JP2006205006A - 排気ガス浄化用触媒物質及び当該物質を固着したことによる排気ガス浄化装置 - Google Patents

排気ガス浄化用触媒物質及び当該物質を固着したことによる排気ガス浄化装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 4種類又は5種類の酸化金属の組み合わせによって、少なくとも一酸化炭素及び炭化水素について、低温度にて浄化機能を発揮するような排気ガス浄化用触媒物質及び当該触媒物質に基づく排気ガス浄化装置の構成を提供すること。
【解決手段】 (1)酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、二酸化チタン(TiO)、二酸化錫(SnO2)を素材とし、これらの素材の内、少なくとも2種類の酸化物において複合酸化物を形成していることに基づく排気ガス浄化用触媒物質、
(2)酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、二酸化チタン(SiO2)、二酸化錫(SnO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)を素材とし、これらの素材の内、少なくとも2種類の酸化物につき、複合酸化物を形成することに基づく排気ガス浄化用触媒物質。

Description

本発明は、ガソリンエンジン及びディーゼルエンジンなどが生ずる排気ガスを浄化するための触媒物質、及び当該触媒物質に基づく排気ガス浄化装置に関するものである。
排気ガスを浄化するための触媒物質については、既にこのような構成が提唱されているが、例えば、特開2004−202427号公報では、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び遷移金属を、ゼオライトを成分とするフィルター基材に担持させると共に、貴金属を当該フィルター基材に担持させることによって、窒素酸化物の浄化に一定の効果を発揮し得ることを開示している。
しかしながら、前記構成においては、複数の金属酸化物の組み合わせ(複合酸化物を含む)を必要としており、製造工程が極めて煩雑である。
同様に出願人らは、特願2004−325908号出願において、γアルミナ、又はy−ゼオライトによるフィルター基材によって、アルカリ金属酸化物、酸化アルカリ土類金属、及び遷移金属酸化物による混合物又は前記各酸化物の少なくとも一部において複合酸化物を形成している粉体を担持したことに基づく排気ガス浄化用触媒物質の構成を提唱している。
前記構成は、一酸化炭素、酸化水素及び酸化窒素の全てについて良好な浄化機能を発揮する点において、画期的な技術的意義を有しているが、前記特開2004−202427号公報に開示されている発明の場合と同様、多数の酸化物を素材としなければならない点において、製造上煩雑である旨の評価を免れることができない。
このように、従来技術においては、排気ガスを浄化するために、優れた触媒機能を発揮し得るも、多数の金属酸化物を素材とする点において、製造上の煩雑性を免れることが不可能である。
即ち、可能な限り少ない金属酸化物を素材とする排気ガスの浄化用触媒物質、更には当該触媒物質に基づく浄化装置は、これまで提唱されていない。
特開2004−202427号公報 田部浩三外2名編「金属酸化物と複合酸化物」(1986年8月1日株式会社講談社第4刷発行)
本発明は、4種類又は5種類の金属酸化物を素材とすることによって、所定の触媒機能を発揮するような排気ガス浄化用触媒物質、及び当該触媒物質に基づく排気ガス浄化装置の構成を提供することを課題としている。
上記課題を解決するため、排気ガス浄化用触媒物質に関する基本構成は、
(1)酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、二酸化チタン(TiO)、二酸化錫(SnO2)を素材とし、これらの素材の内、少なくとも2種類の酸化物において複合酸化物を形成していることに基づく排気ガス浄化用触媒物質、
(2)酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、二酸化チタン(SiO2)、二酸化錫(SnO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)を素材とし、これらの素材の内、少なくとも2種類の酸化物につき、複合酸化物を形成することに基づく排気ガス浄化用触媒物質、
からなり、排気ガス浄化装置に関する基本構成は、
(3)排気ガス通過用の空隙を有する金属担持体に、前記(1)又は(2)の排気ガス浄化用触媒物質を固着させたことによる排気ガス浄化装置、
