JP2006253114A - 発泡同軸ケーブル - Google Patents

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亮 渡部
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Abstract

【課題】内部導体上の絶縁体が80%以上の発泡絶縁体層として確実に安定して形成され、外観性に優れると共に高周波帯域(1GHz以上)での減衰量が少ない発泡同軸ケーブルを提供することにある。
【解決手段】内部導体上に、破断時の溶融張力が5.0g以上であり、且つ190℃、2.16kgにおけるMFRが1.0g/10min以上のEP共重合体またはEP共重合体混合物からなる発泡絶縁体層、その上に、破断時の溶融張力が6.0〜20.0gであり、且つ190℃、2.16kgにおけるMFRが0.4g/10min以上のポリオレフィン系樹脂が外層として設けられ、絶縁体全体の発泡度が80%以上となるように発泡された発泡同軸ケーブルとすることによって、解決される。
【選択図】図1

Description

本発明は、高発泡度の発泡絶縁体を有し、さらにケーブル外観に優れた発泡同軸ケーブルに関するものである。
高周波用の発泡同軸ケーブルは、銅からなる中心導体とその上に設けられる発泡絶縁体層と、その外周に設けられる外部導体等から構成される。近年は、使用周波数域がGHz帯域に於いても減衰量が小さい発泡同軸ケーブルが要求されるため、絶縁体層の高発泡度化が望まれている。例えば、セルが微細、且つ均一で高発泡度の良好な外観を有する同軸ケーブルを得るために、熱溶融押出し可能なポリオレフィン系樹脂と成核剤としてフッ素系樹脂粉末とを含有する組成物を、発泡剤の存在下に発泡押出し成型する同軸ケーブルが知られている。しかしながら、成核剤の改良のみでは高発泡度化すると、発泡絶縁体層に巨大空泡が形成され、高い発泡度の発泡絶縁体層を安定して確実に形成するのは困難であった。また特許文献1には、誘電正接(以下tanδ)等の絶縁特性や発泡成型性に優れた、同軸ケーブルの絶縁層の形成などに好適な発泡成型用のポリマー組成物が開示されている。すなわち、ポリマー組成物のベースレジンとして、エチレン成分を0.5〜20重量%含有するプロピレン・エチレン共重合体を用いることによって、前記の特性が得られるとしている。しかしながら、このようなポリマー組成物を用いても、安定して確実に高発泡度化させることは困難であった。これは前記ポリマー組成物が、破断時の溶融張力と溶融時の伸長性のバランスが十分ではないために、発泡時にセル壁の破れが生じたり、発泡セルが十分成長しないためと思われる。さらに、特許文献2には溶融成型におけるポリプロピレンの伸びの低下問題を解決するために、ポリプロピレンとポリプロピレン/ポリエチレンのブロックコポリマーとポリプロピレン/エチレン・プロピレンゴムのブロックコポリマーとのいずれかの材料と、この材料よりもメルトインデックスが大きく且つ10g/10分以下の高密度ポリエチレンとの混合物の発泡体からなる絶縁被覆を有する発泡絶縁電線が記載されている。しかしながら前記の混合物を用いても、破断時の溶融張力や溶融時の伸長性が十分でないために、安定して確実に高発泡度とするには十分とは言えなかった。また、高発泡度の発泡絶縁体層を有する同軸ケーブルの製造方法が、特許文献3に記載されている。すなわち、導体上に充実体からなる内層、その上にポリオレフィン系樹脂の発泡体層を形成し、さらに前記と同様の樹脂からなる充実体の外層を構成することによって発泡絶縁体の発泡度を高めようとするものである。しかしながら、このような高発泡同軸ケーブルの製造方法に於いても、安定して高発泡の同軸ケーブルを得ることには問題があった。すなわち従来の外層材料では、発泡時に外層からガスが放出され易く巨大空泡が形成され、安定して確実に高発泡の発泡絶縁体層を得ることは難しかった。そして、このような大きな空泡からなる発泡体層は、巨大空泡により外観が悪くなる問題があった。
