JP2006281347A - コミュニケーションロボット - Google Patents

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敬宏 宮下
Hiroshi Ishiguro
浩 石黒
Kiyoshi Kogure
潔 小暮
Norihiro Hagita
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Abstract

【構成】コミュニケーションロボット10は、たとえば高密度全身分布型触覚センサとして皮膚センサネットワーク72を含む。皮膚センサネットワーク72では、たとえば複数のノードが相互接続型のネットワークを形成し、各ノードには複数の触覚センサエレメント(ピエゾフィルム)が接続される。各ノードは、触覚センサエレメントの出力データを、触覚コミュニケーションにおける触られ方を母関数としたウェーブレット変換によって圧縮し、圧縮に基づく触覚情報をCPU60に送信する。
【効果】送信データ量を低減でき、しかも触られ方の特徴抽出を容易に行える。
【選択図】図3

Description

この発明はコミュニケーションロボットに関し、特にたとえば、全身に分布された複数の触覚センサエレメントを備えるコミュニケーションロボットに関する。
日常環境の中で活動するロボットにとって表面の柔らかさと敏感さは、コミュニケーションの相手となる人間への安全性という面において重要である。さらに、スキンシップという言葉の通り、体の表面は最初に触れるインタフェースであることから、コミュニケーションの相手がどのようにどの場所に触れているかを知ることは、相手の状態を知ることに繋がる。たとえば強く握ったり、やさしくなでたりするという触行動は自分の意思や気持ちを相手に伝えるための行動であり、根本的なコミュニケーション行動の1つである。したがって、ロボットの全身の柔らかさと触覚は、日常環境の中で活動するコミュニケーションロボットにとって非常に重要である。
本件出願人は、たとえば特許文献1において、柔らかい皮膚を持ち、触覚情報を出力するピエゾセンサ(触覚センサエレメントまたは皮膚センサエレメント)を全身に配置したコミュニケーションロボットを提案している。この特許文献1のコミュニケーションロボットでは、一例として48枚のピエゾセンサシートが配置されている。さらに多数の触覚センサエレメントを用いることによって高密度全身分布型触覚センサをロボットの体表に形成することができる。
また、たとえばロボットの全身触覚に関しては、ロボットの体表に実装できる触覚デバイス(非特許文献1)や、触覚情報を送る手法(非特許文献2)などが研究されている。具体的には、非特許文献1の技術は、多値接触センサを読み取ってホストコンピュータに情報を送るノードがバス接続されたシステムである。また、非特許文献2の技術では、MEMS(Micro Electro Mechanical System)による小型接触センサと無線ユニットとを一体化した小型チップをロボット表面に分布させることで階層化された無線ネットワークの形成を可能にしている。
特開2004−283975号公報 陰山竜介(外4名)、"ロボット表面多値接触センサの開発と応用"、ロボティクスメカトロニクス講演会´98講演論文集(1CI1-2) Hiroyuki Shinoda(外3名)、"Two-Dimensional Signal Transmission Technology for Robotics", Proceedings of the 2003 IEEE International Conference on Robotics & Automation Taipei, Taiwan, September 14-19,2003
高密度の分布型触覚センサを構築する場合には、センサ情報が膨大になる。上述の従来技術では、すべての触覚センサ情報がロボット制御用コンピュータ(CPU)に送られていたので、大量のセンサ情報をコンピュータに送信して処理しなければならなかった。
それゆえに、この発明の主たる目的は、触覚に関する送信データ量を低減でき、しかも触られ方の特徴抽出を容易に行える、コミュニケーションロボットを提供することである。
請求項1の発明は、少なくとも1つの触覚センサエレメントをそれぞれが備え少なくとも1つの他のノードと互いに接続される複数のノードを含む触覚センサ、および触覚センサと接続されるロボット制御用コンピュータを備えるコミュニケーションロボットであって、複数のノードのそれぞれは、触覚センサエレメントの出力データを取得する取得手段、触覚コミュニケーションにおける触覚センサエレメントの出力に固有の波形を母関数としたウェーブレット変換によって取得手段によって取得された出力データを圧縮する圧縮手段、および圧縮手段による圧縮に基づく触覚情報をロボット制御用コンピュータに対して送信する送信手段を含む、コミュニケーションロボットである。
請求項1の発明では、コミュニケーションロボットは、触覚センサおよびロボット制御用コンピュータを含む。触覚センサは複数のノードを含み、複数のノードのそれぞれは少なくとも1つの触覚センサエレメントを備え、かつ、少なくとも1つの他のノードと互いに接続されている。触覚センサは、たとえば皮膚センサネットワークであり、複数のノードは相互接続型ネットワークを形成している。触覚センサエレメントは、実施例ではピエゾフィルムであり、複数のピエゾフィルムが柔軟な素材からなる皮膚中に分布して配置される。各ノードの取得手段は、触覚センサエレメントの出力データを取得する。たとえば、出力データは所定時間間隔で検出され、一定時間分の出力データがノードのメモリに記憶される。各ノードの圧縮手段は、取得手段によって取得されたたとえば一定時間分の出力データを圧縮する。この圧縮は、触覚コミュニケーションにおける触覚センサエレメントの出力に固有の波形を母関数としたウェーブレット変換によって実行される。母関数は、触行動をしている人間によって触られているときの触覚センサエレメントの出力の波形であり、人間の触り方、すなわち、ロボットの触られ方を示す。したがって、この圧縮によって、各触覚センサエレメントの出力データを圧縮するとともに、ロボットの触られ方を抽出し認識することができる。送信手段は、圧縮に基づく触覚情報をロボット制御用コンピュータに対して送信する。送信される触覚情報は、たとえば、圧縮された出力データ、当該圧縮に用いた母関数を示す識別情報等を含む。したがって、請求項1の発明によれば、触覚センサの出力データの送信データ量を低減でき、しかも各ノードで触られ方を抽出できるので、触られ方の特徴抽出が容易になる。
請求項2の発明は、請求項1の発明に従属し、送信手段は、最大の圧縮率が得られた母関数を用いた圧縮に基づく触覚情報を送信する。
