以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
まず、図1を用いて本発明の第1の実施形態に係るダイバーシチ受信機について説明する。本実施形態に係るダイバーシチ受信機は、複数のアンテナから一つのアンテナを受信アンテナとして選択する選択ダイバーシチ方式を用いる。ここでは受信ブランチ数、すなわちアンテナ及びこれに接続される受信ユニットの数を2の場合について述べるが、受信ブランチの数は2以上の任意の数でよい。
アンテナ1,2により受信される無線周波数帯の信号(RF信号)は受信ユニット(無線部)3,4にそれぞれ入力され、アナログ信号での受信処理が行われる。受信ユニット3,4の各々は、例えば図2に示すように入力されるRF帯域フィルタ21、低雑音増幅器(LNA)22、周波数変換器23、チャネル選択フィルタ24及び可変利得増幅器(VGA)25を有する。受信ユニットに入力されるRF信号は、フィルタ21を経て低雑音増幅器22により増幅された後、周波数変換器23によりベースバンド信号に変換される。ここでは、RF信号を直接ベースバンド信号に変換しているが、2段の周波数変換器を用い、RF信号を1段目の周波数変換器により中間周波数信号に変換した後、2段目の周波数変換器によりベースバンド信号に変換してもよい。
周波数変換器23からの出力信号はチャネル選択フィルタ24に入力され、所望チャネルの成分が選択される。選択されたチャネルの信号はAGC用の可変利得増幅器25によって増幅され、受信ユニット3,4から出力される。可変利得増幅器25の利得(以下AGCゲインと呼ぶ)は、受信ユニット3,4の出力信号レベルがほぼ一定となるように制御されるか、あるいは後述するようにベースバンド信号処理部により制御される。
受信ユニット3,4からの出力信号は、選択スイッチ5に入力される。選択スイッチ5では、コントローラ9の制御下で受信アンテナとして用いるアンテナの選択を行う。本実施形態では、選択スイッチ5によるアンテナの選択は受信ユニット3,4の出力側において行う。すなわち、選択スイッチ5は受信アンテナ1,2の出力信号のいずれか一方の選択を行う。選択スイッチ5により選択された信号は、A/D変換器6によりディジタル信号に変換された後、復調器7によって復調される。復調された信号は、さらに図示しない復号器により復号され、元のデータが再生される。
受信レベル測定器8は、受信ユニット3,4の受信信号を用いてアンテナ1,2の受信レベル、例えば受信電界強度(received signal strength indicator; RSSI)を一定間隔のタイミングで測定する。受信レベル測定器8の入力としては、例えば図2中の低雑音増幅器22の出力信号を用いることができる。以下の説明では便宜上、受信レベル測定器8により測定される受信レベルをRSSI値とも呼ぶ。コントローラ9は、受信レベル測定器8により得られるRSSI値からアンテナ1,2のいずれを選択するかを判定し、その判定結果に基づいてスイッチ5を制御する。
コントローラ9は、例えば図3に示すように受信レベル測定器8により測定されたRSSI値を逐次記憶するメモリ31と、メモリ31に記憶されたRSSI値から、次の選択候補のアンテナのRSSI値を予測する予測器32と、予測器32により予測されたRSSI値を閾値判定する判定器33、及び判定器33の判定結果に従って選択スイッチ5を制御するスイッチ制御器34を有する。
コントローラ9の制御下で選択スイッチ5が受信アンテナを選択する基準は例えば受信レベル(RSSI値)であり、アンテナ1,2のうち受信レベルの大きい方を受信アンテナとして選択するものとする。図4に示されるように、受信レベルが十分に高い場合には、受信機内部の歪や位相雑音などの影響により、受信レベルの大きさにかかわらずベースバンド信号のS/Nは飽和してしまう。ベースバンド信号のS/Nが飽和するアンテナの受信レベルをR[dBm]とした場合、受信レベルがRを上回るアンテナのいずれを選択しても受信品質は変わらない。Rは、受信機の回路設計に依存する。特許文献1でも問題としているように、アンテナの頻繁な切り替えを行うと受信信号の振幅や位相が急にジャンプし、復調誤りや同期外れにつながるおそれがあるため、このように受信レベルがRを上回る場合にはアンテナの切り替えを行なわないように制御するのが望ましい。
アンテナ毎に受信信号のAGCを行う受信機では、基本的にはA/D変換器6によりディジタル信号に変換された後の信号レベルは各アンテナで適切な振幅に設定されている。一方、受信ユニットの数に対して、AGCの制御を行うベースバンド信号処理部の数が少ない場合、全ての受信ユニットに対して最適なAGCができない。このような場合、スイッチ5が現在選択している受信ユニットに対してのみAGCを行うか、または全ての受信ユニットに対するAGCゲインを共通に制御することになる。
