JP2006266106A - オイルポンプ - Google Patents
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Abstract
【課題】オイルポンプが高圧化するときであっても、キャビテーションによる浸食を抑えるのに有利なオイルポンプを提供する。
【解決手段】オイルポンプは、回転に伴い吸込通路24のオイルを吸い込んで吐出ポート19を経て吐出通路28に供給するポンプ作用を行うロータ3と、吐出通路28のオイルの流量が過剰のとき過剰のオイルを帰還流としてバイパス通路29を経て吸込通路24に帰還させる流量制御弁7とを備えている。基部1は、オイルの帰還流の少なくとも一部に対面する位置に設けられ鉄系材料を基材とする耐浸食部9を備えており、耐浸食部9は、少なくともオイルの帰還流の少なくとも一部に対面する位置の表面に窒化層300を有する。
【選択図】 図1
【解決手段】オイルポンプは、回転に伴い吸込通路24のオイルを吸い込んで吐出ポート19を経て吐出通路28に供給するポンプ作用を行うロータ3と、吐出通路28のオイルの流量が過剰のとき過剰のオイルを帰還流としてバイパス通路29を経て吸込通路24に帰還させる流量制御弁7とを備えている。基部1は、オイルの帰還流の少なくとも一部に対面する位置に設けられ鉄系材料を基材とする耐浸食部9を備えており、耐浸食部9は、少なくともオイルの帰還流の少なくとも一部に対面する位置の表面に窒化層300を有する。
【選択図】 図1
Description
本発明は車両等に搭載されるオイルポンプに関する。例えば車両のパワーステアリング装置に使用されるオイルポンプに利用することができる。
車両等に搭載されるオイルポンプは、作動室と、吸込ポートと、吐出ポートと、吸込ポートにオイルを供給する吸込通路と、吐出ポートからオイルが吐出される吐出通路と、吐出通路と吸込通路とを連通するバイパス通路と、ポンプ作用を行うロータとをもつ。ロータが回転すると、吸込通路のオイルを吸込ポートから吸い込んで吐出ポートを経て吐出通路に供給するポンプ作用が行なわれる。そして吐出通路のオイルの流量が過剰のとき、吐出通路の過剰のオイルを帰還流としてバイパス通路を経て吸込通路に帰還させる制御弁が設けられている。これにより吐出通路から油圧機器に供給されるオイルの流量の適切化を図り得る。
ところで、上記したように高圧側の吐出通路の過剰のオイルをバイパス通路を経て低圧側の吸込通路に帰還させるとき、オイルの帰還流はかなりの高速で帰還する。このためオイルポンプの使用期間が過度に長期にわたったり、オイルポンプの使用条件が過酷であったりすると、バイパス通路や吸込通路の内壁面のうち、オイルの帰還流が直撃する部位に浸食部分が生じるおそれがある。キャビテーションによる摩耗に起因すると推察される。殊に吸込通路がアルミニウム系を基材として形成されている場合には、浸食部分が生じるおそれがある。
特許文献1には、オイルの帰還流が直撃する部位に、耐浸食性をもつ鋼系材料で形成した円筒形状の管体を取り付けた技術が開示されている。この場合、オイルの帰還流がかなりの高速で帰還するときであっても、オイルの帰還流が直撃する部位における浸食が抑えられる。
特許文献2には、バイパス通路として機能する戻り通路を形成するハウジングを構成するアルミニウム合金よりも硬い材料である鉄系材料で形成されたスリーブが戻り通路の内周壁に嵌着されている。この文献には、フレッティング摩耗が戻り通路に形成されることが抑えられると記載されている。
また、特許文献3には、吸込通路の内壁面に断面V字状の耐浸食部材を装着するとともに、過剰のオイルを吸込通路に帰還させる制御弁に係るバランス用凹部にも、略コップ状の第2浸食部材を装着した技術が開示されている。
実開平2−139386号公報
特開平11−63270号公報
WO2004−007966号公報
近年における内燃機関の更なる高出力化に伴い、オイルポンプの油圧が更に高圧化している。このため、オイルの帰還流がかなりの高速で直撃することになり、ハウジングの流路におけるキャビテーションによる浸食性の低下を抑えることがますます要請されている。本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、オイルポンプが高圧化するときであっても、キャビテーションによる浸食を抑えるのに有利なオイルポンプを提供することを課題とするにある。
様相1に係るオイルポンプは、作動室と、吸込ポートと、吐出ポートと、吸込ポートにオイルを供給する吸込通路と、吐出ポートからオイルが吐出される吐出通路と、吐出通路と吸込通路とを連通するバイパス通路とをもつ基部と、
作動室に回転可能に設けられ、回転に伴い吸込通路のオイルを吸込ポートから吸い込んで吐出ポートを経て吐出通路に供給するポンプ作用を行うロータと、
基部に設けられ、吐出通路のオイルの流量が過剰のとき過剰のオイルを帰還流としてバイパス通路を経て吸込通路に帰還させる制御弁とを具備するオイルポンプにおいて、
基部は、オイルの帰還流の少なくとも一部に対面する位置に設けられ鉄系材料を基材とする耐浸食部を備えており、耐浸食部は、オイルの帰還流の少なくとも一部に対面する位置に窒化層を有することを特徴とするものである。この場合、耐浸食部の表面は窒化層により硬化しているため、オイルの帰還流の少なくとも一部が直撃したときであっても、キャビテーションによる浸食を抑えることができる。
