JP2006210132A - マイクロ波加熱装置 - Google Patents

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恒男 村中
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Abstract

【課題】
壁に開口されて所定の指向方向でマイクロ波を導入するマイクロ波導入口を備えるオーブンを有するマイクロ波加熱装置において、加熱対象の負荷が小さく、マイクロ波導入口から導入されたマイクロ波の多くが反射されるような場合でも、それがマイクロ波導入口に直接戻るのを防止するようにする。
【解決手段】
オーブンにおけるマイクロ波導入口が設けられた壁に対向する対向壁においてマイクロ波の照射を受ける部分を、マイクロ波の指向方向と直角な方向に対して5°〜40°の角度だけ傾斜をつける。
【選択図】 図1

Description

本発明はマイクロ波加熱装置において、マイクロ波オーブンの電圧定在波比(VSWR)が小さく(反射電力が少ない)マイクロ波吸収効率を向上させたマイクロ波加熱装置に関する。
電圧定在波比(VSWR)とは、マイクロ波加熱装置やマイクロ波応用機器などの電波の反射特性を表わすもので、VSWRが分かると前記装置や応用機器などからの入射電力に対する反射電力の割合が算出可能である。すなわち、VSWR(=ρ)と反射電力の割合(=α)の関係は、
α=[(ρ−1)/(ρ+1)]*100 (%)
と表され、例えば、VSWR=3の場合、入射電力に対する反射電力の割合は25%であることが分かる。
従来のマイクロ波加熱装置を図11により説明する。図示のマイクロ波加熱装置は、マイクロ波エネルギーの発生源であるマイクロ波発振機101、導波管102、及び、マイクロ波オーブン103を有している。
導波管102とマイクロ波発振機101の間にはアイソレータ108が挿入されている。マイクロ波オーブン103には被加熱物105を出し入れするための扉104が設けられている。また、導波管102は、マイクロ波オーブン103の天井壁に開口してマイクロ波導入口を形成しており、マイクロ波オーブン103内には、マイクロ波導入口に隣接してスタラファン107が設けられており、マイクロ波を攪拌して加熱物105の均一加熱を図っている。被加熱物105は、回転式若しくは非回転式のトレイ106に載せて加熱処理を行う。マイクロ波オーブン103の底部103-2は導波管102開口している天井壁3-1とは通常は平行とされる場合が多い。
このような従来の装置で被加熱物105の加熱処理を行う場合は、被加熱物105をトレイ106上に載せ、扉104を閉めてマイクロ波発振機101を動作させマイクロ波を発生させる。マイクロ波は導波管102を介してマイクロ波オーブン103に送り込まれ、被加熱物を照射する。この状態で所定時間加熱し、その後マイクロ波発振機101を停止し、マイクロ波オーブン103の扉104を開けて被加熱物105を取り出す。
このような従来のマイクロ波加熱装置を利用するに当たって、被加熱物105が大形で水分の多いものでは特に問題は発生しないが、水分が少ないもの或いは水分が多くても小形・軽量の被加熱物を加熱処理する所謂軽負荷運転の場合には、大きな反射電力が発生する。すなわち、マイクロ波オーブン103に投入されたマイクロ波エネルギーは、負荷が無い或いは少ない場合、多くのマイクロ波エネルギーが吸収されずにマイクロ波オーブン底部103-2に達し、そこで反射されて導波管102を介してマイクロ波発振機101に戻ってしまうのである。マイクロ波発振機101に大きなマイクロ波エネルギーが戻るとマイクロ波発振機101が不安定に動作したり、マイクロ波エネルギーの発生源である発振管即ちマグネトロンを破損させたりすることがある。アイソレータ108は、このようなマイクロ発信機の破損等を防止するためのものであるが高価であり、また、組立作業に時間がかかるため、その製造コストを押し上げる要因となっている。
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、マイクロ波オーブンの形状を工夫して、簡単な構造で軽い負荷でも反射電力の発生が少なく、従って高価なアイソレータを設ける必要がなく、更にはマイクロ波電界攪拌用スタラファンの必要もなくしたマイクロ波加熱装置を提供することを目的とするものである。
すなわち、本発明は、
壁に開口されて所定の指向方向でマイクロ波を導入するマイクロ波導入口を備えるオーブンを有するマイクロ波加熱装置であって、
前記オーブンにおける前記壁に対向する対向壁における前記マイクロ波の照射を受ける部分が、前記指向方向と直角な方向に対して5°〜40°の角度だけ傾斜していることを特徴とするマイクロ波加熱装置を提供する。
