JP2006260720A - 探針空隙制御方法、及び、記録再生装置 - Google Patents

探針空隙制御方法、及び、記録再生装置 Download PDF

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Abstract

【課題】従来の誘電体記録方式では、探針を記録媒体と接触させ、又は、微小な空隙をあけて情報の記録再生を行っていた。探針を接触させる方式では、探針の磨耗により記録装置の長時間使用ができない、空隙をあける方式では、空隙が記録媒体表面の凹凸により変動するので、信号強度が不安定となり、正確な情報の記録再生ができないという問題があった。
【解決手段】探針を記録媒体に対し非接触とし、高次誘電率の測定により探針と記録媒体間の距離を測定し、ステージ駆動装置をフィードバック制御することにより探針空隙を制御することにした。探針の磨耗を防止し、かつ、正確な情報の記録再生が可能になった。
【選択図】 図1

Description

本発明は、探針を用いて誘電体の微小領域に情報を記録し再生する記録再生装置に関する。
特開2004-127489号公報 特開2002-323432号公報
現在の高度情報化社会の中で、扱われる情報量は年々増大している。情報記録装置の大容量化に伴い、高密度記録に関する研究はますます重要度を増している。
しかし、光記録や磁気記録など既存の原理に基づいた方法では、近い将来、高密度化に物理的限界が来ると言われている。例えば、光記録は、記録ピットの大きさが光の回折限界で規定され、その記録密度は50Gbit/inch2が限界とされる。一方、HDDに代表される磁気記録は、高密度化に伴う磁気の熱揺らぎや符号反転部分でのブロッホ壁の存在により、現在主流の水平磁気記録や、量産が開始されたばかりの垂直磁気記録においても、その記録密度は1Tbit/inch2が限界とされる。
誘電体記録は、SNDM(Scanning Nonlinear Dielectric Microscopy: 走査型非線形誘電率顕微鏡)を応用し、強誘電体からなる記録媒体の微小分極領域(ドメイン)における分極方向を制御し情報を記録する方法で、本願発明者等により研究され、提案されている技術である(特許文献1)。
誘電体記録の再生は、強誘電体材料の非線形誘電率を測定することで、ドメインの分極方向を検出することにより情報を再生する方法である。ドメイン壁を極めて薄くできることから、記録密度の大幅な向上が可能である。図7は、記録再生装置の性能比較表である。誘電体記録は、現在、試作機レベルで記録密度が1Tbit/inch2、研究開発レベルでは8.5Tbit/inch2の記録性能が得られている。垂直磁気記録と比較しても、2桁近い記録密度の向上が可能であり、次世代の超高密度情報記録方式として期待されている。
(従来の記録再生装置)
図8(a)は、従来の誘電体記録再生装置の構成を示す概略図である。図8(a)に示す従来の記録再生装置は、誘電体材料からなる記録媒体102と、探針103、リターン電極104、LC共振器105、発振器106、電源107、108、モード切替えスイッチ109からなる分極情報記録再生部と、F M復調器110、位相検波器111からなる検出信号処理部と、導電性ステージ101、絶縁性ステージ112、図示しないXY駆動装置からなる駆動ステージとから構成される。
分極情報を記録する場合は、モード切替えスイッチ109をパルス電源108側に接続する。この場合の回路構成を図8(b)に示す。XYステージを駆動制御して記録を行うドメイン115上に探針116を移動する。探針116をドメイン115に接触させ、或いは微小間隔をあけて配置する。インダクター118を介して探針116を接地し、パルス電源117から導電性ステージ113に正又は負のパルス電圧を印加する。ドメイン115はパルス電界を印加され、その分極方向が制御される。パルス電圧の印加時間に対しインダクター118のインダクタンスが十分小さいので、インダクターに起因するパルス波形の歪は極めて小さい。