請求項2の発明では、送信される触覚情報は、最大の圧縮率が得られた母関数を用いた圧縮に基づく情報である。出力データの圧縮は、触られ方を母関数としたウェーブレット変換によって実行されるので、最大の圧縮率が得られた母関数が当該触覚センサエレメントの実際の触られ方を示しているものと見なすことができる。したがって、最も圧縮された出力データを送信するので、送信データ量をより低減できる。しかも、実際の触られ方をそのノードで抽出した上で送信するので、当該触覚センサエレメントがどのように触られたかを容易に把握でき、ロボット制御用コンピュータの処理負担を軽減できる。
請求項3の発明は、請求項1または2の発明に従属し、送信手段は、触覚情報として触覚センサエレメントの触られ方を示す情報を送信する。
請求項3の発明では、触覚センサエレメントの触られ方を示す情報が触覚情報として送信される。触られ方を示す情報は、実施例では触られ方ラベル情報であり、母関数の識別情報に関連付けられている。したがって、触られ方を識別するためのデータ量の僅かな情報を触覚情報として送信するので、送信データを極めて少なくできる。また、最大の圧縮率が得られた母関数に対応する触られ方を示す情報のみを送信する場合には、さらに送信データ量を低減できる。
この発明によれば、各ノードが、各触覚センサエレメントの出力データを触られ方を母関数としたウェーブレット変換によって圧縮し、当該圧縮に基づく触覚情報を送信するようにした。したがって、送信データ量を非常に少なくできる。しかも、各ノードで圧縮によって触られ方を抽出できるので、触られ方の特徴抽出を容易に行うことができる。
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
図1を参照して、この実施例のコミュニケーションロボット(以下、単に「ロボット」ということがある。)10は台車12を含み、この台車12の側面には、このロボット10を自律移動させる車輪14が設けられる。この車輪14は、車輪モータ(図3において参照番号「16」で示す。)によって駆動され、台車12すなわちロボット10を前後左右任意の方向に動かすことができる。なお、図示しないが、この台車12の前面には、衝突センサが取り付けられ、この衝突センサは、台車12への人間や他の障害物の接触を検知する。
台車12の上には、多角形柱状のセンサ取付パネル18が設けられ、このセンサ取付パネル18の各面には、超音波距離センサ20が取り付けられる。この実施例ではたとえば24個の超音波距離センサ20が周囲360度にわたるように設けられる。この超音波距離センサ20は、センサ取付パネル18すなわちロボット10の周囲の主として人間との距離を計測するものである。具体的には、超音波距離センサ20は超音波を発射し、その超音波が人から反射されて超音波距離センサ20に入射されたタイミングを測定して、人との間の距離情報を出力する。
台車12の上には、人体状部22が直立するように取り付けられる。このロボット本体としての人体状部22の全身は、後に詳しく説明するように、柔軟素材からなる皮膚24によって覆われる。人体状部22は、たとえば鉄板のような筐体(図示せず)を含み、その筐体にコンピュータやその他必要なコンポーネントを収容している。そして、皮膚24は、その筐体上に被せられる。皮膚24の下の筐体の上部ほぼ中央にはマイク26が設けられる。このマイク26は、周囲の音声、特に人間の声を収集するためものである。
人体状部22は、右腕28Rおよび左腕28Lを含み、右腕28Rおよび左腕28Lすなわち上腕30Rおよび30Lは、それぞれ、肩関節32Rおよび32Lによって、胴体部分に変位自在に取り付けられる。この肩関節32Rおよび32Lは、3軸の自由度を有する。上腕30Rおよび30Lには、1軸の肘関節34Rおよび34Lによって、前腕36Rおよび36Lが取り付けられ、この前腕36Rおよび36Lには、手38Rおよび38Lが取り付けられる。これら右腕28Rおよび左腕28Lの各関節における各軸はここでは図示しないモータによってそれぞれ制御される。すなわち、右腕28Rおよび左腕28Lのそれぞれ4個のモータが、図3において、それぞれ右腕モータ40および左腕モータ42として表される。
人体状部18の上部には首関節44を介して頭部46が、人間の頭と同様に俯仰・回転可能に取付けられる。この3軸の首関節44は、図3に示す頭部モータ48によって制御される。頭部46の前面の「目」に相当する位置には2つの眼カメラ50が設けられ、この眼カメラ50は、ロボット10に接近した人間の顔や他の部分を撮影してその映像信号を取り込む。眼カメラ50はたとえばCCDやCMOSのような固体撮像素子を含むカメラであってよい。頭部46の前面の眼カメラ50の下方にはスピーカ52が設けられる。このスピーカ52は、ロボット10がそれの周囲の人間に対して音声によってコミュニケーションを図るために用いられる。
上で説明した人体状部22の胴体や頭部46および腕は上記したようにすべて柔軟な素材からなる皮膚24に覆われる。この皮膚24は、図2に示すように、下層のウレタンフォーム54と、その上に積層される比較的肉厚のシリコンゴム層56aおよび比較的肉薄のシリコンゴム層56bとを含む。そして、2つのシリコンゴム層56aおよび56bの間に、複数のピエゾセンサシート(触覚センサエレメント)58が埋め込まれる。このピエゾセンサシート58は、たとえば米国MSI社製、株式会社東京センサ販売のピエゾフィルムを用いる(http://www.t-sensor.co.jp/PIEZO/TOP/index.html)。このピエゾフィルムは、圧電フィルム(たとえばPVDF(ポリビニリデンフルオロイド))の両面に金属薄膜が形成された構造、つまり、圧電体が導体で挟まれた構造を有する圧電センサである。ピエゾフィルムは、圧力等で変形されると、そのひずみ速度に応じた電圧を発生する。ピエゾフィルムは、たとえば、30×30mm程度の大きさにカットされ、約5mmの間隔で皮膚24中に配置される。
実施例では、上述のように、発泡ウレタンとシリコンゴムとを使って皮膚24の柔らかさを得た。シリコンゴムだけである程度の厚みと柔らかさとを得ようとすると、重くなりすぎてエネルギ消費量が大きくなるだけでなく、裂傷に弱くなる。そこで、発明者等は、実験を重ねた結果、大まかな形と厚みはウレタンフォームで作り、その表面を約20mmのシリコンゴムで覆う形を採用することとした。そして、シリコンゴム層を2つにし、それらのシリコンゴム層56aおよび56bの間に、上述のピエゾセンサシート58を埋め込んだ。このとき、内側のシリコンゴム層56aを厚く(約15mm)し、表面側のシリコンゴム層56bを薄く(約5mm)した。このようにすると、ロボット10の振動や人間が表面を押したときに生じる高周波の振動をカットでき、なおかつフィルムが変形し易くなるので、圧力の計測が容易になる。つまり、シリコンゴム層の厚みはロボット10の構造やパワーによるが、なるべく薄く、しかし変形が伝わり易く、雑音となる振動が伝わり難いものが必要となる。また、この柔らかい皮膚を介して、人との間で触行動によるコミュニケーションを行うことができるので、人に対して安心感を与えて親和性を高めることができるし、触れたりぶつかったりした場合の人の怪我を防止して安全性も高めることができる。
