以下に、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に従って説明する。本発明は、携帯電話、ビデオカメラ、スチルカメラ等の動画撮影又は静止画撮影の機能を有する各種の撮像装置又はこれらの撮像装置に用いられた各種のレンズユニットに適用することができる。
撮像装置1としては、例えば、図1に示すような携帯電話がある。撮像装置1は、第1の筐体2と第2の筐体3とがヒンジ部4を介して折り畳み自在に結合されている。
第1の筐体2にはスピーカー5、表示部6及びアンテナ7が設けられ、該アンテナ7は伸縮自在に構成されている。
第2の筐体3には押しボタンや回転式ダイヤルを含む各種の操作部8、8、・・・及びマイクロフォン9が設けられている。
ヒンジ部4には撮像ユニット10が組み込まれている。操作部8、8、・・・のうち所定の押しボタンは画像を撮影するための操作部8として機能し、この操作部8を押圧操作することにより撮像ユニット10が動作されて画像の撮影を行うことができる。
撮像装置1は、識別を目的とする各種の表示、例えば、1次元バーコードや2次元バーコード1000、2000(図2参照)等の情報を読み取って識別する機能をも有している。撮像ユニット10によってこれらのバーコードの撮影が行われると、そのコードパターンが認識され、認識されたコードパターンに基づいた情報が読み取られる。
次に、撮像ユニット10の構成例について説明する。尚、以下には、便宜上、光軸方向(図3に示すS参照)を前後方向とし、被写体側を前方として説明を行う。
撮像ユニット10は鏡筒11に所要の各部が配置されて成り、レンズユニット10aと後述する撮像素子を有する撮像部とによって構成され、鏡筒11は第1の部材12と第2の部材13とが前後で結合されて成る(図3乃至図6参照)。第1の部材12及び第2の部材13は、例えば、ポリカーボネート等の樹脂材料によって形成されている。
第1の部材12は、図7及び図8に示すように、前後方向を向くベース面部14と、該ベース面部14の左右両側縁からそれぞれ後方へ突出された突出部15、15と、ベース面部14の上縁及び下縁の中央部からそれぞれ後方へ突出された嵌合突部16、16とが一体に形成されて成る。
ベース面部14の前面14aには円形状の浅い取付凹部17が形成されている(図7参照)。ベース面部14の中央部には前後に貫通された透過孔18が形成されている。
ベース面部14の後面14bには、透過孔18の周囲の位置に後方へ突出されたリブ19、19、・・・が設けられている(図8参照)。リブ19、19、・・・は円弧状に形成され、周方向に等間隔に設けられており、各後面に後方へ僅かに突出された受け台19a、19a、・・・を有している。受け台19a、19a、・・・は後述する可動部が前方へ移動されたときに該可動部が接触可能とされ、可動部の前方への移動を規制する機能を有する。例えば、可動部が受け台19a、19a、・・・に接触した位置がフォーカス駆動におけるマクロ端とされる。
尚、撮像装置1にあっては、後述するように、駆動用コイルに対する通電によるリニアアクチュエーターの駆動によって可動部が物点無限遠側からマクロ端側へ移動されるが、通電量を制御することにより可動部を受け台19a、19a、・・・に接触する位置の手前側まで移動可能とし、この手前側の位置を可動部の前方側の移動端であるマクロ端として設定してもよい。
第1の部材12の突出部15、15はそれぞれ上下方向において連続した3つの部分によって構成され、上側から順に上突部20、20、中突部21、21、下突部22、22とされている(図7及び図8参照)。
上突部20、20の後端部及び下突部22、22の後端部の外面には、それぞれ側方及び後方に開口された凹状の位置決め部20a、20a、22a、22aが形成されている(図8参照)。
上突部20、20及び下突部22、22の各一部は他の部分より後方への突出量が大きくされ、この部分の先端面がバネ押付面20b、20b、22b、22bとして形成されている。
中突部21、21はベース面部14からの後方への突出量が上突部20、20及び下突部22、22のベース面部14からの後方への突出量より小さくされている。中突部21、21には、その上下方向における中央部に、それぞれ後方に開口された切欠部21a、21aが形成されている。
ベース面部14の後面14bのうち、その上下両端部は4つのバネ挟持面14c、14c、・・・として形成されている(図8参照)。バネ挟持面14c、14c、・・・は、それぞれ上突部20、20と嵌合突部16との間及び下突部22、22と嵌合突部16との間に位置されている。
第2の部材13は、図7及び図9に示すように、前後方向を向くベース面部23と、該ベース面部23の上下両側縁からそれぞれ後方へ突出された突出部24、24と、ベース面部23の左右両側縁の中央部からそれぞれ後方へ突出された嵌合突部25、25とが一体に形成されて成る。
ベース面部23の後面23aには矩形状の浅い配置凹部26が形成されている(図9参照)。ベース面部23の中央部には前後に貫通された光透過孔27が形成されている。ベース面部23の後面23aには、その4隅にそれぞれ後方へ突出された位置決め用突部28、28、・・・が設けられている。
ベース面部23の前面23bには、光透過孔27の周囲の位置に前方へ突出されたリブ29、29が設けられている(図7参照)。リブ29、29の前面には光透過孔27の周方向に離隔した位置に前方へ僅かに突出された受け台29a、29a、29aが設けられている。受け台29a、29a、29aは可動部が後方へ移動されたときに該可動部が接触され、可動部の後方への移動を規制する機能を有する。可動部が受け台29a、29a、29aに接触した位置がフォーカス駆動における物点無限遠での合焦位置とされる。
ベース面部23の前面23bには、その左右両端部に上下に離隔して位置決めピン30、30、・・・が設けられている(図7参照)。ベース面部23の前面23bのうち、位置決めピン30、30、・・・が設けられた面は、バネ押さえ面23c、23c、・・・として形成されている。
ベース面部23の右側面23dには、上下に離隔して端子配置部31、31が設けられている。
第2の部材13の突出部24、24は、左端寄りの部分と右端寄りの部分とがそれぞれ他の部分より前方へ大きく突出された飛出部32、32、・・・として設けられている。飛出部32、32、・・・の先端面は、それぞれバネ挟持面32a、32a、・・・として形成されている(図7参照)。
上側の飛出部32、32の直ぐ下側の位置及び下側の飛出部32、32の直ぐ上側の位置には、それぞれ前方へ突出された位置決め突部33、33、・・・が設けられている。
嵌合突部25、25にはそれぞれ後方に開口された切欠部25a、25aが形成されている。
第1の部材12の前面14aに形成された取付凹部17には、例えば、接着によりカバーガラス34が取り付けられる(図3乃至図5参照)。
鏡筒11には第1の付勢用板バネ35が取り付けられる(図3及び図4参照)。
第1の付勢用板バネ35は弾力性に富む金属材料、例えば、ベリリウム銅等によって形成され、厚み方向が前後方向、即ち、光軸方向に一致しており、例えば、厚さが0.07mmとされている。第1の付勢用板バネ35は、図10に示すように、保持部36と4つのバネ部37、37、・・・と4つの被取付部38、38、・・・と連結部39、39とが一体に形成されて成る。
保持部36は円環状に形成されている。
バネ部37、37、・・・は横倒しの略S字状に形成され、一端が保持部36の周方向における等間隔の位置に連続されている。バネ部37は、保持部36から放射方向へ短く突出された傾斜部37aと、上下に延びる平行な3つの直線部37b、37b、37bと、隣り合う直線部37b、37b、37b間を連結する半円弧状の屈曲部37c、37cとから成り、最も内側に位置する直線部37bの一端が傾斜部37aの他端に連続されている。
被取付部38、38、・・・は左右に長く延び、それぞれ外端が最も外側に位置する直線部37b、37b、・・・の一端に連続されている。
