JP2006232656A - 金属酸化物ナノ多孔体、触媒担体及びそれを用いた水素生成反応用触媒 - Google Patents

金属酸化物ナノ多孔体、触媒担体及びそれを用いた水素生成反応用触媒 Download PDF

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Abstract

【課題】 ハニカムフィルタ等の各種基材に対して付着性が高く且つ優れた耐熱性を有しており、更に基材上に形成する被覆の薄膜化も可能であり、金属製のハニカムフィルタや高密度ハニカム等の基材に対しても高水準の付着性をもって優れた耐熱性を有する被覆を形成することが可能な金属酸化物ナノ多孔体を提供すること。
【解決手段】 2種以上の金属酸化物により構成される金属酸化物ナノ多孔体であって、
前記ナノ多孔体におけるセリアの含有量が10〜60質量%、ジルコニアの含有量が20〜90質量%、アルミナの含有量が70質量%以下であり、前記ナノ多孔体は直径が10nm以下のナノ細孔を有しており、且つ、前記ナノ細孔を構成する壁体において前記金属酸化物が均質に分散していることを特徴とする金属酸化物ナノ多孔体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、水素生成反応用の触媒の担体等として有効な金属酸化物ナノ多孔体及び触媒担体、並びにその触媒担体を用いた水素生成反応用触媒に関する。
従来、燃料電池等の燃料改質システムにおいて燃料となる水素を生成させるための水素生成反応用触媒として様々な触媒が開発されており、そのような水素生成反応用触媒としてはハニカムフィルタ等の各種基材にアルミナ等の金属酸化物と白金、ロジウム、パラジウム等の貴金属とを担持せしめたもの等が一般的に使用されている。
そして、従来は、このような金属酸化物として湿式粉砕法によって得られた粉末が一般的に使用されており、例えば特開平10−182155号公報(特許文献1)や特開2002−79097号公報(特許文献2)には、アルミニウム、セリウム及びジルコニウムの塩溶液から共沈法により酸化物前駆体を調製し、それを大気中で焼成することによって複合金属酸化物の粉末を得る方法が開示されている。また、特開平7−300315号公報(特許文献3)には、セリウム塩水溶液及びジルコニウム塩水溶液を混合した混合溶液にベーマイトアルミナ粉末を加えて攪拌した後に乾燥及び焼成することによって複合金属酸化物の粉末を得る方法が開示されている。
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載のような従来の金属酸化物の粉末を用いた場合においては、基材(特に金属基材)に対する付着性や耐熱性が未だ必ずしも十分なものではなく、基材上に形成する被覆の薄膜化にも限界があるため、金属製のハニカムフィルタや、一般的なハニカムフィルタより狭い管状通路を有する高密度ハニカム(例えば、1200cell/inch以上のマイクロチャンネル)等の基材に対してはこのような従来の金属酸化物の粉末を担持させることは困難であり、改質特性の向上にも限界があるという問題があった。
特開平10−182155号公報 特開2002−79097号公報 特開平7−300315号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、ハニカムフィルタ等の各種基材に対して付着性が高く且つ優れた耐熱性を有しており、更に基材上に形成する被覆の薄膜化も可能であり、金属製のハニカムフィルタや高密度ハニカム等の基材に対しても高水準の付着性をもって優れた耐熱性を有する被覆を形成することが可能な金属酸化物ナノ多孔体、並びにそれを用いた水素生成反応における改質特性を十分に向上させることが可能な触媒担体及び水素生成反応用触媒を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、金属酸化物のコロイド溶液や金属塩の溶液をそのまま用いて得られる金属酸化物の被覆は不均一で付着性及び耐熱性も十分なものではないのに対して、金属酸化物のコロイド溶液や金属塩の溶液を高剪断速度の下で混合し、実質的に共沈させることなく熱処理するようにすると、驚くべきことに得られる金属酸化物は直径が10nm以下のナノ細孔を有し且つナノ細孔を構成する壁体において金属酸化物が均質に分散している従来にない新規なものとなり、各種基材に対する付着性及び耐熱性が向上し、更に薄膜化も可能となり、かかる被覆を構成する成分をジルコニア及びセリアを特定量含有するジルコニア/セリア2成分系又はジルコニア、セリア及びアルミナを特定量含有するジルコニア/セリア/アルミナ3成分系とすることによって水素生成反応における改質特性が非常に優れた水素生成反応用触媒が得られるようになることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の金属酸化物ナノ多孔体は、2種以上の金属酸化物により構成される金属酸化物ナノ多孔体であって、前記ナノ多孔体におけるセリアの含有量が10〜60質量%、ジルコニアの含有量が20〜90質量%、アルミナの含有量が70質量%以下であり、前記ナノ多孔体は直径が10nm以下のナノ細孔を有しており、且つ、前記ナノ細孔を構成する壁体において前記金属酸化物が均質に分散していることを特徴とするものである。
また、本発明の触媒担体は、基材と、前記基材の表面上に形成された2種以上の金属酸化物により構成される金属酸化物ナノ多孔体からなる被覆とを備える触媒担体であって、前記ナノ多孔体におけるセリアの含有量が10〜60質量%、ジルコニアの含有量が20〜90質量%、アルミナの含有量が70質量%以下であり、前記ナノ多孔体は直径が10nm以下のナノ細孔を有しており、且つ、前記ナノ細孔を構成する壁体において前記金属酸化物が均質に分散していることを特徴とするものである。
前記ナノ多孔体は、ジルコニアコロイド粒子及び/又はジルコニウム塩溶液と、セリアコロイド粒子及び/又はセリウム塩溶液とを含有する原料流体組成物を、1000sec−1以上の剪断速度の下で混合した後、実質的に共沈させることなく熱処理して得たものであることが好ましく、前記原料流体組成物中にアルミナコロイド粒子及び/又はアルミニウム塩溶液が更に含有されていてもよい。
また、前記ナノ多孔体中に、平均粒径が0.01〜50μmであるジルコニア粉末、セリア粉末及びアルミナ粉末からなる群から選択される少なくとも一つの粉末が更に含有されていてもよい。
また、前記ナノ多孔体においては、下記の条件(I)が満たされていることが好ましい。
(I)前記ナノ多孔体に10at%以上含有されるすべての金属酸化物の金属元素について、加速電圧200kV、電子ビーム径1.0nmの透過型電子顕微鏡を用いて被検試料の厚さが略一定とみなせる領域にある測定点においてエネルギー分散型X線分光法によりスペクトルを求め、得られたスペクトル中の各金属元素の蛍光X線ピークの積分強度を相対比に変換して求められる相対強度比Xの平均値Xと平均値Xのまわりの二次のモーメントνとが、前記金属元素のすべてについて下記式(1):
ν/X ≦0.02 (1)
[式(1)中、XはX=(ΣX)/N(Nは測定点の数)で表される相対強度比Xの平均値、νはν={Σ(X−X}/Nで表される平均値Xのまわりの二次のモーメント、ν/X は平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントを示す。]
で表される条件を満たしていること。
さらに、前記ナノ多孔体においては、下記の条件(II)〜(V)のうちの少なくとも一つが満たされていることがより好ましい。
(II)前記ナノ多孔体に10at%以上含有されるすべての金属酸化物の金属元素について、加速電圧15kV、電子ビーム径1μmのX線マイクロアナライザーを用いて0.5mm以上の範囲を任意に線分析して求めた下記式(2):
K値(%)=(多孔体から検出されたX線強度)/(純物質から得られるX線強度)
で表されるK値が、前記金属元素のすべてについて、全測定点のうちの65%以上の測定点において下記式(3):
[式(3)中、Kは各測定点におけるK値(%)、Kは全測定点におけるK値の平均値をそれぞれ示す。但し、前記ナノ多孔体に形成されている亀裂に相当する部分については測定点から除く。]
で表される条件を満たしていること。
(III)走査型プローブ顕微鏡にて5nmの曲率半径を有するチップを用いて、3nm以上4nm未満の間隔で前記ナノ多孔体の表面の高さ像をタッピングモードで任意に計測し、総計で2μm以上の走査距離Lの関数として求めた高さ像H(L)が、全測定点のうちの80%以上の測定点において下記式(4):
H(L)≦20nm (4)
[式(4)中、H(L)は各測定点(走査距離=L)における高さ像(nm)を示す。但し、全測定点における高さ像Hの平均値を零とする。]
で表される条件を満たしており、且つ、下記式(5)及び(6):
[式(5)及び(6)中、H(L)は走査距離=Lの測定点における高さ像(nm)、H(L+ΔL)は走査距離=L+ΔLの測定点における高さ像(nm)、ΔLは測定点の間隔(nm)、H’(L)は高さ像H(L)の一次微係数、H’(L+ΔL)は高さ像H(L+ΔL)の一次微係数、H”(L)は高さ像H(L)の二次微係数をそれぞれ示す。但し、ΔLは測定点間の直線補間により4nmとする。]
により求めた二次微係数H”(L)が、全測定点のうちの60%以下の測定点において下記式(7):
−0.05nm−1≦H”(L)≦0.05nm−1 (7)
で表される条件を満たしていること。
(IV)前記ナノ多孔体の断面の電子顕微鏡写真において、前記ナノ多孔体の上に任意に総計で400μm以上の測定直線を描いた際に、前記測定直線が前記ナノ多孔体に形成されている空隙部と交差している部分の長さの比率が、前記測定直線の全長の10%以下であるという条件を満たしていること。
(V)前記ナノ多孔体に10at%以上含有されるすべての金属酸化物の金属元素について、加速電圧200kV、電子ビーム径1.0nmの透過型電子顕微鏡を用いて任意に10以上の測定点においてエネルギー分散型X線分光法によりスペクトルを求め、得られたスペクトル中の各金属元素の蛍光X線ピークの積分強度を相対比に変換して求められる相対強度比Xの平均値Xと平均値Xのまわりの二次のモーメントνとが、前記金属元素のすべてについて下記式(8):
ν/X ≦0.1 (8)
[式(8)中、XはX=(ΣX)/N(Nは測定点の数)で表される相対強度比Xの平均値、νはν={Σ(X−X}/Nで表される平均値Xのまわりの二次のモーメント、ν/X は平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントを示す。]
で表される条件を満たしていること。
前記本発明の金属酸化物ナノ多孔体は、その表面に担持されている貴金属を更に備えていることが好ましい。
また、本発明の水素生成反応用触媒は、前記本発明の触媒担体と、前記触媒担体の表面に担持される貴金属とを備えることを特徴とするものである。
本発明によれば、ハニカムフィルタ等の各種基材に対して付着性が高く且つ優れた耐熱性を有しており、更に基材上に形成する被覆の薄膜化も可能であり、金属製のハニカムフィルタや高密度ハニカム等の基材に対しても高水準の付着性をもって優れた耐熱性を有する被覆を形成することが可能な金属酸化物ナノ多孔体、並びにそれを用いた水素生成反応における改質特性を十分に向上させることが可能な触媒担体及び水素生成反応用触媒を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。先ず、本発明の金属酸化物ナノ多孔体及びそれを用いた触媒担体について説明する。
すなわち、本発明の金属酸化物ナノ多孔体は、2種以上の金属酸化物により構成される金属酸化物ナノ多孔体であって、前記ナノ多孔体におけるセリアの含有量が10〜60質量%、ジルコニアの含有量が20〜90質量%、アルミナの含有量が70質量%以下であり、前記ナノ多孔体は直径が10nm以下のナノ細孔を有しており、且つ、前記ナノ細孔を構成する壁体において前記金属酸化物が均質に分散していることを特徴とするものである。
