JP2006193808A - ステンレス鋼の脱スケール方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ピッチングの発生しない、光沢の優れた白肌のステンレス鋼を製造するためのコイル状ステンレス鋼線材の脱スケール方法を提供すること。
【解決手段】予めそのコイル状のステンレス鋼線材をコイル形状に保ったままショットブラストをかけてステンレス鋼線材の表面のスケール層を完全に除去することなく5〜10μmの範囲の厚み幅に制御してスケールを残存させ、しかる後に酸洗処理を行う。例えば酸洗処理は、第一の酸洗処理とソルト処理及び第二の酸洗処理とからなり、酸洗液として弗酸と硫酸を含有し、酸濃度が20〜25重量%の範囲にある比較的高濃度の酸液と酸濃度が5〜15重量%の範囲にある比較的低濃度の酸液のうち選択された1種又は2種の酸洗液を用いてそれぞれ1段階又は2段階処理する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ステンレス鋼のスケール除去方法に関し、さらに詳しくは、ステンレス鋼線材の製造工程において生成する線材コイル表面のスケール除去方法に関する。
従来、ステンレス鋼線材は、熱間圧延により製造されることが多いが、その熱間圧延加工あるいはそれに続く熱処理により線材表面にはかなりの厚さのスケール層を生ずるので、これを酸洗処理により除去することが広く行われている。ここで、ステンレス鋼は鉄のほかにクロムが多く含まれていることから、スケール中には比較的除去しやすい酸化鉄系スケール層のほか、緻密で強固な酸化クロム系スケール層も形成される。
そのため、酸洗処理工程は、まず硫酸系水溶液等を用いた前酸洗により可溶性の酸化鉄系の層を除去した後、次に溶融塩浴に浸漬するいわゆるソルト処理により、クロム酸化物を可溶性のクロム酸塩等に転化し、引き続き硫酸等の酸浴でこれを溶解除去することが行われている。しかし、これでもクロム水和物等のスケール被膜が線材表面に相当量残留することから、更にこの被膜を化学的に剥離除去する仕上げ酸洗処理が行われるのが通常である。この仕上げ酸洗処理にはこれまで弗酸−硝酸系酸洗液が使われてきたが、この酸液は窒素成分を含むため、排出されると海洋、河川あるいは湖沼が富栄養化する問題があり、環境保護の観点から硝酸を含まない酸洗液を使用するという要望が高まりつつある。そこで、弗酸−硫酸系酸洗液を用いる方法で仕上げ処理が行われてきている。
最近、特許文献1から特許文献4に示されるように、このソルト処理と弗酸−硫酸系酸洗液処理の組み合わせによりステンレス鋼の脱スケール方法及びスマットが残存しにくい表面処理方法が提案されている。しかし、熱間加工及び熱処理を施したステンレス鋼を上記弗酸−硫酸系酸洗液を用いる方法で脱スケールした場合、表面にピッチング状の凹凸が発生する問題がある。
上記のような化学的処理方法では、熱処理によってスケールが厚く発生する場合、特にオーステナイト系ステンレス鋼の場合に問題となる。スケールが厚く、均一に発生していない場合、スケール除去にムラができ、スケールが残っている部分があるにもかかわらず素地が早く現れる部分が出てくるため、その素地の耐食性の低い結晶粒界が酸によって侵され、ピッチング状の凹凸が発生することになる。また、スケールが厚く発生する場合は、酸洗処理時間が長くなり、処理効率が下がるという問題もある。
一方、上記のような化学的処理方法に代わる、より効率的な脱スケール方法として、鋼球やカットワイヤ等のショット粒を圧縮空気や遠心力を用いて投射して鋼材表面に衝突させるショットブラスト等の機械的脱スケールを行う方法及びショットブラスト等の後、軽い酸洗処理を行う方法も提案されてきている。例えば特許文献5では、ステンレス鋼板をショットブラストによって脱スケールした後、酸洗を行うことによって光沢むらがなく、かつすぐれた表面光沢を有するステンレス鋼板を得る方法を提案している。このように板状の鋼板ではショットブラストにおけるショットが均一に鋼材にあたるため、均一にスケールを除去できることがわかっている。