ここで受信レベルの時間的な変動が速い場合、受信アンテナを時刻t1での受信レベルが大きいアンテナから時刻t2で受信レベルが大きいアンテナに切り替えると、A/D変換器6に入力される信号の急激な変動が起こる。この結果、信号レベルがA/D変換器6の入力ダイナミックレンジから外れてA/D変換器6の出力値が飽和してしまい、復調器7の復調エラーや同期外れが発生する場合がある。特にAGC追従速度が遅い場合、アンテナ切り替え後に飽和が長く続くため、それによる復号エラーや同期外れの問題は顕著である。
このような場合、本実施形態では「アンテナ切り替え前後のRSSI値の差がある閾値D(第2閾値)より小さくなればアンテナ切り替えを許可する」という拘束条件をつける。これによって、アンテナ切り替え時のA/D変換器6の出力値の飽和に起因する復号エラーや同期外れを回避し、高品質かつ安定した通信を行うことが可能となる。
さらに、受信レベルの変動が非常に早いときは、受信レベル測定器8での最新の測定タイミング(時刻t1)におけるRSSI値を基にアンテナ切り替を行うと、実際にアンテナを切り替えるタイミング(時刻t2)では、もはや最適なアンテナが選択される状態にはなっていないことが懸念される。このような場合、時刻t0,t1(t0<t1)のRSSI値を用いて外挿補間により時刻t2のRSSI値を予測することで、アンテナを切り替えるタイミングで最適なアンテナ選択が可能となり、受信品質の劣化を防ぐことができる。
外挿補間の一例として、過去の2時刻t0,t1のRSSI値RSSI(t0),RSSI(t1)を用いて、以下のような直線補間により時刻t2のRSSI値RSSI(t2)を求めることが考えられる。
次に、本実施形態における具体的なアンテナ選択手順を図5のフローチャートに従って説明する。
まず、最初アンテナ1が選択されていると仮定する。受信レベル測定器8によりアンテナ1を用いたときのRSSI値を定期的に測定し(ステップS1)、メモリ31に逐次蓄える(ステップS2)。次に、メモリ31に蓄積されたRSSI値を基に、予測器32により次のアンテナ切り替えを判断する時刻t2でのRSSI値=RSSI1(t2)を予測する(ステップS3)。次に、判定器33によりRSSI(t2)を閾値判定、すなわちRSSI1(t2)と閾値Rとの比較を行う(ステップS4)。ここでRSSI1(t2)が閾値Rより大きければ、十分なS/Nがあると考えられるので、アンテナの切り替えを行わない(ステップS5)。
一方、RSSI1(t2)が閾値Rよりも小さいときは、ステップS1〜S3と同様にステップS6で測定され、ステップS7でメモリ31に記憶されていたアンテナ2のRSSI値を基にステップS8で予測したRSSI値=RSSI2(t2)、と閾値Rとの比較を行う(ステップS9)。ステップS9においてRSSI2(t2)がRよりも小さければ、判定器33はアンテナ1とアンテナ2のRSSI値=RSSI1(t2),RSSI2(t2)を比較する(ステップS10)。
ステップS10においてRSSI1(t2)の方がRSSI2(t2)より大きければ、アンテナの切り替えは行わず(ステップS5)、アンテナ1を受信アンテナとしてそのまま使用し続ける。ステップS10においてRSSI2(t2)の方がRSSI1(t2)より大きければ、判定器33は次のアンテナを選択する前(アンテナ切り替え前)のRSSI値=Ra(この場合は、Ra=RSSI1(t1))と、次の選択候補のアンテナ(この場合は、アンテナ2)のRSSI値=Rb(この場合は、Rb=RSSI2(t2)))との絶対差|Rb−Ra|を求め、さらに差|Rb−Ra|を閾値Dと比較する(ステップS11)。ここで|Rb−Ra|が閾値Dよりも小さければ、受信アンテナをアンテナ1からアンテナ2へと切り替える(ステップS12)。同様に、ステップS9において、RSSI2(t2)が閾値R以上であれば、アンテナ切り替え前後のRSSI差としきい値Dを比較する(ステップS11)。
|Rb−Ra|が非常に大きい場合には、A/D変換器6の入力レベルが急激に変化してA/D変換器6の出力値が飽和してしまう。このような問題を避けるため、上記のように|Rb−Ra|が閾値D以上の場合には、アンテナを切り替えないようにする。閾値Dは、例えばA/D変換器6の最大入力レベルからのAGCの目標利得のバックオフ量を採用することができ、例えば12dBといった値とする。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2の実施形態では、図6に示されるようにコントローラ10は受信ユニット3,4にも接続され、図1中のコントローラ9と同様の選択スイッチ5の制御に加えて、受信ユニット3,4における可変利得増幅器33のゲイン設定を行う。このためコントローラ10には、図7に示すように図3に示したコントローラ9と同様のメモリ31、予測器32、判定器33及びスイッチ制御器34に加えて、判定器33の判定結果に基づき可変利得増幅器33のゲイン設定を行うゲイン設定器35が追加される。
