JP2006249438A - 湿式摩擦材 - Google Patents

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栄記 梅澤
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Abstract

【課題】極表層の余剰バインダーの被膜層を除去し又はその形成を防止した湿式摩擦材を提供する。
【解決手段】天然パルプ繊維、有機合成繊維等の繊維基材、けいそう土、カシュー樹脂等の充填材、摩擦調整剤及び熱硬化樹脂等のバインダーを含む湿式摩擦材であって、硬化後の摩擦面が、表面から深さ10μmまでのバインダーの濃度(A)に対し、表面から深さ10〜100μmのバインダーの濃度(B)の比率A/Bが0.85〜1.15の範囲にあり、かつ、特定の表面性状を有する。
【選択図】図12

Description

この発明は、摩擦係合装置におけるクラッチ、及びブレーキ等に用いられる湿式摩擦材に関する。
湿式摩擦係合装置の基本的な構成の一例を図19に示すと、インプットシャフト6に嵌装されたハブ5のスプライン部51に嵌合する駆動板2と、リテーナ4のスプライン部41に嵌合する受動板1の接触によりトルクが伝達される。図において3はプレッシャープレート、7は押圧ピストンである。
図16は受動板と駆動板の斜視図、図17は組み合わせた状態の側断面図を示し、受動板1は鋼板部11、スプライン突起12からなり、駆動板2は鋼板板21、スプライン突起22及び鋼板部21の両側に接着した湿式摩擦材23とからなっている。
図18は駆動板2の正面図であって、鋼板21の上に接着した摩擦板23に油溜を兼ねた溝24が設けられている。
現在エネルギー問題及び環境問題からして、摩擦係合装置には小型軽量であること、トルク容量の高いこと、これと同時に乗り心地の面から作動ショックが小さいこと及びジャダー等の自励振動がないことが要求される。また自動車エンジンの高回転、高出力化に伴う高エネルギー化に対しても同時に対応しなければならず、その要求は極めて高いものである。
従来の摩擦係合装置にあっては、燃費低減、作動ショックの低減のため、走行中におけるクラッチの連続滑り状態を拡大し、クラッチ効率を変化させたり、クラッチ係合時にエンジンを制御し、入力トルク/クラッチ容量の比をさげるなど、高度な制御が数多く採用されつつある。
湿式摩擦材は、天然パルプ繊維、有機合成繊維等の繊維基材と、けいそう土、カシュー樹脂等の充填材や摩擦調整剤及び熱硬化性樹脂等のバインダーを含んでいるが、従来より摩擦材内部のバインダーは、表層及び裏層(即ち両側の表面)に濃度の高い含浸層(強固なバインダー層)を形成していた。
バインダーの一例として熱硬化性樹脂は一般的に湿式摩擦材(複合繊維紙)を構成する材料であり、この種の樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂等が該当する。また、上記湿式摩擦材として抄造タイプのものが知られており、その摩擦材は、天然パルプ繊維、有機合成繊維等を繊維基材とし、これに充填材と摩擦調整剤を配合し抄造して生ペーパを造り、その生ペーパに希釈した熱硬化性樹脂溶液を含浸し、乾燥工程において希釈溶剤を揮発させた後、その熱硬化性樹脂を加熱硬化させることにより、摩擦材を製造している。
バインダーの含浸から乾燥工程を更に説明する。まず、バインダーは生ペーパに含浸する際、有機溶剤により目的とする所定濃度に希釈し使用する。生ペーパ内部に希釈したバインダーを十分含浸させた後、乾燥工程において有機溶剤を揮発させる。しかしバインダーは表面張力により摩擦材表面の極表層(約100μm位)に余剰バインダー被膜及びバインダー濃度の高い層が形成され、摩擦材の厚さ方向のバインダー分布は、表面(表層)・裏面(裏層)の極表層に濃度の高いバインダー層が形成されるのは、避けられなかった。ここで裏面及び裏層と呼んでいるのは、摩擦面ではなく鋼板に接着する側として定義している。その後、硬化工程にてバインダーを熱硬化させることにより、摩擦材表面のバインダー被膜、バインダーの濃度が高い層が固定する。
