JP2006260962A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池のスタックを加熱保温して凍結を防止する燃料電池システムを提供する。
【解決手段】本発明の燃料電池システム1は、燃料電池セルを複数積層させて構成したスタック2と、スタック2を格納するケーシング3と、ケーシング3の外周部に設置されたヒータ4と、ケーシング3の外周を覆う外部断熱材5とを備え、ヒータ4によってケーシング3を加熱し、熱伝導によってスタック2を加温するようにしたので、構造が簡単でスタック2全体を均一に加熱することができるようにしたことを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料電池システムに係り、特に燃料電池セルの保温及び凍結防止を行うためのヒータの設置に関する。
従来から燃料電池では、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟持し、さらにその外側を一対のセパレータで挟持してセルが構成され、このセルを複数積層させてスタックが構成されている。
しかし、燃料電池では低温時に発電効率が低下するために、低温時における始動性が大きな課題となっており、従来から始動性を向上させるための燃料電池が提案されている。
ここで、このような低温時における始動性を向上させた燃料電池の従来例として、例えば特開2002−313391号公報(特許文献1)が開示されている。
この従来例では、固体高分子電解質膜の両側にアノード電極とカソード電極とを設け、さらに各電極の外側に反応ガス通路を設けてセルを構成し、このセルの発電面のうちの一部の領域にあたる冷却液通路に電気ヒータを設けている。
そして、燃料電池の低温起動時には電気ヒータをONしてセルを局所的に加熱し、局所発電を行うようにしている。
特開2002−313391号公報
しかしながら、上述した特許文献1に開示された従来例では、冷却液通路にヒータを設置しているので、冷却液の圧力損失が大きくなってしまい、高負荷運転時に他の冷却液通路の冷却水が減少してしまい、セル間の温度分布が不均一になってしまうという問題点があった。
また、樹脂を器材とした高分子電解質膜の側にヒータが位置しているので、ヒータの出力を大きくすると、高分子電解質膜の劣化を促進してしまうという問題点もあった。したがって、高分子電解質膜を劣化させずに十分な加熱をするためには低出力で表面積の大きなヒータを選定しなくてはならない。
さらには、ヒータの故障時には実質的に交換が不可能であるという問題点もあった。
上述した課題を解決するために、本発明の燃料電池システムは、燃料ガスと酸化剤ガスとを電気化学反応により反応させて発電する燃料電池セルを複数積層させて構成したスタックを備える燃料電池システムにおいて、前記スタックを格納するケーシングと、前記ケーシングの外周部に設置された加熱手段と、前記ケーシングの外周を覆う断熱手段とを備えることを特徴とする。
本発明に係る燃料電池システムでは、スタックを格納するケーシングの外周部に加熱手段を設けて熱伝導によってケーシング内を加温するようにしたので、構造が簡単でスタック全体を均一に加熱することができる。また、高分子電解質膜を劣化させるような影響を与えることもなく、加熱手段が故障した場合でも容易に交換可能である。
また、ケーシングの外周を断熱手段で覆ったので、スタック全体を保温してスタックの凍結を防止することができる。
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、実施例1に係る燃料電池システムの構成を示す断面図である。本実施例の燃料電池システム1は、燃料電池セルを複数積層させて構成したスタック2と、スタック2を格納するケーシング3と、ケーシング3の外周部に設置されたヒータ(加熱手段)4と、ケーシング3の外周を覆う外部断熱材(断熱手段)5と、スタック2をケーシング3に固定する断熱ワッシャー(固定手段)6とを備えている。
ここで、スタック2は、燃料ガスと酸化剤ガスとを電気化学反応により反応させて発電する燃料電池セルを複数積層させたもので、この燃料電池セルは固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟持し、さらにその外側を一対のセパレータで挟持して構成されている。
ケーシング3は、スタック2を格納する金属製の格納手段であって、車両フレーム7にブラケット8で固定されている。そして、内部に格納しているスタック2とケーシング3との間には空間が設けられており、断熱ワッシャー6でスタック2を固定している。また、ケーシング3を構成する材料としてはアルミニウムやアルミニウム合金を使用することによって、ケーシング3の伝熱性を向上させて、スタック2を加熱し易くし、スタック2内の温度差を小さくしている。なお、ブラケット8はケーシング3と一体に形成されていてもよいし、ケーシング3に別体で取り付けられたものでもよい。またブラケット8はケーシング3の周囲に複数箇所設置されている。