アンテナ1及びアンテナ2の信号の受信レベルが共に低いとき、受信レベルの比較的大きい方のアンテナ1が選ばれていたとする。第1の実施形態では、この後アンテナ2の受信レベルだけが急激に大きくなり、アンテナ1とアンテナ2間の受信レベル差(RSSI値の絶対差)が閾値D以上になると、A/D変換器6の出力値の飽和や量子化ノイズの影響によるA/D変換器6の出力のつぶれを避けるために、アンテナ2の受信レベルが十分大きいにも関わらずアンテナ1がそのまま使用され続ける。第2の実施形態では、このような場合に受信アンテナをアンテナ1からアンテナ2へと切り替え、同時にAGCゲインを変更することによって、A/D変換器106の出力値の飽和を回避しつつ、S/Nの高いアンテナを選択する。
本実施形態におけるアンテナ選択手順では、図8に示すように第1の実施形態のアンテナ選択手順を示す図5に加えて、ステップS13〜S15が追加される。アンテナ切り替え時には、次の選択候補のアンテナに接続されている受信ユニットのAGCゲインをGに設定する。ステップS11においてアンテナ切り替え前のRSSI値=Ra(例えばRa=RSSI1(t1))と、次の選択候補のアンテナのRSSI値=Rb(例えばRb=RSSI2(t2)))との差|Rb−Ra|が閾値D以上であった場合、アンテナ2に接続されている受信ユニット4のAGCゲインをGに設定し(ステップS13)、受信アンテナをアンテナ1からアンテナ2へ切り替える(ステップS14)。
切り替え前のアンテナ1に接続されている受信ユニット3のAGCゲイン(G1)と、次の選択候補であるアンテナ2に接続されている受信ユニット4のAGCゲイン(G2)が既知である場合、アンテナ切り替え時刻t2におけるAGCゲインG(t2)を例えば以下のようにG1とG2の平均値とする。
これによりゲインを変更せずにアンテナを切り替える場合に比べて、A/D変換器6の出力値の飽和をより効果的に緩和することができる。そして、適当な時間の経過後に(例えば時刻t3)、ゲインGをA/D変換器6への入力振幅が復調器7にとって適切な値になるようなゲインG’となるように再び更新し(ステップS15)、その後は本来のAGC動作を行う。あるいは、次のアンテナ選択タイミングにおける選択候補のアンテナに接続されている受信ユニットのAGCが行われていない場合には、アンテナ1とアンテナ2のRSSI値を平均した値を基にAGCゲインG’(t2)を決定してもよい。
また、AGCゲインを段階的に変更するときの分解能を細かくとることにより、急激な振幅変動から生じる復調エラーを回避することができる。例えば、AGCゲインG1からG2への変更をnステップに分割して行う場合、ゲイン変更のステップ量をΔ=(G2−G1)/nとし、G1+Δ,G1+2Δ,…,G1+(n−1)*Δ,G2のように段階的に変化させる。AGCゲインを変化させる周期Tに対して、ゲイン変更のステップ数nはAGCの制御速度f(周期T=1/f)に依存する。このようにすると、特にアンテナ1,2のRSSI値の絶対差が大きい場合、AGCゲインをG1からG2へ近づけていくときにゲイン調整幅が大きすぎることによる大きな段階的振幅変動が生じることがなく、振幅変動による復調エラーの発生を避けることができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る第3の実施形態について図9を参照して説明する。本実施形態は受信ブランチ数がN個(Nは3以上の複数)であり、合成ダイバーシチ方式を用いる。N個のアンテナ41−1〜41−Nにより受信されるRF信号は、図2に示したような受信ユニット(無線部)42−1〜42−Nにそれぞれ入力され、受信処理が行われる。
受信ユニット42−1〜42−Nからの出力信号は、N入力/K出力の選択スイッチ43に入力される。選択スイッチ43はコントローラ48の制御下でN個のアンテナ41−1〜41−NのうちのK個(KはN>Kかつ2以上)のアンテナの選択、すなわち受信ユニット42−1〜42−Nからの出力信号の選択を行う。図9では、一例としてN=4、K=2としている。
