JP2006250120A - ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】排気浄化装置による排気清浄化のため排気温度を上昇させるかまたは空燃比をリッチ化するときに、燃費の悪化とスモークの増加を最小限に抑える燃焼を実現する。
【解決手段】排気通路に設けられる排気浄化装置(16、17)と、エンジンの燃焼室に燃料を直接的に噴射可能でかつ燃料噴射を2回以上に分割して噴射可能な可変燃料噴射装置(10)と、前記排気浄化装置(16、17)が通常時の状態にあるのかそれとも通常時以外の状態にあるのかを検出する排気浄化装置状態検出手段(30)とを備え、前記排気浄化装置状態検出手段(30)の検出結果より排気浄化装置(16、17)が通常時以外の状態にある場合に、圧縮上死点近傍での燃料噴射と、膨張行程での少なくとも1回の燃料噴射とで構成される複数回の燃料噴射を実行する燃料噴射実行手段(30)と、この複数回の燃料噴射により生じる燃焼全体における予混合燃焼と拡散燃焼の比率を任意に変化させる制御手段(30)とを備える。
【選択図】図1
【解決手段】排気通路に設けられる排気浄化装置(16、17)と、エンジンの燃焼室に燃料を直接的に噴射可能でかつ燃料噴射を2回以上に分割して噴射可能な可変燃料噴射装置(10)と、前記排気浄化装置(16、17)が通常時の状態にあるのかそれとも通常時以外の状態にあるのかを検出する排気浄化装置状態検出手段(30)とを備え、前記排気浄化装置状態検出手段(30)の検出結果より排気浄化装置(16、17)が通常時以外の状態にある場合に、圧縮上死点近傍での燃料噴射と、膨張行程での少なくとも1回の燃料噴射とで構成される複数回の燃料噴射を実行する燃料噴射実行手段(30)と、この複数回の燃料噴射により生じる燃焼全体における予混合燃焼と拡散燃焼の比率を任意に変化させる制御手段(30)とを備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置に関する。
従来、ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置として、排気通路に設けている触媒の活性を高めるため排気温度の上昇を促すときなどに、圧縮上死点近傍での燃料噴射と、膨張行程での少なくとも1回の燃料噴射とで構成される複数回の燃料噴射を実行し、その際エンジンの要求トルクを満足させて排気温度を昇温させるために複数回の燃料噴射の総燃料噴射量を圧縮上死点近傍での一括燃料噴射の燃料噴射量よりも増量するものがある(特許文献1参照)。
特開2000−320386号公報
しかしながら、特許文献1に記載の装置においては、複数回の燃料噴射による燃焼が継続するように、圧縮上死点近傍での燃料噴射による燃焼中に、膨張行程での少なくとも1回の燃料噴射を実行することが必要である。
この結果、膨張行程での少なくとも1回の燃料噴射による燃焼が、拡散燃焼主体の燃焼となることから、排気通路に設けている触媒(排気浄化装置)の再生処理などのため排気を昇温させているかまたは空燃比をリッチ化させている場合において、特にエンジン負荷(燃料噴射量)が増大するときにスモークが増加してしまう。
そこで本発明は、排気通路に設けている排気浄化装置による排気清浄化のため、排気温度を上昇させるかまたは空燃比をリッチ化するときに、燃費の悪化とスモークの増加を最小限に抑える燃焼を実現する装置を提供することを目的とする。
本発明は、排気通路に設けられる排気浄化装置と、エンジンの燃焼室に燃料を直接的に噴射可能でかつ燃料噴射を2回以上に分割して噴射可能な可変燃料噴射装置と、前記排気浄化装置が通常時の状態にあるのかそれとも通常時以外の状態にあるのかを検出する排気浄化装置状態検出手段とを備え、前記排気浄化装置状態検出手段の検出結果より排気浄化装置が通常時以外の状態にある場合に、圧縮上死点近傍での燃料噴射と、膨張行程での少なくとも1回の燃料噴射とで構成される複数回の燃料噴射を実行し、この複数回の燃料噴射により生じる燃焼全体における予混合燃焼と拡散燃焼の比率を任意に変化させるように構成する。
本発明によれば、排気浄化装置が通常時以外の状態にある場合に、圧縮上死点近傍での燃料噴射と、膨張行程での少なくとも1回の燃料噴射とで構成される複数回の燃料噴射を実行し、この複数回の燃料噴射により生じる燃焼全体における予混合燃焼と拡散燃焼の比率を任意に変化させるので、スモーク増加を最小限にすることを優先するとき(高負荷運転条件)には予混合燃焼の比率を高め(拡散燃焼の比率を低くする)、この逆にスモーク増加よりも燃焼安定性を優先させるとき(低負荷運転条件)には拡散燃焼の比率を高める(予混合燃焼の比率を低くする)等、排気通路に設けている排気浄化装置による排気清浄化のための排気温度の上昇や空燃比のリッチ化を実現しながら、スモーク増加を最小限にでき、燃焼安定化により燃費の悪化を防ぐことができる。
以下、この発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の燃焼制御装置を備えたディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」ともいう。)の概略構成図である。
図1において、エンジン本体より排気通路3の上流側部分を構成する排気出口通路3aに出た排気は過給機のタービン3bへと流れる。
排気の一部を吸気通路へと還流するため、排気出口通路3aと吸気通路2の吸気コレクタ2cとを連通する排気還流通路(EGR通路)4と、このEGR通路4の流路面積を連続的に制御可能なEGR弁5とからなるEGR装置(排気還流装置)が設けられている。
吸気通路2には上流位置にエアクリーナ2aが、その下流に過給機のコンプレッサ2bが配置されている。
このコンプレッサ2bと吸気コレクタ2cとの間にはアクチュエータ(例えばステッピングモータ式)によって開閉駆動される吸気絞り弁6が介装されている。この吸気絞り弁6は上記のEGR弁5と共にEGR量(EGR率)の制御に用いられる。
上記タービン3bを通過した排気は、タービン3b下流に配置されているNOxトラップ触媒16(以下単に「触媒」という。)へと流れる。触媒16は排気の空燃比がリーンのときに排気中のNOxをトラップし、排気空燃比がリッチのときに触媒16にトラップしているNOxを脱離するともに、空燃比がリッチのときにリッチ雰囲気中のHC、COを還元剤として用いてその脱離したNOxを脱離浄化するものである。この触媒16には、酸化触媒(貴金属)を担持させて、流入する排気成分(HC、CO)を酸化する機能をも持たせてある。
触媒16の下流には、排気中のパティキュレート(このパティキュレートを以下「PM」いう。)を捕集するフィルタ(以下このフィルタを「DPF」という。)17を配置している。このDPF17にも、酸化触媒(貴金属)を担持させて、流入する排気成分(HC、CO)を酸化する機能を持たせてある。
なお、触媒16とDPF17とは逆に配置してもよいし、DPFにNOxトラップ触媒を担持させて一体に構成してもよい。また、いずれか一方だけを配置した構成としてもかまわない。触媒16、DPF17はいずれも排気浄化装置である。
エンジン1の燃料噴射装置10(可変燃料噴射装置)は、公知のコモンレール式燃料噴射装置であって、サプライポンプ11と、コモンレール(蓄圧室)14と、気筒毎に設けられた燃料噴射弁15とから大略構成され、サプライポンプ11により加圧された燃料が燃料供給通路12を介してコモンレール14にいったん蓄えられたあと、コモンレール14内の高圧燃料が各気筒の燃料噴射弁15に分配される。
上記コモンレール14には、コモンレール14内の燃料圧力および燃料温度を検出するために、燃料圧力センサ34および燃料温度センサ35が設けられている。また、コモンレール14内の燃料圧力を目標値に制御するために、サプライポンプ11からの吐出燃料の一部が、図示しないオーバーフロー通路を介してから燃料供給通路に戻されるようになっている。詳しくは、オーバーフロー通路の流路面積を変える圧力制御弁13が設けられており、この圧力制御弁13がエンジンコントロールユニット30からのデューティ信号に応じてオーバーフロー通路の流路面積を変化させる。これにより、サプライポンプ11からコモンレール14への実質的な燃料吐出量が調整され、コモンレール14内の燃料圧力が目標値へと制御される。
燃料噴射弁15は、エンジンコントロールユニット30からのON−OFF信号によって開閉される電子式の噴射弁であって、ON信号によって燃料を燃焼室に噴射し、OFF信号によって噴射を停止する。そして、燃料噴射弁15へ印加されるON信号の期間が長いほど燃料噴射量が多くなり、またコモンレール14の燃料圧力が高いほど燃料噴射量が多くなる。
エンジンコントロールユニット30には、上記燃料圧力センサ34からのコモンレール圧力(コモンレール14の燃料圧力)Pcrの信号、燃料温度センサ35からの燃料温度Tfの信号のほかに、水温センサ31からの冷却水温Twの信号、クランク角度検出用クランク角センサ32からのクランク角度(エンジン回転速度Neの基礎となる)の信号、気筒判別用クランク角センサ33からの気筒判別信号Cyl、アクセル開度センサ36からのアクセル開度(アクセルペダルの踏み込み量のこと)Acc(エンジン負荷相当)の信号、エアフローメータ7からの吸入空気量Qairの信号がそれぞれ入力される。
また、触媒温度センサ37からの触媒16の温度T1の信号、排気圧力センサ38からのDPF17の入口側排気圧力P1の信号、DPF温度センサ39からのDPF17の温度T2の信号、空燃比センサ40からのDPF17出口の排気の空燃比(この空燃比より空気過剰率が算出される)の信号もエンジンコントロールユニット30に入力されている。
ただし、触媒16の温度やDPF17の温度はこれら触媒16、DPF17の下流側などに排気温度センサを設けてその各排気温度より触媒16の温度やDPF17の温度を間接的に検出するようにしてもよい。
エンジンコントロールユニット30では、これらの入力信号に基づいて、燃料噴射の噴射量制御及び噴射時期制御のための燃料噴射弁15への燃料噴射指令信号、吸気絞り弁6への開度指令信号、EGR弁5への開度指令信号等を出力する。具体的には、これらの入力信号に基づいて、エンジン基本制御を行うと共に触媒16の暖機促進処理を行うほか、次の4つの処理からなる排気浄化制御を行う。
〈1〉DPF再生処理、
〈2〉リッチスパイク処理、
〈3〉S被毒解除処理、
〈4〉DPF溶損防止処理、
ここで、上記〈1〉のDPF再生処理は、DPF17に捕集されて堆積したPMの量(この堆積したPMの量を、以下単に「PM堆積量」という。)が所定値PM1を超えたときに排気の空気過剰率と排気温度とを後述する値に制御してこの堆積したPMを燃焼除去させる処理のことである。これによってDPF17はPMの堆積していない状態へと戻る(DPF17の再生)。
〈2〉リッチスパイク処理、
〈3〉S被毒解除処理、
〈4〉DPF溶損防止処理、
ここで、上記〈1〉のDPF再生処理は、DPF17に捕集されて堆積したPMの量(この堆積したPMの量を、以下単に「PM堆積量」という。)が所定値PM1を超えたときに排気の空気過剰率と排気温度とを後述する値に制御してこの堆積したPMを燃焼除去させる処理のことである。これによってDPF17はPMの堆積していない状態へと戻る(DPF17の再生)。