このようにバインダーの物性(表面張力)により表面の極表層に形成される余剰バインダー被膜及びバインダー濃度の高い層の影響は、下記に示す問題の要因となっていることが判明している。
(1)初期状態において極表層の繊維基材にコーティングされたバインダー被膜は、硬く、柔軟性に欠け且つ微小突起も形成するため、必ずしも平滑ではなく、ミクロ的に見た場合、受動板(相手摺動面)との接触はバインダーの突起部分のみによって摺動面を形成する。このため接触部分が小さく、またバインダーと受動板の摩擦係数がもともと低いことによって、初期の摩擦係数が低くなる。摺動を重ねていくことにより、バインダーは摩耗し、柔軟な繊維基材が摺動面に現れ出ることから、接触部分は大きく且つ多くなり平滑となり、摩擦係数の高い繊維基材の出現により摩擦係数が上昇する変化を示す初期なじみの要因となっている。
(2)表面がバインダー濃度が高く柔軟性に欠け且つ平滑性にも欠けるため、受動板との当たりが不均一となり、ミクロ的に油膜のくさび効果が発生するため、作動ショック、ジャダー性を悪化させる要因となる。
(3)表面のバインダー濃度が高く、急激な温度上昇により発生する摩擦材のプラスチック化が発生しやすい要因となる。
このなじみは、特に新品時から、わずかな間で初期設定のトルク容量が変化してしまうため、大きな品質問題としてとらえられている。
図8は従来の摩擦材の表面部分の構成を概念的に示した説明図、図9はその表面状態を拡大して示した形状線Rの図であって、Aはバインダー(樹脂)部分、Bは繊維部分、Cは充填剤を夫々示し、表面形状線Rは平滑部分がないことが判る(この従来例はL2 として表示される)。
一例として、一般的な完全硬化後の摩擦材内部の厚さ方向に対するバインダー分布状態を、図5(L2 )に示す。製品として問題となるのは、新品時の摩擦材の低い摩擦係数でクラッチの容量設計をしてしまうと、摩擦係数の時系列的な変化によるなじみ後の高トルク容量化が作動ショックの原因となってしまうことである。価格の高い高級車では、制御に余計な学習機能を追加する場合もあった。また新品時の低摩擦係数が、過酷な走行環境下では、滑り時間の延長に伴う摩擦熱によって表面温度がより上昇し、表層にバインダーが多いこともあって、バインダー(熱硬化性樹脂)のプラスチック化(摩擦材表面の熱硬化性樹脂が摩擦熱によって再硬化もしくは炭素化し摩擦面が鏡面化する現象)を促し、フェード現象発生、さらに極端な摩擦係数の低下等が発生し、耐熱耐久性が問題となる。別の事象としては、潤滑油の添加剤が摩擦熱により分解析出し、摩擦材表面及び相手摺動面に付着することにより、摩擦材表面を目詰まりさせ、本来の性能が発揮されず、同様な摩擦係数の低下を引き起こす場合もある。
これらの対策として、作動押し力を高くし滑り時間を短縮することもあるが高面圧による繰り返し圧縮疲労による摩擦材の剥離寿命の低下、単位時間当たりの発熱率の上昇による相手摩擦面(受動板)のヒートスポット発生、及び熱変形、高油圧を発生させるための油圧ポンプの大型化、さらには作動油の漏れなどの耐久寿命等に関する問題が発生する。
また、摩擦材の剥離寿命向上のためにバインダーの含浸量(濃度)を増加させ摩擦材の強度を向上させた場合、摩擦材の柔軟性欠如による摩擦特性(作動ショック・ジャダー性能)の悪化・摩擦材表面のバインダー層の影響による新品時と係合経験後に於ける摩擦係数の変化を示すなじみの悪化、そのほか表面の繊維間の構成がバインダーによって強固となることによる相手摺動面に吸着する潤滑油の添加剤の削り取りによる添加剤の摩擦材への移着、それに伴う摩擦係数の低下等の幾多の不具合な点が発生していた。これらの多くの問題点は、全て新品時において、前述したように摩擦材の極表層に形成されたバインダー被膜及びバインダーの多い(濃度が高い)層が、前記の如き各種問題を引き起こしているものである。
