JP2006230255A - 新規微生物 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境汚染物質の微生物分解を促進するための手段を提供して汚染環境を浄化する。また、汚染環境のモニタリング、評価等を簡便迅速に行うための手段を提供する。
【解決手段】
Thalassospira属に属する新規微生物を単離し、該微生物、および/または該微生物を環境汚染物質分解微生物に加えた汚染物質分解微生物コンソーシアを用いて、上記環境汚染物質を分解、浄化する。また、該新種微生物の16S rRNA遺伝子または16S rRNAから調製したプローブを用いて 環境汚染物質分解促進能を有する細菌の検出・定量を簡便迅速に行うとともに、汚染環境のモニタリング、評価を行う。

Description

本発明は、環境汚染物質の分解、除去を促進することのできるThalassospira属に属する新種の細菌自体、該細菌を利用した多環芳香族炭化水素(PAH)等の有害環境汚染物質で汚染された水または土壌の浄化方法、Thalassospira属細菌の検出、定量方法、石油等有害物質汚染環境のモニタリング、解析・評価、診断する方法、及び有害物質汚染環境の浄化・修復過程を解析・評価する方法に関する。
石油による海洋の汚染は海洋の生態系や水産生物などに悪影響を及ぼすことなどから世界的な環境問題となっている。
海洋に流出した石油はオイルフェンス、油回収機、油吸着材などによる物理的回収法と油ゲル化剤、乳化分散剤等の油処理剤による化学的処理方法がある(非特許文献1参照)。
物理的処理は海洋生態系に及ぼす影響は少ないと思われるが、化学的処理は油処理剤等の毒性や海洋生物など生態系への影響を十分考慮する必要がある。しかし、このような物理的・化学的な除去・処理を行っても完全ではなく、未回収の流出油は蒸発したり、光や酸素による物理・化学的な変化を受けるが、最終的には海水や海底堆積物中の微生物の生分解性に基づく自然生態系の自浄作用によって分解される(非特許文献2参照)。
近年、このような微生物を利用した環境調和型の生物学的油濁浄化技術(バイオレメディエーション)の開発が注目されている(非特許文献3、4参照)。このバイオレメディエーション技術は自然界で営まれている微生物による生分解プロセスを促進させて汚染物質を分解除去する技術である。
そこで、バイオレメディエーション技術を開発するためには、現場環境における石油等の有害環境汚染物質分解微生物や汚染物質分解促進微生物の分布や種類、およびその分解能や分解促進メカニズムなどを調べ、有害物質汚染環境に対する自然浄化能の見積もりやそのメカニズムを解明する必要がある。さらに、バイオレメディエーション技術を適用するためには、有害物質汚染環境中の微生物相や有害物質分解微生物や有害物質分解促進微生物のモニタリング、解析・評価やバイオレメディーエション技術による有害物質汚染環境の浄化・修復過程を的確に解析・評価する方法が求められている。
例えば、原油は複雑な数千にも及ぶ各種の炭化水素の混合物であり、石油中に存在する炭化水素は化学構造によって、飽和炭化水素と芳香族炭化水素に分けられるが、さらに前者はパラフィン(n-パラフィン、分枝パラフィン)とシクロパラフィン(単環、多環)に、後者は単環と多環芳香族炭化水素に分類されている(非特許文献5参照)。 また石油は炭化水素組成により、飽和分(SA)、芳香族分(AR)、レジン分(RE)、アスファルテン分(AS)にも分けることもできる(非特許文献6参照 )。
微生物によるこれらの炭化水素の分解性は一般にn-アルカン>分枝アルカン>低分子量芳香族炭化水素>シクロアルカンの順に低下する(非特許文献7参照)。 現場環境に流出した石油の微生物分解は最初に易分解性の飽和分や低分子量芳香族炭化水素の分解が起こり、非常に分子量の大きい芳香族炭化水素、RE、ASは分解され難く、その生分解速度はきわめて遅いといわれている(非特許文献8参照)。
重油など重質油に含まれるPAHは発ガン性、変異原性を有し、難分解性であることから、これらを短期間で効率的に分解する微生物や安全な環境調和型の生物学的分解・除去技術の確立が求められている。
さて、海洋環境から分離された石油分解微生物は、細菌25属、菌類27属、放線菌など多くの属種が知られている(非特許文献2参照)。最近、新属新種でPAHを特異的に分解するCycloclasticus pugetii (非特許文献9参照)、また脂肪族炭化水素を分解するAlcanivorax borkumensis(非特許文献10参照)どが報告されている。また、海洋環境から分離されたPAH分解細菌としては、これまでにCycloclasticus pugetii 以外にSphingomonas sp. AJ1(非特許文献11参照)、Neptunomonas naphovorans(非特許文献12)、Lutibacterium anuloederans(非特許文献13参照)およびVibrio cyclotrophicus(非特許文献14参照)などいくつかの報告がある。
以上ことから、微生物による石油等環境汚染物質の分解、除去は、単一種の微生物ではなく、汚染環境現場に生息する微生物群集中の種々の微生物の協同作用によって行われるものと思われる(非特許文献2参照)。
例えば、海洋に流入した石油中の直鎖状炭化水素、n-アルカンの場合、石油分解微生物によりアルコール、アルデヒド、脂肪酸などを経由して逐次酸化、分解される(非特許文献15参照)。また、石油成分のPAHの一つであるフェナントレン(PHE)の場合は、例えばPseudomonas sp.により、主として3, 4- ジヒドロキシフェナントレン、1,2-ジヒドロキシナフタレンサルチル酸、カテコールなどを経由して分解される(非特許文献16参照)。このように、石油成分は最初に石油分解微生物により酸化、分解され、種々の分解代謝中間物が生成されるが、これらの分解代謝物は石油分解菌以外の様々な分解菌によっても利用、分解され、最終的に石油は微生物菌体と炭酸ガスに分解、浄化される(非特許文献2参照)。
上記のことから、最近複数の分解細菌から構成されている微生物コンソーシアによる原油の分解に関する研究が行われている(非特許文献17参照)。また、内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)作用が疑われているノニルフェノール(NP)分解菌、Sphingomonas属細菌によるNPの分解は、NP分解細菌単一種の純粋培養系より、NP分解細菌とNP非分解細菌の混合培養系の方が、NPが速やかに分解されるといわれている(非特許文献18参照)。
以上は主として石油汚染について述べたが、このほかにも化学薬品の流出事故あるいは工場排水、廃棄物の投棄に伴う有害物質による環境汚染等に対しても早急な対策を講ずる必要がある。この場合においても、前記PAH乃至環境ホルモン等を有効に分解する技術の重要性はますます増大しており、そのための有用細菌の探索も盛んに行われている。 そして、これらの環境汚染浄化技術における有用微生物の探索には、該探索を迅速、簡便かつ正確に行えるような探索技術が望まれている。
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本発明は、特に、流出石油あるいは廃棄物等に含まれるPAH等環境汚染物質の分解を促進するThalassospira属に属する新種の細菌、該環境汚染物質で汚染された水または土壌の浄化方法を提供することにある。また、本発明はThalassospira属に属する上記新種の細菌、あるいはPAH等有害環境汚染物質の分解を促進する細菌の検出、定量方法、石油、廃棄物等による有害物質汚染環境のモニタリング、解析・評価、診断する方法、ならびにバイオレメディーエション技術による有害物質汚染環境の浄化・修復過程を解析・評価する方法を提供するものである。
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を行った結果、日本海流出重油汚染沿岸海域の海水からPAH分解を促進するThalassospira属に属する新種の細菌を見出し、さらに当該細菌を特異的に検出、定量できる遺伝子プローブの作製に成功して本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は新規微生物および /または新規微生物と環境汚染物質分解微生物の複合微生物機能を用いた石油等有害物質汚染環境の浄化方法、ならびに上記新規微生物、あるいはThalassospira属に属する有用細菌の検出、定量方法を提供するものである。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1) Thalassospira属に属する微生物であって、16S rRNA遺伝子の塩基配列が、配列番号1に記載の塩基配列と97%以上の相同性を示すことを特徴とする微生物。
(2) Thalassospira sp. MAI8菌株。
(3) 上記(1)または(2)に記載の微生物と環境汚染物質分解能を有する微生物が共存していることを特徴とする、混合培養物。
(4) 環境汚染物質分解能を有する微生物がSphingomonas属、Sphingobium属、Novosphingobium属および Shpingopyxis属の細菌であることを特徴とする、請求項3に記載の混合培養物。
(5) 環境汚染物質分解能を有する微生物が炭化水素分解能を有する微生物であることを特徴とする、上記(3)に記載の混合培養物。
(6) 炭化水素分解能を有する微生物がSphingomonas属、Sphingobium属、Novosphingobium属および Shpingopyxis属の細菌であることを特徴とする、上記(5)に記載の混合培養物。
(7) 配列番号1の塩基配列を有する16S rRNA遺伝子。
(8) 配列番号1の塩基配列の一部を有し、かつ塩基長10〜50bpのDNA、または該DNAに相当するリボヌクレオチド配列を有するRNAからなることを特徴とする、DNAまたはRNAプローブ。
(9) 上記(1)または(2)に記載の微生物由来のDNAまたはRNAと特異的にハイブリダイズすることを特徴とする、上記(8)に記載のプローブ。
(10) 配列番号2または3に記載の塩基配列、または該塩基配列に対応するリボヌクレオチド配列を有することを特徴とする、DNAまたはRNAプローブ。
(11) Thalassospira属に属する環境汚染物質分解促進細菌を検出または定量するために用いることを特徴とする、上記(8)〜(10)のいずれかに記載のDNAまたはRNAプローブ。
(12) Thalassospira属に属する環境汚染物質分解促進細菌が石油分解促進細菌であることを特徴とする、上記(8)〜(10)のいずれかに記載のDNAまたはRNAプローブ。
(13) Thalassospira sp.MAI8菌株を検出および/または定量するために用いることを特徴とする、上記(8)〜(10)のいずれかに記載のDNAまたはRNAプローブ。
