JP2006275914A - 反射法地震探査による地下構造イメージング方法 - Google Patents

反射法地震探査による地下構造イメージング方法 Download PDF

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Abstract


【課題】 反射法地震探査を実施するための労力およびコストを削減しながら、地下構造のイメージングを容易且つ正確に実施できるようにする。
【解決手段】 時刻ゼロに発生した地中へ向かう振動が地中の反射点で反射した地中反射波を地表に配置した複数の受振器5aで測定し、それらの測定データをデータ処理手段を備えた観測部4において前記各測定データに含まれる地表受振点における地中反射波の反射記録に所定の処理を加えて統合し、測定区域における地下構造1の可視化データを合成する反射法地震探査による地下構造イメージング方法において、地上または地中の少なくとも一方において発生時刻が知られないランダムな振動による地中雑音を前記複数の受振器5aで連続的に測定して得た測定データに所定の相関関数による相関処理を加え、地表受振点における地中反射波の反射記録を合成することとした。
【選択図】 図1

Description

本発明は、反射法地震探査により地下構造を可視化する地下構造イメージング方法に関する。
従来より、いわゆる反射法地震探査を実施することにより地下に存在する地質境界や断層等の深度分布や構造、或いは地下構成物質の種類等を調べることが知られており、例えば特開平7−301677号公報に記載されているように、地表に地震計(受振器)を設置して地表または地表付近で人工的に発生させた振動の地中からの反射波を受振することで、地下構造のイメージング(可視化)を可能にしている。
図4は、斯かる従来の反射法地震探査の一例を示すものであり、例えば動コイル型の振動計を備えた複数の受振器5aを、地表に等間隔且つ直線的に配置して測線5を形成し、火薬の爆発や機械式震動発生装置による衝撃などの発振手段3により地下構造1に振動を与えることにより、インパルス波動または制御された数秒〜数十秒適度の連続波を発生させ、その地中の各反射点で反射した地中反射波を観測部4で1秒〜10秒程度観測して記録するものである。
この場合、受振器5aは数多く設置するほど測定効率が良好となる反面、数に応じて費用が嵩むことや具体的な設置や測定操作の困難性から通常120組以内で実施され、測定範囲が測線5の範囲よりも長い場合には、測定が終了した範囲の受振器5aを回収して前方に移設するようにして、測線5を徐々に進めながら測定を行う。
そして、従来の測定方法では、発振手段3による震源の発振位置および発振時刻が既知であることが必要条件とされ、更に点震源の仮定を満足するように受振点間隔に比べて充分に小さい範囲で起振を行う必要がある。加えて、各受振器5aで検出し観測部4で取得したデータによる波形記録には、直接波、反射波、表面波などの複数の波動が含まれており、このうち地下構造1において組成の異なる地層1Aと地層1Bとの地層境界10等のいわゆる地質異常箇所が反射面となって再び地表に戻ってくる地中反射波を、所定の波形処理方法により抽出し、これを基に地下の反射断面等をイメージングするものである。
しかしながら、このような従来の反射法地震探査による地下構造イメージング方法では、インパルス波動または制御された連続波動などの特徴的な振動を、発振手段3で人工的に地下構造1に入射させて測定を実施することから、雨や風などの自然振動、自動車や列車などの交通振動、工場や建設現場から発生する振動などにより地中を伝播する、いわゆる地中雑音がノイズとなって測定の障害となってしまう。従って、発振手段3はこれらの地中雑音を上回る大きなエネルギーを発生させるものでなくてはならない。
そのため、都市部や交通量の多い道路・鉄道を初めとする国民生活上重要な場所、或いはライフラインなど、本来地震防災の観点から調査が特に必要な地域においては、一般的に測定の邪魔になる地中雑音が多いばかりか測線の設置や点震源の確保を困難とする構築物などが多いことから、調査の実施に多大な労力やコストを要して、調査目的を達成することは容易ではなかった。
特開平7−301677号公報
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、反射法地震探査を実施するための労力およびコストを削減が可能であるとともに特に地下施設や地下交通など地下に多くの設備を備える必要性から地下構造のイメージングが求められるにも拘わらず地中雑音などの影響や地表構造物が邪魔して測定が困難な都市部において地下構造のイメージングを容易且つ正確に実施できるようにすることを課題とする。
そこで、本発明は、地中へ向かう振動が地中の反射点で反射した地中反射波を地表に配置した複数の受振器で測定し、それらの測定データをデータ処理手段を備えた観測部において前記各測定データに含まれる地表受振点における地中反射波の反射記録に所定の処理を加えて統合し、測定区域における地下構造の可視化データを合成する反射法地震探査による地下構造イメージング方法において、