ヒータ4は、図2に示すように、ケーシング3の外周部に形成されたヒータ挿入部3aに挿入して設置されている。またヒータ4は、図3(a)〜(c)に示すように、ケーシング3の角部近傍に設置してもよい。図3(a)はヒータ4をケーシング3の外周角部に横置きに設置した例を示し、図3(b)はヒータ4をケーシング3の外周角部に縦置きに設置した例を示している。さらに、図3(c)はヒータ4をケーシング3の内周角部に縦置きした例を示している。このように、ヒータ4をケーシング3の角部近傍に設置した場合には、放熱速度の最も高い角部近傍を加熱することができ、局部的な温度低下を抑制することができる。ただし、図3(a)〜(c)はヒータ4を取り付けるケーシング3の外周部分を簡略化して描いている。
また、図4に示すように、ケーシング3のブラケット8に設けられたヒータ挿入部8aにヒータ4をケーシング3の外部から挿入するようにしてもよい。図4は、ブラケット8をケーシング3とは別体とした例について示している。このように、ヒータ4をブラケット8に設けられたヒータ挿入部8aに設置するようにした場合には、構造的に簡素化することができる。さらに、ヒータ4はケーシング3の外周部とブラケット8の両方に設置するようにしてもよい。
外部断熱材5は、ケーシング3の外周を覆ってスタック2の保温を行っており、外部断熱材5を構成する材料としては、発泡体ゴムや発泡樹脂で形成してもよいし、あるいは図5に示すように、真空構造を有する断熱材11で形成するようにしてもよい。この断熱材11は、例えば図6に示すような手順で製作することができる。まず図6(a)に示すように、グラスウールなどの芯材12をポリエチレン等のラミネートフィルム12で包むように重ね合わせ、内部を真空引きする。これによって、図6(b)に示すように、芯材12の外周部はラミネートフィルム12で覆われることになる。そして、外周に残った縁部13aを折り畳むことによって、図6(c)に示すような真空構造の断熱材11となる。ただし、真空構造を有する断熱材の構造は上記例に限定されるものではなく、他の構造を有する断熱材であってもよい。
このように、外部断熱材5を発泡体ゴムや発泡樹脂、あるいは真空構造を有する断熱材11で形成することによって、断熱性を向上させて放熱を抑え、ヒータ4の消費電力を低減させることができる。
断熱ワッシャー6は、スタック2をケーシング3との間に空間ができるように固定しており、断熱効果のある材料で形成されている。とくに、熱硬化性樹脂やセラミックあるいはシリケート系材料によって形成することにより、耐荷重性に優れるとともに保温性能も向上させることができる。
このように構成された本実施例の燃料電池システム1において、図7に示すように温度センサ9を設置し、この温度センサ9の検出値に基づいてヒータ4を制御してスタック2の保温処理を行う。図7ではブラケット8のヒータ4の取り付け溝近傍とケーシング3の中央底部に温度センサ9を設置している。このように温度センサ9を設置したことによって、ヒータ4に最も近い位置の温度と最も遠い位置の温度とを検出できるので、スタック2の保温に必要な最低限の温度を検出でき、最小限の電力量でスタック2を加熱することができる。
次に、本実施例の燃料電池システム1によるスタック2の保温処理を図8に基づいて説明する。図8は本実施例の燃料電池システムによる保温処理を示すフローチャートである。
まず、温度センサ9により各部の温度を計測し(S301)、次に保温処理の停止指示信号が入力されているか否かを判定する(S302)。
そして、保温処理の停止指示信号が入力されているときには保温処理を終了し、入力されていないときには測定された温度が所定の最低温度以下であるか否かを判定する(S303)。ここで、所定の最低温度以下のときにはヒータ4に電源を供給してスタック2の加熱を行う(S304)。このように、温度センサ9の検出値が所定の最低温度以下になったときにヒータ4をONするので、加熱による電力消費量を最小限に抑えることができる。
次に、ステップS304においてヒータ4に電源を供給したら、温度センサ9により氷点下の温度が検出されているか否かを判定する(S305)。ここで、氷点下の温度が検出されているときにはヒータ4の出力を上昇させてスタック2をさらに加熱し(S306)、氷点下の温度を検出していないときにはステップS301に戻って上述した処理を繰り返し行う。このように温度センサ9により氷点下の温度が検出されたときにはヒータ4の出力を上昇させるので、スタック2の凍結を防止することができる。