これらの対策として、従来一定時間摺動させて摩擦材表層の余剰バインダー被膜を減少させたり、新品の摩擦材表面を切削加工し、余剰バインダー被膜を除去することが提案されている(特許文献1参照)。しかし、図10に示すように繊維の切断等により強度低下が原因となる耐久寿命の著しい低下が生じる。また、熱板の平滑加工を行って、摩擦材表面を炭化させたり、もしくは強制平滑させる方法が採られている(特許文献2参照)。しかし、前者は繊維の炭化による強度低下のための寿命の低下が起こり、後者は、平滑にはなるが、余剰バインダー被膜の削除とは結びつかず、フェード現象、ジャダー性能に対し抜本的な対策とはならず、製品価格の上昇に結びつくという不具合は免れなかった。
特開平5−99297号公報 実開昭62−149629号公報
本発明は、前記の種類の課題を解決するものであり、極表層の余剰バインダーの被膜層を除去し又はその形成を防止した湿式摩擦材を提供する。
即ち、この発明は、天然パルプ繊維、有機合成繊維等の繊維基材、けいそう土、カシュー樹脂等の充填材、摩擦調整剤及び熱硬化樹脂等のバインダーを含む湿式摩擦材であって、硬化後の摩擦面が、表面から深さ10μmまでのバインダーの濃度(A)に対し、表面から深さ10〜100μmのバインダーの濃度(B)の比率A/Bが0.85〜1.15の範囲にあり、かつ、下記(1)〜(4)の何れか1項の表面性状を有することを特徴とする湿式摩擦材を提供する。
(1)油中環境下で面圧1MPaにおける真実接触面積が20%以上である
(2)アボット負荷曲線の表面から深さ方向14μmまでに、相対負荷長さの90%以上が存在する
(3)アボット負荷曲線の相対負荷長さが5%から60%までの切断高さの差におけるプラトー率が6μm以下である
(4)アボット負荷曲線の表面から深さ方向14μmまでに、相対負荷長さの90%以上が存在すると共に、アボット負荷曲線の相対負荷長さが5%から60%までの切断高さの差におけるプラトー率が6μm以下であり、かつ、摩擦材を乾燥状態においたとき、垂直応力とその方向の縦ひずみとの比である縦弾性係数が、常温にて面圧0.25MPa以下では83.3MPaから25MPa、常温にて面圧0.25MPaから1MPaでは250MPaから375MPaの範囲にある
(1)極表層(約100μm)の余剰な樹脂被膜と樹脂層を少なくした摩擦材であるため、全体の樹脂量に影響を与えることがないので、摩擦材の強度を低下させることなく摩擦係数の低下を防ぎ、なじみ性を飛躍的に向上させる。
(2)表層に樹脂被膜余剰樹脂が少ないのでフェード現象及びプラスチック化の防止となる。
(3)摩擦材の表層が柔軟性に富むため、作動ショック低減に優れた摩擦材とすることができる。また樹脂と相手摺動面との摩擦の割合が減少するため、高い摩擦係数を持つ摩擦材となり、潤滑油内添加剤の移着の影響を軽減することができる。
以下にこの発明について詳細に説明する。
本発明の湿式摩擦材は、上記のように特性のバインダー濃度分布及び特定の表面性状を有するが、それを実現するには以下の方法に従うことができる。
図22に示す例は、生ペーパ80を含浸槽90に通してバインダーを含浸し、絞りロール82で絞り、さらに吸引機91により余剰バインダーを除去する。その後、乾燥炉92により希釈溶剤を揮発させた後、硬化炉93に入れて加熱硬化させる。この際、硬化温度を通常の硬化温度より10〜50℃低くするか、又は温度はそのままにして短時間処理することにより柔軟性を有する硬化状態で、硬化工程を終了させる。
図23に示す例では、含浸槽90を出た後、循環しながら摩擦材23の表面と密着する吸収材94により余剰バインダーを吸収除去する。その後、乾燥炉92により希釈溶剤を揮発させた後、硬化炉93に入れて加熱硬化させる。硬化の際、バインダーの硬化温度より10〜50℃低い温度とするか、又はバインダーの硬化温度のままにして短時間処理することにより、柔軟性を有する硬化状態で、硬化工程を終了させる。
図24に示す例では、含浸槽90を出た後、循環しながら摩擦材23の表面と密着する吸収材94により余剰バインダーを吸収除去する。その後、吸収材を密着させたまま乾燥工程、硬化工程を行い、硬化工程終了後吸収材を引き離す。これにより、吸収材と接している摩擦材の内面は硬化工程において直接熱を受けることがないため、柔軟性を有する硬化状態を得ることができる。
