本発明は、撮像装置に関し、特にハーフミラー等の光学部材が撮影光路内に位置する状態と撮影光路外に位置する状態とで撮像が可能な撮像装置に関する。
近年、撮像素子を用いて撮像された画像を半導体メモリや光ディスク等の記録媒体に記録することができるデジタルカメラが広く利用されている。このようなデジタルカメラには、従来の光学ファインダ(OVF)に加え、撮像しようとする画像をファインダ内の表示素子やカメラの背面に設けられた表示素子に表示する電子ファインダ(EVF)が搭載されていることが多く、撮影者は必要に応じてこれら2つのファインダを選択的に使用することができる。
特許文献1では、光学ファインダと電子ファインダとを有するデジタル一眼レフカメラにおいて、光学ファインダを用いる場合には主ミラーを撮影レンズと撮像素子との間に配置し、電子ファインダを用いる場合には、主ミラーをアップ(撮影光路から退避)させ、さらにペンタプリズムを退避させたりペンタプリズムへの光の入射を遮断したりした上で、EVF用表示素子をファインダ光路上に挿入することで、光学ファインダと電子ファインダとを切り換える技術が提案されている。
また特許文献2には、デジタル一眼レフカメラにおいて、光学ファインダを使用するために主ミラーがダウンしている状態では撮像素子又は表示素子の動作を禁止し、主ミラーがアップしている状態では撮像素子および表示素子の動作を行わせて、電子ファインダを使用することができる技術が提案されている。
また、このように光学ファインダと電子ファインダとの切り換えが行えるデジタル一眼レフカメラ等の撮像装置において、本出願人は、光学ファインダの使用時には、ハーフミラーである主ミラーをダウンさせて、該主ミラーでの反射によって被写体像を光学ファインダに導くことができる一方、主ミラーをダウンさせたままで焦点検出ユニットに光を反射する位置に配置することで、焦点検出およびオートフォーカス動作を行いながら電子ファインダに画像を表示させることができるようにした撮像装置を提案している(特許文献3参照)。また、この撮像装置では、電子ファインダに表示される画像を動画や静止画として記録したり、主ミラーをアップさせた状態で高精細な静止画像記録を行ったりすることができる。
特開平05−107595号公報(段落0035、図41等)
特開2001−125173号公報(段落0035〜0046、図3〜6等)
特開2004−264832号公報(段落0042〜0046、図1〜7等)
しかしながら、上述した本出願人提案の撮像装置においては、主ミラーをアップさせた状態で撮影される画像(ミラーアップ画像)と、電子ファインダを使用したり動画等を記録したりするために主ミラーをダウンさせた状態で撮影される画像(ミラーダウン画像)とで、被写体側における撮影エリアが異なる可能性がある。これは、ミラーダウン状態において撮影レンズと撮像素子との間に存在する主ミラーの厚み分の屈折により、ミラーアップ状態と比べて、撮像素子に対して光路が変位してしまうからである。この場合、電子ファインダを使用して決めた構図とミラーアップ状態で記録した画像の構図とが異なってしまい、撮影者が意図した構図で画像を記録できない場合が生じる可能性がある。
この問題に対して、本出願人は、上記特許文献3において、ミラーダウン画像のうちミラーアップ画像とオーバーラップしている部分のみを電子ファインダに表示し、他の部分を非表示とすることで、電子ファインダで見る撮影エリアがミラーアップ状態で撮影される画像の撮影エリアに含まれるようにした技術も提案している。
但し、この撮像装置でも、電子ファインダには、ミラーダウン画像のうちミラーアップ画像とのオーバーラップ部分しか表示されないため、100パーセントの電子ファインダ視野率を達成するものではない。
また、本撮像装置においては、光学ファインダで見る撮影エリアと電子ファインダで見る撮影エリアとの間にもずれが生じてしまうので、例えば、最初に光学ファインダを使って決めた構図(記録画像と同一の構図)に対して後に電子ファインダで確認した構図が異なるという事態が生じる可能性がある。
本発明は、撮影光学系からの光を透過させる光学部材が撮影光路内に位置する第1の状態での電子ファインダ表示や画像記録と該光学部材が撮影光路外に位置する第2の状態での画像記録等が可能な撮像装置において、第1の状態での撮影エリア(電子ファインダの視野率)を拡大するとともに、第1の状態での撮影エリアと第2の状態での撮影エリアとの差を小さくすることができるようにした撮像装置を提供することを目的の1つとしている。
