JP2006262767A - 新規グルコース脱水素酵素 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明はpH安定性及び至適温度の高い、NADP+特異的新規グルコース脱水素酵素及びそれをコードする遺伝子、並びにその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】種々の微生物よりグルコース脱水素酵素を探索し、上記課題を解決する酵素を取得した。また、本酵素の遺伝子を含むDNA、ベクターとの組換えDNA及びこのベクターによる形質転換体を取得した。本発明は、例えば、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドおよび同ポリペプチドと相同性のあるポリペプチド等を提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は新規なグルコース脱水素酵素、その遺伝子、当該遺伝子を含む組換えベクター、該組換えベクターを含む形質転換体、および該形質転換体を用いたグルコース脱水素酵素の製造方法に関する。
グルコース脱水素酵素は、グルコースと酸化型ニコチアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NAD+)または酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(以下、NADP+)より、D−δ−グルコノラクトンと還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NADH)または還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(以下、NADPH)を生成する反応を触媒する酵素である。
これらグルコース脱水素酵素は細菌、酵母から哺乳類に至るまで広く存在しているが、その多くが補酵素としてのNAD+、NADP+の両方に活性を有する。一方、NADP+特異的なグルコース脱水素酵素は、そのNADP+特異的な性質を利用し、バイオセンサーやNADP+特異的脱水素酵素による還元反応の補酵素再生酵素として利用し得る産業上有用な酵素である。補酵素としてのNADP+に対して特異的に作用するグルコース脱水素酵素(EC1.1.1.119)はクリプトコッカス(Cryptococcus)属、グルコノバクター(Gluconobacter)属、サッカロミセス属(Saccharomyces)属由来のものが知られている(特許文献1、非特許文献1、2参照)。
しかし、現在公知のクリプトコッカス・ユニグツラタスFERM BP-1352株(微工研条寄第1352号)由来のNADP+特異的グルコース脱水素酵素は、安定なpHの範囲がpH6.0-7.5と狭く、かつトリス緩衝液に代表されるアミン系の緩衝液中で安定性が低いという問題点や至適温度が55℃付近と低いという問題点があった(特許文献1参照)。また、現在公知のサッカロミセス・ブルデリCBS8638株由来の酵素はNADP+特異的グルコース脱水素酵素はNADP+に対する特異性がNAD+に対して10倍と比較的低いという問題点があった(非特許文献1参照)。したがって、よりpH安定性の高く、高温条件下で作用し、かつNADP+に対する特異性が高い新規なグルコース脱水素酵素の提供が望まれていた。
また、従来はNADP+特異的グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列や該酵素をコードするDNA配列の情報は全く知られておらず、そのため、該酵素をコードする遺伝子を適当な宿主細胞に導入する事により、形質転換体による該酵素の大量生産を行う事は出来なかった。したがって、該酵素をコードする塩基配列情報及び該酵素のアミノ酸配列情報の提供が望まれていた。
一方、補酵素としてのNADP+に特異的に作用する酵素のその他の例として、グルコース-6-リン酸脱水素酵素がある。クリプトコッカス属、アスペルギルス(Aspergillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属等の一部のグルコース−6−リン酸脱水素酵素はグルコースにも活性を示し、即ちNADP+特異的グルコース脱水素活性を有することが知られている。しかしながら、そのグルコース脱水素活性はグルコース−6−リン酸脱水素活性に対して15%以下であり(非特許文献3)、グルコース脱水素酵素としての利用には適していない。
特公昭63-109773号公報 J. Bacteriol., 第184巻,3号,p672-678, 2002年 Methods Enzymol.,第89巻,p159-163,1982年 Arch. Biochem. Biophys.,第228巻,1号,p113-119, 1984年
したがって、本発明はpH安定性及び至適温度の高い、NADP+特異的新規グルコース脱水素酵素及びそれをコードする遺伝子、並びにその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題に鑑み、各種細菌、酵母、糸状菌よりpH安定性及び至適温度が高く、かつ補酵素としてのNADP+に特異的に作用するグルコース脱水素酵素のスクリーニングを行った。その結果、クリプトコッカス・ユニグツラタスJCM3687株から従来の酵素よりpH安定性及び至適温度の高い、NADP+特異的グルコース脱水素酵素を新たに見出した。そして、当該微生物からグルコース脱水素酵素を単離、精製し、さらに該酵素遺伝子の単離、並びに宿主微生物での発現を達成した。
本発明は、上記の通り複数の対象を有する。それらの対象の一部として、例えば以下のものを挙げることができる。
[1]以下の(1)又は(2)のポリペプチド。
(1)配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(2)以下の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)及び(g)からなる群より選択される、グルコース脱水素活性を有するポリペプチド。
(a)配列番号2のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなる。