上記〈2〉のリッチスパイク処理は触媒16にトラップされて堆積したNOxの量(このトラップされたNOxの量を、以下単に「NOx堆積量」という。)が所定値NOx1を超えたときに排気の空気過剰率と排気温度とを後述する値に制御して触媒16にトラップされているNOxを触媒16より脱離しつつ排気中のHC、COを還元剤として用いて還元浄化させる処理のことである。これによって触媒16はNOxの堆積していない状態へと戻る(触媒16の再生)。
上記〈3〉のS被毒解除処理は、触媒16に付着して堆積したS(硫黄分)の量(この付着したS量を、以下単に「S堆積量」という。)が所定値S1を超えたときに、排気の空気過剰率と排気温度とを後述する値に制御して触媒16に付着しているSを高温で吹き飛ばす処理である。
上記〈4〉のDPF溶損防止処理は、後述するように、DPF再生処理が終了したタイミングでDPF17にPMの燃え残りがあった場合にも、通常のリーン運転に戻すため排気の空気過剰率を1.4を超える値へと急に大きくしたのでは、燃え残ったPMが一気に再燃焼してDPF17の急激な温度上昇を招きDPF17が溶損する、という可能性を回避するために行うものである。
さて、エンジンの基本制御中、エンジンは通常、排気の空気過剰率が1.4を超えるリーン燃焼で運転される。
これに対して、上記〈1〉のDPF再生処理を行う場合には、排気の空気過剰率を1.1〜1.4 の間で制御しかつDPF温度T2を約600℃以上(上限温度は約650℃)に制御する必要がある。上記〈2〉のリッチスパイク処理を行う場合には、排気の空気過剰率を約0.8程度(空燃比をリッチ)にしかつ触媒16の温度T1を最低でも約200℃以上(十分な活性を得るためには約220℃以上)に制御する必要がある。上記〈3〉のS被毒解除処理を行う場合には排気の空気過剰率を1.0(理論空燃比)にし、かつ触媒16の温度T1を600℃以上(上限温度は触媒16の熱劣化を防ぐため約700℃)に制御する必要がある。
このように、DPF再生処理やS被毒解除処理等を実行する際には約600℃以上の高排気温度を実現したり高排気温度で1.4以下の低空気過剰率を実現することが必須であり、通常のリーン運転状態から吸気を絞る等により筒内作動ガス量を減じて運転する必要がある。
ところが、作動ガス量を減じると筒内の圧縮端温度が低下してしまうことから、通常のリーン燃焼と同じ噴射設定では燃焼が不安定となり、甚だしい場合は失火を生じるため、エンジンの出力制御が困難となって高排気温度や低空気過剰率を実現することは難しい。
そこで 特許文献1では、エンジンの要求トルクを満足させつつ排気温度を上昇させるために、圧縮上死点近傍での燃料噴射と、膨張行程での少なくとも1回の燃料噴射とで構成される複数回の燃料噴射を実行すると共に、複数回の燃料噴射の総燃料噴射量を圧縮上死点近傍での一括燃料噴射の燃料噴射量よりも増量している。この従来技術は燃焼の安定性を悪化させることなく噴射期間を拡大することを狙ったもので、これにより高排気温度や低空気過剰率の実現を図っている。
このような従来技術において、具体的に3回の燃料噴射を行う場合の噴射波形を図2第3段目に示すと、Mp1は圧縮上死点を挟んでの燃料噴射(この圧縮上死点を挟んでの燃料噴射を以下「先頭噴射」という。)の噴射期間、Mp2は膨張行程での1回目の燃料噴射(この膨張行程での1回目の燃料噴射を以下「2回目噴射」という。)の噴射期間、Mp3は膨張行程での2回目の燃料噴射(この膨張行程での2回目の燃料噴射を以下「3回目噴射」という。)の噴射期間で、3つの噴射期間とも同じにしている(Mp1=Mp2=Mp3)。参考のため、圧縮上死点近傍での一括噴射(通常噴射)の場合の噴射波形を図2第2段目に、またパイロット噴射(主噴射に先行して圧縮行程で小量の燃料を噴射させて燃焼させ主噴射燃料の着火燃焼性を高めるためのもの)を行う場合の噴射波形を図2最上段に示している。また、図2最下段には、図2最上段のようにパイロット噴射を行う場合、図2第2段目のように通常噴射(単段噴射)を行う場合、図2第3段目のように従来の3回の燃料噴射(従来の分割噴射)を行う場合の熱発生率dQ/dθの特性を重ねて示している。
しかしながら、従来の分割噴射においては、先頭噴射燃料による燃焼が継続している間に(火炎中に)2回目噴射燃料、3回目噴射燃料を続けて噴射させることが必要で、図2最上段に示すパイロット噴射を行う場合や、図2第2段目に示す単段噴射を行う場合と異なり、2回目噴射燃料、3回目噴射燃料による燃焼が拡散燃焼主体の燃焼となってしまうことから、DPF再生処理やS被毒解除処理等のため排気温度を上昇させたり空燃比をリッチ化させたりしている場合において、特にエンジンの負荷(燃料噴射量)が増大するときにスモーク増加が大きくなり易く、この増加するスモークを低減することが大きな課題であった。
そこで、本発明では主噴射燃料について図3上2段(2回の燃料噴射を行う場合)や図4上3段(3回の燃料噴射を行う場合)で示すような分割噴射を行う。すなわち、本発明でも従来の分割噴射の場合と同じに分割総噴射量を、圧縮上死点での一括噴射(通常噴射)の燃料噴射量よりも増量すると共に、スモーク濃度がもともと十分低いものの圧縮着火性が比較的低く、排気温度が低くて昇温要求代が大きい低負荷運転条件においては、燃焼安定性を優先させるため、複数回の燃料噴射によって発生する燃焼全体における拡散燃焼の比率を予混合燃焼の比率よりも相対的に高くする。一方、圧縮着火性は比較的高いもののスモークが増加しやすく、排気温度が比較的高くて昇温要求代が小さい高負荷運転条件になると、スモークの増加を防止することを優先させるため、複数回の燃料噴射によって発生する燃焼全体における予混合燃焼の比率を拡散燃焼の比率よりも相対的に高くする。
このため、分割噴射としてまず2回の燃料噴射を行う場合には、低負荷運転条件のとき図3第2段目に示したように先頭噴射の噴射期間MP1を2回目噴射の噴射期間Mp2より短くする。言い換えると、予混合燃焼が主体になる先頭噴射の燃料噴射量比率を小さくする。この結果、先頭噴射の噴射開始から2回目噴射の噴射開始までの間隔ΔIT1(分割噴射における第1噴射間隔)は、図3第3段目に示す従来の分割噴射の場合より短くなる。
一方、高負荷運転条件になると、図3最上段に示したように先頭噴射の噴射期間MP1を2回目噴射の噴射期間Mp2より長くする。言い換えると、予混合燃焼が主体になる先頭噴射の燃料噴射量比率を大きくする。この結果、先頭噴射の噴射開始から2回目噴射の噴射開始までの間隔ΔIT1(分割噴射における第1噴射間隔)は、図3第3段目に示す従来の分割噴射の場合より長くなる。
なお、図3の上3段では、簡単のため低負荷運転条件のときと高負荷運転条件のときとで先頭噴射の噴射開始より2回目噴射の噴射終了までの期間を同じに記載しているが、実際には高負荷運転条件のときのほうが2回目噴射の噴射終了が、低負荷運転条件のときより遅くなる。従って、図3の上3段の見方としては、低負荷運転条件のとき第2段目と第3段目とが同じスケールであり、高負荷運転条件のとき最上段と第3段目とが同じスケールであるとみなせばよい。このとき、低負荷運転条件、高負荷運転条件に関係なく、先頭噴射の噴射終了より2回目噴射の噴射開始までの間隔を従来の分割噴射の場合と同じにしている。
分割噴射としてこのような2回の燃料噴射を行ったとき、低負荷運転条件では図3最下段に一点鎖線で示したように、熱発生率dQ/dθのピークが、実線で示す従来の分割噴射の場合より低下し、そのぶんピーク後の傾きが従来の分割噴射の場合より緩やかになっている。一方、高負荷運転条件では、図3最下段に破線で示したように、熱発生率dQ/dθのピークが、実線で示す従来の分割噴射の場合より上昇し、そのぶんピーク後の傾きが従来の分割噴射の場合より急激になっている。
次に、分割噴射として3回の燃料噴射を行う場合には、低負荷運転条件のとき図4第3段目に示したように先頭噴射の噴射期間MP1を2回目噴射の噴射期間Mp2より短くしかつ2回目噴射の噴射期間Mp2を3回目噴射の噴射期間Mp3より短くする。言い換えると、予混合燃焼が主体になる先頭噴射の燃料噴射量比率を2回目噴射よりも小さくしかつ2回目噴射の燃料噴射量比率を3回目噴射より小さくする。この結果、先頭噴射の噴射開始から2回目噴射の噴射開始までの間隔ΔIT1(第1噴射間隔)、先頭噴射の噴射開始から3回目噴射の噴射開始までの間隔ΔIT2(第2噴射間隔)とも、図4第4段目に示す従来の分割噴射の場合より短くなる。
一方、高負荷運転条件のとき図4最上段に示したように先頭噴射の噴射期間MP1を2回目噴射の噴射期間Mp2より長くしかつ2回目噴射の噴射期間Mp2を3回目噴射の噴射期間Mp3より長くする。言い換えると、予混合燃焼が主体になる先頭噴射の燃料噴射量比率を2回目噴射よりも大きくしかつ2回目噴射の燃料噴射量比率を3回目噴射より大きくする。この結果、先頭噴射の噴射開始から2回目噴射の噴射開始までの間隔ΔIT1(第1噴射間隔)、2回目噴射の噴射開始から3回目噴射の噴射開始までの間隔ΔIT2(第2噴射間隔)とも、図4第4段目に示す従来の分割噴射の場合より長くなる。
なお、図4の上4段でも、簡単のため低負荷運転条件のときと、中負荷運転条件のときと、高負荷運転条件のときとで先頭噴射の噴射開始より3回目噴射の噴射終了までの期間を同じに記載しているが、実際には高負荷運転条件のときのほうが低負荷運転条件のときより、3回目噴射の噴射終了が遅くなる。従って、図4の上4段の見方としても、低負荷運転条件のとき第3段目と第4段目とが同じスケールであり、中負荷運転条件のとき第2段目と第4段目とが同じスケールであり、高負荷運転条件のとき最上段と第4段目とが同じスケールであるとみなせばよい。このとき、高負荷運転条件では、先頭噴射の噴射終了より2回目噴射の噴射開始までの間隔を従来の分割噴射の場合より長くしかつ2回目噴射の噴射終了より3回目噴射の噴射開始までの間隔を従来の分割噴射の場合より短くしている。また、低負荷運転条件では、先頭噴射の噴射終了より2回目噴射の噴射開始までの間隔を従来の分割噴射の場合より短くしかつ2回目噴射の噴射終了より3回目噴射の噴射開始までの間隔を従来の分割噴射の場合より長くしている。
分割噴射として3回の燃料噴射を行う場合には図4最下段に示したように熱発生率dQ/dθに2つのピークが生じるのであるが、本発明による3回の燃料噴射によれば、低負荷運転条件で図4最下段に一点鎖線で示したように、熱発生率dQ/dθの1回目のピークが、実線で示す従来の分割噴射の場合より低下し、そのぶん熱発生率dQ/dθの2回目のピークが従来の分割噴射の場合より上昇している。一方、高負荷運転条件では、図4最下段に短破線で示したように、熱発生率dQ/dθの1回目のピークが、実線で示す従来の分割噴射の場合より上昇し、2回目のピークがそのぶん従来の分割噴射の場合より下降している。
なお、分割噴射として3回の燃料噴射を行う場合において中負荷運転条件のときには、3回の燃料噴射によって発生する燃焼全体における予混合燃焼の比率を、低負荷運転時より相対的に高くしかつ高負荷運転時よりは相対的に小さくするため、図4第2段目に示したように、3つの噴射期間Mp1、Mp2、Mp3を全て同じにする点では従来の分割噴射の場合と同じでありながら、先頭噴射の噴射終了より2回目噴射の噴射開始までの間隔を従来の分割噴射の場合より長くし、かつ2回目噴射の噴射終了より3回目噴射の噴射開始までの間隔を従来の分割噴射の場合より短くする。
中負荷運転条件でこのような3回の燃料噴射を行ったとき、図4最下段に長破線で示したように、熱発生率dQ/dθの特性も、低負荷運転時の特性を示す短破線と、高負荷運転時の特性を示す一点鎖線とのちょうど中間的な特性となっている。
