング角θ1 が入力されるので、位相補償部51aおよびアシスト電流演算部51bによりマップや所定の演算処理等にてアシスト電流指令IA0 * を算出し、このアシスト電流指令IA0 * に車速補正ゲイン演算部51eによる車速Vに対応する車速補正ゲインGV を乗じてアシスト電流指令IA *を出力する。ここで、位相補償部51a(51c)の((1+T2 ・S)/(1+T1 ・S))において、T1 、T2 はフィルタ定数を示し、Sは微分演算子を示す。
一方、角度センサ異常検出手段53により角度センサ15の異常が検出された場合には、正常な角度センサ16からステアリング角θ2 が入力されるので、位相補償部51cおよびアシスト電流演算部51dによりマップや所定の演算処理等にてアシスト電流指令IA0 * を算出し、このアシスト電流指令IA0 * に車速補正ゲイン演算部51eによる車速Vに対応する車速補正ゲインGV を乗じてアシスト電流指令IA *を出力する。
なお、アシスト電流演算部51b(51d)で用いられるマップや所定の演算処理等は、正常な一方のステアリング角θ1(θ2)からアシスト電流指令IA0 * を求めるものである。そのため、前述したアシスト電流演算部31bによるものよりも、算出されるアシスト電流指令IA *の精度が低下する場合もあり得るが、故障した他方の角度センサが回復するまでの間、暫定的にアシスト電流指令IA *を求めてモータMによるアシスト力を発生させることができる。
このように第3改変例による電気式動力舵取装置では、角度センサ異常検出手段53により、角度センサ15および角度センサ16のいずれか一方に異常を検出した場合、アシストトルク決定手段51は、正常な他方により検出されたステアリング角θ1(θ2)と、車速センサ55により検出または推定された車速Vと、に基づいてモータMにより発生させるアシスト力を決定する(図1、図7参照)。これにより、角度センサ15または角度センサ16のいずれか一方に異常が生じても、正常な他方により検出されたステアリング角θ1(θ2)に加えて車速Vにも基づいてモータMにより発生させるアシスト力を決定することができる。したがって、一の角度センサに異常が生じても、適切なアシスト制御をし得る効果がある。
[第4改変例]
次に、前述した電気式動力舵取装置10の第4の改変例(以下「第4改変例」という)に係る電気式動力舵取装置を図9および図10に基づいて説明する。
図9に示すように、第4改変例に係る電気式動力舵取装置では、角度センサ15、16のそれぞれの異常を検出する角度センサ異常検出手段63と、ステアリングホイール11の角速度(dθS/dt)を推定するステアリング角速度推定手段65と、を備え、この角度センサ異常検出手段63により、角度センサ15、16のいずれか一方に異常を検出した場合、正常な角度センサにより検出されたステアリング角θと、ステアリング角速度推定手段65により推定されたステアリングホイール11の角速度(dθS/dt)と、に基づいてアシストトルク決定手段61によりアシスト電流指令IA *を算出する。この点が、本第4改変例のECUの電気的構成において、前述のECU20の電気的構成と異なる。なお、図9には、角度センサ16に異常を生じた場合の例が示されている。
また、前述した第2改変例の電気式動力舵取装置の電気的構成を比較すると、ステアリング角速度推定手段65を備え、このステアリング角速度推定手段65により推定されたステアリングホイール11の角速度(dθS/dt)にも基づいて、アシストトルク決定手段61によりアシスト電流指令IA *を算出する点が異なる。したがって、第4改変例に係る電気式動力舵取装置の機械的な構成は、前述の電気式動力舵取装置10と同様であるので、その説明を省略し、また必要に応じて図1を援用して説明する。
図9に示すように、第4改変例の電気式動力舵取装置は、角度センサ異常検出手段63とステアリング角速度推定手段65とを備えている。
この角度センサ異常検出手段63は、第2改変例で説明した角度センサ異常検出手段43と同様、角度センサ15、16の異常を検出し、検出信号をアシストトルク決定手段41に送出し得るように構成されており、例えば所定間隔ごとに行われるタイマ割り込み処理により、角度センサ15、16から出力される回転角(ステアリング角θ1、θ2)の値が一定の範囲内(例えば0゜以上20゜以下)にあるか否かを監視する。当該所定範囲内になければ当該角度センサに異常が生じたものと判断する。
一方、ステアリング角速度推定手段65は、ステアリングホイール11のステアリング角速度(dθS/dt)を推定し得るもので、例えば角度センサ15により検出したステアリング角θ1の単位時間当たりの角度変動量から推定した推定信号をアシストトルク決定手段41に送出し得るように構成されている。このステアリング角速度(dθS/dt)の推定も、角度センサ15、16の異常検出と同様、例えば、所定間隔ごとに行われるタイマ割り込み処理により実行される。
図10に示すように、アシストトルク決定手段61は、位相補償部61a(61c)とアシスト電流演算部61b(61d)とステアリング角速度補正ゲイン演算部61e、乗算器61fとから構成されている。このうち位相補償部61a(61c)およびアシスト電流演算部61b(61d)は、第3改変例で説明した位相補償部51a、51cおよびアシスト電流演算部51b、51dと、それぞれ同様であるので、ここではこれらの説明を省略する。
また、ステアリング角速度補正ゲイン演算部61eには、ステアリング角速度推定手段65により推定されたステアリング角速度(dθS/dt)に対応して所定の特性、例えばステアリング角速度(dθS/dt)の増大に対しステアリング角速度補正ゲインGS が増加する特性(0≦GS ≦1)を有するステアリング角速度補正ゲインGS を出力し得るマップや所定の演算処理等が予め設定されている。そして、ステアリング角速度補正ゲイン演算部61eから出力されるステアリング角速度補正ゲインGS は、乗算器61fを介してアシスト電流演算部61b(61d)から出力されるアシスト電流指令IA0 * と乗算処理されてアシスト電流指令IA *として出力される。つまり、ステアリング角速度に基づくアシスト電流指令IA *を出力する。
これにより、例えば図9に示すように、角度センサ異常検出手段63により角度センサ16の異常が検出された場合には(図9に示す角度センサ16の×印)、正常な角度センサ15からステアリング角θ1 が入力されるので、位相補償部61aおよびアシスト電流演算部61bによりマップや所定の演算処理等にてアシスト電流指令IA0 * を算出し、このアシスト電流指令IA0 * にステアリング角速度補正ゲイン演算部61eによるステアリング角速度(dθS/dt)に対応するステアリング角速度補正ゲインGS を乗じてアシスト電流指令IA *を出力する。ここで、位相補償部61a(61c)の((1+T2 ・S)/(1+T1 ・S))において、T1 、T2 はフィルタ定数を示し、Sは微分演算子を示す。
一方、角度センサ異常検出手段63により角度センサ15の異常が検出された場合には、正常な角度センサ16からステアリング角θ2 が入力されるので、位相補償部61cおよびアシスト電流演算部61dによりマップや所定の演算処理等にてアシスト電流指令IA0 * を算出し、このアシスト電流指令IA0 * にステアリング角速度補正ゲイン演算部61eによるステアリング角速度(dθS/dt)に対応するステアリング角速度補正ゲインGS を乗じてアシスト電流指令IA *を出力する。
なお、アシスト電流演算部61b(61d)で用いられるマップや所定の演算処理等は、正常な一方のステアリング角θ1(θ2)からアシスト電流指令IA0 * を求めるものである。そのため、前述したアシスト電流演算部31bによるものよりも、算出されるアシスト電流指令IA * の精度が低下する場合もあり得るが、故障した他方の角度センサが回復するまでの間、暫定的にアシスト電流指令IA *を求めてモータMによるアシスト力を発生させることができる。
このように第4改変例による電気式動力舵取装置では、角度センサ異常検出手段63により、角度センサ15および角度センサ16のいずれか一方に異常を検出した場合、アシストトルク決定手段61は、正常な他方により検出されたステアリング角θ1(θ2)と、ステアリング角速度推定手段65により推定されたステアリングホイール11のステアリング角速度(dθS/dt)と、に基づいてモータMにより発生させるアシスト力を決定する(図1、図9参照)。これにより、角度センサ15または角度センサ16のいずれか一方に異常が生じても、正常な他方により検出されたステアリング角θ1(θ2)に加えてステアリング角速度(dθS/dt)にも基づいてモータMにより発生させるアシスト力を決定するので、ステアリングホイール11の角速度(dθS/dt)に対応したアシスト制御をすることができる。したがって、一の角度センサに異常が生じても、適切なアシスト制御をし得る効果がある。
[第5改変例]
次に、前述した電気式動力舵取装置10の第5の改変例(以下「第5改変例」という)に係る電気式動力舵取装置を図11および図12に基づいて説明する。
図11に示すように、第5改変例に係る電気式動力舵取装置では、角度センサ15、16のそれぞれの異常を検出する角度センサ異常検出手段73と、ステアリングホイール11の角速度(dθS/dt)を推定するステアリング角速度推定手段75と、車速Vを検出または推定する車速センサ77と、を備え、この角度センサ異常検出手段73により、角度センサ15、16のいずれか一方に異常を検出した場合、正常な角度センサにより検出されたステアリング角θと、ステアリング角速度推定手段75により推定されたステアリングホイール11の角速度(dθS/dt)と、車速センサ77により検出または推定された車速Vと、に基づいてアシストトルク決定手段71によりアシスト電流指令IA *を算出する。この点が、本第5改変例のECUの電気的構成において、前述のECU20の電気的構成と異なる。なお、図11には、角度センサ16に異常を生じた場合の例が示されている。
また、前述した第3改変例、4による電気式動力舵取装置の電気的構成と比較すると、第3改変例による車速センサ55(図7参照)と第4改変例によるステアリング角速度推定手段65(図9参照)とを共に備えた実施形態が、本第5改変例であることがわかる。即ち、第3改変例による車速センサ55は、本第5改変例による車速センサ77に対応し、また第4改変例によるステアリング角速度推定手段65は、本第5改変例によるステアリング角速度推定手段75に対応する。
したがって、本第5改変例では、第4、第4改変例を組み合わせたことにより構成が異なる点を重点的に説明し、第4、第4改変例と実質的に同一であることから重複する点については、それらの説明を省略する。また、第5改変例に係る電気式動力舵取装置の機械的な構成は、前述した電気式動力舵取装置10と同様であるので、その説明を省略し、また必要に応じて図1を援用して説明する。
図11に示すように、第5改変例の電気式動力舵取装置は、角度センサ異常検出手段73とステアリング角速度推定手段75と車速センサ77とを備えている。角度センサ異常検出手段73は、第3、第3改変例で説明した角度センサ異常検出手段43、53と同様で、異常検出信号をアシストトルク決定手段71に送出し得るように構成されている。検出タイミング等も第3、第3改変例で説明した角度センサ異常検出手段43、53と同様である。