(b)配列番号2に示すアミノ酸配列と80%以上の相同性を有する。
(c)配列番号1に示すDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされる。
(d)配列番号4に示すアミノ酸配列を有する。
(e)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を有する。
(f)(a)又は(b)又は(c)において、配列番号4に示すアミノ酸配列を有する。
(g)(a)又は(b)又は(c)において、配列番号4に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を有する。
[2] 以下の(1)又は(2)のDNA。
(1)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA。
(2)以下の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)及び(g)からなる群より選択される、グルコース脱水素活性を有するポリペプチドをコードするDNA
(a)配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなる。
(b)配列番号1に記載の塩基配列と80%以上の相同性を有する塩基配列を有する。
(c)配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。
(d)配列番号3に記載の塩基配列を含む。
(e)配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列を含む。
(f)(a)又は(b)又は(c)において配列番号3に記載の塩基配列を含む。
(g)(a)又は(b)又は(c)において配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列を含む。
また、本発明は、上記[2]で示されるDNAを含む組換えベクター、該組換えベクターを含む形質転換体、及び該形質転換体を用いたNADP+特異的グルコース脱水素酵素の製造方法である。
更に、本発明の実施例において明らかにされた該酵素のアミノ酸配列は、NADP+に特異的に作用する所定のグルコース−6−リン酸脱水素酵素との間で、配列全体としての相同性が比較的高いにもかかわらず、グルコース−6−リン酸脱水素酵素において保存されている活性部位のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有していた。また、実施例としての該酵素については、グルコース脱水素活性は検出されたが、グルコース−6−リン酸脱水素活性は検出されなかった。以上の結果から、実施例としてのNADP+特異的グルコース脱水素酵素は、グルコース結合部位と推定されるアミノ酸配列を有していることが示唆された。これらの結果を利用して、グルコース脱水素酵素としての利用には適さないと考えられるグルコース−6−リン酸脱水素酵素に対して所定の改変を行うことにより、新規なNADP+特異的グルコース脱水素酵素を製造することができる。
本発明によれば、pH安定性及び至適温度の高いNADP+特異的新規グルコース脱水素酵素及びそれをコードする遺伝子、並びにその製造方法を提供することが可能となった。
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
本発明は、実施例として、pH安定性が高く、高温条件下でも作用するNADP+特異的グルコース脱水素酵素を天然界に見出し、該酵素の諸性質を明らかにすると共に、該酵素のアミノ酸配列、および該酵素をコードする遺伝子情報を得、更に組換え大腸菌により該NADP+特異的グルコース脱水素酵素を活性型として発現することにより完成された。

1.NADP+特異的グルコース脱水素酵素の取得方法の概要
[得るための方法]上記NADP+特異的グルコース脱水素酵素は下記のようにして得ることが出来る。例えば、好適条件で培養した微生物をガラスビーズ破砕等の手段により破砕した後、該破砕液中のNADP+特異的グルコース脱水素活性を測定する。更に該活性が検出されたものについて、補酵素としてのNAD+とNADP+に対する活性を比較すると共に、該酵素を含む破砕液を高pH及び低pHの任意の緩衝液中に懸濁し、任意の温度で加温処理を行った後に残存するNADP+特異的なグルコース脱水素活性を検出することによって上記NADP+特異的グルコース脱水素酵素を得ればよい。
高pHにおける安定性を評価する際に用いる緩衝液としては、pH9.0付近において緩衝作用を持つアミン系の緩衝液が好ましいが、トリス、Tricine、TAPS、CHESが特に好ましく、トリスが最も好ましい。
本発明の実施例としてのNADP+特異的なグルコース脱水素酵素の起源となる生物としては特に限定されず、微生物であっても良いし、高等生物であっても良いが、細菌、カビ、酵母等の微生物が好適であり、好ましくは酵母が挙げられ、更に好ましくはクリプトコッカス属に属する微生物が挙げられる。クリプトコッカス属微生物としては、クリプトコッカス・アルビダス(Cryptococcus albidus)、クリプトコッカス・フミコーラス(Cryptococcus humicolus)、クリプトコッカス・テレウス(Cryptococus terreus)、クリプトコッカス・ユニグツラタス(Cryptococcus uniguttulatus)が挙げられ、好ましくはクリプトコッカス・ユニグツラタスCryptococcus uniguttulatus)、更に好ましくはクリプトコッカス・ユニグツラタスCryptococcus uniguttulatus)JCM3687株を挙げられる。なお、クリプトコッカス・ユニグツラタスCryptococcus uniguttulatus)JCM3687株は理化学研究所微生物系統保存施設(Japan Collection of Microorganisms, JCM))に保存されており、同保存施設から入手する事が出来る。