このようにして、本発明では低負荷運転条件のときに複数回の燃料噴射によって発生する燃焼全体における拡散燃焼の比率を予混合燃焼の比率よりも相対的に高くすることにより、燃料噴射量の増加比率を高くして噴射時期のリタード限界が拡大できるため、エンジンの出力制御性を損なうことなく高排気温度や低空気過剰率を実現することができる。一方、高負荷運転条件のときに本発明では複数回の燃料噴射によって発生する燃焼全体における予混合燃焼の比率を拡散燃焼の比率よりも相対的に高くすることにより、スモークの増加を最小限にして目標とする高排気温度や低空気過剰率を実現することができる。
次に、DPF再生処理やS被毒解除処理を速やかに終了させるためには、目標とする高排気温度及び目標とする低空気過剰率を短時間で実現することが望ましい。
このため本発明では、DPF再生処理の初期段階やS被毒解除処理の初期段階において、図5上2段に示すような分割リタード噴射を実行する。すなわち、低負荷運転条件のときには、図5第2段目に示すように、燃料噴射量を、図4第3段目に示した本発明に係る分割噴射の分割総噴射量よりさらに増量し、その増量分の燃料を3回目(最終回)噴射の燃料噴射量に加算する。このとき、3回目噴射の噴射期間Mp3は図4第3段目に示した本発明に係る分割噴射の場合より大きくなる。そして、3回目噴射燃料による燃焼を先行の噴射燃料(先頭噴射燃料及び2回目噴射燃料)による燃焼の終了後に発生させるため3回目噴射の噴射開始時期を、図4第3段目に示した本発明に係る分割噴射の場合より所定の期間(図では「Retard」)リタードさせる。比較のため、図5第2段目において、図4第3段目に示した本発明に係る分割噴射における3回目噴射を破線で示している。
一方、高負荷運転条件でも、図5最上段に示すように、燃料噴射量を、図4最上段に示した本発明に係る分割噴射の分割総噴射量よりさらに増量し、その増量分の燃料を3回目(最終回)噴射の燃料噴射量に加算する。このとき、3回目噴射の噴射期間Mp3は図4最上段に示した本発明に係る分割噴射の場合より大きくなる。そして、3回目噴射燃料による燃焼を先行の噴射燃料(先頭噴射燃料及び2回目噴射燃料)による燃焼の終了後に発生させるため3回目噴射の噴射開始時期を図4最上段に示した本発明に係る分割噴射の場合より所定の期間(図では「Retard」)リタードさせる。比較のため、図5最上段において、図4最上段に示した本発明に係る分割噴射における3回目噴射を破線で示している。
なお、図5上2段でも、簡単のため低負荷運転条件のときと高負荷運転条件のときとで先頭噴射の噴射開始より3回目噴射の噴射終了までの期間を同じに記載しているが、実際には高負荷運転条件のときのほうが低負荷運転条件のときより、3回目噴射の噴射終了が遅くなることはいうまでもない。
このような本発明に係る分割リタード噴射を行ったとき、低負荷運転条件では図5最下段に破線で示したように、先行する噴射燃料(先頭噴射燃料及び2回目噴射燃料)による燃焼の後(先行する噴射燃料による燃焼が終了したことは熱発生率dQ/dθがゼロになっていることよりわかる)に3回目噴射燃料による2回目の燃焼が生じており、熱発生率dQ/dθの2回目のピークが、1回目のピークと同等の位置まで上昇している。一方、高負荷運転条件では、図5最下段に実線で示したように、先行する噴射燃料による燃焼の後に3回目噴射燃料による2回目の燃焼が生じており、熱発生率dQ/dθの2回目のピークが、低負荷運転条件のときよりは低下している。
このように、燃料噴射量を本発明に係る分割噴射の分割総噴射量よりさらに増量し、その増量分の燃料を3回目(最終回)噴射の燃料噴射量に加算して、3回目(最終回)噴射燃料の着火性を確保することにより、スモークの排出を抑制し、目標とする高排気温度や目標とする低空気過剰率に短時間で到達することができる。
上述した本発明に係る分割噴射および本発明に係る分割リタード噴射を本実施形態では、DPF再生処理、S被毒解除処理、リッチスパイク処理、触媒16(触媒16のほか酸化触媒も含む)の暖機促進処理の各処理に適用する。
エンジンコントロールユニット30により実行されるこの制御を以下のフローチャートを参照して詳述する。
図17〜図28のフローチャートは排気浄化処理を実行するためのもので、一定時間毎(例えば10msec毎や100msec毎)に実行する。
ここで、図17〜図28のうちの幾つかのステップには図29〜図33に示したサブルーチンを用意している。すなわち、図29のフローは、図18ステップ109、106、図19ステップ211、206の各サブルーチン、図30のフローは、図18ステップ103、図19ステップ203、図28ステップ1102の各サブルーチン、図31のフローは、図18ステップ110、図19ステップ212、図28ステップ1103の各サブルーチン、図32のフローは、図18ステップ104、図19ステップ204、図20ステップ301、図21ステップ401の各サブルーチン、図33のフローは、図17ステップ16のサブルーチンである。
図17においてステップ1では、各種センサからの信号を読み込む。ステップ2では、触媒温度センサ37により検出される触媒温度T1と触媒活性温度上限値T52を比較する。触媒活性温度上限値T52は触媒16が安定した活性を得られる温度(約220℃)である。触媒温度T1が触媒活性温度上限値T52未満の場合には、触媒16が冷機状態にあり、従って触媒暖機促進要求があると判定して、触媒暖機促進処理へ移行する。この触媒暖機促進処理については図28のフローにより後述する。
触媒温度T1が触媒活性温度上限値T52以上であるときには触媒16の暖機が完了したと判断しステップ2よりステップ3〜5に進む。
ステップ3では、NOx堆積量を計算する。NOx堆積量は、例えば特許第2600492号公報第6頁に記載されているNOx吸収量の計算のように、エンジン回転速度の積算値から推測してもよいし走行距離から推測してもよい。なお、積算値を用いる場合には、リッチスパイク処理によって触媒16の再生を終了した時点(S被毒解除処理の実行により触媒16の再生が同時になされた時点も含む)で、その積算値をリセットする。
ステップ4では、S堆積量を計算する。S堆積量も、上記NOx堆積量の計算と同様に、エンジン回転速度の積算値や走行距離から推測すればよい。なお、積算値を用いる場合には、S被毒解除処理によってS被毒解除が終了した時点で、その積算値をリセットする。
ステップ5では、PM堆積量を例えば次のように計算する。PM堆積量が増えればDPF17の入口側排気圧力が上昇することから、排気圧力センサ38によりDPF17の入口側排気圧力P1を検出し、現在の運転状態(エンジン回転速度Ne、負荷Acc)での基準排気圧力との比較によりPM堆積量を推定する。なお、前回のDPF再生終了からのエンジン回転速度の積算値や前回のDPF再生終了からの走行距離と、そのときの排気圧力とを組み合わせて、PM堆積量を推定するようにしてもよい。なお、積算値を用いる場合には、DPF再生処理によってDPF再生が終了した時点で、その積算値をリセットする。
ステップ6では、DPF再生フラグ(以下「regフラグ」という。)をみる。ここで、regフラグ=1はDPF再生処理中であることを示す。regフラグ=1の場合にはDPF再生処理に進む。このDPF再生処理については図18のフローにより後述する。
regフラグ=0であるときにはステップ6よりステップ7に進み、S被毒解除フラグ(以下「desulフラグ」という。)をみる。ここで、desulフラグ=1はS被毒解除処理中であることを示す。desulフラグ=1の場合にはS被毒解除処理に進む。このS被毒解除処理については図19のフローにより後述する。
desulフラグ=0であるときにはステップ7よりステップ8に進み、リッチスパイクフラグ(以下「spフラグ」という。)をみる。ここで、spフラグ=1はリッチスパイク処理中であることを示す。spフラグ=1の場合には、後述する図20のリッチスパイク処理に進む。
spフラグ=0であるときにはステップ8よりステップ9に進み、DPF溶損防止フラグ(以下「recフラグ」という。)をみる。ここで、recフラグ=1はDPF再生処理後の溶損防止処理中またはS被毒解除処理後の溶損防止処理中であることを示す。DPF溶損防止フラグ=1の場合にはDPF溶損防止処理へ進む。このDPF溶損防止処理については図21のフローにより後述する。
recフラグ=0であるときにはステップ9よりステップ10に進み、DPF再生処理要求フラグ(以下「rq−DPFフラグ」という。)をみる。ここで、rq−DPFフラグ=1はDPF再生処理の要求が出ていることを示す。re−DPFフラグ=1の場合にはDPF再生処理要求が出ている場合の2つの処理(DPF再生処理とリッチスパイク処理)の優先順位を決定する。このDPF再生処理要求が出ている場合の2つの処理の優先順位の決定については図22のフローにより後述する。
rq−DPFフラグ=0であるときにはステップ10よりステップ11に進み、S被毒解除処理要求フラグ(以下「rq−desulフラグ」という。)をみる。ここで、rq−desulフラグ=1はS被毒解除処理の要求が出ていることを示す。rq−desulフラグ=1である場合には、S被毒解除処理要求が出ている場合の2つの処理(S被毒解除処理とリッチスパイク処理)の優先順位を決定する。このS被毒解除処理要求が出ている場合の2つの処理の優先順位の決定については図23のフローにより後述する。
rq−desulフラグ=0であるときにはステップ11よりステップ12に進み、リッチスパイク処理要求フラグ(以下「rq−spフラグ」という。)をみる。ここで、rq−spフラグ=1はリッチスパイク処理要求が出ていることを示す。rq−spフラグ=1の場合には図24のステップ701に進みspフラグ=1にする。spフラグ=1になると、次回のタイミングでステップ8より図20のリッチスパイク処理に移行することになる。
rq−spフラグ=0であるときにはステップ12よりステップ13に進み、ステップ5で計算したPM堆積量と所定値PM1を比較する。PM堆積量が所定値PM1を超えると、DPF再生時期になったと判断し、図25のステップ801に進みrq−DPFフラグ=1とする。
PM堆積量が所定値PM1以下であるときにはDPF再生処理を行う必要がないので、ステップ13よりステップ14に進み、ステップ4で計算したS堆積量と所定値S1を比較する。S堆積量が所定値S1を超えると、S被毒解除時期になったと判断し、図26のステップ901に進みrq−desulフラグ=1とする。
S堆積量が所定値S1以下であるときにはs被毒解除処理を行う必要がないので、ステップ14よりステップ15に進み、ステップ3で計算したNOx堆積量と所定値NOx1を比較する。NOx堆積量が所定値NOx1を超えると触媒16の再生時期になったと判断し、図27のステップ1001に進み、rq−spフラグ=1とする。
NOx堆積量が所定値NOx1以下であるときにはリッチスパイク処理を行う必要がないので、ステップ15よりステップ16に進み、DPF再生処理、S被毒解除処理、リッチスパイク処理、およびDPF溶損防止処理のいすれの処理も必要ないため、エンジンの基本制御を行う。このエンジンの基本制御については図33のフローにより後述する。
図18はDPF再生処理を実行するためのものである。
この処理(制御モード)は、前々回のタイミングにおいて図17のステップ13でPM堆積量が所定値PM1に達し、図25のステップ801に進んでrq−DPFフラグ=1となり、これを受けて前回のタイミングにおいて、後述する図22のステップ505でregフラグ=1となると今回のタイミングより開始される。
