ところで、上記のような透析装置による人工透析では、患者の血液内の浮腫液が比較的好適に除去されるけれども、患者の組織内の浮腫液は血液内へ移動することが極めて緩やかである性質があるため、透析時間が比較的長時間に設定されるのが実情であるが、それでも人工透析中において患者の組織内の浮腫液を十分に除去され難いという問題があった。また、患者が人工透析のために拘束される時間が長く、透析中に食事や排泄が必要とされる等、患者にとって煩わしいものであった。
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、生体組織内の浮腫液を好適に除去し或いは人工透析時間を短縮できる透析装置を提供することにある。
本発明者等は、以上の事情を背景として種々検討を重ねた結果、人工透析中において患者の組織を数十mmHg程度で圧迫することにより、その患者の組織内の浮腫液を血管壁を通して血液内へ積極的に移動させ得る事実を見出した。本発明は係る知見に基づいて為されたものである。
すなわち、上記目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、透析器を備え、その透析器に供給される患者の血液中から除水する透析装置であって、その該透析器による除水期間において前記患者の一部を圧迫するための圧迫装置を含むことにある。
また、請求項2に係る発明は、上記圧迫装置の圧迫圧を20mmHgよりも高い圧に保持する圧迫圧制御手段を含むことを特徴とする。
また、請求項3に係る発明は、前記圧迫装置の圧迫圧を周期的に変化させる圧迫圧制御手段を含むことを特徴とする。
また、請求項4に係る発明は、上記圧迫圧制御手段が、前記圧迫装置の圧迫圧を2乃至5秒周期で周期的に変化させるものであることを特徴とする。
また、請求項5に係る発明は、上記圧迫圧制御手段が、前記圧迫装置の圧迫圧を前記患者の呼吸周期に同期して周期的に変化させるものであることを特徴とする。
また、請求項6に係る発明は、前記圧迫圧制御手段が、前記患者の呼気に同期して前記圧迫装置の圧迫圧を高めるものであることを特徴とする。
また、請求項7に係る発明は、(a) 前記圧迫装置が、前記患者の一部に巻回される圧迫帯と、該圧迫帯に張力を発生させる膨張袋とを備えたものであり、(b) 前記圧迫圧制御手段は、その膨張袋へ供給する圧縮空気の圧力を調圧するものであることを特徴とする。
また、請求項8に係る発明は、前記圧迫装置が、(a) 前記患者の下肢に巻き付けられる一対の長円筒部を有する巻付帯と、(b) その巻付帯の一対の長円筒部に設けられ、前記圧縮空気を受け入れて前記患者の脛部を圧迫するための一対の脛部膨張袋、および該圧縮空気を受け入れて前記患者の大腿部を圧迫するための一対の大腿部膨張袋とを備えたものであることを特徴とする。
また、請求項9に係る発明は、前記圧迫圧制御手段が、前記脛部膨張袋および大腿部膨張袋のうち該脛部膨張袋に圧縮空気を先に供給開始し、次いで該大腿部膨張袋に圧縮空気を供給開始することにより、前記患者の脛部と大腿部とを所定の時間差で繰り返し圧迫するものであることを特徴とする。
請求項1に係る発明の透析装置によれば、透析器による除水期間において前記患者の一部を圧迫するための圧迫装置を含むことから、その圧迫装置により患者の組織内の浮腫液が血管壁を通して血管内へ積極的に移動させられるので、透析中においてその移動させられた患者の組織内の浮腫液も除水することができ、或いはそれによって人工透析時間を短縮できる。
また、請求項2に係る発明は、上記圧迫装置の圧迫圧を20mmHgよりも高い圧に保持する圧迫圧制御手段を含むことを特徴とする。このようにすれば、透析中において、20mmHgよりも高い圧迫圧で圧迫装置による圧迫圧が保持されることにより、患者の組織内の浮腫液が血管壁を通して血管内へ積極的に移動させられる。
