本発明は、上記事実を考慮し、エネルギの高効率な有効利用を図ることができるエンジン始動装置を得ることを目的とする。
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明のエンジン始動装置は、車両に設けられたエンジン及び車軸に接続され、前記エンジン及び前記車軸のうち少なくとも一方の回転力によって駆動されることで前記エンジン内の作動油を汲み上げて所定の圧力で吐出すると共に、自らに油圧が供給されることで駆動して前記エンジンを始動させる油圧駆動機構と、前記車両に設けられ、供給された作動油の油圧及び熱を蓄えるアキュムレータと、前記アキュムレータに作動油の油圧及び熱を蓄える際には前記油圧駆動機構から前記アキュムレータへの作動油の供給を可能とし、かつ、前記油圧駆動機構を油圧により駆動させる際には前記アキュムレータから前記油圧駆動機構への作動油の供給を可能とする油圧供給回路と、前記エンジン内と前記アキュムレータとを接続すると共に、所定の機会に前記アキュムレータから前記エンジン内への作動油の供給を可能とする暖機用油圧回路と、を備えたことを特徴としている。
請求項1記載のエンジン始動装置では、アキュムレータに作動油の油圧及び熱を蓄える際には、エンジン及び車軸のうち少なくとも一方の回転力(例えば、車両制動時の車軸の回転力など)によって油圧駆動機構が駆動される。これにより、エンジン内の作動油が油圧駆動機構によって汲み上げられて所定の圧力で吐出される。またこのとき、油圧供給回路が油圧駆動機構からアキュムレータへの作動油の供給を可能とすることで、上記吐出された作動油はアキュムレータに供給され、アキュムレータに作動油の油圧及び熱が蓄えられる。
一方、油圧駆動機構を油圧により駆動させる際、すなわち、エンジンを始動させる際には、油圧供給回路がアキュムレータから油圧駆動機構への作動油の供給を可能とすることで、油圧駆動機構に作動油(油圧)が供給され、これにより、油圧駆動機構が駆動し、エンジンが始動する。
このように、このエンジン始動装置では、エンジンや車軸(車両)の運動エネルギが、油圧駆動機構により直接油圧エネルギに変換されてアキュムレータに蓄えられると共に、当該蓄えられた油圧エネルギは、エンジン始動の際に油圧駆動機構によって再びエンジンの運動エネルギに変換(回生利用)される構成である。すなわち、従来のエンジン始動装置の如く、エンジンの運動エネルギを一旦電気エネルギに変換した後に油圧エネルギに変換する構成ではないため、電気エネルギに変換する際の大きなエネルギ損失が生じない。したがって、エネルギの高効率な有効利用を図ることができる。
しかも、このエンジン始動装置では、アキュムレータは供給された作動油の油圧のみならず熱も蓄えるようになっており、所定の機会に暖機用油圧回路がアキュムレータからエンジン内への作動油の供給を可能とすることで、アキュムレータに蓄熱された作動油がエンジン内に供給される構成である。したがって、例えば、エンジンの初期始動時にアキュムレータ内の高温の作動油をエンジン内に供給することで、エンジンの始動性を向上させることができると共に、エンジンの早期暖機が可能となる。このように、このエンジン始動装置では、熱エネルギの有効利用も図ることができるので、更に高効率なエネルギの有効利用を図ることができる。
請求項2に係る発明のエンジン始動装置は、請求項1記載のエンジン始動装置において、前記油圧駆動機構は、単一の油圧ポンプモータとされ、前記油圧供給回路は、前記油圧ポンプモータと前記アキュムレータとを接続すると共に、前記アキュムレータに作動油の油圧及び熱を蓄える際には開路する第1油圧回路と、前記第1油圧回路とは独立して前記油圧ポンプモータと前記アキュムレータとを接続すると共に、前記油圧ポンプモータを油圧により駆動させる際には開路する第2油圧回路と、を備えたことを特徴としている。
請求項2記載のエンジン始動装置では、アキュムレータに作動油の油圧及び熱を蓄える際には、エンジン及び車軸のうち少なくとも一方の回転力によって油圧ポンプモータが油圧ポンプとして駆動される共に、第1油圧回路が開路することで油圧ポンプモータからアキュムレータに作動油が供給される。これにより、アキュムレータに作動油の油圧及び熱が蓄えられる。
一方、油圧ポンプモータを油圧により駆動させる際、すなわち、エンジンを始動させる際には、第2油圧回路が開路することでアキュムレータから油圧ポンプモータに作動油(油圧)が供給され、これにより、油圧ポンプモータが油圧モータ(スタータ)として駆動し、エンジンが始動する。
請求項3に係る発明のエンジン始動装置は、請求項2記載のエンジン始動装置において、前記エンジン、前記車軸、及び前記油圧ポンプモータに接続され、前記アキュムレータに作動油の油圧及び熱を蓄える際には前記車軸の回転力を前記油圧ポンプモータに伝達すると共に、前記油圧ポンプモータを油圧により駆動させる際には前記油圧ポンプモータの回転力を所定の減速比で減速して前記エンジンに伝達する駆動力伝達機構を備えた、ことを特徴としている。
請求項3記載のエンジン始動装置では、エンジン、車軸、及び油圧ポンプモータには駆動力伝達機構が接続されている。この駆動力伝達機構は、アキュムレータに作動油の油圧及び熱を蓄える際には車軸の回転力を油圧ポンプモータに伝達する。これにより、油圧ポンプモータは油圧ポンプとして駆動される。また、この駆動力伝達機構は、油圧ポンプモータを油圧により駆動させる際(油圧ポンプモータを油圧モータとしての機能させる際)には、油圧ポンプモータの回転力を所定の減速比で減速してエンジンに伝達し、これにより、エンジンが始動する。
このように、このエンジン始動装置では、油圧ポンプモータの回転力が所定の減速比で減速されてエンジンに伝達されるので、油圧ポンプモータを油圧モータとしての機能させる際に大きなトルクを発生させることができ、これにより、油圧ポンプモータの小型化を図ることができる。しかも、このように油圧ポンプモータを小型化した場合、油圧ポンプモータを油圧ポンプとして機能させる際のポンプ圧を低く設定できる。これにより、アキュムレータの耐圧性を低く設定することも可能となり、アキュムレータの重量の低減およびコストの低減を図ることができる。
請求項4に係る発明のエンジン始動装置は、請求項3記載のエンジン始動装置において、前記駆動力伝達機構は、前記油圧ポンプモータに接続された第1クラッチと、前記第1クラッチに接続された第1ギヤと、前記第1ギヤに噛合された第2ギヤと、前記エンジンに接続された第3ギヤと、前記第3ギヤよりも歯数が少なく形成され、前記第3ギヤに噛合された第4ギヤと、前記第1ギヤと前記第4ギヤとの間に接続された第1ワンウェイクラッチと、前記第2ギヤと前記車軸との間に接続された第2ワンウェイクラッチと、前記第2ギヤと前記第3ギヤとの間に接続された第2クラッチと、を備えたことを特徴としている。
請求項4記載のエンジン始動装置では、車両の走行時には、車軸の回転力が第2ワンウェイクラッチを介して第2ギヤに伝達され、第2ギヤが回転すると共に、当該第2ギヤに噛合された第1ギヤが回転する。そして、例えば、車両の制動時などに第1クラッチが連結されると、第1ギヤの回転力が第1クラッチを介して油圧ポンプモータに伝達され、油圧ポンプモータが油圧ポンプとして駆動される。なお、第2ギヤと第3ギヤとの間には、エンジンの回転力を車軸に伝達する第2クラッチが接続されているが、車両の走行時には、第2クラッチの連結状態に関わらず、第2ギヤが回転する。
一方、エンジンを始動する際には、第1クラッチが連結されると共に、油圧ポンプモータに油圧が供給され、油圧ポンプモータが油圧モータとして駆動する。すると、油圧ポンプモータの回転力が第1クラッチを介して第1ギヤに伝達され、第1ギヤが回転する。第1ギヤの回転力は第1ワンウェイクラッチを介して第4ギヤに伝達され、第4ギヤが回転すると共に、当該第4ギヤに噛合された第3ギヤが減速されて回転する。これにより、第3ギヤに接続されたエンジンが回転し、エンジンが始動する。なお、このとき、第1ギヤに噛合された第2ギヤも回転するが、第2ギヤから車軸への回転力の伝達は第2ワンウェイクラッチによって遮断される。
請求項5に係る発明のエンジン始動装置は、請求項3記載のエンジン始動装置において、前記駆動力伝達機構は、前記油圧ポンプモータに接続された第1クラッチと、前記第1クラッチに接続された第1プーリと、前記第1プーリの測近に配置された第2プーリと、前記第1プーリと前記第2プーリとに巻き掛けられた第1ベルトと、前記エンジンに接続された第3プーリと、前記第3プーリよりも小径に形成され、前記第3プーリの測近に配置された第4プーリと、前記第3プーリと前記第4プーリとに巻き掛けられた第2ベルトと、前記第1プーリと前記第4プーリとの間に接続された第1ワンウェイクラッチと、前記第2プーリと前記車軸との間に接続された第2ワンウェイクラッチと、前記第2プーリと前記第3プーリとの間に接続された第2クラッチと、を備えたことを特徴としている。
請求項5記載のエンジン始動装置では、前述した請求項4記載のエンジン始動装置と同様の作用効果を奏する。
請求項6に係る発明のエンジン始動装置は、請求項3記載のエンジン始動装置において、前記駆動力伝達機構は、前記油圧ポンプモータに接続された第1ギヤと、前記車軸に接続された第2ギヤと、前記エンジンに接続された第3ギヤと、前記第3ギヤよりも歯数が少なく形成され、前記第1ギヤに接続された第4ギヤと、前記第2ギヤと前記第3ギヤとの間に接続されたクラッチと、前記アキュムレータに作動油の油圧及び熱を蓄える際には前記第1ギヤを前記第2ギヤに噛合させると共に、前記油圧ポンプモータを油圧により駆動させる際には前記第4ギヤを前記第3ギヤに噛合させる飛び出し機構と、を備えたことを特徴としている。
請求項6記載のエンジン始動装置では、車両の走行時には、車軸に接続された第2ギヤが回転する。そして、例えば、車両の制動時などに飛び出し機構によって第1ギヤが第2ギヤに噛合されると、第2ギヤの回転力が第1ギヤを介して油圧ポンプモータに伝達され、油圧ポンプモータが油圧ポンプとして駆動される。なお、前述した請求項4記載のエンジン始動装置と同様に、車両の走行時には、第2ギヤと第3ギヤとの間に接続されたクラッチの連結状態に関わらず、第2ギヤが回転する。
一方、エンジンを始動する際には、油圧ポンプモータに油圧が供給され、油圧ポンプモータが油圧モータとして駆動すると共に、第1ギヤを介して油圧ポンプモータに接続された第4ギヤが、飛び出し機構によって第3ギヤに噛合される。これにより、油圧ポンプモータの駆動力が第1ギヤ及び第4ギヤを介して第3ギヤに伝達され、第3ギヤが減速回転すると共に、第3ギヤに接続されたエンジンが回転し、エンジンが始動する。
請求項7に係る発明のエンジン始動装置は、請求項3記載のエンジン始動装置において、前記駆動力伝達機構は、前記油圧ポンプモータに接続された第1ギヤと、前記車軸に接続された第2ギヤと、前記エンジンに接続された第3ギヤと、前記第3ギヤよりも歯数が少なく形成され、前記第3ギヤに噛合された第4ギヤと、前記第1ギヤと前記第4ギヤとの間に接続されたワンウェイクラッチと、前記第2ギヤと前記第3ギヤとの間に接続されたクラッチと、前記アキュムレータに作動油の油圧及び熱を蓄える際には前記第1ギヤを前記第2ギヤに噛合させる飛び出し機構と、を備えたことを特徴としている。
請求項7記載のエンジン始動装置では、車両の走行時に油圧ポンプモータを油圧ポンプとして駆動させる際には、前述した請求項6記載のエンジン始動装置と同様の作用効果を奏する。
一方、エンジンを始動する際には、油圧ポンプモータに油圧が供給され、油圧ポンプモータが油圧モータとして駆動する。このため、油圧ポンプモータに接続された第1ギヤが回転すると共に、第1ギヤの回転力がワンウェイクラッチを介して第4ギヤに伝達され、第4ギヤが回転する。第4ギヤには第3ギヤが噛合されているため、第3ギヤが減速されて回転すると共に、第3ギヤに接続されたエンジンが回転し、エンジンが始動する。
請求項8に係る発明のエンジン始動装置は、請求項4乃至請求項7の何れか1項記載のエンジン始動装置において、前記第2クラッチ及び前記クラッチは、マニュアルトランスミッション用のクラッチとされる、ことを特徴としている。
請求項8記載のエンジン始動装置では、第2ギヤ又は第2プーリと第3ギヤ又は第3プーリとの間に接続された第2クラッチ及びクラッチが、マニュアルトランスミッション用のクラッチとされているので、構成が簡単である。
請求項9に係る発明のエンジン始動装置は、請求項3記載のエンジン始動装置において、前記油圧ポンプモータは、前記エンジンを介して前記車軸に接続されると共に、前記駆動力伝達機構は、前記油圧ポンプモータに接続された第1ギヤと、前記第1ギヤに噛合された第2ギヤと、前記エンジンに接続された第3ギヤと、前記第3ギヤよりも歯数が少なく形成され、前記第3ギヤに噛合された第4ギヤと、前記第1ギヤと前記第4ギヤとの間に接続されたワンウェイクラッチと、前記第2ギヤと前記第3ギヤとの間に接続されたクラッチと、を備えたことを特徴としている。