図25に示す例では、生ペーパ80と合成樹脂シート95を重ね合わせて含浸槽90を出た後、密着させたまま乾燥工程、硬化工程を行い、硬化工程終了後合成樹脂シート95を引き離す。これにより、合成樹脂シートと密着された摩擦材の内面には、バインダーの表面張力による余剰バインダー被膜やバインダー分の多い層は形成されず、かつ硬化工程において直接熱を受けることがないため、柔軟性を有する硬化状態を得ることができる。
図26に示す例では、同一材質又は異材質の生ペーパ80を重ね合わせたまま含浸槽90、乾燥炉92、硬化炉93を通し、硬化工程終了後2枚の摩擦材を引き離す。これにより、互いに密着された摩擦材の内面には、バインダーの表面張力による余剰バインダー被膜やバインダー分の多い層は形成されず、かつ硬化工程において直接熱を受けることがないため、柔軟性を有する硬化状態を得ることができる。また、2倍の摩擦材を生産することが可能であり、生産効率が高く、低コスト化が可能である。
図27は図26と同じ原理であるが、生ペーパを予め一片のシート状や製品形状に切断して、2枚重ね合わせのままコンベア96にのせて搬送する。
以上、種々の方法を挙げたが、バインダーの表面張力により極表層に形成される余剰バインダーの被膜とバインダー分の多い層を除去したり、被膜や層の形成を防止し、また柔軟な硬化状態を有する面を製品摺動面となる面とし、加熱、加圧、成形加工等による平滑工程を行うことにより、柔軟性のある表面の平滑性を促進させ、良好な平滑面を形成させた摩擦材を得ることができる。また、平滑工程と接着工程を同時に行うことにより、良好な平滑面を形成させた摩擦材をコアプレートに接着させることが可能となる。
この発明の理解のために、摩擦材の平滑性の管理手法について説明する。平滑性の管理手法としては粗さで管理することが一般的である。しかし、摩擦材は繊維1本1本が表面上に均等に並んで構成されるわけではなく、繊維が絡み合う構造でかつ多孔性を有しているため、深さ方向の孔による影響により粗さは大きく変動する。また、一般的な金属表面より粗いので金属表面の管理と同じ方法では適切でない。そのため、統計学でいう累積分布関数に相当するアボット負荷曲線を用いて摩擦材の形状及び粗さを測定し、管理がなされている。そこで、本特許の摩擦材の特徴を述べながら摩擦材の管理方法について説明する。
粗さ測定器で計測される相対負荷長さ(tp)は図28に示すように、表面の凹凸の抽出曲線から、所定の測定長さLを抜き取り、その平均線に平行でかつ最高山頂から切断レベルpだけ下側にある直線で切断された表面の切断部分の長さを、所定の測定長さLに対する百分率で表したものである。
即ち、深さpにおける相対負荷長さtpをtp(p)で表せば

tp(p)=100/L Σ bi (%)で表せされる。
i=1
切断レベルpは最高山頂を0%、最低谷底を100%とした時の最高山頂からの深さをμm単位もしくは%で示す方法がある。最大山頂と最低谷底の差は最大高さRmax に等しい。
しかし、摩擦材の深さ方向の孔による影響により最低谷部の形状は安定しないため、アボット負荷曲線では縦軸を最大高さ(切断レベル)で表していることもあり、接触比tp:90%以上の谷部のバラツキが非常に大きくなる。そして管理上においては、谷部の影響を小さくするため、切断レベルは%表示ではなくμm単位を用いる。
図29(a)は図28と同じ抽出曲線を示し、抽出曲線における全ての切断レベルp(μm)と、その切断レベルにおける相対負荷長さtp(%)との関係を示したものが前述のアボット負荷曲線(又は接触比曲線と呼ばれている。)であって、図29(b)に示されている。
従来例の表面状態は、表面張力によって表面から深さ方向100μmまで余剰バインダー層が形成されていたが、この発明の表面状態では、摩擦材を構成する繊維1本1本の太さ約10μmの表面に約1μmで均等にコーティングされたようにバインダーが形成される。この製品管理(検査)方法は、アボット負荷曲線を用いることは前述したが測定上の問題点があるのでさらに詳述すれば、摩擦材の表面には余剰バインダー層とは別であるゴミ、バインダーの溜まりが表面上に約2μmの高さでランダムに存在し、負荷曲線における左側の部分(表面側に相当する)は、抽出曲線の切断レベルが最大高さRmax に等しいことから、上述した一部のゴミ、バインダーの溜まり等のノイズを拾ってしまうことにより大きく変動する。そのため、負荷曲線の形状が測定場所により不安定となり、正しい管理が難しくなってしまうため、管理をする上では、ノイズ部分(金属では初期摩耗分という)を除外した負荷曲線を用いる。