1つの側面としての本発明の撮像装置は、撮像素子と、撮影光学系から該撮像素子への光路の内外に移動可能であり、該光路内において撮影光学系からの光が透過する光学部材と、該光学部材が該光路内に位置する第1の状態と該光学部材が前記光路外に位置する第2の状態とでそれぞれ、撮像素子からの信号に基づいて画像を生成し、出力する画像処理手段とを有する。そして、第1の状態での出力画像と第2の状態での出力画像との変位量を小さくする(実質的に無くすることも含む)ための制御を行う制御手段を有する。
また、本発明は、上記光路内に位置する光学部材としての光分割手段から光が導かれる光学ファインダと、撮影光学系の焦点状態を検出する焦点検出ユニットとを有し、撮影光学系からの光を光分割手段により撮像素子および焦点検出ユニットに導く上記第1の状態と、上記第2の状態と、撮影光学系からの光を光分割手段によりファインダ光学系および焦点検出ユニットに導く第3の状態とに切り換わる撮像装置に特に好適である。
本発明によれば、第1の状態で撮像素子により得られた画像を、その一部を非表示とすることなく出力することができる。このため、該画像を電子ファインダの表示画像とする場合には、電子ファインダの視野率を改善することができる。しかも、第1の状態での撮影エリアと第2の状態の撮影エリアとの差を小さくすることができるので、第1の状態(電子ファインダ)において撮影者が意図した構図で第2の状態における画像記録を行える撮像装置を実現することができる。
また、第3の状態をも有する撮像装置においては、電子ファインダと光学ファインダのそれぞれを通して見える撮影エリアの差も小さくすることができ、いずれのファインダを用いても意図した構図での画像記録を行うことができる。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1から図6を用いて本発明の実施例1について説明する。図1には、本実施例のデジタル一眼レフカメラ(撮像装置)の断面構成を示している。
図1において、101はカメラ本体である。102はカメラ本体101に取り外し可能に装着される撮影レンズであり、103は撮影レンズ102内に配置され、物体像を後述する撮像素子108上に結像させる結像光学系(撮影光学系)である。
104は撮影レンズ102から撮像素子108に向かう撮影光路の内外に移動可能な主ミラー(光学部材)であり、該撮影光路内に図示のように配置された状態で、撮影レンズ102からの光の一部を反射して光学ファインダ側に導き、残りの光を透過させるハーフミラーで構成されている。主ミラー104の屈折率は1.5、厚みは0.5mm程度である。
主ミラー105の背後(撮像素子側)には、サブミラー105が設けられている。このサブミラー105は図示の状態で、主ミラー104を透過した光のうち光軸に近い領域の光を焦点検出ユニット106に向けて反射する。これらの主ミラー104とサブミラー105からなる光学分離系は、不図示のミラー駆動機構により駆動され、図1および図2(A)に示すように、主ミラー204およびサブミラー105によってそれぞれファインダ光学系150と焦点検出ユニット106に光を導く第1の光路分割状態(請求の範囲にいう第3の状態に相当する)と、図2(B)に示すように、主ミラー104によって撮像素子108および焦点検出ユニット106に光を導く第2の光路分割状態(請求の範囲にいう第1の状態に相当する)と、図2(C)に示すように、主ミラー204およびサブミラー105とともに撮影光路外に退避する第3の光路分割状態(請求の範囲にいう第2の状態に相当する)に切り換わる。なお、主ミラー104とサブミラー105は、光分割手段としての光路分割系を構成する。
第1の光路分割状態では、主ミラー104は、その下部が撮影レンズ102に近くなるように斜めに配置され、光学ファインダ側(上側)に光を反射する。また、サブミラー105は、その上部が撮影レンズ102に近くなるように斜めに配置され、主ミラー104を透過した光を焦点検出ユニット106側(下側)に反射する。この第1の光路分割状態では、光学ファインダによる物体像の観察と焦点検出動作とを行うことができる。
第2の光路分離状態では、主ミラー104は、その上部が撮影レンズ102に近くなるように斜めに配置され、焦点検出ユニット106側(下側)に光を反射する。また、主ミラー104を透過した光は撮像素子108側に導かれる。このときサブミラー105は、両ミラー104,105を支持するミラーボックス(図示せず)内において光線をけらない位置(下側)に収納される。この第2の光路分割状態では、カメラ本体101の背面に設けられた表示素子(電子ファインダ)107に撮像素子108により取得された画像のリアルタイム表示(ライブビュー表示)を行ったり、動画記録や高速連続記録等の撮影を行ったりすることができる。
