[レンズ鏡筒全体の説明]
図1と図2に断面を示すズームレンズカメラのズームレンズ鏡筒10は、箱形のハウジング11と、該ハウジング11内に伸縮可能に支持される伸縮筒部12を有している。ハウジング11の外側はカメラの外装部材で覆われているが、外装部の図示は省略している。ズームレンズ鏡筒10の撮像光学系は、物体側から順に、第1レンズ群13a、シャッタ13b、絞13c、第2レンズ群13d、第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCDイメージセンサ13gからなっている。第1レンズ群13aからローパスフィルタ13fまでの光学系で形成される被写体像はCCD13gの撮像面上に結像する。図5に示すように、CCD13gは画像処理回路14aに電気的に接続しており、CPU60の制御の下、画像処理回路14aを介してカメラ外面に設けた液晶モニタ14bに電子画像を表示し、当該電子画像データをメモリ14cに記録することが可能である。そして、図2に示す撮影状態では、撮像光学系を構成する全ての光学要素が同一の撮影光軸(撮像光学系の共通光軸)Z1上に位置するが、図1の鏡筒収納(沈胴)状態で、第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gが撮影光軸Z1から離れてハウジング11内を上方に退避移動し、この退避移動の結果生じるスペースに第2レンズ群13dが進入する。これにより鏡筒の収納長を短縮することが可能となっている。以下、光学要素の退避機構を含めたズームレンズ鏡筒10の全体構造を説明する。なお、以後の説明中では、ズームレンズ鏡筒10を搭載するズームレンズカメラのボディを正面から見たときの上下方向をy軸、同じくカメラ正面から見て左右方向をx軸と定義する。
ハウジング11は、中空の箱状部15と、撮影光軸Z1を囲むようにして該箱状部15の前壁15aに形成した中空の固定環部16とを有する。固定環部16の中心である回転中心軸Z0は、撮影光軸Z1と平行で該撮影光軸Z1よりも下方に偏心している。箱状部15内には、固定環部16の上方に退避スペースSP(図1、図2)が形成されている。
固定環部16の内周面側には、回転中心軸Z0と平行な軸で回動可能なズームギヤ17(図8)が支持されている。ズームギヤ17は、ハウジング11に支持されたズームモータMZ(図5、図10及び図11)によって正逆に回転される。また、固定環部16の内周面には、雌ヘリコイド16aと、回転中心軸Z0を中心とした環状をなす周方向溝16bと、回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)と平行な直進案内溝16cとが形成されている(図3、図4参照)。
固定環部16の内側には、回転中心軸Z0を中心として回動可能にヘリコイド環18が支持されている。ヘリコイド環18は、雌ヘリコイド16aに螺合する雄ヘリコイド18aを有し、雌ヘリコイド16aと雄ヘリコイド18aの関係によって回転しながら光軸方向に進退することができる。ヘリコイド環18はまた、雄ヘリコイド18aの前方の外周面上に回転案内突起18bを有しており、固定環部16に対して最も前方に移動した状態(図2ないし図4)では、雌ヘリコイド16aと雄ヘリコイド18aの螺合が解除されるとともに回転案内突起18bが周方向溝16bに摺動可能に嵌まり、ヘリコイド環18は光軸方向移動が規制されて定位置回転のみが可能になる。ヘリコイド環18の外周面にはさらに、雄ヘリコイド18aと同一周面位置に、撮影光軸Z1と平行なギヤ歯を有する環状のスパーギヤ18cが形成されており、該スパーギヤ18cに対してズームギヤ17が噛合している。ズームギヤ17は軸線方向に長く形成され、図1及び図10に示すヘリコイド環18の収納状態から図2及び図11に示す繰出状態まで、常にスパーギヤ18cとの噛合を維持する。なお、ヘリコイド環18は、光軸方向に分割可能な2つの環状部材を組み合わせて構成されており、図10及び図11では、ヘリコイド環18のうち後方の環状部材のみを図示している。
ヘリコイド環18の内側には直進案内環20が支持されている。図4に示すように、直進案内環20は、その後端部付近に設けた直進案内突起20aを固定環部16の直進案内溝16cに摺動可能に係合させることで、回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)に沿う方向へ直進案内されている。ヘリコイド環18は、該ヘリコイド環18の内周面と直進案内環20の外周面との間に設けた回転案内部21を介して、直進案内環20に対して相対回転自在かつ光軸方向には一緒に移動するように支持されている。回転案内部21は、軸線方向に位置を異ならせて設けた複数の周方向溝と、各周方向溝に摺動可能に嵌まる径方向突起とからなっている。
直進案内環20は内周面に回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)と平行な直進案内溝20bを有し、該直進案内溝20bに対して1群直進案内環22の直進案内突起22aと、2群直進案内環23の直進案内突起23aとがそれぞれ摺動可能に係合している。1群直進案内環22は、内周面の直進案内溝22b(図3)を介して1群支持枠24を回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)と平行な方向に直進案内し、2群直進案内環23は、直進案内キー23bを介して2群支持枠25を回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)と平行な方向に直進案内している。1群支持枠24はフォーカシング枠29を介して第1レンズ群13aを支持し、2群支持枠25は第2レンズ群13dを支持している。
直進案内環20の内側には回転中心軸Z0を中心として回動可能なカム環26が設けられ、該カム環26は、回転案内部27、28(図4)を介して、1群直進案内環22と2群直進案内環23に対してそれぞれ相対回転自在かつ光軸方向には一緒に移動するように支持されている。回転案内部27は、カム環26の外周面側に設けられた周方向溝と、1群直進案内環22に設けられ該周方向溝に摺動可能に嵌まる径方向突起により構成されている。回転案内部28は、カム環26の内周面側に設けられた周方向溝と、2群直進案内環23に設けられ該周方向溝に摺動可能に嵌まる径方向突起により構成されている。
