JP2006265037A - セラミックス焼結体及び金属蒸着発熱体 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶融金属に対する耐食性が大きいセラミックス焼結体と、このセラミックス焼結体で構成された長寿命のボートを提供する。
【解決手段】二硼化チタン及び/又は二硼化ジルコニウムを30〜80質量%、窒化硼素を20〜70質量%含有し、しかも表面層、中間層及び裏面層を有するセラミックス焼結体であって、セラミックス焼結体の厚みに対する中間層の比率が10〜80%、表面層と裏面層の比率がそれぞれ少なくとも10%であることを特徴とするセラミックス焼結体。本発明のセラミックス焼結体の表面層を溶融金属の蒸発面としてなることを特徴とする金属蒸着発熱体。
【選択図】 なし
【解決手段】二硼化チタン及び/又は二硼化ジルコニウムを30〜80質量%、窒化硼素を20〜70質量%含有し、しかも表面層、中間層及び裏面層を有するセラミックス焼結体であって、セラミックス焼結体の厚みに対する中間層の比率が10〜80%、表面層と裏面層の比率がそれぞれ少なくとも10%であることを特徴とするセラミックス焼結体。本発明のセラミックス焼結体の表面層を溶融金属の蒸発面としてなることを特徴とする金属蒸着発熱体。
【選択図】 なし
Description
本発明は、セラミックス焼結体及び金属蒸着発熱体に関する。
従来、金属蒸発発熱体(以下、「ボート」という。)としては、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム(AlN)、及び二硼化チタン(TiB2)を主成分とするセラミックス焼結体の上面にキャビティを形成させてなる3成分ボートや、この3成分ボートから窒化アルミニウム(AlN)を除いて構成された2成分ボートなどが知られている。ボートにはキャビティを形成させないものもある。2成分ボートは3成分ボートに比べて溶融金属に対する浸食速度が遅く、長寿命であることから2成分ボートが用いられている傾向にある。ボートは、その両端をクランプで電極につないで抵抗加熱させ、キャビティに入れられたAl線材等の金属を溶融・蒸発させて蒸着膜を得る際の発熱体として用いられる。この蒸着操作が繰り返し行われる間に、ボートは冷熱サイクルと溶融金属による浸食を受け、蒸着膜の品質が低下したときにボートの寿命となる。
ボート寿命は、ボートを構成するセラミックス焼結体の組成に影響を受けており、比抵抗値の高いボートほど浸食量が少なくボート寿命が長くなることがわかっている。ボートの比抵抗値を支配する成分は二硼化チタン及び/又は二硼化ジルコニウムであるので、この成分の少ないボートほど長寿命となるが、ボートの加熱に必要な電源容量には制約があるので、その成分を減じて長寿命化を達成するには限度がある。一方、溶融金属に対する初期濡れ性能を高める観点から、二硼化チタン及び/又は二硼化ジルコニウムの導電性成分が金属の蒸発が起こるボートの表面で濃縮されているボートが提案されているが(特許文献1)、ボート寿命を延ばすことの言及はない。
特開2000−093788号公報
本発明の目的は、溶融金属に対する耐食性が大きいセラミックス焼結体を提供することであり、またこのセラミックス焼結体で構成された長寿命のボートを提供することである。
本発明は、二硼化チタン及び/又は二硼化ジルコニウムを30〜80質量%、窒化硼素を20〜70質量%含有し、しかも表面層、中間層及び裏面層を有するセラミックス焼結体であって、セラミックス焼結体の厚みに対する中間層の比率が10〜80%、表面層と裏面層の比率がそれぞれ少なくとも10%であることを特徴とするセラミックス焼結体である。
本発明においては、以下の実施形態の少なくとも一つを有することが好ましい。
(1)中間層の比率が20〜40%、表面層と裏面層の比率がそれぞれ少なくとも30%であること。
(2)表面層:裏面層の比率が1:0.95〜1.05であること。
(3)二硼化チタン及び/又は二硼化ジルコニウムの濃度が、中間層では47〜60質量%、表面層及び裏面層では37〜46質量%であること。
(4)硼化チタン及び/又は二硼化ジルコニウムの濃度が、裏面層よりも表面層のほうが小さいこと。
(1)中間層の比率が20〜40%、表面層と裏面層の比率がそれぞれ少なくとも30%であること。
(2)表面層:裏面層の比率が1:0.95〜1.05であること。
(3)二硼化チタン及び/又は二硼化ジルコニウムの濃度が、中間層では47〜60質量%、表面層及び裏面層では37〜46質量%であること。