連結部39、39は左右に延びる水平部39a、39aと一端が水平部39a、39aの左右両端部にそれぞれ連続し上下に短く延びる垂直部39b、39b、・・・とから成り、該垂直部39b、39b、・・・の他端がそれぞれ被取付部38、38、・・・の内側の端部に連続されている。連結部39、39は水平部39a、39aが被取付部38、38、・・・より保持部36側に寄って位置されている。
第1の付勢用板バネ35は、バネ部37、37、・・・の上下位置が線対称とされると共にバネ部37、37、・・・の左右位置も線対称とされているため、各バネ部37、37、・・・が同一のバネ力を発揮するように構成されている。
第1の付勢用板バネ35にあっては、バネ部37、37、・・・が前後に撓む方向へ弾性変形されることにより保持部36が被取付部38、38、・・・に対して前後方向(光軸方向)へ移動されるが、このとき光軸に直交する面内に生じる力は直線部37b、37b、・・・及び屈曲部37c、37c、・・・によって抑制され、保持部36は光軸方向へのみ移動される。
第1の付勢用板バネ35は被取付部38、38、・・・が、それぞれ第1の部材12のバネ挟持面14c、14c、・・・と第2の部材13のバネ挟持面32a、32a、・・・とによって狭持された状態で鏡筒11に取り付けられる。
第1の付勢用板バネ35は、弾性変形される前の状態において、保持部36、バネ部37、37、・・・、被取付部38、38、・・・及び連結部39、39の厚み方向における両面がそれぞれ同一平面上に位置される。従って、第1の付勢用板バネ35は平板状の材料を加工して形成すればよく、容易に製造することができる。
鏡筒11には第2の付勢用板バネ40が取り付けられる(図3及び図4参照)。
第2の付勢用板バネ40は弾力性に富む金属材料、例えば、ベリリウム銅等によって形成され、厚み方向が後述する接続端子部を除いて前後方向、即ち、光軸方向に一致されており、例えば、厚さが0.05mmとされている。第2の付勢用板バネ40は上下方向において線対称の形状とされた2つのバネ部材41、41によって構成されている。
バネ部材41は、図11に示すように、保持部42と2つのバネ部43、43と2つの被取付部44、44と接続端子部45とコイル接続部46とが一体に形成されて成る。
保持部42は半円環状に形成されている。
バネ部43、43、・・・は略S字状に形成され、各一端が保持部42の周方向に離隔した部分に連続されている。バネ部43は、保持部42から放射方向へ短く突出された傾斜部43aと、左右に延びる平行な3つの直線部43b、43b、43bと、隣り合う直線部43b、43b、43b間を連結する半円弧状の屈曲部43c、43cとから成り、最も内側に位置する直線部43bの一端が傾斜部43aの他端に連続されている。
被取付部44、44は一端が最も外側に位置する直線部43b、43bの一端に連続されている。被取付部44、44にはそれぞれ位置決め孔44a、44aが形成されている。
接続端子部45は一方の被取付部44に連続され該被取付部44に対して約90°折り曲げられて後方へ突出されている。
コイル接続部46は保持部42の周方向における中央部から放射方向へ突出されており、保持部42とバネ部43、43との各連続部間の中央部に設けられている。
第2の付勢用板バネ40は、バネ部43、43、・・・の上下位置が線対称とされると共にバネ部43、43、・・・の左右位置も線対称とされているため、各バネ部43、43、・・・が同一のバネ力を発揮するように構成されている。
第2の付勢用板バネ40にあっては、バネ部43、43、・・・が前後に撓む方向へ弾性変形されることにより保持部42、42が被取付部44、44、・・・に対して前後方向(光軸方向)へ移動されるが、このとき光軸に直交する面内に生じる力は直線部43b、43b、・・・及び屈曲部43c、43c、・・・によって抑制され、保持部42、42は光軸方向へのみ移動される。
第2の付勢用板バネ40は厚みが第1の付勢用板バネ35の厚みより薄くされており、第1の付勢用板バネ35のバネ力が第2の付勢用板バネ40のバネ力より大きくされている。
第2の付勢用板バネ40は、被取付部44、44、・・・に形成された位置決め孔44a、44a、・・・にそれぞれ第2の部材13の位置決めピン30、30、・・・が挿通され、被取付部44、44、・・・が第1の部材12と第2の部材13によって狭持された状態で鏡筒11に取り付けられる。
第2の付勢用板バネ40は、弾性変形される前の状態において、保持部42、42、バネ部43、43、・・・、被取付部44、44、・・・及びコイル接続部46、46の厚み方向における両面がそれぞれ同一平面上に位置される。また、第2の付勢用板バネ40の接続端子部45、45、・・・は、被取付部44、44に対して約90°折り曲げられる前の状態において、厚み方向における両面が被取付部44、44の厚み方向における両面とそれぞれ同一平面上に位置される。従って、第2の付勢用板バネ40は平板状の材料を加工して形成すればよく、容易に製造することができる。
鏡筒11の内部にはヨーク47が配置される(図3、図4及び図6参照)。ヨーク47は磁性金属材料によって形成され、円環状に形成された基部47aと該基部47aの外周縁から後方へ突出された外周部47bと基部47aの内周縁から後方へ突出された内周部47cとから成る。
ヨーク47の内部には駆動用マグネット48が配置される。駆動用マグネット48は同一の形状及び大きさに形成された4つの部分48a、48a、・・・から成り、各部分48a、48a、・・・がそれぞれヨーク47の基部47a及び外周部47bに接した状態でヨーク47に取り付けられる(図6参照)。
鏡筒11の内部には可動部49が光軸方向へ移動可能な状態で配置される。可動部49はレンズホルダー50、駆動用コイル51及びコイルホルダー52を有している(図3及び図4参照)。
レンズホルダー50は、図12に示すように、略円筒状に形成され、前端部に位置決め用円環部50aが設けられている。レンズホルダー50の外周面の前端寄りの位置には、周方向に等間隔に離隔して保持リブ50b、50bが設けられている。保持リブ50b、50b、・・・の前縁と位置決め用円環部50aの後縁とが連続されている。保持リブ50b、50b、・・・の位置決め用円環部50aの後縁と連続する面は、光軸方向に直交する接触面50c、50c、・・・として形成されている。レンズホルダー50の後端部には周方向に離隔して嵌合用突部50d、50d、・・・が設けられている。
レンズホルダー50の内部には、フォーカスレンズとして機能する複数の可動レンズや固定絞り等を有するレンズブロック53が取り付けられる(図3及び図6参照)。
駆動用コイル51は円環状に巻回されて形成され、外径が駆動用マグネット48の外径より小さくされている(図3、図4及び図6参照)。
コイルホルダー52は厚みの薄い略円環状に形成され、内周面に周方向に離隔して嵌合用凹部52a、52a、・・・が形成されている(図12参照)。コイルホルダー52の後面には位置決め用円環部52bが設けられている(図13参照)。コイルホルダー52の上下両端部にはそれぞれ上方及び下方へ突出されたコイル巻回用突部52c、52cが設けられている。
可動部49は、コイルホルダー52に駆動用コイル51及びレンズブロック53が取り付けられたレンズホルダー50が取り付けられることにより構成される(図3及び図14参照)。駆動用コイル51はコイルホルダー52の前面の外周部に取り付けられ、コイルホルダー52に取り付けられた状態において各端部がコイルホルダー52のコイル巻回用突部52c、52cにそれぞれ巻回される(図13及び図14参照)。レンズホルダー50は嵌合用突部50d、50d、・・・がそれぞれ嵌合用凹部52a、52a、・・・に嵌合されることによりコイルホルダー52に取り付けられる。
可動部49は第1の付勢用板バネ35の保持部36と第2の付勢用板バネ40の保持部42、42とによって保持される(図14参照)。
