JP2006193755A - 重合用遷移金属触媒成分、それを用いた立体規則性を有する芳香族ビニル化合物系重合体及びその製造方法 - Google Patents

重合用遷移金属触媒成分、それを用いた立体規則性を有する芳香族ビニル化合物系重合体及びその製造方法 Download PDF

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【課題】 本発明は、重合用金属化合物、それを用いたアイソタクティクの立体規則性を有する芳香族ビニル化合物重合体及び芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体、及びその製造方法を提供するものである。
【解決手段】 本発明の第一は、下記の一般式(1)で表される、重合触媒成分として用いられる遷移金属触媒成分である。(化1)式中、Aは非置換または置換ベンゾインデニル基。Bは(非)置換シクロペンタジエニル基、(非)置換インデニル基、(非)置換ベンゾインデニル基または(非)置換フルオレニル基。YはA、Bと結合を有し、他に置換基を有する炭素または珪素。Xは、ハロゲン、アルキル基、アリール基、シリル基、アルコキシ基またはジアルキルアミド基。Mはジルコニウム、ハフニウムまたはチタン。
【選択図】図1

Description

本発明は、重合用金属化合物、それを用いた芳香族ビニル化合物系立体規則的重合体の製造方法、アイソタクティクの立体規則性を有する芳香族ビニル化合物重合体及び芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体の製造方法、及び新規な芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体に関する。
オレフィンと芳香族ビニル化合物、例えばエチレンとスチレンの共重合体は、いわゆる不均一系チーグラ−ナッタ触媒を用いて検討がなされてきた。例えば、PolymerBulletin, 20,237−241(1988)、Macromolecules,24,5476(1991)。しかしながら、従来の不均一系チーグラ−ナッタ触媒系は、活性が低く、スチレンの含有量が1モル%程度と極めて低く、均一、規則的な共重合構造を有せず、また、ポリエチレンやアイソタクティク、アタクティクのポリスチレン等のホモポリマーを多く含むなど、実用的では無い。また、得られるポリスチレンの立体規則性は、アイソタクティクであるが、共重合においてスチレンとオレフィンの交互構造の立体規則性は認められないか、交互構造自体が殆ど含まれない。
また、遷移金属触媒成分と有機アルミニウム化合物からなるいわゆる均一系チーグラ−ナッタ触媒系を用いて得られるスチレン−エチレン共重合体及びその製造方法がいくつか知られている。特開平3−163088号公報、特開平7−53618号公報では、いわゆる拘束幾何構造を有する錯体を用いて得られる、正常スチレン連鎖が存在しないスチレン−エチレン共重合体、いわゆる擬似ランダム共重合体が記載されている。なお、正常なSt連鎖とはヘッド−テイル結合の連鎖をいう。また、以下でスチレンをStと記す場合がある。しかし、この擬似ランダム共重合体中に存在するスチレン−エチレンの交互構造のフェニル基には立体規則性はない。また、正常なスチレン連鎖が存在しないことで、スチレンの含量は50モル%を越えることはできない。更に、活性も実用上不十分である。
特開平6−49132号公報、及びPolymerPreprints,Japan, 42,2292(1993)には、架橋メタロセン系Zr錯体と助触媒からなる触媒を用いて同様の正常なSt連鎖の存在しないスチレン−エチレン共重合体、いわゆる擬似ランダム共重合体の製造方法が記載されている。しかし、PolymerPreprints,Japan, 42,2292(1993)によると、この擬似ランダム共重合体中に存在するスチレン−エチレンの交互構造のフェニル基には実質的な立体規則性はない。また、拘束幾何構造を有する錯体の場合と同様に、正常なスチレン連鎖が存在しないことで、スチレンの含量は50モル%を越えることはできない。活性も、実用上不十分である。さらに最近、1,2−エチレン(すなわち−CH2−CH2 −)架橋ビスインデニル系Zr錯体、すなわちrac〔ethylenebis(indenyl)zirconiumdichloride〕を用い、極低温(−25℃)の条件下、立体規則性を有する交互共重合に近いスチレン−エチレン共重合体が報告されている。(Macromol.Chem.,RapidCommun.,17,745(1996))しかし、掲載されている13C−NMRスペクトルから、この共重合体には正常なスチレン連鎖は存在しないことが明らかである。更に、この錯体を用いて、室温以上の重合温度で共重合を実施した場合、スチレン含量、分子量とも低い共重合体しか得られない。
一方、置換フェノ−ル系配位子を有するTi錯体を用いて得られる、スチレン−エチレン交互共重合体が知られている(特開平3−250007号公報、及びStud.Surf.Sci.Catal.,517(1990))。この共重合体は実質的にエチレンとスチレンの交互構造からなることが特徴であり、その他の構造、例えばエチレン連鎖、エチレン連鎖とスチレンから成る構造、スチレンのヘッド−ヘッド結合やテイル−テイル結合(以下、異種結合と記す)等の構造は実質的に含まれない。共重合体の交互度(本明細書におけるλ値)は70以上、実質的には90以上である。すなわち、得られる共重合体は交互性が非常に高く、実質的に交互構造のみが含まれる共重合体であるがゆえに、共重合体中のエチレン50mol%、スチレン50mol%の組成比を変えることは実質的に困難である。さらに、フェニル基の立体規則性はアイソタクティクであるが、アイソタクティクダイアッド分率mで0.92程度であるため、融点は低く、110〜120℃程度である。また、重量平均分子量は2万程度と低く、結晶性ポリマーとしての実用物性を与えるためにははなはだ不十分である。さらに付け加えるなら、触媒活性が極めて低く、シンジオタクティクのポリスチレン等との混合物として得られるため実用的とはいい難い。プロピレンとスチレンの共重合体は、ソルベー型のチーグラ−ナッタ触媒を用いて試みられている。(Macromolecules,22,2875(1989))しかし、活性は低く、スチレンの含量も最大で4.4モル%程度である。遷移金属触媒成分と有機アルミニウム化合物からなる均一系チーグラ−ナッタ触媒系においては、プロピレンとスチレンの共重合は、いわゆるメタロセン触媒であるEwen型のジルコニウム錯体を用いた例が公知である。(特開平8−269134)しかし、得られる共重合体のスチレン含量は数%と低く、また、その立体規則性はシンジオタクティクである。アイソタクティク芳香族ビニル化合物ポリマー、例えばアイソタクティクポリスチレンは、いわゆる不均一系チーグラ−ナッタ触媒を用いて検討がなされてきた。例えば、Macromolecules,24,5476(1991)にその記載があるが、活性が低く、また不均一固体触媒の宿命として、不均一な活性点のために分子量分布(Mw/Mn)も3以上と広く、また、カチオン重合その他の重合が同時に進行して、一般にはかなりの量のアタクティクポリスチレンが副生する。一方、可溶性チーグラ−ナッタ触媒を用いたスチレンの重合では一般的にシンジオタクティクポリスチレンが得られる。わずかに、ニッケル系の非メタロセン錯体を用いた場合、アイソタクティクのポリスチレンの生成が、例えば、Macromolecules,29,4172(1996)に報告されている。しかし、分子量、活性、立体規則性ともに十分とはいえない。いずれにせよ、従来メタロセン錯体を触媒として用いた系では、アイソタクティクのポリスチレンは得られていない。
特開平3−163088号公報 特開平7−53618号公報 特開平6−49132号公報 特開平3−250007号公報 特開平8−269134号公報 Polymer Bulletin, 20,237−241(1988)、 Macromolecules,24,5476(1991) Polymer Preprints,Japan, 42,2292(1993) Macromol.Chem.,RapidCommun.,17,745(1996) Stud.Surf.Sci.Catal.,517(1990) Macromolecules,22,2875(1989) 、Macromolecules,24,5476(1991)
本発明は、重合用金属化合物、それを用いた芳香族ビニル化合物系立体規則的重合体の製造方法、アイソタクティクの立体規則性を有する芳香族ビニル化合物重合体及び芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体の製造方法、及び新規な芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体を提供することにある。
即ち、本発明は
(請求項1) 下記の一般式(1)で表されることを特徴とする芳香族ビニル化合物重合体または芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体の製造用遷移金属触媒成分。
Figure 2006193755
式中、Aは下記の一般式、化2、化3または化4で表すことができる非置換または置換ベンゾインデニル基である。
Figure 2006193755
Figure 2006193755
Figure 2006193755
(上記の化2〜化4において、R1〜R3はそれぞれ水素、炭素数1〜20のアルキル基、6〜10のアリール基、7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR3 基、SiR3 基またはPR2 基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)であり、R1同士、R2同士、R3同士は互いに同一でも異なっていても良い。また、隣接するR1、R2及びR3基は一体となって5〜8員環の芳香環または脂肪環を形成しても良い。)Bは、Aと同様の化学式で表される非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、あるいは下記の一般式、化5、化6、化7で示される非置換または置換シクロペンタジエニル基、非置換または置換インデニル基あるいは非置換または置換フルオレニル基である。
Figure 2006193755
Figure 2006193755
Figure 2006193755
(上記の化5〜7において、R4〜R6はそれぞれ水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR3 基、SiR3 基またはPR2 基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)であり、R4同士、R5同士、R6同士は互いに同一でも異なっていても良い。)A、B共に非置換または置換ベンゾインデニル基である場合には両者は同一でも異なっていてもよい。Yは、A、Bと結合を有し、置換基として水素あるいは炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基またはシリレン基である。これらの置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yは置換基と一体になって環状構造を有していてもよい。Xは、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、アルキルアリ−ル基、シリル基、メトキシ基、エトキシ基、アルコキシ基またはジアルキルアミド基である。Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
(請求項2) Aが、4,5−ベンゾ−1−インデニル基、5,6−ベンゾ−1−インデニル基、6,7−ベンゾ−1−インデニル基、α−アセナフト−1−インデニル基、3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル基、または1−シクロペンタ〔l〕フェナンスリル基から選ばれる1つであり、Bが4,5−ベンゾ−1−インデニル基、5,6−ベンゾ−1−インデニル基、6,7−ベンゾ−1−インデニル基、α−アセナフト−1−インデニル基、3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル基、1−シクロペンタ〔l〕フェナンスリル基、1−インデニル基、4−フェニルインデニル、または4−ナフチルインデニル基から選ばれる1つあることを特徴とする請求項1記載の遷移金属触媒成分。
(請求項3) Mがジルコニウムであり、Yが置換基として水素または炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基であることを特徴とする請求項1記載の遷移金属触媒成分。
(請求項4) Xがジアルキルアミドであることを特徴とする請求項1記載の遷移金属触媒成分。
(請求項5) Aが3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル基であり、Bが3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル基、化2〜化4で示される非置換または置換4,5−ベンゾ−1−インデニル基、あるいは化6で示される非置換または置換1−インデニル基であり、Mがジルコニウム、ハフニウム、またはチタンであり、YがA、Bと結合を有し、置換基として水素または炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基またはシリレン基であり、これらの置換基は互いに異なっていても同一でもよく、またYは置換基と一体になって環状構造を有していてもよいものであることを特徴とする請求項1記載の遷移金属触媒成分。
(請求項6) 下記の一般式(2−1)または(2−式中、R’は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または水素、nは2〜100の整数である。それぞれのR’は互いに同一でも異なっていても良い。
2)で表され、A、B中の各シクロペンタジエニル構造セントロイドと金属Mのなす角度(バイトアングル)が120°以下であることを特徴とする芳香族ビニル化合物重合体または芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体の製造用遷移金属触媒成分。
Figure 2006193755
Figure 2006193755
式中A、B、Y、M及びXは一般式(1)と同一の意味を示す。
(請求項7) 請求項1〜6のいずれか1項記載の重合用遷移金属触媒成分と助触媒から構成される、芳香族ビニル化合物重合体または芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体製造用の重合触媒。
(請求項8) 助触媒として下記の一般式(3)または(4)で示されるアルミノキサン(またはアルモキサンと記す)を用い、また必要に応じてアルキルアルミニウムを用いることを特徴とする、請求項7記載の芳香族ビニル化合物重合体または芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体製造用の重合触媒。
Figure 2006193755
式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または水素、mは2〜100の整数である。それぞれのRは互いに同一でも異なっていても良い。
Figure 2006193755
(請求項9) 請求項1〜6のいずれか1項記載の遷移金属触媒成分と助触媒からなる、アイソタクティクの立体規則性を有する芳香族ビニル化合物重合体または芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体製造用の重合触媒。
(請求項10) 請求項1〜6のいずれか1項記載の遷移金属触媒成分と助触媒からなる重合用触媒を用いて重合することを特徴とするアイソタクティク芳香族ビニル化合物重合体または芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体の製造方法。
(請求項11) 請求項1〜6のいずれか1項記載の遷移金属触媒成分と助触媒からなる重合用触媒を用いて重合して得られる芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体。
(請求項12) 芳香族ビニル化合物含量が5モル%以上99.9モル%以下であり、2個以上の芳香族ビニル化合物ユニットのヘッド−テイルの連鎖構造を有することを特徴とする芳香族ビニル化合物−エチレンランダム共重合体。
(請求項13) 共重合体構造中に含まれる下記の一般式(5)で示される芳香族ビニル化合物とエチレンの交互構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティクダイアッド分率mで0.75より大きく、かつ下記の式
(i)で与えられる交互構造指数λが70より小さく、1より大きいことを特徴とする、請求項12記載の芳香族ビニル化合物−エチレンランダム共重合体。
λ=A3/A2×100 式(i)
