JP2021011840A - インデューサ - Google Patents

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由佳 伊賀
聡 川崎
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Abstract

【課題】インデューサにおいて、キャビテーションの不安定現象を抑制するとともに吸込性能を向上することができる簡素な構成とする。【解決手段】インデューサ1は、回転駆動可能に設けられたハブ1Dと、ハブ1Dの外周面1eに多条の螺旋状に設けられ、上流側から軸方向に見て周方向の前縁eA、eB、eCが互いに周方向においてずらされた第1ブレード1A、第2ブレード1B、および第3ブレード1Cと、を備え、第1ブレード1A、第2ブレード1B、および第3ブレード1Cには、前縁eA、eB、eCを除く径方向の外縁に開口し、開口幅よりも長く径方向内側に延びるスリット1a、1b、1cが形成されている。【選択図】図2

Description

本発明は、インデューサに関する。
ターボポンプにおいては、高い昇圧性能を実現するために主ポンプとして遠心ポンプが用いられることが多い。
例えば、ロケットエンジンにおいて液体燃料の昇圧・輸送に用いられるターボポンプは、軽量化、小型化が強く求められている。このため、ロケットエンジン用のターボポンプは、一般的な産業用ターボポンプに比べて高速に回転する。
ターボポンプを高速に回転させる場合、ポンプ入口部で発生するキャビテーションによって遠心ポンプが吸込不良あるいは流路閉塞を起こすため、液体の昇圧・輸送が困難になることが知られている。このため、高速のターボポンプでは、遠心ポンプの主羽根車の上流にインデューサが設けられる。インデューサは、吸込性能に優れた螺旋状の羽根車からなり、遠心ポンプの入口を与圧し、ポンプ入口部におけるキャビテーションを抑制する。
しかしながら、高速回転するインデューサは、インデューサの内部で発生するキャビテーションに伴う不安定現象によって、吸込性能の低下、流量・圧力の変動、軸振動を起こしやすい。翼面の圧力変動が顕著になると、ブレードの疲労破壊を生じさせる可能性もある。
キャビテーションに伴う不安定現象としては、例えば、旋回キャビテーション、キャビテーションサージなどが挙げられる。
このため、特にロケットエンジン用ターボポンプの技術分野では、インデューサにおけるキャビテーションの不安定現象を抑制する種々の技術が提案されている。例えば、POGO抑制装置を装備したり、ケーシングに拡径部、凹部、溝などを設けたり、流路に邪魔板を配置したりする技術が知られている。
一方、インデューサ自体の形状によって、キャビテーションを低減したり、吸込性能を向上させたりすることも提案されている。
例えば、特許文献1には、吸込性能を向上させる目的で、インデューサ羽根に切欠きまたは貫通孔を形成することが記載されている。
特許文献2には、キャビテーション発生状態で運転されるインデューサを低騒音化する目的で、インデューサ羽根の周方向の先端に多数のスリットまたは貫通孔を形成することが記載されている。
特許文献3には、非対称キャビテーションに起因する軸振動不安定現象を抑制する目的で、インデューサの羽根の外縁に沿って径方向の段差を形成することが記載されている。
実開昭54−57503号公報 特開昭58−5500号公報 特許第4556465号公報
しかしながら、上記のような従来技術には、以下のような問題がある。
POGO制御装置を装備したり、邪魔板を配置したりする技術では、ターボポンプに付加的な装置、部材を追加する必要がある。この場合、ターボポンプの軽量化、小型化が難しくなる可能性がある。
ケーシングに拡径部、凹部、溝などを設ける場合には、ケーシングの形状が複雑になる。さらに、ケーシングに精密な内面加工を施す必要があるため、製造コストが増大する可能性がある。
特許文献1に記載の技術は、キャビテーションの圧壊を目的としているが、そもそもキャビテーションの圧壊に必要な切欠き等の形状、配置等の条件について何ら具体的に記載されていない。しかし、インデューサの任意の位置に任意の切欠きを形成しても、キャビテーションをなくすことはできないと考えられる。むしろ、インデューサに設ける切欠きの形状、位置によっては、かえって吸込性能の低下を招く可能性がある。
加えて、特許文献1には、切欠き等によってキャビテーションの不安定現象の抑制する技術に関しては何ら記載されていない。
特許文献2には、キャビテーションの発生に起因するインデューサの騒音の低減を目的として、スリットまたは貫通孔をインデューサ羽根の周方向の先端部に設ける技術が記載されている。しかし、特許文献2には、インデューサの騒音がキャビテーションの不安定現象に起因するとの記載および示唆はなく、特許文献2に記載の技術がキャビテーションの不安定現象の抑制に有効かどうかは不明である。
特許文献3に記載の技術では、上流側の軸方向から見て、各インデューサ羽根が露出する範囲内における各インデューサ羽根の外縁に段差を設けている。
この場合、各インデューサ羽根の径方向の外縁が、段差によって周方向の先端部から約4分の1周程度の長さにわたって縮径されることによって上述の段差が形成されている。すなわち、各インデューサ羽根の先端寄りの外縁とケーシングの内壁との間には圧力が逃げる隙間がそれぞれ4分の1周程度形成されている。このため、インデューサの周方向の先端寄りのスロートにおいて昇圧性能がかなり低下する可能性がある。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、キャビテーションの不安定現象を抑制するとともに吸込性能を向上することができる簡素な構成のインデューサを提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の態様のインデューサは、回転駆動可能に設けられた軸体と、前記軸体の外周面に多条の螺旋状に設けられ、上流側から軸方向に見て周方向の前縁が互いに前記周方向においてずらされた複数の羽根と、を備え、前記複数の羽根のうち少なくとも1つの羽根には、前記前縁を除く径方向の外縁に開口し、開口幅よりも長く径方向内側に延びる切欠きが形成されている。
上記インデューサにおいては、前記切欠きの少なくとも一部は、前記複数の羽根のうち、前記羽根と前記軸方向において隣り合う上流側の羽根と前記軸方向において重なる位置に形成されていてもよい。
