JP2006266070A - 高潮水害浮上建築物とその建造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 地中に埋設され上面が開口し側壁および底面を備えた容器構造プール型基礎を備え、その基礎底面上に台船型浮体を乗せ置き、台船形浮体と一体で浮体底部から鉛直下方に伸びるアンカーポールを備え、基礎底面に基礎と一体に係止部材を備えてアンカーポールと係止部材が結合し一体となるように構成する。基礎内部に連通する高潮の流入口を備え、高潮浸水が流入口から浸水し浸水状態となった時浮体は鉛直上方に浮上するが、アンカーポールが係止部材との結合固定により、浮体の流水による流動を阻止するように構成した。
【選択図】 図18
Description
在来海岸地域に津波被害に対する避難設備は無く、小山や高層建築物の上階部に避難する以外に方法は無かった。
津波被害に対して現在関係諸国政府や自治体は、大地震の発生予報と津波が発生した場合如何に速やかにそれを検知する検知手段の開発と、多くの国民に伝達する伝達方法等ソフト面の構築に傾注している。
如何に早く小山や高層建築物に逃避することが、被害を少なく食い止める方法ではある。
しかし小山や高層建築物が無い平野部の多い田園地帯や、又あっても時間距離が離れて速やかな避難の困難な臨海地帯は極めて多い。
津波発生の情報伝達通信手段の構築と共に、津波に遭遇した場合の避難する手段としての装置や設備等ハード面の開発完備も極めて重要な課題である。
また年間数度も来襲する台風高潮や集中豪雨による河川氾濫被害も、低地に居住する人達は高潮浸水や氾濫冠水により例年莫大な人的物的損害を蒙っている。
また本発明の津波に対する建築物の使用頻度は極めてゼロに近く、津波避難建築物として使用することは極めて稀であるので、避難用以外に多目的に使用出来る高潮水害浮上建築物を提供することを課題とする。
また更に津波はおろかたびたび襲来する頻度の高い台風高潮水害や河川氾濫冠水にも、浸水冠水の危険が全くない一般建築物や居住用住宅を提供することを課題とする。
また更に本発明は、上記高潮水害浮上建築物の合理的な低コスト建造方法を開示提案することを課題とする。
1,地中に埋設され上面が開口し側壁および底面を備えた容器構造プール型基礎を備える。
2,前記プール型基礎底面上に台船型浮体を乗せ置く。
3,前記プール型基礎内部に連通する高潮浸水の流入口を開口する。
4,前記台船型浮体と一体で、浮体より見て鉛直下方に伸縮するアンカーポールを備える。
5,前記プール型基礎底面に基礎と一体に係止部材を備え、前記アンカーポールと係止部材が結合し一体となるように構成する。
6,浸水状態となった時浮体は鉛直上方に浮上するが、前記アンカーポールが前記係止部材との結合固定により、浮体の流水による流動を阻止するように構成した。
上記高潮水害浮上建築物のプール形基礎内部に水を供給し、浮体を浮上させて水中作業にて浮体下方に架台を仮設置し、次に内部の水を排水することにより前記架台上に浮体を仮設置して浮体底部の表面加工し、再び給水して浮体を浮上させ架台を搬出して再度水を排水することにより浮体を整備する高潮水害浮上建築物の建造方法。
津波や台風及び河川氾濫等の水難に対し人身人命及び動産を守る避難用浮体の装備であって、水難情報により上記浮体上に避難者が乗船して避難する様に構成する。
また台風高潮や河川氾濫等で冠水する頻度の高い水難に対応し、浸水することがない安全な一般建築物や居住用住宅空間を提供する高潮水害浮上建築物を提供する。
その浮体には浮体の底部から突出するアンカーポールを設け、基礎にはそのアンカーポールが基礎と一体に固定される係止部材が設けられている。
津波や台風高潮又は集中豪雨による河川堤防氾濫等の高水位が発生し、水位が浮体の喫水線以上になれば浮体は基礎上面から離脱して浮上する方向に水面から浮力を受ける。
水面の上昇と共に浮体は浮上するが、浮体から下方に突出したアンカーポールと基礎と一体の係止部材の固定により浮体は浸水流水に流されることはない。
高潮の高さがアンカーポールの長さ以内であれば、浮体は流されることなく水位と共に上下動するのみで、水位が下がればまた元の位置に浮体は安置される。
水位が更に上昇し浮体が浮上しアンカーポールと浮体係止部材の固定が外れると、アンカーポールと係止部材で構成されるアンカー装置がアンカー作用しなくなり、浮体は潮流や氾濫水に流される状態となる。