特許第2668174号公報 特許第2618464号公報 特許第2508128号公報
よって本発明が解決しようとする課題は、内部導体上の絶縁体が80%以上の発泡絶縁体層として確実に安定して形成され、外観性に優れると共に高周波帯域(1GHz以上)での減衰量が少ない発泡同軸ケーブルを提供することにある。また前述の特性に加えて、低コストで適度な引張特性、硬度等の機械的特性や電気特性が向上し、さらに成型加工性にも優れた発泡同軸ケーブルを提供することにある。さらには前述の特性に加えて、低温曲げ特性や耐衝撃性、曲げ白化特性を改善した発泡同軸ケーブルを提供することにある。
前記解決しようとする課題は、請求項1に記載されるように、内部導体上に、内径2.095mm、長さ8.03mmのキャピラリーを用い、ピストンスピードが10mm/min、炉体径が9.55mm、引取加速度が400m/minで、190℃におけるキャピラリーレオメータで測定した破断時の溶融張力が5.0g以上であり、且つ190℃、2.16kgにおけるメルトマスフローレートが1.0g/10min以上のエチレン・プロピレン共重合体または前記エチレン・プロピレン共重合体とポリエチレンとの混合物からなる発泡絶縁体層、その上に内径2.095mm、長さ8.03mmのキャピラリーを用い、ピストンスピードが10mm/min、炉体径が9.55mm、引取加速度が400m/minで、190℃におけるキャピラリーレオメータによって測定した破断時の溶融張力が6.0〜20.0gであり、且つ190℃、2.16kgにおけるメルトマスフローレートが0.4g/10min以上のポリオレフィン系樹脂が外層として設けられ、絶縁体全体の発泡度が80%以上となるように発泡された発泡同軸ケーブルとすることによって、解決される。
また好ましくは、請求項2に記載されるように、前記外層の厚さが0.03〜0.20mmである請求項1に記載の発泡同軸ケーブルとすることによって、さらに請求項3に記載されるように、前記外層を構成するポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、またはこれ等の混合物である請求項1または2に記載の発泡同軸ケーブルとすることによって、解決される。
また請求項4に記載されるように、前記発泡絶縁体層を形成する混合物は、前記エチレン・プロピレン共重合体の含有量が20質量%以上、100質量%未満の混合物である請求項1〜3のいずれかに記載の発泡同軸ケーブルとすることによって、解決される。
以上の本発明は、内部導体上に破断時の溶融張力が5.0g以上であり、且つ190℃、2.16kgにおけるメルトマスフローレート(以下、MFR)が1.0g/10min以上のエチレン・プロピレン共重合体(以下、EP共重合体)または前記EP共重合体とポリエチレン(以下、PE)との混合物(以下、EP共重合体混合物)からなる発泡絶縁体層を、その上に破断時の溶融張力が6.0〜20.0gであり、且つ190℃、2.16kgにおけるMFRが0.4g/10min以上のポリオレフィン系樹脂が外層として設けられ、絶縁体全体の発泡度が80%以上となるように発泡された発泡同軸ケーブルとしたので、内部導体上の絶縁体が80%以上の高発泡度であると共に、外観性に優れた発泡同軸ケーブルが得られる。このような発泡同軸ケーブルは、高周波帯域(1GHz以上)での減衰量が少なく誘電特性に優れているので、例えば携帯電話用基地局に使用される高周波同軸ケーブルとして特に有用である。
また、前記外層の厚さを0.03〜0.20mmとすることによって、発泡絶縁体層を発泡させた時に発泡ガスの抜けを十分に防止するので、絶縁体の発泡度を80%以上に確実に安定して形成することができると共に、外観性がより優れた発泡同軸ケーブルが得られる。さらに、前記外層を構成するポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン(以下、PP)、PE、EP共重合体、またはこれ等の混合物としたので、前述の特性に加えて、低コストで適度な引張特性、硬度等の機械的特性や電気特性が向上する。さらに、成型加工性にも優れているので製造上からも有利である。
