本発明は、スペクトラム拡散信号を復調する際に、スペクトラム拡散信号における拡散符号の位相を検出するために、拡散符号と自己が発生する拡散符号との相関を検出する相関検出装置及び相関検出方法、並びにこれらの相関検出装置及び相関検出方法を適用した受信装置であっていわゆるGNSS(Global Navigation Satellites System)における衛星からの信号を受信して自己の位置及び速度を算出する受信装置に関する。
近年、人工衛星を利用して地上における移動体の位置を測定するGNSSシステムが普及しつつある。このGNSSシステムとしては、例えば全地球測位システム(Global Positioning System;以下、GPSという。)がある。このGPSシステムにおいて、GPS衛星からの信号を受信するGPS受信機は、少なくとも4個以上のGPS衛星からの信号を受信して、その受信信号に基づいて当該GPS受信機の位置を算出し、ユーザに報知することが基本機能である。
すなわち、GPS受信機は、各GPS衛星からの信号を復調して各GPS衛星の軌道情報を取得し、各GPS衛星の軌道及び時間情報と受信信号の遅延時間とに基づいて、当該GPS受信機の3次元位置を連立方程式によって導出するものである。なお、GPSシステムにおいて、受信信号を得るGPS衛星が少なくとも4個必要となるのは、GPS受信機が備える時計による内部時間とGPS衛星が備える原子時計による時間との間に誤差があり、その誤差の影響を除去した3次元位置と正確な時刻との4つの未知パラメータを算出するためには、少なくとも4個のGPS衛星からの擬似距離が必要となることによる。
GPSシステムにおいては、民生用のGPS受信機を用いる場合には、GPS衛星(Navstar)からのL1帯、C/A(Clear and Acquisition)コードと呼ばれるスペクトラム拡散信号電波を受信して、測位演算を行う。
このL1帯、C/Aコードと呼ばれる送信信号は、送信信号速度、すなわち、チップレートが1.023MHzであり、例えばいわゆるGold符号等の符号長が1023の擬似ランダムノイズ(Pseudo-random Noise;PN)系列の拡散符号で、50bpsのデータを直接拡散した信号により、周波数が1575.42MHzの搬送波(以下、キャリアという。)に対して2相位相変調方式(Binary Phase Shift Keying;以下、BPSK変調方式という。)に基づく変調を施した信号である。この場合、符号長が1023であることから、C/Aコードは、図12中1段目に示すように、拡散符号が1023チップを1周期として、すなわち、1周期=1ミリ秒(msec)として、繰り返すものとなる。
このC/Aコードの拡散符号は、GPS衛星毎に異なっているが、どのGPS衛星が、どの拡散符号を用いるかは、予めGPS受信機によって検知できるようになされている。また、GPS受信機は、後述する航法メッセージにより、どのGPS衛星からの信号をその地点及びその時点で受信することができるかが把握できるようになされている。そのため、GPS受信機は、例えば3次元測位であれば、その地点及びその時点で取得することができる少なくとも4個以上のGPS衛星からの電波を受信してスペクトラム逆拡散を施し、測位演算を行うことにより、自己の位置を算出する。
また、GPS衛星からの信号データの1ビットは、同図中2段目に示すように、拡散符号の20周期分、すなわち、20ミリ秒単位として伝送される。すなわち、データの伝送速度は、上述したように、50bpsである。さらに、拡散符号の1周期分の1023チップは、ビットが"1"であるときと"0"であるときとでは、反転したものとなる。
さらに、GPS衛星からの信号は、同図中3段目に示すように、30ビット、すなわち、600ミリ秒で1ワードを形成する。さらにまた、GPS衛星からの信号は、同図中4段目に示すように、10ワード、すなわち、6秒で1サブフレームを形成する。そして、GPS衛星からの信号には、同図中5段目に示すように、1サブフレームの先頭のワードに、データが更新されたときであっても常に規定のビットパターンとされるプリアンブルが挿入され、このプリアンブルに後続してデータが伝送されてくる。
さらにまた、GPS衛星からの信号は、5サブフレーム、すなわち、30秒で1フレームを形成する。そして、GPS衛星からの信号においては、上述した航法メッセージが、この1フレームのデータ単位で伝送されてくる。
この1フレームのデータのうちの始めの3個のサブフレームは、エフェメリス(Ephemeris)情報と呼ばれるGPS衛星固有の情報である。このエフェメリス情報には、GPS衛星の軌道を求めるためのパラメータと、GPS衛星からの信号の送出時刻とが含まれる。
全てのGPS衛星は、原子時計を備えることによって共通の時刻情報を用いており、エフェメリス情報に含まれるGPS衛星からの信号の送出時刻は、原子時計の1秒単位とされている。また、GPS衛星の拡散符号は、原子時計に同期したものとして生成される。
エフェメリス情報に含まれる軌道情報は、数時間毎に更新されるが、その更新が行われるまでは同一の情報となる。そのため、GPS受信機は、エフェメリス情報に含まれる軌道情報をメモリに保持しておくことにより、数時間は同じ軌道情報を精度よく使用することができる。なお、GPS衛星からの信号の送出時刻は、TOW(Time Of Week)情報として6秒毎に更新される。
一方、1フレームのデータのうちの残りの2個のサブフレームの航法メッセージは、アルマナック(Almanac)情報と呼ばれる全てのGPS衛星から共通に送信される情報である。このアルマナック情報は、全情報を取得するために25フレーム分必要となるものであり、各GPS衛星のおおよその位置情報や、どのGPS衛星が使用可能であるのかを示す情報等から構成される。このアルマナック情報は、数日毎に更新されるが、その更新が行われるまでは同一の情報となる。そのため、GPS受信機は、アルマナック情報をメモリに保持しておくことにより、数日は同じ情報を精度よく使用することができる。しかし、GPS受信機は、精度は多少落ちるものの、数か月の間、同じアルマナック情報を使用することもできる。
GPS受信機は、GPS衛星からの信号を受信して上述したデータを得るために、まず、キャリアを除去した後、受信しようとするGPS衛星で用いられているC/Aコードと同じ拡散符号を用いて、そのGPS衛星からの信号について、C/Aコードの位相同期をとることによってGPS衛星からの信号を捕捉し、スペクトラム逆拡散を行う。GPS受信機は、C/Aコードとの位相同期をとってスペクトラム逆拡散を行うと、ビットが検出され、GPS衛星からの信号に基づいて時刻情報等を含む航法メッセージを取得することが可能となる。
GPS受信機は、GPS衛星からの信号の捕捉をC/Aコードの位相同期探索によって行うが、この位相同期探索として、自己が発生する拡散符号とGPS衛星からの受信信号の拡散符号との相関を検出し、例えば、その相関検出結果の相関値が予め定められた値よりも大きい場合に、両者が同期しているものと判定する。そして、GPS受信機は、同期がとれていないものと判定した場合には、何らかの同期手法を用いて、自己が発生する拡散符号の位相を制御し、受信信号の拡散符号と同期させるようにしている。
ところで、GPS衛星からの信号は、上述したように、データを拡散符号で拡散した信号によってキャリアをBPSK変調方式に基づいて変調した信号である。したがって、GPS受信機は、GPS衛星からの信号を受信するには、拡散符号のみならず、キャリア及びデータの同期をとる必要があるが、拡散符号とキャリアの同期を独立に行うことはできない。
また、GPS受信機は、通常、受信信号のキャリア周波数を数MHz以内の中間周波数(Intermediate Frequency;以下、IFという。)に変換することによって受信信号をIF信号に変換し、このIF信号で上述した同期検出処理を行う。このIF信号におけるキャリア(以下、IFキャリアという。)には、主に、GPS衛星の移動速度に応じたドップラシフトによる周波数誤差分と、受信信号をIF信号に変換する際にGPS受信機の内部で生成する局部発振器の周波数誤差分とが含まれる。
したがって、GPS受信機においては、これらの周波数誤差要因によってIFキャリア周波数が未知であることから、その周波数のサーチが必要となる。また、拡散符号の1周期内での同期点(同期位相)は、GPS受信機とGPS衛星との位置関係に依存することに起因して未知であることから、GPS受信機においては、上述したように、何らかの同期手法が必要となる。
従来のGPS受信機では、キャリアについての周波数サーチと、スライディング相関器による同期捕捉、DLL(Delay Locked Loop)及びコスタスループによる同期保持とを組み合わせた同期手法を用いている。以下、この同期手法について説明する。
GPS受信機の拡散符号の発生器を駆動するクロックは、当該GPS受信機に用意されている基準周波数発振器を分周したものが一般に用いられる。この基準周波数発振器としては、高精度の水晶発振器が用いられ、GPS受信機は、この基準周波数発振器の出力に基づいて、GPS衛星からの受信信号をIF信号に変換するために用いる局部発振信号を生成する。
ここで、周波数サーチについての処理内容を図13に示す。GPS受信機は、拡散符号の発生器を駆動するクロック信号の周波数が、ある周波数f1であるときの拡散符号についての位相同期探索を行う。すなわち、GPS受信機は、拡散符号の位相を1チップずつ順次ずらしていくことによって各チップ位相のときのGPS衛星からの受信信号と拡散符号との相関を検出し、相関のピークを検出することにより、同期がとれる位相を検出する。また、GPS受信機は、クロック信号の周波数がf1であるときにおいて、1023チップ分の位相探索の全てで同期する位相が存在しない場合には、例えば基準周波数発振器に対する分周比を変化させ、クロック信号の周波数を他の周波数f2に変更し、同様に1023チップ分の位相探索を行う。GPS受信機は、このような動作を、クロック信号の周波数をステップ的に変化させて繰り返すことによって周波数サーチを実現する。
そして、GPS受信機は、このような周波数サーチを行うことによって同期可能とされるクロック信号の周波数を検出すると、そのクロック信号の周波数で最終的な拡散符号の位相同期を行う。これにより、GPS受信機は、水晶発振器の発振周波数にずれがある場合であっても、GPS衛星からの信号を捕捉することが可能となる。
しかしながら、このような従来の同期手法は、原理的には高速同期には不向きである。GPS受信機においては、拡散符号及びIFキャリアの同期に時間を要すると反応が遅くなり、使用上において不便を生じる。そのため、実際のGPS受信機においては、この欠点を補うため、多チャンネル化して並列処理によって同期捕捉までの時間を短縮している。
一方、上述したスライディング相関を用いた手法に代わってスペクトラム拡散信号の同期捕捉を高速に行う手法としては、マッチドフィルタの利用がある。マッチドフィルタは、いわゆるトランスバーサルフィルタによってディジタル的に実現可能である。また、マッチドフィルタとしては、近年のDSP(Digital Signal Processor)に代表されるハードウェアの能力の向上により、高速フーリエ変換(Fast Fourier
Transform;以下、FFTという。)を利用したディジタルマッチドフィルタによって拡散符号の同期を高速に行う手法が実現されている。後者は、古くから知られる相関計算の高速化手法に基づくものである。
