JP2006249587A - 蓄熱性繊維構造物及び蓄熱性繊維構造物の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高い蓄熱性を有し、かつ、マイクロカプセルの壁膜が破壊されることなく、マイクロカプセルと繊維との密着性が高いことから、耐久性に優れる蓄熱性繊維構造物及び蓄熱性繊維構造物の製造方法を提供する。
【解決手段】ウレタン系樹脂を含有する壁膜にパラフィン系炭化水素が内包されたマイクロカプセルが、バインダー樹脂を介して繊維構造物に付着している蓄熱性繊維であって、前記バインダー樹脂は、硬化温度が80〜140℃であることを特徴とする蓄熱性繊維構造物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高い蓄熱性を有し、耐久性に優れる蓄熱性繊維構造物及び蓄熱性繊維構造物の製造方法に関する。
従来より、繊維の性能を向上させたり、繊維の欠点を解消することを目的として、繊維に機能的加工を施すことが行われてきている。近年、相転移材料を充填したマイクロカプセルを用いることにより、繊維の熱保持性を向上させることが行われており、例えば、特許文献1には、基材と、熱安定性を示すマイクロカプセルとからなり、可逆的熱貯蔵性を有する繊維が開示されている。
しかしながら、このような繊維では、マイクロカプセルを直接繊維内に埋め込み、マイクロカプセルと繊維とを一体化させていることから、単位面積当たりのマイクロカプセルの数が少なくなり、熱貯蔵性効果が充分に得られないことがあった。また、その製造方法から、使用可能な繊維がアクリル系の繊維等に限られ、綿等の繊維には適用できないという問題があった。
また、特許文献2には、発泡樹脂体の片面に相転移材料を含有するマイクロスフィアを塗布した後、反対面から減圧吸引を行うことにより、マイクロスフィアを内部に浸透させる発泡樹脂体の製造方法が開示されている。しかしながら、このような製造方法では、マイクロカプセルを付着させる基体が発泡樹脂に限定され、綿等が素材の肌着等に応用することができなかった。
一方、近年では、皮膚に優しい肌着が強く望まれており、蓄熱性等の機能が付与された場合であっても、皮膚に直接接触する繊維は、皮膚に対し低刺激性であることが必要とされている。これに対して、マイクロカプセルの壁膜として、従来用いられているメラミン系樹脂ではなく、ウレタン系樹脂を用いることが行われている。
特許文献3には、繊維構造物にn−パラフィン封入マイクロカプセルがバインダー樹脂によって固着された蓄熱性を有する繊維構造物が開示されており、マイクロカプセルの壁膜の材質として、メラミン系樹脂のほかにポリウレタン樹脂が例示されている。
しかしながら、このような繊維構造物で、壁膜の材質としてポリウレタン樹脂を用いた場合、バインダー樹脂を加熱し、マイクロカプセルを繊維構造物に付着させる工程において、壁膜が破壊され、内包された溶剤が漏出し、蓄熱性が大幅に低下したり、繊維に付着して繊維の風合いを低下したりすることがあった。
特公平5−55607号公報 特許第3244451号公報 特開平5−156570号公報
本発明は、上記現状に鑑み、高い蓄熱性を有し、耐久性に優れる蓄熱性繊維構造物及び蓄熱性繊維構造物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、ウレタン系樹脂を含有する壁膜にパラフィン系炭化水素が内包されたマイクロカプセルが、バインダー樹脂を介して繊維構造物に付着している蓄熱性繊維構造物であって、上記バインダー樹脂は、硬化温度が80〜140℃である蓄熱性繊維構造物である。以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、鋭意検討した結果、マイクロカプセルを繊維構造物に付着させるバインダー樹脂の硬化温度を所定の範囲内とすることにより、マイクロカプセルの壁膜としてウレタン系樹脂を含有するものを用いた場合であっても、ウレタン系樹脂を含有する壁膜が破壊されて、相転移材料が漏出したり、繊維に付着して繊維の風合いを低下させたりすることを防止でき、かつ、繰り返し洗濯を行った場合でも、マイクロカプセルが脱離することのない蓄熱性繊維構造物とすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記マイクロカプセルは、ウレタン系樹脂を含有する壁膜にパラフィン系炭化水素を内包する。
