JP2006218281A - 外科用処置具 - Google Patents

Abstract

【課題】
内視鏡下での組織吻合等において、操作性が良い外科手術処置具を実現する。
【解決手段】
本発明の外科用処置具（３０１）は、挿入部（３０２）と、挿入部の一端に設けられた操作部（３０３）と、挿入部の他端より延出するように設けられた処置部（３０４）と、処置部に設けられ、それぞれ挟持面を有する２つの挟持部材（３０８）と、操作部に設けられ、２つの挟持部材の少なくとも１方を動かして開閉操作するための開閉操作部材（３０５）と、操作部に夫々設けられ、処置部を所定の角度に変更するための角度変更操作部材（３０６）と、操作部内に設けられ、角度変更操作部の操作に連動する被制動部材（３６１）と、操作部内に設けられ、開閉操作部材の動作に連動して、被制動部材を制動する制動手段（３６２）とを具備し、処置部は、制動手段によって被制動部材が制動されることにより、所定の角度を維持する。
【選択図】図１８

Description

本発明は、内視鏡下で、針を把持して組織を吻合等するための外科手術処置具に関する。

近年、内視鏡下で、例えば心臓の冠状動脈血行再建術を行う手術として、胸壁に穿刺したトラカールを介して内視鏡、針持器としての外科用処置具及び鉗子等を胸腔に挿入し、鋏鉗子によって冠状動脈の一部を切開して吻合口を設け、内胸動脈を把持鉗子によって吻合口に導き、外科用処置具によって内胸動脈を吻合口に吻合して接続するバイパス手術が知られている。

このような手術において、外科手術処置具として、例えば米国特許第５，９５１，５７５号公報に、先端部に湾曲部を有する挿入部を設け、この挿入部の先端部に開閉可能及び挿入部の軸回りに回転可能な一対のジョーを設けた構造のものが知られている。挿入部の先端部へ回動力と開閉力を伝達するための駆動ケーブルが、操作部から挿入部を通って先端部まで挿通されている。

また、例えば、特開平０８−１６４１４１号公報に開示されるような、操作部と先端処置具とを連結する連結部材がフレキシブルな外装部材が設けられ、この外装部材の内部において、軸方向に移動可能な内装部材とで構成された外科手術処置具が使用される。
米国特許第５，９５１，５７５号公報 特開平０８−１６４１４１

しかしながら、前述した米国特許第５，９５１，５７５号公報に開示されている外科手術処置具は、挿入部の先端部に開閉自在な一対のジョーを有しており、ジョーを閉じる際には、操作部の操作によってケーブルを介して一対のジョーを筒部に引き込んで閉じ、針を把持する構成である。従って、内視鏡下での吻合時においては、縫合針の保持をしながら、回動させる操作を行う必要があり、術者にとっては操作性が良くない。

この外科手術処置具には、湾曲部が設けられているが、ジョーを閉じる操作に連動して湾曲角度が変化するため、小さな針を把持する際に、術者にとって使い勝手が良くない。さらに、湾曲部が湾曲されている状態において、縫合針を把持したり開放したりする牽引動作のために生じるケーブルの張力によって、術者の所望の湾曲度合が維持できないという問題がある。

また、前述した特開平０８−１６４１４１号公報に開示されている外科手術処置具は、湾曲部のみを独立して操作可能な湾曲レバーが設けられている。しかしながら、術者は、湾曲レバーがフリーな状態にあるため、常に湾曲レバーを保持して、湾曲部の所望の湾曲角度を維持する必要がある。そのため、常に湾曲レバーを保持しながら、他の操作を行う必要があり、術者にとっては操作性が良くない。

本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、内視鏡下での組織吻合等において、操作性が良い外科手術処置具を提供することを目的としている。

本発明の外科用処置具は、挿入部と、該挿入部の一端に設けられた操作部と、前記挿入部の他端より延出するように設けられた処置部と、該処置部に設けられ、それぞれ挟持面を有する２つの挟持部材と、前記操作部に設けられ、前記２つの挟持部材の少なくとも１方を動かして開閉操作するための開閉操作部材と、前記操作部に夫々設けられ、前記処置部を所定の角度に変更するための角度変更操作部材と、前記操作部内に設けられ、前記角度変更操作部の操作に連動する被制動部材と、前記操作部内に設けられ、前記開閉操作部材の前記開閉操作に連動して、前記被制動部材を制動する制動手段とを具備し、前記処置部は、前記制動手段によって前記被制動部材が制動されることにより、前記所定の角度を維持することを特徴とする。

本発明によれば、内視鏡下での組織吻合等において、操作性が良い外科手術処置具を実現することができる。内視鏡下での組織吻合が容易となるので、手術の質向上、手術時間の短縮が図れ、患者の早期退院、社会復帰が早まる。

以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
（第１の実施の形態）
以下に、本発明の第１の実施の形態を説明する。
図１は、第１の実施の形態に係るニードルドライバの正面斜め一側方からみた外観斜視図である。図２は、本実施形態のニードルドライバの正面図、図３は、本実施形態のニードルドライバを一側方（左側方）からみた左側面図、図４は、本実施形態のニードルドライバを他側方（右側方）からみた右側面図である。

図１〜図４に示すように、前記ニードルドライバ３０１は、挿入部３０２と、その挿入部３０２の一方端（基端側）に設けられた操作部３０３と、その挿入部３０２の他方端から延出するように設けられた処置部３０４とで主要部が構成される。

前記挿入部３０２は所定の長さを有する略円柱形状を呈する。また操作部３０３は挿入部３０２の基端側において当該挿入部３０２の長軸と同軸上に一体的に配設された略長方体形状を呈する部材であって、術者が片手で把持して、後述する操作をすることができる形状である。

また、前記操作部３０３には、処置部３０４の開閉操作をするための開閉操作部材としての開閉ボタン３０５と、処置部３０４の延出方向の角度の変更操作をするための角度変更操作部材としての角度可変レバー３０６と、処置部３０４の回動操作をするための回動操作部材としての回動ダイヤル３０７とが設けられている。

前記開閉ボタン３０５の基端部は、後述するバネの付勢力により操作部３０３の外装部から離間する方向に付勢されている。また、後述する牽引ワイヤの基端側一端が、開閉ボタン３０５に連結された部材に係止されている。開閉ボタン３０５を押し込むと、その牽引ワイヤに、後述する処置部内のバネの付勢力に抗する力が印加されるようになっている。開閉ボタン３０５の構成については後述する。

挿入部３０２の一端から延出するように設けられた処置部３０４は、先端側に、挟持部３０８を有しており、挟持部３０８の軸方向、すなわち処置部３０４の延出方向は、挿入部３０２の軸方向に対して所定の角度の範囲内、例えば０から９０度の範囲で可変となっている。言い換えると、ニードルドライバ３０１には、挿入部３０２の軸に対する処置部３０４の延出方向の角度を変更するための角度変更手段が設けられている。

図５は、図１のニードルドライバ３０１が把持された状態を説明するための図である。図５に示すように、術者は、親指ＦＦと人指し指ＩＦの間の付け根部分を樹脂製の掌掛け部材３０１Ａに当て、中指ＭＦを、樹脂製の指賭け部材３０１Ｘの２つの突出部３０１Ｂと３０１Ｃの間に置くことによって、術者はニードルドライバ３０１をしっかりと安定して把持することができる。図５に示すように、術者はニードルドライバ３０１を把持した状態で、人指し指ＩＦによって、回動ダイヤル３０７及び角度可変レバー３０６を操作することができる。回動ダイヤル３０７及び角度可変レバー３０６は、人指し指ＩＦによって、挿入部３０２の先端方向ＩＦＦと基端方向ＩＦＢの方向に操作することができる。さらに、親指ＦＦによって、開閉ボタン３０５を操作することができる。

さらに、掌掛け部材３０１Ａは、操作部３０３の側部からやや基端側に向かって斜めに延出しているので、把持されたときに掌掛け部材３０１Ａと掌とが密着することによって、術者はニードルドライバ３０１をしっかりと把持することができる。

次にニードルドライバ３０１の先端部の構造を図６から図１１に基づいて説明する。
図６から図１１は、ニードルドライバ３０１の処置部３０４を含む先端部分の構造を説明するための図である。

図６は、ニードルドライバ３０１の処置部３０４を含む先端部分の正面図である。図７は、処置部３０４の挟持部３０８が開いた状態の先端部分の正面図である。図８は、ニードルドライバ３０１の軸方向に沿った、処置部３０４を含む先端部分の断面図である。図９は、ニードルドライバ３０１の軸方向に沿った、処置部３０４の挟持部３０８が開いた状態の先端部分の断面図である。図１０は、先端部の内部構造を説明するための斜視図である。図１１は、図９のＡ−Ａ線に沿った断面図である。

挿入部３０２は、ステンレス製のパイプ、すなわち円筒部材であるシース３１１を有する。シース３１１の先端側、すなわち処置部３０４側には、ステンレス製の先端ハウジング部材３１２が固定されている。先端ハウジング部材３１２は、先端ハウジング部材３１２の基端側、すなわちシース３１１側に、シース３１１の内周面に嵌合する円筒形状の嵌合部を有する。

図９に示すように、先端ハウジング部材３１２の中央部分は、内部に空間を有し、挿入部３０２の軸に直交する断面形状がチャンネル形状のチャンネル形状部とを有する。先端ハウジング部材３１２は、図１０に示すように、先端側（すなわち挟持部３０８側）に、チャンネル形状部内の内部空間と連通する内部空間を挟むように、先端側に延びた２つの腕部３１２ａ、３１２ｂを有する。

図８に示すように、シース３１１内には、軸部材としての、ステンレス製の湾曲力伝達パイプ３１５が挿通されている。湾曲力伝達パイプ３１５は、処置部３０４を湾曲させるように、処置部３０４の延出方向の角度を変更するための部材である。

シース３１１内には、湾曲力伝達パイプ３１５が挿通され、その湾曲力伝達パイプ３１５内には、軸部材としての、ステンレス製の回動力伝達パイプ３１３が挿通されている。回動力伝達パイプ３１３は、先端部に回動力を伝達するためのパイプである。回動力伝達パイプ３１３内には、後述する挟持部３０８の開閉動作のための、ステンレス製の牽引ワイヤ３１４が挿通されている。
従って、図１１に示すように、シース３１１の内側には、同軸に、湾曲力伝達パイプ３１５と、回動力伝達パイプ３１３と、牽引ワイヤ３１４とが配置されている。

牽引ワイヤ３１４は、挟持部３０８の開動作を行うために操作部３０３側に牽引される線部材であり、細いステンレス線を編んで柔軟に構成されている。また、内部での摺動抵抗を低減し、かつ進退し易くするためにワイヤ表面にフッ素系の樹脂がコーティングされていてもよい。

先端ハウジング部材３１２は、ステンレス製の止め螺子３１６によりシース３１１に固定される。さらにシース３１１の先端部と先端ハウジング部材３１２とは接着剤例えばエポキシ樹脂系の接着剤が付けられて、固定されている。
上記回動力伝達パイプ３１３は、当該回動力伝達パイプ３１３の軸を回動中心として回動摺動可能に挿通され、湾曲力伝達パイプ３１５は、当該湾曲力伝達パイプ３１５の軸方向に進退可能に挿通されている。

回動力伝達パイプ３１３の先端には、ステンレス製の回動力伝達コイル３１７が固定されている。回動力伝達コイル３１７は、挿入部３０２の先端部分に回動力を伝えるためのフレキシブルなコイルである。回動力伝達コイル３１７内には、牽引ワイヤ３１４が挿通されている。回動力伝達パイプ３１３は金属製であるため、操作部３０３における回動ダイヤル３０７の回動操作による回動力を、回動力伝達コイル３１７まで確実に伝えることができる。

回動力伝達パイプ３１３に接続された回動力伝達コイル３１７は、３つのコイルを重ねるようにして構成された３重巻き密着構造をしている。１番下のコイルの上に重ねるように１番下のコイルの巻き方向と逆の巻き方向の２番目のコイルを設け、２番下のコイルの上に重ねるように２番目のコイルの巻き方向とは逆の巻き方向（１番下のコイルと同じ巻き方向）の３番目のコイルが設けられている。