GPS受信機は、これらのマッチドフィルタを用いることにより、相関がある場合には、例えば図14に出力波形の1周期分を示すように、相関のピークを検出する。このピークの位置は、拡散符号の先頭を示すものである。GPS受信機は、このピークを検出することにより、同期を捕捉、すなわち、受信信号における拡散符号の位相を検出することができる。また、GPS受信機は、例えば上述したFFTを利用したディジタルマッチドフィルタを用い、FFTの周波数領域での操作を行うことにより、拡散符号の位相とともにIFキャリア周波数を検出することができる。そして、GPS受信機は、拡散符号の位相を擬似距離に換算し、少なくとも4個のGPS衛星が検出された場合には当該GPS受信機の位置を算出することができ、また、IFキャリア周波数に基づいて当該GPS受信機の速度を算出することができる。
ところで、上述したGPS受信機においては、受信感度を向上させるために、拡散符号の同期捕捉の際に行う拡散符号との相関検出処理を数百ミリ秒から1秒以上の長時間にわたって行う場合がある。
これに対応するためには、GPS受信機においては、IF信号を記憶するメモリの容量を増加するのが簡単である。しかしながら、GPS受信機においては、集積回路化する際にメモリの占める規模が大きくなる。例えば、GPS受信機においては、16ミリ秒分のIF信号を記憶することができるメモリを有する集積回路と比較すると、1秒分のIF信号を記憶できるようにするためには、約60倍もの容量を有するメモリを設ける必要がある。このことは、GPS受信機の大型化及びコストアップを招来することになり、特に集積回路化に際しては好ましくない。
この問題は、GPS受信機に限ったものではなく、GPS信号と同様のスペクトラム拡散で直接拡散方式の変調方式を採用する移動体通信全般に共通のものである。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、搭載するメモリの容量を削減して小型化及び低コスト化を図りつつ受信感度を向上させることができるスペクトラム拡散信号における拡散符号の相関検出装置及び相関検出方法を提供することを目的とする。また、本発明は、これらの相関検出装置及び相関検出方法を適用し、小型化及び低コスト化を図りつつ受信感度を向上させることができる受信装置を提供することを目的とする。
上述した目的を達成する本発明にかかる相関検出装置は、入力されたスペクトラム拡散信号における拡散符号の位相を検出するために、上記拡散符号と自己が発生する拡散符号との相関を検出する相関検出装置であって、入力された上記スペクトラム拡散信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングするサンプリング手段と、上記サンプリング手段によってサンプリングされた一定時間長のデータを単位データとして記憶する第1記憶手段と、上記第1記憶手段に記憶された単位データと自己が発生した拡散符号との相関値を算出する算出手段と、上記算出手段によって得られた相関値の累積値を記憶する第2記憶手段と、上記サンプリング手段によって新たに得られたデータを新たな単位データとして上記第1記憶手段に記憶させると共に、当該単位データを用いて前記算出手段に相関値を算出させ、この結果、得られた相関値を上記第2記憶手段に記憶されている累積値に加算して記憶させる動作を所定の回数だけ繰り返し行わせる制御手段と、を備えることを特徴とする。
このような本発明にかかる相関検出装置は、制御手段による制御のもとに、サンプリング手段によってスペクトラム拡散信号をサンプリングして得られた新たなデータを新たな単位データとして第1記憶手段に記憶し、新たな単位データに対して算出手段によって自己が発生した拡散符号との相関値を算出し、得られた相関値を第2記憶手段に記憶されている累積値に加算して記憶する動作を所定の回数だけ繰り返し行う。
また、上述した目的を達成する本発明にかかる相関検出方法は、入力されたスペクトラム拡散信号における拡散符号の位相を検出するために、上記拡散符号と自己が発生する拡散符号との相関を検出する相関検出方法であって、入力された上記スペクトラム拡散信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングする工程と、上記スペクトラム拡散信号をサンプリングする工程にてサンプリングされた一定時間長のデータを単位データとして第1記憶手段に記憶する工程と、上記第1記憶手段に記憶された単位データと自己が発生した拡散符号との相関値を算出する工程と、上記相関値を累積加算する工程にて得られた相関値の累積値を第2記憶手段に記憶する工程と、上記サンプリング処理によって新たに得られたデータを新たな単位データとして上記第1記憶手段に記憶させると共に、当該単位データと自己が発生した拡散符号との相関値を算出し、この結果、得られた相関値を上記第2記憶手段に記憶されている累積値に加算して記憶させる動作を所定の回数だけ繰り返し行う工程と、を含むことを特徴とする。
このような本発明にかかる相関検出方法は、スペクトラム拡散信号をサンプリングして得られた新たなデータを新たな単位データとして第1記憶手段に記憶し、新たな単位データに対して自己が発生した拡散符号との相関値を算出し、得られた相関値を第2記憶手段に記憶されている累積値に加算して記憶する動作を所定の回数だけ繰り返し行う。
さらに、上述した目的を達成する本発明にかかる受信装置は、衛星からの信号を受信して自己の位置及び速度を算出する受信装置であって、上記衛星からの信号を受信する受信手段と、上記受信手段によって受信した受信信号の周波数を所定の中間周波数に変換する周波数変換手段と、上記周波数変換手段によって得られた中間周波数信号における拡散符号の位相を検出する同期捕捉と上記中間周波数信号におけるキャリア周波数の検出とを行う同期捕捉手段と、上記同期捕捉手段によって検出された上記拡散符号の位相及び上記同期捕捉手段によって検出された上記キャリア周波数を、複数の上記衛星に対応して独立に設けられた複数のチャンネルのそれぞれに対して上記衛星毎に割り当てて設定し、設定した上記拡散符号の位相及び上記キャリア周波数を初期値として、上記拡散符号とキャリアとの同期保持を行うとともに、上記中間周波数信号に含まれるメッセージの復調を行う同期保持手段とを備え、スペクトラム拡散信号である上記中間周波数信号における拡散符号の位相を検出するために、上記拡散符号と自己が発生する拡散符号との相関を検出する上記同期捕捉手段は、入力された上記中間周波数信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングするサンプリング手段と、上記サンプリング手段によってサンプリングされた一定時間長のデータを単位データとして記憶する第1記憶手段と、上記第1記憶手段に記憶されたデータと自己が発生した拡散符号との相関値を算出する算出手段と、上記算出手段によって得られた相関値の累積値を記憶する第2記憶手段と、上記サンプリング手段によって新たに得られたデータを新たな単位データとして上記第1記憶手段に記憶させると共に、当該単位データを用いて前記算出手段に相関値を算出させ、この結果、得られた相関値を上記第2記憶手段に記憶されている累積値に加算して記憶させる動作を所定の回数だけ繰り返し行わせる制御手段と、を有することを特徴とする。
このような本発明にかかる相関検出装置は、制御手段による制御のもとに、サンプリング手段によってスペクトラム拡散信号をサンプリングして得られた新たなデータを新たな単位データとして第1記憶手段に記憶し、新たな単位データに対して算出手段によって自己が発生した拡散符号との相関値を算出し、得られた相関値を第2記憶手段に記憶されている累積値に加算して記憶する動作を所定の回数だけ繰り返し行う。
発明の実施の形態
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
この実施の形態は、人工衛星を利用して地上における移動体の位置を測定するいわゆるGNSS(Global Navigation Satellites System)システムの一種である全地球測位システム(Global Positioning System;以下、GPSという。)を適用したものであり、少なくとも4個以上のGPS衛星からの信号を受信して、その受信信号に基づいて自己の位置を算出するGPS受信機である。このGPS受信機は、L1帯、C/A(Clear and Acquisition)コードと呼ばれるスペクトラム拡散信号電波を受信信号として受信するものであって、スペクトラム拡散信号の同期捕捉を行う際の相関検出処理に用いるメモリの容量を削減して小型化及び低コスト化を図りつつ受信感度を向上させることができるものである。
なお、このGPS受信機10は、図1に示すように、受信した受信信号を復調する際に、自己が発生する擬似ランダムノイズ(Pseudo-random Noise;PN)系列の拡散符号と受信信号における拡散符号との同期を捕捉する機能と、拡散符号と搬送波(以下、キャリアという。)との同期を保持する機能とを分離することにより、小さい回路規模のもとに、同期捕捉を高速化することができるものである。
以下では、まず、同期捕捉の機能と同期保持の機能とを分離したGPS受信機10の全体的な構成について説明した後、同期捕捉部24及び同期保持部25について詳述し、さらにその後、同期捕捉部24の具体的な構成について詳述するものとする。
まず、GPS受信機の全体的な構成について説明する。
GPS受信機10は、同図に示すように、所定の発振周波数を有する発振信号D1を生成する水晶発振器(X'tal Oscillator;以下、XOという。)11と、このXO11とは異なる所定の発振周波数FOSCを有する発振信号D2を生成する温度補償型水晶発振器(Temperature Compensated X'tal Oscillator;以下、TCXOという。)12と、このTCXO12から供給される発振信号D2を逓倍(multiply)及び/又は分周(divide)する逓倍/分周器13とを備える。
XO11は、例えば32.768kHz程度の所定の発振周波数を有する発振信号D1を生成する。XO11は、生成した発振信号D1を後述するRTC(Real Time Clock)27に供給する。
TCXO12は、XO11とは異なる例えば18.414MHz程度の所定の発振周波数FOSCを有する発振信号D2を生成する。TCXO12は、生成した発振信号D2を逓倍/分周器13、及び後述する周波数シンセサイザ18等に供給する。
逓倍/分周器13は、後述するCPU(Central Processing Unit)26から供給される制御信号D3に基づいて、TCXO12から供給される発振信号D2を、所定の逓倍率で逓倍し、及び/又は所定の分周比で分周する。逓倍/分周器13は、逓倍及び/又は分周した発振信号D4を後述する同期捕捉部24、後述する同期保持部25、CPU26、後述するタイマ28、及び後述するメモリ29に供給する。