また、請求項3に係る発明は、前記圧迫装置の圧迫圧を周期的に変化させる圧迫圧制御手段を含むことを特徴とする。このようにすれば、透析中において、圧迫装置の圧迫圧を周期的に変化させられることにより、患者の組織内の浮腫液が血管壁を通して血管内へ積極的に移動させられる。
また、請求項4に係る発明は、上記圧迫圧制御手段が、前記圧迫装置の圧迫圧を2乃至5秒周期で周期的に変化させるものであることを特徴とする。このようにすれば、透析中において、圧迫装置の圧迫圧が2乃至5秒周期で周期的に変化させられることにより、患者の組織内の浮腫液が血管壁を通して血管内へ積極的に移動させられる。
また、請求項5に係る発明は、上記圧迫圧制御手段が、前記圧迫装置の圧迫圧を前記患者の呼吸周期に同期して周期的に変化させるものであることを特徴とする。このようにすれば、透析中において、圧迫装置の圧迫圧が患者の呼吸周期で周期的に変化させられることにより、患者の組織内の浮腫液が血管壁を通して血管内へ積極的に移動させられる。また、呼吸周期に同期した圧迫によってその圧迫による負担が軽減される。
また、請求項6に係る発明は、前記圧迫圧制御手段が、前記患者の呼気に同期して前記圧迫装置の圧迫圧を高めるものであることを特徴とする。このようにすれば、透析中において、圧迫装置の圧迫圧が患者の呼気に同期して高められるので、圧迫に対する抵抗感が軽減され、効率的に患者の組織内の浮腫液が血管壁を通して血管内へ積極的に移動させられる。
また、請求項7に係る発明は、(a) 前記圧迫装置が、前記患者の一部に巻回される圧迫帯と、該圧迫帯に張力を発生させる膨張袋とを備えたものであり、(b) 前記圧迫圧制御手段は、その膨張袋へ供給する圧縮空気の圧力を調圧するものであることを特徴とする。このようにすれば、圧迫装置が簡単に構成されるだけでなくその圧迫装置による圧迫圧の制御が容易となる。
また、請求項8に係る発明は、前記圧迫装置が、(a) 前記患者の下肢に巻き付けられる一対の長円筒部を有する巻付帯と、(b) その巻付帯の一対の長円筒部に設けられ、前記圧縮空気を受け入れて前記患者の脛部を圧迫するための一対の脛部膨張袋、および該圧縮空気を受け入れて前記患者の大腿部を圧迫するための一対の大腿部膨張袋とを備えたものであることを特徴とする。このようにすれば、患者の透析に対する障害とならず、患者の体のうちの比較的大容積な部位を圧迫できる利点がある。
また、請求項9に係る発明は、前記圧迫圧制御手段が、前記脛部膨張袋および大腿部膨張袋のうちその脛部膨張袋に圧縮空気を先に供給開始し、次いでその大腿部膨張袋に圧縮空気を供給開始することにより、前記患者の脛部と大腿部とを所定の時間差で繰り返し圧迫するものであることを特徴とする。このようにすれば、圧迫圧制御手段によって、脛部膨張袋および大腿部膨張袋のうちその脛部膨張袋に圧縮空気が先に供給開始され、次いでその大腿部膨張袋に圧縮空気が供給開始されることにより、前記患者の脛部と大腿部とが所定の時間差で繰り返し圧迫されるので、患者の組織の圧迫と血液循環とが同時に得られる。
以下、本発明の実施例の透析装置10を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明が適用された透析装置10が透析患者すなわち生体12に装着された状態を説明する図である。
透析装置10は、透析部14、生体圧迫装置として機能する生体圧迫部16、連続血圧測定装置として機能する血圧監視部18を備えている。透析部14は、図2に示すように、一般的な透析装置と同様の構成を有しており、透析液供給装置22、透析器24、陰圧ポンプ26、排水タンク28、および血液循環ポンプ30を備えている。透析液供給装置22は、濃縮液および水を所定の比率で混合して透析液を調製する機能および調製された透析液を所定の温度に制御する温度制御装置を備えて構成されている。透析液供給装置22は配管34により透析器24と接続されており、また、透析器24と陰圧ポンプ26は配管32により接続されている。陰圧ポンプ26は、透析液供給装置22から陰圧ポンプ26までを陰圧にすることにより、透析液供給装置22に貯留された透析液を透析器24に導入させる。
