JP2006225170A - 加熱延伸装置及びこれを用いたガラススペーサの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 端部における膨れや中央部におけるくびれが無く、設計通りの溝が形成されたガラススペーサを加熱延伸法によって製造する。
【解決手段】 ガラス母材1を加熱するライン状ヒーター3において、ガラス母材1に領域を含む広い領域の熱流束出力が、長さ方向の中央部の熱流束出力に対して95〜105%であり、当該ライン状ヒーター3によってガラス母材1を107.0P以上、108.0P未満の粘度範囲に加熱して延伸する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、電子・電気機器において一対の基板間に介在させて該基板間を支持するスペーサを製造するための加熱延伸装置と該装置を用いたガラススペーサの製造方法に関する。さらに詳しくは、フラットパネルディスプレイにおいて用いられる、長手方向に帯電抑制のための平行な溝が形成されたガラススペーサの加熱延伸装置と製造方法に関する。
近年、表面伝導型の電子放出素子を基板上にマトリクス状に配置し、該基板と、蛍光体を配置した基板とを対向配置させて気密容器(パネル)を形成し、上記蛍光体に放出電子を照射して画像を形成するフラットパネルディスプレイの開発が進んでいる。
このような、電子放出素子が一対の基板間に気密に封入されたパネルでは、耐大気圧構造体として基板間にスペーサを介在させているが、該スペーサとして広く用いられている平板型のスペーサの製造方法としては、断面が長方形のガラス母材を加熱延伸して形成する加熱延伸方法が知られている。これは、断面形状が長方形のガラス母材を一対の送り出しローラーで挟んで送り出す一方、送り出されたガラス母材を一対の引き取りローラーで挟んで引き取ると共に、送り出しローラーと引き出しローラーの間でガラス母材を加熱軟化させ、送り出し速度よりも引き取り速度を速く設定することにより上記加熱軟化したガラス母材を延伸し、断面形状がガラス母材と相似形の延伸ガラス材を得、これを所定の長さに切断してスペーサとするものである。特許文献1には、この加熱延伸においてガラス母材の粘度を規定することにより、得られるスペーサの相似形の向上と延伸時の破断防止を図った技術が開示されている。
上記したようなフラットパネルディスプレイに用いられるスペーサについては、電子放出素子から放出された電子の一部が該スペーサに衝突したり、放出電子の作用で発生したイオンが該スペーサに付着することにより、スペーサが帯電する可能性が指摘されている。スペーサが帯電すると、電子放出素子から放出された電子の軌道が正確に制御できなくなり、例えば表示画像が歪むといった問題を生じる。
このようなスペーサの帯電に起因する問題を解決するために、特許文献2に表面に基板と平行な方向に複数本の溝を形成して帯電を抑制したスペーサが提案されており、その製造方法として、予め表面に溝を形成したガラス母材を加熱延伸して相似形のスペーサを形成する方法が挙げられている。
特開2000−203857号公報 特開2000−311608号公報
一般にガラス材の加熱延伸加工はガラス材の粘度が105〜1010P(=poise,1P=0.1Pa・sec)になるように加熱して行われる。しかしながら、当該粘度範囲においても、加熱温度を高めにして粘度を低めに設定すると、図4に示すように、延伸方向に直交する断面形状において、長手方向の両端部が丸みを帯びて膨らみやすくなる。このような形状のスペーサを基板上に横長に立てて設置する(延伸方向を基板に平行に配置する)と、基板との接触面が湾曲していることから安定性が悪く、パネルの組立性が悪いと共に支持強度も得にくくなる。
また、加熱温度を低くして粘度を高めに設定した場合には、図5に示すように、延伸方向に直交する断面形状において、長手方向の中央部がくびれやすくなる。このような形状のスペーサを用いた場合、パネル内では減圧状態となるため、必要な耐大気圧性が得られなくなる場合がある。さらに、延伸加工における引っ張り張力によってスペーサが破断する恐れもある。
さらに、上記のようにスペーサの断面形状の制御性が悪いと、帯電抑制のために表面に溝を形成したスペーサの場合に、設計通りの溝が得られない事になり、所望の帯電抑制効果が得られないという問題を生じる。