また、GPS受信機10は、GPS衛星から送信されてきたRF(Radio Frequency)信号を受信するアンテナ14と、このアンテナ14によって受信された受信RF信号D5を増幅するローノイズ・アンプ(Low Noise Amplifier;以下、LNAという。)15と、このLNA15によって増幅された増幅RF信号D6のうち所定の周波数帯域成分を通過させる帯域通過フィルタ(Band Pass Filter;以下、BPFという。)16と、このBPF16によって通過された増幅RF信号D7をさらに増幅する増幅器17と、TCXO12から供給される発振信号D2に基づいて所定の周波数FLOを有する局部発振信号D10を生成する周波数シンセサイザ18と、増幅器17によって増幅された所定の周波数FRFを有する増幅RF信号D8に対して周波数シンセサイザ18から供給された局部発振信号D10を乗算するミキサ19と、このミキサ19によって乗算されることによってダウンコンバートされた所定の周波数FIFを有する中間周波数(Intermediate Frequency;以下、IFという。)信号D11を増幅する増幅器20と、この増幅器20によって増幅された増幅IF信号D12のうち所定の周波数帯域成分を通過させる低域通過フィルタ(Low Pass Filter;以下、LPFという。)21と、このLPF21によって通過されたアナログ形式の増幅IF信号D13をディジタル形式の増幅IF信号D14に変換するアナログ/ディジタル変換器(Analog/Digital Converter;以下、A/Dという。)22とを備える。
アンテナ14は、GPS衛星から送信されてきた周波数が1575.42MHzのキャリアが拡散されたRF信号を受信する。このアンテナ14によって受信された受信RF信号D5は、LNA15に供給される。
LNA15は、アンテナ14によって受信された受信RF信号D5を増幅する。LNA15は、増幅した増幅RF信号D6をBPF16に供給する。
BPF16は、いわゆるSAW(Surface Acoustic Wave)フィルタからなり、LNA15によって増幅された増幅RF信号D6のうち所定の周波数帯域成分を通過させる。このBPF16によって通過された増幅RF信号D7は、増幅器17に供給される。
増幅器17は、BPF16によって通過された増幅RF信号D7をさらに増幅する。増幅器17は、増幅した所定の周波数FRF、すなわち、1575.42MHzの増幅RF信号D8をミキサ19に供給する。
周波数シンセサイザ18は、CPU26から供給される制御信号D9による制御のもとに、TCXO12から供給される発振信号D2に基づいて所定の周波数FLOを有する局部発振信号D10を生成する。周波数シンセサイザ18は、生成した局部発振信号D10をミキサ19に供給する。
ミキサ19は、増幅器17によって増幅された所定の周波数FRFを有する増幅RF信号D8に対して周波数シンセサイザ18から供給された局部発振信号D10を乗算することによって増幅RF信号D8をダウンコンバートし、例えば1.023MHz程度の所定の周波数FIFを有するIF信号D11を生成する。このミキサ19によって生成されたIF信号D11は、増幅器20に供給される。
増幅器20は、ミキサ19によってダウンコンバートされたIF信号D11を増幅する。増幅器20は、増幅した増幅IF信号D12をLPF21に供給する。
LPF21は、増幅器20によって増幅された増幅IF信号D12のうち所定の周波数よりも低域成分を通過させる。このLPF21によって通過された増幅IF信号D13は、A/D22に供給される。
A/D22は、LPF21によって通過されたアナログ形式の増幅IF信号D13をディジタル形式の増幅IF信号D14に変換する。このA/D22によって変換された増幅IF信号D14は、同期捕捉部24及び同期保持部25に供給される。
なお、GPS受信機10においては、これらの各部のうち、LNA15、BPF16、増幅器17,20、周波数シンセサイザ18、ミキサ19、LPF21、及びA/D22は、アンテナ14によって受信された1575.42MHzの高い周波数を有する受信RF信号D5を、ディジタル信号処理が施しやすいように、例えば1.023MHz程度の低い周波数FIFを有する増幅IF信号D14にダウンコンバートする周波数変換部23として構成される。
さらに、GPS受信機10は、自己が発生する拡散符号とA/D22から供給される増幅IF信号D14における拡散符号との同期捕捉及び増幅IF信号D14におけるキャリア周波数の検出を行う同期捕捉部24と、A/D22から供給される増幅IF信号D14における拡散符号とキャリアとの同期保持及びメッセージの復調を行う同期保持部25と、各部を統括的に制御して各種演算処理を行うCPU26と、XO11から供給される発振信号D1に基づいて時間を計測するRTC27と、CPU26の内部時計としてのタイマ28と、RAM(RandomAccess Memory)やROM(Read Only Memory)等からなるメモリ29とを備える。
同期捕捉部24は、詳細は後述するが、CPU26の制御のもとに、逓倍/分周器13から供給される逓倍及び/又は分周された発振信号D4に基づいて、A/D22から供給される増幅IF信号D14における拡散符号の同期捕捉を行うとともに、増幅IF信号D14におけるキャリア周波数の検出を行う。このとき、同期捕捉部24は、後述するように、粗い精度での同期捕捉を行う。同期捕捉部24は、検出したGPS衛星を識別するための衛星番号、拡散符号の位相、及びキャリア周波数を同期保持部25及びCPU26に供給する。
同期保持部25は、詳細は後述するが、CPU26の制御のもとに、逓倍/分周器13から供給される逓倍及び/又は分周された発振信号D4に基づいて、A/D22から供給される増幅IF信号D14における拡散符号とキャリアとの同期保持を行うとともに、増幅IF信号D14に含まれる航法メッセージの復調を行う。このとき、同期保持部25は、後述するように、同期捕捉部24から供給される衛星番号、拡散符号の位相、及びキャリア周波数を初期値として動作を開始する。同期保持部25は、複数のGPS衛星からの増幅IF信号D14についての同期保持を並列的に行い、検出した拡散符号の位相、キャリア周波数、及び航法メッセージをCPU26に供給する。
CPU26は、同期保持部25から供給される拡散符号の位相、キャリア周波数、及び航法メッセージを取得し、これらの各種情報に基づいて、当該GPS受信機10の位置及び速度を算出するとともに、航法メッセージから得られるGPS衛星の正確な時間情報に基づいて、当該GPS受信機10の時間情報を補正するといったGPSに関する各種演算処理を行う。また、CPU26は、当該GPS受信機10の各部及び各種ペリフェラル、並びに外部との入出力(Input/Output)に関する制御を統括的に行う。
RTC27は、XO11から供給される発振信号D1に基づいて、時間を計測する。このRTC27によって計測される時間情報は、GPS衛星の正確な時間情報が得られるまでの間に代用されるものであって、GPS衛星の正確な時間情報を得たCPU26がXO11を制御することによって適宜補正される。
タイマ28は、CPU26の内部時計として機能するものであり、各部の動作に必要となる各種タイミング信号の生成及び時間参照に用いられる。例えば、GPS受信機10においては、同期捕捉部24が同期捕捉した拡散符号の位相に合わせて同期保持部25が後述する拡散符号発生器の動作を開始させるタイミングを、このタイマ28によって参照する。
メモリ29は、RAMやROM等からなる。メモリ29においては、CPU26等による各種処理を行う際のワークエリアとしてRAMが用いられるとともに、入力した各種データをバッファリングする際や、演算過程で生成される中間データ及び演算結果データを保持する際にもRAMが用いられる。また、メモリ29においては、各種プログラムや固定データ等を記憶する手段としてROMが用いられる。
なお、GPS受信機10においては、これらの同期捕捉部24、同期保持部25、CPU26、RTC27、タイマ28、メモリ29は、ベースバンド処理部として構成される。
このような各部を備えるGPS受信機10においては、少なくとも、XO11、TCXO12、アンテナ14、LNA15、及びBPF16を除く各部を、集積回路化した1チップからなる復調回路30として構成することができる。
GPS受信機10は、少なくとも4個以上のGPS衛星からのRF信号を受信して、このRF信号を周波数変換部23によってIF信号に変換した後、同期捕捉部24によって拡散符号の同期捕捉及びキャリア周波数の検出を行い、同期保持部25によって拡散符号とキャリアとの同期保持及び航法メッセージの復調を行う。そして、GPS受信機10は、拡散符号の位相、キャリア周波数、及び航法メッセージに基づいて、CPU26によって当該GPS受信機10の位置及び速度を算出する。
さて、以下では、このようなGPS受信機10における同期捕捉部24及び同期保持部25について詳述する。GPS受信機10は、上述したように、同期捕捉の機能と同期保持の機能とを、同期捕捉部24及び同期保持部25に分離したものである。ここでは、このように機能を分離した理由についても併せて説明する。
同期捕捉部24は、上述したように、IF信号における拡散符号の同期捕捉及びキャリア周波数の検出を高速に行う。同期捕捉部24は、拡散符号の同期捕捉を高速に行うためにマッチドフィルタを利用する。具体的には、同期捕捉部24は、マッチドフィルタとして、例えば図2に示すように、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform;以下、FFTという。)を利用したディジタルマッチドフィルタを用いることができる。
具体的には、ディジタルマッチドフィルタ50は、同図に示すように、上述したアンテナ14及び周波数変換部23によって得られる増幅IF信号D14に対応するIF信号を、上述したTCXO12によって生成される発振信号D2に基づく所定のサンプリング周波数で入力信号をサンプリングするサンプラ51によってサンプリングした上で入力する。ディジタルマッチドフィルタ50は、サンプラ51によってサンプリングされた一定時間長のIF信号をバッファリングするメモリ52と、このメモリ52によってバッファリングされたIF信号を読み出してFFT処理を施すFFT処理部53と、このFFT処理部53によってFFT処理が施されて得られた周波数領域信号をバッファリングするメモリ54と、GPS衛星からのRF信号における拡散符号と同じ拡散符号を発生する拡散符号発生器55と、この拡散符号発生器55によって発生された拡散符号に対してFFT処理を施すFFT処理部56と、このFFT処理部56によってFFT処理が施されて得られた周波数領域信号をバッファリングするメモリ57と、メモリ54にバッファリングされている周波数領域信号とメモリ57にバッファリングされている周波数領域信号とのうちいずれか一方の複素共役と他方とを乗算する乗算器58と、この乗算器58によって乗算された周波数領域信号に対して逆FFT(Inversed Fast Fourier Transform;以下、IFFTという。)処理を施すIFFT処理部59と、このIFFT処理部59によってIFFT処理が施されて得られた相関関数に基づいてGPS衛星からのRF信号における拡散符号と拡散符号発生器55によって発生された拡散符号との相関のピークを検出するピーク検出器60とを有する。
このようなディジタルマッチドフィルタ50は、実際には、FFT処理部53,56、拡散符号発生器55、乗算器58、IFFT処理部59、及びピーク検出器60の各部をDSP(Digital Signal Processor)によって実行されるソフトウェアとして実装される。すなわち、ディジタルマッチドフィルタ50を適用した同期捕捉部24は、詳細は後述するが、例えば図3に示すように、上述したサンプラ51に相当するサンプリング手段としてのサンプラ71と、上述したメモリ52に相当する第一記憶手段としてのRAM72と、上述したメモリ54,57とDSPのプログラムエリア及びワークエリアとを含む第二記憶手段としてのRAM/ROM73と、上述したFFT処理部53,56、拡散符号発生器55、乗算器58、IFFT処理部59、及びピーク検出器60の処理を実行しするDSP74とから構成される。なお、このDSP74は、CPUであってもよい。