選択スイッチ43により選択された信号は、A/D変換器44−1〜44−Kによりディジタル信号に変換された後、復調器45−1〜45−Kによって復調される。復調器45−1〜45−Kからの出力信号は、ダイバーシチ合成器46によってディジタル信号処理による合成ダイバーシチが施され、一つの出力信号となる。ダイバーシチ合成器46からの出力信号は図示しない復号器により復号され、元のデータが再生される。復調器45−1〜45−Kは現在選択されているK個のアンテナに接続されている受信ユニットのAGCゲインを適切に行っており、それ以外の受信ユニットにおいては以前に制御されたAGCゲインを保持しているものとする。
受信レベル測定器47は、受信ユニット42−1〜42−Nの受信信号を用いてアンテナ41−1〜41−Nの受信レベル、例えばRSSIを一定間隔のタイミングで測定し、RSSI値をコントローラ48に通知する。コントローラ48は、通知されるRSSI値からアンテナ41−1〜41−Nのうち受信レベル(RSSI値)が高い方から順にK個を判定し、その判定結果に基づいてスイッチ43を制御する。コントローラ48は、基本的に第1の実施形態で説明したのと同じく例えば図3に示すように構成される。
次に、図10を参照して選択スイッチ43におけるK個のアンテナの選択手順について説明する。アンテナ41−1〜41−Nのうち、受信レベル(RSSI値)が大きい順にK個を選択することが基本となっている。
まず、現在の時刻t1において2つのアンテナA,B(以下、AntA(t1),AntB(t1)とも記載する)が選択されていると仮定する。全てのアンテナ41−1〜41−NのRSSI値を定期的に測定し(ステップS101)、逐次メモリに蓄える(ステップS102)。蓄積されたRSSI値を基に、次にアンテナ切り替えを判断する時刻t2でのRSSI値を予測する(ステップS103)。
現在選択されているアンテナAntA(t1),AntB(t1)のRSSI値をPa(t1),Pb(t1)とし、時刻t2においてRSSI値が最大となるアンテナをAnt1(t2)とし、以下RSSI値が大きい順に2,3,4番目のアンテナをそれぞれAnt2(t2),Ant3(t2),Ant4(t2)とする。また、各アンテナAnt1(t2)〜Ant4(t2)の時刻t2におけるRSSI値をP1(t2),P2(t2),P3(t2),P4(t2)とする。現在選択されているアンテナのアンテナ番号及びRSSI値、さらには時刻t2において選択されるアンテナのアンテナ番号とRSSI値の組をメモリに蓄える(ステップS104)。
次に、現在選択されているアンテナAntA(t1),AntB(t1)のうち一方のアンテナAntA(t1)のRSSI値Pa(t1)と閾値Rを比較し(ステップS105)、Pa(t1)がRより大きければアンテナAntA(t1)の出力のS/Nが十分に大きいと考えられるので、アンテナAntA(t1)の選択を維持する(ステップS106)。
引き続き、現在選択されているアンテナAntA(t1),AntB(t1)のうち他方のアンテナAntB(t1)のRSSIPb(t1)と閾値Rを比較し(ステップS107)、Pb(t1)が閾値Rより大きければアンテナAntB(t1)の出力のS/Nが十分な大きいと考えられるので、アンテナAntB(t1)の選択を維持する(ステップS108)。
ステップS107においてPb(t1)が閾値R以下の場合は、アンテナA以外の3つのアンテナから一つを選択する処理(図11)へ進む(ステップS109)。
一方、ステップS105においてPa(t1)が閾値R以下の場合は、現在選択されているアンテナAntB(t1)のRSSI値Pb(t1)と閾値Rを比較し(ステップS110)、Pb(t1)が閾値Rより大きければアンテナAntB(t1)の出力のS/Nは十分に大きいと考えられるので、アンテナAntB(t1)の選択を維持し(ステップS111)、アンテナB以外の3つのアンテナから一つを選択する処理(図12)へ進む(ステップS112)。さらに、ステップS110においてPb(t1)が閾値R以上の場合は、4つのアンテナから2つを選択する処理(図13)へ進む(ステップS113)。
次に、図11を参照してアンテナA以外の3つのアンテナから一つを選択する図10のステップS109の手順を説明する。ステップS109においては、まず現在選択されているアンテナAntB(t1)のRSSI値Pb(t1)と、時刻t2においてRSSI値が最大となるアンテナAnt1(t2)のRSSI値P1(t2)の絶対差|Pb(t1)−P1(t2)|を求めて閾値Dと比較し(ステップS201)、|Pb(t1)−P1(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant1(t2)を選択する(ステップS205)。
ステップS201において|Pb(t1)−P1(t2)|がDよりも大きい場合は、アンテナBのRSSI値Pb(t1)と時刻t2においてRSSI値が2番目に大きいアンテナAnt2(t2)のRSSI値P2(t2)の絶対差|Pb(t1)−P2(t2)|を求めて閾値Dと比較し(ステップS202)、|Pb(t1)−P2(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant2(t2)を選択する(ステップS206)。