本発明の課題は、上記問題を解決し、帯電抑制のために表面に溝を有するスペーサを設計通りに制御性良く製造することにある。
本発明の第一は、断面が矩形で少なくとも一表面に該断面に直交する複数本の平行な溝を有するガラススペーサを、上記断面と相似形状の断面と溝を有するガラス母材を該溝に平行な方向に加熱延伸して製造する加熱延伸装置であって、
上記ガラス母材の延伸軸に直交するライン状ヒーターを該ガラス母材の表面に平行に配置し、該ライン状ヒーターの、上記ガラス母材に対向する領域を含み且つ該領域よりも広い領域の熱流束出力が、該ライン状ヒーターの中心値の熱流束出力の95〜105%であることを特徴とする。
また、本発明の第二は、断面が矩形で少なくとも一表面に該断面に直交する複数本の平行な溝を有するガラススペーサを、上記断面と相似形状の断面と溝を有するガラス母材を該溝に平行な方向に加熱延伸して製造するガラススペーサの製造方法であって、
上記ガラス母材の延伸軸に直交するライン状ヒーターを該ガラス母材の表面に平行に配置し、該ライン状ヒーターの、上記ガラス母材に対向する領域を含み且つ該領域よりも広い領域の熱流束出力が、該ライン状ヒーターの中心値の熱流束出力の95〜105%である加熱延伸装置において、上記ガラス母材を加熱して107.0P以上、108.0P未満の粘度において延伸することを特徴とする。
本発明によれば、スペーサの断面形状の制御性が高く、加熱延伸法により所望の溝を有するスペーサを再現性良く高精度に製造することが可能となる。よって、帯電抑制効果に優れたスペーサを安価に提供することができ、表示特性に優れたフラットパネルディスプレイの構成が可能となる。
本発明者の検討によれば、表面に複数本の溝を有するスペーサを加熱延伸法により形成した場合に該溝の断面形状が乱れる原因としては、延伸方向に直交する断面形状が長方形のガラス母材を加熱する時に、該断面の長手方向の面が受ける熱量が分布を持つことにあると考えられた。
例えば、断面が長方形のガラス母材を円形のリングヒーターを用いて加熱すると、長手方向の中央部は発熱源であるヒーターからの距離が遠くなるのに対して、両端部はヒーターからの距離が近くなり、中間部よりも加熱されやすい。そのため、ガラス母材の断面長手方向全体を所定の延伸しやすい粘度に達するまで加熱すると、両端部の加熱が過剰になり、粘度が低下して中央部よりも溝の深さが浅くなってしまう。
本発明第一の加熱延伸装置は、ガラス母材の延伸軸(延伸方向)に直交するライン状ヒーターを用い、さらに、該ヒーターの熱流束出力がガラス母材に対向する領域を内包する領域において、中心値の熱流束出力の95〜105%となるように制御することにより、ガラス母材を一定に加熱してガラス母材内における粘度分布を抑制し、端部まで高精度に溝を形成しうることを特徴とする。
また、本発明第二のガラススペーサの製造方法においては、上記加熱延伸装置を用い、ガラス母材の粘度が107.0P以上、108.0P未満になるように該ガラス母材を加熱して延伸することにより、図4や図5に示したような両端部の膨れや中央部のくびれのない、長方形の断面形状で、且つ表面に設計通りの溝を有するガラススペーサを再現性良く形成しうることを特徴とする。
以下に、本発明の加熱延伸装置及び製造方法について詳細に説明する。
図1は、本発明の加熱延伸装置の好ましい実施形態の構成を概略的に示す図であり、延伸方向における断面模式図である。また、図2に延伸方向に直交する断面模式図を示す。図中、1はガラス母材、1’は加熱延伸されたガラス母材、2はスペーサ、3はヒーター、4はメカチャック、5は引き取りローラー、6はカッター、7は炉体である。
本実施形態において、ガラス母材1の延伸方向に直交する断面は矩形、好ましくは長方形であり、便宜上図示しないが、少なくとも一表面、好ましくは該断面の長手方向に平行な面には該断面に直交する(即ち延伸方向に平行な)複数本の平行な溝が形成されている。特に、長手方向が短手方向の5倍以上である断面形状を有するガラス母材に本発明は好ましく適用される。尚、本発明におけるガラス母材の断面形状の長方形には、四隅が直角のものに限らず、角部に面取り加工や丸み付け(R加工)が施されているものの含む。また、ガラス母材の表面に形成されている複数本の溝の断面形状は特に限定されず、矩形、台形、半円形、三角形など、特開2000−311608号公報に開示されているように、延伸後に完成したスペーサ2の帯電抑制効果に応じて適宜選択される。図3に、断面が台形の溝を有するスペーサの一例を示す。このように、断面が台形の溝を有するスペーサは、該スペーサ表面に入射する電子の入射角をより小さくできるため、パネル内の耐大気圧構造体として好ましく用いられている。