また、前記発泡絶縁体層を形成するEP共重合体混合物として、前記EP共重合体の含有量が20質量%以上、100質量%未満の混合物としたので、前述の特性に加えて、混合物の混合割合によって、低温曲げ特性や耐衝撃性、曲げ白化特性を改善することができる。
以下に本発明を詳細に説明する。請求項1に記載される発明は、内部導体上に、内径2.095mm、長さ8.03mmのキャピラリーを用い、ピストンスピードが10mm/min、炉体径が9.55mm、引取加速度が400m/minで、190℃におけるキャピラリーレオメータで測定した破断時の溶融張力が5.0g以上であり、且つ190℃、2.16kgにおけるMFRが1.0g/10min以上のEP共重合体またはEP共重合体混合物からなる発泡絶縁体層、その上に内径2.095mm、長さ8.03mmのキャピラリーを用い、ピストンスピードが10mm/min、炉体径が9.55mm、引取加速度が400m/minで、190℃におけるキャピラリーレオメータによって測定した破断時の溶融張力が6.0〜20.0gであり、且つ190℃、2.16kgにおけるMFRが0.4g/10min以上のポリオレフィン系樹脂が外層として設けられ、絶縁体全体の発泡度が80%以上となるように発泡された発泡同軸ケーブルであり、高周波帯域(1GHz以上)での減衰量が少なく誘電特性に優れているので、例えば携帯電話用基地局に使用される高周波同軸ケーブルとして特に有用である。
図1によって、本発明の発泡同軸ケーブルの一例を説明する。この発泡同軸ケーブルは、銅線、めっき銅線、銅合金線等からなる内部導体1と、その上に形成した発泡絶縁体層2、その上に設けられる充実体の外層3からなる2層構造を基本とするものである。内部導体1は、通常0.5〜20mm程度の導体径のものが使用される。また発泡絶縁体層2は、前述の特性を有するEP共重合体或いはEP共重合体混合物を押出し成型して、好ましくは0.5〜15mm程度の厚さに施される。そしてこの発泡絶縁体層2は、窒素ガスや炭酸ガス等の不活性ガスや化学発泡剤によって80%以上の発泡度に発泡されている。また、外層3は、発泡絶縁体層2を発泡させた時にガスを抑え込む機能を有するポリオレフィン系樹脂の層として、通常発泡絶縁体層と同時押出しによって形成される。特にその厚さを0.03〜0.2mm程度としたものは、80%以上の発泡度を有すると共に外観が優れた発泡同軸ケーブルとなる。また符号4は外部導体で、通常銅などの薄板等によって形成される。またその外部には、プラスチック材料のシース(図示せず)等が設けられる。なお、外部導体4を図面のようにコルゲート構造とするのは、可とう性を向上できるので好ましい。
まず、発泡絶縁体層2を形成するEP共重合体或いはEP共重合体混合物について説明する。ここで用いるEP共重合体は、内径2.095mm、長さ8.03mmのキャピラリーを用い、ピストンスピードが10mm/min、炉体径が9.55mm、引取加速度が400m/minでの190℃におけるキャピラリーレオメータによって測定した破断時の溶融張力が5.0g以上であり、且つ190℃、2.16kgにおけるMFRが1.0g/10min以上のEP共重合体を用いるので、内部導体上の絶縁体の全体(発泡絶縁体層2と以下に説明する外層3との全体として)が80%以上の高発泡度であると共に、外観性に優れた発泡同軸ケーブルが得られる。これは用いるEP共重合体或いはEP共重合体混合物が、発泡時に於いて適切な破断時の溶融張力と190℃、2.16kgにおけるMFRを有するため、形成されたセル壁が破れず大きな空泡となることがなく、またセルが十分に成長するので、80%を超える発泡度の発泡同軸ケーブルが安定して確実に得られることになる。このようなEP共重合体の具体例としては、日本ポリプロ社のFB3312、三井化学社のB101WAT、J703W等を挙げることができる。またこのEP共重合体に混合するPEとしては、三井化学社のHizex1300Jや宇部丸善ポリエチレン社のC180等が使用される。
