JP2006231523A - サーマルヘッド - Google Patents

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Naoki Takojima
直樹 田古嶋
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Abstract

【課題】信頼性が高く高品位の耐磨耗層を有するサーマルヘッドを提供すること。
【解決手段】支持基板11と、この支持基板11上に形成した発熱抵抗体12と、この発熱抵抗体12上に形成され、発熱抵抗体12の発熱部12aに電流を供給する電極13と、発熱抵抗体12の発熱部12aを被覆する保護層14と、この保護層14上に形成した耐摩耗層15とを具備するサーマルヘッドにおいて、耐磨耗層15の少なくとも表面領域は窒化金属を主成分とする金属膜であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は画像記録デバイスとして使用するサーマルヘッドに関する。
サーマルヘッドは、ヘッド基板部に設けた発熱抵抗体を発熱させ、感熱紙や製版フィルム、印画紙、メディアなどに文字などを記録する画像記録デバイスとして使用されている。また、低騒音で、低ランニングコストなどの利点を有し、近年、ビデオプリンターやイメージャー、シールプリンターなどの出力用デバイスとしても注目されている。
従来のサーマルヘッドは支持基板などから構成されている。支持基板は、セラミックなどの絶縁基板上にグレーズ層を設けた構造をしている。そして、支持基体上に、発熱抵抗体および電極が順に設けられ、電極を通して発熱抵抗体の発熱部に電流を流し、発熱部を加熱する構成になっている。また、発熱部を保護する保護層が発熱部上に設けられ、保護層上には、保護層の摩耗を防止する耐磨耗層が設けられている。保護層はたとえばSi−O−Nを主成分とする膜で形成され、耐磨耗層はたとえばSi−Cの膜で形成されている。
上記した構成において、記録紙などの記録媒体に印字する場合、発熱部近傍の耐磨耗層上に沿って記録媒体を移動させる。これと同時に、発熱部に電流を流して加熱させ、その熱により記録媒体への印字が行われる。
従来のサーマルヘッドは、保護層上に耐磨耗層を設けず、たとえば保護層が最上層に位置する場合、記録媒体に剛性があるため、印字の際に、記録媒体との接触で保護層が磨耗する。このため、発熱部近傍に位置する電極のリードエッジ部の段差部分における保護層の被覆性が低下する。その結果、電極に腐食が発生したり、発熱部の抵抗値が変化したりして、サーマルヘッドの不良原因になる。
そこで、従来のサーマルヘッドでは、保護層の摩滅を防止するために、たとえばスパッタリングなどで保護層上にSiCなどからなる硬質膜の耐磨耗層を設けている。しかし、SiCなどの耐磨耗層は、磨耗レートが保護層の半分程度で、十分な耐磨耗強度が得られない。また、耐磨耗層をスパッタリングで形成した場合、中間層の形成が困難なため、SiCなどの耐磨耗層と保護層との密着性が悪く、耐磨耗層に浮きや剥れなどの欠陥が発生する。
本発明は、上記した欠点を解決し、信頼性が高く高品位の耐磨耗層を有するサーマルヘッドを提供することを目的とする。
本発明は、支持基板と、この支持基板上に形成した発熱抵抗体と、この発熱抵抗体上に形成され、前記発熱抵抗体の発熱部に電流を供給する電極と、前記発熱抵抗体の発熱部を被覆する保護層と、この保護層上に形成した耐摩耗層とを具備するサーマルヘッドにおいて、前記耐磨耗層の少なくとも表面領域は窒化金属を主成分とする金属膜であることを特徴とする。
本発明によれば、保護層上に設ける耐摩耗層の少なくともその表面領域が窒化金属を主成分とする金属膜で形成され、良好な耐磨耗特性を有するサーマルヘッドが実現する。
本発明の第1実施形態について、ヘッド基板の一部を抜き出した図1を参照して説明する。図1(a)は上面図、図1(b)は、図1(a)の線分b−bにおける断面図、図1(c)は図1(b)の一部を抜き出した断面図である。
支持基板11は、たとえばセラミックなどの絶縁基板11a上に、蓄熱層および平滑層として機能するグレーズ層11bを設けた構造になっている。支持基板11上に発熱抵抗体12を形成し、発熱抵抗体12上に電極13を設けている。電極13は個別電極13aと共通電極13bとの対を有し、複数対の個別電極13aおよび共通電極13bがたとえば平行に配置されている。個別電極13aと共通電極13bとの間に間隙Gが設けられ、間隙G部分に位置する発熱抵抗体12は発熱部12aとして機能する。また、少なくとも発熱部12a上、たとえば発熱部12a上およびその近傍の電極13上の必要部位に、Si−O−Nを主成分とする保護層14が形成されている。また、保護層14上の一部、たとえば発熱部12aの上方部分に耐磨耗層15が形成されている。保護層14はたとえばSi−Cから形成され、耐磨耗層15のたとえば最表層は窒化金属を主成分とする金属膜から形成されている。