加熱延伸法においては、ガラス母材1に設ける溝は、加熱延伸時の粘度低下の影響により、深さが計算上の変形率よりも小さくなる、斜面角度が緩やかになる、という現象がある。また、加熱延伸時の粘度が高すぎると、延伸中にガラス母材1’が破断するため、好ましくない。
本発明においては、延伸時のガラス母材1の粘度が107.0P以上、108.0P未満になるように加熱することにより、上記問題を解決するが、ガラス母材1の粘度が当該範囲になるように均一に加熱するためには、ライン状ヒーター3において、ガラス母材1に対向する領域を含み、該領域よりも長い領域の熱流束出力が中心値の熱流束出力に対して95〜105%であることが必要であることがわかった。
また、本発明の加熱延伸装置においては、ヒーター3からガラス母材1表面までの距離L1、L2は等距離が好ましく、より好ましくはガラス母材1の断面の長手方向の長さL3と等しくすることが好ましい。
図1の実施形態においては、ガラス母材1の表面に平行にライン状のヒーター3を配置し、該ガラス母材1をメカチャック4で締め付け保持し、下部をヒーター3で加熱して延伸し、延伸した延伸ガラス母材1’の下部を引き取りローラー5間に挟み込む。この状態で、メカチャック4を徐々に下降させながら、引き取りローラー5を回転させ、メカチャック4の下降速度より速い引き取り速度で延伸ガラス母材1’を引き取ると共に、上記メカチャック4と引き取りローラー5の間で、ヒーター3によりガラス母材1を延伸温度に加熱し、軟化させる。すると、メカチャック4の下降速度と引き取りローラー5の引き取り速度の速度差によって、延伸温度に加熱されて軟化したガラス母材1と断面形状が相似形の延伸ガラス母材1’が連続して形成される。そして、冷却固化した状態で引き取りローラー5を通過した延伸ガラス母材1’をカッター6で切断することで、ガラス母材1の断面と相似形状の断面を有し、表面に平行な複数本の溝を有する板状或いは柱状のガラススペーサ2が得られる。
本発明において、ガラス母材1の粘度が107.0P以上であれば、加熱して軟化したガラス母材のダレの影響が小さくなり、スペーサ2の形状制御性が高くなる。図6に、延伸時のガラス母材1の粘度とスペーサ2のコーナー部におけるダレ量との関係を示す。
また、下記表1に示すように、ガラス母材1の粘度が107.5P以上であれば、表面の溝の深さ変化が小さくなり、安定した形状が得られるため好ましい。
Figure 2006225170
さらに、生産性を考慮すると、引き取りローラー5による引き取り速度は1500mm/min以上であることが望まれ、当該速度を考慮した上でガラス母材1の粘度が108.0Pになると延伸時に延伸ガラス母材1’が破断する頻度が高くなるため、108.0P未満の粘度で行えば良い。
(実施例1)
ガラス母材として、断面形状が6.15mm×49.23mmの長方形で、深さが0.335mm、ピッチが0.923mmの断面が台形の溝を40本有するものを用いた。図1の加熱延伸装置を用い、ヒーター3は、上記断面の長手(49.23mm)方向に対向するヒーター3が長さ130mm、短手(6.15mm)方向に対向するヒーター3が長さ86mmとし、それぞれガラス母材の表面から約49mm離れた位置に配置した。また、各ヒーター3の長さ方向の中心が各方向で一致するようにした。
図8は130mmのヒーター3の熱流束出力を表しており、ガラス母材1を780℃になるように加熱している。その際の、ガラス母材1の長手方向の中心に相当する付近のヒーター3の熱流束を測定すると約77,000W/m2であった。また、この時のガラス母材1の端部に相当する、中心から24.6mm外側の位置(図中の破線部分)でのヒーターの熱流束を測定すると約73,100W/m2であり、中心付近の出力に対して95%であった。
同様に、短手方向のヒーター3においても、長さ方向の中心値の熱流束出力が77,000W/m2であり、ガラス母材1に対向する領域及びその周辺の熱流束出力は77,000〜73,100W/m2で、中心値に対して95〜105%以内であった。