図4に示すように、カム環26は径方向外側に突出するフォロア突起26aを有し、該フォロア突起26aが、直進案内環20のフォロアガイド溝20cを貫通し、ヘリコイド環18の内周面に形成した回転伝達溝18dに係合している。回転伝達溝18dは回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)と平行な溝であり、該回転伝達溝18dに対してフォロア突起26aは周方向への相対移動を規制された状態で摺動可能に嵌まっている。つまり、回転伝達溝18dとフォロア突起26aの関係によって、ヘリコイド環18の回転がカム環26に伝達される。一方、フォロアガイド溝20cは、図にその展開形状が表れていないが、回転中心軸Z0を中心とする周方向溝部と、雌ヘリコイド16aと同方向に傾斜するリード溝部とを有するガイド溝である。よって、ヘリコイド環18によってカム環26が回転されるとき、フォロア突起26aがフォロアガイド溝20cのリード溝部内に位置する状態では、カム環26が回転しながら回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)に沿う方向へ進退し、フォロア突起26aがフォロアガイド溝20cの周方向溝部内に位置する状態では、カム環26は前後への進退は行わずに定位置回転する。
カム環26は外周面と内周面にそれぞれカム溝26b、26cを有する両面カム環であり、外周面側のカム溝26bには、1群支持枠24から径方向内方に突出されたカムフォロア24aが摺動可能に係合し、内周面側のカム溝26cには、2群支持枠25から径方向外方に突出されたカムフォロア25aが摺動可能に係合している。つまり、カム環26が回転されると、1群直進案内環22を介して直進案内された1群支持枠24は、カム溝26bの形状に従って回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)に沿う方向へ所定の軌跡で進退される。同様に、カム環26が回転されると、2群直進案内環23を介して直進案内された2群支持枠25は、カム溝26cの形状に従って回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)に沿う方向へ所定の軌跡で進退移動される。
2群支持枠25は、第2レンズ群13dを保持する筒状部25b(図1、図2参照)の前部に、シャッタ13bと絞13cを開閉可能に支持している。シャッタ13bと絞13cはそれぞれ、レリーズボタン14e(図5)の押圧操作に応じて、2群支持枠25に支持されたシャッタ駆動アクチュエータMSと絞駆動アクチュエータMA(図5)によって開閉させることができる。レリーズボタン14eは半押し操作と全押し操作が可能な周知のボタンスイッチであり、半押しで不図示の測距センサや測光センサに測距動作や測光動作を行わせ、全押しでシャッタレリーズ動作(電子画像の記録動作)を行わせることができる。
第1レンズ群13aを保持するフォーカシング枠29は、1群支持枠24に対して回転中心軸Z0(撮影光軸Z1)に沿う方向へ移動可能に支持されており、フォーカシングモータMF(図5)によってフォーカシング枠29を前後に移動させることができる。
ズームモータMZ、シャッタ駆動アクチュエータMS、絞駆動アクチュエータMA、フォーカシングモータMFはそれぞれ対応するモータドライバやアクチュエータドライバによって駆動制御される。なお、図5ではドライバの図示が省略されており、各モータやアクチュエータはCPU60に直結して表されている。ズームレンズ鏡筒10は、カメラのメインスイッチ14d(図5)のオンによりズームモータMZが駆動されて図2の撮影状態となり、メインスイッチ14dのオフにより該撮影状態から図1の収納状態になる。
以上のズームレンズ鏡筒10の動作をまとめると、図1の鏡筒収納状態においてメインスイッチ14dをオンにしてズームギヤ17を繰出方向へ回転駆動すると、ヘリコイド環18が回転しながら光軸方向前方に移動し、該ヘリコイド環18と共に直進案内環20も光軸方向前方へ直進移動する。また、ヘリコイド環18から回転力が伝達されたカム環26が、直進案内環20に対して回転しながら光軸方向前方に相対移動する。1群直進案内環22と2群直進案内環23は、カム環26と共に光軸方向前方に直進移動する。1群支持枠24と2群支持枠25はそれぞれ、カム環26に対して光軸方向に所定の軌跡で相対移動する。つまり、収納状態から鏡筒を繰り出すときの第1レンズ群13aと第2レンズ群13dの光軸方向移動量は、固定環部16に対するカム環26の相対移動量と、カム環26に対する1群支持枠24と2群支持枠25の相対移動量(各カム溝26b、26cによる進退移動量)の合算値として決定される。
図6は、ヘリコイド環18、カム環26、そして該カム環26に対する第1レンズ群13aと第2レンズ群13dのそれぞれの移動軌跡(カム溝26b、26cの軌跡)を示したものであり、縦軸が鏡筒収納状態からテレ端までの鏡筒回転量(角度位置)を示し、横軸が光軸方向への移動量を示している。同図に示すように、ズームレンズ鏡筒10が収納位置(図1)からワイド端(図2上半、図3)まで繰り出されるほぼ中間の回転角θ1までは、ヘリコイド環18は回転しながら光軸方向前方に繰り出され、この回転角θ1以降は、テレ端(図2の下半、図4)に至るまで前述の定位置回転を行う。一方、カム環26は、鏡筒収納位置からワイド端に至る直前の回転角θ2まで、回転しながら光軸方向前方に繰り出され、この回転角θ2からテレ端に至るまでは、ヘリコイド環18と同様に前述の定位置回転を行う。そして、ワイド端からテレ端までのズーム領域での第1レンズ群13aと第2レンズ群13dの光軸方向移動量は、定位置回転するカム環26に対する1群支持枠24と2群支持枠25の相対移動量(各カム溝26b、26cによる進退移動量)によって決定され、この第1レンズ群13aと第2レンズ群13dの相対移動によって変倍がなされる。図7は、ヘリコイド環18及びカム環26の移動量とカム溝26b、26cによる移動量とを合成した、第1レンズ群13aと第2レンズ群13dの実際の移動軌跡を示している。
ワイド端からテレ端に至るまでの焦点距離情報はズームエンコーダ50(図5、図22、図25)で検出されてCPU60に入力される。ワイド端とテレ端の間のズーム領域では、この焦点距離情報と不図示の測距センサで得た被写体距離情報とに基づきフォーカシング駆動量が決められ、フォーカシングモータMFによって第1レンズ群13aを単独で光軸方向に移動させることでフォーカシングが行われる。
以上では主に第1レンズ群13aと第2レンズ群13dの動作を説明したが、前述の通り、ズームレンズ鏡筒10では、第3レンズ群13eからCCD13gまでの光学要素が、撮影光軸Z1上の撮影位置から、該撮影位置より上方の光軸外退避位置Z2へと退避移動可能である。また、この第3レンズ群13eからCCD13gまでの光学要素を、撮影光軸Z1と直交する平面に沿って移動させて手振れ(像振れ)補正を行うことが可能である。続いてこの退避機構と手振れ補正機構を説明する。
