JP2006269302A - アニール処理リチウムコバルト複合酸化物及びこの製造方法、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物を用いた正極活物質、並びにリチウム二次電池 - Google Patents

アニール処理リチウムコバルト複合酸化物及びこの製造方法、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物を用いた正極活物質、並びにリチウム二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】所定のアニール処理を行ったリチウムコバルト複合酸化物を用いることにより、抵抗値の低減を図ったリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】リチウム二次電池の正極活物質として用いるアニール処理リチウムコバルト複合酸化物の製造方法であって、原料の焼成によりリチウムコバルト複合酸化物を得た後、前記リチウムコバルト複合酸化物を液体と接触させること無く、250℃以上500℃以下でアニール処理してアニール処理リチウムコバルト複合酸化物を得る。
【選択図】なし

Description

本発明は、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の製造方法、このアニール処理リチウムコバルト複合酸化物を用いた正極活物質、及びリチウム二次電池に関する。
リチウム二次電池(本明細書においては、単に電池という場合がある。)に用いる正極活物質として、リチウム遷移金属複合酸化物が有望視されている。これらリチウム遷移金属複合酸化物の中でも、遷移金属としてコバルトを用いるリチウムコバルト複合酸化物は、放電曲線が平坦であるためレート特性に優れる有用な正極材料である。このため、現在実用化されているリチウム二次電池においては、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物を用いるのが一般的である。
このようなリチウムコバルト複合酸化物は、原料(例えば、炭酸リチウムと酸化コバルト)を焼成して得るのが一般的である。ただ、リチウムコバルト複合酸化物の性能を高めて、電極保管後の膜質および充放電繰り返し性能の改良のために、焼成・粉砕後に水又は有機溶媒で洗浄した後に、400〜900℃で12時間アニール処理をする技術がある(特許文献1)。
また、Mg及び所定の元素Mを所定量含有するリチウムコバルト複合酸化物を正極活物質として用いる場合において、1050℃で焼成後700℃で再焼成することにより、酸素欠損を抑制し、さらに、所定の実験においてDSC測定を行った時の酸素発生スペクトルのピーク温度を高める技術が知られている。
特開平9−231963号公報(段落0003、0063、表1) 特開2004−220785号公報(段落0028、0035、0039、0075)
ところで、リチウムコバルト複合酸化物を正極活物質に用いたリチウム二次電池においては、レート特性のさらなる向上、低温での充放電特性のさらなる改良、を達成したいという課題が存在する。そして、上記課題を解決するためには、リチウムコバルト複合酸化物自体のインピーダンスを下げることが重要となる。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。
つまり、本発明においては、原料を焼成してリチウムコバルト複合酸化物(このリチウムコバルト複合酸化物自体も正極活物質として作動する。)を、アニール処理することによって、リチウムコバルト複合酸化物のインピーダンスを下げることができることを見出した。
すなわち、本発明の要旨は、リチウム二次電池の正極活物質として用いるアニール処理リチウムコバルト複合酸化物の製造方法であって、原料の焼成によりリチウムコバルト複合酸化物を得た後、上記リチウムコバルト複合酸化物を液体と接触させること無く、250℃以上500℃以下でアニール処理して、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物を得ることを特徴とするアニール処理リチウムコバルト複合酸化物の製造方法に存する。
また、本発明の他の要旨は、上記製造方法で製造された、平均粒径が15μm以上であることを特徴とするアニール処理リチウムコバルト複合酸化物に存する。
また、本発明の他の要旨は、上記製造方法で製造されたアニール処理リチウムコバルト複合酸化物を含有することを特徴とする正極活物質に存する。
さらに、本発明の他の要旨は、正極活物質を含有する正極活物質層を集電体上に有する正極を用いたリチウム二次電池であって、正極活物質として、上記正極活物質を用いることを特徴とするリチウム二次電池に存する。
なお、上記特許文献1、2はいずれもアニール処理または再焼成する技術に関するものある。
特許文献1においては、水または有機溶媒で洗浄した後にアニール処理を行っている。洗浄時において正極活物質溶液のpHを調整している(段落0011、0063)ことから、洗浄を行うのは、おそらく未反応のLiを洗い流すため(未反応のLiがLiOHとなって洗い流されるためにpHの調整が必要となる)であると考えられる。
また、水または有機溶媒で洗浄した後に400〜900℃で12時間アニール処理を行う理由は、水または有機溶媒を除去するためとは考えにくい。なぜなら、水又は有機溶媒を除去する目的であれば、水または有機溶媒の沸点を超える程度における加熱すれば十分であり、400℃以上の高温でアニール処理を行う必要はないからである。むしろ、水または有機溶媒(特に水)をリチウム含有遷移金属酸化物に接触させることによって発生する酸化物あるいは含水酸化物を分解又は除去するためであると考えられる。つまり、特許文献1では、水または有機溶媒(特に水)をリチウム含有遷移金属酸化物に接触させているために、リチウム含有遷移金属酸化物の表面が水と反応して、水酸化物あるいは含水酸化物が生成されると推測される。この水酸化物あるいは含水酸化物は、電池特性上は残留させるべきでない物質である。従って、400〜900℃で12時間という、再焼成にも等しいアニール処理を行い、水酸化物や含水酸化物を除去・分解する必要があると考えられる。
しかし、特許文献1における、水又は有機溶媒の洗浄による上記Liの洗い流しは、液体への接触、乾燥による除去、水酸化物や含水酸化物の分解又は除去、の工程を含む点から工程が煩雑となる。また、洗浄−アニール工程を経ても未反応のLiが残ったり、水酸化物や含水酸化物が生成されるために、更に洗浄−アニール工程が求められるようになる可能性もある。
特許文献2においては、Mg及び所定の元素Mを所定量含有するリチウムコバルト複合酸化物において高温(1050℃)で焼成後、酸素欠損をさらに抑制するために300〜750℃で長時間(実施例は700℃で10時間)で再焼成をおこなっている。これでは、加熱温度が高く時間もかかるため、保護回路等で安全を図ることも可能な過充電という特殊な現象に対する対策としては、手間がかかりすぎるという問題がある。
本発明によれば、インピーダンスの低いアニール処理リチウムコバルト複合酸化物を得ることができる。
本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
1.アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の製造方法
本発明のアニール処理リチウムコバルト複合酸化物の製造方法は、原料の焼成によりリチウムコバルト複合酸化物を得た後、前記リチウムコバルト複合酸化物を液体と接触させること無く、250℃以上500℃以下でアニール処理して、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物を得ることを特徴とする。
(0)リチウムコバルト複合酸化物の製造方法
リチウムコバルト複合酸化物の製造方法としては特に制限されず、充放電可能なリチウムコバルト複合酸化物を形成できる手法であれば、これまでに知られた製法を使用することができる。一般的な製法としては、例えば「第3版電池便覧(丸善株式会社、平成13年2月20日発行)」のp.267に記載されているように、リチウム源とコバルト源とを600〜1000℃程度で焼成して固相反応により合成する方法が挙げられる。
このようなリチウムコバルト複合酸化物の製造方法について、さらに説明する。
(1)リチウムコバルト複合酸化物の原料
コバルト源としては炭酸コバルト、水酸化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、シュウ酸コバルト、酸化コバルト等を用いることができる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。工業的に特に好ましくは、酸化コバルトである。