なお、皮膚24の素材は軟性素材であればよく、上述のものに限定されずたとえば他のゴム素材等でもよい。ただし、ピエゾセンサシートの表面金属薄膜が腐食しない材質である必要がある。また、上述の皮膚24の厚み(各層の厚み)は一例であり、素材等によって適宜変更され得る。また、皮膚24の積層構造も適宜変更可能である。
人体状部22の全身にわたって多数の触覚センサエレメント(皮膚センサエレメント)58が埋め込まれ、高密度分布型の皮膚センサが構築される。触覚センサエレメント58は、人間等が接触することによって皮膚24に加えられた圧力を圧覚(触覚)情報として検知する。後述するように、複数の触覚センサエレメント58はセンサネットワークを形成している。
図1に示すロボット10の電気的構成が図3のブロック図に示される。図3に示すように、このロボット10は、全体の制御のためにマイクロコンピュータまたはCPU60を含み、このCPU(ロボット制御用コンピュータ)60には、バス62を通して、メモリ64,モータ制御ボード66,センサ入力/出力ボード68およびサウンド入力/出力ボード70が接続される。
メモリ64は、図示しないが、ROMやHDD、RAM等を含む。ROMやHDD等にはこのロボット10の制御プログラムが予め記憶されている。制御プログラムはたとえばコミュニケーション行動を実行するためのプログラム、外部のコンピュータと通信するためのプログラム等を含む。メモリ64にはまた、コミュニケーション行動を実行するためのデータが記憶され、そのデータは、たとえば、個々の行動を実行する際に、スピーカ52から発生すべき音声または声の音声データ(音声合成データ)、および所定の身振りを提示するための各関節軸の角度制御データ等を含む。RAMは、一時記憶メモリとして用いられるとともに、ワーキングメモリとして利用される。CPU60はプログラムに従ってデータをRAMに生成しまたは取得しつつ処理を実行する。
モータ制御ボード66は、たとえばDSP(Digital Signal Processor) で構成され、各腕や頭部などの各軸モータを制御する。すなわち、モータ制御ボード66は、CPU60からの制御データを受け、右肩関節32Rの3軸のそれぞれの角度を制御する3つのモータと右肘関節34Rの1軸の角度を制御する1つのモータとの計4つのモータ(図3ではまとめて、「右腕モータ」として示す。)40の回転角度を調節する。また、モータ制御ボード66は、左肩関節32Lの3軸と左肘関節34Lの1軸、計4つのモータ(図3ではまとめて、「左腕モータ」として示す。)42の回転角度を調節する。モータ制御ボード66は、また、頭部46の3軸のモータ(図3ではまとめて、「頭部モータ」として示す。)48の回転角度を調節する。そして、モータ制御ボード66は、車輪14を駆動する2つのモータ(図3ではまとめて、「車輪モータ」として示す。)16を制御する。
なお、この実施例の上述のモータは、車輪モータ16を除いて、制御を簡単化するためにそれぞれステッピングモータまたはパルスモータであるが、車輪モータ16と同様に、直流モータであってよい。
センサ入力/出力ボード68も、同様に、DSPで構成され、各センサやカメラからの信号を取り込んでCPU60に与える。すなわち、図示しない衝突センサの各々からの接触に関するデータがこのセンサ入力/出力ボード68を通して、CPU60に入力される。また、眼カメラ50からの映像信号が、必要に応じてこのセンサ入力/出力ボード68で所定の処理が施された後、CPU60に入力される。
また、皮膚センサネットワーク72がこのセンサ入力/出力ボード68に含まれるシリアル通信ポートを介してCPU60に接続される。皮膚センサネットワーク72は、図4に示すように、複数のノード74を含む。複数のノード74は相互接続型のネットワークを形成している。各ノード74は他の少なくとも1つのノード74と相互に接続されている。この実施例では各ノード74は4つの通信ポートを備えており、最大で4つのノード74と接続され得る。各ノード74はこの相互に接続された経路を介して通信を行う。CPU60は、センサ入力/出力ボード68のシリアルポートに接続されたケーブルを介して、ネットワークを形成する複数のノード74のうちの少なくとも1つのノード74と接続されていて、当該接続されたノード74との間でセンサ入力/出力ボード68を介してデータを送受信する。なお、図4ではセンサ入力/出力ボード68は省略されている。
各ノード74にはこの実施例では複数の触覚センサエレメント58が接続されている。各ノード74は、たとえば、所属ないし所有する複数の触覚センサエレメント58との配線長を短くするために当該触覚センサエレメント58のなるべく近傍になるように筐体内において配置される。各ノード74は、接続されている複数の触覚センサエレメント58のそれぞれの出力を検出し、センサ出力データとして取得する。なお、ノード74は少なくとも1つの触覚センサエレメント58を備えていればよい。この実施例では、皮膚センサネットワーク72によってロボット10の体表に高密度分布型触覚センサを形成するので、多数(たとえば数百個程度)の触覚センサエレメント58がたとえば上記所定間隔で皮膚24中に分散配置される。
図5にはノード74の電気的構成の一例が示される。ノード74は基板76(破線表示)を含み、基板76にはこのノード74の制御を行うマイクロコンピュータまたはCPU78が設けられる。一例として、基板76の大きさは70×60mm程度であり、CPU78にはたとえばルネサス製H8S2633が使用され得る。このプロセサはCISC構成の命令を69種類実行可能であり、センサデータの処理をノード74上で行える。CPU78はメモリ80と接続され、メモリ80はセンサデータバッファ82および転送データバッファ84と接続される。メモリ80はROMおよびRAM等を含み、ROMにはノード74の動作を制御するためのプログラムおよびデータが予め記憶されている。CPU78はメモリ80のROMのプログラムに従ってデータをRAMに生成しまたは取得しつつ処理を実行する。たとえば、メモリ80は、内蔵ROM256kByte、RAM16kByteを含み、クロック12.288MHzをもとに動作する。
センサデータバッファ82にはA/D変換器86が接続される。A/D変換器86としては、たとえば15チャネル10ビットのものが使用され得る。つまり、この実施例では、1つのA/D変換器86には最大15個の触覚センサエレメント58が接続され得る。A/D変換器86は、触覚センサエレメント58から出力された信号をディジタルデータに変換する。A/D変換器86は、センサ出力データを、この実施例では0を基準点として−512から512までの値で出力する。そのセンサ出力データはセンサデータバッファ82に与えられ、触覚センサエレメント58ごとに設けられた領域に格納される。CPU78はセンサデータバッファ82からセンサ出力データを取得して、センサ出力データを、当該データを出力した触覚センサエレメント58の識別情報に関連付けてメモリ80に格納する。センサ出力データはたとえばCPU78の内部タイマに基づく検出時刻を付与されて記憶されてよい。センサ出力のサンプリングレートはたとえば100Hzなど適宜に設定される。