より詳細に説明すると、EP共重合体として、破断時の溶融張力が5.0g以上であり、且つMFRが1.0g/10min以上とするのは、破断時の溶融張力を5g以上とすることによって、発泡させた際にセル壁が破れることがなく、またMFRを1.0g/10min以上とすることにより十分な溶融時の伸長性が得られるので、発泡セルを十分に成長させることができるため、安定して確実に高発泡度を得ることができることになる。また前記EP共重合体は、密度が0.88〜0.92g/cm、MFRが0.3〜15.0g/10min(230℃、2.16kgにおける)のものを使用することによって、前述の特性に加えて、低コストで適度な引張特性、硬度等の機械的特性や電気特性が向上する。またこのような樹脂を用いたことにより、成型加工性が優れたものとなりケーブルの製造上からも有利である。
そして、発泡絶縁体層2の上には、内径2.095mm、長さ8.03mmのキャピラリーを用い、ピストンスピードが10mm/min、炉体径が9.55mm、引取加速度が400m/minで、190℃におけるキャピラリーレオメータによって測定した破断時の溶融張力が6.0〜20.0gであり、且つ190℃、2.16kgにおけるMFRが0.4g/10min以上のポリオレフィン系樹脂が外層3として設けられ、絶縁体全体の発泡度が80%以上となるように発泡される。このような特性のポリオレフィン系樹脂を外層3とするのは、発泡絶縁体層2を発泡させた時の発泡ガスの抜けを十分に防止し、80%以上の発泡度を確実に得ると共に、ケーブル外観を良好なものとするためである。すなわち、外層となるポリオレフィン系樹脂の破断時の溶融張力が6.0g未満であると、破断時の溶融張力が足りないためにガス抜けが生じたり、巨大空泡が生じてしまうため80%以上の高発泡度とならず、また破断時の溶融張力が20.0gを超えると破断時の溶融張力が大きすぎるために膨らみ難くなると共に、樹脂が硬いために押出特性が悪く外観が悪くなるためである。またMFRについても0.4g/10min以上でないと、ポリオレフィン系樹脂の溶融時の伸長性が足りないために、80%以上の発泡度が安定して確実に得られなくなる。このような特性のポリオレフィン系樹脂の具体例としては、宇部丸善ポリエチレン社のR300、B128、Z463、J1019、三井化学社のHizex1300J等のPEが、また日本ポリプロ社のFB3312、三井化学社のB101WAT、J703W等のEP共重合体、プライムポリマー社のE111G等のPPが挙げられる。
そして、外層3は、請求項2に記載されるように、その厚さを0.03〜0.20mmとするのが好ましい。すなわち、外層3の厚さが0.03mm未満であると、発泡絶縁体層2を発泡させた時の発泡ガス抜けを十分に防止することができず、80%以上の高発泡度を有する発泡同軸ケーブルを安定して確実に得られず、また0.20mmを超えると厚すぎるために膨らみ難くなると共に、発泡絶縁体全体の発泡度が小さくなるために80%以上の発泡度が得られなくなるためである。好ましくは、0.05〜0.10mm程度が良い。このように外層として、前述の破断時の溶融張力およびMFRを有するポリオレフィン系樹脂を用いることによって、発泡絶縁体層2を発泡させた時の発泡ガスの抜けを十分に防止して、80%以上の発泡度が得られると共に、外観の優れた発泡同軸ケーブルが得られるようになる。そして発泡絶縁体層2と外層3は、同時押出しによって形成するのが発泡ガスを逃がさないので好ましい。このようにして得られた発泡同軸ケーブルの減衰量は、20Dサイズに於いて62dB/km以下とすることができる。さらに、その上に設けられる外部導体4をコルゲート構造とすることによって、発泡同軸ケーブルに必要な可とう性を持たせることができる。