第1の付勢用板バネ35の保持部36は、図14に示すように、位置決め用円環部50aに外嵌され保持リブ50b、50b、・・・の接触面50c、50c、・・・に当接されることによりレンズホルダー50に取り付けられる。第2の付勢用板バネ40の保持部42、42は、図13に示すように、位置決め用円環部52bに外嵌されコイルホルダー52の後面に当接されることにより該コイルホルダー52に取り付けられる。
第2の付勢用板バネ40がコイルホルダー52に取り付けられた状態においては、図13及び図14に示すように、第2の付勢用板バネ40のコイル接続部46、46がそれぞれコイルホルダー52のコイル巻回用突部52c、52cと隣接して位置され、該コイル巻回用突部52c、52cに巻回された駆動用コイル51の各端部とコイル接続部46、46とがそれぞれ半田58、58によって接続される。
第2の部材13には遮光シート59及び撮像部60が取り付けられる(図3及び図4参照)。
遮光シート59は中央部に透孔59aを有し、第2の部材13の後面23aに形成された配置凹部26に配置されて取り付けられる(図6参照)。
撮像部60は撮像筐体61と制御回路基板62と撮像素子63とカバー64を有する。
撮像筐体61には前方に開口された浅い凹部61aが形成され、該凹部61aに撮像素子63が配置されている。撮像素子63としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサが用いられている。
制御回路基板62は撮像素子63の制御や駆動用コイル51への電力供給を行うための回路基板であり、右端部に上下に離隔して前方へ突出された接続部62a、62aが設けられている(図3及び図4参照)。制御回路基板62は撮像筐体61の後面に取り付けられ、制御回路基板62が撮像筐体61に取り付けられるときに、第2の部材13に設けられた位置決め用突部28、28、・・・によって制御回路基板62の第2の部材13に対する位置決めが行われる。
カバー64は撮像筐体61の前面に取り付けられ、撮像素子63を保護している。
撮像部60は遮光シート59が配置された状態で第2の部材13の後面23aに取り付けられる。
以下に、撮像ユニット10の組立手順について説明する。
先ず、第2の部材13に第2の付勢用板バネ40を組み付ける。第2の付勢用板バネ40の第2の部材13への組付は、上記したように、各バネ部材41、41の被取付部44、44、・・・に形成された位置決め孔44a、44a、・・・にそれぞれ第2の部材13の位置決めピン30、30、・・・を挿通させることにより行う。このとき第2の付勢用板バネ40の接続端子部45、45はそれぞれ第2の部材13の端子配置部31、31に配置される。
次に、可動部49を第2の付勢用板バネ40に組み付ける。可動部49が第2の付勢用板バネ40に組み付けられた状態においては、上記したように、第2の付勢用板バネ40の保持部42、42によって可動部49が保持される。
次いで、駆動用マグネット48が取り付けられたヨーク47を第2の部材13に組み付ける。ヨーク47は第2の部材13の内側に嵌め込まれるようにして組み付けられる。ヨーク47は、その後端面が第2の部材13の内面の所定の部分に突き当てられた状態で配置される(図6参照)。ヨーク47が第2の部材13に組み付けられた状態においては、駆動用コイル51がヨーク47の内周部47cと駆動用マグネット48との間に位置される。
このようにヨーク47の内周部47cと駆動用マグネット48との間に駆動用コイル51が配置されることにより、ヨーク47、駆動用マグネット48及び駆動用コイル51によってリニアアクチュエーター65が構成される(図6参照)。
続いて、第1の付勢用板バネ35を可動部49に組み付ける。第1の付勢用板バネ35の可動部49への組付は、上記したように、保持部36を位置決め用円環部50aに外嵌し保持リブ50b、50b、・・・の接触面50c、50c、・・・に当接させることにより行う。第1の付勢用板バネ35が可動部49に組み付けられた状態においては、第1の付勢用板バネ35の被取付部38、38、・・・がそれぞれ第2の部材13の飛出部32、32、・・・の先端面であるバネ挟持面32a、32a、・・・上に位置される。
次いで、第1の部材12を第2の部材13に組み付けて第1の部材12と第2の部材13を結合する。第1の部材12の第2の部材13への組付は、第2の部材13の位置決めピン30、30、・・・をそれぞれ第1の部材12の位置決め部20a、20a、22a、22aに挿入して嵌合することにより行う。
位置決めピン30、30、・・・は、上記したように、第2の付勢用板バネ40の位置決め孔44a、44a、・・・にそれぞれ挿入されている。従って、位置決めピン30、30、・・・は第2の付勢用板バネ40、第1の部材12及び第2の部材13間の3者間の結合及び位置決めの機能を有するため、その分、第2の付勢用板バネ40、第1の部材12及び第2の部材13間の位置精度の向上を図ることができると共に位置決めピン30、30、・・・の共用化による部品点数の削減を図ることができる。
尚、上記には、第2の部材13に位置決めピン30、30、・・・を設け、第1の部材12に位置決めピン30、30、・・・が挿入される位置決め部20a、20a、22a、22aを形成した例を示したが、逆に、第1の部材12に位置決めピンを設け、第2の部材13に位置決めピンが挿入される位置決め部を形成してもよい。この場合には、第2の付勢用板バネ40に位置決め孔44a、44a、・・・を形成せずに、第1の付勢用板バネ35に位置決めピンが挿入される位置決め孔を形成すればよい。
第1の部材12と第2の部材13が結合された状態においては、第1の部材12の突出部15、15の上端部間に第2の部材13の一方の突出部24が挿入されるように配置され、第1の部材12の突出部15、15の下端部間に第2の部材13の他方の突出部24が挿入されるように配置され、突出部15、15、24、24によって角筒状の部分が構成される。
従って、鏡筒11の組立が容易であると共に光軸方向から投影した外形状が略円形状とされた可動部49が、箱状の鏡筒11によって閉塞された構造となるためレンズユニット10aを含む撮像ユニット10の小型化を図ることができる。また、鏡筒11がベース面部14、23と突出部15、15、24、24とによって構成された箱状に形成されて隙間の少ない構造とされるため、鏡筒11の内部への塵埃の侵入を防止することができる。
上記のように、第1の部材12と第2の部材13が結合されると、第1の部材12のバネ挟持面14c、14c、・・・と第2の部材13のバネ挟持面32a、32a、・・・とによって第1の付勢用板バネ35の被取付部38、38、・・・が挟持されて保持される。同時に、第1の部材12の上突部20、20及び下突部22、22のバネ押付面20b、20b、22b、22bによって、第2の付勢用板バネ40の被取付部44、44、・・・が第2の部材13のバネ押さえ面23c、23c、・・・に押し付けられて保持される。
このように第1の付勢用板バネ35の被取付部38、38、・・・及び第2の付勢用板バネ40の被取付部44、44、・・・が第1の部材12と第2の部材13によって保持されるため、別に、第1の付勢用板バネ35及び第2の付勢用板バネ40を鏡筒11に取り付けるために接着等の工程が必要なく、レンズユニット10aを含む撮像ユニット10の組立工程における作業性の向上を図ることができる。
また、第1の付勢用板バネ35の被取付部38、38、・・・が第1の部材12のベース面部14と第2の部材13の突出部24、24とによって狭持されて取り付けられ、第2の付勢用板バネ40の被取付部44、44、・・・が第2の部材13のベース面部23と第1の部材12の突出部15、15とによって狭持されて取り付けられるため、第1の付勢用板バネ35と第2の付勢用板バネ40の鏡筒11に対する取付位置が互いに直交する異なる位置となり、第1の部材12及び第2の部材13を複雑な構造とすることなく第1の付勢用板バネ35と第2の付勢用板バネ40を容易に取り付けることができる。