耐磨耗層15は、図1(c)に示すように積層構造で形成され、たとえば保護層14側に位置する第1層151と、第1層151上、たとえば第1層151よりも保護層14から遠い外側に第2層152とから形成されている。
ここで、上記したサーマルヘッドの製造方法について説明する。
セラミックなどの絶縁基板11a上に焼結でグレーズ層11bを形成し、支持基板11を形成する。その後、支持基板11上にスパッタリングで発熱抵抗体膜を成膜し、さらに発熱抵抗体膜上にスパッタリングで電極膜を成膜する。その後、フォトリソグラフィ技術によりパターニングを行い、発熱抵抗体12および電極13、たとえば個別電極13aや共通電極13bなどの各パターンを形成する。このとき、個別電極13aと共通電極13bとの間に間隙Gを設け、発熱抵抗体12の間隙G部分に発熱部12aを形成する。その後、少なくとも発熱抵抗体12の発熱部12aを被覆するように、たとえば発熱部12a上およびこの発熱部12a近傍の電極13上の必要部位に、Si−O−N系からなる絶縁材料の保護層14をスパッタリングで形成する。その後、保護層14上に、たとえば積層構造の耐磨耗層15を形成する。
ここで、耐磨耗層15の形成方法について説明する。耐磨耗層15の成膜に先だち、チャンバー内を1×10-4Pa程度の高真空に排気する。その後、アルゴンガスを導入し、発熱抵抗体12および電極13、保護層14などを設けたヘッド基板側に約−100V程度の逆バイアス電位を印加し、その表面をエッチクリーニングする。その後、Tiを原料にしてホローカソードでTiを蒸発させて約0.3μm成膜し、耐磨耗層15の第1層151部分を形成する。その後、基板バイアスで電圧を印加しながら窒素ガスをチャンバー内に導入し、TiN膜を約1.0μm成膜し、耐磨耗層15の第2層152部分を形成し、合計で約1.3μmの耐磨耗層15を成膜する。
上記の耐磨耗層15は、保護層14側に位置する第1層151をTiで成膜し、第1層151よりも外側に位置する第2層152をTiNで成膜している。しかし、Tiに代えてCrを用いることもできる。また、Ti(1-x) Cr(x) (X=0〜1)で表されるTiおよびCrの両方の金属を用いることもできる。
この場合、第1層151は、硬度の大きい窒化金属の第2層152と保護層14との密着性を高める中間層として機能し、たとえばTi(1-x) Cr(x) (X=0〜1)で表される金属成分が95atm%以上であることが望ましい。また、第2層152は耐磨耗性を確保するために、Ti(1-x) Cr(x) (X=0〜1)で表される高硬度の金属成分が30atm%以上で、残部は実質窒素を主成分とすることが望ましい。また、導電率を制御する目的で、C(カーボン)を10atm%程度混入する場合がある。
次に、上記した耐磨耗層15の特性について、図2の特性図を参照して説明する。図2の横軸は走行距離(m)、縦軸は摩耗量(μm)である。
ここでは、耐磨耗層のない保護層のみの構造(サンプルA)、および、保護層上にSiCの耐磨耗層を設けた従来構造(サンプルB)、保護層上にTiNなどの耐磨耗層を1.3μm成膜した発明構造(サンプルC)の各サンプルを用意し、各サンプルについて磨耗レートの測定結果を、それぞれ符号A〜Cに示している。サンプルCは、図1で説明した方法で製造し、耐磨耗層に中間層を設けた構造になっている。磨耗レートの測定は、印字試験機に各サンプルをセットし、プラテンローラーによってラッピングテープ(#4000)をサーマルヘッド上に通過させ、走行前後における磨耗量を表面粗さ計で測定した。
図2に示すように、サンプルCは、磨耗レートがサンプルAの約1/4で、耐磨耗性は4倍になっている。サンプルBは約4000mで耐磨耗層が摩滅し、保護膜が露出した。サンプルCは約8000mまで耐磨耗層が残り、磨耗レートはサンプルBの約1/2になっている。
上記の試験では、耐磨耗層に中間層のない構造(サンプルD)についても耐磨耗レートを測定した。サンプルDは、磨耗試験中にTiN膜の一部が保護層との界面から剥れたため、その時点で評価を中止した。