同期捕捉部24は、このようなディジタルマッチドフィルタ50として構成することにより、拡散符号と同期した位相において相関のピークを検出し、拡散符号の同期点を判別する。同期捕捉部24は、例えば、1.023MHzのIF信号をサンプラ71によって4.096MHzでサンプリングし、DSP74によってディジタルマッチドフィルタ50と等価な演算を行うことにより、拡散符号の同期捕捉、すなわち、IF信号における拡散符号の位相検出を1/4チップの精度で行うことができる。また、この同期捕捉部24は、RAM72の容量が16ミリ秒分であるものとすると、DSP74によってFFTの周波数領域での操作を行うことにより、1/16kHz(±1/32kHz)の精度で、IF信号におけるキャリア(以下、IFキャリアという。)周波数を検出することができる。同期捕捉部24は、RAM72に記憶したIF信号には複数のGPS衛星からの信号が含まれていることから、各GPS衛星の拡散符号との相関を算出することにより、複数のGPS衛星を検出することができる。
GPS受信機10は、この同期捕捉部24によって検出した少なくとも4個以上のGPS衛星に対する拡散符号の位相とキャリア周波数とに基づいて、当該GPS受信機10の位置と速度とを算出することができる。
ただし、GPS受信機10においては、拡散符号の位相検出精度としての上述した1/4チップ、及びキャリア周波数の検出精度としての1/16kHzのもとに得られる当該GPS受信機10の位置及び速度の算出結果は十分な精度とは言い難いものである。GPS受信機10においては、精度を向上させるためには、サンプラ71によるサンプリング周波数を高くする、IF信号を記憶する時間長を長くする、といった処理が必要となるが、これにともない、RAM72等のメモリの容量が増大し、且つ、拡散符号の位相及びキャリア周波数を検出するまでの処理時間が長くなる事態が想定される。また、GPS受信機10においては、同期捕捉部24が外部から航法メッセージを受け取らないものとすると、少なくとも4個以上のGPS衛星からの航法メッセージを20ミリ秒毎に復調する必要があることから、DSP74は、常に、同期の検出と航法メッセージの復調とを極めて高速に行う必要がある。これらの問題は、ハードウェアのサイズの膨大化によるコストアップと消費電力の増大化を招来する。
そこで、GPS受信機10においては、粗い精度での同期捕捉を同期捕捉部24によって行い、複数のGPS衛星の同期保持及び航法メッセージの復調を同期保持部25によって行う。
同期捕捉部24は、検出したGPS衛星の衛星番号、その拡散符号の位相、及びキャリア周波数を同期保持部25に供給する。一方、同期保持部25は、同期捕捉部24から供給されるこれらの各種情報を初期値として動作を開始する。同期保持部25は、拡散符号の位相に基づいて、後述するDLL(Delay Locked Loop)の回路で生成する拡散符号の開始タイミングを合わせる。なお、GPS受信機10は、生成する拡散符号として、検出したGPS衛星の衛星番号に対応するものを設定する。このとき、GPS受信機10においては、ドップラシフト、及びTCXO12等の発振器によって生成される発振信号の発振周波数の誤差の影響を受けるが、基本的に拡散符号は1ミリ秒の周期で繰り返されるものであることから、DLLの回路で生成する拡散符号の開始タイミングは、1ミリ秒の整数倍ずらしても構わない。
なお、IFキャリア周波数は、IF信号を上述したRAM72等のメモリに取り込むためのサンプリングクロックを生成しているTCXO12の誤差を含むことから、上述した分解能の問題を除去したとしても、正確な値、すなわち、キャリア周波数とドップラシフト量との和ではない。しかしながら、GPS受信機10においては、同期捕捉部24と同期保持部25とが同じ発振器、すなわち、TCXO12を発振源とするクロックで動作している場合には、両者で全く同じ周波数誤差を有することから、同期保持部25が同期捕捉部24によって検出されたIFキャリア周波数を初期値として動作を開始することには何らの問題がない。
同期保持部25は、複数のGPS衛星の同期保持を並列的に行うことから、例えば図4に示すように、複数個の独立したチャンネル回路811,812,・・・,81Nを有する。チャンネル回路811,812,・・・,81Nは、それぞれ、コントロール・レジスタ82の設定によって同期捕捉部24による個々の検出結果に対して割り当てられる。
チャンネル回路811,812,・・・,81Nは、それぞれ、図5に示すように、従来のGPS受信機における同期捕捉及び同期保持の双方を実現するIFキャリア同期用のコスタスループ101と拡散符号同期用のDLL102とを組み合わせた回路と基本的には同様に構成される。
すなわち、チャンネル回路811,812,・・・,81Nにおいては、それぞれ、同図に示すように、コスタスループ101には、上述したアンテナ14及び周波数変換部23によって得られる増幅IF信号D14に対応するIF信号に対して、後述する拡散符号発生器(PN Generator;以下、PNGという。)128によって発生された位相がP(Prompt)とされる拡散符号が乗算器103によって乗算された信号が入力される。一方、チャンネル回路811,812,・・・,81Nにおいては、それぞれ、DLL102には、上述したアンテナ14及び周波数変換部23によって得られる増幅IF信号D14に対応するIF信号が入力される。
コスタスループ101においては、入力された信号に対して、NCO(Numeric Controlled Oscillator)104によって生成された再生キャリアのうちのサイン成分(同相成分)が乗算器105によって乗算される一方、NCO104によって生成された再生キャリアのうちのコサイン成分(直交成分)が乗算器106によって乗算される。コスタスループ101においては、乗算器105によって得られた同相成分の信号のうち所定の周波数帯域成分がLPF107によって通過され、この信号が位相検出器110、2値化回路111及び2乗和算出回路112に供給される。一方、コスタスループ101においては、乗算器106によって得られた直交成分の信号のうち所定の周波数帯域成分がLPF108によって通過され、この信号が位相検出器110及び2乗和算出回路112に供給される。コスタスループ101においては、LPF107,108のそれぞれから出力された信号に基づいて位相検出器110によって検出された位相情報がループフィルタ109を介してNCO104に供給される。また、コスタスループ101においては、LPF107,108のそれぞれから出力された信号が2乗和算出回路112に供給され、この2乗和算出回路112によって算出された2乗和(I2+Q2)が、位相がPとされる拡散符号についての相関値(P)として出力される。さらに、コスタスループ101においては、LPF107から出力された信号が2値化回路111に供給され、2値化されて得られた情報が航法メッセージとして出力される。
一方、DLL102においては、入力されたIF信号に対して、PNG128によって発生された位相がPよりも進んだE(Early)とされる拡散符号が乗算器113によって乗算されるとともに、PNG128によって発生された位相がPよりも遅れたL(Late)とされる拡散符号が乗算器114によって乗算される。DLL102においては、乗算器113によって得られた信号に対して、コスタスループ101におけるNCO104によって生成された再生キャリアのうちのサイン成分が乗算器115によって乗算されるとともに、NCO104によって生成された再生キャリアのうちのコサイン成分が乗算器116によって乗算される。そして、DLL102においては、乗算器115によって得られた同相成分の信号のうち所定の周波数帯域成分がLPF117によって通過され、この信号が2乗和算出回路119に供給される。一方、DLL102においては、乗算器116によって得られた直交成分の信号のうち所定の周波数帯域成分がLPF118によって通過され、この信号が2乗和算出回路119に供給される。また、DLL102においては、乗算器114によって得られた信号に対して、コスタスループ101におけるNCO104によって生成された再生キャリアのうちのサイン成分が乗算器120によって乗算されるとともに、NCO104によって生成された再生キャリアのうちのコサイン成分が乗算器121によって乗算される。そして、DLL102においては、乗算器120によって得られた同相成分の信号のうち所定の周波数帯域成分がLPF122によって通過され、この信号が2乗和算出回路124に供給される。一方、DLL102においては、乗算器121によって得られた直交成分の信号のうち所定の周波数帯域成分がLPF123によって通過され、この信号が2乗和算出回路124に供給される。
DLL102においては、2乗和算出回路119,124のそれぞれから出力された信号が位相検出器125に供給され、これらの信号に基づいて位相検出器125によって検出された位相情報がループフィルタ126を介してNCO127に供給され、さらに、NCO127によって生成された所定の周波数を有する信号に基づいて、PNG128によって各位相E,P,Lの拡散符号が発生される。さらに、DLL102においては、2乗和算出回路119によって算出された2乗和(I2+Q2)が、位相がEとされる拡散符号についての相関値(E)として出力される一方、2乗和算出回路124によって算出された2乗和(I2+Q2)が、位相がLとされる拡散符号についての相関値(L)として出力される。
このように、IFキャリア同期用のコスタスループ101と拡散符号同期用のDLL102とを組み合わせた回路と同様に構成されるチャンネル回路811,812,・・・,81Nを有する同期保持部25においては、動作開始前に、GPS衛星の衛星番号、拡散符号の位相、及びキャリア周波数が初期値として設定される。この初期値の設定は、同期捕捉部24との間で直接的に通信を行うか、又は、同期捕捉部24及び当該同期保持部25を制御するCPU26を介して行うことによってなされる。
このような同期保持部25は、以下のようにして拡散符号と同期を合わせる。すなわち、図6に示すように、同期捕捉部24がIF信号をRAM72等のメモリに取り込むタイミングでタイマを開始させ、同期捕捉部24がメモリに記憶しているIF信号に対して拡散符号の位相hを検出すると、同期保持部25は、この位相hの値を受け取った後、同じタイマによって1ミリ秒の整数倍からhだけずらした時点においてDLL102によって発生する拡散符号を開始させることにより、受信信号の拡散符号に位相を合わせる。なお、同図における"PN"は、PN系列の符号、すなわち、拡散符号を示している。
ここで、従来のコスタスループとDLLとを組み合わせた回路においては、受信信号における拡散符号の位相が未知であることから、DLLによって発生するIFキャリア周波数と拡散符号の周期とを少しずらし、IF信号の拡散符号に対して位相をスライドしていく過程で、有意な強度の相関がある位相を検出していた。そのため、従来の回路においては、位相を検出するのに、最悪の場合、数kHzの範囲のキャリア周波数と符号長が1023の拡散符号における全ての位相とに対して検出を行うことから、同期を確立するまでにかなりの時間を要していた。