図8及び図18に示すように、第3レンズ群13eとローパスフィルタ13fとCCD13gは、CCDホルダ30に保持されてユニット化されている。CCDホルダ30は、ホルダ本体30a、パッキン30b、押さえ板30cを備え、ホルダ本体30aの前端開口部に第3レンズ群13eが保持され、該ホルダ本体30aの内側に設けたフランジとパッキン30bの間にローパスフィルタ13fが挟持され、パッキン30bと押さえ板30cの間にCCD13gが挟持されている。ホルダ本体30aと押さえ板30cは、CCDホルダ30の中心軸(撮影状態での撮影光軸Z1)を中心として離間させて配置した3本の固定ビス30d(図17及び図18)によって互いに固定されている。3本の固定ビス30dはまた、画像伝送FPC31の一端部を押さえ板30cの後面に共締めしており、CCD13gの支持基板と画像伝送FPC31とが電気的に接続されている。
画像伝送FPC31は、CCD13gへの接続端部からハウジング11内の退避スペースSPへ向けて延出されており、撮影光軸Z1と略直交し上方へ向かう第1直線状部31aと、該第1直線状部31aから下方に向けて湾曲されたU字状部31bと、該U字状部31bに続いて下方に向かう第2直線状部31cと、該第2直線状部31cから再び上方へ向けて折り返された第3直線状部31dとを有している(図1、図2参照)。第3直線状部31dはハウジング11の前壁15aの内面に沿って固定されており、この第3直線状部31d以外の第1直線状部31a、U字状部31b及び第2直線状部31cが、CCDホルダ30の移動に応じて変形可能な変形部となっている。
CCDホルダ30は、該CCDホルダ30の中心軸(撮影状態での撮影光軸Z1)を中心として離間させて配置した3本の調整ビス33(図17及び図18)を介して左右移動枠32に支持される。CCDホルダ30と左右移動枠32の間には、3つの圧縮コイルばね34が3つ配されている。3つの調整ビス33の軸部はそれぞれ、圧縮コイルばね34に挿通されており、各調整ビス33の締め付け量を変化させると、対応する圧縮コイルばね34の圧縮量が変化する。調整ビス33と圧縮コイルばね34は、第3レンズ群13eの光軸を囲む配置で3個所設けられているため、3つの調整ビス33の締め付け量を変化させることにより、左右移動枠32に対するCCDホルダ30の傾き調整、つまり撮影光軸Z1に対する第3レンズ群13eの光軸の傾き調整を行うことができる。
図15に示すように、左右移動枠32は、x軸方向に向く左右ガイド軸35を介して、上下移動枠36に対して移動可能に支持されている。詳細には、左右移動枠32は、CCDホルダ30を囲む四角の枠状部32aと、該枠状部32aから側方に延出された腕部32bとを有し、枠状部32aの上面にばね支持突起32cが形成され、腕部32bの先端部には傾斜面32dと位置規制面32eが形成されている。位置規制面32eはy軸と平行な平面である。一方、上下移動枠36は、x軸方向に離間して設けた一対の移動規制枠36a、36bと、該一対の移動規制枠36a、36bの間に位置するばね支持部36cと、該ばね支持部36cに対してx軸方向の延長上に位置する上方軸受部36dと、該上方軸受部36dの下方に位置する下方軸受部36eとを有している。図16に示すように、一対の移動規制枠36a、36bの間のスペースに枠状部32aを位置させ、移動規制枠36bと上方軸受部36dの間に腕部32bの傾斜面32dと位置規制面32eを位置させた状態で、左右移動枠32が上下移動枠36に支持される。
上下移動枠36における移動規制枠36aと上方軸受部36dには、左右ガイド軸35の一端部と他端部が固定されており、移動規制枠36bとばね支持部36cには、左右ガイド軸35を挿通させる貫通孔が形成されている。左右移動枠32の腕部32bとばね支持突起32cには、左右ガイド軸35に対して摺動可能に嵌まる左右貫通孔32x1、32x2(図16)が形成されており、この左右貫通孔32x1、32x2と左右ガイド軸35の摺動関係により、左右移動枠32が上下移動枠36に対してx軸方向へ移動可能に支持される。ばね支持突起32cとばね支持部36cの間には、左右ガイド軸35を囲む態様で左右移動枠付勢ばね37が配設されている。左右移動枠付勢ばね37は圧縮コイルばねであり、ばね支持突起32cを移動規制枠36aに接近させる方向(図16の左方)へ向けて左右移動枠32を付勢している。
上下移動枠36の上方軸受部36dと下方軸受部36eにはさらに、撮影光軸Z1と直交しかつy軸方向に向く、上下貫通孔36y1、36y2(図15)が形成されている。上下貫通孔36y1と上下貫通孔36y2は一直線上に位置しており、上下ガイド軸38(図8、9)に対して摺動可能に挿通されている。上下ガイド軸38の両端部はハウジング11に固定されており、したがって上下移動枠36は、上下ガイド軸38に沿ってカメラ内をy軸方向に移動することができる。より詳細には、CCDホルダ30内の第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gの中心を撮影光軸Z1上に位置させた図1の撮影位置と、これら第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gの中心が固定環部16よりも上方の光軸外退避位置Z2に位置する図2の退避位置との間を、上下移動枠36が移動可能である。
上下移動枠36の一側部にはばね掛け部36fが突設され、該ばね掛け部36fとハウジング11内のばね掛け部11a(図8)との間に上下移動枠付勢ばね39が張設されている。上下移動枠付勢ばね39は引張ばねであり、上下移動枠36を下方、すなわち図1に示す撮影位置側へ付勢している。
以上のように、CCDホルダ30を保持する左右移動枠32は上下移動枠36に対してx軸方向へ移動可能に支持され、上下移動枠36はy軸方向へ移動可能に支持されている。このCCDホルダ30のx軸方向及びy軸方向の移動によって手振れ補正を行うことが可能であり、次のような駆動機構が設けられている。
図9及び図19に示すように、左右駆動レバー40は、撮影光軸Z1と平行をなすレバー回動軸42により下端部が軸支され、上端部に先端着力部40aを有する。この先端着力部40aの近傍には、光軸方向後方に向けて突出された操作ピン40bと、ばね掛け部40cが設けられている。図12に示すように、左右駆動レバー40の先端着力部40aは移動部材43に当接している。移動部材43は、一対のガイドバー44(44a、44b)によってx軸方向へ摺動可能に支持されており、移動部材43に対してナット45が当接している。ナット45は、ガイドバー44bに摺動可能に嵌まる回転規制溝45aと、ねじ孔45bとを有し、ねじ孔45bに対して第1ステッピングモータ46のドライブシャフト(送りねじ)46aが螺合している。図13及び図14に示すように、カメラ正面から見て、ナット45は移動部材43の左側から当接している。また、左右駆動レバー40のばね掛け部40cには引張ばね47の一端部が係合し、引張ばね47の他端部はハウジング11内のばね掛け部11b(図12参照)に係合している。引張ばね47は、移動部材43をナット45に当接させる方向、すなわち図13、図14及び図19における反時計方向へ向けて左右駆動レバー40を回動付勢している。この構造から、第1ステッピングモータ46を駆動するとナット45がガイドバー44に沿って移動し、該ナット45と共に移動部材43が移動して左右駆動レバー40が揺動される。具体的には、図13及び図14の右方に向けてナット45を移動させると、引張ばね47の付勢力に抗しながら移動部材43が押圧され、左右駆動レバー40が同図の時計方向に回動する。逆に同図の左方に向けてナット45を移動させると、引張ばね47の付勢力によって移動部材43が追随して左方に移動し、左右駆動レバー40が反時計方向に回動する。