作動室に回転可能に設けられ、回転に伴い吸込通路のオイルを吸込ポートから吸い込んで吐出ポートを経て吐出通路に供給するポンプ作用を行うロータと、
基部に設けられ、吐出通路のオイルの流量が過剰のとき過剰のオイルを帰還流としてバイパス通路を経て吸込通路に帰還させる制御弁とを具備するオイルポンプにおいて、
基部は、オイルの帰還流の少なくとも一部に対面する位置に設けられ鉄系材料を基材とする耐浸食部を備えており、耐浸食部は、オイルの帰還流の少なくとも一部に対面する位置に窒化層を有することを特徴とするものである。この場合、耐浸食部の表面は窒化層により硬化しているため、オイルの帰還流の少なくとも一部が直撃したときであっても、キャビテーションによる浸食を抑えることができる。
様相2に係るオイルポンプによれば、耐浸食部は、吸込通路及びバイパス通路のうち少なくとも一方において、オイルの帰還流に対面する位置に設けられていることを特徴とする。この場合、耐浸食部は窒化層により硬化しているため、オイルの帰還流の少なくとも一部が吸込通路及びバイパス通路のうち少なくとも一方を直撃したときであっても、キャビテーションによる浸食を抑えることができる。
様相3に係るオイルポンプによれば、制御弁は、吐出通路の圧力に応答して吐出通路内を移動するスプールを備えており、基部は、オイル帰還流の一部が流れて前記スプールのバランスを高めるバランス用凹部を備えており、耐浸食部は、バランス用凹部においてオイルの帰還流の少なくとも一部に対面する位置に設けられていることを特徴とする。この場合、耐浸食部は窒化層により硬化しているため、オイルの帰還流の少なくとも一部がバランス用凹部を直撃したときであっても、キャビテーションによる浸食を抑えることができる。
本発明に係るオイルポンプによれば、オイルポンプが高圧化するときであっても、キャビテーションによる浸食を抑えるのに有利である。
耐浸食部は基部と別体をなしており、基部に後付けで取り付けられている形態を採用することができる。この場合、耐浸食部が有するバネ性を利用して、耐浸食部を基部に取り付けることができる。また、耐浸食部は基部と一体的に形成されている形態を例示することができる。この場合、基部を構成する材料に耐浸食部を一体的に鋳ぐるむことができる。
耐浸食部を構成する鉄系材料としては、炭素鋼、合金鋼を例示できる。合金鋼はステンレス鋼を含む。ステンレス鋼等の合金鋼は耐食性が良好であり、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、析出硬化系等のいずれでも良い。耐浸食部を構成する鉄系材料としては、耐食性、強度、硬度が良好であることが好ましい。このため鉄系材料を質量%で100%としたとき、合金元素としてクロム、ニッケル、モリブデンの1種または2種以上を0.1%以上含むことができる。殊に、0.5%以上、1%以上、5%以上、15%以上含むことができる。上記した下限値と組み合わせ得る合金元素の上限値としては、必要に応じて40%、30%、20%とすることができる。なお耐食性、強度、硬度等を考慮すると、クロムは3〜30%、4〜18%、5〜20%、ニッケルは1〜12%、2〜11%、3〜10%を例示できる。
窒化処理の温度が高温であると、耐浸食部の歪みが増加し、寸法精度が低下したり、耐浸食部のバネ性を有する場合には耐浸食部のバネ性が低下するおそれがある。また、耐浸食部を構成する鉄系材料の強度が低下したり、組織が変化したり、マトリックスの合金濃度が変化するおそれがある。殊に、耐浸食部を構成する鉄系材料が合金元素(例えばクロム)を有する合金鋼である場合には、マトリックス中に含まれる合金元素(例えばクロム)濃度が減少し、マトリックスの耐食性が低下するおそれがある。このため好ましくは、窒化層としては、A1変態点以下、殊に、550℃以下または530℃以下の温度で窒化処理されて形成されている。必要に応じて500℃以下、490℃以下、480℃以下とすることもできる。温度が低いと、窒化処理に時間を要するが、耐浸食部を構成する鉄系材料の強度低下の抑制、組織変化の抑制、マトリックスにおける合金濃度の変化の抑制に有利であり、更に耐浸食部の歪みを抑えるのに有利である。なお窒化処理の温度の下限値としては350℃以上、400℃以上または440℃以上が挙げられる。
窒化層は塩浴窒化処理またはガス窒化処理により形成されている形態を例示することができる。窒化層には窒化物が生成しており、硬質化している。塩浴窒化処理であれば、塩浴の温度分布の均一化を図り易く、窒化層のばらつき低減に有利である。塩浴としては青酸塩系、シアン酸塩系を例示でき、NaCN、NaCNO、KCN、KCN等の1種または2種以上を主要成分にできる。
また、窒化層の表面粗さが大きいと、窒化層が部分的に剥離するおそれがある。剥離した窒化層はオイル流路に流れ、オイルポンプの動作に影響を与える要因となり得る。このため窒化層の剥離を抑えるため、窒化層の表面粗さとしてはRaで10μm以下に設定されていることが好ましく、殊に、8μm以下、4μm以下、2μm以下、1μm以下とすることができる。窒化層の表面粗さを小さくするため、窒化処理前において、耐浸食部の表面を研磨することが好ましい。また、窒化層の厚みが厚いと、窒化処理時間が長くなり、耐浸食部の歪みの増加、バネ性の低下を招くおそれがある。また、耐浸食部の基材の組織や組成が変化するおそれもある。このため窒化層の厚みとしては1〜100μmに設定されていることが好ましい。殊に3μm以上とすることができ、80μm以下、60μm以下、40μm以下とすることができ、5〜50μmとすることができる。耐浸食部の厚みとしては特に限定されないが、0.3〜2.0ミリメートル、0.3〜1.0ミリメートルを例示できる。なお、窒化層が耐浸食部の表裏に形成されているとき、あるいは、窒化層が耐浸食部の一方の表面のみに形成されているとき、窒化層を含む耐浸食部の厚み全体を相対表示で1000とするとき、窒化層の厚みとしては1〜200、殊に2〜100の範囲内とすることを例示できる。この場合、耐浸食部がバネ性を有する場合には、バネ性を良好に維持するのに有利である。