ステアリング角速度推定手段75は、ステアリングホイール11のステアリング角速度(dθS/dt)を推定し得るもので、第3改変例で説明したステアリング角速度推定手段65と同様に、推定信号をアシストトルク決定手段71に送出し得るように構成されている。推定タイミング等も第3改変例で説明したステアリング角速度推定手段65と同様である。
車速センサ77も、第3改変例で説明した車速センサ55と同様、車速Vを検出あるいは推定し得るもので、検出信号または推定信号をアシストトルク決定手段71に送出し得るように構成されている。推定タイミング等も第2改変例で説明した車速センサ55と同様である。
図12に示すように、アシストトルク決定手段71は、位相補償部71a(71c)とアシスト電流演算部71b(71d)とステアリング角速度補正ゲイン演算部71eと車速補正ゲイン演算部71f、乗算器71gとから構成されている。このうち位相補償部71a(71c)およびアシスト電流演算部71b(71d)は、第3改変例、4で説明した位相補償部51a、51c、61a、61cおよびアシスト電流演算部51b、51d、61b、61dと同様、角度センサ15、16のうち、正常な角度センサから入力される一方のステアリング角に基づいてアシスト電流指令IA0 * を算出することができるように、ステアリング角θ1、θ2ごとに用意されている。
また、ステアリング角速度補正ゲイン演算部71eは、第4改変例で説明したステアリング角速度補正ゲイン演算部61eと同様、ステアリング角速度推定手段75により推定されたステアリング角速度(dθS/dt)に対応して所定の特性を有するステアリング角速度補正ゲインGS を出力し得るマップや所定の演算処理等が予め設定され、ステアリング角速度補正ゲイン演算部71eから出力されるステアリング角速度補正ゲインGS は、乗算器71gに入力される。
さらに、車速補正ゲイン演算部71fは、第3改変例で説明した車速補正ゲイン演算部51eと同様、車速センサ77により検出または推定された車速Vに対応して所定の特性を有する車速補正ゲインGV を出力し得るマップや所定の演算処理等が予め設定され、車速補正ゲイン演算部71fから出力される車速補正ゲインGV も、乗算器71gに入力される。
即ち、乗算器71gには、アシスト電流演算部71b(71d)から出力されるアシスト電流指令IA0 * と、ステアリング角速度補正ゲイン演算部71eから出力されるステアリング角速度補正ゲインGS と、車速補正ゲイン演算部71fから出力される車速補正ゲインGV と、の三種類の情報が入力されるので、これらを乗算処理しアシスト電流指令IA *として出力する。つまり、アシストトルク決定手段71は、ステアリング角速度および車速に基づくアシスト電流指令IA *を出力する。
これにより、例えば図11に示すように、角度センサ異常検出手段73により角度センサ16の異常が検出された場合には(図11に示す角度センサ16の×印)、正常な角度センサ15からステアリング角θ1 が入力されるので、位相補償部71aおよびアシスト電流演算部71bによりマップや所定の演算処理等にてアシスト電流指令IA0 * を算出し、このアシスト電流指令IA0 * にステアリング角速度補正ゲイン演算部71eによるステアリング角速度(dθS/dt)に対応するステアリング角速度補正ゲインGS と、車速補正ゲイン演算部71fによる車速Vに対応する車速補正ゲインGV と、を乗じてアシスト電流指令IA *を出力する。ここで、位相補償部71a(71c)の((1+T2 ・S)/(1+T1 ・S))において、T1 、T2 はフィルタ定数を示し、Sは微分演算子を示す。
一方、角度センサ異常検出手段73により角度センサ15の異常が検出された場合には、正常な角度センサ16からステアリング角θ2 が入力されるので、位相補償部71cおよびアシスト電流演算部71dによりマップや所定の演算処理等にてアシスト電流指令IA0 * を算出し、このアシスト電流指令IA0 * にステアリング角速度補正ゲイン演算部71eによるステアリング角速度(dθS/dt)に対応するステアリング角速度補正ゲインGS と、車速補正ゲイン演算部71fによる車速Vに対応する車速補正ゲインGV と、を乗じてアシスト電流指令IA *を出力する。
なお、アシスト電流演算部71b(71d)で用いられるマップや所定の演算処理等は、正常な一方のステアリング角θ1(θ2)からアシスト電流指令IA0 * を求めるものである。そのため、前述したアシスト電流演算部31bによるものよりも、算出されるアシスト電流指令IA * の精度が低下する場合もあり得るが、故障した他方の角度センサが回復するまでの間、暫定的にアシスト電流指令IA *を求めてモータMによるアシスト力を発生させることができる。
このように第5改変例による電気式動力舵取装置では、角度センサ異常検出手段73により、角度センサ15および角度センサ16のいずれか一方に異常を検出した場合、アシストトルク決定手段71は、正常な他方により検出されたステアリング角θ1(θ2)と、車速センサ77により検出または推定された車速Vと、ステアリング角速度推定手段75により推定されたステアリングホイール11のステアリング角速度(dθS/dt)と、に基づいてモータMにより発生させるアシスト力を決定する(図1、図11参照)。これにより、角度センサ15または角度センサ16のいずれか一方に異常が生じても、正常な他方により検出されたステアリング角θ1(θ2)に加えて車速Vおよびステアリング角速度(dθS/dt)にも基づいてモータMにより発生させるアシスト力を決定するので、ステアリングホイール11の角速度(dθS/dt)に対応したアシスト制御をすることができる。したがって、一の角度検出手段に異常が生じても、より適切なアシスト制御をし得る効果がある。
[第6改変例]
次に、このような電気式動力舵取装置10の第6の改変例(以下「第6改変例」という)に係る電気式動力舵取装置を図13および図14に基づいて説明する。
図13に示すように、第6改変例に係る電気式動力舵取装置では、角度センサ15、16のそれぞれの異常を検出する角度センサ異常検出手段83により、角度センサ15、16のいずれか一方に異常を検出した場合、正常な角度センサにより検出されたステアリング角θに基づいてアシストトルク決定手段81によりアシスト電流指令IA1 * を算出するばかりでなく、出力制限ゲイン演算部85および乗算器87により、時間の経過とともにモータMにより発生させるアシスト力を徐々に減少させる。この点が、本第6改変例のECUの電気的構成において、前述のECU20の電気的構成と異なる。したがって、第6改変例に係る電気式動力舵取装置の機械的な構成は、前述の電気式動力舵取装置10と同様であるので、その説明を省略し、また必要に応じて図1を援用して説明する。なお、図13には、角度センサ16に異常を生じた場合の例が示されている。
図13に示すように、第6改変例の電気式動力舵取装置は、角度センサ異常検出手段83と出力制限ゲイン演算部85とを備えている。
角度センサ異常検出手段83は、第2改変例で説明した角度センサ異常検出手段43と同様に、角度センサ15、16の異常を検出するとともに、検出信号をアシストトルク決定手段81と出力制限ゲイン演算部85に送出し得るように構成されている。角度センサ15、16の異常検出は、例えば、所定間隔ごとに行われるタイマ割り込み処理により実行され、角度センサ15、16から出力される回転角(ステアリング角θ1、θ2)の値が一定の範囲内(例えば0゜以上20゜以下)にあるか否かを監視することにより行われる。当該所定範囲内になければ当該角度センサに異常が生じたものと判断する。
出力制限ゲイン演算部85は、角度センサ異常検出手段83により、角度センサ15、16のいずれか一方に異常を検出した場合、乗算部87に出力する出力制限ゲインの値を時間の経過とともに減少させ得るよう構成されている。即ち、角度センサ異常検出手段83から異常検出信号が入力されると、例えば、その入力された時間(故障発生時)から所定時間tの経過後から、それまでは値「1」を設定していた出力制限ゲインGT を徐々に減少させて乗算部87に出力するように構成されている(1≧GT ≧0)。
乗算部87は、アシストトルク決定手段81から出力されるアシスト電流指令IA1 * と、出力制限ゲイン演算部85から出力される出力制限ゲインGT とを乗算処理して電流制御手段23に出力し得るように構成されている。これにより、出力制限ゲイン演算部85から出力される出力制限ゲインGT の値を制御することによってアシストトルク決定手段81から出力されるアシスト電流指令IA1 * に対し、出力制御されたアシスト電流指令IA *を出力することが可能となる。
図14に示すように、アシストトルク決定手段81は、第2改変例で説明したアシストトルク決定手段41と同様に、位相補償部81a(81c)とアシスト電流演算部81b(81d)とから構成され、角度センサ15、16から入力されるステアリング角θ1、θ2ごとに用意されている。即ち、角度センサ15、16のうち、正常な角度センサから入力される一方のステアリング角に基づいてアシスト電流指令IA1 * を算出することができるように、ステアリング角θ1、θ2ごとに位相補償部81a、81cおよびアシスト電流演算部81b、81dが構成されている。
これにより、例えば図13に示すように、角度センサ異常検出手段83により角度センサ16の異常が検出された場合には(図13に示す角度センサ16の×印)、アシストトルク決定手段81および出力制限ゲイン演算部85に異常検出信号が入力される。このため、アシストトルク決定手段81には、正常な角度センサ15からステアリング角θ1 が入力されるので、位相補償部81aによりステアリング角θ1 について位相補償した後、位相補償されたステアリング角θ1 ’に基づいてアシスト電流演算部81bによりマップや所定の演算処理等にてアシスト電流指令IA1 * を算出し、乗算部87に出力する。ここで、位相補償部81a(81c)の((1+T2 ・S)/(1+T1 ・S))において、T1 、T2 はフィルタ定数を示し、Sは微分演算子を示す。
また、出力制限ゲイン演算部85では、角度センサ異常検出手段83から異常検出信号が入力されると、乗算部87に出力していた出力制限ゲインGT の値を、故障発生時から計時して所定経過時間tから徐々に減少させる処理を行う。これにより、乗算部87から電流制御手段23に出力されるアシスト電流指令IA *は、当該所定時間tの経過後から徐々に絞られる出力制御がされる。
一方、角度センサ異常検出手段83により角度センサ15の異常が検出された場合には、正常な角度センサ16からステアリング角θ2 が入力されるので、位相補償部81cによりステアリング角θ2 について位相補償した後、位相補償されたステアリング角θ2 ’に基づいてアシスト電流演算部81dによりマップや所定の演算処理等にてアシスト電流指令IA1 * を算出し乗算部87に出力するが、この場合も角度センサ16の異常が検出された場合と同様に、出力制限ゲイン演算部85により出力される出力制限ゲインGT が徐々に減少するので、乗算部87から電流制御手段23に出力されるアシスト電流指令IA *は、当該所定時間tの経過後から徐々に絞られる。
なお、アシスト電流演算部81b(81d)で用いられるマップや所定の演算処理等は、正常な一方のステアリング角θ1(θ2)からアシスト電流指令IA0 * を求めるものである。そのため、前述したアシスト電流演算部31bによるものよりも、算出されるアシスト電流指令IA1 * の精度が低下する場合もあり得るが、故障した他方の角度センサが回復するまでの間、暫定的にアシスト電流指令IA1 * を求めてモータMによるアシスト力を発生させることができる。