また、本発明の触媒担体は、基材と、前記基材の表面上に形成された前記本発明の金属酸化物ナノ多孔体からなる被覆とを備えることを特徴とするものである。
本発明にかかる金属酸化物ナノ多孔体がジルコニア/セリア2成分系の場合、セリアの含有量は10〜60質量%、ジルコニアの含有量は40〜90質量%であることがより好ましい。セリアの含有量が上記下限未満では、特に低温における転化率が低く、達成される水素濃度も十分に向上しない。他方、セリアの含有量が上記上限を超えると、各種基材に対する付着性が低くなる。
また、発明にかかる金属酸化物ナノ多孔体がジルコニア/セリア/アルミナ3成分系の場合、セリアの含有量が上記下限未満では、特に低温における転化率が低く、達成される水素濃度も十分に向上しない。他方、セリアの含有量が上記上限を超えると、各種基材に対する付着性が低くなる。また、アルミナの含有量が上記上限を超えると、特に低温における転化率が低く、達成される水素濃度も十分に向上せず、アルミナの含有量が50質量%以下であると、低温における転化率及び達成される水素濃度がより向上する傾向にあり好ましい。
本発明の金属酸化物ナノ多孔体は、前述の金属酸化物により構成される多孔体であって、直径が10nm以下のナノ細孔を有しており、且つ、前記ナノ細孔を構成する壁体において前記金属酸化物が均質に分散していることを特徴とするものである。
このように、本発明の金属酸化物ナノ多孔体は、直径が10nm以下、好ましくは5nm以下、より好ましくは2nm以下、という非常に微細な細孔を有しており、それによってこのような細孔を有さない金属酸化物多孔体に比べて各種基材に対する付着性及び耐熱性の向上が可能となり、さらに比表面積の向上や貴金属等の担持安定性の向上によって触媒担体等としての性能の向上が達成される。
また、本発明の金属酸化物ナノ多孔体においては、ナノ細孔を構成する壁体において前記金属酸化物が均質に分散している。すなわち、本発明の金属酸化物ナノ多孔体においては、ナノ多孔体を構成する2種以上の金属酸化物が実質的に原子レベルで均一に分散(高分散)していると考えられ、共沈法等によって得られた従来の金属酸化物多孔体のように各金属酸化物からなる100nm程度の一次粒子が混合した状態や、一方の金属酸化物からなる一次粒子の表面を他方の金属酸化物が被覆している状態とは明らかに相違するものである。このような極めて高水準の成分均一性は、金属酸化物のコロイド溶液や金属塩の溶液をそのまま用いて得られる金属酸化物では決して得られるものではなく、2種以上の金属酸化物を含有するコロイド溶液や2種以上の金属塩を含有する溶液を高剪断速度の下で混合し、実質的に共沈させることなく熱処理する後述の製造方法によってはじめて達成されたものである。そして、このような極めて高水準の成分均一性を有する本発明の金属酸化物ナノ多孔体においては、驚くべきことに、共沈法等によって得られた従来の金属酸化物多孔体に比べて各種基材に対する付着性及び耐熱性が飛躍的に向上している。
本発明の金属酸化物ナノ多孔体の形状は特に制限されず、薄膜状であっても、粉末状であってもよく、それらを所定の形状に成形した成形体であってもよい。本発明の金属酸化物ナノ多孔体が薄膜状の場合、その厚さは特に制限されず、その用途等に応じて適宜調整される。また、本発明の触媒担体において前記基材の表面上に形成される前記被覆の厚さは特に制限されず、用いる基材や得られる触媒の用途等に応じて適宜調整されるが、本発明の金属酸化物ナノ多孔体は薄くした場合であっても金属製ハニカムフィルタ等の各種基材に対して付着性に優れた均一な被覆を形成することが可能であるため、被覆の厚さは1〜300μm程度であることが好ましく、1〜50μm程度であることがより好ましい。さらに、このように本発明によれば前記基材の表面上に形成する被覆の薄膜化が可能となるため、従来は十分な被覆を形成することが困難であった高密度ハニカムに対しても高水準の付着性をもって優れた耐熱性を有する被覆を形成することが可能となり、このような観点からは薄膜の厚さが1〜30μm程度であることが特に好ましい。
また、本発明の金属酸化物ナノ多孔体が粉末状の場合、その粒径は特に制限されず、その用途等に応じて適宜調整されるが、一般的には0.01〜50μm程度が好ましい。このような粉体の平均粒径が0.01μm未満のものは金属酸化物の粉砕による製造法としては作製が困難であり、他方、50μmを超えると得られる被覆の厚みが非常に厚くなり、また付着性が低下するといった問題が発生する傾向にある。
このような本発明の金属酸化物ナノ多孔体は、
(i)ジルコニアコロイド粒子及び/又はジルコニウム塩溶液と、セリアコロイド粒子及び/又はセリウム塩溶液とを含有する原料流体組成物、或いは、
(ii)ジルコニアコロイド粒子及び/又はジルコニウム塩溶液と、セリアコロイド粒子及び/又はセリウム塩溶液と、アルミナコロイド粒子及び/又はアルミニウム塩溶液とを含有する原料流体組成物、
を1000sec−1以上の剪断速度の下で混合した後、実質的に共沈させることなく熱処理して得たものである。
また、本発明の触媒担体における薄膜状の金属酸化物ナノ多孔体を得る場合、前記原料流体組成物を前記高速剪断速度の下で混合した後、実質的に共沈させることなく基材に塗布した後に熱処理する方法が好適に採用される。
本発明において用いられるジルコニア、セリア又はアルミナのコロイド粒子は、平均粒径が5〜200nmのコロイド粒子であり、好ましくは5〜100nmのコロイド粒子である。コロイド粒子の平均粒径が5nm未満のものについては、安定した粒子を作製することは困難であり、他方、200nmを超えると混合・分散性の低下、付着性の低下、反応性の低下等の種々の問題が発生する。なお、このようなコロイド粒子の形状は特に制限されず、針状粒子、棒状粒子、羽毛状粒子、球状粒子、不定形状粒子等のものが挙げられる。
また、本発明においては、前記ジルコニア、セリア又はアルミナのコロイド粒子と共に、或いはかかるコロイド粒子に代えて、ジルコニウム、セリウム又はアルミニウムの塩を用いてもよい。このような金属の塩としては、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、無機錯塩等の水溶性の塩が好適に用いられ、例えば、硝酸アルミニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硝酸セリウム、酢酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウムが挙げられる。
さらに、本発明にかかる前記原料流体組成物を調製するための溶媒としては、特に制限されず、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール等の単独又は混合系溶媒)等の各種溶媒が挙げられるが、金属基材への付着性向上という観点から水とアルコールとの混合溶媒が好ましく、アルコール含有量が40〜100質量%(特に好ましくは55〜80質量%)である水とアルコールとの混合溶媒が特に好ましい。また、本発明にかかる金属塩溶液のpHは、特に限定されるものではないが、溶液中で金属イオンがより安定に存在するという観点から、金属塩溶液のpHが3.0〜6.0であることが好ましい。
また、本発明においては、前記原料流体組成物中に、平均粒径が0.01〜50μm(好ましくは0.01〜10μm)であるジルコニア、セリア又はアルミナの粉末が更に含有されていてもよい。このような粉末の平均粒径が0.01μm未満のものは金属酸化物の粉砕による製造法としては作製が困難であり、他方、50μmを超えると被覆の厚みが非常に厚くなり、また付着性が低下するといった問題が発生する傾向にある。なお、このような金属酸化物の粉末としては、金属塩を含有する溶液を乾燥した後に粉砕して得たものが好適に用いられる。さらに、その平均粒径は、得ようとする被覆の厚み以下であることが望ましい。
さらに、このような金属酸化物の粉末を用いる場合、その表面に貴金属を予め担持させておくこともできる。このような貴金属としては、白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、金等が挙げられ、中でも白金、ロジウム、パラジウムが好ましい。このような貴金属の担持量は特に制限されず、得られる触媒の用途等に応じて適宜調整されるが、得られる被覆を構成する金属酸化物100質量部に対して0.1〜10質量部程度となる量が一般的である。また、このような貴金属を担持させる具体的な方法も特に制限されないが、例えば、貴金属の塩(硝酸塩、塩化物、酢酸塩等)又は貴金属の錯体を水、アルコール等の溶媒に溶解した溶液に前記の粉末を浸漬し、溶媒を除去した後に焼成及び粉砕するといった方法が好適に用いられる。なお、前記貴金属を担持させる工程において溶媒を除去する際における乾燥条件としては30〜150℃で10分以内程度が好ましく、また、焼成条件としては、酸化雰囲気(例えば、空気)中において250〜300℃で30〜60分程度が好ましい。また、所望の担持量になるまでこのような貴金属担持工程を繰り返してもよい。
本発明においては、前記原料流体組成物を1000sec−1以上、より好ましくは10000sec−1以上、特に好ましくは20000sec−1以上、の剪断速度の下で混合して被覆組成物を得る。かかる剪断速度が1000sec−1未満では、得られる金属酸化物ナノ多孔体が後述の成分均一性を満たすものにならず、その付着性及び耐熱性の十分な向上が得られない。なお、かかる剪断速度の上限は特に制限されないが、200000sec−1以下であることが好ましい。
なお、ここで用いる装置は、このような高剪断速度の下で混合できるものであればよく特に制限されないが、ホモジナイザが好適に用いられる。また、このような高剪断速度の下で混合する時間も特に制限されないが、1〜20分(好ましくは1〜5分)程度が一般的である。
このような高剪断速度の下で混合される前記原料流体組成物の濃度(固形分濃度)は、目的とする金属酸化物ナノ多孔体の形状(厚みや粒径)、塗布や粉体化する方法に適した粘度等に応じて適宜調整されるが、5〜50質量%程度の固形分濃度が一般的であり、好ましくは10〜15質量%程度の固形分濃度である。
さらに、本発明においては、得られた原料流体組成物に混入している気泡を十分に除去するため、混合された原料流体組成物を1〜2分程度緩やかに攪拌(例えば、20〜100rpm)する脱気処理を更に施してもよい。
以上説明した本発明にかかる原料流体組成物においては、前記のコロイド粒子及び/又は金属塩の諸成分が極めて均一に分散しており、このような原料流体組成物を実質的に共沈させることなく熱処理することによって、前述の本発明の金属酸化物ナノ多孔体が得られ、ハニカムフィルタ等の各種基材に対して付着性が高く且つ優れた耐熱性を有する前記金属酸化物の被覆を形成することが可能となり、更に基材上に形成する被覆の薄膜化も可能となる。そのため、本発明によれば、金属製のハニカムフィルタや高密度ハニカム等の基材に対しても高水準の付着性をもって優れた耐熱性を有する薄膜状の前記金属酸化物ナノ多孔体の被覆を均一に形成することが可能となる。
このように、本発明においては、原料流体組成物を実質的に共沈させることなく熱処理する必要がある。ここで、「実質的に共沈させることなく」とは、原料流体組成物中の金属元素が実質的に水酸化物を経ることなく熱処理によって固化して金属酸化物となることをいい、より具体的には、かかる熱処理前の原料流体組成物中の金属成分における水酸化物の比率が50at%以下(より好ましくは30at%以下)の場合をいう。
そして、前記原料流体組成物を前述の高速剪断速度の下で混合した後、実質的に共沈させることなく熱処理することによって、目的とする金属酸化物ナノ多孔体が得られる。また、前記原料流体組成物として金属塩溶液を用いた場合は、かかる熱処理によって原料流体組成物中の金属成分を酸化せしめて金属酸化物とすることによって、前述の本発明の金属酸化物ナノ多孔体を得ることができる。