請求項9記載のエンジン始動装置では、エンジンの回転時には、エンジンに接続された第3ギヤが回転する。そして、例えば、車両の制動時などにクラッチが連結されると、第3ギヤの回転力がクラッチを介して第2ギヤに伝達され、第2ギヤが回転する。第2ギヤには第1ギヤが噛合されているため、第1ギヤが回転し、第1ギヤに接続された油圧ポンプモータが油圧ポンプとして駆動される。なお、第3ギヤには第4ギヤが噛合されているため、エンジンの回転時には第4ギヤも回転するが、第4ギヤから第1ギヤへの回転力の伝達はワンウェイクラッチにより遮断される。
一方、エンジンを始動する際には、油圧ポンプモータに油圧が供給され、油圧ポンプモータが油圧モータとして駆動する。これにより、油圧ポンプモータに接続された第1ギヤが回転する。第1ギヤの回転はワンウェイクラッチを介して第4ギヤに伝達され、第4ギヤが回転すると共に、当該第4ギヤに噛合された第3ギヤが減速されて回転する。これにより、第3ギヤに接続されたエンジンが回転し、エンジンが始動する。なおこのとき、第1ギヤに噛合された第2ギヤも回転するが、第2ギヤから第3ギヤへの回転力の伝達はクラッチによって遮断される。
請求項10に係る発明のエンジン始動装置は、請求項3記載のエンジン始動装置において、前記油圧ポンプモータは、前記エンジンを介して前記車軸に接続されると共に、前記駆動力伝達機構は、前記油圧ポンプモータに接続された第1ギヤと、前記第1ギヤに噛合された第2ギヤと、前記エンジンに接続された第3ギヤと、前記第3ギヤよりも歯数が少なく形成され、前記第3ギヤに噛合された第4ギヤと、前記第1ギヤと前記第4ギヤとの間に接続された第1ワンウェイクラッチと、前記第2ギヤと前記第3ギヤとの間に接続された第2ワンウェイクラッチと、前記第1ギヤと前記油圧ポンプモータとの間又は前記第2ワンウェイクラッチと前記第3ギヤとの間に接続されたクラッチと、を備えたことを特徴としている。
請求項10記載のエンジン始動装置では、エンジンの回転時には、エンジンに接続された第3ギヤが回転する。ここで、クラッチが第2ワンウェイクラッチと第3ギヤとの間に接続されている場合には、例えば、車両の制動時(エンジンブレーキの作動時)などにクラッチが連結されることで、第3ギヤの回転力がクラッチ及び第2ワンウェイクラッチを介して第2ギヤに伝達され、第2ギヤが回転する。第2ギヤには第1ギヤが噛合されているため、第1ギヤが回転し、第1ギヤに接続された油圧ポンプモータが油圧ポンプとして駆動される。
これに対し、クラッチが第1ギヤと油圧ポンプモータとの間に接続されている場合には、第3ギヤの回転は第2ワンウェイクラッチを介して第2ギヤに伝達され、第2ギヤが回転すると共に、第2ギヤに噛合された第1ギヤが回転する。そして、例えば、車両の制動時(エンジンブレーキの作動時)などにクラッチが連結されると、第1ギヤの回転がクラッチを介して油圧ポンプモータに伝達され、油圧ポンプモータが油圧ポンプとして駆動される。
なお、第3ギヤには第4ギヤが噛合されているため、エンジンの回転時には第4ギヤも回転するが、第4ギヤから第1ギヤへの回転力の伝達は第1ワンウェイクラッチにより遮断される。
一方、エンジンを始動する際には、油圧ポンプモータに油圧が供給され、油圧ポンプモータが油圧モータとして駆動する。ここで、クラッチが第2ワンウェイクラッチと第3ギヤとの間に接続されている場合には、クラッチの連結状態に関わらず油圧ポンプモータの駆動により第1ギヤが回転する。これに対し、クラッチが第1ギヤと油圧ポンプモータとの間に接続されている場合には、クラッチが連結されることで油圧ポンプモータの回転力がクラッチを介して第1ギヤに伝達され、第1ギヤが回転する。
第1ギヤの回転力は第1ワンウェイクラッチを介して第4ギヤに伝達され、第4ギヤが回転すると共に、当該第4ギヤに噛合された第3ギヤが減速されて回転する。これにより、第3ギヤに接続されたエンジンが回転し、エンジンが始動する。なお、このとき、第1ギヤに噛合された第2ギヤも回転するが、第2ギヤから第3ギヤへの回転力の伝達は第2ワンウェイクラッチによって遮断される。
請求項11に係る発明のエンジン始動装置は、請求項3記載のエンジン始動装置において、前記油圧ポンプモータは、前記エンジンを介して前記車軸に接続されると共に、前記駆動力伝達機構は、前記油圧ポンプモータに接続されたサンギヤと、前記サンギヤに噛合されたプラネタリギヤと、前記プラネタリギヤを支持すると共に前記エンジンに接続されたキャリアと、前記プラネタリギヤに噛合されたリングギヤと、前記リングギヤと前記車両とを一体的に連結可能な第1クラッチと、前記サンギヤと前記リングギヤとを一体的に連結可能な第2クラッチと、を備えた遊星歯車機構とされる、ことを特徴としている。
請求項11記載のエンジン始動装置では、エンジンの回転時(例えば、エンジンブレーキの作動時など)において、遊星歯車機構のサンギヤとリングギヤとが第2クラッチにより一体的に連結されると、遊星歯車機構(キャリア、プラネタリギヤ、リングギヤ、及びサンギヤ)がエンジンの回転力によって一体的に回転する。これにより、サンギヤに接続された油圧ポンプモータが油圧ポンプとして駆動される。
一方、エンジンを始動する際には、遊星歯車機構のリングギヤと車両(例えば、車両に固定された遊星歯車機構のハウジングなども含む)とが第1クラッチにより一体的に連結されると共に、油圧ポンプモータに油圧が供給され、油圧ポンプモータが油圧モータとして駆動する。これにより、油圧ポンプモータに接続されたサンギヤが回転すると共に、サンギヤに噛合されたプラネタリギヤを介してキャリアが減速回転する。これにより、キャリアに接続されたエンジンが回転し、エンジンが始動する。
請求項12に係る発明のエンジン始動装置は、請求項1記載のエンジン始動装置において、前記油圧駆動機構は、前記車軸に接続され、前記車軸の回転力によって駆動されることで前記エンジン内の作動油を汲み上げて所定の圧力で吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプとは独立して前記エンジンに接続され、自らに油圧が供給されることで駆動して前記エンジンを始動させる油圧モータと、を備え、かつ、前記油圧供給回路は、前記油圧ポンプと前記アキュムレータとを接続し、前記アキュムレータに作動油の油圧及び熱を蓄える際には開路する第1油圧回路と、前記アキュムレータと前記油圧モータとを接続し、前記油圧モータを油圧により駆動させる際には開路する第2油圧回路と、を備えたことを特徴としている。
請求項12記載のエンジン始動装置では、アキュムレータに作動油の油圧及び熱を蓄える際には、車軸の回転力によって油圧ポンプが駆動される共に、第1油圧回路が開路することで油圧ポンプからアキュムレータへ作動油が供給される。これにより、アキュムレータに作動油の油圧及び熱が蓄えられる。
一方、油圧モータを油圧により駆動させる際、すなわち、エンジンを始動させる際には、第2油圧回路が開路することでアキュムレータから油圧モータへ作動油(油圧)が供給され、これにより、油圧モータが駆動してエンジンが始動する。
請求項13に係る発明のエンジン始動装置は、請求項12記載のエンジン始動装置において、前記車軸と前記油圧ポンプとの間に接続され、前記アキュムレータに作動油の油圧及び熱を蓄える際には前記車軸の回転力を前記油圧ポンプに伝達する第1駆動力伝達手段を備えた、ことを特徴としている。
請求項13記載のエンジン始動装置では、車軸と油圧ポンプとの間には第1駆動力伝達機構が接続されている。この第1駆動力伝達機構は、アキュムレータに作動油の油圧及び熱を蓄える際には車軸の回転力を油圧ポンプに伝達する。これにより、油圧ポンプが駆動される。
請求項14に係る発明のエンジン始動装置は、請求項13記載のエンジン始動装置において、前記第1駆動力伝達機構は、前記油圧ポンプに接続されたクラッチと、前記クラッチに接続された第1ギヤと、前記車軸に接続されると共に前記第1ギヤに噛合された第2ギヤと、を備えたことを特徴としている。
請求項14記載のエンジン始動装置では、車両の走行時には、車軸に接続された第2ギヤが回転すると共に、当該第2ギヤに噛合された第1ギヤが回転する。そして、例えば、車両の制動時などにクラッチが連結されると、第1ギヤの回転力がクラッチを介して油圧ポンプに伝達され、油圧ポンプが駆動される。
請求項15に係る発明のエンジン始動装置は、請求項12記載のエンジン始動装置において、前記エンジンと前記油圧モータとの間に接続され、前記油圧モータを油圧により駆動させる際には前記油圧モータの回転力を所定の減速比で減速して前記エンジンに伝達すると共に、前記エンジンから前記油圧モータへの回転力の伝達を遮断する第2駆動力伝達機構を備えた、ことを特徴としている。
請求項15記載のエンジン始動装置では、エンジンと油圧モータとの間には、第2駆動力伝達機構が接続されている。この第2駆動力伝達機構は、油圧モータを油圧により駆動させる際には、油圧モータの回転力を所定の減速比で減速してエンジンに伝達する。したがって、油圧モータの駆動により大きなトルクを発生させることができるので、油圧モータの小型化を図ることができる。
また、この第2駆動力伝達機構は、エンジンから油圧モータへの回転力の伝達を遮断する。したがって、エンジンの回転時には、エンジンは油圧モータと無関係に回転することができるので、エネルギの無駄な消費を抑制できる。
請求項16に係る発明のエンジン始動装置は、請求項15記載のエンジン始動装置において、前記第2駆動力伝達機構は、前記エンジンに接続された第3ギヤと、前記第3ギヤよりも歯数が少なく形成され、前記第3ギヤに噛合された第4ギヤと、前記第4ギヤと前記油圧モータとの間に接続されたワンウェイクラッチ又はクラッチと、を備えたことを特徴としている。
請求項16記載のエンジン始動装置では、エンジンを始動する際には、油圧モータに油圧が供給され、油圧モータが駆動する。ここで、油圧モータと第4ギヤとの間にワンウェイクラッチが接続されている場合には、油圧モータの回転力がワンウェイクラッチを介して第4ギヤに伝達され、第4ギヤが回転すると共に、第4ギヤに噛合された第3ギヤが減速回転する。これにより、第3ギヤに接続されたエンジンが回転し、エンジンが始動すると共に、エンジンから油圧モータへの回転力の伝達はワンウェイクラッチにより遮断される。
これに対し、油圧モータと第4ギヤとの間にクラッチが接続されている場合には、クラッチが連結されることで、油圧モータの回転力がクラッチを介して第4ギヤに伝達され、第4ギヤに噛合された第3ギヤが減速されて回転する。これにより、第3ギヤに接続されたエンジンが回転し、エンジンが始動する。そして、エンジンが始動した後にクラッチの連結状態が解除されることで、エンジンから油圧モータへの回転力の伝達が遮断される。
請求項17に係る発明のエンジン始動装置は、請求項2乃至請求項16の何れか1項記載のエンジン始動装置において、前記暖機用油圧回路は、前記第2油圧回路が開路する際に開路する、ことを特徴としている。
請求項17記載のエンジン始動装置では、第2油圧回路が回路する際、すなわち、油圧ポンプモータ又は油圧モータに作動油(油圧)が供給されてエンジンが始動する際に、暖機用油圧回路が開路する。このため、アキュムレータに蓄熱・蓄圧された作動油は油圧ポンプモータ又は油圧モータのみならずエンジン内にも供給される。したがって、このエンジン始動装置では、エンジンの初期始動時において、油圧ポンプモータ又は油圧モータにより効率的にエンジンを始動できると共に、高温の作動油のエンジン内への供給によりエンジンの始動性向上や早期暖機の促進などが可能となる。
請求項18に係る発明のエンジン始動装置は、請求項17記載のエンジン始動装置において、前記暖機用油圧回路は、前記アキュムレータ側が前記第2油圧回路と同一の油圧回路とされると共に前記油圧ポンプモータ又は前記油圧モータへ至る手前で前記エンジン側へ分岐されている、ことを特徴としている。
請求項18記載のエンジン始動装置では、暖機用油圧回路は、アキュムレータ側が第2油圧回路と同一の油圧回路とされると共に、油圧ポンプモータ又は油圧モータへ至る手前でエンジン側へ分岐されている。したがって、暖機用油圧回路の構成が簡単であると共に、その全長を短く設定できるので、作動油が暖機用油圧回路を流れる際にその油温が低下することを軽減できる。
請求項19に係る発明のエンジン始動装置は、請求項17記載のエンジン始動装置において、前記暖機用油圧回路は、前記アキュムレータ側が前記第2油圧回路と同一の油圧回路とされると共に前記油圧ポンプモータ又は前記油圧モータを経由した後で前記エンジン側へ分岐されている、ことを特徴としている。