左右駆動レバー40に設けた操作ピン40bは、図19に示すように、左右移動枠32の腕部32bの先端部に設けた位置規制面32eに当接している。左右移動枠32は左右移動枠付勢ばね37によって同図の左方へ移動付勢されているため、位置規制面32eと操作ピン40bが当接した状態が維持される。そして、左右駆動レバー40が揺動すると操作ピン40bの位置がx軸方向に変位するので、左右ガイド軸35に沿って左右移動枠32が移動する。具体的には、図19の時計方向に左右駆動レバー40を回動させると、操作ピン40bが位置規制面32eを押圧し、左右移動枠付勢ばね37の付勢力に抗して左右移動枠32が同図の右方向へ移動する。逆に図19の反時計方向に左右駆動レバー40を回動させると、操作ピン40bが位置規制面32eから離れる方向に移動するため、左右移動枠付勢ばね37の付勢力によって左右移動枠32が追随して左方向へ移動する。
図8ないし図11、図13及び図14に示すように、上下ガイド軸38の近傍には、該上下ガイド軸38と平行なドライブシャフト(送りねじ)70aを備えた第2ステッピングモータ70と、ナット71が設けられている。図9に示すように、ナット71は、上下ガイド軸38に摺動可能に係合する回転規制溝71aと、ドライブシャフト70aに螺合するねじ孔71bとを有しており、第2ステッピングモータ70を駆動してドライブシャフト70aが正逆に回転すると、上下ガイド軸38に沿ってナット71がy軸方向に移動する。図10、図11、図13及び図14に示すように、ナット71は上下移動枠36の下方軸受部36eに対して下方から当接している。この構造から、第2ステッピングモータ70を駆動するとナット71が上下ガイド軸38に沿って移動し、該上下ガイド軸38に沿って上下移動枠36がy軸方向に移動する。具体的には、ナット71を上方へ駆動すると、該ナット71が下方軸受部36eを上方に向けて押圧し、上下移動枠付勢ばね39の付勢力に抗して上下移動枠36が上方向へ移動する。逆に、下方へ向けてナット71を駆動すると、これに追随して、上下移動枠付勢ばね39の付勢力によって上下移動枠36が下方向へ移動する。
以上の構造により、第1ステッピングモータ46を正逆に駆動させることにより、左右移動枠32をx軸方向へ正逆に移動させることができ、第2ステッピングモータ70を正逆に駆動させることにより、上下移動枠36をy軸方向へ正逆に移動させることができる。
左右移動枠32には、腕部32bを延長して板状部32fが形成されている。板状部32fは、カメラ正面から見て逆L字状をなしており、その先端部が上下移動枠36の下方軸受部36eの近傍に達するように上下方向に長く形成されている。また、上下移動枠36には、下方軸受部36eの先端部に板状部36sが形成されている。図8ないし図11、図13及び図14に示すように、ハウジング11内には、左右移動枠32に設けた板状部32fの通過を検出することが可能なフォトインタラプタ55と、上下移動枠36に設けた板状部36sの通過を検出することが可能なフォトインタラプタ56が設けられている。各板状部32f、36sの通過をフォトインタラプタ55、56で検知することによって、左右移動枠32と上下移動枠36の初期位置を検出することができる。
x軸とy軸周りにおける移動角速度を検出するxジャイロセンサ(角速度センサ)51とyジャイロセンサ(角速度センサ)52(図5)を備え、カメラに加わった振れの速さ(大きさ)と方向は、このジャイロセンサ51、52によって検知される。続いてCPU60を用いて、xジャイロセンサ51とyジャイロセンサ52の検出したx、y2軸方向の振れの角速度を時間積分して移動角度を求め、該移動角度から焦点面(CCD13gの撮像面)上でのx軸方向及びy軸方向の像の移動量を演算すると共に、この像振れをキャンセルするための各軸方向に関する左右移動枠32と上下移動枠36の駆動量及び駆動方向(第1ステッピングモータ46、第2ステッピングモータ70の駆動パルス)を演算する。そして、この演算値に基づいて、第1ステッピングモータ46と第2ステッピングモータ70を駆動制御する。これにより、左右移動枠32と上下移動枠36はそれぞれ、撮影光軸Z1の振れをキャンセルするべく所定方向に所定量駆動され、焦点面上での画像位置が一定に保たれる。撮影モード切替スイッチ14f(図5)のオンによってこの手振れ補正モードに入ることができ、撮影モード切替スイッチ14fをオフにした状態では、手振れ補正機能が停止されて通常撮影を行うことができる。撮影モード切替スイッチ14fではさらに、手振れ補正モードにおいて、常時各ステッピングモータ46、70を駆動させて振れ補正を行う第1追従モードと、レリーズボタン14eの操作時(レリーズボタン14eの半押しおよびレリーズボタンの全押しによるシャッタレリーズ時)に各ステッピングモータ46、70を駆動させて振れ補正を行う第2追従モードとを選択することができる。
以上の手振れ補正機構の一部を利用して、鏡筒収納時における第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gの光軸外退避位置Z2への退避動作を行わせる。図8ないし図11、図13及び図14に示すように、第2ステッピングモータ70は、下方にモータ本体を位置させ、該モータ本体から上方に向けて延出されたドライブシャフト70aは、y軸方向における上下移動枠36の退避移動量を超える長さを有している。また、このドライブシャフト70aと平行をなす上下ガイド軸38は、ドライブシャフト70a以上の長さを有している。このように構成することで、上下移動枠36を、手振れ補正に必要な可動域を超えてy軸方向へ大きく移動させることが可能となっており、上下移動枠36に支持されている第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gを、撮影光軸Z1上の位置(図11及び図14)から光軸外退避位置Z2(図10及び図13)まで移動させることができる。