回動力伝達コイル３１７の両端部は、ろう付けされ、かつ、ろう付けされた後に切削される。その結果、両端部の肉厚は、中心部の肉厚よりも薄い。そして、両端部は、それぞれ回動力伝達パイプ３１３と回動部ベース部材３２５とろう付けによって固定されている。

湾曲力伝達パイプ３１５は、ステンレス製の結合部材であるジョイント部材３１８とステンレス製のリンク部材３１９とを介して、ステンレス製の湾曲部ベース部材３２０に連結されている。ジョイント部材３１８の基端部は、回動力伝達パイプ３１３が、当該回動力伝達パイプ３１３の軸方向にかつ軸回りに摺動可能に挿通するように構成されている。さらに、湾曲力伝達パイプ３１５は、ジョイント部材３１８と基端部に嵌入されて接着によって、ジョイント部材３１８と連結されているので、湾曲力伝達パイプ３１５が、挿入部３０２の軸方向に沿って進退するに伴って、ジョイント部材３１８も同一方向に進退する。

図１０と図１２を用いて、湾曲力伝達パイプ３１５、ジョイント部材３１８、リンク部材３１９及び湾曲部ベース部材３２０の接続関係を説明する。図１２は、先端ハウジング部材３１２を省略した、先端部の内部構造を説明するための斜視図である。
図１０に示すように、先端ハウジング部材３１２は、先端ハウジング部材３１２の基端側においてシース３１１の内周面に嵌合する。先端ハウジング部材３１２の中央部と先端部内に、湾曲力伝達パイプ３１５の一部、回動力伝達コイル３１７、ジョイント部材３１８、リンク部材３１９及び湾曲部ベース部材３２０の一部とが配設される。先端ハウジング部材３１２の２つの腕部３１２ａと３１２ｂの間に、湾曲部ベース部材３２０が配設され、湾曲部ベース部材３２０と先端ハウジング部材３１２とがピン３２４によって連結されている。具体的には、湾曲部ベース部材３２０と先端ハウジング部材３１２とは、２つの腕部３１２ａと３１２ｂに嵌入するピン３２４が湾曲部ベース部材３２０に設けられた孔に嵌入されることによって連結され、湾曲部ベース部材３２０は、ピン３２４の軸を回動中心として、回動可能となっている。

また、図１２に示すように、ジョイント部材３１８は、先端側に、２つの腕部３１８ａ、３１８ｂを有する。リンク部材３１９は、両端部にそれぞれ孔部を有する棒部材である。湾曲部ベース部材３２０は、基端側に、２つの腕部３２０ａ、３２０ｂを有する。なお、湾曲部ベース部材３２０は、先端側に円筒状部３２０ｃを有し、回動部ベース部材３２５の基端部が、その円筒状部３２０ｃの内側に嵌挿している。

湾曲部ベース部材３２０の２つの腕部３２０ａ、３２０ｂの間に、リンク部材３１９の先端部を挟むようにして、２つの腕部３２０ａ、３２０ｂと、リンク部材３１９の先端部の孔とを通るピン３２１によって、湾曲部ベース部材３２０とリンク部材３１９は連結されている。ピン３２１は、湾曲部ベース部材３２０の端部においてレーザ溶接によって固定されているが、リンク部材３１９は、ピン３２１の軸を回動中心として、回動可能となっている。

また、２つの腕部３１８ａ、３１８ｂの間に、リンク部材３１９の基端部を挟むようにして、２つの腕部３１８ａ、３１８ｂと、リンク部材３１９の基端部の孔とを通るピン３２２によって、ジョイント部材３１８とリンク部材３１９は連結されている。ピン３２２は、ジョイント部材３１８の端部においてレーザ溶接によって固定されているが、リンク部材３１９は、ピン３２２の軸を回動中心として、回動可能となっている。

従って、操作部３０３の角度可変レバー３０６を操作することによって、湾曲力伝達パイプ３１５が操作部３０３の軸方向の先端側に進むと、ピン３２４を回動中心として湾曲部ベース部材３２０が回動する。図１３は、処置部３０４が挿入部３０２の軸に対して９０度湾曲した状態を示す先端部分の正面図である。図１４は、処置部３０４が挿入部３０２の軸に対して９０度湾曲した状態を示す先端部分の断面図である。また、角度可変レバー３０６を操作することによって、湾曲力伝達パイプ３１５が操作部３０３の軸方向の基端側に戻すと、処置部３０４の延出方向は、挿入部３０２の軸に対して９０度よりも小さい角度になる。なお、ピン３２１，３２２，３２４は、それぞれステンレス製である。操作部３０３の角度可変レバー３０６を、指で挿入部３０２の軸方向に進退させることによって、湾曲力伝達パイプ３１５が操作部３０３の軸方向において進退する機構については後述する。

図８に戻り、湾曲部ベース部材３２０の円筒状部３２０ｃ内には、円筒状の回動部ベース部材３２５が、回動部ベース部材３２５の軸を回動中心として回動可能なように、嵌挿されている。回動部ベース部材３２５は、先端側に開口部を、基端側に底部を有する。回動部ベース部材３２５の基端側底部には、孔が形成されており、その孔に回動力伝達コイル３１７の先端部が挿入されて、上述したようにろう付けによって固定されている。

回動力伝達コイル３１７は、基端側において回動力伝達パイプ３１３に、上述したようにろう付けによって固定され、先端側においても回動部ベース部材３２５にろう付けによって固定されている。回動力伝達コイル３１７の先端部は、回動部ベース部材３２５の基端側底部に挿入されてろう付けされる。回動力伝達コイル３１７の基端部は、回動力伝達パイプ３１３の先端部の内部に形成された段部に挿入されてろう付けされる。よって、回動力伝達パイプ３１３が回動力伝達パイプ３１３の軸を回動中心として回動すると、回動力伝達パイプ３１３の回動量を処置部３０４へ伝達するように、回動力伝達コイル３１７と回動部ベース部材３２５も同様に回動する。

なお、図８に示すように、処置部３０４が湾曲していない状態では、回動部ベース部材３２５の基端側底部と回動部ベース部材３２５の基端側底部との間は、所定の距離ｄ１だけ離れている。これは、処置部３０４が湾曲していくにつれて、回動部ベース部材３２５の基端側底部と回動部ベース部材３２５の基端側の底部とが近づいていく。従って、後述するように処置部３０４を最大まで（例えば９０度まで）湾曲させるときに、回動部ベース部材３２５の基端側底部と回動部ベース部材３２５の基端側底部とが接触して摩擦抵抗が生じないように、回動部ベース部材３２５の基端側底部と回動部ベース部材３２５の基端側底部との間を、所定の距離ｄ１だけ予め離している。尚、所定の距離ｄ１をゼロ（０）とすることで、摩擦抵抗は増加するが、湾曲操作に伴う湾曲部ベース部材３２０に対する回動部ベース部材３２５の処置部３０４長軸方向の移動を抑えることが可能である。

処置部３０４の先端部には、針を挟持する２つの挟持部材を含む挟持部３０８が設けられており、一方が可動挟持片３２６であり、他方が固定挟持片３３１である。
回動部ベース部材３２５は、ステンレス製であり、回動部ベース部材３２５内には、先端側の開口部から、処置部３０４の挟持部３０８の一方の可動挟持片３２６の一部が内挿されている。可動挟持片３２６は、ステンレス製であり、基端側に内向フランジ部を有する円筒部材である。
可動挟持片３２６の基端側の底部には、牽引ワイヤ３１４が挿通可能な孔が設けられている。牽引ワイヤ３１４の先端部には、先端部を溶融して形成した末端肥大部３１４ａが形成され、その末端肥大部３１４ａが、可動挟持片３２６の底部の内側に固定されている。従って、牽引ワイヤ３１４が、操作部３０３側に引っ張られたときに、可動挟持片３２６も操作部３０３側に移動する。

回動部ベース部材３２５の円筒状部の内側であって、可動挟持片３２６の底部の外側面と、その外側面と対向する回動部ベース部材３２５の底部の内側面との間に、ステンレス製のバネ３３３が、圧縮された状態で、牽引ワイヤ３１４に介装されるようにして設けられている。図１５は、回動部ベース部材３２５を省略した、先端部の内部構造を説明するための斜視図である。図１５に示すように、バネ３３３は、圧縮された状態で、回動部ベース部材３２５の内部に設けられる。

上述したように、回動部ベース部材３２５の先端側には、１つの挟持部材である、ステンレス製の可動挟持片３２６の一部が嵌挿されている。可動挟持片３２６は、２つの長孔部３２６ａ、３２６ｂを有する略円筒形状であり、基端部は、上述したように底部を有する。その底部には、内向フランジ部が形成されている。可動挟持片３２６の先端部は、フランジ部３２６ｃを有している。可動挟持片３２６の先端部のフランジ部３２６ｃの先端側面は、針を挟持するための平面部を有し、ここでは、その平面部の平面は、略円筒形状の可動挟持片３２６の軸に対して直交する。

回動部ベース部材３２５の先端部には、他の挟持部材である、ステンレス製の固定挟持片３３１の基端部がステンレス製のピン３３０によって固定されている。固定挟持片３３１は、先端部にはフランジ部３３１ａを有する円柱部材である。固定挟持片３３１と回動部ベース部材３２５とは、回動部ベース部材３２５の先端部と固定挟持片３３１の基端部とを貫通するピン３３０によって固定されている。ピン３３０は、可動挟持片３２６の２つの長孔部３２６ａ、３２６ｂ内に摺動可能なように嵌挿されている。ピン３３０は、端部においてレーザ溶接によって回動部ベース部材３２５と固定される。

先端側の挟持片である固定挟持片３３１は、円環状であって、かつ可動挟持片３２６の先端部の平面部に対して平行な平面部を有する。
操作部３０３において、開閉ボタン３０５を操作していないとき、バネ３３３は、可動挟持片３２６の底部を押圧するが、可動挟持片３２６のフランジ部３２６ｃの先端側面が固定挟持片３３１のフランジ部３３１ａの基端側面と当接して、それ以上は伸びることができないので、圧縮された状態のままである。従って、操作部３０３の開閉ボタン３０５を操作していないときに、可動挟持片３２６と固定挟持片３３１のそれぞれの平面は密着するように押圧されているので、針をしっかりと挟持することができる。また、開閉ボタン３０５を押すと、可動挟持片３２６が、固定挟持片３３１から基端側に向かって移動するので、可動挟持片３２６と固定挟持片３３１のそれぞれの平面間に挟持された針を放したり、針を挟持するためにそれぞれの平面の間を離したりすることができる。

また、固定挟持片３３１のフランジ部３３１ａと可動挟持片３２６のフランジ部３２６ｃは薄く形成されているので、それぞれの平面部の間に針を当接させ易い。よって、挟持部３０８の湾曲角度あるいは体腔壁の状態がどのような場合でも、術者は、針を容易に挟持することができる。

従って、後述するように、開閉ボタン３０５に対する開閉動作に応じて、固定挟持片３３１の平面部と可動挟持片３２６の平面部とによって挟むように、針が挟持される。従って、バネ３３３は、２つの挟持部材の少なくとも一方を、他方に密着する方向に常に付勢する付勢手段の一部を構成する。

針の挟持を行う挟持面である、固定挟持片３３１の平面部と可動挟持片３２６の平面部のそれぞれの表面は、滑り止め加工が施されている。滑り止め加工としては、放電加工、ローレット加工、金属メッキへのダイヤモンド微小粉末の吹きつけ処理加工等がある。

次に、以上のように構成されたニードルドライバ３０１の処置部３０４の動作を説明する。
上述したように、固定挟持片３３１の基端側の円柱部分は、可動挟持片３２６の孔部に挿通され、その円柱部分が回動部ベース部材３２５に固定されているので、固定挟持片３３１は、回動部ベース部材３２５に対して固定された位置関係を有する。言い換えれば、固定挟持片３３１は、湾曲部ベース部材３２０に対しても長軸方向に固定された位置関係を有する。