地上または地中の少なくとも一方においてランダムに発生した振動による地中雑音を前記複数の受振器で連続的に測定して得た測定データに所定の相関関数による相関処理を加えることにより、測定のための震源を必要とすることなく前記地表受振点における地表震源による地中反射波の反射記録を合成することにより地下構造をイメージすることを特徴とする。
このように、地上や地中でランダムに発生して地中を伝播する地中雑音の反射記録に、自己相関関数や相互相関関数などの相関関数を用いた相関処理を加えることで、反射記録における地表から反射点を経由して地表受振点に至る部分の反射記録を抽出することで、測定のための大掛かりな地表震源の設置を要することなく地下構造のイメージングを容易なものとし、またノイズが多かったり地表震源の設置が困難であったりして反射法地震探査の実施が困難であった地域においても、受振器による測線を設置する幅を確保できれば容易に実施できるようになる。
また、この反射法地震探査による地下構造イメージング方法において、相関関数を自己相関関数として所定の受振点における受振器で検出した地中雑音の反射記録に自己相関処理を加えることにより、この受振点における地表―反射点―地表受振点の反射記録を合成するものとすれば、地上振動や地中振動が多く地中雑音が測定の制約になりやすい地域でも、これを利用して地表震源を設けた場合の反射法地震探査と同等の結果を確実に得ることができる。
更に、前記反射法地震探査による地下構造イメージング方法において、地中雑音の測定を、複数の受振点における受振器により行い、その複数の受振点のうち所定の受振点における反射記録と、他の複数の受振点における各反射記録との間で所定の相互相関処理を行うことにより、所定の受振点を震源とした場合の反射法地震探査による反射記録と同等の反射記録を合成するものとすれば、1つの地中雑音測定記録から任意の受振点を震源とした場合における地中反射記録を合成することができるため、大量の反射記録を効率的に取得することが可能となり、その結果、測定地域に対応した地下構造のイメージングをより且つ正確なものとすることができる。
更にまた、地中雑音の震動源として、地表及び前記地中雑音の振動源が、地表及び地中における鉄道、自動車などの交通振動、または、地表及び地中における工事振動、試錐坑や坑道を用いて地下に圧入した炭酸ガス(CO)のようなガス体または水のような液体により発生する地層の微小破壊音を用いると好ましい。
従来の反射法地震探査による地下構造イメージング方法においては測定の障害となっていた地中雑音を利用する本発明は、地中ノイズにより測定に制約があったり点震源の確保が困難であったりする場所であっても、反射法地震探査を実施するための労力とコストを削減しながら地下構造のイメージングを容易且つ正確に実施することができる。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を以下に説明する。
図1乃至図3は本発明の好ましい本実施の形態の一例を示すものであり、図1に示すように、地中反射波のデータを取得する観測部4を有する複数の受振器5aを地表に連設する点については従来の手法と同様であるが、測定するための地中振動を発生させるための火薬の爆発や機械式震動発生車両のような人工的な震源は不要で、測定のための地表震源を新たに設けることなく、重機71により通常生じる工事振動や車両72による交通振動など地上でランダムに生じる振動、および地下トンネルの掘削機82などによる工事振動や地下交通車両81による交通振動など地下でランダムに生じる振動、により発生し地中を伝播する地中雑音を利用しても測定できる点において異なる。
ここで、本発明の原理を従来の地下構造イメージング方法と比較して説明する。
従来の地下構造イメージング方法は、図5(A)のように、震源位置と受振点位置とが既知であり、それらの幾何学配置を用いて地下構造を解析・イメージングしていた。一方、地中の任意箇所に存在する点震源を考えると、これによる反射波は図5(B)のように認識することができるが、その伝播経路には図5(A)で示した単純な反射波を一部に含んでいる。
このことから、図5(B)に示す反射波の波動から、図5(A)の波動のみを抽出することができれば、従来の反射法地震探査による地下構造イメージング方法における手法と同様のデータ処理を施すだけで、地下構造イメージング(可視化)が可能となる。以下に、その抽出方法について説明する。
図5(B)で受振された波動Tの自己相関関数をとると、図5(A)で受振された波動Rを用いて以下のように表すことができることから、波動Tの自己相関関数から波動Rを抽出できることが分かる。

R(t)+R(−t)=δ(t)−T(−t)*T(t) 式(1)
ここで、R(t)は、地表インパルス震源による反射記録であり、T(−t)*T(t)は地中インパルス震源による反射記録である。これによって、自然地震などの地中に存在する点震源からの振動を用いて自己相関解析を行い、そのうちのt>0以降の部分を取り出すことにより、図5(A)と同じ反射記録を抽出することができる。
また、式(1)を用いることにより、複数の振動による振動反射の関係式は以下のように表すことができる。

R(xA,xB,t)+R(xA,xB,−t)

=δ(xHA−xHB)δ(t)−ΣT(xA,x,−t) *T(xB,x,t)

式(2)

