JP2006258040A - 高速ポンプのインデューサ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 キャビテーションサージによる圧力振動を抑制することができ、ポンプの吸込性能を維持することができる高速ポンプのインデューサ装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、液体を加圧する遠心型高速ポンプにおける遠心インペラ10の上流側に配設され、回転駆動される軸部24とその外周部に螺旋状に形成された羽根26とを有し上流側からの液体を昇圧して下流側に流すインデューサ本体22と、これを囲むインデューサケーシング21とを備えた高速ポンプのインデューサ装置であり、インデューサケーシング21は、インデューサ本体22の羽根26を所定のチップクリアランスを空けて囲む部分30と、この部分の上流側に連続して形成されこの部分30の内径より大きい内径をもつ拡径部32と、32拡径部の上流側に連続して形成され拡径部32の内径より小さい内径をもちインデューサ本体22の羽根26の外周部で発生する逆流を阻止する段差部34と、を有している。
【選択図】 図2

Description

本発明は、遠心型高速ポンプの吸込性能を維持させるために遠心インペラの上流側に配設されるインデューサ装置に関する。
ロケットエンジン用など、高圧の液体水素或いは液体酸素を供給する装置としては、高速にて回転駆動される遠心型高速ポンプ(ターボポンプ)が使用される。そして、このような高速ポンプでは、その吸込性能を維持させるために遠心インペラに発生するキャビテーションを抑制するインデューサ装置を設けている。図16は、従来の高速ポンプの一例を示すものであり、ポンプ本体50と、インデューサ装置60を備えている。ポンプ本体50は、本体ケーシング52内に遠心インペラ54が収容され、遠心インペラ54には回転軸56を介してタービン58が連結されている。インデューサ装置60は、インデューサケーシング62内にインデューサ本体64を収容し、インデューサ本体64は延長軸66を介して回転軸56と同軸上に連結されている。このように構成された高速ポンプでは、高温高圧のガスでタービン58が回転して遠心インペラ54が回転すると、これと同期してインデューサ本体が回転することで、液体燃料を昇圧して高速ポンプの吸入口まで導き、遠心インペラ54の高速回転により加圧してエンジン等に供給することができる。
ところで、上述した高速ポンプでは、低圧の液体燃料を高圧にして供給するものであることから、インデューサの羽根で部分的なガス化によりキャビテーションが発生する。このキャビテーションに起因する不安定現象には、旋回キャビテーションとキャビテーションサージがある。旋回キャビテーションは周方向の流体振動現象であり、大きくなったり小さくなったりと振動し、お互いに連動して大きな力を各翼に作用させる。そして、この旋回キャビテーションは、振動がインデューサの回転速度より速く伝わることから、インデューサに回転非同期の軸振動を誘発してしまうという問題がある。
一方、キャビテーションサージは軸方向の流体振動現象である。キャビテーションサージは、主に吸込流量とキャビテーション体積の関係に起因する現象であり、吸込流量に対してキャビテーション体積の変化が負になる場合に生じる。このような状態では、吸込流量が増大するとキャビテーション体積が減少し、この減少量を補うために吸込流量が更に増大して流れの不安定化を引き起こし、流量と圧力の大きな変動が生じる。
上述した旋回キャビテーションを抑制するものとして下記特許文献1に先行技術が開示されている。特許文献1の「インデューサ装置」は、図17に示すように、羽根車70の流路を区画するケーシング72の入口側に、この羽根車70を囲む区画の内径D2より大きな内径D1の拡径部74を設けると共に、これらを滑らかに接続する傾斜部76を形成したものである。したがって、拡径部74を通った液体燃料は、傾斜部76に沿って円滑に流れ、羽根車70に取り込まれる際に、この羽根車70に発生する旋回キャビテーションと主流となる液体燃料の流れと相互干渉を弱め、実質的に旋回キャビテーションを抑制することができる。また、下記非特許文献1には、インデューサの前方に、ケーシング内径よりわずかに小さい外径をもつ円筒形状のサクションリングを設け、これにより旋回キャビテーションを抑制することが記載されている。