本発明の実施例としての上記酵素は、該酵素を産生する微生物より、下記のようにして取得する事が出来る。例えば、NADP+特異的グルコース脱水素酵素を有する微生物を好適な条件で培養し、培養終了後に培養液から遠心分離などにより菌体を集め、ガラスビーズ破砕などの手段により菌体を破砕して粗酵素液を得る。この粗酵素液を、塩析法、カラムクロマトグラフィー法などの定法により精製する事で本発明の酵素を得る事が出来る。

2.NADP+特異的グルコース脱水素酵素の性質
クリプトコッカス・ユニグツラタス(Cryptococcus uniguttulatus)JCM3687株から得られるNADP+特異的グルコース脱水素酵素は、下記(a)から(g)記載の性質を有する
(a)補酵素としてのNADP+に対して特異的に作用する。
(b)グルコース−6−リン酸に対する活性はグルコースに対する活性の1/10以下である。
(c)反応至適温度:60-70℃、
(d)反応至適pH:6.5-10.0、
(e)温度50℃以下で安定、
(f)pH6.0-8.0で安定
(g)トリス−塩酸緩衝液中での安定性が、同一pHにおけるリン酸緩衝液中での安定性と比較し75%以上。
更に該酵素はSDS-PAGEによって測定される分子量が58000である。
本発明の実施例としての酵素タンパク質は、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質または同タンパク質に実質的に同一のタンパク質である。
「実質的に同一」という表現は、例えば、配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠如、置換、挿入または付加され、そのとき該タンパク質が配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の機能を有する場合、当該タンパク質は実質的に同一であると言える。また、本発明のタンパク質は配列番号2に示すアミノ酸配列と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、そして最も好ましくは99%以上のアミノ酸配列の同一性を有し、配列番号2に示すアミノ酸配列からなるタンパク質と同等の機能を有する場合、当該タンパク質は実質的に同一であると言える。上記アミノ酸配列の「同一性」とは、比較対象となる配列の全領域にわたって最適な状態にアラインメントされた2つの配列を比較することにより決定される。比較対象となる配列は、最適な状態にアラインメントされた場合に付加又は欠失(例えばギャップ等)を有していてもよい。アミノ酸配列の同一性は、例えば相同性検索プログラムBLAST(Altschul SF. et al, Nucleic Acids Res. (1997) 25:3389-3402)を用いて2つのアミノ酸配列を比較解析した場合に、配列全体に対するIdentityの値で算出することができる。上記同等の機能を有する酵素タンパク質は、それらを配列番号1でコードされるDNA配列に相補的な配列を有するDNA鎖に、後述するストリンジェント条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含むDNAによりコードされ得る。アミノ酸配列中の1若しくは数個のアミノ酸の欠失、置換、挿入または付加は、例えば部位特異的突然変異法など当業者に周知の方法によって行うことができる。
上記「実質的に同一の酵素タンパク質」は、配列番号4に示す、本発明の実施例としての酵素の活性部位を形成し、当該酵素の性質を特徴付けると推定されるアミノ酸配列を有する酵素であっても良いし、配列番号4に示すアミノ酸配列中の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入または付加された配列を活性部位に有する酵素であってもよい。

3.NADP+特異的グルコース脱水素酵素の取得例
実施例としてのグルコース脱水素酵素における配列番号4に示すアミノ酸配列の位置は、該酵素と比較的相同性の高いグルコース−6−リン酸脱水素酵素において基質結合に関わる位置に対応する(Biochemistry, 第39巻, p15002-15011, 2000年)。したがって、配列番号4に示すアミノ酸配列は、該酵素においてグルコースに対する基質特異性を決定付ける配列であると考えられる。即ち、本発明の酵素は、配列番号4に示すアミノ酸配列(または配列番号4に示すアミノ酸配列中の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入または付加された配列)を有する酵素であれば良く、例えば、グルコースに対する基質特異性が低いNADP+特異的酵素の活性部位のアミノ酸配列を、配列番号4に示す配列に置換する事により、NADP+特異的グルコース脱水素酵素を製造する事が出来る。このようにして該酵素を得るための元となる酵素としては、NADP+特異的酵素であれば良いが、好ましくはグルコース-6-リン酸脱水素酵素が良い。

4.NADP+特異的グルコース脱水素酵素をコードするDNA
本発明のDNAは、例えば上記のような酵素タンパク質をコードするDNAであればよい。配列表配列番号1で示されるDNAであっても良いし、配列番号1で示される塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列を有するDNAであってもよい。また、配列表配列番号1で示されるDNA塩基配列と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、そして最も好ましくは99%以上のDNA塩基配列の同一性を有しるものであればよい。塩基配列の「同一性」の技術的意義は、上記アミノ酸配列の「同一性」として説明した内容と同様である。さらに本発明のDNAは、配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを含む。
