JP2006200003A - 熱処理品および熱処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 研削部および非研削部の双方で優れた疲労強度を有する熱処理品およびその熱処理品を得るための熱処理方法を提供する。
【解決手段】 鋼材が780℃以上900℃以下の温度で浸炭窒化処理される。浸炭窒化処理された鋼材が窒素を含まない雰囲気下にて780℃以上900℃以下の温度で加熱拡散処理される。加熱拡散処理後の鋼材が焼入れられる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、熱処理品および熱処理方法に関し、特に、鋼材の浸炭窒化処理の工程を含む熱処理方法およびその方法により製造された熱処理品に関するものである。
鋼材の熱処理方法として、焼入れ加熱時の雰囲気RXガス中にアンモニアガスを添加するなどして、鋼材の表層部に浸炭窒化処理を施す方法がある(たとえば特開平8−4774号公報、特開平11−101247号公報)。この浸炭窒化処理を用いることにより、ミクロ組織中に残留オーステナイトを生成させ、鋼材の疲労強度を向上させることができる。
特開平8−4774号公報 特開平11−101247号公報
上記の鋼材を機械部品に用いる場合には、上記の熱処理後に鋼材を研削や仕上げ工程によって寸法精度を高める必要がある。このため、熱処理工程時には、研削や仕上げ工程による取代分(研削分など)を考慮した深さまで鋼材を窒化する必要がある。
しかしながら、上記の鋼材に対する浸炭窒化処理では、その処理条件設定の目標値が曖昧であったことや、窒素濃度分布が不完全であったことに起因して、浸炭窒化処理時間を不要に長くしていた。このため、鋼材には不完全焼入れ組織が生じたり、また析出物消失層が発生したりして、非研削部の疲労強度が低下するという問題があった。
それゆえ本発明の目的は、研削部および非研削部の双方で優れた疲労強度を有する熱処理品およびその熱処理品を得るための熱処理方法を提供することである。
本発明の熱処理方法は、鋼材を780℃以上900℃以下の温度で浸炭窒化処理する工程と、浸炭窒化処理された鋼材を窒素を含まない雰囲気下にて780℃以上900℃以下の温度で加熱拡散処理する工程と、加熱拡散処理後の鋼材を焼入れする工程とを備えている。
本発明の熱処理方法によれば、浸炭窒化処理により鋼材の表層に窒素を導入することができる。この後、所定の温度で加熱拡散処理を施すことにより、鋼材の表層に導入された窒素を内部へ十分に拡散させることができる。これにより、鋼材内における窒素の濃度分布を、表層側から内部側に向けてなだらかな分布とすることができる。このため、研削により鋼材の表面を加工した場合に、研削部の表面における窒素濃度を高くしながら、非研削部の表面における窒素濃度が過度に高くなることを抑制することが可能となる。よって、非研削部の表面において窒素濃度が高くなりすぎることに起因した不完全焼入れ組織の発生や析出物消失層の発生を防止でき、非研削部の疲労強度を向上させることができる。
加熱拡散処理の温度が780℃未満では窒素の拡散係数が低くなりすぎて、加熱拡散処理時に窒素を鋼材内部へ十分に拡散させることができず、鋼材内における窒素の濃度分布を表層側から内部側に向けてなだらかな分布とすることができない。このため、加熱拡散処理の温度は780℃以上であることが必要である。また加熱拡散処理の温度が900℃を超えると窒素層の析出物が消失しやすくなる。このため、加熱拡散処理の温度は870℃以下であることが必要である。
上記の熱処理方法において好ましくは、鋼材はC(炭素)を0.95質量%以上1.10質量%以下、Si(シリコン)を0.15質量%以上0.35質量%以下、Mn(マンガン)を0.50質量%以下、P(リン)を0.025質量%以下、S(硫黄)を0.025質量%以下、Cr(クロム)を1.30質量%以上1.60質量%以下含む。
