JP2006242158A - 圧力調整弁 - Google Patents

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Abstract

【課題】
燃料系の不具合によって発生する振幅の比較的大きい圧力脈動から構成部品を保護することが可能な圧力調整弁を提供する。
【解決手段】
燃料タンク60から汲み上げた燃料の圧力を調整する圧力調整弁54であって、燃料タンク60から汲み上げられた燃料が導入される第1開口部543aと、余剰燃料を排出する第2開口部541bとを有するバルブ本体541と、バルブ本体541内に収納され、バルブ本体541内を移動することにより、第1開口部543aと第2開口部541bとを連通もしくは遮断する弁体544と、バルブ本体541内に収納され、弁体544を、第1開口部543aと第2開口部541bとを遮断する方向に付勢する付勢部材545と、弁体544が所定以上移動すると、弁体544の移動を強制的に規制する移動規制手段541eとを備えていることを特徴としている。
【選択図】図3

Description

本発明は、燃料タンクから汲み上げた燃料の圧力を調整する圧力調整弁に関する。
従来、燃料タンクから低圧ポンプ(以下、フィードポンプと呼ぶ)にて燃料を汲み上げ、高圧ポンプにその燃料を供給し、その燃料を高圧ポンプ(以下、プランジャポンプと呼ぶ)にて加圧し、燃料噴射弁へ圧送する燃料噴射ポンプにおいて、低圧ポンプから吐出される燃料の圧力を調整する圧力調整弁を備えている燃料噴射ポンプが知られている(特許文献1)。
この圧力調整弁は、フィードポンプからの吐出燃料が供給される入口部と、フィードポンプからの吐出燃料の一部を燃料タンク側に戻すための出口部とを有するバルブ本体(以下、バルブボディと呼ぶ)、前記入口部と前記出口部との連通・遮断を決定する弁体、および前記弁体を前記入口部と前記出口部とを遮断する方向に付勢するスプリングを有している。この圧力調整弁は、フィードポンプから吐出される燃料が所定圧以上となると弁体が、前記入口部と前記出口部とを連通し、吐出される燃料の一部を燃料タンクに戻し、フィードポンプから吐出される燃料の圧力を所定の圧力に調整している。
特開2003−148295号公報
通常、燃料噴射ポンプと燃料タンクとの間の配管途中には、燃料中に含まれる異物等を取り除くための燃料フィルタが設けられている。この燃料フィルタが目詰まり等を起こすと、燃料フィルタと燃料噴射ポンプ入口(特に、フィードポンプ入口)との間の配管中の燃料圧力が負圧の状態となり、燃料中に気泡が発生することがある。
燃料噴射ポンプのフィードポンプは、インナギア式のトロコイドポンプの場合、とコロイド曲線によって形成されたインナギア、アウタギアを有し、インナギアとアウタギアとの歯間容積を変化させることで、燃料タンク内の燃料を汲み上げ、プランジャポンプに吐出するようになっている。このとき、フィードポンプからの吐出圧であるフィード圧は、圧力調整弁により所定範囲に安定化される。
ところが、フィードポンプが、気泡の発生した状態の燃料を汲み上げ、ギアポンプ内の容積を小さくし、プランジャポンプに燃料を吐出する際、この気泡が破裂する現象が起こることがある。この現象が起こると、フィードポンプから吐出される燃料のフィード圧は、通常のフィード圧よりも非常に高くなる。そして、気泡が破裂した後は、歯間容積内に気泡が無くなるので、フィード圧が急激に低下する。フィードポンプ内では、このような現象が繰り返し発生し、フィード圧が比較的大きく脈動する。
このフィード圧の圧力脈動の影響は、フィードポンプとプランジャポンプとの間の通路に設けられている圧力調整弁に伝わる。圧力調整弁には、気泡が破裂したときに発生する過大なフィード圧がかかったり、かからなくなったりするため、圧力調整弁のバルブボディ内を往復移動するように設けられている弁体が激しく往復移動する。弁体が激しく往復移動すると、弁体を付勢しているスプリングや、スプリングを支持しているプラグに過大な繰り返し負荷がかかり、これらの部品が破損する恐れがある。
本発明は、上記実情に鑑みなされたもので、その目的は、燃料系の不具合によって発生する振幅の比較的大きい圧力脈動から構成部品を保護することが可能な圧力調整弁を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の圧力調整弁は、燃料タンクから汲み上げた燃料の圧力を調整する圧力調整弁であって、燃料タンクから汲み上げられた燃料が導入される第1開口部と、余剰燃料を排出する第2開口部とを有するバルブ本体と、バルブ本体内に収納され、バルブ本体内を移動することにより、第1開口部と第2開口部とを連通もしくは遮断する弁体と、バルブ本体内に収納され、弁体を、第1開口部と第2開口部とを遮断する方向に付勢する付勢部材と、弁体が所定以上移動すると、弁体の移動を強制的に規制する移動規制手段とを備えていることを特徴としている。