次に、ステップS306においてヒータ4の出力を上昇させたら、氷点下以上に温度が上昇したか否かを判定し(S307)、氷点下以上に上昇したときにはステップS301に戻って上述した処理を繰り返し行い、氷点下以上に上昇しなかったときにはインジケータを点灯させて氷点下であることを外部に報知してから(S308)ステップS301に戻って上述した処理を行うようにする。このように加熱しても温度が氷点下以上に上昇しなかったときにインジケータを点灯させるので、すでにスタック2が凍結していて起動不能の状況であることを外部に知らせることができ、無理やりに起動して燃料電池を破損させてしまうことを防止することができる。
一方、ステップS303において測定された温度が所定の最低温度以下でないときには、測定された温度が所定の最高温度以上であるか否かを判定する(S309)。ここで、測定された温度が所定の最高温度以上でないときにはステップS301に戻って再び上述した処理を行い、ステップS309において測定された温度が所定の最高温度以上のときには、ヒータ4の電源をOFFしてスタック2の加熱を停止してから(S310)、ステップS301に戻って再び上述した処理を行う。
このようにして上述した処理を繰り返し行い、ステップS302において保温処理の停止指示信号の入力が検出されると、本実施例の燃料電池システム1による保温処理は終了する。
上述したように、本実施例の燃料電池システム1では、スタック2を格納するケーシング3の外周部にヒータ4を設けて熱伝導によりケーシング3内を加温するようにしたので、構造が簡単でスタック2全体を均一に加熱することができる。また、高分子電解質膜を劣化させるような影響を与えることもなく、ヒータ4が故障した場合でも容易に交換可能である。また、ケーシング3の外周を外部断熱材5で覆ったので、スタック2全体を保温してスタック2の凍結を防止することができる(請求項1の効果)。
さらに、本実施例の燃料電池システム1では、温度センサ9を設置し、この温度センサ9の検出値に基づいてヒータ4の制御を行うので、効率的にスタック2の保温及び加熱を行うことができる(請求項2の効果)。
また、本実施例の燃料電池システム1では、スタック2とケーシング3との間に空間を設けたことによってスタック2で発生した熱を放熱することができるとともに、スタック2を断熱効果のある断熱ワッシャー6でケーシング3に固定したので、低温時におけるスタック2の温度低下を抑えることができる(請求項3の効果)。
さらに、本実施例の燃料電池システム1では、ヒータ4をケーシング3の角部近傍に設置したので、放熱速度の最も高い角部近傍を加熱することができ、局部的な温度低下を抑制することができる(請求項4の効果)。
また、本実施例の燃料電池システム1では、ヒータ4をケーシング3のブラケット8に設けられた取り付け溝にケーシング3の外部から設置するようにしたので、構造的に簡素化することができる(請求項5の効果)。
さらに、本実施例の燃料電池システム1では、ヒータ4の取り付け溝近傍とケーシング3の中央底部に温度センサ9を設置し、温度センサ9の検出値に基づいてヒータ4の制御を行うので、最小限必要となる電力量でスタック2を加熱することができる(請求項6の効果)。
また、本実施例の燃料電池システム1では、温度センサ9により氷点下の温度が検出されたときにヒータ4の出力を上昇させるので、スタック2の凍結を防止することができる(請求項7の効果)。
さらに、本実施例の燃料電池システム1では、温度センサ9の検出値が所定の最低温度以下になったときにヒータ4をONするので、加熱による電力消費量を最小限に抑えることができる(請求項8の効果)。
また、本実施例の燃料電池システム1では、ヒータ4をONにしても温度センサ9による検出値が氷点下以上に上昇しなかったときにインジケータを点灯させるので、すでにスタック2が凍結していて起動不能の状況であることを外部に知らせることができ、無理やりに起動して燃料電池を破損させてしまうことを防止できる(請求項9の効果)。
さらに、本実施例の燃料電池システム1では、ケーシング3をアルミニウムあるいはアルミニウム合金で形成したので、伝熱性を向上させてスタック2内部の温度差を小さくすることができる(請求項10の効果)。
また、本実施例の燃料電池システム1では、外部断熱材5を発泡体ゴムあるいは発泡樹脂で形成したので、断熱性を向上させて放熱を抑え、消費電力を低減させることができる(請求項11の効果)。
さらに、本実施例の燃料電池システム1では、外部断熱材5を真空構造を有する断熱材で形成したので、断熱性を向上させて放熱を抑え、消費電力を低減させることができる(請求項12の効果)。
また、本実施例の燃料電池システム1では、断熱ワッシャー6を熱硬化性樹脂、セラミックあるいはシリケート系材料によって形成したので、耐荷重性に優れるとともに保温性能を向上させることができる(請求項13の効果)。
