JP2006257618A - ポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーから成るトウおよび短繊維束およびパルプおよび液体分散体および紙 - Google Patents

ポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーから成るトウおよび短繊維束およびパルプおよび液体分散体および紙 Download PDF

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Abstract

【課題】 従来のPPS紙の欠点である、紙中の粗大空隙やピンホールを抑制した品位の良いPPS紙、またその原料として適したPPSナノファイバーから成るトウおよび短繊維束およびパルプおよび液体分散体を提供するものである。
【解決手段】 単繊維の平均直径が1〜1500nmであって直径1500〜5000nmの単繊維の比率が0〜5%であるポリフェニレンスルフィド・ナノファイバー集合体から成る特定のトウ、およびこれから得られる繊維の繊維長が0.1〜30mmである短繊維束、さらにパルプ中の繊維濃度が1重量%より大きく30重量%以下であるパルプ、さらに、液体分散体中の繊維濃度が0.00001重量%以上1重量%以下である液体分散体、さらに紙の断面中で縦10μm以上、横10μm以上の粗大空隙が占める面積が紙の断面積に対し5%以下である紙。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーから成る、紙中の粗大空隙やピンホールがほとんど無い耐熱性、耐薬品性に優れた紙、およびその原料となるトウおよび短繊維束およびパルプおよび液体分散体に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略す)はその優れた耐熱性や耐薬品性から、当初はエンジニアリングプラスチックや耐熱フィルムなどで実用化されたが、最近では繊維用分野や紙分野でも用途が拡がりつつある。例えば繊維用途ではバグフィルターなどに、紙用途では電池やモーターの絶縁材料などが実用化されており、さらにその需要は拡大することが見込まれている。特に紙用途はより厳しい条件下での絶縁材料やその他の産業資材用途に大きく拡大していくことが期待されており、従来より品位の高いPPS紙が望まれていた。
しかしながら、PPSはポリマーの性質として脆いため、セルロースやアラミドなどの紙形成能を有するポリマーとは異なり、いわゆる叩解を施してもフィブリル化しにくく、粉体化するだけであり、抄紙に適した細いPPS繊維を得ることが困難であった。このため、従来、PPS紙の原料としては単繊維繊度が2〜3dtex程度の太いPPS繊維を利用せざるを得なかったため、紙中に数μm〜数十μmサイズの粗大空隙を有していたり、ピンホールの多い品位の低い紙しか得ることができなかった。このため、PPS紙の品位向上のため、従来から様々な検討がなされてきた。
例えば、紙力を向上させたり紙の品位向上のため従来からバインダー繊維が併用されてきたが、通常バインダー繊維は低耐熱性あるいは低耐薬品性のためPPSの特徴を充分活かすことができなかった。このため、特開2004−285536号公報などにはPPSの未延伸糸をバインダーとして用いることが提案されている。しかし、この方法を用いたとしても紙中の粗大空隙を充分埋めることはできず、PPS紙の品位向上は不十分であった。さらに、特開平9−67786号公報にはPPS繊維に捲縮を付与することで紙力の向上が提案されているが、これも紙中の粗大空隙を埋めることはできずやはり品位の高いPPS紙を得ることは困難であった。
一方、PPS紙中の粗大空隙を埋めるためにはPPS繊維の極細化が有効と考えられるが、PPS極細糸を得る努力としては、例えば特開2002−279958号公報にPPS繊維を叩解したPPSパルプを用いている例があるが、上述したようにPPSは叩解しても粉体化し易いものである。このため、たとえセルロースにおいて叩解度の目安とされている濾水度が低くなったとしてもそれは粉体が目に詰まっているため見かけ濾水度が低くなったにすぎないと考えられ、実際にはPPS繊維を充分叩解することは困難であった。当然、この叩解度が低く粉体の多い物を用いても品位の良いPPS紙を得ることはできなかった。また、該公報には割繊繊維やメルトブローによるPPS極細糸も提案されているが、これとてもその単繊維の繊維径は5μm程度であり、抄紙に適した良好なPPSパルプを得るためには細さが不十分であった。さらに、特開平2−99658号公報にはいわゆる海島複合繊維により極細糸を得ることが提案されているが、ここでも最も細くとも単繊維繊度が0.07デニール(単繊維直径2.5μm相当)であり、やはり抄紙に適した良好なPPSパルプを得るためには細さが不十分であった。なお、ごく最近、ポリマーアロイ繊維を利用してPPSナノファイバーが得られることが示された(特許文献1)。しかし、ここで得られているPPSナノファイバー束のトータル繊度はたかだか15dtex程度であり、そのままでは叩解して抄紙原料とするには適さない物であった。抄紙原料であるパルプや水分散体とするためには、ポリマーアロイ繊維を集めて太いトウと成す必要があるが、この太いポリマーアロイ・トウの中心部まで均一に脱海することは容易ではなかった。すなわち、脱海溶媒がトウ内部まで均一に浸透し、かつ溶出成分が均一にトウ外部に排出されるようにし、内部まで均一にナノファイバー化したトウを得ることが技術的に大きな課題であった。また、得られたPPSナノファイバー・トウを粉体化させることなく叩解することや、PPSナノファイバー・パルプを液体中に均一分散させる技術開発が新たに必要であった。
このように、PPSナノファイバーから成るトウおよび短繊維束およびパルプおよび液体分散体および紙が望まれていた。
特開2004−169261号公報(27〜28ページ)
従来のPPS紙の欠点である、紙中の粗大空隙やピンホールを抑制した品位の良いPPS紙、またその原料として適したPPSナノファイバーから成るトウおよび短繊維束およびパルプおよび液体分散体を提供するものである。
上記目的は、以下の手段により達成される。
(1)単繊維の平均直径が1〜1500nmであって直径1500〜5000nmの単繊維の比率が0〜5%であるポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーから成るトウであって、トウ繊度が100〜100万dtexかつトウ中のポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーの面積比率が95〜100%であるトウ。
(2)単繊維の平均直径が1〜1500nmであって直径1500〜5000nmの単繊維の比率が0〜5%であるポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーから成る短繊維束であって、短繊維束繊度が100〜100万dtexかつ短繊維束中のポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーの面積比率が95〜100%かつ短繊維の繊維長が0.1〜30mmである短繊維束。
(3)単繊維の平均直径が1〜1500nmであって直径1500〜5000nmの単繊維の比率が0〜5%であるポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーと液体から成るパルプであって、パルプ中の繊維濃度が1重量%より大きく30重量%以下であるパルプ。
(4)単繊維の平均直径が1〜1500nmであって直径1500〜5000nmの単繊維の比率が0〜5%であるポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーの液体分散体であって、液体分散体中の繊維濃度が0.00001重量%以上1重量%以下である液体分散体。
(5)単繊維の平均直径が1〜1500nmであって直径1500〜5000nmの単繊維の比率が0〜5%であるポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーから成る紙であって、紙の断面中で縦10μm以上、横10μm以上の空隙が占める面積が紙の断面積に対し5%以下である紙。
(6)単繊維の平均直径が1〜1500nmであって直径1500〜5000nmの単繊維の比率が0〜5%であるポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーから成る紙であって、紙の断面中で縦2μm以上、横2μm以上の空隙が占める面積が紙の断面積に対し20%以下である紙。
(7)(2)記載のポリフェニレンスルフィド・ナノファイバー短繊維束を叩解する際、界面活性剤および/または消泡剤が添加されていることを特徴とするポリフェニレンスルフィド・ナノファイバー短繊維束の叩解方法。
本発明のPPSナノファイバーからなるトウおよび短繊維束およびパルプおよび液体分散体により従来のPPS紙の欠点である、紙中の粗大空隙やピンホールを抑制した品位の良いPPS紙を得ることができる。
本発明で言うPPSとは、特開2004−231908号公報記載のようにフェニル基にイオウ原子(以下Sと略す)が結合したユニットを繰り返し単位としたポリマーのことを言い、一部架橋されていても良い。また、この繰り返し単位はポリマー中で70mol%以上であることが好ましいが、特開2004−231908号公報の化2で例示されるように他のユニットを30mol%以下の範囲で含むことも可能である。また、本発明で用いるPPSは分子鎖の分岐構造の少ない直鎖型であることが、製造時の紡糸性を確保する観点から好ましい。さらに、PPSの分子鎖末端が金属イオンなどで封鎖されていると、紡糸性が向上し好ましい。PPSの分子量については紡糸可能な範囲であれば特に制限は無いが、重量平均分子量で1万〜10万であれば紡糸性と糸強度を両立でき好ましい。本発明で用いられるPPSは、特開2004−231908号公報記載のように公知の方法を用いて得ることができる。