リチウム源としては炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、シュウ酸リチウム、酸化リチウム等を用いることができる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。工業的に特に好ましくは炭酸リチウムである。
コバルト源とリチウム源との配合比は、得るべきリチウムコバルト複合酸化物に応じて適宜調整すればよい。
(2)焼成
焼成温度は、通常500℃以上、好ましくは700℃以上である。上記温度範囲とすれば、原料物質からリチウムコバルト複合酸化物への転換が十分となりやすく、原料物質が残留する傾向が抑制され、良好な電池特性を確保しやすくなる。一方、焼成温度は、通常1100℃以下、好ましくは900℃以下である。上記温度範囲とすれは、Liの揮発やリチウムコバルト複合酸化物の分解を抑制できる。
「高性能二次電池における材料技術とその評価、応用展開(技術情報協会、1998年2月12日発行)」のp.68に記載されているように、通常は、空気中700〜900℃の温度で合成され、出発物質が塩の場合はこれより低温の500℃〜650℃でも合成されうる。また「新規二次電池材料の最新技術(シーエムシー、1997年3月25日発行)」のp.19には、炭酸リチウムと酸化コバルトとを用い700℃〜900℃の高温で空気中で焼成して合成できる旨の記載がある。同文献には900℃以上ではリチウムコバルト複合酸化物は分解が生じる旨の記載もある。同文献のp.20には、出発物質が塩の場合は500℃〜650℃でも合成できる旨が記載されている。
焼成時間は、通常5時間以上、好ましくは10時間以上である。通常用いられる固相反応においては、反応の進行が遅い傾向にあるため、焼成時間を一定時間以上確保することが好ましい。このため、焼成時間を上記範囲内とすれば、原料物質からリチウムコバルト複合酸化物への転換を良好に確保することができる。一方、焼成時間は、通常24時間以下とする。上記時間範囲内として、生産効率を確保することができる。
焼成雰囲気は特に制限されないが、好ましくは酸素存在下で行う。特に好ましくは、大気とすることがでる。大気であれば、特殊な設備を必要とせず製造コストを低廉に抑えることができる。また、大気中の酸素の存在により、酸素欠陥の発生を抑制することができる。
(3)焼成して得られるリチウムコバルト複合酸化物の性状
焼成して得られるリチウムコバルト複合酸化物としては、例えば、層状構造を有するLiCoO2等を挙げることができる。また、リチウムコバルト複合酸化物は、Coが占め
るサイトの一部をCo以外の元素で置換したものであってもよい。Coサイトを他元素で置換することにより、電池のサイクル特性・レート特性が向上する場合がある。Coが占めるサイトの一部をCo以外の元素で置換する際の、置換元素としては、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Sn、Sb、Ge等が挙げられ、好ましくはAl、Cr、Fe、Li、Ni、Mg、Ga、Zr、Sn、Sb、Ge、更に好ましくはAl、Mg、Zr、Snである。なお、Coサイトは2種以上の他元素で置換されていてもよい。
置換元素によりCoサイトを置換する場合、その割合は通常Co元素の0.03モル%以上、好ましくは0.05モル%以上であり、通常Co元素の30モル%以下、好ましくは20モル%以下である。置換割合が少なすぎると結晶構造の安定性向上が充分ではない場合があり、多すぎると電池にした場合の容量が低下してしまう場合がある。
リチウムコバルト複合酸化物は、通常、充電前の基本的な組成としてLiCoO2で表
されるが、前記したようにCoサイトの一部を他の元素で置換してもよい。また、上記組成式において、少量の酸素欠損、不定性があっても良く、酸素サイトの一部が硫黄やハロゲン元素で置換されていてもよい。さらには、上記組成式において、リチウム量を過剰又は不足にしたりすることができる。
但し、本発明において好ましいのは、Coを他の元素で積極的に置換することのないリチウムコバルト複合酸化物を用いることである。これは、以下の理由による。つまり、主たるインピーダンス成分は粒子の表面抵抗であるが、本発明におけるインピーダンス低減の効果は、アニール処理により粒子表面のリチウム、コバルト、酸素からなる界面層を上記表面抵抗が低い形態に変化させることによって発揮されると考えられる。このため、界面層に他の元素が存在すると、その形態が乱されると推測される。特にコバルトよりも酸素と結合しやすい成分を含む場合は、その元素の酸化物が主たる成分となり低インピーダンスの界面層が形成されにくくなると考えられる。
上記焼成により得られたリチウムコバルト複合酸化物は、室温(25±5℃)/大気圧(50±10RH%)では、通常、粒子状の性状を有する。
リチウムコバルト複合酸化物の平均粒径は、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、特に好ましくは10μm以上であり、最も好ましくは15μm以上である。平均粒径を上記範囲とすれば、電池のサイクル劣化が大きくなることを抑制し、安全性を良好に確保することができるようになる。一方、リチウムコバルト複合酸化物の平均粒径は、通常300μm以下、好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下であり、最も好ましくは60μm以下とする。平均粒径を上記範囲とすれば、電池の内部抵抗が大きくなることを抑制し、電池の出力も良好に確保しやすくなる。
もっとも、本発明においては、後述のアニール処理により電池の内部抵抗(インピーダンス)の低減が達成されるため、リチウムコバルト複合酸化物の粒径が大きいことによるインピーダンスの上昇の現象は相対的に重要度が低下する。従って、従来より大粒径のリチウムコバルト複合酸化物を用いても、それに伴うインピーダンスの上昇等の現象の発生を回避しつつ、大粒径の利点(電池の容量の向上、安全性の確保)を利用することが可能となる。
このような観点から、リチウムコバルト複合酸化物の平均粒径は、5μm以上であることが好ましい。より好ましくは、平均粒径を15μm以上とすることである。上記範囲とすれば、リチウムコバルト複合酸化物の比表面積が低下して電解液とのリチウムコバルト複合酸化物の接触面積が低下するために、電解液の分解反応が抑制されやすくなる。従って、ガス発生が抑制されるとともに過充電時の安全性が向上しやすくなる。また、充放電に寄与しないリチウムコバルト複合酸化物粒子の最表層領域の割合が相対的に低下するために、電池の容量が増加するというメリットが発揮される。
一方、リチウムコバルト複合酸化物の平均粒径は、本発明によるインピーダンス低減効果をもってしても電池抵抗の増加による欠点を補償しきれなくなる場合があるので、通常300μm以下とする。
ここで平均粒径とは、粒度分布測定において小粒径側よりカウントして50%の粒子が含まれることになる粒径の値を指し、通常DV50として表記されるものである。粒度分布測定は、リチウムコバルト複合酸化物のような高比重で、かつリチウム二次電池用途で主として用いられる粒径1μm以上であるような粒子に対しては、湿式レーザー回折法によることが好ましい。
リチウムコバルト複合酸化物の比表面積は、通常0.001m2/g以上、好ましくは
0.01m2/g以上、より好ましくは0.05m2/g以上とする。比表面積を上記範囲内とすれば、レート特性の低下が抑制され、容量の低下も抑制することができる。一方、リチウムコバルト複合酸化物の比表面積は、通常10m2/g以下、好ましくは1.0m2/g以下、より好ましくは0.3m2/g以下である。比表面積を上記範囲内とすれば、
電解液等との好ましくない反応が抑制され、サイクル特性も確保しやすい。比表面積の測定はBET法に従う。
(4)アニール処理
上記のようにして得られたリチウムコバルト複合酸化物は、この状態で正極活物質として作動する。しかし、アニール処理を行うことによってインピーダンスがより低くなり、より高性能なアニール処理リチウムコバルト複合酸化物を得ることができる。
本発明においては、リチウムコバルト複合酸化物を液体と接触させること無く、250℃以上500℃以下でアニール処理を行う。
リチウムコバルト複合酸化物を液体と接触させないのは、上記説明したように、リチウムコバルト複合酸化物表面に存在するLi等の物質の洗い流しによる不安定な表面状態の発生を抑制するためである。ここで、「液体と接触させること無く」は、積極的に液体と接触させるような操作(例えば、溶媒や水に浸積させたり、溶媒や水を振り掛けたり等の操作)は行わないという趣旨で用いられる。つまり、リチウムコバルト複合酸化物表面を全く水分と接触させないということではない。例えば、リチウムコバルト複合酸化物を大気中に放置することにより、大気中に存在する水蒸気(水分)がリチウムコバルト複合酸化物表面に不可避的に接触することになる。本発明におけるこのような不可避的な水分の接触は、当然許容される。