上記の熱処理方法は、上記の組成の鋼材において研削部および非研削部の双方で優れた疲労強度を有する熱処理品を得るうえで特に好ましい。
上記の熱処理方法において好ましくは、浸炭窒化処理した後に冷却せずに加熱拡散処理が行なわれる。
これにより、浸炭窒化処理から連続的に加熱拡散処理を施すことができ、工程を簡略化することができる。
上記の熱処理方法において好ましくは、浸炭窒化処理した後に一旦冷却が行なわれ、その後に加熱拡散処理が行なわれる。
これにより、浸炭窒化処理が修了した後で鋼材を炉内から取り出したりすることも可能となる。
本発明の熱処理品は、Cを0.95質量%以上1.10質量%以下、Siを0.15質量%以上0.35質量%以下、Mnを0.50質量%以下、Pを0.025質量%以下、Sを0.025質量%以下、Crを1.30質量%以上1.60質量%以下含む鋼材よりなり、その鋼材の非研削部の最表面における窒素濃度が0.1質量%以上0.5質量%以下であり、かつ前記最表面から0.2mmの深さ位置における窒素濃度が0.05質量%以上であることを特徴とするものである。
本発明の熱処理品においては、上記組成の鋼材の非研削部の最表面における窒素濃度を0.1質量%以上0.5質量%以下に、かつ前記最表面から0.2mmの深さ位置における窒素濃度を0.05質量%以上にすることができる。このように鋼材内における窒素の濃度分布を、表層側から内部側に向けてなだらかな分布とすることができる。このため、研削により鋼材の表面を加工した場合に、研削部の表面における窒素濃度を高くしながら、非研削部の表面における窒素濃度が過度に高くなることを抑制することが可能となる。よって、非研削部の表面において窒素濃度が高くなりすぎることに起因した不完全焼入れ組織の発生や析出物消失層の発生を防止でき、非研削部の疲労強度を向上させることができる。
上記の熱処理品において好ましくは、最表層に平均粒径4μm未満の析出物が存在し、かつ平均粒径4μm以上の巨大析出物が存在しない。
このように窒素濃度が高くなりすぎることに起因した不完全焼入れ組織の発生や析出物消失層の発生を防止することができる。
以上説明したように本発明の熱処理品およびそれを得るための熱処理方法によれば、研削により鋼材の表面を加工した場合に、研削部の表面における窒素濃度を高くしながら、非研削部の表面における窒素濃度が過度に高くなることを抑制することが可能となるため、非研削部の表面において窒素濃度が高くなりすぎることに起因した不完全焼入れ組織の発生や析出物消失層の発生を防止でき、非研削部の疲労強度を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施の形態における熱処理方法を説明するために時間と温度との関係を示す図である。図1を参照して、本実施の形態における熱処理方法においては、まず所定の組成の鋼材が準備される。この組成は、たとえばCを0.95質量%以上1.10質量%以下、Siを0.15質量%以上0.35質量%以下、Mnを0.50質量%以下、Pを0.025質量%以下、Sを0.025質量%以下、Crを1.30質量%以上1.60質量%以下含み、残部がFeおよび不可避不純物からなる組成である。
この鋼材に780℃以上900℃以下の温度で浸炭窒化処理が施される。この浸炭窒化処理は、炭素および窒素を含む雰囲気下にて行なわれる。窒素を含む雰囲気は、たとえばRXガスにNH3を添加した雰囲気であり、NH3添加量(RXガスに対するNH3の体積比率)はたとえば0.5%以上20%未満である。また雰囲気中にH2が含まれていてもよい。この浸炭窒化処理にて800℃以上870℃以下の温度で保持される時間は、たとえば30分以上150分以下である。この浸炭窒化処理により、鋼材の素地の表層に窒素が導入されるとともに、炭素の溶け込みが十分に行なわれる。
なお、上記のNH3の添加量は、NH3添加量={(標準状態のNH3の単位時間当たりの流入体積)×100}/{(標準状態のRXガスの単位時間当たりの流入体積)+(標準状態のNH3の単位時間当たりの流入体積)}の式に基づいて導出した値である。