ところが、コイル状の線材をショットブラストによって脱スケールする方法は、コイル状のステンレス鋼線材を一旦延ばした後ショットブラスト処理を行い、しかる後にリコイルを行う方法はあるものの、この方法では処理工程が長くなるため、効率的な方法とは言い難い。一方、コイル形状のままショットブラストをかける方法によりスケールを除去する方法は提案されているものの、支持棒に吊り下げられた線材コイルの軸方向の側面部や内部などのショット粒が投射されにくい部分のスケール残りが問題となる。一般にコイル形状のまま線材にショットブラストをかける場合、ショットのうちムラ(スケールの残りムラ)が出やすく、ショットブラストによって完全に除去することは難しい。そして、ほとんどスケールを除去した後、不均一に残ったスケールを化学的方法により酸洗すると、素地の溶解に至り、表面にピッチング状の凹凸が発生する。
ところで、本出願人により平成16年1月16日に特許出願したショットブラスト方法は、これらの問題を改善するものである。すなわち、コイル状線材を支持棒に吊るした後、支持棒を回転させながらコイル状線材を回転させ、外面、側面、及び内面に均一にショット粒を当てることができる方法である。この方法では、コイル状線材の径方向の外側からショット粒を投射することで外面に対応し、投射角度を軸方向の一方に傾斜させて斜めからショット粒を投射することでコイルを傾斜させ、リング部側面が投射方向を向くことによって側面に対応でき、支持棒の回転方向の反転を繰り返すことや、支持棒の外周面にその軸方向に所定間隔で複数の突起を設け、リングが重なりにくくすることにより内面への投射密度が高められ、更にコイルを支持棒の回転によって回転させ、反転させ、一方向及び他方向からショット粒を投射させることを一定間隔で交互に繰り返すことによって均一に脱スケールできるようになる。
しかし、この方法を用いるのみでは線材コイルの全体に対して一様なショット粒の投射は可能であるものの、もともとスケールが厚く均一に発生していない場合には完全に均一に除去されないことになる。
特開平11−172474号公報 特開平11−172477号公報 特開平11−172499号公報 特開平11−172475号公報 特開2003−41352号公報
このように、ステンレス鋼線材の脱スケールにおいて、化学的処理方法で脱スケールを行う場合、スケールの厚みや鋼材表面の耐食性のばらつきのため、スケールが残ったり、素地の溶解によるピッチング(肌荒れ)が発生したりする。
また、機械的処理方法では、コイル形状のままショットをうつとうちムラが起き、ぎりぎりまでスケール除去した後に残った不均一なスケールを化学的処理により除去しようとすると、ピッチングが発生する。一方、ショットのばらつきを抑えるために、コイル状線材を一旦延ばした後ショットブラストを行い、しかる後にリコイルする方法をとれば均一にショットをうつことができるが、工程が長く、効率的とは言い難いという問題がある。
更に本出願人によって提案されたショットブラスト方法のみでは、もともとスケールが厚く均一に発生していない場合には完全に均一に除去されない。
本発明が解決しようとする課題は、より効率的な脱スケールを行うため、コイル形状のままステンレス鋼線材を脱スケールするに際し、スケールが残ることなく、またピッチング状の凹凸が発生しない、光沢の優れた白肌のステンレス鋼を製造する方法を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るステンレス鋼の脱スケール方法は、請求項1に記載の発明のように、熱間圧延及び熱処理されたコイル状のステンレス鋼材の酸洗脱スケール処理を行うに際し、予めそのコイル状のステンレス鋼線材をコイル形状に保ったままショットブラストをかけてステンレス鋼線材の表面のスケール層を完全に除去することなく5〜10μmの範囲の厚み幅に制御してスケールを残存させ、しかる後に酸洗処理を行うことを要旨とする。
この場合、請求項2に記載のように、前記ステンレス鋼材の酸洗処理は、酸化鉄系スケール層の除去のための第一の酸洗処理と、酸化クロム系スケール層の除去のためのソルト処理及び第二の酸洗処理とからなることが望ましい。
そして、請求項3に記載のように、前記酸洗処理における第一の酸洗処理及び第二の酸洗処理は、それぞれ酸洗液として弗酸と硫酸を含有するものであり、酸濃度が20〜25重量%の範囲にある比較的高濃度の酸液と酸濃度が5〜15重量%の範囲にある比較的低濃度の酸液のうち選択された1種又は2種の酸洗液を用いてそれぞれ1段階又は2段階処理することに好適に用いられる。