図30に再び負荷曲線を示し、tp(a)を切断レベルPaをノイズ部分に相当する5%に設定し、tp(a)が5%の時の切断レベルP(a)を高さOの点とし、そこからPbまでの深さをμmで表したものを摩擦材表面状態の管理値(プラトー率)として図面管理値に用いている。
O〜Paの間は数値上、ノイズ等の影響が大きい部分で微小であるため、摩擦特性にはほとんど影響しない。
図15の負荷曲線に示すPa〜Pb間(接触比tp:5〜60%)はほぼ直線部となる領域であり、摩擦材の形状の特徴が傾きによってあらわされ、バラツキの面からも安定した領域である。そして、主に相手面と接触する部分となるため、摩擦特性上最も重要な形状となる。Pa〜Pb間の部分が平坦で長いほどプラトー率の数値が小さくなり性能か安定する。
即ち、接触比が5%である深さPa(ノイズ部分を除いた深さ)から、接触比tp(b)を60%とする深さPbまでの深さの差が小さいほど表面が平滑なことを示し性能が良いこととなる。接触比が60%から5%の間の深さが6μm以下であり、プラトー率をHp(60−5)<6μmで表わす。
摩擦材のなじみは、初期状態において極表層の繊維基材にコーティングされたバインダー被膜が硬く、柔軟性に欠け且つ微小突起も形成するため、必ずしも平滑ではなく、ミクロ的に見た場合、受動板(相手摺動面)との接触はバインダーの突起部分のみによって摺動面を形成する。このため接触部分が小さく、またバインダーと受動板の摩擦係数がもともと低いことによって、初期の摩擦係数が低くなる。摺動を重ねていくことにより、バインダーは摩耗し、柔軟な繊維基材が摺動面に現れ出ることから、接触部分は大きく且つ多くなり平滑となり、摩擦係数の高い繊維基材の出現により摩擦係数が上昇する変化を示すなじみの要因となっている。この摩擦係数を高める要因は、繊維/バインダーの接触比率と真実接触面積であり、逆に初期状態からこの2つの要因の値を高めることを可能とすれば、初期より摩擦係数が安定(従来例では、摺動を重ねて摩擦係数が安定した領域)した摩擦材とすることができる。
初期状態の繊維/バインダーの接触比率を高めるために、摩擦材の表面張力による極表層に形成する余剰バインダー濃度は、表面から深さ方向10μm(摩擦材に含有されるバインダー濃度(樹脂含浸率)を分析するために、摩擦材をスライスできる最小単位)までのバインダー濃度(A)に対し、深さ方向10から100μmのバインダー濃度(B)の比率(A/B)が、0.85〜1.15の範囲にあることを特徴としており、1.15を越えた場合は、初期の摩擦係数が安定時の摩擦係数より10%低くなる。摩擦係数の変動基準の決定は、クラッチの設計上の指標となるトルク容量変動値±10%を越えないことを前提としているため、トルク容量変動下限値:−10%と一致する摩擦係数10%低下を限界としている。このA/B値を小さくすると、表面のバインダー濃度が低くなり摩擦係数の安定につながるが、摩擦材の強度はバインダーによっても保持されているため、A/B値の減少と共に摩擦材表面の強度低下が著しくなり、摩耗の増大や、はくり寿命の低下に結びつく。この発明では、過酷使用条件の限界線と摩擦係数の安定性より0.85となる。