好ましくは、吸込通路及びバイパス通路のうち少なくとも一方の内壁面に、耐浸食性を有する耐浸食部がオイルの帰還流の少なくとも一部に対面する位置に設けられている。この場合、吐出通路の過剰のオイルがバイパス通路を経て吸込通路に帰還するときであっても、オイルの帰還流が直撃する部位における浸食が抑えられる。更に耐浸食部は、当該一方の中心線と直交する断面において当該一方の中心線の回りで非連続形状をなしている形態を例示することができる。この場合、前記した特許文献1の場合に比較して、耐浸食性を有する材料の使用量の低減を図り得、オイルの帰還流が流れる通路の流路断面積が確保される。
好ましくは、吸込通路及びバイパス通路のうち少なくとも一方の中心線と直交する断面において、耐浸食部はこれの拡開方向に付勢するバネ力を有しており、耐浸食部のバネ力により耐浸食部は少なくとも当該一方に装着されている形態を例示することができる。このように耐浸食部のバネ力により耐浸食部を装着することにすれば、耐浸食部が断面において非連続形状をなしているときであっても、耐浸食部の保持性が高まり、耐浸食部の位置ずれが抑制される。
好ましくは、当該一方の中心線と直交する断面において、当該一方の中心線の回りで、耐浸食部は少なくともV字形状、U字形状、C字形状のいずれかを有する構成を例示することができる。そして耐浸食部のバネ力により耐浸食部は少なくとも当該一方に装着されている形態を例示することができる。このように耐浸食部のバネ力により耐浸食部を装着することにすれば、耐浸食部の保持性を高めることができる。この場合、疑似V字形状、疑似U字形状、疑似C字形状のいずれかを有する形態を例示することができる。好ましくは、吸込通路及びバイパス通路のうちの少なくとも一方は、横断面で短径及び長径をもつ長円形状または楕円形状をなしていると共に、耐浸食部は、長円形状または楕円形状に対応するように少なくともV字形状、U字形状、疑似V字形状、疑似U字形状のいずれかを有する構成を例示することができる。この場合、耐浸食部の保持性を高めることができ、耐浸食部の位置ずれが抑えられる。
本発明の第1実施例を図1〜図7を参照して説明する。まず、全体構成から説明する。オイルポンプは、車両のステアリングの操作をアシストするパワーステアリング装置に使用されるものであり、エンジンのクランクシャフトで回転される。図1に示すようにオイルポンプでは、基部1はアルミニウムまたはアルミニウム合金を基材としており、内壁面11aで区画された作動室11及び作動室11に連通する吐出室12をもつフロントハウジングとも呼ばれるハウジング13と、シール部15を介して作動室11に嵌合して吐出室12に対面するように配置された第1サイドプレート16と、ハウジング13の取付端面13aに固定された第2サイドプレート18とを有する。
図1に示すように、取付ボルト14を第2サイドプレート18の通孔18pに挿通し、取付ボルト14をハウジング13のねじ孔13pにねじ込むことにより、第2サイドプレート18はハウジング13の取付端面13aにシール部18sを介して固定されている。第1サイドプレート16の厚み方向には、吐出室12及び作動室11に連通する吐出ポート19が形成されている。第1サイドプレート16と第2サイドプレート18とで挟持されるように、カムリング20が作動室11に嵌合して配置されている。
シャフト孔21は作動室11に繋がるようにハウジング13に形成されている。シャフト孔21は、ハウジング13に形成された第1シャフト孔21aと、第1サイドプレート16に形成された第2シャフト孔21bと、第2サイドプレート18に形成された第3シャフト孔21cとを有する。図1に示すように、ハウジング13に吸込通路24が形成されている。吸込通路24は、第2サイドプレート18の吸込連通路26を経て吸込ポート27に連通する。図2,図3に示すように、吸込通路24の横断面形状は、長径24b及び短径24aを有する長円または楕円状である。吸込通路24の横断面における長径24bは、吐出通路28の中心線P2が延びる方向に沿っている。
吸込通路24の横断面における短径24aは、吐出通路28の中心線P2と交差する方向に沿っている。図1に示すように、バイパス通路29の中心線は、吸込通路24の中心線P1の延長線状に存在している。従ってバイパス通路29及び吸込通路24は同芯的に連通している。図2に示すように、ロータ3は作動室11のカムリング20内に回転可能に設けられている。ロータ3は、回転に伴いオイルを吸込ポート27から吸い込んで吐出ポート19を経て吐出室12に吐出し、ひいては吐出通路28に供給し、ポンプ作用を行う。図2に示すように、ロータ3は、カムリング20内で回転する回転体30と、回転体30の外周部の溝31aに放射方向に嵌合された複数の羽根状のベーン31とを有する。