ステップS202において|Pb(t1)−P2(t2)|がDよりも大きい場合は、アンテナBのRSSI値Pb(t1)と時刻t2においてRSSI値が3番目に大きいアンテナAnt3(t2)のRSSI値P3(t2)の絶対差を求めて閾値Dと比較し(ステップS203)、|Pb(t1)−P3(t2)|がDよりも小さい場合はAnt3(t2)を選択し(ステップS207)。そうでない場合は現在選択されているアンテナAntB(t1)の選択を維持する(ステップS204)。
次に、図12を参照してアンテナB以外の3つのアンテナから一つを選択する図10のステップS112の手順を説明する。ステップS112においては、まず現在選択されているアンテナAntA(t1)のRSSI値Pa(t1)と、時刻t2においてRSSI値が最大となるアンテナAnt1(t2)のRSSI値P1(t2)の絶対差|Pa(t1)−P1(t2)|を求めて閾値Dと比較し(ステップS210)、|Pa(t1)−P1(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant1(t2)を選択する(ステップS214)。
ステップS210において|Pa(t1)−P1(t2)|がDよりも大きい場合は、アンテナAntA(t1)のRSSI値Pa(t1)と時刻t2においてRSSI値が2番目に大きいアンテナAnt2(t2)のRSSI値P2(t2)の絶対差|Pa(t1)−P2(t2)|を求めて閾値Dと比較し(ステップS211)、|Pa(t1)−P2(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant2(t2)を選択する(ステップS215)。
ステップS211において|Pa(t1)−P2(t2)|がDよりも大きい場合は、アンテナAntA(t1)のRSSI値Pa(t1)と時刻t2においてRSSI値が3番目に大きいアンテナAnt3(t2)のRSSI値P3(t2)の絶対差|Pa(t1)−P3(t2)|を求めて閾値Dと比較し(ステップS212)、|Pa(t1)−P3(t2)|がDよりも小さい場合はAnt3(t2)を選択し(ステップS216)、そうでない場合は現在選択されているアンテナAntA(t1)の選択を維持する(ステップS213)。
次に、図13を参照して4つのアンテナから2つを選択する図10のステップS113の手順を説明する。ステップS113においては、Pa(t1)とP1(t2)の絶対差|Pa(t1)−P1(t2)|を求めて閾値Dと比較し(ステップS301)、|Pa(t1)−P1(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant1(t2)を選択してステップS310へ進む。
ステップS301において|Pa(t1)−P1(t2)|がDよりも大きい場合は、Pa(t1)とP2(t2)の絶対差|Pa(t1)−P2(t2)|を求めて再び閾値Dと比較し(ステップS302)、|Pa(t1)−P2(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant2(t2)を選択してステップS410へ進む。
ステップS302において|Pa(t1)−P2(t2)|がDよりも大きい場合は、Pa(t1)とP3(t2)の絶対差|Pa(t1)−P3(t2)|を求めて再び閾値Dと比較し(ステップS303)、|Pa(t1)−P3(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant3(t2)を選択してステップS510へ進む。
ステップS303において|Pa(t1)−P3(t2)|がDよりも大きい場合は、アンテナ切り替えを禁止し、現在選択されているアンテナをそのまま使用する(ステップS304)。
ステップS310でAnt1(t2)を選択した場合、もう一つのアンテナを選択する手順に移る。Pb(t1)とP2(t2)の絶対差|Pb(t1)−P2(t2)|を求めて閾値Dと比較し(ステップS311)、|Pb(t1)−P2(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant2(t2)を選択する(ステップS312)。
ステップS311において|Pb(t1)−P2(t2)|がDよりも大きい場合は、Pb(t1)とP3(t2)の絶対差|Pb(t1)−P3(t2)|を求めて再び閾値Dと比較し(ステップS313)、|Pb(t1)−P3(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant3(t2)を選択する(ステップS314)。