次に、第1の部材12にカバーガラス34を取り付け、第2の部材13に遮光シート59及び撮像部60を取り付ける。尚、カバーガラス34の第1の部材12への取付は、第1の付勢用板バネ35、第2の付勢用板バネ40、可動部49等を組み付ける前に、予め行ってもよい。
次いで、第2の部材13に取り付けられている撮像部60の接続部62a、62aと第2の付勢用板バネ40の接続端子部45、45とをそれぞれ半田付け等により接続する。
第1の部材12と第2の部材13が結合され鏡筒11が形成された状態においては、第1の部材12の嵌合突部16、16が第2の部材13の飛出部32、32、・・・間に挿入されて嵌合される(図5参照)。
第2の部材13の嵌合突部25、25はそれぞれ第1の部材12の上突部20、20と下突部22、22間に挿入されて嵌合されるが、嵌合突部25、25の先端面は中突部21、21の先端面と離隔して位置される(図15参照)。従って、嵌合突部25、25と中突部21、21との間には鏡筒11の内部に連通する十字状の開口が形成され、この開口が接着孔66、66とされる。接着孔66、66に対応する位置にはヨーク47の外周部47bが位置される(図6参照)。
また、第1の部材12と第2の部材13が結合された状態においては、第1の部材12のベース面部14の後面14bとヨーク47の基部47aとの間に一定の隙間67が形成され、該隙間67は接着孔66、66と連通される(図6参照)。
鏡筒11に形成された接着孔66、66には接着剤68、68が挿入されて塗布される。接着剤68、68は、例えば、紫外線硬化型の接着剤である。
接着孔66、66に塗布された接着剤68、68は、接着孔66、66からベース面部14の後面14bとヨーク47の基部47aとの間に形成された隙間67にも浸透する。接着剤68、68が接着孔66、66において硬化されることにより、第1の部材12と第2の部材13とヨーク47の3者間が接着される(図6参照)。また、隙間67において接着剤68、68が硬化されることにより第1の部材12とヨーク47が接着される。
上記のように、レンズユニット10aにあっては、接着孔66、66に塗布した接着剤68、68によって第1の部材12と第2の部材13とヨーク47の3者間を接着すると共に隙間67に浸透した接着剤68、68によって第1の部材12とヨーク47を接着するようにしている。従って、第1の部材12、第2の部材13及びヨーク47間の接着強度が高く、耐振動性及び耐落下衝撃性の向上を図ることができる。
また、接着孔66、66をそれぞれ十字状に形成しているため、その分、接着強度を向上させることができる。
尚、接着剤68、68としては、例えば、エポキシ系樹脂接着剤を用いることも可能であるが、エポキシ系樹脂接着剤を用いた場合には、2液性では硬化速度が速いが管理が面倒であるという欠点があり、1液性では管理が容易であるが硬化速度が遅いという欠点がある。従って、上記のように、接着剤68、68として紫外線硬化型の接着剤を用いることにより、接着剤の管理の容易化及び接着工程の短縮化を図ることができる。特に、エポキシ系樹脂接着剤を用いた場合には30分以上の硬化時間が必要であるが、紫外線硬化型の接着剤を用いた場合の硬化時間は5秒乃至30秒であり、レンズユニット10aを含む撮像ユニット10の組立工程に要する時間の大幅な短縮化が図られる。
また、1液性の熱硬化型のエポキシ系樹脂接着剤を用いた場合には、硬化時間が長くなることに加え、専用の熱処理炉を必要とし製造コストの高騰を生じたり熱処理によるレンズの偏心等の不具合を生じるおそれがあるが、接着剤68、68として紫外線硬化型の接着剤を用いることにより、これらの不具合の発生を回避することもできる。
さらに、一般に、紫外線硬化型の接着剤は、樹脂に対する接着強度に比較して金属に対する接着強度は劣ることが知られているが、上記のように、接着剤68、68によって金属材料によって形成されたヨーク47と樹脂材料によって形成された第1の部材12、第2の部材13間の接着に加え、ともに樹脂材料によって形成された第1の部材12と第2の部材13間を接着しているため、ヨーク47の鏡筒11に対する強固な固定状態を確保することができる。
レンズユニット10aにあっては、第1の部材12の上突部20、20及び下突部22、22に形成された位置決め部20a、20a、22a、22aがそれぞれ側方に開口された凹状に形成されているため、位置決め部20a、20a、22a、22aに挿入された位置決めピン30、30、・・・が外部に露出される。従って、第1の部材12と第2の部材13を結合した後に、位置決め部20a、20a、22a、22aと位置決めピン30、30、・・・との結合部分を接着してもよい。このように位置決め部20a、20a、22a、22aと位置決めピン30、30、・・・との結合部分を接着することにより、第1の部材12と第2の部材13の強固な固定状態を確保することができる。
以上のように、第1の部材12と第2の部材13を結合して接着することにより、撮像ユニット10の組立を完了する。
上記のように撮像ユニット10の組立は、第2の部材13に遮光シート59及び撮像部60を取り付け、順に、第2の付勢用板バネ40、可動部49、駆動用マグネット48が取り付けられたヨーク47、第1の付勢用板バネ35及び第1の部材12を第2の部材13に組み付けることにより行うことができる。従って、レンズユニット10aを含む撮像ユニット10の組立作業が簡単であり作業時間の短縮化を図ることができる。
上記のようにして組み立てられた撮像ユニット10にあっては、光軸方向から投影した外形状は、鏡筒11が略矩形状を為し、可動部49が略円形状を為している(図16及び図17参照)。この状態において、第1の付勢用板バネ35のバネ部37、37、・・・及び第2の付勢用板バネ40のバネ部43、43、・・・は鏡筒11内における4隅に位置される。
従って、バネ部37、37、・・・、43、43、・・・の配置スペースが最小限で済み、レンズユニット10aを含む撮像ユニット10の小型化を図ることができる。
上記のように組み立てられた撮像ユニット10においては、上記したように、第1の付勢用板バネ35のバネ力が第2の付勢用板バネ40のバネ力より大きくされている。従って、駆動用コイル51に対して通電が行われていないリニアアクチュエーター65の非駆動時においては、図6に示すように、可動部49が第1の付勢用板バネ35の付勢力によって光軸方向における撮像部60側(後側)へ付勢され、コイルホルダー52が第2の部材13の受け台29a、29a、29aに接触されてフォーカス駆動における物点無限遠の状態での位置に保持されている。この状態においては、第1の付勢用板バネ35は保持部36が被取付部38、38、・・・に対して前側に位置され、第2の付勢用板バネ40は保持部42、42が被取付部44、44、・・・に対して後側に位置されている。
尚、画素ピッチやレンズの敏感度による影響を排除して可動部49を物点無限遠に位置させるために、コイルホルダー52が第2の部材13の受け台29a、29a、29aに接している状態において、撮像部60を第2の部材13に対して前後方向に移動させて調整するようにしてもよい。
一般に、撮像装置1のユーザーは、可動部49がマクロ端にある状態よりも物点無限遠での合焦位置又はその近傍にある状態で使用する場合の方が多い。従って、上記のように、リニアアクチュエーター65の非駆動時において、第1の付勢用板バネ35の付勢力によって常に可動部49を物点無限遠の位置に来た状態で保持することにより、使用頻度の高い状態において消費電力が不要となり、消費電力を最小限に抑えることができる。
尚、マクロ端での使用頻度が物点無限遠側での使用頻度より高いことが想定される場合には、第2の付勢用板バネ40のバネ力を第1の付勢用板バネ35のバネ力より大きくし、リニアアクチュエーター65の非駆動時において、第2の付勢用板バネ40の付勢力によって常に可動部49をマクロ端で保持することにより、使用頻度の高い状態において消費電力を不要とする構成としてもよい。
撮像装置1のマクロ端での使用例としては、1次元バーコードや図2に示した2次元バーコード1000、2000等の識別を目的とする各種の表示の情報の読取時等がある。