図1に示すようにハウジング13には、内壁面28rで区画された吐出通路28が形成されている。吐出通路28は横断面で円形状をなしており、吐出室12に連通し、ひいては吐出室12及び吐出ポート19を介して作動室11に連通するようにハウジング13に形成されている。吐出通路28の中心線P2は、吸込通路24の中心線P1と交差する方向に沿って延設されている。吐出通路28はバイパス通路29を介して吸込通路24に連通している。図2,図3に示すように、バイパス通路29は内壁面29rで区画され、横断面で円形状をなしている。図1に示すように、駆動シャフト4はシャフト孔21内にメタル軸受210を介して回転可能に支承されていると共に、ロータ3の回転体30の孔に一体的に係合している。エンジンのクランクシャフトに連結された駆動シャフト4が回転すると、ロータ3は回転する。駆動シャフト4が回転すると、ロータ3及びベーン31がカムリング20内で同方向に回転する。べーン31の先端はカムリング20のカム面20cに沿って移動する。隣設するベーン31で室33が形成される。吸込ポート27側では室33の容積は、吸込ポート27からのオイル吸い込み性を確保すべく相対的に大きくされており、吐出ポート19側では室33の容積は相対的に小さくされている。なお図1に示すように、ハウジング13のうちシャフト孔21に対面する部分であるシール取付位置13bには、シール部材45が配置されている。
図4に示すように、ドレン孔5は、シャフト孔21に設けられたオイル導入路21wに開口してシャフト孔21に連通するドレン入口50と、開口中心51xを有すると共に吸込通路24に連通するドレン出口51と、ドレン入口50及びドレン出口51を連通するドレン連通路52とで形成されている。オイルポンプの運転時に駆動シャフト4の外周の隙間に漏れたオイルを、ドレン入口50から矢印W1方向に吸い込んでドレン連通路52を経てドレン出口51へドレンとして排出する。なお、オイルポンプのレイアウトの関係上、図4に示すように、ドレン連通路52の中心線P4は吸込通路24の中心線P1及び吐出通路28の中心線P2に対して傾斜しつつ細径で形成されている。図3に示すように、オイル供給用のサクション穴6が基部1のハウジング13において吸込通路24及びバイパス通路29に連通するように形成されている。サクション穴6は第1穴61と第2穴62とを同軸的に有する。第2穴62の先端の円錐面62mは、吸込通路24のうち作動室11側の底24x側に到達している。
なお、図3に示すようにサクション穴6の中心線P5は、吸込通路24の中心線P1(バイパス通路29の中心線)に対してΔXずれて形成されている。図1に示すように、サクション穴6には、吸込筒65をもつ吸込部64がシール部64s及び係止部64wを介して取り付けられている。オイルポンプの運転時にはクランクシャフトによりロータ3がベーン31と共に回転される。オイルは、吸込筒65→吸込部64の孔64m→吸込通路24→吸込連通路26→吸込ポート27→ベーン31で区画された室33→吐出ポート19→吐出室12→吐出通路28→油路100a→油圧機器100へ流れる。
図5は吐出通路28に配置されている流量制御弁7の概念図を模式的に示す。流量制御弁7は吐出通路28におけるオイルの流量を調整するためのものであり、吐出通路28に往復移動可能に嵌合されたスプール70と、バイパス通路29の入口開口29pを塞ぐ方向にスプール70を付勢する付勢手段としての付勢バネ71とをもつ。スプール70は先端面70a及び後端面70bをもつ。吐出ポート19、吐出室12の高圧のオイルは、ハウジング13に形成された供給通路28xを経て吐出通路28に供給され、更に吐出通路28から油路100aを経て油圧機器100に供給される。吐出通路28のオイルが適量よりも過剰となったとき、吐出通路28のオイルの圧力により付勢バネ71が弾性収縮する方向(矢印K3方向)にスプール70が移動し、バイパス通路29の入口開口29pの開放量を増加させ、高圧側の吐出通路28の過剰のオイルをバイパス通路29を経て低圧側の吸込通路24に矢印K1方向に帰還させる。これにより吐出通路28から油路100aを経て油圧機器100に供給されるオイルの流量の適切化を図り得る。
高圧側の吐出通路28の過剰のオイルをバイパス通路29を経て低圧側の吸込通路24に矢印K1方向に帰還させるとき、オイルの帰還流は一般的にはかなりの高速で帰還する。このためオイルポンプの使用期間が長期化すれば、吸込通路24の内壁面24rのうち、オイルの帰還流が直撃する部位に、キャビテーションにより浸食部分が生じるおそれがある。殊にオイルポンプが高圧高容量化されている場合には、吐出通路28の圧力が高く、オイルの流量が多いため、オイルの帰還流はかなりの高速で帰還することになり、吸込通路24の内壁面24rのうち、オイルの帰還流が直撃する部位に浸食部分が生じるおそれがある。なお吸込通路24を有するハウジング13はアルミニウムまたはアルミニウム合金を基材として形成されており、軽量化が図られている。
この点本実施例によれば、図1,図2,図5,図6に示すように、耐浸食性を有する耐浸食部9がハウジング13の別体として、後付けによりハウジング13に取り付けられている。この結果、耐浸食部9は、吸込通路24の内壁面24rにおいてオイルの帰還流に対面する位置に取り付けられている。耐浸食部9は、キャビテーションに起因する浸食性を抑制するのに有利な耐浸食性が良好な材料で形成されている。つまり、アルミニウム系合金よりも高い平均硬度を有しており耐浸食性が良好な鉄系材料である合金鋼を基材として形成されている。この合金鋼はオーステナイト系のステンレス鋼であり、13〜20%程度のクロム、5〜11%程度のニッケルを含む。