ステップ101、102では、DPF温度センサ39により検出されるDPF温度T2と、DPF再生のための目標温度上限値T22(約650℃)、DPF再生のための目標温度下限値T21(約600℃)を比較する。これは温度域を3つに分割し、その分割した温度域毎に主噴射について異なる燃料噴射方式(つまり通常噴射、本発明に係る分割噴射、本発明に係る分割リタード噴射)に割り振るためである。
DPF温度T2が目標温度上限値T22を超えている温度域のときにはステップ109へ進んで、通常噴射を実行する(前回に本発明に係る分割噴射を実行していたときには通常噴射に切換え、前回にも通常噴射を実行していたときには通常噴射を維持する)。つまり、エンジンの運転条件が高負荷、高回転速度の条件であれば排気温度を上昇させなくてもDPF17を再生できる温度に達するためDPF17は自然に再生される(自己再生と呼ばれる)。このようなときには排気温度を上昇させる必要がないし、逆に昇温すると排気温度が高くなりすぎてDPF17が急激に再生され、クラックや溶損等の事態を招く恐れがあるので、目標温度上限値T22を超えている温度域では通常噴射を行い、本発明に係る分割噴射による排気の昇温を行わない。
DPF温度T2が目標温度下限値T21以上でかつ目標温度上限値T22以下にある温度域のときには、ステップ101、102よりステップ103へ進んで、本発明に係る分割噴射を実行する(前回に通常噴射を行っていたときには本発明に係る分割噴射に切換え、前回に本発明に係る分割噴射を行っていたときには本発明に係る分割噴射を維持する)。
この本発明に係る分割噴射は燃焼安定性を悪化させず、燃費悪化とスモーク増加を最小限に止めることを重視した燃焼を実現するためのものである。この本発明に係る分割噴射については図30により後述する。
DPF温度T2が目標温度下限値T21未満である温度域のときにはステップ101、102よりステップ110へ進んで、本発明に係る分割リタード噴射を実行する(前回に通常噴射を行っていたときには本発明に係る分割リタード噴射に切換え、前回に本発明に係る分割リタード噴射を行っていたときには本発明に係る分割リタード噴射を維持する)。
この本発明に係る分割リタード噴射は特に短時間昇温を重視した燃焼を実現するためのものである。この本発明に係る分割リタード噴射については図31により後述する。
ステップ104では、排気の空気過剰率(λ)を1.1〜1.4の値に制御する。すなわち、後述する図32のサブルーチンに従って目標空気過剰率λmを1.1〜1.4の値に設定して空気過剰率を制御する。
ここで、DPF17を再生するときの排気の目標空気過剰率はPM堆積量によって異なるため図14のように設定している。図14のようにPM堆積量が多くなるほど目標空気過剰率を小さくしているのはPM堆積量が多くなるほどPMの再燃焼が活発になるため温度上昇が過大になってDPF17が焼損することが考えられるので、これを回避するためである。すなわち、図14に示すようにPM堆積量が多くなるほど目標空気過剰率を小さく設定して排気中の酸素濃度を低下させ、PMの再燃焼速度を抑制しDPF17が過度に昇温しないようにしている。
ステップ105では、タイマ値t1と所定時間t dpfregを比較する。このタイマ値t1はregフラグ=1となったときに起動されるタイマで、DPF再生処理開始からの時間を計測するためのものである。タイマ値t1が所定時間t dpfregを経過する前にはそのまま今回の処理を終了する。
DPF再生処理開始から所定時間t dpfregが経過したときには、DPF17に堆積したPMの燃焼除去が終了していると判断しステップ106、107、108へ進む。
ステップ106では、DPF再生処理が終了したので、それまで本発明に係る分割噴射が行われていたときにはその分割噴射から通常噴射に切換えて排気温度の上昇を停止し、DPF17の加熱を停止する。
ステップ107ではDPF再生処理の終了を示すためにregフラグ=0にする。
ステップ108ではDPF溶損防止処理に移るためrecフラグ=1にする。DPF溶損防止処理は、DPF再生処理が終了したタイミングでDPF17にPMの燃え残りがあった場合にも、通常のリーン運転に戻すため排気の空気過剰率を1.4を超える値へと急に大きくしたのでは、燃え残ったPMが一気に再燃焼してDPF17の急激な温度上昇を招きDPF17が溶損する、という可能性を回避するために行うものである。
図19はS被毒解除処理を実行するためのものである。
この処理は、前々回のタイミングにおいて図17のステップ14でS堆積量が所定値S1に達し、図26のステップ901に進んでrq−desulフラグ=1となり、これを受けて前回のタイミングにおいて、後述する図23のステップ604でdesulフラグ=1となると今回のタイミングより開始される。
このS被毒解除の処理そのものは、前述したDPF再生処理と同様である。
ステップ201、202では、触媒温度センサ37により検出される触媒温度T1と、S被毒解除のための目標温度上限値T42(約700℃)、S被毒解除のための目標温度下限値T41(約600℃)を比較する。これも温度域を3つに分割し、その分割した温度域毎に主噴射について異なる燃料噴射方式(つまり通常噴射、本発明に係る分割噴射、本発明に係る分割リタード噴射)に割り振るためである。
触媒温度T1が既に目標温度上限値T42を超えている温度域のときにはステップ211へ進んで、通常噴射を実行する(前回に本発明に係る分割噴射で実行していたときには通常噴射に切換え、前回にも通常噴射を実行していたときには通常噴射を維持する)。つまり、エンジンの運転条件が高負荷、高回転速度の条件であれば排気温度を上昇させなくてもS被毒解除ができる温度に達してSが触媒16より離脱し下流へと吹き飛ばされるため触媒16は自然にS被毒から解除される。このようなときには排気を上昇させる必要がないし、逆に昇温すると排気温度が高くなりすぎて触媒16の熱劣化を促進する事態を招く恐れがあるので、目標温度上限値T42を超えている温度域では通常噴射を行い、本発明に係る分割噴射による排気の排気の昇温を行わない。
触媒温度T1が目標温度下限値T41以上でかつ目標温度上限値T42以下にある温度域のときには、ステップ201、202よりステップ203へ進んで、本発明に係る分割噴射を実行する(前回に通常噴射を行っていたときには本発明に係る分割噴射に切換え、前回に本発明に係る分割噴射を行っていたときには本発明に係る分割噴射を維持する)。
この本発明に係る分割噴射は燃焼安定性を悪化させず、燃費悪化とスモーク増加を最小限に止めることを重視した燃焼を実現するためのものである。この本発明に係る分割噴射については図30により後述する。
触媒温度T1が目標温度下限値T41未満である温度域のときにはステップ201、202よりステップ212へ進んで、本発明に係る分割リタード噴射を実行する(前回に通常噴射を行っていたときには本発明に係る分割リタード噴射に切換え、前回に本発明に係る分割リタード噴射を行っていたときには本発明に係る分割リタード噴射を維持する)。
この本発明に係る分割リタード噴射は特に短時間昇温を重視した燃焼を実現するためのものである。この本発明に係る分割リタード噴射については図31により後述する。
ステップ204では、排気の空気過剰率を1.0(理論空燃比)に制御する。すなわち、後述する図32のフローに従って目標空気過剰率λmを1.0(理論空燃比)に設定して空気過剰率を制御する。
ステップ205では、タイマ値t2と所定時間t desulを比較する。このタイマ値t2はdesulフラグ=1となったときに起動されるタイマで、S被毒解除処理開始からの時間を計測するためのものである。タイマ値t2が所定時間t desulを経過する前にはそのまま今回の処理を終了する。
S被毒解除処理開始から所定時間tdesulが経過したときには、S被毒解除が終了していると判断しステップ206〜210へ進む。
ステップ206では、S被毒解除処理が終了したので、それまで本発明に係る分割噴射が行われていたときにはその分割噴射から通常噴射に切換えて排気温度の上昇を停止し、触媒16の加熱を停止する。
ステップ207ではステップ204での空気過剰率制御を解除し、通常のリーン運転が得られる空気過剰率に戻す。
ステップ208ではS被毒解除処理の終了を示すためにdesulフラグ=0にする。
ステップ209ではDPF溶損防止処理に移るためrecフラグ=1にする。S被毒解除処理はDPF17の再生を目的にしていないものの、S被毒解除処理が終了した段階でDPF17にPMが堆積している場合にも、通常のリーン運転に戻すため排気の空気過剰率を1.4を超える値へと急に大きくしたのでは、DPF17に堆積しているPMが一気に再燃焼してDPF17の急激な温度上昇を招きDPF17が溶損する可能性があるので、このような可能性をなくすため、S被毒解除処理の終了後にもDPF溶損防止処理を行う。
ステップ210ではrq−spフラグ=0にする。rq−spフラグ=0にする理由は次の通りである。S被毒解除処理を行うと、触媒16が長時間、理論空燃比の雰囲気に晒されるため触媒16の再生が同時に行われ、改めてリッチスパイク処理を行う必要がなくなる。そこで、リッチスパイク処理要求が出ていた場合にこれを取下げるためにrq−spフラグ=0にするものである。
図20はリッチスパイク処理を実行するためのものである。
この処理は、前々回のタイミングにおいて図17のステップ15でNOx堆積量が所定値NOx1に達し、図27のステップ1001に進んでrq−spフラグ=1となり、これを受けて前回のタイミングにおいて、後述する図22のステップ508または図23の607でspフラグ=1となると今回のタイミングより開始される。
ステップ301では、排気の空気過剰率を1.0未満の値(空燃比はリッチ)に制御する。すなわち、後述する図32のフローに従って目標空気過剰率λmを1.0未満の値に設定して空気過剰率を制御する。
ステップ302では、タイマ値t3と所定時間t spikeを比較する。このタイマ値t3はspフラグ=1となったときに起動されるタイマで、リッチスパイク処理開始からの時間を計測するためのものである。タイマ値t3が所定時間t spikeを経過する前にはそのまま今回の処理を終了する。
リッチスパイク処理開始から所定時間t spikeが経過したときには触媒16の再生が終了していると判断し、ステップ303、304へ進む。
ステップ303では、リッチスパイク処理を終了させるためステップ301での空気過剰率制御を解除し、通常のリーン運転が得られる空気過剰率に戻す。
ステップ304では、リッチスパイク処理の終了を示すためにspフラグ=0、rq−spフラグ=0にする。
図21はDPF溶損防止処理を実行するためのものである。
この処理は、前回のタイミングにおいて図18のステップ108でrecフラグ=1となるかまたは図19のステップ209でrecフラグ=1となると今回のタイミングより開始される。
ステップ401では排気の空気過剰率を1.4以下の値に制御する。これは次の理由からである。DPF再生処理の終了直後あるいはS被毒解除処理の終了直後においては、未だDPF17が高温状態にあるので、通常のリーン運転に戻すため排気の空気過剰率を1.4を超える値へと急に大きくしたのでは、DPF17内に残存しまたは堆積しているPMが一気に再燃焼してDPF17の急激な温度上昇を招きDPF17が溶損する可能性がある。そこで、このような可能性をなくすため、排気の空気過剰率を1.4以下に制御し排気中の酸素濃度を低下させるようにしたものである。
なお、DPF溶損防止処理では排気温度を低下させる必要があり、図18のステップ106または図19のステップ206で説明したように、DPF溶損防止処理中の燃料噴射は本発明に係る分割噴射ではなく通常噴射に戻されている。