この浸炭窒化処理された鋼材に、窒素を含まない雰囲気(たとえばNH3の添加量が0%の雰囲気)下にて780℃以上900℃以下の温度で加熱拡散処理が施される。この加熱拡散処理にて780℃以上900℃以下の温度で保持される時間は、たとえば30分以上150分以下であり、好ましくは70分以上90分以下である。この加熱拡散処理により、鋼材表層に導入された窒素を鋼材の内部側へ十分に拡散させることができる。これにより、鋼材内における窒素の濃度分布を、表層側から内部側に向けてなだらかな分布とすることができる。
この加熱拡散処理された鋼材に焼入れが施される。この焼入れの後には焼戻しが行なわれてもよいが、この焼戻しは省略することができる。また一連の熱処理が終了した後に、研削などの加工が施されることが好ましい。
上記の熱処理においては図1に示すように浸炭窒化処理と加熱拡散処理とは、それらの処理の間に冷却工程を挟まずに連続して行なわれてもよい。また図2に示すように浸炭窒化処理の後に一旦、冷却されてから加熱拡散処理が施されてもよい。図1および図2のいずれの場合においても、浸炭窒化処理時の加熱温度と加熱拡散処理の加熱温度との双方は、780℃以上900℃以下の温度範囲内の温度であれば同一の温度であってもよく、異なる温度であってもよい。
次に、上記の熱処理方法により得られた熱処理品の窒素濃度分布について従来例と比較して説明する。
図3は従来例の浸炭窒化処理を施した熱処理品における窒素濃度分布を示す図であり、図4は本発明の一実施の形態における熱処理品における窒素濃度分布を示す図である。
図3を参照して、従来例のように浸炭窒化処理後すぐに焼入れを行なった熱処理品では、鋼材の非研削部の最表面における窒素濃度が0.8質量%程度であり、かつ最表面から0.2mmの深さ位置における窒素濃度が0.1質量%未満である。このように従来例の浸炭窒化処理を施した熱処理品では、鋼材の非研削部の最表層から内部側へ向けて急激に窒素濃度が増加している。このため、研削部にて所定の窒素濃度を得ようとすると、非研削部における窒素濃度が高くなる。
これに対して上記の熱処理方法により得られた本実施の形態の熱処理品では、図4に示すように鋼材の非研削部の最表面における窒素濃度が0.1質量%以上0.5質量%以下であり、かつ最表面から0.2mmの深さ位置における窒素濃度が0.05質量%以上であり、かつ最表面から0.4mmの深さ位置における窒素濃度が0.01質量%以上である。このように本実施の形態の熱処理品では、浸炭窒化処理後の加熱拡散処理によって窒素が拡散することで、鋼材内の非研削部の最表層から内部側への窒素濃度分布が従来例と比較してなだらかになる。これにより、研削部にて所定の窒素濃度を得ようとしても、非研削部における窒素濃度が過度に高くなることを防止できる。
また本実施の形態の熱処理品では、不完全焼入れ組織は発生しておらず、最表層に平均粒径4μm未満の析出物が存在し、かつ平均粒径4μm以上の巨大析出物が存在していない。
また非研削部か否かは黒皮(酸化皮膜)の有無により判別することができる。つまり、非研削部には熱処理時に生じる黒皮が残存しているのに対して、研削部では研削により黒皮が除去されるため黒皮が残存していない。
この鋼材は、たとえばCを0.95質量%以上1.10質量%以下、Siを0.15質量%以上0.35質量%以下、Mnを0.50質量%以下、Pを0.025質量%以下、Sを0.025質量%以下、Crを1.30質量%以上1.60質量%以下含む鋼材である。
なお鋼材中の窒素濃度は、たとえばEPMA(波長分散型X線マイクロアナライザ)で測定することができる。