ストリンジェント条件下のハイブリダイゼーション条件の例は:好ましくは約7%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、約0.5Mのリン酸二水素ナトリウム、1mMのEDTA中で約50℃でハイブリダイゼーション、および約2XSSC、約0.1%のSDS中で50℃の洗浄;より望ましくは約7%のSDS、約0.5Mのリン酸二水素ナトリウム、約1mMのEDTAで50℃でハイブリダイゼーション、および約1XSSC、約0.1%のSDSで約50℃の洗浄;より望ましくは約7%のSDS、約0.5Mのリン酸二水素ナトリウム、約1mMのEDTAで約50℃でハイブリダイゼーション、および約0.5XSSC、約0.1%のSDSで約50℃の洗浄;より好ましくは約7%のSDS、約0.5Mのリン酸二水素ナトリウム、約1mMのEDTAで約50℃でハイブリダイゼーション、および約0.1XSSC、約0.1%のSDSで約50℃の洗浄;並びになおより好ましくは約7%のSDS、約0.5Mのリン酸二水素ナトリウム、約1mMのEDTAで約50℃で、約0.1XSSC、約0.1%のSDSで約65℃の洗浄である。もっとも、該条件は、ヌクレオチド鎖の長さ、該配列、および異なる環境パラメーターに依存して異なり得る。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションの詳細なガイドは、例えばTijssen(1993) Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology-Hybridization with Nucleic Acid Probes part I chapter 2''Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assay''Elsvier, New Yorkに見出される。
また、本発明のDNAは、本発明の酵素の性質を特徴付けると推定されるアミノ酸配列をコードする、配列表配列番号3で示される塩基配列を含むDNAであっても良いし、配列番号3で示される塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列を有するDNAであってもよい。ここで示す「1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入または付加された塩基配列」とは、例えば「蛋白核酸酵素 増刊 遺伝子増幅PCR法」(1990年)等に記載の当業者に周知の方法により置換、挿入、欠質または付加できる程度の数の塩基が置換、挿入、欠質または付加されてなる塩基配列を意味する。
また、本発明のDNAは、配列番号1に示した配列から調製され得るプローブ、好ましくは配列番号1に示した配列から調製され得る、上記配列番号3に示した塩基配列を含むプローブと、上述のストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、グルコース脱水素活性を有するタンパク質をコードするDNAであっても良い。

5.NADP+特異的グルコース脱水素酵素をコードするDNAの導入用ベクター
本発明のグルコース脱水素酵素をコードするDNAを宿主微生物内に導入し、発現させるために用いられるベクターDNAとしては、適切な宿主微生物内で該酵素遺伝子を発現できるものであればいずれもが用いられ得る。このようなベクターDNAとしては例えば、プラスミドベクター、ファージベクター、コスミドベクター等が挙げられる。また、他の宿主株との間での遺伝子交換が可能なシャトルベクターも使用し得る。このようなベクターは、作動可能に連結されたプロモーター(例えば、lacUV5プロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、lppプロモーター、tufBプロモーター、recAプロモーター、またはpLプロモーター等の制御因子)を含み、本発明のDNAと作動可能に連結された発現単位を含む発現ベクターとして好適に用いられ得る。例えばpUCNT(WO94/03613)等が好適に用いられ得る。
本明細書で用いる用語「制御因子」には、機能的プロモーター及び、任意の関連する転写要素(例えばエンハンサー、CCAATボックス、TATAボックス、またはSPI部位など)を有する塩基配列が含まれる。制御因子のタイプ及び種類が宿主に応じて変わり得る事は、当業者に周知の事項である。
また、本明細書で用いる用語「作動可能に連結」とは、遺伝子が発現するように、DNAと、その発現を調節するプロモーター、および/またはエンハンサー等の種々の調節エレメントとが宿主細胞中で作動し得る状態で連結される事が含まれる。

6.ベクター導入用の宿主細胞
本発明のDNAを有するベクターを導入する宿主細胞としては、例えば細菌、酵母、糸状菌、植物細胞、動物細胞などが挙げられるが、大腸菌が特に好ましい。本発明のDNAは定法により宿主細胞に導入し得る。宿主細胞として大腸菌を用いた場合、例えば塩化カルシウム法により本発明のDNAを導入する事が出来る。
本発明で得られた形質転換体は、炭素源、窒素源および無機塩類等の栄養素を含む通常の培地で培養し得る。これに、ビタミン、アミノ酸などの有機微量栄養素を添加すると、良好な培養結果が得られる場合が多い。
炭素源としてはグルコースやスクロースのような炭水化物、酢酸のような有機酸、アルコール類等が適宜使用される。窒素源としては、アンモニウム塩、アンモニア水、アンモニアガス、尿素、酵母エキス、ペプトンなどが用いられる。無機塩類としてはリン酸塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、鉄塩、硫酸塩、塩化物塩などが用いられる。
培養は温度範囲25-40℃で行えるが、25-37℃が好ましく、25-35℃が特に好ましい。また、pHは4-8で培養できるがpH5-8が好ましい。また、回分式、連続式のいずれの培養方法でも良い。

7.グルコース脱水素活性
グルコース脱水素活性の定量は、グルコース及び、NAD+又はNADP+を基質として生成するNADH又はNADPHを直接定量する事により行う事が出来る。即ち標準条件においては、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に基質グルコース150mM、NAD+又はNADP+2mM、及び酵素溶液0.02mlを含む1.0mlの反応液中において37℃での波長340nmの吸光度の増加を測定することにより行う。この反応条件において、1分間に1μmolのNAD+又はNADP+をNADH又はNADPHに還元する酵素活性を1unitとする。