第3の光路分割状態では、主ミラー104およびサブミラー105ともに、ミラーボックス(図示せず)内において光線をけらない位置(主ミラー104は上側、サブミラー105は下側)、すなわち撮影光路外に退避する。この第3の光路分割状態では、撮影レンズ102からの光がダイレクトに撮像素子108に導かれるため、大型のプリント等に適した高精細な静止画記録を行うことができる。
図1において、109は光学ファインダ側における物体像の結像面に配置されたフォーカシングスクリーン、110はペンタプリズム、111は光学ファインダ像を観察する接眼レンズである。これらのフォーカシングスクリーン109、ペンタプリズム110および接眼レンズ111によりファインダ光学系(光学ファインダ)150が構成される。
112は撮像素子108側に設けられた赤外カットフィルター、113は光学ローパスフィルター、114は撮像素子108を実装したパッケージである。撮像素子108は、CCDセンサやCMOSセンサ等によって構成される。
また、115はカメラ本体101に設けられたメインスイッチ(メインSW)、116はレリーズスイッチ(レリーズSW)、117はファインダモード切換えスイッチ(ファインダモードSW)、118は後述する撮影モードから1つを選択するための撮影モード切換えスイッチ(撮影モードSW)である。
図3には、撮影光路内に配置された主ミラー104によって撮影光軸がずれる様子を模式的に示している。また、図4には、撮影光路内に主ミラー104が配置されているか否かによって結像エリアがどのように変わるかを示している。
図3には、第2の光路分離状態での主ミラー104の配置を示している。このとき、主ミラー104は撮影光軸Lに対してθ度傾いている。ここで、空気の屈折率をn、主ミラー104の屈折率をn′、主ミラー104の厚みをdとすると、主ミラー104がないときの撮影光軸Lに対する主ミラー104があるときの撮影光軸L′のずれ量(変位量)ΔXは、
として表される。
このとき、θ=45度、n=1、n′=1.5、d=0.5mmとすると、ΔX=0.22mmとなり、撮像素子108の画素ピッチが10μmである場合には、22画素分だけ主ミラー104があるときの結像エリアが、主ミラー104がないときの結像エリアに対して上下方向にずれてしまうことになる。
したがって、被写体側の同一エリアを撮影しようとしても、第2の光路分割状態において撮影レンズ102および主ミラー10を介して撮像素子108上に結像するエリアと、第3の光路分割状態において撮影レンズ102からダイレクトに撮像素子108上に結像するエリアとが、図4で示すように異なってしまう。
すなわち、図4において、ライブビュー表示を行う第2の光路分割状態では、aで示す縦線エリアが被写体側エリアに対応した結像エリアとなり、高精細な静止画撮影を行う第3の光路分割状態ではbで示す横線エリアが、被写体側の同一撮影エリアに対応した結像エリアとなる。したがって、第2の光路分割状態において、第3の光路分割状態と同じ結像エリア内の画素からの信号のみを読み出すと、ライブビュー画面のうちずれ量ΔXの部分が出力、すなわち表示又は記録されないことになる。本実施例では、このような不都合を解消するためのものである。
図5には、本実施例のデジタル一眼レフカメラにおける電気的構成を示している。図5において、図1と同じ構成要素には同じ符号を付している。131は主ミラー104およびサブミラー105を第1〜第3の光路分割状態に切り換えるために駆動するミラー駆動機構である。前述したように、主ミラー104、サブミラー105およびミラー駆動機構131により、光分割手段としての光路分割系151が構成される。
132は撮像素子108を上下方向に移動させる撮像素子アクチュエータである。133は撮像素子108からの出力信号(画素信号)をA/D変換するA/D変換器、134はA/D変換された画素信号に対して、各種の補正処理、RBG信号のYC信号への変換、ホワイトバランス処理、ガンマ補正処理、信号補間処理等を行うことにより画像を生成し、出力する画像処理部である。135は画像処理部134から出力された画像を、半導体メモリ、光ディスク、磁気テープ等の記録媒体に記録する記録部である。