(14) 上記(8)〜(10)のいずれかに記載のRNAまたはDNAプローブを用いて、Thalassospira属 に属する細菌を検出および/または定量する方法。
(15) 検出または定量される細菌が、Thalassospira属に属する環境汚染物質分解促進細菌であることを特徴とする上記(14)に記載の方法。
(16) Thalassospira属に属する環境汚染物質分解促進細菌が石油分解促進細菌であることを特徴とする、上記(15)に記載の方法。
(17) 検出および/または定量される細菌が上記(1)または(2)に記載の微生物であることを特徴とする、上記(14)に記載の方法。
(18) 上記(8)〜(10)のいずれかに記載のRNAまたはDNAプローブを用いて、Thalassospira属に属する有用細菌をスクリーニングする方法。
(19)スクリーニングされる細菌がThalassospira属に属する環境汚染物質分解促進細菌であることを特徴とする、上記(18)記載の方法。
(20) Thalassospira属に属する環境汚染物質分解促進細菌が石油分解促進細菌であることを特徴とする、上記(19)に記載の方法。
(21) スクリーニングされる細菌が上記(1)または(2)に記載の微生物であることを特徴とする、上記(19)に記載の方法。
(22) 配列番号1の塩基配列との相同性、または上記(9)〜(11)のいずれかに記載のRNAまたはDNAプローブを用いたDNA/DNAまたはDNA/RNAハイブリダイゼーション、または該DNAプローブをプライマーとして用いてPCRを行うことを特徴とする、上記(1)または(2)のいずれかに記載のThalassospira属細菌を同定する方法。
(23) 同定される細菌がThalassospira属に属する環境汚染物質分解促進細菌であることを特徴とする、上記(22)に記載の方法。
(24) Thalassospira属に属する環境汚染物質分解促進細菌が石油分解促進細菌であることを特徴とする、上記(23)に記載の方法。
(25) 環境汚染物質で汚染された環境を、上記(1)または(2)のいずれかに記載の微生物と環境汚染物質分解微生物との混合培養系で処理することを特徴とする、汚染環境の浄化方法。
(26) 環境汚染物質が石油または石油由来のものであることを特徴とする、上記(25)に記載の方法。
(27) 上記(14)〜(17)のいずれかに記載の方法を用いて、有害物質汚染環境のモニタリング、解析・評価および診断する方法
(28) 上記(14)〜(17)のいずれかに記載の方法を用いて、有害物質汚染環境の浄化及乃至修復過程を解析し、評価する方法。
本発明は、環境汚染物質、特に石油、廃棄物あるいはこれらに含まれるPAH等有害環境汚染物質の分解促進能を有するThalassospira属に属する新規微生物を提供するものであり、本発明の新規微生物を環境汚染物質分解微生物とともに添加し、汚染物質分解微生物コンソーシアとして利用して、上記環境汚染物質で汚染された海洋、湖沼、河川、廃液などを効率よく浄化することができる。また、汚染環境や環境汚染物質を含む廃液・廃棄物に汚染物質分解微生物が存在する場合は、本発明の新規微生物を単独で利用しても、上記と同様に汚染環境や汚染物質を含む廃液・廃棄物などを効率よく浄化することもできる。さらに、本発明によれば、上記新規微生物の16S rRNA遺伝子または16S rRNAから調製したプローブにより、Thalassospira属に属する上記環境汚染物質分解促進能を有する細菌の検出・定量を簡便迅速に行うことが可能となり、この細菌と環境汚染物質分解微生物をセットとした同時検出・定量方法により、世界的な環境問題になっているPAH等有害物質汚染環境のモニタリング、解析・評価、診断、ならびにバイオレメディーエション技術によるPAH等有害物質汚染環境の浄化・修復過程を解析・評価することができる、きわめて有益な技術を提供できた。
以下本発明を詳細に説明する。
〔微生物〕
本発明の微生物は、日本海流出重油汚染沿岸海域の一つである石川県沿岸の最も汚染された地点の海水試料から単離したことに基づく。これにより得られた菌株は具体的には、MAI8菌株(受託番号FERM P-19588)である。本菌株は天然海水、好ましくは無菌的に採取した海水を微生物源として、例えばPAHを唯一の炭素源・エネルギー源としてNSW培地(表1-B;T. Higashihara、 A. Sato and U. Shimizu: An method for the enumeration of marine hydrocarbon degrading bacteria. Bulletin of Japanese Society of Scientific Fishiereies、 44、 1127-1134、 1978)を用いた集積培養法により分離したものである。
MAI8菌株は非炭化水素分解細菌であるが、高い有機物資化能を有する(図2)。このことは、本菌株が炭化水素分解菌の増殖に必要な有機物を供給したり、また炭化水素の部分酸化物や代謝産物を利用して増殖し、炭化水素分解系における様々な分解産物の清掃人 (スキャベンジャー: Scavenger) としての機能を有していることを示している。すなわち、MAI8菌株はPAH分解細菌と混合培養することにより、分解細菌の増殖に必要な各種ビタミンや有機物などを供給したり、また炭化水素の分解を阻害、抑制する分解中間物や分解代謝物を分解、除去する、有機物スキャベンジャーとして働き、PAH分解細菌の単一培養系に比べ、PAHを速やかに分解させる炭化水素分解促進細菌であると考えることができる。
本菌株の表現形質による分類・同定や16S rRNA遺伝子の塩基配列に基づく分子系統解析や塩基配列相同性解析を行った結果、MAI8菌株はThalassospira属の新種であることが明らかとなり、Thalassospira属のThalassospira sp. MAI8菌株と命名した。 この菌株は独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに、受託番号FERM P-19588(Thalassospira属 MAI8菌株)として寄託されている。
〔Thalassospira属微生物の機能〕
上述のように本MAI8菌株(FERM P-19588)はThalassospira属に属する新種である。このThalassospira属は、A. Lopez-Lopezらによって2002年に提唱された新属で、Alphaproteobacteria のRhodospirillaceae科に属する。現在、報告されている種は、新属新種のThalassospira lucentensis の1属1種のみである(A. Lopez-Lopez, M. J. Pujalte, S. Benlloch, M. Mata-Roig, R. Rossello-Mora, E. Garay and F. Rodriguez-Valera: Thalassospira lucentensis gen. nov., sp. nov., a new marine member of the α-Proteobacteria. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 52, 1277-1283, 2002) 。Thalassospira lucentensis は地中海の海水試料から、低栄養培地を用いて長期間連続培養を行った集積培養液から分離された菌株である。本菌株は低栄養条件で分離された細菌であるが、炭水化物、有機酸およびアミノ酸を幅広く利用することができる。しかし、本Thalassospira lucentensisに関して、石油等環境汚染物質分解能や環境汚染物質分解促進機能など応用面での有用な機能については全く報告されていない。
本発明のThalassospira属に属する新種、Thalassospira sp. MAI8菌株(FERM P-19588)は、日本海重油流出事故で最も汚染された地点の海水試料を微生物源として、唯一の炭素源としてC重油を用いて長期間、集積培養を繰り返した培養液を種菌として、さらにANを唯一の炭素源として集積培養を行った培養液から分離された菌株である。
一方、Thalassospira lucentensisは、「生きているが培養できない」といわれている分離、培養の困難な細菌を分離すために、従来の一般的な分離法とは違った方法、すなわち低栄養培地を用いて、13℃で3ヶ月連続培養を行った集
積培養液から分離された菌株である。
以上のことから、Thalassospira属の細菌は、いずれも従来の分離法では分離、培養が困難な細菌であると考えられる。
重油汚染沿岸海域で重油分解に係わる微生物群集の構成メンバーとして重要な働きをしていると推察される炭化水素分解促進細菌が、これまでにThalassospira属細菌に見出されなかったことは、Thalassospira属細菌が難分離、難培養の細菌であることによるものと推察される。
本発明では、上述のことから、従来の一般的な分離法では分離できない難分離、難培養性の石油等環境汚染物質分解促進微生物を分離する新たな手法を提供するとともに、環境汚染物質の分解、除去にきわめて有効であるThalassospira属の新種である環境汚染物質分解促進微生物を提供するのである。
〔MAI8 菌株の環境汚染物質分解促進機能〕
MAI8菌株はPAH分解細菌、ANI7A菌株(FERM P-19095、新規微生物、特開2004-159599、公開日:2004年 6月10日)とともに、日本海重油流出事故で最も汚染された地点の海水試料から、前述のように長期間、集積培養を行った同じ培養液から分離された菌株である。
したがって、MAI8菌株(FERM P-19588)は非炭化水素分解細菌であるが、炭化水素分解細菌、ANI7A菌等とともに、重油汚染沿岸海域で重油分解に係わる微生物群集の構成員として、前記のように炭化水素の分解促進に重要な働きをしているものと推察される。また、実施例1に示したようにC重油やANの集積培養系においても、それらの炭化水素を分解する微生物コンソーアの一員として炭化水素の分解に貢献しているものと思われる。
以上のことから、該MAI8菌株は石油等環境汚染物質分解微生物に添加し、分解微生物と混合培養することにより、環境汚染物質の分解を著しく促進することができることから、環境汚染物質の分解、除去などにきわめて有効である。
後記する実施例3で示したようにMAI8菌株は非炭化水素分解細菌であるが、高い有機物資化能を有することから、MAI8菌株は炭化水素分解微生物コンソーシアの一員として、炭化水素分解細菌の増殖や炭化水素の分解を阻害、抑制する分解中間物、分解代謝物等を資化・利用し、これら有機物のスキャベンジャーとしての働きをしているのものと考え得る。
また、図4に示したようにPAH分解細菌にMAI8菌株を添加した微生物コンソーシアでは、PAH分解細菌単独に比べ、増殖速度がきわめて速いことから、PAH分解細菌の増殖に必要なビタミンなどの増殖因子や有機物等をMAI8菌株が供給し、PAH分解細菌の増殖や炭化水素分解を促進していることも考えられる。