ここでA3は、13C−NMR測定により得られる、下記の一般式(5’)で示される芳香族ビニル化合物−エチレン交互構造に由来する3種類のピークa、b、cの面積の総和である。また、A2はTMSを基準とした13C−NMRにより0〜50ppmの範囲に観測される主鎖メチレン及び主鎖メチン炭素に由来するピークの面積の総和である。
Figure 2006193755
(式中、Phは芳香族基、xは繰り返し単位数を示し2以上の整数を表す。)
Figure 2006193755
(式中、Phは芳香族基、xは繰り返し単位数を示し2以上の整数を表す。)
(請求項14) TMSを基準とした13C−NMR測定によって40〜45ppmに現れるピークにより帰属される芳香族ビニル化合物ユニットの連鎖構造を有することを特徴とする請求項10記載の芳香族ビニル化合物−エチレンランダム共重合体。
(請求項15) 芳香族ビニル化合物ユニットの連鎖構造の立体規則性がアイソタクティクであることを特徴とする請求項12記載の芳香族ビニル化合物−エチレンランダム共重合体。
(請求項16) 請求項10記載の製造方法によって得られる芳香族ビニル化合物−プロピレンランダム共重合体。
(請求項17) 請求項10記載の製造方法において40℃以下−20℃以上の重合温度で重合することを特徴とする芳香族ビニル化合物−エチレン交互共重合体の製造方法。
(請求項18) 請求項17記載の重合方法により得られる交互指数λ値が70以上でありかつ、交互構造のアイソタクティクダイアッド(メソダイアッド)分率mが0.95以上である芳香族ビニル化合物−エチレン立体規則的交互共重合体。
(請求項19) ジルコニウム、チタニウムまたはハフニウムのジアルキルアミド体を原料とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の遷移金属触媒成分の製造方法。
である。
本発明により新規な芳香族ビニル化合物または芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体製造用の重合用遷移金属化合物が提供される。また、この重合用遷移金属化合物を用いることにより、新規なアイソタクティクの立体規則性を有する芳香族ビニル化合物重合体及び芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体、それらの製造方法が提供される。
本発明の第一は、下記の一般式(1)で表される、重合触媒成分として用いられる遷移金属触媒成分である。
Figure 2006193755
式中、Aは非置換または置換ベンゾインデニル基である。Bは、非置換または置換シクロペンタジエニル基、非置換または置換インデニル基、非置換または置換ベンゾインデニル基あるいは非置換または置換フルオレニル基である。A、B共に非置換または置換ベンゾインデニル基である場合には両者は同一でも異なっていてもよい。Yは、A、Bと結合を有し、他に置換基を有する炭素、珪素であって、置換基として水素あるいは炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基またはシリレン基である。これらの置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yは置換基と一体になって環状構造を有していてもよい。Xは、ハロゲン、アルキル基、アリール基、シリル基、アルコキシ基またはジアルキルアミド基等である。Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
一般式(1)において、Aは下記の一般式、化15、化16または化17で表すことができる非置換または置換ベンゾインデニル基である。
Figure 2006193755
Figure 2006193755
Figure 2006193755
上記の化15〜化17において、R1、R2及びR3はそれぞれ水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR 3 基、SiR3 基またはPR2 基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)であり、R1同士、R2同士、R3同士は互いに同一でも異なっていても良い。また、隣接するR1、R2及びR3基は一体となって5〜8員環の
芳香環または脂肪環を形成しても良い。
非置換ベンゾインデニル基として、4,5−ベンゾ−1−インデニル、(別名ベンゾ(e)インデニル)、5,6−ベンゾ−1−インデニル、6,7−ベンゾ−1−インデニルが、置換ベンゾインデニル基として、4,5−ナフト−1−インデニル、4,5−ピレン−1−インデニル、4,5−トリフェニレン−1−インデニル、α−アセナフト−1−インデニル、3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル、1−シクロペンタ〔l〕フェナンスリル基等が例示できる。特に好ましくは非置換ベンゾインデニル基として、4,5−ベンゾ−1−インデニル、(別名ベンゾ(e)インデニル)、5,6−ベンゾ−1−インデニル、6,7−ベンゾ−1−インデニルが、置換ベンゾインデニル基として、α−アセナフト−1−インデニル、3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル、1−シクロペンタ〔l〕フェナンスリル基等が挙げられる。
上記の一般式(1)においてBは好ましくは、上記のAと同様の非置換または置換ベンゾインデニル基、あるいは下記の一般式、化18、化19、化20で示される非置換または置換シクロペンタジエニル基、非置換または置換インデニル基あるいは非置換または置換フルオレニル基である。A、B共に非置換または置換ベンゾインデニル基である場合には両者は同一でも異なっていてもよい。
Figure 2006193755
Figure 2006193755
Figure 2006193755
上記の化18〜20において、R4、R5およびR6はそれぞれ水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR 3 基、SiR3 基またはPR2 基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)であり、R4同士、R5同士、R6同士は互いに同一でも異なっていても良い。ただし、BはAとラセミ体(または擬似ラセミ体)の立体関係にあることが好ましい。Bとして特に好ましくは、非置換ベンゾインデニル基として4,5−ベンゾ−1−インデニル、5,6−ベンゾ−1−インデニル、6,7−ベンゾ−1−インデニル、置換ベンゾインデニル基としてα−アセナフト−1−インデニル、3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル、1−シクロペンタ〔l〕フェナンスリ基、非置換インデニル基として1−インデニル、置換インデニル基として4−フェニルインデニル、または4−ナフチルインデニル基である。
非置換シクロペンタジエニル基としてはシクロペンタジエニルが、置換シクロペンタジエニル基としては4−アリール−1−シクロペンタジエニル、4,5−ジアリール−1−シクロペンタジエニル、5−アルキル−4−アリール−1−シクロペンタジエニル、4−アルキル−5−アリール−1−シクロペンタジエニル、4,5−ジアルキル−1−シクロペンタジエニル、5−トリアルキルシリル−4−アルキル−1−シクロペンタジエニル、4、5−ジアルキルシリル−1−シクロペンタジエニル等が挙げられる。
非置換インデニル基としては1−インデニルが、置換インデニル基としては4−アルキル−1−インデニル、4−アリール−1−インデニル、4,5−ジアルキル−1−インデニル、4,6−ジアルキル−1−インデニル、5,6−ジアルキル−1−インデニル、4,5−ジアリ−ル−1−インデニル、5−アリ−ル−1−インデニル、4−アリール−5−アルキル−1−インデニル、2,6−ジアルキル−4−アリール−1−インデニル、5,6−ジアリール−1−インデニル、4,5,6−トリアリール−1−インデニル等が挙げられる。非置換フルオレニル基としては9−フルオレニル基が、置換フルオレニル基としては7−メチル−9−フルオレニル基、ベンゾ−9−フルオレニル基等が挙げられる。上記の一般式(1)において、YはA、Bと結合を有し、他に置換基を有する炭素または珪素であって、水素あるいは炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基またはシリレン基である。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yはシクロヘキシリデン基、シクロペンチリデン基等の環状構造を有していてもよい。好ましくは、Yは、A、Bと結合を有し、水素または炭素数1〜15の炭化水素基で置換された置換メチレン基である。炭化水素置換基としては、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、シクロアリール基等が挙げられる。置換基は互いに異なっていても同一でもよい。特に好ましくは、Yは、−CH2 −、−CMe2 −、−CEt2 −、−CPh2 −、シクロヘキシリデン、シクロペンチリデン基等である。ここで、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基を表す。Xは、水素、ハロゲン、炭素数1〜15のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数8〜12のアルキルアリール基、炭素数1〜4の炭化水素置換基を有するシリル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、または炭素数1〜6のアルキル置換基を有するジアルキルアミド基である。ハロゲンとしては塩素、臭素等が、アルキル基としてはメチル基、エチル基等が、アリール基としてはフェニル基等が、アルキルアリール基としては、ベンジル基が、シリル基としてはトリメチルシリル基等が、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、イソプロピル基等が、またジアルキルアミド基としてはジメチルアミド基等が挙げられる。Xは互いに同一でも異なっていてもよい。また、2つのXの間で結合を有していても良い。特にXがジメチルアミド基の場合には、WO95/32979号公報記載の製造方法によって、本発明の遷移金属触媒成分を製造すれば、非常に簡単且つ安価に製造できる利点がある。すなわち、配位子化合物とジルコニウムテトラキスジメチルアミドとの室温以上の制御しやすい温度における一段階の合成工程で製造可能である。厳密には、この工程で製造される遷移金属触媒成分は、かなりの量のメソ体を不純物として含むラセミ体であるが、触媒に対するメソ体の混入は本発明においては殆ど影響を与えない。Xが塩素である遷移金属錯体の場合は、さらに、ジメチルアミド体の錯体とジメチルアミン塩酸塩との、例えば−78℃のような低温でのコストの高い反応工程を経なければならないのでより高価なものとなる。さらに、Xがジメチルアミド基の場合、メチルアルモキサン等の助触媒と接触した後の活性種の形成速度が、Xが塩素の場合より若干遅い。このことは、特にバッチ液相重合において、助触媒を予め重合液に溶解し、所定の条件下で遷移金属触媒成分を重合液中に投入して重合を開始するという重合処方において、重合液中で徐々に活性種を形成することで、触媒投入直後の急激な重合熱の発生を低減させ、重合液の除熱を容易にするという製造プロセス上の重要な利点を持つ。Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。特に好ましくジルコニウムはである。
かかる遷移金属触媒成分の例としては下記の化合物が挙げられる。例えば、ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド{別名ジメチルメチレンビス(ベンゾ〔e〕インデニル)ジルコニウムジクロリド}、ジn−プロピルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジi−プロピルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、シクロぺンチリデンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレンビス(4,5ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(1−インデニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(1−フルオレニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(4−フェニル−1−インデニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(4−ナフチル−1−インデニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレンビス(5,6−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(5,6−ベンゾ−1−インデニル)(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレンビス(6,7−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(6,7−ベンゾ−1−インデニル)(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレンビス(4,5−ナフト−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレンビス(α−アセナフト−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレンビス(3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル)(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレンビス(1−シクロペンタ〔l〕フェナンスリル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレン(1−シクロペンタ〔l〕フェナンスリル)(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムビス(ジメチルアミド)、ジメチルメチレン(1−インデニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムビス(ジメチルアミド)等が挙げられる。以上、ジルコニウム錯体を例示したが、チタン、ハフニウム錯体も上記と同様の化合物が好適に用いられる。また、ラセミ体、メソ体の混合物を用いても良い。好ましくはラセミ体または擬似ラセミ体を用いる。これらの場合、D体を用いても、L体を用いても良い。本発明の遷移金属触媒を重合用触媒として用いて芳香族ビニル化合物重合体または芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体を製造した場合には下記のような優れた特徴がある。触媒としての活性が高く、芳香族ビニル化合物含量が20モル%未満の場合には1×10 8 (g/mol・遷移金属触媒)以上、芳香族ビニル化合物含量が20モル%以上55モル%未満では4.1×10(g/mol・遷移金属触媒)以上という高い生産性で重合体、共重合体が得られる。また、芳香族ビニル化合物含量の高いランダム共重合体、特に芳香族ビニル化合物含量が55モル%を超えた芳香族ビニル化合物−エチレンランダム共重合体を製造することができる。特に配位子A、あるいはAおよびBに3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル基を有する遷移金属触媒成分、例えばrac−ジメチルメチレンビス(3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル)ジルコニウムジクロリドと助触媒から構成される重合用触媒を用いた場合、非常に高い活性で高い分子量のスチレン−オレフィンランダム共重合体、特にスチレン−エチレンランダム共重合体、およびアイソタクティクポリスチレンを製造できる。この場合、特に芳香族ビニル化合物含量が50モル%以上の共重合体において、重量平均分子量が10万以上、好ましくは20万以上の共重合体を製造することが出来る。また、得られるスチレン−エチレンランダム共重合体は、同一重合条件した、同一芳香族ビニル化合物含量で比較してランダム性が高い(交互性が低い)共重合体であるという特徴を有する。得られる重合体、共重合体に含まれる構
造のアイソタクティシティーは非常に高い。
また、本発明の第二には下記の一般式(2−1)、一般式(2−2)で表され、A、B中の各シクロペンタジエニル構造セントロイドと金属Mのなす角度(バ1トアングル)が120°以下である芳香族ビニル化合物重合体または芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体の重合用遷移金属触媒成分である。
Figure 2006193755
Figure 2006193755