また、前記外層3を構成するポリオレフィン系樹脂を請求項3に記載されるように、PP、PE或いはEP共重合体、またはこれ等の混合物とすることによって、80%以上の発泡度が確実に安定して得られると共に外観にも優れ、さらに低コストで適度な機械的特性と電気特性を有し、成型加工性にも優れた発泡同軸ケーブルが得られるので、好ましい。具体的には、汎用樹脂であるEP共重合体、PEやPPを用いるためにコスト的に好ましく、また、適度な引張特性、硬度等の機械的特性や電気特性も好ましいものとなる。さらに前記樹脂は、押出成型がし易い等成型加工性にも優れているので、製造上からも有利である。
さらに前記発泡絶縁体層2を形成する混合物として、請求項4に記載するように、前記EP共重合体の含有量が20質量%以上、100質量%未満であるEP共重合体混合物とすることによって、前述した特性に加えて、低温曲げ特性、耐衝撃性や曲げ白化特性を付与することができる。すなわち、PEの添加量を多くすればよりその効果が得られるが、EP共重合体の含有量が20質量%未満となると、破断時の溶融張力やMFRが前記範囲とならず、安定して確実に高発泡度の発泡絶縁体層が得られなくなるためである。例えば、宇部丸善ポリエチレン社のR300、B128、Z463等のPEを用いることによって柔軟性等の特性が向上し、また、三井化学社のEP共重合体であるB101WAT、J703W等や日本ポリプロ社のEP共重合体であるFB3312等を用いることによって、耐つぶれ性(JIS−K6767の圧縮硬さ試験等による)を向上させることができる。さらにこれ等の混合物を用いた場合には、その組合せにより低温曲げ特性、耐衝撃性や曲げ白化特性等を付与することができる。
そして前述の発泡絶縁体(発泡絶縁体層と外層を併せた全体として)は、各種発泡剤によって発泡させることができる。例えば、アゾジカルボンアミド、4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジン)、N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等の化学発泡剤を予め発泡絶縁体層用の材料中に添加しておくことや窒素ガス、アルゴンガス、フロンガス、炭酸ガス等の不活性ガスを注入することによって行われる。化学発泡剤や不活性ガスは併用して使用しても良い。特に不活性ガスによる発泡の場合には、化学発泡剤によって発泡させた場合のように発泡残渣が誘電特性に悪影響を与えることがなく、また高い発泡度を確実に得ることができるので好ましい。また、発泡核剤を添加することが好ましい。例えば、タルク、クレイ、ボロンナイトライド(BN)、シリカ等の微粉末、さらにアゾジカルボンアミドやフッ素系樹脂の微粉末或いはフッ素系ゴムの微粉末である。その添加量は、通常ベース樹脂100質量部に対して0.05〜3.0質量部程度である。
さらに発泡絶縁体層には、例えば3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール(商品名:CDA−1)、2′,3−ビス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]プロピオノヒドラジド(商品名:イルガノックスMD1024)等の金属不活性剤、N,N′−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン(商品名:ノクラックWhite)のようなアミン系酸化防止剤、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1010)などのヒンダードフェノール系酸化防止剤や4,4′−チオビス(3−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)(商品名ノクラック300)などのチオビスフェノール系酸化防止剤を添加することができる。