撮像装置1を携帯用の装置として使用する場合には、撮像装置1を使用する向きによって可動部49に姿勢差が生じ得るが、上記のように、使用頻度の高い物点無限遠の状態においては可動部49が第1の付勢用板バネ35の付勢力によって第2の部材13に押し付けられて保持されているため、可動部49の姿勢差が生じ難く、画像の品質の向上を図ることができる。
リニアアクチュエーター65の駆動時には、駆動用コイル51に対して通電が行われる。この通電は、撮像部60の制御回路基板62及び第2の付勢用板バネ40を介して行われる。従って、第2の付勢用板バネ40は、可動部49を付勢する役割に加え通電手段としても用いられるため、レンズユニット10aにおいては駆動用コイル51に通電するために別に専用の手段が必要なく、部品点数の削減を図ることができる。
駆動用コイル51に対して所定の一方向への通電が行われると、リニアアクチュエーター65の駆動により電圧の大きさに応じた位置まで可動部49が光軸方向において被写体側(前方)へ移動され(図18参照)、レンズホルダー50が第1の部材12の受け台19a、19a、・・・に接触するマクロ端まで移動可能とされる。このマクロ端の状態においても、第1の付勢用板バネ35は保持部36が被取付部38、38、・・・に対して前側に位置され、第2の付勢用板バネ40は保持部42、42が被取付部44、44、・・・に対して後側に位置されるが、可動部49の前方への移動に伴ってバネ部37、37、・・・、43、43、・・・の変形量が変化し、保持部36と被取付部38、38、・・・との光軸方向における位置は物点無限遠の状態より離隔され、保持部42、42と被取付部44、44、・・・との光軸方向における位置は物点無限遠の状態より接近する。
駆動用コイル51に対する通電が停止されると、第1の付勢用板バネ35の付勢力によって可動部49が後方へ移動される。
このように撮像装置1にあっては、駆動用コイル51に通電することにより可動部49を光軸方向における被写体側(前方)へ移動させると共に駆動用コイル51への通電を停止することにより可動部49を光軸方向における撮像部60側(後方)へ移動させるようにしているため、駆動用コイル51に対する通電の方向が一方向で済み、フォーカス駆動時における制御の容易化及び省電力化を図ることができる。
尚、上記には、同一の材料によって形成した第1の付勢用板バネ35と第2の付勢用板バネ40の厚みを異ならせることにより、第1の付勢用板バネ35のバネ力を第2の付勢用板バネ40のバネ力より大きくした例を示したが、第1の付勢用板バネ35のバネ力を第2の付勢用板バネ40のバネ力より大きくする方法としては両者を同一の材料によって形成し厚みを異ならせる方法に限られることはなく、例えば、両者の形成材料を異ならせる方法、各バネ部の形状や幅を異ならせる方法等の各種の方法を用いることができる。
以上に記載した通り、レンズユニット10aにあっては、可動部49が第1の付勢用板バネ35と第2の付勢用板バネ40によって保持され、第1の付勢用板バネ35のバネ部37、37、・・・の直線部37b、37b、・・・及び屈曲部37c、37c、・・・によって光軸に直交する面内において可動部49に生じる移動力が抑制されると共に第2の付勢用板バネ40のバネ部43、43、・・・の直線部43b、43b、・・・及び屈曲部43c、43c、・・・によっても光軸に直交する面内において可動部49に生じる移動力が抑制されるため、可動部49の光軸に対する傾斜やずれを生じることなく可動部49を光軸方向へ移動させることができる。
また、レンズユニット10aにあっては、可動部49を光軸方向へ移動させるためのガイド軸等のガイド手段を必要としないため、その分、機構の簡素化及び配置スペースの低減による小型化を図ることができる。
さらに、第1の付勢用板バネ35と第2の付勢用板バネ40とが可動部49を挟んで光軸方向において離隔して配置され、可動部49が、常に、第1の付勢用板バネ35によって後方へ付勢されると共に第2の付勢用板バネ40によって前方へ付勢された状態で移動されるため、可動部49を高い位置精度を有した状態で移動された位置に保持することができる。
さらにまた、第1の付勢用板バネ35、第2の付勢用板バネ40のバネ部37、37、・・・、43、43、・・・を直線部37b、37b、・・・、43b、43b、・・・及び屈曲部37c、37c、・・・、43c、43c、・・・を有する略S字状に形成しているため、小さなスペースにおいてバネ部37、37、・・・、43、43、・・・の長さを長くすることができ、レンズユニット10aを含む撮像ユニット10の小型化を確保しつつ可動部49の移動ストロークに応じたバネ部37、37、・・・、43、43、・・・の十分な変形量を確保することができる。
加えて、レンズユニット10aにあっては、バネ部37、37、・・・の直線部37b、37b、・・・が上下方向に延びる向きとなるように第1の付勢用板バネ35を配置し、バネ部43、43、・・・の直線部43b、43b、・・・が左右方向に延びる向きとなるように第2の付勢用板バネ40を第1の付勢用板バネ35に対して光軸回りに90°回転させた状態で配置している。従って、光軸に直交する面内において可動部49に生じる移動力を効率的に抑制することができる。
次に、可動部49等に生じる重力と第1の付勢用板バネ35等のバネ力との関係について説明する(図19参照)。
撮像装置1は、上記したように、携帯用の装置としても使用されるため、使用状態によって姿勢が異なる。
例えば、光軸方向が鉛直方向(上下方向)に一致されると共にバネ力の強い第1の付勢用板バネ35が下方に位置されバネ力の弱い第2の付勢用板バネ40が上方に位置された状態とされる場合がある。
この状態においても、図19に示すように、第1の付勢用板バネ35の付勢力P1によって可動部49が第2の付勢用板バネ40側(上方)へ付勢され、第2の付勢用板バネ40の付勢力P2によって可動部49が第1の付勢用板バネ35側(下方)へ付勢されるが、第1の付勢用板バネ35、第2の付勢用板バネ40及び可動部49にはそれぞれ光軸方向に一致する鉛直下向きの重力G1、G2、G3が生じる。
そこで、撮像装置1にあっては、このような状態において、第1の付勢用板バネ35の付勢力P1から第2の付勢用板バネ40の付勢力P2を差し引いた上方への付勢力Psが、重力の合計Gt(G1+G2+G3)より大きくなるように設定されている。従って、可動部49は駆動用コイル51に対する非通電状態において、撮像装置1の使用される姿勢に拘わらず、常に、第1の付勢用板バネ35によって撮像部60側の移動端に押し付けられるため、可動部49を撮像装置1の使用状態によらず確実に物点無限遠の状態に保持することができる。
尚、第1の付勢用板バネ35の付勢力P1から第2の付勢用板バネ40の付勢力P2を差し引いた付勢力Psは、可動部49の光軸方向への移動に伴う第1の付勢用板バネ35のバネ部37、37、・・・及び第2の付勢用板バネ40のバネ部43、43、・・・の変形量によって変化する。そこで、可動部49が物点無限遠にある状態において、付勢力Psが、例えば、重力の合計Gtの2倍、可動部49がマクロ端にある状態において、付勢力Psが、例えば、重力の合計Gtの5倍乃至10倍となるように設定することが考えられる。
以下に、付勢用板バネの変形例について説明する(図20乃至図25参照)。尚、以下の第1の変形例及び第2の変形例については、図20及び図21の各図を概略図として示してある。
第1の変形例に係る付勢用板バネ69、69は、図20に示すように、それぞれ保持部69aとバネ部69b、69bと被取付部69cとを有し、バネ部69b、69bが保持部69a、69aを基準として対角線上に位置されている。一方の付勢用板バネ69のバネ部69b、69bの位置と他方の付勢用板バネ69のバネ部69b、69bの位置とは、互いに光軸回り方向において90°離隔した位置とされている。