また、透析器24は、配管36、血液循環ポンプ30および配管38を介して患者の図示しない橈骨動脈と接続されており、血液循環ポンプ30によって橈骨動脈からの血液が透析器24に供給される。透析器24内では、透析作用等によって患者の血液から透析液へ老廃物や水が移動するとともに、透析液から血液へ患者に必要なイオンが移動する。そして、透析器24内で浄化された血液は、配管40を介して患者の図示しない前腕皮静脈に戻される。一方、透析器24内で血液中の老廃物である浮腫液を受け取った透析液は、陰圧ポンプ26により排水タンク28に送られる。
透析装置10の透析部14の電子制御装置42は、CPU44、ROM45、RAM46、図示しないインターフェースを備えた所謂マイクロコンピュータであって、RAM46の記憶機能を利用しつつ予めROM45に記憶されたプログラムに従って入力信号を処理し、血液循環ポンプ30および陰圧ポンプ26を制御する。たとえば、設定器41に設定された目標除水率(目標除水速度)と実際の除水率(除水速度)とが一致するように陰圧ポンプ26を制御する。また、生体12の透析中において、生体組織内の浮腫液が血管壁を通して血管内へ浸み出すように、生体圧迫部16から圧迫圧を加えるように制御する。また、血圧監視部18により監視される生体12の血圧値が急低下した場合には、生体圧迫部16による圧迫圧を上昇させて血圧値を維持する。そして、電子制御装置42は、上記目標除水率および実際の除水率、生体12の血圧値、生体圧迫部16による圧迫圧等を表示器49に表示させる。
前記生体圧迫部16は、図1に示すように、圧迫するための圧縮空気を供給する圧迫駆動制御装置48と、その圧迫駆動制御装置48から圧縮空気を受け入れて膨張する膨張袋50a乃至50cとそれら膨張袋50a乃至50cが内側に設けられた巻付帯52とを有し、その膨張袋50a乃至50cに圧縮空気の供給を受けて生体12の被装着部位を圧迫する圧迫帯53とを備えている。巻付帯52は、生体12の下肢に巻き付けられる一対の長円筒部52kと、それら一対の長円筒部52kの一端に連結されて生体の腹部に巻き付けられる、その長円筒部52kよりも相対的に大径の大径円筒部52fとが連結されることによりズボン状を成すものであり、所謂ショックパンツと称されているものと同様の構成である。この長円筒部52kには、上記圧縮空気を受け入れて生体12の脛部を圧迫するための一対の膨張袋50a、上記圧縮空気を受け入れて生体の大腿部を圧迫するための一対の膨張袋50b、上記圧縮空気を受け入れて生体の腹部を圧迫するための膨張袋50cがそれぞれ備えられている。これら、膨張袋50a、50b、50cは、たとえば弾性変形が容易なゴム製の袋であり、その膨張によって巻付帯52に張力を発生させるので張力発生装置として機能している。
上記圧迫駆動制御装置48は、図3に示されるように、圧縮空気を圧送するための空気ポンプ54と、その空気ポンプ54から圧送される圧縮空気を元圧として前記膨張袋50a、膨張袋50b、膨張袋50cの圧力をそれぞれ調圧する一対の電磁調圧弁56a、一対の電磁調圧弁56b、および電磁調圧弁56cとを備えている。それら一対の電磁調圧弁56a、一対の電磁調圧弁56b、および電磁調圧弁56cの出力ポートは、可撓性チューブ58a、58b、および58cを介して前記一対の膨張袋50a、一対の膨張袋50b、膨張袋50cと接続されている。