上記温度範囲内でアニール処理を行えば、極めて高い温度が必要とされることなくアニールによる効果が得られる。つまり、上記範囲内でアニール処理を行えば、設備が簡便になるとともに不必要な熱量を加える必要がなく、昇温冷却も迅速にでき生産効率も高まるといったメリットがある。
アニール処理温度は、好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上とする。アニール処理温度を上記範囲内とすれば、アニール処理による効果を十分に確保することができる。一方、アニール温度は、好ましくは450℃以下、より好ましくは400℃以下とする。アニール処理温度を上記範囲内とすれば、アニールによる効果を十分に得つつも、設備の簡略化、エネルギーの節約、生産効率の向上を最大限に確保できるといったメリットがある。
アニール処理を行う時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上とする。上記範囲内とすれば、アニールによる効果を確実に得やすくなる。一方、アニール処理を行う時間は、通常10時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは4時間以下とする。上記範囲内とすれば、不必要な熱量を加える必要がなく工程が簡便になるといったメリットがある。
本発明においては焼成と比較して相対的に低温度、短時間の加熱で所定の目的を達成することができる。この要因は定かではないが、第1に、既にリチウムコバルト複合酸化物として形成されている粒子に対するアニール処理であり、物質形成を必要とする反応が必要でないことが挙げられる。第2に、アニール処理がリチウムコバルト複合酸化物表面を変化(改質)させているからであると考えられる。つまり、アニール処理により抵抗低減が達成されていることから、リチウムコバルト複合酸化物の粒子表面が関与していると推定される。従って、リチウムコバルト複合酸化物表面を変化(改質)する目的であれば、リチウムコバルト複合酸化物の粒子内部における固相反応を行う必要がなくなり、上記固相反応と比較して短時間で処理が可能となる上、リチウムコバルト複合酸化物の粒子表面の活性が高いことから温度も低温で十分であると推定される。
さらに、アニール処理の際の雰囲気は、特に制限されない。例えば、大気中、窒素雰囲気中、真空中のいずれを用いてもよい。本発明の効果をより良好に発揮させるためには、アニール処理を酸素の存在下に行うことが好ましい。これは、リチウムコバルト複合酸化物からの酸素の脱離を防ぐ点からであると推測される。具体的には、酸素の濃度は、通常0.1気圧以上、好ましくは0.15気圧以上とする。酸素の濃度をこの範囲とすれば、酸素の脱離を防止するというメリットが発揮されやすくなる。一方、酸素の濃度は、通常1気圧以下、好ましくは0.25以下とする。酸素の濃度をこの範囲とすれば、酸化が過度に進行することがなく、また特殊な設備が不要となる。
特殊な設備が不要となる点、かつ、気中で行えば所定の目的が達成されやすくなる点から、大気中でアニール処理を行うことが好ましい。
2.正極活物質
(1)アニール処理リチウムコバルト複合酸化物
上記製法により得られたアニール処理リチウムコバルト複合酸化物は、室温(25±5℃)/大気圧(50±10RH%)では、通常、粒子状の性状を有する。
アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の平均粒径は、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは5μm以上であり、特に好ましくは10μm以上であり、最も好ましくは15μm以上である。平均粒径を上記範囲とすれば、電池のサイクル劣化が大きくなることを抑制し、安全性を良好に確保しやすくなる。一方、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の平均粒径は、通常300μm以下、好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下であり、最も好ましくは60μm以下とする。平均粒径を上記範囲とすれば、電池の内部抵抗が大きくなることを抑制し、電池の出力も良好に確保しやすくなる。
もっとも、本発明においては、アニール処理により電池の内部抵抗(インピーダンス)の低減が達成されるため、粒径が大きいことによるインピーダンスの上昇の現象は相対的に重要度が低下する。従って、大粒径のアニール処理リチウムコバルト複合酸化物を用いても、それに伴うインピーダンスの上昇等の現象の発生を回避しつつ、大粒径の利点(電池の容量の向上、安全性の確保)を利用することが可能となる。
このような観点から、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の平均粒径は、5μm以上であることが好ましい。より好ましくは、平均粒径を15μm以上とすることである。上記範囲とすれば、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の比表面積が低下して電解液とのアニール処理リチウムコバルト複合酸化物の接触面積が低下するために、電解液の分解反応が抑制される。従って、ガス発生が抑制されるとともに過充電時の安全性が向上する。また、充放電に寄与しないアニール処理リチウムコバルト複合酸化物粒子の最表層領域の割合が相対的に低下するために、電池の容量が増加するというメリットが発揮される。
一方、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の平均粒径は、本発明によるインピーダンス低減効果をもってしても電池抵抗の増加による欠点を補償しきれなくなる場合があるので、通常300μm以下とする。
ここで平均粒径とは、粒度分布測定において小粒径側よりカウントして50%の粒子が含まれることになる粒径の値を指し、通常DV50として表記されるものである。粒度分布測定は、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物のような高比重で、かつリチウム二次電池用途で主として用いられる粒径1μm以上であるような粒子に対しては、湿式レーザー回折法によることが好ましい。
アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の比表面積は、通常0.001m2/g以上
、好ましくは0.01m2/g以上、より好ましくは0.05m2/g以上とする。比表面積を上記範囲内とすれば、レート特性の低下が抑制され、容量の低下も抑制することができる。一方、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の比表面積は、通常10m2/g
以下、好ましくは1.0m2/g以下、より好ましくは0.3m2/g以下である。比表面積を上記範囲内とすれば、電解液等との好ましくない反応が抑制され、サイクル特性も確保しやすい。比表面積の測定はBET法に従う。
本発明においては、上記の製造方法で製造されたアニール処理リチウムコバルト複合酸化物を正極活物質中に含有させる。
アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の含有量は、正極活物質全体の全量であることが好ましい。これによりインピーダンス低減の効果が最大限に享受できるとともに、正極活物質が単一であることにより生産管理が容易になり、生産効率も高くなるからである。
一方で、特定の目的を達成するために、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物を正極活物質中に一定量含有させることも効果的である。つまり、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物を、他の物質(例えば、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物)と併用してもよい。