このような付勢用板バネ69、69を用いることにより簡単な構成により、可動部49の光軸に対する傾斜やずれを生じることなく可動部49を光軸方向へ移動させることができる。
第2の変形例に係る付勢用板バネ70は、図21に示すように、保持部70aとバネ部70b、70b、70bと被取付部70cとを有し、バネ部70b、70b、70bが光軸回り方向において保持部70aに対して等間隔の位置に設けられている。
このような付勢用板バネ70を用いることによっても簡単な構成により、可動部49の光軸に対する傾斜やずれを生じることなく可動部49を光軸方向へ移動させることができる。
第3の変形例に係る付勢用板バネ71は、図22に示すように、保持部71aとバネ部71bと被取付部71cとを有し、バネ部71bが略矩形状に形成されている。
第4の変形例に係る付勢用板バネ72は、図23に示すように、保持部72aとバネ部72bと被取付部72cとを有し、バネ部72bが略Z字状に形成されている。
第5の変形例に係る付勢用板バネ73は、図24に示すように、保持部73aとバネ部73bと被取付部73cとを有し、バネ部73bが略W字状に形成されている。
第6の変形例に係る付勢用板バネ74は、図25に示すように、保持部74aとバネ部74bと被取付部74cとを有し、バネ部74bが螺旋状に形成されている。
上記のような付勢用板バネ71、72、73、74を用いることによっても、簡単な構成により、可動部49の光軸に対する傾斜やずれを生じることなく可動部49を光軸方向へ移動させることができる。
また、特に、第5の変形例に係る付勢用板バネ73及び第6の変形例に係る付勢用板バネ74にあっては、バネ部73b、74bの長さを小さなスペースにおいて長くすることができ、レンズユニット10aを含む撮像ユニット10の小型化を確保した上でバネ部73b、74bの変形量を大きくすることができる。
尚、上記した第1の変形例に係る付勢用板バネ69、69及び第2の変形例に係る付勢用板バネ70にあっては、バネ部69b、69b、・・・、70b、70b、70bを図20及び図21において概念的に示したが、バネ部69b、69b、・・・、70b、70b、70bの形状は第1の付勢用板バネ35及び第2の付勢用板バネ40と同様に略S字状であってもよく、また、第3の変形例に係る付勢用板バネ71乃至第6の変形例に係る付勢用板バネ74のように略矩形状、略Z字状、略W字状又は螺旋状の何れの形状を用いてもよい。
また、上記した各バネ部の形状は一例であり、上記の形状に限られることはなく、板バネとして可動部49に付勢力を付与する形状であれば、任意の形状を用いることができる。
上記には、レンズユニット10aをフォーカス駆動を行うものに適用した例として示したが、レンズユニット10aはズーム駆動を行うものにも適用することが可能である。
また、図26に示すように、フォーカス駆動とズーム駆動を行う撮像装置1Aに用いることも可能である。このような撮像装置1Aの例を以下に説明する。
撮像装置1Aは、外側鏡筒75の内部に配置されたレンズユニット10a、10aを有している。前方側に配置されたレンズユニット10aはズーム用であり、後方側に配置されたレンズユニット10aはフォーカス用である。撮像部60は外側鏡筒75の後端部に配置されている。
外側鏡筒75の前端部には第1群レンズとして第1のレンズ76が取り付けられ、外側鏡筒75の内部には第3群レンズとして第2のレンズ77が取り付けられている。第2のレンズ77はレンズユニット10a、10a間に配置されている。従って、前方側のレンズユニット10aの可動部49の各可動レンズは第2群レンズとして機能し、後方側のレンズユニット10aの可動部49の各可動レンズは第4群レンズとして機能する。
以上のように構成された撮像装置1Aにおいて、前方側のレンズユニット10aのリニアアクチュエーター65の駆動により、第1の付勢用板バネ35と第2の付勢用板バネ40によって保持された状態で可動部49が光軸方向へ移動されてズーミングが行われ、後方側のレンズユニット10aのリニアアクチュエーター65の駆動により、第1の付勢用板バネ35と第2の付勢用板バネ40によって保持された状態で可動部49が光軸方向へ移動されてフォーカシングが行われる。
上記のような撮像装置1Aにあっても、ガイド軸等のガイド手段を必要としないため、機構の簡素化及び配置スペースの低減による小型化を図ることができ、また、第1の付勢用板バネ35、35と第2の付勢用板バネ40、40によってそれぞれの可動部49、49が保持されているため、可動部49、49の光軸に対する傾斜やずれを生じることなく可動部49、49を光軸方向へ移動させることができる。
尚、上記に示した上下前後の方向は説明の便宜上のものであり、これらの方向に限定されることはない。
次に、本発明に係る可動レンズの駆動制御について図27乃至図34を用いて説明する。
図27は、本発明に係るレンズ駆動制御装置の基本構成を示す概略的な説明図である。
レンズ駆動制御装置80は、可動レンズ81を含む可動部49と、固定部82を有する。
付勢手段83(例えば、上記付勢用板バネ35、40等)は、可動部49を光軸方向(図の「L−L」線参照。)に沿って付勢するものであり、矢印「f1」で示す向きの付勢力を可動部49に付与する。
駆動手段84は、矢印「f2」に示す向きの推力、即ち、付勢手段83の付勢力に抗する方向に推力を発生させて可動部49を光軸方向に沿って移動させる。例えば、ボイスコイル型のリニアアクチュエーターにおいて、その駆動用コイルが可動部49に設けられるとともに可動レンズ81の光軸に対して軸周り方向に巻回され、界磁用マグネット(その磁界は図27の紙面内で光軸に直交する方向とされる。)が固定部82に配置された構成を有する。そして、該コイルへの非通電時には可動レンズ81が所定の位置(これを「第1位置」とする。図中の「X1」参照。)、例えば、可動レンズ81が最も撮像素子側に来た位置にある。コイルへの通電によってこの第1位置「X1」から別の位置(これを「第2位置」とする。図中の「X2」参照。)、例えば、可動レンズ81が最も被写体側に来た位置に向かって可動レンズ81を移動させるための推力がフレミングの左手則に従って発生する(このときの推力の大きさを|f2|と記し、付勢力の大きさを|f1|と記すとき、「|f2|>|f1|」である。)。
制御手段85は、可動レンズ81の位置検出を必要とせずに駆動手段84を制御する役目をもち、後述するように制御手段85から駆動手段84に対して所定の信号波形が送出されて可動レンズ81の位置制御が行われる。
尚、可動部49にコイルを設け、固定部82に界磁用マグネットを配置した例に限らず、可動部49にマグネットを設け、固定部82にコイルを配置した構成を採用しても良いことは勿論である。また、可動部の一方側から光軸方向に付勢力を与えるようにした構成でも構わない。
図28は撮像装置の構成例90を示したものであり、撮像部(あるいは撮像ユニット)100、信号処理部200、制御部300、記録再生処理部400、操作部500、表示部600、外部インターフェース(I/F)部700を備えている。
撮像部100には、可動レンズを含む光学系101と、該光学系101の光軸上に配置された撮像素子102が設けられており、撮像信号がA/D変換回路103を介してアナログ信号からディジタル信号に変換された後で信号処理部200のカメラDSP(Digital Signal Processor)部201に送出される。
光学系101の駆動部104は、例えば、前記したように可動コイル及びマグネットを用いたボイスコイル型構成とされ、駆動回路105からの信号に従って制御される(例えば、後述の駆動電圧が、前記した導電性のバネ部材41、41から駆動用コイル51に供給される。)。尚、駆動部104及び駆動回路105は、可動レンズを光軸方向に沿って移動させるための駆動手段を構成している。
撮像素子102には、例えば、CCD(Charge Coupled Device)型やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)型等の固体撮像素子(エリアイメージセンサ)が用いられ、駆動回路106やタイミング信号生成回路107からの信号を受けて駆動制御や撮像制御が行われる。