これに対して、GPS受信機10においては、同期保持部25が従来の回路と基本的には同様の構成でありながら、同期保持部25が受け取った拡散符号の位相とIFキャリア周波数との初期値は真値から僅かにしかずれていないことから、有意な強度の相関がある位相は、誤差を含めても初期値の近辺に必ず存在する。したがって、同期保持部25は、従来の回路と同様に、まずコスタスループ101及びDLL102におけるループフィルタ109,126の制御を止めた状態にして、NCO104,127のそれぞれによって生成する信号を初期値の近辺で変化させながら有意な強度の相関を探索し、相関を検出した後には、ループフィルタ109,126のそれぞれからの制御に切り替える。これにより、同期保持部25は、DLL102による拡散符号の位相の同期確立、及びコスタスループ101によるキャリアの位相の同期確立を極めて短時間に行うことができ、以降、同期を保持し続けることができる。同期保持部25においては、IFキャリア周波数に対して、NCO104によって生成する再生キャリアの周波数を数十Hzの誤差範囲で初期値を設定できることから、LPF107,108,117,118,122,123、及びループフィルタ109,126の帯域幅を当初から狭くすることができ、S/N(Signal to Noise ratio)が高い状態で同期を確立することができる。
GPS受信機10においては、同期保持部25を例えば1.023MHz×16=16.368MHzのクロックで動作させ、DLL102において拡散符号の位相を1/16.368MHzの時間分解能で検出すれば、1/16チップの精度で拡散符号の位相からGPS衛星までの擬似距離を算出することができ、また、コスタスループ101におけるNCO104を1Hz単位で制御できる構成にすれば、IFキャリア周波数の分解能は1Hzとなり、DLL102とコスタスループ101とによってこれらの精度で同期を保持することができる。
以上のように、GPS受信機10においては、同期保持部25によって同期保持が行われると、DLL102によって発生する拡散符号の位相に基づいて、当該GPS受信機10の位置を連続的に算出して出力することができるとともに、コスタスループ101によって得られるIFキャリア周波数に基づいて、当該GPS受信機10の速度を連続的に算出して出力することができる。
同期保持部25は、上述したように、同期捕捉部24から受け渡された拡散符号の位相及びIFキャリア周波数を初期値とすることにより、これらの初期値の近辺で有意な強度の相関が得られる位相を探索する。これは、GPS受信機10に搭載されているクロック源の発振器、すなわち、TCXO12が公称周波数に対して誤差を有することが1つの理由である。GPS受信機10においては、先に図2に示したFFTを利用したディジタルマッチドフィルタ50を用いて同期捕捉部24を構成した場合には、IF信号をメモリに記憶した後、DSPの処理時間分遅れて同期保持部25に検出結果が供給されることから、発振器の公称周波数FOSCとの誤差をΔFOSCとし、DSPの処理時間をT秒とすると、同期保持部25に検出結果が供給される時点では、T×ΔFOSC/FOSCの誤差が生じる。例えば、GPS受信機10においては、T=3秒とし、ΔFOSC/FOSCが±3ppmの範囲内とすると、±9マイクロ秒=約±9チップ以内の誤差が生じる。このように、GPS受信機10においては、DSPの処理時間が長くなると、その分誤差が大きくなる。
また、GPS受信機10においては、GPS衛星と当該GPS受信機10との移動によって生じるキャリア周波数のドップラシフトも誤差を生じる要因となる。GPS受信機10においては、キャリアの周波数、すなわち、1575.42MHzをFRFとし、受信信号のドップラシフトをΔFDとすると、ドップラシフトによって拡散符号の周期、すなわち、1ミリ秒は、ほぼ(1−ΔFD/FRF)倍となり、例えば、+5〜−5kHzの範囲のドップラシフトが生じている場合には、3秒間で約−9.5〜9.5マイクロ秒=約−9.5〜9.5チップの誤差が生じる。
これらの2つの例は、比較的現実に近い値であり、GPS受信機10においては、発振器の誤差とドップラシフトとの両者の要因を併せると、±20チップ程度の範囲内で誤差が生じることから、この範囲だけを探索して相関を検出すればよい。例えば、同期保持部25は、同期捕捉部24から供給される拡散符号の位相よりも20チップ分だけ早くDLL102によって発生する拡散符号を開始させ、そのときの拡散符号の周期として、NCO104,127の周波数設定を(1+5/1575.420)ミリ秒よりも長めに設定しておけば、IF信号に含まれるGPS衛星からの信号の拡散符号に対するスライドが+20チップだけずれた時点から開始され、適当な時間の間、拡散符号同士の位相がスライドしている状態で相関の有無を探索することができる。
このように、従来においては、DLLとコスタスループとを用いて1023チップの範囲で、且つ、IFキャリア周波数についても発振器の誤差とドップラシフト量との範囲で変化させながら、相関検出を行っていたのに比較して、GPS受信機10においては、初期値のキャリア周波数が僅かな誤差しか有さず、相関を検出する範囲も数十分の1程度で済むことから、同期保持部25による同期確立に要する時間を極めて短時間とすることができる。
以上のように、GPS受信機10は、同期捕捉の機能と同期保持の機能とを分離して構成することにより、同期捕捉部24によってIF信号に含まれるGPS衛星からの信号の拡散符号の位相及びIFキャリア周波数を高速に検出することができ、この検出結果に基づいて同期保持部25が速やかに同期保持動作に移行することができる。しかしながら、GPS受信機10においては、IF信号に含まれる微弱なGPS衛星の信号を検出するために処理シーケンスが増える場合、また、電力消費を抑制するために同期捕捉部24を低速のクロックで動作させている場合等には、同期捕捉部24での処理時間が長くなり、これにともない、同期保持部25による同期確立までに探索する範囲が広くなり、好ましくない。
一般に、GPS受信機においては、周波数変換部における局部発振器とベースバンド処理部における信号処理のクロックを生成する源発振器として、共通の水晶発振器を用いるが、GPS受信機10においては、これと同様に、先に図1に示したように、周波数変換部23における局部発振器の源発振器と同期捕捉部24及び同期保持部25の動作クロックの源発振器とを、TCXO12に共通化する。そして、同期保持部25は、同期捕捉部24によって検出したIFキャリア周波数とTCXO12の公称値に基づく例えば1.023MHzの中間周波数FIFとの差分をΔFIFとし、1575.42MHzであるGPS衛星からの信号のキャリア周波数をFRFとし、同期捕捉部24がIF信号をメモリに取り込んでから同期捕捉処理に要した時間をT秒とし、拡散符号の位相をhとすると、図7に示すように、拡散符号の位相hをh+Δh(Δh=−T×ΔFIF/FRF)のように補正する。例えば、ΔFIF=+3kHz、T=10秒の場合には、Δh=−19マイクロ秒=約−19チップとなる。同期保持部25は、このような補正を行うことにより、TCXO12の発振周波数FOSCの誤差とドップラシフトとによって生じる拡散符号の位相のずれを極めて正確に補正することができ、同期捕捉部24による同期捕捉処理に時間を数十秒要した場合であっても、ほぼ1チップ程度の範囲での探索で同期を確立することができる。
このような補正が可能な理由は、以下のとおりである。
GPS受信機10においては、周波数変換部23によってGPS衛星からの信号の既知であるキャリア周波数FRFを既知である中間周波数FIFに変換するために、公称発振周波数FOSCのTCXO12に基づいて周波数シンセサイザ18によって局部発振周波数FLO=N×FOSC(Nは定数数、N>>1)を生成し、FIF=FRF−FLOとなるようにする。ここで、実際に受信するGPS衛星からの信号には、中間周波数FIFに対してTCXO12の発振周波数FOSCの誤差とドップラシフトとによって生じる誤差ΔFIFが加わったものである。すなわち、GPS受信機10においては、ドップラシフト量をΔFDとし、TCXO12による公称発振周波数との誤差をΔFOSCとすると、FIF+ΔFIF=FRF+ΔFD−FLO=FRF+ΔFD−N×(FOSC+ΔFOSC)となる。したがって、GPS受信機10においては、同期捕捉部24が検出するIFキャリア周波数は、FIF+ΔFIF、ΔFIF=ΔFD−N×ΔFOSC
となる。ここで重要なことは、同期捕捉部24が検出することができるものはΔFIFのみであり、ΔFD,ΔFOSCは最初の同期捕捉の段階では未知であるということである。
ここで、TCXO12によって拡散符号の1周期長である1ミリ秒を公称発振周波数でタイマがカウントした場合には、誤差ΔFOSCがあるために、実際には、1ミリ秒×FOSC/(FOSC+ΔFOSC)≒(1−ΔFOSC/FOSC)ミリ秒となる。一方、受信信号における拡散符号の1周期長さは、ドップラシフト量ΔFDにより、1ミリ秒×FRF/(FRF+ΔFD)≒(1−ΔFD/FRF)ミリ秒となる。したがって、受信信号における拡散符号の1周期長とTCXO12による公称発振周波数でカウントした1ミリ秒との比は、(1−ΔFD/FRF)/(1−ΔFOSC/FOSC)≒1−ΔFD/FRF+ΔFOSC/FOSC
となる。さらに、この式における右辺は、変形すると、1−ΔFIF/FRF+(ΔFOSC/FOSC)×(FIF/(N×FOSC))≒1−ΔFIF/FRF となる。このように、GPS受信機10においては、同期捕捉部24にとって未知のパラメータであるΔFD,ΔFOSCを含まない形でかなり良好な近似をすることができる。
この結果により、GPS受信機10においては、同期捕捉部24がIF信号をメモリに取り込んだ時点から同期捕捉処理を行い、検出した拡散符号の位相hが同期保持部25に供給されるまでの時間にT秒要した場合には、このT秒の間に同期捕捉部24が検出した拡散符号の位相から−T×ΔFIF/FRFだけずれることになる。したがって、同期保持部25は、図7に示したように、同期捕捉部24から供給された拡散符号の位相hに補正値Δh=−T×ΔFIF/FRFを加えたh+ΔhによってDLL102によって発生する拡散符号の開始タイミングを合わせることにより、同期捕捉処理時間に生じた拡散符号の位相のずれを補正することができ、これによってほぼ1チップ程度の範囲内において相関を検出することができ、極めて短時間に同期を確立することができる。GPS受信機10においては、補正値を例えばCPU26によって算出し、その算出結果を同期保持部25に供給し、同期保持部25によって位相を補正した後に、同期捕捉部24による同期捕捉処理を開始すればよい。
このような拡散符号の位相を補正する手法において必要となる情報は、同期捕捉部24が検出したIFキャリア周波数のみであり、GPS受信機10においては、TCXO12の発振周波数FOSCの誤差もドップラシフト量も、情報として不要である。また、GPS受信機10においては、IFキャリア周波数に依存せず、FIF=FRO−FLOとなるように局部発振周波数FLOを設定する場合であっても、ΔFIFの符号を変更するのみで済む。
さて、以下では、以上のような同期捕捉部24の具体的な構成について説明する。