136は記録部135によって記録された画像を表示素子107に再生表示する再生部である。140はメインSW115とレリーズSW116とファインダモードSW117等を有する入力部である。141は本デジタルカメラの各部やその動作を制御する制御部であり、マイクロコンピュータにより構成されている。
このように構成された本実施例のデジタルカメラの動作(主として制御部141の制御動作)を、図6のフローチャートを用いて説明する。なお、図中の「S」は「ステップ」を略記したものである。
まず、制御部141は、入力部140からの信号に基づいて、ファインダモードSW117からの信号が入力されているかどうかを確認する(ステップ101)。ここで、ファインダモードは、ファインダモードSW117からの信号入力があるごとにOVFモードとEVFモードとの間で切り換わる。すなわち、新たなファインダモードSW117からの信号入力があった場合は、現在設定されているファインダモードと異なるファインダモードを設定する。新たなファインダモードSW117からの信号入力がなければ、現在のファインダモードを維持する(ステップ102)。
ファインダモードが切り換わった場合、ステップ103では、制御部141は、その新たなファインダモードに対応した光路分割状態が設定されるように、ミラー駆動機構131に信号を送り、主ミラー104およびサブミラー105を駆動させる。OVFモードが設定された場合は第1の光路分割状態に、EVFモードが設定された場合には第2の光路分割状態になる。ファインダモードが切り換わらなかった場合には、現在の光路分割状態を維持する。
次に、ステップ102で設定されたファインダモードにより、そのときの表示モードが何であるかの判定を行う(ステップ104)。その表示モードがライブビュー表示モードである場合には、光路分割系151は第2の光路分割状態になっており、図2(B)に示すように、撮影レンズ102および主ミラー104を介して撮像素子108に光を導く。その際には、主ミラー104は焦点検出ユニット106にも光を導くので、焦点検出ユニット106による撮影光学系の焦点状態を位相差検出方式等の焦点検出方法により検出し、制御部141は該検出結果に基づいて撮影光学系の焦点調節制御を行う。
ステップ105では、制御部141は、撮影レンズ102および主ミラー104を介して撮像素子108上に結像した被写体像を撮像素子108に光電変換させ、画像処理部134に該撮像素子108からの画素信号を読み出させる。このとき、ステップ106では、制御部141は画像処理部134を制御して、図3および図4に示した第2の光路分割状態でのライブビュー画面の第3の光路分割状態での高精細静止画面に対するずれ量ΔXを小さくする方向(理想的には、ΔXを0にするように)に補正するために、読み出しアドレス(位置)又は読み出しエリアをΔXに相当する画素分シフトさせる等の処理を行わせる。これにより、ステップ107において、ライブビュー画面の全体を表示素子107に表示させることができる。すなわち、ライブビュー表示モードでの撮影エリアの補正を行うことができる。
ここで、ΔXの値は、予め設計値等を不図示のメモリに記憶させておいてもよいし、後述する実施例3にて説明する方法により画像から検出した値を不図示のメモリに記憶させるようにしてもよい。
次に、ライブビュー表示を行っている状態で、制御部141は、レリーズSW116からの入力を確認し、撮影を行うかどうかを判定する(ステップ108)。レリーズSW116からの入力がない場合には、ステップ101へ戻り、入力があった場合にはステップ109に進む。
ステップ109では、制御部141は、設定されている撮影モードを判定する。撮影モードには、ライブビュー表示されている動画をそのまま記録する動画撮影モードと、ライブビュー表示されている動画から高速で静止画記録を行うために第2の光路分割状態のままで静止画生成を行う高速静止画撮影モードと、ライブビュー表示状態から高精細な静止画記録を行うため、第2の光路分割状態から第3の光路分割状態に切り換えて静止画生成および記録を行う高精度静止画撮影モードとがある。撮影モードは、撮影モードSW118の操作ごとに、動画撮影モード→高速静止画撮影モード→高精度静止画撮影モード→動画撮影モード→…というように循環的に切り換えられる。
動画撮影モードと判定した場合には、ステップ110にて、ライブビュー画面上の動画と同じ動画を記録できるように、ステップ110にて、画像処理部134に撮像素子108からの画素信号を読み出させる。このとき、ステップ105と同様に読み出しアドレス又は読み出しエリアの補正を行わせ(ステップ111)、補正後の動画を記録部135を介して記録媒体に記録させ(ステップ112)、ステップ101に戻る。