更に、図7に示すように、耐浸食部9の表面の全域には窒化層300が形成されている。窒化層300は、550℃以下の温度で塩浴窒化処理により形成されている。具体的には、窒化処理前の耐浸食部9の表面を研磨し、その後、ナトリウムとカリウムのシアン酸塩系の塩浴に耐浸食部9を浸漬し、480℃で120分間窒化処理を行い、窒化層300を耐浸食部9の表面に形成した。このため、キャビテーションに起因する浸食性を抑制することができる。この窒化処理は処理温度が低温であるため、窒化処理時における耐浸食部9の歪みが抑えられている。このため窒化処理した耐浸食部9が変形してハウジング13に取り付けられなくなる不具合を回避できる。更に本実施例によれば、窒化層300の表面粗さはRaで0.5μm以下、殊に0.4μm以下に設定されており、平滑性がかなり高い。このため窒化層300が部分的に剥離することを抑えることができる。従って、剥離した窒化層300がオイル流路において影響を与えることを抑えることができる。更に窒化層300の厚みが厚いと、窒化処理時間が長くなり、耐浸食部9の歪みが増加する傾向がある。また、耐浸食部9の基材の組織やマトリックスにおける合金濃度が変化するおそれがある。この点本実施例によれば、窒化層300を含む耐浸食部9の厚みは0.3〜2.0ミリメートル、殊に0.5ミリメートルに設定されている。窒化層300の厚みとしては5〜50μmとされているため、耐浸食部9の歪みを低減でき、耐浸食部9の組織やマトリックスにおける合金濃度の変動を抑えることができる。
更に、耐浸食部9は、吸込通路24の中心線P1と直交する断面において、中心線P1の回りを1周しないように非連続形状をなしている。つまり、図6に示すように、吸込通路24の中心線P1と直交する断面において、耐浸食部9はV形状またはU字形状をなしている。即ち、耐浸食部9は、吸込通路24の内壁面24rと対応する形状または実質的に対応する形状をなしており、空間間隔93を形成するように所定距離隔てて互いに対向する一対の辺部90と、辺部90を連結する連結部92とをもつ。辺部90は、互いに対向する対向面90aと、互いに背向すると共に吸込通路24の内壁面24rに対向する背向面90cとをもつ。連結部92は、吸込通路24の通路部分に対向する対向面92aと、吸込通路24の内壁面24rに対向する背向面92cとをもつ。
吸込通路24に取り付ける前の耐浸食部9の辺部90は、これの拡開方向(図6に示す矢印H1方向)に付勢するバネ力を有する。そして耐浸食部9の組付時に、耐浸食部9の辺部90を互いに接近する方向(図6に示す矢印H2方向)に変位させて辺部90間の空間間隔を狭めつつ、耐浸食部9を吸込通路24に挿通し、耐浸食部9の辺部90を拡開させる。これにより耐浸食部9の辺部90が発揮するバネ力により、耐浸食部9の辺部90は吸込通路24に圧接して耐浸食部9に装着される。前述したように窒化層300を形成する際の窒化温度は低くく、耐浸食部9の厚みに占める窒化層300の厚みも薄いため、窒化処理の際に耐浸食部9のバネ力を低下させることを抑えることができ、耐浸食部9の取付性が損なわれることが抑制される。
図1に示すように、耐浸食部9の長さ方向の一端9eは、吸込通路24の長さ方向の一端側に位置しており、バイパス通路29に接近している。また耐浸食部9の長さ方向の他端9fは、吸込通路24の長さ方向の他端側に位置しており、第2サイドプレート18の側に接近している。上記したように吸込通路24の断面が真円形状ではなく、短径24a及び長径24bを有する長円形状または楕円形状に形成されている本実施例によれば、吸込通路24の内壁面24rに圧着した耐浸食部9が、吸込通路24の中心線P1と直交する方向の断面において、吸込通路24の周方向へ空転してずれ変位することが抑止され、耐浸食部9のホールド性が向上する。故に、オイルポンプが高圧高容量化されている場合であっても、耐浸食部9の位置ずれが抑えられ、吸込通路24の内壁面24rを長期にわたり浸食から保護できる。
また本実施例によれば、図5から理解できるように吸込通路24の長径24bが吐出通路28の中心線P2に沿って設定されているため、吸込通路24が断面真円形状である場合に比較して、バイパス通路29の入口開口29pから耐浸食部9の直撃部位までの距離L1(図5参照)を増加させることができ、オイル帰還流の直撃の緩和に有効であり、ひいては耐浸食部9の一層の長寿命化を図り得る。
(試験例)
窒化処理について試験を行ない、以下のように特性を評価した。この場合、合金鋼で形成した試験片を用いい。試験例1では、570℃で60分間、塩浴(主要成分:シアン酸塩系)に浸漬させて窒化処理を行った後に、試験片を油冷した。試験例2では、480℃で120分間、塩浴(主要成分:シアン酸塩系)に浸漬させて窒化処理を行った後に、試験片を油冷した。
窒化処理について試験を行ない、以下のように特性を評価した。この場合、合金鋼で形成した試験片を用いい。試験例1では、570℃で60分間、塩浴(主要成分:シアン酸塩系)に浸漬させて窒化処理を行った後に、試験片を油冷した。試験例2では、480℃で120分間、塩浴(主要成分:シアン酸塩系)に浸漬させて窒化処理を行った後に、試験片を油冷した。
・顕微鏡観察による評価