ステップS313において|Pb(t1)−P3(t2)|がDよりも大きい場合は、Pb(t1)とP4(t2)の絶対差|Pb(t1)−P4(t2)|を求めて再び閾値Dと比較し(ステップS315)、|Pb(t1)−P4(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant4(t2)を選択する(ステップS316)。
ステップS315において|Pb(t1)−P4(t2)|がDよりも大きい場合は、現在選択されているアンテナAntB(t1)をそのまま使用する(ステップS317)。ただし、AntBがAnt1と同じアンテナである場合はAnt2を選択する。
ステップS410でAnt2(t2)を選択した場合、もう一つのアンテナを選択する手順に移る。Pb(t1)とP1(t2)の絶対差|Pb(t1)−P1(t2)|を求めて閾値Dと比較し(ステップS411)、|Pb(t1)−P1(t2)|がDよりも小さい場合はAnt1(t2)を選択する(ステップS412)。
ステップS411において|Pb(t1)−P1(t2)|がDよりも大きい場合は、Pb(t1)とP3(t2)の絶対差|Pb(t1)−P3(t2)|を求めて再び閾値Dと比較し(ステップS413)、|Pb(t1)−P3(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant3(t2)を選択する(ステップS414)。
ステップS413において|Pb(t1)−P3(t2)|がDよりも大きい場合は、Pb(t1)とP4(t2)の絶対差|Pb(t1)−P4(t2)|を求めて再び閾値Dと比較し(ステップS415)、|Pb(t1)−P4(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant4(t2)を選択する(ステップS416)。
ステップS415において|Pb(t1)−P4(t2)|がDよりも大きい場合は、現在選択されているアンテナAntB(t1)をそのまま使用する(ステップS417)。ただし、AntBがAnt2と同じアンテナである場合はAnt1を選択する。
ステップS510でAnt3(t2)を選択した場合、もう一つのアンテナを選択する手順に移る。Pb(t1)とP1(t2)の絶対差|Pb(t1)−P1(t2)|を求めて閾値Dと比較し(ステップS511)、|Pb(t1)−P1(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant1(t2)を選択する(ステップS512)。
ステップS511において|Pb(t1)−P1(t2)|がDよりも大きい場合は、Pb(t1)とP2(t2)の絶対差|Pb(t1)−P2(t2)|を求めて再び閾値Dと比較し(ステップS513)、|Pb(t1)−P2(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant2(t2)を選択する(ステップS514)。
ステップS513において|Pb(t1)−P2(t2)|がDよりも大きい場合は、Pb(t1)とP4(t2)の絶対差|Pb(t1)−P4(t2)|を求めて再び閾値Dと比較し(ステップS515)、|Pb(t1)−P4(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant4(t2)を選択する(ステップS516)。
ステップS515において|Pb(t1)−P4(t2)|がDよりも大きい場合は、現在選択されているアンテナAntB(t1)をそのまま使用する(ステップS517)。ただし、AntBがAnt3と同じアンテナである場合はAnt1を選択する。
図14には、上述の手順に従ったアンテナ選択の具体的な例を示す。時刻t1における各アンテナ#1,#2,#3,#4のRSSI値をdBm単位で表現した数値をRSSI(t1)とし、それぞれ-50dBm,-60dBm,-62dBm,-58dBmとする。この場合、アンテナ#1と#4が選ばれているとする。次のアンテナ切り替えを判定する時刻t2におけるRSSI(t2)が図14のように-45dBm、-47dBm、-52dBm、-56dBmと予測されるとする。
このときRSSI値の大きい順に2個のアンテナを選択すると、アンテナ#1と#2が選択されることになるが、アンテナ#4から#1に切り替わることでそのRSSI値の絶対差が11dBとなり、予め定められたバックオフ値D=10dBを上回るために、A/D変換器46−1〜46−Kの出力値の飽和が生じて復調エラーが生じる。このような現象を回避するために、本実施形態ではD<10dBとなる3番目のRSSI値を持つアンテナ#3が選択される。結果として、時刻t2ではアンテナ#1はそのままで、アンテナ#4から#3に切り替える動作を行う。