上記インデューサにおいては、前記切欠きは、前記上流側の羽根との間の形成されるスロートの入口部の近傍に形成されていてもよい。
上記インデューサにおいては、前記切欠きは、前記複数の羽根のすべてに形成されていてもよい。
上記インデューサにおいては、前記切欠きは、前記軸方向から見て、前記軸体の中心軸線に関して軸対称となる位置関係に形成されていてもよい。
上記インデューサにおいては、前記切欠きは、一定幅を有するスリット状であってもよい。
上記インデューサにおいては、前記切欠きの径方向内側の先端の前記羽根の外縁からの距離は、径方向における前記羽根の長さの10%以上であってもよい。
上記インデューサにおいては、前記切欠きの内縁と、前記羽根の表面と、のなす角部には、面取り部が形成されていてもよい。
本発明によれば、キャビテーションの不安定現象を抑制するとともに吸込性能を向上することができる簡素な構成のインデューサを提供することができる。
本発明の実施形態のインデューサを備えるターボポンプの構成例を示す模式図である。 本発明の実施形態のインデューサの一例を示す模式的な正面図である。 本発明の実施形態のインデューサの一例を示す模式的な側面図である。 本発明の実施形態のインデューサにおけるスリットの構成の一例を示す模式的な拡大図である。 キャビテーション不安定現象の例について説明する模式図である。 本発明の実施形態のインデューサの作用を説明する模式図である。 スリットの近傍における子午面(径方向断面)の速度ベクトルの分布を示す図である。 スリットの近傍における周方向断面の速度ベクトルの分布を示す図である。 実施例および比較例のインデューサにおける圧力変動の周波数分析結果(Q/Q=1.10)を示すグラフである。 実施例および比較例のインデューサにおける圧力変動の周波数分析結果(Q/Q=0.80)を示すグラフである。 実施例および比較例のインデューサにおける流量比Q/Qとインデューサ揚程係数Ψとの関係を示すグラフである。 実施例および比較例のインデューサにおけるキャビテーション数σとインデューサ揚程係数Ψとの関係を示すグラフである。 本発明の実施形態の変形例(第1〜第3変形例)のインデューサの例を示す模式的な正面図である。 本発明の実施形態の変形例(第4、第5変形例)のインデューサの例を示す模式的な周方断面図である。
以下では、本発明の実施形態のインデューサについて添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態のインデューサを備えるターボポンプの構成例を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態のインデューサ1は、ターボポンプ100に用いられる。ターボポンプ100は、インデューサ1の他に、ケーシング10、ロータシャフト5、第1遠心インペラ2、第2遠心インペラ3、およびタービン4を備える。なお、インデューサ1を除くターボポンプ100の構成は一例であり、これに限定されるものではない。
ターボポンプ100の用途は特に限定されないが、例えば、ロケットエンジンにおける液体燃料の輸送用のポンプとして特に好適である。
ケーシング10は、管状に形成されており、長手方向の両端部に、ポンプ入口10aと、駆動ガス出口10dとが開口している。ケーシング10の側部には、ポンプ出口10bと、駆動ガス入口10cとが開口している。
ポンプ入口10aは、ターボポンプ100が輸送する流体Fが供給される開口部である。ターボポンプ100がロケット用ターボポンプの場合、流体Fの例としては、例えば、液体水素などの燃料、液体酸素などの酸化剤などが挙げられる。
ポンプ出口10bは、内部に流入した流体Fの出口であり、適宜の管路部材を介して流体Fを使用する装置に連結されている。例えば、ターボポンプ100がロケット用ターボポンプの場合、ポンプ出口10bは、ロケットエンジンの燃焼室等に連結されている。
駆動ガス入口10cは、後述するタービン4を回転駆動する駆動ガスGの供給口である。駆動ガス出口10dは、駆動ガスGの排出口である。
ロータシャフト5は、中心軸線Oに沿って延びる軸部材である。ロータシャフト5は、ケーシング10内の支持部材(図示略)に固定された第1軸受6および第2軸受7によって、中心軸線O回りに回転可能に支持されている。
ロータシャフト5は、ポンプ入口10aから駆動ガス出口10dに向かうケーシング10内の管路の中心部に配置されている。
インデューサ1、第1遠心インペラ2、第2遠心インペラ3、およびタービン4は、ロータシャフト5の軸方向に沿って、この順に固定されている。
以下では、特に断らない限り、中心軸線Oに沿う方向においては、特定の位置よりもポンプ入口10a寄りの位置および領域を、上流側の位置および領域と称する。同様に、特定の位置よりも駆動ガス出口10d寄りの位置および領域を、下流側の位置および領域と称する。
インデューサ1は、流体Fを与圧することによって、後述する第1遠心インペラ2の入口部におけるキャビテーションを抑制する目的で用いられる。インデューサ1は、ポンプ入口10aの近傍におけるケーシング10の管状部10eの内側に配置されている。
インデューサ1は、ロータシャフト5において第1軸受6よりも上流側に固定されており、ロータシャフト5とともに回転可能である。
インデューサ1の詳細構成については後述する。
第1遠心インペラ2および第2遠心インペラ3は、ロータシャフト5において、インデューサ1の下流側に固定されている。図1に示す例では、第1遠心インペラ2および第2遠心インペラ3は、第1軸受6と第2軸受7との間に配置されている。第1遠心インペラ2および第2遠心インペラ3は、その近傍におけるケーシング10の内壁部とともに、ターボポンプ100の主ポンプを構成する。
ただし、主ポンプが第1遠心インペラ2および第2遠心インペラ3を有する構成は一例である。ターボポンプ100に必要な仕様を満足すれば、ターボポンプ100の主ポンプを構成する遠心羽根車は第1遠心インペラ2のみでもよい。
インデューサ1によって与圧された流体Fは、第1遠心インペラ2の回転によって昇圧された後、第2遠心インペラ3の回転によってさらに昇圧され、ポンプ出口10bから排出される。
タービン4は、ロータシャフト5において、第2軸受7よりも下流側に固定されている。タービン4は、駆動ガス入口10cから供給される駆動ガスGによって中心軸線O回りに回転される。これにより、ロータシャフト5も中心軸線O回りに回転駆動される。