分極情報を再生する場合は、モード切替えスイッチ109を交流電源107側に接続する。発振器106は、LC共振器を構成するインダクターLと探針直下のドメインにおける誘電体の容量Csで決まる周波数で発振する。さらに、リターン電極104を接地し、導電性ステージ101側から交流電源107によりドメインに対し低周波の交流電界を印加すると、記録媒体の持つ非線形誘電効果によりCsが変化し、発振周波数のFM変調が行われる。検出信号処理部でこのFM信号を復調し、さらに位相検波を行って、ドメインに記録された分極情報を再生する。
図8に示す装置を用いた従来の記録再生方法では、探針を記録媒体に接触させ、或いは微小間隔をあけて、ドメイン選択のための探針の水平移動を行っていた。
図4(c)は、従来の探針と記録媒体間に微小間隔をあけて探針を水平移動する場合の概念図であり、探針36の高さを一定にして水平移動していた。記録媒体37の表面には、なめらかに見える場合でも数原子レベル以上の高さの凹凸が存在する。そのため探針と記録媒体間の間隔は探針を水平移動する時に変動する。情報記録時には、探針と記録媒体間の間隔が変動すると、その空間で電圧降下が生じるので、書き込み電圧を一定にしても記録媒体表面に印加される電圧が変動し、正確な情報記録ができない。また、情報再生時には、検出される記録媒体の誘電率信号強度が探針と記録媒体間の距離が離れると大きく減衰するため、正確な情報再生ができないという問題があった。
図4(d)は、従来の探針と記録媒体を接触させて探針を水平移動する場合の概念図である。探針を接触させているため、印加電圧の変動や検出信号強度の変動などの問題は生じないが、探針が磨耗しやすいという問題があり、記録再生装置の実用レベルの長時間連続使用ができないという問題があった。
本発明(1)は、誘電体材料又は絶縁体材料からなる測定対象物に交流電界を印加し、前記交流電界による前記測定対象物の容量変化を探針により測定し、前記容量変化から前記測定対象物の非線形誘電率を検出し、前記非線形誘電率をフィードバック信号として前記測定対象物又は前記探針の位置を制御することにより、前記測定対象物と前記探針の間の距離が一定の目標値になるように制御する探針空隙制御方法である。
本発明(2)は、前記測定対象物の4次の非線形誘電率をフィードバック信号とする前記発明(1)の探針空隙制御方法である。
本発明(3)は、前記目標値が、探針の先端半径×0.01以下であることを特徴とする前記発明(1)又は前記発明(2)のいずれか1項記載の探針空隙制御方法である。
本発明(4)は、前記測定対象物が誘電体材料からなる記録媒体であり、前記記録媒体の分極方向を制御して情報を記録する時、又は、前記記録媒体の分極方向を検出して情報を再生する時に、前記発明(1)乃至前記発明(3)のいずれか1項記載の探針空隙制御方法により前記探針と前記記録媒体の間の距離が一定の目標値になるように制御することを特徴とする記録再生方法である。
本発明(5)は、前記記録媒体の3次の非線形誘電率を測定して、前記記録媒体の分極方向を検出することを特徴とする前記発明(4)記載の記録再生方法である。
本発明(6)は、前記測定対象物が誘電体材料からなる記録媒体であり、情報を記録する探針と情報を再生する探針が同一の探針であり、前記記録媒体に探針により情報を記録する時に、同時に、前記探針により前記記録媒体の容量変化を測定し、前記発明(1)乃至前記発明(3)のいずれか1項記載の探針空隙制御方法により前記探針と前記記録媒体の間の距離が一定の目標値になるように制御することを特徴とする記録再生方法である。
本発明(7)は、少なくとも、分析対象物の容量変化を測定する探針と、前記容量変化から非線形誘電率を算出する信号処理装置と、前記探針又は前記測定対象物の位置制御を行う駆動装置と、前記非線形誘電率をフィードバックして前記駆動装置を制御し前記探針と前記分析対象物の間の距離を一定の目標値になるように制御する駆動制御装置とからなる分析装置である。