式中A、B、Y、M及びXは一般式(1)と同一の意味を示す。バイトアングルは、遷移金属触媒成分の単結晶X線回折や、コンピュータを用いた以下の計算法によって求めることができる。CPUとしてMIPSR10000 ProcessoChip Revision2.6 2×180MHzIP27processors、オペレ−ションシステムとして、IRIX6.4を搭載したSGIOriginワ−クステ−ションを用いた。用いたソフトは、分子軌道法G94revision,E.2、Gaussian94(GaussianInc.社製)、Option(Geom、OPT、HF、DIRECT、STO−3G)である。ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライドに関して行った検討結果を以下に示して、バイトアングルをこの様な計算で求める方法の適切さを示す。上記の計算法で求めたバイトアングル119°単結晶X線回折法で求めたバイトアングル117.9°(文献値;Macromol.Chem.,Macromol.Symp.,48/49,253(1991)両者の値は、ほぼ一致し、本計算法が適切な手法であることがわかる。
Figure 2006193755
A、Bの構造を種々変更して計算によりバイトアングルを求めたが、バイトアングルは1°以内で一致した。すなわち、A、Bの構造はバイトアングルに影響を与えない。本発明者等は、種々の遷移金属触媒成分を触媒として用いて、同一条件下での芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合における芳香族ビニル化合物の共重合量(含量)を検討した結果、本バイトアングルが120°以下の遷移金属触媒成分を用いた場合、非常に高い芳香族ビニル化合物含量を与えることを見出した。このようなバイトアングルは、上記の一般式(2−1)、(2−2)において、Yが水素または炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基の場合に達成できる。一般式(2−2)の場合、2個のYは同一でも異なっていても良い。一般式(2−1)の場合には前記遷移金属触媒成分群の内、YがA、Bと結合を有し、置換基として水素、または炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基である遷移金属触媒成分群である。一般式(2−2)の場合、かかる遷移金属触媒成分の例としては下記の化合物が挙げられる。(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)ビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)ビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−メチレン)ビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)(1−インデニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)(1−インデニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−メチレン)(1−インデニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)(シクロペンタジエニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)(シクロペンタジエニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−メチレン)(シクロペンタジエニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)ビス(3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル)ジルコニウムジクロライド、(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)ビス(3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル)ジルコニウムジクロライド、(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−メチレン)ビス(3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル)ジルコニウムジクロライド、(1,2’−メチレン)(2,1’−メチレン)ビス(1−シクロペンタ〔l〕フェナンスリル)ジルコニウムジクロライド、(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−イソプロピリデン)ビス(1−シクロペンタ〔l〕フェナンスリル)ジルコニウムジクロライド、(1,2’−イソプロピリデン)(2,1’−メチレン)ビス(1−シクロペンタ〔l〕フェナンスリル)ジルコニウムジクロライド。以上、ジルコニウム錯体を例示したが、対応するチタニウム錯体、ハフニウム錯体も好適に使用できる。本遷移金属触媒成分は、好ましくはラセミ体または擬似ラセミ体が好適に用いられるが、この場合、D体を用いても、L体を用いてもよい。また、ラセミ体とメソ体の混合物を用いてもよい。
本発明の第三は、これらの重合用遷移金属触媒成分と助触媒から構成される、著しく高い生産性を有する芳香族ビニル化合物重合体製造用または芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体製造用の重合触媒、及びそれを用いた芳香族ビニル化合物重合体及び芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体の効率的な製造方法である。特に重合体の構造にアイソタクティクの立体規則性を有する芳香族ビニル化合物重合体製造用またはアイソタクティクの構造を含む芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体製造用の重合触媒及びそれを用いたアイソタクティク芳香族ビニル化合物重合体及びアイソタクティク構造を含む芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体の製造方法である。本発明で用いる助触媒としては、従来遷移金属触媒成分と組み合わせて用いられている助触媒を使用することができるが、そのような助触媒として、アルミノキサン(またはアルモキサンと記す)またはほう素化合物が好適に用いられる。更に本発明は、その際用いられる助触媒が下記の一般式(3)、(4)で示されるアルミノキサン(またはアルモキサンと記す)である芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体の製造方法である。
Figure 2006193755
式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または水素、mは2〜100の整数である。それぞれのRは互いに同一でも異なっていても良い。
Figure 2006193755
式中、R’は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または水素、nは2〜100の整数である。それぞれのR’は互いに同一でも異なっていても良い。アルミノキサンとしては好ましくは、メチルアルモキサン、エチルアルモキサン、トリイソブチルアルモキサンが用いられるが、特に好ましくはメチルアルモキサンが用いられる。必要に応じ、これら種類の異なるアルモキサンの混合物を用いてもよい。また、これらアルモキサンとアルキルアルミニウム、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムやハロゲンを含むアルキルアルミニウム、例えばジメチルアルミニウムクロライド等を併用してもよい。アルキルアルミニウムの添加は、スチレン中の重合禁止剤、スチレン、溶媒中の水分等の重合を阻害する物質の除去、重合反応に対する無害化のために効果的である。しかし、スチレン、溶媒等をあらかじめ蒸留する、乾燥不活性ガスでバブリングする、またはモレキュラーシーブを通す等の公知の方法でこれらの量を重合に影響のないレベルまで低減するか、あるいは用いるアルモキサンの使用量を若干増やすか、または分添すれば、アルキルアルミニウムを重合時に添加することは必ずしも必要ではない。本発明では、上記の遷移金属触媒成分と共に助触媒としてほう素化合物を用いることができる。
助触媒として用いられるほう素化合物は、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート{トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート}、リチウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラフェニルボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(p−トリル)フェニルボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(p−エチルフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス−3,5−ジメチルフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス−3,5−ジメチルフェニルボレート、トリブチルアンモニウムテトラキス−3,5−ジメチルフェニルボレート、トリブチルアンモニウムテトラキス−2,4−ジメチルフェニルボレート、アニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、N,N’−ジメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N’−ジメチルアニリニウムテトラキス(p−トリル)ボレート、N,N’−ジメチルアニリニウムテトラキス(m−トリル)ボレート、N,N’−ジメチルアニリニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、N,N’−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、N,N’−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N’−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N’−2,4,5−ペンタメチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N’−2,4,5−ペンタエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、ジ−(イソプロピル)アンモニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、ジ−シクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(p−トリル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(m−トリル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、トロピリウムテトラキス(p−トリル)ボレート、トロピリウムテトラキス(m−トリル)ボレート、トロピリウムテトラキス(2,4−ジメチルフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス(3,5−ジメチルフェニル)ボレート等である。これらほう素化合物と上記の有機アルミニウム化合物を同時に用いても差し支えない。特にほう素化合物を助触媒として用いる場合、重合系内に含まれる水等の重合に悪影響を与える不純物の除去に、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミ化合物の添加は有効である。
本発明に用いられる芳香族ビニル化合物としては、スチレンおよび各種の置換スチレン、例えばp−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、o−t−ブチルスチレン、m−t−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられ、またジビニルベンゼン等の一分子中に複数個のビニル基を有する化合物等も挙げられる。工業的には好ましくはスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、特に好ましくはスチレンが用いられる。また、本発明に用いられるオレフィンとしては、炭素数2〜20のα−オレフィン、すなわちエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンや環状オレフィン、すなわちシクロペンテン、ノルボルネンやノルボルナジエンが適当である。またこれらのオレフィンを2種以上用いてもよい。オレフィンとしてはエチレン及びプロピレンが好ましい。以下の説明においては、オレフィンとしてエチレン及びプロピレンを例に説明する。本発明の共重合体を製造するにあたっては、オレフィン、上記に例示した芳香族ビニル化合物、金属錯体である遷移金属触媒成分および助触媒を接触させるが、接触の順番、接触方法は任意の公知の方法を用いることができる。本発明の芳香族ビニル化合物重合体を製造するにあたっては、上記に例示した芳香族ビニル化合物、金属錯体である遷移金属触媒成分および助触媒を接触させるが、接触の順番、接触方法は任意の公知の方法を用いることができる。以上の共重合あるいは重合の方法としては溶媒を用いずに液状モノマー中で重合させる方法、あるいはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロ置換ベンゼン、クロロ置換トルエン、塩化メチレン、クロロホルム等の飽和脂肪族または芳香族炭化水素またはハロゲン化炭化水素の単独または混合溶媒を用いる方法がある。また、必要に応じ、バッチ重合、連続重合、回分式重合、スラリー重合、予備重合あるいは気相重合等の方法を用いることができる。従来、モノマー−成分としてスチレンが用いられる場合、その蒸気圧の低さから、気相重合は採用不可能であった。しかし、本発明の重合用遷移金属触媒成分と助触媒から構成される触媒を用いた場合、スチレンの共重合能力が著しく高いため、低いスチレンモノマ−濃度であっても共重合が可能である。即ち、気相重合条件下、低いスチレン分圧下においてもオレフィンとスチレンの共重合が可能である。この場合、重合用遷移金属触媒成分と助触媒は適当な公知の担体に担持して用いてもよい。
共重合あるいは重合温度は、−78℃から200℃が適当である。−78℃より低い重合温度は工業的に不利であり、200℃を超えると金属錯体の分解が起こるので適当ではない。さらに工業的に好ましくは、−20℃〜160℃、特に好ましくは30℃〜160℃である。共重合時の圧力は、0.1気圧〜200気圧が適当であり、好ましくは1〜50気圧、特に工業的に特に好ましくは、1〜30気圧である。助触媒として有機アルミニウム化合物を用いる場合には、錯体の金属に対し、アルミニウム原子/錯体金属原子比で0.1〜100000、好ましくは10〜10000の比で用いられる。0.1より小さいと有効に金属錯体を活性化出来ず、100000を超えると経済的に不利となる。助触媒としてほう素化合物を用いる場合には、ほう素原子/錯体金属原子比で0.01〜100の比で用いられるが、好ましくは0.1〜10、特に好ましくは1で用いられる。0.01より小さいと有効に金属錯体を活性化出来ず、100を超えると経済的に不利となる。金属錯体と助触媒は、重合槽外で混合、調製しても、重合時に槽内で混合してもよい。
本発明の第四は、本発明の遷移金属触媒成分を用いて、または本発明の製造方法によって得られる芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体である。さらに、芳香族ビニル化合物含量が5〜99.9モル%以下であり、2個以上の芳香族ビニル化合物ユニットのヘッド−テイルの連鎖構造を有する芳香族ビニル化合物−エチレンランダム共重合体である。この共重合体は新規共重合体であり、本発明の遷移金属触媒成分を用いて、または本発明の製造方法によって得られる芳香族ビニル化合物−エチレンランダム共重合体を包含するが、特に本発明の遷移金属触媒成分または製造方法には限定されない。以下に、本発明の芳香族ビニル化合物−エチレンランダム共重合体の一例であるスチレン−エチレンランダム共重合体を例に取り説明する。しかし、本発明はスチレン−エチレン共重合体に限定されるものではない。その構造は、核磁気共鳴法(NMR法)によって決定される。