また、本発明で言うナノファイバーとは、単繊維の繊維直径が5000nm以下の繊維のことを言うものである。そして、本発明では単繊維の平均直径が1〜1500nmであることが重要である。ここで、単繊維の平均直径とは以下のようにして求めることができる。まず、繊維の横断面写真を画像解析するなどして、各単繊維の横断面積から円換算直径を求める。そして、無作為抽出した300本の単繊維の直径を横断面の面積ベースで平均し、これから平均直径を算出することができる。ここで、平均直径を数平均で算出すると細い繊維の寄与が過大に反映されるが、太い繊維の寄与をより大きくするために本発明では面積平均により平均直径を求めることとした。より具体的には、各単繊維の横断面積をSとするとΣS(i=1〜n)/nにより単繊維の平均横断面積(Sav)を求め、これから円換算で平均直径(Dav)をDav=(4Sav/π)1/2により求める。nは300以上である。なお、繊維の横断面写真を得ることが難しい場合には、繊維の側面写真を使用することもできる。
そして、単繊維の平均直径を1〜1500nmとすることにより、抄紙に適した良好なパルプを得ることができるのである。単繊維の平均直径は好ましくは900nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは200nm以下、最も好ましくは100nm以下である。単繊維の平均直径は小さければ小さいほど、PPS単繊維自体をフィブリル化する必要が無くPPSナノファイバー同士の密着を解くだけで良いため、叩解時の粉体化を抑制できるのである。特に単繊維の平均直径を200nm以下とすると、紙中のピンホールの発生を充分抑制することができるだけでなく、繊維同士の絡み合いの増加による紙力の向上をはかることもできるのである。さらに、単繊維の平均直径を100nm以下とすると、PPS紙中の空隙をナノファイバーで埋め易いため、最も好ましいのである。
また、本発明ではPPS単繊維の直径が1500〜5000nmの単繊維の比率がナノファイバー集合体中において0〜5%であることが重要である。ここで、単繊維の直径が1500〜5000nmの単繊維の比率は以下のようにして求めることができる。まず、平均直径と同様に、繊維の横断面積ベースで円換算直径を求める。そして、ここで無作為抽出した300本以上のPPSナノファイバー単繊維全体の面積に対する直径1500〜5000nmの単繊維全体の面積の比率を、本発明ではPPS単繊維の直径が1500〜5000nmの単繊維の比率とする。
ここで、直径1500〜5000nmという粗大ナノファイバーの比率を小さくすることで、叩解時の粉体化を抑制し、抄紙に適したパルプが得られるのである。また、粗大ナノファイバーが少なく、細いナノファイバー比率を多くすることで紙中での空隙充填効率を高めより緻密な紙を得ることができるのである。直径1500〜5000nmという粗大ナノファイバーの比率は好ましくは2%以下、より好ましくは0%である。さらに粗大ナノファイバーの下限値を下げることが好ましく、粗大ナノファイバーとして、直径500〜5000nmの単繊維の比率は0〜5%であることが好ましく、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは0%である。さらに、粗大ナノファイバーとして、直径200〜5000nmの単繊維の比率は0〜5%であることが好ましく、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは0%である。特に単繊維直径200nm以上のナノファイバー比率を低下させると、ピンホールの発生頻度を低下させることができるのである。さらに、粗大ナノファイバーとして、直径100〜5000nmの単繊維の比率は0〜5%であることが好ましく、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは0%である。特に単繊維直径100nm以上のナノファイバー比率を低下させると、PPS紙中の空隙を減じやすくなり緻密なPPS紙が得られるのである。
本発明で用いるPPSナノファイバーは繊維長(L)と繊維直径(D)の比であるL/Dが大きいのが特徴であり、L/Dは50以上であることが好ましい。さらに、本発明で用いるPPSナノファイバーはL/Dの小さな粉体をほとんど含んでいないのも特徴であり、これにより充分な紙力を持つPPS紙を得ることができるのである。より具体的には、L/Dが10以下の繊維の比率が繊維成分全体に対して0〜5%であることが好ましい。L/Dが10以下の繊維の比率は1%以下であればより好ましく、0.1%以下であればさらに好ましい。ここで繊維の比率とは上述したように面積ベースでの比率のことを言うものである。
さらに、本発明で用いるPPSナノファイバーは分岐が少ないことも特徴であり、これによりPPSナノファイバーの凝集を抑制し、液体中に均一に分散可能となり、均一な表面の紙を得ることができるのである。より具体的には、繊維成分全体に対する分岐を有するPPSナノファイバーの本数は繊維成分全体に対して0〜3%とすることが好ましい。ここで分岐とは、幹となるPPS繊維からそれより細い繊維が枝としてフィブリル化している状態を言うものである。
本発明では上述したようなPPSナノファイバーから成るトウを原料とすることにより、抄紙に適した短繊維束、パルプ、それの液体分散体を得、これから緻密で品位の高いPPS紙を得るものである。より具体的には、粗大繊維をほとんど含まない新規なPPSナノファイバー・トウを抄紙に適した繊維長にカットし、PPSナノファイバー短繊維束を得る。そして、これを叩解しPPSナノファイバー・パルプを得、さらにこれを液体中に均一に分散させることで抄紙原料となるPPSナノファイバー液体分散体を得、これを抄紙することで品位の高いPPS紙を得るものである。
本発明で言うトウとは、繊維が長手方向に密着した集合体のことを言い、そのトータル繊度は100〜100万dtexであることが重要である。これにより、抄紙原料である短繊維束、パルプ、液体分散体を生産性良く得ることができる。生産性向上の観点からは、トウ繊度は好ましくは1000dtex以上、より好ましくは1万dtex以上、さらに好ましくは5万dtex以上である。
また、トウ横断面全体に対するPPSナノファイバー全体の面積比率は95〜100%であることが重要である。これにより、粗大繊維の混入を最小限とすることができ、品位の高いPPS紙を得ることができるのである。
本発明で用いるPPSナノファイバーは非常に細いため、トウ中でのPPSナノファイバー本数密度を5000本/mm以上とすることができ、高次工程である叩解工程でのナノファイバーの生産効率を向上することができるのである。
本発明で言う短繊維束とは、トウをカットして得た物のことを言い、その繊維長は0.1〜30mmであることが重要である。繊維長を30mm以下とすることで、PPSナノファイバー短繊維を液体中に分散させた時に、ナノファイバー同士の凝集を抑制し、液体中に均一に分散させることができるのである。一方、繊維長を0.1mm以上とすることで、抄紙した際に繊維同士を充分絡み合わせることができ、紙力を向上させることができるのである。短繊維束の繊維長は好ましくは0.5〜10mm、より好ましくは0.5〜5mmである。
本発明で言うパルプとは、短繊維束中に液体を多量に含んでいる物のことを言い、パルプ全体に対する繊維濃度は1重量%より大きく30重量%以下であることが重要である。繊維濃度を1重量%より大きくすることでパルプの形態安定性を向上することができる。一方、繊維濃度を30重量%以下とすることで叩解後のナノファイバーの再凝集を抑制することができ、次工程で均一な液体分散体を得やすいのである。パルプ中の繊維濃度は5〜15重量%であると、液体分散体の生産性向上とナノファイバーの再凝集抑制を両立でき、好ましく、5〜12重量%であるとさらに好ましい。
本発明で言う液体分散体とは短繊維が液体中に均一に分散している物のことを言う。液体としては水、アルコールなどの有機溶媒、フッ素系溶媒など、またそれらの混合溶媒が挙げられるが、安全性の点から水が好ましい。また、液体分散体全体に対する繊維濃度は0.00001重量%以上1重量%以下であることが重要である。繊維濃度を0.00001重量%以上とすることにより、抄紙効率を向上することができ、1重量%以下とすることで繊維の凝集を抑制し均一な紙を得ることができるのである。液体中の繊維濃度は0.001〜0.1重量%であると抄紙効率向上と繊維の均一分散の点から好ましく、0.01〜0.05重量%とするとさらに好ましい。また、液体分散体中には、繊維の均一分散性の向上の観点から分散剤を含むことも可能である。分散剤としてはカチオン系、ノニオン系、アニオン系など各種の物を使用することができ、それらの分子量も数百〜1万程度まで適宜選択することができる。
本発明で言う紙とは、いわゆる抄紙された物や湿式不織布とよばれる物であり、繊維がシート状に成形されたもののことを言う。本発明の紙では、紙中の粗大空隙が少ないことが重要である。より具体的には、紙の断面において縦10μm以上、横10μm以上の粗大空隙が占める面積が紙の断面積に対し5%以下であることが重要である。このような粗大空隙が少ないことで充分な紙力が得られるとともに気体透過度や液体透過度などを抑制することができるのである。上記粗大空隙は好ましくは2%以下、より好ましくは0.1%以下である。なお、粗大空隙が長方形で近似し難い場合は、その断面積が100μm以上のものを言うものとする。また、紙の断面において、縦2μm以上、横2μm以上の中程度の空隙が占める面積が紙の断面積に対し20%以下であることも重要である。ここで、中程度の空隙が占める面積には上記粗大空隙の面積も含めて、空隙率を計算するものとする。上記粗大空隙はどちらかと言えば紙力のような力学特性に大きく影響するが、この中程度の空隙は気体透過度や液体透過度などの物質透過性に大きく影響するものである。この中程度の空隙が占める面積は好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。なお、中程度の空隙が長方形で近似し難い場合は、その断面積が4μm以上のものを言うものとする。
なお、紙の断面観察のためのサンプル作製にあたっては、紙を樹脂に包埋後カットするなどして、紙中の空隙がなるべく潰れないようにすることができる。