この場合アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の含有量は、正極活物質全体に対して、通常20重量%以上、好ましくは40重量%以上とする。アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の含有量を上記範囲内とすれば、抵抗低減のメリットが発揮されやすくなる。一方、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の含有量は、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下とする。アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の含有量を上記範囲内とすれば、2種以上の正極活物質を混合することによる特定の目的が達成されやすくなる。
(2)正極活物質中に含有させてもよい他の物質の詳細
上記の通り、正極活物質中には、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物以外の物質を含有させてもよい。このような物質としては、正極活物質として機能する物質であることが好ましい。具体的には、(アニール処理をしていない)リチウム遷移金属酸化物(リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物)、酸化マンガン(MnO)、酸化バナジウム(V25、V613)等を挙げることがで
きる。
より具体的には、平均粒径が15μm以上のアニール処理リチウムコバルト複合酸化物を用いる場合に、平均粒径が10μm以下のリチウムコバルト複合酸化物(アニール処理されていないリチウムコバルト複合酸化物)をさらに含有させることが好ましい。 より好ましくは、平均粒径が8μm以下のリチウムコバルト複合酸化物を含有させることである。
これは、以下の理由からである。
つまり、平均粒径が異なる粒子を混合することは大粒子の隙間を小粒子が充填する形となり、塗膜中における粒子の充填密度が高まり、ひいては電池容量の増加につながり得る。しかし、単純に平均粒径の異なる粒子を混合すると、粒径に違いに応じた比表面積の違いから2つの粒子群のインピーダンスは大きく異なる。粒子への充電や粒子からの放電は、インピーダンスにより影響を受け、この影響は電流が大きくなると顕著になる。粒子径の異なる粒子同士を単純に混合する上記例では、通常インピーダンスが低くなる小粒径の粒子がより早く充放電されることになる。このため、塗膜内部における電位の不均一の発生及び充放電特性の低下を生じさせるとともに、頻繁に使用される小粒径の粒子の先行劣化を促進し、粒子混合による効果を損なう可能性がある。
ここにおいて、大粒子側がアニール処理されていれば、そのインピーダンスは大きく低下し小粒子のインピーダンスに近づく。このため、上記のような問題は小さくなり、異粒径混合によるメリットを十分に発揮させることができる。
なお、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物と併用するリチウムコバルト複合酸化物の平均粒径は、通常1μm以上とする。
また、正極活物質中に、リチウムコバルト複合酸化物とともに、リチウムニッケル複合酸化物及び/又はリチウムマンガン複合酸化物を含有させてもよい。
一方、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物とリチウムニッケル複合酸化物及び/又はリチウムマンガン複合酸化物とを併用して用いてもよい。これは、リチウムマンガン複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物と比較して安価であり、電池特性を維持しつつコストの低減を図ることが可能だからである。またリチウムニッケル複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物と比較して、活物質重量あたりの容量が高く電池容量を大きくすることが可能だからである。
より好ましくは、リチウムニッケル複合酸化物を含有させることである。
上記のように、リチウムニッケル複合酸化物を併用することにより、正極活物質の重量あたりの容量を上げる事ができる。しかし、リチウムニッケル複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物と比較して、熱安定性が低く熱暴走を生じやすい。このため、安定性の高いリチウムコバルト複合酸化物を適宜混合することによって発熱の連鎖を切断することが可能となる。
更にリチウムニッケル複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物と比較してインピーダンスが低いことが多い。このため、異なる粒径を有する粒子の混合の場合と同様の現象が生じる。特に、過充電に対する不安定性が高いリチウムニッケル複合酸化物においては電位の不均一が問題となるところ、リチウムコバルト複合酸化物がアニール処理されていれば、そのインピーダンスが低下しリチウムニッケル複合酸化物のインピーダンスに近づくため充放電特性が安定化する。
リチウムニッケル複合酸化物としては、具体的には、LiNiO2、LiNiCoO2等を挙げる事ができる。リチウムマンガン複合酸化物としては、具体的には、LiMn24等挙げる事ができる。これら複合酸化物の遷移金属サイトの一部は他の元素で置換されていてもよい。遷移金属の一部を他の元素で置換することにより、結晶構造の安定性を向上させることができる。この際の該遷移金属サイトの一部を置換する他元素(以下、置換元素と表記する)としては、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr等が挙げられ、好ましくはAl、Cr、Fe、Co、Li、Ni、Mg、Ga、更に好ましくはAl、Coである。なお、遷移金属サイトは2種以上の他元素で置換されていてもよい。置換元素による置換割合は通常ベースとなる遷移金属元素の2.5モル%以上、好ましくはベースとなる遷移金属元素の5モル%以上であり、通常ベースとなる遷移金属元素の30モル%以下、好ましくはベースとなる遷移金属元素の20モル%以下である。置換割合が少なすぎると結晶構造の安定化が十分図れない場合があり、多すぎると電池にした場合の容量が低下してしまう場合がある。
これら複合酸化物の粒径は、レート特性、サイクル特性等の電池特性が優れる点で通常1μm以上、一方、通常30μm以下、好ましくは10μm以下である。
正極活物質中に含有させてもよい他の物質の含有量は、正極活物質の全体に対して、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上とする。一方、正極活物質中に含有させてもよい他の物質の含有量は、正極活物質の全体に対して、通常90重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下とする。上記範囲内とすれば、本発明の効果を良好に発揮しやすくなる。
3.リチウム二次電池
本発明のアニール処理リチウムコバルト複合酸化物は、リチウム二次電池の正極活物質として用いられる。つまり、本発明のリチウム二次電池は、正極活物質を含有する正極活物質層を集電体上に有する正極を用いたものであり、正極活物質として、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物を含有する正極活物質を用いる。
ここで、リチウム二次電池は、通常、正極の他、負極及び電解質を有する電池要素をケースに収納した形態を有する。
正極は、通常、正極活物質層を集電体上に有する。正極活物質層は、通常、上記正極活物質の他、バインダー及び導電剤等の添加剤を含有する。正極活物質については上述した通りである。
バインダーとしては、電解液等に対して安定である必要があり、耐候性、耐薬品性、耐熱性、難燃性等の観点から各種の材料が使用される。具体的には、シリケート、ガラスのような無機化合物や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1,1−ジメチルエチレンなどのアルカン系ポリマー;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの不飽和系ポリマー;ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニルピロリドンなどのポリマー鎖中に環構造を有するポリマー;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース類が挙げられる。
他の具体例としては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミドなどのアクリル誘導体系ポリマー;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンシアニドなどのCN基含有ポリマー;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール系ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン含有ポリマー;ポリアニリンなどの導電性ポリマーなどが使用できる。