請求項19記載のエンジン始動装置では、暖機用油圧回路は、アキュムレータ側が第2油圧回路と同一の油圧回路とされると共に、油圧ポンプモータ又は油圧モータを経由した後でエンジン側へ分岐されている。したがって、油圧ポンプモータ又は油圧モータに充分に作動油(油圧)を供給しつつ(油圧ポンプモータ又は油圧モータの駆動力を充分に確保しつつ)、エンジン内にも作動油を供給できる。
請求項20に係る発明のエンジン始動装置は、請求項1記載のエンジン始動装置において、前記油圧駆動機構は、前記エンジンを介して前記車軸に接続された単一の油圧ポンプモータとされ、前記油圧供給回路は、前記油圧ポンプモータと前記アキュムレータとを接続すると共に、前記アキュムレータに作動油の油圧及び熱を蓄える際、並びに、前記油圧ポンプモータを油圧により駆動させる際には開路する共通油圧回路とされ、かつ、前記エンジン及び前記油圧ポンプモータに接続され、前記エンジンの回転力を前記油圧ポンプモータに伝達して前記油圧ポンプモータを正転させると共に、前記油圧ポンプモータの逆転による回転力を所定の減速比で減速して前記エンジンに伝達し前記エンジンを回転させる駆動力伝達機構を備えた、ことを特徴としている。
請求項20記載のエンジン始動装置では、アキュムレータに作動油の油圧及び熱を蓄える際には、エンジンの回転力が駆動力伝達機構によって油圧ポンプモータに伝達され、油圧ポンプモータが正転する。これにより、油圧ポンプモータが油圧ポンプとして機能する。またこのとき、共通油圧回路が開路することで油圧ポンプモータからアキュムレータへの作動油の供給が可能とされ、これにより、アキュムレータに作動油の油圧及び熱が蓄えられる。
一方、油圧ポンプモータを油圧により駆動させる際、すなわち、エンジンを始動させる際には、共通油圧回路が開路することでアキュムレータから油圧ポンプモータへの作動油(油圧)の供給が可能とされ、これにより、油圧ポンプモータが逆転する(油圧ポンプモータが油圧モータとして機能する)。この場合、油圧ポンプモータの逆転による回転力は駆動力伝達機構によって所定の減速比で減速されてエンジンに伝達され、これにより、エンジンが回転し、エンジンが始動する。
請求項21に係る発明のエンジン始動装置は、請求項20記載のエンジン始動装置において、前記駆動力伝達機構は、前記油圧ポンプモータに接続されたサンギヤと、前記サンギヤに噛合されたプラネタリギヤと、前記プラネタリギヤを支持するキャリアと、前記プラネタリギヤに噛合されると共に前記エンジンに接続されたリングギヤと、前記キャリアと前記車両とを一体的に連結可能な第1クラッチと、前記サンギヤと前記リングギヤとを一体的に連結可能な第2クラッチと、を備えた遊星歯車機構とされる、ことを特徴としている。
請求項21記載のエンジン始動装置では、エンジンの回転時(例えば、エンジンブレーキの作動時など)において、遊星歯車機構のサンギヤとリングギヤとが第2クラッチにより一体的に連結されると、エンジンの回転力がリングギヤ及びサンギヤを介して油圧ポンプモータに伝達され、これにより、油圧ポンプモータが正転する。
一方、エンジンを始動する際には、遊星歯車機構のキャリアと車両(例えば、車両に固定された遊星歯車機構のハウジングなど)とが一体的に連結されると共に、油圧ポンプモータに油圧が供給され、油圧ポンプモータが逆転する。これにより、油圧ポンプモータに接続されたサンギヤがエンジンの回転方向と逆方向に回転すると共に、プラネタリギヤを介してリングギヤがサンギヤと反対方向に減速回転する。これにより、リングギヤに接続されたエンジンが回転し、エンジンが始動する。
請求項22に係る発明のエンジン始動装置は、請求項20記載のエンジン始動装置において、前記駆動力伝達機構は、前記エンジンに接続された第1サンギヤと、前記第1サンギヤに噛合された第1プラネタリギヤと、前記第1サンギヤに接続されたクラッチと、前記クラッチに接続された第2サンギヤと、前記第2サンギヤに噛合された第2プラネタリギヤと、前記第2サンギヤに接続され、前記エンジンの回転方向と反対方向への前記第2サンギヤの回転を規制するワンウェイクラッチと、前記第1プラネタリギヤ及び前記第2プラネタリギヤに噛合された共通ギヤと、前記第1プラネタリギヤ、前記第2プラネタリギヤ、及び前記共通ギヤを支持すると共に前記油圧ポンプモータに接続されたキャリアと、を備えた遊星歯車機構とされる、ことを特徴としている。
請求項22記載のエンジン始動装置では、エンジンの回転時(例えば、エンジンブレーキの作動時など)において、遊星歯車機構の第1サンギヤと第2サンギヤとがクラッチにより連結されると、遊星歯車機構(第1サンギヤ、第2サンギヤ、第1プラネタリギヤ、第2プラネタリギヤ、共通ギヤ、及びキャリア)が一体的に回転する。これにより、エンジンの回転力が上記遊星歯車を介して油圧ポンプモータに伝達され、油圧ポンプモータが正転する。
一方、エンジンを始動する際には、クラッチの連結状態が解除されると共に、油圧ポンプモータに油圧が供給され、油圧ポンプモータが逆転する。これにより、油圧ポンプモータに接続されたキャリアがエンジンの回転方向と逆方向に回転する。このとき、第2サンギヤはワンウェイクラッチの機能によりエンジンの回転方向と逆方向への回転を制限され、第2プラネタリギヤが自転及び公転すると共に、共通ギヤが自転及び公転し、第1プラネタリギヤが自転及び公転する。これにより、第1サンギヤがエンジンの回転方向と同じ方向へ減速回転すると共に、第1サンギヤに接続されたエンジンが回転し、エンジンが始動する。
請求項23に係る発明のエンジン始動装置は、請求項20乃至請求項22の何れか1項記載のエンジン始動装置において、前記暖機用油圧回路は、前記油圧ポンプモータを油圧により駆動させるために前記共通油圧回路が開路する際に開路する、ことを特徴としている。
請求項23記載のエンジン始動装置では、油圧ポンプモータを油圧により駆動させるために共通油圧回路が回路する際、すなわち、油圧ポンプモータに作動油(油圧)が供給されてエンジンが始動する際に、暖機用油圧回路が開路する。このため、アキュムレータに蓄熱・蓄圧された作動油は油圧ポンプモータのみならずエンジン内にも供給される。したがって、このエンジン始動装置では、エンジンの初期始動時において、油圧ポンプモータにより効率的にエンジンを始動できると共に、高温の作動油のエンジン内への供給によりエンジンの始動性向上や早期暖機の促進などが可能となる。
請求項24に係る発明のエンジン始動装置は、請求項23記載のエンジン始動装置において、前記暖機用油圧回路は、前記アキュムレータ側が前記共通油圧回路と同一の油圧回路とされると共に前記油圧ポンプモータへ至る手前で前記エンジン側へ分岐されている、ことを特徴としている。
請求項24記載のエンジン始動装置では、暖機用油圧回路は、アキュムレータ側が共通油圧回路と同一の油圧回路とされると共に、油圧ポンプモータへ至る手前でエンジン側へ分岐されている。したがって、暖機用油圧回路の構成が簡単であると共に、その全長を短く設定できるので、作動油が暖機用油圧回路を流れる際にその油温が低下することを軽減できる。
請求項25に係る発明のエンジン始動装置は、請求項23記載のエンジン始動装置において、前記暖機用油圧回路は、前記アキュムレータ側が前記共通油圧回路と同一の油圧回路とされると共に前記油圧ポンプモータを経由した後で前記エンジン側へ分岐されている、ことを特徴としている。
請求項25記載のエンジン始動装置では、暖機用油圧回路は、アキュムレータ側が共通油圧回路と同一の油圧回路とされると共に、油圧ポンプモータを経由した後でエンジン側へ分岐されている。したがって、油圧ポンプモータに充分に作動油(油圧)を供給しつつ(油圧ポンプモータの駆動力を充分に確保しつつ)、エンジン内にも作動油を供給できる。
請求項26に係る発明のエンジン始動装置は、請求項1乃至請求項25の何れか1項記載のエンジン始動装置において、前記エンジンに接続され、前記エンジンを始動可能な電動モータを備えた、ことを特徴としている。
請求項26記載のエンジン始動装置では、電動モータによってエンジンを始動させることができるので、アキュムレータ内に蓄熱・蓄圧された作動油をエンジンの初期始動時に全てエンジン内に供給することができる。これにより、エンジンの始動性を一層向上できると共に、暖機が一層早くなり好適である。また、例えば、長時間の車両放置後などにアキュムレータ内の作動油の油圧が低下した場合でも、電動モータによってエンジンを速やかに始動させることができる。
以上説明したように、本発明のエンジン始動装置によれば、エネルギの高効率な有効利用を図ることができる。
<第1の実施の形態>
図1には、本発明の第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置10は、マニュアルトランスミッションを備えた車両(共に図示省略)に適用されて構成されたものであり、上記車両に設けられたエンジン12と、上記車両の車軸に接続されたプロペラシャフト14との間に配置された単一の油圧ポンプモータ16を備えている。
油圧ポンプモータ16とエンジン12との間には、駆動力伝達機構18が設けられている。駆動力伝達機構18は、油圧ポンプモータ16の回転軸に接続された第1クラッチとしての電磁クラッチ20を備えている。この電磁クラッチ20には油圧ポンプモータ16と反対側において第1ギヤ22が接続されており、この第1ギヤ20には当該第1ギヤ20と略同じ歯数に形成された第2ギヤ24が噛合されている。第2ギヤ24の軸心部には第2ワンウェイクラッチ26が配設されており、第2ギヤ24は第2ワンウェイクラッチ26を介してプロペラシャフト14に接続されている。この第2ワンウェイクラッチ26は、プロペラシャフト14の回転力を第2ギヤ24へ伝達すると共に、第2ギヤ24からプロペラシャフト14への回転力の伝達を遮断するようになっている。
また、駆動力伝達機構18は、エンジン12のクランク軸に接続された第3ギヤ28を備えており、この第3ギヤ28には当該第3ギヤ28よりも歯数が少なく形成された第4ギヤ30が噛合されている。さらに、第3ギヤ28と第2ワンウェイクラッチ26との間には、第2クラッチとして前述したマニュアルトランスミッション用のクラッチ32(以下、「MTクラッチ32」という)が接続されており、第1ギヤ22と第4ギヤ30との間には、第1ワンウェイクラッチ34が接続されている。第1ワンウェイクラッチ34は、第1ギヤ22の回転力を第4ギヤ30に伝達すると共に、第4ギヤ30から第1ギヤ22への回転力の伝達を遮断するようになっている。なお、図示しないマニュアルトランスミッションは、第2ギヤ24(第2ワンウェイクラッチ26)とMTクラッチ32との間、もしくは、第2ギヤ24(第2ワンウェイクラッチ26)とプロペラシャフト14との間に配設されている。
一方、エンジン始動装置10は、車両に設けられたアキュムレータ36を備えている。アキュムレータ36は断熱構造を有しており、供給された作動油の油圧及び熱を蓄えるようになっている。このアキュムレータ36は、第1油圧回路を構成する油路38を介して油圧ポンプモータ16の吐出(ディスチャージ)部に接続されると共に、第2油圧回路を構成する油路40を介して、油圧ポンプモータ16の吸入(サクション)部に接続されている。
第1油圧開路を構成する油路38の途中には、電磁切替弁42が設けられている。この電磁切替弁42には、油路44の一端部が接続されており、油路44の他端部はエンジン12のオイルパン46内に配設されている。この電磁切替弁42は、油路38を介して油圧ポンプモータ16の吐出部とアキュムレータ36とを連通させた状態、又は、油路38の一部及び油路44を介して油圧ポンプモータ16の吐出部とオイルパン46内とを連通させた状態の何れかの状態を選択的に取り得る構成とされている。
また、油路38の電磁切替弁42よりも下流側には、逆止弁48が設けられている。この逆止弁48は、アキュムレータ36から油圧ポンプモータ16への作動油の流出を遮断するようになっている。
一方、第2油圧回路を構成する油路40の途中には、電磁切替弁50が設けられている。この電磁切替弁50には、暖機用油圧回路を構成する油路52の一端部が接続されており、油路52の他端部はエンジン12内に配設されている。電磁切替弁50は、油路40を介してアキュムレータ36と油圧ポンプモータ16の吸入部とを連通させた状態、又は、油路40の一部及び油路52を介してアキュムレータ36とエンジン12内とを連通させた状態の何れかの状態を選択的に取り得る構成とされている。
すなわち、このエンジン始動装置10では、暖機用油圧回路は、油路40の一部(アキュムレータ36と電磁切替弁50との間の部位)と油路52とにより構成されている(換言すれば、暖機用油圧回路は、アキュムレータ36側が第2油圧回路を構成する油路40と同一の油圧回路とされると共に油圧ポンプモータ16へ至る手前でエンジン12側へ分岐されている)。