タービン4は、ターボポンプ100におけるインデューサ1および主ポンプの回転駆動手段の一例である。ただし、ターボポンプ100の用途等によっては、他の回転駆動手段が用いられてもよい。例えば、インデューサ1および主ポンプの回転駆動手段しては、電動モータ等が用いられてもよい。
次に、本実施形態のインデューサ1の詳細構成について説明する。
図2は、本発明の実施形態のインデューサの一例を示す模式的な正面図である。図3は、本発明の実施形態のインデューサの一例を示す模式的な側面図である。
図2に、軸方向において上流側から見たインデューサ1の形状を示す。以下では、インデューサ1の各部の構成を説明する際に、XYZ右手直交座標系のX軸、Y軸、Z軸を参照して説明する場合がある。
Z軸は、中心軸線Oと同軸の軸線(図2では見易さのため、中心軸線Oからずらして描かれている。)である。Z軸に沿う方向をZ方向と称する。Z方向における正方向は、下流側から上流側に向かう方向(図示の紙面奥側から前側に向かう方向)である。Z方向における負方向は、正方向の反対方向である。
Z方向は、軸方向と称される場合もある。Z軸を中心としてZ軸回りに周回する方向を周方向、Z軸に直交する任意の軸線方向に沿う方向を径方向と称する場合がある。
X軸は、Z軸に直交し、Z方向から見て中心軸線Oと後述する入口端部終点pCとを通る直線と重なる軸線である。X軸に沿う方向をX方向と称する。X方向における正方向は、入口端部終点pCから中心軸線Oに向かう方向(図示の左側から右側に向かう方向)である。X方向における負方向は、正方向の反対方向である。
Y軸は、Z軸およびX軸に直交する軸線である。Y軸に沿う方向をY方向と称する。Y方向における正方向は、上述のようにZ軸およびX軸の各正方向を規定するときに、右手直交座標系の規約で決まる方向(図示の下側から上側に向かう方向)である。Y方向における負方向は、正方向の反対方向である。
インデューサ1は、軸方向に延びるハブ1D(軸体)と、ハブ1Dの外周面1eから径方向外側に突出する第1ブレード1A、第2ブレード1B、および第3ブレード1C(複数の羽根)と、を備える。
ハブ1Dは、ロータシャフト5と嵌合する内周面1dを有する筒状に形成される。ハブ1Dは、ロータシャフト5と嵌合した状態でロータシャフト5に固定される。
図3に示すように、本実施形態では、ハブ1Dの外周面1eは、Z方向の正方向の端面1fからZ方向の負方向に向かうにつれて、漸次拡径するホーン状の形状を有する。
第1ブレード1A、第2ブレード1B、および第3ブレード1Cは、外周面1eにおいて3条をなす螺旋状に設けられている。以下では、簡単のため、第1ブレード1A、第2ブレード1B、および第3ブレード1Cを総称する場合に、「各ブレード」と称する場合がある。
各ブレードの巻き数(ハブ1D回りの回転数)は、インデューサ1として必要な吸込性能および与圧性能を満足すれば特に限定されない。図3に示す例における巻き数は、略1回である。
本実施形態では、各ブレードは、中心軸線Oに関して3回回転対称の形状を有する。
図2に示すように、Z方向の負方向に見ると、各ブレードにおける径方向外側の外形は、中心軸線Oを中心とする円周Cに沿っている。
第1ブレード1A、第2ブレード1B、および第3ブレード1Cにおける周方向の先端には、Z方向の負方向に見て反時計回り方向に突出する入口端部1Aa、1Ba、1Caがそれぞれ形成されている。
ブレード起点qA、qB、qCは、中心軸線Oに直交する同一平面に整列しており、この整列面において外周面1eを三等分する位置に配置されている。
例えば、入口端部1Aaは、外周面1e上のブレード起点qAと円周C上の入口端部終点pAとを結ぶ線分LAから、図示反時計回りに円弧状に突出している。同様に、入口端部1Baは、外周面1e上のブレード起点qBと円周C上の入口端部終点pBとを結ぶ線分LBから、図示反時計回りに円弧状に突出している。入口端部1Caは、外周面1e上のブレード起点qCと円周C上の入口端部終点pCとを結ぶ線分LCから、図示反時計回りに円弧状に突出している。
線分LA、LB、LCは、それぞれブレード起点qA、qB、qCを通る径方向の直線に関してインデューサ1の回転方向と反対方向(図示時計回り方向)に傾斜している。
以下では、ブレード起点qA、qB、qCからそれぞれ入口端部終点pA、pB、pCまでの間の入口端部1Aa、1Ba、1Caの各端縁を、それぞれ前縁eA、eB、eCと称する。
線分LA、LB、LCよりも下流側には、それぞれブレード本体1Ab、1Bb、1Cbが形成されている。
ブレード本体1Ab、1Bb、1Cbは、外周面1eから、Z方向に見て円周Cと整列する翼端oA、oB、oCまで延びる径方向幅を有し、下流側に向かって螺旋状に旋回している。
図3に示すように、ブレード本体1Ab、1Cbの終端部であるブレード終端bA、bCは、径方向に延びる直線状に形成されている。図3には図示されていないが、ブレード本体1Bbの終端部にも同様のブレード終端が形成されている。
各ブレードは、上流側から軸方向(Z方向の負方向)に見ると、入口端部1Aa、1Ba、1Caと、ブレード本体1Ab、1Bb、1Cbの一部と、がそれぞれ露出している。以下、各ブレードを上流側から軸方向に見て反時計回り方向にある位置を周方向の前方、その反対を周方向の後方と称する。
第1ブレード1Aにおいては、その前縁eAと前縁eAに続く翼端oAの3分の1周分とを含む領域が、第2ブレード1B(上流側の羽根)の前縁eBよりも周方向の前方に露出している。前縁eBよりも周方向の後方では、第1ブレード1Aは第2ブレード1Bの下に潜り込んでいる。
第2ブレード1Bにおいては、その前縁eBと前縁eBに続く翼端oBの3分の1周分とを含む領域が、第3ブレード1C(上流側の羽根)の前縁eCよりも周方向の前方に露出している。前縁eCよりも周方向の後方では、第2ブレード1Bは第3ブレード1Cの下に潜り込んでいる。
第3ブレード1Cにおいては、その前縁eCと前縁eCに続く翼端oCの3分の1周分とを含む領域が、第1ブレード1A(上流側の羽根)の前縁eAよりも周方向の前方に露出している。前縁eAよりも周方向の後方では、第3ブレード1Cは第1ブレード1Aの下に潜り込んでいる。
インデューサ1において、流入する流体Fに対してインデューサ1が有効に仕事をすることにより、流体Fを昇圧することができる流路はスロートと呼ばれる。具体的には、軸方向において隣り合うブレードの間に挟まれた流路である。
