JP2006249252A - 水素製造システム用燃料 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温下でも劣化によるシステムの耐久性低下も少ない水素製造システム用燃料を提供する。
【解決手段】アルコール濃度25容量%以上70容量%以下のアルコール水からなる水素製造システム用燃料。
【選択図】図1

Description

本発明は、水素製造システム用燃料に関する。
近年、将来の地球環境に対する危機感の高まりから、地球にやさしいエネルギー供給システムの開発が求められ、エネルギー効率が高いこと及び排出ガスがクリーンである点から、燃料電池、水素エンジン等の水素を燃料とするシステムが脚光を浴びている。なかでも、燃料電池への水素の供給方法としては、圧縮あるいは液化といった形で直接水素を供給する方法の他、メタノール等の含酸素燃料、及びナフサ等の炭化水素系燃料の改質による供給方法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。このうち、直接水素を供給する方法は、そのまま燃料として利用できる利点はあるが、常温で気体のため貯蔵性および車両等に用いた場合の搭載性に問題がある。一方、ナフサ等の炭化水素系燃料の改質による水素の製造は、既存の燃料供給インフラが使用できること、トータルでのエネルギー効率が高いこと等により注目を集めている。こうした炭化水素系燃料は水素発生のために改質工程が必要であるが、改質システムの耐久性に問題があり、高い水素発生効率が得られない場合があった。
また、炭化水素系燃料の改質による水素の製造の際には、水を用いるため、氷点下となる環境においては始動性に問題があり、場合によっては加温設備等を具備する必要があり、効率が低下してしまうことがある。
池松正樹,「エンジンテクノロジー」,山海堂社,2001年1月,第3巻,第1号,p.35
本発明は、このような状況に鑑み、水素製造システムの耐久性に優れ、寒冷地を含むあらゆる場所で使用可能な水素製造システムを提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究した結果、特定アルコール濃度のアルコール水を水素製造システム用の燃料とすることにより前記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は、アルコール濃度25容量%以上70容量%以下のアルコール水からなる水素製造システム用燃料に関する。
また、本発明は、アルコールが、炭素数1から3のアルコールから選択される1種又は2種以上のアルコールであることを特徴とする前記記載の水素製造システム用燃料に関する。
本発明の水素製造システム用燃料は、アルコールと水を混合することにより得られるアルコール水であり、アルコール水中のアルコール濃度が25容量%以上、70容量%以下であることが必要である。アルコール濃度の下限は、凝固点および改質器効率の向上の観点から30容量%以上であることが好ましく、35容量%以上であることがさらに好ましい。一方、上限は触媒上のコーキング発生量抑制の観点から60容量%以下であることが好ましく、50容量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の水素製造システム用燃料に用いるアルコールとしては、炭素数1〜3のアルコールが好ましく、具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノールおよび2−プロパノール(IPA)から選ばれるアルコールのうちの1種、または2種類以上を混合して使用することができる。これらのうち、水素製造システムの効率およびシステム耐久性の観点からエタノールを使用することが特に好ましい。
本発明の水素製造システム用燃料に用いるアルコールの純度は、特に限定されるものではないが、不純物による触媒へのダメージ、効率の低下を抑制する点で、95容量%以上が好ましく、97容量%以上がより好ましく、99容量%以上がさらに好ましい。