また、本発明の紙では、PPSナノファイバーによって紙中の空隙が充填されるため紙を貫通するピンホールが抑制されていることも特徴である。より具体的には、紙の表から裏へ貫通する円換算直径50μm以上の孔の個数が0〜1000個/cmであることが好ましい。ピンホールの個数を1000個/cm以下とすることで、気体透過度や液体透過度などを抑制することができるのである。ピンホールの個数はより好ましくは100個/cm以下、さらに好ましくは15個/cm以下、最も好ましくは3個/cm以下である。特に3個/cm以下とすることで、液体フィルターなどに用いた時の信頼性を格段に向上することができるのである。
また、本発明のPPS紙は電池やモーターなどの電気絶縁などのセパレーター用途などに用いる際は、薄い方が好ましいため、目付で20g/m以下であることが好ましい。薄い方が好ましい用途としては、この他に電極部材などが挙げられる。また、低圧力損失で微粒子などを高率捕集するエアフィルターや液体フィルター用途などでも薄い方が好ましい。一方、自己支持性や力学強度が必要な用途では、目付は20g/m以上であることが好ましい。
また、目的によっては、上述した粗大PPSナノファイバーをほとんど含まないPPSナノファイバーとそれ以外の物質が混用されていても良い。例えば、本発明のPPSナノファイバーと導電性物質が混用された紙とすることで高耐熱・高耐薬品性の導電性ペーパーを得ることができ、これは燃料電池や太陽電池などの電極部材などに好適である。導電性物質としては、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブなどの炭素材料やヨウ化銅などの金属化合物材料、導電性高分子などの有機材料などを挙げることができる。さらに、ビピリジルルテニウム錯体などに代表される光増感剤と上記導電性ペーパーと混用することで、優れた光エネルギー変換効率を有する太陽電池や光合成モデルを模倣した光エネルギー変換装置などに利用することができる。また、酸化チタンなどに代表される金属酸化物系光触媒や各種触媒機能を持つ物質と本発明で用いるPPSナノファイバーを混用することで、高耐熱・高耐薬品性の機能性ペーパーを得ることができ、これは有害物質処理材料や各種フィルター類、太陽電池部材などに好適である。これらの有用物質と本発明で用いるPPSナノファイバーとが混用された物の形態に特に制限は無いが、PPSナノファイバーと上記有用物質とを液体分散体の状態で混合しておき、それを抄紙することで有用物質を含むPPS紙とすることが、取り扱い性や汎用性の点から好ましい。
また、それ以外の物質がPPSナノファイバー以外の繊維であっても良い。例えば、本発明で用いるPPSナノファイバーを単なる充填材として用い、PPSナノファイバーから成る紙のコストダウンをはかる場合には、通常繊度のPPS短繊維とPPSナノファイバーを混用した紙とすることができるのである。この時のPPSナノファイバーの混用率に特に制限は無いが、コストダウンの意味合いから紙の全体重量に対し50重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは30重量%以下である。もちろん、PPS繊維だけでなくアラミド繊維やセルロース繊維と混用することも可能である。例えばアラミド繊維は高い耐熱性から様々な絶縁材料として用いられているが、吸湿による寸法変化が大きいという欠点を有している。このため、低吸湿でしかも寸法変化をほとんどしないPPSナノファイバーを混用することで、アラミド紙の吸湿寸法安定性を向上させることができるのである。この場合のPPSナノファイバーの混用率も目的を達成できる範囲で選択すれば良いが、アラミド繊維の高耐熱性を活かす意味から50重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは30重量%以下である。
もちろん、上記有用物質とPPSナノファイバー以外の他の繊維を同時に含んでいても良い。
次に、本発明のPPSナノファイバーから成るトウまたは短繊維束またはパルプまたは液体分散体または紙の製造方法について詳述する。もちろん、本発明は以下の製造方法に特に限定されるものではない。
まず、本発明で用いる粗大ナノファイバーをほとんど含まないPPSナノファイバーの製造方法の一例を示す。本発明では、PPSが島、他のポリマーが海を形成するポリマーアロイ繊維から海を形成する他のポリマーを除去することによりPPSナノファイバーを得ることが好ましい。すなわち、PPSと他のポリマーを混練してポリマーアロイ溶融体となし、これを紡糸した後、冷却固化して繊維化する。そして必要に応じて延伸・熱処理を施しポリマーアロイ繊維を得る。そして、他のポリマーを除去することにより本発明で用いるPPSナノファイバー集合体を得ることができる。
ここで、PPSを他のポリマー中になるべく細かく、しかも均一に分散させることが重要である。このため、ポリマー同士の混練が極めて重要であり、本発明では混練押出機や静止混練器等によって高度に混練することが好ましい。なお、特開昭61−252315号公報などに記載されている単純なチップブレンドでは混練が不足するため、本発明のように島を微細に、しかも均一に分散することは困難である。
具体的に混練を行う際の目安としては、PPSに組み合わせる他のポリマーにもよるが、混練押出機を用いる場合は、2軸押出混練機を用いることが好ましく、静止混練器を用いる場合は、その分割数は100万以上とすることが好ましい。また、ブレンド斑や経時的なブレンド比率の変動を避けるため、それぞれのポリマーを独立に計量し、独立にポリマーを混練装置に供給することが好ましい。このとき、ポリマーはペレットとして別々に供給しても良く、あるいは、溶融状態で別々に供給しても良い。また、2種以上のポリマーを押出混練機の根本に供給しても良いし、あるいは、一成分を押出混練機の途中から供給するサイドフィードとしても良い。
混練装置として二軸押出混練機を使用する場合には、高度の混練とポリマー滞留時間の抑制を両立させることが好ましい。スクリューは、送り部と混練部から構成されているが、混練部の長さをスクリューの有効長さの20%以上とすることで高混練とすることができ好ましい。また、混練部の長さをスクリュー有効長さの40%以下とすることで、過度の剪断応力を避け、しかも滞留時間を短くすることができる。また、混練部はなるべく二軸押出機の吐出側に位置させることで、混練後の滞留時間を短くし、島ポリマーの再凝集を抑制することができる。加えて、混練を強化する場合は、押出混練機中でポリマーを逆方向に送るバックフロー機能のあるスクリューを設けることもできる。
また、島PPSを島直径数十nmサイズで細かく分散させるには、ポリマーの組み合わせも重要であり、なるべくPPSと相溶性の良いポリマーを海ポリマーとして選ぶことが好ましい。また、PPSは融点が280℃程度と高いため、海ポリマーは300℃以上でも熱分解が小さいものが好ましく、300℃に5分保持した時の重量減少率が5%以下のポリマーが好ましく、重量減少率が1%以下であればより好ましい。さらに、海ポリマーの溶融粘度も重要である。前述したようにPPSは高融点ポリマーのため混練温度や紡糸温度も300℃以上となるため、この温度でも充分な溶融粘度を保つことが好ましい。より具体的には300℃、1216sec−1での溶融粘度が150Pa・s以上のポリマーを海ポリマーとして用いると、島PPSに充分な剪断を与えることができ、島PPSの微細化、また均一分散のために好ましいのである。逆に島を形成するPPSの粘度はなるべく低く設定すると剪断力による島ポリマーの変形が起こりやすいため、島ポリマーの微分散化が進みやすくナノファイバー化の観点からは好ましい。より具体的にはPPSの300℃、1216sec−1での溶融粘度が200Pa・s以下とすることが好ましい。また、島PPS微分散化の観点からは、PPSの溶融粘度の方が海ポリマーの溶融粘度より低いことが好ましい。
また、ポリマーアロイ繊維から脱海してPPSナノファイバー化する際、脱海溶媒として水溶液系のものを用いることで環境負荷を低減できるため、海ポリマーとしては、ポリエステルやポリカーボネート等のアルカリ加水分解されるポリマーやポリアルキレングリコールやポリビニルアルコールおよびそれらの誘導体等の熱水可溶性ポリマーなどが好ましい。
これらの観点から海ポリマーには高粘度ポリエチレンテレフタレートや高粘度ナイロン66などを用いることが好ましい。特に、高粘度ポリエチレンテレフタレートはアルカリ加水分解が可能であり、防爆設備などが不要のため、特に好ましい。
また、PPSの分散径を細かくするためには適切な相溶化剤を用いることができる。例えば、シランカップリング剤系やエポキシ系のものを使用すると、PPSの島直径を50nm以下とすることも可能である。
本発明で用いるPPSポリマーアロイを紡糸する際は、糸の冷却条件も重要である。ポリマーアロイは非常に不安定な溶融流体であるため、口金から吐出した後に速やかに冷却固化させることが好ましい。このため、口金から冷却開始までの距離は1〜15cmとすることが好ましい。ここで、冷却開始とは糸の積極的な冷却が開始される位置のことを意味するが、実際の溶融紡糸装置ではチムニー上端部でこれに代える。
また、紡糸されたポリマーアロイ繊維には延伸・熱処理を施すことが好ましいが、延伸の際の予熱温度はPPSのガラス転移温度(T)以上の温度することで、糸斑を小さくすることができ、好ましい。
このようにして得られたPPSを含むポリマアロイ繊維を合糸することでトウと成すことができる。例えばポリマアロイ繊維トウ繊度を60万dtexとする場合には、紡糸はいわゆるステープルファイバーで用いている紡糸機を利用し、紡糸段階で400dtex以上の太繊度と成し、この糸条を合糸することでトウを形成することが生産性向上の観点から好ましい。ただし、この時には口金孔数は200以上としてポリマーアロイの単繊維繊度を1〜10dtexとすることが、生産性向上と紡糸性向上の観点から好ましい。また、口金孔数が200以上となると口金直径が140mm以上と、織編物に用いるいわゆる長繊維で用いている口金直径よりも大きくなり、しかも本発明の紡糸では急冷が好ましいため、口金面内での温度分布が大きくなる場合がある。このため、口金孔位置によってポリマー粘度が異なることによる糸切れや糸物性の変動を抑制するため、通常のPPSで採用している紡糸温度より低めの紡糸紡糸温度を採用することが好ましい。これにより、雰囲気温度と紡糸温度の差が小さくなり、口金孔位置によるばらつきを抑制することができるのである。また、PPSと帯電性の異なるポリマーを海ポリマとして採用した場合にはポリマーアロイ繊維で静電気が発生し易い場合があるが、トウの集束性を高め、合糸、延伸時の工程安定性を向上させるため、工程油剤としては主成分が脂肪酸エステルやポリエーテルなどの物を使用することが好ましい。