本実施形態の場合、スロートTは、図2、3に示すように、各ブレードの前縁eA、eB、eCよりも周方向の後方の部位と、それぞれに対する下流側のブレードと、によって挟まれた流路で構成される。各スロートTにおいて、各ブレードの前縁eA、eB、eCと軸方向に重なる領域は、スロート入口部Te(スロートの入口部)である。
これに対して、例えば、入口端部1Caとブレード本体1Bbとの間(図2参照)、入口端部1Baとブレード本体1Abとの間および入口端部1Aaとブレード本体1Cbとの間(図3参照)にも同様の隙間Eが形成される。
図2に示すように、第1ブレード1A、第2ブレード1B、および第3ブレード1Cには、スリット1a、1b、1c(切欠き)が形成されている。
本実施形態では、スリット1a、1b、1cの位置および形状は、軸対称である。具体的には、中心軸線Oに関して3回回転対称の関係にある。
以下では、スリット1aの例で説明する。以下の説明は、第2ブレード1Bおよび第3ブレード1Cにおけるスリット1b、1cにも同様に適用される。
図4は、本発明の実施形態のインデューサにおけるスリットの構成の一例を示す模式的な拡大図である。
図4に示すように、スリット1aは、第1ブレード1Aの翼端oAに開口し、開口幅よりも長く径方向内側に延び、第1ブレード1Aの厚さ方向に貫通する切欠きである。スリット1aにおける径方向内側の先端1gは、スリット1aの延在方向に直交する平面である。
スリット1aは、第1ブレード1Aにおいて上流側の第2ブレード1Bと軸方向において重なる位置に形成されている。
ただし、スリット1aは、第1ブレード1Aの外縁に開口し、開口幅よりも長く径方向内側に延びており、翼端oA(周方向の前縁を除く径方向の外縁)に開口していれば、スリット1aの周方向の位置はこれには限定されない。例えば、スロートTにおいてより下流側に形成されてもよい。さらに、軸方向に見て、第2ブレード1Bの前縁eBよりも周方向の前方の領域に形成されてもよい。
スリット1aは、スロート入口部Teの近傍に形成されることがより好ましい。
径方向内側の先端1gの位置は、第1ブレード1A上であれば特に限定されない。例えば、先端1gは、翼端oAからの距離が先端1gを通る径方向における第1ブレード1Aの長さの10%以上であってもよいし、20%以上であってもよい。
図4に示す例では、翼端oAの半径は、rt、ハブ1Dの外半径はrh(ただし、rh<rt)、翼端oAからハブ1Dの外周面1eまでの距離は、rb(=rt―rh)である。ただし、rhは、Z方向の負方向に向かうにつれて増大する。
スリット1aは、Z方向から見て矩形状の切欠きである。スリット1aは、入口端部終点pAから中心軸線Oに向かう直線に沿って延びている。スリット1aの開口幅はd、長さはL(ただし、L>d)である。スリット1aは、第1ブレード1AをZ方向にストレートに貫通している。
先端1gを通る第1ブレード1Aの径方向の長さはrbであり、Lは、L≦rbを満足する。Lは、rbの10%以上であってもよいし、20%以上であってもよい。
次に、キャビテーション不安定現象について説明する。
例えば、ロケットエンジン用のインデューサでは、キャビテーションは性能低下を招くため、低減されるのが望ましい。しかしキャビテーションを完全に抑制することは難しいので、インデューサの破壊など深刻な被害を招くおそれのあるキャビテーション不安定現象を抑制することが重要である。
キャビテーション不安定現象の例としては、旋回キャビテーションと、キャビテーションサージと、が挙げられる。以下では、インデューサ1において、スリット1a、1b、1cが設けられない場合の比較例のインデューサにおいて発生する旋回キャビテーションおよびキャビテーションサージについて、簡単に説明する。
図5は、キャビテーション不安定現象の例について説明する模式図である。
キャビテーションは、流体機械の内部で流体に局所的な圧力低下が生じることによって流体が気化し、流体内に気泡や気膜状の気体領域(キャビティと呼ぶ)が形成される現象である。キャビティの発生とその体積変化とによって、翼負荷の非対称性や流体の流量および圧力の変動が生じる結果、ターボ機械の羽根車の軸振動、流体の脈動現象などが引き起こされる。
旋回キャビテーションは、インデューサの回転とともに、各ブレード上に発生するキャビティの体積が変動し、みかけ上、キャビティが各ブレードの間を移動しているように見える現象である。旋回キャビテーションは、各ブレードに発生するキャビティは、非軸対称である。このため、旋回キャビテーションは、主にターボポンプの軸振動の原因になる。
以下、インデューサの回転周波数をωで表し、キャビティの回転周波数をωc(静止系)、Ωc(回転系)で表す。
旋回キャビテーションは、ωとωcとの関係によって、超同期旋回キャビテーション(ωc>ω)、同期旋回キャビテーション(ωc=ω)、および亜同期旋回キャビテーション(ωc<ω)に分類される。
図5において「Super−S RC」欄には、超同期旋回キャビテーション(以下、SSRCと略記)の模式図が記載されている。各図は、上流側から見たインデューサの模式図であり、各ブレードを濃度の異なる網点で表示している。各部ブレードのエッジ部における白抜き部は、キャビティCaを表す。「インデューサ回転数」欄の数字は、基準となる静止系の状態(「0」、以下、基準状態)から何回転したかを表す。インデューサ回転数の0〜4に対応する模式図は、それぞれの回転時の静止系の状態を模式的に示している。
SSRCでは、1回転ごとに各ブレード上のキャビティCaの大きさ、形状などのパターンが変動し、一定の回転数ごとに、基準状態のパターンに戻る。図5に示す例では、キャビティCaのパターンは、4回転ごとに同一のパターンを繰り返すので、キャビティCaは、Ωc=0.25ωで、反時計回りに回転している。すなわち、静止系から見ると、キャビティは、見かけ上、インデューサよりも高速のωc=1.25ωで回転していることになる。
一般的に、SRCにおけるωcは、1.1ω〜1.3ω程度である。ωcは、軸振動の励振周波数になる。ωcは、インデューサの固有振動とは異なり、運転状態によって変化するため、設計上予測することが難しいという問題がある。
図5において「Sync RC」欄には、同期旋回キャビテーション(以下、SRCと略記)の模式図が記載されている。各図の意味はSSRCの場合と同様である。