(4)硼化チタン及び/又は二硼化ジルコニウムの濃度が、裏面層よりも表面層のほうが小さいこと。
また、本発明は、本発明のいずれかのセラミックス焼結体の表面層を溶融金属の蒸発面としてなることを特徴とする金属蒸着発熱体である。本発明においては、以下の実施形態の少なくとも一つを有するものであることが好ましい。
(5)表面層にキャビティを有すること。
(6)表面層に少なくとも一つの溝を有すること。
(7)交差点が少なくとも一カ所あるように溝同士を交差させてなること。
(5)表面層にキャビティを有すること。
(6)表面層に少なくとも一つの溝を有すること。
(7)交差点が少なくとも一カ所あるように溝同士を交差させてなること。
本発明によれば、溶融金属に対する耐食性の大きいセラミックス焼結体と、このセラミックス焼結体で構成された長寿命のボートが提供される。
本発明のセラミックス焼結体の必須成分は、導電性と絶縁性をバランスさせて具有させる観点から、二硼化チタン及び/又は二硼化ジルコニウム(導電物質)が30〜80質量%、窒化硼素(絶縁物質)が20〜70質量%である。窒化チタン、炭化珪素、炭化クロム等の導電性物質や、窒化アルミニウム、窒化珪素、アルミナ、シリカ、酸化チタン等の絶縁性物質は適宜含有させることができる。
このような組成のセラミックス焼結体ならば知られているが、本発明のセラミックス焼結体は、表面層、中間層及び裏面層を有し、しかもこれらの構成比率を、セラミックス焼結体の厚みに対して、中間層を10〜80%、表面層と裏面層をそれぞれ少なくとも10%としたことが特徴である。これは、溶融金属の浸食深さ(厚み)は、溶融金属の蒸着面(すなわちボート上面)から10%までの深さにおいて顕著であり、50%の部位(すなわち中間部分)まで浸食が進まないうちにボートが寿命になることにもとづいて決定されている。
このような関係にあっても、上記した実施形態(1)〜(4)の少なくとも一つを備えていることが好ましい。なかでも、表面層:裏面層の構成比率が1:0.98〜1.02であることが特に好ましく、また表面層における二硼化チタン及び/又は二硼化ジルコニウムの濃度を裏面層のそれよりも小さくするときは、2〜5質量%小さくすることが特に好ましい。このような実施形態によって本発明の効果が助長される。
本発明において、表面層、中間層及び裏面層における二硼化チタン及び/又は二硼化ジルコニウムと窒化硼素の分析は、各部位で切り離された試験片中の成分を発光分光分析することによって測定することができる。
本発明のセラミックス焼結体の相対密度は、溶融金属による浸食を更に軽減しボートを長寿命化させるために90%以上が好ましく、特に93%以上が好ましい。このような相対密度は、二硼化チタン及び/又は二硼化ジルコニウムと窒化硼素とからなる混合粉末100質量部に対し、0.5〜10質量部の焼結助剤を配合した原料を用いることによって容易に実現させることができる。なお、セラミックス焼結体の相対密度は、セラミックス焼結体を所定の寸法の直方体に加工し、その外寸及び質量より求めた実測密度を理論密度で除することによって求めることができる。
焼結助剤としては、アルカリ土類金属酸化物、希土類元素酸化物及び加熱によってこれらの酸化物となる化合物からなる群から選ばれる一種又は二種以上の粉末が用いられる。具体的には、CaO、MgO、SrO、BaO、Y2O3、La2O3、Ce2O3、Pr2O3、Nd2O3、Pm2O3、Sm2O3、Eu2O3、Gd2O3、Tb2O3、Dy2O3、Ho2O3、Er2O3、Tm2O3、Yb2O3、Lu2O3など、更にはCa(OH)2等の水酸化物や、MgCO3等の炭酸塩等、加熱によってこれらの酸化物となる化合物などを例示することができる。
本発明のセラミックス焼結体は、例えば二硼化チタン粉末及び/又は二硼化ジルコニウム粉末と窒化硼素粉末と必要に応じて焼結助剤とを含有するが、それらの濃度が異なる混合粉末の複数を準備し、それらの三層を層状にして型に充填したから焼結するか、又は濃度の異なる未焼成成形体の複数個製造しておき、それらの三個を重ねて焼結することによって製造することができる。焼結は、常圧焼結、ホットプレス法のいずれであってもよく、その一例を示せば、0.5〜200MPaの一軸加圧又は冷間等方圧加圧した後1800〜2200℃の温度における常圧焼結、又は温度が1650〜2100℃、圧力が1〜100MPa下のホットプレス焼結である。二硼化チタン粉末又は硼化ジルコニウム粉末としては、平均粒子径が5〜25μmであるものが好ましく、窒化硼素粉末としては、平均粒子径が5μm以下であるものが好ましい。