また、ポリマーアロイ繊維から成るトウ繊度が1万dtexを超える場合には、長繊維で用いられている乾熱延伸よりも、スチーム延伸とすることが好ましい。これは、乾熱延伸では繊維同士での伝熱によるため、トウ断面内において中心部付近まで均一な伝熱が不十分な場合があるのに対し、スチーム延伸では高温蒸気が繊維間空隙を満たしていく効果が付加されるため、伝熱効率が高くトウ中心部付近まで均一に熱を伝達することができ、トウを均一に延伸をすることができるのである。
次にこのポリマーアロイ繊維から成るトウから海ポリマーを脱海処理することで、PPSナノファイバーから成るトウを得ることができるが、ここで太いポリマーアロイ繊維トウをそのまま脱海処理してもトウ中心部付近まで完全に脱海することは必ずしも容易ではない。これは、トウ繊度が太くなればなるほど、脱海溶媒がトウ中心部付近まで浸透し難く、海ポリマーの溶解や分解が充分進まないこと、さらにはここで溶解された海ポリマーやその分解物がトウ中心部からトウ表層部へ移動し難く、溶解平衡や分解反応平衡をずらし難いため、結果としてトウ中心部に未脱海部分が残ったり、一旦脱海されたポリマーやその分解物がトウ中に留まり、欠点となり易いという問題が発生する場合があった。このため、本発明ではポリマーアロイ繊維から成るトウの繊維密度を0.01〜0.5g/cm程度とし、ポリマーアロイ繊維から成るトウ中での繊維間空隙を充分取ることで、脱海溶媒がトウ中心部まで速やかに浸透し、さらには溶解された海ポリマーやその分解物が速やかにトウ表層さらにはトウ外部に排出され易くなるのである。これにより、トウ中心部まで完全に脱海でき、未脱海部分のほとんど無いPPSナノファイバー集合体から成るトウを得ることができるのである。より具体的には、PPSナノファイバーから成るトウの横断面積に占めるPPSナノファイバー部分の面積比率が95〜100%とできるのである。ここで繊維密度とはトウの単位体積あたりの重量であり、トウの見かけ密度に当たる。この繊維密度を小さくすればするほど脱海には有利であるが、ポリマーアロイ繊維から成るトウそのものの取り扱い性が低下するため、0.01g/cm以上とすることが好ましい。逆に繊維密度を0.5g/cm以下とするこで、脱海効率向上が図れるのである。
脱海装置としては、バッチ式装置でも連続式装置のいずれを用いても良いが、連続式装置を用いる方が生産性向上の観点からは好ましい。連続式装置としては、例えば図4に示すように、トウを脱海処理槽中をゆっくり通過させるタイプの物を用いることが可能である。連続式装置の一例として図4を用いて説明すると、ポリマーアロイ繊維から成るトウ5はローラー4で速度および張力規制されながら脱海処理液6で満たされた脱海処理槽3に導かれ、トウ繊維密度が0.01〜0.5g/cmとなるよう調整される。そして、ポリマーアロイ繊維から成るトウ5は脱海処理槽3中をゆっくり移動する間に脱海処理されるのである。そして、脱海処理されたPPSナノファイバーから成るトウ8が脱海処理槽3から引き出されるのである。さらに、このようなプロセスを中和、洗浄などにも適用し、脱海処理と連続させて生産効率を向上させることもできる。
また、バッチ式の方法および装置としてはいくつかの種類のものが例示できる。例えば、複数本のバーが脱海処理槽に設置されており、ポリマーアロイ繊維から成るかせ状のトウを複数本バーに吊し、このバーから脱海溶媒を吐出させることで脱海を行うことができる。より詳細に説明すると、バーは上下2本とし、上バーにかせ状のトウを吊し、下バー位置を調整することでかせ状のトウに所望の張力をかけ固定する。この張力により、かせ状のトウの繊維密度が0.01〜0.5g/cmとなるよう調整することができる。上バーはバー内部が中空状になっており脱海処理液を通すことができる。この脱海処理液はまず脱海処理槽底部に溜められ、ここから脱海処理液配管を通り計量ポンプにて計量・移送され、上バー中空部に導かれるものである。さらに上バーの表面には処理液吐出穴が空けられており、前記上バーの中空部を通った脱海処理液を上バー表面から吐出することができる。そして、この脱海処理液はかせ状のトウを伝って下に落ちるが、この過程で脱海が行われるのである。そして、脱海処理槽底部に溜まった脱海処理液は脱海処理液配管を通り、計量ポンプによって再び上バーに循環供給される。このプロセスの繰り返しによりかせ状のトウを徐々に脱海することができるのである。さらに、この装置では上バーがゆっくりと回転することにより、かせ状のトウをゆっくり回転させることができる。これにより、トウの長手方向および断面方向の脱海均一性を確保することができるのである。さらに、脱海溶媒から種々の溶媒に変更することで、脱海完了後のPPSナノファイバーから成るトウにそのまま中和や溶媒置換、洗浄などを容易に施すことができるのである。
また、枠にポリマーアロイ繊維から成るトウを巻き付けて、これをバッチ式の脱海処理槽に投入し、脱海を行うこともできる。例えば、図3に示すように枠1にトウ2を巻き付けることが可能である。この時、巻き付け張力を調整することにより、トウ2の繊維密度が0.01〜0.5g/cmとなるよう調整することができる。
以上のようなバッチ式の脱海を行う場合には、トウの形態安定性を向上させるため、綿糸などで部分的にトウを縛ることが好ましい。ただし、縛る頻度が多すぎると、その部分の脱海が不十分となる場合もあるので、縛る頻度は10〜100cm毎とすることが好ましい。
なお、脱海後、PPSナノファイバーから成るトウに中和や溶媒置換、洗浄を施すことが、次工程でのコンタミネーションなどを抑制する観点から好ましい。
このようにして得られたPPSナノファイバーから成るトウをギロチンカッターなどを利用して所望の繊維長にカットすることで、本発明のPPSナノファイバーから成る短繊維束を得ることができる。ここで、カットの際にPPSナノファイバーから成るトウの繊維密度が低すぎると、カットの剪断力に対しトウの自己支持力が不足するため、ミスカットが増加し易くなる。このため、PPSナノファイバーから成るトウの繊維密度は0.01g/cm以上とすることが好ましく、例えば前工程である脱海工程後絞りを入れて乾燥するなど繊維密度を増加させる操作を加えることが好ましい。一方、トウを完全に乾燥させるとトウが硬くなり過ぎるため、ギロチンカッターの交換周期が短くなり、生産性が低下する場合がある。このため、カット前のトウ中の液体分率により硬さを調整することが好ましい。
次に、このようにして得られたPPSナノファイバーから成る短繊維束を叩解することにより、PPSナノファイバーから成るパルプを得ることができる。叩解は、生産レベルではナイアガラビータ、リファイナ−、ミルで加工され、実験的には、家庭用ミキサ−やカッタ−、ラボ用粉砕器やミキサーやカッタ−、バイオミキサー、ロールミル、乳鉢、抄紙用PFI叩解機などを用いることができる。
PPSナノファイバー集合体は軽くしごいたり、短繊維を水などの分散媒中にいれ攪拌しただけでは単繊維レベルまでバラバラにはならない。これは、PPSナノファイバーが非常に細く表面積が従来の極細繊維に比べ格段に増加しているため、微粒子粉末の場合と同様に繊維間の相互作用がかなり強く凝集力が大きいためと考えられる。
このため、PPSナノファイバー集合体は、叩解機によって単繊維までバラバラにすることが好ましい。ただし、叩解機の中でも、カッタ−や粉砕的な羽根を有する装置は繊維を損傷し易く、繊維をバラバラにする効果と同時に繊維を切断し繊維長をどんどん短くする欠点がある。PPSナノファイバーは繊維間凝集力が強いのに反して繊維が細いので、カッタ−や粉砕的な羽根を有する装置では繊維の損傷が大きく、ただでさえ粉体化しやすいPPS繊維がさらにに粉体化し易くなるのである。このため、繊維を叩くとしても、粉砕やカットする力よりむしろ、もみほぐしたり、剪断力をかけて繊維間の凝集力をを解くことが好ましい。特に、PFI叩解機は内羽根と外容器の周速度差による剪断力によって叩解するため、PPSナノファイバーが1本1本になるまでの損傷が非常に少なく好ましい。他の装置の叩解でも、叩解速度や叩解時の圧力を低減し打撃力を緩和し繊維への損傷を少なくすることが好ましい。また、分散媒、すなわち叩解を施す際に使用する液体の種類にもよるが、PPSナノファイバーは疎水性が高いために、親水性の高い液体中でPPSナノファイバーを叩解する場合には、親水性の高い液体とPPSナノファイバーの馴染みを良くするために、界面活性剤を併用添加することが好ましい。特に、液体が水の場合は界面活性剤を併用すると、格段に叩解し易くなる。界面活性剤の種類はPPSナノファイバーとの相互作用が高いものであれば特に限定はないが、アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系の界面活性剤であれば良いが、ノニオン系の界面活性剤であることがより好ましい。ノニオン系の界面活性剤としては、例えばポリグリコールやポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステルなどが挙げられる。さらに、PPSナノファイバーの叩解が進むと微細なナノファイバーによって泡立ちが激しくなる場合もあるので、これを抑制するためポリグリコールなどによる消泡剤を併用添加することも好ましい。この時の界面活性剤や消泡剤の添加率は叩解時の液体に対して0.00001〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは0.0001〜5重量%、さらに好ましくは0.01〜1重量%であり、これによりPPSナノファイバーの叩解が十分に進む。