本発明の共重合体は、TMSを基準とした13C−NMRにおいて以下の位置に主なピークを有する。主鎖メチレン及び主鎖メチン炭素に由来するピークを24〜25ppm付近、27ppn付近、30ppm付近、34〜37ppm付近、40〜41ppm付近及び42〜46ppm付近に、また、フェニル基のうちポリマー主鎖に結合していない5個の炭素に由来するピークを126ppm付近及び128ppm付近に、フェニル基のうちポリマー主鎖に結合している1個の炭素に由来するピークを146ppm付近に示す。本発明のスチレン−エチレンランダム共重合体は、スチレン含量がモル分率で5〜99.9%未満、さらに好ましくは10〜99.9%未満であるスチレン−エチレンランダム共重合体であって、その構造中に含まれる下記の一般式(5)で示されるスチレンとエチレンの交互構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティクダイアッド分率mで0.75より大きく、かつ下記の式(i)で与えられる交互構造指数λが70より小さく1より大きい、好ましくは70より小さく5より大きいスチレン−エチレンランダム共重合体である。
λ=A3/A2×100 式(i)
ここでA3は、13C−NMR測定により得られる、下記の一般式(5’)で示されるスチレン−エチレン交互構造に由来する3種類のピークa、b、cの面積の総和である。また、A2はTMSを基準とした13C−NMRにより0〜50ppmの範囲に観測される主鎖メチレン及び主鎖メチン炭素に由来するピークの面積の総和である。
Figure 2006193755
(式中、Phはフェニル基等の芳香族基、xは繰り返し単位数を示し2以上の整数を表す。)
Figure 2006193755
(式中、Phはフェニル基等の芳香族基、xは繰り返し単位数を示し2以上の整数を表す。)本発明のスチレン−エチレンランダム共重合体に於いて、エチレンとスチレンの交互共重合構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティク構造とは、アイソタクティクダイアッド分率m(またはメソダイアッド分率ともいう)が0.75より大きい、好ましくは0.85以上、さらに好ましくは0.95以上を示す構造をいう。エチレンとスチレンの交互共重合構造のアイソタクティクダイアッド分率mは、25ppm付近に現れるメチレン炭素ピークのr構造に由来するピーク面積Arと、m構造に由来するピークの面積Amから、下記の式(ii)によって求めることができる。
m=Am/(Ar+Am) 式(ii)
ピークの出現位置は測定条件や溶媒によって若干シフトする場合がある。例えば、重クロロホルムを溶媒とし、TMSを基準とした場合、r構造に由来するピークは、25.4〜25.5ppm付近に、m構造に由来するピークは25.2〜25.3ppm付近に現れる。また、重テトラクロロエタンを溶媒とし、重テトラクロロエタンの3重線の中心ピーク(TMSを基準としたシフト値73.89ppm)を基準とした場合、r構造に由来するピークは、25.3〜25.4ppm付近に、m構造に由来するピークは25.1〜25.2ppm付近に現れる。なお、m構造はメソダイアッド構造、r構造はラセミダイアッド構造を表す。本発明のスチレン−エチレンランダム共重合体に於いては、エチレンとスチレンの交互共重合構造にr構造に帰属されるピークは実質的に観測されない。
本発明のスチレン−エチレンランダム共重合体に含まれるスチレンユニットのヘッド−テイルで結合した連鎖構造は、以下の構造で示すことができるスチレン2個以上の連鎖構造であり、好ましくは3個以上の連鎖構造である。
Figure 2006193755
ここで、nは2以上の任意の整数。Phは、フェニル基。2個のスチレンユニットがヘッド−テイルで結合した連鎖構造は、TMSを基準とし、溶媒に重テトラクロロエタンを用いた13C−NMR測定において、42.4〜43.0ppm、43.7〜44.5ppm付近にピ−クを与える。3個以上のスチレンユニットがヘッド−テイルで結合した連鎖構造は、同様の測定において、40.7〜41.0ppm、及び43.0〜43.6ppm付近にもピ−クを与える。したがって、2個以上のスチレンユニットがヘッド−テイルで結合した連鎖構造は、同様の測定において40〜45ppm付近にピ−クを与える。他方、従来公知のいわゆる擬似ランダム共重合体では、スチレン含量が最大の50モル%付近においても、スチレンのヘッド−テイルの連鎖構造を見出すことはできない。さらに、擬似ランダム共重合体を製造する触媒を用いてスチレンの単独重合を試みても重合体は得られない。重合条件等により極少量のアタクティクスチレンホモポリマーが得られる場合があるが、これは共存するメチルアルモキサンまたはその中に混入するアルキルアルミニウムによるカチオン重合、またはラジカル重合によって形成されたものと解するべきである。さらに、本発明のスチレン−エチレンランダム共重合体は、スチレンユニットのヘッド−テイル連鎖構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティクである。スチレンユニットのヘッド−テイル連鎖構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティクとは、アイソタクティクダイアッド分率ms(またはメソダイアッド分率ともいう)が0.5より大きい、好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上を示す構造をいう。スチレンユニットの連鎖構造の立体規則性は13C−NMRによって観測される43〜44ppm付近のメチレン炭素のピーク位置、及び1H−NMRによって観測される主鎖プロトンのピーク位置で決定される。
米国特許5502133号公報によれば、アイソタクティクポリスチレン連鎖構造のメチレン炭素は42.9〜43.3ppmに現れるが、シンジオタクティクポリスチレン連鎖構造のメチレン炭素は44.0〜44.7ppm付近に現れる。シンジオタクティクポリスチレンのシャープなメチレン炭素及びアタクティクポリスチレンの43〜45ppmのブロードなピークの出現位置は、本発明のスチレン−エチレンランダム共重合体のほかの炭素の比較的強度が低いピーク位置と近接あるいは重なっている。しかし、本発明において42.9〜43.4ppmにメチレン炭素ピークが強く観測されるのに比較して、44.0〜44.7ppm付近には明瞭なピークは認められない。
さらに、米国特許5502133号公報及び本発明の比較例によれば1H−NMRにおいて主鎖メチレン、メチンプロトンに帰属されるピークはアイソタクティクポリスチレンの場合、1.5〜1.6ppm、2.2〜2.3ppmに、シンジオタクティクポリスチレンの場合、1.3〜1.4ppm、1.8〜1.9ppmに観測される。本発明の共重合体においては、ピークが1.5〜1.6ppm及び2.2ppmに観測され、このNMR解析の結果は、本発明の共重合体中のスチレン連鎖はアイソタクティクの立体規則性であることを示す。
スチレンユニットの連鎖構造のアイソタクティクダイアッド分率msは、13C−NMR測定によるスチレン連鎖構造のメチレン炭素または1H−NMR測定による主鎖メチレン、メチンプロトンの各ピークから以下の式で導かれる。各ピークのシンジオタクティクダイアッド構造(r構造)に由来するピーク面積Ar’とアイソタクティクダイアッド構造(m構造)に由来するピークの面積Am’から、下記の式(iii)によって求めることができる。
ms=Am’/(Ar’+Am’) 式(iii)
ピークの出現位置は測定条件や溶媒によって若干シフトする場合がある。本発明におけるランダム共重合体とは、スチレンユニットのヘッド−テイルで結合した連鎖構造、エチレンユニットの結合した連鎖構造及びスチレンユニットとエチレンユニットが結合した構造を含む共重合体である。スチレンの各含量によって、あるいは重合温度、用いられる触媒、助触媒等の重合条件によって、本共重合体中のこれらの構造の含まれる割合は変化する。スチレン含量が少なくなれば、スチレンユニットのヘッド−テイルで結合した連鎖構造の含まれる割合は減少する。例えばスチレン含量が約20モル%以下の共重合体の場合、スチレンユニットのヘッド−テイルで結合した連鎖構造は通常の13C−NMR測定ではその構造に由来するピークを直接観測することは困難である。しかし、本発明の遷移金属触媒成分を用いて、または本発明の製造方法により、スチレン単独の重合により高い活性で立体規則性を有するホモポリマーが製造できること、すなわち、本質的にスチレンユニットのヘッド−テイルで結合した連鎖構造を形成することが可能であること、及び共重合体においては、少なくとも13C−NMR法によって20〜99モル%のスチレン含量に対応してスチレンユニットのヘッド−テイルで結合した連鎖構造の割合が連続的に変化することから、20モル%以下であっても量は少ないもののスチレンユニットのヘッド−テイルで結合した連鎖構造が共重合体中に存在しうることは明白である。13Cでエンリッチしたスチレンモノマ−を用い13C−NMRで分析する等の手段により、スチレン含量20モル%以下の共重合体中のスチレンユニットのヘッド−テイルで結合した連鎖構造を観測することは可能である。エチレンユニットの連鎖構造についてもまったく同様のことがいえる。
従来の立体規則性のない擬似ランダム共重合体のスチレンの異種結合に由来する構造のメチレン炭素のピークは、34.0〜34.5ppm及び34.5〜35.2ppmの2つの領域にあることが知られている。(例えば、PolymerPreprints,Japan,42,2292(1993))本発明のスチレン−エチレンランダム共重合体は、スチレンに由来する異種結合構造のメチレン炭素に帰属されるピークが34.5〜35.2ppmの領域に観測されるが、34.0〜34.5ppmにはほとんど認められない。これは、本発明の共重合体の特徴の一つを示し、スチレンに由来する下記の式のような異種結合構造においてもフェニル基の高い立体規則性が保持されていることを示す。
Figure 2006193755
本発明のスチレン−エチレンランダム共重合体の重量平均分子量は、スチレン含量5モル%以上20モル%未満では6万以上、好ましくは8万以上、特に好ましくは18万以上であり、スチレン含量20モル%以上55モル%未満では3万以上、好ましくは4万以上、更に好ましくは10万以上、特に好ましくは22万以上であり、スチレン含量55モル%以上99.9モル%以下では3万以上、好ましくは4万以上であって、実用的な高い分子量を有する。分子量分布(Mw/Mn)は6以下、好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。ここでの重量平均分子量はGPCで標準ポリスチレンを用いて求めたポリスチレン換算分子量をいう。以下の説明でも同様である。さらに、本発明のスチレン−エチレンランダム共重合体は、高い立体規則性を有するエチレンとスチレンの交互構造と、同時に種々の長さのエチレン連鎖、スチレンの異種結合、スチレンの連鎖等の多様な構造を併せて有するという特徴を持つ。また、本発明のスチレン−エチレンランダム共重合体は、共重合体中のスチレンの含量によって交互構造の割合を、上記の式で得られるλ値で1より大きく70未満の範囲で種々変更可能である。この立体規則的な交互構造は結晶可能な構造であるので、本発明の共重合体は、Stの含量により、あるいは適当な方法で結晶化度を制御することにより、結晶性、非結晶性、部分的に結晶構造を有するポリマーという多様な特性を与えることが可能である。λ値が70未満であることは、結晶性ポリマーでありながら、有意の靭性、透明性を与えるために、また、部分的に結晶性のポリマーとなるために、あるいは、非結晶性のポリマーとなるために重要である。本発明の共重合体は、従来の立体規則性を有せずまたスチレン連鎖も有しないスチレン−エチレン共重合体に比べて、それぞれのSt含量の領域、種々の結晶化度において、初期引張弾性率、堅さ、破断強度、耐溶剤性等の性能が向上し、新規結晶性樹脂、熱可塑性エラストマー、透明軟質樹脂として特徴有る物性を示す。さらに、スチレン含量を変更することで、ガラス転移点を−50℃から100℃の広い範囲で変更することが可能である。本発明の共重合体のうち特に、スチレン含量が50モル%より高い、主にスチレンユニットの連鎖構造とスチレンユニットとエチレンユニットの交互構造から構成される共重合体は、透明性が高く、ガラス転移温度が高く、エチレンの連鎖が少ないか、非常に少ないので、初期引張弾性率が高く、良好なプラスチックとしての物性を示す。また、交互構造及び少量のエチレン連鎖が連鎖構造中に比較的均一に存在しているため、耐衝撃性に優れ、優れた靭性を示す。スチレン含量が10〜75モル%、好ましくは15〜60モル%の範囲では、交互構造の立体規則性により結晶性を有することができ、部分的にミクロ結晶構造を有する共重合体であるため、ガラス転移温度付近及びそれ以上の温度で熱可塑性エラストマーとしての物性を示すことが出来る。さらに、スチレン連鎖構造は、アイソタクティクの立体規則性を有するため結晶可能であり、一般的な結晶化処置により結晶化可能である。本発明のスチレン−エチレンランダム共重合体は、およそ10モル%以上75モル%以下のスチレン含量域において、50℃〜130℃程度の融点(DSCによる)を有することができる。またスチレン含量90モル%以上では、アイソタクティクのポリスチレン連鎖構造に由来する100〜240℃程度の融点を有することができる。結晶融解熱は、いずれも1〜50J/g程度である。この様なDSCによる融点及び結晶融解熱は、前処理条件等によりある程度変わりうる。他方、従来の立体規則性を有せずまたスチレン連鎖も有しないスチレン−エチレン共重合体(擬似ランダム共重合体)は、文献ANTEC,1634(1996)に示されているように、低スチレン含量では、ポリエチレン類似の結晶構造を有するが、共重合体中のスチレン含量の増加に従い、その融点及び結晶化度は急激に低下し、スチレン含量約15モル%では室温程度にまで融点は低下してしまう。さらに、およそ15〜20モル%以上50モル%未満のスチレン含量では融点を持たない非結晶性の共重合体である。溶出性の可塑剤やハロゲンを基本的に含有しない本スチレン−エチレンランダム共重合体は、安全性が高いという基本的特徴を有する。本発明の共重合体はそれぞれのスチレン含量において下記のような特徴を示す。スチレン含量5〜10モル%の共重合体は引張強度、透明性が高く、柔軟でありプラストマーないしエラストマーとしての性質を示す。スチレン含量10〜25モル%の共重合体は引張強度、伸び、透明、柔軟、回復性が高くエラストマーとしての性質を示す。以上の組成の共重合体は、単独で、あるいはスチレン含量の異なる該共重合体同士のアロイとして、あるいはポリプロピレン等のポリオレフィン等とのアロイとして包装用のストレッチフィルムに好適に使用できる。スチレン含量50モル%以上99.9モル%以下のミクロ結晶性の、あるいは結晶化率の低い共重合体は、透明性の高いプラスチックであり、ガラス転移点以上の温度で高いシュリンク性、ガラス転移点以下の温度での高い寸法安定性を有し、包装用のシュリンクフィルムとして有用である。また、いったん融点以上に加熱しガラス転移点以下に急冷し、固定化された形状を、ガラス転移点以上融点以下の温度条件で変形しガラス転移点以下に冷却することでその形状を変形固定化しても、再度ガラス転移点以上融点以下の温度条件に加熱すれば最初の形状を回復する。すなわち、形状記憶性を有する。スチレン含量5〜50モル%の共重合体は、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンやポリスチレン、その他の樹脂とのアロイ、部分架橋した組成物として、軟質塩ビ代替用用途に好適に用いられる。また、この組成の共重合体はスチレン系樹脂とポリオレフィンの相溶化剤や、スチレン系樹脂やポリオレフィン系樹脂への添加剤、ゴムの改質剤、粘着剤の一成分として、さらにビチューメン(アスファルト添加剤)として有用である。本共重合体はスチレン含量を変更することで、ガラス転移点を−50〜100℃まで任意に変更可能であり、粘弾性スペクトルにおいて大きなtanδピークを有することから、広い温度範囲に対応可能な制振材として有用である。スチレン含量50モル%付近の共重合体は、他のスチレン含量域の共重合体に比べ、比較的結晶化度を高めることが容易で、不透明ながら、高い初期弾性率を示し、新規部分結晶性プラスチックとして有用である。結晶化度を高める手段としては、アニーリング、核剤の添加、低いガラス転移点のポリマー(ワックス等)とのアロイ化等の手段をとることが可能である。以上、本発明の芳香族ビニル化合物−エチレンランダム共重合体の代表例として、スチレン−エチレンランダム共重合体について説明した。しかし、上記の説明は、上記芳香族ビニル化合物を用いた芳香族ビニル化合物−エチレンランダム共重合体全般に適応できる。
本発明は、さらに、芳香族ビニル化合物含量が5〜99.9モル%以下である、芳香族ビニル化合物−プロピレンランダム共重合体である。この共重合体は新規共重合体であり、本発明の遷移金属触媒成分を用いて、または本発明の製造方法によって得られる芳香族ビニル化合物−プロピレンランダム共重合体を包含するが、特に本発明の遷移金属触媒成分または製造方法には限定されない。以下に、本発明の共重合体の一例であるスチレン−プロピレンランダム共重合体を例に取り説明する。本発明におけるスチレン−プロピレンランダム共重合体は、芳香族ビニル化合物含量が好ましくは5〜99.9モル%以下である共重合体である。また、芳香族ビニル化合物ユニット及びプロピレンユニットの連鎖構造を共に有することを特徴とする芳香族ビニル化合物−プロピレンランダム共重合体である。さらに、芳香族ビニル化合物ユニット及び/またはプロピレンユニットの連鎖構造の立体規則性がアイソタクティクである芳香族ビニル化合物−プロピレンランダム共重合体である。