以上のことから、MAI8菌株の石油等環境汚染物質分解促進機能は、環境汚染物質分解微生物の分解中間物や分解代謝物などの有機物スキャベンジャーとして、また環境汚染物質分解微生物の増殖に必要なビタミン類や栄養素の供給者として、あるいはこの両者の相乗的な働きに基づくものということができる。
〔微生物コンソーシアによる環境汚染物質の分解〕
一般的に、微生物による環境汚染物質の分解、除去は、単一種の微生物ではなく、汚染環境現場に生息している微生物群集(微生物コンソーシア) により行われている。このようなことから、各種の分解微生物等で構築された微生物コンソーシアによる環境汚染物質の分解が報告されている。
例えば、[背景技術]で述べたように、脂肪族炭化水素分解菌、Acinetobacter sp.、Rhdococcus sp.、単環芳香族炭化水素分解菌、Pseudomonas putida および多環芳香族炭化水素分解菌、 Sphingomonas sp.の4種類の炭化水素分解菌で構成された微生物コンソーシアによる原油の分解が報告されている(S. Komukai-Nakamura et. al.: . Construction of bacterial consortia that degrade arabian light crude oil., J. Fer. Bioeng.82, 570-574, 1996)。また、炭化水素分解菌、アルカニボラックス属細菌(Alcanivorax borkumensis)と炭化水素非分解菌、バチルス属細菌(Bacillus sp.)からなる微生物コンソーシアによる重油の分解が報告されている(重油分解方法、特開2001-37466、公開日:平成13年2月13日)。
内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)作用が疑われているノニルフェノール(NP)の分解菌、Sphingomonas属細菌の3分離例では、集積培養によって得られる最終培養がNP分解細菌とNP非分解細菌を含み、混合培養系の方が単一種の純粋培養系よりもNPが速やかに分解されるといわれている(太田ら:日本微生物生態学会誌、17、29-37、2002)。例えば、NP分解菌、Sphingomonas sp. YT株はNP非分解菌WT株と混合培養することにより、YT株単独培養に比べNPの分解が促進されることが報告されている(韓ら:細菌混合培養系におけるノニルフェノール分解特性の解析、第18回日本微生物生態学会講演要旨集、p.163, 2002)。この報告によると、WT株との混合培養では、NP分解で生成する分解中間物がYT株のNP分解に負の影響を与え、それをWT株が分解、除去することが推察されている。また、このYT株はNPを唯一の炭素源、エネルギー源として利用できず、NPの分解には酵母エキスのような有機物が必要であるといわれている(Y.P.de Vries ら:Organic Nutrient-dependent Degradation of Branched Nonylphenol by Sphingomonas sp. YT Isolated from a River Sediment Sample. Microbes and Environments, 16, 240-249,
2001)。
また、NP分解活性のある集積培養からNP分解菌、Sphingomonas sp. (S菌株)とNP非分解菌、Pseudomonas sp. (P菌株)が分離されているが、この両者は共生的関係にあると推察されている。すなわち、P菌株はS菌株の増殖に必要なビタミンのような増殖因子(co-nutrients)を供給し、その代わりにS菌株はNP分解の中間代謝物を排泄し、P菌株に供給していることが推察されている(K. Fujiiら: Profile of a Nonylphenol-degrading Microflora and Its Potential for Bioremedial Applications, J. Biochem., 128, 909-916, 2002) 。
上述の研究事例は、環境汚染物質分解菌は、分解中間物や分解代謝物などの有機物スキャベンジャーや分解菌の増殖に必要なビタミン類、栄養素の供給者と混合培養することにより、汚染物質の分解活性が発現したり、分解活性が著しく促進されることを示している。
以上のことから、本MAI8菌株は有機物スキャベンジャー や分解菌の増殖に必要なビタミン類などの栄養素の供給者としての機能を有すると考えられる。
したがって、本MAI8菌株は環境汚染物質分解微生物に添加して、混合培養することにより、環境汚染物質の分解活性を著しく促進することができるきわめて有用な微生物である。
〔Sphingomonas 属微生物の環境汚染物質分解機能〕
前述のMAI8 菌株とともに分離され、MAI8 菌株と混合培養することにより、PAHの分解活性が促進されるPAH分解細菌、ANI7A菌株はSphingomonas属に属する細菌である(FERM P-19095、新規微生物、特開2004-159599、2004年 6月10日参照)。
Sphingmonas属細菌は、 前記NP以外にビフェニール等環境ホルモン、クロロフェノール、ヘキサクロロシクロヘキサン等の有機塩素化合物、キシレン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素、除草剤等の農薬、ポリエチレングリコール等の合成高分子化合物など非常に広範な種々の環境汚染物質に対する強力な分解能を有することが明らかにされている。(Sphingmonas属細菌の最新の知見をまとめた特集号、「The genus Sphingomonas」、Journal of Industrial Microbiology & Biotechnology, 23(No.4/5), 231-445, 1999)。この種々の環境汚染物質分解能を有するSphingmonas属のある種のものは、増殖にビタミンのような微量な増殖因子を要求することが知られている(K. Fujiiら: Profile of a Nonylphenol-degrading Microflora and Its Potential for Bioremedial Applications, J. Biochem., 128, 909-916, 2002)。したがって、当該MAI8菌株をSphingomonas 属細菌等環境汚染物質分解微生物に添加し、混合培養することにより汚染物質の分解を促進させることが可能である。
最近、Sphingomonas 属細菌のグループをSphingomonas sensu stricto、Sphingobium属、Novosphingobium属およびSphigopyxis属の4属に再分類されることが提案されている(Takeuchiら:Proposal of the genus Sphingomonas sensu stricto, Sphingobium, Novosphingobium, Sphigopyxis, on the basis of phylogenetic and chemotaxonomic analysis. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 51, 1405-1417, 2001)。
PAH分解細菌、ANI7A菌株は、このSphingomonas 属細菌グループの再分類に従うと、16S rRNA遺伝子の分子系統解析に基づき作成された分子系統樹の位置から、Novosphigobium属(cluster III)に包含されるSphingomonas subarcticaに最も近縁であることから、Novosphigobium属に属することが示された(新規微生物、特開2004-159599、2004年 6月10日参照)。また、前記NP分解菌、Sphingomonas sp. YT株は、Sphingobium ameinse YT株と再同定されている(Y.Ushibaら:Sphingobium amiense sp. nov. a novel nonylphenol-degrading bacterium isolated from a rever sediment, Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 53, 2045-2048, 2003)。したがって、前記と同様にMAI8菌株はSphingomonas 属細菌グループが再分類されたSphingomonas sensu stricto、Sphingobium属、Novosphingobium属およびSphigopyxis属などの環境汚染物質分解微生物に添加し、混合培養することにより汚染物質の分解を促進させることも可能である。
〔他の微生物〕
さらに、本本MAI8菌株は、[背景技術]で述べたようなCycloclasticus属、 Neptunomonas属 、Lutibacterium 属およびVibrio属などの PAH等環境汚染物質分解微生物と本発明の微生物、MAI8菌株を混合培養することにより汚染物質の分解を促進させることもできる。
上記のことから、本発明のThalassospira属に属する新種の微生物は、 PAH等有害環境汚染物質の分解を促進させることができ、きめて有用な微生物であり、有害物質で汚染された環境浄化に利用することができる。
〔有害環境汚染物質分解微生物コンソーシアの構築〕
次ぎに、油濁環境や有害物質汚染環境の浄化に本微生物を利用する場合は、本発明の微生物と有害環境汚染物質分解微生物を混合培養して環境汚染物質分解微生物コンソーシアとして利用することができる。例えば、有害汚染物質の中間分解物や代謝産物によって増殖や汚染物質の分解が抑制・阻害される有害汚染物質分解微生物、または増殖や有害物質の分解にビタミン、有機栄養素等の増殖因子を要求する有害汚染物質分解微生物に、本発明の微生物を加えて構築した有害環境汚染物質分解微生物コンソーシアとしても利用することもできる。
〔培地〕
本発明の微生物や本発明の微生物を含む環境汚染物質分解微生物コンソーシアの培養に用いる培地は、これらの微生物が良好に増殖し、かつPAH、石油等有害環境汚染物質分解能が発現できる培地であれば、いかなる組成の培地でもよい。本発明の微生物の炭素源としては、炭水化物、ピルビン酸等の有機酸、酵母エキス、廃糖蜜などを用いることができる。環境汚染物質分解促進能を有する本発明の微生物が利用できる炭素源であれば、いかなる物質でもよい。また、環境汚染物質分解微生物コンソーシアの炭素源としては、前記以外の炭素源として、汚染物質分解微生物が炭素源として利用できるPAH、原油、重油等の石油製品、船舶や工場からの流出油などの環境汚染物質を利用することができる。本発明の微生物や本発明の微生物を含む環境汚染物質分解微生物コンソーシアの窒素源としては、微生物に利用される有機・無機化合物であればよい。有機窒素源としてはペプトン、肉エキス、コンステイプリカー、脱脂大豆、カゼンインなどが、無機窒素源としてはアンモニウム塩、硝酸塩、尿素などが利用できる。無機塩類としては、各種のリン酸塩、塩化ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガン、カルシウム、亜鉛、モリブデンなどを添加してもよい。また、増殖因子として、ビタミン類、アミノ酸類があり、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、コンステイプリカーなど前記栄養因子を含有する天然有機栄養物を添加してもよい。