そして、ズームレンズ鏡筒10の状態に応じて第2ステッピングモータ70を駆動して上下移動枠36の位置が制御される。まず、ズームレンズ鏡筒10が撮影状態(ワイド端からテレ端の間)にあるときには、図11及び図14に示すように、ナット71をドライブシャフト70aの下端部近くに位置させて、撮影光軸Z1上に上下移動枠36(第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13g)を位置させる。この撮影状態では、第1ステッピングモータ46と第2ステッピングモータ70を適宜駆動してx軸方向及びy軸方向における前述の手振れ補正を行うことができる。この手振れ補正は、第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gが撮影光軸Z1上に位置する範囲での駆動であり、撮影光軸Z1を超えて光軸外退避位置Z2側に大きく移動されることはない。
ズームレンズ鏡筒10は、カメラのメインスイッチ14d(図5)のオンにより図2の撮影状態となり、スイッチオフにより該撮影状態から図1の収納状態になる。メインスイッチ14dがオフされて撮影状態から収納状態になるとき、ズームモータMZによる鏡筒収納動作が行われると同時に、図10及び図13に示すように、第2ステッピングモータ70を駆動してナット71がドライブシャフト70aの上端部付近まで移動される。すると、ナット71が上下移動枠付勢ばね39の付勢力に抗して上下移動枠36を上方へ押し上げ、上下移動枠36は、上下ガイド軸38にガイドされて図1に示すようにハウジング11内の退避スペースSP内へ移動される。その結果、第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gが、撮影光軸Z1上から光軸外退避位置Z2へと退避される。
上下移動枠36の退避移動、すなわち第2ステッピングモータ70の駆動は、ズームレンズ鏡筒10が完全な収納状態になるよりも前のθ3(図6及び図7)の回転角で完了されるように制御される。そして、このθ3の回転角から、ヘリコイド環18やカム環26がさらに回転しながら光軸方向後方へ移動する。そして、図1の収納状態まで達すると、第2レンズ群13dを保持する2群支持枠25の筒状部25bが、撮影時において上下移動枠36が占めていた空間まで入り込む。これにより、収納状態での撮像光学系の光軸方向の厚みを小さくすることができ、ズームレンズ鏡筒10及びそれを搭載するカメラの薄型化が可能になっている。なお、上下移動枠36の退避動作を開始させるタイミングは、図6及び図7におけるワイド端からθ3の間であれば任意に定めることができる。本実施形態では、カム環26の定位置回転動作と回転進退動作が切り換わるθ2の回転角付近で第2ステッピングモータ70による退避駆動が開始されるように制御されている。
ズームレンズ鏡筒10が収納状態から撮影状態になるときは、以上とは逆の動作が行われる。まず、カメラのメインスイッチ14dがオンされると、ズームモータMZが駆動されて鏡筒繰出動作が開始される。このとき第2ステッピングモータ70はまだ駆動されない。ズームモータMZによる繰出動作を受けて、第2レンズ群13dを保持する2群支持枠25が図1に示す最後方位置から前方へ向けて移動され、退避位置にある上下移動枠36の下方空間(撮影光軸Z1上の空間)が開放される。2群支持枠25は、図6及び図7に示すθ3の回転角になるまでには、上下移動枠36と重ならない前方位置までの移動が完了する。この時点から第2ステッピングモータ70が駆動され、ナット71が上下ガイド軸38に沿ってドライブシャフト70aの下端部付近まで移動される。そして、上下移動枠付勢ばね39の付勢力により上下移動枠36がナット71に追随して下方に移動され、図10及び図13に示す撮影光軸Z1上の位置に達する。
なお、図20に示すように、上下移動枠36が光軸外退避位置Z2側へ退避されると、左右移動枠32の腕部32bに設けた位置規制面32eと左右駆動レバー40に設けた操作ピン40bの係合が解除され、左右移動枠32は左右移動枠付勢ばね37の付勢力によって同図の左方に移動されて、その枠状部32aが上下移動枠36の移動規制枠36aに当て付く。この状態から上下移動枠36が再び撮影光軸Z1側に移動されると、図20に二点鎖線で示すように左右移動枠32の傾斜面32dが操作ピン40bに当接する。傾斜面32dは、上下移動枠36の下降動作に従って操作ピン40bを位置規制面32e側に案内するように傾斜しているため、上下移動枠36が撮影位置まで下降されると、図19に示すように再び操作ピン40bが位置規制面32eに係合し、左右移動枠32の枠状部32aが移動規制枠36aと移動規制枠36bの間の中立位置に戻る。
以上のようにズームレンズ鏡筒10では、鏡筒収納時には、第2ステッピングモータ70の駆動力によって上下移動枠36が撮影光軸Z1上の位置から押し上げられて、第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gからなるユニットが光軸外退避位置Z2(退避スペースSP)へと移動される。第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCD13gが退避した後の撮影光軸Z1上のスペースには、図1のように第2レンズ群13dが進入する。これによりズームレンズ鏡筒10を撮影光軸Z1方向において薄型化することができ、手振れ補正機構を備えていながら非撮影時にはカメラをコンパクトにできる。
[本発明の特徴部分の説明]
前述の通りズームレンズ鏡筒10では、第1ステッピングモータ46と第2ステッピングモータ70を駆動源としてCCDホルダ30をx軸方向とy軸方向に駆動して手振れ補正を行っている。そして本発明は、手振れ補正時における第1ステッピングモータ46と第2ステッピングモータ70の消費電力を低減させるものである。本発明の技術思想はx軸方向の振れ補正とy軸方向の振れ補正のいずれにも共通して適用が可能であるため、以下の説明では、第1ステッピングモータ46と第2ステッピングモータ70のいずれも含む呼称として、ステッピングモータSMを用いる。また、xジャイロセンサ51とyジャイロセンサ52のいずれも含む呼称として、ジャイロセンサJSを用いる。さらに、手振れ補正時に駆動される光学要素である第3レンズ群13e、ローパスフィルタ13f及びCCDイメージセンサ13gを振れ補正光学要素OVと総称する。