からなる。
前記(1)、(2)、及び(3)の基本構成による本発明においては、それぞれ4種類又は5種類の金属酸化物を素材としているに過ぎないにも拘らず、少なくとも一酸化炭素、炭化水素については、極めて低い温度にて浄化機能を発揮することが可能であり、製造工程として、極めて簡便であると共に、ガソリンエンジンによる排気ガスにおいて優れた浄化作用を発揮することができる。
最初に本発明の基本原理について説明するに、酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、二酸化チタン(TiO)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)の各酸化物は、他の酸化物(前記各酸化物の内の異なる酸化物をも含む)との二元酸化物による複合酸化物は、酸化触媒と共に還元触媒としての性格を有することが知られている(前記非特許文献1の302頁〜303頁の〔C酸化還元性質〕の項参照、尚、以下酸化物の化学記号による表示を省略することがある)。
尚、以下、金属酸化物の化学記号表示を適宜省略することにする。
他方、二酸化錫が、一酸化炭素(CO)に対し、高い酸化活性を有することが知られている(前記非特許文献1の131頁B参照)。
これらの公知技術にヒントを得たうえで、様々な試行錯誤の実験の結果、前記(1)の排気ガス浄化用触媒物質においては、酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン、二酸化錫を必要な酸化物として採用し、かつ少なくとも2種類の酸化物において、複合酸化物を形成することを要件としており、前記(2)の排気ガス浄化用触媒物質においては、酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン、二酸化錫及び二酸化ジルコニウムを必要な酸化物として採用し、かつ少なくとも2種類の酸化物において、複合酸化物を形成することを要件としている。
これらの選択は、単に酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムの内の2種類を素材とした場合には、たとえ二酸化錫を加味したうえで、少なくとも2個の酸化物に基づいて複合酸化物を形成しても、浄化作用が不十分であるという実験上の経験に由来している。
即ち、前記(1)の構成のように、酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン、二酸化錫を素材とし、これらの酸化物の内の少なくとも2種類の酸化物について複合酸化物を形成している場合には、排気ガスの内、一酸化炭素(CO)、炭化水素、及び窒素酸化物の内の少なくとも一酸化窒素(NO)について良好な浄化作用が発揮されることを実験上確認し、前記(2)の構成のように、酸化アルミニウム、二酸化珪素、二酸化チタン、二酸化錫及び二酸化ジルコニウムを素材とし、これらの酸化物の内の少なくとも2種類の酸化物による複合酸化物を形成することによって、同様の効果が得られるという実験上の確認に立脚している。
前記各酸化物の相対量については、色々な実験が試みられたが、発明者の実験上の経験によれば、前記(1)の構成においては、酸化アルミニウムを10〜20重量%とし、二酸化珪素を20〜40重量%とし、二酸化チタンを20〜40重量%とし、二酸化錫を20〜40重量%とする場合が、前記浄化作用を発揮するうえで好ましく、前記(2)の構成においては、酸化アルミニウムを10〜20重量%とし、二酸化珪素を15〜35重量%とし、二酸化チタンを15〜25重量%とし、二酸化錫を15〜25重量%とし、二酸化ジルコニウムを15〜25重量%とすることが好ましいことが判明している。
前記各数値範囲の場合には、前記(1)、(2)による各触媒物質を担持させるための担持金属として、日本冶金株式会社製造の金属担持体であるメタルハニカム(直径33mm×長さ25mmの寸法による円筒形であって、1平方インチ当たり300個のメッシュを有し、かつ1時間に1Lの排気ガスを通過し得る気流量であるSV値:30000cc/Hr)に対し、前記触媒物質を約16重量%の水溶液を4回に分けて塗布し、かつ乾燥を行い、前記メタルハニカムに対し、2.6g担持するように固着したうえで、一酸化炭素(CO)0.5%、炭酸ガス(CO2)10%、多酸化窒素(NOx)を500ppm、炭化水素(HC)100ppmC、酸素を27%水蒸気とする模擬ガスを採用したうえで、1分間当り30℃づつ温度上昇を行ったところ、250℃に至った段階で、一酸化炭素及び炭化水素については、9割以上が浄化され、多酸化窒素については、250℃以降、約10%前後の浄化率を示し、500℃に至った段階にて20%の浄化率を示している。