また次に本発明の高潮水害浮上建築物は陸上建築物であり、造船所の様な大型設備を使えない市街地での現地工事で大型の浮体を建造しなければならない宿命がある。
そのため簡単に移動可能な小型設備で、巨大な浮体や建築物を建造する為に特別な施工手段や方法の開発が必要であった。
本発明は移動可能な組み立て式移動クレーンの台車をプール側壁上面をレールとして利用し、効率的に板材等をプール内必要場所に運び浮体を組み立て加工する建造方法を開発した。
津波情報を受けて速やかに100人以上の多数の人たちが、十数メートルもの階段を上ることは、非常に困難を伴うものであり相当な時間を要する。
本発明の高潮水害浮上建築物は浮体が浮上するための条件即ちアルキメデスの定理により、水面上に浮上した船体は船体底部の喫水線以下の容積の水の重さに等しい浮力を受ける。
(陸上に建設する建築物であるが浸水時は水上に浮かぶ船舶となり、説明が理解しやすいように以下甲板等の船舶用語も使用する。)
従って浮体上に避難する場合浮体の高さが極めて低く、浮体の前後側面にも昇降通路が配置可能で、階段昇降する場合に多数の人が並列して同時に乗り込むことが可能である。
更に本発明は基礎を側壁と底面を備える容器構造とし、容器形状基礎の大部分を地面より下に埋設しその底面の高さを地面より下に下げたので、その底面の上へ浮体を載せ置く構造であり、浮体の甲板の高さが地面GLと同一及び自由に設定出来るので階段などで高所へ登る必要がない。
従って前述のタワー型避難台に比べて短時間の内に多数の人員の避難が可能である。
即ち本台船浮体を設置して一定面積の土地を占用しても、台船型浮体は地面より下に入り台船浮体の入る容器型基礎の平面積だけ専用することになる。
また甲板上から浮体船体内部船穀内への通路を設け、地下室として甲板下の容積を有効利用することも出来る。
その台船型浮体の上へ殆どの建築物例えば、集会場・ホテル・レストラン・幼稚園・学校・居住用住宅等まで建築装備可能で安全極まりない一般家庭用住居も提供出来る。
水位が上昇することにより、浮体は浸水からの浮力を受けて浮上するがアンカー装置のアンカー作用により流されること無く鉛直上方に上昇する。
津波等の高潮水害では海から陸上部へ流れ込んだ水は、次に急激な引き潮となって陸上部から海へ流下する。この場合も浮体は上記アンカー装置によって水平方向への移動が阻止されて、水面の降下と共に浮体自体が鉛直下方へ降下して洋上に流されることなく元の位置に元の状態で復帰され甲板上の人身が守られる。
しかしこの場合も陸上の大型構築物等に衝突破損しない限り浮体は沈没することはなく、高潮水位が下がればその位置で地面に降下しその限り乗船している人身人命は守られる。
本発明は上記発明の改良に関するもので、より具体的実用的にメインテナンスを考慮して創作したものである。
本発明者は上記先願である特願2005−72728「浸水しない建築物とその建造方法」(以下特定先願と言う。)の発明について問題点を発見し、改善改良を加えその製作方法に適した構成に改良して本発明高潮水害浮上建築物とその建造方法を提供するものであり、特定先願を国内優先にて本発明を出願するものである。
図1は特定先願発明浸水しない建築物(10)の構成と、浸水時の作動原理を説明するための鳥瞰図である。
鉄筋コンクリートにてなる基礎(4)は大部分が地中に埋設され、底面(18)及び四方に側壁部(15)を備える容器構造プール型で側壁部上面が地面(9)より若干高く形成されている。
基礎底面(18)上に三条の直方体台座(5)が形成され、台座の四隅部にアンカーポール(2)が挿入されるポール穴(3)が穿孔されている。
底板と四側面と上面が鋼板等の板材にてなる中空の浮体(1)は、内部に荷重台(11)が内装され四隅部にアンカーポール(2)が一体的に枢着されている。
荷重台は浮体上に建造される建家の柱位置に対応して配置され、建家の重量を支え基礎
台座上に加重を受ける支承体である。
アンカーポール(2)はテレスコープ型で鉛直下方に伸縮し、図では伸長して下端部がポール穴(3)に挿入されている。
図1は浸水時の状況を示し、水面線(14)まで水位が上昇し浮体(1)が浮上すると共にアンカーポール(2)は下方に伸長してその先端部のみがポール穴(3)上端部に当接している。