本発明(8)は、少なくとも、記録媒体の容量変化を測定する探針と、前記容量変化から非線形誘電率を算出する信号処理装置と、前記探針又は前記測定対象物の位置制御を行う駆動装置と、前記非線形誘電率をフィードバックして前記駆動装置を制御し前記探針と前記記録媒体の間の距離を一定の目標値になるように制御する駆動制御装置とからなる記録再生装置である。
(1)高次の非誘電率を検出し駆動装置をフィードバック制御することにより、探針を非接触に制御しているので、探針が磨耗しにくく、探針を使用した記録再生装置や分析装置の長時間連続使用が可能になる。
(2)探針が記録媒体又は分析対象物と非接触であるため、探針の走査速度が向上する。また、走査系駆動装置に対する負荷を軽減できるという効果もある。
(3)探針空隙を一定に制御しているので、記録再生又は分析の精度向上が可能である。
(4)距離検出信号として信号強度の大きい4次の非線形誘電率を用いることにより、フィードバック制御に必要な十分S/N比の高い検出信号が得られる。
(5)分極情報検出信号として信号強度の大きい3次の非線形誘電率を用いることにより、正確な記録情報の再生に必要な十分S/N比の高い検出信号が得られる。
(6)探針空隙の制御目標値を探針の先端半径×0.01以下とすることにより、十分信号強度の大きい非線形誘電率信号を検出できる。
(7)情報記録時にも、探針によるパルス電界印加と同時に非線形誘電率を測定し、探針空隙を制御することにより、情報記録時の探針磨耗を防止でき、同時に、情報記録精度を向上できる。
以下、本発明に係る各用語の意義について明らかにすると共に、本発明の最良形態について説明する。
(用語の定義)
「探針」とは、記録媒体、測定対象物、又は分析対象物から信号を検出するための部材であり、「探針」には、プローブ、カンチレバーも含まれるものとする。
「探針空隙」とは、探針先端と記録媒体、探針先端と測定対象物、又は、探針先端と分析対象物との間の距離を意味するものとする。
「記録再生装置」は、記録専用装置、再生専用装置、及び、記録再生兼用装置を含むものとする。
(本発明の記録再生装置)
図1は、本発明の誘電体記録再生装置の構成を示す概略図である。図1に示す本発明の記録再生装置は、誘電体材料からなる記録媒体2と、誘電体記録媒体2に対し電界を印加する探針3、探針3から記録媒体2に印加された高周波電界が戻るリターン電極4、探針3とリターン電極4の間に設けたLC共振器5、LC共振器5を構成するインダクタンス及びキャパシタンスで決まる発振周波数で発振する発振器6、再生時に記録媒体に交流電界を印加する交流電源7、記録時に記録媒体に対しパルス電界を印加するパルス電源8、記録モードと再生モードを切り替えるモード切替えスイッチ9からなる分極情報記録再生部と、FM復調器10、位相検波器11、12、プリアンプ13、ステージ駆動制御回路14からなる検出信号処理部と、記録媒体2の位置制御を行う駆動ステージとから構成される。駆動ステージは、記録媒体を保持する導電性ステージ1と、記録媒体の位置の微調整を行う圧電駆動ステージ15と、記録媒体の位置の粗調整を行うメカニカルステージ16とから構成される。
探針3は、導電性の部材、又は絶縁性部材に導電性膜を被覆したものであり、誘電体記録媒体2に対向する探針先端部は、例えば、所定の半径を有する円形状に加工されている。探針の先端部の半径は記録媒体に記録される分極ドメインの半径を決める重要な要素である。通常、大面積走査用には電解研磨したタングステン探針(先端半径25nm〜1μm)を用い、高分解能用探針としては金属コーティングした導電性のカンチレバー(先端半径25nm)を用いている。最新の技術ではカーボンナノチューブなどの材料を用い、先端部半径が10nmオーダーの極めて微細な探針を用いることができる。
リターン電極4は、探針3を取り巻くように設けられており、例えば、図1に示すようなリング平板状のものを用いることができる。なお、高周波電界が大きな損失を生じずにリターン電極4に戻るものであれば、その形状や配置は任意に設定することができる。