前記血圧監視部18は、たとえば図4に示すように、圧脈波検出装置60と、上腕等に巻回されるカフ62と、電子制御装置80とを備えている。カフ62には、圧力センサ64および排気制御弁66が配管68を介して接続され、さらに排気制御弁66は、配管70により空気ポンプ72に接続されている。排気制御弁66は、空気ポンプ72において発生させられた圧力の高い空気をカフ62内へ供給することを許容する供給許容状態、カフ62内の圧力を維持する圧力維持状態、カフ62内を徐々に排圧する徐速排圧状態、およびカフ62内を急速に排圧する急速排圧状態の4つの状態に切り替えられるように構成されている。
圧力センサ64は、カフ62内の圧力P K を検出してその圧力P K を表す圧力信号SPを静圧弁別回路74および脈波弁別回路76にそれぞれ供給する。静圧弁別回路74はローパスフィルタを備えており、圧力信号SPに含まれる定常的な圧力すなわちカフ62の圧迫圧力(以下、この圧をカフ圧PCという)を表すカフ圧信号SCを弁別してそのカフ圧信号SCをA/D変換器78を介して電子制御装置80へ供給する。脈波弁別回路76はバンドパスフィルタを備えており、圧力信号SPの振動成分であるカフ脈波信号SM1 を弁別してそのカフ脈波信号SM1 をA/D変換器82を介して電子制御装置80へ供給する。このカフ脈波信号SM1 は、カフ62により圧迫される図示しない上腕動脈からカフ62に伝達される圧力振動であることからカフ脈波CWを表す。
上記電子制御装置80は、CPU84,ROM86,RAM88,およびインターフェース90等を備えた所謂マイクロコンピュータにて構成されており、CPU84は、ROM86に予め記憶されたプログラムに従ってRAM88の記憶機能を利用しつつ信号処理を実行することにより、インターフェース90から駆動信号を出力して図示しない駆動回路を介して排気制御弁66および空気ポンプ72を制御して、血圧測定のためにカフ62内の圧力を制御し、カフ脈波信号SM1 が表すカフ脈波CWの変化に基づいてオシロメトリック法により最高血圧値BPSYS および最低血圧値BPDIA などの血圧値BPを決定し、その決定した血圧値BPを表示器93に表示させる。
前記圧脈波検出装置60は、図5に詳しく示すように、容器状を成すセンサハウジング92と、そのハウジング92を収容するケース94と、センサハウジング92を橈骨動脈96の幅方向に移動させるためにそのセンサハウジング92に螺合され且つケース94の駆動部98内に設けられた図示しないモータによって回転駆動されるねじ軸100とを備えている。また、上記ケース94には装着バンド102が取り付けられている。
このように構成された圧脈波検出装置60は、センサハウジング92の開口端が体表面104に対向する状態で装着バンド102により手首106に着脱可能に取り付けられるようになっている。なお、圧脈波検出装置60が取り付けられる手首106は、カフ62が装着されている側の手首すなわち配管38、40が静脈に接続されていない手首である。
上記センサハウジング92の内部には、圧脈波センサ108が、ダイヤフラム110を介してセンサハウジング92に対して相対移動可能かつセンサハウジング92の開口端から突出し可能に設けられており、これらセンサハウジング92およびダイヤフラム110等によって圧力室112が形成されている。この圧力室112内には、図4に示すように、空気ポンプ114から調圧弁116を経て圧力の高い空気が供給されるようになっており、これにより、圧脈波センサ108は圧力室112内の圧力に応じた押圧力HDP(Hold Down Pressure) で体表面74に押圧させられる。
上記センサハウジング92およびダイヤフラム110は、圧脈波センサ108を橈骨動脈96に向かって押圧する押圧装置を構成しており、ねじ軸100および図示しないモータは、圧脈波センサ108が体表面104に向かって押圧させられる押圧位置を、橈骨動脈96の幅方向に移動させる幅方向移動装置を構成している。