一方、開閉ボタン３０５の開操作がされてすなわち開閉ボタン３０５が押されて、その押し込む量に応じて、牽引ワイヤ３１４が牽引されることによって、操作部３０３側に移動可能な可動挟持片３２６は、バネ３３３の伸長する方向に掛かる力に抵抗しながら、可動挟持片３２６は、フランジ部３２６ｃが固定挟持片３３１のフランジ部３３１ａから離間するように、操作部３０３側に移動する。従って、牽引ワイヤ３１４が牽引されると、可動挟持片３２６は、牽引ワイヤ３１４が引っ張られた量だけ、図７の矢印に示す方向に移動する。すなわち、バネ３３３による、固定挟持片３３１に密着する方向の付勢力に抗して、可動挟持片３２６は、開閉ボタン３０５の開操作によって、処置部３０４の先端部に位置する固定挟持片３３１から離間する方向に移動する。このとき、図９に示すように、バネ３３３は、図８に示す開閉ボタン３０５の開操作がされていない状態よりも、さらに圧縮された状態となり、開閉ボタン３０５には押し返す力が掛かる。開操作がされなくなると、バネ３３３の伸長力によって、牽引ワイヤ３１４は、バネ３３３による、可動挟持片３２６を固定挟持片３３１に密着する方向への付勢力によって、処置部３０４側に引っ張られる。その結果、挟持部３０８において、固定挟持片３３１の平面部と可動挟持片３２６の平面部の間に位置する針が挟持される。

次に回動動作について説明する。
針が挟持された状態において、あるいは針が挟持されていない状態において、回動ダイヤル３０７が回動されると、軸部材である回動力伝達パイプ３１３が軸を回動中心として回動するために、回動力伝達パイプ３１３に固定された回動力伝達コイル３１７が回動し、回動力伝達コイル３１７に固定された回動部ベース部材３２５も回動する。回動ダイヤル３０７が回動された量に応じて、回動力伝達パイプ３１３が回動するので、回動ダイヤル３０７が回動された量に応じた回動量が、処置部３０４へ伝達される。その結果、挟持部３０８を構成する固定挟持片３３１と可動挟持片３２６は、回動部ベース部材３２５の回動に連動して、回動部ベース部材３２５と共に回動する。

また、このとき、牽引ワイヤ３１４は、回動部ベース部材３２５の底部の孔に対して摺動可能となっているため、回動部ベース部材３２５が回動しても、牽引ワイヤ３１４は、当該回動部ベース部材３２５と共に回動することはない。

次に角度可変動作について説明する。
角度可変レバー３０６を挿入軸方向の先端側から基端側に向かって移動させることによって、図１４に示すように、処置部３０４を含む先端部分は湾曲する。角度可変レバー３０６を挿入軸方向の先端側から基端側に向かって移動させると、湾曲力伝達パイプ３１５は、ジョイント部材３１８を先端側に押し、その結果、ジョイント部材３１８は、リンク部材３１９を押す。押されたリンク部材３１９は、さらに、湾曲部ベース部材３２０を押すが、湾曲部ベース部材３２０は、先端ハウジング部材３１２にピン３２４によって連結されているため、湾曲部ベース部材３２０は、ピン３２４を回動中心として回動する。

角度可変レバー３０６の回動量に応じて湾曲力伝達パイプ３１５が進退することによって、処置部３０４の湾曲量、すなわち湾曲角度が変化する。よって、術者は、上述したように、手術の状況に応じて、処置部３０４を挿入部３０２の軸に対して所望の角度にして、処置を行うことができる。

続いて、図１６〜図２５に基づいて、本実施形態のニードルドライバ３０１における操作部３０３について説明する。尚、図１６は、ニードルドライバ３０１の操作部３０３を正面斜め一側方からみた外観斜視図、図１７は、ニードルドライバ３０１の軸方向に沿った、操作部３０３の断面図、図１８は、図１７の円Ａにて囲んだ部分を拡大した操作部３０３の断面図、図１９は、操作部３０３の外装部材を省略した、回動ダイヤル３０７の周辺に設けられる操作部３０３の内部構成を示す斜視図、図２０は、操作部３０３内の各構成部材を下面斜め一側方からみた斜視図、図２１は、操作部３０３の外装部材の一部分を図示し、操作部３０３内の各構成部材を下面斜め一側方からみた斜視図、図２２は、操作部３０３の外装部材の一部分を図示し、操作部３０３内の各構成部材を基端側の斜め一側方からみた斜視図、図２３は、ニードルドライバ３０１の軸に対して直交する方向に沿って、操作部３０３の中途部分を切断した断面図、図２４は、操作部３０３を側面斜め一側方からみた斜視図、図２５は、ニードルドライバ３０１を先端側から見た正面図である。

図１６に示すように、操作部３０３は、挿入部３０２の基端側において当該挿入部３０２の長軸と同軸上に配設され、略長方体形状を呈する外装部材３２７に覆われている。この外装部材３２７は、３つのアルミニウム等の金属部材が互いに嵌合して一体に構成されており、先端側（挿入部３０２側）の外装を形成する先端側外装部材３２７ａと、回動ダイヤル３０７、開閉ボタン３０５が一面に配設されている本体外装部材３２７ｂと、指掛け部材３０１Ｘが一面に配設され、前記本体外装部材３２７ｂの回動ダイヤル３０７、開閉ボタン３０５が設けられている面と反対側に嵌合されているカバー外装部材３２７ｃとからなる。

先端側外装部材３２７ａと本体外装部材３２７ｂは、固定螺子３２８ａにより固定されている。また、カバー外装部材３２７ｃは、その一面に２つの固定螺子３２９ａ，３２９ｂにより指掛け部材３０１Ｘが固定された後に、先端側外装部材３２７ａに対して固定螺子３２８ｂにより固定され、本体外装部材３２７ｂに対して固定螺子３２８ｃにより固定される。尚、外装部材３２７は、樹脂でもよい。

先端側外装部材３２７ａには、内部に後述するスラスタ３５３及び角度可変レバー３０６周辺の機構が配置される空間のための孔部が形成されており、両側面に凹部形状の段部３２７Ａが基端から先端側に向かった中途部分まで形成されている（図２１参照。尚、図２１においては、先端側外装部材３２７ａの一側面側の段部３２７Ａのみ図示されている）。

本体外装部材３２７ｂは、先端側に延びる、２つの腕部３２７Ｂ（図２４参照。尚、図２４においては、本体外装部材３２７ｂの一側面側の腕部３２７Ｂのみ図示されている）を先端側の両側部に有し、これら２つの腕部３２７Ｂが先端側外装部材３２７ａの２つの段部３２７Ａに夫々嵌合される。

また、先端側外装部材３２７ａに本体外装部材３２７ｂが嵌着された状態において、操作部３０３の両側面となる部分には、角度可変レバー３０６が各側面から突出でき、且つ、可倒動作するための長溝３０３ａが形成される（図２４参照）。この長溝３０３ａは、操作部３０３の１側面に２つ形成される。

図１７に示すように、本体外装部材３２７ｂの基端部分には、段部３４０が形成されている。この段部３４０は、樹脂製の調整ダイヤル３０９のダイヤル頭部３０９ａが当接する座部３４０ａを有する。座部３４０ａには、段部３４０の略中央に操作部３０３の長軸方向に沿った長孔３４１が形成されている。段部３４０と反対側の本体外装部材３２７ｂの表面には、掌掛け部材３０１Ａの突出部３０１Ｙが入り、操作部３０３の長軸方向に沿った溝部３４２が形成されている。長孔３４１は、段部３４０と溝部３４２を連通する孔である。

調整ダイヤル３０９は、段部３４０側から挿入され、調整ダイヤル３０９の螺子部が、雌螺子が形成された突出部３０１Ｙの雌螺子穴に螺合し、螺子止めされることによって掌掛け部材３０１Ａが調整ダイヤル３０９に固定され、且つ、掌掛け部材３０１Ａが本体外装部材３２７ｂに固定されるようになっている。その固定の際、本体外装部材３２７ｂの長軸方向における、長孔３４１内の調整ダイヤル３０９の位置を調整することによって、本体外装部材３２７ｂの長軸方向における掌掛け部材３０１Ａの位置を、術者の手の大きさに合わせて調整することができる。
なお、調整ダイヤル３０９のダイヤル頭部３０９ａは、その外周部分を把持し易くするために、操作部３０３の両側面から突出するように、操作部３０３の幅方向の長さよりも長い外径を有している。

また、先端側外装部材３２７ａは、先端側に突出するように形成された筒状の連結部３２７ａａを有している。先端側外装部材３２７ａには、筒状の連結部３２７ａａの先端側の開口部に連通する孔部が形成されている。その孔部は、先端側から基端側の途中に段部を有する。この連結部３２７ａａの外周面には、螺子溝が刻設されている。

内周面に刻設された螺子溝を有する略円環状の押さえ環３１０が、連結部３２７ａａに被さるように設けられている。アルミニウム製の押さえ環３１０は、先端側に開口部を有する。先端側外装部材３２７ａには、その押さえ環３１０の開口部と連結部３２７ａａの開口部とを通るように、挿入部３０２のシース３１１の基端部分が挿入され、なお、押さえ環３１０は、内周面の螺子溝と連結部３２７ａａの外周面の螺子溝とが螺合することにより、連結部３２７ａａに固定される。

詳述すると、シース３１１は、基端部分の外周に略筒状のシースエンド部材３１１ａが接着されており、シースエンド部材３１１ａと共に先端側外装部材３２７ａの孔部内に、シースエンド部材３１１ａの軸回りに摺動して回動可能に挿入される。シースエンド部材３１１ａはアルミニウム製である。また、押さえ環３１０の先端側となる面には、シース３１１の外径と略同一の孔径を有する孔部（開口部）が形成されている。すなわち、押さえ環３１０の先端側の面が内向フランジを形成し、シース３１１のシースエンド部材３１１ａが内向フランジに当接することによって、挿入部３０２の外装を形成するシース３１１が先端側外装部材３２７ａから抜けないようにしている。

押さえ環３１０は、連結部３２７ａａと螺合量が多くなるにつれて、基端側へ移動する。なお、押さえ環３１０とシースエンド部材３１１ａの間には、シリコン製のＯリング３４５が設けられている。これにより、押さえ環３１０の内向フランジ面がＯリング３４５を介して、シース３１１のシースエンド部材３１１ａを基端側へ押圧する。

そして、シース３１１の基端部分に固着されたシースエンド部材３１１ａは、Ｏリング３４５の弾性力により、その基端面が先端側外装部材３２７ａの孔部に形成された段部の先端面と当接される。その結果、挿入部３０２は、操作部３０３に対して、ぐらつくことなく、しっかりと固定されている。

さらに、挿入部３０２が操作部３０３にしっかりと固定されつつ、挿入部３０２が操作部３０３に対して挿入部３０２の軸回りに回動可能な程度に、Ｏリング３４５はシースエンド部材３１１ａを所定の押圧力で押圧する。これは、押さえ環３１０の先端内面が連結部３２７ａａの先端部に当接したときのシースエンド部材３１１ａと押さえ環３１０の先端内面間の距離を、Ｏリング３４５が圧縮されてそのような所定の押圧力を生じるような距離に設定することによって実現される。

牽引ワイヤ３１４が挿通している回動力伝達パイプ３１３には、基端部分にポリアセタールなどの合成樹脂からなる受動側傘歯車部材３５０が接着されて固定されている。尚、回動力伝達パイプ３１３は、回動力伝達パイプ３１３の長手方向軸に直交する方向の断面中心と、受動側傘歯車部材３５０の回動軸が重なるように、受動側傘歯車部材３５０の長手方向に形成された孔部に圧入固定されている。