本発明の芳香族ビニル化合物−オレフィンランダム共重合体の重量平均分子量は、1000以上、共重合体としての物性を考慮に入れると好ましくは1万以上である(芳香族ビニル化合物−エチレンランダム共重合体については上記の通り)。分子量分布(Mw/Mn)は6以下、好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。本発明の芳香族ビニル化合物−オレフィンランダム共重合体は、必ずしもそれが純粋な共重合体である必要はなく、構造及び立体規則性が上記の範囲にあれば、他の構造が含まれていても、また前記のα−オレフィン、芳香族ビニル化合物あるいはブタジエン等の共役ジエンの中のいずれかの他のモノマーが共重合されていても差し支えない。また、重合条件等によっては、芳香族ビニル化合物が熱、ラジカル、またはカチオン重合したアタクティクホモポリマーが少量含まれる場合があるが、その量は全体の10重量%以下である。このようなホモポリマーは溶媒抽出により除去できるが、物性上特に問題がなければこれを含んだまま使用することも出来る。更に、物性改善を目的として、他のポリマーとのブレンドも可能である。また、スチレン含量の異なる本発明の共重合体どうしのブレンドも可能である。
本発明の第五は、前記の一般式(1)で表される重合用遷移金属触媒成分と助触媒とを用いた芳香族ビニル化合物重合体の製造方法である。本発明の製造方法によって得られる芳香族ビニル化合物重合体の立体規則性はアイソタクティクペンタッド分率(mmmm)で0.70以上、好ましくは0.80以上、さらに好ましくは0.90以上である。アイソタクティクダイアッド分率は13C−NMR測定において重合体主鎖に結合したフェニル基の炭素(PhC1)に由来するピークから求めることができる。すなわち、mmmm構造に由来するPhC1炭素ピーク面積の全PhC1炭素ピーク面積に占める割合から求められる。mmmm構造に由来するPhC1炭素ピークは、重テトラクロロエタンを溶媒とし、重テトラクロロエタンの3重線の中心ピーク(73.89ppm)を基準とした場合、146.3ppm付近に現れる。本発明で得られるアイソタクティク芳香族ビニル化合物重合体の重量平均分子量は、1000以上、結晶性ポリマーとしての物性を考慮すると好ましくは1万以上である。分子量分布(Mw/Mn)は6以下、好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。本発明の製造方法により、アタクティクポリスチレンの副生が非常に少なく、高い活性で、高い立体規則性のアイソタクティク芳香族ビニル化合物重合体を得ることができる。
本発明の第六は、主に交互構造から構成される芳香族ビニル化合物−オレフィン交互共重合体、好ましくは芳香族ビニル化合物−エチレン交互共重合体である。この共重合体は本発明の遷移金属触媒成分を用いて、または本発明の製造方法によって得られる。本発明で得られる芳香族ビニル化合物−エチレン交互共重合体は、エチレンと芳香族ビニル化合物の交互構造のフェニル基の立体規則性が下式で与えられるアイソタクティクダイアッド分率mで0.95以上、かつ前記の式(i)で与えられる交互構造指数λが70以上である芳香族ビニル化合物−エチレン交互共重合体である。本発明の芳香族ビニル化合物−エチレン交互共重合体の一例であるスチレン−エチレン交互共重合体のエチレンとスチレンの交互共重合構造のアイソタクティクダイアッド(メソダイアッド)分率mは、前記の式(ii)を用い、前記の方法によって求めることができる。
本発明の芳香族ビニル化合物−エチレン交互共重合体の標準ポリスチレン換算で求めた重量平均分子量は、結晶性プラスチックとしての物性を考慮に入れると好ましくは1万以上である。分子量分布(Mw/Mn)は6以下、好ましくは4以下、特に好ましくは3以下である。本共重合体の芳香族ビニル化合物含量は46モル%以上54モル%以下であり、主に高い立体規則性を有するエチレンと芳香族ビニル化合物の交互構造から構成される。他に少量ながら種々の長さのエチレン連鎖、芳香族ビニル化合物の異種結合、芳香族ビニル化合物の連鎖等の多様な構造を、一定の割合以下で有するという特徴を持つ。本発明の共重合体は、交互構造の割合が高く、かつ交互構造に高い立体規則性を有するため高い結晶化度、融点、速い結晶化速度という特徴を有する。本共重合体のDSC測定で得られる融点は、130℃以上210℃未満であり、好ましくは融点が150℃以上210℃未満である。本共重合体は結晶性、または部分結晶性ポリマーとしての高い物性を示すことができる。そのため、ポリプロピレン、PET樹脂、ナイロン等を代替する新規結晶性プラスチックの用途が想定される。特に本交互共重合体を製造するにあたっては、重合温度は、−20℃から40℃が適当である。
以下に実施例を挙げ、本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。下記の説明において、Cpはシクロペンタジエニル基、Indは1−インデニル基、BIndは4,5−ベンゾ−1−インデニル基、Fluは9−フルオレニル基、Meはメチル基、Etはエチル基、tBuはターシャリ−ブチル基、Phはフェニル基を表す。
各実施例、比較例で得られた共重合体の分析は以下の手段によって実施した。13C−NMRスペクトルは、日本電子社製α−500を使用し、重クロロホルム溶媒または重1,1,2,2−テトラクロロエタン溶媒を用い、TMSを基準として測定した。ここでいうTMSを基準とした測定は以下のような測定である。先ずTMSを基準としてテトラクロロエタンの3重線13C−NMRピークの中心ピークのシフト値を決めた。次いで共重合体をテトラクロロエタンに溶解して13C−NMRを測定し、各ピークシフト値を、テトラクロロエタンの3重線中心ピークを基準として算出した。テトラクロロエタンの3重線中心ピークのシフト値は73.89ppmであった。ピーク面積の定量を行う13CNMRスペクトル測定は、NOEを消去させたプロトンゲートデカップリング法により、パルス幅は45°パルスを用い、繰り返し時間5秒を標準として行った。ちなみに、同一条件で、但し繰り返し時間を1.5秒に変更して測定してみたが、共重合体のピーク面積定量値は、繰り返し時間5秒の場合と測定誤差範囲内で一致した。
共重合体中のスチレン含量の決定は、1H−NMRで行い、機器は日本電子社製α−500及びBRUKER社製AC−250を用いた。重クロロホルム溶媒または、重1,1,2,2−テトラクロロエタンを用いTMSを基準として、フェニル基プロトン由来のピーク(6.5〜7.5ppm)とメチレン、メチン及びメチル基由来のプロトンピーク(0.8〜3ppm)の強度比較で行った。実施例中の分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて標準ポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。室温でTHFに可溶な共重合体は、THFを溶媒とし、東ソー社製HLC−8020を用い測定した。室温でTHFに不溶な共重合体は、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶媒として、Waters社製150CV装置を用い、135℃で測定した。DSC測定は、セイコー電子社製DSC200を用い、N2 気流下昇温速度10℃/minで行った。X線回折は、マックサイエンス社製MXP−18型高出力X線回折装置、線源Cu回転対陰極(波長1.5405オングストローム)を用いて測定した。
実験例
<遷移金属触媒成分の合成A>下式のrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、(別名、rac−イソプロピリデンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、またはrac{BInd−C(Me) 2−BInd}ZrCl2 と記す)は以下の合成法で合成した。4,5−ベンゾインデンはOrganometallics,13,964(1994)に従って合成した。
A−1 1,1−イソプロピリデン−4,5−ベンゾインデンの合成
1,1−イソプロピリデン−4,5−ベンゾインデンの合成は、Can.J.Chem.62,1751(1984)に記載されている6,6−ジフェニルフルベンの合成を参考に行った。ただし、出発原料はベンゾフェノンの代わりにアセトンを、シクロペンタジエンの代わり
に4,5−ベンゾインデンを用いた。
A−2 イソプロピリデンビス4,5−ベンゾ−1−インデンの合成
Ar雰囲気下、21mmolの4,5−ベンゾインデンを70mlのTHFに溶解し、0℃で、当量のBuLiを加え、3時間攪拌した。1,1−イソプロピリデン−4,5−ベンゾインデン21mmolを溶解したTHFを加え、室温で一晩攪拌した。水100ml、ジエチルエーテル150mlを加え振盪し、有機層を分離、飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し溶媒を減圧下、留去した。得られた黄色固体をヘキサンで洗浄、乾燥しイソプロピリデンビス4,5−ベンゾ−1−インデンを3.6g得た。収率は46%であった。1H−NMRスペクトル測定により、7.2〜8.0ppm(m、12H)、6.65ppm(2H)、3.75ppm(4H)、1.84ppm(6H)の位置にピークを有する。測定は、TMSを基準としCDCl3 を溶媒として行なった。
A−3 rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドの合成
Ar雰囲気下、7.6mmolのイソプロピリデンビス4,5−ベンゾ−1−インデンと7.2mmolのジルコニウムテトラキスジメチルアミド、{Zr(NMe2 )4}をトルエン50mlとともに仕込み、130℃で10時間攪拌した。減圧下、トルエンを留去し、塩化メチレン100mlを加え、−78℃に冷却した。ジメチルアミン塩酸塩14.4mmolをゆっくり加え室温にゆっくり昇温し、2時間攪拌した。溶媒を留去後、得られた固体をペンタン、続いて少量のTHFで洗浄し、下記の式で表される黄燈色のrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドを0.84g得た。収率は21%であった。
Figure 2006193755
1H−NMRスペクトル測定により、8.01ppm(m、2H)、7.75ppm(m、2H)、7.69ppm(d、2H)、7.48〜7.58ppm(m、4H)、7.38ppm(d、2H)、7.19ppm(d、2H)、6.26ppm(d、2H)、2.42ppm(s、6H)の位置にピークを有する。測定は、TMSを基準としCDCl3 を溶媒として行なった。元素分析は、元素分析装置1108型(イタリア、ファイソンズ社製)を用いて行い、C63.86%、H3.98%の結果を得た。なお、理論値はC65.39%、H4.16%である。
<遷移金属触媒成分の合成B>rac−ジメチルメチレン(1−インデニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、(別名、rac−イソプロピリデン(1−インデニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、またはrac{Ind−C(Me)2 −BInd}ZrCl2 と記す)は以下の合成法で合成した。
B−1 イソプロピリデン(1−インデン)(4,5−ベンゾ−1−インデン)の合成
Ar雰囲気下、14mmolのインデンを50mlのTHFに溶解し、0℃で、当量のBuLiを加え、10時間攪拌した。1,1−イソプロピリデン−4,5−ベンゾインデン13mmolを溶解したTHF10mlを加え、室温で一晩攪拌した。水50ml、ジエチルエーテル100mlを加え振盪し、有機層を分離、飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥し溶媒を減圧下、留去した。カラムでさらに精製し、イソプロピリデン(1−インデン)(4,5−ベンゾ−1−インデン)を2.5g得た。収率は59%であった。
B−2 rac−ジメチルメチレン(1−インデニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドの合成
Ar雰囲気下、6.5mmolのイソプロピリデン(1−インデン)(4,5−ベンゾ−1−インデン)と6.5mmolのジルコニウムテトラキスジメチルアミド、別名{Zr(NMe2 )4}をトルエン40mlとともに仕込み、130℃で10時間攪拌した。減圧下、トルエンを留去し、塩化メチレン100mlを加え、−78℃に冷却した。ジメチルアミン塩酸塩13mmolをゆっくり加え室温にゆっくり昇温し、2時間攪拌した。溶媒を留去後、得られた固体をペンタン、続いて少量の塩化メチレンで洗浄し、燈色のrac−ジメチルメチレン(1−インデニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドを0.76g得た。収率は24%であった。1H−NMRスペクトル測定により、7.05〜8.04ppm(m、10H、但し、7.17ppmのピークを除く)、7.17ppm(d、H)、6.73ppm(d、H)、6.25ppm(d、H)、6.18ppm(d、H)、2.41ppm(m、3H)、2.37ppm(m、3H)の位置にピークを有する。測定は、TMSを基準とし、溶媒としてCDCl3 を用いて行なった。
<遷移金属触媒成分の合成C>下式のrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムビスジメチルアミド、(別名、rac−イソプロピリデンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムビスジメチルアミド、またはrac{BInd−CMe2 −BInd}Zr(NMe2 )2と記す)及び、meso−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムビスジメチルアミド、(別名、meso−イソプロピリデンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムビスジメチルアミド、またはmeso{BInd−CMe2 −BInd}Zr(NMe2 )2と記す)は以下のようにして合成した。50mlの3口フラスコに配位
子(0.47g、1.25mmol)を入れ、トルエン30mlに溶解した。この中に、Zr(NMe 2 )4 (0.334g、1.25mmol)を添加し、Ar気流下で100度に加熱し3日間攪拌した。生成物より溶媒を留去し、残留物をペンタンで洗浄し、肌色の粉末を得た。NMRを測定した結果、ラセミ体28%、メソ体13%、配位子59%の組成の混合物であった。rac体:1 H−NMR(C6D6、TMS)δ:1.70(s、12H、NMe2)、1.77(s、6H、CMe2)、5.91(d、2H、BIndC5)、6.73(d、2H、BIndC5)、6.8〜7.7(m、12H、aromatic)meso体:1 H−NMR(C6D6、TMS)δ:0.75(s、6H、NMe2)、1.50(s、3H、CMe2)、2.03(s、3H、CMe2)、2.71(s、6H、NMe2)、5.55(d、2H、BIndC5)、6.61(d、2H、BIndC5)、6.8〜7.7(m、12H、aromatic)
<スチレン−エチレンランダム共重合体の合成>
実施例1
真空引き後、エチレンで満たした容量120mlの磁気攪拌子入りオートクレーブにスチレン10ml、メチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製、MMAO−3A)をAl原子基準で8.4μmol仕込んだ。室温下、磁気攪拌しながら遷移金属触媒成分の合成Bで得た触媒rac{BInd−C(Me)2 −Ind}ZrCl2 を8.4μmol、トリイソブチルアルミニウムを0.84mmol含むトルエン溶液16mlをシリンジにて素早く仕込み、ただちにエチレンを導入し全圧0.6MPa(5Kg/cm2 G)に昇圧した。触媒投入後、4分間で重合熱により内温は46℃まで上昇したが、同5分後には降温に転じた。圧力を5Kg/cm2 Gに維持しながら1時間重合を実施した。重合液を大過剰の希塩酸/メタノ−ル液中に投じポリマーを析出させ、真空下70℃で8時間乾燥させた。その結果、5gのポリマーを得た。
実施例2
容量10L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付のオートクレーブを用いて重合を行った。脱水したトルエン800ml、脱水したスチレン4000mlを仕込み、内温50℃に加熱攪拌した。窒素を約100Lバブリングして系内をパージし、トリイソブチルアルミニウム8.4mmol、メチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製、MMAO−3A)をAl基準で84mmol加えた。ただちにエチレンを導入し、圧力0.2MPa(1Kg/cm2 G)で安定した後に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、前記の遷移金属触媒成分の合成Aで得た触媒、racジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを21μmol、トリイソブチルアルミニウム0.84mmolを溶かしたトルエン溶液約50mlをオートクレーブに加えた。内温を50℃、圧力を0.2MPaに維持しながら6時間重合を実施した。重合終了後、得られた重合液を激しく攪拌した過剰のメタノール中に少量ずつ投入し生成したポリマーを析出させた。減圧下、60℃で重量変化が認められなくなるまで乾燥したところ、1000gのポリマーを得た。