このように第6改変例による電気式動力舵取装置では、角度センサ異常検出手段83により、角度センサ15および角度センサ16のいずれか一方に異常を検出した場合、アシストトルク決定手段81により決定された、正常な他方により検出されたステアリング角θ1(θ2)に基づいてモータMにより発生させるアシスト力を、出力制限ゲイン演算部85および乗算部87により、時間の経過とともに徐々に減少させる(図1、図13参照)。これにより、角度センサ15または角度センサ16のいずれか一方に異常が生じても、正常な他方により検出されたステアリング角θ1(θ2)に基づいてアシスト力を決定することができるとともに、時間の経過とともにアシスト力を徐々に減少させるので、徐々に重くなる操舵感を介して故障等の発生を運転者に知らせることができる。したがって、角度センサ15、16に異常が生じても、適切なアシスト制御をしながら、運転者に角度センサの異常を告知し得る効果がある。
[第7改変例]
次に、このような電気式動力舵取装置10の第7の改変例(以下「第7改変例」という)に係る電気式動力舵取装置を図15および図16に基づいて説明する。
図15に示すように、第7改変例に係る電気式動力舵取装置では、角度センサ15、16のそれぞれの異常を検出する角度センサ異常検出手段93により、角度センサ15、16のいずれか一方に異常を検出した場合、正常な角度センサにより検出されたステアリング角θに基づいてアシストトルク決定手段91によりアシスト電流指令IA1 * を算出するばかりでなく、出力電流最大値制限演算部97および出力電流最大値制限手段95により、時間の経過とともにモータMにより発生させるアシスト力の最大値を徐々に減少させる。この点が、本第7改変例のECUの電気的構成において、前述のECU20の電気的構成と異なる。したがって、第7改変例に係る電気式動力舵取装置の機械的な構成は、前述の電気式動力舵取装置10と同様であるので、その説明を省略し、また必要に応じて図1を援用して説明する。なお、図15には、角度センサ16に異常を生じた場合の例が示されている。
図15に示すように、第7改変例の電気式動力舵取装置は、角度センサ異常検出手段93と出力電流最大値制限手段95と出力電流最大値制限演算部97とを備えている。
角度センサ異常検出手段93は、第2改変例で説明した角度センサ異常検出手段43と同様に、角度センサ15、16の異常を検出するとともに、検出信号をアシストトルク決定手段81と出力電流最大値制限演算部97に送出し得るように構成されている。角度センサ15、16の異常検出は、例えば、所定間隔ごとに行われるタイマ割り込み処理により実行され、角度センサ15、16から出力される回転角(ステアリング角θ1、θ2)の値が一定の範囲内(例えば0゜以上20゜以下)にあるか否かを監視することにより行われる。当該所定範囲内になければ当該角度センサに異常が生じたものと判断する。
出力電流最大値制限演算部97は、角度センサ異常検出手段93により、角度センサ15、16のいずれか一方に異常を検出した場合、出力電流最大値制限手段95に出力する出力電流最大値Imax を時間の経過とともに減少させ得るよう構成されている。即ち、角度センサ異常検出手段93から異常検出信号が入力されると、例えば、その入力された時間(故障発生時)から所定時間tの経過後から、それまでは値「1」を設定していた出力電流最大値Imax を徐々に減少させて出力電流最大値制限手段95に出力するように構成されている(1≧Imax ≧0)。
出力電流最大値制限手段95は、アシストトルク決定手段91から出力されるアシスト電流指令IA1 * が、出力電流最大値制限演算部97から出力される出力電流最大値Imax を超えないように出力制限し得るように構成されている。これにより、出力電流最大値制限演算部97から出力される出力電流最大値Imax を制御することによって、アシストトルク決定手段91から出力されるアシスト電流指令IA1 * に対し、出力制御することが可能となる。
図16に示すように、アシストトルク決定手段91は、第2改変例で説明したアシストトルク決定手段41と同様に、位相補償部91a(91c)とアシスト電流演算部91b(91d)とから構成され、角度センサ15、16から入力されるステアリング角θ1、θ2ごとに用意されている。即ち、角度センサ15、16のうち、正常な角度センサから入力される一方のステアリング角に基づいてアシスト電流指令IA1 * を算出することができるように、ステアリング角θ1 、θ2 ごとに位相補償部91a、91cおよびアシスト電流演算部91b、91dが構成されている。
これにより、例えば図15に示すように、角度センサ異常検出手段93により角度センサ16の異常が検出された場合には(図15に示す角度センサ16の×印)、アシストトルク決定手段91および出力電流最大値制限演算部97に異常検出信号が入力される。このため、アシストトルク決定手段91には、正常な角度センサ15からステアリング角θ1 が入力されるので、位相補償部91aによりステアリング角θ1 について位相補償した後、位相補償されたステアリング角θ1 ’に基づいてアシスト電流演算部91bによりマップや所定の演算処理等にてアシスト電流指令IA1 * を算出し、出力電流最大値制限手段95に出力する。ここで、位相補償部91a(91c)の((1+T2 ・S)/(1+T1 ・S))において、T1 、T2 はフィルタ定数を示し、Sは微分演算子を示す。
また、出力電流最大値制限演算部97では、角度センサ異常検出手段93から異常検出信号が入力されると、出力電流最大値制限手段95に出力していた出力電流最大値Imax を、故障発生時から計時して所定経過時間tから徐々に減少させる処理を行う。これにより、出力電流最大値Imax 、即ち電流制御手段23に出力されるアシスト電流指令IA *の両極方向の上限値は、当該所定時間tの経過後から徐々に絞られる制御がされるので、ステアリングホイール11を左右に深く切込んだときに与えられるアシスト力が制限される。
一方、角度センサ異常検出手段93により角度センサ15の異常が検出された場合には、正常な角度センサ16からステアリング角θ2 が入力されるので、位相補償部91cによりステアリング角θ2 について位相補償した後、位相補償されたステアリング角θ2 ’に基づいてアシスト電流演算部91dによりマップや所定の演算処理等にてアシスト電流指令IA1 * を算出し出力電流最大値制限手段95に出力する。しかし、この場合も角度センサ16の異常が検出された場合と同様に、出力電流最大値制限演算部97により出力される出力電流最大値Imax が当該所定時間tの経過後から徐々に絞られるので、ステアリングホイール11を左右に深く切込んだときに与えられるアシスト力が制限される。
なお、アシスト電流演算部91b(91d)で用いられるマップや所定の演算処理等は、正常な一方のステアリング角θ1(θ2)からアシスト電流指令IA0 * を求めるものである。そのため、前述したアシスト電流演算部31bによるものよりも、算出されるアシスト電流指令IA * の精度が低下する場合もあり得るが、故障した他方の角度センサが回復するまでの間、暫定的にアシスト電流指令IA *を求めてモータMによるアシスト力を発生させることができる。
このように第7改変例による電気式動力舵取装置では、角度センサ異常検出手段93により、角度センサ15および角度センサ16のいずれか一方に異常を検出した場合、アシストトルク決定手段91により決定された、正常な他方により検出されたステアリング角θ1(θ2)に基づいてモータMにより発生させるアシスト力の最大値を、出力電流最大値制限手段95および出力電流最大値制限演算部97により、時間の経過とともに徐々に減少させる(図1、図15参照)。これにより、角度センサ15または角度センサ16のいずれか一方に異常が生じても、正常な他方により検出されたステアリング角θ1(θ2)に基づいてアシスト力を決定することができるとともに、時間の経過とともにアシスト力の最大値を徐々に減少させるので、左右の深い切込み時に急に重くなる操舵感を介して故障等の発生を運転者に知らせることができる。したがって、角度センサ15、16に異常が生じても、適切なアシスト制御をしながら、運転者に角度センサの異常を告知し得る効果がある。
[第8改変例]
次に、このような電気式動力舵取装置10の第8の改変例(以下「第1改変例」という)に係る電気式動力舵取装置を図15に基づいて説明する。
第8改変例による電気式動力舵取装置は、前述した第7改変例の電気式動力舵取装置を構成する出力電流最大値制限演算部97の特性に変更を加えた点が第7改変例のものと相違する。したがって、他の構成部分は第7改変例の電気式動力舵取装置と実質的に同一の構成を採るため、それらの説明を省略し、また必要に応じて図1を援用して説明する。
第8改変例による電気式動力舵取装置は、出力電流最大値制限演算部97により出力される出力電流最大値Imax を経過時間tにかかわらず、常に零(Imax =0)に設定する。このように構成することにより、角度センサ異常検出手段93により、角度センサ15および角度センサ16のいずれか一方に異常を検出した場合、アシストトルク決定手段91により決定された、正常な他方により検出されたステアリング角θ1(θ2)に基づいてモータMにより発生させるアシスト力の最大値を、出力電流最大値制限手段95および出力電流最大値制限演算部97により、時間の経過にかかわらず零に減少させる(図1参照)。つまり、角度センサ異常検出手段93により、角度センサ15および角度センサ16のいずれか一方に異常を検出した場合、モータMによるアシスト力の発生を直ちに中止する。これにより、モータMによるアシスト制御が解除されるので、予定外のアシスト制御の発生を防止することができる。したがって、一の角度検出手段に異常が生じても、適切なアシスト制御をし得る効果がある。
[第9改変例]
次に、このような電気式動力舵取装置10の第9の改変例(以下「第9改変例」という)に係る電気式動力舵取装置を図17および図18に基づいて説明する。
図17に示すように、第9改変例の電気式動力舵取装置では、角度センサ15により検出したステアリング角θ1 と角度センサ16により検出したステアリング角θ2 との偏差(θ1−θ2)であるトーションバー14のねじれ角ΔθH を演算手段113により求め、また車速センサ115により車速Vを検出または推定し、ねじれ角ΔθH と車速Vとに基づいてアシストトルク決定手段111によりアシスト電流指令IA *を算出する。この点が、本第9改変例のECUの電気的構成において、第1前述CU20の電気的構成と異なる。
つまり、第9改変例による電気式動力舵取装置は、図3を参照して説明した第1改変例による電気式動力舵取装置の構成に車速センサ115を加え、この車速センサ115による車速Vにも基づいてアシストトルク決定手段111によりアシスト電流指令IA *を算出するものである。したがって、第9改変例に係る電気式動力舵取装置の機械的な構成は、前述の電気式動力舵取装置10と同様であるので、その説明を省略し、また必要に応じて図1を援用して説明する。
図17に示すように、車速センサ115は、車速Vを検出あるいは推定し得るもので、検出信号または推定信号をアシストトルク決定手段111に送出し得るように構成されている。車速Vの検出または推定は、例えば、所定間隔ごとに行われるタイマ割り込み処理により実行される。