上記圧脈波センサ108の押圧面114には、図6に示すように、多数の半導体感圧素子(以下、単に感圧素子という)E が、橈骨動脈96の幅方向すなわちねじ軸100と平行な圧脈波センサ108の移動方向において、橈骨動脈96の直径よりも長くなるように、且つ一定の間隔(たとえば0.2mm 間隔)で配列されている。
このように構成された圧脈波検出装置60が、手首106の体表面104上から橈骨動脈96に向けて押圧されると、圧脈波センサ108により、橈骨動脈96から発生して体表面104に伝達される圧脈波PW(橈骨動脈波)が検出され、図4に示すように、圧脈波PWを表す圧脈波信号SM2 がA/D変換器95を介して電子制御装置80へ供給される。
電子制御装置80は、前述したカフ62内の圧力の制御、血圧値BPの決定に加え、さらに、空気ポンプ115および調圧弁116へ図示しない駆動回路を介して駆動信号を出力して圧力室112内の圧力の調節も行う。すなわち、電子制御装置80は、血圧値推定のための圧脈波PWの検出に先立って、圧力室112内の徐速圧力変化過程で逐次得られる圧脈波PWに基づいて、橈骨動脈96の血管壁の一部を略平坦とするための圧脈波センサ108の最適押圧力HDPOを決定し、その最適押圧力HDPOを維持するように調圧弁116を制御する。次いで、電子制御装置80は、カフ脈波信号SM1 が表すカフ脈波CWの変化に基づいてオシロメトリック法により測定された実際の最高血圧値BPSYS および最低血圧値BPDIA と上記実際の圧脈波PWとから、それらの関係を例えば図7に示すように決定して記憶し、その関係からそれ以後に検出される圧脈波PWに基づいて、1拍毎或いは数拍毎に推定血圧すなわち推定最高血圧値 EBPSYS および推定最低血圧値 EBPDIA を決定する。なお、図7において、PWmax は圧脈波PWの極大値(上ピーク値)、PWmin は圧脈波PWの極小値(下ピーク値)を示している。
図8は、上記電子制御装置42の制御機能の要部を示す機能ブロック図である。電子制御装置42は、透析器24における実際の除水率を、たとえば単位時間当たりの血液流入量と流出量との差に基づいて算出する除水率算出手段120と、設定器41において予め一定に或いは時間プログラム的に設定された目標除水率と上記実際の除水率との差を解消するためのポンプ26の駆動操作量を算出する演算制御手段122とを備え、目標除水率と上記実際の除水率との差が解消されるようにポンプ26の回転速度を制御する。
また、圧迫モード設定手段124は、透析中において生体圧迫部16から加える圧迫モードを予め複数種類記憶し、図示しない入力装置により選択操作入力信号に基づいて圧迫モードを選択する。圧迫圧制御手段126は、透析中において、その圧迫モード設定手段124により設定された圧迫モードで透析中の生体12に対して圧迫を加える。圧迫圧制御手段126は、たとえば圧迫モード設定手段124によって一定圧圧迫モードが設定された場合には、巻付帯52全体の圧迫圧或いは巻付帯52の膨張袋50a、50bによる圧迫圧が20mmHgよりも高い値たとえば30乃至50mmHgの範囲内に設定された一定値に保持されるように圧迫駆動制御装置48を駆動制御する。また、圧迫圧制御手段126は、たとえば圧迫モード設定手段124によって周期圧迫モードが設定された場合には、巻付帯52全体の圧迫圧或いは巻付帯52の膨張袋50a、50bによる圧迫圧が0乃至20mmHgの極小値と30乃至50mmHgの極大値との間で、たとえば2乃至5秒の周期、或いは生体12の呼吸周期に同期した周期で、周期的に変化させられるように圧迫駆動制御装置48を駆動制御する。また、圧迫圧制御手段126は、たとえば圧迫モード設定手段124によって周期圧迫モード内の揉み上げ圧迫モードが設定された場合には、前記脛部膨張袋50aおよび大腿部膨張袋50bのうちその脛部膨張袋50aに圧縮空気を先に供給開始し、次いでその大腿部膨張袋50bに圧縮空気を供給開始することにより、生体12の脛部と大腿部とを所定の時間差で繰り返し圧迫する。