SRCでは、各ブレード上のキャビティCaの大きさ、形状は、非軸対称であるが、SSRとは異なり、基準状態のままで翼に付着している。このため、キャビティCaはインデューサと同期して回転しており、Ωc=0ω、すなわち、ωc=ωである。
特に図示しないが、亜同期旋回キャビテーションは、ωc<ωであるため、キャビティCaのパターンが回転系においてインデューサの回転方向と逆方向に回転する点が、SSRCと異なる。
キャビテーションサージ(以下、CSと略記)は、すべてのブレードにおいて同位相・同周期でキャビティの体積が変動する現象である。CSは、流体の流量および圧力の脈動を生じさせる。このため、ターボポンプの性能低下を引き起こす。
図5において「CS」欄には、キャビテーションサージ(以下、CSと略記)の模式図が記載されている。各図の意味はSSRCの場合と同様である。
図5に示す例では、基準状態で各ブレード上の各キャビティCaが最大となり、1.5回転目(図示略)に最小となって、3回転目に基準状態に戻る、という変化が繰り返されている。このため、固定系でも回転系でも各キャビティCaのパターンは回転しない。
次に、インデューサ1の動作および作用について、スリット1aの作用を中心として説明する。なお、スリット1b、1cの作用はスリット1aと同様である。
図6は、本発明の実施形態のインデューサの作用を説明する模式図である。図7は、スリットの近傍における子午面(径方向断面)の速度ベクトルの分布を示す図である。図8は、スリットの近傍における周方向断面の速度ベクトルの分布を示す図である。
インデューサ1は、タービン4の回転によって、Z方向の負方向に見て反時計回りに回転駆動される。これにより、図6に示すように、流体Fは、インデューサ1に吸い込まれて流体F1のようにブレード間の流路を圧送され、全体としてZ方向の負方向に進む(順方向流れ)。インデューサ1の上流側(図示左側)は低圧であり、インデューサ1の下流側(図示右側)は昇圧されて高圧である。
各ブレードにおける翼端oA、oB、oCと、管状部10eの内壁との間には、隙間gが存在する。隙間gには、Z方向の正方向に進むもれ流れf(逆方向流れ)が形成される。
もれ流れfは、上流側の低圧部に到達すると、もれ渦領域Vを形成する。もれ渦領域Vは、翼端oA、oB、oCの近傍と、前縁eA、eB、eCの近傍に形成される。もれ渦領域Vは、その渦中心の圧力が低下することから、キャビティの成長に寄与していると考えられる。
これに対して、インデューサ1は、スリット1a、1b、1c(以下、各スリットと称する場合がある)を有しているので、各スリットをZ方向の正方向に進むもれ流れfSが発生する。このため、各スリットの近傍ではもれ流れfが増加すると考えられる。これにより渦の強さが周方向に不均一となると、渦が不安定になり、渦中心の圧力低下が抑制され、キャビティの成長も抑制されると考えられる。
スリット1aの流れ場に及ぼす影響について数値解析を用いて確認した。
数値解析には、汎用熱流体解析ソフトウェアであるANSYS社のCFX19.0を使用した。支配方程式は相変化を考慮し等温過程を仮定した三次元非圧縮性気液二相Navier−Stokes方程式とした.乱流モデルにはSST k−ωモデルを用いた。キャビテーションモデルにはCFXに実装されている簡略化されたRayleigh−plesset方程式によりキャビテーション気泡の動力学を考慮した等方型二相流モデルを用いた。
図7に、スリット1aの子午面におけるもれ流れfSの速度分布のシミュレーション結果の一例を示す。シミュレーションの条件は、後述する実施例の条件と同様である。
もれ流れfSの流速は、スリット1aの径方向の開口端(チップ側)で最も小さく、先端1g(ハブ側)に向かうにつれて大きくなっていることが分かる。
図8に、スリット1aの周方向の断面におけるもれ流れfSの速度分布の一例を示す。図8において、インデューサ1の回転方向は矢印Rで示すように、図示左側から右側である。図示の紙面奥側がハブ側である。Z方向の正方向は、図示下側から上側に向かう方向である。
面S1は、図示略の第3ブレード1Cと対向する面であり第1ブレード1Aの圧力面である。面S2は、第2ブレード1Bと対向する面であり第1ブレード1Aの負圧面である。第1ブレード1Aの断面は、粗い網点で示されている。細かい網点は、キャビティCaが生じた領域を模式的に示す。
図8に示すように、面S1に沿って流れる流体F1は、その一部が、スリット1aを通して、下流側のスリット1aの内面に衝突する。この後、衝突した内面に沿って面S2上に抜けることによって、もれ流れfSが形成されていることが分かる。
負圧面である面S2上には、キャビティCaが形成されている。しかしキャビティCaは、もれ流れfSによって、スリット1aにおいて分断されていることが分かる。このため、面S2の上流側で発生するキャビティCaは、スリット1aを越えて下流側でさらに成長することがないので、全体としてはキャビティCaの大きさを抑制できると考えられる。
このようなキャビティCaの分断効果は、もれ流れfSの流速が大きくなる径方向内側ほど顕著になる。このような速度分布を有することで、もれ流れfSはキャビティCaの径方向内側への成長を抑制しやすいと考えられる。
次に、各スリットによりキャビテーション不安定現象が抑制されることを示す実験結果について説明する。
実験においては、供試インデューサとして、液体酸素ターボポンプインデューサを基本に作られた実施例のインデューサ555(図9、10では、「Inducer555」)と、比較例のインデューサ000(図9、10では、「Inducer000」)とを用いた。
インデューサ555は、上述したインデューサ1の一例である。インデューサ000は、インデューサ555においてスリット1a、1b、1cを省略した形状を有する。
インデューサ555の形状は、ブレードの枚数が3枚、インデューサ入口チップ径(翼端oA等の外径、2×rt)が152mm、インデューサ入口ハブ径(最も上流側の外周面1eの外径、2×rh)が38mm、チップクリアランス(隙間gの大きさ)が0.5mmとした。この形状はインデューサ000にも共通である。
インデューサ555のスリットの数は3、スリットの開口幅、長さは、それぞれ、d=5(mm)、L=30(mm)とした。各スリットの位置は、上述したように各スロート入口部Teである。このため、各スリットは、中心軸線Oに関して軸対称(3回回転対称)に形成されている。