実施例3〜9
触媒として前記の遷移金属触媒成分の合成Aで得た触媒、racジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、表2に示す条件で、実施例2と同様に重合、後処理を行った。但し、実施例7では助触媒としてメチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製、PMAO)を用いた。また、実施例4、5では、窒素ガスでエチレンを希釈することでエチレン分圧を下げ、重合を実施した。
実施例10、11
触媒として前記の遷移金属触媒成分の合成Bで得た触媒、racジメチルメチレン(1−インデニル)(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用い、表2に示す条件で実施例2と同様に重合、後処理を行った。
実施例12
用いる触媒として前記の遷移金属触媒成分の合成Cで得られた、rac−体、meso−体の錯体混合物に変更し、その中にrac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムビスジメチルアミドを8.4μmol含む様に秤量し、重合に用いた。表2に示す条件で実施例2と同様に重合、後処理を行った。
実施例13
前記の遷移金属触媒成分の合成Bで得たrac{BInd−C(Me)2 −Ind}ZrCl2 8.4μmolをトリイソブチルアルミニウム1mmolを含むトルエン溶液20mlに溶解した。ここに、Ph3 CB(C6F5)4 を8.4μmol溶解したトルエン溶液20mlを加え、触媒液を調整した。攪拌機の付いた容量1Lのオートクレーブにトルエン400ml、スチレン80mlを仕込み、エチレン圧、10kg/cm 2 G 、内温17℃の条件下、触媒液を導入した。直ちに重合が開始し、発熱によって内温は最高74℃まで上昇した。重合中圧は1.1MPa(10kg/cm2 G )に維持したまま、1時間重合を実施した。実施例2と同様に後処理を行ったところ、53gのポリマーが得られた。
実施例14
容量150L、攪拌機及び加熱冷却用ジャケット付の重合缶を用いて重合を行った。脱水したシクロヘキサン60L、脱水したスチレン12Lを仕込み、内温33℃に加熱攪拌した。トリイソブチルアルミニウム84mmol、メチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製、MMAO−3A)をAl基準で840mmol加えた。ただちにエチレンを導入し、圧力1.0MPa(9Kg/cm 2G)で安定した後に、重合缶上に設置した触媒タンクから、前記の遷移金属触媒成分の合成Aで得た触媒、racジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを78μmol、トリイソブチルアルミニウム2mmolを溶かしたトルエン溶液約100mlを重合缶に加えた。直ちに発熱が開始したので、ジャケットに冷却水を導入した。内温は最高80℃まで上昇したが、以降約70℃を維持し、圧力を1.0MPaに維持しながら2.5時間重合を実施した。重合終了後、得られた重合液を脱気した後、以下のようにクラムフォーミング法で処理し、ポリマーを回収した。重合液を激しく攪拌した分散剤(プルロニック:商品名)を含む300Lの85℃の加熱水中に1時間かけて投入した。その後97℃で1時間攪拌した後に、クラムを含む熱水を冷水中に投入し、クラムを回収した。クラムを50℃で風乾し、その後60℃で真空脱気することで、数mm程度の大きさのクラム形状が良好なポリマー、12.8kgを得た。
比較例1
文献J.Am.Chem.Soc.,110,6255(1988)、J.Organomet.Chem、459、117(1993)を参考に、EWEN型Zr錯体である、下式のジフェニルメチレン(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、別名{Flu−CPh2 −Cp}ZrCl2 を合成した。
Figure 2006193755
窒素置換後、エチレンで置換された容量120mlの攪拌機付きオートクレーブに、スチレン20ml、メチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製、MMAO−3A)4.6mmolを仕込み、40℃に加熱した。エチレン圧を常圧に保ちながら、トルエン20mlに溶解した上記の{Flu−CPh2 −Cp}ZrCl2 46μmolを加え、重合を1時間実施した。重合中は、40℃、常圧(0Kg/cm2 G)に保たれた。実
施例1と同様に重合後処理を行ったところ、2.2gの白色ポリマーを得た。
比較例2
上記のジフェニルメチレン(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを用い、表3に示す条件下、実施例2と同様に重合及び後処理を実施した。モニターしたエチレンの消費量から、重合は実質的に4時間で終了していた。
比較例3
特開平7−053618号公報を参考に、CGCT(拘束幾何構造)型Ti錯体(第3級ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)シランチタンジクロライド、別名{CpMe4 −SiMe2−NtBu}TiCl2 を合成した。
用いる錯体をCGCT(拘束幾何構造)型Ti錯体(第3級ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)シランチタンジクロライドとし、表3に示す条件下、実施例2と同様に重合及び後処理を実施した。モニターしたエチレンの消費量から、重合は実質的に3時間で終了していた。
比較例4、5
用いる錯体をCGCT(拘束幾何構造)型Ti錯体(第3級ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)シランチタンジクロライドとし、表3に示す条件下、実施例2と同様に重合及び後処理を実施した。モニターしたエチレンの消費量から、比較例4、5とも重合は実質的に2.5時間で終了していた。
比較例6
Organometallics,13,964 (1994) を参考に、rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド、別名rac{2−Me−BInd−SiMe2 −2−Me−BInd}ZrCl2 を合成した。用いる錯体をジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライドとし、表3に示す条件下、実施例2と同様に重合及び後処理を実施した。モニターしたエチレンの消費量から、重合は実質的に2時間で終了していた。
比較例7
Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.24,507(1985)を参考に、rac−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、別名rac{Ind−Et−Ind}ZrCl2 を合成した。用いる錯体を、rac−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロライドとし、表3に示す条件下、実施例2と同様に重合及び後処理を実施した。モニターしたエチレンの消費量から、重合は実質的に6時間で終了していた。
表2、表3に共重合の結果を示した。図1には、10Lのオートクレーブを用いて重合した実施例と比較例の触媒当たりのポリマー生産性を示す。実施例の触媒は、比較例の触媒に比べて著しく高い生産性を示すことが分かる。
Figure 2006193755
Figure 2006193755
表4に得られたポリマーのスチレン含量とGPCで求めた分子量、DSCで求めたガラス転移点と融点の結果を示す。
Figure 2006193755
図2、3に本発明のスチレン−エチレン共重合体の代表例として、実施例2で得られた共重合体のGPCチャート及びDSCチャ−トを示す。重合スケールの著しく小さい実施例1を除く各実施例で得られたポリマーのGPC測定において、図2に示すように、異なる検出器(RIとUV)で得られたGPCカーブが、実験の誤差範囲内で一致することは、本共重合体がきわめて均一な組成分布を持つことを示す。表4のDSCによって得られたガラス転移点が1つであることも、本共重合体の均一な組成を示す。
実施例3及び4で得られたポリマーの1H−NMRスペクトルを図4及び5に示す。本発明のスチレン−エチレンランダム共重合体は、具体的には代表的な以下の一般式で表される構造を任意の割合で含む共重合体である。13C−NMRスペクトルのメチン、メチレン炭素領域には、以下に帰属できるピークを示す。a〜oは、下記の化31〜化40の化学構造式中に表示した炭素を示す記号である。重テトラクロロエタンの3重
線の中心ピーク(73.89ppm)を基準として、以下に帰属されるピークを示す。
(1)スチレンとエチレンの交互構造
Figure 2006193755
(式中、Phはフェニル基、xは繰り返し単位数を示し2以上の整数を表す。)すなわち、以下の式で表記できる、Ph基に接続したメチン炭素及びそれに挟まれた3個のメチレン炭素からなる構造を示す。
Figure 2006193755
一般式 (簡略化のため、水素原子は省略した。)
(2)エチレンの連鎖構造
Figure 2006193755
(3)エチレン連鎖とスチレン1ユニットからなる構造
Figure 2006193755
(4)スチレンユニットの異種結合(テイル−テイル構造)からなる構造
Figure 2006193755
(5)エチレンユニット或いはエチレン連鎖とスチレンユニット2個のヘッド−テイル連鎖からなる構造、
Figure 2006193755
またはスチレンユニットとスチレン−エチレン交互構造ユニットがランダム性に結合した構造スチレンユニット
Figure 2006193755
交互構造ユニット
Figure 2006193755
Figure 2006193755
(6)3個以上のスチレンユニットのヘッド−テイル連鎖からなる構造
Figure 2006193755
25.1〜25.2ppm (c)
36.4〜36.5ppm (b)
44.8〜45.4ppm (a)
29.4〜29.9ppm (g)
36.5〜36.8ppm (e)
27.2〜27.6ppm (f)
45.4〜46.1ppm (d,h)
34.5〜34.9ppm (i)
42.4〜43.0ppm (j)
43.7〜44.5ppm (k)
35.6〜36.1ppm (l)
24.0〜24.9ppm (m)
40.7〜41.0ppm (n)
43.0〜43.6ppm (o)
以上のピークは、測定条件や溶媒等の影響、隣接する構造からの遠距離効果により、若干のシフトやピークのミクロ構造、あるいはピークショルダーが生じる場合がある。
これらのピークの帰属は、Macromolecules,13,849(1980)、Stuf.Surf.Sci.Catal.,517,1990、J.Appl.PolymerSci., 53,1453(1994)、J.PolymerPhys.Ed.,13,901(1975)、Macromolecules,10,773(1977)、PolymerPreprints,Japan, 42,2292(1993)、欧州特許416815号公報、特開平4−130114号公報の各文献、13C−NMRInadequate法、DEPT法、及び13CNMRデ−タベ−スSTN(Specinfo)によるピークシフト予測で行った。代表的な例として、実施例3、4、6、9、10、12及び13、比較例1、3の13C−NMRチャートを図6〜23に示した。代表的な実施例、比較例で得られた共重合体の13C−NMRピーク位置を表5に記す。実施例と比較例の13C−NMRスペクトル拡大図を図24、図25に示す。但し、比較例1のスペクトルのみ溶媒としてCDCl 3 を用いているため、他のスペクトル(重テトラクロロエタン)と比較するために、ピーク位置を補正して掲載している。
Figure 2006193755
表5の注
−:実施例での通常の定量を行う13−CNMR測定(積算回数約5000回程度)では、明確なピークは認められなかった。重テトラクロロエタンを溶媒とし、約100℃に加熱溶解して測定した。テトラクロロエタンの13C−NMRによる3重線の中心ピークは、TMSに対し、73.89ppmのシフト値であった。共重合体の各ピークシフト値は、テトラクロロエタンの3重線中心ピーク値を73.89ppmとして算出した。a)は、mm、mmmまたはmmmmを表す。b)は、rr、rrrまたはrrrrを表す。c)重クロロホルムを溶媒とし、TMSを基準として測定した場合のピークシフト値。
各実施例で得られた共重合体の交互構造指数λ値、スチレンユニット−エチレンユニット交互構造のアイソタクティクダイアッド分率m値及びスチレンユニットのヘッド−テイル連鎖構造のアイソタクティクダイアッド分率msを、それぞれ上記の式(i)、(ii)、(iii)に従って求めた。各実施例、比較例で得られたm及びms値を表6に示す。
Figure 2006193755
さらにスチレンユニットのアイソタクティクペンタッド分率:mmmmは、13C−NMR測定によるスチレン連鎖構造のメチレン炭素またはフェニルC1炭素のピークから以下の式で求めることができる。
mmmm=A(mmmm)/A(all)
ここで、A(mmmm)はスチレン連鎖のmmmm構造に由来するフェニルC1炭素ピーク面積、A(all)は全ての立体規則性に由来するフェニルC1炭素ピークの面積の総和である。特に、フェニルC1炭素ピークの場合、ヘッド−テイルのスチレン連鎖mmmmピークの近傍に共重合構造のフェニルC1に由来するピークが存在するが、アタクティクスチレン連鎖やシンジオタクティクスチレン連鎖構造に由来するピークの出現位置である145.2〜146.0ppm付近にはピークは殆ど観測されない。よって、mmmmは少なくとも、0.2以上である。本発明の共重合体が、結晶構造を持ちうることを示すため、実施例10および14で得られた共重合体のX線回折図を図26に示す。サンプルに適宜アニーリング処理を施し、結晶化率を向上した後に測定した。おおよそ、15モル%以上のスチレン含量の本発明のスチレン−エチレンランダム共重合体において、含まれる立体規則的なスチレン−エチレン交互構造に由来する結晶構造からの回折ピークが観測された。スチレン含量がおよそ15モル%以下の場合、他にポリエチレンの結晶構造からの回折ピークが観察される。用いる遷移金属触媒成分として、CGCT(拘束幾何構造)型Ti錯体(第3級ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η5 −シクロペンタジエニル)シランチタンジクロライドやジフェニルメチレン(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを用いた場合、得られる共重合体中のスチレン−エチレン交互構造にはアイソタクティクの立体規則性は無い。またヘッド−テイルのスチレン連鎖も観測されない。用いる遷移金属触媒成分として、rac−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロライドを用いた場合、スチレン含量を10モル%以上に高めることは非常に困難で、かつ得られるポリマーの分子量も重量平均分子量(Mw)で5万と低い。スチレン含量5モル%以上20モル%未満の共重合体では重量平均分子量6万未満では、破断強度等の力学特性が低く、実用ポリマーとしては不適当である。またヘッド−テイルのスチレン連鎖も当然観測されない。同遷移金属触媒成分を用いた場合、比較例10に示すように、スチレンの単独重合は進行しない。この触媒系によってスチレン連鎖を形成することはできない。本発明の重合用遷移金属触媒成分と異なるベンゾインデニル基置換基パターンを有するジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライドを用いた場合、スチレン含量が2mol%以下の共重合体が得られた。すなわち、ベンゾインデニル基の2位に置換基を有する様な金属錯体を用いた場合には、高いスチレン含量を与えることはできない。またヘッド−テイルのスチレン連鎖も観測されない。同遷移金属触媒成分を用いた場合、比較例9に示すように、立体規則性を有するスチレン重合体は得られない。少量生成するアタクティクのポリスチレンは、公知の文献等によれば、併発するカチオンあるいはラジカル重合によって形成されたものと解することができる。よって、この触媒系によってスチレン連鎖を形成することはできない。
<スチレン−プロピレンランダム共重合体の合成>
実施例15