また、油路40の電磁切替弁50よりも下流側には、電磁切替弁54が設けられている。この電磁切替弁54には、油路56の一端部が接続されており、油路56の他端部はオイルパン46内に設けられたストレーナ58に接続されている。この電磁切替弁54は、油路40を介してアキュムレータ36と油圧ポンプモータ16の吸入部とを連通させた状態、又は、油路40の一部及び油路56を介してストレーナ58と油圧ポンプモータ16の吸入部とを連通させた状態の何れかの状態を選択的に取り得る構成となっている。
さらに、このエンジン始動装置10では、エンジン12に接続された図示しない電動モータを備えている。この電動モータは、エンジン12を直接始動可能とされている。
次に、本第1の実施の形態の作用について説明する。
(1)車両の運動エネルギを回生する場合
上記構成のエンジン始動装置10では、車両の制動時には、車両の運動エネルギを回生して油圧エネルギとしてアキュムレータ36に貯蔵する。すなわち、車両の制動時に電磁クラッチ20が連結されると、図示しない車軸の回転力がプロペラシャフト14、第2ワンウェイクラッチ26、第2ギヤ24、第1ギヤ22、及び電磁クラッチ20を介して油圧ポンプモータ16に伝達され、油圧ポンプモータ16が油圧ポンプとして駆動される。またこのとき、電磁切替弁50の作動により油路40が閉路されると共に、電磁切替弁54の作動によりストレーナ58と油圧ポンプモータ16の吸入部とが連通される。さらに、電磁切替弁42の作動により油圧ポンプモータ16の吐出部とアキュムレータ36とが連通される(油路38が開路される)。
これにより、図2に示す如く、オイルパン46内の作動油が油圧ポンプモータ16によって汲み上げられて所定の圧力で吐出されると共に、当該吐出された作動油は油路38を介してアキュムレータ36に供給される。但し、逆止弁48の機能により、アキュムレータ36内の油圧が接点60の油圧以下の間は、アキュムレータ36への油圧の供給が許容され、アキュムレータ36内の油圧が接点60の油圧と同じになると、逆止弁48によってアキュムレータ36への油圧の供給が遮断される(アキュムレータ36から油圧ポンプモータ16への作動油の流出が防止される)。これにより、アキュムレータ36は供給された作動油の油圧を蓄圧し、回生された車両の運動エネルギはアキュムレータ36に油圧エネルギとして貯蔵される。
しかも、このエンジン始動装置10では、アキュムレータ36は断熱構造を有しているため、アキュムレータ36に供給された高温の作動油はその熱を蓄熱される(作動油の温度低下が防止又は抑制される)。
なお、このエンジン始動装置10では、第1ギヤ22及び電磁クラッチ20を介してプロペラシャフト14の回転力を油圧ポンプモータ16に伝達する第2ギヤ24は、MTクラッチ32のプロペラシャフト14側に接続されているので、車両の制動時に乗員がMTクラッチ32の連結状態を解除したとしても、プロペラシャフト14から油圧ポンプモータ16への回転力の伝達は可能とされる。
また、車両の制動時には、エンジン12に接続された第3ギヤ28及び該第3ギヤ28に噛合された第4ギヤ30も回転するが、第4ギヤ30の回転は第3ギヤ28により増速され、第4ギヤ30の回転速度が第1ギヤ22の回転速度よりも速くなるため、第4ギヤ30から第1ギヤ22への回転力の伝達は第1ワンウェイクラッチ34によって遮断される。
(2)油圧ポンプモータ16によりエンジン12を始動させる場合
エンジン始動装置10では、エンジン12を始動させる際(特に、アイドリングストップ後にエンジン12を再始動させる際)には、油圧ポンプモータ16によりエンジン12を始動させる。この場合、電磁クラッチ20が連結されると共に、電磁切替弁42の作動により油路44を介して油圧ポンプモータ16の吐出部とオイルパン46とが連通される。さらに、電磁切替弁50及び電磁切替弁54の作動によりアキュムレータ36と油圧ポンプモータ16の吸入部とが連通される(油路40が開路される)。
これにより、図3に示す如く、アキュムレータ36内の高圧作動油が、油路40を介して油圧ポンプモータ16の吸入部に供給され、油圧ポンプモータ16が油圧モータとして駆動する。
油圧ポンプモータ16の回転力は、電磁クラッチ20、第1ギヤ22、第1ワンウェイクラッチ34、及び第4ギヤ30を介して第3ギヤ28に伝達され、第3ギヤ28が減速回転する。これにより、第3ギヤ28に接続されたエンジン12が回転し、エンジン12が始動する。
なお、第1ギヤ22が回転することで第2ギヤ24も回転するが、第2ギヤ24からプロペラシャフト14への回転力の伝達は第2ワンウェイクラッチ26により遮断される。
また、上述の如きエンジン12の始動は、基本的に、図示しないマニュアルトランスミッションがニュートラルにされるか、もしくは、MTクラッチ32の連結状態が解除された状態で行われるため、エンジン12が始動した直後にエンジン12の回転力が第2ギヤ24の側から油圧ポンプモータ16に伝達されることはない。
(3)アキュムレータ36内の作動油をエンジン12内に供給する場合
エンジン始動装置10では、エンジン12の初期始動時(長時間駐車した後にエンジン12を始動する際)には、電磁切替弁50の作動により油路40の一部及び油路52を介してアキュムレータ36とエンジン12内とが連通される。これにより、図4に示す如く、アキュムレータ36内の高温・高圧の作動油がエンジン12内へ供給(放出)される。この場合、油圧ポンプモータ16の油圧による駆動は行われず、エンジン12は図示しない電動モータにより始動される。
(4)アキュムレータ36の油圧低下防止
エンジン始動装置10では、エンジン12を長時間停止させる場合には、電磁切替弁50により油路40及び油路52を閉路してアキュムレータ36の油圧を遮断することで、アキュムレータ36の圧力低下を最小限に抑えることができる。
ここで、本エンジン始動装置10では、上述の如く、車両制動時における車両の運動エネルギが、油圧ポンプモータ16により直接油圧エネルギに変換されてアキュムレータ36に蓄えられると共に、当該蓄えられた油圧エネルギは、エンジン12の始動の際に油圧ポンプモータ16によって再びエンジン12の運動エネルギに変換される構成である。すなわち、従来のエンジン始動装置の如く、エンジンの運動エネルギを一旦電気エネルギに変換した後に更に油圧エネルギに変換する構成ではないため、電気エネルギへの変換に伴って大きなエネルギ損失が生じることを防止でき、これにより、エネルギの高効率な有効利用を図ることができる。
なお、一般的なエンジン始動装置の如く、発電機で回生発電してバッテリに蓄電しセルモータで再始動する場合の効率(電気エネルギとしての効率)は、60%×60%=36%である。これに対し、油圧ポンプモータ16で回生してアキュムレータ36に蓄圧し、油圧ポンプモータ16でエンジン12を再始動した場合の効率(油圧エネルギとしての効率)は、80%×80%=64%である。このように、車両の運動エネルギを油圧エネルギとして回生した場合の方が、車両の運動エネルギを電気エネルギとして回生する場合に比べて効率が良く、エネルギの有効利用を図ることができる。
また、本エンジン始動装置10では、上述の如く、車両の制動時に捨てていた運動エネルギを油圧エネルギとして回収してエンジン12の始動時に再利用する構成であるので、燃費が向上する。
さらに、油圧の出力密度は、電気の出力密度に比べて高いため、図5に示す如く、油圧ポンプモータ16(油圧)では、セルモータ(電気)に比べて、瞬時に利用できる仕事率が大きく、クランキング時のエンジン12の回転速度が、セルモータに比べて高い。これにより、セルモータを利用した場合よりもエンジン12の初爆が速やかに起こり、消費エネルギが減少する。
以下、図6乃至図11に示す各種線図に基づいて油圧モータとセルモータとの特性の違いについて説明する。
図6には、バッテリによりセルモータを駆動しエンジンをクランキングした場合のエンジンの回転数と時間との関係(回転数立ち上がり特性)が線図にて示されている。この場合、エンジンが始動するまでの所要時間は1026msであった(矢印T1参照)。また、図7には、アキュムレータの油圧により油圧モータを駆動しエンジンをクランキングした場合のエンジンの回転数と時間との関係が線図にて示されている。この場合、エンジンが始動するまでの所要時間は471msであった(矢印T2参照)。
図6から、バッテリによりセルモータを駆動しエンジンをクランキングした場合には、エンジンは持続的に回転されるものの、エンジンの回転数は低いことがわかる。これに対し、図7から、アキュムレータの油圧により油圧モータを駆動しエンジンをクランキングした場合には、エンジンの回転に持続性はないものの、エンジンの回転数は短時間で高回転まで上昇することがわかる。
一方、図8には、バッテリによりセルモータを駆動しエンジンをクランキングした場合のセルモータの出力と時間との関係(パワー特性)が線図にて示されている。また、図9には、アキュムレータの油圧により油圧モータを駆動しエンジンをクランキングした場合の油圧モータの出力と時間との関係が線図にて示されている。
図8より、バッテリによりセルモータを駆動しエンジンをクランキングした場合には、セルモータの仕事に持続性はあるものの、瞬時に利用できる出力が低いことがわかる。これに対し、図9より、アキュムレータの油圧により油圧モータを駆動しエンジンをクランキングした場合には、油圧モータの仕事に持続性はないものの、瞬時に利用できる出力が高いことがわかる。
また一方、図10には、バッテリによりセルモータを駆動しエンジンをクランキングした場合にセルモータが消費するエネルギと時間との関係(エネルギ特性)が線図にて示されている。また、図11には、アキュムレータの油圧により油圧モータを駆動しエンジンをクランキングした場合に油圧モータが消費するエネルギと時間との関係が線図にて示されている。
図10と図11との比較により、エンジンが始動するまでに油圧モータが消費するエネルギ(図11のT2時の値)は、エンジンが始動するまでにセルモータが消費するエネルギ(図10のT1時の値)に比べて、大幅に少ないことがわかる。
以上のことから、出力密度が高い油圧アキュムレータを利用した場合、短時間で高出力を得ることができるため(但し、エネルギは少ない)、エンジンの再始動のような短時間に大きな出力を必要とする場合には有効であることがわかる。
すなわち、本エンジン始動装置10では、アキュムレータ36と油圧ポンプモータ16との組合せにより、エンジン12の回転数を短時間で高めることができるので、図12に示す如く、従来の電気エネルギによるエンジン始動装置に比べて、エンジン12の初爆までの時間が短縮され、これにより、例えば、アイドリングストップ後の発進時における違和感も減少する。
またここで、本エンジン始動装置10では、アキュムレータ36が断熱構造となっているため、エンジン12の停止後(駐車時など乗員が降車した後)においても作動油を高温に保つことができる。しかも、アキュムレータ36とエンジン12内とを接続する暖機用油圧回路(油路40の一部及び油路52)を備えており、エンジン12の初期始動時(長時間駐車した後にエンジン12を始動する際)にアキュムレータ36内の高温の作動油をエンジン12内(例えば、エンジンシリンダピストン部)に放出できる。したがって、エンジン12が低温の状態においても作動油の潤滑性が向上し、ピストンリング、クランクシャフト、コンロッド等の摺動部、軸受け部の摺動抵抗が低減される。これにより、始動性が向上する。
さらに、上述の如く、高温の作動油がエンジン内に供給されるので、エンジン12の早期暖機が可能になると共に、作動油の粘度低下による摺動抵抗低減(フリクション低減)、攪拌損失の低減、潤滑性の向上、燃焼状態の向上などが可能になり、ひいては燃費が向上する。
このように、本エンジン始動装置10では、熱エネルギの有効利用も図ることができるので、更に高効率なエネルギの有効利用を図ることができる。
以下、図13及び図14に示す各種線図に基づいて断熱構造を備えたアキュムレータの断熱効果、及び、暖機による燃費向上効果について説明する。
図13には、断熱構造のないアキュムレータに作動油を蓄えた場合と、断熱構造を備えたアキュムレータに作動油を蓄えた場合とにおける各アキュムレータの表面温度及び各作動油の温度と時間との関係が線図にて示されている。なお、図13では、断熱構造を備えたアキュムレータ内の作動油の温度(Tho)を実線で示し、断熱構造を備えたアキュムレータの表面温度(Ths)を一点鎖線で示し、断熱構造のないアキュムレータ内の作動油の温度(Tco)を2点鎖線で示し、断熱構造のないアキュムレータの表面温度(Tcs)を点線で示してある。また、この場合の外気温度は−10℃であった。