実験装置としては,宇宙航空研究開発機構角田宇宙センター内にある水流しキャビテーションタンネル試験設備を用いた。この試験設備は,作動流体として水を使用する回流式水槽である。供試インデューサ上流にはシリンダピストンによる圧力調整機構が併設されており、供試インデューサ入口圧力を任意の値に減圧できる。供試インデューサ下流には,タービン式流量計および超音波流量計が設置されている。流量は,流量計上流にある流量調整弁の開度を変化させることにより調整されている。さらに下流には熱交換器が設置されており、試験中、作動流体の温度はほぼ一定に保たれる。試験で用いたケーシングは、透明なアクリル樹脂によって製作されているので,高速度ビデオによるキャビテーションの可視化観察が可能となっている。さらに、ケーシング上に設置された圧力センサにより、供試インデューサの入口、出口、およびその中間部の圧力振動を測定した。
高速度ビデオの撮影は,撮影速度10000fps、シャッター速度1/25000sにて行われた。圧力センサにより取得された圧力変動データは,サンプリング周波数10kHzで収集され,試験後にFFTアナライザによって周波数分析された。
作動流体(流体F)は、298.5Kの水とした。
設計流量Qdは192L/s、設計回転数は18300rpmであるが、実験における供試インデューサの回転数は6000rpm(回転周波数:100Hz)とした。
実験では,回転数および流量調整弁の開度を一定に保ち、入口圧力を徐々に低下させることによって、キャビテーション数σを低下させ、キャビテーションを成長させた際の圧力変動、流量などのデータを取得した。
キャビテーション数σは、下記式(1)で表される。キャビテーション数σは、流体Fの圧力に対応する無次元数である。
ここで、pinは供試インデューサ上流の主流静圧、pは主流温度の飽和蒸気圧、ρは作動流体の密度、Uは供試インデューサのチップ周速度(翼端の周速度)である。
以下、実験結果について説明する。
図9は、実施例および比較例のインデューサにおける圧力変動の周波数分析結果(Q/Q=1.10)を示すグラフである。ここで、Q/Qは、設計流量をQとしたときの流量比である。
図9は、Q/Q=1.10とし、キャビテーション数σを0.01から0.08まで変化させたときのインデューサ555、000における圧力変動のパワースペクトラムΔP(kPa p−p)を示す。
図9におけるインデューサ000のグラフ(図示右側)によれば、σが0.08から0.07の高圧領域では、各周波数の圧力変動が抑制されている。しかしσが0.065よりも下がると、種々の周波数の圧力変動が増大している。特に、周波数が110Hzから125HzのピークはSSRCが発生していることを示す。SSRCは、σが0.045程度になると、SRCに遷移していることが分かる。図9には、SSRC、SRCの高調波成分も現れている。
他の卓越周波数としては、ブレード枚数、羽切などに起因する卓越周波数が見られるが、これらはキャビテーション不安定現象ではない。
図9におけるインデューサ555のグラフ(図示左側)によれば、インデューサ000と同様の周波数帯に、SSRC、SRCに対応する卓越周波数が現れている。しかしその振幅は、インデューサ000の場合に比べて格段に小さい。このため、インデューサ555では、SSRC、SRCが抑制されていることが分かる。
インデューサ555では、他の卓越周波数における振幅も、インデューサ000の場合に比べると全体的に低くなっていることが分かる。
図10は、実施例および比較例のインデューサにおける圧力変動の周波数分析結果(Q/Q=0.80)を示すグラフである。
図10は、Q/Q=0.80とし、キャビテーション数σを0.01から0.08まで変化させたときのインデューサ555、000における圧力変動のパワースペクトラムΔP(kPa p−p)を示す。
図10におけるインデューサ000のグラフ(図示右側)によれば、σが0.04未満のとき、0Hz〜40Hz程度の低周波の圧力変動が生じている。これらの卓越ピークの圧力変動は、CSが生じていることを示している。高速度ビデオの撮影映像でも、CSが確認された。
図10におけるインデューサ555のグラフ(図示左側)によれば、σが0.03未満で、インデューサ000と同様の周波数帯に、CSに対応する卓越周波数が現れているが、その振幅は、インデューサ000の場合に比べると小さい。このため、インデューサ555では、CSが抑制されていることが分かる。
インデューサ555では、他の卓越周波数における振幅も、ブレード枚数に起因する300Hzの卓越周波数における振幅も含めて、インデューサ000の場合に比べると全体的に低くなっていることが分かる。
次に、インデューサの吸込性能を示すインデューサ揚程係数Ψに関する実験結果を示す。
図11は、実施例および比較例のインデューサにおける流量比Q/Qとインデューサ揚程係数Ψとの関係を示すグラフである。図11の横軸は流量比Q/Q、縦軸はインデューサ揚程係数Ψである。図12は、実施例および比較例のインデューサにおけるキャビテーション数σとインデューサ揚程係数Ψとの関係を示すグラフである。図12の横軸はキャビテーション数σ、縦軸はインデューサ揚程係数Ψである。
図11に、実験結果に基づくインデューサ555、100の揚程係数Ψを、それぞれ○、△でプロットした。図11に結果を示す実験のキャビテーション数σは、0.27とした。曲線201、202は、それぞれインデューサ555、000に関する近似曲線である。
流量比Q/Qに対するインデューサ揚程係数Ψは、インデューサ555、000のいずれも、略同様の結果を示した。すなわち、インデューサ揚程係数Ψは、流量比Q/Qが増大するにつれて減少している。
曲線201、202のように、流量比Q/Qが0.75から1.2の範囲では、インデューサ555の揚程係数Ψは、インデューサ000の揚程係数Ψよりもわずかに低い。しかし、その差は0.0012未満程度である。すなわち、インデューサ555において、スリット1a、1b、1cが設けられても、インデューサ000と同程度の揚程係数Ψが得られている。
図12に、キャビテーション数σを変化させた実験結果に基づくインデューサ555、100の揚程係数Ψを、それぞれ○、△でプロットした。点列203、204は、それぞれインデューサ555、000のデータを示す。