ここで、R(xA,xB,t)は、地表インパルス震源による反射記録であり、
ΣT(xA,x,−t) *T(xB,x,t)は地中インパルス震源による反射記録となる。
式(2)から、複数の振動源による地盤振動を用いる場合でも、波動Tの相互相関関数から波動R部分を抽出できることがわかる。尚、これらの地中雑音からのインパルス反射記録の抽出は、震源が地中または地表にあっても等価となる。
この原理を、図3に示す地表に定間隔で一つの直線上に複数設置された受振器群による複数の受振点の記録に適用すれば、受振点aで観測された地中雑音記録と同時刻歴で観測されたb,c,d,e,・・・,xにおける地中雑音記録に対し、記録aと他の受振点記録との相互相関をとることにより、地表震源aにおける受振点b,c,d,e,・・・,xの各反射記録を合成することが可能となる。従って、従来の反射法地震探査において震源を移動しながら各受振点で起振を行って測定していた反射記録を、複数の受振点で受振した地中雑音から総て合成できることになる。
次に、本実施の形態における地下構造イメージング方法による測定結果と従来の地下イメージング方法による測定結果とを比較することで、本実施の形態よる地下イメージング方法の妥当性を検証する。
図6および図7図は、図2に示すように地表に受振器5aを複数組連続して設置するとともに、地中1Aに振動源70と、地中1Bに複数の地中に振動源80を設置して取得した地表インパルス震源記録(3秒)と多重地中雑音記録(2時間)とを示すものである。
そして、図7の多重地中雑音記録について、前記式(2)に基づく相関解析によるデータ処理を施した結果が図8に示すものである。ここで、この図8に示した測定結果と前記図6に示した測定結果とを比較すると殆ど同様であり、多重地中雑音記録から地表インパルス震源記録を再現できることが判明した。また、このデータを基に周知の反射法地震探査解析を実施した結果、図9に示すような地下構造のイメージング結果(画像)が得られた。
以上のように、本実施の形態を、都市型ノイズとも言うべき、鉄道、自動車などの交通振動、或いはトンネル掘削の機械振動や発破振動などの地中雑音が発生する場所における測定に適用することにより、手間やコストを要する新たな点震源を設けることなく、しかも地表に受振点を設置してデータを取得するだけの手間で地下構造のイメージングを容易且つ正確に行うことができる。
本発明における実施の形態の地下イメージング方法の概要を説明するための縦断面図。 図1の実施の形態おけるモデル試験の模式図。 図1の実施の形態における相互相関による反射波合成の原理を説明するための概念図。 従来例による地下イメージング方法の概要を説明するための縦断面図。 (A)および(B)は本発明の原理を説明するための模式図。 図2のモデル試験における地表インパルス震源記録。 図2のモデル試験における多重地中雑音記録。 図7の多重地中雑音記録に相互相関処理を施して得た記録。 図8の記録に反射法地震探査解析を施して得たイメージング結果。
符号の説明
1 地下構造、 1A,1B 地層、 3 発振手段、 4 観測部、 5 測線、 5a 受振器、 10 地層境界

Claims (5)

  1. 地中へ向かう振動が地中の反射点で反射した地中反射波を地表に配置した複数の受振器で測定し、それらの測定データをデータ処理手段を備えた観測部において前記各測定データに含まれる地表受振点における地中反射波の反射記録に所定の処理を加えて統合し、測定区域における地下構造の可視化データを合成する反射法地震探査による地下構造イメージング方法において、
    地上または地中の少なくとも一方において発生時刻が不明なランダムな振動による地中雑音を前記複数の受振器で連続的に測定して得た測定データに所定の相関関数による相関処理を加えることにより、測定のための震源を必要とすることなく前記地表受振点における地中反射波の反射記録を合成することにより地下構造をイメージすることを特徴とする反射法地震探査による地下構造イメージング方法。
  2. 前記相関関数は自己相関関数であり、所定の受振点における受振器で検出した前記地中雑音の反射記録に自己相関処理を加えることにより、前期所定の受振点を震源としたときの反射法地震探査による反射記録と同等の反射記録を合成する請求項1に記載した反射法地震探査による地下構造イメージング方法。
  3. 前記地中雑音の測定は複数の受振点における受振器によるものであり、前記複数の受振点のうち所定の受振点における反射記録と、他の複数の受振点における各反射記録との間で所定の相互相関処理を行うことにより、前期所定の受振点を震源としたときの反射法地震探査による反射記録と同等の反射記録を合成する請求項1または2に記載した反射法地震探査による地下構造イメージング方法。
  4. 前記地中雑音の振動源が、地表及び地中における鉄道、自動車などの交通振動、または、地表及び地中における工事振動である請求項1、2または3に記載した反射法地震探査による地下構造イメージング方法。
  5. 前記地中雑音の振動源が、試錐坑や坑道を用いて地下に圧入したガス体または液体により発生する地層の微小破壊音である請求項1、2または3に記載した反射法地震探査による地下構造イメージング方法。
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