本発明においては、前記原料流体組成物を前述の混合の後に高速で熱処理することが好ましい。このような熱処理の具体的な方法は特に制限されないが、前記原料流体組成物を前述の混合の後に高速で乾燥し、さらに必要に応じて焼成する方法が好適に採用される。
本発明においては、前記原料流体組成物を前述の高速剪断速度の下で混合した後に前記熱処理するまでの時間は短い方が望ましく、60分以内程度であることが好ましく、30分以内程度であることがより好ましい。この時間が上記上限を超えると、高剪断攪拌の効果が低下して熱処理前や熱処理工程において金属酸化物が凝集し、付着性及び耐熱性が十分に向上した金属酸化物ナノ多孔体が得られにくくなる。
また、後述する焼成工程が乾燥工程を兼ねていてもよいが、前記原料流体組成物を焼成する前に溶媒を除去して高速で乾燥せしめることが好ましく、その際における乾燥条件としては、60〜180℃の温度(特に好ましくは100〜150℃の温度)で10分以内(特に好ましくは5分以内)に乾燥せしめるという条件がより好ましい。乾燥温度が上記下限未満では、高速乾燥が十分に達成されにくくなる傾向にあり、他方、上記上限を超えると、乾燥初期における乾燥速度が急激すぎることとなり、成膜速度より水分の気化速度が速すぎることから亀裂、ワレ等の原因となり、結果として付着性が大幅に低下する傾向にある。また、乾燥時間が上記上限を超えると、高剪断攪拌の効果が低下して乾燥工程において金属酸化物が凝集し、付着性及び耐熱性が十分に向上した金属酸化物ナノ多孔体が得られにくくなる傾向にある。なお、かかる高速乾燥工程において、原料流体組成物の含水率が200質量%以下(特に好ましくは100質量%以下)となるまで乾燥させることが好ましい。
さらに、焼成条件としては、酸化雰囲気(例えば、空気)中において250〜600℃の温度(特に好ましくは350〜500℃の温度)で20〜70分(特に好ましくは30〜60分)焼成するという条件がより好ましい。焼成温度が上記下限未満では、焼成が十分に達成されず、付着性及び耐熱性が十分に向上した金属酸化物ナノ多孔体が得られにくくなる傾向にあり、他方、上記上限を超えると、高温・酸化雰囲気によりシンタリング等の性能低下を伴い易くなる傾向にある。また、焼成時間が上記下限未満では、焼成が十分に達成されず、付着性及び耐熱性が十分に向上した金属酸化物ナノ多孔体が得られにくくなる傾向にあり、他方、上記上限を超えると、高剪断攪拌の効果が低下して焼成工程において金属酸化物が凝集し、付着性及び耐熱性が十分に向上した金属酸化物ナノ多孔体が得られにくくなる傾向にある。
なお、上記本発明の製造方法においては、前記本発明の金属酸化物ナノ多孔体として薄膜状のものや粉末状のものを好適に得ることができる。
本発明の触媒担体における薄膜状の金属酸化物ナノ多孔体を得る場合、前記原料流体組成物を前記高速剪断速度の下で混合した後、実質的に共沈させることなく基材に塗布した後に熱処理する方法が好適に採用される。
本発明の触媒担体において用いられる基材は特に制限されず、モノリス担体基材(ハニカムフィルタ、高密度ハニカム等)、フォームフィルタ基材、ペレット状基材、プレート状基材等が好適に採用される。また、このような基材の材質も特に制限されず、コージエライト、炭化ケイ素、ムライト等のセラミックスからなる基材や、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチール等の金属からなる基材が好適に採用される。なお、金属からなる基材を用いる場合は、予め300〜1000℃、1〜10時間程度の熱処理を施してその表面に酸化被膜を形成させておくと、付着性がより向上する傾向にあるため好ましい。
本発明において基材に塗布する原料流体組成物の量は特に制限されず、用いる基材や得られる触媒の用途等に応じて適宜調整されるが、基材体積1リットルに対して被覆を構成する金属酸化物の量が10〜300g程度となる量が好ましい。
また、本発明において、前記原料流体組成物を基材に塗布する具体的な方法は特に制限されず、例えば、前記原料流体組成物に基材を浸漬する方法や、前記原料流体組成物をスプレー等により基材表面にコーティングする方法が好適に用いられる。
また、所望の担持量になるまで前記原料流体組成物を基材に塗布する工程を繰り返してもよく、その場合は、前記原料流体組成物を基材に塗布して乾燥せしめた後に仮焼成することが好ましい。その際における仮焼成条件としては、酸化雰囲気(例えば、空気)中において250〜300℃の温度で30〜60分仮焼成するという条件が特に好ましい。
また、粉末状の金属酸化物ナノ多孔体を得る場合、前記原料流体組成物を前記高速剪断速度の下で混合した後、実質的に共沈させることなく熱処理及び粉体化する方法が好適に採用される。このように前記原料流体組成物を粉体化する方法は特に制限されないが、前記原料流体組成物を乾燥及び必要に応じて焼成した後に粉砕して金属酸化物ナノ多孔体の粉体を得る方法が好適に用いられる。
以上説明した本発明の金属酸化物ナノ多孔体は、前述のジルコニア及びセリアを特定量含有するジルコニア/セリア2成分系又はジルコニア、セリア及びアルミナを特定量含有するジルコニア/セリア/アルミナ3成分系により構成される複合金属酸化物であって、以下に説明する条件(I)を満たすものであることが好ましい。
すなわち、本発明の金属酸化物ナノ多孔体が満たすことが好ましい第一の条件(I)は、前記ナノ多孔体に10at%以上含有されるすべての金属酸化物の金属元素について、加速電圧200kV、電子ビーム径1.0nmの透過型電子顕微鏡を用いて被検試料の厚さが略一定とみなせる領域にある測定点においてエネルギー分散型X線分光法によりスペクトルを求め、得られたスペクトル中の各金属元素の蛍光X線ピークの積分強度を相対比に変換して求められる相対強度比Xの平均値Xと平均値Xのまわりの二次のモーメントνとが、前記金属元素のすべてについて下記式(1):
ν/X ≦0.02 (1)
で表される条件を満たしていることである。前記式(1)において、Xは、下記式:
=(ΣX)/N
(式中のNは測定点の数を示す。)
で表される相対強度比Xの平均値である。また、νは、下記式:
ν={Σ(X−X}/N
で表される平均値Xのまわりの二次のモーメントである。さらに、ν/X は、平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントである。
なお、このような測定の具体的な方法は特に限定されないが、例えば以下に示す測定方法にしたがって実施することが好ましい。
<試料の作製>
金属酸化物ナノ多孔体を少量採取し、容器中に貯めた5〜10ml程度の分散媒(例えばエタノール)に混合する。得られた混合物を超音波洗浄機の水槽に入れ、数分間超音波にて撹拌した後、直ちに容器を超音波洗浄機から取り出して被検試料の分散液を、「マイクログリッド」と呼ばれる3mmφ程度の銅箔のメッシュの上に多孔質の有機膜を貼った透過型電子顕微鏡専用の試料台上に1〜2滴、滴下する。そして、分散媒を完全に蒸発させた後に透過型電子顕微鏡による観察を行う。
<透過型電子顕微鏡観察>
観察には、電界放射型電子銃(FEG)を有する加速電圧200kVの透過型電子顕微鏡(TEM)を用いる。TEMには、走査型透過電子顕微鏡(STEM)観察モード及びエネルギー分散型X線分光(EDX)用検出器が装備されていることが測定上必要な条件である。上記の被検試料を滴下したマイクログリッドをTEMの試料室に挿入し、マイクログリッドの有機膜の孔の上にはみ出ている試料(すなわち試料が有機膜と重なっていない部分)を観察及び元素分析の対象とする。その際、被検試料の厚さの比較的薄い部分を選び出し、その部分にSTEM観察モードで1nmφに絞った電子線を30秒照射し、試料から放出される蛍光X線をEDX検出器を用いて検出する。そして、試料の厚さに関し、EDX検出器で得られる全X線の総カウント数を基準とし、1万カウントから6万カウントの間になる部分を測定に適正な領域、すなわち被検試料の厚さが略一定とみなせる領域と規定する。
<測定部位の良否の判定>
測定部位がマイクログリッドの有機膜を支えている銅箔に近く、試料から放出される蛍光X線の一部がこの銅箔に当たって良好な元素分析が行えない場所がある。このような場所から得られるEDX検出結果の特徴としては、(1)全体的にカウント数が低い、(2)特に酸素の蛍光X線等の低エネルギー領域におけるカウント数が低い、(3)それに比べて銅のカウント数は高い、等の特徴がある。図1にこのような良好な元素分析が行えない場所の一例の透過型電子顕微鏡写真(図中、006〜010は測定点を示す)を、図2にEDXスペクトルの不良な測定結果の一例を示す。このような測定場所から得られた測定結果は全点考察の対象からはずし、別の有機膜の孔における被検試料を新たな測定対象として測定を続ける。例えば、後述する実施例においては、得られるEDXスペクトルにおける(酸素の総カウント数)/(Cuの総カウント数)の比がすべての測定点で2未満となる場所から得られた測定結果は計算の対象から除外し、EDXスペクトルにおける(酸素の総カウント数)/(Cuの総カウント数)の比が2以上となる場所から得られた測定結果に基づいて後述の計算をする。図3に良好な元素分析が行えた場所の一例の透過型電子顕微鏡写真(図中、001〜005は測定点を示す)を、図4にEDXスペクトルの良好な測定結果の一例を示す。
<測定結果に基づく計算>
本発明においては、前記条件の判定をする際に、EDXスペクトルのデータを無加工で使用する。すなわち、何らかの変換式を用いて元素の重量比等に変換した数値ではなく、蛍光X線のカウント数そのものを計算の基礎とする。先ず、EDXスペクトルより試料を構成する主な金属元素(試料に10at%以上含有されるすべての金属酸化物の金属元素)である例えばAl、Zr、Ceの蛍光X線ピークの中から、(1)なるべくカウント数の多いもの、(2)他のピークとの重なりが無視できるほど小さいもの、の2点を基準にして各金属元素について一つのピークを選択する。そして、選択された各ピークをすべて覆えるだけの必要且つ十分なエネルギー幅(0.2〜0.3keV程度)を定め、その範囲にある蛍光X線のカウント数をすべて足し合わせ、これをその金属元素の蛍光X線ピークの積分強度として求め、その結果に基づいて前述の相対強度比X、その平均値X、平均値Xのまわりの二次のモーメントν、平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントν/X を順次算出し、前記式(1)で表される条件を満たしているか否かを判定する。
本発明の金属酸化物ナノ多孔体が前記式(1)で表される条件を満たすということは、そのナノ多孔体を構成する主要な金属酸化物がナノ細孔を構成する壁体中で極めて均一に分散していることを示している。このような極めて高水準の成分均一性は、金属酸化物のコロイド溶液や金属塩の溶液をそのまま用いて得られる金属酸化物では決して得られるものではなく、本発明にかかる製造方法によってはじめて達成されたものである。そして、前記式(1)で表される条件を満たす金属酸化物ナノ多孔体においては、驚くべきことに、その条件を満たさない従来の金属酸化物多孔体に比べて各種基材に対する付着性及び耐熱性が飛躍的に向上している。
また、本発明の金属酸化物ナノ多孔体は、以下に説明する条件(II)(好ましくは(II’))、(III)、(IV)、(V)のうちの少なくとも一つを満たすものであることがより好ましく、特に原料流体組成物としてコロイド溶液を用いて得た金属酸化物ナノ多孔体は条件(II)(好ましくは(II’))、(III)、(IV)のうちの少なくとも一つを満たすことが好ましく、他方、原料流体組成物として金属塩溶液を用いて得た金属酸化物ナノ多孔体は条件(V)を満たすことが好ましい。
本発明の金属酸化物ナノ多孔体は、以下に説明する条件(II)を満たすものであることが好ましい。