なお、これらの微生物を効率よく大量に培養するときは、必ずしもPAH等環境汚染物質を含む培地で培養する必要はなく、Marine Broth (Difco) やNutrient Broth (Difco) のような有機栄養培地でもよい。
〔培養方法〕
培養は好気的条件、例えば振とう培養法、通気撹拌培養法が好適であるが、
適宜液体静置培養を組み合わせてもよいし、また液体静置培養でもよい。培地のpHは5-9、好ましくは6-8であればよい。培養温度は15-37℃、好ましくは20-30℃であればよい。
〔本発明の微生物を用いた環境汚染物質の分解手段〕
本発明の微生物を含有する石油等環境汚染物質分解微生物コンソーシアを用いた浄化方法としては、PAH、石油等環境汚染物質に汚染された海洋、湖沼、河川、廃液などに、本発明の微生物と石油等環境汚染物質分解微生物との混合培養の培養液、生菌体、凍結乾燥菌体を散布すればよい。この場合、有機または無機の窒素、リンなどの栄養源とこれらの微生物を混合した栄養・微生物製剤として、また本発明者らが開示したアルギン酸を用いた栄養源含有固定化担体(特開2001-37466、公開日:2001.12.13)、ポリアクリルアミドゲル、ポリウレタンフォームなど公知の微生物固定化担体を用いて、これらの微生物を固定化した各種の微生物製剤を利用することができる。この場合栄養源とこれらの微生物を同時に固定化した方が好ましい。また、上記に示した汚染環境や環境汚染物質を含む廃液などに環境汚染物質分解微生物が存在する場合は、本発明の微生物を単独で、分解微生物コンソーシアと同様な方法で利用することができる。
〔環境汚染物質分解促進微生物の検出、定量、スクリーニング、同定および環境評価方法〕
次ぎに、核酸プローブやそれを用いた石油等有害環境汚染物質分解促進微生物の検出・定量方法、スクリーニング方法、同定方法、およびこの検出・定量法を用いた有害環境汚染物質汚染のモニタリング、解析・評価方法などについて説明する。
先に述べた汚染物質分解微生物等を用いた環境調和型の生物学的環境浄化技術、すなわちバイオレメディエーション技術には、一般に海等の汚染環境に欠乏している窒素(N)、リン(P)などの栄養製剤を散布し、現場に生息している土着の分解微生物、分解促進微生物等の分解微生物群の活性を高める方法(バイオスティミュレーション、Biostimulation)と分解微生物製剤等を散布する方法がある(バイオオーギュメンテーション、Bioaugmentation)(R. M. Atlas and R. Bartha: Hydrocarbon Biodegradation and Oil Spill Bioremediation. Advances in Microbial Ecology (ed. K.C. Marshall)、 PlenumPress、 New York、Vol. 12、 287-338、1992、K. Lee et al.: Bioaugmentation and biostimulation: a paradox between laboratory and field results. In Proceedings of the 1997 International Oil Spill Conference、 p 697-705、 American Peteroleum Institute、Washington.D.C.、 1997 )。この環境浄化技術を確立するためには、栄養源や微生物を散布した場合、現場環境における石油等有害物質分解微生物や有害物質分解促進微生物を定性的、定量的に把握し、汚染浄化に関与する微生物群集の挙動や機能を解明する必要がある。
これまでに、石油で汚染された沿岸海域や航路海域に石油分解微生物が最も多く分布していることが報告されている(Atlas、 R. M.: Microbial degradation of petroleum hydrocarbons: an environmental perspective. Microbial. Rev.、 45、 180-209、 1981)。
例えば、一般に非汚染海域に分布する炭化水素分解微生物の割合は全微生物数の1%以下であるが、油濁海域ではその比率がしばしば10%以上なるといわれている(R. M. Atlas: Petroleum biodegradation and oil spill bioremediation、 Marine Pollution Bulltetin、 31、 178-182、 1995、R. M. Atlas and R. Bartha: Hydrocarbon Biodegradation and Oil Spill Bioremediation. Advances in Microbiolbial Ecology、 Ed. K. C. Marshall、 Plenum Press、 New York、Vol. 12、 287-338、 1992)。 一般に微生物群集全体に占める分解微生物の割合は石油等有害物質汚染の程度を反映し、その指標になるといわれている(Atlas、 R. M.: Microbial degradation of petroleum hydrocarbons: an environmental perspective. Microbial. Rev.、 45、 180-209、 1981)。
また、木材処理施設から排出されるクレオソート(約85%のPAHを含有する)で汚染された港湾の堆積物中のPAH分解菌は非汚染サイトの10-1000倍多く、かつ全微生物群集に占める割合も1%程度にまで増大していると報告されている(A. D. Geiselbrecht et al: Enumeration and Phylogenetic Analysis of Polycyclic Aromatic Hydrocarbon-Degrading Mairne Bacteria from Puget Sound Sediment、 Appl. Environ. Microbiol.、 62、 3344-3349、 1996)。このように、環境が汚染されたことを反映して微生物群集に占める分解菌群の割合が増大していることが見出されており、分解菌の比率は汚染環境のよい指標になる。
先に述べたが、微生物による石油等環境汚染物質の分解、除去は、単一種の微生物ではなく、汚染環境現場に生息する微生物群集中の種々の微生物の協同作用によって行われるものと考えられている(非特許文献2)。この環境汚染物質分解微生物群集の中でも分解促進微生物は重要な働きをしているものと思われる。以上のことから、特定の分解微生物単独よりも、特定の分解微生物とその分解促進微生物をセットにし、同時に定量的に把握することは、有害物質汚染環境のより精度の高い指標になる。
さらに、前記NP分解菌集積培養系では分解菌と分解促進菌と推定されるNP非分解菌が共存し、分解菌単一よりもNPの分解を速やかに分解するいわれている。また、本発明の微生物MAI8菌株は、流出重油で汚染された地点の海水試料の同じ集積培養液からPAH分解菌、ANI7A菌株とともに分離された菌株である(実施例1)。 したがって、MAI8菌株は非PAH分解菌であるが、PAH分解菌、ANI7A菌などとともに、PAH分解促進菌として重油汚染沿岸海域で重油分解微生物群集の構成員として、重油の分解に重要な働きをしてると考えられている。このことからも、全微生物群集中に占めるPAH等環境汚染物質分解微生物とその分解促進微生物をセットにしたその比率は、きわめて精度の高い汚染環境の指標になる。
従来の石油やPAH等有害物質分解微生物の計数法は、平板培養法やMPN(最確数)法を用いた培養法によるものである。この培養法は、いずれも多大な労力と時間を要する。また、寒天平板培地を用いる計数法では、炭化水素無添加の対照培地において、試料中の細菌が寒天中の不純物を利用して増殖し、コロニーを形成する。微量の増殖因子として酵母エキス(0.01%)を添加した寒天平板培地を用いた計数では、炭化水素培地と炭化水素無添加培地の両培地において微小なコロニーが生成し、その数やコロニーの大きさで炭化水素分解細菌と非分解細菌の違いを明らかにすることができなかったといわれている(T. Higashihara、 A. Sato and U. Shimidu: An MPN method for the enumeration of marine hydrocarbon degrading bacteria、 Bull. Japan. Soc. Sci. Fish.、 44、 1127-1134、 1978)。
以上のことから、炭化水素無添加の対照培地においても、寒天中の微量な有機物を利用してコロニーを形成する細菌が存在するため、寒天平板培地で特定の炭化水素分解細菌を選択的かつ正確に計数することは困難である。加えて特定分解微生物を検出するには、寒天平板法にて目的微生物を分離し、分類・同定(属、種レベル)を行う必要があり、さらに長時間を要し多数の分離微生物を分類・同定することは困難である。
さらに、自然界に生息する微生物の内、これら従来の分離・培養法で検出できる微生物の数はきわめて少ない。すなわち、蛍光DNA染色剤で染色し顕微鏡下で計数する直接顕微鏡計数法(たとえば、J. E. Hobbie、 R.J. Daley、and S. Jasper: Appl. Environ. Microbiol. 33:1225-1228、 1977やK. G. Porter and Y. S. Feig: Limnol. Oceanogr. 25: 943-948、 1980)で得られた全菌数と比較して、分離・培養可能な微生物の割合は1%以下でしかないと考えられる(R. I. Amann、 W. Ludwig and K-H. Schleifer: Phylogenetic Identification and In Situ Detection of Individual Microbial Cell without Cultivation、 Microbial. Rev.、 59、 143-169、 1995)。したがって、従来の培養法では現場環境中に生息する微生物の1%程度を対象とした特定分解微生物、特定分解促進微生物や微生物相の調査しかできず、環境微生物群集中の分解微生物や分解促進微生物が十分に反映されていないという大きな欠点があった。