本発明のボートは、本発明のセラミックス焼結体の表面層を溶融金属の蒸発面としてなるものである。この場合において、セラミックス焼結体の表面層にはキャビティを有するものであってもよい。ボート形状の一例を示せば、全体寸法が縦100〜200mm、幅(横)15〜45mm、厚み7〜12mmの板状体である。キャビティの一例は、縦90〜120mm、幅(横)12〜41mm、深さ0.5〜2mmである。キャビティは、例えば機械加工、サンドブラスト、ウォータージェット等によって加工することができる
本発明のボートについて、実施形態の一例である図面に基づいて更に説明する。図1〜3は本発明のボートの一例を示す斜視図である。キャビティ有するボートが図1、図3である。溝は、通電方向(すなわち電極と電極を結ぶ方向)と平行でない方向、すなわち図1に示されるように、セラミックス焼結体の長手方向である通電方向に対して、所定の角度αをもって、少なくとも一つが施される。溝を施すことによって、通電方向と平行方向の濡れ拡がり性を更に抑制し、通電方向と直交方向への濡れ拡がり性が助長され、溶融金属の濡れ性が更に向上する。溝は、機械加工、サンドブラスト、ウォータージェット等によって施される。キャビティ有するボートにあっては、キャビティ底面に溝を施すことが好ましい。
角度αは、20〜160度が好ましく、特に60〜120度が好ましい。溝は、幅が0.1〜1.5mm、深さが0.03〜1mm、長さが1mm以上であることが好ましく、特に幅が0.3〜1mm、深さが0.05〜0.2mm、長さが10mm以上の断面が矩形であるものが好ましい。溝の数は、1つであっても溶融金属に対する濡れ性を改善することができるが、好ましくは2以上であり、特に好ましくは10以上であり、更に好ましくは30以上である。2以上の溝を有するものにあっては、溝の間隔は好ましくは2mm以下、特に0.5〜1.5mmであることが好ましい。なかでも、図3に示されるように、溝同士を交差させ、その交差点を少なくとも一カ所、好ましくは溝の数と同数以上の交差点を形成させることが特に好ましい。図3のボートは、図1のボートにおいて、キャビティ底面に、通電方向に対して45度にして、幅1mm、深さ0.15mm、長さ30mmの溝を1mm間隔に35本を施し、さらにこの溝と直交する通電方向に対して135度の傾きをもつ同形状の溝を35本交差させて施されたものである。
本発明のボートを用いて金属を蒸発させるには、本発明のボートの表面層に、溝が施されているボートのときには、その溝の一部分又は全部に接触させて、Al線材等の金属を供給し、真空下、加熱することによって行われる。これによって、対象物に金属蒸着膜が形成される。真空加熱の条件の一例を示せば、好ましい真空度は1×10−1〜1×10−3Pa、好ましい温度は1400〜1600℃である。
実施例1
二硼化チタン粉末(平均粒子径9μm、純度99.9質量%以上)、二硼化ジルコニウム粉末(平均粒子径10μm、純度99.9質量%以上)、窒化硼素粉末(平均粒子径0.6μm、純度99質量%以上)及び酸化ストロンチウム粉末(平均粒子径1.5μm、純度99質量%以上)を用い、表1に示混合粉末イ〜二を調整した。
二硼化チタン粉末(平均粒子径9μm、純度99.9質量%以上)、二硼化ジルコニウム粉末(平均粒子径10μm、純度99.9質量%以上)、窒化硼素粉末(平均粒子径0.6μm、純度99質量%以上)及び酸化ストロンチウム粉末(平均粒子径1.5μm、純度99質量%以上)を用い、表1に示混合粉末イ〜二を調整した。
黒鉛ダイスに、混合粉末イ、その上面に混合粉末ロ、更にその上面に混合粉末イを順次層状に充填してから、温度1850℃でホットプレスを行いセラミックス焼結体(相対密度95.0%、直径200mm×高さ20mm)を製造した。このセラミックス焼結体から、全体寸法が縦150mm、幅(横)30mm、厚み10mmのボートを機械加工した。機械加工は、混合粉末イによる表面層の厚みが3mm(全厚みの30%)、混合粉末ロによる中間層の厚みが4mm(全厚みの40%)及び混合粉末イによる裏面層の厚みが3mm(全厚みの30%)のボートとなるように行った。ついで、ボートの両面に、幅27mm×深さ1mm×長さ100mmのキャビティを設け、更にそれぞれのキャビティ底面には50本の溝を機械加工により施した。一本の溝の寸法は、長さ24mm、幅1mm、深さ1mmであり、それを1mm間隔幅で、通電方向に対して90度にして施した(図1参照)。
実施例2〜4 比較例1〜4
混合粉末の種類とその充填厚みを種々変えたこと以外は、実施例1と同様にして表2に示す構成のボートを製造した。