津波や台風高潮及び河川氾濫等の浸水により、浮体(1)が浮上すると共にその流速により浮体(1)は水平方向に押し流される大きな力が作用するが浮体(1)は流されることはない。
浮体(1)と一体のアンカーポール(2)は浮体(1)と共に流水方向に流される大きな力を受けるが、アンカーポール(2)とポール穴(3)が当接しポール穴(3)にその力が作用して基礎(4)に作用するが、地球地面と一体の基礎(4)は不動であり浮体(1)は流されることはない。
浸水水位が異常に高くアンカーポール(2)下端部がポール穴(3)から抜け出ると、浮体(1)はアンカーポール(2)を吊り下げた状態で流れに翻弄される。
浮体(1)は平板状の形状で水面上では極めて安定した構造であるが、アンカーポール(2)を吊り下げると重心が下方に移動し更に安定性が良くなる。
従って構築物に衝突して台船型浮体が破損浸水しない限り沈没することはなく、浮体上の建築物や人身は守られる。
水位が下がり障害物の無い平らな地形であれば、浮体(1)はそのままの状態でアンカーポール(2)が縮小しその位置に安置される。
図2は特定先願の側断面図であり、大部分が地中に埋設され鉄筋コンクリートにてなるプール形基礎(7)は、四方側壁部(15)および底面(18)を備える容器型プール形状に形成されている。
基礎底面を下方に下げた理由は、浮体上面即ち甲板の地面からの高さをプールの深さを加減することにより自由に決定できるからである。
台座と台座の間空間部はメンテ通路(6)でジャッキリフトが描かれており、メンテ通路は高潮浸水が進行する導水路を兼ねている。
上記の様に基礎底面(18)上に台座を形成し、メンテ通路を設けた第一の理由は浮体の建造方法のためである。
先ず基礎工事を完了させ浮体材料の鋼板を台座上に並べて浮体底板(17)を上方から溶接加工する。 次に浮体四方側面部を構成する鋼板を浮体内側から溶接加工し最後に浮体上面を仕上げる。
浮体は建家の耐用年数数十年ないし百年の耐用年数が必要で、そのため錆びやすい鉄材の表面処理が重要でまた何時でもメンテナンス加工可能に構成したものである。
即ち台座を設けた第一の理由はメンテ通路を設けてジャッキリフトを導入する空間を形成するためである。
基礎底面(18)上に台座を形成した第二の理由は、高潮浸水時速やかに浮体を浮上させるためである。この場合は台座の高さはジャッキリフトを導入する程の寸法は必要でないが、導水路として機能させるためである。
即ち浮体底板の鋼板が錆びて基礎底面のコンクリートが劣化粉末化し鉄とコンクリートが一体となり、速やかに浸水が浸透せず水位のみが上昇する可能性がある。この場合浮体底面に水がなければ浮体に浮力は発生しないので、浮上せず水位のみが上昇してついに浮体上部の建家まで浸水するものである。
そのためメンテ通路が導水路となり浮体底部に容易に速やかに浸水が流入し、浮体が瞬間的に浮上することが重要であると判断したためである、
図2に示すように台座の高さBを確保するために、プール型基礎の深さAが想像以上に深くなる点である。
浮体と浮体上建家を重量計算し浮体平面積で除し、浮体の喫水深さを求めると建家平面積より若干広い浮体とした点もあるが、喫水深さが極めて浅いのである。
即ち建家は木造および鉄筋構造2階建てについて、浮体上に建造した場合わずかに数十センチしか沈まないのである。
従って浮体の深さは浮体内で作業出来る最低高さ1.2ないし1.5メートルとしたが、メンテ通路の高さが最低0.5ないし1.2メートルは必要で、プールの必要深さAが、想像以上に深くなり基礎工事の堀かたおよび側壁部(15)のコンクリート量が多くなるのである。
1,津波高潮は水平方向の流速は自動車の走行以上に相当早く、時速数十キロメートル以上であるが浸水深さ即ち水深の上昇速度は想像以上に遅い点である。
津波は洋上で盛り上がった海水塊が重力により水平方向に下り勾配を走行するので、走行速度は極めて速いが広範囲に拡散するため陸上部定地点での水深の増加速度は遅いのである。
水深の増加速度は1メートル上昇に、極めて速くても1分以上はかかる程度であることが判明した。
洪水も上記とあまり変わらず、台風高潮の場合は更に上昇速度は遙かに遅いことが確認された。
また平面的には(b)に示すように側壁部(15)と浮体外側の間隙を通過し、浮体底部四方側面から白大矢印のごとく浸透する。
浮体底面と基礎底面の間は完全な密着状態ではなく、浮体底板は制作上多少の歪みがあり基礎底面もコンクリート地肌があり多少の凹凸があるためその間隙に浸水は流入する。