転送データバッファ84には複数のシリアル通信のためのポート88が接続される。この実施例では4つのポート88が設けられる。各ポート88で独立全二重通信が可能であり、通信速度はたとえば38400bpsとした。各ノード74はポート88およびケーブルを介して他のノード74(もしくはCPU60)と接続される。CPU78は、送信すべきデータをメモリ80から転送データバッファ84の所定の領域に与えて、対応するポート88から当該データを送信する。また、他のノード74(もしくはCPU60)から送信されたデータは、ポート88を介して転送データバッファ84の所定の領域に格納される。CPU78は転送データバッファ84から受信データを取得して、受信データを、たとえば当該データを受信したポート88の識別情報に関連付けてメモリ80に格納する。
この皮膚センサネットワーク72のような相互接続型のネットワークでは、ホストコンピュータ(CPU60)までの経路を確保する必要がある。たとえば、ホストコンピュータ60が各ノード74に経路をマクロキャリブレーションによって明示的に示すようにしてもよい。しかし、この場合には、ホストコンピュータ60に負担がかかる。そのため、この実施例では、各ノード74が協調して経路確保を行う。このようにホストコンピュータからの明示的な指定なしに各ノードがデータ送信経路を確保できるとき、そのセンサネットワークは自己組織化可能であると表現する。この皮膚センサネットワーク72は、相互接続型の自己組織化可能なセンサネットワークに基づく分布型高密度皮膚センサを構成する。
自己組織化可能なセンサネットワーク72は、CPU60からは1つのデバイスのように使うことができ、CPU60はネットワークを意識しなくてもよい。発明者等は、アドホックネットワークのDSR(Dynamic Source Routing Protocol)と類似した手法を用いて、この自己組織化ネットワークのためのプロトコルを作成した。この作成したプロトコルによってCPU60まで転送する経路をCPU60が明示的に指示することなく確保できることを、発明者等はシミュレータで確認している。
概略を言えば、まず、ホストコンピュータとしてのCPU60が経路確保の命令(経路要求コマンド)をブロードキャスト送信する。各ノード74は、経路確保命令を受信すると、他のポート88にそのコマンドのコピーを送信する。したがって、CPU60からの経路確保命令は全てのノード74に送信されることとなる。
各ノード74は、ブロードキャストの信号(経路確保命令)が流れてきた方向に経路確保を行う。たとえば、各ノード74のCPU78は、最初に経路確保命令を受信したポート88をホスト側経路として確保し、つまり、そのポート88の識別情報(ポート番号)を、ホスト側の経路を示す経路確保データとしてメモリ80に記憶する。ノード74のCPU78は、CPU60宛にデータを転送する際には、メモリ80に記憶した経路確保データを参照して、ホスト側のポート88に向けてデータを送信する。このようにして、皮膚センサネットワーク72では、CPU60からの明示的な経路の指定なしに、通信の経路を確保することができる。CPU60はネットワーク全体の経路情報を取得する。
また、ネットワーク中でたとえば断線があった場合でも、上述のようにCPU60から経路確保の命令を送信することによって各ノード74が経路確保を行うので、通信経路を簡単に再構築することができる。
この手法により、CPU60はネットワークの構造を意識することなく、キャリブレーションの信号(経路確保要求)を送ってデータを受信するという2つのステップで皮膚センサネットワーク72を使うことができる。
具体的には、各ノード74は、上述のように、独立に通信できる複数の通信ポート88を有し、受信データについて識別可能である。経路確保とデータ転送のために、次の(1)から(8)に示すようなコマンドを設ける。各ノード74は、コマンド受信時には当該コマンドを解釈し、決められたルールに従って動作する。
(1)経路要求コマンドRREQは、経路確保を要求するためのコマンドである。経路要求コマンドは初めにホストコンピュータとしてのCPU60から送信される。また、各ノード74は、ホスト側のノード74と双方向通信が確認されたことに応じて、この経路要求コマンドをホスト側以外のポート88に向けて送信する。経路要求コマンドは、引数として世代番号Gnおよびホップ番号Hnを含む。世代番号Gnおよびホップ番号Hnはメモリに記憶されている。
なお、世代番号Gnはネットワーク世代番号であり、ルーティングのためのネットワーク管理番号であり、初期値は0である。CPU60から経路確保要求するたびにその値が変更される。各コマンドは引数としてこの世代番号Gnを必ず含んで送信され、各ノード74ではこの世代番号Gnが常にチェックされる。経路要求コマンドの場合には、この世代番号Gnが異なるとき経路が再確保されることとなり、他のコマンドの場合にはこの世代番号Gnはネットワークの識別に用いられる。
また、ホップ番号Hnは、CPU60からのホップ数を示し、初期値は0である。ホップ番号Hnは、今の経路がこの番号分のノード74を介してホストに経路を確保していることを示す。センサ入力/出力ボード68のポートと接続されているノード74のホップ番号Hnは1になる。ホップ番号Hnはたとえば経路データの結合時に使用される。
この経路要求コマンドを受信したとき、ノード74は世代番号Gnを確認する。その世代番号Gnの含まれるコマンドをまだ受信していない場合には、ノード74は当該経路要求コマンドを受け取ったポート88に向けて経路応答コマンドRREP_local(承諾)を送信する。これによって、経路要求を承諾し、経路応答確認コマンドを待つ。一方、その世代番号Gnの含まれるコマンドを既に受信している場合には、ノード74は当該経路要求コマンドを受け取ったポート88に向けて経路応答コマンドRREP_local(拒否)を送信して、経路要求を拒否する。
(2)経路応答コマンドRREP_localは、ルート要求に対する承諾または拒否の応答をするためのコマンドである。経路応答コマンドは引数として世代番号Gnおよびホップ番号Hnを含む。経路応答コマンド(承諾)を受信したとき、ノード74(またはCPU60)は、経路確保確認コマンドを受信ポート88に向けて送信する。そして、ネットワーク経路応答コマンドを待つ。一方、経路応答コマンド(拒否)を受信したとき、ノード74は当該ポート88に向けた経路要求に対する拒否を記憶する。