叩解は、1次叩解と2次叩解に分けて叩解することが好ましい。1次叩解は、PPSナノファイバー集束糸を軽く砕いて、ナノファイバー集合数をかなり小さくしておくことが好ましい。ナイアガラビータやリファイナーで1次叩解する場合の繊維の分散液全体に対する濃度は、5重量%以下とするとナノファイバーの均一分散性が向上するので好ましい。より好ましくは1重量%以下である。また、PPSナノファイバー濃度を0.1重量%以上とすると、叩解の効率が向上するので好ましい。1次叩解は、ナイアガラビータやリファイナーなどの叩解機の設定クリアランスを0.5〜2mmと大きめにすると、圧力、加工時間も低減できるので好ましい。叩解されたPPSナノファイバーは、フィルターで濾過捕集し、脱水機で脱水することでPPSナノファイバーから成るパルプ前駆体を得ることができる。
2次叩解とは、1次叩解されたナノファイバーを更に叩解することである。この時のナイアガラビータやリファイナー、PFIなどの叩解機の設定クリアランスは0.1〜1.0mmが好ましく、0.1〜0.5mmが更に好ましく、加圧も小さくソフトに加工することが好ましい。リファイナーの叩解機の場合、内蔵される加工刃の形状を変更できるが、切断よりもみ効果や剪断効果のある形状のものが好ましい。2次叩解を実験的に行うにはPFI叩解機が最適である。PFI叩解機は内羽根と外容器の周速度差による剪断力によって叩解するため、PPSナノファイバーが1本1本になるまでの損傷が非常に少なくより好ましい。また、叩解加工する時のナノファイバー分散液全体に対する繊維濃度を5〜20重量%と高くでき、装置の叩解部分が常時繊維に均一にあたるので、叩解に従って繊維が細くなりナノファイバーとなることで繊維強力が低下したとしても、繊維が更に繊維長方向に切断したり粉末化したりせず均一な叩解が可能になる。
ナイアガラビータやリファイナー、家庭用やラボ用のミキサー、カッタ類は水中で加工するため、叩解に従って細くなって浮遊する繊維にも局所的繰返し当たり切断や破砕効果が大きく、繊維長方向に切断したり粉末化し易い。該装置の場合、刃の形状、回転スピード、加圧条件などの叩解条件をソフトにして叩解することが好ましい。叩解されたナノファイバーは、水や他の液体中で叩解する場合はフィルターで濾過捕集し、脱水機で水分率や液体分率を調製することで繊維濃度1重量%より大きく30重量%以下のPPSナノファイバーから成るパルプとすることができる。どうしても乾燥が必要な場合は、凍結乾燥を行ったり、60℃以下の低温で真空乾燥することが好ましい。
上記したナノファイバーの叩解は、特別な液体を必要とする場合には、必要とする液体中で叩解することが好ましい。
従来のセルロースや合成繊維の叩解では、水中で繊維を叩解後乾燥し、乾燥した繊維を目的とする乳液や溶媒中で攪拌機で分散する方法がとられていた。従来の通常繊維や極細繊維ではこの方法でも分散可能であった。しかし、ナノファイバーの場合、繊維表面積が非常に大きいため、叩解によってせっかく液中にバラバラに分散した繊維が、乾燥時に再凝集し、それを通常の攪拌機で分散しても均一な分散は困難である。このため、直接目的とする液体中で叩解することが好ましい。例えば、有機溶媒と水との混合液が好ましい場合もある。通常の叩解機は、水中で叩解するのが通常であり、有機溶媒対応になっていないので、防爆型にしたり、蒸発溶媒の回収する作業環境対策や溶媒によっては作業時のマスク着用などの対策が必要になる。
有機溶媒中で直接叩解するには、特殊な防爆型の叩解機や安全対策などの注意が必要である。
次に、PPSナノファイバー液体分散体の調整を行う。
PPSナノファイバーパルプと液体を攪拌機に入れ所定の濃度に分散する。PPSナノファイバーの単繊維直径にもよるが、PPSナノファイバーの液体分散体全体に対する濃度は、0.0001重量%以上1重量%以下が好ましい。PPSナノファイバーは凝集し易いので、凝集を防止するため、なるべく低濃度で分散調整することが好ましい。更に、ナノファイバーの分散性を向上するため、分散剤を添加することが好ましい。液体が水の場合、用いる分散剤は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の物から選択することが好ましい。ただし、同じ化学組成の分散剤であってもその分子量や繊維の濃度、また他の配合剤の影響も受けるので、用途の目的毎に適切に選択し、液体分散体を調整することが好ましい。分散剤の濃度は、液体分散体全体に対し0.0001〜1.0重量%であれば、十分な分散効果が得られ好ましい。また、液体が油性溶媒や有機溶媒の場合には、アクリルアミド系、シリコーン系、フッ素系分散剤が使用することが好ましい。
そして、ここで得られたPPSナノファイバーから成る液体分散体を抄紙したり支持体上に滴下あるいはスプレーあるいはコーティングあるいはキャストすることでPPSナノファイバーから成る紙を得ることができる。また、抄紙する場合には抄紙機のフィルター上に行っても、その上に織物や不織布、多孔フィルムなどの支持体を置き、この上に抄紙を行っても良い。抄紙の際は、通常の機械式抄紙機を利用することが可能であり、長編抄紙機、丸編抄紙機のどちらでも可能であるが、長編抄紙機がより好ましい。ラボ的には、市販のシート抄紙機での抄紙可能であり、25cm角のシートの容器にPPSナノファイバーから成る液体分散体を投入し、フィルターで濾過し、脱水、乾燥すればPPSナノファイバーから成る紙を得ることができる。また、本発明に用いられるPPSナノファイバーの平均直径が200nm以下で、200nm以上の粗大ナノファイバー比率が1%以下の場合には、霧吹き、スプレーなどの細かな口金からでもナノファイバーが詰まることなく噴射でき、ナノファイバー分散液を霧状にして支持体に付着させることができる。この方法は、支持体上にナノファイバー層を形成させたい時、またそのナノファイバー層の厚みを非常に薄くしたい時に特に有効である。ナノファイバー分散液の濃度や噴霧時間などの調整によりナノファイバー層の厚みは1μm以下とすることも可能である。もちろん、スプレー条件を調整することにより、厚み20μm以上の物も得ることができる。
本発明で用いるPPSナノファイバーは、従来PPS紙に用いられてきたPPS繊維よりはるかに細いため、抄紙機のフィルターや支持体の目が細かすぎる場合、PPSナノファイバーがここに詰まりやすく、フィルター上や支持体上での液体分散体の流れに偏りができ易い場合がある。このため、特にPPS紙の目付が20g/cm以下と薄い場合には、紙のピンホール生成の抑制が不十分となる場合がある。このため、フィルターや支持体上での液体の流れが層流から乱れないようにフィルター下の排液流路や排液速度を適正化することが好ましい。また、フィルターや支持体の目を大きくしすぎるとPPSナノファイバーが排液に流れる割合が増加し、生産性が低下する場合があるため、フィルターや支持体の目開きを適正化することが好ましい。また、いわゆる抄紙ではなく液体分散体を支持体上に滴化あるいはスプレーあるいはコーティングあるいはキャストすることで支持体上にPPSナノファイバーから成る紙を形成させると、液体分散体が流れないためピンホール生成を抑制し易い場合がある。ただし、この際は厚物や高目付の紙が得られ難い場合があるため、目的に応じて紙形成の手法を選択することが好ましい。
また、本発明で用いるPPSナノファイバーとそれ以外の物質を混用する際は、液体分散体を作製する工程で、PPSナノファイバーとそれ以外の物質を混合すると工程が簡略化できるとともに、均一混合させやすく好ましい。
本発明のPPSナノファイバーから成る紙は、耐熱・耐薬品性に優れるとともに吸湿による寸法変化がほとんど無く、しかも従来のPPS紙よりはるかに粗大空隙が少なくピンホールも少ないため、各種産業用途に好適である。例えば、回路基板には現在、ポリイミド・フィルムが用いられているが、さらなる高精度化のためには吸湿による寸法変化を抑制する必要があったが、本発明のPPSナノファイバーから成る紙ではこの問題点を解決することが可能である。また、この他にも耐熱・耐薬品性が要求される各種の絶縁材料に好適に用いることが出来る。さらに、このPPSから成る紙を酸化することによりポリフェニレンスルフィドオキシド(以下PPSOと略す)から成る紙とすることもできる。PPSOはPPSよりはるかに耐熱性が高く、しかも難燃材料であるが、従来のPPSO紙は、紙中の隙間が多く絶縁破壊され易いといった問題があった。このため、カレンダーロールなどをかけてもこの隙間を埋めることも試みられたが、充分空隙を埋めることはできなかった。しかし、本発明の従来よりも圧倒的に緻密なPPS紙を酸化すれば、従来にない緻密なPPSO紙が得られ、充分な絶縁破壊特性を発現させることができるのである。これにより、より高耐熱が要求される用途や、難燃性が要求される用途に好適に用いることができる。より具体的には、出力の大きなモーターの絶縁材料などが挙げられる。
また、PPSは屈折率が1.75〜1.84程度と、PPの1.5程度などに比べると格段に大きく、有機ポリマーの中では最大級のものである。このため、繊維表面での全反射が起こり易く、光を効率良く反射することが可能である。このため、本発明のPPSナノファイバーから成る紙は、繊維が格段に細いことによる反射界面の急増と高屈折率の両面から、各種光反射シートに好適に用いることができる。中でも、液晶ディスプレイのバックライト用反射シートやLED照明用の反射シート・光拡散板シートなどに好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。なお、実施例中の測定方法は以下の方法を用いた。
A.ポリマーの溶融粘度
東洋精機キャピログラフ1Bによりポリマーの溶融粘度を測定した。なお、サンプル投入から測定開始までのポリマーの貯留時間は10分とした。
B.融点
Perkin Elmaer DSC−7を用いて2nd runでポリマーの融解を示すピークトップ温度をポリマーの融点とした。この時の昇温速度は16℃/分、サンプル量は10mgとした。
C.ポリマーアロイ繊維のウースター斑(U%)
ツェルベガーウスター株式会社製USTER TESTER 4を用いて給糸速度200m/分でノーマルモードで測定を行った。
D.TEMによる繊維横断面観察
繊維の横断面方向に超薄切片を切り出し、透過型電子顕微鏡(TEM)で繊維横断面を観察した。必要に応じて金属染色を施した。
TEM装置 : 日立社製H−7100FA型
E.ナノファイバーの単繊維の平均直径