近年、分子生物学的手法に基づく分子微生物生態学が発展し 、従来のように分離・培養法に依存せず 、分子・細胞レベルで 、環境中の微生物群集構造や多様性の解析が可能になってきている(I. M. Head、 J.R. Saunders and R. W. Pickup: Microbial evolution、 diversity、and ecology: a decade of ribosomal RNA analysis of uncultivated microorganisms、 Microb. Ecol.、 35、 1-21、 1998. 渡辺一哉、 二又裕之:環境中で働く微生物、 化学と生物、 38、230-236、 2000、丸山明彦:海洋微生物の分子・細胞レベルでの解析、海洋微生物、月刊海洋、号外No.23、 162-170、 2000、浦川秀敏、大和田紘一:核酸を用いた培養に依存しない微生物群集解析手法、海洋微生物、月刊海洋、号外No.23、 176-182、 2000)。この分子生物学的手法による微生物群集解析手法は 、石油等有害物質汚染環境やバイオレメディエーション技術による環境修復過程の分解微生物群の挙動や微生物群集構造の変遷を把握するために必要不可欠であり、最近それらの技術が開発されつつある。
最近、全微生物、環境汚染物質分解微生物等の特定微生物を対象として、それらに特異的なDNAプローブを用い、従来の分離・培養法に依存しない分子遺伝学的な検出および定量化が試みられている。 例えば、分離・培養法によらず細胞レベルで分解微生物や分解促進微生物等の特定微生物を検出する場合には、蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH法:fluorescence in situ hybridization)が用いられている(R. I. Amann、 W. Ludwig and K-H. Schleifer: Phylogenetic Identification and In Situ Detection of Individual Microbial Cell without Cultivation、 Microbial. Rev.、 59、 143-169、 1995)。すなわち、DNAプローブを用いて 、FISHを行うことにより 、微生物群集中の特定の分解微生物や分解促進微生物の細胞のみを特異的に検出・計数することができる。直接顕微鏡計数法で求めた全菌数と比較することにより 、全微生物群集中の特定微生物の定量的比率を算出することができる。
さらに、水環境試料を対象とし、細胞レベルで全群集に占める分解微生物や分解促進微生物等の特定微生物の割合を解析する場合には、FISH-DC法が有効である(A. Maruyama and M. Sunamura: Simultaneous direct counting of total and specific microbial cells in seawater、 using a deep-sea microbe as biomarker. Applied and Environmental Microbiology、 66: 2211-2215、 2000)。また、DNAプローブを用いた分子レベルでの特定分解微生物や特定分解促進微生物の定量的解析手法としては 、核酸ハイブリダイゼーション法がある(D. A. Stahl、 B. Flesher、 H. R. Mansfield and L. Montgomery : Use of phylogenetically based hybridization probes for studies of ruminal microbial ecology. Appl. Environ. Microbiol.、 54、 1079-1084、 1988)。この方法は環境試料や微生物試料から核酸を抽出し 、核酸試料をナイロン膜フィルター上に固定し 、次ぎに放射性同位体(RI)等で標識したDNAプローブを加えて 、ハイブリダイゼーションを行い 、膜上に固定さている核酸と相補的に結合した標識プローブの放射能強度等を測定し 、プローブと特異的に結合した核酸濃度から特定微生物の定量化をはかる方法である。
本発明者らはRIを用いない蛍光ドットブロットハイブリダイゼーション法による相対分子定量法を開発している(A.Maruyama、H. Ishiwata、 K、 Kitamura、M. Sunamura、T. Fujita、 M. Matsuo、and T. Higashihara: Dynamics of Microbial Populations and Strong Selection for Cycloclasticus pugetii following the Nakhodka Oil Spill, Microbial Ecology, 46, 442-453 (2003) 、丸山明彦:分離培養困難な環境微生物へのアプローチ、バイオサイエンスとインダストリー、 60、 31-34、 2002)。
以上のことから、本発明においては、本発明の上記新規微生物を特異的に検出・計数することが可能なDNAプローブを新たに作製した。以下DNAプローブを作製する工程について説明する。
〔プローブ〕
MAI8 菌株の16S rRNA遺伝子(配列番号1)の塩基配列情報に基づいて、種々の用途に適したRNAおよびDNAプローブを設計することができる。プローブの塩基配列および長さは検出、定量、スクリーニング、あるいは同定の対象とするThalassospira 属微生物の範囲に応じて適宜選択すればよい。例えば、本発明の上記新種の微生物のみをスクリーニングしたい場合には、該微生物の16S rRNA遺伝子の特異的部分の塩基配列によりプローブを設計すればよく、さらに近縁種をも含めてスクリーニング範囲を広げたいときには、近縁種の16S
rRNA遺伝子と共通な塩基配列部分を含むよう、例えば塩基配列の長さを短縮する等プローブを設計する。また、塩基配列部分の選択あるいはその長さを調節することによりさらに、プローブの菌株特異性を低下させれば、さらに広い範囲の有用細菌をスクリーニングすることができる。
本発明のプローブは 例えばFISH法(fluorescence in situ
hybridization)により、試料(例えば、石油等有害物質で汚染された海、河川、湖沼、排水・廃液などの環境試料水)中、あるいは多数の微生物群の中から、Thalassospira属に属する、本発明の上記新種微生物、その近縁種、あるいは該近縁種の石油等環境汚染物質分解促進細菌を検出および/または定量したり、また、スクリーニングするためには、例えば、配列番号1の塩基配列の塩基番号 1210-1231の領域(Escherichia coliの16S rDNAの塩基配列における5’末端からの位置(ナンバーリングシステム)では、1264-1285の領域)などから選択される領域に対応する塩基長10-50bp、好ましくは塩基長15-25bpのプローブを設計するとよい。一例として以下のプローブを挙げることができる。
(1)5'-tgggattcgccacctgtcgcca-3'(MAI8-1264*, 22mer)(配列番号2)
3'-accctaagcggtggacagcggt-5'(配列番号1の該16S rDNA部分塩基配列)(配列番号4)
(2)5'-ggatcgaagacttggtgagccg-3'(MAI8-259*, 22mer)(配列番号3)
3'-cctagcttctgaaccactcggc-5' (配列番号1の該16S rDNA部分塩基配列)(配列番号5)
(なお、*(数字)はEscherichia coliの16S rDNA塩基配列における5'末端からの位置(ナンバーリングシステム)を示す(Noller H. F. and C. R. Woese, 1981. Science, 212:403-411)。
プローブは、公知の方法、例えば、ホスホルアミド法またはトリエステル法により合成することができる。あるいは、(DNA・RNAプローブともに、)DNA自動合成機により合成してもよい。
なお、本発明のRNAプローブは、上記DNAプローブに相当するリボヌクレオチド配列を有する。すなわち、上記(1)、(2)のDNAプローブの塩基配列を例にとると、該塩基配列に相当するとは、該塩基配列中の塩基T(チロシン)がU(ウラシル)に変換されたリボヌクレオチド配列を有するという意味である。
また、プローブは、アイソトープ(32P、35Sなど)、蛍光色素(ビオチン/アビジン、ジゴキシゲニン/抗ジゴキシゲニン-ローダミン、Fluorescein-isothiocyanate (FITC)、LuciferYellow CH、Rhodamine 123、Acridine orange、Pyronin Y、Ethidium bromide、Propidium iodide、Ethidium homodimer、BOBO-1、POPO-1、TOTO-1、YOYO-1、Carboxyfluorescein diacetate (CFDA)、Fluorescein diacetate (FDA)、Carboxyfluorescein diacetate-acetoxymethylester (CFDA-AM)、5-cyano-2,30ditolyl tetrazolium chloride (CTC)、Tetramethylrhodamine isothiocyanate(TRITC)、Sulforhodamine 101 acid chloride (Texas Red)、Cy3、Cy5、Cy7、2-hydroxy-3-naphtoic acid-2'-phenylanilide phosphate (HNPP)など)、化学発光などで標識するとよい。
〔Thalassospira属の有用細菌のスクリーニングおよび検出、定量〕
本発明のRNAまたはDNAプローブを用い、種々のハイブリダイゼーション法(サザンブロット法、ノーザンブロット法、コロニーハイブリダイゼーション、ドットハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーション(例えば、FISH法)などにより、Thalassospira属に属する、本発明の新種微生物、その近縁種、あるいは該近縁種のPAH 、石油等有害環境汚染物質分解促進細菌種の汚染物質分解促進細菌を検出および/または定量したり、スクリーニングすることができる。
本発明のDNAプローブを用いて、石油等環境汚染物質で汚染された現場の水や海水から石油等環境汚染物質分解促進微生物を検出・定量する方法の一例について以下に説明する。有害物質汚染現場から水や海水試料を採取し、この試料中に存在する微生物をフィルター(孔径0.2μm)に固定し、これを蛍光色素等で標識した配列番号2または3の塩基配列を有するDNAプローブとハイブリダイズさせ、プローブを洗い落とした後、蛍光顕微鏡で観察して、DNAプローブとハイブリダイズし、標識した蛍光を呈している特定の分解促進微生物を選択的に検出または計数を行う。
上述したように、環境が汚染されれば、分解微生物と分解促進微生物はセットとして、その割合が増大してくるので、これにより、環境汚染の指標とすることが可能となる。