浸水流入開始直後には圧力はないが浸水水位が上昇するほど水圧がかかり、浮体底面中央に向かって間隙に流入する。
この場合プール内の水面線(14)の上昇速度は前述の様に遅いので、浮体の寸法が数十メートルないし百メートル単位以上と大きく、浮体底板(17)とプール型基礎底面(18)の間が経年変化のため錆びやコンクリート劣化のため多少固着していても、水面線(14)が上昇し浮体が浮上したときの喫水線(30)に達するまでにかなりの時間がかかる。
従って浮体底板とプール型基礎底面の間に台座を設けて、浮体底面に導水する導水路を特別に設けなくても水面線の上昇速度が遅く浮体上の建家まで被害が及ぶことはないことが想定された。
2,浮体底面や側面の表面処理の問題であるが、浮体は上部建家と一体でありその建家の耐用年数100年以上に匹敵する耐久力を保つ必要がある。
そのため特定先願ではメンテ通路を設けてジャッキリフトにより何時でも浮体底部の表面処理を可能としたが、それでは前述の様にプールの深さが深くなり不合理である。
一度浸水されると直ちに表面処理は必要であるが、数十年に一度あるかないかまたは百年経ってもない可能性があり、そのための初期投資が多額で不合理である。
それはプール内に給水し浮体を浮かせると共に、水中作業により架台を浮体底面とプール型基礎底面の間に設置し、次にプール内の水を排水して一旦浮体を架台上に仮設置し必要ならば更にジャッキリフトにより浮体を上昇して浮体底面の点検および表面処理加工をする。
次に再びプール内に給水して浮体を浮かせ、架台を取り除いた上で排水することにより元の状態に復帰する。
上記浮体底面や側壁部の外側からの表面処理加工方法に加え、浮体製作手段の新たな発想により上記表面処理加工が不必要な方法手段をも発案し以下実施例において詳述する。
以下本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための一態様を例示するものであって、本発明は実施例のものだけに特定しない。
アンカーポール(2)は基礎底面に穿孔された係止部材であるポール穴(3)に下端部が挿入され、浮体底板と共に一体に溶接加工されている。
(b)は(a)の浮体底板部分水平断面図でクレーンによって板材を供給移動し、浮体底面上に並べて溶接加工中である。
(c)は(b)の右側から見た側断面図で、プール型基礎の側壁部(15)上面をレールとして利用しゴム車輪を使用したトロリー台車(33)と門型クレーンを建設現場で組み立てて使用し板材(19)を搬入する状況を示す。
浮体底板(17)の製作方法は(b)に示すように先ず基礎底面上に帯鉄を台板(32)として定寸の板材(19)寸法にあわせて井形形状に並べ、更に浮体四方隅部およびそれを連結する前後左右端部と更に上方から荷重のかかる部分に台板を同一平面に敷設する。
次に定寸の板材をその上に突き合わせて並べ、その突き合わせ部分に上から溶接することにより、その下の台板と共にあわせて溶接加工する。
図11において台板(32)の敷設状態を鳥瞰図にて描き、その上に板材(19)を矢印のごとく台板の上に重ね合わす状況をしめす。
図12(a)および(b)は溶接方法の説明図で、定寸板材(19)の突き合わせ部は下の台板(32)と共に上から溶接する。浮体側板(31)と浮体底板(17)との突き合わせ隅部内側を溶接部(37)として接合する。溶接加工はすべて浮体の内側から施工するので加工終了後塗装等の表面処理作業が実施できる。
また溶接された表面の肉盛り部分は浮体外側に発生しない溶接方法である。
海上で使用する浮き桟橋や作業用台船の場合は、常時海面上に浮上しており上記のように浮体内側からの溶接のみでは危険であり船舶としての法定検査には合格しない。
しかし本発明高潮水害浮上建築物は常時陸上に設置され、高潮浸水があった場合のみ短時間浸水するものであり船舶ではないので充分目的使用に耐えるものと思量する。
図5(a)は本発明高潮水害浮上建築物の完成図で浮体より下部は側断面図であり、(b)は(a)のAA断面での平面図である。
浮体内に直方体形状を保持しねじれを防止するため、クロス形に隔壁(39)が設けられており、更に建家の重量を支える荷重台(11)が形成されている。
図18(a)ないし(d)に荷重台の鳥瞰図を例示してありH型鋼・角パイプ・丸パイプ・H型鋼組み合わせで、何れも長尺鋼材をその長さ方向に圧縮するよう形成してある。