この受動側傘歯車部材３５０の、歯車を有する端部が先端側を向いており、軸部分が略筒状の軸受け３５２に軸回りに回動自在に軸支されている。尚、アルミニウム又は樹脂製の軸受け３５２は、先端側外装部材３２７ａに挿嵌固定されている。

また、先端側外装部材３２７ａの一面に形成された段部分には、回動ダイヤル３０７が配設されている。アルミニウム又は樹脂製の回動ダイヤル３０７の、操作部３０３側の面に略円板形状の軸受けプレート３４９が設けられている。この軸受けプレート３４９は、先端側外装部材３２７ａに固定されている。アルミニウム又は樹脂製の軸受けプレート３４９の、回動ダイヤル３０７側の面と反対側の面の中央部分からホイール軸３４９ａが突出している。軸受けプレート３４９には、回動ダイヤル３０７側の面の中心からホイール軸３４９ａの軸中心を貫く孔部が形成されている。

この軸受けプレート３４９の孔部には、ポリアセタールなどの合成樹脂からなる能動側傘歯車部材３５１が能動側傘歯車部材３５１の軸回りに回動可能に挿通されている。また、能動側傘歯車部材３５１の歯車を有している側と反対側の端部は、回動ダイヤル３０７の回動軸中心に形成されている孔部３０７ａの一部に嵌入し、固定されている。すなわち、回動ダイヤル３０７及び能動側傘歯車部材３５１は、一体となっている。

また、軸受けプレート３４９は、能動側傘歯車部材３５１の歯車が受動側傘歯車部材３５０の歯車と歯合するように設けられている。

従って、回動ダイヤル３０７が術者によって所定の方向に回動されると、能動側傘歯車部材３５１に回動が伝達され、歯合作用により、その回動力が受動側傘歯車部材３５０に伝達される。すなわち、回動ダイヤル３０７が操作部３０３の長手方向と直交する軸回りに回動操作されると、能動側傘歯車部材３５１を介して、受動側傘歯車部材３５０によって、回動力伝達パイプ３１３に長手方向の軸回りに回動力が伝達される。その結果、回動力伝達パイプ３１３が当該回動力伝達パイプ３１３の先端に固定されている回動力伝達コイル３１７（図９参照）に回動力を伝え、挟持部３０８（図１参照）が回動される。

上記軸受けプレート３４９は、回動に伴って生じる摩擦などによって、回動ダイヤル３０７と先端側外装部材３２７ａとの磨耗劣化を防止するための保護用のプレートとしての機能も兼ねている。また、回動ダイヤル３０７は、上述したように、外周部が操作部３０３の両側面よりも突出している。そのため、回動ダイヤル３０７は、万一において、術者又は看護師の取り扱いによって、能動側傘歯車部材３５１の歯車を有している側と反対側の端部から回動ダイヤル３０７を引き抜く力が加えられる場合がある。その対策として、回動ダイヤル３０７の側面には、軸受けプレート３４９が設けられ、能動側傘歯車部材３５１から回動ダイヤル３０７を引き抜く大きな力が加えられることを防止している。

すなわち、軸受けプレート３４９は、回動ダイヤル３０７よりも外周の直径が僅かに小さい。これにより術者の人指し指で直接に回動操作される回動ダイヤル３０７の操作性を損なうことなく、引き抜く方向、つまり、先端側外装部材３２７ａから離れた方向への大きな力が加えられることを防止している。

図１８に示すように、回動力伝達パイプ３１３が長軸回りに回動自在に挿通している湾曲力伝達パイプ３１５には、基端部分に先端側外装部材３２７ａに対して、長軸方向に摺動自在な略筒状の留パイプ３４６が接着されている。アルミ製の留パイプ３４６は、角度可変レバー３０６の操作により、湾曲力伝達パイプ３１５と共に、長軸方向に進退移動される。

また、図１８及び図１９に示すように、留パイプ３４６の基端部分には、ステンレスなどの金属からなるスラスタ３５３が嵌合固着されている。このスラスタ３５３には、２つの螺子孔が外周面側から同軸上に切削され、これら２つの螺子孔に夫々ステンレスなどの金属からなる螺子ピン３５４ａ，３５４ｂが螺着されている。

詳しくは、スラスタ３５３は、略円柱形状の部材の外周側の両端部分を平行な面を有するようにカットされ、これらのカットされた夫々の面から内部側に向かって、前記各カット面に対して直交する方向に、２つの螺子孔が形成される。そして、前記２つの螺子孔には、螺子ピン３５４ａ，３５４ｂが夫々螺合され、各螺子ピン３５４ａ，３５４ｂの一端部分が突起するように設けられている。

尚、各螺子ピン３５４ａ，３５４ｂが螺着される２つの孔部は、夫々の孔軸が同軸上となるように、スラスタ３５３に形成される。すなわち、２つの螺子ピン３５４ａ，３５４ｂは、同じ軸上に夫々の長軸が沿って、スラスタ３５３の外周側の両端部分において対称となる位置において、夫々がスラスタ３５３の外周方向に突起している。尚、これら２つの螺子ピン３５４ａ，３５４ｂは、夫々の螺子頭にマイナスドライバによる締め付けを可能とする溝が形成されている。

また、スラスタ３５３には、２つの螺子ピン３５４ａ，３５４ｂの軸に直交し、且つ、留パイプ３４６の長軸と直交する１方向側の外周部から中央に向かった切り欠きが形成されている。このスラスタ３５３の切欠かれた部分は、対向する平行な２つの平面を有している。

なお、留パイプ３４６は、基端部分の外周に周溝が形成されており、その周溝は、スラスタ３５３の前記切欠かれた部分の平行な２つの平面に夫々対応する平面を有するような形状加工が施されて形成される。これにより、スラスタ３５３は、切欠かれた部分の２つの面と、留パイプ３４６の周溝の溝面が夫々接触するように、切欠かれた部分の外周方向から留パイプ３４６の周溝に嵌合される。
こうして、スラスタ３５３は、２つの螺子ピン３５４ａ，３５４ｂの軸が留パイプ３４６の長軸に直交するように、留パイプ３４６に嵌着される。

角度可変レバー３０６は、両端部分に長孔３０６ａが穿設された金属からなる板部材をコの字状に成形した部材である。コの字状の角度可変レバー３０６の２つの腕部には、夫々の長孔３０６ａの近傍に後述する枢軸ピン３５５が挿入される孔部３０６ｂ（図１９参照）が穿設されている。つまり、角度可変レバー３０６には、２つの長孔３０６ａと２つの孔部３０６ｂが設けられている。

また、角度可変レバー３０６は、２つの長孔３０６ａの夫々の中心が同じ軸を通り、且つ、２つの孔部３０６ｂの中心が同じ軸を通るように、コの字形状の腕部の対向する面を有する部分に各長孔３０６ａ及び各孔部３０６ｂが夫々位置決めされ、穿設されている。さらに、各長孔３０６ａ及び各孔部３０６ｂは、夫々の中心を通る軸が前記対向する面に対して、直交する軸となるように位置決めされている。尚、本実施の形態におけるニードルドライバ３０１には、図２５に示すように、上述の角度可変レバー３０６が操作部３０３の両側面から突出するように２つ配設される。

２つの角度可変レバー３０６の各長孔３０６ａには、図１９に示すように、スラスタ３５３の２つの螺子ピン３５４ａ，３５４ｂが当該螺子ピン３５４ａ，３５４ｂの軸回りに摺動回転可能なように挿入される。また、２つの角度可変レバー３０６は、スラスタ３５３を挟んで、留パイプ３４６の長軸及び２つの螺子ピン３５４ａ，３５４ｂの長軸に対して夫々対称となる位置に配設される。

これら２つの角度可変レバー３０６の腕部は、スラスタ３５３に設けられた状態において、各螺子ピン３５４ａ，３５４ｂの近傍において、互い違いとなるように重畳している。つまり、一方の角度可変レバー３０６の螺子ピン３５４ａが挿入している長孔３０６ａを有する部分がスラスタ３５３側となっている場合、他方の角度可変レバー３０６は、螺子ピン３５４ｂが挿入している長孔３０６ａを有する部分がスラスタ３５３側となっている。

また、２つの角度可変レバー３０６の夫々の各孔部３０６ｂには、外側の面方向から枢軸ピン３５５が挿入されている。すなわち、本実施形態において、１つの角度可変レバー３０６の２つの孔部３０６ｂには、各枢軸ピン３５５の軸回りに摺動回転可能なように夫々枢軸ピン３５５が１つずつ挿入されるため、２つの角度可変レバー３０６が設けられる操作部３０３には、合計４つの枢軸ピン３５５が設けられる。

これらの４つの枢軸ピン３５５は、夫々が先端側外装部材３２７ａに圧入固定されている（図２３参照）。また、１つの角度可変レバー３０６の２つの孔部３０６ｂに挿入されている２つの枢軸ピン３５５は、夫々、長軸が同じ軸上となるように、先端側外装部材３２７ａに対向するように圧入固定されている。従って、２つの角度可変レバー３０６は、各孔部３０６ｂに対応する夫々の枢軸ピン３５５の軸回りに夫々回動自在となっている。

以上の構成により、２つの角度可変レバー３０６は、枢軸ピン３５５の軸回りの回動操作されることにより、スラスタ３５３を介して、留パイプ３４６を長軸方向に進退移動することができる。これにより、湾曲力伝達パイプ３１５は、留パイプ３４６の進退移動に連動して、長軸方向に進退移動する。

そして、この湾曲力伝達パイプ３１５が長軸方向に進退移動に合わせて、湾曲力伝達パイプ３１５の先端部分に設けられたジョイント部材３１８は、リンク部材３１９を先端側への押進又は基端側へ牽引する。また、リンク部材３１９が湾曲部ベース部材３２０を先端側へ押進又は基端側へ牽引することにより、湾曲部ベース部材３２０は、ピン３２４を回動中心として回動する。こうして、処置部３０４は、挿入部３０２の軸に対して９０度の範囲で湾曲操作がされる。

また、図２５に示すように、本実施の形態のニードルドライバ３０１を先端側から見たときに、２つの角度可変レバー３０６は、操作部３０３の両側面から突出するように設けられる。詳述すると、コの字状の２つの角度可変レバー３０６の各中央部は、操作部３０３の図２５の紙面に向かって見た上部側に設けられる回動ダイヤル３０７と、操作部３０３の図２５の紙面に向かって見た下部側に設けられる掌掛け部材３０１Ａ及び指掛け部材３０１Ｂ，３０１Ｃとを結び、且つ、操作部３０３の中心を通る垂直軸Ｘに対して、略直交し、且つ、操作部３０３の中心を通る水平軸Ｙが交差する操作部３０３の両側面から水平軸Ｙ方向に夫々、操作部３０３から離れる方向に突出している。

そのため、どちらか一方の角度可変レバー３０６を操作することによって、術者は、処置部３０４を挿入部３０２の軸に対して９０度の範囲で湾曲操作がおこなえる。すなわち、本実施の形態のニードルドライバ３０１は、操作部３０３の両側面に角度可変レバー３０６を１つずつ設けることにより、術者の利き腕（右利き及び左利き）に関係なく、処置部３０４を挿入部３０２の軸に対して容易に湾曲させることができる。この角度可変レバー３０６が操作されることによる湾曲力伝達パイプ３１５、留パイプ３４６などの進退移動の作用については、後に詳しく説明する。

尚、留パイプ３４６に嵌着され、２つの角度可変レバー３０６が設けられたスラスタ３５３周辺の機構は、先端側外装部材３２７ａ、本体外装部材３２７ｂ及びカバー外装部材３２７ｃによって形成された内部空間内に配置される。

また、図２０に示すように、スラスタ３５３の一方の螺子ピン３５４ｂには、２つの角度可変レバー３０６の長孔３０６ａを有する部分と一端部分が重畳し、他端が基端側へ向かって延びたステンレスなどの金属板からなる被制動部材であるブレーキバー３６１が設けられている。このブレーキバーの前記一端部分には、孔部が形成されており、この孔部に螺子ピン３５４ｂが挿入される。