図21はステッピングモータSMの特性を示している。縦軸は原点(0)から離れるほど駆動トルクが大きくなることを示す。横軸は起動応答周波数(最大パルス速度)であり、起動応答周波数の数値は、単位時間あたりのステッピングモータSMの駆動量、すなわち手振れの速さ(大きさ)に比例して大きくなる。振れ補正光学要素OVを駆動するために必要な駆動トルクQNは、振れ補正光学要素OV、CCDホルダ30、左右移動枠32、上下移動枠36などを含む可動部分の重量や、左右ガイド軸35、上下ガイド軸38などの摺動部分での抵抗といった条件によって一定に決まっている。この必要駆動トルクQNを得るためにステッピングモータSMに与えるべきエネルギー(パワー)は起動応答周波数に応じて異なり、起動応答周波数が大きいほど大きなエネルギーが必要となるため、従来のステッピングモータは、仕様上の最高駆動周波数を満足する固定値のエネルギーによって駆動されていた。例えば図21の特性図において仕様上の最高駆動周波数が2kHzである場合、実際の駆動周波数の大小にかかわらずステッピングモータには常にP5のエネルギーを与えて駆動していた。しかし、駆動周波数が100Hzの場合、P5のエネルギーで駆動すると、必要駆動トルクQNを超える余剰トルクQSが生じてしまう。本発明は、この余剰トルクQSをなくすように制御すればそれだけ消費電力を低減させることができるという点に着目してなされたものであり、ステッピングモータSMに供給する駆動エネルギーを固定値ではなく可変とし、起動応答周波数の変化に応じて、必要駆動トルクQNが得られる範囲で小さいレベルの駆動エネルギーを選択することに特徴がある。すなわち、起動応答周波数が100Hz、200Hz、500Hz、1kHz、2kHzのときはそれぞれ、図21におけるP1、P2、P3、P4、P5という異なる大きさのエネルギーをステッピングモータSMに供給して駆動させる。P1〜P5はそれぞれ、起動応答周波数が100Hz、200Hz、500Hz、1kHz、2kHzのときに必要駆動トルクQNを得るために必要なエネルギーを示しており、P1<P2<P3<P4<P5の関係にある。
電源回路においてエネルギーをP、電圧をV、抵抗(一定値)をRとしたときP=V2/Rが成り立つから、電圧を変化させればステッピングモータSMに供給する駆動エネルギーを変更することができる。図22は、電圧変化によってステッピングモータSMの駆動エネルギーを変更するタイプの電源回路の構成例を示している。この電源回路は、電池80、コイル81、スイッチングトランジスタ82、平滑コンデンサ83、逆流防止用のダイオード84、スイッチングトランジスタ82のオンオフを制御する制御IC85を備えたスイッチング電源である。周知のように、スイッチングトランジスタ82経由でグラウンド側にショートするとスイッチングトランジスタ82がオフになり(開き)、平滑コンデンサ83側に電流が流れて電荷がチャージされるようになっている。制御IC85は、予め設定された基準電圧とフィードバック端子FBから入る参照電圧をコンパレータで比較し、参照電圧を基準電圧と一致させるようにスイッチングトランジスタ82をオンオフ制御して電源回路の出力電圧を規定値に保たせるように機能する。そして電源回路からモータドライバ87に給電され、モータドライバ87はCPU60からのモータ駆動信号に基づいてステッピングモータSMを駆動する。なお、ステッピングモータSMは2相励磁タイプであり、モータドライバ87には第1相用の駆動信号(EN1、IN1)と第2相用の駆動信号(EN2、IN2)が送られる。
電源回路は、CPU60から参照電圧の電圧検出点CVへ電圧制御用信号を送る制御信号伝送路88を備えている。上記のように制御IC85は参照電圧を基準電圧に対応させるように機能するため、実際の参照電圧とは異なる電圧情報を電圧検出点CVへ入れることによって、電源回路の出力電圧を意図的に変化させることができる。具体的には、制御信号伝送路88を介して基準電圧よりも低い電圧値が入力されると制御IC85は出力電圧を上げるように機能し、基準電圧よりも高い電圧値が入力されると制御IC85は出力電圧を下げるように機能する。これによってステッピングモータSM側への供給電圧を任意に調整できる。例えば、必要駆動トルクQNを得るために図21におけるP5のエネルギーを要する場合には、図23に示すV1〜V5の5段階の電圧のうち最高電圧V5を出力電圧として設定し、必要駆動トルクQNを得るために必要なエネルギーレベルがP4、P3、P2、P1と小さくなるにつれて各駆動パルスにおける出力電圧をV4、V3、V2、V1と段階的に小さくするように制御される。なお、ステッピングモータSMは2相励磁タイプであるから、実際には図24のように、第1相用のA1、B1と第2相用のA2、B2の4つのパルス駆動信号があり、V1〜V5の電圧変化によってそれぞれのパルスの振幅(波高)が変化する。
また、ステッピングモータSMへ供給する駆動エネルギーを変更させる別の態様として、図22のように参照電圧によるフィードバック制御を行うタイプではなく、図25のようにCPU60からの電圧制御用信号によって直接に制御IC85を制御するタイプの回路を用いることもできる。図25の回路は、平滑コンデンサ83及び電圧検出点CVを備えず、CPU60からの制御信号伝送路89が制御IC85のフィードバック端子FBに直接に接続している点が図22の回路と異なり、それ以外の要素は共通している。制御IC85は、CPU60から送られた電圧制御用信号に応じてスイッチングトランジスタ82をオンオフ制御する。この図25のタイプの回路では、PWM(Pulse Width Modulation)制御やPFM(Pulse Frequency Modulation)制御を用いてステッピングモータSMに供給する駆動エネルギーを変更することができる。
周知の通り、PWM制御は、単位パルスを複数の矩形波(分割パルス)に時分割し、矩形波の1周期とHighパルス側の比率(パルス幅、デューティー比)を変化させることによって駆動エネルギーを制御するものである。つまり、所望の駆動エネルギーよりも、実際の駆動エネルギーが低下するとデューティー比を大きくし,上昇するとデューティー比を小さくすることによって,所望の駆動エネルギーを保つことができる。この機能を応用し、ステッピングモータSMに供給する駆動エネルギーの大きさを変えるためにデューティー比を変化させるように、CPU60が制御IC85を制御する。すなわち、図21における駆動エネルギーP5が必要な手振れ状態のときには、図26(A)に示すようにデューティー比を最大にしてステッピングモータSMに供給するエネルギーを大きくする。逆に、図21における駆動エネルギーP1で足りる手振れ状態のときには、図26(B)に示すようにデューティー比を最小にしてステッピングモータSMに供給するエネルギーを小さくする。図26(A)、(B)ではデューティー比が最大の場合と最小の場合のみを示しているが、その中間のデューティー比に設定することによって、図21のP2、P3、P4に対応する駆動エネルギーにも任意に設定することができる。