また浮体内に水タンク(41)が設置してありこの水タンクは浮体を浮かせてその傾きをテストする時給水して傾きを補正するための錘として使用する。
本図で水タンクは浮体右側に偏して左右2個設置してあるが、建家は左側が2階建てで重量が重くなっており、水タンクはバランスをとるため右側に寄せたものである。
プール形基礎内部(以下プール内と称す。)に給水して浮体を浮かせ、浮体の傾きのバランスをとるため左右2個の水タンクに適当量給水する。
高潮水害浮上建築物完成時に出来れば浮上時のテストのため、一度浮上させ上記傾きテストやアンカーポールの伸縮テストを実行するのがよい。また数年ないし数十年に一度は浮体とプール形基礎のコンクリートの状況を点検する必要がある。
図6はプール内に大型の給排水タンク(43)から給水し浮体と建家を浮上させた状態であり、浮体が浮上すると正常ならばアンカーポールは図のように浮体底部から下方に伸長する。
図は作業員がアクアラングをつけてプール内に入り浮体底面の下に荷重台に対応した位置に架台を設置したものである。
図7に示すように架台設置後排水ポンプ(45)によりプール内の水を給排水タンク(43)に排水すれば、アンカーポールにガイドされて浮体は鉛直下方に降下し架台上に浮体は設置される。
その状態で浮体底部を乾燥すると共に塗装等の表面処理作業する。
浮体側面の塗装作業が基礎側壁部との間隙が少なく出来ない場合は、油圧水圧等のジャッキリフト(8)を浮体底面下に多数台導入し、架台に隣接した位置で同期して運転し浮体を上昇させる。
上記作業が終了すれば図9にに示すように再び架台を設置し、ジャッキリフトを降下して架台上に浮体を乗せて、ジャッキリフトを搬出後再びプール内に給水して浮体を浮上させる。
図10に示すように水中作業で架台を搬出して再び排水すれば、元の図5の状態に浮体と建家は基礎底面上に正確に設置され浮体外側からの表面処理作業が完了する。
特定先願の基礎内に台座とメンテ通路を形成しジャッキリフトを導入して浮体を上昇して加工する方法を台座ジャッキリフト方式と命名する。
プール内給排水浮体加工方式は台座ジャッキリフト浮体加工方式よりも、プールの深さが台座の高さだけ浅く製作可能で、構造が簡単でありコストも安価に製作できるメリットがある。
FRPは鋼板の様に錆びることはなく経年変化の極めて少ない素材であり、当高潮水害浮上建築物の浮体として使用すれば浮体外側の表面処理も不要であり、価格は鋼板より若干高価であるが最も適した素材である。
図13は浮体コーナー部の内側からの鳥瞰図で、浮体底板(17)および浮体側板(53)とアンカーポールの鞘部材(23)が描かれている。
FRP成型は一般的にガラス繊維のロールマットと樹脂液および硬化剤とで現場にて型枠を使って成型するのが一般的であるが、この場合は生産工場内で鋼板のようにトラックに積載できる寸法の板材に成型してその板材を使用して、ガラス繊維のパッチシート(47)で貼り合わせ連結加工する。
浮体底板および側板と鞘部材はすべてFRP樹脂製で、その連結部表面をサンダーやサンドペーパー等で荒らしFRPシートに樹脂駅を含浸させたパッチシート(47)で貼り付け硬化させることにより連結する。
中鞘先端ポール等の部品材料は図のようにホイストクレーンにより吊り下げて、鞘部材(23)の中へ挿入され最後に上方から水密の蓋(50)にて密閉される。
図15は新たな構造のアンカーポールとその作用を説明するための図で、(b)は平常時アンカーポール収納状態を示し(a)は浸水時浮体が浮上している状況を示す。
(a)において高潮浸水時浮体が浮上し始めると、先ず鞘部材(23)下端部の内径が細くなっている部分と中鞘(48)上端部の外径が太くなっている部分が当接し中鞘が上昇する。
本実施例のアンカー装置は鋼鉄製の係止部材の大部分がプール形基礎底面下に埋設されており、上部鋼管部(51)が鉛直上方に伸長しアンカーポール先端ポール(49)内側に挿入されている。 従って上部鋼管部は係止部材の一部であるが、基礎底面より上方に突出している部分はアンカーポールとしての機能も果たすものである。
浮体が更に浮上し先端ポール(49)下端部と係止部材鋼管部(51)上端が外れると、アンカー作用しなくなりアンカーポールを吊り下げた状態で浮体は浸水流水に流されることとなる。
図16は他の新たな構造のアンカーポール(2)とその作用を説明するための図で、(b)および(d)は平常時状態を示し(a)および(c)は浸水時浮体が浮上している状況を示す。