図13から、断熱構造のないアキュムレータでは、約8時間(28800秒)経過後の作動油の温度は、外気温度とほぼ同じ温度(−10℃)になることがわかる。これに対し、断熱構造を備えたアキュムレータでは、約8時間経過後の作動油の温度は、約20℃であり外気温度よりも約30℃高いことがわかる。したがって、アキュムレータが断熱構造を備えていれば、停止後8時間経過したエンジン内に外気温度よりも約30℃高い作動油を供給できることになる。
一方、図14には、35℃ECモード(35℃まで暖機した後に外気温35℃でスタートしたECモードの場合)と、ECモード(外気温度と同じ25℃でスタートした場合)とにおける積算燃費と距離との関係が線図にて示されている。
図14から、スタート時の温度が異なる場合には、燃費が異なることがわかり、35℃ECモードとECモードとでは(スタート時の温度が10℃違う場合には)、燃費が約10%程度違うことがわかる。このように、早期に暖機を行う効果は顕著である。
以上のことから、断熱構造のアキュムレータを用いることで作動油の温度低下を抑制できること、及び、初期始動時にエンジン内に高温の作動油を供給することで、燃費が向上することがわかる。
さらに、本エンジン始動装置10では、油圧ポンプモータ16の回転力は、駆動力伝達機構18の第4ギヤ30及び第3ギヤ28により減速されてエンジン12に伝達される構成であるため、油圧ポンプモータ16を油圧モータ(スタータ)として機能させる際に大きなトルクを発生させることができる。これにより、油圧ポンプモータ16自体を小型化することができる。
しかも、油圧ポンプモータ16を小型化した場合には、油圧ポンプモータ16を油圧ポンプとして機能させる際のポンプ圧を低減させることができ、アキュムレータ36の耐圧性を高くする必要がない。すなわち、例えば、油圧ポンプモータ16の発生するポンプ圧を数MPa程度に設定した場合、油圧ポンプモータ16からの油圧を蓄圧するアキュムレータ36の構造は、油圧ハイブリッド車のエンジン始動・走行装置に用いられるような数十〜数百MPaといった圧力に耐えうる頑丈な構造、すなわち、莫大な重量物にする必要が全くなく、これにより、コストと重量の増大を防ぐことが可能である。
なお、油圧ポンプモータ16において、ポンプ機能とモータ機能を両立させると共に、エンジン12再始動のための高圧なアキュムレータを用意することなく成立させるためには、油圧ポンプモータ16の油圧ポンプとしての機能時は、例えば、エンジン12の回転数:油圧ポンプモータ16の回転数≒1:1とし、油圧ポンプモータ16の油圧モータとしての機能時には、例えば、油圧ポンプモータ16の回転数:エンジン12の回転数=7〜20:1となるように第1ギヤ22、第2ギヤ24、第3ギヤ28、第4ギヤ30の減速比を設定することが好ましい。これにより、油圧ポンプモータ16の油圧モータ(スタータ)としての機能発動時に大きなトルクの発生が可能となる。
またさらに、本エンジン始動装置10では、車両の走行状態において、エネルギ回生時(車両の制動時)にのみに電磁クラッチ20が連結され、それ以外のときには電磁クラッチ20の連結状態が解除される構成(油圧ポンプモータ16とエンジン12及びプロペラシャフト14との接続状態が解除される構成)である。したがって、エネルギ回生時以外のときはエンジン12は油圧ポンプモータ16と無関係に回転することができるので、エネルギの無駄な消費を抑制できる。
また、本エンジン始動装置10では、図示しない電動モータによってエンジン12を始動させることができるので、アキュムレータ36内に蓄熱・蓄圧された作動油をエンジン12の初期始動時に全てエンジン12内に供給することができる。これにより、上述の如きエンジン12内への高温の作動油供給によるさまざまな効果が一層顕著になる。また、例えば、長時間の車両放置後などにアキュムレータ36内の作動油の油圧が低下した場合でも、電動モータによってエンジン12を速やかに始動させることができる。
以上説明した如く、本発明の第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10では、エネルギの高効率な有効利用を図ることができる。
なお、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10では、駆動力伝達機構18の構成要素として第1ワンウェイクラッチ34を適用する構成としたが、これに限らず、第1ワンウェイクラッチ34の代わりに、別のクラッチ機構(例えば、電磁クラッチ、油圧クラッチ、機械ばね式クラッチなど)を適用して構成してもよい。但し、この場合、エンジン12の始動時(油圧ポンプモータ16が油圧モータとして駆動する際)にのみ上記クラッチ機構が連結し、エネルギ回生時及び通常走行時には上記クラッチ機構が解除するように制御する必要がある。
また、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10において、電磁クラッチ20の代わりに、油圧クラッチや機械ばね式クラッチなどの別のクラッチ機構を適用して構成してもよく、また、MTクラッチ32の代わりに、電磁クラッチ、油圧クラッチ、機械ばね式クラッチなどの別のクラッチ機構を適用して構成してもよい。これらの点は以下の実施の形態においても同様である。
次に、本発明の第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10の変形例について説明する。
(第1の変形例)
図15には、第1の実施の形態の第1の変形例に係るエンジン始動装置70の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置70は、前述したエンジン始動装置10と基本的に同様の構成であるが、アキュムレータ36の接続口の直前には電磁弁72が設けられている。したがって、エンジン12を長時間停止させる場合には、電磁弁72を閉じることでアキュムレータ36の油圧を一層良好に遮断することができ、アキュムレータ36の圧力低下を一層良好に抑制できる。
(第2変形例)
図16には、第1の実施の形態の第2の変形例に係るエンジン始動装置74の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置74は、前述したエンジン始動装置10と基本的に同様の構成であるが、前述した逆止弁48の代わりに電磁弁76を備えている。この場合、油圧エネルギの回生タイミングに合わせて電磁弁76をオン状態にすることにより、作動油をアキュムレータ36に供給することができる。
すなわち、前述したエンジン始動装置10の如く逆止弁48を適用した場合、アキュムレータ36の油圧が接点60付近の圧力より低い場合には、必ずアキュムレータ36に蓄圧される特性があるため、アキュムレータ36の油圧が抜けた状態で車両が発進した直後など、エネルギ回生できない場合でもアキュムレータ36に油圧が蓄圧される欠点があるが、本第1変形例の如く電磁弁76を適用することにより、これを回避することができる。
(第3変形例)
図17には、第1の実施の形態の第3の変形例に係るエンジン始動装置78の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置78は、前述したエンジン始動装置10と基本的に同様の構成であるが、逆止弁48が省略されたシンプルな構成となっている。この場合、油圧エネルギの回生タイミングに合わせて電磁切替弁42により油路38を開路させることで、作動油をアキュムレータ36に供給できる。
(第4の変形例)
図18には、第1の実施の形態の第4の変形例に係るエンジン始動装置80の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置80は、前述したエンジン始動装置10と基本的に同様の構成であるが、第1ワンウェイクラッチ34が第4ギヤ30の軸心部に配置された構成となっている。このエンジン始動装置80においても、前述したエンジン始動装置10と同様の作用効果を奏する。
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。なお、前記第1の実施の形態と基本的に同一の構成・作用については、前記第1の実施の形態と同符号を付してその説明を省略する。
<第2の実施の形態>
図19には、本発明の第2の実施の形態に係るエンジン始動装置82の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置82は、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と基本的に同様の構成とされているが、前記第1の実施の形態に係る電磁切替弁50の代わりに、電磁切替弁84を備えている。この電磁切替弁84は、油路40と油路52とを同時に開路させることができる。
このエンジン始動装置82では、車両の運動エネルギを回生する場合には、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と基本的に同様の作用効果を奏する。
一方、このエンジン始動装置82では、油圧ポンプモータ16によりエンジン12を始動させる場合には、電磁切替弁42の作動により油路44を介して油圧ポンプモータ16の吐出部とオイルパン46とが連通されると共に、電磁切替弁54の作動により油路40を介して油圧ポンプモータ16の吸入部と電磁切替弁84とが連通される。そしてさらに、電磁切替弁84の作動により油路40と油路52とが同時に開路される。これにより、アキュムレータ36内の高温・高圧の作動油は、図20に示す如く、油圧ポンプモータ16とエンジン12内との両方にほぼ同時に供給される。
このため、このエンジン始動装置82では、エンジン12の初期始動時に油圧ポンプモータ16により効率的にエンジン12を始動できると共に、高温の作動油のエンジン12内への供給によりエンジン12の始動性向上や早期暖機の促進などが可能となる。
しかも、このエンジン始動装置82では、暖機用油圧回路(油路40の一部及び油路52)は、油圧ポンプモータ16へ至る手前でエンジン12側へ分岐しているので、暖機用油圧回路の構成が簡単であると共にその全長を短く設定できる。これにより、作動油が暖機用油圧回路を流れる際にその油温が低下することを軽減できる。
また、このエンジン始動装置82では、上述の如く、エンジン12の初期始動時において、油圧ポンプモータ16によるエンジン12の始動とエンジン12内への高温の作動油の供給とを両立できるので、前記第1の実施の形態に係る電動モータ(図示省略)を省略した構成にしてもよい。
<第3の実施の形態>
図21には、本発明の第3の実施の形態に係るエンジン始動装置86の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置86は、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と基本的に同様の構成とされているが、前記第1の実施の形態に係る電磁切替弁50の代わりに、電磁弁88を備えており、前記第1の実施の形態に係る油路52が省略された構成となっている。
また、油路38の途中に設けられた電磁切替弁42には、暖機用油圧回路を構成する油路90の一端部が接続されている。油路90の他端部はエンジン内に配設されており、電磁切替弁42は、油路38を介して油圧ポンプモータ16の吐出部とアキュムレータ36とを連通させた状態、又は、油路40、油路38の一部(油圧ポンプモータ16と電磁切替弁42との間の部位)、及び油路90を介してアキュムレータ36とエンジン12内とを連通させた状態の何れかの状態を選択的に取り得る構成とされている。
すなわち、このエンジン始動装置86では、暖機用油圧回路は、油路40、油路38の一部、及び油路90により構成されている(換言すれば、暖機用油圧回路は、アキュムレータ36から油圧ポンプモータ16までの部位が第2油圧回路を構成する油路40と同一の油圧回路とされ、油圧ポンプモータ16を経由した後でエンジン12側へ分岐されている)。
このエンジン始動装置86では、車両の運動エネルギを回生する場合には、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と基本的に同様の作用効果を奏する。
一方、このエンジン始動装置86では、油圧ポンプモータ16によりエンジン12を始動させる場合には、電磁切替弁42の作動により油路38の一部及び油路90を介して油圧ポンプモータ16の吐出部とエンジン12内とが連通されると共に、電磁切替弁54の作動により油路40を介して油圧ポンプモータ16の吸入部と電磁弁88とが連通され、さらに、電磁弁88の作動により油路40が開路される。これにより、アキュムレータ36内の高温・高圧の作動油は、図22に示す如く、油圧ポンプモータ16を経由した後でエンジン12内に供給される。