なお、前述の発泡絶縁体層と外層は、同時押出しによって内部導体上に形成することにより、安定して確実に80%以上の発泡度の発泡絶縁体を形成できる。例えば、二段押出機の第2押出機から発泡絶縁体層を形成する材料を第1押出機に供給し、第1押出機の途中から窒素ガスを注入して溶融混合し、第2押出機に於いて温度調整を行った後、内部導体上に発泡絶縁体層を押出しすると同時に、第2押出機のクロスヘッド内に入れ込んだ第3押出機から外層を形成する材料を前記発泡絶縁体層上に被覆し、この状態で発泡させて発泡同軸ケーブルを作製する。このように、発泡絶縁体層と外層を同時押出しすると共に発泡させることによって、80%以上の高発泡度の発泡同軸ケーブルを確実に形成することができる。このようにして得られた発泡同軸ケーブルは、例えば20Dサイズに於いて減衰量を62dB/km以下とすることができる。また外層を設けたことによって、外観性もより良好な発泡同軸ケーブルである。
表1および2に記載する実施例および比較例によって、本発明の効果を示す。二段押出機の第2押出機から発泡絶縁体層を形成するペレット材料として、表1に示した発泡絶縁体層用の樹脂ペレット材料と発泡核剤として富士タルク社のタルク微粉末(LMS−300)をドライブレンドし、これを230℃に調整した第1押出機に供給し、第1押出機の途中から窒素ガスを注入して溶融混合し、第2押出機で170℃程度に温度調整した後、Φ9mmの銅線からなる内部導体上に押出しすると同時に、第2押出機のクロスヘッド内に組み込み140〜200℃に調整した第3押出機から、外層を形成するペレット材料を前記発泡絶縁体層上に被覆し、この状態で発泡させて発泡同軸ケーブルを作製した。
これらの発泡同軸ケーブルについて、発泡絶縁体の発泡度(%)を[(ベース樹脂の比重−発泡後の比重)/(ベース樹脂の比重)]×100として計算した。発泡度が80%以上のものを合格とした。さらに併せて、最大発泡倍率を[(1/100−発泡度)×100]で求めて何倍かで示した。5倍以上が好ましいものである。また、ケーブル外観については、表面に凹凸がなく滑らかなものを◎印で、やや凹凸が見られるが実用上問題がないものを○印で、使用可能ではあるが凹凸が見られ、外観性としては多少難があるものを△印で、凹凸が明確に存在しており使用できないものを×印で示した。併せて、外観性の指標となるVSWR(Voltage standing wave ratio)をネットワークアナライザーによって測定した。1.20未満が好ましいものである。さらに、ネットワークアナライザーを用いて、2.2GHzにおける20Dサイズの発泡同軸ケーブルの減衰量を測定した。減衰量が62dB/km以下を好ましいものとした。また、前記各種樹脂の破断時の溶融張力(Φ2.095mm×8.03mmのキャピラリーを用い、ピストンスピードが10mm/min、炉体径が9.55mm、引取加速度が400m/minでの190℃におけるキャピラリーレオメータによって測定。)およびMFRの値を記載した。なおMFRは、190℃、2.16kgで測定した値である。表1に実施例の結果を、表2に比較例の結果を記載した。
Figure 2006253114
Figure 2006253114
表1の実施例に記載される本発明の発泡同軸ケーブルは、発泡度が80%以上(発泡倍率は5.0倍以上)の高発泡度であると共に、表面には凹凸が見られず、またVSWRも1.11とケーブル外観性に優れたものである。さらに、減衰量も59dB/km以下と優れたものである。すなわち、実施例1〜4に記載するように、Φ2.095mm×8.03mmのキャピラリーを用い、ピストンスピードが10mm/min、炉体径が9.55mm、引取加速度が400m/minでの190℃におけるキャピラリーレオメータによって測定した破断時の溶融張力が10.0gで、且つMFRが2.0g/10min(190℃、2.16kg)のEP共重合体を用いた発泡絶縁体層上に、前記と同様に測定した破断時の溶融張力が10.0gであり、MFRが1.0g/10min(190℃、2.16kg)のPEの外層を、厚さ0.03〜0.20mmに形成した発泡同軸ケーブルは、いずれも発泡度が86%以上(発泡倍率が7.1倍以上)で、表面には殆ど凹凸が見られず、VSWRも1.11以下とケーブル外観性に優れたものである。