(3)経路応答確認コマンドCONFIRM_RREPは、ルート確立の確認をするためのコマンドである。経路応答確認コマンドは引数として世代番号Gnおよびホップ番号Hnを含む。経路応答確認コマンドを受信したとき、ノード74は経路要求コマンドを受信したポート88以外の全てのポート88に向けて経路要求コマンドを送信する。そして、経路応答コマンドを待つ。
なお、経路応答コマンド待ち処理で、タイムアウトになったとき、または全てのポート88から経路応答コマンド(拒否)を受信したときには、当該ノード74がネットワークの末端になる。したがって、当該末端のノード74は、自分の経路データを生成して、ホスト側のポート88に向けてネットワーク経路応答コマンドを送信する。自分の経路データは、ホップ番号Hnおよび経路として確保したホスト側のポート番号Pn_hostside等を含む。自分の経路データからは、当該ノード74が幾つのノード74を介してホストに経路を確保しているか、どのポート番号でホスト側経路につながっているかが把握される。
(4)ネットワーク経路応答コマンドRREP_entireは、ルート情報をホストに知らせるためのコマンドである。ネットワーク経路応答コマンドは引数としてデータ長Dlen、世代番号GnおよびデータDataを含む。各ノード74は、ネットワーク経路応答コマンドを葉側から受信したとき、自分の経路情報を付加した経路データを生成する。たとえば、自分の経路データに、ホップ数に関する情報TAB*Hn、および当該コマンドを受信したポート番号Pn_leafsideとともに、受信した経路データData_leafsideを追加する。葉側ポート番号が含まれるので、葉側の経路データをどのポート88から受信したかを把握できる。この追加は、葉側のポート88からのネットワーク経路応答コマンドの受信ごとに行われる。このようにして生成される経路データは、当該データを生成するノード74を根とするツリー構造となる。つまり、経路データは、当該ノード74を根とした葉側のネットワークの経路を示すネットワーク経路データともいえる。各ノード74は、末端側(葉側)の全てのポート88からネットワーク経路応答コマンドを受信した場合には、生成した経路データを含むネットワーク経路応答コマンドをホスト側のポート88へ向けて送信する。したがって、ホストコンピュータであるCPU60は、接続されているノード74を根とするツリー構造でネットワーク全体の経路が示されたネットワーク経路データを受信することとなり、受信したネットワーク経路データによってネットワーク全体の経路を把握することができる。
(5)ホスト中継コマンドRELAY_to_Hostは、触覚情報をCPU60に送るためのコマンドである。ホスト中継コマンドは引数としてデータ長Dlen、世代番号GnおよびデータDataを含む。ホスト中継コマンドを受信したとき、ノード74は、確保した経路(ホスト側経路)のポート88に向けて、当該受信したデータのコピーを送信する。触覚情報には各触覚センサエレメント58の識別情報等が付与されているので、CPU60は、どの触覚センサエレメント58の触覚情報であるかを認識できる。
(6)ノード中継コマンドRELAY_to_Nodeは、任意のノード74にコマンドまたはデータを送信するためのコマンドである。ノード中継コマンドは引数としてデータ長Dlen、世代番号Gn、指定ポート番号PnおよびデータDataを含む。このノード中継コマンドを受信したときには、受信したデータがコマンドであれば、ノード74は、指定された番号のポート88に向けて当該コマンドを送信する。一方、受信したデータがコマンドでなければ、当該データを指定番号のポート88に向けてノード中継コマンドで送信する。また、指定ポート番号Pnがlocalhostのストリームへのポート番号である場合には、ノード74は自分自身に対して送信されたデータであると判断して、当該データを受信して記憶する。
このノード中継コマンドは、ホストと任意ノード間通信のため、および、任意ノード間(隣接ノードを含む)通信のために設けられている。ポート番号Pnをたとえば1,2,…,nで割り振り、localhostのストリームへのポート番号をたとえば0とする。たとえばノード1(ポート_2)→ノード2という経路(ノード1はポート_2を介してノード2と接続されている)の場合において、ノード1がRELAY_to_Node(Dlen,Gn,Pn=0,Data)をポート_2へ送信したとき、ノード2は、指定ポート番号Pnが0なので、受信したDataが自分自身へ送られたものであると判断できる。また、たとえばノード1(ポート_2)→ノード2(ポート_1)→ノード3という経路の場合において、ノード1がRELAY_to_Node(Dlen,Gn,Pn=1,Data=(“Pn=0”+(データ)))をポート_2に向けて送信すれば、ノード1はデータをノード3に対して送信することができる。
なお、物理的に近い位置に存在するノード74とデータを交換するためには、ネットワークの経路情報は必要ではないが、当該ノード74の位置情報を記憶しておく必要がある。また、このコマンドを使って任意のノード間でデータを与える場合には、ホストが経路を指示する必要がある。
(7)識別番号割当コマンドGIVE_ID_NUMBERは、識別番号を各ノード74に割り振るためのコマンドである。識別番号割当コマンドは引数として世代番号Gn、ホップ番号HnおよびデータDataを含む。この識別番号割当コマンドを受信したとき、ノード74はデータに含まれる識別番号を記憶する。識別番号割当コマンドは、CPU60から各ノード74に向けて送信される。CPU60は経路データを受信したとき、経路データに基づいて経路上の各ノード74の識別番号を特定する。ロボット10のメモリ64には、たとえばノード配置情報が予め記憶されていて、各ノード74の識別番号と各ノード74が他のノード74との接続に使用しているポート番号等が記憶されている。CPU60はこのノード配置情報と取得した経路情報に基づいて、取得された経路上における各ノード74の識別番号を特定することができる。そして、CPU60は、センサ入力/出力ボード68に接続されたノード74にはこの識別番号割当コマンドを用いて当該ノード74の識別番号を送信し、他のノード74には、ノード中継コマンドを用いてかつそのデータにこの識別番号割当コマンドを含めることによって、各ノード74に当該ノード74の識別番号を送信する。
たとえば、ノード1のポート2に接続されているノード2に対して識別番号を与える際には、CPU60は、RELAY_to_Node(Dlen,Gn,Pn=2,Data=(GIVE_ID_NUMBER(Hn,Gn,Data=(識別番号))))を、センサ入力/出力ボード68を介してノード1に送信する。これに応じてノード1は、Dataがコマンドなので、指定された番号Pn(=2)のポート88へ向けて、当該識別番号割当コマンドを送信する。したがって、ノード2は識別番号割当コマンドを受信して、識別番号を記憶することができる。