本実施の形態によれば、上述したように浸炭窒化処理により鋼材の表層に窒素を導入することができる。この後、所定の温度で加熱拡散処理を施すことにより、鋼材の表層に導入された窒素を内部へ十分に拡散させることができる。これにより、鋼材内における窒素の濃度分布を、たとえば図4に示すように表層側から内部側に向けてなだらかな分布とすることができる。このため、研削により鋼材の表面を加工した場合に、研削部の表面における窒素濃度を高くしながら、非研削部の表面における窒素濃度が過度に高くなることを抑制することが可能となる。よって、非研削部の表面において窒素濃度が高くなりすぎることに起因した不完全焼入れ組織の発生や析出物消失層の発生を防止でき、非研削部の疲労強度を向上させることができる。
また鋼材の表層に窒素が導入されているため、表層に存在する窒素と炭素とにより焼入れ後の表層部の圧縮応力を一層大きくでき、また窒素による表層の焼戻し抵抗性増大の好影響も出るため、一層、高強度・長寿命にすることができる。
すなわち、浸炭窒化処理で表層に窒素を導入すると、表面層のMs点(マルテンサイト変態開始温度)が低くなり、これを焼入れすると表層に未変態のオーステナイトが多く残留する。残留オーステナイトは、高い靭性と加工硬化特性とを有し、亀裂の発生や進展を抑える働きをする。また、Ms点が低下した表層は、マルテンサイト変態が内部よりも遅れて始まるので、表層には圧縮の残留応力が形成され、表層の疲労強度が向上する。また浸炭窒化による窒素の侵入は耐熱性の付与の点でも有利である。
次に本発明の実施例について説明する。
まず、Cを0.99質量%、Siを0.26質量%、Mnを0.44質量%、Pを0.012質量%、Sを0.006質量%、Crを1.46質量%含む鋼材を準備した。この鋼材を、図1に示すようにNH3を1.7%の添加量(RXガス体積比率)で含む雰囲気下にて、850℃、150分の条件で浸炭窒化処理した後に、引き続きNH3を含まない雰囲気下にて、850℃、75分の条件で加熱拡散処理をし、その後に焼入れした。この熱処理を施した鋼材を本発明例の鋼材と称する。
また上記組成の鋼材を、NH3を1.7%の添加量(RXガス体積比率)で含む雰囲気下にて、850℃、150分の条件で浸炭窒化処理した直後に焼入れしたものを比較例の鋼材と称する。
この本発明例の鋼材と比較例の鋼材との各々について表層部の金属組織をピクラル腐食した後に電子顕微鏡で観察するとともに、表層部の窒素濃度および炭素濃度をEPMAで測定した。その結果、従来の浸炭窒化処理を施した比較例の鋼材では図5(a)に示すような不完全焼入れ組織が生じたのに対し、図1に示す熱処理を施した本発明例の鋼材では図5(b)に示すように不完全焼入れ組織は生じておらず完全焼入れ組織となっていた。
また比較例の鋼材では図3に示すように鋼材の非研削部の最表面における窒素濃度が0.8質量%程度であり、かつ最表面から0.2mmの深さ位置における窒素濃度が0.1質量%程度であり、かつ最表面から0.4mmの深さ位置における窒素濃度は0.2mmの深さ位置における窒素濃度よりも低いが0.01質量%以上であることがわかった。これに対して本発明例の鋼材では図4に示すように鋼材の非研削部の最表面における窒素濃度が0.3質量%程度であり、かつ最表面から0.2mmの深さ位置における窒素濃度が0.1質量%程度であり、かつ最表面から0.4mmの深さ位置における窒素濃度は0.2mmの深さ位置における窒素濃度よりも低いが0.01質量%以上であることがわかった。
このことから本発明例の鋼材の方が比較例の鋼材よりも最表層から内部側への窒素濃度の変化が緩やかであることが分かった。
またCを0.95質量%〜1.10質量%、Siを0.15質量%〜0.35質量%、Mnを0.50質量%以下、Pを0.025質量%以下、Sを0.025質量%以下、Crを1.30質量%〜1.60質量%の範囲で適宜変更した組成の鋼材を用いて、図1に示すように浸炭窒化処理と加熱拡散処理との後に焼入れした本発明例の鋼材と、浸炭窒化処理の直後に焼入れした比較例の鋼材とについて、上記と同様に、表層部の金属組織をピクラル腐食した後に電子顕微鏡で観察するとともに、表層部の窒素濃度および炭素濃度をEPMAで測定した。その結果を表1に記す。