この構成によると、本発明の圧力調整弁は、汲み上げた燃料中の異物等を取り除くための燃料フィルタの目詰まり等の燃料系の不具合によって発生する振幅の比較的大きい圧力脈動が、弁体に繰り返しかかったとしても、弁体が所定以上移動すると、弁体の移動を強制的に規制する移動規制手段を有しているので、この圧力脈動から構成部品を保護することが可能となる。
請求項2に記載の圧力調整弁は、請求項1に記載の圧力調整弁において、移動規制手段は、弁体の移動を規制する際、第1開口部と第2開口部とが連通する位置で弁体の移動を規制することを特徴としている。
この構成によると、移動規制手段は、第1開口部と第2開口部とが連通する位置で弁体の移動を規制しているので、第1開口部から導入された燃料は、第2開口部へ逃がすことが可能となり、圧力調整弁としての最低限の動作を確保することが可能となる。
請求項3に記載の圧力調整弁によると、請求項2に記載の圧力調整弁は、燃料タンクから燃料を汲み上げるための燃料ポンプの吐出圧を調整するために設けられ、第1開口部は、燃料ポンプの吐出側に接続され、第2開口部は、燃料ポンプの吸入側に接続されていることを特徴としている。
燃料フィルタの目詰まり等の燃料系の不具合等により、燃料ポンプ内で過剰な圧力が発生すると、燃料ポンプへのラジアル荷重等も過大となり、燃料ポンプへの負荷も増大する。この構成によると、第1開口部と第2開口部とを連通した状態で弁体の移動を規制しているので、第1開口部から流入する過剰な圧力は、燃料ポンプの吸入側に逃げていく。これにより、燃料ポンプ内の圧力は、必要以上に高まらないので、燃料ポンプへの負荷も低く抑えることが可能となる。
請求項4に記載の圧力調整弁によると、移動規制手段は、弁体が所定以上移動して、弁体の重心を通り、かつ、その移動方向に沿った軸が弁体の移動方向に対して傾斜すると、弁体の端部が接触することにより、弁体の移動を規制することが可能なバルブ本体内に形成されている第1段差部であることを特徴としている。この構成により、バルブ本体内に第1段差部を形成するだけで、弁体に特殊な加工を施さなくとも、簡単な構成で弁体の移動を強制的に規制することが可能となる。
請求項5に記載の圧力調整弁は、請求項4に記載の圧力調整弁において、弁体が所定以上移動すると、弁体に、前記軸と略垂直な軸を中心とした回転力を発生させる回転手段をさらに備えていることを特徴としている。この構成によると、圧力調整弁は、弁体に対して、上記軸と略垂直な軸を中心とした回転力を発生させる回転手段を備えているので、弁体が所定以上移動すると、この回転手段が弁体を傾斜させ、上記第1段差部によって弁体の移動を規制しやすくすることが可能となる。
請求項6に記載の圧力調整弁によると、回転手段は、弁体に形成され、バルブ本体内の内壁に接触する接触部を有する突起であり、この突起は、この接触部が弁体の前記軸とずれた位置に形成されていることを特徴としている。また、請求項7に記載の圧力調整弁によると、回転手段は、弁体が所定以上移動すると、弁体の肩部と接触するバルブ本体内に形成されている第2段差部であることを特徴としている。
バルブ本体内の内壁に接触する接触部を有する突起が、弁体の上記軸とずれた位置に形成されている、もしくは、弁体が移動することにより、弁体の肩部が接触する第2段差部が、バルブ本体内に形成されているので、弁体の突起がバルブ本体の内壁に衝突したり、弁体の肩部が第2段差部に当たったりすると、弁体に、上記軸と略垂直な軸を中心とした回転力が付与される。これにより、弁体を上記第1段差部によってその移動が規制されやすくなるように、強制的に弁体を傾斜させることが可能となる。
請求項8に記載の圧力調整弁によると、移動規制手段は、バルブ本体内に形成され、バルブ本体の中心軸に向って隆起している隆起部であり、この隆起部は、弁体が所定以上移動して、この隆起部に接触すると、弁体もしくは、この隆起部のいずれかが塑性変形し、弁体の移動を規制することを特徴としている。
この構成によると、バルブ本体内に、バルブ本体の中心軸に向って隆起している隆起部が形成されているので、弁体が所定以上移動して、この隆起部に接触すると、弁体、もしくは、この隆起部のいずれかが塑性変形し、弁体の移動を規制させることが可能となる。