本発明の水素製造システム用燃料に用いるアルコールの製造法は特に限定されるものではなく、公知の製造法から得られるすべてのアルコールが使用可能である。製造法としては、例えば、天然ガス、石油あるいは石炭の副産物、エチレン等より工業的に合成する方法、バイオマスガスより合成する方法、酵母の働きにより糖から製造する発酵法、などが挙げられる。これらの中でも、製造時の二酸化炭素排出量など環境への影響を考慮すると、とうもろこし、さとうきびやその他の農産物、または木質資源や木質系廃棄物を利用したバイオマスからのアルコール、特にエタノールが好ましく使用できる。
なお、前記記載のアルコールは市販品として入手可能である。
本発明の水素製造システム用燃料に用いる水は特に限定されるものではないが、水素製造システムの耐久性の点で、電気伝導度が1μS/cm以下である水の使用が好ましい。また、水の含有量は、前述のアルコール濃度により適宜決定される。
本発明の水素製造システム用燃料の硫黄含有量は、特に規定はないが、脱硫率、脱硫触媒の耐久性、改質触媒の耐久性、改質反応性の低下、二酸化炭素発生量当りの水素発生量の観点から0.5質量ppm以下であることが必要であり、0.3質量ppm以下が好ましく、0.2質量ppm以下がより好ましい。
ここで、硫黄含有量とは、ASTM D4045−96「Standard Test Method for Sulfur in Petroleum Products by Hydrogenolysis and Rateometric Colorimetry」により測定される値である。
本発明の水素製造システム用燃料は、これを脱硫(水素製造システム用燃料の硫黄含有量が0.05質量ppm以上の場合)、改質することで水素を製造することができる。特に本発明の水素製造システム用燃料は、寒冷地を含むあらゆる場所において、改質により水素を効率よく且つ長期間安定に製造することができる。
本発明の水素製造システム用燃料を用いて水素を製造するには、一般に燃料電池システムに使用されている水素製造(発生)システム、例えば、脱硫器、改質器、及び一酸化炭素浄化装置等を組み合わせたシステムが用いられる。これらを配置した主なシステムとしては、例えば、(1)脱硫器、改質器、及び一酸化炭素浄化装置からなるシステム、(2)脱硫器、改質器、脱硫器(再脱硫)、及び一酸化炭素浄化装置からなるシステム、及び(3)改質器、脱硫器、及び一酸化炭素浄化装置からなるシステムを挙げることができる。
また、本発明の水素製造システム用燃料を使用する燃料電池システムは、上記のような水素製造システムに更に水素を主燃料とする燃料電池が含まれたものである。燃料電池としては、例えば、固体高分子型燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)、及び固体酸化物型燃料電池(SOFC)を挙げることができる。なお、本発明の水素製造システム用燃料は、メタノールやジメチルエーテル等を水素に改質することなく、燃料電池の直接の燃料とする直接型燃料電池には不向きなため使用しないものとする。
次に、水素製造システムについて詳述する。
脱硫器は、燃料を接触脱硫する装置であり、脱硫方法としては、例えば、金属触媒の存在下で水素化脱硫する方法、及び酸化亜鉛等により吸着脱硫する方法を挙げることができる。特に本発明の水素製造システム用燃料の硫黄含有量が0.05質量ppm以上の場合は、水素化脱硫あるいは加圧・加熱下での吸着脱硫することが好ましい。
改質器は、燃料を改質して水素を得るための装置であり、具体的に例えば、下記の改質器を挙げることができる。
(1)加熱気化した燃料蒸気を混合し、銅、ニッケル、白金、ルテニウム、ロジウム等の周期律表第VIII族元素を活性金属とする触媒中で加熱反応させることにより、水素を主成分とする生成物を得る水蒸気改質型改質器
(2)加熱気化した燃料蒸気を加熱した空気と混合し、銅、ニッケル、白金、ルテニウム、ロジウム等の周期律表第VIII族元素を活性金属とする触媒層前段にて、部分酸化型改質を行い、後段にて部分酸化反応により発生した熱を利用して、水蒸気改質型改質を行うことにより、水素を主成分とする生成物を得る自己熱改質型改質器
一酸化炭素浄化装置は、上記改質装置で生成したガスに含まれ、燃料電池の触媒毒となる一酸化炭素の除去を行うものであり、具体的には、改質ガスを圧縮空気と混合し、白金、ルテニウム等の触媒中で反応させることにより、一酸化炭素を二酸化炭素に変換する選択酸化反応器を挙げることができる。これらの装置は単独で又は組み合わせて使用することができる。