このブレーキバー３６１は、操作部３０３の内部側となるカバー外装部材３２７ｃの一面に形成された溝部３２７Ｃ内に設けられることによって、ブレーキバー３６１は、直進ガイドされており、その中途部分が先端側外装部材３２７ａとカバー外装部材３２７ｃに所定の摩擦力が与えられるように挟まれている。この摩擦力により、角度可変レバー３０６の回動に際して、ある程度の回動力が必要となっている。そのため、術者は、角度可変レバー３０６の操作により、処置部３０４を挿入部３０２の軸に対して所定の角度に湾曲した状態を保つことができる。

尚、溝部３２７Ｃは、２つの角度可変レバー３０６の回動により、長軸方向に移動する留パイプ３４６、湾曲力伝達パイプ３１５の進退移動量と略同じ長軸方向の長さを有するように、先端側外装部材３２７ａに形成されている。

また、カバー外装部材３２７ｃの前記一面の中途部分には、開閉ボタン３０５を一方向に付勢している板バネ３６３の一端部が２つのピン３６３ａにより固定されている。尚、ブレーキバー３６１は、図２０に示すように、板バネ３６３とカバー外装部材３２７ｃとの間において挿通しており、板バネ３６３を固定している２つのピン３６３ａの間を通り、カバー外装部材３２７ｃの溝部３２７Ｃに全体が埋まるように保持されている。

ステンレス製の板バネ３６３は、基端から中途部分にかけて略長方形状の切欠き部３６３ｂが形成され、他端部となる基端部分が開閉ボタン３０５の基端側の背面と当接している。この板バネ３６３の切欠き部３６３ｂには、牽引ワイヤ３１４が挿通している。なお、牽引ワイヤ３１４の基端部分には、ステンレス製のワイヤ抜け止め部材３１４ｂが設けられている。

板バネ３６３の中途部分には、カバー外装部材３２７ｃ及びブレーキバー３６１に対向する面側にステンレスなどの金属からなる制動手段であるブレーキシュー３６２が設けられている。このブレーキシュー３６２は、開閉ボタン３０５が操作部３０３の内部側へ押し込まれると、板バネ３６３が受けるカバー外装部材３２７ｃ側へ移動する力に伴って、ブレーキバー３６１側へ押される。これにより、ブレーキバー３６１には、ブレーキシュー３６２及びカバー外装部材３２７ｃの溝部と夫々接触する両端面の圧力が増大して、大きな摩擦力を受ける。従って、ブレーキバー３６１は、長軸方向の移動が行えないように規制される。

その結果、ブレーキバー３６１の移動が規制されることにより、角度可変レバー３０６の回動と、スラスタ３５３、留パイプ３４６及び湾曲力伝達パイプ３１５の長軸方向の進退移動も行えないようになり、開閉ボタン３０５が操作部３０３の内部側へ押し込まれたときに、処置部３０４を挿入部３０２の軸に対して所定の角度に湾曲した状態を確実に保つことができる。

また、開閉ボタン３０５は、図２２に示すように、基端部から板バネ３６３の一端部分が当接する面にかけて、切欠き形成されたガイド溝３０５ａを有するアルミニウムなどの金属又は樹脂からなる略四角柱のブロック体である。この開閉ボタン３０５のガイド溝３０５ａには、金属製のプルリンク３６６の一端部分が挿入されている。また、開閉ボタン３０５には、ガイド溝３０５ａの軸方向と直行する方向に、プルリンク３６６を回動保持するピン３６５が設けられている。また、図１７に示すように、開閉ボタン３０５は、板バネ３６３の一端部分が当接する面側の先端部分に先端側へ突起した２つの突起部３０５ｂを有している。

この開閉ボタン３０５は、操作部３０３の内部側となる本体外装部材３２７ｂの面側から本体外装部材３２７ｂに設けられる孔部に嵌め込まれている。このとき、開閉ボタン３０５は、２つの突起部３０５ｂが本体外装部材３２７ｂの一面に当接することにより、操作部３０３からの抜脱が防止されている。

また、開閉ボタン３０５は、本体外装部材３２７ｂとカバー外装部材３２７ｃとによって形成される操作部３０３の内部空間内において操作部３０３の長軸に直交する方向に進退移動自在となっており、通常において、上述したように板バネ３６３によって本体外装部材３２７ｂの外表面方向、すなわち、２つの突起部３０５ｂが本体外装部材３２７ｂの一面に当接するように付勢されている。

開閉ボタン３０５に一端部分がピン３６５により回動自在に軸支されているプルリンク３６６は、他端部分に溝部３６６ａが形成されており、この溝部３６６ａが牽引ワイヤ３１４のワイヤ抜け止め部材３１４ｂを挟持している。また、プルリンク３６６の前記他端部分には、牽引ワイヤ３１４の溝部３６６ａからの抜け防止用のピン３６６ｂが設けられている。

図２２に示すように、カバー外装部材３２７ｃは、操作部３０３の内部空間を形成する側の基端部分の面から突起しているガイド凸部３２７ｃａを有している。このガイド凸部３２７ｃａは、突起側に平面部３２７ｃｂを有しており、この平面部３２７ｃｂにプルリンク３６６の前記他端部分が当接される。

術者によって開閉ボタン３０５が押されることによって回動するプルリンク３６６は、ガイド凸部３２７ｃａの平面部３２７ｃｂの面上に沿って直進ガイドされ、平面部３２７ｃｂの面上で前記他端部分が基端側へスライドする。このとき、牽引ワイヤ３１４は、その長軸上に沿って略ずれることなく基端側へ牽引される。

すなわち、カバー外装部材３２７ｃのガイド凸部３２７ｃａの突起量、プルリンク３６６の長さ及びプルリンク３６６の前記他端部分が挟持する牽引ワイヤ３１４のワイヤ抜け止め部材３１４ｂの配置位置は、開閉ボタン３０５のボタン操作によって、牽引ワイヤ３１４が長軸上で略ずれることなく基端側若しくは先端側へ牽引弛緩されるように夫々対応するように設定されている。

こうして、術者により開閉ボタン３０５が操作部３０３の内部側へ押し込まれ、連動するプルリンク３６６により、牽引ワイヤ３１４が長軸方向に沿って基端側へ牽引されると、牽引ワイヤ３１４の末端肥大部３１４ａが底部の内側に固定されている可動挟持片３２６（図１４参照）が基端側へ移動される。これにより、可動挟持片３２６のフランジ部３２６ｃの先端側面は、固定挟持片３３１のフランジ部３３１ａの基端側面から離れる。

また、開閉ボタン３０５は、術者による操作部３０３の内部側への押し込みが開放されると、板バネ３６３からの付勢力を受け、操作部３０３の外部側へ移動する。このとき、回動部ベース部材３２５内のバネ３３３は、可動挟持片３２６の底部を押圧し、可動挟持片３２６のフランジ部３２６ｃの先端側面が固定挟持片３３１のフランジ部３３１ａの基端側面と当接するまで伸びる。従って、操作部３０３の開閉ボタン３０５を操作していないときに、可動挟持片３２６と固定挟持片３３１のそれぞれの平面は密着するように押圧されている。

以上の結果、開閉ボタン３０５の押し込み操作及び非操作により、可動挟持片３２６が、固定挟持片３３１から基端側に向かって移動するので、可動挟持片３２６と固定挟持片３３１のそれぞれの平面間に挟持された針を放したり、針を挟持するためにそれぞれの平面の間を離したりすることができる。

また、開閉ボタン３０５が押され、牽引ワイヤ３１４が基端側へ引っ張られると、その張力により、牽引ワイヤ３１４が直線状になろうとする力が発生する。そのため、処置部３０４を挿入部３０２の軸に対して所定の角度に湾曲した状態において、開閉ボタン３０５が押されると、牽引ワイヤ３１４が内部に挿通している処置部３０４は、牽引ワイヤ３１４の直線状になろうとする力を受け、挿入部３０２の軸に対して湾曲する所定の角度を保つことが出来なくなる。すなわち、術者は、処置部３０４を挿入部３０２に対して所望とする湾曲状態に保つことが出来ないため、縫合手技がし難くなる。

そこで、本実施の形態のニードルドライバ３０１は、開閉ボタン３０５が押されると、ブレーキシュー３６２がブレーキバー３６１を押圧し、ブレーキバー３６１の移動を停止するため、処置部３０４を挿入部３０２の軸に対して所定の角度に湾曲した状態を確実に保つことができる構成となっている。その結果、術者は、処置部３０４を挿入部３０２に対して所望とする湾曲状態に保つことが出来でき、縫合手技が行い易くなる。このブレーキシュー３６２によるブレーキバー３６１の移動が停止される動作について、更に、後で詳しく説明する。

なお、上述したように、受動側傘歯車部材３５０の、歯車を有する端部は、先端側を向いている。そして、挿入部３０２は、操作部３０３に対して挿入部３０２の軸回りに回動可能となっている。従って、術者が操作部３０３を回動ダイヤル３０７側から見たときに、挿入部３０２の挿入軸に対して処置部３０４の延出方向がその術者が見ている目の方向と同じときは、回動ダイヤル３０７の回動方向（すなわち術者から見て右回りか左回りか）は、処置部３０４の回動方向と同じ方向になる。そして、挿入部３０２を、操作部３０３に対して挿入部３０２の軸回りに回動させて、術者が操作部３０３を回動ダイヤル３０７側から見たときに、挿入部３０２の挿入軸に対して処置部３０４の延出方向がその術者の視線方向と同じときは、回動ダイヤル３０７の回動方向は、処置部３０４の回動方向と逆方向になる。

縫合時、ニードルドライバ３０１と鉗子を用いる場合が多い。そのような場合は、術者が操作部３０３を回動ダイヤル３０７側から見たときに、挿入部３０２の挿入軸に対して処置部３０４の延出方向がその術者が見ている目の方向と同じとなるので、ニードルドライバ３０１の処置部３０４の回動操作の操作性はよい。

なお、牽引ワイヤ３１４が、まっすぐ基端側に向かって牽引されるように、プルリンク３６６がガイド凸部３２７ｃａの平面部３２７ｃｂに当接するようにしているが、図２６に示すような構成でもよい。図２６は、牽引ワイヤ３１４をまっすぐ基端側に向かって牽引するための他の構造を説明するための図であって、プルリンク３６６とガイド凸部３２７ｃａとが当接している状態を牽引ワイヤ３１４の基端側から見た図である。図２６に示すように、プルリンク３６６に設けられたピン３６６ｂがガイド凸部３２７ｃａの平面部３２７ｃｂに当接する。ガイド凸部３２７ｃａには、操作部３０３の軸方向に沿った溝部３２７ｃｃが形成され、その溝部３２７ｃｃにてプルリンク３６６の一端が入り込んでいる。ピン３６６ｂが平面部３２７ｃｂに当接している状態で、牽引ワイヤ３１４の軸中心３１４ｃが、平面部３２７ｃｂの平面内に位置するようになっている。従って、開閉ボタン３０５が押されると、溝部３２７ｃｃに沿ってプルリンク３６６の一端が移動して牽引ワイヤ３１４を基端側に牽引する。このとき、牽引ワイヤ３１４の軸中心３１４ｃが、常に平面部３２７ｃｂの平面内に位置するようにしながら、牽引ワイヤ３１４が基端側に引っ張られる。従って、牽引ワイヤ３１４が、まっすぐ基端側に向かって牽引される。

以下に、本実施の形態に係るニードルドライバ３０１の２つの角度可変レバー３０６及び開閉ボタン３０５の押し込み操作によるブレーキシュー３６２の動作について、図２７〜図３１に基づいて詳細に説明する。図２７〜図２９は、角度可変レバー３０６の動作説明のための操作部３０３の部分断面図、図３０及び図３１はブレーキシュー３６２の動作説明のための操作部３０３の部分断面図である。