LC共振器5を構成するインダクターLは、探針3とリターン電極4の間に設けられている。インダクターLは、例えば、マイクロストリップラインで形成される。インダクターLと分極ドメインの容量CsによりLC共振器5が構成されており、その共振周波数はf = 1/(2π√LCs)で表される。インダクターLの値は、例えば、fが1GHz程度になるように設定される。LC共振器5内の寄生容量はできるだけ小さくすることが好ましい。特に、分極ドメイン容量Csに比較し寄生容量を小さくすることで、分極情報の読取り感度を向上させることが可能である。
発振器6は、LC共振器5の共振周波数fで発振する。さらに、リターン電極4を接地し、導電性ステージ1側から交流電源7によりドメインに対しLC共振周波数(発振周波数f = 約1GHz〜10GHz)に対し十分低い周波数(約5kHz〜10MHz)の交流電界を印加すると、記録媒体の持つ非線形誘電効果によりCsが変化し、発振周波数のFM変調が行われる。FM信号をFM復調器10で復調し、さらに、FM復調器10から出力される高次誘電率信号のうちε(3)の信号を位相検波器11で検波して、ドメインに記録された分極情報を再生する。
本発明の記録再生装置の特徴は、FM復調器10から出力される高次誘電率信号のうちε(n)(n=偶数、n≧4)の信号を位相検波器12で検波し、探針空隙に対応して変化する信号を得て駆動装置15をフィードバック制御することにより、探針空隙を一定に制御することにある。現在利用可能な、例えば、圧電素子を用いた駆動装置を用いることにより、サブÅレベルの超高精度空隙制御を実現することが可能である。図1においては、探針3の高さを固定し記録媒体を保持するステージを垂直方向に駆動することにより探針空隙を制御しているが、ステージの高さを固定し探針3を垂直方向に駆動することで探針空隙を制御することも可能である。
記録媒体2は、図1に示すような誘電体からなる平板状の媒体であってもよいし、金属などの導電性基板上に誘電体材料からなる薄膜をスパッタリングなどの方法で形成した媒体であってもよい。記録媒体2の形状は、例えばディスク形態やカード形態とすることができる。記録媒体のアドレス制御(記録ドメインの選択)は、例えば、記録媒体2と探針3の相対的な水平(XY方向)位置制御により行う。移動体は、記録媒体2、探針3のいずれか又は両方であってもよい。移動形態は、回転、直線移動のいずれでもよい。
(記録媒体の材料)
記録媒体を構成する誘電体材料としては、例えば以下に示す材料を用いることができる。
(a)PbTiO3-PbZrO3の固溶体であるPZT材料
(b)PbTiO3で表されるチタン酸鉛
(c)PbZrO3で表されるジルコン酸鉛
(d)BaTiO3で表されるチタン酸バリウム
(e)LiNbO3で表されるニオブ酸リチウム
(f)LiTaO3で表されるタンタル酸リチウム
(g)鉛(Pb)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)系の固溶体であるPLZT材料
(h)ビスマス(Bi)、ナトリウム(Na)、鉛(Pb)、バリウム(Ba)系の固溶体であるBNPB材料
前記材料は、単結晶、多結晶、非晶質のいずれの構造の材料も使用できる。また、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデンと三フッ化エチレンの共重合体、フッ化ビニリデンと四フッ化エチレンの共重合体、シアノビニリデンと酢酸ビニルの共重合体などの圧電性高分子材料も用いることができる。さらに前記材料を複数組み合わせた複合材料を用いることもできる。
(線形、非線形誘電率の測定原理)