また改質操作は、以下の条件で行うことが好ましい。
水蒸気改質型では、水素製造システム用燃料の蒸気を改質触媒の存在下、反応温度300〜1000℃の条件下で反応させることが好ましい。水蒸気改質型改質器に用いる触媒の活性金属は、水素製造システム用燃料より水素を得るための改質反応性の点で、周期律表第VIII族元素であることが好ましく、ルテニウム、ロジウム、白金等がより好ましく、中でもルテニウム、ロジウムが特に好ましい。また、反応温度は、改質反応性の点で300℃以上が好ましく、400℃以上がより好ましく、触媒上のコーキング発生量抑制の点で1000℃以下が好ましく、800℃以下がより好ましい。
自己熱改質型改質器では、水素製造システム用燃料の蒸気及び空気の混合ガスを、改質触媒の存在下、反応温度300〜1000℃、酸素とアルコールの混合比率(O/C)が0.1〜0.5モル/モルで反応させることが好ましい。自己熱改質型改質器に用いる触媒の活性金属は、水素製造システム用燃料より水素を得るための改質反応性の点で、周期律表第VIII族元素であることが好ましく、ルテニウム、ロジウム、白金等がより好ましく、中でもルテニウム、ロジウムが特に好ましい。また、反応温度は、改質反応性の点で300℃以上が好ましく、400℃以上がさらに好ましく、触媒上のコーキング発生量抑制の点で1000℃以下が好ましく、800℃以下がさらに好ましい。
酸素とアルコールの混合比率(O/C)は改質反応性の点で0.1モル/モル以上が好ましく、0.2モル/モル以上がさらに好ましく、触媒上のコーキング発生量抑制の点で0.5モル/モル以下が好ましく、0.4モル/モル以下がさらに好ましい。
なお、本発明でいう「酸素とアルコールの混合比率(O/C)」において、Oは酸素(分子)のモル数、Cはアルコール中の炭素のモル数を意味する。従って、「酸素とアルコールの混合比率(O/C)」の求め方に関し例を挙げて説明すると、酸素(分子):0.6モルと、エタノール(C5OH):1モルを用いた場合、酸素とエタノールの混合比率(O/C)は、エタノール:1モル中の炭素のモル数は2モルであるので、「O/C=0.6モル/2モル=0.3」となる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
[実施例1〜4及び比較例1〜4]
表1に示すように本発明の水素製造システム用燃料(実施例1〜4)及び比較用の水素製造システム用燃料(比較例1〜4)を調製した。
なお、エタノールには和光純薬工業社製試薬特級(エタノール純度:99.5容量%)を、IPAには和光純薬工業社製試薬特級(IPA純度:99.5容量%)を、水にはイオン交換水(電気伝導度0.5μS/cm未満)を用いた。
得られた水素製造システム用燃料を下記の二つの水素製造システムを用いて評価した。
(1)水蒸気改質型改質システム
水素製造システム用燃料を電気加熱により気化させ、貴金属系触媒を充填し、電気ヒーターで所定の温度に維持した改質器に導き、水素分に富む改質ガスを発生させた。改質器の温度は、試験初期段階において改質が完全に行われる最低の温度(改質ガスにHCが含まれない最低温度)とした。
改質器にて発生した改質ガスは一酸化炭素浄化器に導かれ、改質ガスの中の一酸化炭素は二酸化炭素に変換されたのち、固体高分子型燃料電池へ導入され発電が行われる。
水蒸気改質型水素製造システムを用いた評価フローチャートを図1に示す。
(2)自己熱改質型改質システム
水素製造システム用燃料を電気加熱により気化させ、予熱した空気と共に貴金属系触媒を充填し、電気ヒーターで所定の温度に維持した改質器に導き、水素分に富む改質ガスを発生させた。改質器の温度は、試験初期段階において改質が完全に行われる最低の温度(改質ガスにHCが含まれない最低温度)とした。
改質器にて発生した改質ガスは一酸化炭素浄化器に導かれ、改質ガスの中の一酸化炭素は二酸化炭素に変換されたのち、固体高分子型燃料電池へ導入され発電が行われる。
自己熱改質型改質システムのフローチャートを図2に示す。
上記水素製造システムは、室温制御(35℃から−20℃まで)可能な環境評価試験室に設置し、低温時の際には起動を可能にするように保温用電気ヒーターを設置した。そして、各水素製造システムの後段には、水素製造システムよりの水素発生能力評価のため、環境試験室の外に固体高分子形燃料電池を設置、接続した。