また、上記摩擦材において真実接触面積が油中環境下で面圧1MPaで20%以上存在する事を特徴としている。20%以上とすることで、なじみは格段に向上させることができ、20%に満たない場合(従来例は、3〜5%前後が多い)、上記問題点として挙げた摩擦係数の変動10%以上となってしまう。真実接触面積の向上は、繊維接触比率を高めながら、特に低面圧時の柔軟性を良好(縦弾性係数を大きくする)にさせることと、表面形状の平滑化を進めることにある。ここで、真実接触面積の測定方法として、千葉工業大学大谷、東京大学木村らが用いているプリズムを介して真実接触面積を測定する接触面顕微鏡を用いている。接触面顕微鏡の原理を図20に示す。原理を簡単に説明すると、光源から放射された光を偏光板cと1/4波長板dにて各偏光に変えた上で、接触面に入射させると非接触部の全反射光と接触部の部分反射光の位相のとびが異なる。いずれかの反射光を直線偏光になるよう調整しておけば、偏光板hによって、いずれかの反射光を遮断することができるため、非接触部と接触部の明るさの違いが明確になり、真実接触面積を輝度良く測定することが可能となる。
図において、aは光源、bはコリメータレンズ、cは偏光板、dは1/4波長板、eはプリズム、fは測定物体、gは対向レンズ、hは偏光板、iは撮影レンズ、jはCCDカメラを夫々示している。
別の実施例は、縦ひずみを低面圧下(1.5MPa以下)で従来例以上に大きくしたことであり、従来例より低面圧において柔軟性を有しているため接触初期時から真実接触面積を20%確保することができ、なじみが極めてよい摩擦材となる。
図21はたて軸に縦ひずみ(応力の方向のひずみ)、横軸に縦応力(MPa)をとり、AからBは発明の摩擦材の範囲を示し、点線Cは従来例を夫々示している。
図の示すところは、範囲上限以上であった場合、摩擦材表面の強度低下により、摩耗の増大や、はくり寿命の低下に結びつく。また、範囲下限以下であった場合、摩擦材表面の強度が高いことにより、ジャダー現象の発生や初期なじみ性の悪化(摩擦係数の変動10%以上)となる。この実施例は表面形状の状態によらないのが特徴である。
摩擦材の構成を、天然パルプ・有機合成繊維40重量%、フェノール樹脂25%、摩擦調整剤・充填材35重量%の合計100重量%とした場合、この発明により製造した実施例をL1 で表わし、従来の方法で製造したものをL2 で表わし、さらにL2 に350〜550℃の平滑熱板を押しつけて状態を改善したものをL3 で表せば、前述の如く図8は従来の摩擦材(L2 )の表面部分の構成を概念的に示した説明図、図9はその表面形状を拡大して示した形状線Rを示した図であり、表面形状線Rは平滑部分がないことが判る。図11と図12はL3 についての同様の図であって、表面に平滑部分Fが現れている。
図でAは樹脂層、Bは繊維、Cは充填剤を示すことは各図とも同様である。
図13と図14はこの発明の実施例L1 について示したもので、その矢印の下方はさらに平滑工程を加えた後の状態であって、Fは平滑部分を表わしている。図6はL1 の表層の樹脂含浸率を、図7はL2 の表層の樹脂含浸率を示し、表層をSで表わし、たて方向の下に向けて層の深さを示し、よこ方向に右方向に向けて樹脂含浸率が高くなることを示している。図5は同じ樹脂含浸率を線図で示したもので、たて軸は樹脂含浸率を%で表わし(上方に向けて高くなる)、横軸に厚さ方向の分布を示す(左側が表層、右側が鋼板に接着される裏層の側を夫々示している)。
線AがL1 を、破線BがL2 の場合を夫々示し、L2 の場合は表層で樹脂含浸率が高くなっていることが示される。
図1は試験回数と摩擦係数の関係を示し、たて軸に摩擦係数、横軸に試験回数が示されている。AはL1 の場合、BはL2 の場合を夫々示し、L1 では略一定であるが、L2 の場合は最初低く、次第に高くなることが示されている。
図2は回転数と摩擦係数の関係を示す図であって、たて軸に摩擦係数、よこ軸に回転数(r.p.m)をとって示され、線AはL1 の場合、BはL2 の場合を夫々示している。図4はL1 とL2 の圧縮回数に対する剥離寿命を示し、AはL1 、BはL2 の場合を示すが、この点については両者は殆んど差異はなかった。図3はジャダーの発生の有無を示すもので、AはL1 、BはL2 の場合を夫々示し、40℃、100℃は潤滑油温度、たて軸はスリップ回転数(即ち相対回転数)又横軸に面圧(kg/cm2 )をとってある。L1 の場合すべての条件でジャダーは発生しないことが判る(L2 の場合、面圧15、及び20の場合は測定不可能である)。