これに対し、例えば発明者が試行錯誤の結果、開発した他の排気ガス浄化用触媒物質である酸化マグネシウム(1.64%)、酸化アルミニウム(9.35%)、二酸化珪素(5.66%)、酸化ナトリウム(2.09%)、酸化亜鉛(6.04%)、酸化カルシウム(5.43%)、二酸化チタン(5.80%)、酸化マンガン(15.56%)、酸化鉄(15.56%)、酸化コバルト(14.30%)、酸化ニッケル(3.40%)、酸化銅(5.74%)、酸化モリブデン(3.47%)、酸化錫(3.35%)、酸化セリウム(1.63%)、酸化タングステン(0.99%)の少なくとも部分的な複合酸化物による排気ガス浄化用触媒物質の場合につき、同一条件にて浄化試験を行ったところ、300℃に至って、一酸化炭素の浄化率は約95%であり、炭化水素の浄化率は約90%強であり、多酸化窒素については、350℃以降、約10%前後の浄化率を示し、500℃に至った段階にて、20%の浄化率を示している。
他方、前記模擬ガスにおいて、多酸化窒素(NOx)を一酸化窒素(NO)に等量置換した模擬ガスを採用したうえで、同様の条件にて浄化試験を行ったところ、一酸化炭素、及び炭化水素については、前記(1)、(2)による各触媒物質、及び前記他の触媒物質は、殆ど同様の浄化率を呈する一方、一酸化窒素の浄化率については、前記(1)、(2)による各触媒物質は、250℃にて約20%の浄化率を呈し、450℃にて40%の浄化率を呈した後、500℃にて約30%の浄化率に減少したのに対し、前記他の触媒物質の場合には、300℃にて約10%の浄化率であり、400℃にて約20%の浄化率であり、500℃にて30%弱の浄化率を示した。
このように、前記(1)及び(2)の基本構成による本発明においては、多酸化窒素に対する浄化率は、必ずしも高率の浄化率に至っていないが、一酸化炭素、炭化水素に対する浄化作用については、極めて低温の段階にて高率の浄化率を示し、一酸化窒素についても、相当の浄化率を示すことが判明しており、前記他の触媒物質に比し、一酸化炭素、炭化水素及び多酸化窒素、及び一酸化窒素の何れにおいても、優れた浄化作用を発揮している。
前記(1)及び(2)の構成による各触媒物質において、白金(Pt)又はロジウム(Rh)の少なくとも一方を添加した場合には、これらが酸化触媒の機能を有していることから、一酸化炭素及び炭化水素の浄化率を更に助長することが可能となるが、多酸化窒素及び一酸化窒素の浄化率については、やや低減する傾向を示している。
したがって、これらの金属を添加するか否かの点、及び添加する場合の量については、排気ガスの構成、即ち一酸化炭素、炭化水素と、多酸化窒素、一酸化窒素の含有割合に応じて、適宜選択すると良い。
以下、実験に即して、立ち入って説明する。
〔実験1〕
前記(1)の構成において、酸化アルミニウムを13.75%とし、二酸化珪素を32.5%とし、二酸化チタンを27.5%とし、二酸化錫を26.25%とする触媒物質を実験例1として用意し、これに対し、酸化マグネシウム(1.20%)、酸化アルミニウム(4.65%)、二酸化珪素(3.46%)、酸化カルシウム(3.59%)、二酸化チタン(2.85%)、酸化マンガン(21.70%)、酸化鉄(21.20%)、酸化コバルト(17.80%)、酸化ニッケル(8.89%)、酸化モリブデン(2.39%)、酸化錫(1.56%)、酸化セリウム(2.02%)、酸化ランタン(4.08%)、酸化銀(3.82%)とする触媒物質を比較例1として用意した。
前記実施形態の場合と同様の条件にて、各気体の浄化率と温度変化の関係は、以下の表1に示すとおりである。
Figure 2006205006
したがって、前記(1)の構成による実験例1は、前記比較例1に比し、一酸化炭素及び炭化水素においては、明らかに優れた浄化機能を発揮しており、多酸化窒素については、概略同程度か、やや優れた浄化機能を有することが判明する。
尚、実験例1において、酸化活性を高めるために白金とロジウムとの比率を、3:2としたうえで、全体の相対量が0.91%となるように調合したうえで、同一の試験を行ったところ、一酸化炭素、炭化水素の浄化率は、約10℃ほど低い温度にてそれぞれ同程度の浄化率を示すが、多酸化窒素及び一酸化窒素については、浄化率がやや低下すること(500℃にて約3%)が判明している。
〔実験2〕