係止部材(24)はプール形基礎底面に埋設固定されており、その中に鋼管素材のアンカーポールが挿入されているが、アンカーポールには浮力はなく係止部材底部に突き当たり実質的に係止部材と一体となっている。
高潮浸水が来襲し水位が上昇すると(a)(c)に示すように浮体のみが浮上し、(a)では浮体底部とアンカーポール上端部が外れると浮体は浸水潮流に翻弄される。
図5および図18において本発明高潮水害浮上建築物の作用について詳述する。
図5において右端部の開口(27)には開閉扉(21)が設けられており、平常時は閉止しているが高潮浸水情報を受けて駆動装置(22)により回動開口しておく。
高潮浸水が襲来すると浸水は開口に流入し浮体側面と基礎側壁部の間を通過し、浮体四方側面からプール形基礎底面と浮体底面の僅かな間隙を、中央部に向けて浸水は浸透し始める。
この場合浮体底面と基礎底面の間が経年変化のため錆びやコンクリートの劣化粉で水が浸透しにくい状態となっていると、浮体底面に水が回らずそのため浮体に浮力が発生せず、プール内水位が上昇して建家まで浸水が及ぶ危険はある。
しかし浸水水位の上昇速度は前述の様に急激な速度ではなく、浮体およびプール形基礎底面の整備が出来ておれば上記トラブルは発生しない。
図18は浮体の浮上が始まりある程度浸水水位が上昇した状況を示し、アンカーポール(2)の中鞘(48)が伸長した状態である。
浸水の流速により浮体は右から左方向に大きな力が作用するが、アンカーポール(2)と係止部材(24)によるアンカー装置が働いて浮体は流速に流されず鉛直上方にのみ浮上する。
水位の上下により浮体は浮上および降下を繰り返すが、アンカー装置により流されることなく高潮浸水終了と共にまた元の位置に安置される。
図19(a)はプール形基礎の側断面図であり、(b)はその平面図、(c)は(a)の正面から見た側断面図である。
プール底面は(b)および(c)の矢印に示すように中央の排水溝(77)に向かって流水勾配をつけてあり、排水溝は(a)の点線に示すように底面が右に向かって下り勾配で右端部の排水ピット(78)に水が集合されるよう流水勾配をつけてある。
プール内の水を排水する場合は図示しないが排水ピット内に排水水中ポンプを投入して排水運転する。
また上記のようにプール内に排水ピットおよび排水溝を設けたプールは、排水溝が導水路となり浸水時に浸水が浮体底部中央から浸水するので極めて短時間の内に浮体底面全体に浸透し浮体浮上が早くなる。
この浮体形状は製作時手間が掛かり浮体は完全な直方体が製作加工には望ましい。
図20ないし図21は基礎底面に流水勾配を設けると共に浮体底面を水平面とし浮体を完全な直方体とした実施例で、プール内に給水し浮体が浮上している状況を示す。
図20および図21何れも(a)はプール形基礎の側断面図であり、(b)はその平面図、(c)は(a)の正面から見た側断面図である。
図20は直方形状浮体底面(18)に鋼板製の(d)に示す台座(5)を一体的に連結したものであり、図はプール内に浮上しているが排水されると台座の底面がプール底面に添って均一な加重で置かれる。
図20および図21何れも浮体底面とプール底面の間に台座が介在し、隣接する台座と
台座の間に空隙が形成される。
従って親水流入時に速やかに浸水が浮体底部全体に浸水し浮体浮上が早くなり、またプールから排水時には速やかに排水される。
FRP製浮体の製作方法は前述したが、特に大型の浮体を効率的に組み立て製作する新たな建造方法を以下説明する。
図22はプール形基礎コーナー部の(a)は側断面図であり(b)は同上平面図である。
プール形基礎側壁部(15)内側に図のように木製の間隙ブロックを配してその内側に型枠(58)を立設する。
その型枠の内側に先ず剥離剤を塗布すると共に、FRP積層板素材であるガラス繊維のロービングクロス(以下クロスと言う。)とチョップストランドマット(以下マットと言う。)を必要強度のプライ数交互に重ね、樹脂液に硬化剤を混入して張り合わせるFRP樹脂積層加工を施工する。
浮体底面に穿孔されるアンカーポールの鞘部材が挿入される穴の加工は、図のようにポール穴(3)にあらかじめ円柱木型(82)を挿入しておき樹脂積層加工し、硬化後ハンドルを上げて円柱木型を引き抜くことにより形成される。