また、キャビテーションサージを抑制するものとして、ケーシング段差形状や、インデューサの羽根とケーシングの隙間を調整する方法がある。また、下記非特許文献2には、インデューサの前方のケーシング内面に軸対象障害板を設けることによりキャビテーションサージを抑制する方法が記載されている。
特許第2704992号公報 ターボ機械、20巻第4号33−39項、1992年4月 キャビテーションに関するシンポジウム(第12回)講演論文集、77−80項、2004年3月
しかしながら、上述した特許文献1に開示されたインデューサ装置や非特許文献に開示されたサクションリングでは、旋回キャビテーションを抑制することができるものの、キャビテーションサージを抑制することができないという問題があった。
また、上述したケーシング段差形状やインデューサの羽根とケーシングの隙間を調整する方法、非特許文献2に開示された軸対象障害板では、吸込性能が悪化しポンプ揚程が低下するという問題があった。
本発明はかかる事情に鑑み、キャビテーションサージによる圧力振動を抑制することができ、ポンプの吸込性能を維持することができる高速ポンプのインデューサ装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、液体を加圧する遠心型高速ポンプにおける遠心インペラの上流側に配設され、回転駆動される軸部とその外周部に螺旋状に形成された羽根とを有し上流側からの液体を昇圧して下流側に流すインデューサ本体と、これを囲むインデューサケーシングとを備えた高速ポンプのインデューサ装置であって、前記インデューサケーシングは、インデューサ本体の羽根を所定のチップクリアランスを空けて囲む部分と、この部分の上流側に連続して形成され該部分の内径より大きい内径をもつ拡径部と、該拡径部の上流側に連続して形成され該拡径部の内径より小さい内径をもち前記インデューサ本体の羽根の外周部で発生する逆流を阻止する段差部とを有する、ことを特徴としている(請求項1)。
また、上記本発明において、前記段差部の下流端は、段差部が無い場合における逆流発生領域の流れ方向中央部近傍に位置する、ことが好ましい(請求項2)。
また、上記本発明において、前記段差部の下流端は、段差部が無い場合における逆流発生領域の流れ方向中央部より下流側に位置する、ことが好ましい(請求項3)。
また、上記本発明において、前記拡径部の軸方向長さは、インデューサ本体の入口径の15〜25%である、ことが好ましい(請求項4)。
また、上記本発明において、前記段差部の内径は、インデューサ本体の入口径より小さく、かつ、該入口径の90%以上である、ことが好ましい(請求項5)。
また、上記本発明において、前記拡径部と段差部の内径の差は、前記チップクリアランスの3〜7倍である、ことが好ましい(請求項6)。
また、上記本発明において、前記インデューサケーシングは、さらに、前記段差部の上流側に連続して形成され上流側に向かって内径が漸増する傾斜部を有する、ことが好ましい(請求項7)。
高速ポンプが作動しインデューサが回転させられると、インデューサの羽根の外周部前縁部から、主流とは逆方向の流れをもつ逆流キャビティが発生する。そして、この逆流キャビティが発生する逆流発生領域(図4参照)はある周波数でもって軸方向(流れ方向)に伸縮し、この体積変化に伴う圧力変動がキャビテーションサージの主要原因となる。本発明者らは、この逆流キャビティの伸縮による体積変化を抑制することにより、キャビテーションサージを抑制することができることを発見した。本発明は、かかる新たな知見に基づくものである。
すなわち、本発明の高速ポンプのインデューサ装置によれば、インデューサケーシングに設けられた段差部(逆流返し)によりインデューサの羽根の外周部で発生する逆流を一定位置で阻止し、これにより逆流キャビティが伸縮するのを抑制する。これにより、逆流キャビティの体積変化が少なくなり、逆流発生領域を安定化させ、キャビテーションサージによる圧力変動を抑制することができる。
また、インデューサケーシングには、段差部の上流側に連続して形成され上流側に向かって内径が漸増する傾斜部が設けられているので、段差部がインデューサ入口の流れを妨げることがない。このため、ポンプの吸込性能を悪化させることがなく、ポンプ揚程を低下させることがない。