これは、硬度の高いTiN膜などを保護層上に直接成膜すると、膜内に大きな応力が発生し、剥れが発生すると考えられる。したがって、硬度の高い耐磨耗層、たとえばTiN膜を設ける場合は、保護層とTiN膜との間の応力を緩和するために、たとえばTiなどの中間層を設けることが望ましい。
また、サンプルAとサンプルBは、試験中に、発熱抵抗体の静電破壊と思われる保護層の剥れが発生した。しかし、2つのサンプルC、Dには保護層の剥れは発生しなかった。これは、耐磨耗層の表面を形成するTiNの表面抵抗が数Ωと小さく、また耐磨耗層を共通電極と電気的に接続したため、TiN膜が、発熱抵抗体などに蓄積する電荷を放電する除電層として機能したことによると考えられる。
次に、保護層として使用するSi−O−Nを主成分とする保護膜、および従来の耐磨耗層に使用しているSiC膜、発明の耐磨耗層に使用する窒化金属膜(CrN、TiN)のビッカース硬度(Hv)を図3の特性図に示す。
図3に示すように、窒化金属膜のビッカース硬度はSiC膜よりも高くなっている。とくにTiN膜は保護層やSiC膜よりも硬度が高く、耐磨耗性が大きくなっている。
次に、石英基板上に、SiC膜、TiN膜−A、TiN膜−Bを1μmの厚さに成膜した場合の引掻き破壊強度を図4の特性図に示す。TiN膜−AはTiからなる中間層を設けた構造で、TiN膜−Bは中間層のない構造である。また、保護層およびSiC膜はスパッタリングで、TiN膜はA、Bともイオンプレーティングである。TiN膜の成膜にイオンプレーティングを用いた理由は、Tiタ一ゲットを用いるスパッタリングに比べて、窒素(N)のイオン化率が高く、Ti:N比がほぼ50:50で、大きな耐磨耗性が得られると考えたためである。
たとえば、実際に成膜したTiN膜を、ESCA(Electron Sectroscoy for Chemical Anarysis)により定量分析すると、Ti量が45〜60atm%となっていた。
また、引掻き破壊試験は、R=0.05mmのダイアモンド針を膜上にセットし、0〜500gfまで連続して荷重をかけた場合の破断荷重を測定している。
図4に示すように、TiN−A、BはSiCより付着力が高くなっている。また、Tiの中間層を設けたTiN−Aの方が、中間層を設けないTiN−Bよりも付着力が高くなっている。したがって、サーマルヘッド上に窒化金属層として、たとえばTiN膜を形成する場合、Tiの中間層を設けた方が付着力が強くなる。
また、窒化金属層をたとえばTiN膜で形成する場合、中間層のTi膜の厚さが耐磨耗層全体の30%以下でTiN膜の剥れは発生しなかった。たとえば中間層が厚くなると、その分、硬度の大きい窒化金属の厚さが薄くなり耐磨耗性が低下するため、中間層は最大でも耐磨耗層全体の30%が望ましい。
また、耐磨耗層の膜厚は3μmを超えると、内部応力により自己破壊が発生する。したがって膜厚の上限値は3.0μmが望ましい。一方、耐磨耗層に求められる最低限の耐磨耗性を維持するために下限値は0.5μmが望ましい。
また、耐磨耗層をサーマルヘッドの共通電極などに接続し、あるいは、接地電位に接続すると、耐磨耗層が除電層として機能し、保護層などの静電破壊などを防止でき、高信頼性で高品質のサーマルヘッドが得られる。
本発明の実施形態を説明するための概略構造図である。 本発明の特性を説明するための特性図である。 本発明の他の特性を説明するための特性図である。 本発明の他の特性を説明するための特性図である。
符号の説明
11…支持基板
11a…絶縁基板
11b…グレーズ層
12…発熱抵抗体
12a…発熱抵抗体の発熱部
13…電極
13a…個別電極
13b…共通電極
14…保護層
15…耐磨耗層
151…耐磨耗層の第1層部分
152…耐磨耗層の第2層部分

Claims (3)

  1. 支持基板と、この支持基板上に形成した発熱抵抗体と、この発熱抵抗体上に形成され、前記発熱抵抗体の発熱部に電流を供給する電極と、前記発熱抵抗体の発熱部を被覆する保護層と、この保護層上に形成した耐摩耗層とを具備するサーマルヘッドにおいて、前記耐磨耗層の少なくとも表面領域は窒化金属を主成分とする金属膜であることを特徴とするサーマルヘッド。
  2. 耐磨耗層の窒化金属の金属成分はTiおよびCrの少なくとも1つである請求項1記載のサーマルヘッド。
  3. 耐磨耗層は積層構造で、TiおよびCrの少なくとも1つを主成分とする第1層と、この第1層の外側に位置し、TiおよびCrの少なくとも1つの金属成分が前記第1層よりも少ない第2層とを有する請求項1記載のサーマルヘッド。
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