なお図1に示す浸炭窒化処理温度および加熱拡散処理温度は800℃〜870℃の温度範囲内で適宜変更し、浸炭窒化処理時間および加熱拡散処理時間も適宜変更した。
Figure 2006200003
表1に示すように従来の浸炭窒化処理を施した比較例の鋼材のいずれにおいても、非研削部の最表面における窒素濃度が0.5質量%より大きく1.5質量%以下の範囲内にあり、かつ最表面から0.2mmの深さ位置における窒素濃度が0.05質量%以上で、最表面から0.4mmの深さ位置における窒素濃度が0.01質量%以上であった。
これに対して図1に示す熱処理を施した本発明例の鋼材のいずれにおいても、非研削部の最表面における窒素濃度が0.1質量%以上0.5質量%以下の範囲内にあり、かつ最表面から0.2mmの深さ位置における窒素濃度が0.05質量%以上で、最表面から0.4mmの深さ位置における窒素濃度が0.01質量%以上であった。
また従来の浸炭窒化処理を施した比較例の鋼材では図5(a)に示すのと同様な不完全焼入れ組織(図中の鋼材内における黒い部分が微細なパーライト状組織)が生じたのに対し、図1に示す熱処理を施した本発明例の鋼材では図5(b)に示すのと同様に不完全焼入れ組織は生じておらず完全焼入れ組織となっていた。また本発明例の鋼材では平均粒径4μm以上の巨大析出物が存在していなかったのに対し、比較例の鋼材では図6(a)、(b)に示すように条件によっては平均粒径4μm以上の巨大析出物(図中の表層部における白色の塊)が生じていた。
また本発明例の鋼材では図7(a)に示すように平均粒径4μm未満の析出物が表層に万遍なく存在していたのに対し、比較例の鋼材では図8(a)に示すように条件によっては析出物が消失していた。またこのときの本発明例と比較例との各窒素濃度分布と炭素濃度分布とをEPMAで測定したところ、本発明例の鋼材では図7(b)に示すように鋼材の非研削部の表層部において比較的大きな炭素濃度ピークがあり析出物が存在していることが分かるのに対し、比較例の鋼材では図8(b)に示すように鋼材の非研削部の表層部において炭素濃度が低くなっており析出物が存在していないことが分かる。
また本発明例の鋼材では図7(b)に示すように鋼材の非研削部の最表面における窒素濃度が0.75質量%程度であり、かつ最表面から0.2mmの深さ位置における窒素濃度が0.1質量%程度であり、かつ最表面から0.4mmの深さ位置における窒素濃度は0.2mmの深さ位置における窒素濃度よりも低いが0.01質量%以上であった。これに対して比較例の鋼材では図8(b)に示すように鋼材の非研削部の最表面における窒素濃度が1.25質量%程度であり、かつ最表面から0.2mmの深さ位置における窒素濃度が0.1質量%程度であり、かつ最表面から0.4mmの深さ位置における窒素濃度は0.2mmの深さ位置における窒素濃度よりも低いが0.01質量%以上であった。
また完全焼入れ組織を有する本発明例の鋼材と不完全焼入れ組織を有する比較例の鋼材とについて疲労強度試験を行なった。この疲労強度試験は、超音波疲労試験により鋼材に引張・圧縮の疲労を与えることにより行なった。また疲労強度試験は、完全焼入れ組織と粒界酸化層とを有する本発明例の鋼材と、不完全焼入れ組織と粒界酸化層とを有する比較例の鋼材(比較例1)と、不完全焼入れ組織における粒界酸化層を除去した比較例の鋼材(比較例2)とを対象として行なった。その結果を図9に示す。
図9を参照して、応力振幅を880MPa〜1000MPaとした場合の負荷回数が比較例2では1×104〜1×105回程度であったのに対し、本発明例では1×108回程度であり、比較例2に対して本発明例の鋼材の疲労強度が大幅に向上していることが分かる。また比較例1の鋼材では、応力振幅を800MPa程度としても1×105回程度の負荷回数が限度であり、比較例2に対しても本発明例の鋼材の疲労強度が大幅に向上していることが分かる。また本発明例、比較例1および比較例2のそれぞれにおいて1×108回の負荷回数を得るためには、比較例1および2では本発明例よりも応力振幅を小さくする必要があり、この点からも比較例1および2に対して本発明例の鋼材の疲労強度が大幅に向上していることが分かる。