また上記のポリマーなどの混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体(例えば、スチレンブタジエンラバー等のスチレンブタジエン共重合体)などであっても使用できる。これらの樹脂の重量平均分子量は、通常10,000〜3,000,000、好ましくは100,000〜1,000,000程度である。低すぎると塗膜の強度が低下する傾向にある。一方、高すぎると正極製造用の塗料の粘度が高くなり電極の形成が困難になることがある。好ましいバインダー樹脂としては、フッ素系樹脂、CN基含有ポリマーが挙げられ、より好ましくはポリフッ化ビニリデンである。
バインダーの使用量は、正極活物質100重量部に対して通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上であり、また通常30重量部以下、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下である。バインダーの量が少なすぎると活物質層の強度が低下する傾向にあり、バインダーの量が多すぎると電池容量が低下する傾向にある。
正極活物質層中には、必要に応じて、導電性材料、補強材など各種の機能を発現する添加剤、粉体、充填材などを適切な含有量で含有させてもよい。
正極活物質層の膜厚は、通常60μm以上、好ましくは80μm以上、より好ましくは100μm以上とする。この範囲とするのは、膜厚が厚い場合は電池のインピーダンスが上昇し十分な実用特性が得られないため、通常膜厚を薄く設定しているところ、本発明においてはインピーダンスが低減されているため膜厚を厚くすることが可能で、これにより充放電特性を維持しつつ電池全体の容量密度を高めることが可能であるためである。
一方、正極活物質層の膜厚は、通常1000μm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下とする。この範囲とすることにより、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物を用いることによるインピーダンス低減効果を上回って充放電特性が低下することを抑制することができる。
集電体の材質は、通常、アルミニウム、銅、ニッケル、錫、ステンレス鋼等の金属、これら金属の合金等を用いることができる。この場合、正極の集電体としては、通常アルミニウムが用いられる。集電体の形状は特に制限されず、例えば、板状やメッシュ状の形状を挙げることができる。集電体の厚みは通常1μm以上、一方、通常50μm以下、好ましくは30μm以下である。薄すぎると機械的強度が弱くなるが、厚すぎると電池が大きくなり、電池の中で占めるスペースが大きくなってしまい、電池のエネルギー密度が小さくなる。
正極は、正極活物質やバインダー等を、バインダーを溶解しうる溶剤を用いて分散塗料化し、その塗料を集電体上に塗布、乾燥することにより製造することができる。
正極活物質層を形成する際に使用する溶剤としては、例えばN−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、水を挙げることができ、好ましくはN−メチルピロリドン、水である。塗料中の溶剤濃度は、少なくとも10重量%より大きくするが、通常20重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは35重量%以上である。また、上限としては、通常90重量%以下、好ましくは80重量%以下である。溶剤濃度が低すぎると塗布が困難になることがあり、高すぎると塗布膜厚を上げることが困難になると共に塗料の安定性が悪化することがある。
分散塗料化には通常用いられる分散機が使用でき、プラネタリーミキサー、ボールミル、サンドミル、二軸混練機などが使用できる。
集電体上に塗料を塗布する塗布装置に関しては特に限定されず、スライドコーターやエクストルージョン型のダイコーター、リバースロール、グラビアコーター、ナイフコーター、キスコーター、マイクログラビアコーター、ロッドコーター、ブレードコーターなどが挙げられるが、ダイコーター、ブレードコーター、及びナイフコーターが好ましく、塗料粘度および塗布膜厚等を考慮するとエクストルージョン型のダイコーター、簡便な点からはブレードコーターが最も好ましい。
上記塗料を集電体上に塗布した後、塗膜を例えば120℃程度の温度で10分間程度の時間乾燥させることよって正極活物質層が形成される。
負極は、通常、負極活物質層を集電体上に形成してなる。負極活物質層は、通常、負極活物質及びバインダーを含有する。
負極活物質としては、通常は、炭素性物質が用いられる。
炭素性物質としては、例えば、グラファイト等の黒鉛材料、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチもしくは石油系ピッチの炭化物、またはこれらのピッチを酸化処理したもの、ニードルコークス、ピッチコークス、フェノール樹脂、結晶セルロース等を挙げることができる。さらに、上記炭素性物質を一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等を挙げることもできる。
これらの炭素性物質の中でも、好ましいのはコークスおよびグラファイト等の黒鉛材料であるが、例えばリチウム二次電池等に用いた場合に容量が大きい点から、グラファイト等の黒鉛材料が特に好ましい。
黒鉛材料としては、人造黒鉛、天然黒鉛等の黒鉛粉末およびその精製品、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電性カーボンブラックの黒鉛化品、気相成長炭素繊維等の炭素繊維が挙げられる。これらの中でも、容量の点から、人造黒鉛または天然黒鉛が好ましく、リチウム二次電池等に用いた場合には電池性能を制御しやすいことから人造黒鉛が特に好ましい。これらの黒鉛材料は、表面をアモルファス処理したものであってもよい。
活物質層中の負極活物質の割合は、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上であり、通常99重量%以下、好ましくは98重量%以下である。多すぎると電極の機械的強度が劣る傾向にあり、少なすぎると容量等電池性能が劣る傾向にある。
負極に使用されるバインダー及びバインダーの含有量は、正極と同様とすればよい。また、添加剤も適宜も用いればよい。
負極活物質層の厚さは、通常10μm以上、好ましくは20μm以上であり、通常200μm以下、好ましくは150μm以下である。負極活物質層の厚さが過度に薄いと、電池の容量が小さくなりすぎる場合がある。一方、過度に厚いとレート特性が低下しることとなる。
負極に使用される集電体としては、電気化学的に溶出等の問題が生じず、電池の集電体として機能しうる各種のものを使用でき、通常は銅、ニッケル、ステンレス等の金属や合金が用いられる。好ましくは、銅を使用する。集電体の厚さは、通常0.1μm以上、好ましくは1μm以上であり、また通常100μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。薄すぎると機械的強度が弱くなる傾向にあり、生産上問題になる。厚すぎると電池全体としての容量が低下する。
負極の製造は、正極と同様の方法を用いて行うことができる。
リチウム二次電池に使用される電解質は、通常支持電解質であるリチウム塩を非水系溶媒に溶解してなる電解液を有する。
非水系溶媒としては、比較的高誘電率の溶媒が好適に用いられる。具体的にはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの非環状カーボネート類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のグライム類、γ−ブチルラクトン等のラクトン類、スルフォラン等の硫黄化合物、アセトニトリル等のニトリル類等を挙げることができる。以上の非水系溶媒は、複数種を併用することができる。
電解質に使用する支持電解質であるリチウム塩としては、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiClO4、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、L
iHF2、LiSCN、LiSO3CF2等を挙げることができる。これらのうちでは特にLiPF6及びLiClO4が好適である。これら支持電解質の電解液における含有量は、通常0.5〜2.5mol/lである。