請求項9に記載の圧力調整弁によると、移動規制手段は、バルブ本体内に形成され、弁体の外径よりも径の小さい小径部であり、この小径部は、弁体が所定以上移動して、この小径部の端部に接触すると、弁体もしくは、この小径部のいずれかが塑性変形し、弁体の移動を規制することを特徴としている。
この構成によると、バルブ本体内に形成されている小径部にて弁体の移動を規制している。この小径部は、バルブ本体を所定の径となるように削りだすのみで形成されるので、移動規制手段の加工が容易となる。
以下、本発明の実施の形態を示す複数の実施形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
ディーゼルエンジン用の燃料噴射ポンプに本発明を適用した第1実施形態を、図1から図3に示す。図1は、本発明の第1実施形態によるディーゼルエンジン用の燃料噴射ポンプを示す断面図である。図2は、本発明の第1実施形態による燃料噴射ポンプの圧力調整弁の弁閉時を示す断面図である。図3は、本発明の第1実施形態による燃料噴射ポンプの圧力調整弁の弁体の移動が規制されたときの状態を示す断面図である。
図1に示すように、燃料噴射ポンプ10のポンプハウジングは、ハウジング本体11とシリンダヘッド12、13とを有する。シリンダヘッド12、13は、加圧部としてのプランジャ20を往復移動自在に支持している。シリンダヘッド12、13の内周面と、逆止弁23の端面と、プランジャ20の端面とにより燃料加圧室30が形成されている。
駆動軸14は、ジャーナル15を介しハウジング本体11に回転可能に支持されている。ハウジング本体11と駆動軸14との間はオイルシール16によりシールされている。断面円形状のカム17は、駆動軸14に対して偏心して一体形成されている。各プランジャ20は、駆動軸14を挟んで180°反対側に配置されている。シュー18とカム17との間にシュー18およびカム17と摺動自在にブッシュ19が介在している。プランジャ20と対向するシュー18の外周面とプランジャヘッド20aの端面とは平面状に形成され互いに接触している。ここで、駆動軸14およびカム17の回転部、ならびにシュー18およびプランジャ20の摺動部等は、ハウジング本体11の内壁とシリンダヘッド12、13の外壁とから形成されるポンプカム室22に収納されている。
プランジャ20は、駆動軸14の回転に伴いシュー18を介しカム17により往復移動され、燃料流入通路31から逆止弁23を通り燃料加圧室30に吸入した燃料を加圧する。逆止弁23は、弁部材23aを有し、燃料加圧室30から燃料流入通路31に燃料が逆流することを防止する。すなわち逆止弁23は、後述する燃料ポンプとしてのフィードポンプ50のフィード圧が燃料加圧室30内の圧力よりも所定の設定値以上高くなると、弁部材23aが燃料加圧室30側に変位して開弁する。
スプリング21は、シュー18側にプランジャ20を付勢している。シュー18およびプランジャ20のそれぞれの接触面が平面状に形成されているので、シュー18とプランジャ20との面圧が低下する。さらに、カム17の回転にともないシュー18はカム17と摺動しながら自転することなく公転する。
燃料吐出通路32はシリンダヘッド12に直線状に形成されており、燃料加圧室30との連通口32aを有している。シリンダヘッド12に形成した燃料吐出通路32の下流側には燃料吐出通路32よりも通路面積の大きい長孔状の燃料室33が形成されており、燃料室33に逆止弁44が収納されている。燃料室33の燃料下流側に燃料室33よりも通路面積の大きい収納孔34が形成されている。収納孔34はシリンダヘッド12の外周壁に開口し燃料出口34aを形成している。燃料吐出通路32、燃料室33および収納孔34は燃料圧送通路を構成している。燃料配管接続用の接続部材41は収納孔34にねじ止め等により収納されている。接続部材41の内部に燃料通路41aが形成されており、燃料通路41aは燃料室33と連通している。燃料通路41aは燃料吐出通路32とほぼ同一直線上に形成されている。
シリンダヘッド12の燃料吐出通路32の燃料下流側に配設されている逆止弁44は、ボール状の弁部材45と、弁部材45を閉弁側に付勢するスプリング47とを有している。逆止弁44は、逆止弁44の燃料下流側である燃料室33から燃料吐出通路32を経て燃料加圧室30に燃料が逆流することを防止する。接続部材41は燃料配管により図示しない畜圧部材としてのコモンレールと接続されており、燃料噴射ポンプ10で加圧された燃料は接続部材41からコモンレールに供給される。なお、シリンダヘッド13には、シリンダヘッド12と同様に図示しない燃料吐出通路が形成され、この燃料吐出通路の燃料下流側に図示しない燃料配管を経由して燃料室33と接続される図示しない逆止弁が配設されている。