具体的には、前記対向壁が全体として前記のように傾斜するようにすることも、また、前記対向壁の前記マイクロ波の照射を受ける部分を含む当該対向壁の一部が前記のように傾斜するようにすることもできる。
また、本発明は、
壁に開口されて所定の指向方向でマイクロ波を導入するマイクロ波導入口を備えるオーブンを有するマイクロ波加熱装置であって、
前記オーブンにおける前記壁に対向する対向壁における前記マイクロ波の照射を受ける部分が、凸面状に湾曲していることを特徴とするマイクロ波加熱装置を提供する。
具体的には、前記マイクロ波導入口から前記指向方向に延び直線が交わる前記対向壁における該対向壁に対する接線が前記直線に直角方向から所定角度で傾斜するようにすることが好ましい。
以上説明したように本発明に係るマイクロ波加熱装置は、被加熱物が軽い負荷の場合でも、反射電力の発生が少なく、更に均一加熱のためのマイクロ波電界攪拌用スタラファンも不要となり、低コストでのマイクロ波加熱装置の製造が可能となる。
以下、本発明に係るマイクロ波加熱装置の実施形態を添付図面図1〜図10に基づき説明する。尚、以下に説明する幾つかの実施形態において、共通する構成エレメントには同じ番号を付して説明する。
図1は、本発明に係るマイクロ波加熱装置の基本的構成を示している。すなわち、該マイクロ波加熱装置は、前述の従来装置と同様、マイクロ波発振機1、導波管2、及び、マイクロ波オーブン3を備え、導波管2は、オーブン3の天井壁に開口してマイクロ波導入口2−1を形成している。該マイクロ波導入口2-1は、マイクロ波発信機1で発生され導波管2を通して導かれたマイクロ波を、垂直下方に向けて指向させ、トレイ6上に載せられた被加熱物5を照射し加熱するようにしている。
このマイクロ波加熱装置の特徴とするところは、マイクロ波オーブン3の底部壁3-2を、水平位置ではなく傾斜させていることである。より詳細には、マイクロ波導入口2−1がマイクロ波を指向させる方向(図示の例では垂直方向)と直角な方向(水平方向)に対して5°〜40°(図示の例では約20度)の角度だけ傾斜していることである。
このような構成からなる本発明マイクロ波加熱装置において被加熱物の加熱処理を行う場合、マイクロ波導入口2−1から垂直下方に指向されたマイクロ波エネルギーは広がりながら進んで被加熱物5に照射されるが、前述のように、該被加熱物が小型であったり軽量であったり、含有水分が少量であったりすると、マイクロ波エネルギーの多くが被加熱物5によって吸収されず、オーブン3の底部壁3-2に達して反射される。図1の実施形態においては、オーブン底部壁3-2が前述の通り傾斜しており、このため、反射したマイクロ波エネルギーはマイクロ波導入口2−1には直接戻らず、従って、導波管2を通してマイクロ波発信機1に戻る量が大幅に減少する(すなわち、大きな反射電力が生じない)。
オーブン底部3-2で反射したマイクロ波エネルギーはマイクロ波オーブン3の側壁等で反射されながら進行するが、乱反射に近い状態で入り乱れる。このため、図11で示したような従来のマイクロ波加熱装置においてはマイクロ波攪拌のために必要とされていたスタラファンを設けなくとも被加熱物の均一な加熱を可能とする。
マイクロ波オーブン3の底部壁3-2は、図1に示すように、その全体を傾斜させることは必ずしも必要ではなく、例えば、図2、図3に示すように、マイクロ波が特に照射される部分のみに傾斜した反射板7を設けるようにすることができ、また、この反射板7を図4に示すように回転軸8を中心に回動可能として、所要の角度に調節できるようにすることもできる。
また、図5と図6に示すようにマイクロ波発振機を複数(図示の例では2台1,1a)使用した装置では、傾斜付き反射板も2枚7,7a取り付け、それぞれの傾斜の向きを図示のように互い違いになるよう設けることもできる。反射板の傾斜方向を同一にした場合、マイクロ波エネルギーの偏りが発生し被加熱物が不均一されることになり好ましくない。
尚、傾斜付き反射板7は、該傾斜付き反射板7上にマイクロ波の指向方向で投影したマイクロ波導入口2−1の面積以上の面積を有するようにすることが好ましいが、同マイクロ波導入口の投影面積よりも小さいものでも、該傾斜付き反射板7が設けられている底部壁3−2から反射されてマイクロ波導入口2−1に入るマイクロ波の総量を一定以下にするようなものであれば良い。
傾斜角度θを45°以上にすることも考えられるが、マイクロ波エネルギーの入射角と反射角の関係から、45°では図7(a)のようにまともに導波管2にマイクロ波エネルギーは戻ってしまい、それ以上の角度では反射波が図7(b)のように被加熱物側に有効の照射されないため好ましくない。更に、5°以下ではマイクロ波エネルギーの反射方向の変化が少なく反射電力抑制の効果は小さい。