すなわち、本発明の金属酸化物ナノ多孔体が満たすことが好ましい第二の条件(II)は、前記ナノ多孔体に10at%以上含有されるすべての金属酸化物の金属元素について、加速電圧15kV、電子ビーム径1μmのX線マイクロアナライザーを用いて0.5mm以上の範囲を任意に線分析して求めた下記式(2):
K値(%)=(多孔体から検出されたX線強度)/(純物質から得られるX線強度)
で表されるK値が、前記金属元素のすべてについて、全測定点のうちの65%以上(特に好ましくは75%以上)の測定点において下記式(3):
で表される条件を満たしていることである。
また、本発明の金属酸化物ナノ多孔体が満たすことが好ましい第二’の条件(II’)は、前記ナノ多孔体に5at%以上含有されるすべての金属酸化物の金属元素について、加速電圧15kV、電子ビーム径1μmのX線マイクロアナライザーを用いて0.5mm以上の範囲を任意に線分析して求めた前記式(2)で表されるK値が、前記金属元素のすべてについて、全測定点のうちの40%以上の測定点において前記式(3)で表される条件を満たしていることである。
前記式(3)において、Kは各測定点におけるK値(%)、Kは全測定点におけるK値の平均値をそれぞれ示す。また、実際に線分析した測定点のうち、前記多孔体に形成されている亀裂に相当する部分については測定点から除外して、前記のK値を求める。なお、このような亀裂の認識方法としては、X線マイクロアナライザーの測定結果において基板の成分が所定量以上検出された部分を亀裂と認識する方法、或いは、光学又は電子顕微鏡による観察によって亀裂を認識する方法が好適に採用される。また、ここで用いられるX線マイクロアナライザーとしては、通常の波長分散型の機種であればよく、特に限定されるものではない。
本発明の金属酸化物ナノ多孔体が上記の条件(II)(好ましくは(II’))を満たすということは、それを構成する主要な金属酸化物がナノ多孔体中で極めて均一に分散していることを示している。このような極めて高水準の成分均一性は、金属酸化物のコロイド溶液や金属塩の溶液をそのまま用いて得られる金属酸化物では決して得られるものではなく、本発明にかかる製造方法によってはじめて達成されたものである。そして、上記の条件(II)(好ましくは(II’))を満たす金属酸化物ナノ多孔体においては、驚くべきことに、条件(II)を満たさない従来の金属酸化物多孔体に比べて各種基材に対する付着性及び耐熱性が飛躍的に向上している。
本発明の金属酸化物ナノ多孔体は、以下に説明する条件(III)を満たすものであることが好ましい。
すなわち、本発明の金属酸化物ナノ多孔体が満たすことが好ましい第三の条件(III)は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)にて5nmの曲率半径を有するチップを用いて、3nm以上4nm未満の間隔で前記ナノ多孔体の表面の高さ像をタッピングモードで任意に計測し、総計で2μm以上の走査距離Lの関数として求めた高さ像H(L)が、全測定点のうちの80%以上(特に好ましくは90%以上)の測定点において下記式(4):
H(L)≦20nm (4)
[式(4)中、H(L)は各測定点(走査距離=L)における高さ像(nm)を示す。但し、全測定点における高さ像Hの平均値を零とする。]
で表される条件を満たしており、且つ、下記式(5)及び(6):
[式(5)及び(6)中、H(L)は走査距離=Lの測定点における高さ像(nm)、H(L+ΔL)は走査距離=L+ΔLの測定点における高さ像(nm)、ΔLは測定点の間隔(nm)、H’(L)は高さ像H(L)の一次微係数、H’(L+ΔL)は高さ像H(L+ΔL)の一次微係数、H”(L)は高さ像H(L)の二次微係数をそれぞれ示す。但し、ΔLは測定点間の直線補間により4nmとする。]
により求めた二次微係数H”(L)が、全測定点のうちの60%以下(特に好ましくは55%以下)の測定点において下記式(7):
−0.05nm−1≦H”(L)≦0.05nm−1 (7)
で表される条件を満たしていることである。なお、上記の二次微係数H”(L)を求める際に、平滑化の処理は一切行わない。
本発明の金属酸化物ナノ多孔体が上記の条件(III)の前段を満たすということは、高さの分布が小さい部分に偏っていて表面が細かい凹凸状態であることを示しており、他方、上記の条件(III)の後段を満たすということは、二次の微分係数に比較的大きな値が含まれていて表面の凹面や凸面そのものが滑らかではなく、表面凹凸の上に更に非常に細かい小突起が多い状態であることを示している。このような特殊な表面形状は、金属酸化物のコロイド溶液や金属酸化物の溶液をそのまま用いて得られる金属酸化物では決して得られるものではなく、本発明にかかる製造方法によってはじめて達成されたものである。そして、上記の条件(III)を満たす金属酸化物ナノ多孔体においては、驚くべきことに、条件(III)を満たさない従来の金属酸化物多孔体に比べて各種基材に対する付着性及び耐熱性が向上している。
本発明の金属酸化物ナノ多孔体は、以下に説明する条件(IV)を満たすものであることが好ましい。
すなわち、本発明の金属酸化物ナノ多孔体が満たすことが好ましい第四の条件(IV)は、前記ナノ多孔体の断面の電子顕微鏡写真において、前記ナノ多孔体の上に任意に総計で400μm以上の測定直線を描いた際に、前記測定直線が前記ナノ多孔体に形成されている空隙部(ナノ細孔は除く)と交差している部分の長さの比率が、前記測定直線の全長の10%以下(特に好ましくは5%以下)であるという条件を満たしていることである。
本発明の金属酸化物ナノ多孔体が上記の条件(IV)を満たすということは、そのナノ多孔体を構成する金属酸化物において適度な連続性が確保されており、ナノ多孔体中に空隙が少ないことを示している。このように適度な連続性が確保されていて空隙が少ない断面性状を有する金属酸化物ナノ多孔体は、従来のスラリーを用いて得られる金属酸化物では決して得られるものではなく、本発明にかかる製造方法によってはじめて達成されたものである。そして、上記の条件(IV)を満たす金属酸化物ナノ多孔体においては、驚くべきことに、条件(IV)を満たさない従来の金属酸化物多孔体に比べて各種基材に対する付着性及び耐熱性が向上している。
本発明の金属酸化物ナノ多孔体は、以下に説明する条件(V)を満たすものであることが好ましい。
すなわち、本発明の金属酸化物ナノ多孔体が満たすことが好ましい第五の条件(V)は、前記ナノ多孔体に10at%以上含有されるすべての金属酸化物の金属元素について、加速電圧200kV、電子ビーム径1.0nmの透過型電子顕微鏡を用いて任意に10以上の測定点においてエネルギー分散型X線分光法によりスペクトルを求め、得られたスペクトル中の各金属元素の蛍光X線ピークの積分強度を相対比に変換して求められる相対強度比Xの平均値Xと平均値Xのまわりの二次のモーメントνとが、前記金属元素のすべてについて下記式(8):
ν/X ≦0.1 (8)
で表される条件を満たしていることである。前記式(8)において、Xは、下記式:
=(ΣX)/N
(式中のNは測定点の数を示す。)
で表される相対強度比Xの平均値である。また、νは、下記式:
ν={Σ(X−X}/N
で表される平均値Xのまわりの二次のモーメントである。さらに、ν/X は、平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントである。
なお、この条件(V)の判定方法の詳細(試料の作製、透過型電子顕微鏡観察、測定部位の良否の判定、測定結果に基づく計算)は、前記条件(I)の判定方法とほとんど同様であるが、条件(I)の判定方法のように被検試料の厚さが略一定とみなせる領域にある測定点についての測定値のみを用いる必要はなく、任意の10以上の測定点であればよい。したがって、透過型電子顕微鏡観察の際に、被検試料の厚さに関し、EDX検出器で得られる全X線の総カウント数を基準とし、1万カウントから15万カウントの間になる部分を測定に適正な領域として採用することができる。
本発明の金属酸化物ナノ多孔体が上記の条件(V)を満たすということは、そのナノ多孔体を構成する主要な金属酸化物がナノ多孔体中で極めて均一に分散していることを示している。このような極めて高水準の成分均一性は、金属酸化物のコロイド溶液や金属塩の溶液をそのまま用いて得られる金属酸化物では決して得られるものではなく、本発明にかかる製造方法によってはじめて達成されたものである。そして、前記の条件(V)を満たす金属酸化物ナノ多孔体においては、驚くべきことに、その条件を満たさない従来の金属酸化物多孔体に比べて各種基材に対する付着性及び耐熱性が向上している。
本発明にかかる金属酸化物ナノ多孔体は、上記条件(I)〜(V)のうちの1つの条件を満たしていることが好ましく、また条件(I)〜(V)のうちの2つ以上の条件を満たしていることがより好ましい。複数の条件を満たすことにより、そのナノ多孔体を構成する主要な金属酸化物がナノ多孔体中(ナノ細孔を構成する壁体中)で極めて均一に分散している。それによって各種基材に対する金属酸化物ナノ多孔体の付着性及び耐熱性を相乗的により向上させることができる。
次に、本発明の水素生成反応用触媒について説明する。すなわち、本発明の水素生成反応用触媒は、前記本発明の触媒担体と、前記触媒担体の表面に担持される貴金属を備えることを特徴とするものである。
本発明の水素生成反応用触媒において前記本発明の触媒担体の表面に担持される貴金属としては、特に制限されず、白金、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、金等が挙げられ、中でも白金、ロジウム、パラジウムが好ましい。また、このような貴金属の担持量は特に制限されず、得られる触媒の用途等に応じて適宜調整されるが、触媒担体を構成する前記金属酸化物100質量部に対して0.1〜10質量部程度となる量が一般的である。
また、このような貴金属を担持させる具体的な方法は特に制限されないが、例えば、貴金属の塩(硝酸塩、塩化物、酢酸塩等)又は貴金属の錯体を水、アルコール等の溶媒に溶解した溶液に前記本発明の触媒担体を浸漬し、溶媒を除去した後に焼成するといった方法が好適に用いられる。なお、前記貴金属を担持させる工程において溶媒を除去する際における乾燥条件としては30〜150℃で10分以内程度が好ましく、また、焼成条件としては、酸化雰囲気(例えば、空気)中において250〜300℃で30〜60分程度が好ましい。また、所望の担持量になるまでこのような貴金属担持工程を繰り返してもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、ホモジナイザとしては、特殊機化工業(株)製のT.K.ロボミックス(攪拌部はT.K.ホモミクサーMARKII 2.5型)を用いた。
また、アルミナ(Al)コロイド、Al溶液、Zr溶液、ジルコニア(ZrO)粉末、Ce溶液、Rh溶液としては、それぞれ以下のものを用いた。
Alコロイド…平均粒径:5〜20nm、針状粒子、硝酸水溶液(固形分濃度:25質量%)、
Al溶液…硝酸アルミニウム水溶液(固形分濃度:5.44質量%)、
Zr溶液…オキシ硝酸ジルコニウム水溶液(固形分濃度:18質量%)、
ZrO粉末…平均粒径:1μm、
Ce溶液…硝酸セリウム水溶液(固形分濃度:28質量%)、
Rh溶液…硝酸ロジウム水溶液(固形分濃度:3質量%)。
さらに、成分均一性、表面形状及び耐熱性を評価するための基材としては、クロム及びアルミニウムを含むステンレススチールからなる金属プレート(Fe−20Cr−5Al、50mm×50mm×0.3mm)を用い、予め1000℃で1時間の熱処理を施してその表面に酸化被膜を形成せしめて用いた。また、断面性状を評価するための基材としては、400メッシュのハニカム形状を有するコージエライト基板及び1500メッシュのハニカム形状を有するコージエライト基板を用いた。さらに、改質耐久性を評価するための基材としては、1200cell/inchの金属製高密度ハニカム(Fe−20Cr−5Al)を用いた。また、付着性を評価するための基材としては、上記の金属プレートに加えて、コージエライトプレート(50mm×50mm×1mm)及びSiCプレート(50mm×50mm×1mm)を用いた。