図12によれば、キャビテーション数σが0.04以上では、揚程係数Ψはインデューサ000よりもインデューサ555の方がわずかに小さいだけで、それぞれ略一定値になっている。キャビテーション数σが0.02以上0.04未満では、点列203が略一定であるのに対して、点列204は上下の変動が見られる。
キャビテーション数σが0.01以上0.02未満では、点列204に示すようにインデューサ000の揚程係数Ψは、約0.094から約0.044に向かって直線的に降下している。すなわち、インデューサ000は、低圧になると吸込性能が直線的に悪化することが分かる。
これに対して、点列203に示すようにインデューサ555の揚程係数Ψは、約0.096から約0.074に向かって緩やかに降下している。すなわち、インデューサ000に比べると、インデューサ555は、低圧下でも吸込性能の低下が少ないことが分かる。このため、インデューサ555では、急激な圧力低下が生じても輸送性能が悪化しにくい点で吸込性能が向上している。
例えば、ロケットエンジン用ターボポンプの場合、定常運転では、作動流体の圧力が一定に保たれる。しかし固体ロケットの切り離し時など、加速度による力が急変する場合には一時的に圧力降下するおそれがある。インデューサ555によれば、このような場合にも吸込性能が低下しにくいので、安定した燃料、酸化剤等の流体の供給が可能となる。
以上、実施例および比較例のインデューサ555、000の実験結果の対比に基づいて説明したように、本実施形態のインデューサ1によれば、吸込性能がほとんど低下することなく、キャビテーション不安定現象を抑制することができる。特に、インデューサ1によれば、低キャビテーション数の領域において、従来のインデューサよりも吸込性能を向上することができる。
このような特性は、インデューサ1の各ブレードに、スリット1a、1b、1cを形成した簡素な構成によって達成されている。このため、従来のターボポンプのケーシングの形状を変更したり、POGO制御装置を付加したりしなくてよいので、製造が容易となるとともにコスト低減も可能である。さらに、ターボポンプ100の軽量化、小型化を図ることができる。
以上、説明したように、本実施形態のインデューサ1によれば、キャビテーションの不安定現象を抑制するとともに吸込性能を向上することができる。
[第1〜第3変形例]
次に、本実施形態の第1〜第3変形例について説明する。
図13(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態の変形例(第1〜第3変形例)のインデューサの例を示す模式的な正面図である。
以下、実施形態と異なる点を中心に説明する。
図13(a)に主要部を示すように、第1変形例のインデューサ11は、インデューサ1のスリット1a、1b、1cの平面状の先端1gに代えて、スリット1aの延在方向に凸の円弧状の湾曲面からなる先端11gを備える。
これにより、各スリットのZ方向から見た形状は、U字状である。
本変形例によれば、各スリットの先端11gにおける応力集中が緩和されるので、インデューサ11の耐久性が向上する。
図13(b)に主要部を示すように、第2変形例のインデューサ12は、インデューサ1のスリット1a、1b、1cに代わる切欠きとして、V字状切欠き12a、12b、12c(以下、各V字状切欠きと称する場合がある)を備える。各V字状切欠きの先端12gは、凸の円弧状の湾曲面からなる。
各V字状切欠きの開口幅d12は、スリット1a等の開口幅dよりも広くても狭くてもよい。各V字状切欠きの径方向の長さL12は、スリット1a等の長さLよりも長くてもよいし短くてもよい。
本変形例によれば、もれ流れfSが通過する断面積が径方向に変化するので、もれ流れfSの流速、流量の径方向分布を適宜の分布に変更することができる。
図13(c)に主要部を示すように、第3変形例のインデューサ13は、インデューサ1のスリット1a、1b、1cに代わる切欠きとして、斜行スリット13a、13b、13c(以下、各斜行スリットと称する場合がある)を備える。各斜行スリットは、実施形態のスリット1a等を径方向に延びる直線C0に対して、開口端を中心としてθだけ回転させたスリットである。各斜行スリットの傾斜角は、特に限定されない。
本変形例は、切欠きの延在方向が径方向に一致しなくてもよいことを示す例である。
各斜行スリットの傾斜方向は、特に限定されない。図13(c)に示す例では、各斜行スリットは、径方向内側に進むにつれて、インデューサ13の回転方向に対して反対側に傾斜する場合の例が記載されている。各斜行スリットの傾斜方向はこれと反対方向でもよい。
本変形例によれば、負圧面に向かうもれ流れfSの出口を、径方向に進むにつれて、周方向にずらすことができる。
[第4、第5変形例]
次に、本実施形態の第4、第5変形例について説明する。
図14(a)、(b)は、本発明の実施形態の変形例(第4、第5変形例)のインデューサの例を示す模式的な周方向の断面図である。
以下、実施形態と異なる点を中心に説明する。
図14(a)に主要部を示すように、第4変形例のインデューサ14においては、インデューサ1のスリット1a、1b、1cの各内縁と、面S1とのなす角部に、面取り部14aが形成されている。同様に、インデューサ1のスリット1a、1b、1cの各内縁と、面S2とのなす角部に、面取り部14bが形成されている。
面取り部14a、14bの具体的な形状は、各スリットを通過するもれ流れfSが円滑に流れる形状であれば、特に限定されない。例えば、図14(a)には、面取り部14a、14bが、スリットの内面に45°で交差するC面取りからなる例が示されている。ただし、面取り部14a、14bの交差角は45°には限定されない。
あるいは、面取り部14a、14bは、円弧状等の湾曲面で形成されてもよい。
面取り部14a、14bが形成される各スリットの内面は図14(a)に示すように、インデューサ14の回転方向Rと反対側内面であることがより好ましい。
本変形例によれば、面取り部14a、14bによって各スリットを通過するもれ流れfSの流れがより円滑になるので、もれ流れfSによって形成される負圧領域を低減できる。この結果、各スリットの下流側に発生するキャビティを低減できる。
図14(b)に主要部を示すように、第5変形例のインデューサ15は、インデューサ1のスリット1a、1b、1cに代わる切欠きとして、斜めスリット15a、15b、15c(以下、各斜めスリットと称する場合がある)を備える。