血圧低下判定手段130は、血圧監視部18により逐次検出される血圧値の変化量或いは変化率を算出し、その血圧値の変化量或いは変化率が予め設定された判定値を超えたことに基づいて生体12の血圧低下を判定する。血圧維持手段132は、血圧低下判定手段130によって生体12の血圧低下が判定されると、巻付帯52全体の膨張袋50a 、50b、50cに最高血圧値程度の比較的高い圧力たとえば180mmHg程度の圧縮空気が供給されるように圧迫駆動制御装置48を駆動制御する。
図9乃至図13は、上記電子制御装置42の制御作動の要部を示すフローチャートであり、図9は一定圧圧迫モードが設定されている場合に実行される圧迫圧制御を、図10は周期圧迫モードが設定されている場合の圧迫圧制御を、図11乃至13は図10の周期的圧迫制御ルーチンの一例を、それぞれ示している。
図9において、ステップ(以下、ステップを省略する)SA1は透析中判定手段に対応するものであり、そのSA1では、透析中であるか否かが、たとえば前記透析部14の起動信号或いは作動信号の有無に基づいて判断される。このSA1の判断が否定される場合はこのルーチンが繰り返し実行されるが、肯定される場合は、前記圧迫圧制御手段126に対応するSA2において、生体12の組織内の浮腫液を血管壁を通して血管内へ積極的に移動させるために、巻付帯52全体の圧迫圧或いは巻付帯52の膨張袋50a、50bによる圧迫圧が20mmHgよりも高い値たとえば30乃至50mmHgの範囲内に設定された一定値に保持されるように圧迫駆動制御装置48が駆動制御され、透析中において生体12の腹部および下肢或いは下肢が一定圧で圧迫される。
図10において、SB1では、SA1と同様に、透析中であるか否かが判断される。このSB1の判断が否定される場合はこのルーチンが繰り返し実行されるが、肯定される場合は、前記圧迫圧制御手段126に対応するSB2の周期的圧迫制御ルーチンが実行される。図11はこの周期的圧迫制御ルーチンを示すものである。図11のSB21では、所定の待機時間が経過したか否かが判断される。このSB21の判断が否定される場合は本ルーチンが繰り返し実行されるが、上記所定の待機時間が経過してSB21の判断が肯定されると、SB22において、巻付帯52全体の圧迫圧或いは巻付帯52の膨張袋50a、50bによる圧迫圧が所定の圧迫時間だけ極小値から所定の極大値に高められる。このようなSB21およびSB22が繰り返し実行されることによって、上記待機時間と圧迫時間とを加えた周期で生体12の腹部および下肢或いは下肢が繰り返し周期的に圧迫される。このとき、巻付帯52全体の圧迫圧或いは巻付帯52の膨張袋50a、50bによる圧迫圧が0乃至20mmHgの極小値と30乃至50mmHgの極大値との間で、たとえば2乃至5秒の範囲内で定められた一定の周期で、周期的に変化させられるように圧迫駆動制御装置48が駆動制御される。
図12は、上記図11に示される周期的圧迫制御ルーチンの他の例を示すものである。この図12のSB23では、巻付帯52の膨張袋50bによる大腿部圧迫期間の終了状態であるか否かが、たとえば大腿部の圧迫開始からの経過時間に基づいて判断される。当初はこのSB23の判断が肯定されるので、SB24において巻付帯52の膨張袋50aによる脛部の圧迫が予め設定された圧迫期間だけ実行される。次いで、SB25では、巻付帯52の膨張袋50aによる脛部の圧迫期間の終了状態であるか否かが、たとえば脛部の圧迫開始からの経過時間に基づいて判断される。