(実施例1)
得られる被覆におけるAlとZrOとCeOとの質量比がAl:ZrO:CeO=35:30:35となるようにAlコロイドとZr溶液とCe溶液とを混合し、メタノールにより希釈して固形分濃度が12質量%のコロイド溶液を調製した。そして、得られたコロイド溶液をホモジナイザにより20000sec−1の剪断速度の下で2分間混合した後、約1分間緩やかな攪拌速度(20rpm)として混入気泡を除去せしめて被覆組成物を得た。
次に、前記の各基材を、上記で得られた被覆組成物に直ちに1〜10秒間浸漬し、取り出してからその表面の余剰被覆組成物を重力及び振とうにより除去した。そして、その基材を水平に置いた後、常温による緩やかな乾燥を5〜10分、風速2〜5m/sの温風(60〜100℃)による乾燥を5〜10分、空気雰囲気における250℃での仮焼成を約30分施し、更に風速2〜5m/sの常温風により5〜10分冷却した。このような処理を2回繰り返した後に空気雰囲気において500℃で約60分間焼成し、基材表面に金属酸化物被覆が形成されている触媒担体を得た。
得られた触媒担体における金属酸化物の被覆を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察したところ、被膜の厚さは約4μmであり、非常に均一な金属酸化物からなる薄膜が形成されていることが確認された。
(比較例1)
前記ホモジナイザによる混合に代えてプロペラによりゆるやかに攪拌(剪断速度10sec−1以下)するようにした以外は実施例1と同様にして基材表面に金属酸化物被覆が形成されている触媒担体を得た。
(比較例2)
先ず、特開平10−182155号公報(特許文献1)の実施例1に記載の共沈法により、従来のアルミナ/セリア/ジルコニア複合酸化物粉末を得た。次に、得られる金属酸化物薄膜におけるAlとZrOとCeOとの質量比がAl:ZrO:CeO=35:30:35となるように従来のアルミナ/セリア/ジルコニア複合酸化物粉末とベーマイトと硝酸アルミとを混合した固形分濃度が70質量%のスラリーを前記コロイド溶液に代えて用い、前記ホモジナイザによる混合に代えてプロペラによりゆるやかに攪拌(剪断速度10sec−1以下)するようにし、さらに焼成温度を700℃とした以外は実施例1と同様にして基材表面に金属酸化物被覆が形成されている触媒担体を得た。
(実施例2〜5及び比較例3〜8)
AlコロイドとZr溶液とZrO粉末とCe溶液とを表1に示す割合(質量比)で混合するようにした以外は実施例1と同様にして基材表面に金属酸化物被覆が形成されている触媒担体を得た。なお、実施例2〜5及び比較例3〜8で得られた被覆の組成(表1中の組成No.)を図5に示す。図5において、斜線部が本発明の触媒担体における金属酸化物ナノ多孔体の組成に相当する。
(比較例9)
前記ホモジナイザによる混合に代えてプロペラによりゆるやかに攪拌(剪断速度10sec−1以下)するようにした以外は実施例5と同様にして基材表面に金属酸化物被覆が形成されている触媒担体を得た。
(実施例6)
得られる金属酸化物薄膜におけるAlとZrOとCeOとの質量比がAl:ZrO:CeO=40:40:20となるようにAlコロイドとZr溶液とCe溶液とを混合するようにした以外は実施例1と同様にして基材表面に金属酸化物被覆が形成されている触媒担体を得た。
(実施例7)
前記ホモジナイザによる混合の際の剪断速度が10000sec−1となるようにした以外は実施例6と同様にして基材表面に金属酸化物被覆が形成されている触媒担体を得た。
(実施例8)
前記ホモジナイザによる混合の際の剪断速度が4000sec−1となるようにした以外は実施例6と同様にして基材表面に金属酸化物被覆が形成されている触媒担体を得た。
(比較例10)
前記ホモジナイザによる混合に代えてプロペラによりゆるやかに攪拌(剪断速度:10sec−1以下)するようにした以外は実施例6と同様にして基材表面に金属酸化物被覆が形成されている触媒担体を得た。
(実施例9)
得られる金属酸化物粉末におけるAlとZrOとCeOとの質量比がAl:ZrO:CeO=40:40:20となるようにAlコロイドとZr溶液とCe溶液とを混合し、メタノールにより希釈して固形分濃度が12質量%のコロイド溶液を調製した。そして、得られたコロイド溶液をホモジナイザにより20000sec−1の剪断速度の下で2分間混合した後、約1分間緩やかな攪拌速度(20rpm)として混入気泡を除去せしめて被覆組成物を得た。
次に、得られた被覆組成物を150℃に加熱して水蒸気を除去し、更に250℃に加熱して硝酸成分を除去した後、乳鉢で粉砕して平均粒径が約70μmの金属酸化物粉体を得た。
(比較例11)
前記ホモジナイザによる混合に代えてプロペラによりゆるやかに攪拌(剪断速度10sec−1以下)するようにした以外は実施例9と同様にして金属酸化物粉体を得た。
(実施例10)
得られる被覆におけるAlとZrOとCeOとの質量比がAl:ZrO:CeO=30:30:40となるように、Al溶液55.2g、Zr溶液16.7g及びCe溶液14.3gをメタノール13.9gと混合し、固形分濃度が10質量%の金属塩溶液を調製した。そして、得られた金属塩溶液をホモジナイザにより20000sec−1の剪断速度の下で2分間混合した後、約1分間緩やかな攪拌速度(20rpm)として混入気泡を除去せしめて被覆組成物を得た。
次に、予め1000℃、1時間の熱処理を施してその表面に酸化被膜を形成せしめてある金属プレートを、上記で得られた被覆組成物に直ちに1〜10秒間浸漬し、取り出してからその表面の余剰被覆組成物を重力及び振とうにより除去した。そして、そのプレートを水平に置いた後、常温による緩やかな乾燥を5〜10分、風速2〜5m/sの温風(60〜100℃)による乾燥を5〜10分、空気雰囲気における250℃での仮焼成を約30分施し、更に風速2〜5m/sの常温風により5〜10分冷却した。このような処理を2回繰り返した後に空気雰囲気において500℃で約60分間焼成し、評価プレート1枚に対して金属酸化物の被覆量が約0.2gとなっている触媒担体を得た。
得られた触媒担体における金属酸化物の被覆を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察したところ、被膜の厚さは約4μmであり、非常に均一な金属酸化物からなる薄膜が形成されていることが確認された。
(比較例12)
前記ホモジナイザによる混合に代えてプロペラによりゆるやかに攪拌(剪断速度10sec−1以下)するようにした以外は実施例10と同様にして基材表面に金属酸化物被覆が形成されている触媒担体を得た。
(実施例11)
得られる金属酸化物薄膜におけるAlとZrOとCeOとの質量比がAl:ZrO:CeO=40:40:20となるようにAl溶液とZr溶液とCe溶液とを混合するようにした以外は実施例10と同様にして基材表面に金属酸化物被覆が形成されている触媒担体を得た。
(比較例13)
前記ホモジナイザによる混合に代えてプロペラによりゆるやかに攪拌(剪断速度10sec−1以下)するようにした以外は実施例11と同様にして基材表面に金属酸化物被覆が形成されている触媒担体を得た。
(実施例12)
前記ホモジナイザによる混合の際の剪断速度が10000sec−1となるようにした以外は実施例10と同様にして基材表面に金属酸化物被覆が形成されている触媒担体を得た。
(実施例13)
前記ホモジナイザによる混合の際の剪断速度が4000sec−1となるようにした以外は実施例10と同様にして基材表面に金属酸化物被覆が形成されている触媒担体を得た。
(実施例14)
得られる被覆におけるAlとZrOとCeOとの質量比がAl:ZrO:CeO=30:30:40となるように、Al溶液55.2g、Zr溶液16.7g及びCe溶液14.3gをメタノール13.9gと混合し、固形分濃度が10質量%の金属塩溶液を調製した。そして、得られた金属塩溶液をホモジナイザにより20000sec−1の剪断速度の下で2分間混合した後、約1分間緩やかな攪拌速度(20rpm)として混入気泡を除去せしめて被覆組成物を得た。
次に、得られた被覆組成物を300〜350℃に加熱した高温プレート上に塗布し、30分で乾燥(溶媒の除去)及び焼成(硝酸成分の除去及び金属成分の酸化)せしめた後、乳鉢で粉砕して平均粒径が約70μmの金属酸化物粉体を得た。
(比較例14)
前記金属塩溶液をホモジナイザによる混合に代えてプロペラによりゆるやかに攪拌(剪断速度10sec−1以下)するようにした以外は実施例14と同様にして金属酸化物粉体を得た。
(実施例15)
前記被覆組成物を空気雰囲気において500℃で3〜4時間かけて乾燥及び焼成せしめるようにした以外は実施例14と同様にして複合金属酸化物粉体を得た。
(比較例15)
前記金属塩溶液をホモジナイザによる混合に代えてプロペラによりゆるやかに攪拌(剪断速度10sec−1以下)するようにした以外は実施例15と同様にして複合金属酸化物粉体を得た。
<成分均一性の評価1:条件(I)>
先ず、実施例1、6、11及び比較例1、10、13に記載の方法で得られた金属酸化物被覆並びに実施例9、14、及び比較例2、11、14に記載の方法で得られた金属酸化物粉末について、以下のようにして成分均一性を評価した。すなわち、前述の条件(I)の測定方法にしたがって、これらの金属酸化物被覆及び金属酸化物粉末について加速電圧200kV、電子ビーム径1.0nmの透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM2010FEF)を用いてエネルギー分散型X線分光法によりスペクトルを求め、薄膜に含有されるAl、Zr及びCeについての蛍光X線ピークの積分強度を求めた。
なお、透過型電子顕微鏡観察の際に、試料の厚さに関し、EDX検出器で得られる全X線の総カウント数を基準とし、1万カウントから6万カウントの間になる部分を測定に適正な領域、すなわち被検試料の厚さが略一定とみなせる領域として採用した。
そして、その測定結果に基づいて前述の相対強度比X、その平均値X、平均値Xのまわりの二次のモーメントν、平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントν/X を順次算出し、前記式(1)で表される条件を満たしているか否かを判定した。
このようにして得られた平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントν/X を表2にそれぞれ示す。
表2に示した結果から明らかな通り、本発明の方法で得られた実施例1、6、11で得られた金属酸化物被覆及び実施例9、14で得られた金属酸化物粉体においては、金属酸化物に含有される金属元素のすべてについて前記式(1)で表される条件が満たされており、金属酸化物が極めて均一に分散していることが確認された。一方、高速剪断速度の下での混合をしなかった比較例1、10、13で得られた金属酸化物被覆及び比較例11、14で得られた金属酸化物粉体においては、粉体に含有される金属元素のすべてについて前記式(1)で表される条件が満たされていないことが確認された。さらに、比較例2で得られた従来の共沈法により得られた従来のアルミナ/セリア/ジルコニア複合酸化物粉末においても、粉体に含有される金属元素のほとんどについて前記式(1)で表される条件が満たされていないことが確認された。
<成分均一性の評価2:条件(II)>