信号処理部200を構成するカメラDSP部201には、A/D変換回路103からの画像データを圧縮し又は圧縮データを伸長して復元する回路部201aと、自動焦点調節(AF)、自動露出(AE)、オートホワイトバランス(AWB)等の処理を行う回路部201bと、データ処理に用いるメモリ202(SDRAM等)のメモリコントローラ201cが含まれる。
制御部300は、CPU301、主メモリ(RAM)302、読み出し専用メモリ(ROM)303、時計回路304を用いて構成され、これらがシステムバス305を介してデータの送受を行う。尚、該システムバスには、カメラDSP部201や記録再生処理部400のインターフェース部が繋がっている。
本例において、CPU301、メモリ302、303等は、信号処理部200とともに制御手段を構成しており、可動レンズの位置検出を必要とせずに光学系101の駆動制御を行う。
CPU301の制御信号は、上記A/D変換回路103、駆動回路105、タイミング信号生成回路107に送出され、光学系101や撮像素子102の制御が行われる。本例では、フォーカス調節において可動レンズの位置検出手段(エンコーダ等)を用いずに、CPU301から駆動回路105に送られる制御信号に従って光学系101の可動レンズを位置制御する(開ループ制御)。
記録再生処理部400には、半導体記憶素子を用いた記録媒体又は磁気式若しくは光学式の記録媒体401と、該記録媒体401への撮影データ等の記録又は再生を行うためにシステムバス305に接続された媒体インターフェース(I/F)部402が設けられている。
操作部500には、撮像装置90の本体部に設けられたシャッター(レリーズ)釦等の操作釦やスイッチ類が含まれ、ユーザーによる操作入力や設定等に用いられる。
表示部600には、液晶表示デバイス(LCD)等を用いた表示パネル601及びその表示制御部602が含まれ、該表示制御部602がシステムバス305に接続されている。
また、外部インターフェース(I/F)部700は、撮像装置90の本体部に対して有線又は赤外線や無線通信を利用した外部装置との間のデータ送受等に用いられる。
尚、図示は省略するが、撮影時に同時にマイクロフォンを通じて収録された音声情報については、音声処理部(オーディオ・コーデック)を介してデータ記録やスピーカー等への音声出力が行われる。また、移動体通信装置等への適用においては、通信制御手段が設けられ、アンテナを介して基地局との間で電波による送受信処理が行われる。
図29乃至図32は、可動レンズの駆動制御について説明するための概略的なグラフ図であり、図中の「t」が時間、「V」が可動レンズを移動させるための駆動電圧(DC電圧)を示し、「X」が可動レンズの位置(又は変位)を示す。
図29はレンズ駆動制御の一例を示したものであり、上図は横軸に時間「t」をとり、縦軸に駆動電圧「V」をとってその信号波形を示し、また、下図は横軸に時間「t」をとり、縦軸にレンズ位置「X」をとってその時間的変化を示している。
本例では、駆動電圧Vが第1乃至第3の信号波形W1〜3から構成されており、第1の信号波形W1において電圧レベルがその初期値(例えば、ゼロボルト)から時間経過に伴って次第に上昇して最大値を示した後、第2の信号波形W2にて駆動電圧Vが初期値に戻る(図中の期間「T0」参照。)。その後、第3の信号波形W3において駆動電圧Vが所定値(合焦時の電圧「VF」参照。)となる。
下図の位置「X1」は可動レンズの第1位置を示し、「X2」は可動レンズの第2位置を示し、位置「XF」が合焦位置を示している。例えば、第1位置「X1」が物点無限遠での合焦位置(前記例では、機構的に最も撮像素子側に寄ったメカ端である。)に相当し、第2位置「X2」がマクロ端に相当する(本発明の適用上は、その逆でも良い。)。
先ず、シャッター釦が押されると、制御手段から光学系101の駆動手段に対して送出される第1の信号波形W1に従って、可動レンズが図の位置X1からX2に向けて移動する。
信号波形W1については、その初期値から段階的に又は連続的に上昇して最大値まで到達する。本例では、信号波形W1が階段波状をなし、駆動電圧Vのレベルは、可動レンズが位置X1から位置X2へと向かうに従って一定の割合で増加していく(つまり、線形特性を示す。)。尚、本例では、階段波状したW1を用いているが、これは上記駆動回路105の構成が簡単になるためであり、従って、これに限らず、駆動電圧Vを時間経過に従って直線的又は曲線的に連続変化させても構わない。
図中に「Ts」で示す時間は、可動レンズに係る不動時間を意味する。つまり、前記のように可動レンズは、所定の付勢力をもって位置X1に向かう方向に付勢された状態とされ、該状態での初期荷重に抗してこれを打ち消すに足る大きさの力を駆動部が発生するまでの間、可動レンズは動かない。駆動電圧Vのレベルが信号波形W1におけるレベル(図の「Vs」参照。)に達すると可動レンズが動き出し、位置X2に向けて移動する。
可動レンズの移動中に合焦状態を検出して合焦位置に相当する駆動信号レベルを記憶する処理が行われる。該可動レンズの位置がX2に到達するまでの間、撮像素子102の出力する画像データがA/D変換されて信号処理部200に送出され、カメラDSP部201の回路部201bでは、可動レンズが合焦状態になったときの電圧「VF」が算出される。つまり、階段波状の信号波形W1において、どのタイミングで合焦したのかを示すデータに基づいて近似計算等により合焦電圧VFを求め、これをメモリに記憶する。本発明の適用上、合焦位置の判定方法の如何は問わないが、例えば、可動レンズを光軸方向に移動させながら得られる画像信号をフィールド周期又はフレーム周期毎に積分して評価値(画像信号に含まれる高周波成分の量)を算出し、該評価値が最大値を示すときに可動レンズが合焦位置にいると判定する方法等が知られている(例えば、図28の回路部201bにはハイパスフィルタや積分回路等が設けられる。)。
信号波形W1に従って駆動電圧Vを上げていき、その最大値に達した時点で、例えば、可動レンズが位置X2に来ており、この時点で第2の信号波形W2に従って可動レンズを位置X1へと一旦戻す。つまり、本例では、駆動電圧Vをゼロにしたとき、上記付勢手段83の付勢力によって可動レンズが最初の位置X1に戻る。
そして、予め決められた時間「T0」において「V=0」に規定し、可動レンズを確実にかつ安定して位置X1に保持する。この時間T0が経過した後で、第3の信号波形W3に従って可動レンズを合焦位置XFへと移動させる。本例では、「V=VF」のステップ状駆動電圧を駆動部(モータ部)にかけており、可動レンズの合焦状態において撮影が開始される。
尚、上記の制御については、シャッター釦を半押し状態にして撮影者がファインダや撮影表示画面上で合焦状態を確認できるように構成し、当該釦を全押し状態にすると撮影が開始される装置にも適用可能である。
図30はレンズ駆動制御の別例を示したものであり、上図は横軸に時間「t」をとり、縦軸に駆動電圧「V」をとってその信号波形を示し、また、下図は横軸に時間「t」をとり、縦軸にレンズ位置「X」をとってその時間的変化を示している。
本例でも駆動電圧Vは第1乃至第3の信号波形W1〜3から構成されているが、前記した例との相違点は下記の通りである。
(1)第1の信号波形W1について
・可動レンズに係る不動時間Tsを低減し又はゼロにするために、本例では、ステップ状波形(図の「STP」参照)から開始されること
・駆動電圧Vがその初期値から最大値へと上昇する際のレベル変化率が一定でないこと。
(2)第2の信号波形W2について
・可動レンズの速度を低減させながら、可動レンズの位置を位置X1へと段階的に近づけて、位置X1で可動レンズの移動を一時的に停止させること
(3)第3の信号波形W3について
・停止時間「T0」の後、駆動電圧Vをいきなり合焦電圧VFに上げずに段階的に信号レベルを引き上げることにより、可動レンズを段階的に合焦位置XFへと到達させること。