また、該酵素活性の検出、定量は該酵素の反応により生成するNADH又はNADPHをホルマザン法により検出、定量する事によっても行う事が出来る。例えば、50mMリン酸緩衝液(pH7.0)に基質グルコース1.5mM、NAD+又はNADP+0.05mM、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルフォフェニル)−2H−テトラゾリウムナトリウム塩(同仁化学社製)0.5mM、1−メトキシ−フェナジンメトサルフェート0.02mM、及び酵素溶液0.02mlを含む1.0mlの反応液中において37℃での438nMの吸光度の増加を測定する事により行う。
「グルコース脱水素活性を有する」とは、グルコースと、NAD+またはNADP+とにより、D−δ−グルコノラクトンと、NADHまたはNADPHとを生成する反応を触媒することを意味する。
「NADP+に特異的」とは、補酵素として任意のそれぞれ同濃度のNAD+及びNADP+を反応溶液中に含む条件下でグルコース脱水素活性を測定した際に、NADP+を補酵素として測定された該活性が、NAD+を補酵素として測定された該活性よりも10倍より大きいこと、好ましくは50倍以上、さらに好ましくは100倍以上である事を示す。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
(実施例1)酵素のスクリーニング
酵母エキス(日本製薬社製)5g、ポリペプトン(日本製薬社製)7g、リン酸二水素カリウム2.5g、塩化アンモニウム1.0g、塩化ナトリウム1.0g、塩化カルシウム2水和物0.33g、硫酸第一鉄7水和物0.0005g、硫酸マグネシウム7水和物0.5g、スクロース10g(いずれも1L当たり)の組成からなる液体培地10mlを大型試験管に入れて121℃で20分間高圧蒸気殺菌した。この培地に各種細菌、酵母、糸状菌を無菌的に接種し30℃で36時間振とう培養した。得られた培養液を遠心分離して菌体を集めた後に20mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄後、同緩衝液300μlに懸濁した。本懸濁液にガラスビーズを加え、1分間×5回のボルテックス操作により菌体を破砕した後、遠心分離する事により無細胞抽出液を得た。得られた無細胞抽出液の30μlを200mMのMES緩衝液(pH5.5)及び200mMのトリス−塩酸緩衝液(pH9.0)270μlにそれぞれ懸濁し、45℃、20分の熱処理を行った。得られた溶液についてNAD+及びNADP+のそれぞれを補酵素として前述のホルマザン法によるグルコース脱水素活性の検出を行い、NADP+を補酵素とした際にのみ呈色が見られ、かつ酸処理及びアルカリ処理の双方を行っても呈色が見られる微生物を選択した。
得られた陽性株の無細胞抽出液のグルコース脱水素活性を、前述の波長340nmにおいてNADPHの生成を直接定量する方法により、37℃及び60℃で活性測定を行い、60℃における活性が37℃における活性と比して高いクリプトコッカス・ユニグツラタスJCM3687株を見出した。
(実施例2)酵素の精製
実施例1に示した培地に予め同一培地にて前培養しておいたクリプトコッカス・ユニグツラタスJCM3687株の培養液2mlを無菌的に接種し30℃で50時間振とう培養した。得られた培養液500mlより遠心分離により菌体を集め50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄後、同緩衝液200mlに懸濁した。本菌体培養液をミニビードビーダー(BIOSPEC社製)で破砕後、遠心分離により菌体残渣を除去し、無細胞抽出液250mlを取得した。
この無細胞抽出液に氷冷下スターラーで攪拌しながら、所定量の硫酸アンモニウムを添加し、硫酸アンモニウム70-100%飽和で沈殿するタンパク質を遠心分離により集めた。得られたタンパク質を50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で溶解し、同緩衝液により透析を行った後、これを同緩衝液で予め平衡化したCIM DEAE-8(BIA Separations社製)カラムに供し、酵素を吸着させ、0Mから1.0Mまでの塩化ナトリウム濃度のリニアグラジエントにより活性画分を溶出させた。得られた酵素液を50mMリン酸緩衝液(pH7.0)により透析を行い、予め同緩衝液で平衡化したResourceQ(アマシャムバイオサイエンス社製)カラム6mlに供し酵素を吸着させ、0Mから0.5Mまでの塩化ナトリウム濃度のリニアグラジエントにより活性画分を溶出させた。得られた酵素液に硫酸アンモニウムを1.5Mになるまで添加し、次いで予め硫酸アンモニウム1.5Mを含むリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したResourcePHE(アマシャムバイオサイエンス社製)カラムに供し、素通り画分を活性画分として集めた。
本活性画分を未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供したところ単一バンドを形成した。また、本酵素をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供したところ、分子量58000に相当する単一のバンドを形成した。
(実施例3)グルコース脱水素活性の測定
実施例2で精製した該酵素のグルコース脱水素活性を、前述した波長340nmにおいてNADH及びNADPHの生成を定量する方法により測定した。補酵素としてNAD+又はNADP+を用い、基質としてグルコース又はグルコース−6−リン酸を基質とした際の活性の測定値を表1に示す。この結果、該酵素は補酵素としてNADP+特異的に、かつ基質としてグルコースに特異的に作用する脱水素酵素である事が判明した。
表1:クリプトコッカス・ユニグツラタスJCM3687株より単離精製したNADP+特異的グルコース脱水素酵素の活性測定値
(実施例4)グルコース脱水素酵素の反応至適温度
80mMリン酸緩衝液(pH7.0)中において反応温度を20-80℃の範囲で変化させて活性測定を行った。図1は、活性測定の結果を示すグラフ(縦軸:相対活性(%)、横軸:温度(℃))である。相対活性(%)は、65℃において測定されたグルコース脱水素活性を100%として相対値で示している。活性測定の結果、グルコース脱水素酵素の反応至適温度は60-70℃であった。
(実施例5)グルコース脱水素酵素の反応至適pH