図18に示すように、第9改変例では、アシストトルク決定手段111を位相補償部111aとアシスト電流演算部111bと車速補正ゲイン演算部111cと乗算部111dにより構成する。これにより、アシストトルク決定手段111にステアリング軸12のステアリング角θ1 とピニオン軸13のステアリング角θ2 との偏差(θ1−θ2)、つまりトーションバー14のねじれ角ΔθH が入力されると、位相補償部111aによってトーションバー14のねじれ角ΔθH ついて位相補償した後、位相補償されたねじれ角ΔθH ’に基づいてアシスト電流演算部111bによりマップや所定の演算処理等にてアシスト電流指令IA0 * を算出する。ここで、位相補償部111aの((1+T2 ・S)/(1+T1 ・S))において、T1 、T2 はフィルタ定数を示し、Sは微分演算子を示す。
一方、車速補正ゲイン演算部111cには、車速センサ115により検出または推定された車速Vに対応して所定の特性、例えば一定以上の車速Vの増大に対し車速補正ゲインGV が減少する特性(0≦GV ≦1)を有する車速補正ゲインGV を出力し得るマップや所定の演算処理等が予め設定されている。そして、車速補正ゲイン演算部111cから出力される車速補正ゲインGV は、乗算器111dを介してアシスト電流演算部111bから出力されるアシスト電流指令IA0 * と乗算処理されてアシスト電流指令IA *として出力される。つまり、車速に基づくアシスト電流指令IA *を出力している。
このように第9改変例による電気式動力舵取装置では、アシストトルク決定手段111は、ステアリング軸12のステアリング角θ1 およびピニオン軸13のステアリング角θ2 の少なくとも一方に加え、車速センサ115により検出または推定された車速Vにも基づいて、モータMにより発生させるアシスト力を決定する。これにより、車速Vに対応したアシスト制御をすることができるので、例えば、停車時や低速走行時には中速走行時よりもアシスト力を大きく設定し、高速走行時には中速走行時よりもアシスト力を小さく設定することができる。したがって、操舵角に基づくアシスト制御をし得る効果に加え、車速Vに応じたアシスト制御をし得る効果もある。
[第10改変例]
次に、このような電気式動力舵取装置10の第10の改変例(以下「第10改変例」という)に係る電気式動力舵取装置を図19〜図21に基づいて説明する。
図19に示すように、第10改変例に係る電気式動力舵取装置では、角度センサ15、16のそれぞれの異常を検出する角度センサ異常検出手段123に加えて、モータMの回転角を検出または推定するモータ回転角センサ19と、モータ回転角センサ19により検出または推定したモータ回転角に基づいてステアリング軸12の回転角を推定するステアリング角度推定手段127と、を備え、角度センサ15により検出したステアリング軸12の回転角(以下、本第10改変例において「ステアリング検出角」という)と、ステアリング角度推定手段127により推定したステアリング軸12の回転角(以下、本第10改変例において「ステアリング推定角」という)との偏差が所定値以上の時、角度センサ15に異常が生じたことを検出する。この点が、本第10改変例のECUの電気的構成において、前述したECU20の電気的構成と異なる。
また、前述した第2改変例の電気式動力舵取装置の電気的構成と比較すると、モータ回転角センサ19とステアリング角度推定手段127とを備え、このモータ回転角センサ19により検出または推定されたモータ回転角に基づいてステアリング推定角をステアリング角度推定手段127により推定し、これを角度センサ異常検出手段123に入力する点が異なる。したがって、第10改変例に係る電気式動力舵取装置の機械的な構成は、前述の電気式動力舵取装置10と同様であるので、その説明を省略し、また必要に応じて図1を援用して説明する。なお、アシストトルク決定手段121は、図5および図6に示すアシストトルク決定手段41と実質的に同一の構成を採っているので、その説明を省略する。
図19に示すように、第10改変例による電気式動力舵取装置は、モータ回転角センサ19と角度センサ異常検出手段123とステアリング角度推定手段127とを備えている。モータ回転角センサ19は、既に図1を参照して説明したように、モータMの回転角を検出し得るもので、例えばアブソリュートエンコーダ、レゾルバ等の絶対角度センサ、あるいはインクリメンタルエンコーダ等の相対角度センサが用いられる。
なお、モータ回転角センサ19によりモータMの回転角を検出する場合のほか、例えば次式(1)、(2)に示す電圧方程式により、モータMの回転角を推定しても良い。
ここで、式(1)において、ωはモータMの角速度(rad/sec)、VはモータMに対する印加電圧(V)、RはモータMの内部抵抗(Ω)、LはモータMのインダクタンス(H)、IはモータMに流れるモータ電流(A)、KeはモータMによる逆起電力定数、をそれぞれ示す。また式(2)において、θはモータMの回転角を示し、モータMの角速度ωを時間積分したものである。
これにより、モータ回転角センサ19を備えない場合であっても、モータMの回転角を推定して求めることができるので、部品点数の削減につながり、コストの低減に貢献することができる。
角度センサ異常検出手段123は、図20に示す角度センサの異常検出処理により、角度センサ15、16の異常を検出し得るものである。この角度センサの異常検出処理は、例えば5ミリ秒間隔に発生する割り込み処理によって行われるものである。なお、図20には、角度センサ15についての異常検出処理の流れを示しているが、角度センサ16についての異常検出処理の流れも、図20に示すものと同様に処理される。したがって、以下、図20を参照して角度センサ15の異常検出処理の流れを説明するが、角度センサ16の異常検出処理も同様に行われることに留意されたい。
図20に示すように、角度センサ15の異常検出処理では、まずステップS101により、角度センサ15によるステアリング角θ1(n)の取り込み処理を行う。次にステップS103により、サブルーチンであるステアリング角推定処理を行って、ステアリング角θS(n)を取得する。このステアリング角推定処理の詳細は後述する(図21参照)。なお、θ1やθS等の後に付されている括弧内のnは、第n回目に検出あるいは推定されたステアリング角であることを表す添字である(以下、本実施形態および他の各実施形態において同じ)。
続くステップS105では、ステアリング角推定処理(S103)により取得したステアリング角θS(n)と角度センサ15により検出したステアリング角θ1(n)との偏差(絶対値)を求め、その偏差が所定値θ0 以上であるか否かを判断する処理を行う。そして、当該偏差が所定値θ0 以上であれば(S105でYes)、角度センサ15に異常を生じた可能性があるので、ステップS107に処理を移行して異常タイマtcのカウントアップ処理(tc=tc+1)を行う。一方、当該偏差が所定値θ0 以上でなければ(S105でNo)、角度センサ15は正常である可能性があるので、ステップS109に処理を移行して異常タイマtcのクリア処理(tc=0)を行う。
ステップS107またはステップS109による処理が終了すると、ステップS111により、異常タイマtcで途中でクリアされることなくカウントアップされ続けてから所定時間T(例えば300ミリ秒〜600ミリ秒)が経過しているか否か、つまり異常タイマtcの値が所定値以上に到達しているか否かの判断を行う。この判断により、異常タイマtcが所定時間T続けてカウントアップされている場合には(S111でYes)、角度センサ15に異常が生じているものと判断できるため、ステップS113により角度センサ15の異常発生を運転者に通知する処理を行う。
一方、ステップS113により、異常タイマtcが所定時間T続けてカウントアップされていないと判断した場合には(S111でNo)、角度センサ15には異常が生じていないものと判断できるため、再びステップS101に処理を移行して上述した一連の角度センサ15の異常検出処理を行う。
また、ステップS107、S109、S111による各処理を削除して、ステップS105によるYesの判断処理の直後にステップS113を置き、またステップS105による処理によりNoの判断をした場合にはステップS101に処理を移行するように、当該異常検出処理の流れを変更しても良い。これにより、所定時間の経過を待つことなく、即座にステップS113により角度センサ15(角度センサ16)の異常発生通知を行うことができるので、異常検出処理の高速化を期待することができる。
ここで、ステップS103のサブルーチンによるステアリング角推定処理の流れを図21を参照して説明する。
図21に示すように、ステアリング角推定処理では、まずステップS151により、本処理が1回目であるか否かを判断する。本処理が1回目にあたる場合には(ステップS151でYes)、前回演算したステアリング角θS(n-1)を記憶していないため、ステップS153、S155、S157、S159によってステアリング角の初期値θS(1)を演算する処理を行う。
即ち、ステップS153では、角度センサ15によりステアリング角θ1(1)を取り込み、続くステップS155では、角度センサ16によりステアリング角θ2(1)を取り込み、さらにステップS157では、モータ回転角センサ19によりモータMの回転角θM(1)を取り込む処理を、それぞれ順次行う。
そして、ステップS153によるステアリング角θ1(1)およびステップS155によるステアリング角θ2(1)の平均値として、現在のステアリング角を演算し、これをステアリング角の初期値θS(1)として記憶する。なお、ステアリング角θS(1)は、θS(1)=(θ1(1)+θ2(1))/2である。
一方、既に本処理を行っている場合には(ステップS151でNo)、前回演算したステアリング角θS(n-1)を記憶しているので、ステップS161に移行して、θS(n)=θS(n-1)+(θM(n)−θM(n-1))/Gによりステアリング推定角θS(n)を算出する。ここで、θM(n)は今回のモータ回転角、θM(n-1)は前回のモータ回転角を示し、またGは、図1に示す減速機17による減速比を示す。なお、このステップS161によるステアリング角の演算処理は、ステアリング角度推定手段127によって行われる。
このようなステップS151〜S161の一連の処理を終了すると、前述した角度センサ15の異常検出処理に戻り、ステップS105に処理を移行する。
以上説明したように、第10改変例の電気式動力舵取装置によると、ステアリング軸12とピニオン軸13とをトーションバー14により相対回転可能に連結し、ステアリング軸12の回転角を角度センサ15により、またピニオン軸13の回転角を角度センサ16により、それぞれ検出する。そして、アシストトルク決定手段121により、ステアリング軸12の回転角およびピニオン軸13の回転角の少なくとも一方に基づいて、モータMにより発生させるアシスト力を決定し、また角度センサ15(または角度センサ16)により検出されたステアリング検出角θ1(n)(またはθ2(n))と、ステアリング角度推定手段127により推定されたステアリング推定角θS(n)と、の偏差が所定値θ0 以上の時、角度センサ15(または角度センサ16)に異常が生じたことを角度センサ異常検出手段123によって検出する。