攪拌装置の付いた容量1Lのオートクレーブを真空パージ及び窒素置換した後に、スチレン100ml、トルエン40ml、トリイソブチルアルミニウム5mml、メチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製MMAO−3A)をAl原子基準で21mmol、この順序で仕込んだ。その後、オートクレーブをドライアイスで−50℃まで冷却し、プロピレンガスを1mol導入した。オートクレーブ上部に設置した耐圧タンクから、触媒rac{BInd−C(Me)2 −BInd}ZrCl2 を21μmol、トリイソブチルアルミニウム0.84mmolを含むトルエン溶液約40mlをプロピレンガスに同伴させ導入した。ドライアイスバスを外し、約30分かけて50℃まで昇温し、50℃で1時間重合を行なった。終了後、徐々に放圧した後に重合液を実施例1と同様に後処理したところ、8.5gのポリマーを得た。
実施例16〜18
表7に示す重合条件下、実施例15と同様にして重合、後処理を行った。
比較例8
用いる錯体をジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライドとし、表7に示す条件下、実施例15と同様に重合及び後処理を実施した。
表7に重合条件及び結果を示す。表8に得られたポリマーのスチレン含量とGPCで求めた分子量、DSCで求めたガラス転移点と融点の結果を示す。
Figure 2006193755
Figure 2006193755
図27、28に実施例15で得られた共重合体のGPCチャ−トとDSCスペクトルを示す。各実施例で得られたポリマーのGPC測定において、図27に示すように、異なる検出器(RIとUV)で得られたGPCカーブが、小さなショルダーが認められるものの、実験の誤差範囲内で一致することは、スチレンの組成分布が比較的に均一であることを示す。DSCにより得られるガラス転移点が1つであることも、本共重合体の均一な組成を示す。代表的な実施例15、実施例17、実施例18の13C−NMRのチャートを図29〜34に示す。表9に13C−NMR測定結果を示す。
Figure 2006193755
本発明のスチレン−プロピレン共重合体は13C−NMR測定によって図に示すような複雑なピークパターンを与える。これは、プロピレンユニット同志、スチレンユニット同志、またはプロピレンユニットとスチレンユニットの結合した構造のそれぞれのヘッド−テイル、テイル−テイル連鎖や、プロピレンの1−3結合による見かけ上のエチレン連鎖類似構造の形成等により、他種類の結合様式が形成されたことによるものである。しかしながら、スチレンユニットのフェニルC1炭素(フェニル基の6個の炭素の内、主鎖に結合している炭素)のピークのうち、146.3ppm付近のピークはアイソタクティクポリスチレン連鎖に由来し、プロピレンユニットのメチル炭素の21.6〜21.6ppmのピークは、アイソタクティクポリプロピレン連鎖に由来する。すなわち、スチレン連鎖構造とプロピレン連鎖構造、及びスチレン−プロピレン結合構造を有し、スチレン連鎖構造とプロピレン連鎖構造の立体規則性がともにアイソタクティクである共重合体である。アイソタクティクインデックス(mm、mmmまたはmmmm)は、プロピレン連鎖の場合、21.5ppm付近のメチル基アイソタクティクピーク(mm、mmmまたはmmmm)の面積と全メチル基ピークの面積を比較することによって得られる。上記の複雑な結合構造に起因する他のピークが近傍に存在するが、アイソタクティクインデックス(mm、mmmまたはmmmm)は、プロピレン連鎖に関してそれぞれ、mmは0.5以上、mmmは0.4以上、mmmmは0.2以上である。アイソタクティクインデックス(mm、mmmまたはmmmm)は、スチレン連鎖の場合、146.3ppm付近のフェニルC1基アイソタクティクピーク(mm、mmmまたはmmmm)の面積と145〜146ppm付近に現れる全フェニルC1ピークの面積を比較することによって得られる。アイソタクティクインデックス(mm、mmmまたはmmmm)は、スチレン連鎖に関してそれぞれ、mmは0.5以上、mmmは0.4以上、mmmmは0.2以上である。本発明の重合用遷移金属触媒成分と異なるベンゾインデニル基置換基パタ−ンを有するジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライドを用いた場合、得られるのはアイソタクティクポリプロピレンとアタクティクのポリスチレンの混合物である。
<アイソタクティクポリスチレンの合成>
実施例19
真空排気及び窒素パージをおこなった容量100mlのシュレンク管(磁気攪拌用バー入り)にスチレンを10ml、トリイソブチルアルミニウムを0.84mmol仕込んだ。さらに、メチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製MMAO−3A)をAl基準で8.4μmol加え、rac−ジメチルメチレンビス(4,5−ベンゾ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドを1.5μmol含むトルエン溶液10mlを加えた。室温で3時間攪拌した後に、大過剰の塩酸酸性メタノール中に投入し、ポリマーを析出させた。得られたポリマーを70℃で8時間乾燥したところ、1.5gの白色粉末状のポリマーを得た。
実施例20
用いる錯体をrac−ジメチルメチレン(4,5−ベンゾ−1−インデニル)(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド4.6μmolにして、表10の条件下、実施例19と同様に重合及び後処理を行なったところ、0.5gの白色粉末状のポリマーを得た。
比較例9
用いる錯体をrac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド、別名rac{2−Me−BInd−SiMe 2 −2−Me−BInd}ZrCl2 に変更して、表10の条件下、実施例19と同様に重合及び後処理を行なったところ、0.15gの白色粉末状のポリマーを得た。
比較例10
用いる錯体をrac−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、別名rac{Ind−Et−Ind}ZrCl2 に変更して、表10の条件下、実施例19と同様に重合及び後処理を行なったが、ポリマーは得られなかった。
表10に重合条件及び結果を示す。表11に得られたポリマーのGPCで求めた分子量、DSCで求めたガラス転移点と融点の結果を示す。
Figure 2006193755
Figure 2006193755
実施例19で得られたポリマーの13CNMRのチャートを図35に、DSCチャートを図36にX線回折図を図37に示す。1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2の3重線の中心ピーク(73.89ppm)を基準にして求めた13C−NMRのピークシフト値は、以下の通りであった。
Figure 2006193755
DSCから得られた融点は222℃であり、またX線回折の結果から、得られた共重合体はアイソタクティクのポリスチレンであることがわかる。実施例19で得られたアイソタクティクのポリスチレンのフェニルC1炭素ピークから求めたメソペンタッド分率(mmmm)は0.90以上である。rac−ジメチルシリレンビス(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライドを用いた比較例9の場合、極少量のアタクティクポリスチレンが得られたが、これは共存するメチルアルモキサンまたはその中に混入するアルキルアルミニウムによるカチオン重合、またはラジカル重合によって形成されたものと解するべきである。rac−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロリドを用いた比較例10の場合、ポリマーは得られなかった。
<スチレン−エチレン交互共重合体の合成>
実施例21
容量1L、攪拌機付きのオートクレーブを用いて重合を行った。トルエン240ml、スチレン240mlを仕込み、内温50℃に加熱し、窒素を約80Lバブリングして系内をパージした。その後オートクレーブを氷浴に浸し冷却した。トリイソブチルアルミニウム8.4mmol、メチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製、PMAO−S)をAl基準で8.4mmol加えた。ただちにエチレンを導入し、圧力1Kg/cm2 Gで安定した後
に、オートクレーブ上に設置した触媒タンクから、遷移金属触媒成分の合成Aで得られた触媒rac−ジメチルメチレンビス−4,5−ベンゾ−1−インデニルジルコニウムジクロリド6μmol、トリイソブチルアルミニウム0.84mmolを溶かしたトルエン溶液約30mlをオートクレーブに加えた。内温を2℃〜6℃に維持し、エチレン圧を0.2MPa(1Kg/cm 2 G)に維持しながら6時間重合を実施した。重合中は、エチレンの消費速度を流量積算計によりモニターして、重合反応の進行をモニターしたが、6時間の時点で重合は失活無しに実質的に進行中であった。エチレンを放圧し、得られた重合液を激しく攪拌した過剰のメタノール中に少量ずつ投入し生成したポリマーを析出させた。減圧下、80℃で重量変化が認められなくなるまで、約10時間乾燥したところ、39gのポリマーを得た。
実施例22
錯体を8.4μmol用い、オートクレーブを−20℃のクーリングバスに浸して重合を実施することで内温を−16℃に維持して、他は実施例21と同様に重合、後処理を実施したところ、1.5gのポリマーを得た。このポリマーは、アタクティクのポリスチレンホモポリマーを含んでいたので、さらに沸騰アセトンで抽出処理し、沸騰アセトン不溶分として0.7gの白色粉末ポリマーを得た。
比較例11
用いる触媒をエチレンビスインデニルジルコニウムジクロリドとし、表13の条件下、実施例21と同様に重合、後処理を実施した。その結果、14gのポリマーを得た。得られた共重合体は、アタクティクのポリスチレンと共重合体の混合物であったので、沸騰アセトンで抽出し、沸騰アセトン不溶分として8gの白色ポリマーを得た。
各実施例、比較例の重合条件及び重合結果を表13に示す。また、各実施例、比較例で得られた共重合体の分子量、分子量分布、融点及びガラス転移温度を表14に、13C−NMRピークシフト値を表15に示す。本発明で得られる共重合体の一例として、実施例21で得られた共重合体の1H−NMRを図38に、13C−NMRスペクトルを図39及び40に示した。
Figure 2006193755
Figure 2006193755
Figure 2006193755
本発明で得られる芳香族ビニル化合物−エチレン交互共重合体は、エチレンと芳香族ビニル化合物の交互構造のフェニル基の立体規則性が下式で与えられるアイソタクティクダイアッド分率mで0.95より大きく、かつ下式(i)で与えられる交互構造指数λが70以上であることを特徴とする芳香族ビニル化合物−エチレン交互共重合体である。交互指数λは下式(i)によって与えられる。
λ=A3/A2×100 式(i)
ここでA3は、13C−NMR測定により得られる、下記の一般式(5’)で示される芳香族ビニル化合物−エチレン交互構造の炭素に由来する3種類のピークa、b、cの面積の総和である。また、A2はTMSを基準とした13C−NMRにより0〜50ppmの範囲に観測される主鎖メチレン及びメチン炭素に由来するピークの面積の総和である。
Figure 2006193755
式中、Phはフェニル基等の芳香族基、xは繰り返し単位数を示し2以上の整数を表す。
Figure 2006193755
式中、Phはフェニル基等の芳香族基、xは繰り返し単位数を示し2以上の整数を表す。すなわち、以下の式で表記できるPh基に接続したメチン炭素及びそれに挟まれた3個のメチレン炭素からなる構造を示す。下記の一般式では簡略化のため、水素原子は省略した。
Figure 2006193755
エチレンとスチレンの交互共重合構造のアイソタクティクダイアッド(メソダイアッド)分率mは、前記の式(ii)によって求めることができる。また、前記の式によって得られた交互構造指数λ値を表16に示す。各実施例で得られた共重合体のスチレンユニット−エチレンユニット交互構造のアイソタクティクダイアッド分率m値を、前記式で求めた。各実施例、比較例で得られたmを表16に示す。本発明で得られる共重合体の例として、実施例21で得られた共重合体のGPCチャ−トを図41に示す。本発明で得られる共重合体の例として、実施例22で得られた共重合体のDSCチャ−ト(溶融状態から液体窒素で急冷した後に測定、昇温速度20℃/min.)を図42に示す。図42から、本発明の共重合体は、高い融点と速い結晶化速度を有することがわかる。本発明で得られる共重合体の例として、実施例21で得られた共重合体のX線回折チャ−トを図43に示す。比較例11に示すように、金属錯体としてエチレンビスインデニルジルコニウムジクロリドを用いる場合、−20℃以上のより実用的な重合温度条件下では、スチレン含量を高めることができず、交互性の高い共重合体を得ることはでない。
Figure 2006193755
実験例
<遷移金属触媒成分の合成D>下式rac−ジメチルメチレンビス(3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル)ジルコニウムジクロライド(別名、rac{CpPhen−CMe2 −CpPhen}ZrCl2 )は以下のように合成した。なお、CpPhenはシクロペンタ〔c〕フェナンスリルを表す。
Figure 2006193755
1Hまたは3H−シクロペンタ〔c〕フェナンスレンは、文献Organometallics,16,3413(1997)の方法に従い合成した。
D−1 イソプロピリデンビス(シクロペンタ〔c〕フェナンスレン)
Ar雰囲気下、32mmolの1Hまたは3H−シクロペンタ〔c〕フェナンスレンを水酸化カリウム3.0gを懸濁した40mlのジメトキシエタンに添加し、室温で30分間攪拌後、アセトンを15mmol加え、60℃で2時間攪拌した。10%リン酸水を加え中和した後に塩化メチレンで抽出し、有機相を水洗、乾燥し、塩化メチレンを留去した。塩化メチレン−ジエチルエ−テル溶液中からの再結晶化により、白色結晶イソプロピリデンビス(シクロペンタ〔c〕フェナンスレン)を1.5g得た。1H−NMRスペクトル測定により、1.93ppm(6H、s)、4.20ppm(4H、d)、6.89ppm(2H、t)、7.5〜7.9ppm(14H、m)、8.91ppm(2H、d)の位置にピークを有する。測定は、TMSを基準としCDCl3を溶媒として行なった。
D−3 rac−ジメチルメチレンビス(3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル)ジルコニウムジクロライドの合成
Ar気流下、2.0mmolのイソプロピリデンビス(シクロペンタ〔c〕フェナンスレン)と2.0mmolのジルコニウムテトラキスジメチルアミド、{Zr(NMe2 )4}をトルエン20mlとともに仕込み、リフラックス下7時間攪拌した。減圧下、トルエンを留去し、塩化メチレン50mlを加え、−50℃に冷却した。ジメチルアミン塩酸塩4.0mmolをゆっくり加え室温にゆっくり昇温し、さらに2時間攪拌した。溶媒を留去後、得られた固体をペンタン、続いて少量の塩化メチレンで洗浄し、meso体及び配位子を除去し、rac−ジメチルメチレンビス(3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル)ジルコニウムジクロライドの黄燈色結晶を0.36g得た。1H−NMRスペクトル測定により、2.55ppm(6H、s)、6.49ppm(2H、d)、7.55〜8.02ppm(16H、m)、8.82ppm(2H、d)の位置にピークを有する。測定は、TMSを基準としCDCl3 を溶媒として行なった。
<スチレン−エチレンランダム共重合体の合成>
実施例23
触媒として前記の遷移金属触媒成分の合成Dで得た触媒、rac−ジメチルメチレンビス(3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル)ジルコニウムジクロライドを用い、表13に示す条件で、実施例2と同様に重合、後処理を行った。その結果、910gのポリマー−が得られた。スチレン含量は57.0モル%、分子量(Mw)は、27.9万、分子量分布(Mw/Mn)は2.0、ガラス転移点は40℃であった。13C−NMR測定の結果、2個および3個以上のヘッド−テイルスチレン連鎖構造に由来するピークが観測された。13C−NMRスペクトルを図44、45、及び46に示す。13CNMRスペクトルのピークシフト値を表17に示す。スチレン−エチレン交互構造の立体規則性はアイソタクティクでm値は0.95以上、ms値は0.80以上、交互構造指数λ値は30であった。本錯体を触媒成分として用いた場合、実施例の条件下でランダム性の高い(交互性の低い)共重合体を与えることができる。
Figure 2006193755
表17の注)
−:実施例での通常の定量を行う13C−NMR測定(積算回数約5000回程度)では、明確なピークは認められなかった。
重テトラクロロエタンを溶媒とし、約100℃に加熱溶解して測定した。テトラクロロエタンの3重線13CNMRピ−クの中心ピ−クは、TMSに対し、73.89ppmのシフト値であった。共重合体の各ピ−クシフト値は、テトラクロロエタンの3重線中心ピ−ク値を73.89ppmとして算出した。
実施例24