また、本発明のDNAプローブを用い、コロニーハイブリダイゼーション手法、ブロットハイブリダイゼーション手法、フローサイトメトリー法などにより、多数の微生物群の中からThalassospira属の本発明の新種の微生物およびその近縁種、およびThalassospira属の石油等環境汚染物質分解促進細菌、とくにThalassospira属の本発明の新種の微生物およびその近縁種の石油等環境汚染物質分解促進細菌をスクリーニングすることができる。
〔Thalassospira属菌の同定〕
さらに、配列番号1の塩基配列情報や配列番号2または3を用いて、Thalassospira属の本発明の新種の微生物およびその近縁種、およびThalassospira属の本発明の新種の微生物およびその近縁種の石油等有害物質分解促進細菌を同定することができる。例えば、配列番号1の塩基配列との相同性、または請求項8〜10いずれかに記載のRNAまたはDNAプローブを用いたDNA/DNAまたはDNA/RNAハイブリダイゼーションにより同種の菌であることが同定できる。さらに、上記プローブの塩基配列(DNA断片)をプライマーとして用いて、PCRを行うことによって菌種の同定を行うこともできる。すなわち、同定の対象となる菌体を溶菌して、上記プローブの塩基配列をもつDNA断片をプライマーとして添加した後、PCR増幅する。そのPCR産物を電気泳動等により16S rDNAの増幅が確認されれば、対象とした菌には、用いたDNA断片に相補的な遺伝子部分を有していることになる。すなわち、同種の菌であることが特定できる。
〔有害物質汚染環境のモニタリング、解析・評価〕
石油等有害物質汚染環境の指標となる特定の分解微生物やその分解促進微生物の挙動、およびそれらが全微生物群集に占める割合(優占度)を、簡単、迅速にモニタリングすることが可能になれば、汚染の程度、および汚染環境の修復、回復の程度などを、その汚染環境の診断が高精度かつ早期に可能になる。 例えば、環境中に石油分解微生物や PAH分解微生物およびそれら分解微生物に対応する分解促進微生物がある時期に優占度が上昇していれば、その環境は石油やPAHで汚染されている可能性が高いと判断できるし、その微生物群集全体として石油やPAH分解能が高まっていると判定できる。さらに、その優占度の変化を長期間にモニタリングし、その変遷の周期性や季節性を把握しておけば、その変化が突発的なものかどうか、その負荷が船舶事故や工場排水の流入など人為的なものかどうかを推定できる。 本発明のDNAプローブとPHA分解微生物、例えばANI7A菌株のDNAプローブをセットとして用いて、油濁環境中の全微生物群集中のPAH分解微生物とその分解促進微生物の優占度を同時に調べることにより、環境中の炭化水素成分、PAHの比率、濃度および消長など汚染の度合を高精度で把握でき、汚染物質の自然浄化過程やバイオ環境修復過程の解析・評価が可能になる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
〔実施例1〕炭化水素分解促進細菌の分離
炭化水素分解促進細菌MAI8菌株は、PAH分解微生物の集積培養液から分離された菌株である。以下MAI8菌株の具体的な分離方法について述べる。
1)PAH分解微生物の分離源試料
日本海重油流出事故で石川県沿岸域で最も汚染された地点、Stn.19(珠洲西海海岸、長橋)で1998年6月11日に採取された海水試料に無機栄養塩を加えた系(SW+N+P、表1-A)に0.5%C重油を添加して、20℃で65日培養し、分解試験を行った。この65日の分解試験培養液中の分解細菌数のMPN計数培養(培地:表1-C)で、C重油で良好な増殖を示した希釈段階のもっとも高い試験管の培養液を、0.5%C重油を含む滅菌(SW+N+P)培地に接種し、20℃にて培養期間12-17日で3回集積培養を繰り返した後、さらにC重油を加えたNSW培地(表1-B)を用いて、前記同様に、培養期間9-17日で4回集積培養を繰り返した培養液を下記AN分解細菌の集積培養の種菌として用いた。
2) PAH分解細菌の集積培養
前記C重油集積培養液0.1mlを種菌として、0.1% (w/v) ANを添加したNSW培地(表1-B)10mlを含む大型試験管に接種し、20℃で8日間振とう培養によりAN分解細菌の集積培養を行った。
3) PAH分解細菌の分離に用いた平板培地と培養法
AN 分解細菌およびPHE分解細菌の分離は、0.1%(w/v)ANをNSW寒天培地に添加した(NSW+AN)平板培地(表1-D)およびMarine Agar 2216 (Difco製) (MA)平板培地を用いて、20℃で平板培養により行った。なお、平板培地に形成されたコロニー形態は実体顕微鏡で観察した。
NSW培地:文献参照(T. Higashihara、 A. Sato and U. Shimizu: An method for the enumeration of marine hydrocarbon degrading bacteria、 Bulletin of Japanese Society of Scientific Fishiereies、 44、 1127-1134、 1978)
4)MAI8 菌株およびPAH分解細菌の分離
前記2)項のAN分解細菌の集積培養液を(NSW+AN)平板培地に塗抹し、20℃、8日間培養した。この平板培養培地に形成されたコロニーを釣菌し、さらにその分離菌株を (NSW+AN)平板培地とMA平板培地を用いて、平板分離培養を2回繰り返し、(NSW+AN)平板培養培地から8菌株、MA平板培養培地から8菌株、合計16菌株を分離した。なお、平板培養は20℃、16日間行った。
MAI8 菌株は、上記MA平板培養培地から分離した8菌株の中から選択し、純粋培養株とした。
なお、実施例2に示した混合培養系を構成するPAH分解細菌、Sphingomonas sp. ANI7A菌株(FERM P-19095)は、MAI8菌株を分離した同じ集積培養液を塗抹した上記(NSW+AN)平板培養培地から分離された8菌株の中から選択し、純粋培養株とした菌株である。
〔実施例2〕MAI8 菌株の分類・同定
MAI8菌株の表現形質による菌学的性質や16S rRNA遺伝子の塩基配列に基づく分子系統解析の結果を以下に示す。
MAI8菌株の菌学的性質を表2に示した。
MAI8菌株のコロニー形態は、コロニー形状:円形(circular)、大きさ:5.0 mm、表面:平滑(smooth)、隆起状態:半レンズ状(convex)、周縁:全縁(entire)であり、特徴的な色素は生成しなかった(Marine Agar 2216, Difco、20℃、7日培養)。
これらの菌学的性質に基づき、Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology、 Volume 1(1984) ( Krieg、 N. R.、 and Holt、 J. G.: Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology Vol. 1. Williams & Wilkins、 Maryland 、 1984) およびBergey's Manual of Determinative Bacteriology、 Ninth Edition (1994) (Holt、 G.、 Krieg、 N.R.、 Sneath、 P.H.A.、 Staley、 J.T.、 and Williams、 S.T. (eds.): Bergey's Manual of Determinative Bacteriology (9th ed.). Williams and Wilkins、 Maryland、 1994)
を参考にして分類・同定を行った。
その結果、MAI8菌株はNaCl要求性の海洋性グラム陰性桿菌で、細胞形態やキノン系から海洋性光合成細菌の可能性も考えられたが、本菌株は光合成能を持たず、さらに形態的に類似しているRhodospirillum属細菌とはGC含量が異なっていた。従って、前述のように表現形質の性状からは、本菌株を既知の属種に分類同定できず、新たな属種の可能性が示唆された。
しかし、最近新属新種として提案されたThalassospira属の性質に類似していることから、Thalassospira属に属することが推察された。しかし、新属、新種のThalassospira lucentensisとは、コロニーの色調など表現形質による分類学的性状が違っていた(A. Lopez-Lopez、 M. J. Pujalte、 S. Benlloch、 M. Mata-Roig、 R. R-Mora、 E. Garay and F. R-Valera: Thalassospira lucentensisgen. nov.、 sp.、nov.、 a new marine member of the α-Proteobacteria. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology、 52、 1277-1283、 2002)。
そこで、MAI8菌株につて、16S rRNA遺伝子の塩基配列に基づく分子系統解析を行った結果、本菌株はバクテリアドメイン中のプロテオバクテリア(Proteobacteria)のアルファプロテオバクテリア(Alphaproteobacteria)に属する新属Thalassospira属に属することが認められた(図1)。さらに、MAI8 菌株と新属、新種のThalassospira lucentensisの16S rRNA遺伝子の塩基配列の相同性を調べた結果、96.3%であつた。MAI8菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列を配列表の配列番号1に示した。また、図1にMAI8菌株の分子系統樹を示した。
一方、「細菌の種は系統的にほぼ70%またはそれ以上のDNA-DNA相同性を示す菌株である」と定義されている(国際細菌分類命名委員会特別委員会報告、L. G. Wayne、 D. J. Brenner、 R. R. Colwell、 P. A. D. Grimont、 O. Kandler、 M. I. Krichevsky、 L. H. Moore、 W. E. C. Moor、 R. G. E. Murray、 E. Stackebrandt、 M. P. Starr and H. G. Truper: Report of the ad hoc committee on reconciliation of approaches to bacterial systematics. International Systematic Bacteriology、 37、 463-464、 1987)。Stackerbrandtらは、上記定義におけるDNA-DNA相同性と16S rRNA遺伝子の相同性との関係について、DNA-DNA相同性と16S rRNA遺伝子の相同性の比較からDNA-DNA相同性70%以上のものと16S rRNA遺伝子の相同性97%以上のものは対応するとし、16S rRNA遺伝子の相同性97%以上のものを同一の種とみなされると述べている(Stackebrandt、 E. and Goebel、 B. M.: Taxonomic note: a place for DNA-DNA reassociation and 16SrRNA sequence analysis in the present species definition in bacteriology. Int. J. Syst. Bacteriol.、44、 846-849、1994)。