また、PFM制御は、単位パルスを複数の矩形波(分割パルス)に時分割し、Highパルス側の時間(幅)を固定、Lowパルス側の時間(幅)を可変にして出力電圧を制御するものであり、端的に言えば単位パルスあたりのスイッチング周波数を変化させる制御である。つまり、所望の駆動エネルギーよりも、実際の駆動エネルギーが低下すると周波数を大きくし,上昇すると周波数を小さくすることによって,所望の駆動エネルギーを保つことができる。この機能を応用し、ステッピングモータSMに供給するエネルギーの大きさを変えるために単位パルスあたりの周波数を変化させるように、CPU60が制御IC85を制御する。すなわち、図21における駆動エネルギーP5が必要な手振れ状態のときには、図27(A)に示すように周波数を最大にしてステッピングモータSMに供給するエネルギーを大きくする。逆に、図21における駆動エネルギーP1で足りる手振れ状態のときには、図27(B)に示すように周波数を最小にしてステッピングモータSMに供給するエネルギーを小さくする。図27(A)、(B)では周波数が最大の場合と最小の場合のみを示しているが、その中間の周波数に設定することによって、図21のP2、P3、P4に対応するパワーにも任意に設定することができる。
まとめると、(1)単位パルスでの出力電圧を変える、(2)単位パルスをさらに時分割した分割パルスでのデューティー比(パルス幅)を変える、(3)単位パルスをさらに時分割した分割パルスの周波数を変える、のいずれか1つ以上を用いることによってステッピングモータSMに供給するエネルギーを変更することができる。
前述のように、ステッピングモータSMの駆動に必要とされるエネルギーは起動応答周波数の大小に依存する。起動応答周波数は、単位時間あたりのステッピングモータSMの駆動量(駆動パルス数)に対応しており、この単位時間あたりの駆動量は手振れの速度(大きさ)に対応して決まる。さらにステッピングモータSMの駆動量はズームレンズ鏡筒10の撮像光学系の焦点距離の影響を受け、焦点距離が短いと駆動量が小さくなり、焦点距離が長くなると駆動量が大きくなる関係にある。したがって、ズームエンコーダ50から得られる焦点距離情報に基づいてステッピングモータSMの駆動エネルギーを変更して、消費電力を低減させることができる。
この制御を図28のフローチャートに示す。このフローチャートには手振れ補正モードを選択することで入り、以下の各ステップはCPU60で制御される。まずステップS1において、撮像光学系の焦点距離情報がズームエンコーダ50から入力される。この制御ではワイド端からテレ端までの焦点距離を5ステップに分け、焦点距離が最も短いワイド端側の焦点距離ステップをレベル1とし、焦点距離が最も長いテレ端側の焦点距離ステップをレベル5としている。ズームエンコーダ50から入力された焦点距離情報は、いずれのレベルに入るか判定される。まず最も短い(ワイド端側の)レベル1の焦点距離ステップであった場合(ステップS2のY)、モータの駆動エネルギーを最も小さいP1に設定する(ステップS3)。焦点距離がレベル1よりも長く(ステップS2のN)、2番目に小さいレベル2の範囲内であった場合には(ステップS4のY)、モータ駆動エネルギーを2番目に小さいP2に設定する(ステップS5)。以下同様に、レベル2の焦点距離ステップよりも長い場合には(ステップS4のN)、レベル3、レベル4いずれかの焦点距離ステップ内であるかを順にチェックし(ステップS6、S8)、レベル3またはレベル4のいずれかの焦点距離であれば、それぞれのレベルに対応したモータ駆動エネルギーP3またはP4に設定される(ステップS7、S9)。レベル4を超える長さの焦点距離である場合には(ステップS9のN)、最もテレ端側(長い)のレベル5の焦点距離ステップであるから、最大のモータ駆動エネルギーP5に設定される(ステップS10)。ステップS3、S5、S7、S9、S10で設定される駆動エネルギーPn(nは1〜5の任意の数字)の大きさは、対応するレベルn(nは1〜5の任意の数字)の焦点距離ステップにおいて少なくとも必要駆動トルクQN(図5)を得ることができる値であり、かつP1<P2<P3<P4<P5の関係にある。ここでの駆動エネルギーの設定及び変更は、先に説明した(1)単位パルスでの出力電圧を変える、(2)単位パルスをさらに時分割した分割パルスでのデューティー比(パルス幅)を変える、(3)単位パルスをさらに時分割した分割パルスの周波数を変える、のいずれかの手法によって行うことができる。
たとえば、(1)の手法について、図22に示す回路を用いて説明すると、CPU60は、焦点距離がレベル1の場合は,モータドライバ87へ供給する電源電圧の値を最小電圧V1に設定し、焦点距離がレベル5の場合は最大電圧V5に設定し、設定電圧に対応した電圧制御用信号を制御IC85へ出力する。そして、制御IC85は、入力された電圧制御用信号に基づいてスイッチングトランジスタ82をオンオフ制御し、モータドライバ87へ供給される電圧値を、焦点距離に対応した電圧値(V1〜V5)に制御する。そして、設定された駆動エネルギーによってステッピングモータSMが駆動されて振れ補正光学要素OVが動作し、手振れ補正が実行される(ステップS11)。前述の通り、ステップS11の手振れ補正制御では、ジャイロセンサJSから入力された角速度信号を撮像面のずれ量に変換して振れ補正光学要素OVの駆動量を決定し、ステッピングモータSMの駆動パルスを演算し、その演算値に基づいてステッピングモータSMが駆動される。ステッピングモータSMの駆動量は焦点距離変化の影響も受けるため、ステップS11では、ズームエンコーダ50で得られた焦点距離情報も加味してステッピングモータSMの駆動パルス数が演算される。手振れ補正モードにある間、以上のステップS1からステップS11までのルーチンを所定時間毎に繰り返す。なお実際には、xジャイロセンサ51と第1ステッピングモータ46を用いたx軸方向の手振れ補正と、yジャイロセンサ52と第2ステッピングモータ70を用いたy軸方向の手振れ補正とでそれぞれ別々に図28の制御を行う。
以上のように、ズームエンコーダ50で得られる焦点距離情報に応じて、電源回路からステッピングモータSMに供給するエネルギーを適宜変更することにより、電力消費を節約することができる。設定された駆動エネルギーはそれぞれ当該条件下において必要駆動トルクQN(図5)が得られるものを選択しているから、駆動エネルギーを変更しても振れ補正光学要素OVを十分な速さで移動させることができ、手振れ補正の性能は損なわれない。なお、図28では、ワイド端からテレ端までの焦点距離を5段階に変更するものとしたが、これはあくまでも一例であり、電力管理のステップはこれより多くしてもよいし、あるいは少なくすることもできる。また、図28では焦点距離情報に基づくモータ駆動エネルギーを設定してから、続くステップS11でステッピングモータSMの駆動パルス数を演算する流れになっているが、駆動エネルギーの設定前にステッピングモータSMの駆動パルス数の演算を行ってもよいし、可能であれば駆動エネルギーの設定と駆動パルス数の演算を同時進行で行ってもよい。