つまり、本発明によれば、キャビテーションサージによる圧力変動を抑制することができ、しかも、ポンプの吸込性能を維持できるという優れた効果が得られるのである。
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する。
図1は、本発明のインデューサ装置を備えた遠心型高速ポンプ(以下、高速ポンプということがある)の構成の一例を示す図である。この高速ポンプは、ポンプ本体2とインデューサ装置20とから構成されている。ポンプ本体2は、中空の本体ケーシング4内に回転軸6が軸受8により回転自在に支持され、この回転軸6の一端部に遠心インペラ10が連結されており、他端部にタービン12が連結されている。また回転軸6の一端部には同軸上に回転自在に支持された延長軸14が連結されている。そして遠心インペラ10の吸込側(上流側)にはインデューサ装置20が連結されている。なお、符号16はインデューサにより昇圧された後の液体を遠心インペラ10へ導くための静翼であり、符号18は延長軸14を回転自在に支持するための軸受である。
このインデューサ装置20は、インデューサ本体22と、このインデューサ本体22を囲むインデューサケーシング21とから構成されている。インデューサ本体22は延長軸14の先端部に装着されており、延長軸14に連結される軸部24と、この軸部24の外周面に螺旋状に固定された複数(この例では3枚)の羽根26とから構成されている。また、インデューサケーシング21は、中空円筒形をなし、ポンプ本体2側に形成されたフランジ部21aにおいて本体ケーシング4の上流側に形成されたフランジ部4aとボルト等により連結されている。そして、このインデューサ装置20の上流側には低温低圧の液体燃料が収容された図示しないタンクが連結されている。なお、インデューサ本体22の羽根26は3枚に限られず、例えば4枚等、ポンプの種類等に応じて適正数に設定することができる。
このように構成された高速ポンプでは、タービン12が高温高圧のガスの作用で回転させられると、これと同軸の遠心インペラ10が回転駆動されるとともに、インデューサ本体22が回転駆動される。すると、この回転により、タンクからの液体燃料が昇圧され軸方向へ送り出され、高速ポンプの吸込口まで導かれる。高速ポンプは、タンクからの液体燃料をインデューサ本体22により昇圧して遠心インペラ10側に流し、遠心インペラ10の高速回転によりさらに高圧に加圧して吐出するようになっている。
図2は、図1に示したインデューサ装置10の上半分を拡大して示した構成図である。この図に示すように、インデューサケーシング21は、ともに中空円筒形をなす外側構造部21Aと内側構造部21Bとから構成されており、内側構造部21Bが外側構造部21Aの内側に装着されている。そして内側構造部21Bはその上流側外周部に形成されたフランジ部にてボルト等により固定されている。また、この内側構造部21Bは、インデューサ本体22の羽根26を所定のチップクリアランスを空けて囲む部分30と、この部分30の上流側に形成された拡径部32と、拡径部32の上流側に形成された段差部34と、段差部34の上流側に形成された傾斜部36とを有している。
拡径部32は、インデューサ本体22の羽根26の前縁部分と軸方向位置がオーバーラップし上流側に向かって内径が漸増するオーバーラップ部32aと、オーバーラップ部32aの上流側端部から内径が軸方向に一定の平行部32bとからなる。つまり、拡径部32は、インデューサ本体22の羽根26を囲む部分に連続して形成されていて、この部分の内径より大きい内径を持っている。段差部34は、拡径部32の上流側に連続して形成されていて、拡径部32の内径より小さい内径を持っている。また、段差部34は、その下流側端面が、インデューサ本体22の羽根26の外周部で発生する逆流Rを阻止する(食い止める)ように軸方向に対して垂直な逆流返し面34aとなっている。以下、この段差部35を「逆流返し」と呼ぶことにする。この逆流返し面34aは、逆流Rを効果的に阻止し得るように、段差部34が無い場合における逆流発生領域(図4参照)の流れ方向中央部近傍に位置しているのが好ましい。また、この例のように、逆流返し面34aは流れ方向中央部より若干下流側に寄った位置にするのがより好ましい。傾斜部36は、段差部34の上流側に連続して形成され上流側に向かって内径が漸増している。