上記ガラス母材1を、V1=2.5mm/minの速度でメカチャック4を降下させることにより送り出し、上記ヒーターを上述の配置で用いることでガラス母材1の温度を約780±3℃(当該温度でのガラス母材の粘度=107.5P)に加熱し、ヒーター3の下方に配置された引き取りローラー5にてV2≒2700mm/minの速度で引き取ることで加熱延伸し、最後にカッター6にて長さが850mmになるように切断した。得られたスペーサ2の延伸方向に直交する断面積S2は約0.32mm2(0.2mm×1.6mm)で、表面の溝のピッチは30μm、溝の深さは8.5μm±0.15μmでバラツキが1.8%以内に整った形状であった。図7に一表面の溝深さの実測値を示す。
本例のスペーサを用いて構成したディスプレイにおいては、画像の歪みが見られず、良好な画質が得られた。
(実施例2)
実施例1と同様の加熱延伸装置を用い、延伸時の温度を下げてガラス母材の粘度を107.6P及び107.9Pとした以外は実施例1と同様にしてスペーサ2を作製した。その結果、いずれの粘度で延伸を行った場合も実施例1と同様に良質なスペーサが得られた。
(比較例)
実施例1と同様の加熱延伸装置を用い、延伸時の温度を下げてガラス母材の粘度を108.1Pとした以外は実施例1と同様にしてスペーサ2を作製しようとしたところ、延伸途中で炉体7と引き取りローラー5の間で延伸ガラス母材1’が判断し、スペーサを得ることができなかった。
(実施例3)
実施例1と同様の加熱延伸装置を用い、延伸時の温度を上げてガラス母材の粘度を107.1P及び107.3Pとした以外は実施例1と同様にしてスペーサ2を作製した。本例においてもそれぞれガラス母材の温度は高い精度で均一化が図れたものの、ヒーターの温度を上げて延伸時の温度を上げたことで、ガラス母材の粘度が下がったため、溝深さのバラツキがそれぞれ3%程度発生した。しかしながら、これらのスペーサを用いたディスプレイの画像においては目につく歪みが見られず、良好な画質が得られた。
本発明の加熱延伸装置の好ましい実施形態の構成を示す概略図である。 図1の装置の延伸方向に直交する断面図である。 本発明によって得られるスペーサの一例の斜視図である。 従来の製造方法によって得られるスペーサの一例を示す斜視図である。 従来の製造方法によって得られるスペーサの他の例を示す斜視図である。 延伸時のガラス母材の粘度と得られるスペーサのコーナー部のダレ量との関係を示す図である。 本発明の実施例におけるスペーサの溝深さの実測値を示す図である。 本発明の実施例で用いたヒーターの熱流束出力を示す図である。
符号の説明
1 ガラス母材
1’ 延伸ガラス母材
2 スペーサ
3 ライン状ヒーター
4 メカチャック
5 引き取りローラー
6 カッター
7 炉体

Claims (4)

  1. 断面が矩形で少なくとも一表面に該断面に直交する複数本の平行な溝を有するガラススペーサを、上記断面と相似形状の断面と溝を有するガラス母材を該溝に平行な方向に加熱延伸して製造する加熱延伸装置であって、
    上記ガラス母材の延伸軸に直交するライン状ヒーターを該ガラス母材の表面に平行に配置し、該ライン状ヒーターの、上記ガラス母材に対向する領域を含み且つ該領域よりも広い領域の熱流束出力が、該ライン状ヒーターの中心値の熱流束出力の95〜105%であることを特徴とする加熱延伸装置。
  2. 各ライン状ヒーターがガラス母材表面から、該ガラス母材の延伸軸に直交する断面における長手方向の長さに等しい距離をおいて配置されている請求項1に記載の加熱延伸装置。
  3. 断面が矩形で少なくとも一表面に該断面に直交する複数本の平行な溝を有するガラススペーサを、上記断面と相似形状の断面と溝を有するガラス母材を該溝に平行な方向に加熱延伸して製造するガラススペーサの製造方法であって、
    上記ガラス母材の延伸軸に直交するライン状ヒーターを該ガラス母材の表面に平行に配置し、該ライン状ヒーターの、上記ガラス母材に対向する領域を含み且つ該領域よりも広い領域の熱流束出力が、該ライン状ヒーターの中心値の熱流束出力の95〜105%である加熱延伸装置において、上記ガラス母材を加熱して107.0P以上、108.0P未満の粘度において延伸することを特徴とするガラススペーサの製造方法。
  4. 上記ガラス母材の粘度を107.5P以上、108.0P未満として延伸する請求項3に記載のガラススペーサの製造方法。
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