これにより、ステアリング軸12の回転角を検出することができるとともに、ステアリング軸12の回転角とピニオン軸13の回転角との少なくとも一方からトーションバー14のねじれ量をねじれ角として検出することができるので、ステアリングホイール11の操舵角を考慮したアシスト制御をすることができる。したがって、操舵角に基づくアシスト制御をし得る効果がある。また、ステアリング検出角θ1(n)(またはθ2(n))とステアリング推定角θS(n)との偏差|θ1(n)−θS(n)|(または|θ2(n)−θS(n)|)から角度センサ15(または角度センサ16)に異常が生じたことを検出することができるので、角度センサ15(または角度センサ16)の異常を検出し得る効果もある。
また、第10改変例の電気式動力舵取装置によると、ステアリング軸12とピニオン軸13とをトーションバー14により相対回転可能に連結し、ステアリング軸12の回転角を角度センサ15により、またピニオン軸13の回転角を角度センサ16により、それぞれ検出する。そして、アシストトルク決定手段121により、ステアリング軸12の回転角およびピニオン軸13の回転角の少なくとも一方に基づいて、モータMにより発生させるアシスト力を決定し、また角度センサ15(または角度センサ16)により検出されたステアリング検出角θ1(n)(またはθ2(n))と、ステアリング角度推定手段127により推定されたステアリング推定角θS(n)と、の偏差|θ1(n)−θS(n)|(または|θ2(n)−θS(n)|)が所定値θ0 以上になる状態が所定時間T継続したとき、角度センサ15(または角度センサ16)に異常が生じたことを角度センサ異常検出手段123によって検出する。
これにより、ステアリング軸12の回転角を検出することができるとともに、ステアリング軸12の回転角とピニオン軸13の回転角との少なくとも一方からトーションバー14のねじれ量をねじれ角として検出することができるので、ステアリングホイール11の操舵角を考慮したアシスト制御をすることができる。したがって、操舵角に基づくアシスト制御をし得る効果がある。また、ステアリング検出角θ1(n)(またはθ2(n))とステアリング推定角θS(n)との偏差|θ1(n)−θS(n)|(または|θ2(n)−θS(n)|)を所定時間T継続して検出するので、さらに正確に角度センサ15(または角度センサ16)の異常を検出し得る効果もある。
[第11改変例]
次に、このような電気式動力舵取装置10の第11の改変例(以下「第11改変例」という)に係る電気式動力舵取装置を図22および図23に基づいて説明する。
第11改変例による電気式動力舵取装置では、前述した第10改変例の電気式動力舵取装置を構成する角度センサ異常検出手段123による異常検出処理に変更を加えて、角度センサ15(または角度センサ16)により検出したステアリング軸12の回転角(以下、本第2実施形態において「ステアリング検出角」という)と、ステアリング角度推定手段127により推定したステアリング軸12の回転角(以下、本第2実施形態において「ステアリング推定角」という)と、の比に基づいて、角度センサ15(または角度センサ16)の異常を検出する。この点が第10改変例のものと相違する。したがって、他の構成部分は第10改変例の電気式動力舵取装置と実質的に同一の構成を採るため、それらの説明を省略し、また必要に応じて図1および図19を援用して説明する。
図22に示すように、第11改変例による電気式動力舵取装置は、角度センサ異常検出手段123(図19)において、以下の異常検出処理を行う。この角度センサの異常検出処理も、第10改変例による異常検出処理と同様、例えば5ミリ秒間隔に発生する割り込み処理によって行われる。なお、以下、角度センサ15の異常検出処理の流れを説明するが、角度センサ16の異常検出処理も同様に行われることに留意されたい。
まず、ステップS201により、角度センサ15によるステアリング角θ1(n)の取り込み処理を行う。次にステップS203により、サブルーチンであるステアリング角推定処理を行ってステアリング角θS(n)を取得する。このステアリング角推定処理の詳細は後述する(図23参照)。
次にステップS205により、ステアリング検出角θ1(n)とステアリング推定角θS(n)との回転方向が同一方向であるか否かを判断する。即ち、ステアリング角θ1(n)の回転方向とステアリング角θS(n)の回転方向とが、同一方向であるか反対方向であるかによって、異常判定に用いるパラメータ(例えばステアリング角比α、ステアリング偏差角比β)を変更することにより、より正確に角度センサ15の異常を検出することができるため、角度センサ15により検出したステアリング検出角θ1(n)とステアリング角推定処理により推定したステアリング推定角θS(n)とを乗算することにより求められる符号(正または負)により、回転が同一方向であるか否かをステップS207により判断する処理を行っている。
そして、このステップS205により同一方向であると判断すると(ステップS205でYes)、ステップS207に移行してステアリング角比αを求める演算処理、つまりステアリング検出角θ1(n)をステアリング推定角θS(n)で割ることにより両者の比αを算出する。
次のステップS209により、第1所定値α1および第2所定値α2を後述する所定の演算処理により求め、この第1、第2所定値α1、α2で挟まれた範囲内に、ステアリング検出角θ1(n)とステアリング推定角θS(n)との比αが収まっているか否か(α2≦α≦α1)を続くステップS211により判断する。このステップS211による判断処理によって、当該範囲内に比αがあれば(S211でYes)、角度センサ15は正常である可能性があるので、ステップS215に処理を移行して異常タイマtcのクリア処理(tc=0)を行い、再びステップS201に処理を戻す。
一方、当該範囲内に比αがなければ(S211でNo)、角度センサ15に異常を生じた可能性があるので、ステップS213に処理を移行して異常タイマtcのカウントアップ処理(tc=tc+1)を行い、さらにステップS217により異常タイマtcで途中でクリアされることなくカウントアップされ続けてから所定時間Tが経過しているか否か、つまり異常タイマtcの値が所定値以上に到達しているか否かの判断を行う。この判断により、異常タイマtcが所定時間T続けてカウントアップされている場合には(S217でYes)、角度センサ15に異常が生じているものと判断できるため、ステップS219により角度センサ15の異常発生を運転者に通知する処理を行う。そして、当該一連の異常検出処理の終了する。
また、ステップS205により同一方向ではない、つまりステアリング検出角θ1(n)とステアリング推定角θS(n)との回転方向が反対であると判断すると(ステップS205でNo)、ステップS221に移行してステアリング偏差角比βを求める演算処理、つまりステアリング検出角θ1(n)からステアリング推定角θS(n)を引いたものをステアリング推定角θS(n)で割って符号反転することにより(β=−(θ1(n)−θS(n))/θS(n))、ステアリング偏差角比βを算出する。
そして、ステップS223により、第1所定値β1を後述する所定の演算処理により求め、この第1所定値β1よりもステップS221により求めたステアリング偏差角比βの方が小さいか否かをステップS225により判断する。このステップS225による判断処理によって、第1所定値β1よりもステアリング偏差角比βの方が小さいと判断できれば(S225でYes)、角度センサ15は正常である可能性があるので、ステップS229に処理を移行して異常タイマtcのクリア処理(tc=0)を行い、再びステップS201に処理を戻す。
一方、第1所定値β1よりもステアリング偏差角比βの方が小さいと判断できなければ(S225でNo)、角度センサ15に異常を生じた可能性があるので、ステップS227に処理を移行して異常タイマtcのカウントアップ処理(tc=tc+1)を行い、さらにステップS231により異常タイマtcで途中でクリアされることなくカウントアップされ続けてから所定時間T(例えば300ミリ秒〜600ミリ秒)が経過しているか否か、つまり異常タイマtcの値が所定値以上に到達しているか否かの判断を行う。この判断により、異常タイマtcが所定時間T続けてカウントアップされている場合には(S231でYes)、角度センサ15に異常が生じているものと判断できるため、ステップS219により角度センサ15の異常発生を運転者に通知する処理を行う。そして、当該一連の異常検出処理の終了する。
ここで、ステップS203のサブルーチンによるステアリング角推定処理の流れを図23を参照して説明する。
図23に示すように、このステアリング角推定処理は、図21を参照して説明した第10改変例によるステアリング角推定処理とほぼ同様の処理を行っている。即ち、図23に示すステップS251、S253、S255、S257、S259、S263は、図21に示すステップS151、S153、S155、S157、S159、S161に、それぞれ対応するもので、処理内容も実質的に同一であり、本第11改変例によるステアリング角推定処理では、ステップS263の前にステップS261による処理が追加されている点が、第10改変例によるステアリング角推定処理と異なるところである。
図23に示すように、まずステップS251により、本処理が1回目であるか否かを判断し、本処理が1回目にあたる場合には(ステップS251でYes)、ステップS153、S155、S157、S159によってステアリング角の初期値θS(1)を演算する処理を行う。
ステップS253では、角度センサ15によりステアリング角θ1(1)を取り込み、続くステップS255では、角度センサ16によりステアリング角θ2(1)を取り込み、さらにステップS257では、モータ回転角センサ19によりモータMの回転角θM(1)を取り込む。そして、ステアリング角θ1(1)およびステアリング角θ2(1)の平均値として、現在のステアリング角を演算し、これをステアリング角の初期値θS(1)として記憶する(θS(1)=(θ1(1)+θ2(1))/2)。
一方、既に本処理を行っている場合には(ステップS251でNo)、前回演算したステアリング角θS(n-1)を記憶しているので、ステップS261に移行して、モータ回転角センサ19によりモータ回転角θM(n)を取り込み、さらにステップS263によって、θS(n)=θS(n-1)+(θM(n)−θM(n-1))/Gによりステアリング推定角θS(n)を算出する。ここで、θM(n)は今回のモータ回転角、θM(n-1)は前回のモータ回転角を示し、またGは、図1に示す減速機17による減速比を示す。なお、このステップS263によるステアリング角の演算処理は、ステアリング角度推定手段127によって行われる。
このようなステップS251〜S263の一連の処理を終了すると、前述した角度センサ15の異常検出処理に戻り、ステップS205に処理を移行する。
また、ステップS213、S215、S217による各処理を削除して、ステップS211によるNoの判断処理の直後にステップS219を置き、またステップS211による処理によりYesの判断をした場合にはステップS201に処理を移行するように、当該異常検出処理の流れを変更しても良い。さらにステップS227、S229、S231による各処理を削除して、ステップS225によるNoの判断処理の直後にステップS219を置き、またステップS225による処理によりYesの判断をした場合にはステップS201に処理を移行するように、当該異常検出処理の流れを変更しても良い。
これにより、所定時間の経過を待つことなく、即座にステップS219により角度センサ15(角度センサ16)の異常発生通知を行うことができるので、異常検出処理の高速化を期待することができる。