図31は、接触比90%における切断レベル値によるジャダーの発生の有無を示すもので潤滑油温度100℃、スリップ回転数200r.p.m.のジャダー発生環境として厳しい条件を採用している。16μmは、面圧20kg/cm2 において中程度のジャダーが発生している。14μm以下ではジャダーが発生していないことが判る。図32は、プラトー率:Hp(60−5)における値によるジャダーの発生の有無を示すもので、図31同様潤滑油温度100℃、スリップ回転数200r.p.m.のジャダー発生環境として厳しい条件を採用している。8μmは、面圧20kg/cm2 において中程度のジャダーが発生している。6μm以下ではジャダーが発生していないことが判る。
図15は、よこ軸に相対負荷長さをとり、たて軸に切断レベル(即ち深さ)をとった負荷曲線をL1 ,L2 ,L3 について比較したものである。この発明のL1 が切断レベルの増加に対し、相対負荷長さも急に増加し、山の凹凸が平であることが示されている。
試験回数と摩擦係数の関係を示す図 回転数と摩擦係数の関係を示す図 ジャダーの発生条件を示す図 剥離寿命の比較を示す図 樹脂含浸率の厚さ方向の分布を示す図 この発明の厚さ方向の樹脂含浸率を示す図 従来例の厚さ方向の樹脂含浸率を示す図 従来例の極表層構造例の一例を示す図 従来例の表面形状を示す図 従来例の極表層構造の他の例を示す図 従来例の極表層構造例の他の例を示す図 従来例の表面形状を示す図 この発明の場合の極表層構造を示す図 この発明の表面形状を示す図 表面平滑度を示す国際規格による比較を示す図 摩擦材の斜視図 摩擦材を組み立てたときの断面図 摩擦材の一例の正面図 湿式摩擦材を適用した摩擦係合装置の一例の側断面図 接触面顕微鏡の原理図 応力とひずみの関係を示す図 吸引機を用いた製造方法の例を示す図 吸収材を用いた製造方法の例を示す図 吸収材を用いた別の例を示す図 合成樹脂シートを用いた例を示す図 摩擦材を2枚合わせた例を示す図 予め摩擦材を打抜いてある例を示す図 相対負荷長さの説明図 負荷曲線の説明図 負荷曲線を示す図 接触比90%における切断レベル値によるジャダーの発生を示す図 特定のプラトー率におけるジャダーの発生を示す図
符号の説明
1 受動板
11 鋼板部
12 スプライン突起
2 駆動板
21 鋼板部
22 スプライン突起
23 摩擦材
24 溝
3 プレッシャープレート
4 リテーナ
41 スプライン部
5 ハブ
51 スプライン部
6 インプットシャフト
7 押圧ピストン
80 生ペーパー
90 含浸槽
91 吸引機
92 乾燥炉
93 硬化炉
94 吸収材
95 合成樹脂シート
96 コンベア

Claims (1)

  1. 天然パルプ繊維、有機合成繊維等の繊維基材、けいそう土、カシュー樹脂等の充填材、摩擦調整剤及び熱硬化樹脂等のバインダーを含む湿式摩擦材であって、
    硬化後の摩擦面が、表面から深さ10μmまでのバインダーの濃度(A)に対し、表面から深さ10〜100μmのバインダーの濃度(B)の比率A/Bが0.85〜1.15の範囲にあり、かつ、下記(1)〜(4)の何れか1項の表面性状を有することを特徴とする湿式摩擦材。
    (1)油中環境下で面圧1MPaにおける真実接触面積が20%以上である
    (2)アボット負荷曲線の表面から深さ方向14μmまでに、相対負荷長さの90%以上が存在する
    (3)アボット負荷曲線の相対負荷長さが5%から60%までの切断高さの差におけるプラトー率が6μm以下である
    (4)アボット負荷曲線の表面から深さ方向14μmまでに、相対負荷長さの90%以上が存在すると共に、アボット負荷曲線の相対負荷長さが5%から60%までの切断高さの差におけるプラトー率が6μm以下であり、かつ、摩擦材を乾燥状態においたとき、垂直応力とその方向の縦ひずみとの比である縦弾性係数が、常温にて面圧0.25MPa以下では83.3MPaから25MPa、常温にて面圧0.25MPaから1MPaでは250MPaから375MPaの範囲にある
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