請求項1に記載のステンレス鋼の脱スケール方法によれば、オーステナイト系ステンレス鋼などスケールが厚く発生するものに対しても、発生したスケールの大部分をショットブラストによって予め除去するため、その後の酸洗時間は短縮される。また、ショットブラストによってスケール厚を5〜10μmの範囲で均一に除去するため、その後の酸洗においてスケール除去のムラが発生しない。その結果、素地の粒界腐食が発生するのを防ぐことができる。この時、5〜10μmより更に薄く削る場合、例えば0〜5μmの範囲になった場合は、5〜10μmの範囲にした場合と同じ厚み幅ではあるが、スケールがほとんど削られている部分もあるため、その後の酸洗処理によって素地の溶解を発生させてしまう。また、10μmより厚くスケールを残した場合、例えば10〜30μmの範囲にした場合、厚みの差が大きいため、酸洗処理によって洗いムラが発生する。更に、コイル状のままステンレス鋼にショットブラストをかけるため、コイルを延ばす工程及びリコイルする工程が短縮され、効率的なスケール除去方法となる。その結果、スケールが残ることなく、またピッチング状の凹凸が発生しない、光沢の優れた白肌のステンレス鋼を製造することができる。
そして、請求項2に係る酸洗処理をすることにより、ステンレス鋼被処理部材の表面に残留するクロム水和物等の強固なスケール被膜を容易に剥離除去することができる。
この場合、酸洗液が、請求項3に記載の2種類の濃度のものを組み合せ又は使い分けることにより、材質によるスケール厚や鋼材表面の耐食性の違いにも対応することができ、種々のステンレス鋼を脱スケールする場合においても適応可能となる。
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1〜図3は、本発明におけるショットブラスト装置を示す図である。
図1は、ショットブラスト装置の概略構成を示すものであって、該ショットブラスト装置10は、線材コイル12がコイル形状のまま吊り下げられる所定長さ寸法の支持棒14を備え、該支持棒14は、図示しない駆動手段による正逆回転されるよう構成される。この支持棒14に対して径方向に離間する位置には、前記線材コイル12に対して径方向の外側からショット粒を投射する第1投射機16及び第2投射機18が複数基配置される。第1投射機16及び第2投射機18は、図1に示すように、上下に離間する位置において、上側に第1投射機16が前記支持棒14の軸方向に離間して配置されるとともに、下側に第2投射機18が前記支持棒14の軸方向に離間して配置される。なお、第1投射機16と第2投射機18は軸方向に対して交互に位置する関係に配置されている。
前記各第1投射機16は、図1に二点鎖線で示すように、ショット粒の投射方向は、線材コイルの軸方向の一方(右側)に向けて傾斜するよう設定されている。そして、ショット粒を線材コイル12に対して右斜め向きで投射することにより、その衝突力でコイル12を構成している各リング部12aの投射機側が、右側に傾く方向に傾斜する(図2参照)。これに対して第2投射機18は、図1に一点鎖線で示すようにショット粒の投射方向は、線材コイルの軸方向の他方(左側)に向けて傾斜するよう設定されている。そして、ショット粒を線材コイル12に対して左斜め向きで投射することにより、その衝突力でコイル12を構成している各リング部12aの投射機側が、左側に傾く方向に傾斜する(図3参照)。なお、第1投射機16及び第2投射機18の投射角度は向きが異なるだけで、同一の傾斜角度に設定される。
また、図4は、支持棒14の外周面に所定間隔で複数の突起20を設け、突起20と支持棒14の回転により各リング部12aを展開するようになり、コイル内面への投射密度がより高められるようになる。
図5は、本発明におけるコイル状のステンレス鋼材の酸洗脱スケール処理工程を示している。図5の工程(イ)の熱間圧延によって得られたステンレス鋼線材を工程(ロ)で大気中にて熱処理する。その後、ステンレス鋼線材表面に形成したスケールを工程(ハ)にてショットブラスト処理を行い、ステンレス鋼線材の表面のスケール層を完全に除去することなく5〜10μmの範囲の厚み幅に制御してスケールを残存させる。