窒化処理した試験片の窒化層300の表面及び破断面を電子顕微鏡(SEM)により評価した。合金鋼がSPCC材のとき、試験例1では、窒化層300の構造は緻密であり、窒化層300の厚みは7〜10μmであった。試験例2では、試験例1の場合よりも更に緻密であり且つ薄く、窒化層300の厚みは5〜7μmであった。試験例1及び試験例2の双方ともに表面の凹凸が小さかったが、試験例1よりも試験例2の方が表面の凹凸が特に小さかった。合金鋼がSUS304材のとき、試験例1では、窒化層300の構造は緻密であった。試験例2では、試験例1の場合よりも更に緻密であった。表面の凹凸についても、前述と同様に試験例1及び試験例2の双方ともに表面の凹凸が小さかったが、試験例1よりも試験例2の方が表面の凹凸が特に小さかった。合金鋼がSKD61材のとき、試験例1では、窒化層300の構造は緻密であった。試験例2では、試験例1の場合よりも更に緻密であった。表面の凹凸の状況は前述同様であった。
窒化処理した試験片の窒化層300の表面及び破断面を電子顕微鏡(SEM)により評価した。合金鋼がSPCC材のとき、試験例1では、窒化層300の構造は緻密であり、窒化層300の厚みは7〜10μmであった。試験例2では、試験例1の場合よりも更に緻密であり且つ薄く、窒化層300の厚みは5〜7μmであった。試験例1及び試験例2の双方ともに表面の凹凸が小さかったが、試験例1よりも試験例2の方が表面の凹凸が特に小さかった。合金鋼がSUS304材のとき、試験例1では、窒化層300の構造は緻密であった。試験例2では、試験例1の場合よりも更に緻密であった。表面の凹凸についても、前述と同様に試験例1及び試験例2の双方ともに表面の凹凸が小さかったが、試験例1よりも試験例2の方が表面の凹凸が特に小さかった。合金鋼がSKD61材のとき、試験例1では、窒化層300の構造は緻密であった。試験例2では、試験例1の場合よりも更に緻密であった。表面の凹凸の状況は前述同様であった。
・表面粗さの評価
窒化処理した試験片の窒化層300の表面粗さ(Ra)を表面粗さ計により評価した。合金鋼がSCM435のとき、窒化処理前は0.025μmであり、試験例1は0.16〜0.18μm程度(0.2μm以下)であり、試験例2は0.06〜0.07μm程度(0.1μm以下)であった。また合金鋼がSKD61のとき、窒化処理前は0.025μmであり、試験例1は0.23〜0.24μm程度(0.3μm以下)であり、試験例2は0.06〜0.07μm程度(0.1μm以下)であった。
窒化処理した試験片の窒化層300の表面粗さ(Ra)を表面粗さ計により評価した。合金鋼がSCM435のとき、窒化処理前は0.025μmであり、試験例1は0.16〜0.18μm程度(0.2μm以下)であり、試験例2は0.06〜0.07μm程度(0.1μm以下)であった。また合金鋼がSKD61のとき、窒化処理前は0.025μmであり、試験例1は0.23〜0.24μm程度(0.3μm以下)であり、試験例2は0.06〜0.07μm程度(0.1μm以下)であった。
・窒化層300の硬度の評価
窒化処理した試験片の窒化層300の硬度を硬度計(荷重300グラム)により評価した。合金鋼がSUS420のとき、試験例1では表面硬度は1200〜1300Hvであり、内部硬度(最表面から60μmより深い領域)は400Hv程度であった。試験例2では表面硬度は1200〜1300Hvであり、内部硬度(最表面から100μm)は560〜580Hv程度であった。試験例2の内部硬度が試験例1の内部硬度よりも高いのは、処理温度が低いためであると推察される。
窒化処理した試験片の窒化層300の硬度を硬度計(荷重300グラム)により評価した。合金鋼がSUS420のとき、試験例1では表面硬度は1200〜1300Hvであり、内部硬度(最表面から60μmより深い領域)は400Hv程度であった。試験例2では表面硬度は1200〜1300Hvであり、内部硬度(最表面から100μm)は560〜580Hv程度であった。試験例2の内部硬度が試験例1の内部硬度よりも高いのは、処理温度が低いためであると推察される。
・塩水噴霧による評価
窒化処理した試験片の窒化層300の表面に塩水を噴霧し、JIS Z2371 02に基づいて塩水噴霧試験を行い、10時間、100時間、200時間それぞれ経過した後における試験片の表面状態を評価した。試験例1の評価は良好であり、試験例2の評価は特に優れていた。このように耐食性が良好であるため、耐浸食部9をハウジングに取り付ける前における輸送時、保管時において、表面状態を良好に維持できる。
窒化処理した試験片の窒化層300の表面に塩水を噴霧し、JIS Z2371 02に基づいて塩水噴霧試験を行い、10時間、100時間、200時間それぞれ経過した後における試験片の表面状態を評価した。試験例1の評価は良好であり、試験例2の評価は特に優れていた。このように耐食性が良好であるため、耐浸食部9をハウジングに取り付ける前における輸送時、保管時において、表面状態を良好に維持できる。
図8に示す実施例2は、実施例1と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位に共通の符号を付する。本実施例によれば、ハウジング13をアルミニウム合金により鋳造するとき、耐浸食部9Dはハウジング13に一体的に鋳ぐるまれて一体的に結合されている。この場合、耐浸食部9Dの辺部90の対向面90a、連結部92の対向面92aは、吸込通路24の内壁面24rと面一状態または実質的に面一状態となる。この場合、吸込通路24の流路横断面積の確保、円滑な流れの確保に有利である。