ステップ402では、DPF温度センサ39により検出されるDPF温度T2と所定温度T3(例えば500℃)を比較する。DPF温度T2が所定温度T3以上であるときにはステップ401での空気過剰率制御を続行するためそのまま今回の処理を終了する。
DPF温度T2が所定温度T3未満である場合には、通常のリーン運転状態に戻してもDPF17が溶損することを回避し得るので、ステップ403へ進んでステップ401での空気過剰率制御を解除し、通常のリーン運転が得られる空気過剰率に戻す。
ステップ404ではDPF溶損防止処理の終了を示すためにrecフラグ=0にする。
図22は2つの処理の優先順位を決定するためのものである。
これは、DPF再生処理要求と、リッチスパイク処理要求とが同時に生じたときの2つの処理の優先順位について規定する、つまりDPF再生処理をリッチスパイク処理よりも先に実行するのかそれともリッチスパイク処理をDPF再生処理よりも先に実行するのかを決定するものである。
この決定の処理は、前回のタイミングにおいて図25のステップ801でrq−DPFフラグ=1つまりDPF再生処理要求が出されると今回のタイミングより開始される。
S被毒解除要求が出ているか否かをみるためステップ501でS堆積量と所定値S1を比較する。S堆積量が所定値S1を超えている(S被毒解除要求が出ている)ときには図26のステップ901へ進んでrq−desulフラグ=1とする。この場合には、後述する図23の処理優先順位決定フローによりS被毒解除処理とリッチスパイク処理の2つの処理の優先順位を決定する。
S堆積量が所定値S1以下であるときにはリッチスパイク処理要求が出ているか否かをみるためステップ502でrq−spフラグをみる。rq−spフラグ=0(つまり前回にはリッチスパイク処理要求が出ていなかった)であるときにはステップ503で続いてNOx堆積量と所定値NOx1を比較する。NOx堆積量が所定値NOx1を超えているときには、図27のステップ1001に進みrq−spフラグ=1とする(今回にリッチスパイク処理要求が発生している)。
NOx堆積量が所定値NOx1以下のとき(つまりステップ501でS堆積量が所定値S1以下にあり、ステップ502でリッチスパイク処理要求が出ておらず、ステップ503でNOx堆積量が所定値NOx1以下であるとき、言い換えるとDPF再生処理要求のみが出ているとき)にはステップ503よりステップ504へ進み、運転条件が、DPF再生処理が可能な領域(DPF再生領域)またはS被毒解除処理が可能な領域(S被毒解除領域)にあるか否かをみる。
ここで、DPF再生領域またはS被毒解除領域とは図6においてハッチングをつけている低負荷域または低回転速度域(いずれも不可能領域)を除いた残りの領域のことである。すなわち、DPF再生領域またはS被毒解除領域は、低回転・低負荷以外の領域でありかつ排気昇温代が比較的少なく、本発明に係る分割噴射を実行しても排気性能の悪化代が許容値を超えない領域のことである。運転条件がDPF再生領域またはS被毒解除領域にあるときにはステップ505でregフラグ=1とし、次回のタイミングで図17のステップ6より図18に示すDPF再生処理に移行させる。
運転条件がDPF再生領域またはS被毒解除領域にないときにはそのまま今回の処理を終了する。
一方、ステップ502でrq−spフラグ=1のとき(DPF再生処理要求とリッチスパイク処理要求とが同時に出ているとき)にはステップ506に進み、エンジンの運転条件がNOx排出量の少ない条件(例えば定常条件)にあるのか否かをみる。NOx排出量が多い条件(例えば加速条件等)ではテールパイプでの排気悪化を防止するために触媒16の再生を優先させるのが望ましい。従って、この場合にはステップ508へ進んでspフラグ=1とし、次回のタイミングで図17のステップ8より図20に示すリッチスパイク処理に移行させる。
この逆に、NOx排出量が少ない条件であれば、触媒16の再生を多少遅らせても、テールパイプでの排気の悪化は殆ど無いため、運転性に影響を大きく及ぼすDPF17の再生を優先させるのが望ましい。従って、このときにはステップ506よりステップ507へ進み、DPF温度センサ39により検出されるDPF温度T2と所定温度T6(例えば450℃程度)を比較する。排気の昇温を開始するにあたり、DPF温度T2が所定温度T6以下であるときには、昇温を開始してもDPF17の再生が可能となる温度に到達するまでに時間がかかり、昇温中にテールパイプでのNOxの悪化も懸念されるため、このときには触媒16の再生を優先させるのが望ましい。従って、この場合にもステップ508へ進んでspフラグ=1とし、次回のタイミングで図17のステップ8より図20に示すリッチスパイク処理に移行させる。
一方、DPF温度T2が所定温度T6を超えているときにはDPF17の再生を優先させるため、ステップ507よりステップ504、505へと進み、運転条件が上記のDPF再生領域またはS被毒解除領域にあればregフラグ=1とし、次回のタイミングで図17のステップ6より図18に示すDPF再生処理に移行させる。
図23も図22と同様に2つの処理の優先順位を決定をするためのものである。
ただし、図22がDPF再生処理を先に実行するのかそれともリッチスパイク処理を先に実行するのかを決定するものであったが、図23はS被毒解除処理要求とリッチスパイク処理要求とが同時に生じたときの優先順位について規定する、つまりS被毒解除処理をリッチスパイク処理よりも先に実行するのかそれともリッチスパイク処理を被毒解除処理よりも先に実行するのかを決定するものである。
この決定の処理は、前回のタイミングにおいて図26のステップ901でrq−desulフラグ=1つまりS被毒解除処理要求が出されると今回のタイミングより開始される。
DPF再生要求が出ているか否かをみるためステップ601でPM堆積量と所定値PM1を比較する。PM堆積量が所定値PM1を超えている(DPF再生要求が出ている)ときには図25のステップ801へ進んでrq−DPFフラグ=1とする。この場合には、次回のタイミングにおいて前述の図22の処理優先順位決定フローによりDPF再生処理とリッチスパイク処理の2つの処理の優先順位を決定する。
PM堆積量が所定値PM1以下であるときにはステップ602で触媒温度センサ37により検出される触媒温度T1と所定温度T7(例えば450℃程度)を比較する。触媒温度T1が所定温度T7を超えているときにはS被毒解除処理を優先させるためステップ603へ進んで運転条件が図6に示すDPF再生領域またはS被毒解除領域にあるか否かをみる。運転条件がDPF再生領域またはS被毒解除領域にあるときにはステップ604でdesulフラグ=1とし、次回のタイミングで図17のステップ7より図19に示すS被毒解除処理に移行させる。運転条件がDP再生領域またはS被毒解除りょういきにないときにはそのまま今回の処理を終了する。
一方、ステップ602で触媒温度T1が所定温度T7以下であるときには排気の昇温を開始してもS被毒解除が可能となる温度に到達するまでに時間がかかり、昇温中にテールパイプでのNOxの悪化も懸念されることから、触媒16の再生を優先させるのが望ましく、このときにはステップ605へ進みrq−spフラグをみる。rq−spフラグ=1である(リッチスパイク処理要求が出ている)ときには触媒16の再生(リッチスパイク処理)を優先するためステップ607へ進みspフラグ=1とし、次回のタイミングで図17のステップ8より図20に示すリッチスパイク処理に移行させる。
ステップ605でrq−spフラグ=0(リッチスパイク処理要求が出ていない)のときにはステップ605よりステップ606へ進みNOx堆積量と所定値NOx1を比較する。NOx堆積量が所定値NOx1を超えているときには図27のステップ1001へ進んでrq−spフラグ=1とする(今回リッチスパイク処理要求が出る)。
NOx堆積量が所定値NOx1以下であるとき(つまりS被毒解除処理要求は出ているもののステップ601でPM堆積量が所定値PM1以下であり、ステップ602で触媒温度T1が所定温度T7以下であり、ステップ605でリッチスパイク処理要求も出ておらず、かつステップ606でNOx堆積量が所定値NOx1以下であるとき)には、S被毒解除処理へと移行することなくそのまま今回の処理を終了する。
図28は触媒暖機促進処理を実行するためのものである。
この処理は、図17のステップ2において触媒温度センサ37により検出される触媒温度T1が触媒活性温度上限値T52(約220℃)以下のときに実行される。
ステップ1101では触媒温度T1と触媒活性温度下限値T51(約200℃)とを比較する。触媒温度T1が触媒活性温度下限値T51以下であるときには触媒16がまだ活性を得られる温度に達していないと判断しステップ1103で本発明に係る分割リタード噴射を実行し、触媒16の早期暖機促進を行う。
一方、触媒温度T1が活性温度下限値T51を超えているときには、NOxトラップ触媒16が活性を得られる温度に達していると判断しステップ1101よりステップ1102に進み本発明に係る分割噴射を実行する(前回に触媒温度T1が触媒活性温度下限値T51以下であったときには本発明に係る分割リタード噴射より本発明に係る分割噴射に切換え、前回にも触媒温度T1が触媒活性温度下限値T51を超えていたときには本発明に係る分割噴射を維持する)。これによって触媒温度T1が触媒活性温度上限値T52に達する直前まで触媒16の暖機促進を行う。
図29(図18ステップ109、106及び図19ステップ211、206、後述する図33ステップ1602のサブルーチン)は通常噴射を実行するためのものである。
ここでの通常噴射とは、主燃料燃料についての圧縮上死点近傍での一括燃料噴射のことである(図2第2段目参照)。
ステップ1201、1202では通常噴射量Qと通常噴射圧力Pcrを算出する。
ここで、通常噴射量Qは、触媒暖機促進処理を実行しておらず、かつ上記〈1〉〜〈4〉のDPF再生処理、リッチスパイク処理、S被毒解除処理、DPF溶損防止処理をいずれも実行していないときの燃料噴射量である。通常噴射圧力は、同じく上記〈1〉〜〈4〉のDPF再生処理、リッチスパイク処理、S被毒解除処理、DPF溶損防止処理をいずれも実行していないときの燃料噴射圧力である。言い換えると、通常噴射量と通常噴射圧力とは、エンジン基本制御において圧縮上死点近傍での一括噴射(通常噴射)を行う際の燃料噴射量(目標噴射量)と燃料噴射圧力(目標噴射圧力)とである。
通常噴射量Qおよび通常噴射圧力Pcrは、図6と図15にそれぞれ示すように、アクセル開度Accとエンジン回転速度Neに対応したマップデータとしてエンジンコントロールユニット30に予め記憶されており、そのときのアクセル開度Accとエンジン回転速度Neからその各マップを検索することにより通常噴射量Qおよび通常噴射圧力Pcrを求めればよい。
ステップ1203ではこのようして算出した通常噴射量Qと通常噴射圧力Pcrとから所定のマップを検索することにより通常噴射期間Mpを算出する。
ここで、通常噴射期間とは通常噴射を実行する際の噴射期間である。この通常噴射期間Mpは、周知のように通常噴射圧力が同じであれば通常噴射量に応じて長くなり、通常噴射量が同じであれば通常噴射圧力に応じて長くなる。
ステップ1204では通常噴射開始時期IT startを算出する。
ここで、通常噴射開始時期とは通常噴射を実行する際の噴射開始時期である。この通常噴射開始時期IT startは、図8に示すように、通常噴射量Q(またはアクセル開度Accでもよい)とエンジン回転速度Neに対応したマップデータとしてエンジンコントロールユニット30に予め記憶されており、ステップ1201で算出した通常噴射量Qとそのときのエンジン回転速度Neとからそのマップを検索することにより通常噴射開始時期を求めることができる。