したがって、このエンジン始動装置86では、前記第2の実施の形態に係るエンジン始動装置82と同様に、エンジン12の初期始動時において油圧ポンプモータ16により効率的にエンジン12を始動できると共に、高温の作動油のエンジン12内への供給によりエンジン12の始動性向上や早期暖機の促進などが可能となる。
しかも、このエンジン始動装置86では、上述の如く、アキュムレータ36内の作動油が油圧ポンプモータ16を経由した後でエンジン12内に供給されるので、油圧ポンプモータ16に充分に作動油(油圧)を供給しつつ(油圧ポンプモータ16の駆動力を充分に確保しつつ)、エンジン12内にも作動油を供給できる。
また、このエンジン始動装置86では、前記第2の実施の形態に係るエンジン始動装置82と同様に、前記第1の実施の形態に係る電動モータ(図示省略)を省略した構成にしてもよい。
<第4の実施の形態>
図23には、本発明の第4の実施の形態に係るエンジン始動装置92の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置92は、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と基本的に同様の構成とされているが、前記第1の実施の形態に係る駆動力伝達機構18とは異なる駆動力伝達機構94を備えている。
駆動力伝達機構94は、前記第1の実施の形態に係る駆動力伝達機構18と同様に油圧ポンプモータ16の回転軸に接続された電磁クラッチ20を備えている。電磁クラッチ20には油圧ポンプモータ16と反対側において第1プーリ96が接続されている。第1プーリ96の側近には第2プーリ98が配置されており、第1プーリ96と第2プーリ98には第1ベルト100が巻き掛けられている。また、第2プーリ98の軸心部には第2ワンウェイクラッチ26が配設されており、第2プーリ98は第2ワンウェイクラッチ26を介してプロペラシャフト14に接続されている。第2ワンウェイクラッチ26は、プロペラシャフト14の回転力を第2プーリ98へ伝達すると共に、第2プーリ98からプロペラシャフト14への回転力の伝達を遮断するようになっている。
また、駆動力伝達機構94は、エンジン12のクランク軸に接続された第3プーリ102を備えている。第3プーリ102の側近には当該第3プーリ102よりも小径に形成された第4プーリ104が配置されており、第3プーリ102と第4プーリ104には第2ベルト106が巻き掛けられている。
さらに、第3プーリ102と第2ワンウェイクラッチ26との間には、MTクラッチ32が接続されており、第1プーリ96と第4プーリ104との間には、第1ワンウェイクラッチ34が接続されている。第1ワンウェイクラッチ34は、第1プーリ96の回転力を第4プーリ104へ伝達すると共に、第4プーリ104から第1プーリ96への回転力の伝達を遮断するようになっている。
他の部品構成は、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と同様の構成とされている。
このエンジン始動装置92においても、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と基本的に同様の作用効果を奏する。
<第5の実施の形態>
図24には、本発明の第5の実施の形態に係るエンジン始動装置108の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置108は、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と基本的に同様の構成とされているが、前記第1の実施の形態に係る駆動力伝達機構18とは異なる駆動力伝達機構110を備えている。
駆動力伝達機構110は、油圧ポンプモータ16に接続された第1ギヤ112と、該第1ギヤ112と略同じ歯数に形成され、プロペラシャフト14及びMTクラッチ32の間に接続された第2ギヤ114と、を備えている。第1ギヤ112は通常は第2ギヤ114から離間した位置に配置されている。
また、第1ギヤ112には油圧ポンプモータ16と反対側において第4ギヤ116が接続されている。この第4ギヤ116は、前記第1の実施の形態に係る第4ギヤ30と同様に、エンジン12のクランク軸に接続された第3ギヤ28よりも歯数が少なく形成されており、通常は第3ギヤ28から離間した位置に配置されている。
さらに、この駆動力伝達機構110は、図示しない飛び出し機構を備えている。この飛び出し機構は、アキュムレータ36への蓄熱・蓄圧の際(車両の制動時)には第1ギヤ112を第2ギヤ114に噛合させるようになっている。これにより、プロペラシャフト14の回転力が第2ギヤ114及び第1ギヤ112を介して油圧ポンプモータ16に伝達され、油圧ポンプモータ16が油圧ポンプとして駆動される構成である。
また、上記飛び出し機構は、油圧ポンプモータ16を油圧により駆動させる際(エンジン始動の際)には、第4ギヤ116を第3ギヤ28に噛合させるようになっている。これにより、油圧ポンプモータ16の回転力が第1ギヤ112を介して第4ギヤ116に伝達され、第4ギヤ116が回転すると共に、第4ギヤ116に噛合した第3ギヤが減速されて回転する。これにより、第3ギヤ28に接続されたエンジン12が回転し、エンジン12が始動する構成である。
他の部品構成は、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と同様の構成とされている。
このエンジン始動装置108においても、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と基本的に同様の作用効果を奏する。
<第6の実施の形態>
図25には、本発明の第6の実施の形態に係るエンジン始動装置118の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置108は、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と基本的に同様の構成とされているが、前記第1の実施の形態に係る駆動力伝達機構18とは異なる駆動力伝達機構120を備えている。
駆動力伝達機構120は、油圧ポンプモータ16に接続された第1ギヤ122と、該第1ギヤ122と略同じ歯数に形成され、プロペラシャフト14及びMTクラッチ32の間に接続された第2ギヤ124と、を備えている。第1ギヤ122は通常は第2ギヤ124から離間した位置に配置されている。
また、この駆動力伝達機構120は、図示しない飛び出し機構を備えている。この飛び出し機構は、アキュムレータ36への蓄熱・蓄圧の際(車両の制動時)には第1ギヤ122を第2ギヤ124に噛合させるようになっている。これにより、プロペラシャフト14の回転力が第2ギヤ124及び第1ギヤ122を介して油圧ポンプモータ16に伝達され、油圧ポンプモータ16が油圧ポンプとして駆動される構成である。
一方、この駆動力伝達機構120では、油圧ポンプモータ16を油圧により駆動させる際(エンジン始動の際)には、油圧ポンプモータ16の回転力が第1ギヤ122及び第1ワンウェイクラッチ34を介して第4ギヤ30に伝達され、第4ギヤ30が回転すると共に、第4ギヤ30に噛合された第3ギヤ28が減速回転する。これにより、第3ギヤ28に接続されたエンジン12のクランク軸が回転し、エンジン12が始動する構成である。
他の部品構成は、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と同様の構成とされている。
このエンジン始動装置118においても、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と基本的に同様の作用効果を奏する。
<第7の実施の形態>
図26には、本発明の第7の実施の形態に係るエンジン始動装置126の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置126は、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と基本的に同様の構成とされている。但し、油圧ポンプモータ16は、エンジン12の補機側に配置されており、駆動力伝達機構128、エンジン12、及びMTクラッチ32(マニュアルトランスミッション)を介してプロペラシャフト14に接続されている。
駆動力伝達機構128は、前記第1の実施の形態に係る駆動力伝達機構18と基本的に同様の構成とされているが、前記第1の実施の形態に係る電磁クラッチ20が省略されており、第1ギヤ22が油圧ポンプモータ16に直接接続された構成となっている。また、前記第1の実施の形態に係る第2ワンウェイクラッチ26が省略されており、さらに、第2ギヤ24と第3ギヤ28の間には、MTクラッチ32の代わりに電磁クラッチ130が接続された構成となっている。この電磁クラッチ130は、通常はその連結状態を解除されている。
他の部品構成は、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と同様の構成とされている。
このエンジン始動装置126では、車両の運動エネルギを回生する場合(アキュムレータ36への蓄熱・蓄圧の際、車両の制動時)には、電磁クラッチ130が連結される。これにより、プロペラシャフト14の回転力がMTクラッチ32、エンジン12、第3ギヤ28、電磁クラッチ130、第2ギヤ24、及び第1ギヤ22を介して油圧ポンプモータ16に伝達され、油圧ポンプモータ16が油圧ポンプとして駆動される。なお、このエンジン始動装置126では、車両の制動時に乗員がMTクラッチ32の連結状態を解除した際には、アイドリング状態のエンジン12の回転力によって油圧ポンプモータ16が駆動される。
一方、このエンジン始動装置126では、エンジン12を始動する際(油圧ポンプモータ16を油圧により駆動する際)には、油圧ポンプモータ16の回転力が第1ギヤ22及び第1ワンウェイクラッチ34を介して第4ギヤ30に伝達され、第4ギヤ30が回転すると共に、第4ギヤ30に噛合された第3ギヤ28が減速回転する。これにより、第3ギヤ28に接続されたエンジン12のクランク軸が回転し、エンジン12が始動する。なお、この場合、電磁クラッチ130の連結状態が解除されることで、第2ギヤ24と第3ギヤ28との間の回転力の伝達が遮断される。
このエンジン始動装置126においても、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と基本的に同様の作用効果を奏する。
なお、前記第7の実施の形態に係るエンジン始動装置126において、電磁クラッチ130の代わりに、油圧クラッチや機械ばね式クラッチなどの別のクラッチ機構を適用して構成してもよい。
次に、本発明の第7の実施の形態に係るエンジン始動装置126の変形例について説明する。
(第1の変形例)
図27には、第7の実施の形態の第1の変形例に係るエンジン始動装置132の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置132は、前述したエンジン始動装置126の駆動力伝達機構128とは異なる駆動力伝達機構134を備えている。駆動力伝達機構134は、前述した駆動力伝達機構128と基本的に同様の構成とされているが、第2ギヤ24の軸心部に第2ワンウェイクラッチ26が設けられると共に、第1ワンウェイクラッチ34が第4ギヤ30の軸心部に設けられた構成となっている。
このエンジン始動装置132においても、前述したエンジン始動装置126と基本的に同様の作用効果を奏する。
(第2の変形例)
図28には、第7の実施の形態の第2の変形例に係るエンジン始動装置136の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置136は、前述したエンジン始動装置126の駆動力伝達機構128とは異なる駆動力伝達機構138を備えている。駆動力伝達機構138は、前記第1の実施の形態に係る駆動力伝達機構18と基本的に同様の構成とされているが、MTクラッチ32が省略されて第2ワンウェイクラッチ26と第3ギヤ28とが直接接続されると共に、第1ワンウェイクラッチ34が第4ギヤ30の軸心部に配置された構成となっている。
このエンジン始動装置136では、車両の運動エネルギを回生する場合(アキュムレータ36への蓄熱・蓄圧の際、車両の制動時)には、電磁クラッチ20が連結されることで、エンジン12の回転力が第3ギヤ、第2ワンウェイクラッチ26、第2ギヤ24、第1ギヤ22、及び電磁クラッチ20を介して油圧ポンプモータ16に伝達され、油圧ポンプモータ16が油圧ポンプとして駆動する。