先ず、図２７〜図２９に基づいて、角度可変レバー３０６の動作説明を以下に行う。
図２７に示す角度可変レバー３０６の状態、つまり、２つの角度可変レバー３０６が紙面の左側（操作部３０３の先端側）に傾いている状態において、処置部３０４は、その長軸が挿入部３０２の軸にと略同じ軸上にある状態、すなわち、挿入部３０２に対して略直線となる状態である。

術者によって、図２７の矢印ａ方向にどちらか一方の角度可変レバー３０６の一端部分が操作されると、２つの角度可変レバー３０６は、対応する枢軸ピン３５５を支軸として、夫々回動する。そして、図２８及び図２９に示すように、術者により操作される一端部分と反対側の他端部は、矢印ｂ方向である操作部３０３の先端側に移動される。

これにより、２つの角度可変レバー３０６の各長孔３０６ａに挿入されている螺子ピン３５４ａ，３５４ｂ（図面上は、螺子ピン３５４ｂのみ図示）を操作部３０３内において先端側へ押進する。螺子ピン３５４が螺着しているスラスタ３５３も一体的に矢印ｂ方向である先端側に移動し、留パイプ３４６も押進される。これに伴って、一端に螺子ピン３５４ｂが挿入されているブレーキバー３６１も、螺子ピン３５４ｂの移動により、矢印ｂ方向である先端側に移動する。

従って、上述したように、留パイプ３４６が湾曲力伝達パイプ３１５を先端側へ押進して、湾曲力伝達パイプ３１５の先端部分に設けられたジョイント部材３１８がリンク部材３１９を先端側へ押進する。また、リンク部材３１９が湾曲部ベース部材３２０を先端側へ押進することにより、湾曲部ベース部材３２０は、ピン３２４を回動中心として回動する。こうして、処置部３０４は、挿入部３０２の軸に対して９０度の範囲で湾曲操作がされる（図１３及び図１４参照）。

また、上述と逆方向に２つの角度可変レバー３０６が操作されると、各部材が基端側へ牽引されるため、処置部３０４は、挿入部３０２の軸に対する角度が小さくなり、図２７の２つの角度可変レバー３０６の位置において、処置部３０４と挿入部３０２は略直線状態となる。（図６及び図８参照）。

尚、術者が２つの角度可変レバー３０６から手を放しても、上述したように、ブレーキバー３６１が先端側外装部材３２７ａとカバー外装部材３２７ｃの溝部３２７Ｃによる所定の摩擦力が生じているため、その摩擦力によって、各部材の移動が静止し、処置部３０４は、挿入部３０２の軸に対して術者の所望の角度を保った状態を維持する。

以上の結果、術者は、２つの角度可変レバー３０６の一方の端部を操作部３０３の側面に沿って先端側又は基端側へ移動することで、処置部３０４を挿入部３０２の軸に対して９０度の範囲で所望の湾曲操作が行える。

次に、開閉ボタン３０５の押し込み操作によるブレーキシュー３６２の動作について図３０及び図３１に基づいて説明する。
図３０に示すように、開閉ボタン３０５が術者によって矢印Ａ方向に押し込まれると、図３１に示すように、板バネ３６３は、ブレーキシュー３６２を矢印Ｂ方向へ押圧する。この矢印Ｂ方向へ押圧されたブレーキシュー３６２は、その一面と接触するブレーキバー３６１を矢印Ｂ方向へ押圧する。

これによりブレーキバー３６１は、カバー外装部材３２７ｃの溝部３２７Ｃ内において、一部分がブレーキシュー３６２と溝部３２７Ｃとの間で挟まれるように圧接され、その摩擦力により操作部３０３の長軸方向の移動が行えなくなる。

また、開閉ボタン３０５が矢印Ａ方向に押し込まれると、プルリンク３６６は、ピン３６５の軸回りに回動され、ピン３６５が挿通している一端部分が矢印Ａ方向に沈み込むように操作部３０３の内部方向へ移動される。これに伴って、プルリンク３６６の他端は、カバー外装部材３２７ｃのガイド凸部３２７ｃａの表面上を摺動しながら矢印Ｃ方向である操作部３０３の基端側へ移動する。

こうして、プルリンク３６６の他端にワイヤ抜け止め部材３１４ｂが保持されている牽引ワイヤ３１４が矢印Ｃ方向に引っ張られることによって、可動挟持片３２６のフランジ部３２６ｃの先端側面は、固定挟持片３３１のフランジ部３３１ａの基端側面から離れる。

以上の結果、開閉ボタン３０５が押され、基端側へ引っ張られる張力により、牽引ワイヤ３１４が直線状になろうとする力が発生しても、ブレーキシュー３６２がブレーキバー３６１を押圧し、ブレーキバー３６１の移動を停止するため、処置部３０４を挿入部３０２の軸に対して所定の角度に変更した状態を確実に保つことができる構成となっている。

以上のように、本実施の形態に係わるニードルドライバ３０１によれば、処置部３０４が挿入部３０２の軸に対して所定の角度に変更された状態において、術者により縫合針の把持のため開閉ボタン３０５の押し込み操作が行われば、ブレーキシュー３６２がブレーキバー３６１を押圧して、処置部３０４の湾曲角度を維持することができる構成となっている。そのため、牽引ワイヤ３１４が基端側へ引っ張られる張力により、直線状になろうとする力が発生しても、処置部３０４は、挿入部３０２の軸に対して所定の角度に変更した状態を確実に保つことができる。

また、ニードルドライバ３０１は、開閉ボタン３０５が押されていない状態においても、ブレーキバー３６１がブレーキシュー３６２とカバー外装部材３２７ｃにより所定の摩擦力を受けている。そのため、術者は、角度可変レバー３０６から手を放しても、処置部３０４が挿入部３０２の軸に対して所定の角度に変更した状態を保つことができる。

従って、上述した本実施の形態に係わる各ニードルドライバによれば、内視鏡下での組織吻合等において、操作性が良い外科手術処置具を実現することができる。操作性も良いので内視鏡下での組織吻合が容易となり、手術の質向上、手術時間の短縮が図れ、さらに、細径化が図れるので低侵襲となり、患者の早期退院、社会復帰が早まる。

尚、図３２に示すように、開閉ボタン３０５Ａには、操作部３０３の内部側の端面近傍に操作部３０３の長軸方向に直交するピン３６９を設けてもよい。また、本体外装部材３２７ｂには、牽引ワイヤ３１４よりもカバー外装部材３２７ｃ側となる位置に、ピン３７０が牽引ワイヤ３１４の軸に略直交するように配設されている。

この開閉ボタン３０５Ａは、術者によって矢印Ｄ方向に押し込まれると、上述したように、牽引ワイヤ３１４がプルリンク３６６によって基端側へ引っ張られると共に、ピン３６９が牽引ワイヤ３１４をカバー外装部材３２７ｃ方向へ押し込む。このとき、牽引ワイヤ３１４は、ピン３７０と当接し、ピン３６９によりカバー外装部材３２７ｃ方向へ押し込まれることによって、矢印Ｅ方向である基端側への牽引距離が増大する。

従って、この構成によれば、可動挟持片３２６のフランジ部３２６ｃの先端側面が固定挟持片３３１のフランジ部３３１ａの基端側面から確実に離れる。尚、図３２は、第１の変形例となるニードルドライバ３０１の操作部３０３の部分断面図である。

また、ニードルドライバ３０１は、図３３〜図３５に示すような、処置部３０４が挿入部３０２の軸に対して所定の角度に変更した状態を保つことができるように、制動手段により被制動部材の動きを制止するような構成を有していてもよい。尚、図３３〜図３５は、第２の変形例となるニードルドライバ３０１の構成及び作用を説明するための操作部３０３の部分断面図である。

図３３〜図３５に示すように、この第２の変形例であるニードルドライバ３０１の開閉ボタン３０５Ｂは、プルリンクが設けられておらず、術者によって矢印Ｆ方向に押し込まれることによって、上述したピン３６９のみで牽引ワイヤ３１４を基端側へ移動させる構成となっている。

また、この開閉ボタン３０５Ｂには、操作部３０３の長軸方向と直交する方向に孔部が形成され、その孔部に一端がフランジ形成された軸部材３７６が挿入される。そして、前記孔部には、軸部材３７６のフランジ部に一端が当接し、軸部材３７６を操作部３０３の内部方向に付勢するバネ３７５が設けられている。バネ３７５の他端側に前記孔部を塞ぐ蓋部材３７４が接着されることにより、開閉ボタン３０５Ｂが構成されている。

軸部材３７６のフランジ部と反対側の端部には、ステンレスなどの金属からなる制動手段であるブレーキ部材３７７が軸部材３７６の軸上に長軸を有するように固着されている。このブレーキ部材３７７は、軸部材３７６側に対する反対側の端部に表面に凹凸が形成されたブレーキ体３７７ａを有している。これに対応して、被制動部材であるブレーキバー３６１Ａの開閉ボタン３０５Ｂ側の面にも、ブレーキ体３７７ａの凹凸面に噛み合う凹凸面が形成されている。

また、牽引ワイヤ３１４は、所定の張力が与えられ、長軸方向に略直線状となるように、基端部分が本体外装部材３２７ｂに設けられる凸形状部３７２にビス３７３によって固定されている。さらに、本体外装部材３２７ｂには、２本のピン３７０，３７１が牽引ワイヤ３１４の軸に略直交するように配設されており。尚、２つのピン３７０，３７１は、操作部３０３の内部に押し込まれる開閉ボタン３０５Ｂと接触しないように、互いに所定の距離だけ離間するように、本体外装部材３２７ｂに設けられている。

以上のように構成されたニードルドライバ３０１の開閉ボタン３０５Ｂが図３３から図３４に示すように、矢印Ｆ方向に押し込まれると、先ず、軸部材３７６と共に、ブレーキ部材３７７がブレーキバー３６１Ａ側にバネ３７５による付勢力を受けながら移動する。そして、ブレーキ部材３７７のブレーキ体３７７ａは、その凹凸面がブレーキバー３６１Ａの凹凸面と噛み合った状態で停止する。

尚、この状態において、開閉ボタン３０５Ｂのピン３６９は、牽引ワイヤ３１４とは接触していない状態である。そして、術者により、さらに開閉ボタン３０５Ｂが矢印Ｆ方向に押し込まれると、ピン３６９が牽引ワイヤ３１４と当接して、ブレーキバー３６１Ａ側に押し込む。

牽引ワイヤ３１４は、本体外装部材３２７ｂの２つのピン３７０，３７１により保持され、開閉ボタン３０５Ｂのピン３６９によりブレーキバー３６１Ａ側に押し込まれることによって、矢印Ｇ方向である基端側に引っ張られるように移動する。これにより、可動挟持片３２６のフランジ部３２６ｃの先端側面が固定挟持片３３１のフランジ部３３１ａの基端側面から離れる。

この状態においても、ブレーキ部材３７７は、ブレーキ体３７７ａの凹凸面がブレーキバー３６１Ａの凹凸面と噛み合っているため、ブレーキバー３６１Ａの軸方向の動きを制動している。また、開閉ボタン３０５Ｂのバネ３７５が縮み、軸部材３７６を介してブレーキ部材３７７がブレーキバー３６１Ａ側に付勢力が与えられている。そのため、ブレーキバー３６１Ａは、開閉ボタン３０５Ｂが押し込まれている間、ブレーキ部材３７７のブレーキ体３７７ａによる制動力を常に受けている。

その結果、開閉ボタン３０５Ｂが押され、基端側へ引っ張られる張力により、牽引ワイヤ３１４が直線状になろうとする力が発生しても、ブレーキバー３６１Ａの移動が停止されるため、処置部３０４を挿入部３０２の軸に対して所定の角度に変更した状態を保つことができる。

また、以上のように構成された本発明のニードルドライバ３０１によれば、図３３〜図３４に示すように、開閉ボタン３０５Ｂが押されると、牽引ワイヤ３１４が基端側へ引っ張れる前に、ブレーキ部材３７７によってブレーキバー３６１Ａが制動されるため、処置部３０４を挿入部３０２の軸に対して所定の角度に変更した状態を確実に保つことができる構成となっている。