また、電解質中には、必要に応じて、電池の性能向上のために各種の添加剤を添加することができる。
電解質は、正極と負極との内部、及び正極と負極との間に存在するが、正極と負極との間には、正極と負極との短絡防止のために、多孔質フィルムのような支持体を存在させるのが好ましい。多孔質フィルムとしては、高分子樹脂からなるフィルムや、粉体とバインダーからなる薄膜が好ましく使用でき、より好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質膜である。
正極、負極、及び電解質を有する電池要素はケースに収納される。電池要素としては、例えば、正極と負極とを電解質を介して積層した積層体を巻回した形態、正極と負極と電解質を介して平板状に積層した形態、又は前記平板状に積層した電池要素を複数個用意してさらに積層した形態を挙げることができる。
電池要素を収納するケースは、通常、コインセルや乾電池用の金属缶や形状可変性を有するケースを挙げることができる。
リチウム二次電池が電源として使用される電気機器としては、例えば、携帯用パーソナルコンピュータ、ペン入力パーソナルコンピュータ、モバイルパーソナルコンピュータ、電子ブックプレーヤー、携帯電話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディーターミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機など)等を挙げることができる。また、リチウム二次電池は、電気自動車用の電源として用いることもできる。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例により何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更し実施することができる。
なお、以下において、組成中の「部」は「重量部」を示す。
(実施例1)
[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]
リチウムコバルト複合酸化物(比表面積0.48m2/g,平均粒径5.7μm、日本
化学社製C−5J)を用いた。このリチウムコバルト複合酸化物は、若干の不純物の存在はあり得るものの、基本的にはリチウムとコバルトと酸素とからなる複合酸化物である。このリチウムコバルト複合酸化物30gをオーブン中において空気気流下、350℃で3時間アニール処理した。
[正極の製造]
リチウムコバルト複合酸化物90部、アセチレンブラック5部、ポリフッ化ビニリデン5部及びN−メチル−2−ピロリドン80部を混練機により2時間混練し正極塗料1とした。
次に、正極塗料1を20μm厚のアルミニウム集電体基材上に、ドクターブレードによって塗布、乾燥し、活物質がバインダーによって集電体上に結着された多孔質膜からなる正極活物質層を形成し、次いで、ロールプレス(カレンダー)を用いて圧密後、正極となる電極部を切り出した。正極活物質層の膜厚は60μmとした。
[負極の製造]
グラファイト(平均粒径15μm)90部、ポリフッ化ビニリデン10部及びN−メチル−2−ピロリドン100部を、混練機により2時間混練し、負極塗料1とした。
次に、負極塗料1を20μm厚の銅集電体基材上にドクターブレードによって塗布、乾燥し、活物質がバインダーによって集電体上に結着された多孔質膜からなる負極活物質層を形成し、次いで、ロールプレス(カレンダー)を用いて圧密後、負極となる電極部を切り出した。なお、負極活物質層の膜厚は51μmとした。
[電解液]
1M濃度のLiPF6を含有する、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートの混
合液(体積比率;エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1)を使用した。[電池の作成]
正極、負極に電解液を塗布し、別に電解液を浸したポリエチレン製多孔質フィルム(厚み15μm)を間に挟んで積層して平板状の単位電池要素を作成した。
得られた単位電池要素の端子部に電流を取り出すリードを接続した。その後、ラミネートフィルムを対向成形した外装材に収容後、真空シールしてリチウム二次電池を得た。
[電池の評価]
放電容量の測定は以下のようにして行った。即ち、0.5Cで4.2Vまで定電流充電を行い、次いで、充電電流値が0.01Cになるまで4.2Vでの定電圧充電を行うことにより、電池を満充電状態とした。そして、所定の電流値で3.0Vまで放電することにより電池容量を求めた。
電池容量は0.2Cにおける放電容量を正極活物質重量あたりの電流容量で示した。
放電特性は各電流値で放電電池容量を測定し、0.2Cにおける放電容量に対する比で示した。ここで1Cの電流値は電池容量を1時間で放電できる電流量を意味し、2Cとはその2倍の電流値を指す。
インピーダンス測定は電池の電圧を3.8Vにした状態でFRAタイプのインピーダンス計(ソーラトロン社製、Electrochemical interface SI1287を介してFrequency Response Analyzer 1255Bを使用)により測定した。
低温測定は上記放電測定、インピーダンス測定を所定の温度に冷却した恒温槽内でおこなうことによって実施した。放電容量は25℃において測定した同一放電条件における容量に対する割合で示した。
(実施例2)
実施例1において[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]におけるリチウムコバルト複合酸化物(比表面積0.48m2/g,平均粒径5
.7μm、日本化学社製C−5J)をリチウムコバルト複合酸化物(比表面積0.38m2/g,平均粒径8.2μm、日本化学社製C−8G)にしたこと以外は、実施例1と同
様にして電池を作成し評価した。このリチウムコバルト複合酸化物は、若干の不純物の存在はあり得るものの、基本的にはリチウムとコバルトと酸素とからなる複合酸化物である。
(実施例3)
実施例1において[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]におけるリチウムコバルト複合酸化物(比表面積0.48m2/g,平均粒径5
.7μm、日本化学社製C−5J)をリチウムコバルト複合酸化物(比表面積0.16m2/g,平均粒径18.3μm、日本化学社製C―20)にしたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作成し評価した。このリチウムコバルト複合酸化物は、若干の不純物の存在はあり得るものの、基本的にはリチウムとコバルトと酸素とからなる複合酸化物である。
(比較例1)
実施例1において[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]を省略したこと以外は、実施例1と同様にして電池を作成し評価した。
(比較例2)
実施例2において[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]を省略したこと以外は、実施例2と同様にして電池を作成し評価した。
(比較例3)
実施例3において[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]を省略したこと以外は、実施例3と同様にして電池を作成し評価した。
実施例1〜3、比較例1〜3で得られた結果を表1に示す。実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、それぞれを比較することにより、アニール処理を加えることによって大きくインピーダンスが低下し、その効果は粒径が大きい方が大きいことがわかる。また放電特性も向上し特に大電流において違いが明瞭になる。低温特性も大きく改善することがわかる。一方で電池容量にはほとんど変化がなくデメリットが無いことがわかる。
Figure 2006269302
(実施例4)
実施例1において[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]を以下の通りおこなった。
リチウムコバルト複合酸化物(比表面積0.38m2/g,平均粒径8.2μm、日本
化学社製C−8G)30gをオーブン中において空気気流下、350℃で3時間アニール処理した。
それ以外は実施例1と同様にして電池を作成し評価した。
(実施例5)
実施例4においてアニール温度を350℃から250℃に変更した以外は実施例4と同様にして電池を作成し評価した。
(実施例6)
実施例4においてアニール温度を350℃から300℃に変更した以外は実施例4と同様にして電池を作成し評価した。
(実施例7)
実施例4においてアニール温度を350℃から400℃に変更した以外は実施例4と同様にして電池を作成し評価した。