また、この識別番号割当コマンドを受信したことに応じて、ノード74は触覚情報をホストへ送信するための処理を開始する。すなわち、この識別番号割当コマンドはCPU60からの触覚情報の送信要求に相当する。各ノード74はこの送信要求命令を受信すると、ホスト宛の触覚情報を含むホスト転送命令(ホスト中継コマンド)をホスト側のポート88に向けて送信する。
(8)エラーコマンドErrorは、エラーをホストに知らせるためのコマンドである。エラーコマンドは引数として世代番号Gnおよびエラー番号Enを含み、場合によってはデータDataを含んでよい。エラーコマンドを受信したとき、ノード74はエラー番号を記憶し、当該エラー番号を既に送信したことがあるか否かを判定する。当該エラー番号をまだ受信したことがなかった場合には、ノード74は他のポート88に向けてエラーコマンドを送信し、一方、当該エラー番号を既に受信していた場合には当該エラーコマンドの送信は行わない。
上述のコマンド等に基づいて、CPU60は経路確保要求を送って皮膚センサネットワーク72で経路を確保することができる。そして、触覚情報の送信要求を送信することで、CPU60は、センサ入力/出力ボード68を介して、各ノード74から送信されたホスト宛の触覚情報を受信することができる。
図3に戻って、スピーカ52にはサウンド入力/出力ボード70を介して、CPU60から、合成音声データが与えられ、それに応じて、スピーカ52からはそのデータに従った音声または声が出力される。また、マイク26からの音声入力が、サウンド入力/出力ボード70を介して、CPU60に取り込まれる。
また、CPU60には、バス62を介して通信LANボード90および無線通信装置92が接続される。通信LANボード90は、DSPで構成され、CPU60から送られる送信データを無線通信装置92に与え、無線通信装置92から送信データを、図示は省略するが、たとえば無線LANまたはインタネットのようなネットワークを介して外部のコンピュータに送信させる。また、通信LANボード90は、無線通信装置92を介してデータを受信し、受信したデータをCPU60に与える。つまり、この通信LANボード90および無線通信装置92によって、ロボット10は外部のコンピュータ等と無線通信を行うことができる。
この実施例では、皮膚センサネットワーク72の各ノード74は、触覚センサエレメント58の出力データを圧縮し、圧縮された触覚情報をCPU60宛に送信する。このセンサデータの圧縮はウェーブレット変換によって行われる。ウェーブレット変換は、原信号を空間的な周波数成分に変換する直交変換の一種であり、信号を有限の幅をもつ小さな波(wavelet:ウェーブレット)の集合に分解し、時間情報と周波数情報の解析を可能にしている。そして、この実施例では、触行動を受けているときの触覚センサエレメント出力に固有の波形、すなわち、触覚コミュニケーションにおける触られ方を母関数としたウェーブレット変換による圧縮を行うようにした。したがって、データ転送量を低減できるばかりでなく、各ノード74で、圧縮によって触られ方を抽出し認識できるので、触られ方の特徴抽出を容易に行うことができる。
ウェーブレット変換の母関数は、ロボット10と人間との触覚コミュニケーション実験から抽出される。実験では、たとえば人間(被験者)に自由にロボット10を触るように指示して、人間の触行動により反応した触覚センサエレメント58(皮膚センサネットワーク72)の出力データを収集する。触覚センサエレメント58のサンプリングレートはたとえば100Hz(1秒間に100フレーム)である。皮膚センサネットワーク72の時系列の出力データは、ロボット10からたとえば無線LANを介して、図示しない母関数作成用コンピュータに逐次または実験完了後にまとめて取り込まれる。
図6には撫でられる場合の触覚センサエレメント58の反応の一例が示され、図7には叩かれる場合の触覚センサエレメント58の反応の一例が示される。このように、触覚センサエレメント58の出力は、触られ方の違いに応じて特徴的な波形を示す。したがって、触覚コミュニケーション時のロボット10の触られ方はクラスタリングが可能であるので、触覚センサエレメント58の出力データをクラスタリングして、クラスタを代表する波形(クラスタ代表値)を母関数として採用する。
図8には、母関数作成用コンピュータの動作の一例が示される。まず、ステップS1で、作成用コンピュータは、実験により、人間の触行動時の触覚センサ(皮膚センサネットワーク72)の出力データを取得して、メモリに蓄積する。
次に、ステップS3で、各触覚センサエレメント58の出力の時系列データから、継続的に反応している部分を、触られ方のデータとして抽出する。たとえば、触覚センサ出力が閾値以上のフレームを選別する。閾値は触覚センサエレメント58ごとに実験的に求められて予め設定されている。閾値を超えている場合には、反応が継続していると判断する。そして、一定時間たとえば10秒以上の時間、閾値以上の出力が検出されなければ、そこで継続的な反応が終了したと判断する。したがって、このステップS5では、継続的に反応している部分の1まとまりを、触られ方のデータとして選択または抽出する。
続いて、ステップS5で、各触られ方のデータの距離を動的計画法(Dynamic Programming)によって算出する。そして、ステップS7で、距離情報を元に各触られ方のデータをクラスタリングして、距離の近いデータどうしを同一のクラスタにまとめる。
ステップS9では、オペレータ入力に基づいて、各クラスタに触られ方のラベル情報を付与する。実験における触られ方の評価は、たとえば被験者の触行動を録画した映像を実験者(オペレータ)が観察することによって行われる。たとえば作成用コンピュータのディスプレイに、各クラスタに含まれる触られ方のデータの検出時刻を表示する。オペレータは当該検出時刻における映像を観察して当該クラスタの触られ方を評価する。そして、作成用コンピュータの入力装置を用いて、そのクラスタの触られ方をたとえばリストから選択しまたは直接文字で入力することによって入力する。作成用コンピュータは、入力された触られ方のラベル情報(触られ方の識別情報)を当該クラスタに関連付けて記憶する。
そして、ステップS11で、各クラスタ代表値を、当該触られ方のラベル情報に関連付けて、ウェーブレット変換の母関数としてメモリに記憶する。
このようにして、触覚コミュニケーションにおける触られ方が抽出され、ウェーブレット変換の母関数として記憶される。そして、母関数のデータは、皮膚センサネットワーク72の各ノード74のメモリ80に記憶される。
なお、この実施例では、たとえば頭や肩のような部位や設置場所の違いを考慮せずに、すべての触覚センサエレメント58の出力の時系列データから触られ方を抽出している。他の実施例では、部位や設置場所ごとに触られ方を抽出して、部位や設置場所ごとに母関数を作成するようにしてもよい。