ステップ109にて高速静止画撮影モードと判定した場合には、ライブビュー表示と同じ画面の静止画を記録するために、第2の光路分割状態のままで静止画を生成させる(ステップ113)。このとき、ステップ105と同様に、画素信号の読み出しアドレス又は読み出しエリアの補正を行わせ(ステップ114)、補正後の静止画を記録部135を介して記録媒体に記録させ(ステップ115)、ステップ101に戻る。
ステップ109にて高精度静止画撮影モードと判定した場合には、制御部141は、ミラー駆動機構131を制御して光路分割系151を第2の光路分割状態から主ミラー104を退避させた第3の光路分割状態に切り換える(ステップ116)。その後、画像処理部134に、画素信号を読み出させて静止画を生成させ(ステップ117)、そのままの静止画を記録させる(ステップ118)。
この第3の光路分割状態では、主ミラー104を介さずに撮像素子108での光電変換が行われるので、読み出しエリア等の補正は行わない。その後、ライブビュー表示状態に戻すためにミラー駆動機構131を制御して、光路分割系151を第3の光路分割状態から第2の光路分割状態に切り換え(ステップ119)、ステップ101に戻る。
ステップ104において、表示モードがOVFモードと判定した場合には、光路分割系151は第1の光路分割状態になっており、図2(A)に示すように、撮影レンズ102および主ミラー104を介してファインダ光学系150側に光が導かれると共に、主ミラー104を透過した光はサブミラー105で反射されて焦点検出ユニット106に導かれる。このため、ファインダ光学系150で被写体を観察しながら焦点検出および焦点調節を行うことができる。
次に、ステップ120では、OVFモードでレリーズSW116からの入力を確認し、撮影を行うか否かを判定する。撮影を行わない場合にはステップ101に戻り、撮影を行う場合にはステップ121に進む。
ステップ121では、制御部141は、ミラー駆動機構131を制御して、光路分割系151を第1の光路分割状態から第3の光路分割状態に切り換える(ステップ121)。その後、画像処理部134に、画素信号を読み出させて静止画を生成させ(ステップ122)、そのまま静止画を記録させる(ステップ123)。このとき、OVFモードにおいてファインダ光学系150を介して見える撮影エリアと、第3の光路分割状態で撮影される静止画の撮影エリアとは略一致するため、この場合には上述したような読み出しエリア等の補正は行わない。その後、OVF表示状態に戻すために、光路分割系151を第3の光路分割状態から第1の光路分割状態に切り換え(ステップ124)、ステップ101に戻る。
以上のように、本実施例によれば、OVFモードにおいてファインダ光学系150を通して見ている画像(撮影エリア)と、ライブビューモードで表示素子107を通して見ている画像と、動画記録モードで記録された画像と、高速静止画記録モードで記録された画像と、高精度静止画モードで記録された画像とを互いに略一致させることが可能となる。
なお、本発明における「制御」は、本実施例のものに限定されない。すなわち、本実施例では、撮影エリアの補正を行うために、画像の生成処理における撮像素子からの画素信号の読み出し時に、読み出しアドレス又は読み出しエリアをΔX分シフトする場合について説明したが、例えば、撮像素子の全画素読み出しを行い、その後、全画素読み出しを行った画素信号の中からの読み出しアドレス又は読み出しエリアをΔX分シフトして画像を生成し、これを出力(表示又は記録)を行うようにしてもよい。
さらに、撮像素子から全画素読み出しを行って画像を生成した後、ここからの画像出力処理において読み出しアドレス又は読み出しエリアをΔX分シフトして画像を出力(表示又は記録)するようにしてもよい。
また、撮像素子から画像信号を読み出す際に、ΔXシフト分を見込んだ広いエリアからの画素信号を読み出し、第2の光路分割状態の場合に、ΔX分をシフトさせてライブビュー表示や動画/静止画記録を行うようにしてもよい。
図7のフローチャートには、本発明の実施例2である一眼レフデジタルカメラの制御動作の流れを示している。なお、本実施例における一眼レフデジタルカメラの構成は、図1および図5に示した実施例1の一眼レフデジタルカメラの構成と同じであるので、以下の説明でも共通する構成要素には実施例1と同符号を用いる。