燃料ポンプとしてのフィードポンプ50は、インナギア50aおよびアウタギア50bを有しており、インナギア50aが駆動軸14とともに回転することにより燃料タンク60から燃料通路61および燃料フィルタ62を経由し、燃料インレット56を介して汲み上げた燃料を加圧し、燃料通路52および59に送出する。燃料通路57は、一端がインナギア50aとアウタギア50bとの高圧側歯間容積50cに接続されており、この歯間容積50c内の燃料圧力が所定圧以上になると圧力調整弁54が開弁し、余剰燃料がリターン通路58を経由してインナ50aとアウタギア50bとの低圧側歯間容積50dに戻される。
高圧側歯間容積50cは、請求項に記載の燃料ポンプの吐出側に相当し、低圧側歯間容積50dは、請求項に記載の燃料ポンプの吸入側に相当する。なお、圧力調整弁54については、後ほど詳細に説明する。また、ハウジング本体11には、燃料流入通路31から逆止弁23を経て燃料加圧室30に吸入される燃料量をエンジン運転状態に応じて調量する調量電磁弁55が燃料通路52と燃料通路53との間に設けられている。
燃料通路59は、一端がフィードポンプ50に接続され、フィードポンプ50のフィード圧が作用している。燃料通路59のもう一端は、ポンプカム室22に接続されている。燃料通路59にフィードポンプ50からの燃料が供給されると、この燃料はポンプカム室22に供給され、駆動軸14、カム17の回転部、シュー18、およびプランジャ20の摺動部等を潤滑する。
次に、燃料噴射ポンプ10の作動について説明する。駆動軸14の回転に伴いカム17が回転し、カム17の回転に伴いシュー18が自転することなく公転する。このシュー18の公転に伴いシュー18およびプランジャ20に形成されている平面状の接触面同士が摺動することによりプランジャ20が往復移動する。
シュー18の公転に伴い上死点にあるプランジャ20が下降すると、フィードポンプ50からの吐出燃料が調量電磁弁55の制御によって調整され、その調整された燃料が燃料流入通路31から逆止弁23を経て燃料加圧室30に流入する。下死点に達したプランジャ20が再び上死点に向けて上昇すると逆止弁23が閉じ、燃料加圧室30の燃料圧力が上昇する。燃料加圧室30の燃料圧力が燃料通路41aの燃料圧力よりも上昇すると逆止弁44が開弁する。
シリンダヘッド12側の燃料加圧室30で加圧された燃料は、燃料吐出通路32、逆止弁44、燃料室33から燃料通路41aに送出される。シリンダヘッド13側の燃料加圧室30で加圧された燃料は、図示しない燃料配管を経由して燃料室33に流入する。両燃料加圧室30で加圧された燃料は燃料室33で合流し、燃料通路41aからコモンレールに供給される。コモンレールは燃料噴射ポンプ10から供給される圧力変動のある燃料を蓄圧し一定圧に保持する。コモンレールから図示しないインジェクタに高圧燃料が供給される。
次に、圧力調整弁54の構造および作用について、図2、図3を用いて詳細に説明する。図2は、本発明の第1実施形態による燃料噴射ポンプの圧力調整弁の弁閉時を示す断面図である。図3は、本発明の第1実施形態による燃料噴射ポンプの圧力調整弁の弁体の移動が規制されたときの状態を示す断面図である。
図2に示すように、圧力調整弁54の略円筒状のボディ541内部には、両端に開口部を有する燃料通路541aが形成され、その燃料通路541aには、ピストン544とスプリング545とが収納されている。このボディ541の一方の開口部には、プラグ542が設けられ、もう一方の開口部には、ストッパ543が設けられている。ストッパ543は、略筒状に形成され、その内部には、請求項に記載の第1開口部としての燃料流入口543aが形成されている。燃料流入口543aには、燃料通路57が接続されている。ボディ541は、請求項に記載のバルブ本体に相当する。ピストン544は、請求項に記載の弁体に相当する。スプリング545は、請求項に記載の付勢部材に相当する。
ボディ541の側壁には、請求項に記載の第2開口部としての燃料導出口541bと、リーク燃料導出口541cとが形成され、これらの導出口541b、541cは、燃料通路541aに連通している。これらの導出口541b、541cには、リターン通路58が接続されている。