次に工程(ニ)、(ホ)、(ヘ)にて、残存したスケール層を酸洗処理する。工程(ニ)及び(ヘ)は、弗酸と硫酸を含む酸洗液を用いて酸洗し、工程(ホ)は、苛性ソーダと硝酸ソーダとの混合塩浴によるソルト処理を行う。第一酸洗である工程(ニ)は、比較的可溶性の酸化鉄系スケール層を主に除去し、工程(ニ)で残存した緻密で強固な酸化クロム系スケール層は、工程(ホ)において重クロム酸ナトリウム等の水溶性塩成分を主体とする層に転化させ、その後第二の酸洗処理工程(ヘ)において酸洗除去される。
その後、工程(ト)で中和処理、工程(チ)で乾燥され、処理が終了する。
図6は、脱スケール処理した後の鋼材表面の表面粗さの評価方法を示す。図6(a)は、ピッチングの発生した鋼材を示している。このピッチング発生箇所をピッチング深さまでヤスリで削って図6(b)のようにし、図6(a)の長さaと図6(b)の長さbの寸法差を、脱スケール処理によって発生したピッチング深さとした。
酸洗に用いる酸は、硫酸、塩酸、硝酸、弗酸、弗酸−硝酸系酸洗液、弗酸−硫酸系酸洗液等から一種または二種以上の酸洗槽の組み合わせで実施できるが、環境問題への対応から、硫酸、弗酸、弗酸−硫酸系酸洗液から一種または二種以上の酸洗槽の組み合わせを選ぶのが良い。より好ましくは弗酸−硫酸系酸洗液とするのが良い。浸漬する温度は、室温としても良いが、昇温することで、脱スケールの反応速度を増大させて処理の能力を向上させることができる。なお、酸洗液を昇温させる場合は蒸気が過剰に発生しない範囲で、線材の材質あるいは表面のスケール形成状態に応じて所期の脱スケール反応速度が得られるよう、適宜調整することができる。
ソルト処理に用いる液は、苛性ソーダと硝酸ソーダとの混合塩浴(例えば水酸化ナトリウムの重量をW1、硝酸ナトリウムの重量をW2としてW1/W2が2〜5)等、アルカリ金属塩を主体とした溶融塩浴が使用され、スケール層に含まれるクロム酸化物系のスケール層を、重クロム酸ナトリウム等の水溶性塩成分を主体とする層に転化する。また、高温(例えば400〜500℃)の溶融塩浴に浸漬加熱した後急冷することでスケール層に亀裂を生じさせ、以降の酸洗処理におけるスケール層への酸洗液の浸透を促す効果も生じうる。
本発明が適用可能なステンレス鋼は、具体的には、日本工業規格G4304に記載された各種ステンレス鋼、例えば、SUS201、SUS202、SUS301、SUS301J、SUS302、SUS302B、SUS304、SUS304L、SUS304N1、SUS304N2、SUS304LN、SUS305、SUS309S、SUS310S、SUS316、SUS316L、SUS316N、SUS316LN、SUS316J1、SUS316J1L、SUS317、SUS317L、SUS317J1、SUS321、SUS347、SUSXM15J1等のオーステナイト系ステンレス鋼(常温においてもオーステナイト組織を示すステンレス鋼)、SUS329J1、SUS329J2L等のオーステナイト−フェライト系ステンレス鋼(オーステナイトとフェライトの2相組織を示すステンレス鋼)、SUS405、SUS410L、SUS429、SUS430、SUS430LX、SUS434、SUS436L、SUS444、SUS447J1、SUSXM27等のフェライト系ステンレス鋼(熱処理によって硬化せず、かつフェライト組織をステンレス鋼)、SUS403、SUS410、SUS410S、SUS420J1、SUS420J2、SUS429J1、SUS440A等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS631等の析出硬化系ステンレス鋼(アルミニウム、銅などの元素を添加することにより、熱処理によってこれらの元素を主体とする化合物等を析出させ、硬化させることができるステンレス鋼)が使用できる。
また、本発明でいう「ステンレス鋼」の概念には、下記に示される耐熱鋼も含まれるものとし、これら鋼種に対しても本発明を適用できる。
JIS:G4311及びG4312に組成が規定された、SUS31、SUH35、SUH36、SUH37、SUH38、SUH309、SUH310、SUH330、SUH660、SUH661等のオーステナイト系耐熱鋼、SUH446等のフェライト系耐熱鋼、SUS1、SUS3、SUS4、SUS11、SUS600、SUS616等のマルテンサイト系耐熱鋼などを例示できる。