TEMによる繊維横断面写真を画像処理ソフト(WINROOF)を用いて、各単繊維の横断面積から円換算直径を求める。そして、無作為抽出した300本の単繊維の直径を横断面の面積ベースで平均し、これから平均直径を算出することができる。より具体的には、各単繊維の横断面積をSとするとΣS(i=1〜n)/nにより単繊維の平均横断面積(Sav)を求め、これから円換算で平均直径(Dav)をDav=(4Sav/π)1/2により求める。nは300以上である。
F.繊維比率
上記TEM観察の単繊維直径データを用い、PPSナノファイバーそれぞれの単繊維の面積をSとしその総和を総面積(S+S+…+S)とする。また、同じ単繊維直径を持つナノファイバーの頻度(個数)を数え、その積を総面積で割ったものをその単繊維の繊維比率とした。この時、計算に用いるナノファイバーは同一横断面内で無作為抽出した300本以上を使用した。
G.SEM観察
繊維に白金−パラジウム合金を蒸着し、走査型電子顕微鏡で繊維側面を観察した。
SEM装置 : 日立社製S−4000型
H.力学特性
室温(25℃)で、初期試料長=200mm、引っ張り速度=200mm/分とし、JIS L1013に示される条件で荷重−伸長曲線を求めた。次に破断時の荷重値を初期の繊度で割り、それを強度とし、破断時の伸びを初期試料長で割り伸度として強伸度曲線を求めた。
I.ポリマーの重量減少率
セイコー・インストルメンツ社製TG/DTA6200を用い、チッソ雰囲気下で室温から10℃/分で300℃まで昇温し、その後300℃で5分間保持した時の重量減少率を測定した。
J.トウの繊維密度
トウの概略形からトウの体積を計算し、これとトウ繊度からトウの繊維密度を計算した。
実施例に用いたナノファイバーの原糸であるポリマーアロイ繊維の製造を以下の参考例に示した。
K.トウ中のナノファイバーの本数密度
ナノファイバーの平均直径とトウ横断面の概略形から計算した。

参考例1
溶融粘度280Pa・s(300℃、1216sec−1)のPETを80重量%、溶融粘度160Pa・s(300℃、1216sec−1)のPPSを20重量%として、下記条件で2軸押出混練機を用いて溶融混練を行った。ここで、PPSは直鎖型で分子鎖末端がカルシウムイオンで置換された物を用いた。また、ここで用いたPETを300℃で5分間保持した時の重量減少率は0.9%であった。
スクリュー L/D=45
混練部長さはスクリュー有効長さの34%
混練部はスクリュー全体に分散させた。
途中2個所のバックフロー部有り
ポリマー供給 PPSとPETを別々に計量し、別々に混練機に供給した。
温度 300℃
ベント 無し
ここで得られたポリマーアロイ溶融体をそのまま紡糸機に導き、紡糸を行った。この時紡糸温度は315℃、限界濾過径15μmの金属不織布でポリマーアロイ溶融体を濾過した後、口金面温度292℃とした口金から溶融紡糸した。この時、口金としては、吐出孔上部に直径0.3mmの計量部を備えた、吐出孔径が0.6mmのものを用いた。そして、この時の単孔あたりの吐出量は1.1g/分とした。さらに、口金下面から冷却開始点までの距離は7.5cmであった。吐出された糸条は20℃の冷却風で1mにわたって冷却固化され、脂肪酸エステルが主体の工程油剤が給油された後、非加熱の第1引き取りローラーおよび第2引き取りローラーを介して1000m/分で巻き取られた。この時の紡糸性は良好であり、24時間の連続紡糸の間の糸切れはゼロであった。そして、これを第1ホットローラーの温度を100℃、第2ホットローラーの温度を130℃として延伸熱処理した。この時、第1ホットローラーと第2ホットローラー間の延伸倍率を3.3倍とした。得られたポリマーアロイ繊維は400dtex、240フィラメント、強度4.4cN/dtex、伸度27%、U%=1.3%の優れた特性を示した。また、得られたポリマーアロイ繊維の横断面をTEM観察した写真を図2に示すが、海ポリマーであるPET中にPPSが島として直径100nm未満で均一に分散していた。また、島の円換算直径を画像解析ソフトWINROOFで解析したところ、島の平均直径65nmであり、直径100nm以上の島比率は0%であった。
参考例2
PETのブレンド率を60重量%、PPSのブレンド率を40重量%とし、延伸倍率を3.1倍として参考例1と同様に紡糸、延伸を行い、430dtex、240フィラメント、強度4.4cN/dtex、伸度26%、U%=1.4%の優れた特性を示した。また、得られたポリマーアロイ繊維の横断面をTEM観察したところ、海ポリマーであるPET中にPPSが島として均一に分散していることが分かった。また、島の円換算直径を画像解析ソフトWINROOFで解析したところ、島の平均直径76nmであり、直径100nm以上の島比率は7%、直径150nm以上の島比率は0%であった(島直径最大値は116nmであった)。
参考例3
参考例2と同様の条件で溶融混練を行い、一旦ポリマーアロイペレットを得た。このポリマーアロイペレットを乾燥した後、紡糸機に投入した。このポリマーアロイペレットを315℃で溶融し、紡糸温度315℃のスピンブロックに導いた。そして、限界濾過径15μmの金属不織布でポリマーアロイ溶融体を濾過した後、口金面温度292℃とした口金から溶融紡糸した。この時、口金としては、吐出孔上部に直径0.3mmの計量部を備えた、吐出孔径が0.6mmのものを用いた。そして、この時の単孔あたりの吐出量は1.1g/分とした。さらに、口金下面から冷却開始点までの距離は10cmであった。吐出された糸条は20℃の冷却風で1mにわたって冷却固化され、脂肪酸エステルが主体の工程油剤が給油された後、非加熱の第1引き取りローラーおよび第2引き取りローラーを介して1000m/分で引き取ら、この糸条を20本集めて糸条ボックスに落とした。この時の紡糸性は良好であり、24時間の連続紡糸の間の糸切れはゼロであった。さらにこれを40本集めてポリマーアロイ繊維から成るトウを形成し、100℃のスチーム延伸を行った。この時、延伸倍率を2.8倍とした。得られたポリマーアロイ繊維トウは77万dtexであった。ここで糸条を1本取り出し上記条件でスチーム延伸し物性を測定したところ、強度4.0cN/dtex、伸度35%、U%=1.5%の優れた特性を示した。また、得られたポリマーアロイ繊維の横断面をTEM観察したところ、海ポリマーであるPET中にPPSが島として均一に分散していることが分かった。また、島の円換算直径を画像解析ソフトWINROOFで解析したところ、島の平均直径80nmであり、直径100nm以上の島比率は8%、直径150nm以上の島比率は0%であった。
参考例4
重量平均分子量5万のPPSを紡糸温度320℃で溶融紡糸し、引き取り速度800m/分で紡糸し未延伸糸糸条を得、これを合糸した。そして100℃、3.2倍でスチーム延伸を施し、単繊維繊度1dtex(繊維直径12μm)、トウ繊度10万dtexのPPSトウを得た。
実施例1
参考例1で得たポリマーアロイ繊維をかせ取りし、繊度10万dtexのかせ状のトウとした。この時、トウ外周を綿糸で結んで30cm毎に固定することで、脱海処理中にトウがバラバラになることを抑制した。そして、このトウの繊維密度が0.05g/cmとなるようにかせ張力を調製し、かせを脱海するための2本のバーを有するバッチ式脱海装置にセットした。そして、このトウを98℃、10重量%水酸化ナトリウム水溶液に減量促進剤として明成化学工業(株)社製「マーセリンPES」5%owfを併用してアルカリ加水分解処理し、ポリマーアロイ繊維から海ポリマーであるPETを脱海し、トウ繊度2万dtexのPPSナノファイバーから成るトウを得た。ここで得られたPPSナノファイバーの横断面をTEM観察した(図1)ところ、平均直径は60nm、直径100nm以上の比率は0%(最大直径で86nm)であった。なお図1ではナノファイバー単繊維同士が接着しているように見えるが、これはTEMのコントラストが出にくいためであると考えられる。また、このPPSナノファイバーの側面をSEM観察したところ、PPSナノファイバーは分岐を全く持っていない物であった。このPPSナノファイバーから成るトウは脱海前後の重量変化から完全に脱海されPPSナノファイバー100%となっていることが確認できた。このPPSナノファイバーから成るトウは前駆体であるポリマーアロイ繊維から成るトウとは異なり、全体に固着しており、PPSナノファイバー単繊維の平均繊維径とトウの断面積から計算すると、トウ中のPPSナノファイバーの本数密度は10万本/mm以上であった。
上記PPSナノファイバーから成るトウを水分率10%に調整し、ギロチンカッターを用いて繊維長2mmにカットし、PPSナノファイバーから成る短繊維束を得た。
そして、このPPSナノファイバーから成る短繊維束をナイアガラビータの容器に約20リットルの水と消泡剤の一種である第一工業製薬社製「アンチフロスF−244」を20g、30gの上記PPSナノファイバーから成る短繊維束を投入し、繊維を10分間1次叩解した。なお、ここで用いた「アンチフロスF−244」はノニオン系界面活性剤としても機能する物であった。この繊維を遠心分離器で水分を除去し、繊維濃度が10重量%の1次叩解繊維を得た。この1次叩解繊維をPFI叩解装置で10分間2次叩解した後脱水しPPSナノファイバーの繊維濃度が10重量%のPPSナノファイバーから成るパルプを得た。
そして、上記パルプ5.5gとノニオン系分散剤の一種である分子量1万のポリオキシエチレンフェニレン化エーテルでの第一工業製薬社製「ノイゲンEA−87」0.55gを1リットルの水と共に離解機に入れ5分間分散した。該離解機中の溶液を実験用抄紙機の容器に入れ、さらに水を追加し、繊維濃度0.003重量%の液体分散体を得た。これを事前に抄紙用金網ネット上にのせた25cm角のアドバンテック(株)製濾紙#2(5μm)上に抄紙し、ローラで脱水し、ドラム式乾燥機で半乾燥後濾紙から該合成紙を剥離し再乾燥し、PPSナノファイバーからなるPPS紙を得た。