さらに、減衰量が59dB/km以下と好ましいものであった。また実施例5〜8に示すように、破断時の溶融張力並びにMFRが実施例1〜4と同様のEP共重合体を用いた発泡絶縁体層上に、破断時の溶融張力が7.0〜20.0gで、MFRが0.4〜3.0g/10minのPE(実施例5、7)或いはEP共重合体(実施例6、8)を、厚さ0.10mmに形成した発泡同軸ケーブルは、発泡度が86%以上(発泡倍率が7.1倍以上)で、表面には殆ど凹凸が見られず、VSWRも1.13以下とケーブル外観性に優れたものである。さらに、減衰量が59dB/km以下と好ましいものであった。
また実施例9〜13に示すように、発泡絶縁体層がEP共重合体とPEの混合物の場合も、発泡度、ケーブル外観、VSWR、および減衰量が優れた発泡同軸ケーブルであった。すなわち、EP共重合体含有量が20〜99質量%、PE含有量が1〜80質量%の混合物であって、破断時の溶融張力が7.0g、MFRが3.0g/10min(実施例9)、破断時の溶融張力が6.0g、MFRが4.0g/10min(実施例10)、破断時の溶融張力が5.0g、MFRが8.0g/10min(実施例11)、破断時の溶融張力が12.0g、MFRが1.0g/10min(実施例12)、破断時の溶融張力が10.0g、MFRが2.0g/10min(実施例13)のEP共重合体混合物を用いた発泡絶縁体層上に、破断時の溶融張力が10.0g、MFRが1.0g/10minのPEを、厚さ0.10mmに形成した発泡同軸ケーブルは、発泡度が83%以上で、表面には殆ど凹凸が見られず、VSWRも1.10以下とケーブル外観性に優れたものである。また、減衰量も59dB/km以下と好ましいものである。さらに、実施例14に示すように、破断時の溶融張力が10.0g、MFRが2.0g/10minのEP共重合体を用いた発泡絶縁体層上に、破断時の溶融張力が6.0gでMFRが3.0g/10minのEP共重合体とPEの混合物からなる外層を、0.10mm厚さに形成した発泡同軸ケーブルは、発泡度が89%以上(発泡倍率が5.9倍以上)で、表面には殆ど凹凸が見られず、VSWRも1.10とケーブル外観性に優れたものである。また、減衰量も56dB/kmであり好ましいものであった。さらに、実施例15に示すように、破断時の溶融張力が10.0g、MFRが2.0g/10minのEP共重合体を用いた発泡絶縁体層上に、破断時の溶融張力が11.0gでMFRが0.4g/10minのPPからなる外層を、0.10mm厚さに形成した発泡同軸ケーブルは、発泡度が88%以上(発泡倍率が8.3倍以上)で、表面には殆ど凹凸が見られず、VSWRも1.09とケーブル外観性に優れたものである。また、減衰量も57dB/kmであり好ましいものであった。
これに対して、表2に示す比較例の発泡同軸ケーブルは、発泡度(および発泡倍率)、ケーブル外観、VSWRおよび減衰量のいずれかに問題がある。すなわち、発泡絶縁体層を構成するEP共重合体(比較例1〜6)或いはEP共重合体混合物(比較例7および8)のように、破断時の溶融張力およびMFRの値が本発明の範囲内あり、比較例1のように外層の厚さは本発明の範囲内であっても、用いるPEの破断時の溶融張力が25.0gと大きく、またMFR0.2g/10minと小さい場合には、発泡度が79%、ケーブルの減衰量が62dB/kmとなり問題がある。また比較例2のように、外層の厚さは本発明の範囲内であっても、用いるPEの破断時の溶融張力が3.0gと小さく、またMFR10.0g/10minと大きい場合には、発泡度(および発泡倍率)並びに減衰量は合格するが、ケーブル表面に凹凸が見られ、VSWRも1.16と若干外観性が問題となる。さらに比較例3のように、外層の厚さ並びにMFRの値は本発明の範囲内であっても、用いるEP共重合体の破断時の溶融張力が2.0gと小さい場合は、発泡度(および発泡倍率)並びに減衰量は合格するがケーブル表面に凹凸が見られ、VSWRが1.18と外観性がやや問題となる。