プラグ542とリーク燃料導出口541cとの間の燃料通路541aの内壁には、ストッパ543側およびプラグ542側に段差を有する凹部541dが形成されている。この凹部541dは、燃料通路541aの内壁の全周に渡って形成されており、凹部541dが形成されている部分の燃料通路541aの内径は、凹部541dが形成されている以外の燃料通路541aの内径よりも大きい。凹部541dのストッパ543側には、請求項に記載の移動規制手段としての第1段差部541eが形成されている。図2に示すように、この段差部541eには、プラグ542に対向するような面を有している。なお、この段差部541eの作用については、後ほど詳細に説明する。
ピストン544は、円柱状に形成され、燃料通路541aの内壁と摺動する摺動部544aと、スプリング545の一端を支持する肩部544bと、燃料流入口543aを塞ぐ平面部544cとを備え、燃料通路541a内で往復移動可能である。ピストン544は、請求項に記載の弁体として機能し、ピストン544が燃料通路541a内を往復移動することにより、燃料流入口543aと、燃料導出口541bおよびリーク燃料導出口541cとの間を連通させたり遮断させたりする。
スプリング545は、圧縮コイルスプリングからなり、一方の端部がプラグ542に支持され、もう一方の端部がピストン544の肩部544bに支持されている。スプリング545の付勢力は、プラグ542とピストン544を離間させる方向に働く。
次に、この圧力調整弁54の作動について説明する。図1に示す高圧側歯間容積50c内の燃料が燃料通路57を経由して燃料流入口541bに導入されると、この燃料は、ピストン544の平面部544cに作用し、スプリング545の付勢力に抗してピストン544をプラグ542の方向に移動させようとする。高圧側歯間容積50c内の圧力が所定以上となり平面部544cに作用する力がスプリング545の付勢力よりも勝ると、ピストン544はプラグ542の方向に移動する。平面部544cが燃料導出口541bよりもプラグ542側に移動すると、燃料流入口543aに導入された燃料は、この燃料導出口541bからリターン通路58を経由して低圧側歯間容積50dに戻される。これにより、フィードポンプ50から吐出される燃料のフィード圧を所定範囲に安定させることができる。なお、リーク燃料導出口541cからは、摺動部544aと燃料通路541aの側壁との間の微少の隙間から漏れ出た燃料がリーク通路58を経由して低圧側歯間容積50dに戻される。
また、スプリング545の付勢力を調整することにより、フィードポンプ50から吐出される燃料のフィード圧を調整することができる。スプリング545の付勢力を弱めれば、フィード圧は低くなり、逆に強めれば、フィード圧は高くなる。スプリング545の付勢力は、燃料噴射ポンプの仕様や、搭載されるエンジンの仕様により調整すればよい。
燃料フィルタ62が目詰まり等を起こした状態でフィードポンプ50を駆動すると、燃料フィルタ62とフィードポンプ50の入口との間に設けられている燃料通路61内は、負圧状態となる。燃料通路61内が負圧状態となると、燃料中に気泡が発生することがある。燃料中に気泡が発生したまま、さらにフィードポンプ50が駆動すると、歯間容積が低圧側歯間容積50cよりも小さくなる高圧側歯間容積50c内で、この気泡が破裂することがある。この気泡が破裂すると、高圧側歯間容積50c内の圧力は、通常のフィード圧よりも非常に高くなることがある。そして、気泡が破裂した後は、歯間容積50c内に気泡が無くなるので、フィード圧が急激に低下する。フィードポンプ50内では、このような現象が繰り返し発生し、フィード圧が比較的大きく脈動することとなる。
フィード圧が比較的大きく脈動すると、その影響は、ピストン544に伝達され、ピストン544が燃料通路541a内を大きく往復移動することとなる。従来技術の圧力調整弁では、ピストンが大きく往復移動することにより、圧力調整弁を構成している部品、例えばスプリングやプラグ等に繰り返し負荷がかかり、これらの部品を破損する恐れがあった。
これに対し、本実施形態では、請求項に記載の移動規制手段としての第1段差部541eを設けているので、上記従来技術の圧力調整弁のように部品が破損することを防止できる。
次に、第1段差部541eの作用について詳細に説明する。上記のような状況になり、ピストン544の平面部544cに過大な圧力がかかり、図3に示すように平面部544cが距離L以上移動すると、ピストン544は、燃料通路541aの内壁に形成されている凹部541dのところで、ピストン544の重心を通り、かつ、その移動方向に沿った軸(以下、重心軸と呼ぶ)544fが、ピストン544の移動方向に対して傾斜する。ピストン544は、常にスプリング545によって燃料流入口543a側に付勢されているので、傾斜したまま燃料流入口543aに戻ろうとする。しかし、ピストン544の平面部544cは、第1段差部541eに引掛かり、ピストン544の燃料流入口543a方向への移動が強制的に規制される。これにより、スプリング545やプラグ542には、フィード圧の脈動により、繰り返し負荷がかからなくなるので、これらの部品を保護することが可能となる。