以上、本発明の燃料電池システムについて、図示した実施例に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
燃料電池システムに係り、特に燃料電池セルの保温及び凍結防止を実現するための技術として極めて有用である。
本発明の一実施例に係る燃料電池システムの構成を示す断面図である。 ケーシングの外周部に形成したヒータ挿入部にヒータを挿入して設置した場合の構造を示す説明図である。 (a)〜(c)はヒータをケーシングの角部近傍に設置した場合の構造を示す説明図である。 ヒータをブラケットに設けたヒータ挿入部に外部から挿入して設置した場合の構造を示す説明図である。 ケーシングの外周を真空構造を有する断熱材で覆った例を示す斜視図である (a)〜(c)は真空構造を有する断熱材の製作手順を示す説明図である。 本発明の一実施例に係る燃料電池システムにおける温度センサの設置位置を説明するための図である。 本発明の一実施例に係る燃料電池システムによる燃料電池スタックの保温処理を説明するためのフローチャートである。
符号の説明
1 燃料電池システム
2 スタック
3 ケーシング
3a,8a ヒータ挿入部
4 ヒータ(加熱手段)
5 外部断熱材(断熱手段)
6 断熱ワッシャー(固定手段)
7 車両フレーム
8 ブラケット
9 温度センサ(温度検出手段)
11 断熱材

Claims (13)

  1. 燃料ガスと酸化剤ガスとを電気化学反応により反応させて発電する燃料電池セルを複数積層させて構成したスタックを備える燃料電池システムにおいて、
    前記スタックを格納するケーシングと、
    前記ケーシングの外周部に設置された加熱手段と、
    前記ケーシングの外周を覆う断熱手段と
    を備えることを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記ケーシングの温度を検出する温度検出手段を備え、前記温度検出手段の検出値に基づいて前記加熱手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 前記スタックと前記ケーシングとの間に空間を設け、前記スタックは断熱効果のある固定手段によって前記ケーシングに固定されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の燃料電池システム。
  4. 前記加熱手段は、前記ケーシングの角部近傍に設置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  5. 前記加熱手段は、前記ケーシングのブラケットに設けられた取り付け溝に前記ケーシングの外部から設置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  6. 前記温度検出手段は、前記加熱手段の取り付け溝近傍と前記ケーシング中央の底部に設置されていることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。
  7. 前記温度検出手段により氷点下の温度が検出されたときには、前記加熱手段の出力を上昇させることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  8. 前記温度検出手段の検出値が所定値以下になったときには、前記加熱手段をONすることを特徴とする請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  9. 前記加熱手段をONしても前記温度検出手段による検出値が氷点下以上に上昇しなかったときには、インジケータを点灯させることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池システム。
  10. 前記ケーシングは、アルミニウムあるいはアルミニウム合金で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  11. 前記断熱手段は、発泡体ゴムあるいは発泡樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  12. 前記断熱手段は、真空構造を有する断熱材で形成されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
  13. 前記固定手段は、熱硬化性樹脂、セラミックあるいはシリケート系材料によって形成されていることを特徴とする請求項3から請求項12のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
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