まず、制御部141は、入力部140からの信号に基づいて、ファインダモードSW117からの信号が入力されているかどうかを確認する(ステップ201)。ここで、新たなファインダモードSW117からの信号入力があった場合は、現在設定されているファインダモードと異なるファインダモードを設定する。新たなファインダモードSW117からの信号入力がなければ、現在のファインダモードを維持する(ステップ202)。
ファインダモードが切り換わった場合、ステップ203では、制御部141は、その新たなファインダモードに対応した光路分割状態が設定されるように、ミラー駆動機構131に信号を送り、主ミラー104およびサブミラー105を駆動させる。OVFモードが設定された場合は第1の光路分割状態に、EVFモードが設定された場合には第2の光路分割状態になる。ファインダモードが切り換わらなかった場合には、現在の光路分割状態を維持する。
次に、ステップ202で設定されたファインダモードにより、そのときの表示モードが何であるかの判定を行う(ステップ204)。その表示モードがライブビュー表示モードである場合には、光路分割系151は第2の光路分割状態になっており、図2(B)に示すように、撮影レンズ102および主ミラー104を介して撮像素子108に光を導く。その際には、主ミラー104は焦点検出ユニット106にも光を導くので、焦点検出ユニット106による焦点検出と焦点調節制御を行うことができる。
そして、この第2の光路分割状態では、制御部141は、図3および図4に示すようにライブビュー画面(2の光路分割状態)の高精細静止画画面(第3の光路分割状態)に対するずれ量ΔXに相当する距離、撮像素子108を撮影光軸に略直交する上下方向に移動させるよう、撮像素子アクチュエータ132を制御する(ステップ230)。これにより、撮像素子108上におけるライブビュー画面の高精細静止画面に対するずれ量ΔXが小さくなる方向の(理想的には、ΔXが0になるような)補正が行われることになり、ライブビュー画面の読み出しアドレス又は読み出しエリアと高精細静止画画面のそれらとが同じであっても、ライブビュー画面の撮影エリアと高精細静止画面の撮影エリアとが略一致する。このため、ステップ207では、ライブビュー画面の全体を表示素子107に表示させることができる。ステップ207では、制御部141は、画像処理部134に、こうして位置を補正した後の撮像素子108から画素信号を読み出させ、ライブビュー画像を生成させ、さらに該画像を表示させる。
次に、ライブビュー表示を行っている状態で、制御部141は、レリーズSW116からの入力を確認し、撮影を行うかどうかを判定する(ステップ208)。レリーズSW116からの入力がない場合には、ステップ201へ戻り、入力があった場合にはステップ209に進む。
ステップ209では、制御部141は、設定されている撮影モードを判定する。撮影モードの種類およびその選択方法は実施例1と同様である。動画撮影モードと判定した場合には、ステップ210にて、ライブビュー画面上の動画と同じ動画を記録できるようにステップ210にて撮像素子108からの画素信号を読み出す。このとき、ステップ230で補正した撮像素子108の位置を維持し、生成された動画を記録部135を介して記録媒体に記録し(ステップ212)、ステップ201に戻る。
ステップ209にて高速静止画撮影モードと判定した場合には、制御部141は、ライブビュー表示と同じ画面の静止画を記録するために、第2の光路分割状態のままで画像処理部134に静止画を生成させる(ステップ213)。このとき、ステップ230で補正した撮像素子108の位置を維持し、生成された静止画を記録部135を介して記録媒体に記録させ(ステップ215)、ステップ201に戻る。
ステップ209にて高精度静止画撮影モードと判定した場合には、ミラー駆動機構131を制御して光路分割系151を第2の光路分割状態から主ミラー104を退避させた第3の光路分割状態に切り換える(ステップ216)。また、撮像素子アクチュエータ132を制御して、第2の光路分割状態において補正された撮像素子108の位置を補正前の位置(正規位置)に戻す(ステップ231)。そして、画像処理部134に、撮像素子108から画素信号を読み出させて静止画を生成させ(ステップ217)、そのままの静止画を記録させる(ステップ218)。
その後、ライブビュー表示状態の戻すために、制御部141は、撮像素子アクチュエータ132を制御して、ステップS231にて正規位置に移動した撮像素子108を再びΔX分だけシフトさせ(ステップ232)、またミラー駆動機構131を制御して、光路分割系151を第2の光路分割状態に切り換え(ステップ219)、ステップS201に戻る。