得られたPPSナノファイバーから成る紙の表面をSEM観察したところ、PPSナノファイバーが単繊維レベルで均一に分散していることが分かった。また、PPSナノファイバーの長さ(L)が大きいためSEMの視野範囲ではLは決定することができなかったが、L/Dは50以上であると考えられた。また、L/Dが10以下の物はゼロであった。得られたPPS紙の目付は8g/mと非常に薄いものであったが、紙力に優れ容易に破ける物ではなかった。また、紙構造のためPPSフィルムに比べ柔軟性に富む物であり、加工性に優れていた。また、直径50μm以上のピンホールはゼロであった。また、この紙を注意深くカットし紙の断面を観察したところ、紙の断面中で縦10μm以上、横10μm以上の粗大空隙が占める面積が紙の断面積に対し0%であり粗大空隙の無い均一な紙であることがわかった。また、紙の断面中で縦2μm以上、横2μm以上の中程度の空隙が占める面積が紙の断面積に対し0.1%以下であり中程度の空隙もほとんど有さない均一な紙であった。一方、このPPS紙の表面をSEMで観察したところ、ナノレベルの細孔を多数含む紙であり、このままでも液体フィルターや2次電池やキャパシター用セパレーターなどに好適であった。
上記、PPS紙をさらに180℃で熱プレス加工し、さらに緻密なPPS紙を得た。これは吸湿による寸法変化のほとんど無い回路基板や液晶ディスプレイ用バックライト反射シートやLED照明用反射シートなどに好適な物であった。
実施例2
参考例2で得たポリマーアロイ繊維をかせ取りし、繊度13万dtexのかせ状のトウとした。この時、トウ外周を綿糸で結んで30cm毎に固定することで、脱海処理中にトウがバラバラになることを抑制した。そして、このトウの繊維密度は0.05g/cmとなるようにかせ張力を調製しながらステンレス製の枠に固定した(図3)。そしてこれを95℃、10重量%水酸化ナトリウム水溶液に減量促進剤として明成化学工業(株)社製「マーセリンPES」5%owfを併用してアルカリ加水分解処理し、ポリマーアロイ繊維から海ポリマーであるPETを脱海し、トウ繊度5万dtexのPPSナノファイバーから成るトウを得た。ここで得られたPPSナノファイバーの横断面をTEM観察したところ、平均直径は80nm、直径100nm以上の比率は8%(最大直径で129nm)、直径150nm以上の比率は0%であった。また、このPPSナノファイバーの側面をSEM観察したところ、PPSナノファイバーは分岐を全く持っていない物であった。また、このPPSナノファイバーから成るトウは脱海前後の重量変化から完全に脱海されPPSナノファイバー100%となっていることが確認できた。このPPSナノファイバーから成るトウは前駆体であるポリマーアロイ繊維から成るトウとは異なり、全体に固着しており、PPSナノファイバーの平均繊維径とトウの断面積から計算すると、トウ中のPPSナノファイバーの本数密度は10万本/mm以上であった。
上記PPSナノファイバーから成るトウを水分率10%に調整し、ギロチンカッターを用いて繊維長2mmにカットし、PPSナノファイバーから成る短繊維束を得た。
そして実施例1と同様に1次叩解、2次叩解を行い、PPSナノファイバーから成る繊維濃度10重量%のパルプを得た。
そして、上記パルプ5.5gとノニオン系分散剤の一種である分子量1万のポリオキシエチレンフェニレン化エーテルでの第一工業製薬社製「ノイゲンEA−87」0.55gを1リットルの水と共に離解機に入れ5分間分散した。該離解機中の溶液を実験用抄紙機の容器に入れ、さらに水を追加し、PPSナノファイバー液体分散体を得た。これの繊維濃度は0.003重量%であった。溶液を事前に抄紙用金網ネット上にのせた25cm角の「スクリーン紗(PET製、繊維径70μm、孔径80μm角)」上に抄紙し、ローラで脱水し、ドラム式乾燥機で乾燥し、PETを支持体としたPPSナノファイバーから成る紙を得た。
得られたPPSナノファイバーから成る紙の表面をSEM観察したところ、PPSナノファイバーが単繊維レベルで均一に分散していることが分かった。また、PPSナノファイバーの長さ(L)が大きいためSEMの視野範囲ではLは決定することができなかったが、L/Dは50以上であると考えられた。また、L/Dが10以下の物はゼロであった。得られたPPS紙の目付は8g/mと非常に薄いものであったが、紙力に優れ支持体にしっかり固着しており繊維くず等が脱落することはなかった。また、織物を支持体としており全体にやや厚みがあるものの、PPSフィルムに比べ柔軟性に富む物であり、加工性に優れていた。また、直径50μm以上のピンホールはゼロであった。また、この紙を注意深くカットし紙の断面を観察したところ、紙の断面中で縦10μm以上、横10μm以上の粗大空隙が占める面積が紙の断面積に対し0%であり粗大空隙の無い均一な紙であることがわかった。また、紙の断面中で縦2μm以上、横2μm以上の中程度の空隙が占める面積が紙の断面積に対し0.1%以下であり中程度の空隙もほとんど有さない均一な紙であった。一方、このPPS紙の表面をSEMで観察したところ、ナノレベルの細孔を多数含む紙であり、このままでも液体フィルターや2次電池やキャパシター用セパレーターなどに好適であった。
上記、PPS紙をさらに180℃で熱プレス加工し、さらに緻密なPPS紙を得た。これは吸湿による寸法変化のほとんど無いモーター用のセパレーターや液晶ディスプレイ用バックライト反射シートやLED照明用反射シートなどに好適な物であった。
実施例3
参考例3で得たポリマーアロイ繊維から成るトウにクリンパーで捲縮を施し、整トウした。そして、このトウを、95℃、10重量%水酸化ナトリウム水溶液に減量促進剤として明成化学工業(株)社製「マーセリンPES」5%owfを併用した脱海処理液に連続的に通してアルカリ加水分解処理し、ポリマーアロイ繊維から海ポリマーであるPETを脱海し、トウ繊度31万dtexのPPSナノファイバーから成るトウを得た。この時、トウが脱海装置に入る時に繊維密度が0.05g/cmとなるよう工程張力を調製した。ここで得られたPPSナノファイバーの横断面をTEM観察したところ、平均直径は80nm、直径100nm以上の比率は8%(最大直径で129nm)、直径150nm以上の比率は0%であった。また、このPPSナノファイバーの側面をSEM観察したところ、PPSナノファイバーは分岐を全く持っていない物であった。また、このPPSナノファイバーから成るトウは脱海前後の重量変化から完全に脱海されPPSナノファイバー100%となっていることが確認できた。このPPSナノファイバーから成るトウは前駆体であるポリマーアロイ繊維から成るトウとは異なり、全体に固着しており、PPSナノファイバーの平均繊維径とトウの断面積から計算すると、トウ中のPPSナノファイバーの本数密度は10万本/mm以上であった。
上記PPSナノファイバーから成るトウを水分率15%に調整し、ギロチンカッターを用いて繊維長2mmにカットし、PPSナノファイバーから成る短繊維束を得た。
そして実施例1と同様に1次叩解、2次叩解を行い、PPSナノファイバーから成る繊維濃度10重量%のパルプを得た。
そして、上記パルプ5.5gとノニオン系分散剤の一種である分子量1万のポリオキシエチレンフェニレン化エーテルでの第一工業製薬社製「ノイゲンEA−87」0.55gを1リットルの水と共に離解機に入れ5分間分散した。該離解機中の溶液を実験用抄紙機の容器に入れ、さらに水を追加しPPSナノファイバー液体分散体を得た。これの繊維濃度は0.003重量%であった。溶液を事前に抄紙用金網ネット上にのせた25cm角の「スクリーン紗(PET製、繊維径70μm、孔径80μm角)」上に抄紙し、ローラで脱水し、ドラム式乾燥機で乾燥し、PETを支持体としたPPSナノファイバーから成る紙を得た。
得られたPPSナノファイバーから成る紙の表面をSEM観察したところ、PPSナノファイバーが単繊維レベルで均一に分散していることが分かった。また、PPSナノファイバーの長さ(L)が大きいため視野範囲ではLは決定することができなかったが、L/Dは50以上であると考えられた。また、L/Dが10以下の物はゼロであった。得られたPPS紙の目付は8g/mと非常に薄いものであったが、紙力に優れ支持体にしっかり固着しており繊維くず等が脱落することはなかった。また、織物を支持体としており全体にやや厚みがあるものの、PPSフィルムに比べ柔軟性に富む物であり、加工性に優れていた。また、直径50μm以上のピンホールはゼロであった。また、この紙を注意深くカットし紙の断面を観察したところ、紙の断面中で縦10μm以上、横10μm以上の粗大空隙が占める面積が紙の断面積に対し0%であり粗大空隙の無い均一な紙であることがわかった。また、紙の断面中で縦2μm以上、横2μm以上の中程度の空隙が占める面積が紙の断面積に対し0.1%以下であり中程度の空隙もほとんど有さない均一な紙であった。一方、このPPS紙の表面をSEMで観察したところ、ナノレベルの細孔を多数含む紙であり、このままでも液体フィルターや2次電池やキャパシター用セパレーターなどに好適であった。
上記、PPS紙をさらに180℃で熱プレス加工し、さらに緻密なPPS紙を得た。これは吸湿による寸法変化のほとんど無いモーター用のセパレーターや液晶ディスプレイ用バックライト反射シートやLED照明用反射シートなどに好適な物であった。
比較例1
参考例4で得た未延伸糸を合糸してトウとなし、繊維長5mmにカットしてPPS未延伸糸短繊維を得た。また、参考例4で得たPPS延伸糸トウをやはり繊維長5mmにカットしてPPS延伸糸短繊維を得た。そして未延伸糸を30重量%、延伸糸を70重量%の割合で、トータル繊維濃度が0.4重量%となるよう水に分散させた。この分散液を抄紙することで目付け25g/mのPPS紙を得た。これを180℃で熱プレス加工し、緻密化させたPPS紙を得た。しかし、熱プレス加工しても紙表面のPPS繊維が潰れるだけであり、紙中の粗大空隙を充分に潰すことはできず、紙の断面中で縦10μm以上、横10μm以上の粗大空隙が占める面積は紙の断面積に対し7%以上であった。また、紙の断面中で縦2μm以上、横2μm以上の中程度の空隙が占める面積は紙の断面積に対し22%以上であった。
実施例4