GPS衛星からの信号は、キャリアを除くと、データの伝送速度が50bpsである航法メッセージを、上述したように、チップレートが1.023MHz、周期が1023の拡散符号で拡散された信号である。1ビットの航法メッセージは、その時間長が20ミリ秒であり、1ミリ秒周期の拡散符号が20周期分含まれているものである。このようなGPS衛星からの信号は、信号成分に比べてノイズ成分の方がはるかに大きいものであるが、多周期にわたってGPS受信機10の内部で発生させる拡散符号との相関検出処理を同期捕捉部24によって行うことにより、受信感度を向上させることができる。これは、ノイズ成分を生じる主な原因である熱雑音がランダムな非周期信号であるのに対して、GPS衛星からの信号は周期信号であることを利用するものである。
GPS衛星からの信号は、部分的には周期信号ではあるが航法メッセージが含まれる。そのため、GPS受信機においては、未知であるところの航法メッセージの成分が除去できない以上は、多周期にわたって拡散符号との相関をとったとしても、航法メッセージの正負の信号が相殺しあう場合には、ピークで現される相関を検出することができない。
これを回避するために、拡散符号の1周期毎の相関の絶対値和又は2乗和を多周期にわたって加算していく手法がある。GPS受信機においては、この手法を用いることにより、航法メッセージに依存することはなくなるが、C/N(Carrier to Noise ratio)が小さいほど、2乗操作による損失が大きく、受信感度の改善度は低くなる。これを解決する手法としては、本件出願人が先に出願している特願2001−190658号に記載したものがある。この手法は、同じく本件出願人が先に出願している特願2002−32501号に記載した上述した同期捕捉部24に適用することができ、また、本件出願人が先に出願している特願2002−35699号に記載した上述した同期保持部25にも適用することができる。
GPS受信機10においては、上述したように、先に図2に示したFFTを利用したディジタルマッチドフィルタ50を同期捕捉部24に適用し、このディジタルマッチドフィルタ50によって多周期にわたって当該GPS受信機10の内部で発生させる拡散符号との相関検出処理を行う。この手法としては、処理を行う周期長分のIF信号をメモリに記憶する方式のものがあるが、GPS受信機10においては、基本的にはこの方式を採用する。
同期捕捉部24は、上述したように、ディジタルマッチドフィルタ50を先に図3に示したDSP74又はCPUによって実行されるソフトウェアとして実装することによって構成される。
サンプリング手段としてのサンプラ71は、上述したTCXO12によって生成される発振信号D2に基づく所定のサンプリング周波数で入力されたIF信号をサンプリングする。このとき、サンプラ71は、DSP74若しくはこれに代わるCPU、又は上述したメインのCPU26によるサンプリング開始の命令に応じて、IF信号のサンプリングを開始する。このサンプラ71によってサンプリングされたIF信号は、RAM72に書き込まれてバッファリングされる。
第一記憶手段としてのRAM72は、サンプラ71によってサンプリングされて書き込まれた一定時間長のIF信号を単位データとして記憶する。なお、同期捕捉部24においては、このRAM72の容量の削減を図るものである。このRAM72に記憶されたIF信号は、DSP74又はこれに代わるCPUによって読み出され、拡散符号との相関検出処理に用いられる。
第二記憶手段としてのRAM/ROM73は、各種情報を記憶するものである。RAM/ROM73のうち、RAMは、検出された相関値を記憶するエリア及びDSP74又はこれに代わるCPUのワークエリアとして用いられる。また、RAM/ROM73のうち、ROMは、DSP74又はこれに代わるCPUによって実行されるプログラムエリア及び必要なデータを記憶するエリアとして用いられる。なお、RAM/ROM73のうちのRAMは、RAM72と物理的に共用してもよく、同図においては、論理的に異なる記憶素子として図示しているにすぎないものである。
DSP74又はこれに代わるCPUは算出手段および制御手段としての機能を含み、CPU26によって指示されたGPS衛星に対応する拡散符号を発生させ、ディジタルマッチドフィルタ50と等価な演算を行うことによってRAM72に記憶しているIF信号に対する拡散符号の各位相についての相関値を検出する。DSP74又はこれに代わるCPUは、検出した相関値をRAM/ROM73におけるRAMの一部に記憶させる。
このような同期捕捉部24を備えるGPS受信機10においては、RAM72の容量を大きくし、例えば、数百ミリ秒以上のIF信号を記憶可能な構成とした場合には、同期捕捉時における受信感度を極めて向上させることができるが、ここでは、RAM72の容量の削減を図る。
例えば、GPS受信機10においては、FFT処理を行いやすく、且つ、1回の相関検出処理によってある程度受信感度を得ることができる16ミリ秒分を相関検出処理の単位とし、RAM72の容量を、この16ミリ秒分のIF信号からなるデータを記憶することができる容量とする。この場合、GPS受信機10においては、周波数変換部23におけるA/D22の分解能を1ビットとし、サンプラ71によるサンプリング周波数を4.096MHzとすると、RAM72の容量は、8.192バイトとなる。また、GPS受信機10においては、拡散符号の周期を相関検出処理の単位としてもよく、この場合には、RAM72の容量として、最小で1ミリ秒分である512バイトまで削減することができる。しかしながら、GPS受信機10においては、このような短いデータのみを用いた相関検出処理によって得られる受信感度は不十分である場合がある。
そこで、GPS受信機10においては、"n"を拡散符号の位相とした場合に、小容量のRAM72に記憶されたデータに対する相関検出処理によって得られた相関値f(n)を、RAM/ROM73におけるRAMの一部に記憶されている初期値が"0"とされる累積相関値F(n)に加算し、その後、サンプラ71によって新たにサンプリングを行い、RAM72に記憶させるデータを更新する。そして、GPS受信機10においては、更新したデータに対して再度相関検出処理を行い、得られた相関値f(n)を、RAM/ROM73におけるRAMの一部に記憶されている累積相関値F(n)=0に加算する。さらに、GPS受信機10においては、サンプラ71によって再度サンプリングを行い、RAM72を入力されたIF信号を記憶するバッファとして用いながら、同様に相関検出処理を行って得られた相関値f(n)を、RAM/ROM73におけるRAMの一部に記憶されている累積相関値F(n)に加算する。GPS受信機10においては、このような処理を、例えば合計で数百ミリ秒以上まで所定の回数だけ繰り返す。
具体的には、GPS受信機10においては、同期捕捉部24によって図8に示す一連の処理を行うことにより、相関検出処理を行う。
まず、GPS受信機10は、同図に示すように、ステップS1において、CPU26により、相関検出処理の最大繰り返し回数を示すサンプリング回数M、発生させる拡散符号を特定するためのGPS衛星の衛星番号、及びドップラシフト量等を設定する。
続いて、GPS受信機10は、ステップS2において、CPU26により、RAM/ROM73におけるRAMの一部に記憶する相関値F(n)の初期値として"0"を設定するとともに、繰り返し回数mの初期値として"0"を設定する。
続いて、GPS受信機10は、ステップS3において、同期捕捉部24におけるサンプラ71によってIF信号のサンプリングを行い、サンプリングして得られたデータをRAM72に記憶させる。
続いて、GPS受信機10は、ステップS4において、DSP74若しくはこれに代わるCPU又は上位のCPU26の制御のもとに、RAM72に記憶したデータをRAM/ROM73におけるワークエリアとしてのRAMの一部に転送する。
そして、GPS受信機10は、ステップS5において、DSP74又はこれに代わるCPUによってRAM/ROM73におけるRAMの一部に記憶されたデータに対する相関検出処理を行い、相関値f(n)を算出する。
続いて、GPS受信機10は、ステップS6において、DSP74又はこれに代わるCPUにより、相関値f(n)を、RAM/ROM73におけるRAMの一部に記憶されている累積相関値F(n)に加算し、これを新たな累積相関値F(n)としてRAM/ROM73におけるRAMの一部に記憶させる。
続いて、GPS受信機10は、ステップS7において、DSP74又はこれに代わるCPUによって繰り返し回数mを"1"だけインクリメントし、ステップS8において、DSP74又はこれに代わるCPUにより、新たな繰り返し回数mがステップS1にて設定したサンプリング回数Mよりも少ないか否かを判定する。
ここで、新たな繰り返し回数mがステップS1にて設定したサンプリング回数Mよりも少ないものと判定した場合には、GPS受信機10は、ステップS3からの処理を繰り返す。一方、新たな繰り返し回数mがステップS1にて設定したサンプリング回数Mに達したものと判定した場合には、GPS受信機10は、ステップS9へと処理を移行する。
GPS受信機10は、ステップS9において、RAM/ROM73に記憶されている累積相関値F(n)を最終的に出力すべき相関値、すなわち、拡散符号の位相npとして検出し、次の相関検出処理へと移行する。
GPS受信機10は、このような一連の処理を経ることにより、拡散符号の位相npを検出することができる。GPS受信機10は、このように相関検出処理を繰り返し行い、相関値f(n)を累積加算することにより、小容量のRAM72を用いながらも大容量のメモリを用いた場合と同様の効果を得ることができる。例えば、GPS受信機10においては、1回の相関検出処理を行った時点では、図9(A)に示すように、拡散符号の位相npを示す累積相関値F(n)の関数は、S/Nが極めて低い状態であるのに対して、所定の繰り返し回数mだけ相関検出処理を繰り返して求めた累積相関値F(n)の関数は、相関値f(n)を累積加算していくことにより、同図(B)に示すように、S/Nが向上したものとなる。そして、GPS受信機10においては、同図(C)に示すように、最終的に得られる累積相関値F(n)の関数は、S/Nが極めて高いものとなり、弱い信号の場合であっても拡散符号の位相npを容易に検出することが可能となる。
このように、GPS受信機10においては、相関検出処理を複数回行い、得られた相関値f(n)を累積加算していくことにより、RAM72の容量を大きくすることなく、同期捕捉時の受信感度を向上させることができる。
ところで、GPS受信機10においては、先に図8に示した一連の相関検出処理を行う際に、サンプラ71によってサンプリングを開始するタイミングを任意に行った場合には、サンプリングされるデータについての拡散符号の位相が毎回異なることになる。そのため、相関のピーク位置は、毎回異なるものとなることから、相関値f(n)を累積加算する効果が生じないおそれがある。
そこで、GPS受信機10においては、所定のタイミング信号生成手段によって拡散符号と略一致する時間間隔のタイミング信号を生成し、このタイミング信号に同期してサンプラ71によるサンプリング開始のタイミングを合わせる。これにより、相関のピークは、毎回ほぼ同じ位置に存在することになり、相関値f(n)の累積加算によってS/Nを向上させることができる。