一方、このエンジン始動装置136では、エンジン12を始動する際(油圧ポンプモータ16を油圧により駆動する際)には、油圧ポンプモータ16の回転力が電磁クラッチ20、第1ギヤ22、及び第1ワンウェイクラッチ34を介して第4ギヤ30に伝達され、第4ギヤ30が回転すると共に、第4ギヤ30に噛合された第3ギヤ28が減速されて回転する。これにより、第3ギヤ28に接続されたエンジン12のクランク軸が回転し、エンジン12が始動する。
このエンジン始動装置136においても、前述したエンジン始動装置126と基本的に同様の作用効果を奏する。
<第8の実施の形態>
図29には、本発明の第8の実施の形態に係るエンジン始動装置140の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置140は、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と基本的に同様の構成とされているが、前記第7の実施の形態に係るエンジン始動装置126と同様に油圧ポンプモータ16がエンジン12の補機側に配置されており、油圧ポンプモータ16は、遊星歯車機構142、エンジン12、及びMTクラッチ32(マニュアルトランスミッション)を介してプロペラシャフト14に接続されている。
遊星歯車機構142は、油圧ポンプモータ16の回転軸に接続されたサンギヤ144を備えている。サンギヤ144には複数のプラネタリギヤ146が噛合されており、これら複数のプラネタリギヤ146は、エンジン12のクランク軸に接続されたキャリア148に支持されると共に、リングギヤ150にも噛合されている。また、遊星歯車機構142は、リングギヤ150と車両とを直接的又は間接的に一体的に連結可能な第1クラッチ152と、サンギヤ144とリングギヤ150とを一体的に連結可能な第2クラッチ154とを備えている。
他の部品構成は、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と同様の構成とされている。
上記構成のエンジン始動装置140では、車両の運動エネルギを回生する場合(アキュムレータ36への蓄熱・蓄圧の際、車両の制動時)には、サンギヤ144とリングギヤ150とが第2クラッチ154によって一体的に連結される。このため、エンジン12の回転力によって遊星歯車(キャリア148、プラネタリギヤ146、リングギヤ150、及びサンギヤ144)が一体的に回転する。これにより、サンギヤ144に接続された油圧ポンプモータ16が油圧ポンプとして駆動される。
一方、エンジン12を始動する際(油圧ポンプモータ16を油圧により駆動する際)には、リングギヤ150と車両とが第1クラッチ152によって一体的に連結されると共に、油圧ポンプモータ16に油圧が供給され、油圧ポンプモータ16が油圧モータとして駆動する。これにより、油圧ポンプモータ16に接続されたサンギヤ144が回転すると共に、サンギヤ144に噛合された複数のプラネタリギヤ146を介してキャリア148が減速回転する。これにより、キャリア148に接続されたエンジン12が回転し、エンジン12が始動する。
このエンジン始動装置140では、前記第7の実施の形態に係るエンジン始動装置126と基本的に同様の作用効果を奏する。
<第9の実施の形態>
図30には、本発明の第9の実施の形態に係るエンジン始動装置156の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置156は、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と基本的に同様の構成とされているが、前記第1の実施の形態に係る油圧ポンプモータ16の代わりに、互いに独立した油圧ポンプ158と油圧モータ160とを備えている。
油圧ポンプ158は、エンジン12とプロペラシャフト14の間に配置されており、第1駆動力伝達機構162を介してエンジン12及びプロペラシャフト14に接続されている。第1駆動力伝達機構162は、油圧ポンプ158の回転軸に接続された電磁クラッチ164を備えている。この電磁クラッチ164には、油圧ポンプ158と反対側において第1ギヤ166が接続されており、第1ギヤ166にはMTクラッチ32とプロペラシャフト14との間に接続された第2ギヤ168が噛合されている。
油圧ポンプ158の吸入部は、油路170を介してストレーナ58に接続されている。また、油圧ポンプ158の吐出部は、第1油圧回路を構成する油路172を介してアキュムレータ36に接続されている。油路172は、前記第1の実施の形態に係る油路38と基本的に同様の構成とされているが、前記第1の実施の形態に係る電磁切替弁42の代わりに電磁弁43を備えており、油路44が省略された構成となっている。
一方、油圧モータ160は、エンジン12の補機側に配置されており、第2駆動力伝達機構174を介してエンジン12に接続されている。第2駆動力伝達機構174は、エンジン12のクランク軸に接続された第3ギヤ176を備えており、この第3ギヤ176には、当該第3ギヤ176よりも歯数が少なく形成された第4ギヤ178が噛合されている。また、第4ギヤ178と油圧モータ160の回転軸との間には、ワンウェイクラッチ180が接続されている。ワンウェイクラッチ180は、油圧モータ160の回転力を第4ギヤ178に伝達すると共に、第4ギヤ178から油圧モータ160への回転力の伝達を遮断するようになっている。
油圧モータ160の作動油供給部は、第2油圧回路を構成する油路182を介してアキュムレータ36に接続されている。油路182は、前記第1の実施の形態に係る油路40と基本的に同様の構成であるが、前記第1の実施の形態に係る電磁切替弁54が省略された構成となっている。また、油圧モータ160の作動油排出部には、油路184の一端部が接続されており、油路184の他端部は、オイルパン46内に配設されている。
他の部品構成は、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と同じ構成である。
次に、本第9の実施の形態の作用について説明する。
(1)車両の運動エネルギを回生する場合
上記構成のエンジン始動装置156では、車両の制動時に電磁クラッチ164が連結されると、図31に示す如く、プロペラシャフト14の回転力が第2ギヤ168、第1ギヤ166、及び電磁クラッチ164を介して油圧ポンプ158に伝達され、油圧ポンプ158が駆動される。またこのとき、電磁切替弁50の作動により油路182が閉路されると共に、電磁弁43の作動により油圧ポンプ158の吐出部とアキュムレータ36とが連通される(油路172が開路される)。これにより、オイルパン46内の作動油が油圧ポンプ158によって汲み上げられて所定の圧力で吐出されると共に、当該吐出された作動油は油路172を介してアキュムレータ36に供給される。そして、前記第1の実施の形態と同様に、アキュムレータ36は供給された作動油の油圧及び熱を蓄え、回生された車両の運動エネルギはアキュムレータ36に油圧エネルギとして貯蔵される。
(2)油圧モータ160によりエンジン12を始動させる場合
エンジン始動装置156では、エンジン12を始動させる際(特に、アイドリングストップ後にエンジン12を再始動させる際)には、油圧モータ160によりエンジン12を始動させる。この場合、電磁切替弁50の作動により油路182が開路されることで、図32に示す如く、アキュムレータ36内の高圧作動油が、油路182を介して油圧モータ160の作動油供給部に供給され、油圧モータ160が駆動する。
油圧モータ160の回転力は、ワンウェイクラッチ180を介して第4ギヤ178に伝達され、第4ギヤ178が回転すると共に、当該第4ギヤ178に噛合された第3ギヤ176が減速回転する。これにより、第3ギヤ176に接続されたエンジン12が回転し、エンジン12が始動する。
(3)アキュムレータ36内の作動油をエンジン12内に供給する場合
エンジン始動装置156では、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と同様に、エンジン12の初期始動時には、電磁切替弁50の作動により油路182の一部及び油路52を介してアキュムレータ36とエンジン12内とが連通されることで、図33に示す如く、アキュムレータ36内の高温・高圧の作動油がエンジン12内へ供給(放出)される。また、この場合、エンジン12は図示しない電動モータにより始動される。
(4)アキュムレータ36の油圧低下防止
エンジン始動装置156では、エンジン12を長時間停止させる場合には、電磁切替弁50により油路182及び油路52を閉路してアキュムレータ36の油圧を遮断することで、アキュムレータ36の圧力低下を最小限に抑えることができる。
以上説明した如く、本発明の第9の実施の形態に係るエンジン始動装置156においても、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と基本的に同様の作用効果を奏する。
次に、本発明の第9の実施の形態に係るエンジン始動装置156の変形例について説明する。
(第1の変形例)
図34には、第9の実施の形態の第1の変形例に係るエンジン始動装置186の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置186は、前述したエンジン始動装置156と基本的に同様の構成であるが、このエンジン始動装置186の第2駆動力伝達機構188は、前述した第2駆動力伝達機構174のワンウェイクラッチ180の代わりに、電磁クラッチ190を備えている。このエンジン始動装置186においても、前述したエンジン始動装置156と同様の作用効果を奏する。但し、このエンジン始動装置186の場合、エンジン12の始動時にのみ電磁クラッチ190が連結するように制御する必要がある。
(第2の変形例)
図35には、第9の実施の形態の第2の変形例に係るエンジン始動装置192の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置192は、前述したエンジン始動装置156と基本的に同様の構成であるが、油圧モータ160及び第2駆動力伝達機構174がエンジン12と油圧ポンプ158との間(マニュアルトランスミッション側)に配置されている。このエンジン始動装置192においても、前述したエンジン始動装置156と同様の作用効果を奏する。
(第3の変形例)
図36には、第9の実施の形態の第3の変形例に係るエンジン始動装置194の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置194は、前述したエンジン始動装置192と基本的に同様の構成であるが、第2駆動力伝達機構174の代わりに前記第1の変形例に係る第2駆動力伝達機構188を備えている。このエンジン始動装置194においても、前記第1の変形例と同様に、エンジン12の始動時にのみ電磁クラッチ190を連結させることで、前述したエンジン始動装置156と同様の作用効果を奏する。
なお、上記第9の実施の形態に係るエンジン始動装置156、186、192、及び194において、電磁切換弁50の代わりに、前記第2の実施の形態に係る電磁切換弁84を適用して構成すれば、アキュムレータ36内の作動油を油圧モータ160とエンジン12内との両方にほぼ同時に供給することが可能となる。
また、上記第9の実施の形態に係るエンジン始動装置156、186、192、及び194において、ワンウェイクラッチ180及び電磁クラッチ164、190の代わりに、油圧クラッチ、機械ばね式クラッチ、飛び出し機構などを適用して構成してもよい。
<第10の実施の形態>
図37には、本発明の第10の実施の形態に係るエンジン始動装置196の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置196は、エンジン12の補機側(プロペラシャフト14やMTクラッチ32と反対側)に配置された単一の油圧ポンプモータ16を備えており、油圧ポンプモータ16は遊星歯車機構198を介してエンジン12に接続されている。
遊星歯車機構198は、油圧ポンプモータ16の回転軸に接続されたサンギヤ200を備えており、サンギヤ200には複数のプラネタリギヤ202が噛合されている。複数のプラネタリギヤ202はキャリア204に支持されると共にリングギヤ206に噛合されており、リングギヤ206はエンジン12のクランク軸に接続されている。また、遊星歯車機構198は、キャリア204と車両とを直接的又は間接的に一体的に連結可能な第1クラッチ208と、サンギヤ200とリングギヤ206とを一体的に連結可能な第2クラッチ210と、を備えている。