なお、この実施形態では、インデューサケーシング21は外側構造部21Aと内側構造部21Bとからなる構成としたが、これらを一体に形成したものであってもよい。また、この実施形態では、インデューサ本体22の羽根26は下流側に向って外径が漸増しているが、外径が一定のものであってもよい。
次に、このように構成されたインデューサ装置20の作用について説明する。上述のように高速ポンプが作動しインデューサ本体22が回転させられると、図2に示すように、インデューサ本体22の羽根26の外周前縁部から、主流とは逆方向に流れる逆流Rが生じ、この逆流Rの中に逆流キャビティが発生する。そして、この逆流Rは上流側に向かって流れるが、インデューサケーシング21の内側構造部21Bに形成された段差部34の逆流返し面34a(逆流返し)によって、流れ方向が反転させられる。つまり、その位置で逆流Rが阻止されるのである。すると、これにより逆流キャビティが軸方向に伸縮するのを抑制するため、逆流キャビティの体積変化が少なくなる。キャビテーションサージは、逆流キャビティの体積変化による圧力変動に起因して生じると考えられるから、その体積変化を少なし逆流発生領域を安定化させ圧力変動を抑制することにより、キャビテーションサージを抑制することができるのである。
また、インデューサケーシング21の内側構造部21Bには、段差部34の上流側に連続して形成され上流側に向かって内径が漸増する傾斜部36が設けられているため、上流側から導入された液体燃料は傾斜部36に沿って流れるから、段差部34がインデューサ入口の流れを妨げることがない。このため、ポンプの吸込性能を悪化させることがなく、ポンプ揚程の低下を招くことがないのである。
本発明者らは、本発明の作用効果を確認するめの試験を実施した。以下、この試験を実施例として説明する。
試験は、専用の試験設備を用い、以下の試験条件の下で実施した。
<試験条件>
1.作動流体 :水
2.試験用ポンプ回転数N:N=6000[rpm]
3.ポンプ流量比 :Q/Qd=0.95、1.01、1.04、1.07、1.10
なお、上記ポンプ流量比において、Qdは試験用ポンプの設計流量であり、Qは作動時における実際の流量である。また、試験用ポンプの性能保障作動範囲は、設計流量比±4%である。
図3は、本試験に使用したインデューサケーシングの逆流返し形状を示す図である。この図において、aは拡径部の軸方向長さ、bはインデューサ本体の入口径、cは段差部の内径、dは段差高さ(拡径部と段差部の内径の差)、eはチップクリアランスであり、寸法比a/b=0.234、c/b=0.990、d/e=7である。
図4は、逆流返しが無い従来のインデューサ装置についてのCFD解析結果を示している。この図において、インデューサ本体22の羽根26の外周前縁部から上流側に向かって延びている色の薄い部分が逆流発生領域である。また、このCFD解析結果に上述した本発明のインデューサ装置における逆流返しの形状を乗せた状態を、図中の実線で示す。本試験では、逆流返しの位置は、流れ方向中央部より若干下流側に寄った位置としている。
次に、試験結果について説明する。
図5〜図7は、キャビテーション係数を時間の経過とともに下げていったときのタンク圧とポンプ出口全圧のデータを各流量比別に示すものであり、それぞれ順にQ/Qd=1.01、1.04、1.07のときのデータを示している。これらの図において、横軸は時間[sec]、縦軸はキャビテーション係数(左側)と圧力(右側)である。また、Kはキャビテーション係数、P1はタンク圧、P2はポンプ出口全圧である。
キャビテーション係数Kは、キャビテーションの発生条件を表す係数であり、次の式で表される。
K=(P−P)/(ρV/2)
ここで、Pは十分上流における静圧(Pa)、Pは飽和蒸気圧(Pa)、ρは密度(kg/m)、Vは十分上流における流速(m/s)である。但し、本試験における実際の計算では、P、Vは、インデューサ入口における値を用いている。
図8はQ/Qd=1.04における圧力変動の拡大図である。また、各図において、(A)は逆流返し有り(本発明)の場合を示し、(B)は逆流返し無し(従来例)の場合を示している。
図8から、逆流返し無しの場合は、約14[Hz]の大きな圧力変動が見られる。そして、図5〜図8から分かるように、逆流返し無しの場合は、タンク圧、出口全圧ともに圧力変動が大きいのに対し、逆流返し有りの場合は、タンク圧、出口全圧ともに圧力変動が小さい。このことから、逆流返し有りの場合は、圧力変動抑制効果が高いことが分かる。なお、圧力変動の周波数は、流量比やキャビテーション係数により若干変化するが、逆流返しの有無によらず15[Hz]前後であった。