MES緩衝液、リン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液、グリシン−NaOH緩衝液、CAPS緩衝液、リン酸−NaOH緩衝液(いずれも80mM)を用いてpH5.5-11.0の範囲で活性測定を行った。図2は、活性測定の結果を示すグラフ(縦軸:相対活性(%)、横軸:pH、-:MES緩衝液、黒(黒塗り)丸:リン酸緩衝液、黒三角:トリス−塩酸緩衝液、黒四角:グリシン−NaOH緩衝液、×:CAPS緩衝液、□(四角):リン酸−NaOH緩衝液)である。相対活性(%)は、リン酸緩衝液(pH8.0)中で測定されたグルコース脱水素活性を100%とした場合の相対値で示している。活性測定の結果、グルコース脱水素酵素の至適pHはpH6.5-10.0であった。
(実施例6)グルコース脱水素酵素の温度安定性
100mMリン酸緩衝液(pH7.0)中において30-60℃の範囲で15分間処理後の残存活性を測定した。図3は、相対活性の測定結果を示すグラフ(縦軸:残存活性(%)、横軸:温度(℃))である。残存活性(%)は、各温度における処理前のグルコース脱水素活性を100%とした場合の相対値で示す。活性測定の結果、グルコース脱水素酵素は50℃以下で安定であった。
(実施例7)グルコース脱水素酵素のpH安定性
MES緩衝液、リン酸緩衝液、トリス−塩酸緩衝液(いずれも100mM)中において50℃、20分処理後の残存活性を測定した。図4は、残存活性の測定結果を示すグラフ(縦軸:残存活性(%)、横軸:pH、-:MES緩衝液、黒丸:リン酸緩衝液、黒三角:トリス−塩酸緩衝液)である。残存活性(%)は、各温度における処理前のグルコース脱水素活性を100%とした場合の相対値で示す。残存活性の測定の結果、グルコース脱水素酵素はpH6.0-8.0で安定であった。また、トリス−塩酸緩衝液中でのpH安定性の低下も同一pHのリン酸緩衝液中での安定性に比べ25%以内であった(図4)。
(実施例8)グルコース脱水素酵素のクローニング
実施例1で精製したクリプトコッカス・ユニグツラタスJCM3687株のグルコース脱水素酵素を8M尿素存在下で変性させた後、アクロモバクター由来のリシルエンドペプチダーゼ(和光純薬工業株式会社製)で消化し、得られたペプチド断片の配列をエドマン法により決定した。このアミノ酸配列から予想されるDNA配列を考慮し、PCRプライマー2種(primer-1:配列番号5、primer-2:配列番号6)を合成した。
上記2種のプライマーを各50pmol、染色体DNAを800ng、dNTP各20nmol、ExTaq(タカラバイオ株式会社製)2.0Uを含むExTaq用緩衝液100μlを調製し、熱変性(94℃、30秒)、アニーリング(55℃、30秒)、伸長反応(72℃、1分)を25サイクル行い、得られた約750塩基の増幅断片をpT7Blue-2 Vector(ノバジェン社製)にサブクローニングし、その配列を決定した(配列番号7)。
次に、グルコース脱水素酵素をコードするcDNAの全塩基配列等を決定するために、ここで決定した塩基配列(配列番号7)をもとに遺伝子配列特異的プライマー2種(primer-3:配列番号8、primer-4:配列番号9)を合成した。
実施例1に示した培地60mlにあらかじめ同一培地にて前培養しておいたクリプトコッカス・ユニグツラタスJCM3687株の培養液3mlを無菌的に接種し30℃で6時間振とう培養した菌体より、RNAgents Total RNA Isolation System(プロメガ社製)によって全RNA424μgを得た。得られた全RNAをOligotex-dT30カラム(タカラバイオ株式会社製)により精製しmRNA 4μgを得た。得られたmRNA 200ngを用いてGeneRacer Kit(インビトロジェン社製)によりプロトコールに記載の方法でcDNAを調製した。
得られたcDNA溶液2.5μl、primer-3及びGeneRacer Kit付属のGeneRacer3' nestedプライマー(primer-5:配列番号10)各50pmol又は、primer-4及びGeneRacer Kit付属のGeneRacer5' nestedプライマー(primer-6:配列番号11)各50pmol、dNTP各20nmol、Pyrobest DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社製)2.5Uを含むPyrobest DNA Polymerase用緩衝液100μlを調製し、熱変性(96℃、20秒)、アニーリング及び伸長反応(72℃、90秒)を4サイクル行い、引き続き熱変性(96℃、20秒)、アニーリング及び伸長反応(70℃、90秒)を4サイクル行い、更に引き続き熱変性(96℃、20秒)、アニーリング(58℃、30秒)、伸長反応(72℃、90秒)を20サイクル行い、4℃まで冷却後アガロースゲル電気泳動によりそれぞれの増幅cDNAを確認した。増幅されたcDNAを各々QIAquick Gel Extraction Kit(キアゲン社製)により抽出し、pCR4Blunt-TOPOベクター(インビトロジェン社製)にサブクローニングし、増幅DNAの配列決定を行い、該グルコース脱水素酵素をコードするcDNAの全塩基配列を決定した。全塩基配列及び該DNAがコードする推定アミノ酸配列をそれぞれ配列表配列番号1及び2に示す。
(実施例9)相同性検索
実施例8で得られた該グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列についてblastp<URL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/>により相同性検索を行ったところ、表2に示す結果が得られた。
表2:NADP+特異的グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列の相同性検索結果