ステップ1205では通常噴射開始時期IT startと通常噴射期間Mpとを用いて燃料噴射弁15を開弁駆動する。
図30(図18ステップ103、図19ステップ203及び図28ステップ1102の各サブルーチン)は本発明に係る分割噴射を実行するためのものである。なお、図30では、分割噴射の態様として3回の燃料噴射を実行する場合で代表させて記載している。
ステップ1301ではアクセル開度Accとエンジン回転速度Neとから通常噴射量のマップ(図6)を検索することにより通常噴射量Qを算出する。この通常噴射量Qはここではエンジン負荷として用いる。
ステップ1302ではアクセル開度Accとエンジン回転速度Neとから通常噴射開始時期のマップを検索することにより通常噴射開始時期IT startを算出し、この通常噴射開始時期IT startを、そのまま先頭噴射の噴射開始時期IT st1に設定する。これは、分割噴射における先頭噴射の噴射開始時期は、燃焼の安定性の観点から通常噴射の場合と同一(=IT start)に設定するのが望ましいためである。
ステップ1303では分割総噴射量Q splitおよび分割噴射圧力P splitを算出する。ここで、分割総噴射量とは、3回の燃料噴射の総燃料噴射量のこと、分割噴射圧力とは3回の燃料噴射を行う際の燃料噴射圧力のことである。
まず、分割総噴射量Q splitについては、例えば、通常噴射量Qを算出する場合と同様に、そのときのアクセル開度Accとエンジン回転速度Neとから分割総噴射量のマップ(図6と同様)を検索することにより求める。
ただし、図6のA−A、B−B、C−C線断面部を図7にまとめて示すように、分割総噴射量Q splitは通常噴射量Qよりも増量させて設定している。ここで、図6のA−A線は低回転速度を、B−B線は中回転速度を、C−C線は高回転速度を代表させている。すなわち、図7において、実線が通常噴射量Q、長破線が分割総噴射量Q splitを示しており、2つの噴射量ともアクセル開度Accに応じて増大すると共に、同じ回転速度Neかつ同じアクセル開度Accで比較すると、分割総噴射量Q splitのほうが通常噴射量Qより多くなっている。
なお、燃料の増量限界については、エンジンへの負担を適正な状態に保つという観点から、全負荷における燃料噴射量を超えないように設定するのが望ましい。図7において燃料の増量限度を一点鎖線で示しており、図6のA−A、B−B、C−C線断面部のいずれの回転速度においても分割総噴射量Q splitは燃料の増量限度を超えていない。
次に、分割噴射圧力P splitについては、例えば、通常噴射圧力Pcrを算出する場合と同様にそのときのアクセル開度Accとエンジン回転速度Neとから分割噴射圧力のマップ(図15と同様)を検索することにより求める。
ただし、図15のA−A、B−B、C−C線断面部を図16に示すように、分割噴射圧力P splitは通常噴射圧力Pcrよりも増圧させて設定している。ここでも、図15のA−A線は低回転速度を、B−B線は中回転速度を、C−C線は高回転速度を代表させている。すなわち、図16において、実線が通常噴射圧力Pcr、破線が分割噴射圧力P splitを示しており、2つの噴射圧力とも通常噴射量Qに応じて増大すると共に、同じ回転速度Neかつ同じ通常噴射量Qで比較すると、分割噴射圧力P splitのほうが通常噴射圧力Pcrより高くなっている。
なお、分割総噴射量Q splitの他の求め方として、アクセル開度Accとエンジン回転速度Neに対応した通常噴射量Qに対する増量比率をマップデータとしてエンジンコントロールユニット30に予め記憶させておき、通常噴射量Qに対してこのマップより検索した増量比率を乗じて分割総噴射量を求める方法を用いても構わない。
分割噴射圧力P splitの求め方としても、アクセル開度Accとエンジン回転速度Neに対応した通常噴射圧力Pcrに対する増圧比率をマップデータとしてエンジンコントロールユニット30に予め記憶させておき、通常噴射圧力Pcrに対してこのマップより検索した増圧比率を乗じて分割噴射圧力を求める方法を用いても構わない。
ステップ1304では分割噴射における各噴射量比率を算出する。
分割総噴射量Q splitを複数回に分割して噴射するが、その複数回の燃料噴射における燃料噴射量比率は、例えば図6のB−B線断面部を、図9(2回の燃料噴射を行う場合)、図10(3回の燃料噴射を行う場合)、図11(燃料噴射量の増大に伴い3回の燃料噴射から2回の燃料噴射に移行させる場合)にそれぞれ示すように、通常噴射量Q(負荷相当)が所定値Qaより増加するのに伴い、先頭噴射の燃料噴射量比率が増大し、この逆に後続する燃料噴射(2回の燃料噴射を行う場合に2回目噴射、3回の燃料噴射を行う場合に2回目噴射と3回目噴射)の燃料噴射量比率が減少するように設定している。
すなわち、分割噴射として2回の燃料噴射を行う場分には、図9に示したように、通常噴射量Qが小さい領域(低負荷運転条件)で先頭噴射の燃料噴射量比率が2回目噴射の燃料噴射量比率より小さくなっているのに対して、通常噴射量Qが大きい領域(高負荷運転条件)になると先頭噴射の燃料噴射量比率が2回目噴射の燃料噴射量比率より大きくなっている。
また、通常噴射量Qが所定値Qb以上となる全負荷に近い領域では先頭噴射の燃料噴射量比率を100%とし、2回目噴射の燃料噴射量比率を0%としている(つまり本発明に係る分割噴射を中止する)。
次に、分割噴射として3回の燃料噴射を行う場分には、図10に示したように、通常噴射量Qが小さい領域(低負荷運転条件)で先頭噴射の燃料噴射量比率が2回目噴射の燃料噴射量比率より小さくなりかつ2回目噴射の燃料噴射量比率が3回目噴射の燃料噴射量比率より小さくなっているのに対して、通常噴射量Qが大きい領域(高負荷運転条件)になると、先頭噴射の燃料噴射量比率が2回目噴射の燃料噴射量比率より大きくなりかつ2回目噴射の燃料噴射量比率が3回目噴射の燃料噴射量比率より大きくなっている。
また、通常噴射量Qが所定値Qb以上となる全負荷に近い領域では先頭噴射の燃料噴射量比率を100%とし、2回目噴射、3回目噴射の燃料噴射量比率をいずれも0%としている(つまり本発明に係る分割噴射を中止する)。
一方、図11は、図9、図10と異なり、通常噴射量Qが、QaとQbの間に設けた所定値Qc(つまりQa<Qc<Qb)以下の領域では分割噴射として3回の燃料噴射を行い、通常噴射量Qが所定値Qcを超える領域になると分割噴射として2回の燃料噴射を行う場合の燃料噴射量比率の特性である。このため、通常噴射量Qが所定値Qc以下の領域での燃料噴射量比率の特性は図10と同様となり、通常噴射量Qが所定値Qcを超える領域での噴射量比率の特性は図9と同様となっている。
このように、図9、図10、図11のいずれかの特性により通常噴射量Q(負荷相当)に応じた複数回の燃料噴射の燃料噴射量比率を設定することで、エンジン負荷の増大に伴って燃焼形態としては予混合燃焼を強化できるためスモークの増加を抑制することができる。
また、図6のD−D線断面部を図12に示すように、エンジン回転速度Neが増加するのに伴い、先頭噴射の燃料噴射量比率が増大し、この逆に2回目噴射(3回の燃料噴射を行う場合は2回目噴射及び3回目噴射)の燃料噴射量比率が減少するように設定する。高回転速度域で先頭噴射の燃料噴射量比率を低回転速度域より大きくするのは、高回転速度域のほうが低回転速度域より排気温度が高くなるので、高回転速度域では低回転速度域よりも予混合燃焼の比率を高め、燃焼を比較的速やかに終了させて燃料消費の悪化を抑制するためである。
このように、エンジン回転速度Neを一定とした場合において通常噴射量Q(エンジン負荷)を変化させたときの燃料噴射量比率の特性を図9、図10、図11に、また通常噴射量Q(エンジン負荷)を一定とした場合においてエンジン回転速度Neを変化させたときの燃料噴射量比率の特性を図12に示したが、実際には、エンジン回転速度Neと通常噴射量Qとに対応した燃料噴射量比率をマップデータとしてコントロールユニット30に予め記憶させておき、そのときのエンジン回転速度Neと通常噴射量Qとからそのマップを検索することにより先頭噴射、2回目噴射、3回目噴射の各燃料噴射量比率を求める。
ステップ1305では、これら3つの各燃料噴射量比率を分割総噴射量Q splitに積算することによって、先頭噴射の燃料噴射量Q splt1、2回目噴射の燃料噴射量Q splt2、3回目噴射の燃料噴射量Q splt3を算出する。
ステップ1306ではこれら各燃料噴射量Q splt1、Q splt2、Q splt3と分割噴射圧力P splitとから、図示しない噴射期間のマップを検索することにより、先頭噴射の噴射期間Mp1、2回目噴射の噴射期間Mp2、3回目噴射の噴射期間Mp3を算出する。
ここで、先頭噴射の噴射期間Mp1は、分割噴射圧力P splitが同じであれば先頭噴射の燃料噴射量Q splt1に応じて長くなり、先頭噴射の燃料噴射量Q splt1が同じであれば分割噴射圧力P splitに応じて長くなる。同様にして、2回目噴射の噴射期間Mp2は、分割噴射圧力P splitが同じであれば2回目噴射の燃料噴射量Q splt2に応じて長くなり、2回目噴射の燃料噴射量Q splt2が同じであれば分割噴射圧力P splitに応じて長くなり、また3回目噴射の噴射期間Mp3は、分割噴射圧力P splitが同じであれば3回目噴射の燃料噴射量Q splt3に応じて長くなり、3回目噴射の燃料噴射量Q splt3が同じであれば分割噴射圧力P splitに応じて長くなる。
ステップ1307では分割噴射における第1噴射間隔ΔIT1、第2噴射間隔ΔIT2を算出する。
ここで、分割噴射における第1噴射間隔ΔIT1は先頭噴射の噴射開始時期より2回目噴射の噴射開始時期までの間隔ΔIT1のこと(図3、図4参照)、また第2噴射間隔ΔIT1は3回の燃料噴射を行う場合に先頭噴射の噴射開始時期より3回目噴射の噴射開始時期までの間隔ΔIT2のこと(図4参照)である。
分割噴射における第1噴射間隔ΔIT1、第2噴射間隔ΔIT2は、例えば図6のB−B線断面部を、図13の実線で示すように、通常噴射量Q(負荷相当)が所定値Qaより増加するのに伴って増大するように設定している。すなわち、通常噴射量Qが所定値Qa以上で増大するのに応じて第1噴射間隔ΔIT1、第2噴射間隔ΔIT2とも増大している。
このように、エンジン回転速度Neを一定とした場合において通常噴射量Q(エンジン負荷)を変化させたときの、分割噴射における第1噴射間隔、第2噴射間隔の特性を図13に実線で示したが、実際には、エンジン回転速度Neと通常噴射量Qとに対応した分割噴射における第1噴射間隔、第2噴射間隔をそれぞれマップデータとしてコントロールユニット30に予め記憶させておき、そのときのエンジン回転速度Neと通常噴射量Qとからその各マップを検索することにより分割噴射における第1噴射間隔ΔIT1、第2噴射間隔ΔIT2を求める。
このように、図13の実線により通常噴射量Q(負荷相当)に応じた分割噴射における第1噴射間隔ΔIT1、第2噴射間隔ΔIT2を設定することによっても、エンジン負荷の増大に伴って燃焼形態としては予混合燃焼を強化し、負荷の増大に伴う拡散燃焼の増加を抑制できるためスモークの増加を抑制することができる。