（第２の実施の形態）
以下に、本発明の第２の実施の形態を説明する。尚、図３６から図４７を参照して本実施の形態のニードルドライバについて説明するが、第１の実施の形態と同じ構成には同一符号を用いて、それらの説明を省略し、異なる構成、作用及び効果についてのみ説明する。

図３６は、本実施形態のニードルドライバの正面図、図３７は図３６のニードルドライバの軸方向に沿った、操作部の断面図、図３８は図３６の円Ｂで囲んだ部分を拡大したニードルドライバの軸方向に沿った、操作部の部分断面図、図３９はニードルドライバの操作部内の機構を示す斜視図、図４０は開閉ボタンが操作された状態のニードルドライバの操作部内の機構を示す斜視図、図４１は図３７のＸＸＸＸＩ−ＸＸＸＸＩ線に沿ったニードルドライバの断面図である。

図３６から図４１に示すように、本実施の形態のニードルドライバ３０１は、第１の実施の形態と同様に、処置部３０４の開閉操作をするための開閉操作部材としてのアルミニウム製の開閉ボタン３８０と、この開閉ボタン３８０の操作によって連動するステンレス製のリンク部材３８５と、被制動部材であるブレーキバー３６１を制動する制動手段としての例えばステンレスなどの高張力鋼からなる弾性要素である板バネ３９５と、を有している。

開閉ボタン３８０は、操作部３０３に形成される内部空間側となる背面に先端から基端にかけて略中央に切欠き形成された溝部３８１と、この溝部３８１の略中央において開口する有頂の穴部３８２と、基端部となる当接部３８３と、この当接部３８３から基端に向かって突出する回動支持部３８０ａと、を有している（図３８参照）。

溝部３８１は、後述する開閉ボタン３８０が操作された状態において、リンク部材３８５及び牽引ワイヤ３１４と当接しないように収容するための溝である（図４０参照）。
穴部３８２は、その頂面３８２ａが先端側に向けて斜面となるような横断面形状が略台形をしており、リンク部材３８５の一端部分が収容されている。この穴部３８２の頂面３８２ａは、リンク部材３８５の一端部とが当接し、且つ、摺動する摺動面を構成している。

回動支持部３８０ａには、ピン孔が形成されている（図４１参照）。開閉ボタン３８０は、回動支持部３８０ａのピン孔に挿入される２つの螺子ピン３８９により本体外装部材３２７ｂに対して、回動自在に保持されている。これにより、開閉ボタン３８０は、カバー外装部材３２７の開口部との当接による動きが妨げられることなく、その操作性が向上する。

リンク部材３８５は、側方から見たときに屈曲した形状をしており（図３８参照）、上面から下面にかけた中央部分に長孔３８５ａが形成されている。このリンク部材３８５は、カバー外装部材３２７ｃ側の他端に板バネ３９５と当接する板バネ側当接部３８６と、開閉ボタン３８０の穴部３８２内に収容される前記一端部に、前記穴部３８２の斜面状の底面と当接する開閉ボタン側当接部３８７とを有している。

また、リンク部材３８５の長孔３８５ａには、牽引ワイヤ３１４が挿通している。この長孔３８５ａは、後述するように、開閉ボタン３８０が押し込み操作された際、この操作と共に連動するリンク部材３８５が牽引ワイヤ３１４と接触することなく、牽引ワイヤ３１４の軸方向の動きを阻害しないために形成されている。

板バネ側当接部３８６は、板バネ３９５と当接する当接面に輪郭曲線が形成された原節（カム）を構成している。この板バネ側当接部３８６には、カバー外装部材３２７ｃの上面から突出している角柱状の２つの回動支持体３７９間に設けられたピン３７９ａが貫挿している。これにより、板バネ側当接部３８６は、カバー外装部材３２７ｃに対してピン３７９ａ回りに回動自在となっている。

また、開閉ボタン側当接部３８７は、開閉ボタン３８０の穴部３８２の頂面３８２ａと当接する当接面が円弧状に形成されている。この開閉ボタン側当接部３８７は、フリーな状態で開閉ボタン３８０の穴部３８２内に収容されている。これにより、開閉ボタン側当接部３８７は、開閉ボタン３８０の操作により、その当接面が穴部３８２の頂面３８２ａに沿って摺動する。

板バネ３９５は、高張力鋼などからなる所定の高い弾性係数が設定された高弾性力バネである。この板バネ３９５は、先端部分にブレーキバー３６１を押圧している押圧部３９５ａを有し、中途部分が、操作部３０３の内部空間側に突起するように、いわゆる山折状に屈曲している。尚、板バネ３９５の中途部分は、前記山折状に限ることなく、操作部３０３の内部空間側に突起するように、例えば、湾曲状などに形成されていても良い。また、板バネ３９５は、基端部分がカバー外装部材３２７ｃにビス３９５ｂにより固定されている。

この板バネ３９５は、リンク部材３８５の一端部となる輪郭曲線に形成された板バネ側当接部３８６が運動し、この板バネ側当接部３８６と接触することにより連動される従節となる。従って、リンク部材３８５と板バネ３９５は、いわゆる、カム機構を構成している。そのため、術者は、従節となり、高弾性力バネである板バネ３９５を原節であるリンク部材３８５の板バネ側当接部３８６の運動により、小さなストロークで押し付けることができる。そのため、板バネ３９５は、その中途において、山折状に屈曲された突起量を短くすることができる。これにより、操作部３０３に形成される内部空間の省スペース化が可能となると共に、操作部３０３を小さな形状とすることができる。

尚、第１の実施の形態と同様に術者が２つの角度可変レバー３０６から手を放しても、ブレーキバー３６１が先端側外装部材３２７ａとカバー外装部材３２７ｃの溝部３２７Ｃによる所定の摩擦力が生じていると共に、板バネ３９５の押圧部３９５ａのブレーキバー３６１への押圧力が加わり、ブレーキバー３６１の移動が静止される。そのため、処置部３０４は、挿入部３０２の軸に対して術者の所望の角度を保った状態が確実に維持される。

尚、上述した板バネ側当接部３８６に形成された輪郭曲線は、開閉ボタン３８０が操作されていないとき、すなわち、可動挟持片３２６と固定挟持片３３１のそれぞれの平面が密着している状態で、板バネ３９５に所定の押圧力を付与している。そのため、板バネ３９５の押圧部３９５ａは、ブレーキバー３６１を制止するために必要な所定の制動力を付与するよう常に押圧している。

本実施形態において、処置部３０４を開閉させるための牽引ワイヤ３１４の基端部分には、半田により固着されているステンレス製のワイヤ抜け止め部材３１４ｄと、略円筒状のステンレスからなるワイヤエンド３９０とが設けられている。このワイヤ抜け止め部材３１４ｄは、予め牽引ワイヤ３１４に外挿されたワイヤエンド３９０と螺着されると共に、接着固定されている。

詳しくは、ワイヤ抜け止め部材３１４ｄの外周面には雄螺子となる螺子溝が形成されており、ワイヤエンド３９０の内周面には雌螺子となる螺子溝が形成されている。これにより、ワイヤ抜け止め部材３１４ｄとワイヤエンド３９０とが螺着される。

尚、ワイヤ抜け止め部材３１４ｄとワイヤエンド３９０との螺合量が調節されることにより、ワイヤエンド３９０は、牽引ワイヤ３１４に対する軸方向の位置が調節可能となっている。そのため、ワイヤエンド３９０は、その先端が開閉ボタン３８０の当接部３８３と当接し、後述するワイヤエンド３９０の操作に伴って、基端側へ移動される牽引ワイヤ３１４の移動量の微調整を可能にすることができる。

その結果、牽引ワイヤ３１４の基端側への移動量を調節することにより、可動挟持片３２６のフランジ部３２６ｃの先端側面と固定挟持片３３１のフランジ部３３１ａの基端側面との離間距離の調節が行える。

ところで、カバー外装部材３２７ｃは、基端部分の面から操作部３０３の内部空間を形成する側に突起しているガイド凸部３７８を有している。このガイド凸部３７８の突出面には、カバー外装部材３２７ｃの長軸方向に沿ったガイド溝３７８ａが形成されている。このガイド凸部３７８のガイド溝３７８ａは、上述のワイヤエンド３９０を直進ガイドするための溝である。これらガイド凸部３７８、ガイド溝３７８ａ及びワイヤエンド３９０は、牽引ワイヤ３１４が、長軸上で真っ直ぐに移動できるようにガイドするため、夫々の突起量、溝深さ及び外径の各寸法が設定されている。

また、本体外装部材３２７ｂとカバー外装部材３２７ｃとが組付けられた状態において（図４１参照）、ワイヤエンド３９０は、ガイド溝３７８ａに係入され、本体外装部材３２７ｂとガイド凸部３７８との間で軸方向に摺動可能となっている。

ここで、術者により開閉ボタン３８０が操作されていない状態において、板バネ３９５は、操作部３０３の内部空間側へリンク部材３８５の板バネ側当接部３８６を押し上げる方向へ付勢している。この付勢力を受けた板バネ側当接部３８６の当接面が輪郭曲線で形成されているため、リンク部材３８５は、開閉ボタン３８０を押し上げる方向へ常に付勢力が与えられている。これにより、開閉ボタン３８０は、術者により開閉ボタン３８０が操作されていない状態において、操作部３０３から突出した状態が維持されている。

次に、以上のように構成された、本実施の形態のニードルドライバ３０１の開閉ボタン３８０の押し込み操作により連動するリンク部材３８５と、このリンク部材３８５の連動により板バネ３９５が作用するブレーキバー３６１の制動動作について図４２から図４７に基づいて説明する。

尚、図４２は、ニードルドライバの開閉ボタンの操作前の作用を説明する図、図４３はニードルドライバの開閉ボタンの操作後の作用を説明する図、図４４は開閉ボタンが操作される前のニードルドライバの操作部内の機構を示す斜視図、図４５は開閉ボタンが操作された状態のニードルドライバの操作部内の機構を示す斜視図、図４６は開閉ボタンが操作される前のニードルドライバの操作部内の機構を示す斜視図、図４７は開閉ボタンが操作された状態のニードルドライバの操作部内の機構を示す斜視図、図４８はリンク部材の回転角度と板バネの変位の関係を示すカム線図、図４９は開閉ボタンの押し込み量と板バネがブレーキバーを制動している制動力の関係を示す線図である。尚、開閉ボタン３８０が押し込み操作されていない状態の操作部３０３内の各部材を図４４及び図４６に示し、開閉ボタン３８０が押し込み操作された状態の操作部３０３内の各部材を図４４及び図４６に示す。

図４２に示すように、開閉ボタン３８０は、術者によって矢印Ｈ方向に押し込まれる。すると、開閉ボタン３８０は、回動支持部３８０ａを支持している螺子ピン３８９回りに操作部３０３に形成される内部空間内へ回動する。

そして、図４３に示すように、開閉ボタン３８０の当接部３８３は、ワイヤエンド３９０の先端に当接し、ワイヤエンド３９０と共に、牽引ワイヤ３１４を基端側となる矢印Ｉ方向に移動する。こうして、牽引ワイヤ３１４の基端側への移動により、可動挟持片３２６のフランジ部３２６ｃの先端側面は、固定挟持片３３１のフランジ部３３１ａの基端側面から離れる。

このとき、牽引ワイヤ３１４は、ワイヤエンド３９０がガイド凸部３７８のガイド溝３７８ａに沿って直進ガイドされているため、その長軸上で基端側へ牽引される。また、牽引ワイヤ３１４は、開閉ボタン３８０の溝部３８１とリンク部材３８５の長孔３８５ａとにより開閉ボタン３８０及びリンク部材３８５と接触しないため、矢印Ｉ方向の動きが阻害されない。

この開閉ボタン３８０が押し込み操作されると、リンク部材３８５は、開閉ボタン側当接部３８７が開閉ボタン３８０の穴部３８２の頂面３８２ａに対して、基端側へ移動しながら摺動し、板バネ側当接部３８６を回動支持するピン３７９ａ回りとなる矢印Ｊ方向へ回動する。そして、リンク部材３８５は、回動の始動時から、板バネ側当接部３８６の円弧状の端面が板バネ３９５を矢印Ｋ方向へ強く押し付ける。