また比較例4のように、外層の厚さが0.02mmと薄くなると、用いるPEの破断時の溶融張力並びにMFR値が本発明の範囲内であっても、やはりケーブル表面に凹凸が見られ、VSWRが1.16と外観性がやや問題となる。比較例5のように、外層の厚さが0.30mmのように厚くなると、用いるPEの破断時の溶融張力並びにMFR値が本発明の範囲内であっても、発泡度が79%、減衰量が62dB/kmとなって問題があった。また、比較例6のように外層を設けない場合は、発泡度(89%)および減衰量(56dB/km)は合格するが、ケーブル表面に凹凸が見られ、VSWRが1.19と外観性が問題となる。比較例7のように、外層が本発明の範囲内(厚さ0.20mm)であっても、発泡絶縁体層が本発明の範囲外のEP共重合体混合物(EP共重合体含有量が15質量%)を使用した場合には、発泡度が76%(発泡倍率が4.2倍)であり、ケーブル表面に凹凸が見られVSWRが1.30となり、外観が不合格となる。また、ケーブルの減衰量も65dB/kmとなって問題があった。さらに比較例8のように、外層は本発明の範囲内(厚さ0.03mm)であっても、発泡絶縁体層として本発明の範囲外のEP共重合体混合物(EP共重合体含有量が15質量%)を使用した場合には、発泡度が74%(発泡倍率が3.8倍)と低く、ケーブル表面に凹凸が見られVSWRが1.40となり、外観が不合格となる。また、ケーブルの減衰量も67dB/kmとなって問題があった。さらに比較例9のように、外層は本発明の範囲内(厚さ0.10mm)であっても、発泡絶縁体層として本発明の範囲外のPP(破断時の溶融張力が4.0g)を使用した場合には、ケーブル表面に凹凸が見られ、VSWRが1.16となり外観にやや問題がある。
本発明の発泡同軸ケーブルは、80%以上の発泡度の絶縁体を確実に形成できると共に外観性に優れているので、高周波帯域(1GHz以上)での減衰量が小さく品質が優れているので、種々の用途の高周波同軸ケーブルとして使用することができる。
本発明の発泡同軸ケーブルの一例を示す概略断面斜視図である。
符号の説明
1 内部導体
2 発泡絶縁体層
3 外層
4 コルゲート構造の外部導体

Claims (4)

  1. 内部導体上に、内径2.095mm、長さ8.03mmのキャピラリーを用い、ピストンスピードが10mm/min、炉体径が9.55mm、引取加速度が400m/minで、190℃におけるキャピラリーレオメータで測定した破断時の溶融張力が5.0g以上であり、且つ190℃、2.16kgにおけるメルトマスフローレートが1.0g/10min以上のエチレン・プロピレン共重合体または前記エチレン・プロピレン共重合体とポリエチレンとの混合物からなる発泡絶縁体層、その上に内径2.095mm、長さ8.03mmのキャピラリーを用い、ピストンスピードが10mm/min、炉体径が9.55mm、引取加速度が400m/minで、190℃におけるキャピラリーレオメータによって測定した破断時の溶融張力が6.0〜20.0gであり、且つ190℃、2.16kgにおけるメルトマスフローレートが0.4g/10min以上のポリオレフィン系樹脂が外層として設けられ、絶縁体全体の発泡度が80%以上となるように発泡されたことを特徴とする発泡同軸ケーブル。
  2. 前記外層の厚さが、0.03〜0.20mmであることを特徴とする請求項1に記載の発泡同軸ケーブル。
  3. 前記外層を構成するポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、またはこれ等の混合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の発泡同軸ケーブル。
  4. 前記発泡絶縁体層を形成する混合物は、前記エチレン・プロピレン共重合体の含有量が20質量%以上、100質量%未満の混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発泡同軸ケーブル。
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