さらに、ステップS205により、ステアリング検出角θ1(n)とステアリング推定角θS(n)との回転方向が同一方向であるか否かを判断する処理を行っているが、異常検出処理全体を簡素かつ高速化する観点から、ステップS205、S221、S223、S225、S227、S229、S231による各処理を削除しても良い。
ここで、ステップS209で行う「第1、第2所定値α1、α2の演算」およびステップS223で行う「第1所定値β1の演算」について、説明する。
上述した角度センサ15、16には、機械的に生じ得る減速機17のバックラッシュやトーションバー14のねじれ角を要因とする「検出誤差」を生じ得ることから、角度センサ15、16により検出されるステアリング角θ1、θ2には、ある所定値以下の偏差を有することがわかっている。そのため、本第11改変例では、ステップS209により第1所定値α1および第2所定値α2、ステップS223により第1所定値β1を、それぞれ演算することによって、当該偏差による影響を吸収している。
以下、これらの所定値α1、α2、β1の算出方法について説明する。
まず、減速機17のバックラッシュ等により生じる偏差(所定値)をΔθ0 (Δθ0 >0)とすると、|θ1(n)−θS(n)|≦Δθ0 を満たす。
ここで、実際に生じ得る偏差をΔθとすると、θ1(n)=θS(n)+Δθであるから、ステアリング検出角θ1(n)とステアリング推定角θS(n)との回転方向が同一方向、即ちθ1(n)・θS(n)>0のとき、θ1(n)=θS(n)+Δθの両辺をθS(n)で割ると、次の式(3)が得られる。また角度センサ15、16が正常であれば、−Δθ0 ≦Δθ≦Δθ0 の関係を満たしているので、式(3)は次の式(4)に変形することができる。
したがって、角度センサ15、16が正常であるか否かは、次の式(5)による判定閾値α1、α2によって判断することができる。
一方、ステアリング検出角θ1(n)とステアリング推定角θS(n)との回転方向が反対方向、即ちθ1(n)・θS(n)<0のとき、θ1(n)=θS(n)+Δθの両辺をθS(n)で割ると、次の式(6)、(7)が得られる。
ここで、角度センサ15、16が正常であれば、θS(n)<0(θ1(n)>0)のときにはΔθ=θ1(n)−θS(n)>0よりΔθ≦Δθ0 を満足するので、式(6)、(7)は次の式(8)に変形できる。同様に、θS(n)>0(θ1(n)<0)のときも、次式(8)が得られる。
したがって、角度センサ15、16が正常であるか否かは、次の式(9)による判定閾値β1によって判断することができる。
このようにして所定値α1、α2、β1は演算されるので、これらの所定値は、角度センサ15(または角度センサ16)により検出されたステアリング検出角またはステアリング角度推定手段127により推定されたステアリング推定角に基づいて変化する。つまり、ステアリング検出角θ1(n)(またはθ2(n))あるいはステアリング推定角θS(n)の変化に動的に対応して、角度センサ15(または角度センサ16)の異常の有無を判断することができる。なお、上述したΔθ0 は、トーションバー14のマニュアルストッパを考慮して、例えば12゜(±6゜)に設定されている。
以上説明したように、第11改変例の電気式動力舵取装置によると、ステアリング軸12とピニオン軸13とをトーションバー14により相対回転可能に連結し、ステアリング軸12の回転角を角度センサ15により、またピニオン軸13の回転角を角度センサ16により、それぞれ検出する。そして、アシストトルク決定手段121により、ステアリング軸12の回転角およびピニオン軸13の回転角の少なくとも一方に基づいて、モータMにより発生させるアシスト力を決定し、また角度センサ15(または角度センサ16)により検出されたステアリング軸12の回転角θ1(n)(またはθ2(n))と、ステアリング角度推定手段127により推定されたステアリング軸12の推定回転角θS(n)と、の比α(α10)が、所定値α1(α11)以上所定値α2(α12)以下の時、角度センサ15(または角度センサ16)に異常が生じたことを検出する。
これにより、ステアリング軸12の回転角を検出することができるとともに、ステアリング軸12の回転角とピニオン軸13の回転角との少なくとも一方からトーションバー14のねじれ量をねじれ角として検出することができるので、ステアリングホイール11の操舵角を考慮したアシスト制御をすることができる。したがって、操舵角に基づくアシスト制御をし得る効果がある。また、ステアリング検出角θ1(n)(またはθ2(n))とステアリング推定角θS(n)との比α(α10)から、角度センサ15(または角度センサ16)に異常が生じたことを検出することができるので、角度センサ15(または角度センサ16)の異常を検出し得る効果もある。
また、第11改変例の電気式動力舵取装置によると、ステアリング軸12とピニオン軸13とをトーションバー14により相対回転可能に連結し、ステアリング軸12の回転角を角度センサ15により、またピニオン軸13の回転角を角度センサ16により、それぞれ検出する。そして、アシストトルク決定手段121により、ステアリング軸12の回転角およびピニオン軸13の回転角の少なくとも一方に基づいて、モータMにより発生させるアシスト力を決定し、また角度センサ15(または角度センサ16)により検出されたステアリング軸12の回転角θ1(n)(またはθ2(n))と、ステアリング角度推定手段127により推定されたステアリング軸12の推定回転角θS(n)と、の比α(α10)が、所定値α1(α11)以上所定値α2(α12)以下になる状態が所定時間T継続したとき、角度センサ15(または角度センサ16)に異常が生じたことを検出する。
これにより、ステアリング軸12の回転角を検出することができるとともに、ステアリング軸12の回転角とピニオン軸13の回転角との少なくとも一方からトーションバー14のねじれ量をねじれ角として検出することができるので、ステアリングホイール11の操舵角を考慮したアシスト制御をすることができる。したがって、操舵角に基づくアシスト制御をし得る効果がある。また、角度センサ15(または角度センサ16)により、ステアリング検出角θ1(n)(またはθ2(n))とステアリング推定角θS(n)との比α(α10)を所定時間T継続して検出するので、さらに正確に角度センサ15(または角度センサ16)の異常を検出し得る効果もある。
さらに、第11改変例の電気式動力舵取装置によると、ステアリング軸12とピニオン軸13とをトーションバー14により相対回転可能に連結し、ステアリング軸12の回転角を角度センサ15により、またピニオン軸13の回転角を角度センサ16により、それぞれ検出する。そして、アシストトルク決定手段121により、ステアリング軸12の回転角およびピニオン軸13の回転角の少なくとも一方に基づいて、モータMにより発生させるアシスト力を決定し、また角度センサ15(または角度センサ16)により検出されたステアリング軸12の回転角θ1(n)()またはθ2(n))と、ステアリング角度推定手段127により推定されたステアリング軸12の推定回転角θS(n)と、がそれぞれ同一方向に回るときに両角度の比α(α10)が、所定値α1(α11)以上所定値α2(α12)以下の時、または角度センサ15(または角度センサ16)より検出されたステアリング軸12の回転角と、ステアリング角度推定手段127により推定されたステアリング軸12の推定回転角θS(n)と、が互いに反対方向に回るときに両角度の比β1(β10)が、所定値β1(β11)以上の時、それぞれ角度センサ15(または角度センサ16)に異常が生じたことを検出する。
これにより、ステアリング軸12の回転角を検出することができるとともに、ステアリング軸12の回転角とピニオン軸13の回転角との少なくとも一方からトーションバー14のねじれ量をねじれ角として検出することができるので、ステアリングホイール11の操舵角を考慮したアシスト制御をすることができる。したがって、操舵角に基づくアシスト制御をし得る効果がある。また、角度センサ15(または角度センサ16)により、ステアリング検出角θ1(n)(またはθ2(n))とステアリング推定角θS(n)との比α(α10、β10)を回転方向に応じて各々に設定された所定値α1(α11)、α2(α12)、β(β11)と比較して検出するので、より正確に角度検出手段の異常を検出し得る効果もある。
さらにまた、第11改変例の電気式動力舵取装置によると、ステアリング軸12とピニオン軸13とをトーションバー14により相対回転可能に連結し、ステアリング軸12の回転角を角度センサ15により、またピニオン軸13の回転角を角度センサ16により、それぞれ検出する。そして、アシストトルク決定手段121により、ステアリング軸12の回転角およびピニオン軸13の回転角の少なくとも一方に基づいて、モータMにより発生させるアシスト力を決定し、また角度センサ15(または角度センサ16)により検出されたステアリング軸12の回転角θ1(n)(またはθ2(n))と、ステアリング角度推定手段127により推定されたステアリング軸12の推定回転角θS(n)と、がそれぞれ同一方向に回るときに両角度の比α(α10)が、所定値α1(α11)以上所定値α2(α12)以下になる状態が所定時間継続したとき、または角度センサ15(または角度センサ16)より検出されたステアリング軸12の回転角と、ステアリング角度推定手段127により推定されたステアリング軸12の推定回転角θS(n)と、が互いに反対方向に回るときに両角度の比β1(β10)が、所定値β1(β11)以上になる状態が所定時間継続したとき、それぞれ角度センサ15(または角度センサ16)に異常が生じたことを検出する。
これにより、ステアリング軸12の回転角を検出することができるとともに、ステアリング軸12の回転角とピニオン軸13の回転角との少なくとも一方からトーションバー14のねじれ量をねじれ角として検出することができるので、ステアリングホイール11の操舵角を考慮したアシスト制御をすることができる。したがって、操舵角に基づくアシスト制御をし得る効果がある。また、角度センサ15(または角度センサ16)により、ステアリング検出角θ1(n)(またはθ2(n))とステアリング推定角θS(n)との比α(α10、β10)を回転方向に応じて各々に設定された所定値α1(α11)、α2(α12)、β(β11)と比較し所定時間継続して検出するので、一層正確に角度検出手段の異常を検出し得る効果もある。
また、第11改変例の電気式動力舵取装置によると、所定値α1(α11、α21)、α2(α12、α22)、β1(β11、β21)は、角度センサ15(または角度センサ16)により検出されたステアリング検出角θ1(n)(またはθ2(n))またはステアリング角度推定手段127により推定されたステアリング推定角θS(n)に基づいて変化するので、ステアリング検出角θ1(n)(またはθ2(n))あるいはステアリング推定角θS(n)の変化に動的に対応して、角度センサ15(または角度センサ16)の異常の有無を判断することができる。したがって、より一層正確に角度センサ15(または角度センサ16)の異常を検出し得る効果がある。
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態に係る電気式動力舵取装置を図24および図25に基づいて説明する。なお、この第1実施形態に係る電気式動力舵取装置は、特許請求の範囲に記載の請求項1〜10に係る電気式動力舵取装置に相当するものである。