上記パラフィン系炭化水素は、相転移に伴う吸熱や放熱(潜熱)によって、熱安定性物質として機能する。即ち、加熱プロセス又は冷却プロセスにおいて、潜熱が熱エネルギーの障壁となって熱伝導率を低下させ、温度の急激な変化を防止することができる。これにより、本発明の蓄熱性繊維構造物は、例えば、外部からの熱エネルギーを吸収して、上記パラフィン系炭化水素が固体から液体に変化する際には、融解熱により熱が奪われるため、冷たく感じ、逆に液体から固体に変化する際には凝固熱により熱が放出されるため、温かく感じられる。
上記パラフィン系炭化水素としては特に限定されず、例えば、n−トリデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン、n−エイコサン、n−ヘンエイコサン、n−ドコサン、n−トリコサン、n−テトラコサン、n−ペンタコサン、n−ヘプタコサン、n−オクタコサン等が挙げられる。これらのなかでは、融点が人間の体温に近いn−エイコサン、n−ノナデカンが好ましい。
上記マイクロカプセルにおいて、上記パラフィン系炭化水素の含有量の好ましい下限は50重量%、好ましい上限は95重量%である。50重量%未満であると、マイクロカプセルの蓄熱性が不充分となることがあり、95重量%を超えると、上記マイクロカプセルの壁膜が薄くなり、上記パラフィン系炭化水素が漏出することがある。
上記マイクロカプセルは、上記パラフィン系炭化水素のほかに、必要に応じて、各種添加剤を内包していてもよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、抗酸化剤、防腐剤、香料、芳香剤、安定剤、揮発防止剤等が挙げられる。
上記マイクロカプセルは、ウレタン系樹脂を含有する壁膜を有する。
本発明のマイクロカプセルは、人体に有害なホルムアルデヒドを発生するメラミン−ホルマリン系樹脂、尿素−ホルマリン系樹脂等のホルマリン系樹脂ではなく、ウレタン系樹脂を上記壁膜に含有することから、人間の皮膚に対して悪影響を及ぼすことがなく、肌着等に付着させて好適に使用することができる。
上記ウレタン系樹脂としては特に限定されず、例えば、ジイソシアネート化合物と多価アルコールとから作製されるウレタン樹脂等が挙げられる。
上記壁膜は、必要に応じて、ウレタン系樹脂以外の樹脂を含有してもよい。このような樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。
上記壁膜中における上記ウレタン系樹脂の含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は90重量%である。10重量%未満であると、本発明の効果が充分に発揮されないことがあり、90重量%を超えると、壁膜が破壊しやすくなることがある。より好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は70重量%である。
上記壁膜の厚さの好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は50μmである。
0.1μm未満であると、壁膜が薄すぎて、上記パラフィン系炭化水素が漏れることがあり、50μmを超えると、蓄熱性効果が低下することがある。より好ましい下限は2μm、より好ましい上限は20μmである。
上記マイクロカプセルの平均粒子径の好ましい下限は1μm、好ましい上限は100μmである。1μm未満であると、マイクロカプセルを製造することが困難となり、100μmを超えると、繊維に付着させる場合に単繊維の直径より大きくなり、マイクロカプセルの脱離が発生することがある。より好ましい下限は5μm、より好ましい上限は20μmである。なお、上記平均粒子径は公知の方法により測定することができる。
上記マイクロカプセルを作製する方法としては、特に限定されず、例えば、界面重縮合法等を用いることができる。上記界面重縮合法としては、例えば、パラフィン系炭化水素とジイソシアネート化合物とを水中に乳化させた後、これに多価アルコールを添加し、加熱、撹拌する方法が挙げられる。
上記ジイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等の化合物が挙げられる。上記多価アルコールとしては、例えば、ジオール、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール等の化合物が挙げられる。
上記ジイソシアネート化合物と多価アルコールの好ましい組合せとしては、例えば、ジイソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネート、多価アルコールとしてエチレングリコールを用いる場合が挙げられる。