ステップ204において、表示モードがOVFモードと判定した場合には、光路分割系151は第1の光路分割状態になっており、図2(A)に示すように、撮影レンズ102および主ミラー104を介してファインダ光学系150側に光が導かれると共に、主ミラー104を透過した光はサブミラー105で反射されて焦点検出ユニット106に導かれる。このため、ファインダ光学系150で被写体を観察しながら焦点検出および焦点調節を行うことができる。
次に、ステップ223では、撮像素子108が正規位置に位置しているか否かを判別し、第2の光路分割状態に対応した補正位置にある場合には、ステップ234において、撮像素子アクチュエータ132を制御して撮像素子108を正規位置に移動させる。また、撮像素子108が正規位置に位置している場合には、その位置を維持させる。
次に、ステップ220では、OVFモードでレリーズSW116からの入力を確認し、撮影を行うか否かを判定する。撮影を行わない場合にはステップ201に戻り、撮影を行う場合にはステップ221に進む。
ステップ221では、制御部141は、ミラー駆動機構131を制御して、光路分割系151を第1の光路分割状態から第3の光路分割状態に切り換える。その後、画像処理部134に、画素信号を読み出させて静止画を生成させ(ステップ222)、そのまま静止画を記録させる(ステップ223)。このとき、OVFモードにおいてファインダ光学系150を介して見える撮影エリアと、第3の光路分割状態で撮影される静止画の撮影エリアとは略一致するため、この場合には上述したような撮像素子108の位置補正は行わない。その後、OVF表示状態に戻すために、光路分割系151を第3の光路分割状態から第1の光路分割状態に切り換え(ステップ224)、ステップ201に戻る。
以上のように本実施例によれば、OVFモードにおいてファインダ光学系150を通して見ている画像(撮影エリア)と、ライブビューモードで表示素子107を通して見ている画像と、動画記録モードで記録された画像と、高速静止画記録モードで記録された画像と、高精度静止画モードで記録された画像とを互いに略一致させることが可能となる。
なお、本発明の「制御」は、本実施例に限定されない。本実施例では、撮像素子108をずれ量ΔX分移動させることで撮影エリアの補正を行ったが、図5にかっこ書きで示すように、本実施例で説明した「制御」に代えて、主ミラー104での屈折による変位とは逆側に撮影光軸を変位させる光学部材により構成される第1の光路変更部材142を設けてもよい。この第1の光路変更部材142は、撮像素子108上での結像エリア(撮影エリア)をΔX分変位させる状態と変位させない状態とに切り換わる。具体的には、第1の光路変更部材142として、アクチュエータによって移動されることによって上記両状態に切り換わる光学部材を用いたり、通電/非通電による特性変化によって上記両状態に切り換わる光学部材を用いたりすることができる。
そして、制御部141の「制御」によって、第1および第3の光路分割状態においてこの第1の光路変更部材142を「変位させない状態」に設定させ、第2の光路分割状態において「変位させる状態」に設定させるようにすれば、上記実施例と同等の効果を得ることができる。
特に、防振用のシフトレンズは、撮影光軸に対して光軸と略直交する方向に移動して撮影光軸を変位させることにより像変位を補正する機能を有するため、第1の光路変更部材142としても使用することができる。この場合、第2の光路分割状態において、シフトレンズの防振のための駆動中心を、第1および第3の光路分割状態での駆動中心に対して撮像素子上でΔXとなる距離、変位させればよい。
また、143は第2の光路変更部材であり、第2の光路分割状態での撮影光軸の変位に対応してファインダ光学系150での結像位置(ファインダ光路)を変位させる状態と変位させない状態とに切り換わる。このような光路変更手段143を用いて、第2の光路分割の際にファインダ光学系150への光路そのものをΔX分シフトさせてファインダ表示を行うようにして動画記録モードで記録される撮影エリアを、予めOVFモードで確認することができる。