図21に示すように、振れ補正光学要素OVを駆動するために必要なステッピングモータSMの必要駆動トルクは、さらに温度による影響を受ける。温度が低くなると必要な駆動トルクが大きくなり(図21のQNd)、温度が高くなると必要な駆動トルクが小さくなる(同図のQNu)。そのため、前述した焦点距離の条件に加えて、温度変化も考慮してステッピングモータSMの駆動エネルギーを設定することがより好ましい。ズームレンズ鏡筒10は温度センサ53(図5、図22、図25)を備えており、CPU60は温度センサ53から入力される温度データを加味してステッピングモータSMの駆動エネルギーを設定することができる。この温度データも加味した制御態様を図29のフローチャートを参照して説明する。
図29のフローチャートでは、手振れ補正モードを選択すると、まず温度センサ53から温度データが入力され(ステップS1)、所定の温度よりも高いか否かを判定する(ステップS2)。温度が高ければ(ステップS2のY)ステップS3からステップS4に進み、ズームエンコーダ50から入力される焦点距離情報が所定値より短いか否かを判定する。焦点距離が所定値より短ければ(ステップS4のY)、最も小さい駆動エネルギーPSに設定される(ステップS5)。ステップS4で所定値より長い焦点距離であれば(ステップS4のN)、PSよりも大きい駆動エネルギーPMに設定される(ステップS6)。また、ステップS2で所定の温度よりも低ければ(ステップS2のN)ステップS7からステップS8に進み、ステップS4と同様にズームエンコーダ50から入力される焦点距離情報が所定値より短いか否かを判定する。焦点距離が所定値より短ければ(ステップS8のY)、モータ駆動エネルギーはPMに設定される(ステップS6)。一方、所定値より長い焦点距離であれば(ステップS8のN)、モータ駆動エネルギーは最大のPLに設定される(ステップS9)。そして、PS、PM、PLのいずれかに設定された駆動エネルギーによってステッピングモータSMが駆動されて振れ補正光学要素OVが動作し、手振れ補正が実行される(ステップS10)。ステップS10の手振れ補正制御では、ジャイロセンサJSの角速度信号を撮像面のずれ量に変換してCCD13gの駆動量を決定し、ステッピングモータSMの駆動パルスを演算し、その演算値に基づいてステッピングモータSMが駆動される。ステッピングモータSMの駆動パルス数の演算に際しては、ズームエンコーダ50からの焦点距離情報も加味される。ステップS5、S6及びS9でステッピングモータSMの駆動エネルギーをPS、PM、PLに設定するには、先に説明した(1)、(2)、(3)のいずれかの手法を用いればよい。なお実際には、xジャイロセンサ51と第1ステッピングモータ46を用いたx軸方向の手振れ補正と、yジャイロセンサ52と第2ステッピングモータ70を用いたy軸方向の手振れ補正とでそれぞれ別々に図29の制御を行う。
すなわち、図29の制御では、温度が高くかつ焦点距離が短いという最も負荷の小さい状態では最小の駆動エネルギーPSに設定し、温度が低くかつ焦点距離が長いという最も負荷のかかる状態では最大の駆動エネルギーPLに設定し、温度と焦点距離のいずれか一方の条件において負荷が大きく他方の条件の負荷が小さい状態では中間の駆動エネルギーPMに設定している。これによりステッピングモータSMを最適な駆動エネルギーで駆動することができ、消費電力を抑えることができる。
このように、温度変化を加味してステッピングモータSMの駆動エネルギーを設定することで、より細かな電力管理が可能となり節電効率を向上させることができる。なお、図29ではステッピングモータSMの駆動エネルギーを3段階に設定するものとしたが、これはあくまでも一例であり、電力管理のステップはこれより多くすることができる。例えば、図29ではそれぞれ2つの条件下で共通の駆動エネルギーPMに設定されるようにしているが、各条件に応じて別々の大きさの駆動エネルギーに設定することもできる。また、温度や焦点距離といった各条件のステップをより細かく設定して、さらにきめ細かい電力管理を行ってもよい。
なお、図28及び図29の制御態様では、ステッピングモータSMの駆動パルス数は、焦点距離のみならず振れ速度に応じても変化するので、ズームエンコーダ50からの焦点距離情報に加えて、図28のステップS11及び図29のステップS10の処理において、ジャイロセンサJSから出力される振れ速度情報が加味されて、ステッピングモータSMの駆動エネルギーが設定される。
以上ではレンズ非交換式のズームレンズ鏡筒10について説明したが、本発明は、ズームレンズのみならず、単焦点の交換レンズを着脱可能な一眼レフカメラなどの撮像装置にも適用が可能である。すなわち、焦点距離の異なる単焦点レンズを交換するということは、焦点距離が変わるという点において実質的にズームレンズと同じである。そのため、交換レンズ側に焦点距離情報を持たせておき、交換レンズを取り付けたときに手振れ補正の制御手段へ焦点距離情報が送られるように構成することにより、以上に説明したズームレンズの制御と同様に、焦点距離に応じてステッピングモータへ供給する駆動エネルギーを変更して消費電力の低減を図ることができる。
撮像手段として交換式の単焦点レンズを用いる態様の回路構成を図30と図31に示す。図30は図22のタイプの回路構成に対応しており、図31は図25のタイプの回路構成に対応している。図30と図31ではいずれも太枠で囲まれた部分が単焦点の交換レンズ90を示している。カメラボディ側には、撮像光学系を構成する振れ補正光学要素(OV)を光軸と直交する平面方向へ可動に支持する振れ補正移動機構91が設けられ、ステッピングモータSMの駆動力が振れ補正移動機構91に伝達される。交換レンズ90にはレンズメモリ92が設けられている。レンズメモリ92には交換レンズ90の焦点距離情報が記憶されていて、交換レンズ90をカメラボディに装着すると、レンズ側とボディ側のコネクタを経由してCPU60に焦点距離情報が送られる。そして、交換レンズ90側から入力された焦点距離情報に基づき、交換レンズ90に応じた最適な値の駆動エネルギーを設定してステッピングモータSMを駆動して手振れ補正を行う。このステッピングモータSMの駆動エネルギーを設定する具体的手法は前述した通りであるから省略する。
以上、図示実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は図示実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態ではCCD13gを含むCCDホルダ30をx軸及びy軸方向に駆動して手振れ補正を行っているが、振れ補正用の光学要素はイメージセンサを含まないレンズ群などであってもよい。
また、図22及び図25では昇圧電源回路を用いた例を示しているが、本発明では降圧電源回路を用いることも可能である。