上記界面重合法を行う場合は、必要に応じて、乳化剤を用いてもよい。上記乳化剤としては、例えば、アラビアゴム、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸共重合物、マレイン酸共重合物、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記界面重合法を行う場合の加熱時間は1〜20時間程度が好ましい。また、撹拌速度は、反応スケールや濃度に応じて、50〜1000rpm程度が好ましい
本発明の蓄熱性繊維構造物は、上記マイクロカプセルが、バインダー樹脂を介して繊維構造物に付着している。
上記バインダー樹脂の硬化温度の下限は80℃、上限は140℃である。
上記硬化温度が上述した範囲内であると、上記バインダー樹脂を硬化させる際に、上記マイクロカプセルの壁膜が破壊され、パラフィン系炭化水素が漏出することを防止することができる。80℃未満であると、硬化後の被膜形成が不充分となるため、洗濯耐久性が低下し、140℃を超えると、上記マイクロカプセルの壁膜が破壊され、内包されたパラフィン系炭化水素が漏出し、蓄熱性が大幅に低下したり、繊維構造物に付着して風合いを低下させたりする。好ましい下限は90℃、好ましい上限は130℃である。
本明細書において、バインダー樹脂の硬化温度とは、重合体中で反応が進むことによって、橋かけが起こり、網状構造が生ずるときの温度のことをいう。
上記バインダー樹脂としては、シリコーン系樹脂が好ましい。
上記シリコーン系樹脂は、硬化によりゴム状被膜を形成し、上記マイクロカプセルを繊維構造物に強固に固着することができることから、得られる蓄熱性繊維構造物は、洗濯耐久性が高く、蓄熱性効果を長期間維持することができる。また、ホルマリン系樹脂と比較して、皮膚への刺激を大幅に低減することができ、シャツや肌着等の用途にも好適に使用することができる。なお、上記バインダー樹脂は、溶液タイプであってもよく、エマルジョンタイプであってもよい。
上記シリコーン系樹脂としては、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンを乳化させたもの等が挙げられる。
上記バインダー樹脂の量の好ましい下限は、マイクロカプセル全量に対して重量比で、0.1倍、好ましい上限は5倍である。上記バインダー樹脂の量を上記範囲内とすることにより、充分な接着効果を発揮することができる。0.1倍未満であると、接着性に劣ることがあり、5倍を超えても、マイクロカプセルの付着量はほとんど変わらず、逆に繊維構造物の柔軟な風合いが損なわれ好ましくない。好ましい下限は0.5倍、好ましい上限は3倍である。より好ましい下限は1倍、より好ましい上限は2倍である。
上記繊維構造物としては特に限定されず、例えば、糸、綿類、織編物、不織布、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のフィルム類、合成紙等の紙類や、これらを用いた二次製品等が挙げられる。
また、構成する繊維としては、例えば、綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、ビスコース−レーヨン等の再生繊維、アセテート−レーヨン等の半合成繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成繊維や、これらの混紡、合糸、混繊、交編織等による複合繊維等が挙げられる。更に、上記バインダー樹脂の付着性に優れることから、凹凸を有する繊維、綿、マクロボイドを有する多孔質繊維や、上記バインダー樹脂との親和性が高い繊維をもちいてもよい。
上記繊維構造物に対するマイクロカプセルの付着量は、繊維の用途により適宜選択することができるが、好ましい下限は、付着部分の繊維全体の重量に対して0.3重量%、好ましい上限は15重量%である。0.3重量%未満であると、蓄熱性が不充分となり、15重量%を超えると、繊維構造物の柔軟な風合いが損なわれ好ましくない。より好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は5重量%である。