一方、油圧ポンプモータ16の吐出部は、共通油圧回路を構成する油路212を介してアキュムレータ36に接続されている。油路212の途中にはアキュムレータ36の直前において電磁切換弁214が設けられている。この電磁切換弁214には暖機用油圧回路を構成する油路216の一端部が接続されており、油路216の他端部はエンジン12内に配設されている。電磁切換弁214は、油路212を介して油圧ポンプモータ16の吐出部とアキュムレータ36とを連通させた状態(油路212を開路させた状態)、又は、油路216を介してアキュムレータ36とエンジン12内とを連通させた状態(油路216を開路させた状態)の何れかの状態を選択的に取り得る構成とされている。
また、油圧ポンプモータ16の吸入部には、油路218の一端部が接続されており、油路218の他端部はオイルパン46内に配設されている。油路218の途中には電磁切換弁220が設けられており、この電磁切換弁220には油路222の一端部が接続されている。油路222の他端部はストレーナ58に接続されている。電磁切換弁220は、油路218を介してオイルパン46内と油圧ポンプモータ16の吸入部とを連通させた状態、又は、油路222を介してストレーナ58と油圧ポンプモータ16の吸入部とを連通させた状態の何れかの状態を選択的に取り得る構成とされている。
次に、本第10の実施の形態の作用について説明する。
(1)車両の運動エネルギを回生する場合
上記構成のエンジン始動装置196では、例えば、車両の制動時にサンギヤ200とリングギヤ206とが第2クラッチ210によって一体的に連結されると、図38に示す如く、プロペラシャフト14の回転力が、MTクラッチ32、エンジン12、リングギヤ206、及びサンギヤ200を介して油圧ポンプモータ16に伝達され、油圧ポンプモータ16が正転する。またこのとき、電磁切換弁220の作動により油路222を介してストレーナ58と油圧ポンプモータ16とが連通されると共に、電磁切換弁214の作動により油路212を介して油圧ポンプモータ16の吐出部とアキュムレータ36とが連通される。これにより、オイルパン46内の作動油が油圧ポンプモータ16によって汲み上げられて所定の圧力で吐出されると共に、当該吐出された作動油は油路212を介してアキュムレータ36に供給される。そして、電磁切替弁214の作動により油路212が閉路されることで、アキュムレータ36は、供給された作動油の油圧及び熱を蓄え、回生された車両の運動エネルギはアキュムレータ36に油圧エネルギとして貯蔵される。
(2)油圧ポンプモータ16によりエンジン12を始動させる場合
エンジン始動装置196では、エンジン12を始動させる際(特に、アイドリングストップ後にエンジン12を再始動させる際)には、油圧ポンプモータ16によりエンジン12を始動させる。この場合、第1クラッチ208によってキャリア204と車両とが一体的に連結されると共に、電磁切替弁214の作動により油路212が開路される。これにより、図39に示す如く、アキュムレータ36内の高圧作動油が、油路212を介して油圧ポンプモータ16の吐出部に供給され、油圧ポンプモータ16が逆転する。このため、油圧ポンプモータ16に接続されたサンギヤ200がエンジン12の回転方向と逆方向に回転すると共に、プラネタリギヤ202を介してリングギヤ206がサンギヤ200と反対方向(エンジン12の回転方向)に減速回転する。これにより、リングギヤ206に接続されたエンジン12が回転し、エンジン12が始動する。
(3)アキュムレータ36内の作動油をエンジン12内に供給する場合
エンジン始動装置196では、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と同様に、エンジン12の初期始動時には、電磁切替弁214の作動により油路216を介してアキュムレータ36とエンジン12内とが連通されることで、図40に示す如く、アキュムレータ36内の高温・高圧の作動油がエンジン12内へ供給(放出)される。なお、この場合、エンジン12は図示しない電動モータにより始動される。
(4)アキュムレータ36の油圧低下防止
エンジン始動装置196では、エンジン12を長時間停止させる場合には、電磁切替弁214によって油路212及び油路216を閉路してアキュムレータ36の油圧を遮断することで、アキュムレータ36の圧力低下を最小限に抑えることができる。
以上説明した如く、本発明の第10の実施の形態に係るエンジン始動装置196においても、前記第1の実施の形態に係るエンジン始動装置10と基本的に同様の作用効果を奏する。
<第11の実施の形態>
図41には、本発明の第11の実施の形態に係るエンジン始動装置224の全体構成が概略的な配管系統図にて示されている。
エンジン始動装置224は、前記第10の実施の形態に係るエンジン始動装置196と基本的に同様の構成とされているが、前記第10の実施の形態に係る遊星歯車機構198とは異なる遊星歯車機構226を備えている。
遊星歯車機構226は、エンジン12のクランク軸に接続された第1サンギヤ228を備えている。第1サンギヤ228には、エンジン12と反対側において電磁クラッチ230が接続されており、電磁クラッチ230には、第1サンギヤ228と反対側において、第2サンギヤ232が接続されている。さらに、第2サンギヤ232には、電磁クラッチ230と反対側において、ワンウェイクラッチ234が接続されている。このワンウェイクラッチ234は、エンジン12のクランク軸の回転方向と同じ方向への第2サンギヤ232の回転を許容すると共に、エンジン12のクランク軸の回転方向と反対方向への第2サンギヤ232の回転を規制する。
また、第1サンギヤ228及び第2サンギヤ232には、それぞれ第1プラネタリギヤ236及び第1プラネタリギヤ238が噛合されており、第1プラネタリギヤ236及び第2プラネタリギヤ238には、それぞれ共通ギヤを構成する第1ギヤ240及び第2ギヤ242が噛合されている。これらの第1ギヤ240及び第2ギヤ242は一体的に連結されている。また、これらの第1プラネタリギヤ236、第2プラネタリギヤ238、第1ギヤ240、及び第2ギヤ242は、油圧ポンプモータ16の回転軸に接続されたキャリア244によって回転可能に支持されている。
他の部品構成は、前記第10の実施の形態に係るエンジン始動装置196と同じ構成である。
次に、本第11の実施の形態の作用について説明する。
(1)車両の運動エネルギを回生する場合
上記構成のエンジン始動装置224では、例えば、車両の制動時に電磁クラッチ230が連結されると、遊星歯車機構226(第1サンギヤ228、第2サンギヤ232、第1プラネタリギヤ236、第2プラネタリギヤ238、第1ギヤ240、第2ギヤ242、及びキャリア244)が一体的に回転し、図42に示す如く、プロペラシャフト14の回転力が、MTクラッチ32、エンジン12、及び遊星歯車機構226を介して油圧ポンプモータ16に伝達され、油圧ポンプモータ16が正転する。またこのとき、電磁切換弁220の作動により油路222を介してストレーナ58と油圧ポンプモータ16とが連通されると共に、電磁切換弁214の作動により油路212を介して油圧ポンプモータ16の吐出部とアキュムレータ36とが連通される。これにより、オイルパン46内の作動油が油圧ポンプモータ16によって汲み上げられて所定の圧力で吐出されると共に、当該吐出された作動油は油路212を介してアキュムレータ36に供給される。そして、電磁切替弁214の作動により油路212が閉路されることで(図44参照)、アキュムレータ36は、供給された作動油の油圧及び熱を蓄え、回生された車両の運動エネルギはアキュムレータ36に油圧エネルギとして貯蔵される。
(2)油圧ポンプモータ16によりエンジン12を始動させる場合
エンジン始動装置224では、エンジン12を始動させる際(特に、アイドリングストップ後にエンジン12を再始動させる際)には、油圧ポンプモータ16によりエンジン12を始動させる。この場合、電磁クラッチ230の連結状態が解除されると共に、電磁切替弁214の作動により油路212が開路される。これにより、図43に示す如く、アキュムレータ36内の高圧作動油が、油路212を介して油圧ポンプモータ16の吐出部に供給され、油圧ポンプモータ16が逆転し、油圧ポンプモータ16に接続されたキャリア244がエンジン12の回転方向と逆方向に回転する。このとき、第2サンギヤ232は、ワンウェイクラッチ234の機能により、エンジン12の回転方向と逆方向への回転を制限されて拘束され、第2プラネタリギヤ238が自転及び公転すると共に、第2ギヤ242及び第1ギヤ240が一体的に自転及び公転し、第1プラネタリギヤ236が自転及び公転する。これにより、第1サンギヤ228がエンジン12の回転方向と同じ方向へ減速回転すると共に、第1サンギヤ223に接続されたエンジン12が回転し、エンジン12が始動する。
(3)車両の通常走行時
エンジン始動装置224では、車両の通常走行時には、図44に示す如く、電磁クラッチ230の連結状態が解除され、エンジン12の回転が第1サンギヤ228、第1プラネタリギヤ236、第1ギヤ240、第2ギヤ242及び第2プラネタリギヤ238を介して第2サンギヤ232に伝達される。このため、第2サンギヤ232にはエンジン12の回転方向と同じ方向への回転力が作用する。この場合、ワンウェイクラッチ234の機能により第2サンギヤ232のエンジン12の回転方向と同じ方向への回転が許容され、第1プラネタリギヤ236、第1ギヤ240及び第2ギヤ242、第2プラネタリギヤ238はそれぞれ公転せずに自転する。このため、キャリア244は静止し、エンジン12の回転が油圧ポンプモータ16に伝達されることが防止される。
(4)アキュムレータ36内の作動油をエンジン12内に供給する場合
エンジン始動装置224では、前記第10の実施の形態に係るエンジン始動装置10と同様に、エンジン12の初期始動時には、電磁切替弁214の作動により油路216を介してアキュムレータ36とエンジン12内とが連通されることで、図45に示す如く、アキュムレータ36内の高温・高圧の作動油がエンジン12内へ供給(放出)される。なお、この場合、エンジン12は図示しない電動モータにより始動される。
(5)アキュムレータ36の油圧低下防止
エンジン始動装置224では、エンジン12を長時間停止させる場合には、電磁切替弁214によって油路212及び油路216を閉路してアキュムレータ36の油圧を遮断することで、アキュムレータ36の圧力低下を最小限に抑えることができる。
以上説明した如く、本発明の第11の実施の形態に係るエンジン始動装置224においても、前記第10の実施の形態に係るエンジン始動装置196と基本的に同様の作用効果を奏する。
なお、前記第10の実施の形態に係るエンジン始動装置196及び第11の実施の形態に係るエンジン始動装置224において、電磁切換弁214の代わりに、前記第2の実施の形態に係る電磁切換弁84を適用して構成すれば、暖機用油圧回路と共通油圧回路とを同時に開路して、アキュムレータ36内の作動油を油圧ポンプモータ16とエンジン12内との両方にほぼ同時に供給することが可能となり、前記第2の実施の形態に係るエンジン始動装置82と同様の効果を得ることができる。
また、前記第10の実施の形態に係るエンジン始動装置196及び第11の実施の形態に係るエンジン始動装置224において、油路218の他端部をエンジン12内に配設すると共に、油路216を省略し、さらに、電磁切替弁214の代わりに前記第1の実施の形態の第1変形例に係る電磁弁72を適用して構成すれば(油路212及び油路218により暖機用油圧回路を構成すれば)、暖機用油圧回路と共通油圧回路とを同時に開路して、アキュムレータ36内の作動油を油圧ポンプモータ16に供給した後でエンジン12内に供給することが可能となり、前記第3の実施の形態に係るエンジン始動装置86と同様の効果を得ることができる。
さらに、前記第1の実施の形態乃至第11の実施の形態では、油圧ポンプモータ16をエネルギ回生及びエンジン12始動のための専用の油圧ポンプモータとし、また、油圧ポンプ158をエネルギ回生のための専用の油圧ポンプとしたが、これに限らず、油圧ポンプモータ及び油圧ポンプとしては、車両に既設された油圧機構(変速機の油圧機構、クラッチ装置の油圧機構、パワーステアリング装置の油圧機構、及びその他の油圧機構)に油圧を供給するための既存の油圧ポンプを流用して構成してもよい。但し、この場合、エンジンの回転力によって上記既存の油圧ポンプを常に駆動させる構成となる。
またさらに、前記第1の実施の形態乃至第11の実施の形態では、本発明のエンジン始動装置をマニュアルトランスミッションを備えた車両に適用して構成した場合について説明したが、これに限らず、本発明のエンジン始動装置はオートマチックトランスミッションを備えた車両に適用して構成することもできる。