上記2つの水素製造システムを用いた場合の水素製造システム用燃料の性能を下記の方法で評価した。
<水蒸気改質型水素製造システムを用いた評価>
(1)25℃での評価
図1に示した水素製造システムを25℃下にて24時間保持した後、水素製造および水素製造システムより発生した水素による燃料電池の発電試験を開始した。試験は、10時間の発電運転後に一旦停止し、およそ14時間、25℃下にて保持する24時間サイクルを1回とし、合計20サイクルの試験を実施した。試験開始直後および20サイクル後の発電時間の合計が200時間に達した時点の発電量(電気エネルギー)を測定した。
得られた測定値から、水素製造システムの性能劣化指標として発電量(電気エネルギー)低下割合(200時間経過後の発電量/試験開始直後の発電量)を計算し評価した。
(2)−10℃での評価
図1に示した水素製造システムを−10℃下にて24時間保持した後、水素製造および水素製造システムより発生した水素による燃料電池の発電試験を開始した。試験は、10時間の発電運転後に一旦停止し、およそ14時間、−10℃下にて保持する24時間サイクルを1回とし、合計20サイクルの試験を実施した。試験開始直後および20サイクル後の発電時間の合計が200時間に達した時点の発電量(電気エネルギー)を測定した。
なお、試験中は水素製造システムへの通油が可能になるように水素製造システムに設置した保温用ヒーターをそれぞれ必要最低限にて使用した。
得られた測定値から、水素製造システムの性能劣化指標として発電量(電気エネルギー)低下割合(200時間経過後の発電量/試験開始直後の発電量)を計算し評価した。
<自己熱改質型水素製造システムを用いた評価>
(1)25℃での評価
図2に示した水素製造システムを25℃下にて24時間保持した後、水素製造および水素製造システムより発生した水素による燃料電池の発電試験を開始した。試験は、10時間の発電運転後に一旦停止し、およそ14時間、25℃下にて保持する24時間サイクルを1回とし、合計20サイクルの試験を実施した。試験開始直後および20サイクル後の発電時間の合計が200時間に達した時点の発電量(電気エネルギー)を測定した。
得られた測定値から、水素製造システムの性能劣化指標として発電量(電気エネルギー)低下割合(200時間経過後の発電量/試験開始直後の発電量)を計算し評価した。
(2)−10℃での評価
図2に示した水素製造システムを−10℃下にて24時間保持した後、水素製造および水素製造システムより発生した水素による燃料電池の発電試験を開始した。試験は、10時間の発電運転後に一旦停止し、およそ14時間、−10℃下にて保持する24時間サイクルを1回とし、合計20サイクルの試験を実施した。試験開始直後および20サイクル後の発電時間の合計が200時間に達した時点の発電量(電気エネルギー)を測定した。
なお、試験中は水素製造システムへの通油が可能になるように水素製造システムに設置した保温用ヒーターをそれぞれ必要最低限にて使用した。
得られた測定値から、水素製造システムの性能劣化指標として発電量(電気エネルギー)低下割合(200時間経過後の発電量/試験開始直後の発電量)を計算し評価した。
以上の評価結果を表2、表3に示す。
表2、表3に示す結果から、本発明の水素製造システム用燃料(実施例1〜4)を用いた場合には、比較例に比べて性能劣化が少なく、特に低温下における性能劣化の度合いが少なく、優れた水素製造能力を有することが分かる。
Figure 2006249252
Figure 2006249252
Figure 2006249252
水蒸気改質型水素製造システムを用いた評価フローチャートである。 自己熱改質型水素製造システムを用いた評価フローチャートである。

Claims (2)

  1. アルコール濃度25容量%以上70容量%以下のアルコール水からなる水素製造システム用燃料。
  2. アルコールが、炭素数1から3のアルコールから選択される1種又は2種以上のアルコールであることを特徴とする請求項1記載の水素製造システム用燃料。
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