先ず、上記(1)では、可動レンズが動き始めるまでの不動時間Tsを待たずに可動レンズを直ちに動かすことができるので、可動レンズを合焦位置へと移動させる時間が短くなる。つまり、不動時間Tsが経過するまでに不感帯に相当する初期電圧をかけることは、不要なエネルギー(図29の斜線部にて消費されるエネルギー)を費やすことになる。そこで、不動時間Tsの経過時点での駆動電圧「Vs」を最初からステップ状にかけることで電力の無駄を省くことができる。
また、このステップ状電圧(STP)に続く信号波形において、そのレベル変化率が一定でなく、本例では、時間経過とともにレベル変化率が次第に大きくなっていく。つまり、位置X1の近辺(無限遠位置寄り)において焦点合わせをより詳細に行えるように配慮している。勿論、この例に限らず、ステップ状電圧(STP)に続く信号波形において、図31に示すように、時間経過とともにレベル変化率が次第に小さくなるように制御して、位置X2の近辺における焦点合わせをより詳細に行える構成でも構わない。
上記(2)では、信号波形W2において駆動電圧Vを段階的に低減させることにより、可動レンズが位置X1に戻る際に適度な制動がかかるようにして最終的な停止状態へと移行させることができる(所謂ソフトランディング)。つまり、信号波形W2において、駆動電圧Vをその最大値から最小値へと一気に変化させると、付勢力に対抗する推力が突然なくなって、可動レンズが位置X1に戻ったときの衝突音や振動等が発生する虞がある。これを回避するためには、可動レンズをX2からX1へと移動させる際に、中間的な駆動電圧(図の「Vm」参照)を駆動部(モータ部)にかけることが好ましく、また、位置X1での停止時間「T0」の設定値を短縮することができる(延いてはピントが合うまでに要する時間が短くなる。)。
尚、本例では、2段階の電圧変化を経て駆動電圧が最大値から最小値へと移行するが、これに限らず3段階以上の電圧変化を採用しても良い。
上記(3)では、信号波形W3において可動レンズを合焦位置XFへと移動させるために、ステップ状の合焦電圧VFをかけず、滑らかにVFへと変化する電圧波形を用いる。これにより、可動レンズの合焦位置XFへの位置決めを正確に行うことができ、また、可動レンズを合焦位置に停止させたときに生じる微小振動等を抑制して整定時間の短縮化が可能となる。
また、信号波形W1とW3に階段波を用いる形態においては、該階段波の階調数(段階数)を同じにする必要はなく、例えば、図32に示すように、信号波形W1では階調を粗くし(例えば、最小値から最大値までの16段階)、信号波形W3では階調を密にする(例えば、最小値から最大値までの32段階)ことによって、速やかにかつ精度の良い合焦制御を実現できる。
上記のように本例では、第1の信号波形W1において最小値でない電圧レベルを初期駆動電圧として立ち上げ、時間経過に伴って次第にレベル変化率が大きくなって、最大値を示す。その後、第2の信号波形W2にて駆動電圧Vを段階的に引き下げた後、「T0」での停止時間を経た上で、第3の信号波形W3において駆動電圧Vを段階的に引き上げて合焦電圧VFへと移行させる制御が行われる。
図33は、レンズ駆動制御の一例を示すフローチャート図である。
先ず、ステップS1では、操作部500のシャッター釦が押されたか否かがCPU301にて判断され、該釦が押された場合に次ステップS2に進む。
ステップS2では、CPU301の制御下で上記第1の信号波形W1に従って駆動電圧Vを上昇させる。該電圧上昇に伴って可動レンズが第1位置X1から第2位置X2に向けて移動することになるが、次ステップS3にて、その移動中に合焦した位置での電圧VFを算出してこれをメモリ(202又は302)に記憶する。
そして、ステップS4では、駆動電圧Vが第1の信号波形W1における最大値に達したか否かを判断し、該最大値への到達時点で次ステップS5に進む。また、駆動電圧Vが最大値に達しない場合にはステップS2に戻って駆動電圧Vを引き続き高めていく。
ステップS5では、上記第2の信号波形W2に従って駆動電圧Vを減少させていく。そして、次ステップS6にて、駆動電圧Vが第2の信号波形W2における最小値に達したか否かを判断する。該最小値への到達時点で次ステップS7に進むが、該最小値に達しない場合にはステップS5に戻って駆動電圧Vを引き続き減少させていく。
ステップS7において、前記時計回路304を用いた計時処理によって予め決められた時間「T0」の経過を待った後(この間、可動レンズが停止したままである。)、次ステップS8に進んで、駆動電圧Vを上記第3の波形W3に従って上昇させていく。そして、ステップS9では、駆動電圧VがステップS3で記憶された電圧VFに到達したか否か、つまり、可動レンズが合焦位置に到達したか否かを判断し、到達時にはステップS10に進んで撮影を開始するが、未到達時にはステップS8に戻る。
尚、上記の制御例では、第1の信号波形W1において、第1位置X1から第2位置X2へと可動レンズを移動させたが、可動レンズの合焦検出の直後にX2側への移動を中断して駆動電圧Vを下げるようにしても良い。
また、上記では、可動レンズが第2位置X2に到達した時点で第2の信号波形W2に従って可動レンズを第1位置X1へと戻すようにしたが、これに限らず、例えば、第1位置X1と第2位置X2との間に位置する第3位置(これを「X3」と記す。)へと可動レンズを戻しても構わない。
図34は、そのような制御例を概略的に示した図であり、上図は横軸に時間「t」をとり、縦軸に駆動電圧「V」をとってその信号波形を示し、また、下図は横軸に時間「t」をとり、縦軸にレンズ位置「X」をとってその時間的変化を示している。
本例では、第2の信号波形W2において、駆動電圧Vを、合焦電圧VFよりもやや低い電圧まで下げてから、所定期間「T0」の経過後に第3の信号波形W3に従って駆動電圧VをVFへと徐々に上げていく。つまり、可動レンズの位置を一旦X3に規定してから位置XFへと漸近させることで、正確な位置決めが可能となり、また、第2の信号波形W2において可動レンズの位置をX1まで戻す必要がないので合焦位置への移動時間を短縮できる。尚、本例において、前記と同様に第2の信号波形W2で第3位置X3への移行を段階的に行っても良いことは勿論である。
以上に説明したレンズ駆動制御方法を箇条書きにまとめると、下記(A)乃至(D)のようになる。
(A)第1の信号波形W1に従って、可動レンズを位置X1から位置X2に向けて段階的に又は連続的に移動させる。
その際の駆動電圧Vのレベル変化については、時間的変化率を一定にする方法と、位置X1又はX2の近辺で時間的変化率を小さくし又は大きくする方法がある。また、信号波形W1を最小値ではなく、閾値Vs(駆動信号レベルをゼロから徐々に上げていった場合に可動レンズが動き出す時のレベル値)のステップ状波形から開始する方法を採用すれば、不動時間での不要なエネルギーを費やさずに済む。
(B)可動レンズの移動中に合焦状態を検出して合焦位置に相当する駆動信号レベル(電圧VFに相当する。)を記憶する。
(C)可動レンズが位置X2に到達した時点又は合焦検出の終了時点で第2の信号波形W2に従って可動レンズを位置X1又はX3へと一旦戻す。
その際には、例えば、可動レンズの速度を低減させながらその位置をX1又はX3へと段階的に近づけて、該可動レンズの移動を一時的に停止させることが好ましい。
(D)位置X1又はX3での停止期間T0を経た後、第3の信号波形W3に従って可動レンズを合焦位置XFへと移動させる。
可動レンズが段階的に合焦位置XFへと到達するように移動制御を行い、位置決め精度を充分に保証し、停止時の振動等を極力抑制することが好ましい。
尚、複数の板バネを用いて可動部を保持する機構に限らず、上記したレンズ駆動制御方法は、例えば、複数本のガイド軸を用いて可動レンズを保持するとともに、圧縮コイルバネ等の付勢手段を用いて可動レンズに対して光軸方向への付勢力を得るようにした構成形態等に幅広く適用できる。
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