本発明の実施形態では、マイクロ波オーブン3の底部3-2や反射板7が平面的なものとされているが、図8に示すようにマイクロ波オーブン3の底部壁3-2a或いは図9の反射板7bのように湾曲させても同様の効果を得ることが分かった。湾曲は、凸面とすることが好ましいが、凹面とすることも可能であり、いずれの場合も、マイクロ波導入口からのマイクロ波指向方向に延びる直線が交わる凸面若しくは凹面での該凹面若しくは凸面に対する接線が、該直線に対する直角方向から一定角度で傾斜するようにすることが好ましい。
また、以上の実施形態においては、導波管を天井壁に取り付けた場合を説明したが、側壁に取り付けた場合でも、対向壁を前述の底部壁と同様に傾斜させたり湾曲させたりすることにより同様の効果を得られることは言うまでも無い。
更に、以上の説明ではバッチ式マイクロ波加熱装置につき述べたが、コンベヤ形加熱装置でも同様な構成とし、同様な効果が得られることも当然である。
次に、従来マイクロ波加熱装置と本発明に係るマイクロ波加熱装置とのVSWR特性を、図10により説明する。VSWR特性は、マイクロ波オーブンへの負荷として、水を0.05リットル〜0.5リットルの範囲で変え、その場合のVSWRを測定したものである。図10で菱形ドットを結んでいる折れ線が従来のマイクロ波加熱装置のVSWR特性を、四角ドットを結んでいる折れ線が本発明に係る装置のVSWR特性を示している。
図10によれば、従来のマイクロ波加熱装置の場合には、VSWR=3.6〜9、即ち入射電力に対する反射電力が32〜64%程度のマイクロ波エネルギーが戻る結果となっている。このような大きな反射が発生する場合は、必ずアイソレータを使用しないとマイクロ波発振機は安定に動作しないとともに、マイクロ波エネルギーの発生源であるマイクロ波発振管であるマグネトロンは急速に劣化或いは破損してしまうことになる。
これに対し、本発明に係るマイクロ波加熱装置におけるVSWR特性は、負荷が50ccの水の場合ではVSWR=3.6(32%反射)となっているが、100cc以上ではVSWRは「2以下」(入射電力に対する反射電力が約11%以下)であり、この程度の値であればアイソレータを使用しなくても、マイクロ波発振機は安定に動作し、マイクロ波エネルギーの発生源であるマグネトロンを傷めることも無い。
本発明のマイクロ波加熱装置の第1の実施形態を示す模式的断面図である。 本発明のマイクロ波加熱装置の第2の実施形態を示す模式的断面図である。 本発明の図2のA矢より見た断面図である。 本発明のマイクロ波加熱装置の第3の実施形態を示す模式的断面図である。 本発明のマイクロ波加熱装置の第4の実施形態を示す模式的断面図である。 図5のA矢視断面図である。 マイクロ波の反射傾向を説明するための図である。 マイクロ波の反射傾向を説明するための図である。 本発明のマイクロ波加熱装置の第5の実施形態を示す模式的断面図である。 本発明のマイクロ波加熱装置の第6の実施形態を示す模式的断面図である。 本発明の効果を示すVSWR特性のグラフである。 従来のマイクロ波加熱装置を示す模式的断面図である。
符号の説明
1,1a マイクロ波発振機
2,2a 導波管
2−1 マイクロ波導入口
3 マイクロ波オーブン
3-1 マイクロ波オーブン天井
3-2 マイクロ波オーブン底部
4 扉
5 被加熱物
6 トレイ
7,7a 反射板
8. 回転軸

Claims (5)

  1. 壁に開口されて所定の指向方向でマイクロ波を導入するマイクロ波導入口を備えるオーブンを有するマイクロ波加熱装置であって、
    前記オーブンにおける前記壁に対向する対向壁における前記マイクロ波の照射を受ける部分が、前記指向方向と直角な方向に対して5°〜40°の角度だけ傾斜していることを特徴とするマイクロ波加熱装置。
  2. 前記対向壁が全体として前記のように傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波加熱装置。
  3. 前記対向壁の前記マイクロ波の照射を受ける部分を含む当該対向壁の一部が前記のように傾斜していることを特徴とするマイクロ波加熱装置。
  4. 壁に開口されて所定の指向方向でマイクロ波を導入するマイクロ波導入口を備えるオーブンを有するマイクロ波加熱装置であって、
    前記オーブンにおける前記壁に対向する対向壁における前記マイクロ波の照射を受ける部分が、凸面状に湾曲していることを特徴とするマイクロ波加熱装置。
  5. 前記マイクロ波導入口から前記指向方向に延びる直線が交わる前記対向壁での該対向壁に対する接線が、前記直線に対する直角方向から所定角度で傾斜していることを特徴とする請求項4に記載のマイクロ波加熱装置。
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