以下、走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)を用いた誘電率の測定原理について説明する。なお、SNDMを用いた誘電率の測定技術自体は、公知の技術である(特許文献2)。SNDMは、機械的、熱的応答である圧電又は焦電応答を用いずに、純粋に電気的応答を用いて試料(記録媒体)の分極分布を測定するものである。そのため、その測定分解能はサブナノメータのオーダーに達しており、極微小領域の分極分布を観察する方法として優れた測定法である。
本発明に係る誘電率の測定方法は、試料に外部電源により交流電界を印加し、該交流電界により変化する試料の微分容量を微小高周波電界で測定し、測定した微分容量から線形、非線形の誘電率を分離して求めるものである。
最初に、本明細書で用いる誘電率の定義を行う。試料の残留分極方向をZ軸方向(一般的に試料に対し垂直方向)とし、簡単のため、外部印加電界Ep、測定電界EmのいずれもZ軸方向のみの変化を考える。誘電体又は絶縁体中での電束密度Dと電界Eとの関係は非線形成分まで考慮すると、
D = Pr + ε(2)・E + 1/2・ε(3)・E2 + 1/6・ε(4)・E3 + 1/24・ε(5)・E4 + ・・・ (1)
で表される。ここで、Prは残留分極を表し、展開係数ε(2)、ε(3)、ε(4)、ε(5)をそれぞれ2次、3次、4次、5次の誘電率と呼ぶ。ε(2)は線形誘電率であり、ε(n)(n≧3)は非線形誘電率である。通常の電束密度と電界の関係式では、ここで定義した係数と異なる次数の係数が用いられる場合もあるので、注意が必要である。
試料に外部電源により比較的大きい振幅Ep0と比較的低い角周波数ωpを持つ交流電界Epを印加する。この時のD-E曲線の傾きの変化、すなわち微分容量の変化を測定して、非線形誘電率を求める。微分容量の変化を測定するために、比較的小さい振幅Em0と比較的高い角周波数ωmを持つ測定用電界Emを印加する。外部印加電界Ep、測定電界Emは以下の式で表される。
Ep = Ep0・cosωpt (2)
Em = Em0・cosωmt (3)
ただし、Ep0 ≫ Em0, ωp ≪ ωm
また、
E = Ep + Em (4)
である。(2)、(3)、(4)式を(1)式に代入する。Em0 n(n≧2)は無視するものとする。
D = Dp + Dm (5)
Dp = Pr + ε(2)・Ep + 1/2・ε(3)・Ep 2 + 1/6・ε(4)・Ep 3 + 1/24・ε(5)・Ep 4 + ・・・ (6)
を考慮すると、高周波電界により測定される電束密度Dmと測定電界Emの関係式は、
Dm = (ε(2) + ε(3)・Ep + 1/2・ε(4)・Ep 2 + 1/6・ε(5)・Ep 3)・Em (7)
となる。外部電界により変化する試料の微分容量Cs(t)は、
Cs(t) = Cs0 + △Cs(t) (8)
で表されるので、(7)、(8)式より
△Cs(t)/Cs(t) = (ε(3)/ε(2))・Ep0・cosωpt + 1/4・(ε(4)/ε(2))・Ep0 2・cos2ωpt
+ 1/24・(ε(5)/ε(2))・Ep0 3・cos3ωpt + ・・・ (9)
が成り立つ。
式(9)より、試料の容量を測定し、印加交流電界と同じ角周波数ωpで変動する容量変化成分を取り出すことによりε(3)のみ独立して求めることができる。同様に、2ωpで変動する容量変化成分を取り出してε(4)、3ωpで変動する容量変化成分を取り出してε(5)を独立に求めることができる。
(分極情報の再生)
以上の測定原理の項で説明した外部印加電界、測定電界は、図1に示す本発明の記録測定装置において、それぞれ、交流電源7により記録媒体2に印加する電界、及び、発振器6により出力、印加される電界に対応する。発振器6の出力信号は記録媒体の微分容量により変調されFM信号となる。このFM信号は、FM復調器10により復調される。復調された信号に対し、位相検波器を用いて印加交流電界と同じ周波数成分を検出すればε(3)を、2倍の周波数成分を検出すればε(4)を、3倍の周波数成分を検出すればε(5)をそれぞれ他の非線形誘電率から分離して測定することができる。また、線形誘電率ε(2)は、キャリア周波数を測定することにより直接測定することができる。