オーステナイト系ステンレス鋼は圧延後に1000〜1200℃の高温で熱処理が施されることが多く、形成されるスケール層の厚さも厚くなりがちなので、酸洗液の酸濃度は比較的高いほうが良い。一方、フェライト系及びマルテンサイト系ステンレス鋼は熱処理温度が比較的低いため、スケールの厚さはオーステナイト系と比べて厚くはならないため、酸濃度は低い方が良い。また、これらの濃度の異なる酸洗液を組み合わせて用いることも可能である。
なお、酸洗処理が終わった後の線材には、スマットと呼ばれる残留スケール層が残ることがある。このスマット層が形成される原因としては、素地中に存在していた金属炭化物、例えばクロム含有炭化物(Cr23C6あるいはCr2C、)等の粒子が酸洗により遊離して、素地表面に再吸着することが考えられる。このようなスマット層が形成されると、線材の表面が黒変して外観が損なわれるほか、ばねなどの線材加工製品を製造するために、処理後の線材に伸線加工を施す場合はスマット層により摩擦が増大して傷発生や断線等のトラブルを引き起こしたり、伸線ダイスの寿命を縮めたりする問題が生じうることもある。この場合、線材を硝酸水溶液等の酸洗液に更に浸漬することにより、上記スマット層を除去することができる。
以下に実施例を示す。実施例における酸洗条件は以下の通りである。
酸洗液A、C:弗酸−硫酸系液(酸濃度(弗酸+硫酸)=20〜25wt%)、温度=40〜60℃
酸洗液B、D:弗酸−硫酸系液(酸濃度(弗酸+硫酸)=5〜15wt%)、温度=10〜30℃
ソルト:苛性ソーダ+硝酸ソーダ、温度400〜500℃
(実施例1)
所定の圧延装置により熱間圧延した後、大気中にて熱処理したオーステナイト系ステンレス鋼線材(SUS303、10φ)を、所定の大きさのコイルに巻き取った。このコイルを5分間ショットブラスト処理した後、残存するコイル厚を測定した。その後、表1の条件で酸洗処理を行い(実施No.1)、苛性ソーダ水溶液で中和・洗浄・乾燥した後、その表面のスケール残りを外観目視で確認した。また、ピッチングの有無を外観目視で確認し、その深さは、ピッチング部をヤスリでピッチングが無くなるまで研磨し、研磨前後の寸法差を計算した。
(比較例1)
実施例1と同様に圧延、熱処理したオーステナイト系ステンレス鋼線材(SUS303、10φ)を、所定の大きさのコイルに巻き取った。このコイルをショットブラスト処理せずに残存するコイル厚を測定した。その後、表1の条件で酸洗処理を行い(実施No.2〜5)、苛性ソーダ水溶液で中和・洗浄・乾燥した。乾燥後のスケール残り及びピッチング深さについては、実施例1と同様に確認した。
(比較例2)
実施例1と同様に圧延、熱処理したオーステナイト系ステンレス鋼線材(SUS303、10φ)を、所定の大きさのコイルに巻き取った。このコイルを15分間ショットブラスト処理した後、残存するコイル厚を測定した。その後、表1の条件で酸洗処理を行い(実施No.6〜9)、苛性ソーダ水溶液で中和・洗浄・乾燥した。乾燥後のスケール残り及びピッチング深さについては、実施例1と同様に確認した。
実施例1(実施No.1)では、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS303を、コイル状のまま5分ショットブラスト処理し、スケール厚を5〜10μmの範囲の厚み幅にした後、酸洗処理を、酸Aに5分、酸Bに5分、ソルト処理を5分、酸Cに5分、酸Dに5分と行った。その結果、スケールが残ることなく、かつピッチングが発生していない、光沢の優れた白肌のステンレス鋼が得られた。
一方、比較例1では、ショットブラスト処理しないで(スケール厚は10〜30μm)、実施例1と同条件で酸洗処理を行ったが(実施No.2)、スケールが残った。そこで、スケールを完全に除去させるために酸洗処理時間を酸A、酸B、または酸Cについて長くしたが(実施No.3〜5)、スケールを完全に除去することはできなかったにもかかわらずピッチングの発生が確認された。
比較例2では、15分ショットブラスト処理し、スケール厚を0〜5μmの範囲とした。その後、実施例1と同条件で酸洗処理を行った(実施No.6)。その結果、スケールは完全に除去されていたが、ピッチングの発生が確認された。そして、このピッチングの発生を抑えるために酸洗条件をマイルドにするため、濃度の高い酸Aまたは酸Cを用いない条件で種々の酸洗処理を行ったが(実施No.7〜9)、ピッチングの発生は抑えられないにもかかわらずスケールが残る結果となった。