(実施例8)
実施例4においてアニール温度を350℃から500℃に変更した以外は実施例4と同様にして電池を作成し評価した。
(比較例4)
実施例4においてアニール温度を350℃から200℃に変更した以外は実施例4と同様にして電池を作成し評価した。
(比較例5)
実施例4においてアニール温度を350℃から700℃に変更した以外は実施例4と同様にして電池を作成し評価した。
(比較例6)
実施例4において[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]を省略した以外は実施例4と同様にして電池を作成し評価した。
実施例4〜8、比較例4〜6で得られたリチウム二次電池の常温におけるインピーダンスの測定結果を表2と図1に示す。
Figure 2006269302
アニール処理を行わない(図1及び表2には25℃のデータとして示した。)場合に比べて、アニール温度が250℃から抵抗低減効果が現れ始め、500℃で最大の効果が得られていることがわかる。一方アニール温度を700℃にあげてもアニール処理を行わない場合と比較して抵抗は低いものの、より低温の500℃でアニール処理されている場合より抵抗がむしろ増加している。装置に対する負荷、生産効率、及び無駄なエネルギーを使用しないという意味での環境負荷を考えると、過剰のアニールは好ましくないことがわかる。
(実施例9)
実施例1において[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]を以下の通りおこなった。
リチウムコバルト複合酸化物(比表面積0.38m2/g,平均粒径8.2μm、日本
化学社製C−8G)30gをオーブン中において空気気流下、350℃で1時間アニール処理した。
それ以外は実施例1と同様にして電池を作成し評価した。
(実施例10)
実施例9においてアニール時間を1時間から0.5時間に変更し以外は実施例9と同様にして電池を作成し評価した。
(実施例11)
実施例9においてアニール時間を1時間から3時間に変更し以外は実施例9と同様にして電池を作成し評価した。
実施例9〜11のリチウム二次電池において得られた結果を表3に示す。アニール時間が短くなっても十分な効果が得られていることがわかる。従ってアニールは長時間行う必要はなく焼成で要するような長時間の固相反応は生じていないものと推定される。
Figure 2006269302
(実施例12)
実施例1において[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]を以下の通りおこなった。
リチウムコバルト複合酸化物(比表面積0.38m2/g,平均粒径8.2μm、日本
化学社製C−8G)30gをオーブン中において窒素気流下、350℃で3時間アニール処理した。
それ以外は実施例1と同様にして電池を作成し評価した。
(実施例13)
実施例12においてアニール温度を350℃から500℃に変更した以外は実施例12と同様にして電池を作成し評価した。
(比較例7)
実施例12においてアニール時の加熱を省略した以外は実施例12と同様にして電池を作成し評価した。
実施例12、13、比較例7のリチウム二次電池の常温におけるインピーダンスの測定結果を表4及び図2に示す。
アニール処理を行わず(アニール時の加熱を省略)、窒素気流にさらしただけの(図2及び表4には25℃のデータとして示した。)場合に比べて、アニール温度を300℃、500℃と徐々に上昇させることによって、インピーダンスが低下していくことがわかる。
窒素気流下におけるアニール処理によっても抵抗低減効果が得られることから、アニール処理による効果は酸素欠陥の抑制に関連した効果だけではないことがわかる。酸素中における結果と比較すると、抵抗低減効果自体はやや劣ることから、酸素欠陥の増加による抵抗増加と競合するような効果が進行している可能性はある。
Figure 2006269302
(実施例14)
実施例1において[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]を以下の通りおこなった。
リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)(比表面積0.59m2/g、日亜化学社)30gをオーブン中において空気気流下、350℃で3時間アニール処理した。
それ以外は実施例1と同様にして電池を作成し評価した。
(実施例15)
実施例14においてアニール温度を350℃から250℃に変更した以外は実施例14と同様にして電池を作成し評価した。
(実施例16)
実施例14においてアニール温度を350℃から500℃に変更した以外は実施例14と同様にして電池を作成し評価した。
(比較例8)
実施例14においてアニール温度を350℃から700℃に変更した以外は実施例14と同様にして電池を作成し評価した。
(比較例9)
実施例14において[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]を省略した以外は実施例14と同様にして電池を作成し評価した。
実施例14〜16、比較例8、9のリチウム二次電池の常温におけるインピーダンスの測定結果を表5及び図3に示す。アニール処理をおこなわない(図3及び表5には25℃のデータとして示した。)場合に比べて、アニール温度が250℃から抵抗低減効果が現れ始め、350℃で十分な効果が得られていることがわかる。一方アニール温度を700℃にあげても500℃でアニールした実施例16からの改善は小さく、500℃以下のアニール処理によって低減目的を十分に達成てきることがわかる。
Figure 2006269302
(実施例17)
実施例1における[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]を以下の通りおこなった。つまり、リチウムコバルト複合酸化物(比表面積0.16m2/g,平均粒径18.3μm、日本化学社製C―20)30gをオーブン中において空気気流下、350℃で3時間アニール処理した。
また、実施例1における[正極の製造]において、リチウムコバルト複合酸化物90部を上記[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]を経たリチウムコバルト複合酸化物45部とアニール処理していないリチウムコバルト複合酸化物(比表面積0.48m2/g,平均粒径5.7μm、日本化学社製C−5J)45部
に置き換えた。
それ以外は実施例1と同様にして電池を作成し評価した。
(実施例18)
[正極の製造]において使用されるアニール処理していないリチウムコバルト複合酸化物(比表面積0.48m2/g,平均粒径5.7μm、日本化学社製C−5J)を、オー
ブン中において空気気流下、350℃で3時間アニール処理したリチウムコバルト複合酸化物(比表面積0.48m2/g,平均粒径5.7μm、日本化学社製C−5J)に置き
換えた。それ以外は実施例17と同様にして電池を作成し評価した。
(比較例10)
実施例17において[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]を省略した以外は、実施例17と同様にして電池を作成し評価した。
実施例17、18、比較例10で得られたリチウム二次電池の評価結果を表6に示す。実施例18に示すように大きい粒径の粒子、小さい粒径の粒子ともアニール処理すればもっとも高い特性が得られるが、大きい粒径の粒子側をアニール処理すれば実施例17に示すように抵抗低減の効果が大きく得られる。
これは、大きい粒径の粒子及び小さい粒径の修理の混合系において、アニール処理をおこなわない比較例10のリチウム二次電池より特性が良いのは無論、小さい粒径の粒子のみでアニール処理を行わない比較例1のリチウム二次電池と同等の抵抗値である。この結果から、大きい粒径の粒子がアニール処理されていれば抵抗増加を招くことなく混合が可能であることがわかる。
Figure 2006269302
(比較例11)
[正極のアニール処理(アニール処理リチウムニッケル複合酸化物の取得)]
リチウムニッケルコバルト複合酸化物(Li1.05Ni0.81Co0.15Al0.04(比表面積0.43m2/g,平均粒径6.7μm、住友金属鉱山製LN−101KN)30gをオ
ーブン中において空気気流下、350℃で3時間アニール処理した。
[正極の製造]
リチウムニッケル複合酸化物90部、アセチレンブラック5部、ポリフッ化ビニリデン5部及びN−メチル−2−ピロリドン80部を混練機により2時間混練し正極塗料1とした。
次に、正極塗料1を20μm厚のアルミニウム集電体基材上に、ドクターブレードによって塗布、乾燥し、活物質がバインダーによって集電体上に結着された多孔質膜からなる正極活物質層を形成し、次いで、ロールプレス(カレンダー)を用いて圧密後、正極となる電極部を切り出した。なお、正極活物質層の膜厚は51μmとした。