本発明の蓄熱性繊維構造物を製造する方法としては、例えば、ウレタン系樹脂を含有する壁膜にパラフィン系炭化水素が内包されたマイクロカプセル、及び、硬化温度が80〜140℃であるバインダー樹脂を含有する溶液に、繊維構造物を浸漬する工程、浸漬後の繊維構造物を絞る工程、及び、前記バインダー樹脂を80〜140℃に加熱して、硬化させることにより、前記マイクロカプセルを前記繊維構造物に付着させる工程を有する方法を用いることができる。このような蓄熱性繊維構造物の製造方法もまた本発明の1つである。
本発明の蓄熱性繊維構造物の製造方法では、ウレタン系樹脂を含有する壁膜にパラフィン系炭化水素が内包されたマイクロカプセル、及び、硬化温度が80〜140℃であるバインダー樹脂を含有する溶液に、繊維構造物を浸漬する工程を行う。
上記マイクロカプセル及びバインダー樹脂を含有する溶液を調製する際に用いる溶媒としては、マイクロカプセルの壁膜を溶解しないものであれば、特に限定されず、例えば、水等が挙げられる。
上記マイクロカプセル及びバインダー樹脂を含有する溶液におけるマイクロカプセルの含有量の好ましい下限は1.0重量%、好ましい上限は60重量%である。1.0重量%未満であると、得られる蓄熱性繊維構造物のマイクロカプセルの付着量が不充分となることがあり、60重量%を超えて含有しても、マイクロカプセルの付着量に大幅な増加はみられない。より好ましい上限は50重量%である。
上記マイクロカプセル及びバインダー樹脂を含有する溶液におけるバインダー樹脂の含有量の好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は5.0重量%である。0.5重量%未満であると、マイクロカプセルの付着性が低下することがあり、5.0重量%を超えて含有しても、マイクロカプセルの付着性に向上はみられない。より好ましい下限は0.8重量%、より好ましい上限は3.0重量%である。
上記浸漬工程における浸漬時間の好ましい下限は0.5秒であり、好ましい上限は3.0秒である。浸漬時間を上記範囲とすることにより、最終的に得られる蓄熱性繊維構造物のマイクロカプセル付着量が充分なものとなる。
また、上記マイクロカプセル及びバインダー樹脂を含有する溶液に、更に柔軟剤を添加してもよい。これにより、得られる蓄熱性繊維構造物に柔軟性、弾力性等を付与することができる。
本発明の蓄熱性繊維構造物の製造方法では、次に、浸漬後の繊維構造物を絞る工程を行う。
上記浸漬後の繊維構造物を絞る場合における絞り率の好ましい下限は80%、好ましい上限は140%である。80%未満であると、絞り工程を行う効果が充分に得られないことがあり、140%を超えると、蓄熱性繊維構造物の生産性が低下することがあり。より好ましい下限は90%、より好ましい上限は130%である。
本発明の蓄熱性繊維構造物の製造方法では、次いで、上記バインダー樹脂を80〜140℃に加熱して、硬化させることにより、上記マイクロカプセルを上記繊維構造物に付着させる工程を行う。
上記バインダー樹脂を加熱する際の温度の下限は80℃、上限は140℃である。80℃未満であると、上記バインダー樹脂が充分に硬化せず、上記マイクロカプセルの脱離が発生する。140℃を超えると、上記マイクロカプセルの壁膜が破壊され、内包されているパラフィン系炭化水素が漏出する。
本発明の蓄熱性繊維構造物の製造方法では、目的とするマイクロカプセルの大きさ、マイクロカプセル中の壁膜の含有量、壁膜の厚さ等は、上記原料の配合量及び反応条件(温度、撹拌速度、濃度等)を適宜選択することにより調整することができる。
本発明によれば、高い蓄熱性を有し、かつ、マイクロカプセルの壁膜が破壊されることなく、マイクロカプセルと繊維との密着性が高いことから、耐久性に優れる蓄熱性繊維構造物及び蓄熱性繊維構造物の製造方法を得ることができる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
パラフィン系炭化水素としてn−エイコサン30重量部及びヘキサメチレンジイソシアネート10重量部をアラビアゴム1%水溶液64重量部に加え、ホモミキサーにて撹拌し、乳化させた。次いで、エチレングリコール6重量部を加え、ラボスターラー200rpmで撹拌を続けながら、50℃で6時間維持することにより重縮合反応をさせた。次いで、反応液を、濾過、乾燥してマイクロカプセルを得た。
得られたマイクロカプセルは、平均粒子径が5μmであった。
得られたマイクロカプセルを含有する懸濁液10重量部に対し、シリコーン系樹脂であるバインダー樹脂(バインダーGK、北広ケミカル社製)1重量部及び柔軟剤(ニッカシリコンAMG−7、日華化学社製)2重量部を添加し、綿100%メリヤス漂白後生地を0.5秒間接触させた直後に、パッダ−を用いて絞り率100%で絞った。その後、100℃で5分間乾燥し、マイクロカプセルが付着した生地を作製した。