先ず、実施例1に記載の方法で前記金属プレートの表面に形成せしめた金属酸化物被覆(膜厚:約5μm)について、以下のようにして成分均一性を評価した。すなわち、実施例1で得られた被覆の表面に任意に0.5mmの測定直線を2本設定し(測定直線1及び測定直線2)、被覆に含有されるAl、Zr及びCeと基材に含有されるFeとについて、加速電圧15kV、電子ビーム径1μmのX線マイクロアナライザー(日本電子社製、JXA−8200)を用いて前記測定直線上の測定点において線分析し、各測定点におけるK値(K-value)、全測定点におけるK値の平均値(K)、及び各測定点における{|K−K|/K}の値を求めた。なお、亀裂に相当する部分については、基材に含有されるFeが検出されるか否かで判定した。測定直線1について得られた結果を表3に、測定直線2について得られた結果を表4にそれぞれ示す。
表3及び表4に示した結果から明らかな通り、コロイド溶液を高剪断速度の下で混合した後に基材に塗布して高速で乾燥及び焼成して得た実施例1で得られた金属酸化物被覆においては、被覆に含有される金属元素のすべてについて、全測定点のうちの65%以上の測定点において前記式(3)で表される条件が満たされており、金属酸化物が被覆中で極めて均一に分散していることが確認された。
次に、比較例1に記載の方法で前記金属プレートの表面に形成せしめた金属酸化物被覆(膜厚:約5μm)について、上記と同様にして成分均一性を評価した。すなわち、比較例1で得られた被覆の表面に任意に0.5mmの測定直線を2本設定し(測定直線1及び測定直線2)、被覆に含有されるAl、Zr及びCeと基材に含有されるFeとについて上記と同様にして線分析し、各測定点におけるK値(K-value)、全測定点におけるK値の平均値(K)、及び各測定点における{|K−K|/K}の値を求めた。測定直線1について得られた結果を表5に、測定直線2について得られた結果を表6にそれぞれ示す。
表5及び表6に示した結果から明らかな通り、コロイド溶液をそのまま用いた比較例1で得られた金属酸化物被覆においては、被覆に含有される金属元素のうち少なくとも一部について、前記式(3)で表される条件が満たされている測定点の割合が65%を下回っていることが確認された。
次に、比較例2に記載の方法で前記金属プレートの表面に形成せしめた金属酸化物被覆(膜厚:約40μm)について、上記と同様にして成分均一性を評価した。なお、比較例2に記載の方法で前記金属プレートの表面に形成せしめた金属酸化物被覆は基材に対する付着性が明らかに劣っており、膜厚を40μm程度にしないと基材を覆う被覆にはならなかった。すなわち、比較例2で得られた金属酸化物被覆の表面に任意に0.5mmの測定直線を2本設定し(測定直線1及び測定直線2)、被覆に含有されるAl、Zr及びCeと基材に含有されるFeとについて上記と同様にして線分析し、各測定点におけるK値(K-value)、全測定点におけるK値の平均値(K)、及び各測定点における{|K−K|/K}の値を求めた。測定直線1について得られた結果を表7に、測定直線2について得られた結果を表8にそれぞれ示す。
表7及び表8に示した結果から明らかな通り、共沈法により得られた従来のアルミナ/セリア/ジルコニア複合酸化物粉末を含有するスラリーをそのまま用いた比較例2で得られた金属酸化物被覆においては、被覆に含有される金属元素のすべてについて、前記式(3)で表される条件が満たされている測定点の割合が65%を下回っていることが確認された。
<表面形状の評価:条件(III)>
先ず、実施例1に記載の方法で前記金属プレートの表面に形成せしめた金属酸化物被覆(膜厚:約5μm)について、以下のようにして表面形状を評価した。すなわち、実施例1で得られた金属酸化物被覆の表面に任意に2μmの測定直線を設定し(512点計測、3.91nm間隔)、走査型プローブ顕微鏡(Digital Instruments社製 NanoScope IIIa、NanoAnalytics社製 Qコントロールモジュール付き)にて5nmの曲率半径を有するスーパーシャープチップを用いて被覆表面の高さ像をタッピングモードで計測し、走査距離Lの関数として高さ像H(L)及びその二次微係数H”(L)を求めた。その結果、コロイド溶液を高剪断速度の下で混合した後に基材に塗布して高速で乾燥及び焼成して得た実施例1で得られた金属酸化物被覆においては、全測定点のうちの94%の測定点において高さ像H(L)が20nm以下であり、被覆の表面が細かい凹凸状態であることが確認された。また、実施例1で得られた金属酸化物被覆においては、二次微係数H”(L)の絶対値が0.05nm−1以下の測定点の割合が54%であり、被覆の表面凹凸の上に更に非常に細かい小突起が多い状態であることが確認された。
次に、比較例1に記載の方法で前記金属プレートの表面に形成せしめた金属酸化物被覆(膜厚:約5μm)について、上記と同様にして表面形状を評価した。すなわち、比較例1で得られた金属酸化物被覆の表面の高さ像を上記と同様にして計測し、走査距離Lの関数として高さ像H(L)及びその二次微係数H”(L)を求めた。その結果、コロイド溶液をそのまま用いた比較例1で得られた金属酸化物被覆においては、全測定点のうちの94%の測定点において高さ像H(L)が20nm以下であったものの、二次微係数H”(L)の絶対値が0.05nm−1以下の測定点の割合が70%であり、被覆の表面の凹凸が比較的滑らかであることが確認された。
次に、比較例2に記載の方法で前記金属プレートの表面に形成せしめた金属酸化物被覆(膜厚:約40μm)について、上記と同様にして表面形状を評価した。すなわち、比較例2で得られた金属酸化物被覆の表面の高さ像を上記と同様にして計測し、走査距離Lの関数として高さ像H(L)及びその二次微係数H”(L)を求めた。その結果、共沈法により得られた従来のアルミナ/セリア/ジルコニア複合酸化物粉末を含有するスラリーをそのまま用いた比較例2で得られた金属酸化物被覆においては、高さ像H(L)が20nm以下の測定点の割合が44%であり、且つ、二次微係数H”(L)の絶対値が0.05nm−1以下の測定点の割合が61%であり、被覆の表面には比較的滑らかで大きな凹凸があることが確認された。
<断面性状の評価:条件(IV)>
先ず、実施例1に記載の方法で前記400メッシュのハニカム形状を有するコージエライト基板の端部に形成せしめた金属酸化物被覆について、以下のようにして断面性状を評価した。すなわち、実施例1で得られた金属酸化物被覆の断面の電子顕微鏡写真において、前記被覆の上に総計で465.5μmの4本の測定直線(line1〜4)を描き、これらの測定直線が前記被覆に形成されている空隙部と交差している部分の長さの比率を求めた。その結果、コロイド溶液を高剪断速度の下で混合した後に基材に塗布して高速で乾燥及び焼成して得た実施例1で得られた金属酸化物被覆においては、前記測定直線が空隙部と交差している部分の長さの比率は4.3%であり、被覆を構成する金属酸化物において連続性が確保されており被覆中に空隙が少ないことが確認された。
次に、比較例2に記載の方法で前記400メッシュのハニカム形状を有するコージエライト基板の端部に形成せしめた金属酸化物被覆について、上記と同様にして断面性状を評価した。すなわち、比較例2で得られた金属酸化物被覆の断面の電子顕微鏡写真において、前記被覆の上に総計で556.0μmの4本の測定直線(line1〜4)を描き、これらの測定直線が前記被覆に形成されている空隙部と交差している部分の長さの比率を求めた。その結果、共沈法により得られた従来のアルミナ/セリア/ジルコニア複合酸化物粉末を含有するスラリーをそのまま用いた比較例2で得られた金属酸化物被覆においては、前記測定直線が空隙部と交差している部分の長さの比率は42.4%であり、被覆中に空隙が多いことが確認された。
<成分均一性の評価3:条件(V)>
先ず、実施例14に記載の方法で得られた金属酸化物粉体について、以下のようにして成分均一性を評価した。すなわち、前述の測定方法にしたがって、実施例14で得られた金属酸化物粉体の透過型電子顕微鏡写真における測定点(10箇所の良好な測定部位)において、加速電圧200kV、電子ビーム径1.0nmの透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM2010FEF)を用いてエネルギー分散型X線分光法によりスペクトルを求め、粉体に含有されるAl、Zr及びCeについての蛍光X線ピークの積分強度を求めた。そして、その測定結果に基づいて前述の相対強度比X、その平均値X、平均値Xのまわりの二次のモーメントν、平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントν/X を順次算出し、前記式(8)で表される条件を満たしているか否かを判定した。
実施例14の金属酸化物粉体について得られた各測定点(Homo-01〜Homo-10)における蛍光X線ピークの積分強度比Xを表9に、平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントν/X を表10にそれぞれ示す。
表10に示した結果から明らかな通り、金属塩溶液を高剪断速度の下で混合した後に高速で乾燥及び焼成して得た実施例14で得られた金属酸化物粉体においては、粉体に含有される金属元素のすべてについて前記式(8)で表される条件が満たされており、金属酸化物が粉体中で極めて均一に分散していることが確認された。
次に、比較例14に記載の方法で得られた金属酸化物粉体について、上記と同様にして成分均一性を評価した。すなわち、比較例14で得られた金属酸化物粉体の測定点(15箇所の良好な測定部位)においてエネルギー分散型X線分光法によりスペクトルを求め、粉体に含有されるAl、Zr及びCeについての蛍光X線ピークの積分強度を求めた。そして、その測定結果に基づいて前述の相対強度比X、その平均値X、平均値Xのまわりの二次のモーメントν、平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントν/X を順次算出し、前記式(8)で表される条件を満たしているか否かを判定した。
比較例14の金属酸化物粉体について得られた各測定点(Non-Homo-01〜Non-Homo-15)における蛍光X線ピークの積分強度比Xを表11に、平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントν/X を表10にそれぞれ示す。
表10に示した結果から明らかな通り、金属塩溶液をそのまま用いた比較例14で得られた金属酸化物粉体においては、粉体に含有される金属元素のすべてについて前記式(8)で表される条件が満たされていないことが確認された。
次に、比較例2で得られた従来の共沈法により得られた従来のアルミナ/セリア/ジルコニア複合酸化物粉末について、上記と同様にして成分均一性を評価した。すなわち、比較例2で得られた金属酸化物粉体の測定点(15箇所の良好な測定部位)においてエネルギー分散型X線分光法によりスペクトルを求め、粉体に含有されるAl、Zr及びCeについての蛍光X線ピークの積分強度を求めた。そして、その測定結果に基づいて前述の相対強度比X、その平均値X、平均値Xのまわりの二次のモーメントν、平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントν/X を順次算出し、前記式(8)で表される条件を満たしているか否かを判定した。
比較例2の金属酸化物粉体について得られた各測定点(共沈-01〜共沈-15)における蛍光X線ピークの積分強度比Xを表12に、平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントν/X を表10にそれぞれ示す。
表10に示した結果から明らかな通り、共沈法により得られた従来のアルミナ/セリア/ジルコニア複合酸化物粉末においても、粉体に含有される金属元素のほとんどについて前記式(8)で表される条件が満たされていないことが確認された。
<成分均一性の評価4>