図9には、各ノード74のメモリ80のデータ記憶領域に記憶される母関数情報の内容の一例が示される。ウェーブレット変換の母関数のデータは、当該触れられ方のラベル情報(触れられ方の識別情報、すなわち、ウェーブレット変換の母関数の識別情報)に関連付けられて記憶されている。図9では、触られ方の一例として、撫でられる場合、叩かれる場合、抓られる場合、引っかかれる場合等が示される。また、撫でられる場合の母関数(1)および(2)が示されている。このように、同じ呼称が付けられる触られ方にも幾つかのパターンが存在しており、クラスタリングによってそれらが抽出されている。
一方、図示は省略するが、ロボット10のメモリ64には、たとえば、触られ方のラベル情報に関連付けられて、圧縮データの復号のための関数のデータが予め記憶される。したがって、CPU60は、圧縮された出力データと当該圧縮に用いた母関数に対応する触られ方ラベル情報とを受信した場合、圧縮データを復号して当該出力データを取得することができる。
コミュニケーション時には、ロボット10のCPU60は、たとえば内部タイマに基づいて一定時間間隔等で触覚情報を検出する。この実施例では、触覚コミュニケーションにおける触られ方で触覚センサ出力データを圧縮するので、検出時間間隔は、たとえば抽出された各触られ方の継続時間を考慮して設定されてよい。触覚情報はたとえば1から3秒間隔程度で検出されるようにしてよい。
図10には、ロボット10のCPU60の触覚情報検出処理における動作の一例が示される。なお、図10では省略するが、上述のように、CPU60がまず経路確保要求(経路要求コマンド)を送信することによって、皮膚センサネットワーク72では経路が確保され、CPU60は皮膚センサネットワーク72の経路情報をセンサ入力/出力ボード68を介してメモリ64に取得する。
経路確保した後、ステップS21で、センサ入力/出力ボード68を介して、皮膚センサネットワーク72の各ノード74に対して触覚情報の送信要求命令(識別番号割当コマンド)を送信する。
次に、ステップS23で、触覚情報を受信したか否かを判断する。つまり、ステップS21の送信要求に応じて各ノード74から送信されるホスト中継コマンドの受信を待機する。このステップS23で“YES”であれば、ステップS25で、当該コマンドに含まれる触覚情報を抽出して、メモリ64に記憶する。
触覚情報は、後述するように、各触覚センサエレメント58の出力データのウェーブレット圧縮によって得られた圧縮データを含み、各触覚センサエレメント58の識別情報(センサID)に対応付けられている。触覚情報は、当該コマンドで一緒に送信されてくるノード74の識別番号に対応付けて記憶する。また、触覚情報はCPU60の内部タイマに基づいて検出(取得)時刻がさらに付与されて記憶されてもよい。
続いて、ステップS27で、たとえばステップS21の処理から一定時間が経過したか否かを判断する。ステップS27で“NO”であれば、ステップS23に戻り、ホスト中継コマンドの受信待ちを行う。このステップS27の一定時間は、たとえば全てのノード74から触覚情報が送信された場合でも、タイムアウトにならず全てのデータを受信することが可能な値に設定されている。ステップS27で“YES”であれば、この触覚情報検出処理を終了する。
このようにして取得された触覚情報が、触覚センサエレメント58の出力データを圧縮した圧力値データを含む場合には、CPU60は、受信した触覚情報に含まれる触られ方ラベル情報とメモリ64に記憶された復号のための関数情報とに基づいて、当該圧縮データを復号することができる。したがって、CPU60は、当該触覚センサエレメント58の触られ方とともにその圧力値の変化を把握することができる。
また、取得された触覚情報が触られ方ラベル情報のみである場合には、CPU60は、当該ノード74の当該触覚センサエレメント58が、当該触られ方ラベル情報で示される触られ方で触られたことを知ることができる。
したがって、CPU60は、受信した触覚情報に基づいて触られ方や圧力値を把握して、当該触られ方や圧力値に基づいて動作やコミュニケーション行動を制御することができる。
一方、皮膚センサネットワーク72の各ノード74では、たとえば一定時間間隔でセンサ出力が取得される。また、各ポート88の受信バッファがチェックされ、コマンドを受信しているときにはポート88ごとのコマンド処理が実行される。CPU60からの送信要求命令(識別番号割当コマンド)を受信した場合には、触覚情報の送信処理が開始される。
図11には、ノード74のCPU78のセンサ出力取得処理の動作の一例が示される。ステップS41では、触覚センサエレメント58の出力を取得する時刻であるか否かを判断する。たとえば一定時間間隔で出力をサンプリングする場合には、CPU78の内部タイマに基づいて当該一定時間が経過したか否かが判断される。ステップS41で“YES”であれば、ステップS43で、センサデータバッファ82から各触覚センサエレメント58の出力データを取得して、センサIDおよびサンプリング時刻等のデータに関連付けてメモリ80の所定領域に記憶する。つまり、自ノード74に所属する触覚センサエレメント58の出力データの時系列データが記憶される。メモリ80には、たとえば所定の検出回数分の出力データの履歴が記憶される。ステップS43を終了し、またはステップS41で“NO”であれば、このセンサ出力取得処理を終了する。
図12には、ノード74のCPU78の触覚情報送信処理の動作の一例が示される。ステップS51では、送信要求を受信したか否か、つまり、受信コマンドが送信要求命令であったか否かを判断する。ステップS51で“NO”であれば、この触覚情報送信処理を終了する。
一方、ステップS53で“YES”であれば、ステップS53で、触られ方を母関数としたウェーブレット変換によって、各触覚センサエレメント58の出力データを圧縮する。圧縮される出力データは、メモリ80に記憶されたたとえば一定時間分の圧力値データである。
各触覚センサエレメント58の出力データは、準備した全ての母関数を用いて圧縮される。また、各母関数を用いた変換の圧縮率が算出される。母関数は触覚コミュニケーションにおける触られ方の波形であるので、高い圧縮率の得られた母関数ほど、処理された出力データの触られ方に近いといえる。したがって、圧縮率の最大であった母関数が、当該触覚センサエレメント58の実際の触られ方を示すものと見なすことができる。また、複数の母関数で圧縮率がほぼ同程度になった場合には、当該触覚センサエレメント58はそれらが複合されたような触られ方で触られたものと見なすことも可能である。このように、各触覚センサエレメント58の実際の触られ方をその所属ノード74で抽出し認識することが可能であるので、触覚コミュニケーションにおける触られ方の特徴抽出が容易になる。