また、この場合に2番目のアンテナの切り替え前後のRSSI値の絶対差がDを上回るとき、結局アンテナ切り替えを行わずに、時刻t1で使っていたアンテナをそのまま時刻t2でも使うという方法も有効である。
図9における復調器45−1〜45−Kは、同時に時間及び周波数の同期処理などを行う。ここで、復調器45−1〜45Kのうちいずれか一つの復調器がマスタブランチとしてこれらの同期処理の大部分を担い、他の復調器はスレーブブランチとして、マスタブランチで処理した結果に同期するような形態も考えられる。この場合、同期外れが起こるかどうかはマスタブランチの同期処理に依存する。そこで、アンテナ選択時には、マスタブランチ及びスレーブブランチにつながるアンテナを同時に別のアンテナに切り替えないような拘束条件を設ける。例えば、マスタブランチの受信レベルが同期外れの生じる程度まで低くならない限り、アンテナ切り替えを許可しない条件とする。これによって、マスタブランチの復調器に接続されるアンテナブランチにおいて、アンテナ切り替えによる位相不連続の影響を極力減らし、誤りが起こりにくくすることができる。
上述した第3の実施形態に係るダイバーシチ受信機は、特に直交周波数分割多重(OFDM)システムの受信機として有用である。例えばOFDM受信機では、切り替えダイバーシチ処理を高速フーリエ変換(FFT)処理より前の時間領域で行う形態と、FFT処理後の周波数領域で行う形態が考えられる。前者は特に多くの遅延波が存在して、周波数選択性フェージングの影響を受けるような場合には、最適なダイバーシチ利得が得られない。このため、後者のFFT処理後の周波数領域でサブキャリア毎にダイバーシチを行う形態が検討されている。特に、サブキャリア毎に独立な最大比合成ダイバーシチを採用することにより、S/N(信号対雑音電力比)を最大化することができる。
この場合も前述の考察と同様に、2素子のサブキャリア最大比合成ダイバーシチが妥当である。このとき、2個のアンテナの受信信号のレベルが低いときにはFFT処理後のダイバーシチ効果が薄れるため、なるべく受信電力の高いアンテナであるのが望ましい。そこで、第3の実施形態で説明したようにN個(Nは3以上の複数)のアンテナを備え、その中から受信レベルの高い順からK=2個のアンテナを選択してダイバーシチ合成処理を行うことで、大きな改善が期待できる。この場合、復調器45−1〜45Kの中にFFTユニットを含ませ、FFT処理後の信号に対してダイバーシチ合成器46によるダイバーシチ合成処理を行う。
OFDMシステムの場合、通常1OFDMシンボル毎にシンボルの一部をコピーしたガードインターバル(GI)が挿入される。周知のように、遅延波が存在する場合にはGIの部分を除去してからFFT処理を行うことで、シンボル間干渉の影響を軽減することができる。この場合、ダイバーシチのアンテナ切り替えは、GI内のあるタイミングで行う好ましい。GIの先頭タイミングは、FFT前にフレーム同期およびシンボル同期をとる処理の際に求められる。これによりGIに続くデータシンボル内でのアンテナ切り替えが発生せず、位相の急激な変化も生じないため、ビット誤りの発生確率を低減することができる。
一方、逆にあえてGI以外の区間、つまりOFDMシンボル内のデータ部でアンテナ切替えを行うことも有効である。なぜならGIはFFT処理前の同期処理の際に用いられることが多く、GI内での信号の位相連続性を利用する方式もあるため、GI内でアンテナ切り替えを行うと位相不連続状態により、同期捕捉に失敗する可能性が高くなる。そのような場合は、まずは同期を確立することを最優先させるため、データ部でアンテナ切り替えを行うようにした方がよい。この場合、データ内での位相不連続が存在するため、FFT処理後の信号はサブキャリア間の直交性が崩れ、サブキャリアによってはそのシンボルでエラーが生じることがある。しかし、デインタリーブ及び誤り訂正符号の効果によってエラーを軽減する可能性があり、結果的に誤りが生じないことがある。つまり同期が外れないことに最重点を置く方法である。以上のことから、本実施形態のダイバーシチ受信機をOFDM受信機に適用する場合、アンテナの切り替えは任意のタイミングで行ってよい。
パケット通信の場合は、パケット先頭のプリアンブルのような、データ復号に関与しない部分においてアンテナ切り替えを行うことで、上記のような問題は起こらない。しかし、地上ディジタル放送信号などのような連続信号を受信する受信機の場合には、プリアンブル等がないためにアンテナ切り替えの影響が生じる。