第1実施形態による電気式動力舵取装置では、前述した第10改変例の電気式動力舵取装置を構成するステアリング角度推定手段127を削除した構成を採るもので、さらに角度センサ異常検出手段123による異常検出処理に変更を加えて、角度センサ15(または角度センサ16)により検出したステアリング軸12の所定位置を基準にする相対回転角(以下、本第1実施形態において「ステアリング検出相対角」という)と、モータ回転角センサ19により検出または推定された所定位置を基準にするモータMの相対検出推定回転角(以下、本第1実施形態において「モータ検出推定相対角」という)と、の比に基づいて、角度センサ15(または角度センサ16)の異常を検出する。この点が第11実施形態のものと相違する。したがって、他の構成部分は第10改変例の電気式動力舵取装置と実質的に同一の構成を採るため、それらの説明を省略し、また必要に応じて図1および図19を援用して説明する。
図24に示すように、第1実施形態による電気式動力舵取装置では、前述した第11改変例10の電気式動力舵取装置で用いたステアリング角度推定手段127を備えていないため、モータ回転角センサ19から取り込んだモータ検出推定相対角を直接、アシストトルク決定手段131に入力している。そのため、アシストトルク決定手段131では、次述するように、ステアリング角を算出することなく、角度センサ15、16によるステアリング検出相対角とモータ検出推定相対角と比に基づいて異常検出処理を行っている。
図25に示すように、第1実施形態による電気式動力舵取装置は、角度センサ異常検出手段133(図24)において、以下の異常検出処理を行う。この角度センサの異常検出処理も、第10改変例による異常検出処理と同様、例えば5ミリ秒間隔に発生する割り込み処理によって行われる。なお、以下、角度センサ15の異常検出処理の流れを説明するが、角度センサ16の異常検出処理も同様に行われることに留意されたい。
まず、ステップS301により、本処理が1回目であるか否かを判断し、本処理が1回目にあたる場合には(ステップS301でYes)、前回演算等した積算モータ回転角θMS(n-1) を記憶していないため、ステップS303、S305、S307、によって積算モータ回転角の初期値θMS(1)を設定する処理を行う。なお、θMSの後に付されている括弧内のnは、第n回目に検出あるいは推定されたステアリング角であることを表す添字である。
即ち、ステップS303では、角度センサ15によりステアリング角θ1(1)を取り込み、続くステップS305では、モータ回転角センサ19によりモータ回転角θM(1)を取り込む処理を、それぞれ順次行う。そして、ステップS307により、ステップS305によるモータ回転角θM(1)を積算モータ回転角の初期値θMS(1)として記憶する。
一方、既に本処理を行っている場合には(ステップS301でNo)、前回演算等した積算モータ回転角θMS(n-1) を記憶しているので、ステップS309に移行して角度センサ15によりステアリング角θ1(n)を取り込み、続くステップS305により、モータ回転角センサ19によるモータ回転角θM(n)を取り込む処理を行う。そして、さらにθMS(n)=θMS(n-1)+(θM(n)−θM(n-1))により積算モータ回転角θMS(n) を算出する。ここで、θM(n)は今回のモータ回転角、θM(n-1)は前回のモータ回転角を示す。
続くステップS315により、相対角を演算する。ここでは、角度センサ15によるステアリング検出相対角θ1(n)’とモータ回転角センサ19によるモータ検出推定相対角θMS(n)'とをそれぞれ演算する。ステアリング検出相対角θ1(n)’は、今回のθ1(n)から初期値θ1(1)を引くことにより算出し(θ1(n)’=θ1(n)−θ1(1))、またモータ検出推定相対角θMS(n)'は、今回の積算モータ回転角θMS(n)から初期値θMS(1)を引くことにより算出する。
次にステップS317により、ステアリング検出相対角θ1(n)’とモータ検出推定相対角θMS(n)'との回転方向が同一方向であるか否かを判断する。即ち、ステアリング検出相対角θ1(n)’の回転方向とモータ回転角θM の相対角θMS(n)'の回転方向とが、同一方向であるか反対方向であるかによって、異常判定に用いるパラメータ(例えばステアリング角度比α、ステアリング偏差角比β)を変更することにより、より正確に角度センサ15の異常を検出することができるため、ステアリング角θ1 の相対角θ1(n)'とモータ回転角θM の相対角θMS(n)'とを乗算することにより求められる符号(正または負)により、回転が同一方向であるか否かをステップS317により判断する処理を行っている。
そして、このステップS317により同一方向であると判断すると(ステップS317でYes)、ステップS319に移行してステアリング角度比αを求める演算処理、つまりステアリング検出相対角θ1(n)’をモータ検出推定相対角θMS(n)'で割ることにより両者の比αを算出する。なお、このステアリング角度比αは、特許請求の範囲(請求項1〜4)に記載の「比α30」に相当するもので、角度センサ16の場合には、特許請求の範囲(請求項8〜10)に記載の「比α40」に相当するものである。
次のステップS321により、第1所定値α1および第2所定値α2を後述する所定の演算処理により求め、この第1、第2所定値α1、α2で挟まれた範囲内に、ステアリング検出相対角θ1(n)’とモータ検出推定相対角θMS(n)'との比αが収まっているか否か(α2≦α≦α1)を続くステップS323により判断する。このステップS323による判断処理によって、当該範囲内に比αがあれば(S323でYes)、角度センサ15は正常である可能性があるので、ステップS331に処理を移行して異常タイマtcのクリア処理(tc=0)を行い、一連の異常検出処理を終了する。なお、この第1所定値α1および第2所定値α2は、特許請求の範囲(請求項1〜4、9)に記載の「所定値α31」および「所定値α32」にそれぞれ相当するもので、角度センサ16の場合には、特許請求の範囲(請求項5〜8、10)に記載の「所定値α41」および「所定値α42」にそれぞれ相当するものである。
一方、当該範囲内に比αがなければ(S323でNo)、角度センサ15に異常を生じた可能性があるので、ステップS325に処理を移行して異常タイマtcのカウントアップ処理(tc=tc+1)を行い、さらにステップS327により異常タイマtcで途中でクリアされることなくカウントアップされ続けてから所定時間Tが経過しているか否か、つまり異常タイマtcの値が所定値以上に到達しているか否かの判断を行う。この判断により、異常タイマtcが所定時間T続けてカウントアップされている場合には(S327でYes)、角度センサ15に異常が生じているものと判断できるため、ステップS329により角度センサ15の異常発生を運転者に通知する処理を行い、一連の異常検出処理の終了する。
また、ステップS317により同一方向ではない、つまりステアリング検出相対角θ1(n)’とモータ検出推定相対角θMS(n)'との回転方向が反対であると判断すると(ステップS317でNo)、ステップS333に移行してステアリング偏差角比βを求める演算処理、つまりステアリング検出相対角θ1(n)’からモータ検出推定相対角θMS(n)'を引いたものを減速比Gで割って符号反転し、さらにその結果をモータ検出推定相対角θMS(n)'で割ることにより(β=−(θ1(n)' −θMS(n)')/G)/θMS(n)')、ステアリング偏差角比βを算出する。なお、このステアリング偏差角比βは、特許請求の範囲(請求項2、4)に記載の「比β30」に相当するもので、角度センサ16の場合には、特許請求の範囲(請求項6、8)に記載の「比β40」に相当するものである。
そして、ステップS335により、第1所定値β1を後述する所定の演算処理により求め、この第1所定値β1よりもステップS333により求めたステアリング偏差角比βの方が小さいか否かをステップS337により判断する。このステップS337による判断処理によって、第1所定値β1よりもステアリング偏差角比βの方が小さいと判断できれば(S337でYes)、角度センサ15は正常である可能性があるので、ステップS345に処理を移行して異常タイマtcのクリア処理(tc=0)を行い、一連の異常検出処理を終了する。なお、この第1所定値β1は、特許請求の範囲(請求項2、4、9)に記載の「所定値β31」に相当するもので、角度センサ16の場合には、特許請求の範囲(請求項6、8、10)に記載の「所定値β41」に相当するものである。
一方、第1所定値β1よりもステアリング偏差角比βの方が小さいと判断できなければ(S337でNo)、角度センサ15に異常を生じた可能性があるので、ステップS339に処理を移行して異常タイマtcのカウントアップ処理(tc=tc+1)を行い、さらにステップS341により異常タイマtcで途中でクリアされることなくカウントアップされ続けてから所定時間T(例えば300ミリ秒〜600ミリ秒)が経過しているか否か、つまり異常タイマtcの値が所定値以上に到達しているか否かの判断を行う。この判断により、異常タイマtcが所定時間T続けてカウントアップされている場合には(S341でYes)、角度センサ15に異常が生じているものと判断できるため、ステップS343により角度センサ15の異常発生を運転者に通知する処理を行い、一連の異常検出処理の終了する。
なお、ステップS325、S327、S331による各処理は、特許請求の範囲(請求項3、4、7、8)に記載の「比αxxが、〜になる状態が所定時間継続したとき」(xxは30または40)に相当するものである。
また、ステップS325、S327、S331による各処理を削除して、ステップS323によるNoの判断処理の直後にステップS329を置き、またステップS323による処理によりYesの判断をした場合には一連の異常検出処理を終了するように、当該異常検出処理の流れを変更しても良い。さらにステップS339、S341、S345による各処理を削除して、ステップS337によるNoの判断処理の直後にステップS343を置き、またステップS337による処理によりYesの判断をした場合には一連の異常検出処理を終了するように、当該異常検出処理の流れを変更しても良い。
これにより、所定時間の経過を待つことなく、即座にステップS329やステップS343により角度センサ15(角度センサ16)の異常発生通知を行うことができるので、異常検出処理の高速化を期待することができる。
さらに、ステップS317により、ステアリング検出相対角θ1(n)’とモータ検出推定相対角θMS(n)'との回転方向が同一方向であるか否かを判断する処理を行っているが、異常検出処理全体を簡素かつ高速化する観点から、ステップS317、S333、S335、S337、S339、S341、S343、S345による各処理を削除しても良い。
ここで、ステップS321で行う「第1、第2所定値α1、α2の演算」およびステップS335で行う「第1所定値β1の演算」について、説明する。
起動時に角度センサ15、16で検出したステアリング検出角θ1(1)’とモータ回転角センサ19で検出または推定したモータ回転角θM(1)とからみた相対的なステアリング検出相対角θ1(n)’やモータ検出推定相対角θMS(n)'には、機械的に生じ得る減速機17のバックラッシュやトーションバー14のねじれ角を要因とする「検出誤差」を生じ得る。そのため、本第1実施形態では、ステップS321により第1所定値α1および第2所定値α2、ステップS335により第1所定値β1を、それぞれ演算することによって、当該偏差による影響を吸収している。