ピストン544の移動を規制する位置は、少なくとも燃料流入口543aと燃料導出口541bとが連通される位置であればよい。これにより、ピストン544の移動が規制されていても、燃料流入口543aに導入された燃料は、必ず燃料導出口541bより排出することが可能となるので、圧力調整弁54としての最低限の動作を確保することが可能となる。
また、燃料流入口543aと燃料導出口541bとが連通されていると、フィード圧が過大となっても、燃料導出口541bからフィードポンプ50の吸入側に燃料を戻すことができるので、フィードポンプ50へ過大なラジアル荷重等がかかることを防止することが可能となる。
好ましくは、ピストン544の移動を規制する位置は、燃料流入口543aと、燃料導出口541bおよびリーク燃料導出口541cとが連通される位置がよい。これにより、燃料流入口543aに導入される過大な圧力をもった燃料をリーク燃料導出口541cからもフィードポンプ50の吸入側に戻すことが可能となり、さらにフィードポンプ50への過大なラジアル荷重等がかかることを防止することが可能となる。
さらに好ましくは、ピストン544の移動を規制する位置は、燃料流入口543aと、両導出口541b、541cとが連通され、かつ、移動が規制される位置において、ピストン544やプラグ542が破損しない位置がよい。破損しない位置とは、ピストン544やプラグ542の材料強度によって定められる。これにより、フィードポンプ50への過大なラジアル荷重等がかかることを防止する効果に加え、ピストン544の移動が規制された後、ピストン544を移動位置から解除すれば、スプリング545、プラグ542が再度使用することができる。
また、ピストン544の移動を規制する位置を燃料流入口543aと燃料導出口541bまたは、燃料流入口543aと、燃料導出口541bおよびリーク燃料導出口541cとが連通する位置とすることにより、エンジンが低回転で運転されている状態のときは、フィードポンプ50から燃料加圧室30への燃料の供給量が減少するので、エンジンが停止する。これにより、燃料系に異常があると判定することが可能となる。
本実施形態では、移動規制手段として燃料通路541aの内壁に第1段差部541eを設けるだけで、ピストン544に特殊は加工を施さなくとも、簡単な構成でピストン544の移動を強制的に規制することが可能となる。
(第2実施形態)
第2実施形態を、図4に示す。図4は、本発明の第2実施形態による燃料噴射ポンプの圧力調整弁の弁体の移動が規制されたときの状態を示す断面図である。なお、第1実施形態と同一機能物は、同一符号を付す。ここでは、第1実施形態と相違している特徴点のみを説明する。
図4に示すように、燃料通路541aの内壁には、移動規制手段としての第1段差部541eが形成されている。第1段差部541eよりプラグ542側の燃料通路541aの内壁面の内径は、第1段差部541e部分の内径とほぼ同じ径となっている。これにより、ボディ541に第1段差部541eを容易に形成することが可能になる。
(第3実施形態)
第3実施形態を、図5に示す。図5は、本発明の第3実施形態による燃料噴射ポンプの圧力調整弁の断面図である。なお、第1実施形態と同一機能物は、同一符号を付す。ここでは、第1実施形態と相違している特徴点のみを説明する。
図5に示すように、プラグ542の燃料流入口543a側端面には、突起542aが形成されている。ピストン544には、その突起542aに対向する位置に先端に接触部544eを有する突起544dが形成されている。この突起544dは、接触部544eがピストン544の重心軸544fから所定距離ずれて、突起542aに対向するように形成されている。この突起544dは、請求項に記載の回転手段に相当する。
次に、回転手段としての突起544dについて説明する。燃料流入口543aに燃料が導入されると、ピストン544は、プラグ542に向かって移動する。ピストン544の平面部544cに過大な高圧側歯間容積50c内の圧力が作用し、ピストン544が所定の距離L以上移動すると、接触部544eが、突起542aに衝突する。接触部544eは、ピストン544の重心軸544fから所定距離ずれているので、突起542aに衝突することにより、ピストン544に、重心軸544fに対して略垂直な軸を中心とした回転力が発生する(図5中の矢印を参照)。