触媒として前記の遷移金属触媒成分の合成Dで得た触媒、rac−ジメチルメチレンビス(3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル)ジルコニウムジクロライドを用い、表13に示す条件で、実施例19と同様に重合、後処理を行った。その結果、1.8gのポリマーが得られた。重量平均分子量(Mw)は、20.8万、分子量分布(Mw/Mn)は、1.7融点は225℃であった。1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2の3重線の中心ピーク(73.89ppm)を基準にして求めた13C−NMRのピークシフト値は、以下の通りであった。
Figure 2006193755
フェニルC1炭素ピークから求めたメソペンタッド分率(mmmm)は、0.95以上であった。rac−ジメチルメチレンビス(3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル)ジルコニウムジクロライドを遷移金属触媒成分として用いた場合、非常に高い活性で高分子量のスチレン−エチレンランダム共重合体およびアイソタクティックポリスチレンを製造できる。
参考例1
<ポリエチレンの合成>真空引き後、エチレンで満たした容量120mlの磁気攪拌子入りオートクレーブにトルエン20ml、メチルアルモキサン(東ソーアクゾ社製、MMAO−3A)をAl原子基準で8.4μmol仕込んだ。内温を50℃に加熱し、磁気攪拌しながらrac{BInd−C(Me)2 −BInd}ZrCl2を1.0μmol、トリイソブチルアルミニウムを0.84mmol含むトルエン溶液16mlをシリンジにて
素早く仕込み、ただちにエチレンを導入し全圧0.6MPa(5Kg/cm2 G)に昇圧した。圧力を5Kg/cm2 Gに維持しながら10分間重合を実施した。重合液を大過剰の希塩酸/メタノ−ル液中に投じポリマーを析出させ、真空下70℃で8時間乾燥させた。その結果、1.7gのポリエチレンを得た。DSC測定の結果、融点は130℃であった。
各実施例、比較例の触媒あたりのポリマー生産性を示す図 実施例2で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体のGPCチャート 実施例2で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体のDSCチャート 実施例3で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の1H−NMRチャート 実施例4で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の1H−NMRチャート 実施例3で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRチャート 全体図 実施例3で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRチャート メチン、メチレン領域 実施例4で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRチャート 全体図 実施例4で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRチャート メチン、メチレン領域 実施例6で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRチャート 全体図 実施例6で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRチャート メチン、メチレン領域 実施例9で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRチャート 全体図 実施例9で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRチャート メチン、メチレン領域 実施例10で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRチャート 全体図 実施例10で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRチャート メチン、メチレン領域 実施例12で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRチャート 全体図 実施例12で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRチャート メチン、メチレン領域 実施例13で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRチャート 全体図 実施例13で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRチャート メチン、メチレン領域 比較例1で得られたスチレン−エチレン擬似ランダム共重合体の13C−NMRチャート 全体図 比較例1で得られたスチレン−エチレン擬似ランダム共重合体の13C−NMRチャート メチン、メチレン領域 比較例3で得られたスチレン−エチレン擬似ランダム共重合体の13C−NMRチャート 全体図 比較例3で得られたスチレン−エチレン擬似ランダム共重合体の13C−NMRチャート メチン、メチレン領域 13C−NMR 45ppm(メチン炭素(35) 特開平11-130808ピーク)付近 13C−NMR 25ppm(交互構造ピーク)付近 実施例14で得られた共重合体のX線回折図 実施例15で得られたスチレン−プロピレンランダム共重合体のGPCチャート 実施例15で得られたスチレン−プロピレンランダム共重合体のDSCチャート 実施例15で得られたスチレン−プロピレンランダム共重合体の13C−NMRチャート メチン、メチレン、メチル領域 実施例15で得られたスチレン−プロピレンランダム共重合体の13C−NMRチャート フェニルC1領域 実施例17で得られたスチレン−プロピレンランダム共重合体の13C−NMRチャート メチン、メチレン、メチル領域 実施例17で得られたスチレン−プロピレンランダム共重合体の13C−NMRチャート フェニルC1領域 実施例18で得られたスチレン−プロピレンランダム共重合体の13C−NMRチャート メチン、メチレン、メチル領域 実施例18で得られたスチレン−プロピレンランダム共重合体の13C−NMRチャート フェニルC1領域 実施例19で得られたスチレン重合体の13C−NMR 実施例19で得られたスチレン重合体のDSCチャート 実施例19で得られたスチレン重合体のX線回折図 実施例21で得られたスチレン−エチレン交互共重合体の1H−NMRスペクトル 実施例21で得られたスチレン−エチレン交互共重合体の13C−NMRスペクトル 全体図 実施例21で得られたスチレン−エチレン交互共重合体の13C−NMRスペクトル メチン、メチレン領域 実施例21で得られたスチレン−エチレン交互共重合体のGPCチャート 実施例22で得られたスチレン−エチレン交互共重合体のDSCチャート 実施例21で得られたスチレン−エチレン交互共重合体のX線回折図 実施例23で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRスペクトル 全体図 実施例23で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRスペクトル メチン−メチレン領域 実施例23で得られたスチレン−エチレンランダム共重合体の13C−NMRスペクトル 25ppm付近

Claims (19)

  1. 下記の一般式(1)で表されることを特徴とする芳香族ビニル化合物重合体または芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体の製造用遷移金属触媒成分。
    Figure 2006193755
    式中、Aは下記の一般式、化2、化3または化4で表すことができる非置換または置換ベンゾインデニル基である。
    Figure 2006193755
    Figure 2006193755
    Figure 2006193755
    (上記の化2〜化4において、R1〜R3はそれぞれ水素、炭素数1〜20のアルキル基、6〜10のアリール基、7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR3 基、SiR3 基またはPR2 基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)であり、R1同士、R2同士、R3同士は互いに同一でも異なっていても良い。また、隣接するR1、R2及びR3基は一体となって5〜8員環の芳香環または脂肪環を形成しても良い。)Bは、Aと同様の化学式で表される非置換もしくは置換ベンゾインデニル基、あるいは下記の一般式、化5、化6、化7で示される非置換または置換シクロペンタジエニル基、非置換または置換インデニル基あるいは非置換または置換フルオレニル基である。
    Figure 2006193755
    Figure 2006193755
    Figure 2006193755
    (上記の化5〜7において、R4〜R6はそれぞれ水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜20のアルキルアリール基、ハロゲン原子、OSiR3 基、SiR3 基またはPR2 基(Rはいずれも炭素数1〜10の炭化水素基を表す)であり、R4同士、R5同士、R6同士は互いに同一でも異なっていても良い。)A、B共に非置換または置換ベンゾインデニル基である場合には両者は同一でも異なっていてもよい。Yは、A、Bと結合を有し、置換基として水素あるいは炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基またはシリレン基である。これらの置換基は互いに異なっていても同一でもよい。また、Yは置換基と一体になって環状構造を有していてもよい。Xは、水素、ハロゲン、アルキル基、アリール基、アルキルアリ−ル基、シリル基、メトキシ基、エトキシ基、アルコキシ基またはジアルキルアミド基である。Mはジルコニウム、ハフニウム、またはチタンである。
  2. Aが、4,5−ベンゾ−1−インデニル基、5,6−ベンゾ−1−インデニル基、6,7−ベンゾ−1−インデニル基、α−アセナフト−1−インデニル基、3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル基、または1−シクロペンタ〔l〕フェナンスリル基から選ばれる1つであり、Bが4,5−ベンゾ−1−インデニル基、5,6−ベンゾ−1−インデニル基、6,7−ベンゾ−1−インデニル基、α−アセナフト−1−インデニル基、3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル基、1−シクロペンタ〔l〕フェナンスリル基、1−インデニル基、4−フェニルインデニル、または4−ナフチルインデニル基から選ばれる1つあることを特徴とする請求項1記載の遷移金属触媒成分。
  3. Mがジルコニウムであり、Yが置換基として水素または炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基であることを特徴とする請求項1記載の遷移金属触媒成分。
  4. Xがジアルキルアミドであることを特徴とする請求項1記載の遷移金属触媒成分。
  5. Aが3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル基であり、Bが3−シクロペンタ〔c〕フェナンスリル基、化2〜化4で示される非置換または置換4,5−ベンゾ−1−インデニル基、あるいは化6で示される非置換または置換1−インデニル基であり、Mがジルコニウム、ハフニウム、またはチタンであり、YがA、Bと結合を有し、置換基として水素または炭素数1〜15の炭化水素基を有するメチレン基またはシリレン基であり、これらの置換基は互いに異なっていても同一でもよく、またYは置換基と一体になって環状構造を有していてもよいものであることを特徴とする請求項1記載の遷移金属触媒成分。
  6. 下記の一般式(2−1)または(2−式中、R’は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または水素、nは2〜100の整数である。それぞれのR’は互いに同一でも異なっていても良い。
    2)で表され、A、B中の各シクロペンタジエニル構造セントロイドと金属Mのなす角度(バイトアングル)が120°以下であることを特徴とする芳香族ビニル化合物重合体または芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体の製造用遷移金属触媒成分。
    Figure 2006193755
    Figure 2006193755
    式中A、B、Y、M及びXは一般式(1)と同一の意味を示す。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載の重合用遷移金属触媒成分と助触媒から構成される、芳香族ビニル化合物重合体または芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体製造用の重合触媒。
  8. 助触媒として下記の一般式(3)または(4)で示されるアルミノキサン(またはアルモキサンと記す)を用い、また必要に応じてアルキルアルミニウムを用いることを特徴とする、請求項7記載の芳香族ビニル化合物重合体または芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体製造用の重合触媒。
    Figure 2006193755
    式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、または水素、mは2〜100の整数である。それぞれのRは互いに同一でも異なっていても良い。
    Figure 2006193755
  9. 請求項1〜6のいずれか1項記載の遷移金属触媒成分と助触媒からなる、アイソタクティクの立体規則性を有する芳香族ビニル化合物重合体または芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体製造用の重合触媒。
  10. 請求項1〜6のいずれか1項記載の遷移金属触媒成分と助触媒からなる重合用触媒を用いて重合することを特徴とするアイソタクティク芳香族ビニル化合物重合体または芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体の製造方法。
  11. 請求項1〜6のいずれか1項記載の遷移金属触媒成分と助触媒からなる重合用触媒を用いて重合して得られる芳香族ビニル化合物−オレフィン共重合体。
  12. 芳香族ビニル化合物含量が5モル%以上99.9モル%以下であり、2個以上の芳香族ビニル化合物ユニットのヘッド−テイルの連鎖構造を有することを特徴とする芳香族ビニル化合物−エチレンランダム共重合体。
  13. 共重合体構造中に含まれる下記の一般式(5)で示される芳香族ビニル化合物とエチレンの交互構造のフェニル基の立体規則性がアイソタクティクダイアッド分率mで0.75より大きく、かつ下記の式
    (i)で与えられる交互構造指数λが70より小さく、1より大きいことを特徴とする、請求項12記載の芳香族ビニル化合物−エチレンランダム共重合体。
    λ=A3/A2×100 式(i)
    ここでA3は、13C−NMR測定により得られる、下記の一般式(5’)で示される芳香族ビニル化合物−エチレン交互構造に由来する3種類のピークa、b、cの面積の総和である。また、A2はTMSを基準とした13C−NMRにより0〜50ppmの範囲に観測される主鎖メチレン及び主鎖メチン炭素に由来するピークの面積の総和である。
    Figure 2006193755
    (式中、Phは芳香族基、xは繰り返し単位数を示し2以上の整数を表す。)
    Figure 2006193755
    (式中、Phは芳香族基、xは繰り返し単位数を示し2以上の整数を表す。)
  14. TMSを基準とした13C−NMR測定によって40〜45ppmに現れるピークにより帰属される芳香族ビニル化合物ユニットの連鎖構造を有することを特徴とする請求項10記載の芳香族ビニル化合物−エチレンランダム共重合体。
  15. 芳香族ビニル化合物ユニットの連鎖構造の立体規則性がアイソタクティクであることを特徴とする請求項12記載の芳香族ビニル化合物−エチレンランダム共重合体。
  16. 請求項10記載の製造方法によって得られる芳香族ビニル化合物−プロピレンランダム共重合体。
  17. 請求項10記載の製造方法において40℃以下−20℃以上の重合温度で重合することを特徴とする芳香族ビニル化合物−エチレン交互共重合体の製造方法。
  18. 請求項17記載の重合方法により得られる交互指数λ値が70以上でありかつ、交互構造のアイソタクティクダイアッド(メソダイアッド)分率mが0.95以上である芳香族ビニル化合物−エチレン立体規則的交互共重合体。
  19. ジルコニウム、チタニウムまたはハフニウムのジアルキルアミド体を原料とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の遷移金属触媒成分の製造方法。
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