浮体底面と基礎底面の間に敷設配置された浸透防止シートは、樹脂液が下方に浸透し浮体底面と基礎底面が一体に接着されないようにするもので、浮体完成後プール内に給水して浮体を浮上させて水中作業により剥離撤去する。
浸透防止シートの代わりにゲルコート等の接着防止用塗料を塗布してもおいても良く、その場合は上記剥離作業が省略できる。
型枠内側に積層したFRP樹脂積層が硬化すれば、図23の鳥瞰図にて図説の通り先ず間隙ブロックをハンマー等でたたいて上に引き抜くと共に型枠を外側にたたき出し硬化した樹脂層と剥離して上方へ撤去する。
浮体全体のねじれを防止し外形形状を保持するために、浮体内側に相対する浮体側面(53)と底面を連結する壁面型補強材(62)を十字方向に立設した船舶用語隔壁(63)を設けてある。
また平らな浮体側面等板材の平面を保つため、その表面に板材と垂直面に多数のフレーム(52)を一体的に設けてある。
上記隔壁等壁面型補強材およびフレームは浮体が鋼板製の場合は鋼板板材を溶接加工して連結するが、浮体がFRPの場合は隔壁はFRPまたは鋼板何れでも良く、フレームはFRPが接着加工が簡単で施工しやすい。
アンカーポールの鞘部材(23)は、鋼板製またはFRP製で図示しないが浮体底面に連通する穿孔された穴の上に配置されている。
荷重台下端の角フランジおよび鞘部材のフランジは、FRP製浮体底面との接合にはFRP素材のマットおよびクロスと樹脂液を使用して上部から積層加工して覆い硬化して一体化する。
(a)の甲板となる鉄板製の板材は、前述のプール形基礎側壁部上面をレールとして使用した門形クレーンにより吊り上げ搬入し、浮体上に敷設して浮体上端の内フランジ部(71)および荷重台および鞘部材上端のフランジ部とボルトナットにより接合する。
本図は浮体の相対する側面(74)が隔壁(63)等の壁面型補強材(62)によって円形断面パイプの荷重台(11)を介して連結されている。
従って前実施例の単独荷重台よりも上からの荷重耐力が増加すると共に、浮体の形状を保持する効果も備えより頑丈なものとなる。
荷重台(11)および隔壁(63)等壁面型補強材(62)はすべて鋼板製で、一体的に溶接または図示しないがボルトナット接続により連結されているが、壁面型補強材と浮体側面とは樹脂接合部(66)に示すように樹脂加工により連結されている。
また浮体側面内側のFRPフレーム(72)は、強度の無いウレタン芯材(56)にガラス繊維マットとクロス等パッチシート(47)を巻き付け、浮体側面と連結したものでFRP素材による強度で浮体側板(31)の平面形状を補強する。
しかしこの作業は密閉された区画空間であり、FRP樹脂液硬化時の有毒ガスや発熱に留意し十分なブロアによる換気をしなければならない。
図25ないし図26に記載の荷重台や壁面型補強材およびアンカーポールの鞘部材等は、浮体上面の鉄板製甲板と溶接構造で連結する効率的な組み立て方法について図27において詳述する。
図22ないし図23において説明した方法によりプール内に上面が開口し、底面および側面が一体に成型されたFRP浮体が形成される。
その鉄板の上で図27に示すように浮体上面の鉄製甲板と、荷重台壁面型補強材等を溶接加工して連結する。
図27では互いに隣接する3枚の甲板鉄板板材の上に荷重台と隔壁等壁面型補強材を溶接連結している状況を示す。
完成した甲板は門型クレーンにより1枚ずつ180度回転し、底にある甲板板材が上になり浮体上面に敷き詰められ、甲板と甲板の突き合わせ部は水密のため上面から突き合わせ連結溶接される。
FRP浮体上端端部のフランジ部(75)は図28に示すように鉄板甲板とボルトナット接続される。
図27は溶接部(70)の記載のない部分もすべて溶接連結されているものとする。
図28は完成状態の側断面図で図を拡大して説明するため(a)は左側を示し(b)は右側を示す。
浮体底面および側面は浸水した場合のみその浸水深さの水圧が掛かるので、平面板材が歪まないようにフレームは必要ではあるが深度は数十センチメートルで極めて浅く、圧力は微小なのでそれに応じたもので充足する。
荷重台と隔壁および多数のフレームが溶接された甲板はFRP浮体内に挿入され、浮体底面と各部材は樹脂接着部(66)に示すようにFRP素材にて接着連結される。
甲板両端部上面は図のようにアングルを介してSUS板(69)を取り付け、上面にモルタルを充填して建家土台(42)の周囲に犬走り(68)を形成してある。