以上のことから、MAI8菌株はThalassospira属の新種として、Thalassospira属 MAI8菌株(FERM P-19588)と命名した。
表現形質に基づく分類・同定は、本発明者らが開示している「重油分解方法」(特開2001-37466公報、公開日2001.2.13)およびR.M.Smibert and N.R.Kreig: Phenotypic Characterization. Methods for General and Molecular Bacteriology (P.Gerhardt、 R.G.E.Murray、 W.A.Wood and N.R.Krieg)、p.607-654、 American Society for Microbiology、 Washington、D.C.(1994)に述べている方法に準じて行った。なお、光合成能確認試験はRM2培地の液体培地と寒天を加えた固体培地を用いて、30℃で嫌気条件にて光照射培養により行った。光合成能は培養14日後における生育と色素産生の有無により判定した(Hiraishi A. and Kitamura H.: Distribution of Phototrophic Purple Nonsulfur Bacteria in Activated Sludge Systems and Other Aquatic Envirornments. Bull. Jpn. Soc. Sci. Fish. 50, 1929-1937, 1984, A. Hiraishi et al.: A New Genus of Marine Budding Phototrophic Bacteria, Rhodobium gen. nov. , Which Includes Rhodobium orientis sp. nov. and Rhodobium marinum comb. nov. , Int. J. Syst. Bacteriol., 45, 226-234, 1995)。
また、16S rRNA遺伝子の配列決定は本発明者らが開示している「新規低温細菌を検出するためのDNAプローブ」(特開2000-333680公報、公開日2000.12.5)に述べている方法に準じて行った。さらにDNAデーターベースより入手したThalassospira属および代表的な微生物種の塩基配列を並列させてアライメント処理を行い、比較不能なギャップを取り除いた後、NJ法により分子系統解析を実施した。得られた系統樹の各分岐の確度は、100回のブーストラップ解析により算出した(Maruyama、 A.、 D. Honda、 H. Yamamoto、 K. Kitamura and T. Higashihara : Phylogenetic analysis of psychrophilic bacteria isolated from the Japan Trench、 including a description of the deep-sea species Psychrobacter pacificensis sp. nov. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology. 50、 835-846、 2000)。
〔実施例3〕Thalassospira sp. MAI8菌株の炭化水素培地における増殖
MAI8菌株(FERM P-19588)の炭化水素培地における増殖試験には、唯一の炭素源として0.1%(w/v) ANを添加したNSW培地(表1-B)からクエン酸鉄を除いた(NSW-Fe)培地を用いた。このANを添加した(NSW-Fe)培地10 mlをキャップ付ネジ口試験管(直径18mm)に加え、20℃で振とう培養(45 rpm)を行った。
また、Cycloclasticus pugetii ATCC 51542菌株の炭化水素培地における増殖試験には、唯一の炭素源として0.1%(w/v) Biphenyl(BP)を添加した(NSW-Fe)培地10 mlをキャップ付ネジ口試験管(直径18mm)に加え、上記と同様に20℃で振とう培養(45 rpm)を行った。
培養液中での微生物の増殖は、濁度計(富士工業ADS-DW型)を用いて、660 nmで培養液の濁度を測定し、デジタル表示された値を吸光度(OD)の値に換算した。なお、OD値は同一培養条件の試験管2本の各OD値の平均値で示した。 また、培養液中の残存AN量の測定法は、下記〔実施例4〕に示した。
MAI8菌株(FERM P-19588)およびATCC 51542菌株の培養液濁度の経時変化を図2に示した。MAI8菌株の増殖はAN添加培地とAN無添加培地で有意な差はみられなかった。また、培養液中の残存AN量を測定したが、ANの分解性は認められなかった。しかし、MAI8菌株はAN 添加の有無にかかわらず、定常期のOD値は 0.14(AN無添加培地、培養期間12-38日の平均値)、0.15(AN添加培地、培養期間12-38日の平均値)といずれも高い値を示し、BP分解細菌ATCC 51542菌株のOD値0.08(BP添加培地、培養期間11-35日の平均値)の約2倍ときわめて高い増殖がみられた。この現象は、MAI8菌株がANを炭素源として利用できないことから、培地に増殖因子として添加した微量の酵母エキス(0.05%)を効率よく利用できる、きわめて高い有機物資化能を有していることを示している。以上のことから、本MAI8菌株は炭化水素以外の有機物資化性がきわめて良好で、微量の有機物から高い増殖ができる細菌であることが認められた。
〔実施例4〕PAH分解細菌Sphingomonas sp. ANI7A菌株(FERM P-19095)にPAH非分解細菌Thalassospira sp. MAI8菌株(FERM P-19588)を添加した混合培養系(微生物コンソーシア)によるPHE分解
ANI7A菌株とMAI8菌株からなる微生物コンソーシアによるPHE分解試験には、炭素源として0.1%(w/v) PHEを添加したNSW培地(表1-B)を用いた。PHEとNSW培地10mlをシリコセン付L字型試験管(直径18mm)に加え、20℃で振とう培養(45 rpm)を行った。
培養液中のPHEおよびAN(実施例3)の定量は培養液を等量のジクロロメタンで2回抽出後、25ml定容量とした。この抽出液の一定量を下記条件のガスクロマトグラフィー(GC)により分析した。なお、内部標準物質としてはn-ヘキサデカンを用いた。
GCの分析条件(本体:島津GC-17A)
1. カラム
液相: TC-70(GLサイエンス製キャピラリーカラム); 長さ:30mx0.25mm;
液相の膜厚:0.25 μm
2. キャリヤガス(N2)
流速:1ml/min
3. 測定条件
試料注入口温度:250 ℃
イニシャル温度:120 ℃
昇温速度:10 ℃/min (260 ℃まで);260 ℃で8min保持
検出器: FID
炭化水素の残存率は同一条件で振とう培養を行った菌無接種の対照培地中の残存炭化水素量を基準に求めた。なお、残存率は同一培養条件の試験管3本または4本の各残存率の平均値で示した。
PAH分解細菌Sphingomonas sp. ANI7A菌株単独、PAH非分解細菌Thalassospira sp. MAI8菌株単独、およびANI7A菌株とMAI8菌株の微生物コンソーシアにおける各培養液中のPHE残存率の経時変化を図3に、この時のPHE残存率を調べた同じ培養液の濁度の経時変化を図4に示した。
MAI8菌株単独ではPHE分解性は認められなかった。一方、PAH分解細菌ANI7A菌株単独でのPHE分解率は28%(培養28日)であった。しかし、ANI7A菌株にMAI8菌株を添加した微生物コンソーシアでは、PHE分解率は45%(培養28日)と、ANI7A菌株単独に比べ、PHE分解が大きく促進されることが分かった。
また、図4に示したようANI7A菌株とMAI8菌株の微生物コンソーシアは、ANI7A菌株単独に比べ、PHE添加培地で増殖速度がきわめて速く、かつ高い増殖を示した。このことは、MAI8菌株によりPHEの分解が著しく促進されることが、この高い増殖を示すことからも明らかにされた。
一方、実施例3で示したようにMAI8菌株は、非炭化水素分解細菌であるが、高い有機物資化能を有することから、炭化水素分解能を有する微生物コンソーシアの一員として、炭化水素分解細菌の増殖や炭化水素の分解を阻害、抑制する分解中間物、分解代謝物等を積極的に利用し、これら有機物のスキャベンジャーとして働き、PAH分解細菌単独に比べ、PAHを速やかに分解させる炭化水素分解促進細菌であると考えることができる。
また、図4に示したようにPAH分解細菌にMAI8菌株を添加した微生物コンソーシアでは、PAH分解細菌単独に比べ、増殖速度がきわめて速いことから、PAH分解細菌の増殖に必要な増殖因子としてのビタミン類や有機物などをMAI8菌株が供給し、PAH分解細菌の増殖や炭化水素分解を促進していると考えられる。
以上のことから、MAI8菌株は炭化水素分解細菌の分解中間物や分解代謝物などの有機物スキャベンジャーとして、また炭化水素分解細菌の増殖に必要なビタミン類や栄養素の供給者として、この両者の相乗的な働きにより炭化水素の分解が著しく促進されているということができる。
上記実施例1に示したように、非PAH分解細菌MAI8菌株とPAH分解細菌ANI7A菌株は、 日本海重油流出事故で最も汚染された地点の海水試料を微生物源として、唯一の炭素源としてC重油を用いて長期間、集積培養を繰り返した培養液を種菌として、さらにANを唯一の炭素源として集積培養を行った同じ集積培養液から分離された菌株である。
したがって、MAI8菌株は非炭化水素分解細菌であるが、炭化水素分解細菌ANI7A菌などとともに、重油汚染沿岸海域で重油分解微生物群集の構成員として、前記のように炭化水素の分解促進に重要な働きをしており、また、前述のC重油やANの集積培養系においても、これらの炭化水素分解微生物コンソーシアの一員として炭化水素の分解に貢献しており、以上のことから、該MAI8菌株は、石油等環境汚染物質分解細菌に添加し分解細菌と混合培養することにより、環境汚染物質の分解を著しく促進することができ、環境汚染物質の分解、除去などにきわめて有効である。
〔実施例5〕Thalassospira sp. MAI8菌株検出用DNAプローブの調製