図8のフローチャートには、本発明の実施例3として、実施例1,2で説明した一眼レフデジタルカメラにおける像ずれ量ΔXの検出の流れを示している。本実施例では、図5にかっこ書きで示したように、画像処理部134からの画像信号に基づいて第2の光路分離状態と第3の光路分離状態での像ずれ量を検出する像ずれ検出部137が設けられている。そして、不図示の操作スイッチの操作に応じて、該像ずれ検出部137に像ずれ量ΔXを検出させる測定モードを有する。ここでは、製品出荷前の検査工程等で測定モードを用いて像ずれ量を検出する場合について説明する。
測定モードに対する準備作業として、測定者は、カメラを固定した上で、チャートを所定距離の位置に設定する(ステップ301)。このチャートとしては、例えば、縦方向のコントラストが明確な白黒の横線の2本バーチャートを用いる。
そして、測定モードに入ると、制御部141は、ミラー駆動機構131を制御して、光路分割系151を第1の光路分割状態に駆動する(ステップ302)。この状態で測定者はファインダ光学系150を通してチャートを観察し、不図示の調整機構により、該チャート内の横2本のバーチャートが所定の位置に見えるように、主ミラー104とファインダ光学系150とのパララックス調整を行う(ステップ303)。
次に、制御部141は、ミラー駆動機構131を制御して、光路分割系151を第2の光路分割状態に駆動する(ステップ304)。この状態で、制御部141は、画像処理部134に、画素信号の読み出しを行わせ(ステップ305)、2本のバーチャートの明暗コントラストを含む画像エリアでの縦方向の像波形1を抽出させる(ステップ306)。
次に、制御部141は、ミラー駆動機構131を制御して、光路分割系151を第3の光路分割状態に駆動する(ステップ307)。この状態で、制御部141は、画像処理部134に、画素信号の読み出しを行わせ(ステップ308)、2本のバーチャートの明暗コントラストを含む画像エリアでの縦方向の像波形2を抽出させる(ステップ309)。
そして、制御部141は、抽出された像波形1と像波形2間で相関演算を行い、第2の光路分割状態と第3の光路分割状態とでの像ずれ量ΔXを算出する(ステップ310)。この像ずれ量ΔXは不図示のメモリに記憶され(ステップ311)、実施例1,2での像ずれの補正制御(言い換えれば、撮影エリアの補正制御)において使用される。こうして、像ずれ量の検出動作が終了する。
このように、本実施例によれば、第2の光路分割状態における第3の光路分割状態に対する像ずれ量ΔXを直接検出するので、カメラの個体差による影響を受けることなく、正確に像ずれ補正を行うことが可能となる。
なお、本実施例では、製品出荷前の検査工程等において像ずれ量を測定し、メモリに記憶させておく場合について説明したが、例えば、ユーザによる通常使用時において、同一被写体の画像を第2の光路分割状態と第3の光路分割状態とで取得し、それらの画像データから上記と同様な方法を用いて、像ずれ量ΔXを検出し、メモリに記憶させるようにしてもよい。
また、上記各実施例では、主ミラー104が撮影光路外に退避した第3の光路分割状態で得られる画像を基準とし、この画像に対する主ミラー104が撮影光路内に配置された第2の光路分割状態で得られる画像のずれ量(変位量)を小さくするよう制御する場合について説明したが、第2の光路分割状態で得られる画像を基準とし、この画像に対する第3の光路分割状態で得られる画像のずれ量を小さくするよう制御することも可能である。
さらに、上記各実施例は、光路分割系の動作によって第1〜第3の光路分割状態に切り換えが可能な撮像装置について説明したが、本発明は、光学ファインダの有無にかかわらず、光分割機能やそれ以外の機能を有する光学部材であって、屈折作用等によって撮影光軸を変位させる部材を有し、該光学部材が撮影光路内に配置された状態と撮影光路外に退避した状態とで撮像する撮像装置のすべてに適用することができる。
本発明の実施例1である一眼レフデジタルカメラの光学的構成を示す断面図。
(A)〜(C)は、実施例1のデジタルカメラにおける光路分割状態を説明する図。
主ミラーにより撮影光軸が変位する様子を説明する図。
撮影光軸の変位による撮像素子上での結像エリア(画面)がずれる様子を説明する図。
実施例1のデジタルカメラにおける電気的構成を示すブロック図。
実施例1のデジタルカメラの動作を示すフローチャート。
実施例2のデジタルカメラの動作を示すフローチャート。
実施例2のデジタルカメラの動作を示すフローチャート。
符号の説明
102 撮影レンズ
103 撮影光学系
104 主ミラー
105 サブミラー
106 焦点検出ユニット
107 表示素子
108 撮像素子
134 画像処理部
141 制御部
142 光路変更部材
150 ファインダ光学系
151 光路分割系