(実施例2)
所定の圧延装置により熱間圧延した後、大気中にて熱処理したマルテンサイト系ステンレス鋼線材(SUS403、10φ)を、所定の大きさのコイルに巻き取った。このコイルを5分間ショットブラスト処理した後、残存するコイル厚を測定した。その後、表1の条件(実施No.10)で酸洗処理を行い、苛性ソーダ水溶液で中和・洗浄・乾燥した。乾燥後のスケール残り及びピッチング深さについては、実施例1と同様に確認した。
(比較例3)
実施例2と同様に圧延、熱処理したマルテンサイト系ステンレス鋼線材(SUS403、10φ)を、所定の大きさのコイルに巻き取った。このコイルをショットブラスト処理せずに残存するコイル厚を測定した。その後、表1の条件で酸洗処理を行い(実施No.11〜12)、苛性ソーダ水溶液で中和・洗浄・乾燥した。乾燥後のスケール残り及びピッチング深さについては、実施例1と同様に確認した。
(比較例4)
実施例2と同様に圧延、熱処理したマルテンサイト系ステンレス鋼線材(SUS403、10φ)を、所定の大きさのコイルに巻き取った。このコイルを15分間ショットブラスト処理した後、残存するコイル厚を測定した。その後、表1の条件で酸洗処理を行い(実施No.13〜14)、苛性ソーダ水溶液で中和・洗浄・乾燥した。乾燥後のスケール残り及びピッチング深さについては、実施例1と同様に確認した。
実施例2、比較例3及び4は、マルテンサイト系ステンレス鋼線材(SUS403)について脱スケールを行った結果である。実施例2(実施No.10)では、コイル状のまま5分ショットブラスト処理し、スケール厚を5〜10μmの範囲の厚み幅にした後、酸洗処理を、酸Bに5分、ソルト処理を5分、酸Dに5分と行った。その結果、スケールが残ることなく、かつピッチングが発生していない、光沢の優れた白肌のステンレス鋼が得られた。
一方、比較例3では、ショットブラストをかけない状態(スケール厚は10〜20μm)で、実施例2と同条件で酸洗処理を行ったが(実施No.11)、スケールが残り、かつピッチングが発生した。この時、酸洗Bの処理前に酸Aの処理操作を加えると(実施No.12)、スケールは完全に除去することができたが、ピッチング深さが大きくなった。
比較例4では、ショットブラストを15分かけ、スケール厚を0〜5μmとした。実施例2と同条件で酸洗処理を行った場合(実施No.13)、スケールは完全に除去することができたが、ピッチングが発生した。このピッチングの発生を抑えるために酸洗Bの処理時間を5分から3分に短縮したところ(実施No.14)、ピッチングの発生は抑えられず、かつスケールが残った。
(実施例3)
所定の圧延装置により熱間圧延した後、大気中にて熱処理したフェライト系ステンレス鋼線材(SUS430、10φ)を、所定の大きさのコイルに巻き取った。このコイルを5分間ショットブラスト処理した後、残存するコイル厚を測定した。その後、表1の条件で酸洗処理を行い(実施No.15)、苛性ソーダ水溶液で中和・洗浄・乾燥した。乾燥後のスケール残り及びピッチング深さについては、実施例1と同様に確認した。
(比較例5)
実施例3と同様に圧延、熱処理したフェライト系ステンレス鋼線材(SUS430、10φ)を、所定の大きさのコイルに巻き取った。このコイルをショットブラスト処理せずに残存するコイル厚を測定した。その後、表1の条件で酸洗処理を行い(実施No.16〜17)、苛性ソーダ水溶液で中和・洗浄・乾燥した。乾燥後のスケール残り及びピッチング深さについては、実施例1と同様に確認した。
(比較例6)
実施例3と同様に圧延、熱処理したフェライト系ステンレス鋼線材(SUS430、10φ)を、所定の大きさのコイルに巻き取った。このコイルを15分間ショットブラスト処理した後、残存するコイル厚を測定した。その後、表1の条件で酸洗処理を行い(実施No.18〜19)、苛性ソーダ水溶液で中和・洗浄・乾燥した。乾燥後のスケール残り及びピッチング深さについては、実施例1と同様に確認した。
実施例3、比較例5及び6は、フェライト系ステンレス鋼線材(SUS430)について脱スケールを行った結果である。実施例3(実施No.15)では、コイル状のまま5分ショットブラスト処理し、スケール厚を5〜10μmの範囲の厚み幅にした後、酸洗処理を、酸Bに5分、ソルト処理を5分、酸Dに5分と行った。その結果、スケールが残ることなく、かつピッチングが発生していない、光沢の優れた白肌のステンレス鋼が得られた。