このSB25の判断が否定されるうちは上記SB24における脛部の圧迫が継続されるが、肯定されると、SB26において、巻付帯52の膨張袋50bによる大腿部の圧迫が予め設定された圧迫期間だけ実行される。そして、上記SB23以下が繰り返し実行されることにより、上記脛部圧迫期間と大腿部圧迫期間とを加えた周期で下肢の脛部とそれに続く大腿部とが順次且つ繰り返し圧迫される。すなわち、生体12の下肢における揉み上げモードによる圧迫が行われる。上記の周期は、図11はこの周期的圧迫制御ルーチンにおける周期と同様或いはその2乃至3倍の周期に設定され、また上記の圧迫圧は、図11はこの周期的圧迫制御ルーチンにおける圧迫圧と同様に、0乃至20mmHgの極小値と30乃至50mmHgの極大値との間で繰り返し変化させられる。
図13は、上記図11に示される周期的圧迫制御ルーチンの他の例を示すものである。この図13のSB27では、生体12の1呼吸の発生の判定が実行される。この1呼吸の発生の判定は、呼吸の影響を受けて周期的に変化する脈間時間や連続的に得られる最高血圧値の周期的変化の極小値、極大値、最大傾斜値の検出に基づいて実行されるが、胸郭周囲長の変動を検知する呼吸センサ、鼻孔から排出される呼気流を検知する呼気センサ、胸郭インピーダンスを検知するインピーダンス計などが用いられてもよい。
上記このSB27の判断が否定されるうちは本ルーチンが繰り返し実行されることによって待機させられるが、そのSB27の判断が肯定されると、SB28において、巻付帯52全体の圧迫圧或いは巻付帯52の膨張袋50a、50bによる圧迫圧が20mmHgよりも高い値たとえば30乃至50mmHgの範囲内に設定された一定値に保持されるように圧迫駆動制御装置48が駆動制御され、透析中において生体12の腹部および下肢或いは下肢が一定圧で所定時間の圧迫が行われる。これにより、生体12の呼吸周期に同期した周期で、生体12の腹部および下肢或いは下肢が周期的に圧迫される。たとえば、上記SB27において生体12の呼気の開始が検出されると、その呼気期間にそれと同等の期間だけ圧迫するように圧迫駆動制御装置48を駆動制御して、生体12の呼気期間に略同期して生体12の下肢を周期的に圧迫させることができる。
上述のように、本実施例の透析装置10によれば、透析器24による除水期間において生体(患者)12の一部を圧迫するための圧迫部(圧迫装置)16を含むことから、その圧迫部16により生体12の組織内の浮腫液が血管壁を通して血管内すなわち血液内へ積極的に移動させられるので、透析中においてその移動させられた患者の組織内の浮腫液も除水することができ、或いはそれによって人工透析時間を短縮できる。
また、本実施例の透析装置10によれば、上記圧迫部16の圧迫圧が20mmHgよりも高い圧に保持する圧迫圧制御手段126が備えられていることから、透析中において、20mmHgよりも高い圧迫圧で圧迫部16による圧迫圧が保持されるので、生体12の組織内の浮腫液が血管壁を通して血管内へ積極的に移動させられる。
また、本実施例の透析装置10によれば、上記圧迫部16の圧迫圧を周期的に変化させる圧迫圧制御手段126が備えられていることから、透析中において、圧迫部16の圧迫圧が周期的に変化させられるので、生体12の組織内の浮腫液が血管壁を通して血管内へ積極的に移動させられる。
また、本実施例の透析装置10によれば、上記圧迫圧制御手段126が圧迫部16の圧迫圧を2乃至5秒周期で周期的に変化させるものであることから、透析中において、圧迫部16の圧迫圧が2乃至5秒周期で周期的に変化させられるので、生体12の組織内の浮腫液が血管壁を通して血管内へ積極的に移動させられる。