実施例10、12、13及び比較例12に記載の方法で前記金属プレートの表面に形成せしめた金属酸化物被覆について、以下のようにして成分均一性を評価した。すなわち、実施例10、12、13及び比較例12で得られた金属酸化物被覆の表面に任意に0.5mmの測定直線を設定し、被覆に含有されるAl、Zr及びCeと基材に含有されるFeとについて、加速電圧15kV、電子ビーム径1μmのX線マイクロアナライザー(日本電子社製、JXA−8200)を用いて前記測定直線上の測定点において線分析し、各測定点におけるK値(K-value)、全測定点におけるK値の平均値(K)、及び各測定点における{|K−K|/K}の値を求めた。なお、亀裂に相当する部分については、基材に含有されるFeが検出されるか否かで判定した。得られた結果を表13及び図6に示す。
また、実施例6〜8及び比較例10に記載の方法で前記金属プレートの表面に形成せしめた金属酸化物薄膜についても同様に成分均一性を評価した。得られた結果を表14及び図7に示す。
表13〜14及び図6〜7に示した結果から明らかな通り、原料流体組成物を混合する際の剪断速度が増加するにしたがって得られた金属酸化物薄膜における金属酸化物の均質分散性が向上し、特に剪断速度が10000sec−1以上になると均質分散性が顕著に向上することが確認された。
<耐熱性試験>
実施例1及び比較例1、2に記載の方法で得られた金属酸化物被覆、実施例14に記載の方法で得られた金属酸化物粉体、並びに比較例2で得られた従来の共沈法により得られた従来のアルミナ/セリア/ジルコニア複合酸化物粉末について、以下のようにして耐熱性を評価した。すなわち、各金属酸化物被覆及び金属酸化物粉体を酸化雰囲気(大気中)において500℃、900℃、1000℃に加熱してそれぞれ5時間維持した後の比表面積(BET比表面積)を測定した。
得られた結果を図8及び図9に示す。図8及び図9に示した結果から明らかな通り、コロイド溶液又は金属塩溶液を高剪断速度の下で混合した後に高速で乾燥及び焼成して得た本発明の金属酸化物被覆及び金属酸化物粉体においては、特に500℃及び900℃における耐熱性が大幅に向上していることが確認された。
また、実施例14、15及び比較例14、15に記載の方法で得られた金属酸化物粉体について、以下のようにして耐熱性を評価した。すなわち、各金属酸化物粉体を酸化雰囲気(大気中)において900℃に加熱して5時間維持した後の比表面積(BET比表面積)を測定した。得られた結果は以下の通りである。
実施例14:BET比表面積=67.8m/g
比較例14:BET比表面積=54.9m/g
実施例15:BET比表面積=54.7m/g
比較例15:BET比表面積=54.0m/g。
以上の結果から、金属塩溶液を高剪断速度の下で混合した後に高速で乾燥及び焼成して得た本発明の金属酸化物粉体においては、900℃における耐熱性が大幅に向上していることが確認された。また、実施例14の結果と実施例15の結果とを比較すると、金属塩溶液を高剪断速度の下で混合した後に高速で乾燥及び焼成することによって、得られる金属酸化物粉体の耐熱性が大幅に向上することが確認された。
<改質特性試験>
実施例2〜5及び比較例3〜8に記載の方法で前記金属製高密度ハニカムに金属酸化物被覆を担持せしめた触媒担体を用いて得た触媒について、以下のようにして改質特性を評価した。すなわち、先ず、金属酸化物被覆を担持せしめた各金属製高密度ハニカムをRh溶液に1時間浸漬し、取り出してからその表面の余剰溶液を重力及び振とうにより除去した。そして、その金属製高密度ハニカムを水平に置いた後、常温による緩やかな乾燥を5〜10分、風速2〜5m/sの温風(60〜100℃)による乾燥を5〜10分、空気雰囲気における300℃での焼成を約60分施し、更に風速2〜5m/sの常温風により5〜10分冷却した。このような処理を3回繰り返し、金属酸化物被覆を担持せしめた各金属製高密度ハニカムに0.1gのロジウムを担持せしめて水素生成反応用触媒を得た。
次に、このようにして得られた各水素生成反応用触媒を、赤外線イメージ炉において加熱し、改質燃料としてイソオクタンを用い、空間速度25000h−1、steam/carbon=2、oxide/carbon=0.1という条件で改質特性試験を実施した。また、温度条件としては出口温度を550℃に設定し、計測項目としては出口ガス成分(H、CO、CO、N、CH、HC、HO)とし、各成分の出口ガス濃度に基づいて以下の式により転化率を計算した。得られた転化率を図10に示す。また、出口ガス中のH濃度及びCH濃度を図11に示す。
転化率(%)=(CO、CO及びCH中のcarbon)/(イソオクタン中のcarbon)
図10及び図11に示した結果から明らかな通り、実施例2〜5及び比較例3〜8に記載の方法で得られた触媒担体を用いて得た本発明の水素生成反応用触媒においては、92%以上の高転化率と40質量%以上の高水素濃度とが同時に達成されており、非常に優れた改質特性を有するものであることが確認された。
<付着性試験>
実施例5及び比較例9に記載の方法で前記金属プレート、前記コージエライトプレート及びSiCプレート上にそれぞれ形成せしめた金属酸化物被覆(膜厚:約5μm)について、以下のようにして付着性を評価した。すなわち、表面に金属酸化物被覆を形成した各基板を超音波洗浄器にかけて30分間×4回超音波振動を与え、その間における薄膜の残存割合(重量基準)を測定した。
得られた結果を図12(実施例5)及び図13(比較例9)に示す。図12及び図13に示した結果から明らかな通り、コロイド溶液を高剪断速度の下で混合した後に基材に塗布して高速で乾燥及び焼成して得た本発明の水素生成反応用触媒担体においては、各種基材に対する付着性が大幅に向上していることが確認された。
また、実施例6〜8及び比較例10に記載の方法で前記金属プレート上に形成せしめた金属酸化物被覆についてもそれぞれ、上記と同様にして付着性を評価した。得られた結果(2時間後の残存割合(重量基準))を表15に示す。
表15に示した結果から明らかな通り、原料流体組成物を混合する際の剪断速度が増加するにしたがって得られた金属酸化物薄膜における基材に対する付着性が向上し、特に剪断速度が10000sec−1以上になると付着性が顕著に向上することが確認された。
<ナノ細孔の評価>
実施例1に記載の方法で得られた金属酸化物薄膜及び実施例9に記載の方法で得られた金属酸化物粉末について、以下のようにして窒素吸着法並びにX線小角散乱法によりナノ細孔を有することを確認した。
すなわち、窒素吸着法は、ある平衡蒸気圧にて固体表面に吸着されたガス量又は固体表面から脱離されたガス量を静的容積法によって測定する手法である。吸着質の臨界温度で一定温度に保持された固体試料の入ったサンプルセルに既知量の吸着ガスを導入するか、或いはサンプルセルから既知量の吸着ガスを除去することにより等温線データが得られる。平衡圧力にて吸着又は脱離されるガスの量は、導入又は除去されたガス量と試料周辺の空隙部を満たすのに必要なガス量との差に相当する。本測定では、QUANTACHROME社製全自動ガス吸着量測定装置(オートソーブ1MP/LP)を用いた。そして、0.05〜0.15gの試料を用い、測定温度−196℃、大気圧との相対圧力P/Pが0.00001〜1の範囲で窒素吸着測定を、その後継続してP/Pが0.01〜1の範囲で窒素の脱離測定を行った。窒素ガスの吸着量をプロットすることにより吸着等温線を得ることができ、BJH法と呼ばれる解析法により、細孔径分布を求めた。なお、BJH法とは、メソ細孔分布計算に最も有効なモデルであり、孔は全て円筒形であると仮定したモデルである。実施例1に記載の方法で得られた金属酸化物多孔体の測定結果を図14に示す。
また、X線小角散乱法には平行性とエネルギー密度に優れた放射光施設におけるアンジュレータービームラインのX線を用いた。X線エネルギーを10keV(波長0.124nm)に設定し、まず四象限スリットを用いて0.04mm□程度にX線ビームを絞り、小角散乱法のビームの起点とする。その起点から約65cm下流のところに直径0.5mmのピンホールを置いて余分な散乱光を遮るとともにそのすぐ下流に密着させて試料を設置した。X線の試料透過後の強度が1/e(eは自然対数の底)になるように吸収量を計算して試料の適正厚みを算出し、それに従って試料の圧粉体を作製した。試料から正確に50cm下流(起点から115cm下流)側にイメージングプレートを設置して散乱X線を記録した。透過X線の位置にはカバーガラスを重ねたアッテネーターを設置してイメージングプレートの損傷を防ぐとともに適当な強度で透過X線の位置がイメージングプレートに記録されるようにした。解析にあたっては、イメージングプレート上の透過X線位置を中心とした同心円上に記録されたX線強度の平均値を求め、同心円の半径を角度に換算して散乱角度対強度のグラフを描いた。試料内に球状の散乱体を仮定して散乱体半径の分布を適度に変化させ、前記散乱角度対強度のグラフを説明できる適当な分布を求めた。実施例9に記載の方法で得られた金属酸化物多孔体の測定結果を図15に示す。また、比較のため、バルク体である銅箔(厚さ6μm)及びアルミニウム箔(厚さ100μm)についての測定結果も図15に示す。
これらの図面、特に図15に示した結果から明らかな通り、本発明の方法により得られた本発明の金属酸化物多孔体には、直径が2nm以下という非常に微細なナノ細孔が形成されていることが確認された。
以上説明したように、本発明においては、金属酸化物のコロイド溶液や金属塩の溶液を高剪断速度の下で混合し、実質的に共沈させることなく熱処理するようにすることにより、驚くべきことに得られる金属酸化物は直径が10nm以下のナノ細孔を有し且つナノ細孔を構成する壁体において金属酸化物が均質に分散している従来にない新規なものとなり、各種基材に対する付着性及び耐熱性が向上し、更に薄膜化も可能となる。そして、本発明においては、かかる金属酸化物ナノ多孔体を構成する成分をジルコニア及びセリアを特定量含有するジルコニア/セリア2成分系又はジルコニア、セリア及びアルミナを特定量含有するジルコニア/セリア/アルミナ3成分系とすることによって水素生成反応における改質特性が非常に優れた水素生成反応用触媒が得られるようになる。
したがって、本発明は、燃料電池等の分離膜電池システムにおいて燃料となる水素を生成させるための水素生成反応用触媒を得るために非常に有用な技術である。
良好な元素分析が行えない場所の一例を示す透過型電子顕微鏡写真である。 EDXスペクトルの不良な測定結果の一例を示すグラフである。 良好な元素分析が行えた場所の一例を示す透過型電子顕微鏡写真である。 EDXスペクトルの良好な測定結果の一例を示すグラフである。 実施例2〜5及び比較例3〜8で得られた被覆の組成を示す三角図である。 混合工程における剪断速度と金属酸化物の均質分散性との関係を示すグラフである。 混合工程における剪断速度と金属酸化物の均質分散性との関係を示すグラフである。 耐熱性試験(実施例1と比較例1と比較例2との比較)の結果を示すグラフである。 耐熱性試験(実施例14と比較例2との比較)の結果を示すグラフである。 改質特性試験の結果(転化率)を示すグラフである。 改質特性試験の結果(水素及びメタン濃度)を示すグラフである。 付着性試験(実施例5)の結果を示すグラフである。 付着性試験(比較例9)の結果を示すグラフである。 窒素吸着法で求めた金属酸化物多孔体の細孔径分布を示すグラフである。 X線小角散乱法で求めた金属酸化物多孔体の細孔径分布を示すグラフである。

Claims (20)

  1. 2種以上の金属酸化物により構成される金属酸化物ナノ多孔体であって、
    前記ナノ多孔体におけるセリアの含有量が10〜60質量%、ジルコニアの含有量が20〜90質量%、アルミナの含有量が70質量%以下であり、前記ナノ多孔体は直径が10nm以下のナノ細孔を有しており、且つ、前記ナノ細孔を構成する壁体において前記金属酸化物が均質に分散していることを特徴とする金属酸化物ナノ多孔体。
  2. 前記ナノ多孔体は、ジルコニアコロイド粒子及び/又はジルコニウム塩溶液と、セリアコロイド粒子及び/又はセリウム塩溶液とを含有する原料流体組成物を、1000sec−1以上の剪断速度の下で混合した後、実質的に共沈させることなく熱処理して得たものであることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物ナノ多孔体。