一方、比較例5では、ショットブラストをかけない状態(スケール厚は10〜20μm)で、実施例3と同条件で酸洗処理を行ったが(実施No.16)、スケールが残り、かつピッチングが発生した。この時、酸洗Bの処理前に酸Aの処理操作を加えると(実施No.17)、スケールは完全に除去することができたが、ピッチング深さが大きくなった。
比較例6では、ショットブラストを15分かけ、スケール厚を0〜5μmとした。実施例3と同条件で酸洗処理を行った場合(実施No.18)、スケールは完全に除去することができたが、ピッチングが発生した。このピッチングの発生を抑えるために酸洗Bの処理時間を5分から3分に短縮したところ(実施No.19)、ピッチングの発生は抑えられず、かつスケールが残った。
以上の結果から、実施例1〜3に挙げたようにスケールを5〜10μmの範囲の厚み幅に制御してショットブラストをかけ、その後の最適な条件で酸洗処理を行うことが効果的であり、種々の鋼材に適応可能であった。しかし、それ以外のスケール厚の範囲にスケールを残存させた場合、その後の酸洗処理によって、スケールが残ることなく、かつピッチングが発生しないような脱スケールを行うことはできないものと考察する。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
Figure 2006193808
本発明に係るステンレス鋼の脱スケール方法は、コイル形状のステンレス鋼線材を効率よく脱スケールする方法として使用することができる。その結果、光沢の優れた白肌のステンレス鋼を製造することができる。
本発明にかかるショットブラスト装置の概観図である。 本発明にかかるショットブラスト装置の第1投射機16により投射された図である。 本発明にかかるショットブラスト装置の第2投射機18により投射された図である。 本発明にかかるショットブラスト装置において、突起部20を含む図である。 本発明によるステンレス鋼線材の脱スケール処理の工程の図である。 脱スケール後に発生するピッチングの深さの測定方法の図である。
符号の説明
12 線材コイル
12a リング状線材部
14 支持棒
16 第1投射機
18 第2投射機
20 突起部

Claims (3)

  1. 熱間圧延及び熱処理されたコイル状のステンレス鋼材の酸洗脱スケール処理を行うに際し、予めそのコイル状のステンレス鋼線材をコイル形状に保ったままショットブラストをかけてステンレス鋼線材の表面のスケール層を完全に除去することなく5〜10μmの範囲の厚み幅に制御してスケールを残存させ、しかる後に酸洗処理を行うことを特徴とするステンレス鋼材の脱スケール処理方法。
  2. 前記ステンレス鋼材の酸洗処理は、酸化鉄系スケール層の除去のための第一の酸洗処理と、酸化クロム系スケール層の除去のためのソルト処理及び第二の酸洗処理とからなることを特徴とする請求項1に記載されるステンレス鋼材の脱スケール処理方法。
  3. 前記酸洗処理における第一の酸洗処理及び第二の酸洗処理は、それぞれ酸洗液として弗酸と硫酸を含有するものであり、酸濃度が20〜25重量%の範囲にある比較的高濃度の酸液と酸濃度が5〜15重量%の範囲にある比較的低濃度の酸液のうち選択された1種又は2種の酸洗液を用いてそれぞれ1段階又は2段階処理することを特徴とする請求項2に記載されるステンレス鋼材の脱スケール処理方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008214725A (ja) * 2007-03-07 2008-09-18 Nippon Control Kogyo Co Ltd ステンレス鋼の表面処理方法及びその方法を用いた電磁ポンプなどの流体機器
JP2012097336A (ja) * 2010-11-04 2012-05-24 Kurita Engineering Co Ltd クロム含有鋼材料のスケール除去方法
CN111716254A (zh) * 2019-03-20 2020-09-29 天津市同鑫泰钢管制造有限公司 一种长途运输螺旋钢管防裂除锈加工工艺

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