また、本実施例の透析装置10によれば、上記圧迫圧制御手段126が圧迫部16の圧迫圧を生体12の呼吸周期に同期して周期的に変化させるものであることから、透析中において、圧迫部16の圧迫圧が生体12の呼吸周期に同期して周期的に変化させるので、生体12の組織内の浮腫液が血管壁を通して血管内へ積極的に移動させられる。また、その呼吸周期の圧迫によってその圧迫による生体12の負担が軽減される。
また、本実施例の透析装置10によれば、前記圧迫圧制御手段が、前記患者の呼気に同期して前記圧迫装置の圧迫圧を高めるものであることを特徴とする。このようにすれば、透析中において、圧迫部16の圧迫圧が生体12の呼気に同期して高められるので、圧迫に対する生体12の抵抗感が軽減され、効率的に生体12の組織内の浮腫液が血管壁を通して血管内へ積極的に移動させられる。
また、本実施例の透析装置10によれば、(a) 前記圧迫部16が、生体12の一部に巻回される圧迫帯52と、その圧迫帯52に張力を発生させる膨張袋(空気袋)50a、50b、50cとを備えたものであり、(b) 前記圧迫圧制御手段126は、その膨張袋(空気袋)50a、50b、50cへ供給する圧縮空気の圧力を調圧するものであるので、圧迫部16が簡単に構成されるだけでなくその圧迫部16による圧迫圧の制御が容易となる。
また、本実施例の透析装置10によれば、圧迫部16が、(a) 生体12の下肢に巻き付けられる一対の長円筒部52kを有する巻付帯52と、(b) その巻付帯52の一対の長円筒部52kに設けられて圧縮空気を受け入れて生体12の脛部を圧迫するための一対の脛部膨張袋50a、およびその圧縮空気を受け入れて生体12の大腿部を圧迫するための一対の大腿部膨張袋50bとを備えたものであることから、生体12の透析に対する障害とならず、生体12の体のうちの比較的大容積な部位を圧迫できる利点がある。
また、本実施例の透析装置10によれば、圧迫圧制御手段126が、脛部膨張袋50aおよび大腿部膨張袋50bのうちその脛部膨張袋50aに圧縮空気を先に供給開始し、次いでその大腿部膨張袋50bに圧縮空気を供給開始することにより、生体12の脛部と大腿部とを所定の時間差で繰り返し圧迫するものであることから、生体12の脛部と大腿部とが所定の時間差で繰り返し圧迫される揉み上げが実施されるので、生体12の組織の圧迫と血液循環とが同時に得られる。
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
たとえば、前記生体圧迫部16は、生体12の腹部および下肢を圧迫するように構成されていたが、下肢を圧迫するものや上肢を圧迫するものなどであってもよい。また、巻付帯52において、その膨張袋50a、50b、50cは、相互に接続されていてもよいし、1個の膨張袋から構成されてもよい。反対に、さらに細分化された複数の膨張袋が備えられていてもよい。
また、前述の実施例において、血圧低下判定手段130および血圧維持手段132に替えて、血圧監視部18により逐次検出される血圧値が予め設定された目標血圧値となるように圧迫駆動制御装置48を駆動する自動血圧制御手段が設けられていてもよい。このように自動血圧制御手段が設けられる場合は、血圧監視部18により血圧関連値(たとえば推定最高血圧値 EBPSYS )と予め設定された目標値(たとえば目標血圧値BPM )との差が解消されるように生体圧迫部16の圧迫状態を調節するものであるので、生体の血圧が高い精度で制御される。このとき、生体圧迫部16は、生体12の腹部および下肢を圧迫するためにその生体12の腹部および下肢に装着されるものであるので、血液容積が大きい腹部および下肢の圧迫によって、血液が脳などの生体中枢部へ十分に供給されることができる。
また、反対に、前述の実施例において、血圧監視部18、血圧低下判定手段130、血圧維持手段132は必ずしも設けられていなくてもよい。
なお、本発明はその主旨を逸脱しない範囲においてその他種々の変更が加えられ得るものである。