ここで、図5〜図8における15[Hz]前後の圧力変動がキャビテーションサージによるものであるか否かを確認するため、圧力変動の位相差を解析した。この解析では、インデューサ中間部において周方向に90度の位相差のある壁圧2箇所における圧力変動位相の解析を、Q/Qd=1.01と、Q/Qd=1.10の場合について行った。すると、流量比によらず壁圧2箇所の圧力変動の位相は同期していることが分かった。このことから上述した15[Hz]前後の圧力変動はキャビテーションサージによるものと判断することができる。そこで、以下、この圧力変動をキャビテーションサージとして説明する。
さて、図5〜7から、逆流返しによるキャビテーション抑制効果が顕著に見られるのは、Q/Qd=1.01、1.04、1.07の場合である。また、Q/Qd=0.95でも若干の抑制効果が見られた。一方、Q/Qd=1.10ではほとんど抑制効果は見られなかった。
図9は、各ポンプ流量比におけるキャビテーションサージによる圧力変動ピークを示したものであり、この図ではQ/Qd=0.98の場合についても示している。図9から、ポンプの性能保障作動範囲では、逆流返し有りの場合は、キャビテーションサージによる圧力変動が大幅に抑制されていることが分かる。
図10は、逆流返しの有無による吸込性能への影響を示す図である。吸込性能の評価方法としては、試験開始時のキャビテーション係数をK=0.06とし、このキャビテーション係数における揚程を基準として、揚程が5%低下した点でのキャビテーション係数を用いて比較している。なお、本試験では、流量制御を行っていないため、5%揚程低下点における流量比は試験開始時に比べて小さくなっているが、逆流返しの有無による流量比の低下程度とほぼ同じであり、相対比較については問題ない。この図10から、ポンプの性能保障作動範囲内である、Q/Qd=1.01、1.04、1.07では、逆流返し有りの場合(図中の△印)の5%揚程低下点のキャビテーション係数Kd5は、逆流返し無し(図中の●印)と比較して全体的に低くなっていることが分かる。このことは、逆流返し有りの場合の吸込性能は、逆流返し無しの場合と比較して、同等もしくは向上していることを意味している。
図11は、インデューサケーシング21の逆流返しの形状パラメータを形状1〜4まで変化させたときのキャビテーションサージ抑制効果を示す図であり、縦軸がキャビテーションサージによる圧力変動ピーク値を示し、横軸がポンプ流量比を示している。表1に形状1〜4の各部の寸法比を示す。図11から分かるように、いずれの形状においてもキャビテーションサージ抑制効果が見られる。中でも、拡径部の軸方向長さaを短くした形状2が最も抑制効果が高い。次に、段差部の内径を絞った形状4が良好である。
Figure 2006258040
図12は、形状1〜4についての吸込性能を比較した図である。この図から分かるように、段差を深くした形状3が最も吸込性能が良好であるが、他の形状も逆流返しが無い場合と比較して同等以上の性能を示している。
図11と図12の結果、及び流体力学的評価から、拡径部の軸方向長さaはインデューサ本体の入口径bの15〜25%の範囲とするのが良い。また、逆流発生領域はインデューサ本体22の羽根26の形状によって異なるが、およそインデューサ本体22の入口径の0.5倍程度であり、逆流返しは逆流発生領域の流れ方向中央部(中心部)より下流側(インデューサ本体側)に設置することで効果が発揮される。また、段差部34の内径は、インデューサ本体22の入口径より小さく、かつ、この入口径の90%以上であるのが良い。段差部34の内径をインデューサ本体22の入口径の90%以上とするのは、極端に小さくするとインデューサの吸込性能が悪化するが、図4より逆流厚さを除いた内径に掛からなければ問題ないと考えられることによる。また、段差高さ(拡径部32と段差部34の内径の差)は、大きすぎると、形状3のようにキャビテーションサージ抑制効果が悪化するので、段差高さは、チップクリアランスの3〜7倍であるのが良い。
以上の説明から明らかなように、本発明の高速ポンプのインデューサ装置によれば、キャビテーションサージによる圧力変動を抑制することができ、しかも、ポンプの吸込性能を維持できるという優れた効果が得られる。