ピストン544に回転力が発生すると、ピストン544は強制的に傾斜させられる。ピストン544は、常にスプリング545によって燃料流入口543a側に付勢されているので、傾斜したまま燃料流入口543aに戻ろうとし、ピストン544の平面部544cが第1段差部541eに引掛かる。平面部544cが第1段差部541eに引掛かると、ピストン544の燃料流入口543a方向への移動が強制的に規制される。
本実施形態では、ピストン544には、プラグ542に形成されている突起542aに衝突すると、ピストン544をその重心軸544fに対して略垂直な軸を中心とした回転力を発生させる突起544dが形成されているので、ピストン544を強制的に傾斜させることができ、平面部544cを第1段差部541eに引掛け易くすることが可能となる。
(第4実施形態)
第4実施形態の変形例を、図6に示す。図6は、本発明の第4実施形態による燃料噴射ポンプの圧力調整弁の断面図である。なお、第1実施形態と同一機能物は、同一符号を付す。ここでは、第1実施形態と相違している特徴点のみを説明する。
図6に示すように、燃料通路541aの内壁の一部には、第2段差部541fが形成されている。この段差部541fは、ピストン544の肩部544bに対向するような面を有しており、ピストン544が距離L以上移動すると、肩部544bと段差部541fとが衝突するような位置に形成される。肩部544bが段差部541fと衝突すると、図6に示すように、衝突した点を支点とした回転力(図6中の矢印参照)が発生し、ピストン544を強制的に傾斜させる。この構成によっても、第3実施形態と同様、ピストン544を強制的に傾斜させることが可能となる。
(第5実施形態)
第5実施形態を、図7に示す。図7は、本発明の第5実施形態による燃料噴射ポンプの圧力調整弁の断面図である。なお、第1実施形態と同一機能物は、同一符号を付す。ここでは、第1実施形態と相違している特徴点のみを説明する。
図7に示すように、燃料通路541aの内壁には、移動規制手段としての隆起部541gが形成されている。隆起部541gは、ボディ541の中心軸に向って隆起している。隆起部541gは、ピストン544よりも硬度が低く、肩部544bが隆起部541gに接触すると、隆起部541gは塑性変形し、隆起部541gに肩部544bが食い込む。これにより、ピストン544の移動は強制的に規制される。また、肩部544bに傾斜面を形成すると、肩部544bに隆起部541gが食い込み易くなる。なお、ピストン544の硬度よりも隆起部541gの硬度を高くしても同様の効果があるのは勿論である。
(第6実施形態)
第6実施形態を、図8に示す。図8は、本発明の第6実施形態による燃料噴射ポンプの圧力調整弁の断面図である。なお、第1実施形態と同一機能物は、同一符号を付す。ここでは、第1実施形態と相違している特徴点のみを説明する。
図8に示すように、燃料通路541aの内壁の一部に小径部541hが形成されている。小径部541hは、ピストン544の外形よりも小さく、小径部541hの燃料流入口543a側の端部には傾斜面541iが形成されている。そして、傾斜面541iは、ピストン544よりも硬度が低く、ピストン544の肩部544bが傾斜面541iに接触すると、傾斜面541iは塑性変形し、傾斜面541iに肩部544bが食い込む。これにより、ピストン544の移動は強制的に規制される。なお、この傾斜面541iは、肩部544bに形成してもよいことは勿論である。ピストン544の硬度よりも傾斜面541iの硬度を高くしても同様の効果があるのは勿論である。この変形例では、小径部541hは、ボディ541を所定の径と成るように削りだすのみで形成されるので、加工が容易となる。
(その他の実施形態)
上記第1実施形態から第6実施形態では、圧力調整弁54を、燃料タンク60から燃料を汲み上げる燃料ポンプとしてのフィードポンプ50と、フィードポンプで汲み上げた燃料を加圧するポンプとが一体となった燃料噴射ポンプ10に搭載された例で説明したが、フィードポンプ50と加圧するポンプとが別々となっている形式の燃料噴射ポンプに本発明の圧力調整弁54を適用してもよい。
また、上記第1実施形態から第6実施形態で説明した燃料噴射ポンプ10は、ディーゼルエンジン用の燃料噴射ポンプ10として説明したが、ガソリン用の燃料噴射ポンプに本発明の圧力調整弁54を適用してもよい。