この結果から、該グルコース脱水素酵素はグルコース−6−リン酸脱水素酵素との相同性が比較的高い事が判明した。しかしながら、図5に示すように、該グルコース脱水素酵素はグルコース−6−リン酸脱水素酵素において保存されている活性部位のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有していた。図5は、実施例としてのグルコース脱水素酵素とグルコース−6−リン酸脱水素酵素との間の、推定上の基質結合部位付近のアミノ酸配列の比較を示す図である。図5中、GDH-J3687は当該グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列を示す。その他は全てグルコース−6−リン酸脱水素酵素のアミノ酸配列である。配列の下に・で示した部分がグルコース−6−リン酸脱水素酵素における活性部位(推定上の基質結合部位)の保存領域である。また、表1にも示された通り該酵素はグルコース−6−リン酸に対して作用しない事から、この配列がグルコースに対する基質特異性の鍵になっていると考えられる。
(実施例10)グルコース脱水素酵素遺伝子を含む組換えベクターの作製
大腸菌においてグルコース脱水素酵素を発現させるために、形質転換に用いる組換えベクターを作製した。まず、ベクターに挿入する遺伝子を以下のように調製した。実施例8で決定した塩基配列に基づき、グルコース脱水素酵素構造遺伝子の開始コドン部分にNdeI部位を付加したprimer-7(配列番号12)および終止コドン直後にXbaI部位を付加したprimer-8(配列番号13)を合成した。
上記2種のプライマーを各50pmol、鋳型として実施例8で調製したcDNA溶液2.5μl、Pyrobest DNA Polymerase 2.5Uを含むPyrobest DNA Polymerase用緩衝液100μlを調製し、熱変性(98℃、10秒)、アニーリング(57℃、30秒)、伸長反応(72℃、3分)を25サイクル行い、得られた増幅DNA断片をNdeI及びXbaIで消化し、プラスミドpUCNT(WO94/03613)のlacプロモーター下流のNdeI及びXbaI部位に挿入した。得られたプラスミドをpNTGDH-J3687と命名した。
(実施例11)組換え大腸菌によるグルコース脱水素酵素の発現
前記プラスミドにより、大腸菌HB101株を形質転換した。得られた形質転換体をアンピシリン50μg/mlを含む2xYT培地(バクト・トリプトン1.6%(w/v)、バクト・イーストエキス1.0%(w/v)、NaCl 0.5%(w/v)、pH7.0)で培養した後、遠心分離により菌体を集め50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で懸濁後、超音波破砕により無細胞抽出液を得た。この無細胞抽出液をSDS処理してSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った結果、分子量58000の位置に該酵素タンパク質のバンドを確認できた(図6参照)。図6は、実施例としてのグルコース脱水素酵素のSDS−ポリアクリルアミド電気泳動像を示す図である(A:対照大腸菌の無細胞抽出液、B:グルコース脱水素酵素発現大腸菌の無細胞抽出液、C:クリプトコッカス・ユニグツラタスJCM3687株精製酵素)。さらにこの無細胞抽出液のグルコース脱水素活性を前述の波長340nmにおいてNADPHの生成を定量する方法により測定したところ、NADP+特異的グルコース脱水素活性を確認する事が出来た(表3参照)。
表3:NADP+特異的グルコース脱水素酵素を発現した大腸菌の無細胞抽出液の活性測定値
(実施例12)グルコース-6-リン酸脱水素酵素のグルコース脱水素酵素への変換
以上、実施例としてのNADP+特異的グルコース脱水素酵素を説明した。本発明にかかる同酵素は、上述のような取得方法によって得られたものに限られない。例えば、以下のような所定のアミノ酸置換によってグルコース脱水素酵素を取得することもできる。
酵母エキス(日本製薬社製)10g、ポリペプトン(日本製薬社製)20g、グルコース10g(いずれも1L当たり)の組成からなる液体培地10mlを大型試験管に入れて121℃で20分間高圧蒸気殺菌する。この培地にサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)ATCC204508株を無菌的に接種し、30℃で18時間振とう培養後、遠心分離により菌体を得る。得られた菌体よりGenとるくん(タカラバイオ株式会社製)により、プロトコールに記載の方法で染色体DNAを単離する。
得られる染色体DNA800ngを鋳型として、primer-9(配列番号14)及びprimer-10(配列番号15)各50pmol、Pyrobest DNA Polymerase 2.5Uを含むPyrobest DNA Polymerase用緩衝液100μlを調製し、熱変性(98℃、10秒)、アニーリング(57℃、30秒)、伸長反応(72℃、3分)を25サイクル行い、得られる増幅DNA断片をNdeI及びXbaIで消化し、プラスミドpUCNT(WO94/03613)のlacプロモーター下流のNdeI及びXbaI部位に挿入する。得られるプラスミド10ngを鋳型としてprimer-11(配列番号16)及びprimer-12(配列番号17)各20pmol、を用いてQuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)によりプロトコール記載の濃度にPCR溶液を調製する。次いで、熱変性(95℃、30秒)、アニーリング(53℃、1分)、伸長反応(68℃、4分)を18サイクル行い、反応終了後の溶液にDpnIを2μl加え、37℃で1時間処理する。ここで得られた反応液を用いて大腸菌HB101株の形質転換を行い、実施例11記載の方法により、形質転換体の無細胞抽出液を得る。この無細胞抽出液のグルコース脱水素活性を前述の方法により測定する事で、配列番号4に示すアミノ酸配列を活性部位に有する、変異型NADP+特異的グルコース脱水素酵素を得る事が出来る。