地上ディジタル放送のようにフェージングの影響を取り除くために時間インタリーブが用いられているシステムでは、アンテナを切替える最低時間間隔を時間インタリーブ長より長くすることにより、アンテナ切り替えによるシンボル誤りが起こる確率を低減することができる。インタリーブ時間内に2回以上のアンテナ切り替えがあるような場合には、誤り訂正符号の訂正能力を超えてしまい、逆に誤りビットが頻発することがあるため、これを回避することができる。
(第4の実施形態)
次に、本発明に係る第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、受信機の構成は第3の実施形態の図6と同様であり、以下のようにアンテナの選択方法が第3の実施形態と異なる。
まず、現在の時刻t1において2つのアンテナA,Bが選択されていると仮定する。以降の処理においてステップS109,ステップS112,ステップS113以前の処理の流れは第3の実施形態と同様に図10に示す通りである。
図15を参照してアンテナA以外の3つのアンテナから一つを選択する図10のステップS109の手順を説明する。ステップS109において、Pb(t1)とP1(t2)の絶対差|Pb(t1)−P1(t2)|を求めて閾値Dと比較し(ステップS601)、|Pb(t1)−P1(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant1(t2)を選択する(ステップS604)。
ステップS601において|Pb(t1)−P1(t2)|がDよりも大きい場合は、Ant1(t2)を選択した後、受信ユニットのAGCゲインをGに設定する(ステップS602)。切り替え前のアンテナに接続されている受信ユニットのAGCゲインG1と、時刻t2の選択候補のアンテナに接続されている受信ユニットのAGCゲインG2が既知である場合、時刻t2におけるGを例えばG1とG2の平均値とする。そして、適当な時間の後、例えば時刻t3にGをA/D変換器6への入力振幅が復調器7にとって適切な値になるようなゲインG’へ漸近するように再び更新し(ステップS603)、後は本来のAGC動作を行う。
次に、図16を参照してアンテナB以外の3つのアンテナから一つを選択する図10のステップS112の手順を説明する。ステップS112においては、Pa(t1)とP1(t2)の絶対差|Pa(t1)−P1(t2)|を求めて閾値Dと比較し(ステップS605)、|Pa(t1)−P1(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant1(t2)を選択する(ステップS608)。
ステップS605において|Pa(t1)−P1(t2)|がDよりも大きい場合は、以降図12の場合と同様の処理を行う(ステップS606,ステップS607)。
次に、図17を参照して4つのアンテナから2つを選択する図10のステップS113の手順を説明する。ステップS113においては、Pa(t1)とP1(t2)の絶対差|Pa(t1)−P1(t2)|を求めて閾値Dと比較し(ステップS610)、|Pa(t1)−P1(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant1(t2)を選択する(ステップS616)。
ステップS610において|Pa(t1)−P1(t2)|がDよりも大きい場合は、Ant1(t2)を選択した後、受信ユニットのAGCゲインをGに設定する(ステップS612)。切り替え前のアンテナに接続されている受信ユニットのAGCゲインG1と、時刻t2の選択候補のアンテナに接続されている受信ユニットのAGCゲインG2が既知である場合、時刻t2におけるGを例えばG1とG2の平均値とする。そして、適当な時間の後、例えば時刻t3に、GをA/D変換器6への入力振幅が復調器7にとって適切な値になるようなゲインG’へ漸近するように再び更新し(ステップS613)、後は本来のAGC動作を行う。
さらに、ステップS610の後、Pb(t1)とP2(t2)の絶対差|Pb(t1)−P2(t2)|を求めて閾値Dと比較し(ステップS611)、|Pb(t1)−P2(t2)|がDよりも小さい場合は、Ant2(t2)を選択する(ステップS617)。ステップS611において|Pb(t1)−P2(t2)|がDよりも大きい場合は、Ant2(t2)を選択した後、受信ユニットのAGCゲインをGに設定する(ステップS614)。AGCゲインは前記と同様、適当な時間後にG’へと漸近するように更新する(ステップS615)。
さらに、第2の実施形態と同様にAGCゲインの更新ステップ幅を小さくして、n段階の更新を行っても良い。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。