なお、上述した実施形態では、本発明のインデューサ装置をロケットエンジン用の高速ポンプに適用したもので示したが、本発明は、同様にインデューサ装置を備えているポンプ、例えば消防用ポンプやLNGポンプなどにも適用可能である。
その他、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
本発明のインデューサ装置を備えた遠心型高速ポンプの一例を示す図である。 本発明のインデューサ装置の一実施形態を示す図である。 試験に使用した逆流返しの形状を示す図である。 逆流返しが無い従来のインデューサ装置についてのCFD解析結果を示す図である。 本発明と従来例のインデューサ装置における圧力変動の時系列図である。 本発明と従来例のインデューサ装置における圧力変動の時系列図である。 本発明と従来例のインデューサ装置における圧力変動の時系列図である。 図6に示した圧力変動の拡大図である。 キャビテーションサージによる圧力変動ピーク値を示す図である。 逆流返しの有無による吸込性能への影響を示す図である。 逆流返しの形状を変化させたときのキャビテーションサージ抑制効果を示す図である。 逆流返しの形状を変化させたときの吸込性能を示す図である。 従来の遠心型高速ポンプの一例を示す図である。 特許文献1の「インデューサ装置」の構成を示す図である。
符号の説明
2 ポンプ本体
4 本体ケーシング
4a フランジ部
6 回転軸
8 軸受
10 遠心インペラ
12 タービン
14 延長軸
16 静翼
18 軸受
20 インデューサ装置
21 インデューサケーシング
21a フランジ部
21A 外側構造部
21B 内側構造部
22 インデューサ本体
24 軸部
26 羽根
30 羽根を囲む部分
32 拡径部
32a オーバーラップ部
32b 平行部
34 段差部
34a 逆流返し面
36 傾斜部
R 逆流

Claims (7)

  1. 液体を加圧する遠心型高速ポンプにおける遠心インペラの上流側に配設され、回転駆動される軸部とその外周部に螺旋状に形成された羽根とを有し上流側からの液体を昇圧して下流側に流すインデューサ本体と、これを囲むインデューサケーシングとを備えた高速ポンプのインデューサ装置であって、
    前記インデューサケーシングは、インデューサ本体の羽根を所定のチップクリアランスを空けて囲む部分と、この部分の上流側に連続して形成され該部分の内径より大きい内径をもつ拡径部と、該拡径部の上流側に連続して形成され該拡径部の内径より小さい内径をもち前記インデューサ本体の羽根の外周部で発生する逆流を阻止する段差部とを有する、
    ことを特徴とする高速ポンプのインデューサ装置。
  2. 前記段差部の下流端は、段差部が無い場合における逆流発生領域の流れ方向中央部近傍に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の高速ポンプのインデューサ装置。
  3. 前記段差部の下流端は、段差部が無い場合における逆流発生領域の流れ方向中央部より下流側に位置する、ことを特徴とする請求項1に記載の高速ポンプのインデューサ装置。
  4. 前記拡径部の軸方向長さは、インデューサ本体の入口径の15〜25%である、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高速ポンプのインデューサ装置。
  5. 前記段差部の内径は、インデューサ本体の入口径より小さく、かつ、該入口径の90%以上である、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の高速ポンプのインデューサ装置。
  6. 前記拡径部と段差部の内径の差は、前記チップクリアランスの3〜7倍である、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の高速ポンプのインデューサ装置。
  7. 前記インデューサケーシングは、さらに、前記段差部の上流側に連続して形成され上流側に向かって内径が漸増する傾斜部を有する、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の高速ポンプのインデューサ装置。
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