石川県流出油汚染沿岸域より採取した試料から、集積培養を経て純粋分離に成功した細菌Thalassospira sp. MAI8菌株(FERM P-19588)の16S rDNA塩基配列情報(配列番号1)の中から、Stahl and Amann (Development and Application of Nucleic Acid Probes. In: Nucleic Acid Techniques in Bacterial Systematics. Ed.: E. Stackebrandt and M. Goodfellow, John Wiley and Sons, Chichester, pp. 205-248, 1991)により示された高次構造による障害が見られないと考えられる領域から、この菌種に特異的な配列を選抜し、該配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、その5‘末端をTRITCや Cy 5等の蛍光色素により標識化し、最終的に配列番号2に示した配列を有する非放射性標識DNAプローブ(MAI8-1264)および配列番号3に示す非放射性標識DNAプローブ(MAI8-259)を作製した。
〔実施例6〕実施例5記載のプローブを用いたThalassospira属微生物の検出、計数法
実施例5の上記各プローブの使用にあたっては、Thalassospira sp. MAI8菌株を標的微生物、Sphingomonas subterranea IFO16086(標準菌株)などを対照微生物として、Maruyama and Sunamura(Simultaneous direct counting of total and specific microbial cells in seawater, using a deep-sea microbe as biomarker. Applied and Environmental Microbiology, 66: 2211-2215, 2000)に記載した装置および手法を用い、FISH法にて実際にその有効性を確認した。供試菌株の培養、固定およびハイブリダイゼーションの方法については、「新規低温細菌を検出するためのプローブ」(特開2000-33680公報、公開日2000.12.5) に準じた。ただしハイブリダイゼーションは、40%ホルムアミド存在下で42℃で行い、洗浄温度は42℃で行った。試料の蛍光顕微鏡観察によるプローブの有効性を表3に示す。
上記プローブMAI8-1264、およびMAI8-259は、UV励起では各細胞中 DNAにDAPIが普遍的に結合した結果として、DAPI由来の青色蛍光が MAI8菌および対照菌株として供した2種類Sphingomonas subterranea (IFO16086) 、Psychrobacter pacificensis (NIBH P2K18)とも観察することができた。しかし、同視野をG励起で観察すると、MAI8菌株のみがプローブMAI8-1264およびMAI8-259と相補的な配列を持つため、プローブの5’末端をラベルしたTRITC由来の赤色蛍光を発した。
一方、Bacteriaドメインに特異的なプローブEUB338の場合は、B励起での観察においても、MAI8および2種類の対照菌株とも、それぞれEUB338の5’末端をラベルしたFITC由来の緑色蛍光を発した。
以上のことから、油濁環境由来微生物の16S rRNA遺伝子塩基配列からデザインした2つのプローブは、Thalassospira sp. MAI8を特異的に検出する上で、その高次構造に起因する結合上の妨害も見られず、実際に極めて有効であることが示された。
Thalassospira sp. MAI8菌株の16SrDNAの分子系統解析に基づき作成された分子系統樹を示す図である。 炭化水素培地を用いて培養したThalassospira sp. MAI8菌株およびCycloclasticus pugetiiATCC 51542菌株の培養液の濁度の経時変化を示す図である。培地:NSW-Fe(NSW培地(表1-B)からクエン酸鉄を除いた培地) +AN:NSW-Fe 培地にAnthracene 0.1%(w/v)添加 +BP:NSW-Fe 培地にBiphenyl 0.1%(w/v)添加 -AN:Anthracene 無添加培地 -BP:Biphenyl無添加培地 CONT:菌無接種の炭化水素培地(ANまたはBP を添加したNSW-Fe培地) 多環芳香族炭化水素分解細菌ANI7A菌株とThalassospira sp. MAI8菌株からなる微生物コンソーシアの培養液中のフェナントレン残存率の経時変化を示す図である。ANI7A:ANI7A菌株、MAI8 :MAI8菌株、ANI7A+MAI8 :ANI7A菌株とMAI8菌株の微生物コンソーシア培地 :0.1%(w/v)フェナントレン添加NSW培地 多環芳香族炭化水素分解細菌ANI7A菌株とThalassospira sp. MAI8菌株からなる微生物コンソーシアの培養液の濁度の経時変化を示す図である。ANI7A:ANI7A菌株、MAI8 :MAI8菌株、ANI7A+MAI8 :ANI7A菌株とMAI8菌株の微生物コンソーシアCONT : 菌無接種のフェナントレン添加 NSW培地培地 :0.1%(w/v)フェナントレン添加NSW培地(表1-B)

Claims (28)

  1. Thalassospira属に属する微生物であって、16S rRNA遺伝子の塩基配列が、配列番号1に記載の塩基配列と97%以上の相同性を示すことを特徴とする微生物。
  2. Thalassospira sp. MAI8菌株。
  3. 請求項1または2に記載の微生物と環境汚染物質分解能を有する微生物が共存していることを特徴とする、混合培養物。
  4. 環境汚染物質分解能を有する微生物がSphingomonas属、Sphingobium属、Novosphingobium属および Shpingopyxis属の細菌であることを特徴とする、請求項3に記載の混合培養物。
  5. 環境汚染物質分解能を有する微生物が炭化水素分解能を有する微生物であることを特徴とする、請求項3に記載の微生物。
  6. 炭化水素分解能を有する微生物がSphingomonas属、Sphingobium属、Novosphingobium属および Shpingopyxis属の細菌であることを特徴とする、請求項5に記載の微生物。
  7. 配列番号1の塩基配列を有する16S rRNA遺伝子。
  8. 配列番号1の塩基配列の一部を有し、かつ塩基長10〜50bpのDNA、または該DNAに対応するリボヌクレオチド配列を有するRNAからなることを特徴とする、DNAまたはRNAプローブ。
  9. 請求項1または2に記載の微生物由来のDNAまたはRNAと特異的にハイブリダイズすることを特徴とする、請求項8に記載のプローブ。
  10. 配列番号2または3に記載の塩基配列、または該塩基配列に対応するリボヌクレオチド配列を有することを特徴とする、DNAまたはRNAプローブ。
  11. Thalassospira属に属する環境汚染物質分解促進細菌を検出または定量するために用いることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載のDNAまたはRNAプローブ。
  12. Thalassospira属に属する環境汚染物質分解促進細菌が石油分解促進細菌であることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載のDNAまたはRNAプローブ。
  13. Thalassospira sp.MAI8菌株を検出および/または定量するために用いることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載のDNAまたはRNAプローブ。
  14. 請求項8〜10のいずれかに記載のRNAまたはDNAプローブを用いて、Thalassospira属 に属する細菌を検出および/または定量する方法。
  15. 検出または定量される細菌が、Thalassospira属に属する環境汚染物質分解促進細菌であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
  16. Thalassospira属に属する環境汚染物質分解促進細菌が石油分解促進細菌であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
  17. 検出および/または定量される細菌が請求項1または2に記載の微生物であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
  18. 請求項8〜10のいずれかに記載のRNAまたはDNAプローブを用いて、Thalassospira属に属する有用細菌をスクリーニングする方法。
  19. スクリーニングされる細菌がThalassospira属に属する環境汚染物質分解促進細菌であることを特徴とする、請求項18記載の方法。
  20. Thalassospira属に属する環境汚染物質分解促進細菌が石油分解促進細菌であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
  21. スクリーニングされる細菌が請求項1または2に記載の微生物であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
  22. 配列番号1の塩基配列との相同性、または請求項9〜11のいずれかに記載のRNAまたはDNAプローブを用いたDNA/DNAまたはDNA/RNAハイブリダイゼーション、または該DNAプローブをプライマーとして用いてPCRを行うことを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載のThalassospira属細菌を同定する方法。
  23. 同定される細菌がThalassospira属に属する環境汚染物質分解促進細菌であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
  24. Thalassospira属に属する環境汚染物質分解促進細菌が石油分解促進細菌であることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
  25. 環境汚染物質で汚染された環境を、請求項1または2のいずれかに記載の微生物と環境汚染物質分解微生物との混合培養系で処理することを特徴とする、汚染環境の浄化方法。
  26. 環境汚染物質が石油または石油由来のものであることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
  27. 請求項14〜17のいずれかに記載の方法を用いて、有害物質汚染環境のモニタリング、解析・評価および診断する方法
  28. 請求項14〜17のいずれかに記載の方法を用いて、有害物質汚染環境の浄化及乃至修復過程を解析し、評価する方法。

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