以下、これらの所定値α1、α2、β1の算出方法について説明する。
まず、減速機17のバックラッシュ等により生じる偏差(所定値)をΔθ0 (Δθ0 >0)とすると、|θ1(n)’−θMS(n)'/G|≦Δθ0 を満たす。
ここで、実際に生じ得る偏差をΔθとすると、θ1(n)’=θMS(n)'/G+Δθであるから、ステアリング検出相対角θ1(n)’とモータ検出推定相対角θMS(n)'との回転方向が同一方向、即ちθ1(n)’・θMS(n)'>0のとき、θ1(n)’=θMS(n)'/G+Δθの両辺をθMS(n)'で割ると、次の式(10)が得られる。また角度センサ15、16が正常であれば、−Δθ0 ≦Δθ≦Δθ0 の関係を満たしているので、式(10)は次の式(11)に変形することができる。
したがって、角度センサ15、16が正常であるか否かは、次の式(12)による判定閾値α1、α2によって判断することができる。
一方、ステアリング検出相対角θ1(n)’とモータ検出推定相対角θMS(n)'との回転方向が反対方向、即ちθ1(n)’・θMS(n)'<0のとき、θ1(n)’=θMS(n)'/G+Δθの両辺をθMS(n)'で割ると、次の式(13)、(14)が得られる。
ここで、角度センサ15、16が正常であれば、θMS(n)'<0(θ1(1)’>0)のときにはΔθ=θ1(1)’−θMS(n)'>0よりΔθ≦Δθ0 を満足するので、式(13)、(14)は次の式(15)に変形できる。同様に、θMS(n)'>0(θ1(1)’<0)のときも、次式(15)が得られる。
したがって、角度センサ15、16が正常であるか否かは、次の式(16)による判定閾値β1によって判断することができる。
このようにして所定値α1、α2、β1は演算されるので、これらの所定値は、角度センサ15(または角度センサ16)により検出されたステアリング検出相対角θ1(n)’またはモータ回転角センサ19により検出または推定されたモータ検出推定相対角θMS(n)'に基づいて変化する。つまり、これらの角度変化に動的に対応して、角度センサ15(または角度センサ16)の異常の有無を判断することができる。なお、上述したΔθ0 は、トーションバー14のマニュアルストッパを考慮して、例えば12゜(±6゜)に設定されている。
以上説明したように、第1実施形態の電気式動力舵取装置(請求項1または請求項5に記載の電気式動力舵取装置に相当)によると、ステアリング軸12とピニオン軸13とをトーションバー14により相対回転可能に連結し、ステアリング軸12の回転角を角度センサ15により、またピニオン軸13の回転角を角度センサ16により、それぞれ検出する。そして、アシストトルク決定手段121により、ステアリング軸12の回転角およびピニオン軸13の回転角の少なくとも一方に基づいて、モータMにより発生させるアシスト力を決定し、また角度センサ15(または角度センサ16)により検出されたステアリング軸12の所定位置を基準にするステアリング検出相対角θ1(n)’(またはθ2(n)’)と、モータ回転角センサ19により検出または推定された所定位置を基準にするモータMのモータ検出推定相対角θMS(n)'と、の比α(α30)が、所定値α1(α31)以上所定値α2(α32)以下の時、角度センサ15(または角度センサ16)に異常が生じたことを検出する。
これにより、ステアリング軸12の回転角を検出することができるとともに、ステアリング軸12の回転角とピニオン軸13の回転角との少なくとも一方からトーションバー14のねじれ量をねじれ角として検出することができるので、ステアリングホイール11の操舵角を考慮したアシスト制御をすることができる。したがって、操舵角に基づくアシスト制御をし得る効果がある。また、ステアリング検出相対角θ1(n)’(またはθ2(n)’)とモータ検出推定相対角θMS(n)'と、の比α(α30)から、角度センサ15(または角度センサ16)に異常が生じたことを検出することができるので、ステアリング軸12の回転角を推定するステアリング角度推定手段を備えなくても、角度センサ15(または角度センサ16)の異常を検出し得る効果もある。
また、第1実施形態の電気式動力舵取装置(請求項2または請求項6に記載の電気式動力舵取装置に相当)によると、ステアリング軸12とピニオン軸13とをトーションバー14により相対回転可能に連結し、ステアリング軸12の回転角を角度センサ15により、またピニオン軸13の回転角を角度センサ16により、それぞれ検出する。そして、アシストトルク決定手段121により、ステアリング軸12の回転角およびピニオン軸13の回転角の少なくとも一方に基づいて、モータMにより発生させるアシスト力を決定し、また角度センサ15(または角度センサ16)により検出されたステアリング軸12の所定位置を基準にするステアリング検出相対角θ1(n)’(またはθ2(n)’)と、モータ回転角センサ19により検出または推定された所定位置を基準にするモータMのモータ検出推定相対角θMS(n)'と、がそれぞれ同一方向に回るときに両角度の比α(α30)が、所定値α1(α31)以上所定値α2(α32)以下の時、また角度センサ15(または角度センサ16)により検出されたステアリング軸12の所定位置を基準にするステアリング検出相対角θ1(n)’(またはθ2(n)’)と、モータ回転角センサ19により検出または推定された所定位置を基準にするモータMのモータ検出推定相対角θMS(n)'とが互いに反対方向に回るときに両角度の比β(β30)が、所定値β1(β31)以上の時、それぞれ角度センサ15(または角度センサ16)に異常が生じたことを検出する。
これにより、ステアリング軸12の回転角を検出することができるとともに、ステアリング軸12の回転角とピニオン軸13の回転角との少なくとも一方からトーションバー14のねじれ量をねじれ角として検出することができるので、ステアリングホイール11の操舵角を考慮したアシスト制御をすることができる。したがって、操舵角に基づくアシスト制御をし得る効果がある。また、角度センサ15(または角度センサ16)により、ステアリング検出相対角θ1(n)’(またはθ2(n)’)とモータ検出推定相対角θMS(n)'と、の比α(α30)を回転方向に応じて各々に設定された所定値α1(α31)、α2(α32)、β(β31)と比較して検出するので、ステアリング軸12の回転角を推定するステアリング角度推定手段を備えなくても、より正確に角度検出手段の異常を検出し得る効果もある。
さらに、第1実施形態の電気式動力舵取装置(請求項3または請求項7に記載の電気式動力舵取装置に相当)によると、ステアリング軸12とピニオン軸13とをトーションバー14により相対回転可能に連結し、ステアリング軸12の回転角を角度センサ15により、またピニオン軸13の回転角を角度センサ16により、それぞれ検出する。そして、アシストトルク決定手段121により、ステアリング軸12の回転角およびピニオン軸13の回転角の少なくとも一方に基づいて、モータMにより発生させるアシスト力を決定し、また角度センサ15(または角度センサ16)により検出されたステアリング軸12の所定位置を基準にするステアリング検出相対角θ1(n)’(またはθ2(n)’)と、モータ回転角センサ19により検出または推定された所定位置を基準にするモータMのモータ検出推定相対角θMS(n)'と、の比α(α30)が、所定値α1(α31)以上所定値α2(α32)以下になる状態が所定時間継続したとき、角度センサ15(または角度センサ16)に異常が生じたことを検出する。
これにより、ステアリング軸12の回転角を検出することができるとともに、ステアリング軸12の回転角とピニオン軸13の回転角との少なくとも一方からトーションバー14のねじれ量をねじれ角として検出することができるので、ステアリングホイール11の操舵角を考慮したアシスト制御をすることができる。したがって、操舵角に基づくアシスト制御をし得る効果がある。また、ステアリング検出相対角θ1(n)’(またはθ2(n)’)とモータ検出推定相対角θMS(n)'と、の比α(α30)を所定時間T継続して検出するので、ステアリング軸12の回転角を推定するステアリング角度推定手段を備えなくても、さらに正確に角度センサ15(または角度センサ16)の異常を検出し得る効果もある。
さらにまた、第1実施形態の電気式動力舵取装置(請求項4または請求項8に記載の電気式動力舵取装置に相当)によると、ステアリング軸12とピニオン軸13とをトーションバー14により相対回転可能に連結し、ステアリング軸12の回転角を角度センサ15により、またピニオン軸13の回転角を角度センサ16により、それぞれ検出する。そして、アシストトルク決定手段121により、ステアリング軸12の回転角およびピニオン軸13の回転角の少なくとも一方に基づいて、モータMにより発生させるアシスト力を決定し、また角度センサ15(または角度センサ16)により検出されたステアリング軸12の所定位置を基準にするステアリング検出相対角θ1(n)’(またはθ2(n)’)と、モータ回転角センサ19により検出または推定された所定位置を基準にするモータMのモータ検出推定相対角θMS(n)'と、がそれぞれ同一方向に回るときに両角度の比α(α30)が、所定値α1(α31)以上所定値α2(α32)以下になる状態が所定時間継続したとき、また角度センサ15(または角度センサ16)により検出されたステアリング軸12の所定位置を基準にするステアリング検出相対角θ1(n)’(またはθ2(n)’)と、モータ回転角センサ19により検出または推定された所定位置を基準にするモータMのモータ検出推定相対角θMS(n)'とが互いに反対方向に回るときに両角度の比β(β30)が、所定値β1(β31)以上になる状態が所定時間継続したとき、それぞれ角度センサ15(または角度センサ16)に異常が生じたことを検出する。
これにより、ステアリング軸12の回転角を検出することができるとともに、ステアリング軸12の回転角とピニオン軸13の回転角との少なくとも一方からトーションバー14のねじれ量をねじれ角として検出することができるので、ステアリングホイール11の操舵角を考慮したアシスト制御をすることができる。したがって、操舵角に基づくアシスト制御をし得る効果がある。また、角度センサ15(または角度センサ16)により、ステアリング検出相対角θ1(n)’(またはθ2(n)’)とモータ検出推定相対角θMS(n)'と、の比α(α30)を回転方向に応じて各々に設定された所定値α1(α31)、α2(α32)、β(β31)と比較し所定時間継続して検出するので、ステアリング軸12の回転角を推定するステアリング角度推定手段を備えなくても、より正確に角度検出手段の異常を検出し得る効果もある。
また、第1実施形態の電気式動力舵取装置(請求項9または請求項10に記載の電気式動力舵取装置に相当)によると、所定値α1(α11、α21)、α2(α12、α22)、β1(β11、β21)は、角度センサ15(または角度センサ16)により検出されたステアリング検出相対角θ1(n)’またはモータ回転角センサ19により検出または推定されたモータ検出推定相対角θMS(n)'に基づいて変化するので、ステアリング検出相対角θ1(n)’(またはθ2(n)’)あるいはモータ検出推定相対角θMS(n)'の変化に動的に対応して、角度センサ15(または角度センサ16)の異常の有無を判断することができる。したがって、より一層正確に角度センサ15(または角度センサ16)の異常を検出し得る効果がある。