混合粉末の種類とその充填厚みを種々変えたこと以外は、実施例1と同様にして表2に示す構成のボートを製造した。
実施例5
ボートの両面中央部にキャビティを設けることなく、直接、混合粉末イによる表面層に溝を施したこと以外は、実施例1と同様にしてボートを製造した(図2参照)。
ボートの両面中央部にキャビティを設けることなく、直接、混合粉末イによる表面層に溝を施したこと以外は、実施例1と同様にしてボートを製造した(図2参照)。
これらのボートについて、1500℃比抵抗値、1600℃までの昇温可否、及びボート寿命を以下に従って測定した。それらの結果を表2に示す。
1500℃比抵抗
ボートを銅製の電極間にクランプし、3×10−1Pa以下の真空下で1500℃に通電加熱したときの電圧及び電流から求めた。
1600℃までの昇温可否
14V×1000Aの容量を持つ電源を用いてボートを抵抗加熱する際に、5×10−1Pa以下の真空下でボート中央部の温度を1600℃まで昇温できるかどうかを評価した。
ボート寿命
ボートを銅製の電極間にクランプし、3×10−1Pa以下の真空下でボート中央部が1550℃になるよう通電加熱したのち、純度99.9%のアルミニウムワイヤーを6.0g/分の割合で供給し、ボート両面に生じた浸食深さがそれぞれ3mmとなったときの蒸着時間を測定した。
1500℃比抵抗
ボートを銅製の電極間にクランプし、3×10−1Pa以下の真空下で1500℃に通電加熱したときの電圧及び電流から求めた。
1600℃までの昇温可否
14V×1000Aの容量を持つ電源を用いてボートを抵抗加熱する際に、5×10−1Pa以下の真空下でボート中央部の温度を1600℃まで昇温できるかどうかを評価した。
ボート寿命
ボートを銅製の電極間にクランプし、3×10−1Pa以下の真空下でボート中央部が1550℃になるよう通電加熱したのち、純度99.9%のアルミニウムワイヤーを6.0g/分の割合で供給し、ボート両面に生じた浸食深さがそれぞれ3mmとなったときの蒸着時間を測定した。
本発明のセラミックス焼結体は、ボートの他に、例えばアンモニア等の黒鉛ヒーターを腐食させる雰囲気下で用いる加熱ヒーターとして使用することができる。本発明のボートは、例えばフイルム等の蒸着に用いられる。
Claims (9)
- 二硼化チタン及び/又は二硼化ジルコニウムを30〜80質量%、窒化硼素を20〜70質量%含有し、しかも表面層、中間層及び裏面層を有するセラミックス焼結体であって、セラミックス焼結体の厚みに対する中間層の比率が10〜80%、表面層と裏面層の比率がそれぞれ少なくとも10%であることを特徴とするセラミックス焼結体。
- 中間層の比率が20〜40%、表面層と裏面層の比率がそれぞれ少なくとも30%であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス焼結体。
- 表面層:裏面層の比率が1:0.95〜1.05であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックス焼結体。
- 二硼化チタン及び/又は二硼化ジルコニウムの濃度が、中間層では47〜60質量%、表面層及び裏面層では37〜46質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックス焼結体。
- 硼化チタン及び/又は二硼化ジルコニウムの濃度が、裏面層よりも表面層のほうが小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックス焼結体。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のセラミックス焼結体の表面層を溶融金属の蒸発面としてなることを特徴とする金属蒸着発熱体。
- 表面層にキャビティを有することを特徴とする請求項6に記載の金属蒸着発熱体。
- 表面層に少なくとも一つの溝を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の金属蒸着発熱体。
- 交差点が少なくとも一カ所あるように溝同士を交差させてなることを特徴とする請求項8に記載の金属蒸着発熱体。
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JP2005085548A JP2006265037A (ja) | 2005-03-24 | 2005-03-24 | セラミックス焼結体及び金属蒸着発熱体 |
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