(高次非誘電率による距離検出、探針空隙制御)
本願発明者は、SNDMにより誘電体の非線形誘電率を測定し、非線形誘電率の探針空隙及び探針先端半径に対する依存性を調べた。その結果、非線形誘電率の信号強度が探針空隙hを先端半径aで割った変数h/aに依存し、h/aが小さくなると信号強度が大きくなり、特にh/aが小さい領域で信号強度のh/aに対する変化率、すなわち垂直距離感度が高くなることを初めて見出した。
図2は、探針と記録媒体間の空隙の概念図である。誘電体からなる記録媒体21の上部に非接触で探針22を近接させる。探針22と記録媒体21とは、距離hだけ離れている。探針22の先端半径はaで表される。
図3(b)は、プローブ半径による空隙の規格化を説明する概念図である。測定に用いた記録媒体の材料はLiNbO3であり、その線形誘電率ε(2)は、27.9であった。図3(a)は、ε(3)、ε(4)の信号強度のh/a依存性を示すグラフである。図3(a)に示すように、ε(4)信号はε(3)信号よりもh/a依存性が大きく、垂直距離感度が高いことがわかる。従って、ε(4)信号を用いることにより、高感度の距離測定を行うことが可能である。この知見に基づき本願発明者は、探針を記録媒体からわずかな距離だけ浮かせた状態で、ε(4)信号を距離測定に用い、記録媒体を保持する圧電ステージの駆動装置をフィードバック制御して圧電ステージの高さ制御を行い、探針空隙を一定にする本発明に係る技術を完成するに至った。
(非線形誘電率の性質)
偶数次の非線形誘電率には誘電体の分極方向に依存性がなく、従って、分極情報の検出に用いることはできない。しかし、分極方向により正負が反転しないので、分極方向に関らず距離情報を検出できるという利点がある。一方、奇数次の非線形誘電率は誘電体の分極方向に依存性があり、分極情報の検出に用いることができるが、分極方向により符号が反転するため、距離測定信号に用いるためには絶対値アンプなどによる信号処理が必要である。
また、高次の非線形誘電率ほど、水平方向感度及び垂直方向感度が高くなるが、信号強度は小さくなる。
従って、現在利用できる誘電体材料や探針の性能を考慮すると、分極情報の検出には検出信号強度の大きいε(3)を用いることが好ましい。また、距離情報の検出には距離感度がε(3)よりも大きく、分極方向により符号が反転しないε(4)を用いることが好ましい。ε(4)はε(6)などさらに高次の非線形誘電率と比較して信号強度が大きい点で有利である。
(探針空隙の自動制御)
垂直距離感度の高い、例えばε(4)信号をフィードバック信号として、通常のフィードバック制御技術を用いて、記録媒体や探針の位置制御を行い、探針空隙を自動制御する。図4(a)は、本発明の記録再生方法による探針の軌跡を示す概念図である。分極情報の検出信号強度を大きくしたいので、探針32は記録媒体にできるだけ近接させるのが好ましい。しかし、探針と記録媒体が接触すると探針の磨耗が生じるので、探針空隙は、少なくとも数原子のレベル(数Å)離間させて制御するのが好ましい。また、図3(a)のデータから、探針空隙はh/a換算で0.01を越えると信号強度が小さくなるので、0.01以下に制御するのが好ましい。すなわち、探針空隙hは探針の先端半径×0.01以下とするのが好ましい。
(情報記録時の探針空隙の制御)
情報記録時も探針空隙を一定に保持することができれば、記録媒体に印加されるパルス電界が安定するので、正確な情報記録ができ有利である。従って、情報記録時にも、非線形誘電率を測定して探針空隙を制御するのが好ましい。分極情報の記録と距離測定のための誘電率測定は、一本の探針により同時に行うことが可能である。図1では、記録時にはモード切替えスイッチ9により導電性ステージ1をパルス電源8側に接続し、交流電源7からの交流電界の印加を行わないようにしているが、この時、パルス電界と交流電界を同時に記録媒体に印加することも、それぞれの周波数領域を分離することにより可能になる。情報再生時だけでなく、パルス電界を印加し情報の記録を行う時も、同時に非線形誘電率を測定し探針空隙を制御することで、探針の磨耗を防止する効果を高めることができる。