図29においてプール側壁上面(80)をレールとして利用し、トロリー台車(33)に柔軟なゴム製車輪を使用した門型クレーン(54)は工事現場にてプールサイズに合わせてその都度組み立てられる。
Iビーム(35)の一端部は突出し、プール外側に駐車した車両から直接機材をリフトアップ可能に組み立てられている。
門型クレーン(54)は浮体の資材および治工具類の搬入搬出に使用すると共に、加工作業において加工物の吊り上げ転回突き合わせおよび溶接接着等の加工物のすべてのプール内の移動に極めて多用途に使用可能である。
また台風による高潮水害は殆ど毎年各地で発生しており、この高潮水害に対応する手段として本発明は極めて有効である。
技術的に完成した装備を提供することにより建設業界及び造船業界にも産業上大きな利用の可能性がある。
2004年12月末のインド洋沿岸地域を襲った大津波は、数時間の内に十数万人の尊い人命を奪い海洋性リゾートを楽しむ人達に大打撃を与えた。
本発明はその安全性に対する効果が証明され衆知されることにより、この海洋性リゾート産業と臨海地域に居住する多くの人達に安全な生活を保証する大きな糧となる可能性がある。
また本発明は一般の居住用建築物や大型のホテルに適用し、高潮被害の発生しやすい海岸低地に建築することにより、その効果が証明されれば建設産業及び住宅産業界に膨大な利用の可能性がある。
2…アンカーポール
3…ポール穴
4…基礎
5…台座
6…メンテ通路
7…プール型基礎
8…ジャッキリフト
9…地面
10…高潮水害浮上建築物
11…荷重台
12…開口部
13…雨水カバ
14…水面線
15…側壁部
16…導水路
17…浮体底板
18…底面
19…板材
20…建家
21…開閉扉
22…駆動装置
23…鞘部材
24…係止部材
25…帯鉄
26…ストッパ
27…開口
28…甲板
29…突条
30…喫水線
31…浮体側板
32…台板
33…トロリー台車
34…門形
35…Iビーム
36…帯鉄
37…溶接部
38…フレーム
39…隔壁
40…通路穴
41…水タンク
42…土台
43…給排水タンク
44…架台
45…排水ポンプ
46…FRP板
47…パッチシート
48…中鞘
49…先端ポール
50…蓋
51…鋼管部
52…フレーム
53…浮体側板
54…クレーン
55…ホイスト
56…ウレタン芯材
57…間隙ブロック
58…型枠
59…FRP積層板
60…浸透防止シート
61…プール底面
62…壁面型補強材
63…隔壁
64…通路穴
65…鉄板
66…樹脂接合部
67…連結片
68…犬走り
69…SUS板
70…溶接部
71…内フランジ部
72…FRPフレーム
73…マンホール
74…側面
75…フランジ部
76…突き合わせ部
77…排水溝
78…排水ピット
79…水面
80…側壁上面
81…突出部
82…円柱木型
83…ハンドル
Claims (3)
- 津波や台風及び河川氾濫等の高潮水難に対し、建築物の浸水を防止する浮体構造の台船
型建築物で浮体上に人が居住するように構成し、以下1ないし6の条件を具備したことを
特徴とする高潮水害浮上建築物。
1,地中に埋設され上面が開口し側壁および底面を備えた容器構造プール型基礎を備える。
2,前記プール型基礎底面上に台船型浮体を乗せ置く。
3,前記プール型基礎内部に連通する高潮浸水の流入口を開口する。
4,前記台船型浮体と一体で、浮体より見て鉛直下方に伸縮するアンカーポールを備える。
5,前記プール型基礎底面に基礎と一体に係止部材を備え、前記アンカーポールと係止部
材が結合し一体となるように構成する。
6,浸水状態となった時浮体は鉛直上方に浮上するが、前記アンカーポールが前記係止部
材との結合固定により、浮体の流水による流動を阻止するように構成した。 - 請求項1記載の浮上建築物台船形浮体の底面および側面を板材にて製作すると共に、そ
の板材の接合を浮体内側からの加工作業により施工する様に構成したことを特徴とする高潮水害浮上建築物の建造方法。 - 請求項1記載の浮上建築物のプール形基礎内部に水を供給し、浮体を浮上させて水中作
業にて浮体下方に架台を仮設置し、次に内部の水を排水することにより前記架台上に浮体
を仮設置して浮体底部の表面加工し、再び給水して浮体を浮上させ架台を搬出して再度水
を排水することにより浮体を整備することを特徴とする高潮水害浮上建築物の建造方法。
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