そして、ステップS55で、ホスト側のポート88へ向けて、圧縮に基づく触覚情報を送信する。送信される情報は、各触覚センサエレメント58のセンサIDに対応付けられた触覚情報を含む。触覚情報とともに当該ノード74の識別情報も送信されてよい。このホストに対しての送信はホスト中継コマンドを用いて行われる。各ノード74は、末端側のポート88からホスト中継コマンドを受信すると、当該データをそのままホスト側のポート88に転送するので、この触覚情報はCPU60に送信されることとなる。ステップS55を終了すると、この触覚情報送信処理を終了する。
具体的には、ステップS55では、圧縮率が最大のデータを検出して、当該最大の圧縮率が得られた母関数に基づいて圧縮された触覚情報を送信する。この場合、送信される各触覚センサエレメント58の触覚情報は、圧縮された出力データと当該圧縮に使用された母関数に対応する触られ方ラベル情報等を含む。上述のように、最大の圧縮率が得られた母関数が、当該触覚センサエレメント58の触られ方を示すので、この場合には、各ノード74で各触覚センサエレメント58の触られ方を抽出して、CPU60に送信することができる。
また、各触覚センサエレメント58の触覚情報として、圧縮率が最大の母関数に対応する触られ方ラベル情報のみを送信するようにしてもよい。この場合には、皮膚センサネットワーク72からは、触られ方を示す識別情報のみがCPU60に伝達される。CPU60は、この触られ方ラベル情報に基づいて各触覚センサエレメント58の触られ方のみを把握できる。したがって、圧縮された出力データを送信せず、触られ方を識別するためのデータ量の僅かな情報のみを触覚情報として送信するので、送信データ量を極めて少なくすることができる。
また、全ての母関数に基づいて圧縮された触覚情報を送信するようにしてもよい。たとえば、いずれの圧縮率も閾値を超えず、複数の母関数で圧縮率に大きな差がないような場合には、種々の触り方が複合されていると見なせるので、全ての母関数の圧縮に基づく触覚情報を送信することによって、当該複合的な触られ方をCPU60で把握できる。この場合、送信される各触覚センサエレメント58の触覚情報は、全ての母関数について、圧縮された出力データと触られ方ラベル情報を含んでよい。しかし、全ての母関数による圧縮後の出力データを送信するとデータ量が許容レベルを超えるような場合には、たとえば、圧縮された出力データを送信せずに、触れられ方ラベル情報とその圧縮率とを送信するようにしてもよい。あるいは、圧縮率が最大の母関数については、圧縮後の出力データならびに当該触られ方ラベル情報および圧縮率等を送信し、その他については当該触れられ方ラベル情報および圧縮率等を送信するようにしてもよい。
また、複数の母関数で同程度の圧縮率が得られるような場合には、複数の触り方が複合された触り方が行われていると見なせるので、当該複数の母関数に基づく触覚情報を送信するようにしてもよい。送信される各触覚センサエレメント58の触覚情報は、上述の全ての母関数に関する情報を送信する場合と同様に、該当する複数の母関数について、圧縮後の出力データと触られ方ラベル情報を含んでよいし、または、触られ方ラベル情報とその圧縮率であってよい。あるいは、該当する複数の母関数について触られ方ラベル情報のみを送信するようにしてもよい。
この実施例によれば、皮膚センサネットワーク72の各ノード74で、各触覚センサエレメント58の出力データを、触覚コミュニケーションにおける触られ方を母関数としたウェーブレット変換によって圧縮して、圧縮に基づく触覚情報をロボット制御用コンピュータ60に対して送信するようにした。したがって、送信データ量を非常に少なくできる。しかも、各ノード74でのウェーブレット圧縮処理によって触られ方を抽出できるので、触られ方の特徴抽出を容易に行うことができる。したがって、データ転送のボトルネックを回避できるし、ロボット制御用コンピュータ60の処理負担も軽減できる。
なお、上述の実施例では、触覚センサは相互接続型の皮膚センサネットワーク72であったが、触覚センサエレメント58の出力データを処理する複数のノード74またはマイクロコンピュータの接続形態は適宜変更されてよい。たとえば本件出願人による特許文献1(特開2004−283975号公報)に開示されるように、各マイコンはデイジーチェーン式で接続されてもよい。
この発明の一実施例のコミュニケーションロボットを示す図解図である。 図1実施例のコミュニケーションロボットに用いる皮膚とその中に埋め込まれるピエゾセンサシート(触覚センサエレメント)とを示す図解図である。 図1実施例のコミュニケーションロボットの電気的構成を示すブロック図である。 皮膚センサネットワークの概要を示す図解図である。 皮膚センサネットワークのノードの電気的構成の一例を示すブロック図である。 撫でられる場合の触覚センサエレメントの反応の一例を示す図解図である。 叩かれる場合の触覚センサエレメントの反応の一例を示す図解図である。 母関数作成用コンピュータの母関数作成処理の動作の一例を示すフロー図である。 ノードのメモリに記憶される母関数情報の内容の一例を示す図解図である。 図1実施例のコミュニケーションロボットの触覚情報検出処理の動作の一例を示すフロー図である。 皮膚センサネットワークのノードのセンサ出力取得処理の動作の一例を示すフロー図である。 皮膚センサネットワークのノードの触覚情報送信処理の動作の一例を示すフロー図である。
符号の説明
10 …コミュニケーションロボット
22 …人体状部
24 …皮膚
58 …触覚センサエレメント(ピエゾフィルム)
60 …CPU
64 …メモリ
66 …モータ制御ボード
68 …センサ入力/出力ボード
72 …皮膚センサネットワーク
74 …ノード

Claims (3)

  1. 少なくとも1つの触覚センサエレメントをそれぞれが備え少なくとも1つの他のノードと互いに接続される複数のノードを含む触覚センサ、および前記触覚センサと接続されるロボット制御用コンピュータを備えるコミュニケーションロボットであって、
    前記複数のノードのそれぞれは、
    前記触覚センサエレメントの出力データを取得する取得手段、
    触覚コミュニケーションにおける触覚センサエレメントの出力に固有の波形を母関数としたウェーブレット変換によって、前記取得手段によって取得された前記出力データを圧縮する圧縮手段、および
    前記圧縮手段による圧縮に基づく触覚情報を前記ロボット制御用コンピュータに対して送信する送信手段を含む、コミュニケーションロボット。
  2. 前記送信手段は、最大の圧縮率が得られた前記母関数を用いた圧縮に基づく触覚情報を送信する、請求項1記載のコミュニケーションロボット。
  3. 前記送信手段は、前記触覚情報として触覚センサエレメントの触られ方を示す情報を送信する、請求項1または2記載のコミュニケーションロボット。
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