(記録専用探針、距離測定専用探針)
記録用探針や距離測定用探針を再生用探針と別に設けて、探針の形状、太さ、材質をそれぞれの用途に適したものにすることも可能である。この場合でも、図4(b)に示すように、複数の探針の相対位置を固定することにより、ひとつの探針で得た距離情報により複数の探針の空隙を同時に制御することができる。
(記録再生装置以外の応用)
本発明の探針空隙制御方法は、誘電体記録再生装置以外にも、例えば、試料の凹凸や表面形状観察を行う、或いは、試料の分極分布、誘電率分布を測定する顕微鏡などの分析装置に応用することができる。観察、分析対象の試料の材料は記録媒体に用いられる誘電体材料に限らない。非線形誘電率は絶縁物一般に存在する定数であり、本発明の方法により、絶縁物一般の観察や分析を行うことが可能である。
本発明の記録再生装置を用い、探針空隙を非接触かつ一定に制御し、同時に、分極記録ビットの情報を正しく再生できることを確認する試験を行った。
(試験用記録媒体の作製)
今回行った試験では本発明の記録再生装置の動作を確認するために、意図的に表面に段差をつけた記録媒体を作成した。最初に、図1に示す構成の本発明の記録再生装置を用い、LiNbO3単結晶記録媒体に周期的に分極反転処理を施した。さらに、処理を施した記録媒体の表面にフッ酸処理を行って、表面に凹凸をつけた記録媒体(PPLN: Periodically Poled LiNbO3)を作製した。LiNbO3は負の分極面のみ選択的にエッチングされる性質があるため、図5(a)に示すように分極分布に対応して表面に凹凸が現れる。図5(b)は、接触段差計を用いて測定したPPLNの表面凹凸像であり、今回の試験に用いたPPLNには約130nmの段差があることが確認できた。
(分極情報の再生と探針空隙の自動制御)
次に、図1に示す構成の本発明の記録再生装置を用い、作製したPPLNの分極情報を再生した。再生結果を図6(a)〜(d)に示す。それぞれのデータ内容は以下の通りである。

(a):ε(3)像(分極の大きさと符号を同時に含んだ信号)
(b):位相像(分極の上下のみの情報、又は記録の1、0に相当する情報)
(c):PPLN表面の凹凸像
(d):ε(3)信号と凹凸の1次元像
(a)、(b)に示すデータから、分極情報が正しく記録再生されていることがわかる。(c)、(d)に示す凹凸信号のデータは、探針先端部と記録媒体の距離を一定に保つために実際にZ軸の圧電ステージが動いた量を示している。図5(b)に示す他の方法(接触段差計)で独立に測定した段差と同じ高さの段差だけ圧電ステージが動いており、探針を非接触状態にしてその先端部と記録媒体の距離を一定に保ちつつ、分極情報を正確に再生可能であることが確認できた。
以上のように、本発明に係る記録再生装置は、探針を記録媒体に対し非接触とし探針空隙を制御することにより探針の磨耗を防止することが可能で、超高密度情報記録装置の実用化に有用な技術である。
本発明の記録再生装置の構成を示す概略図である。 探針と記録媒体間の空隙の概念図である。 (a)は、高次非線形誘電率信号強度の空隙依存性を示すグラフである。(b)は、プローブ半径による空隙の規格化を説明する概念図である。 (a)、(b)は、本発明の記録再生方法による探針の軌跡を示す概念図であり、(c)、(d)は、従来の記録再生方法による探針の軌跡を示す概念図である。 (a)は、フッ酸処理したLiNbO3からなる記録媒体の概念図である。(b)は、LiNbO3からなる記録媒体の凹凸分布を示すグラフである。 (a)乃至(d)は、凹凸のある記録媒体を用いた記録再生結果を示す図である。 記録再生装置の性能比較表である。 (a)は、従来の記録再生装置の構成を示す概略図である。(b)は、分極情報記録方法を説明する図である。