実施例としてのグルコース脱水素酵素の活性測定結果を示すグラフ(縦軸:相対活性(%)、横軸:温度(℃))である。相対活性(%)は、65℃において測定されたグルコース脱水素活性を100%とした場合の相対値で示す。 実施例としてのグルコース脱水素酵素の活性測定結果を示すグラフ(縦軸:相対活性(%)、横軸:pH)である。相対活性(%)は、リン酸緩衝液(pH8.0)中で測定されたグルコース脱水素活性を100%とした場合の相対値で示す。 実施例としてのグルコース脱水素酵素の温度安定性の測定結果を示すグラフ(縦軸:残存活性(%)、横軸:温度(℃))である。残存活性(%)は、各温度で処理前のグルコース脱水素活性を100%とした場合の相対値で示す。 実施例としてのグルコース脱水素酵素のpH安定性の測定結果を示すグラフ(縦軸:残存活性(%)、横軸:pH)である。残存活性(%)は、各温度での処理前のグルコース脱水素活性を100%とした場合の相対値で示す。 実施例としてのグルコース脱水素酵素とグルコース−6−リン酸脱水素酵素との間の、推定上の基質結合部位付近のアミノ酸配列の比較を示す図である。図中、GDH-J3687は当該グルコース脱水素酵素のアミノ酸配列を示す。その他は全てグルコース−6−リン酸脱水素酵素のアミノ酸配列である。配列の下に・で示した部分がグルコース−6−リン酸脱水素酵素における活性部位(推定上の基質結合部位)の保存領域である。 実施例としてのグルコース脱水素酵素のSDS−ポリアクリルアミド電気泳動像を示す図である(A:対照大腸菌の無細胞抽出液、B:グルコース脱水素酵素発現大腸菌の無細胞抽出液、C:クリプトコッカス・ユニグツラタスJCM3687株精製酵素)。
符号の説明
-:MES緩衝液、黒丸:リン酸緩衝液、黒三角:トリス−塩酸緩衝液、黒四角:グリシン−NaOH緩衝液、×:CAPS緩衝液、□(四角):リン酸−NaOH緩衝液

Claims (9)

  1. 以下の(1)又は(2)のポリペプチド。
    (1)配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (2)以下の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)及び(g)からなる群より選択される、グルコース脱水素活性を有するポリペプチド。
    (a)配列番号2のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列からなる。
    (b)配列番号2に示すアミノ酸配列と80%以上の相同性を有する。
    (c)配列番号1に示すDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによりコードされる。
    (d)配列番号4に示すアミノ酸配列を有する。
    (e)配列番号4に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を有する。
    (f)(a)又は(b)又は(c)において、配列番号4に示すアミノ酸配列を有する。
    (g)(a)又は(b)又は(c)において、配列番号4に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加されたアミノ酸配列を有する。
  2. 以下の(a)及び(b)の理化学的性質を有する請求項1記載のポリペプチドを含むグルコース脱水素酵素。
    (a)補酵素としてのNADP+に対して特異的に作用する。
    (b)グルコース−6−リン酸に対する活性はグルコースに対する活性の1/10以下である。
  3. 更に、以下の理化学的性質を有する請求項2記載のグルコース脱水素酵素
    (c)反応至適温度:60-70℃、
    (d)反応至適pH:6.5-10.0、
    (e)温度50℃以下で安定、
    (f)pH6.0-8.0で安定、
    (g)トリス−塩酸緩衝液中での安定性が、同一pHにおけるリン酸緩衝液中での安定性と比較し75%以上。
  4. 以下の(1)又は(2)のDNA。
    (1)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA。
    (2)以下の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)及び(g)からなる群より選択される、グルコース脱水素活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
    (a)配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列からなる。
    (b)配列番号1に記載の塩基配列と80%以上の相同性を有する塩基配列を有する。
    (c)配列番号1に記載の塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする。
    (d)配列番号3に記載の塩基配列を含む。
    (e)配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列を含む。
    (f)(a)又は(b)又は(c)において、配列番号3に記載の塩基配列を含む。
    (g)(a)又は(b)又は(c)において、配列番号3に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、挿入又は付加された塩基配列を含む。
  5. 請求項4記載のDNAを含有する組換えベクター。
  6. 請求項5記載のベクターで宿主微生物を形質転換して得られる形質転換体。
  7. Escherichia coli HB101(pNTGDH-J3687) FERM P-20374で識別される請求項5記載の形質転換体。
  8. グルコース−6−リン酸脱水素酵素における基質結合に関連するアミノ酸配列を、配列番号4に示すアミノ酸配列、または配列番号4に示すアミノ酸配列中の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入または付加された配列に示すアミノ酸配列に置換することによって得られる、補酵素としてのNADP+に対して特異的に作用し、かつ、グルコースに対する活性がグルコース−6−リン酸に対する活性の10倍以上の性質を有する、変異型グルコース−6−リン酸脱水素酵素。
  9. 請求項1記載のポリペプチド、請求項2または3記載のグルコース脱水素酵素、あるいは請求項6または7記載の形質転換体を利用して、グルコースとNADP+とにより少なくともNADPHを生成する、NADPH生産方法。


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