実施例3は図1〜図7を準用する。本実施例によれば、耐浸食部9のうち連結部92の対向面92a(オイルの帰還流に対面する表面)には窒化層300が形成されている。しかしオイルの帰還流に直接対面しない表面である背向面90c(吸込通路24の内壁面24rに対向する)には、窒化層300は形成されていない。この場合、塩浴で溶解しないマスキング材で背向面90cをマスキングした状態で、耐浸食部9は塩浴窒化処理されている。この場合、耐浸食部9の硬化を抑制できるため、耐浸食部9のバネ力を良好に維持するのに有利である。
図9は比較例を示す。図10はこの比較例を改良した実施例3を示す。説明の便宜上、図9に示す比較例から説明する。この流量制御弁7は、実施例1と同様に、吐出通路28の圧力に応答して吐出通路28内を移動するスプール70をもつ。スプール70は、これの中心線P7の回りに設けられたリング状のランド部70r,70s,70tと、リング溝70uとを有する。そして、吐出通路28のうちパイパス通路29に背向する背向部位に、孔状のバランス用凹部110が吐出通路28に連通するように基部1に設けられている。スプール70のリング溝70uを介して、バランス用凹部110とバイパス通路29とは連通している。
オイルポンプの作動時には、ポンプ作用により吐出通路28は相対的に高圧となり、吸込通路24は吸込み側であるため相対的に低圧となる。このためスプール70が退避方向(矢印K3方向)に退避すると、バイパス通路29の入口開口29pが開放し、吐出通路28の過剰のオイルをバイパス通路29を経て吸込通路24に帰還させる。このとき高圧側の吐出通路28と低圧側の吸込通路24との差圧により、スプール70の中心線P7が吸込通路24に向かうようにスプール70が矢印X4方向(図9参照)に変位するおそれがある。そこで、図9に示すように、吐出通路28のうちバイパス通路29に背向する背向部位に孔状のバランス用凹部110を設ければ、高圧側の吐出通路28の過剰のオイルをバイパス通路29を経て低圧側の吸込通路24に帰還させるときにおいて、吐出通路28のオイルが矢印K1方向に流れる他に、矢印K5方向にバランス用凹部11に流れ、更にそのオイルがスプール70のリング溝70uを介してバイパス通路29に帰還するため、スプール70の均衡性が向上するため、スプール70の上記変位が抑制され、ひいてはスプール70の円滑動作性が向上する。
しかしながら、上記した比較例によれば、スプール70の作動により、バイパス通路29の入口開口29pを開放させて吐出通路28の過剰のオイルを矢印K5方向にバランス用凹部110に流すとき、作動条件によっては、オイルの帰還流の一部がバランス用凹部110の内壁面110rに直撃することがあるため、オイルポンプの使用が過度に長期にわたったり、オイルポンプの使用条件が過酷であったりすると、バランス用凹部110の内壁面110rに浸食112が生じるおそれがある。キャビテーションによる浸食であると推察される。殊にオイルポンプが高圧高容量化されている場合には、吐出通路28の圧力が高く、オイルの帰還流はかなりの高速で帰還するため、浸食部分が生じるおそれがある。
そこで本実施例によれば、図10に示すように、バランス用凹部110の底面に取付孔120を形成し、取付孔120のうちオイルの帰還流(矢印K5方向)に対面する位置に、耐浸食性を有する第2耐浸食部200が設けられている。第2耐浸食部200はコップ状をなしており、リング形状の側壁部210と、側壁部210に連設された底壁部220とを有する。底壁部220は、底壁部220の中央域に丸みをもつことが好ましい。第2耐浸食部200はバランス用凹部110の取付孔120に打ち込むことにより装備されている。第2耐浸食部200は、キャビテーションに起因する浸食性を抑制するのに有利な耐浸食性が良好な材料で形成されており、つまり、アルミニウム系よりも高い平均硬度を有しており耐浸食性が良好な材料、つまり、合金鋼を基材として形成されている。この合金鋼はオーステナイト系のステンレス鋼であり、質量%で15〜20%程度のクロム、5〜12%程度のニッケルを含む。
更に、第2耐浸食部200の表面には窒化層300が形成されている。第2耐浸食部200の窒化層300は耐浸食部9の窒化層300と基本的には同様な条件で形成されており、同様な表面粗さとされている。故に、第2耐浸食部200は、キャビテーションに起因する浸食性を抑制するのに有利とされている。従って、スプール70の作動により、バイパス通路29の入口開口29pを開放させて吐出通路28の過剰のオイルをバイパス通路29を経て吸込通路24に帰還させるとき、オイルの帰還流の一部が矢印K5方向にバランス用凹部110に向けて直撃的に流れるときであっても、バランス用凹部110におけるキャビテーションに起因する浸食を抑制することができ、オイルポンプの一層の長寿命化を図ることができる。更にバランス用凹部110の底面に取付孔120を形成し、取付孔120に第2耐浸食部200が設けられているため、オイルの直撃流(矢印K5方向)から第2耐浸食部200をできるだけ遠ざけることができ、この意味においても第2耐浸食部200の保護性を更に向上させ得る。
本実施例においても、図10に示すように、実施例1と同様の耐浸食性を有する耐浸食部9が、バイパス通路29の内壁面29rにおいてオイルの帰還流(矢印K1方向)に対面する位置に装着されており、バイパス通路29の内壁面29rにおける浸食が抑制されている。