符号の説明
1、101、113 導電性ステージ
112 絶縁性基板
2、21、23、102、114 誘電体記録媒体
115 ドメイン
3、22、24、103、116 探針
4、104 リターン電極
5、105 LC共振器
6、106 発振器
7、107 交流電源
8、108、117 パルス電源
9、109 モード切り替えスイッチ
10、110 FM復調器
111 オシロスコープ
118 インダクター
11、12、111 位相検波器
13 プリアンプ
14 ステージ駆動制御回路
15 圧電駆動ステージ
16 メカニカルステージ
31、33、37、39 誘電体記録媒体
32、36、38 探針
34 分極情報検出用探針
35 距離情報検出用探針

Claims (8)

  1. 誘電体材料又は絶縁体材料からなる測定対象物に交流電界を印加し、前記交流電界による前記測定対象物の容量変化を探針により測定し、前記容量変化から前記測定対象物の非線形誘電率を検出し、前記非線形誘電率をフィードバック信号として前記測定対象物又は前記探針の位置を制御することにより、前記測定対象物と前記探針の間の距離が一定の目標値になるように制御する探針空隙制御方法。
  2. 前記測定対象物の4次の非線形誘電率をフィードバック信号とする請求項1記載の探針空隙制御方法。
  3. 前記目標値が、探針の先端半径×0.01以下であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の探針空隙制御方法。
  4. 前記測定対象物が誘電体材料からなる記録媒体であり、前記記録媒体の分極方向を制御して情報を記録する時、又は、前記記録媒体の分極方向を検出して情報を再生する時に、請求項1乃至3のいずれか1項記載の探針空隙制御方法により前記探針と前記記録媒体の間の距離が一定の目標値になるように制御することを特徴とする記録再生方法。
  5. 前記記録媒体の3次の非線形誘電率を測定して、前記記録媒体の分極方向を検出することを特徴とする請求項4記載の記録再生方法。
  6. 前記測定対象物が誘電体材料からなる記録媒体であり、情報を記録する探針と情報を再生する探針が同一の探針であり、前記記録媒体に探針により情報を記録する時に、同時に、前記探針により前記記録媒体の容量変化を測定し、請求項1乃至3のいずれか1項記載の探針空隙制御方法により前記探針と前記記録媒体の間の距離が一定の目標値になるように制御することを特徴とする記録再生方法。
  7. 少なくとも、分析対象物の容量変化を測定する探針と、前記容量変化から非線形誘電率を算出する信号処理装置と、前記探針又は前記測定対象物の位置制御を行う駆動装置と、前記非線形誘電率をフィードバックして前記駆動装置を制御し前記探針と前記分析対象物の間の距離を一定の目標値になるように制御する駆動制御装置とからなる分析装置。
  8. 少なくとも、記録媒体の容量変化を測定する探針と、前記容量変化から非線形誘電率を算出する信号処理装置と、前記探針又は前記測定対象物の位置制御を行う駆動装置と、前記非線形誘電率をフィードバックして前記駆動装置を制御し前記探針と前記記録媒体の間の距離を一定の目標値になるように制御する駆動制御装置とからなる記録再生装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008112552A (ja) * 2006-10-27 2008-05-15 Samsung Electronics Co Ltd データ保存のための強誘電体薄膜の製造方法及びそれを利用した強誘電体記録媒体の製造方法
JP2011075465A (ja) * 2009-09-30 2011-04-14 Sii Nanotechnology Inc 誘電率の測定方法及び走査型非線形誘電率顕微鏡

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