つまり、リンク部材３８５の板バネ側当接部３８６は、開閉ボタン３８０の押し込み操作による動作直後、急激に板バネ３９５を矢印Ｋ方向へ強く押し付けることができるような輪郭曲線に端面形状が設定されている。換言すると、リンク部材３８５の板バネ側当接部３８６は、図４８のカム線図に示すように、開閉ボタン３８０の押し込み操作に連動する原節であるリンク部材３８５の板バネ側当接部３８６の回転角と従節である板バネ３９５の変位（移動量）の関係を示す線が、板バネ３９５の変位が０（ゼロ）から急激に上昇するように、輪郭曲線に端面形状が設定されている。

また、この動作において、リンク部材３８５は、板バネ側当接部３８６を回動支持するピン３７９ａを支点とし、その長手方向の長さを利用した、いわゆる梃子の原理により、所定の高張力に設定されている板バネ３９５をブレーキバー３６１へ強力に押し付けるための必要とされる開閉ボタン３８０の押し込み力を軽減する。

そして、矢印Ｋ方向へ押し付けられた板バネ３９５は、リンク部材３８５の回動の始動時から、その押圧部３９５ａが更にブレーキバー３６１を押圧すると共に、ブレーキバー３６１と接触する面全体でブレーキバー３６１の制動を行う。

ここで、以上に説明した開閉ボタン３８０の押し込み量と板バネ３９５がブレーキバー３６１に対して押し付ける力により発生する制動力について、図４９に示す線図を参照して説明する。
図４９に示すように、開閉ボタン３８０の押し込み量が増大するにつれて、板バネ３９５がブレーキバー３６１に対して押圧力が増大し、ブレーキバー３６１に係る制動力が増加する。上述したように、開閉ボタン３８０の押し込み操作による動作直後、リンク部材３８５の板バネ側当接部３８６により、急激に板バネ３９５がブレーキバー３６１に対して押圧力が増大して、板バネ３９５は、ブレーキバー３６１を制止させるに十分な所定の制動力Ｆ３を発生する。

その後、板バネ側当接部３８６の輪郭曲線形状により、板バネ３９５は、開閉ボタン３８０の押し込み量が増大しても、ブレーキバー３６１を制止している制動力Ｆ３を維持する。こうして、ブレーキバー３６１は、カバー外装部材３２７ｃの溝部３２７Ｃ内において、一部分が板バネ３９５と溝部３２７Ｃとの間で挟まれるように圧接され、その摩擦力により操作部３０３の長軸方向の移動が行えなくなる。

尚、図４９に示す制動力Ｆ１は、術者が２つの角度可変レバー３０６から手を放しても、板バネ３９５の押圧部３９５ａからの押圧力により、先端側外装部材３２７ａとカバー外装部材３２７ｃの溝部３２７Ｃとによる所定の摩擦力が与えられているブレーキバー３６１が制止するために必要な制動力を示している。

また、制動力Ｆ２は、術者が２つの角度可変レバー３０６から手を放した状態で、ニードルドライバ３０１のいかなる傾きに関係なく、ブレーキバー３６１が十分に制止している状態を保つためのマージンが加えられた制動力を示している。

つまり、ブレーキバー３６１は、術者により開閉ボタン３８０が操作されていない状態において、ニードルドライバ３０１のいかなる傾きにされても、制動力Ｆ２が与えられており、常に制止状態が保たれている。そのため、処置部３０４は、挿入部３０２の軸に対して術者の所望の角度を保った状態が確実に維持される。

以上の結果、本実施の形態に係る本発明のニードルドライバ３０１は、第１の実施の形態と同様に開閉ボタン３８０が押され、基端側へ引っ張られる張力により、牽引ワイヤ３１４が直線状になろうとする力が発生しても、板バネ３９５がブレーキバー３６１を押圧し、ブレーキバー３６１の移動を制止するため、処置部３０４を挿入部３０２の軸に対して所定の角度に変更した状態を確実に保つことができる構成となっている。

また、本実施の形態のニードルドライバ３０１は、第１の実施の形態の効果に加え、開閉ボタン３８０の押し込み操作がされた直後に、リンク部材３８５が板バネ３９５にブレーキバー３６１を瞬時に確実に制止させるための強力な押し付け力を発生させることができる。そのため、術者は、可動挟持片３２６の開閉操作させるための開閉ボタン３８０の押し込み操作始動時に、処置部３０４を挿入部３０２の軸に対して所定の角度に変更した状態を確実に保つことができる。尚、リンク部材３８５の板バネ側当接部３８６に形成された輪郭曲線を種々の曲線に設定することにより、板バネ３９５に作用する制動力は、その発生タイミング、力量変化などが変更可能となる。

さらに、術者は、リンク部材３８５による、上述した梃子の原理により、可動挟持片３２６の開閉操作時に処置部３０４の角度を維持する開閉ボタン３８０の押し込み力が軽減され、軽い押し込み操作力で容易にブレーキバー３６１の制動を確実に行える。

尚、上述のように、本実施の形態のニードルドライバ３０１は、ワイヤエンド３９０が開閉ボタン３８０の当接部３８３と直接的に当接して、牽引ワイヤ３１４を基端側へ移動することができるため、操作部３０３に形成される内部空間内に別のリンク機構を設ける必要がなくなり、部品点数が削減可能となった構成となっている。

また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。

本発明の第１の実施の形態に係るニードルドライバの正面斜め一側方からみた外観斜視図である。 同、ニードルドライバの正面図である。 同、ニードルドライバを一側方（左側方）からみた左側面図である。 同、ニードルドライバを他側方（右側方）からみた右側面図である。 同、図１のニードルドライバが把持された状態を説明するための図である。 同、ニードルドライバの処置部を含む先端部分の正面図である。 同、処置部の挟持部が開いた状態の先端部分の正面図である。 同、ニードルドライバの軸方向に沿った、処置部を含む先端部分の断面図である。 同、ニードルドライバの軸方向に沿った、処置部の挟持部が開いた状態の先端部分の断面図である。 同、先端部の内部構造を説明するための斜視図である。 同、図９のＡ−Ａ線に沿った断面図である。 同、先端ハウジング部材を省略した、先端部の内部構造を説明するための斜視図である。 同、処置部が挿入部の軸に対して９０度湾曲した状態を示す先端部分の正面図である。 同、処置部が挿入部の軸に対して９０度湾曲した状態を示す先端部分の断面図である。 同、回動部ベース部材を省略した、先端部の内部構造を説明するための斜視図である。 同、ニードルドライバの操作部を正面斜め一側方からみた外観斜視図である。 同、ニードルドライバの軸方向に沿った、操作部の断面図である。 同、図１７の円Ａにて囲んだ部分を拡大した操作部の断面図である。 同、操作部の外装部材を省略した、回動ダイヤルの周辺に設けられる操作部の内部構成を示す斜視図である。 同、操作部内の各構成部材を下面斜め一側方からみた斜視図である。 同、操作部の外装部材の一部分を図示し、操作部内の各構成部材を下面斜め一側方からみた斜視図である。 同、操作部の外装部材の一部分を図示し、操作部内の各構成部材を基端側の斜め一側方からみた斜視図である。 同、ニードルドライバの軸に対して直交する方向に沿って、操作部の中途部分を切断した断面図である。 同、操作部を側面斜め一側方からみた斜視図である。 同、ニードルドライバを先端側から見た正面図である。 変形例である、プルリンクとガイド凸部とが当接している状態を牽引ワイヤの基端側から見た図である。 本実施の形態に係るニードルドライバの角度可変レバーの動作説明のための操作部３０３の部分断面図である。 同、角度可変レバーの動作説明のための操作部の部分断面図である。 同、角度可変レバーの動作説明のための操作部の部分断面図である。 本実施の形態に係るニードルドライバのブレーキシューの動作説明のための操作部の部分断面図である。 同、ブレーキシューの動作説明のための操作部の部分断面図である。 第１の変形例となるニードルドライバの操作部の部分断面図である。 第２の変形例となるニードルドライバの構成及び作用を説明するための操作部の部分断面図である。 同、ニードルドライバの構成及び作用を説明するための操作部の部分断面図である。 同、ニードルドライバの構成及び作用を説明するための操作部の部分断面図である。 本発明の第１の実施の形態に係るニードルドライバの正面図、 同、図３６のニードルドライバの軸方向に沿った、操作部の断面図である。 同、図３６の円Ｂで囲んだ部分を拡大したニードルドライバの軸方向に沿った、操作部の部分断面図である。 同、ニードルドライバの操作部内の機構を示す斜視図である。 同、開閉ボタンが操作された状態のニードルドライバの操作部内の機構を示す斜視図である。 同、図３７のＸＸＸＸＩ−ＸＸＸＸＩ線に沿ったニードルドライバの断面図である。 同、ニードルドライバの開閉ボタンの操作前の作用を説明する図である。 同、ニードルドライバの開閉ボタンの操作後の作用を説明する図である。 同、開閉ボタンが操作される前のニードルドライバの操作部内の機構を示す斜視図である。 同、開閉ボタンが操作された状態のニードルドライバの操作部内の機構を示す斜視図である。 同、開閉ボタンが操作される前のニードルドライバの操作部内の機構を示す斜視図である。 同、開閉ボタンが操作された状態のニードルドライバの操作部内の機構を示す斜視図である。 同、リンク部材の回転角度と板バネの変位の関係を示すカム線図である。 同、開閉ボタンの押し込み量と板バネがブレーキバーを制動している制動力の関係を示す線図である。

符号の説明

３０１・・・ニードルドライバ
３０２・・・挿入部
３０３・・・操作部
３０４・・・処置部
３０５，３８０・・・開閉ボタン
３０６・・・角度可変レバー
３０７・・・回動ダイヤル
３０８・・・挟持部
３０９・・・調整ダイヤル
３６１・・・ブレーキバー
３６２・・・ブレーキシュー
３８５・・・リンク部材
３９５・・・板バネ

Claims (6)

1. 挿入部と、
   該挿入部の一端に設けられた操作部と、
   前記挿入部の他端より延出するように設けられた処置部と、
   該処置部に設けられ、それぞれ挟持面を有する２つの挟持部材と、
   前記操作部に設けられ、前記２つの挟持部材の少なくとも１方を動かして開閉操作するための開閉操作部材と、
   前記操作部に設けられ、前記処置部を所定の角度に変更するための角度変更操作部材と、
   前記操作部内に設けられ、前記角度変更操作部の操作に連動する被制動部材と、
   前記操作部内に設けられ、前記開閉操作部材の動作に連動して、前記被制動部材を制動する制動手段と、
   を具備し、
   前記処置部は、前記制動手段によって前記被制動部材が制動されることにより、前記所定の角度を維持することを特徴とする外科用処置具。
2. 前記制動手段は、前記開閉操作部材と前記被制動部材との間に設けられ、前記開閉操作部材の動作に連動するカム機構を具備することを特徴とする請求項１に記載の外科用処置具。
3. 前記カム機構は、前記開閉操作部材により前記２つの挟持部材の少なくとも１方が動かされる前に、前記制動手段が前記被制動部材を制止するために必要な所定の制動力を付与するような前記輪郭曲線を備えた原節を有していることを特徴とする請求項２に記載の外科用処置具。
4. 前記カム機構と前記被制動部材の間に弾性要素を有する請求項２又は請求項３に記載の外科用処置具。
5. 前記被制動部材は、所定の摩擦力が与えられるように、前記操作部内に設けられていることを特徴とする請求項１から請求項４のいずれかに記載の外科用処置具。
6. 前記制動手段は、前記開閉操作部材により前記２つの挟持部材の少なくとも１方が動かされている間において、常に前記被制動部材を制止していることを特徴とする請求項１から請求項５のいずれかに記載の外科用処置具。

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