本発明の第1実施形態によるディーゼルエンジン用の燃料噴射ポンプを示す断面図である。 本発明の第1実施形態による燃料噴射ポンプの圧力調整弁の弁閉時を示す断面図である。 本発明の第1実施形態による燃料噴射ポンプの圧力調整弁の弁体の移動が規制されたときの状態を示す断面図である。 本発明の第2実施形態による燃料噴射ポンプの圧力調整弁の弁体の移動が規制されたときの状態を示す断面図である。 本発明の第3実施形態による燃料噴射ポンプの圧力調整弁の断面図である。 本発明の第4実施形態による燃料噴射ポンプの圧力調整弁の断面図である。 本発明の第5実施形態による燃料噴射ポンプの圧力調整弁の断面図である。 本発明の第6実施形態による燃料噴射ポンプの圧力調整弁の断面図である。
符号の説明
10 燃料噴射ポンプ
20 プランジャ
50 フィードポンプ(燃料ポンプ)
50c 高圧側歯間容積(燃料ポンプの吐出側)
50d 低圧側歯間容積(燃料ポンプの吸入側)
54 圧力調整弁
541 ボディ(バルブ本体)
541a 燃料通路
541b 燃料導出口(第2開口部)
541c リーク燃料導出口
541d 凹部
541e 第1段差部(移動規制手段、第1段差部)
541f 第2段差部(第2段差部)
541g 隆起部(移動規制手段)
541h 小径部(移動規制手段)
541i 傾斜面(移動規制手段)
542 プラグ
543a 燃料流入口(第1開口部)
544 ピストン(弁体)
545 スプリング(付勢部材)
57 燃料通路
58 リターン通路
61 燃料通路
62 燃料フィルタ

Claims (9)

  1. 燃料タンクから汲み上げた燃料の圧力を調整する圧力調整弁であって、
    前記燃料タンクから汲み上げられた燃料が導入される第1開口部と、余剰燃料を排出する第2開口部とを有するバルブ本体と、
    前記バルブ本体内に収納され、前記バルブ本体内を移動することにより、前記第1開口部と前記第2開口部とを連通もしくは遮断する弁体と、
    前記バルブ本体内に収納され、前記弁体を、前記第1開口部と前記第2開口部とを遮断する方向に付勢する付勢部材と、
    前記弁体が所定以上移動すると、前記弁体の移動を強制的に規制する移動規制手段とを備えていることを特徴とする圧力調整弁。
  2. 前記移動規制手段は、前記弁体の移動を規制する際、前記第1開口部と前記第2開口部とが連通する位置で前記弁体の移動を規制することを特徴とする請求項1に記載の圧力調整弁。
  3. 請求項2に記載の圧力調整弁は、前記燃料タンクから燃料を汲み上げるための燃料ポンプの吐出圧を調整するために設けられ、
    前記第1開口部は、前記燃料ポンプの吐出側に接続され、前記第2開口部は、前記燃料ポンプの吸入側に接続されていることを特徴とする圧力調整弁。
  4. 前記移動規制手段は、前記弁体が所定以上移動して、前記弁体の重心を通り、かつ、その移動方向に沿った軸が前記弁体の移動方向に対して傾斜すると、前記弁体の端部が接触することにより、前記弁体の移動を規制することが可能な前記バルブ本体内に形成されている第1段差部であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧力調整弁。
  5. 前記弁体が所定以上移動すると、前記弁体に、前記軸と略垂直な軸を中心とした回転力を発生させる回転手段をさらに備えていることを特徴とする請求項4に記載の圧力調整弁。
  6. 前記回転手段は、前記弁体に形成され、前記バルブ本体内の内壁に接触する接触部を有する突起であり、
    この突起は、この接触部が前記弁体の前記軸とずれた位置に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の圧力調整弁。
  7. 前記回転手段は、前記弁体が所定以上移動すると、前記弁体の肩部と接触する前記バルブ本体内に形成されている第2段差部であることを特徴とする請求項5に記載の圧力調整弁。
  8. 前記移動規制手段は、前記バルブ本体内に形成され、前記バルブ本体の中心軸に向って隆起している隆起部であり、
    この隆起部は、前記弁体が所定以上移動して、この隆起部に接触すると、前記弁体もしくは、この隆起部のいずれかが塑性変形し、前記弁体の移動を規制することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧力調整弁。
  9. 前記移動規制手段は、前記バルブ本体内に形成され、前記弁体の外径よりも径の小さい小径部であり、
    この小径部は、前記弁体が所定以上移動して、この小径部の端部に接触すると、前記弁体もしくは、この小径部のいずれかが塑性変形し、前記弁体の移動を規制することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の圧力調整弁。
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