各斜めスリットは、面S1から面S2に向かうにつれて、回転方向Rと反対側に傾斜するスリット内面15d、15eを備える。スリット内面15d、15eは平行でもよいし、非平行でもよい。図14(b)に示す例では、互いに平行である。
各斜めスリットは、実施形態と同様、中心軸線Oに向かって延びている。
本変形例によれば、もれ流れfSがスリット内面15d、15eに沿って、通過するので、もれ流れfSの流れがより円滑になる。これにより、もれ流れfSによって形成される負圧領域を低減できる。この結果、各斜めスリットの下流側に発生するキャビティを低減できる。
なお、上記実施形態および各変形例では、ロケットエンジン用として特に好適なターボポンプ100に用いられるインデューサの例で説明したが、上記実施形態および各変形例で説明したインデューサは、ロケットエンジン用ターボポンプ以外のターボポンプに用いられてもよい。
産業用の一般的なポンプであっても、キャビテーションによる吸込み性能低下や損傷は生じる可能性がある。本発明のインデューサによれば、産業用ポンプに用いられる場合でも、吸込み性能低下やキャビテーション不安定現象に起因する軸振動による損傷などを抑制できる。
本発明のインデューサを使用可能な産業用ポンプの例としては、LNG(液化天然ガス)用のポンプ、水素社会に欠かせない液体水素用ポンプなどが挙げられる。
上記実施形態および各変形例では、インデューサが3枚のブレード(羽根)を有する場合の例で説明した。しかし、インデューサの羽根は、複数枚であれば、2枚でもよいし、4枚以上でもよい。例えば、羽根の枚数をn(ただし、nは2以上の整数)とすると、各羽根には、軸方向に見て、インデューサの中心軸線に関してn回回転対称(軸対称)となる位置にそれぞれ切欠きが設けられることがより好ましい。
ただし、インデューサに必要なキャビテーション不安定現象の抑制および吸込性能の向上が可能であれば、各切欠きは、軸非対称に設けられてもよい。
上記実施形態および各変形例では、各ブレードの前縁の形状が、軸方向から見て円弧状に突出している例で説明した。しかし、各ブレードの前縁の形状は、これには限定されない。例えば、円弧状でない凸形状でもよいし、直線状、凹形状などでもよい。
上記実施形態および各変形例では、各ブレードの切欠きが、軸方向から見て上流側のブレードの翼端が始まる位置と重なる下流側のブレードの翼端に開口するように形成されている例で説明した。しかし、切欠きは、上流側および下流側のブレードの翼端同士が重なる部位のスロートTの領域に形成されていてもよいし、より上流側のスロートTに形成されてもよい。さらに、切欠きは、軸方向から見て上流側のブレードと重ならない領域に形成されていてもよい。
上記実施形態および各変形例では、各ブレードに切欠きがそれぞれ1つずつ形成される例で説明した。しかし、各ブレードの切欠きの数は1以上でもよい。切欠きが非軸対称に設けられる場合には、切欠きを有しないブレードがあってもよい。
第4変形例では、各スリットにおいて、回転方向Rと反対側のスリット内面に面取り部14a、14bが形成されている例で説明した。しかし、面取り部14a、14bは、回転方向Rのスリット内面にも形成されていてもよいし、回転方向Rのスリット内面のみに形成されていてもよい。
さらに面取り部14a、14bのうちいずれか一方は省略されてもよい。
以上、本発明の好ましい実施形態および各変形例を説明したが、本発明はこの実施形態および各変形例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
また、本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
1、11、12、13、14、15、555 インデューサ
1a、1b、1c スリット(切欠き)
1A 第1ブレード(羽根)
1Aa、1Ba、1Ca 入口端部
1Ab、1Bb、1Cb ブレード本体
1B 第2ブレード(羽根)
1C 第3ブレード(羽根)
1D ハブ(軸体)
1g、11g、12g 先端
10 ケーシング
10e 管状部
12a、12b、12c V字状切欠き(切欠き)
13a、13b、13c 斜行スリット(切欠き)
14a、14b 面取り部
15a、15b、15c 斜めスリット(切欠き)
100 ターボポンプ
Ca キャビティ
f、fS もれ流れ
eA、eB、eC 前縁
F、F1 流体
g 隙間
O 中心軸線
oA、oB、oC 翼端
R 回転方向
S1、S2 面
T スロート
Te スロート入口部
V もれ渦領域

Claims (8)

  1. 回転駆動可能に設けられた軸体と、
    前記軸体の外周面に多条の螺旋状に設けられ、上流側から軸方向に見て周方向の前縁が互いに前記周方向においてずらされた複数の羽根と、
    を備え、
    前記複数の羽根のうち少なくとも1つの羽根には、前記前縁を除く径方向の外縁に開口し、開口幅よりも長く径方向内側に延びる切欠きが形成されている、
    インデューサ。
  2. 前記切欠きの少なくとも一部は、前記複数の羽根のうち、前記羽根と前記軸方向において隣り合う上流側の羽根と前記軸方向において重なる位置に形成されている、
    請求項1に記載のインデューサ。
  3. 前記切欠きは、前記上流側の羽根との間の形成されるスロートの入口部の近傍に形成されている、
    請求項1または2に記載のインデューサ。
  4. 前記切欠きは、前記複数の羽根のすべてに形成されている、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載のインデューサ。
  5. 前記切欠きは、前記軸方向から見て、前記軸体の中心軸線に関して軸対称となる位置関係に形成されている、
    請求項4に記載のインデューサ。
  6. 前記切欠きは、一定幅を有するスリット状である、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載のインデューサ。
  7. 前記切欠きの径方向内側の先端の前記羽根の外縁からの距離は、径方向における前記羽根の長さの10%以上である、
    請求項1〜6のいずれか1項に記載のインデューサ。
  8. 前記切欠きの内縁と、前記羽根の表面と、のなす角部には、面取り部が形成されている、
    請求項1〜7のいずれか1項に記載のインデューサ。
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