ステップ1308では2回目噴射の噴射開始時期IT st2、3回目噴射の噴射開始時期IT st3を算出する。すなわち、ステップ1302で設定している先頭噴射の噴射開始時期IT st1から第1噴射間隔ΔIT1だけ遅らせたクランク角位置を2回目噴射の噴射開始時期IT st2として、同じく先頭噴射の噴射開始時期IT startから第2噴射間隔ΔIT2だけ遅らせたクランク角位置を3回目噴射の噴射開始時期IT st3として設定する。
ステップ1309では、3つの噴射開始時期IT st1、IT st2、IT st3と3つの噴射期間Mp1、Mp2、Mp3とを用いて燃料噴射弁15を開弁駆動する。
これにより、先頭噴射の噴射開始時期IT st1及び先頭噴射の噴射期間Mp1を用いて先頭噴射が、2回目噴射の噴射開始時期IT st2及び2回目噴射の噴射期間Mp2を用いて2回目噴射が、3回目噴射の噴射開始時期IT st3及び3回目噴射の噴射期間Mp3を用いて3回目噴射が続けて実行される。
この結果、分割噴射として2回の燃料噴射を行う場合において、低負荷領域では図3第2段目に示した噴射波形が、これに対して高負荷領域では図3最上段に示した噴射波形が、また分割噴射として3回の燃料噴射を行う場合において、低負荷領域では図4第3段目に示した噴射波形が、これに対して高負荷領域では図4最上段に示した噴射波形が得られる。
図31(図18ステップ110、図19ステップ212及び図28ステップ1103の各サブルーチン)は本発明に係る分割リタード噴射を実行するためのものである。なお、図31においても図30と同様に分割噴射として3回の燃料噴射を行う場合で代表させて記載している。
本発明に係る分割リタード噴射の内容は、本発明に係る分割噴射の内容と同様である。本発明に係る分割リタード噴射において本発明に係る分割噴射と異なる部分は主にステップ1404、1407、1409における操作である。
これら本発明に係る分割噴射と異なるステップについて主に説明すると、まずステップ1404では、分割リタード総噴射量Q retardを算出する。分割リタード総噴射量Q retardは、例えば、通常噴射量Qや分割総噴射量Q splitを求める場合と同様に、そのときのアクセル開度Accとエンジン回転速度Neとから分割リタード総噴射量のマップ(図6と同様)を検索することにより求める。
ただし、図6のA−A、B−B、C−C線断面部を図7に重ねて示すように、分割リタード総噴射量Q retardは分割総噴射量Q splitよりもさらに増量して設定している。すなわち、図7において、短破線が分割リタード総噴射量を示しており、分割リタード総噴射量Q retardはアクセル開度Accに応じて増大すると共に、同じ回転速度Neかつ同じアクセル開度Accで比較すると、分割リタード総噴射量Q retardのほうが分割総噴射量Q splitより多くなっている。
ステップ1404ではまた、ステップ1403で算出済みの分割噴射圧力P splitをそのまま分割リタード噴射圧力P retardに設定する。これは、分割リタード噴射における先頭噴射の噴射開始時期も分割噴射における先頭噴射の噴射開始時期と同じ、つまり燃焼の安定性の観点から通常噴射の場合と同一(=IT start)に設定するのが望ましいためである。
ステップ1407では、ステップ1406で算出済みの3回目(最終回)噴射の燃料噴射量Q splt3に、ステップ1404で算出している分割リタード総噴射量Q retardと、ステップ1403で算出済みの分割総噴射量Q splitとの差分(Q retard−Q split)を加算した値を改めて、3回目噴射の燃料噴射量Q splt3とする。ここで、エンジン回転速度Neと通常噴射量Q(負荷相当)が同じであれば分割リタード総噴射量Q retardは分割総噴射量Q splitより必ず大きい(等しい場合を含む)ので、Q retardよりQ splitを差し引いた値は必ず正の値となり、従っては3回目噴射の燃料噴射量Q splt3は本発明に係る分割噴射の場合より増量される。
ステップ1409では、分割リタード噴射における第1噴射間隔ΔIT1、第2噴射間隔ΔIT2を算出する。
分割リタード噴射における第1噴射間隔ΔIT1、第2噴射間隔ΔIT2は、例えば図6のB−B線断面部を図13の破線で示すように、通常噴射量Q(負荷相当)が所定値Qaより増加するのに伴って、本発明に係る分割噴射の場合の第1噴射間隔ΔIT1、第2噴射間隔ΔIT2(実線参照)よりもさらに増大するように設定している。すなわち、通常噴射量Qが所定値Qa以上で増大するのに応じて分割リタード噴射における第1噴射間隔ΔIT1、第2噴射間隔ΔIT2とも、本発明に係る分割噴射の場合より増大している。
このように、エンジン回転速度Neを一定とした場合において通常噴射量Q(エンジン負荷)を変化させたときの、分割リタード噴射における第1噴射間隔、第2噴射間隔の特性を図13に破線で重ねて示したが、実際には、エンジン回転速度Neと通常噴射量Qとに対応した第1噴射間隔、第2噴射間隔をそれぞれマップデータとしてコントロールユニット30に予め記憶させておき、そのときのエンジン回転速度Neと通常噴射量Qとからその各マップを検索することにより分割リタード噴射における第1噴射間隔ΔIT1、第2噴射間隔ΔIT2を求める。
このように、3回目(最終回)噴射燃料の着火性を確保して排気温度の昇温とスモークの排出を抑制することを重視し、本発明に係る分割リタード噴射により、3回目噴射燃料による燃焼を、先行の燃料噴射(先頭噴射及び2回目噴射)の燃料による燃焼の終了後に発生させることで、燃料消費の増加が多くなるものの、目標とする高排気温度や低空気過剰率に短時間で到達できる。
図32(図18ステップ104、図19ステップ204、図20ステップ301、図21ステップ401の各サブルーチン)は排気の空気過剰率制御を実行するためのものである。
ステップ1501では、目標空気過剰率λmと燃料噴射量とから目標空気量Q airtを算出する。
ここで、ステップ1501で用いる目標空気過剰率λmは、既に述べたように、DPF再生処理、S被毒解除処理、リッチスパイク処理およびDPF溶損防止処理のそれぞれに合わせて最適な値が設定されている。また、ステップ1501で用いる燃料噴射量は、通常噴射、本発明に係る分割噴射、および本発明に係る分割リタード噴射に合わせてそれぞれ設定されている。すなわち、通常噴射を行う場合の燃料噴射量は通常噴射量Q(図29のステップ1201参照)、本発明に係る分割噴射を行う場合の燃料噴射量は分割総噴射量Q split(図30のステップ1303参照)、本発明に係る分割リタード噴射を行う場合の燃料噴射量は分割リタード総噴射量Q retard(図31のステップ1404参照)である。
ステップ1502では、このようにして算出した目標空気量Q airtが得られるように、EGR弁5の開度または吸気絞り弁6の開度(つまりEGR量やEGR率)を制御する。また、このときエアフローメータ7により検出される実吸入空気量Qairがこの目標空気量Q airtと一致するように、EGR弁5または吸気絞り弁6を介してEGR量(EGR率)をフィードバック制御する。
図33(図17ステップ16のサブルーチン)はエンジン基本制御を実行するためのものである。なお、エンジン基本制御は、既に述べたように触媒暖機促進処理を行う必要がなく、かつDPF再生処理、S被毒解除処理、リッチスパイク処理およびDPF溶損防止処理についても必要ない場合に実行される。
ステップ1601では、触媒温度T1と所定温度T52(約220℃)を比較する。触媒温度T1が所定温度T52未満である、つまり図28で前述した触媒暖機促進処理が実行されている場合には(触媒暖機促進中であれば)ステップ1602を飛ばしてステップ1603に進み、触媒暖機促進中でなければステップ1602で通常噴射を実行して(前回に本発明に係る分割噴射を実行していたときには通常噴射に切換え、前回にも通常噴射で実行していたときには通常噴射を維持する)、ステップ1603に進む。
ステップ1603では通常のEGR制御、すなわち目標とする排気性能が得られるように、エンジンが暖機完了前の状態にあるのかそれともエンジンが暖機完了後の状態にあるのかを判定し、その判定結果およびそのときの運転条件(回転速度Neとエンジン負荷)に応じて、EGR弁5又は吸気絞り弁6の作動制御を実行する。
なお、エンジンが暖機完了前の状態にあるのかそれとも暖機完了後の状態にあるのかの判定は水温センサ31により検出される冷却水温に基づいて行う。
ここで、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態(請求項1に記載の発明)によれば、触媒16やDPF17(いずれも排気浄化装置)が通常時以外の状態(DPF再生処理要求が出ている状態、S被毒解除処理要求が出ている状態、リッチスパイク処理要求が出ている状態、触媒暖機促進処理要求が出て状態)にある場合に、先頭噴射(圧縮上死点近傍での燃料噴射)と、2回目噴射や3回目噴射(膨張行程での少なくとも1回の燃料噴射)とで構成される複数回の燃料噴射を実行し、この複数回の燃料噴射により生じる燃焼全体における予混合燃焼と拡散燃焼の比率を任意に変化させるので、スモーク増加を最小限にすることを優先するとき(高負荷運転条件)には予混合燃焼の比率を高め(拡散燃焼の比率は低くする)、この逆にスモーク増加よりも燃焼安定性を優先させるとき(低負荷運転条件)には拡散燃焼の比率を高める(予混合燃焼の比率は低くする)等、排気通路3に設けている排気浄化装置(触媒16、DPF17)による排気清浄化のための排気温度の上昇や空燃比のリッチ化を実現しながら、スモーク増加を最小限にでき、燃焼安定化により燃費の悪化を防ぐことができる。
分割リタード噴射による燃焼は排気温度上昇効果が高いものの燃費悪化が大きいため、本実施形態(請求項2に記載の発明)によれば、この分割リタード噴射と分割噴射とを、排気浄化装置の状態を決定する排気温度に応じて選択的に行う。
例えば、排気浄化装置がDPF17である場合に、DPF再生のための目標温度上限値T22と目標温度下限値T21とを定めておき、DPF温度T2(排気温度)が目標温度下限値T21未満のとき分割リタード噴射を実行し(図18のステップ101、102、110参照)、これにより燃費を犠牲にしても目標とする高排気温度及び目標とする低空気過剰率を短時間で実現する一方で、DPF温度T2が目標温度下限値T21以上かつ目標温度上限値T22以下にあるとき分割噴射を実行し(図18のステップ101、102、103参照)、これにより燃料噴射量の増加比率を高くして噴射時期のリタード限界を拡大し、エンジンの出力制御性を損なうことなく高排気温度や低空気過剰率を実現する(請求項12に記載の発明)。
また、排気浄化装置が触媒16である場合に、S被毒解除のための目標温度上限値T42と目標温度下限値T41とを定めておき、触媒温度T1(排気温度)が目標温度下限値T41未満のとき分割リタード噴射を実行し(図19のステップ201、202、212参照)、これにより燃費を犠牲にしても目標とする高排気温度及び目標とする低空気過剰率を短時間で実現する一方で、触媒温度T1が目標温度下限値T41以上かつ目標温度上限値T42以下にあるとき分割噴射を実行し(図19のステップ201、202、203参照)、これにより燃料噴射量の増加比率を高くして噴射時期のリタード限界を拡大し、エンジンの出力制御性を損なうことなく高排気温度や低空気過剰率を実現する(請求項12に記載の発明)。
同様にして、排気浄化装置が触媒16である場合に、触媒活性温度上限値T52と触媒活性温度下限値T51とを定めておき、触媒温度T1(排気温度)が触媒活性温度下限値T51未満のとき分割リタード噴射を実行し(図17のステップ2、図28のステップ1101、1103参照)、これにより燃費を犠牲にしても触媒16の早期暖機促進を行う一方で、触媒温度T1が触媒活性温度下限値T51以上かつ触媒活性温度上限値T425下にあるとき分割噴射を実行し(図17のステップ2、図28のステップ1101、1103参照)、触媒16の暖機促進を行う(請求項13に記載の発明)。