以上より、図1に示す熱処理方法を適用することにより、非研削部の最表面における窒素濃度が0.1質量%以上0.5質量%以下の範囲内にあり、かつ最表面から0.2mmの深さ位置における窒素濃度が0.05質量%以上で、不完全焼入れ組織の発生がなく、巨大析出物の発生もなく、析出物の消失もない、優れた疲労強度を有する鋼材が得られることが分かった。
また図2に示す熱処理方法においても図1に示す熱処理方法と同様な結果の得られることを確認した。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明は、鋼材の浸炭窒化処理の工程を含む熱処理方法およびその方法により製造された熱処理品に特に有利に適用され得る。
本発明の一実施の形態における熱処理方法を説明するために時間と温度との関係を示す図である。 本発明の一実施の形態における熱処理方法の他の例を説明するために時間と温度との関係を示す図である。 浸炭窒化処理後の加熱拡散工程がない従来の熱処理を施した鋼材の窒素濃度分布を示す図である。 浸炭窒化処理後に加熱拡散工程を行なった本発明の一実施の形態における熱処理を施した鋼材の窒素濃度分布を示す図である。 不完全焼入れ組織(a)と完全焼入れ組織と(b)を示す金属組織の顕微鏡写真である。 巨大析出物が生じた様子を示す金属組織の顕微鏡写真である。 本発明の一実施の形態における熱処理を施した鋼材の表層を示す金属組織の顕微鏡写真(a)および窒素濃度分布を示す図(b)である。 従来の浸炭窒化処理における熱処理を施した鋼材の表層を示す金属組織の顕微鏡写真(a)および窒素濃度分布を示す図(b)である。 疲労強度試験の結果を示す図である。

Claims (6)

  1. 鋼材を780℃以上900℃以下の温度で浸炭窒化処理する工程と、
    前記浸炭窒化処理された鋼材を窒素を含まない雰囲気下にて780℃以上900℃以下の温度で加熱拡散処理する工程と、
    前記加熱拡散処理後の鋼材を焼入れする工程とを備えた、熱処理方法。
  2. 前記鋼材は、Cを0.95質量%以上1.10質量%以下、Siを0.15質量%以上0.35質量%以下、Mnを0.50質量%以下、Pを0.025質量%以下、Sを0.025質量%以下、Crを1.30質量%以上1.60質量%以下含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱処理方法。
  3. 前記浸炭窒化処理した後に冷却せずに前記加熱拡散処理をすることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱処理方法。
  4. 前記浸炭窒化処理した後に一旦冷却し、その後に前記加熱拡散処理をすることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱処理方法。
  5. Cを0.95質量%以上1.10質量%以下、Siを0.15質量%以上0.35質量%以下、Mnを0.50質量%以下、Pを0.025質量%以下、Sを0.025質量%以下、Crを1.30質量%以上1.60質量%以下含む鋼材よりなり、
    前記鋼材の非研削部の最表面における窒素濃度が0.1質量%以上0.5質量%以下であり、かつ前記最表面から0.2mmの深さ位置における窒素濃度が0.05質量%以上である、熱処理品。
  6. 最表層に平均粒径4μm未満の析出物が存在し、かつ平均粒径4μm以上の巨大析出物が存在しないことを特徴とする、請求項5に記載の熱処理品。
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