  3. 前記原料流体組成物中に、アルミナコロイド粒子及び/又はアルミニウム塩溶液が更に含有されていることを特徴とする請求項2に記載の金属酸化物ナノ多孔体。
  4. 前記ナノ多孔体中に、平均粒径が0.01〜50μmであるジルコニア粉末、セリア粉末及びアルミナ粉末からなる群から選択される少なくとも一つの粉末が更に含有されていることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の金属酸化物ナノ多孔体。
  5. 前記ナノ多孔体に10at%以上含有されるすべての金属酸化物の金属元素について、加速電圧200kV、電子ビーム径1.0nmの透過型電子顕微鏡を用いて被検試料の厚さが略一定とみなせる領域にある測定点においてエネルギー分散型X線分光法によりスペクトルを求め、得られたスペクトル中の各金属元素の蛍光X線ピークの積分強度を相対比に変換して求められる相対強度比Xの平均値Xと平均値Xのまわりの二次のモーメントνとが、前記金属元素のすべてについて下記式(1):
    ν/X ≦0.02 (1)
    [式(1)中、XはX=(ΣX)/N(Nは測定点の数)で表される相対強度比Xの平均値、νはν={Σ(X−X}/Nで表される平均値Xのまわりの二次のモーメント、ν/X は平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントを示す。]
    で表される条件を満たしていることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の金属酸化物ナノ多孔体。
  6. 前記ナノ多孔体に10at%以上含有されるすべての金属酸化物の金属元素について、加速電圧15kV、電子ビーム径1μmのX線マイクロアナライザーを用いて0.5mm以上の範囲を任意に線分析して求めた下記式(2):
    K値(%)=(多孔体から検出されたX線強度)/(純物質から得られるX線強度)
    で表されるK値が、前記金属元素のすべてについて、全測定点のうちの65%以上の測定点において下記式(3):
    [式(3)中、Kは各測定点におけるK値(%)、Kは全測定点におけるK値の平均値をそれぞれ示す。但し、前記ナノ多孔体に形成されている亀裂に相当する部分については測定点から除く。]
    で表される条件を満たしていることを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の金属酸化物ナノ多孔体。
  7. 走査型プローブ顕微鏡にて5nmの曲率半径を有するチップを用いて、3nm以上4nm未満の間隔で前記ナノ多孔体の表面の高さ像をタッピングモードで任意に計測し、総計で2μm以上の走査距離Lの関数として求めた高さ像H(L)が、全測定点のうちの80%以上の測定点において下記式(4):
    H(L)≦20nm (4)
    [式(4)中、H(L)は各測定点(走査距離=L)における高さ像(nm)を示す。但し、全測定点における高さ像Hの平均値を零とする。]
    で表される条件を満たしており、且つ、下記式(5)及び(6):
    [式(5)及び(6)中、H(L)は走査距離=Lの測定点における高さ像(nm)、H(L+ΔL)は走査距離=L+ΔLの測定点における高さ像(nm)、ΔLは測定点の間隔(nm)、H’(L)は高さ像H(L)の一次微係数、H’(L+ΔL)は高さ像H(L+ΔL)の一次微係数、H”(L)は高さ像H(L)の二次微係数をそれぞれ示す。但し、ΔLは測定点間の直線補間により4nmとする。]
    により求めた二次微係数H”(L)が、全測定点のうちの60%以下の測定点において下記式(7):
    −0.05nm−1≦H”(L)≦0.05nm−1 (7)
    で表される条件を満たしていることを特徴とする請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の金属酸化物ナノ多孔体。
  8. 前記ナノ多孔体の断面の電子顕微鏡写真において、前記ナノ多孔体の上に任意に総計で400μm以上の測定直線を描いた際に、前記測定直線が前記ナノ多孔体に形成されている空隙部と交差している部分の長さの比率が、前記測定直線の全長の10%以下であるという条件を満たしていることを特徴とする請求項1〜7のうちのいずれか一項に記載の金属酸化物ナノ多孔体。
  9. 前記ナノ多孔体に10at%以上含有されるすべての金属酸化物の金属元素について、加速電圧200kV、電子ビーム径1.0nmの透過型電子顕微鏡を用いて任意に10以上の測定点においてエネルギー分散型X線分光法によりスペクトルを求め、得られたスペクトル中の各金属元素の蛍光X線ピークの積分強度を相対比に変換して求められる相対強度比Xの平均値Xと平均値Xのまわりの二次のモーメントνとが、前記金属元素のすべてについて下記式(8):
    ν/X ≦0.1 (8)
    [式(8)中、XはX=(ΣX)/N(Nは測定点の数)で表される相対強度比Xの平均値、νはν={Σ(X−X}/Nで表される平均値Xのまわりの二次のモーメント、ν/X は平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントを示す。]
    で表される条件を満たしていることを特徴とする請求項1〜8のうちのいずれか一項に記載の金属酸化物ナノ多孔体。
  10. 前記ナノ多孔体の表面に担持されている貴金属を更に備えることを特徴とする請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の金属酸化物ナノ多孔体。
  11. 基材と、前記基材の表面上に形成された2種以上の金属酸化物により構成される金属酸化物ナノ多孔体からなる被覆とを備える触媒担体であって、
    前記ナノ多孔体におけるセリアの含有量が10〜60質量%、ジルコニアの含有量が20〜90質量%、アルミナの含有量が70質量%以下であり、前記ナノ多孔体は直径が10nm以下のナノ細孔を有しており、且つ、前記ナノ細孔を構成する壁体において前記金属酸化物が均質に分散していることを特徴とする触媒担体。
  12. 前記ナノ多孔体は、ジルコニアコロイド粒子及び/又はジルコニウム塩溶液と、セリアコロイド粒子及び/又はセリウム塩溶液とを含有する原料流体組成物を、1000sec−1以上の剪断速度の下で混合した後、実質的に共沈させることなく前記基材に塗布した後に熱処理して得たものであることを特徴とする請求項11に記載の触媒担体。
  13. 前記原料流体組成物中に、アルミナコロイド粒子及び/又はアルミニウム塩溶液が更に含有されていることを特徴とする請求項12に記載の触媒担体。
  14. 前記ナノ多孔体中に、平均粒径が0.01〜50μmであるジルコニア粉末、セリア粉末及びアルミナ粉末からなる群から選択される少なくとも一つの粉末が更に含有されていることを特徴とする請求項11〜13のうちのいずれか一項に記載の触媒担体。
  15. 前記ナノ多孔体に10at%以上含有されるすべての金属酸化物の金属元素について、加速電圧200kV、電子ビーム径1.0nmの透過型電子顕微鏡を用いて被検試料の厚さが略一定とみなせる領域にある測定点においてエネルギー分散型X線分光法によりスペクトルを求め、得られたスペクトル中の各金属元素の蛍光X線ピークの積分強度を相対比に変換して求められる相対強度比Xの平均値Xと平均値Xのまわりの二次のモーメントνとが、前記金属元素のすべてについて下記式(1):
    ν/X ≦0.02 (1)
    [式(1)中、XはX=(ΣX)/N(Nは測定点の数)で表される相対強度比Xの平均値、νはν={Σ(X−X}/Nで表される平均値Xのまわりの二次のモーメント、ν/X は平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントを示す。]
    で表される条件を満たしていることを特徴とする請求項11〜14のうちのいずれか一項に記載の触媒担体。
  16. 前記ナノ多孔体に10at%以上含有されるすべての金属酸化物の金属元素について、加速電圧15kV、電子ビーム径1μmのX線マイクロアナライザーを用いて0.5mm以上の範囲を任意に線分析して求めた下記式(2):
    K値(%)=(多孔体から検出されたX線強度)/(純物質から得られるX線強度)
    で表されるK値が、前記金属元素のすべてについて、全測定点のうちの65%以上の測定点において下記式(3):
    [式(3)中、Kは各測定点におけるK値(%)、Kは全測定点におけるK値の平均値をそれぞれ示す。但し、前記ナノ多孔体に形成されている亀裂に相当する部分については測定点から除く。]
    で表される条件を満たしていることを特徴とする請求項11〜15のうちのいずれか一項に記載の触媒担体。
  17. 走査型プローブ顕微鏡にて5nmの曲率半径を有するチップを用いて、3nm以上4nm未満の間隔で前記ナノ多孔体の表面の高さ像をタッピングモードで任意に計測し、総計で2μm以上の走査距離Lの関数として求めた高さ像H(L)が、全測定点のうちの80%以上の測定点において下記式(4):
    H(L)≦20nm (4)
    [式(4)中、H(L)は各測定点(走査距離=L)における高さ像(nm)を示す。但し、全測定点における高さ像Hの平均値を零とする。]
    で表される条件を満たしており、且つ、下記式(5)及び(6):
    [式(5)及び(6)中、H(L)は走査距離=Lの測定点における高さ像(nm)、H(L+ΔL)は走査距離=L+ΔLの測定点における高さ像(nm)、ΔLは測定点の間隔(nm)、H’(L)は高さ像H(L)の一次微係数、H’(L+ΔL)は高さ像H(L+ΔL)の一次微係数、H”(L)は高さ像H(L)の二次微係数をそれぞれ示す。但し、ΔLは測定点間の直線補間により4nmとする。]
    により求めた二次微係数H”(L)が、全測定点のうちの60%以下の測定点において下記式(7):
    −0.05nm−1≦H”(L)≦0.05nm−1 (7)
    で表される条件を満たしていることを特徴とする請求項11〜16のうちのいずれか一項に記載の触媒担体。
  18. 前記ナノ多孔体の断面の電子顕微鏡写真において、前記ナノ多孔体の上に任意に総計で400μm以上の測定直線を描いた際に、前記測定直線が前記ナノ多孔体に形成されている空隙部と交差している部分の長さの比率が、前記測定直線の全長の10%以下であるという条件を満たしていることを特徴とする請求項11〜17のうちのいずれか一項に記載の触媒担体。
  19. 前記ナノ多孔体に10at%以上含有されるすべての金属酸化物の金属元素について、加速電圧200kV、電子ビーム径1.0nmの透過型電子顕微鏡を用いて任意に10以上の測定点においてエネルギー分散型X線分光法によりスペクトルを求め、得られたスペクトル中の各金属元素の蛍光X線ピークの積分強度を相対比に変換して求められる相対強度比Xの平均値Xと平均値Xのまわりの二次のモーメントνとが、前記金属元素のすべてについて下記式(8):
    ν/X ≦0.1 (8)
    [式(8)中、XはX=(ΣX)/N(Nは測定点の数)で表される相対強度比Xの平均値、νはν={Σ(X−X}/Nで表される平均値Xのまわりの二次のモーメント、ν/X は平均値Xの二乗で規格化した二次のモーメントを示す。]
    で表される条件を満たしていることを特徴とする請求項11〜18のうちのいずれか一項に記載の触媒担体。
  20. 請求項11〜19のうちのいずれか一項に記載の触媒担体と、前記触媒担体の表面に担持される貴金属を備えることを特徴とする水素生成反応用触媒。
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