ここで、GPS衛星からの信号における拡散符号であるC/Aコードは、GPS衛星の内部では正確に1ミリ秒の周期で発生されるが、GPS受信機10に到達した段階では、GPS衛星と受信側との相対速度の変化によって生じる約3ppm程度のドップラシフト量が加わったものとなる。GPS受信機10においては、一般に、TCXO12の発振周波数FOSCの誤差は約3ppmであり、TCXO12によって1ミリ秒の周期信号を生成するものとすると、生成した周期信号と受信した信号におけるC/Aコードの周期とは最大で約6ppm程度ずれることになり、すなわち、チップレートが1秒につき1.023MHz、符号長が1023のC/Aコードが最大で6符号長分だけずれることになる。しかしながら、仰角の高いGPS衛星はドップラシフト量が小さく、また、TCXO12の発振周波数FOSCは受信を重ねるうちにある程度誤差が補正できることから、このずれは、実際には6ppmよりも小さくなる。したがって、GPS受信機10においては、例えばTCXO12等に基づいて容易に生成することができる1ミリ秒周期のタイミング信号に同期してサンプラ71によるサンプリングを開始するようにするのみでも十分な効果を得ることができる。
なお、GPS受信機10においては、1ミリ秒周期のタイミング信号を生成する手法として、例えばTCXO12によって生成される発振信号D2を分周し、1ミリ秒周期の分周器出力をタイミング信号として出力することによってハードウェア上でサンプラ71のサンプリングを制御する手法、又はTCXO12によって生成される発振信号D2を入力とするタイマによって時間情報を取得し、この時間情報に基づいてタイミング信号を出力することによってソフトウェア上でサンプラ71のサンプリングを制御する手法が考えられる。
また、GPS受信機10においては、毎回のサンプリングにおける拡散符号の位相を一致させるために、拡散符号と略一致する時間間隔のタイミング信号を生成して制御するのではなく、サンプリング開始のタイミング情報を所定の書き込み手段によってタイミング記憶用のレジスタ等に記憶させ、そのレジスタ値を相関検出処理にてDSP74又はこれに代わるCPUによって参照するようにしてもよい。すなわち、GPS受信機10においては、このタイミングをDSP74又はこれに代わるCPUによって参照することにより、最初のサンプリングのタイミングに対して拡散符号の周期がずれた量を把握することができる。そのため、GPS受信機10においては、先に図8に示したステップS6において、把握したずれの分を巡回シフトして、検出した相関値f(n)を前回の累積相関値F(n)に加算していくようにしてもよい。
以上、RAM72を入力したIF信号を記憶するバッファとして用い、サンプラ71によるサンプリング処理、DSP74又はこれに代わるCPUによる相関検出処理及び相関値f(n)の累積加算処理を繰り返し行うことによって受信感度を向上させる手法について説明したが、GPS受信機10においては、サンプリング処理と相関検出処理とは並列的に行うことができる。
具体的には、GPS受信機10においては、例えば1回のサンプリング時間長よりも相関検出処理に要する時間が短い場合には、図10に示すように、サンプラ71によるサンプリング終了直後にDSP74若しくはこれに代わるCPU又は上位のCPU26による要求に応じて、RAM72に記憶されているデータをRAM/ROM73におけるワークエリアとしてのRAMの一部に転送する。なお、GPS受信機10においては、データの転送期間内では、サンプラ71は待機状態とされる。
続いて、GPS受信機10においては、データの転送終了後、DSP74若しくはこれに代わるCPU又は上位のCPU26によって即座にサンプラ71に対してサンプリング開始の命令を与える。なお、GPS受信機10においては、上述したタイミング信号に同期してサンプラ71によってサンプリング処理を開始する場合には、DSP74若しくはこれに代わるCPU又は上位のCPU26によって最初のサンプリング開始の命令が与えられた後、タイミング信号を生成し、サンプラ71によってサンプリング処理を開始する。
また、GPS受信機10においては、DSP74若しくはこれに代わるCPU又は上位のCPU26によってサンプリング開始の命令を与えると、RAM72から転送されてRAM/ROM73におけるRAMの一部に記憶されているデータに対する相関検出処理をDSP74又はこれに代わるCPUによって行う。GPS受信機10においては、サンプラ71によるサンプリング処理が行われている間に相関検出処理が終了することから、DSP74又はこれに代わるCPUは相関検出処理を終了すると待機状態とされる。
そして、GPS受信機10においては、サンプラ71によるサンプリング処理が終了すると、即座にDSP74若しくはこれに代わるCPU又は上位のCPU26による要求に応じて、RAM72に記憶されているデータをRAM/ROM73におけるワークエリアとしてのRAMの一部に転送し、同様の動作を繰り返し行う。
GPS受信機10においては、1回のサンプリング時間長よりも相関検出処理に要する時間が短い場合には、このようなサンプリング処理と相関検出処理との並列的動作を繰り返し行うことにより、略リアルタイムの相関検出処理を行うことができ、全体の処理時間を短縮することができる。
一方、GPS受信機10においては、1回のサンプリング時間長よりも相関検出処理に要する時間が長い場合であっても、サンプリング処理と相関検出処理とを並列的に行うことによって処理時間の短縮化を図ることができる。
すなわち、GPS受信機10においては、図11に示すように、サンプラ71によるサンプリング終了直後にDSP74若しくはこれに代わるCPU又は上位のCPU26による要求に応じて、RAM72に記憶されているデータをRAM/ROM73におけるワークエリアとしてのRAMの一部に転送する。なお、GPS受信機10においては、データの転送期間内では、サンプラ71は待機状態とされる。
続いて、GPS受信機10においては、データの転送終了後、DSP74又はこれに代わるCPUによって所定のタイマを動作開始させた後、RAM72から転送されてRAM/ROM73におけるRAMの一部に記憶されているデータに対する相関検出処理をDSP74又はこれに代わるCPUによって開始する。また、GPS受信機10においては、タイマによって時間を計測し、例えば相関検出処理に要する時間とサンプリング時間長との差分時間が経過した後、タイマからDSP74又はこれに代わるCPUに対して割り込みをかける。GPS受信機10においては、タイマからの割り込みを検出すると、DSP74若しくはこれに代わるCPU又は上位のCPU26によって即座にサンプラ71に対してサンプリング開始の命令を与える。なお、GPS受信機10においては、上述したタイミング信号に同期してサンプラ71によってサンプリング処理を開始する場合には、DSP74若しくはこれに代わるCPU又は上位のCPU26によって最初のサンプリング開始の命令が与えられた後、タイミング信号を生成し、サンプラ71によってサンプリング処理を開始する。
ここで、GPS受信機10においては、相関検出処理に要する時間とサンプリング時間長との差分時間が経過した後、タイマによって割り込みをかける場合には、DSP74又はこれに代わるCPUによる相関検出処理とサンプラ71によるサンプリング処理とが同じ時間に終了することになる。GPS受信機10においては、DSP74又はこれに代わる相関検出処理が終了すると、即座にDSP74若しくはこれに代わるCPU又は上位のCPU26による要求に応じて、RAM72に記憶されているデータをRAM/ROM73におけるワークエリアとしてのRAMの一部に転送し、同様の動作を繰り返し行う。
GPS受信機10においては、1回のサンプリング時間長よりも相関検出処理に要する時間が長い場合には、このようなサンプリング処理と相関検出処理との並列的動作を繰り返し行うことにより、相関検出処理の終了後、即座に次のサンプリングしたデータの相関検出処理へと移行することができることから、DSP74又はこれに代わるCPUのアイドル時間をなくすことができ、全体の処理時間を短縮することができる。
ところで、GPS受信機10においては、ドップラシフトの影響によって拡散符号の周期にずれが生じるが、上述したように、1ミリ秒周期のタイミング信号を生成して、このタイミング信号に同期してサンプラ71によるサンプリングを開始することによって十分な効果を得ることができる。しかしながら、GPS受信機10においては、受信するGPS衛星の数を増やすために、通常では位置算出に用いることが少ないドップラシフト量が大きい低仰角のGPS衛星を利用したり、受信感度を向上させるために、相関検出処理の時間を例えば1秒程度まで長くしたりした場合には、ドップラシフトの影響によってC/Aコードが最大で3符号長分だけずれることになり、これにTCXO12の発振周波数FOSCの誤差を含めると、上述したように、C/Aコードが最大で6符号長分だけずれることになる。
ただし、ドップラシフトによるC/Aコードの周期の変化量は、GPS衛星の軌道情報とGPS受信機10のおおよその位置とがわかっている場合には、ほぼ正確な値で算出することができる。
したがって、GPS受信機10においては、例えばDSP74又はこれに代わるCPUによってGPS衛星の軌道情報と当該GPS受信機10のおおよその位置とに基づいて、ドップラシフトによる拡散符号の周期を算出し、算出した周期に基づいて、拡散符号の周期とサンプラ71によるサンプリングタイミングとのずれを補正しながら相関値を累積加算する。例えば、GPS受信機10においては、ドップラシフトによるずれが+2ppmと算出された場合には、1秒で+約2符号長、125ミリ秒で約+1/4符号長だけずれることになることから、サンプラ71によるサンプリング周波数が4.096MHzである場合には、相関値の加算を行う際に、125ミリ秒毎に1つシフトして加算する、すなわち、125ミリ秒毎にほぼ1/4符号長だけシフトして加算する。これにより、GPS受信機10においては、ドップラシフトによって相関のピーク位置がずれていくことによる影響を抑制することができる。
なお、GPS受信機10においては、GPS衛星の軌道情報と当該GPS受信機10のおおよその位置とがわからず、したがってドップラシフト量もわかっていない場合であっても、先に図7に示したように、同期保持部25によって拡散符号の位相hをh+Δh(Δh=−T×ΔFIF/FRF)のように補正するのと同様に、相関のピーク位置がずれていくことによる影響を抑制することが可能である。すなわち、この補正式h+Δh(Δh=−T×ΔFIF/FRF)において、"T"を最初のサンプリング開始点からの経過時間とし、"ΔFIF"を相関検出に際して設定するIFキャリア周波数と中間周波数FIFとからのシフト量とすれば、Δh=−T×ΔFIF/FRFが最初のサンプリング開始点からの相関のピーク位置のずれを表すものとなる。したがって、GPS受信機10においては、サンプリングを行う毎に、経過時間からΔhを算出し、図8中ステップS6において、相関値f(n)を累積相関値F(n)に加算する際に、相関値f(n)をΔhだけずらして累積相関値F(n)に加算する。これにより、GPS受信機10においては、GPS衛星の軌道情報と当該GPS受信機10のおおよその位置とがわからず、したがってドップラシフト量もわかっていない場合であっても、相関のピーク位置がずれていくことによる影響を抑制することができる。なお、この補正方法は、GPS衛星の軌道情報と当該GPS受信機10のおおよその位置とがわかっている場合にも有効である。
以上説明したように、GPS受信機10は、同期捕捉部24によって拡散符号の位相を探索するための相関値を検出する際に、IF信号を一度に大量に記憶することなく、少ないメモリで受信感度を向上させることができる。したがって、GPS受信機10は、メモリの容量を削減することができることから、集積回路化して構成することが容易となり、メモリの占める面積が削減されることから、小型化及び低コスト化を図ることができる。