実施例3で得た繊維濃度10重量%のPPSナノファイバーから成るパルプ5.5gと第一工業製薬社製「ノイゲンEA−87」5.5gを実施例3と同様に5分間分散した後、水を加えPPSナノファイバー水分散体を得た。これの繊維濃度は0.01重量%であった。これを実施例1と同様に抄紙を行い目付21g/mの自己支持性のPPS紙を得た。これは、紙力に優れ容易に破ける物ではなかった。また、紙構造のためPPSフィルムに比べ柔軟性に富む物であり、加工性に優れていた。また、直径50μm以上のピンホールはゼロであった。また、この紙を注意深くカットし紙の断面を観察したところ、紙の断面中で縦10μm以上、横10μm以上の粗大空隙が占める面積が紙の断面積に対し0%であり粗大空隙の無い均一な紙であることがわかった。また、紙の断面中で縦2μm以上、横2μm以上の中程度の空隙が占める面積が紙の断面積に対し0.3%であり中程度の空隙もほとんど有さない均一な紙であった。一方、このPPS紙の表面をSEMで観察したところ、ナノレベルの細孔を多数含む紙であり、このままでも液体フィルターや2次電池やキャパシター用セパレーターなどに好適であった。
上記、PPS紙をさらに180℃で熱プレス加工し、さらに緻密なPPS紙を得た。これは吸湿による寸法変化のほとんど無い回路基板や液晶ディスプレイ用バックライト反射シートやLED照明用反射シートなどに好適な物であった。
実施例5
実施例1で得た繊維濃度0.003重量%の液体分散体をスプレーノズルから多孔質の支持体としてポリプロピレン(以下PPと略す)のメルトブロー不織布(東レ(株)社製トレミクロン)に5回吹き付けて、40℃で30分間乾燥した。これにより、PP不織布上に厚み2μmのPPS紙を形成させた。このPPS紙では、直径50μm以上のピンホールはゼロであった。また、この紙を注意深くカットし紙の断面を観察したところ、紙の断面中で縦10μm以上、横10μm以上の粗大空隙、縦2μm以上、横2μm以上の中程度の空隙とも0%であり均一な紙であることがわかった。一方、このPPS紙の表面をSEMで観察したところ、ナノレベルの細孔を多数含む紙であり、このままでも液体フィルターや2次電池やキャパシター用セパレーターなどに好適であった。
実施例6
スプレー回数を100回として実施例5と同様にPP不織布上に厚み30μmPPS紙を形成させた。このPPS紙では、直径50μm以上のピンホールはゼロであった。また、この紙を注意深くカットし紙の断面を観察したところ、紙の断面中で縦10μm以上、横10μm以上の粗大空隙、縦2μm以上、横2μm以上の中程度の空隙とも0%であり均一な紙であることがわかった。
実施例7
実施例1で得たPPSナノファイバーから成る液体分散体と比較例1で得たPPS短繊維の水分散体を固形分濃度で1:9となるように混合し、実施例1と同様に抄紙を行い、目付30g/mの自己支持性のPPS紙を得た。このPPS紙では、太繊度PPS繊維が形成する粗大空隙をPPSナノファイバーが充填しており、直径50μm以上のピンホールは4個/mであった。また、この紙を注意深くカットし紙の断面を観察したところ、紙の断面中で縦10μm以上、横10μm以上の粗大空隙は1%、縦2μm以上、横2μm以上の中程度の空隙とも3%であり均一な紙であることがわかった。
実施例8
特開2004−2156号公報に準じ、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)をクロロホルム中に分散させた。この時のSWCNT濃度は0.0003重量%であった。実施例1で得た繊維濃度10重量%のPPSナノファイバーから成るパルプ中の水をクロロホルムで置換し、第一工業製薬社製「ノイゲンEA−87」をPPSナノファイバーの固形分と等量加え5分間分散させ、繊維濃度0.001重量%のPPSナノファイバー・クロロホルム分散体を得た。これと先に調整したSWCNT・クロロホルム分散体を10:1で混合し、実施例1と同様に抄紙を行い、PPSナノファイバーとSWCNTがナノレベルで混合された目付18g/mの自己支持性の導電性ペーパーを得た。得られたPPS紙の目付は18g/mと薄いものであったが、紙力に優れ容易に破ける物ではなかった。また、紙構造のためPPSフィルムに比べ柔軟性に富む物であり、加工性に優れていた。また、直径50μm以上のピンホールはゼロであった。また、この紙を注意深くカットし紙の断面を観察したところ、紙の断面中で縦10μm以上、横10μm以上の粗大空隙が占める面積が紙の断面積に対し0%であり粗大空隙の無い均一な紙であることがわかった。また、紙の断面中で縦2μm以上、横2μm以上の中程度の空隙が占める面積が紙の断面積に対し0.5%以下であり中程度の空隙もほとんど有さない均一な紙であった。この紙表面および断面をSEM観察すると、SWCNTとPPSナノファイバーがナノレベルで混合されており、またSWCNTはかなりの部分連続構造となっていた。これは電極材などに好適な物であった。
上記、PPSナノファイバー/SWCNT紙をさらに300℃で熱プレス加工し、さらに緻密なPPSナノファイバーを融解させることでPPSとSWCNTがナノレベルで混合されたシートを得た。
実施例1のPPSナノファイバーの横断面を示す図である。 参考例1のポリマーアロイ繊維の横断面を示す図である。 バッチ式脱海方法の一例を示す図である。 連続式脱海装置の一例を示す図である。
符号の説明
1:枠
2:トウ
3:脱海処理槽
4:ローラー
5:ポリマーアロイ繊維から成るトウ
6:脱海処理液
7:フタ
8:PPSナノファイバーから成るトウ

Claims (16)

  1. 単繊維の平均直径が1〜1500nmであって直径1500〜5000nmの単繊維の比率が0〜5%であるポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーから成るトウであって、トウ繊度が100〜100万dtexかつトウ中のポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーの面積比率が95〜100%であるトウ。
  2. トウ中のポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーの本数密度が5000本/mm以上である請求項1記載のトウ。
  3. 単繊維の平均直径が1〜1500nmであって直径1500〜5000nmの単繊維の比率が0〜5%であるポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーから成る短繊維束であって、短繊維束繊度が100〜100万dtexかつ短繊維束中のポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーの面積比率が95〜100%かつ短繊維の繊維長が0.1〜30mmである短繊維束。
  4. 単繊維の平均直径が1〜1500nmであって直径1500〜5000nmの単繊維の比率が0〜5%であるポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーと液体から成るパルプであって、パルプ中の繊維濃度が1重量%より大きく30重量%以下であるパルプ。
  5. 単繊維の平均直径が1〜1500nmであって直径1500〜5000nmの単繊維の比率が0〜5%であるポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーの液体分散体であって、液体分散体中の繊維濃度が0.00001重量%以上1重量%以下である液体分散体。
  6. 単繊維の平均直径が1〜1500nmであって直径1500〜5000nmの単繊維の比率が0〜5%であるポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーから成る紙であって、紙の断面中で縦10μm以上、横10μm以上の粗大空隙が占める面積が紙の断面積に対し5%以下である紙。
  7. 単繊維の平均直径が1〜1500nmであって直径1500〜5000nmの単繊維の比率が0〜5%であるポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーから成る紙であって、紙の断面中で縦2μm以上、横2μm以上の空隙が占める面積が紙の断面積に対し20%以下である紙。
  8. 紙の表から裏へ貫通する直径50μm以上の孔の個数が0〜1000個/cmである請求項6または7記載の紙。
  9. 単繊維の平均直径が1〜200nmであるポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーから成る請求項1〜8のいずれか1項記載のトウまたは短繊維束またはパルプまたは液体分散体または紙。
  10. 直径200〜5000nmの単繊維の比率が0〜5%であるポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーから成る請求項9記載のトウまたは短繊維束またはパルプまたは液体分散体または紙。
  11. ポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーを構成するポリフェニレンスルフィドが末端封鎖されている請求項1〜10のいずれか1項記載のトウまたは短繊維束またはパルプまたは液体分散体または紙。
  12. ポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーの繊維長と繊維直径の比が10以下の繊維の比率が0〜5%である請求項3〜11のいずれか1項記載の短繊維束またはパルプまたは液体分散体または紙。
  13. 分岐を有するポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーの本数が0〜3%である請求項1〜12のいずれか1項記載のトウまたは短繊維束またはパルプまたは液体分散体または紙。
  14. 請求項5〜13のいずれか1項記載のポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーとそれ以外の物質が混用されている液体分散体または紙。
  15. 請求項1〜13のいずれか1項記載のポリフェニレンスルフィド・ナノファイバーとポリフェニレンスルフィド・ナノファイバー以外の繊維が混用されているトウまたは短繊維束またはパルプまたは液体分散体または紙。
  16. 請求項3記載の短繊維束を叩解する際、界面活性剤および/または消泡剤が添加されていることを特徴とするポリフェニレンスルフィド・ナノファイバー短繊維束の叩解方法。
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