[負極の製造]
グラファイト(平均粒径15μm)90部、ポリフッ化ビニリデン10部及びN−メチル−2−ピロリドン100部を、混練機により2時間混練し、負極塗料1とした。
次に、負極塗料1を20μm厚の銅集電体基材上にドクターブレードによって塗布、乾燥し、活物質がバインダーによって集電体上に結着された多孔質膜からなる負極活物質層を形成し、次いで、ロールプレス(カレンダー)を用いて圧密後、負極となる電極部を切り出した。なお、負極活物質層の膜厚は60.5μmとした。
上記以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し評価した。
(比較例12)
比較例11においてアニール温度を350℃から250℃に変更した以外は比較例11と同様にして電池を作成し評価した。
(比較例13)
比較例11においてアニール温度を350℃から500℃に変更した以外は比較例11と同様にして電池を作成し評価した。
(比較例14)
比較例11においてアニール温度を350℃から700℃に変更した以外は比較例11と同様にして電池を作成し評価した。
(比較例15)
比較例11において[正極のアニール処理(アニール処理リチウムニッケル複合酸化物の取得)]を省略した以外は比較例11と同様にして電池を作成し評価した。
比較例11〜15のリチウム二次電池の常温におけるインピーダンスの測定結果を表7及び図4に示す。アニール処理をおこなわない(図4及び表7には25℃のデータとして示した。)場合に比べて、アニール処理を行っても(アニール処理の温度に関係なく)抵抗がほとんど同等であった。つまり、リチウムニッケル複合酸化物においては、抵抗低減に対するアニール処理の効果がないことがわかる。
Figure 2006269302
(実施例19)
実施例1における[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]を以下の通りおこなった。
リチウムコバルト複合酸化物(比表面積0.38m2/g,平均粒径8.2μm、日本
化学社製C−8G)30gをオーブン中において空気気流下、350℃で3時間アニール処理した。
実施例1における[正極の製造]において、リチウムコバルト複合酸化物90部を上記[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]を経たリチウムコバルト複合酸化物27部と、アニール処理していないリチウムニッケル複合酸化物(Li1.05Ni0.81Co0.15Al0.04比表面積0.43m2/g,平均粒径6.7μm、
住友金属鉱山製LN−101KN)63部と、に置き換えた。また、正極活物質層の膜厚は52.5μmとした。
また[負極の製造]において負極活物質層の厚みを54μmとした。
上記以外は実施例1と同様にして電池を作製し評価した。
(比較例16)
実施例19において[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]を省略した以外は実施例19と同様にして電池を作成し評価した。
実施例19、比較例16のリチウム二次電池で得られた評価結果を表8に示す。実施例19と比較例16の比較より、リチウムコバルト複合酸化物をアニールすれば抵抗低減や特性の向上が見られる。リチウムニッケル複合酸化物をアニールしても効果がないことは上記比較例で示した通りである。
Figure 2006269302
(比較例17)
[正極のアニール処理(アニール処理リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物の取得)]
リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNiCoMnCoO2)(Ni:
Co:Mn比=1:1:1、比表面積0.77m2/g、平均粒径4.1μm、)30g
をオーブン中において空気気流下、350℃で3時間アニール処理した。
[正極の製造]
リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、アセチレンブラック5部、ポリフッ化ビニリデン5部及びN−メチル−2−ピロリドン80部を混練機により2時間混練し正極塗料1とした。
次に、正極塗料1を20μm厚のアルミニウム集電体基材上に、ドクターブレードによって塗布、乾燥し、活物質がバインダーによって集電体上に結着された多孔質膜からなる正極活物質層を形成し、次いで、ロールプレス(カレンダー)を用いて圧密後、正極となる電極部を切り出した。なお、正極活物質層の膜厚は57μmとした。
[負極の製造]
グラファイト(平均粒径15μm)90部、ポリフッ化ビニリデン10部及びN−メチル−2−ピロリドン100部を、混練機により2時間混練し、負極塗料1とした。
次に、負極塗料1を20μm厚の銅集電体基材上にドクターブレードによって塗布、乾燥し、活物質がバインダーによって集電体上に結着された多孔質膜からなる負極活物質層を形成し、次いで、ロールプレス(カレンダー)を用いて圧密後、負極となる電極部を切り出した。なお、負極活物質層の膜厚は55μmとした。
上記以外は実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し評価した。
(比較例18)
比較例17においてアニール温度を350℃から250℃に変更した以外は比較例17と同様にして電池を作成し評価した。
(比較例19)
比較例17においてアニール温度を350℃から500℃に変更した以外は比較例17と同様にして電池を作成し評価した。
(比較例20)
比較例17においてアニール温度を350℃から700℃に変更した以外は比較例17と同様にして電池を作成し評価した。
(比較例21)
比較例17において[正極のアニール処理(アニール処理リチウムコバルト複合酸化物の取得)]を省略した以外は比較例17と同様にして電池を作成し評価した。
比較例17〜21のリチウム二次電池の常温におけるインピーダンスの測定結果を表9及び図5に示す。アニール処理を行わない(図5及び表9には25℃のデータとして示した。)場合に比べて、アニール処理をおこなっても処理温度が350℃程度までは抵抗はほとんど変化せず、、アニール処理の処理温度が500℃を超えると温度と共に抵抗が上昇する。従ってリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物においては抵抗低減に対するアニールの効果がないことがわかる。
Figure 2006269302
本発明の実施例における常温のインピーダンス測定結果である。 本発明の他の実施例における常温のインピーダンス測定結果である。 本発明のさらに他の実施例における常温のインピーダンス測定結果である。 本発明のさらに他の実施例における常温のインピーダンス測定結果である。 本発明のさらに他の実施例における常温のインピーダンス測定結果である。

Claims (7)

  1. リチウム二次電池の正極活物質として用いるアニール処理リチウムコバルト複合酸化物の製造方法であって、
    原料の焼成によりリチウムコバルト複合酸化物を得た後、
    前記リチウムコバルト複合酸化物を液体と接触させること無く、250℃以上500℃以下でアニール処理して、アニール処理リチウムコバルト複合酸化物を得ることを特徴とするアニール処理リチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  2. 前記アニール処理を、酸素の存在下に行うことを特徴とする請求項1に記載のアニール処理リチウムコバルト複合酸化物の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の製造方法で製造された、平均粒径が15μm以上であることを特徴とするアニール処理リチウムコバルト複合酸化物。
  4. 請求項1又は2に記載の製造方法で製造されたアニール処理リチウムコバルト複合酸化物を含有することを特徴とする正極活物質。
  5. 平均粒径が10μm以下のリチウムコバルト複合酸化物をさらに含有することを特徴とする請求項4に記載の正極活物質。
  6. リチウムニッケル複合酸化物及び/又はリチウムマンガン複合酸化物をさらに含有することを特徴とする請求項4又は5に記載の正極活物質。
  7. 正極活物質を含有する正極活物質層を集電体上に有する正極を用いたリチウム二次電池であって、前記正極活物質として、請求項4乃至6の何れか1項に記載の正極活物質を用いることを特徴とするリチウム二次電池。
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