また、GPS受信機10は、メモリの容量は少ないながらも、繰り返し演算を行うことによって相関検出処理の時間長に制限がないことから、限界近傍まで高感度化を期待することができる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態では、GPS受信機10を用いて説明したが、本発明は、スペクトラム拡散信号を受信して復調する受信機であれば、いかなるものでも適用することができる。
また、上述した実施の形態では、同期捕捉部24として、FFTを利用したディジタルマッチドフィルタ50を適用し、DSP74又はこれに代わるCPUによって実行するものとして説明したが、本発明は、DSP74又はこれに代わるCPUの代わりに、例えばいわゆるトランスバーサルフィルタからなるハードウェア相関器を適用してもよい。
さらに、上述した実施の形態では、GPS受信機10を用いて説明したが、本発明は、衛星を利用した測位システム、すなわち、GNSSシステムを適用した受信機の機能が組み込まれた電子機器であれば、いかなるものであっても適用することができる。GNSSシステムとしては、米国における上述したGPSシステムの他、旧ソ連邦におけるGLONASS(Global Navigation Satellites System)や、欧州を中心として開発が進められているGALILEO等があるが、本発明は、これら全てのGNSSシステムを適用することができるものである。
このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
以上詳細に説明したように、本発明にかかる相関検出装置は、入力されたスペクトラム拡散信号における拡散符号の位相を検出するために、拡散符号と自己が発生する拡散符号との相関を検出する相関検出装置であって、入力されたスペクトラム拡散信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングするサンプリング手段と、このサンプリング手段によってサンプリングされた一定時間長のデータを記憶する第1の記憶手段と、この第1の記憶手段に記憶されたデータと自己が発生した拡散符号との相関値を算出する相関検出処理を行い、検出した相関値を、前回の相関検出処理によって得られた相関値に累積加算する相関検出処理手段と、この相関検出処理手段によって得られた累積相関値を記憶する第2の記憶手段と、サンプリング手段によって再度スペクトラム拡散信号をサンプリングさせて得られたデータを第1の記憶手段に記憶させることによって第1の記憶手段に記憶されているデータを更新させ、更新したデータに対して相関検出処理手段によって相関検出処理を行わせ、得られた相関値を第2の記憶手段に記憶されている累積相関値に加算して記憶させる動作を所定の回数だけ繰り返し行わせる制御手段とを備える。
そのため、本発明にかかる相関検出装置は、制御手段による制御のもとに、サンプリング手段によって再度スペクトラム拡散信号をサンプリングして得られたデータを第1の記憶手段に記憶することによって第1の記憶手段に記憶されているデータを更新し、更新したデータに対して相関検出処理手段によって相関検出処理を行い、得られた相関値を第2の記憶手段に記憶されている累積相関値に加算して記憶する動作を所定の回数だけ繰り返し行うことにより、スペクトラム拡散信号を第1の記憶手段に一度に大量に記憶することなく、少ない容量で受信感度を向上させることができる。したがって、本発明にかかる相関検出装置は、第1の記憶手段の容量を削減することができることから、第1の記憶手段の占める面積を削減することができ、小型化及び低コスト化を図ることができる。
また、本発明にかかる相関検出方法は、入力されたスペクトラム拡散信号における拡散符号の位相を検出するために、拡散符号と自己が発生する拡散符号との相関を検出する相関検出方法であって、入力されたスペクトラム拡散信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングする工程と、このスペクトラム拡散信号をサンプリングする工程にてサンプリングされた一定時間長のデータを第1の記憶手段に記憶する工程と、第1の記憶手段に記憶されたデータと自己が発生した拡散符号との相関値を算出する相関検出処理を行い、検出した相関値を、前回の相関検出処理によって得られた相関値に累積加算する工程と、この相関値を累積加算する工程にて得られた累積相関値を第2の記憶手段に記憶する工程とを備え、再度スペクトラム拡散信号をサンプリングさせて得られたデータを第1の記憶手段に記憶することによって第1の記憶手段に記憶されているデータを更新し、更新したデータに対して相関検出処理を行い、得られた相関値を第2の記憶手段に記憶されている累積相関値に加算して記憶する動作を所定の回数だけ繰り返し行う。
そのため、本発明にかかる相関検出方法は、再度スペクトラム拡散信号をサンプリングして得られたデータを第1の記憶手段に記憶することによって第1の記憶手段に記憶されているデータを更新し、更新したデータに対して相関検出処理を行い、得られた相関値を第2の記憶手段に記憶されている累積相関値に加算して記憶する動作を所定の回数だけ繰り返し行うことにより、スペクトラム拡散信号を第1の記憶手段に一度に大量に記憶することなく、少ない容量で受信感度を向上させることが可能となる。したがって、本発明にかかる相関検出方法は、第1の記憶手段の容量を削減することによって第1の記憶手段の占める面積を削減することが可能となり、小型化及び低コスト化を図ることが可能となる。
さらに、本発明にかかる受信装置は、衛星からの信号を受信して自己の位置及び速度を算出する受信装置であって、衛星からの信号を受信する受信手段と、この受信手段によって受信した受信信号の周波数を所定の中間周波数に変換する周波数変換手段と、この周波数変換手段によって得られた中間周波数信号における拡散符号の位相を検出する同期捕捉と中間周波数信号におけるキャリア周波数の検出とを行う同期捕捉手段と、この同期捕捉手段によって検出された拡散符号の位相及び同期捕捉手段によって検出されたキャリア周波数を、複数の衛星に対応して独立に設けられた複数のチャンネルのそれぞれに対して衛星毎に割り当てて設定し、設定した拡散符号の位相及びキャリア周波数を初期値として、拡散符号とキャリアとの同期保持を行うとともに、中間周波数信号に含まれるメッセージの復調を行う同期保持手段とを備え、スペクトラム拡散信号である中間周波数信号における拡散符号の位相を検出するために、拡散符号と自己が発生する拡散符号との相関を検出する同期捕捉手段は、入力された中間周波数信号を所定のサンプリング周波数でサンプリングするサンプリング手段と、このサンプリング手段によってサンプリングされた一定時間長のデータを記憶する第1の記憶手段と、この第1の記憶手段に記憶されたデータと自己が発生した拡散符号との相関値を算出する相関検出処理を行い、検出した相関値を、前回の相関検出処理によって得られた相関値に累積加算する相関検出処理手段と、この相関検出処理手段によって得られた累積相関値を記憶する第2の記憶手段と、サンプリング手段によって再度中間周波数信号をサンプリングさせて得られたデータを第1の記憶手段に記憶させることによって第1の記憶手段に記憶されているデータを更新させ、更新したデータに対して相関検出処理手段によって相関検出処理を行わせ、得られた相関値を第2の記憶手段に記憶されている累積相関値に加算して記憶させる動作を所定の回数だけ繰り返し行わせる制御手段とを有する。
そのため、本発明にかかる受信装置は、同期捕捉手段における制御手段による制御のもとに、サンプリング手段によって再度中間周波数信号をサンプリングして得られたデータを第1の記憶手段に記憶することによって第1の記憶手段に記憶されているデータを更新し、更新したデータに対して相関検出処理手段によって相関検出処理を行い、得られた相関値を第2の記憶手段に記憶されている累積相関値に加算して記憶する動作を所定の回数だけ繰り返し行うことにより、中間周波数信号を第1の記憶手段に一度に大量に記憶することなく、少ない容量で受信感度を向上させることができる。したがって、本発明にかかる受信装置は、第1の記憶手段の容量を削減することができることから、第1の記憶手段の占める面積を削減することができ、小型化及び低コスト化を図ることができる。
本発明の実施の形態として示すGPS受信機の構成を説明するブロック図である。
同GPS受信機が備える同期捕捉部として適用することができるFFTを利用したディジタルマッチドフィルタの構成を説明するブロック図である。
同GPS受信機が備える同期捕捉部として図2に示すディジタルマッチドフィルタを適用した場合における実際の実装例を説明するブロック図である。
同GPS受信機が備える同期保持部の構成を説明するブロック図である。
同GPS受信機が備える同期保持部が有するチャンネル回路の構成を説明するブロック図である。
同GPS受信機が備える同期保持部における拡散符号の位相合わせについて説明するための図である。
同GPS受信機が備える同期保持部における拡散符号の位相補正について説明するための図である。
同GPS受信機が備える同期捕捉部における相関検出処理を行う際の一連の処理を説明するフローチャートである。
同GPS受信機が備える同期捕捉部によって検出した相関値の時間変化を示す出力波形の例を説明する図であって、(A)は、1回の相関検出処理を行った場合の出力波形の例を示し、(B)は、所定の繰り返し回数だけ相関検出処理を繰り返し行った場合の出力波形の例を示し、(C)は、最終的に得られる出力波形の例を示す図である。
同GPS受信機が備える同期捕捉部によってサンプリング処理と相関検出処理とを並列的に行う様子を説明する図であって、サンプリング時間長よりも相関検出処理に要する時間が短い場合における処理の内容を説明する図である。
同GPS受信機が備える同期捕捉部によってサンプリング処理と相関検出処理とを並列的に行う様子を説明する図であって、サンプリング時間長よりも相関検出処理に要する時間が長い場合における処理の内容を説明する図である。
GPS衛星からの信号の構成を説明する図である。
従来の拡散符号及びキャリアの同期処理を説明するための図であって、周波数サーチを説明するための図である。
ディジタルマッチドフィルタを用いて検出した相関値の時間変化を示す出力波形の例を説明する図である。
符号の説明
10 GPS受信機、
11 XO、
12 TCXO、
13 逓倍/分周器、
14 アンテナ、
15 LNA、
16 BPF、
17,20 増幅器、
18 周波数シンセサイザ、
19 ミキサ、
21,107,108,117,118,122,123
LPF、
22 A/D、
23 周波数変換部、
24 同期捕捉部、
25 同期保持部、
26 CPU、
27 RTC、
28 タイマ、
29,52,54,57 メモリ、
30 復調回路、
50 ディジタルマッチドフィルタ、
51,71 サンプラ、
53,56 FFT処理部、
55,128 拡散符号発生器、
58,103,105,106,113,114,115,116,120,121
乗算器、
59IFFT処理部、
60 ピーク検出器、
72 RAM、
73 RAM/ROM、
74 DSP、
81,811,812,・・・,81N チャンネル回路、
82 コントロール・レジスタ、
101 コスタスループ、
102 DLL、
104,127 NCO、
109,126 ループフィルタ、
110,125 位相検出器、
111 2値化回路、
112,119,124 2乗和算出回路