前記(2)の基本構成として、酸化アルミニウム(10.8%)、二酸化珪素(26.0%)、二酸化チタン(21.7%)、二酸化ジルコニウム(20.8%)、二酸化錫(20.7%)としたことによる実験例2と、酸化マグネシウム(2.69%)、酸化アルミニウム(9.18%)、二酸化錫(8.94%)、酸化カリウム(5.99%)、二酸化チタン(1.87%)、酸化クロム(0.95%)、酸化マンガン(16.60%)、酸化鉄(14.30%)、酸化コバルト(6.29%)、酸化ニッケル(8.93%)、酸化銅(8.80%)、二酸化ジルコニウム(6.23%)、酸化モリブデン(3.39%)、酸化錫(1.18%)、酸化セリウム(3.10%)、酸化タングステン(1.59%)を、500℃にて焼成したことによる触媒物質である比較例2を用意した。
実験例1の場合と同様の模擬ガスを使用し、SV値を60000cc/Hrと設定し、これ以外の事項を実験例1と同一の条件に設定したうえで、浄化率に関する試験を行った結果は、以下の表2−1に記載のとおりである。
Figure 2006205006
表2−1からも明らかなように、実験例2は、比較例2よりも一酸化炭素及び炭化水素については、やや優れた浄化効率を示しているが、多酸化窒素においては、比較例2の方が良好な結果に至っている。
前記模擬ガスの内、多酸化窒素(NOx)を一酸化窒素(NO)に等量置換した模擬ガスを使用し、SV値を60000cc/Hrと設定したことによって、同一条件の浄化試験を行ったところ、一酸化炭素、及び炭化水素については、実験例2及び比較例2は共に、殆ど表2−1と同じような浄化率を示す一方、一酸化窒素の浄化率については、下記表2−2のような結果に至っている。
Figure 2006205006
上記実験結果からも明らかなように、一酸化窒素に関する浄化率においても、実験例2よりも比較例2の方が良好な結果に至っている。
これらの実験結果を考慮するならば、一酸化窒素及び多酸化窒素が少ないガソリンエンジンによる排気ガスの場合には、多数の酸化金属を採用している比較例2よりも、5種類の酸化金属を採用しているに過ぎない実験例2の方が良好であるが、逆に、一酸化窒素及び多酸化窒素が多いディーゼルエンジンの排気ガスの場合には、実験例2よりも比較例2の方が良好であることが判明する。
尚、実験例2において、酸化活性を高めるために白金とロジウムとの比率を、3:2としたうえで、全体の相対量が0.91%となるように調合したうえで、同一の試験を行ったところ、一酸化炭素、炭化水素の浄化率は、約10℃ほど低い温度にてそれぞれ同程度の浄化率を示すが、多酸化窒素及び一酸化窒素については、浄化率がやや低下すること(500℃にて約3%)が判明している。
本発明は、主としてガソリンを使用したピストンエンジンだけでなく、タービンエンジンなどにおいても適用可能であり、単に自動車産業分野だけでなく、発電装置の分野などの諸分野においても利用することが可能である。

Claims (8)

  1. 酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、二酸化チタン(TiO)、二酸化錫(SnO2)を素材とし、これらの素材の内、少なくとも2種類の酸化物において複合酸化物を形成していることに基づく排気ガス浄化用触媒物質。
  2. 酸化アルミニウム(Al2O3)を10〜20重量%とし、二酸化珪素(SiO2)を20〜40重量%とし、二酸化チタン(TiO)を20〜40重量%とし、二酸化錫(SnO2)を20〜40重量%とする請求項1記載の排気ガス浄化用触媒物質。
  3. 酸化アルミニウム(Al2O3)、二酸化珪素(SiO2)、二酸化チタン(SiO2)、二酸化錫(SnO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)を素材とし、これらの素材の内、少なくとも2種類の酸化物につき、複合酸化物を形成することに基づく排気ガス浄化用触媒物質。
  4. 酸化アルミニウム(Al2O3)を10〜20重量%とし、二酸化珪素(SiO2)を15〜35重量%とし、二酸化チタン(TiO)を15〜25重量%とし、二酸化錫(SnO2)を15〜25重量%とし、二酸化ジルコニウム(ZrO2)を15〜25重量%とする請求項3記載の排気ガス浄化用触媒物質。
  5. 白金(Pt)、又はロジウム(Rh)の少なくとも一方を添加したことを特徴とする請求項1、又は請求項3記載の排気ガス浄化用触媒物質。
  6. 白金(Pt)とロジウム(Rh)との比率を3:2としたうえで、白金(Pt)とロジウム(Rh)の合計重量が全体の約0.9%であることを特徴とする請求項5記載の排気ガス浄化用触媒物質。
  7. 排気ガス通過用の空隙を有する金属担持体に、請求項1又は請求項3記載の排気ガス浄化用触媒物質を固着させたことによる排気ガス浄化装置。
  8. 金属担持体における排気ガス通過領域が、メッシュ形状又はハニカム形状であることを特徴とする請求項7記載の排気ガス浄化装置。


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