このように、本実施形態(請求項2に記載の発明)では、分割リタード噴射と分割噴射とを、排気浄化装置の状態を決定する排気温度に応じて選択的に行うので、これにより、排気通路に設けた排気浄化装置(触媒16、DPF17)による排気清浄化のための燃費悪化を必要最小限にすることができる。
本実施形態(請求項4に記載の発明)によれば、分割総噴射量Q split(複数回の燃料噴射の総燃料噴射量)を、通常噴射量Q(圧縮上死点近傍での一括燃料噴射の総燃料噴射量)よりも増量するので(図30のステップ1303及び図7参照)、複数回の燃料噴射による燃焼を安定して行わせることができる。
本実施形態(請求項7に記載の発明)によれば、図9、図10、図11に示したように通常噴射量Q(負荷相当)に応じた複数回の燃料噴射の燃料噴射量比率を設定する(図30のステップ1304、図31のステップ1405参照)、つまりエンジン負荷が高くなるほど先頭噴射の燃料噴射量比率を2回目噴射、3回目噴射の燃料噴射量比率よりも増加させることにより、予混合燃焼の比率を増加させ拡散燃焼の比率を減少させるので、また、図16に示したように通常噴射量Q(負荷相当)に応じた分割噴射圧力P splitを設定する(図30のステップ1303、図31のステップ1403参照)、つまりエンジン負荷が高くなるほど分割噴射圧力P splitを高くしているので、エンジン負荷の増大に伴って燃焼形態としては予混合燃焼を強化できるためスモークの増加を抑制することができる。
本実施形態(請求項8に記載の発明)によれば、図13に実線で示したように通常噴射量Qに応じて分割噴射における第1噴射間隔ΔIT1、第2噴射間隔ΔIT2を求める、つまり先頭噴射(圧縮上死点近傍での燃料噴射)の噴射開始から2回目噴射(膨張行程での1回目の燃料噴射)の噴射開始までの間隔である第1噴射間隔ΔIT1と、同じく先頭噴射(圧縮上死点近傍での燃料噴射)の噴射開始から3回目噴射(膨張行程での2回目の燃料噴射)の噴射開始までの間隔である第2噴射間隔ΔIT2とを拡大させることにより、予混合燃焼の比率を増加させ拡散燃焼の比率を減少させるので、エンジン負荷の増大に伴う拡散燃焼の増加を抑制できスモークの増加を抑制することができる。
本実施形態(請求項11に記載の発明)によれば、先頭噴射(圧縮上死点近傍での燃料噴射)による燃焼の終了後に3回目噴射(膨張行程での最終回の燃料噴射)による燃焼を生じさせる場合に、分割リタード総噴射量Q retard(分割リタード噴射の総燃料噴射量)を分割総噴射量Q split(分割噴射の総燃料噴射量)よりも増量し、その増量分の燃料を3回目噴射量(膨張行程での最終回の燃料噴射量)に加算している(図31のステップ1407参照)。すなわち、3回目(最終回)噴射燃料の着火性を確保して排気温度の昇温とスモークの排出を抑制することを重視し、3回目噴射燃料による燃焼を先行の燃料噴射(先頭噴射及び2回目噴射)の燃料による燃焼の終了後に発生させるので、燃料消費の増加が多くなるものの、目標とする高排気温度や低空気過剰率に短時間で到達させることができる。
実施形態では、前記圧縮上死点近傍での燃料噴射の噴射開始から前記膨張行程での1回目の燃料噴射の噴射開始までの間隔(第1噴射間隔)と、前記圧縮上死点近傍での燃料噴射の噴射開始から前記膨張行程での2回目の燃料噴射の噴射開始までの間隔とを拡大させることにより、前記予混合燃焼の比率を増加させ前記拡散燃焼の比率を減少させる場合で説明したが、前記圧縮上死点近傍での燃料噴射の噴射終了から前記膨張行程での1回目の燃料噴射の噴射開始までの間隔と、前記圧縮上死点近傍での燃料噴射の噴射終了から前記膨張行程での2回目の燃料噴射の噴射開始までの間隔とを拡大させることにより、前記予混合燃焼の比率を増加させ前記拡散燃焼の比率を減少させるようにすることもできる(請求項8に記載の発明)。
実施形態では、膨張行程での燃料噴射が1回の場合と2回の場合で代表させて説明したが、これに限られるもでなく、膨張行程での燃料噴射が3回以上である場合にも適用がある。
請求項1に記載の排気浄化装置状態検出手段の機能は図17のステップ2、6〜15により、燃料噴射実行手段の機能は図18のステップ103、110、図19のステップ203、212、図28のステップ1102、1103により、制御手段の機能は図30のステップ1304、図31のステップ1405によりそれぞれ果たされている。
3 排気通路
5 EGR弁
6 吸気絞り弁
10 燃料噴射装置(可変燃料噴射装置)
16 触媒(排気浄化装置)
17 DPF(フィルタ、排気浄化装置)
30 エンジンコントロールユニット
5 EGR弁
6 吸気絞り弁
10 燃料噴射装置(可変燃料噴射装置)
16 触媒(排気浄化装置)
17 DPF(フィルタ、排気浄化装置)
30 エンジンコントロールユニット
Claims (13)
- 排気通路に設けられる排気浄化装置と、
エンジンの燃焼室に燃料を直接的に噴射可能でかつ燃料噴射を2回以上に分割して噴射可能な可変燃料噴射装置と、
前記排気浄化装置が通常時の状態にあるのかそれとも通常時以外の状態にあるのかを検出する排気浄化装置状態検出手段と
を備え、
前記排気浄化装置状態検出手段の検出結果より排気浄化装置が通常時以外の状態にある場合に、圧縮上死点近傍での燃料噴射と、膨張行程での少なくとも1回の燃料噴射とで構成される複数回の燃料噴射を実行する燃料噴射実行手段と、
この複数回の燃料噴射により生じる燃焼全体における予混合燃焼と拡散燃焼の比率を任意に変化させる制御手段と
を備えることを特徴とするディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。 - 排気温度を検出する排気温度検出手段を備え、
前記燃料噴射実行手段は、
前記圧縮上死点近傍での燃料噴射による燃焼に継続して、前記膨張行程での少なくとも1回の燃料噴射による燃焼を生じさせる分割噴射と、前記圧縮上死点近傍での燃料噴射による燃焼の終了後に、前記膨張行程での少なくとも1回の燃料噴射による燃焼を生じさせる分割リタード噴射とを、前記排気温度検出手段により検出される排気温度状態に応じて、選択的に行う手段である
ことを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。 - 前記排気浄化装置状態検出手段の検出結果より排気浄化装置が通常時の状態にある場合に、前記圧縮上死点近傍での一括燃料噴射を実行することを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
- 前記複数回の燃料噴射の総燃料噴射量を、前記一括燃料噴射の総燃料噴射量よりも増量することを特徴とする請求項3に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
- エンジンの運転状態を検出する運転状態検出手段を備え、
この運転状態検出手段により検出される運転状態に応じて、前記予混合燃焼と拡散燃焼の比率を変化させることを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。 - 前記運転状態検出手段はエンジン負荷またはエンジン回転速度を検出する手段であり、検出されたエンジン負荷が高くなるほどまたはエンジン回転速度が上昇するほど、前記予混合燃焼の比率を増加させ前記拡散燃焼の比率を減少させることを特徴とする請求項5に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
- 燃料噴射圧力を高くするか、前記圧縮上死点近傍での燃料噴射の燃料噴射量比率を前記膨張行程での少なくとも1回の燃料噴射の燃料噴射量比率よりも増加させるかの少なくとも一つを行うことにより、前記予混合燃焼の比率を増加させ前記拡散燃焼の比率を減少させることを特徴とする請求項6に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
- 前記膨張行程での燃料噴射が2回である場合に、前記圧縮上死点近傍での燃料噴射の噴射開始から前記膨張行程での1回目の燃料噴射の噴射開始までの間隔と、同じく前記圧縮上死点近傍での燃料噴射の噴射開始から前記膨張行程での2回目の燃料噴射の噴射開始までの間隔とを拡大させるか、または前記圧縮上死点近傍での燃料噴射の噴射終了から前記膨張行程での1回目の燃料噴射の噴射開始までの間隔と、前記圧縮上死点近傍での燃料噴射の噴射終了から前記膨張行程での2回目の燃料噴射の噴射開始までの間隔とを拡大させることにより、前記予混合燃焼の比率を増加させ前記拡散燃焼の比率を減少させることを特徴とする請求項6に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
- 前記排気浄化装置は、排気中のパティキュレートを捕集するフィルタと、排気の空燃比がリーンのときに排気中のNOxをトラップし、排気空燃比がリッチのときにトラップしているNOxを脱離するとともに、排気の空燃比がリッチになったときリッチ雰囲気中のHC、COを還元剤として用いてその脱離したNOxを脱離浄化するNOxトラップ触媒との少なくとも一方であることを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
- 前記通常時以外の状態は、前記フィルタの再生要求が出ている状態、前記触媒の再生要求が出ている状態、前記触媒の硫黄被毒解除要求が出ている状態、前記触媒の暖機促進要求が出ている状態のうち少なくとも一つの状態であることを特徴とする請求項9に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
- 前記圧縮上死点近傍での燃料噴射による燃焼の終了後に前記膨張行程での最終回の燃料噴射による燃焼を生じさせる場合に、前記分割リタード噴射の総燃料噴射量を前記分割噴射の総燃料噴射量よりも増量し、その増量分の燃料を前記膨張行程での最終回の燃料噴射量に加算することを特徴とする請求項2に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
- 前記排気温度が所定の目標温度上限値以下でかつ所定の目標温度下限値以上の場合に前記分割噴射を行い、前記排気温度が前記目標温度下限値未満の場合に前記分割リタード噴射を行うことを特徴とする請求項2に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
- 前記排気温度が所定の活性温度上限値以下でかつ所定の活性温度下限値以上の場合に前記分割噴射を行い、前記排気温度が前記活性温度下限値未満の場合に前記分割リタード噴射を行うことを特徴とする請求項2に記載のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
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JP2005071257A JP2006250120A (ja) | 2005-03-14 | 2005-03-14 | ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置 |
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