なお、図示はしないものの、コップ状をなす第2耐浸食部200の底壁部220に貫通孔状の空気抜き通路を形成しても良い。第2耐浸食部200をバランス用凹部110の取付孔120に打ち込むとき、第2耐浸食部200とバランス用凹部110の取付孔120との間に空気が残留する可能性がある。空気が膨張すると、第2耐浸食部200の取付強度に影響を与えることがある。第2耐浸食部200に空気抜き通路を形成すれば、第2耐浸食部200を取り付けるとき、第2耐浸食部200とバランス用凹部110の取付孔120との間における空気が残留するおそれを解消することができ、第2耐浸食部200の取付性が更に高められる。更に第2耐浸食部200を窒化処理するとき、空気抜き通路の内壁面にも窒化層300が生成されるため、空気抜き通路の内壁面における浸食も抑えられる。
(その他)
上記した実施例によれば、ベーン式のオイルポンプに適用されているが、これに限らず、場合によってはギヤ式のポンプでも良い。パワーステアリング装置用のオイルポンプに限らず、他の用途のオイルポンプでも良い。上記した実施例によれば、耐浸食部9,9B,9C,9D、第2耐浸食部200,200Bは、打ち込み、鋳ぐるみ、溶接等により基部1に固定することができる。その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更して実施できるものである。
上記した実施例によれば、ベーン式のオイルポンプに適用されているが、これに限らず、場合によってはギヤ式のポンプでも良い。パワーステアリング装置用のオイルポンプに限らず、他の用途のオイルポンプでも良い。上記した実施例によれば、耐浸食部9,9B,9C,9D、第2耐浸食部200,200Bは、打ち込み、鋳ぐるみ、溶接等により基部1に固定することができる。その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、必要に応じて適宜変更して実施できるものである。
以上のように、本発明は車両等に搭載されるオイルポンプ、例えば、車両のパワーステアリング装置等の油圧機器に使用されるオイルポンプに用いるのに適している。
1は基部、11は作動室、110はバランス用凹部、13はハウジング、19は吐出ポート、24は吸込通路、27は吸込ポート、28は吐出通路、29はバイパス通路、3はロータ、7は流量制御弁、9は耐浸食部、300は窒化層を示す。
Claims (10)
- 作動室と、吸込ポートと、吐出ポートと、前記吸込ポートにオイルを供給する吸込通路と、前記吐出ポートからオイルが吐出される吐出通路と、吐出通路と吸込通路とを連通するバイパス通路とをもつ基部と、
前記作動室に回転可能に設けられ、回転に伴い前記吸込通路のオイルを前記吸込ポートから吸い込んで前記吐出ポートを経て前記吐出通路に供給するポンプ作用を行うロータと、
前記基部に設けられ、前記吐出通路のオイルの流量が過剰のとき過剰のオイルを帰還流として前記バイパス通路を経て前記吸込通路に帰還させる制御弁とを具備するオイルポンプにおいて、
前記基部は、オイルの帰還流の少なくとも一部に対面する位置に設けられ鉄系材料を基材とする耐浸食部を備えており、
前記耐浸食部は、オイルの帰還流の少なくとも一部に対面する位置に窒化層を有することを特徴とするオイルポンプ。 - 請求項1において、前記耐浸食部は、前記吸込通路及び前記バイパス通路のうち少なくとも一方において、オイルの帰還流に対面する位置に設けられていることを特徴とするオイルポンプ。
- 請求項1または2において、前記制御弁は、前記吐出通路の圧力に応答して前記吐出通路内を移動するスプールを備えており、
前記基部は、オイル帰還流の一部が流れて前記スプールのバランスを高めるバランス用凹部を備えており、
前記耐浸食部は、前記バランス用凹部においてオイルの帰還流の少なくとも一部に対面する位置に設けられていることを特徴とするオイルポンプ。 - 請求項1〜請求項3のうちのいずれか一項において、前記窒化層は550℃以下の温度で窒化処理されて形成されていることを特徴とするオイルポンプ。
- 請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項において、前記窒化層は塩浴窒化処理により形成されていることを特徴とするオイルポンプ。
- 請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項において、前記窒化層の表面粗さはRaで10μm以下に設定されていることを特徴とするオイルポンプ。
- 請求項1〜請求項6のうちのいずれか一項において、前記窒化層の厚みは1〜100μmに設定されていることを特徴とするオイルポンプ。
- 請求項1〜7のうちのいずれか一項において、前記耐浸食部を構成する鉄系材料は、前記鉄系材料を質量%で100%としたとき、クロム、ニッケル、モリブデンの1種または2種以上を0.1%以上含むことを特徴とするオイルポンプ。
- 請求項1〜8のうちのいずれか一項において、前記耐浸食部は基部と別体をなしており、前記基部に後付けで取り付けられていることを特徴とするオイルポンプ。
- 請求項1〜9のうちのいずれか一項において、前記耐浸食部は、前記吸込通路及び前記バイパス通路のうち少なくとも一方において、オイルの帰還流に対面する位置に設けられており、
前記一方の通路の中心線と直交する断面において、前記耐浸食部はこれの拡開方向に付勢するバネ力を有しており、前記バネ力により前記耐浸食部は少なくとも前記一方に装着されていることを特徴とするオイルポンプ。
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