(比較例1)
マイクロカプセルが付着していない未加工の綿100%メリヤス漂白後生地を用いた。
(評価)
実施例1及び比較例1で得られた生地について、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
(1)蓄熱性評価
断熱材(発泡スチロール)の上に、実施例1及び比較例1で得られた生地を並べて配置し(図1)、更に、その上に約40℃の湯を入れたビーカーを1分間静置した(図2)。その後、ビーカーを取り除き、ビーカーを配置した部分の表面温度をサーモグラフ(サーモビジョンCPA8000、チノー社製、図3)を用いて測定した。図4a〜4cに、ビーカーを取り除いた直後、30秒後及び60秒後におけるビーカーを配置した部分のサーモ画像を示した。なお、測定は室温(20℃)で行った。
また、断熱材の上に実施例1及び比較例1で得られた生地を並べて配置し、その上に約40℃の湯を入れたビーカーを30秒間静置した後、ビーカーを取り除いた直後から60秒後までの温度変化を図5に示した。
図4a〜4c及び図5に示すように、実施例1の生地は、何れの時間においても比較例1で得られた生地より高い温度となっており、実施例1の生地は、比較例1で得られた生地に比べて高い蓄熱性を有していることがわかる。
(2)洗濯耐久性評価
実施例1及び比較例1で得られた生地をJIS L 0217の103法に準拠して所定の回数洗濯した。次いで、断熱材の上に洗濯後の実施例1及び比較例1で得られた生地を並べて配置し、その上に約40℃の湯を入れたビーカーを30秒間静置した後、ビーカーを取り除き、60秒後の表面温度を測定した。なお、洗濯回数は、0回、5回、10回、30回、50回とした。結果を表1に示した。
表1に示すように、洗濯回数を増やした場合であっても、実施例と比較例との温度差は、全て0.5℃以上となっている。従って、実施例1で得られた生地は、洗濯を繰り返し行った場合であっても、生地に付着させたマイクロカプセルの脱離は少なく、繊維との密着性が高いことから、洗濯耐久性が高いことがわかる。
(3)着用試験
実施例1及び比較例1で得られた生地から作製した衣服を着用し、25℃で10分間安静にした後、10℃の環境に移動した場合の移動直後から10分後までの温度変化を図6に示した。なお、温度は衣服内の温度を測定した。
図6に示すように、10分後における温度差は約1℃であり、実施例1で得られた生地から作製した衣服では、外気の温度が低下した場合であっても、衣服内の温度は急激に変化せず、また、ある程度の期間、蓄熱性を維持できることがわかる。
本発明によれば、高い蓄熱性を有し、耐久性に優れる蓄熱性繊維構造物及び蓄熱性繊維構造物の製造方法を提供することができる。
蓄熱性評価における実施例及び比較例で得られた生地の配置方法を示す写真である。 蓄熱性評価におけるビーカーの配置方法を示す写真である。 蓄熱性評価における表面温度の測定方法を示す写真である。 蓄熱性評価におけるサーモグラフ画像を示す写真である。 蓄熱性評価におけるサーモグラフ画像を示す写真である。 蓄熱性評価におけるサーモグラフ画像を示す写真である。 蓄熱性評価におけるビーカーを取り除いた直後から60秒後までの温度変化を示すグラフである。 着用試験における移動直後から10分後までの温度変化を示すグラフである。

Claims (3)

  1. ウレタン系樹脂を含有する壁膜にパラフィン系炭化水素が内包されたマイクロカプセルが、バインダー樹脂を介して繊維構造物に付着している蓄熱性繊維構造物であって、
    前記バインダー樹脂は、硬化温度が80〜140℃である
    ことを特徴とする蓄熱性繊維構造物。
  2. バインダー樹脂は、シリコーン系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の蓄熱性繊維構造物。
  3. 請求項1又は2記載の蓄熱性繊維構造物を製造する方法であって、
    ウレタン系樹脂を含有する壁膜にパラフィン系炭化水素が内包されたマイクロカプセル、及び、硬化温度が80〜140℃であるバインダー樹脂を含有する溶液に、繊維構造物を浸漬する工程、
    浸漬後の繊維構造物を絞る工程、及び、
    前記バインダー樹脂を80〜140℃に加熱して、硬化させることにより、前記マイクロカプセルを前記繊維構造物に付着させる工程
    を有することを特徴とする蓄熱性繊維構造物の製造方法。
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