JP2006192272A - 自己結紮歯科矯正ブラケット - Google Patents

Abstract

【課題】従来型の自己結紮歯科矯正ブラケットの欠点を克服する。
【解決手段】歯(23)に装着されるよう構成されたブラケット本体(12)を有する歯科矯正ブラケット(10)は、ベース面(58)を画定するベース表面(40)と平行移動面(60)を画定するスライド係合トラック(48,50,52,54)とを有するアーチワイヤ溝(16)を含む。面(60)は面(58)に対してある角度をなす。結紮スライド(14)は本体(12)のトラック(48,50,52,54)と係合すると共に、このトラック(48,50,52,54)に沿ってかつ面(60)に対して平行に、開ポジション(ワイヤ(18)を溝(16)内に挿入可能)と閉ポジション(ワイヤ(18)は溝(16)内に保持される)との間で移動可能である。平行移動面(60)はベース面(58)に対してある角度をなしており、結紮スライド(14)が開ポジションへと移動させられる際、結紮スライド(14)が、歯(23)を取り囲む歯肉(61)と接触するのを阻止する。
【選択図】図１

Description

本発明は概して歯科矯正ブラケット、さらに詳しくは自己結紮歯科矯正ブラケットに関する。

歯科矯正ブラケットは、患者の咬合状態を改善することに充てられる全ての歯科矯正治療の重要部品の典型である。従来型の歯科矯正治療では、矯正歯科医またはアシスタントは患者の歯にブラケットを装着し、そしてアーチワイヤを各ブラケットの溝内に係合させている。このアーチワイヤは、歯を適切な位置へと強制的に移動させる矯正力を加える。従来型の結紮線、たとえば小さな弾性Ｏリングまたは細い金属ワイヤが、アーチワイヤを各ブラケット溝内で保持するのに使用されている。個々の結紮線を各ブラケットへ装着するのが困難であるがゆえ、アーチワイヤをブラケット溝内に捕らえるための可動部または部材、たとえばラッチまたはスライドによって結紮線の必要性を排除する自己結紮歯科矯正ブラケットが開発されている。

第１および第２の大臼歯用の従来型歯科矯正ブラケットは、通常、アーチワイヤ用のアンカーを提供する頬チューブの形態のブラケットを含む。この頬チューブは、通常、歯または臼歯バンドに対して固定され、これが今度は第１または第２の大臼歯に対して接合される。従来型アーチワイヤの末端は続いて歯科矯正治療を容易にするため上記チューブ内に嵌め込まれる。ある歯科矯正治療においては、ひどく捩じれた臼歯は、アーチワイヤの端部を第１および第２の臼歯チューブの両方に挿入するのを困難にする。このようにひどく捩じれている場合、従来型の頬チューブに付随する難点を克服するため、第１の大臼歯上でコンバーチブル頬チューブがしばしば使用される。

だが、ある歯科矯正治療では、従来の結紮線がアーチワイヤをコンバーチブル頬チューブに対して固定する際になされるように、アーチワイヤを固定し、このアーチワイヤの移動を抑止することは望ましくない。最新の臼歯ブラケットのこの制約を克服するため、自己結紮ブラケットを第１および／または第２の臼歯上で使用することが望ましいであろう。それにもかかわらず、その使用は、これまで好ましくない欠点を露呈している。たとえば、自己結紮ブラケットを大臼歯上で使用する際の一つの問題は、そのサイズがしばしば、ブラケットと、対向するあごの歯との間の咬合問題を引き起こす、というものである。上側の歯と下側の歯はたとえば咀嚼している間、当接するので、上側の歯は下側の臼歯上のブラケットと接触する可能性があり、ブラケットが壊れるか、あるいはそこからブラケットが外れてしまうことがある。

さらに、通常の状況では、大臼歯の歯肉‐咬合高さは、その上に歯科矯正ブラケットを取り付けるための限定された表面を提供する。従来の自己結紮ブラケットは下方からブラケット本体と係合するスライドを備え、かつ歯肉‐咬合面に実質的に平行なブラケット本体のガイドに沿って移動する。その上、開ポジションにあるときには、上記スライドの底縁部はブラケット本体の下方に延在する。したがって、従来型の自己結紮ブラケットが下側大臼歯に取り付けられた場合、このスライドの底縁部は歯肉組織(歯茎)に接触して、患者を不快にさせる。さらに、スライドとの歯肉干渉がかなりひどいものとなるので、スライドを、アーチワイヤを収容するのに十分なほど開けることができず、それゆえ自己結紮ブラケットの利点が無効になっている。

従来型の直接接合式自己結紮ブラケットにしばしば付随するさらに他の問題は、ブラケットを歯に装着することに伴うものである。自己結紮ブラケットを歯に装着するため、医療専門家は、たとえばピンセットのような器具を使用してブラケットを把持し、口腔内でブラケットを取り扱う。しかしながら、従来型の自己結紮ブラケットは、通常、医療関係者がブラケットを確実に把持できるような都合のよい把持ポイントを備えていない。したがって、口腔内でブラケットを扱うのは難しく、ブラケットがピンセットから外れて、床の上や患者の口の中に落下してしまうことがある。この問題は、自己結紮ブラケットを口腔の後方で大臼歯に対して装着しようとするときには深刻なものとなるであろう。

従来型の自己結紮歯科矯正ブラケットの上記およびその他の欠点を克服する、大臼歯に装着可能な自己結紮歯科矯正ブラケットが求められている。

本発明の一態様では、歯科矯正ブラケットは、歯に装着されるよう構成されたブラケット本体を備え、かつ概してベース平面を画定するベース表面を有するアーチワイヤ溝を備える。このブラケット本体はさらに、概して平行移動平面を画定するスライド係合トラックを含む。この平行移動面は上記ベース面に対して鋭角をなしている。結紮スライドはブラケット本体のスライド係合トラックと係合すると共に、このスライド係合トラックに沿って、かつ開ポジション(このポジションではアーチワイヤはアーチワイヤ溝内に挿入可能である)と閉ポジション(このポジションではアーチワイヤはアーチワイヤ溝内で保持される)との間を上記移動面に対して平行に移動可能である。上記平行移動面は、ベース平面に対して、およそ１０度とおよそ２５度の間の角度を、好ましくはおよそ２０度の角度を成すことができる。平行移動平面とベース平面との間の傾斜関係は、結紮スライドが開ポジションへと移動させられた際、この結紮スライドが歯を取り囲む歯肉と接触することが阻止されるようなものとされる。

アーチワイヤとアーチワイヤ溝との間の密着嵌合をもたらすため、結紮スライドは、第１および第２の部分を有するスライド係合トラックと向き合う面を備える。第１の部分はスライド係合トラックと係合する。第２の部分は、結紮スライドが閉ポジションにあるときアーチワイヤ溝を覆い、かつ第２の部分が概してベース面に対して平行となるよう第１の部分に対して、ある角度をなす。

本発明の他の態様では、ブラケット本体は、対向するあごの歯と向き合うよう構成された対向面を備える。この対向面は、あごが閉じられると共に上側の歯と下側の歯が当接するとき、歯科矯正ブラケットと、対向するあごの歯との間に咬合干渉が生じないような輪郭形状を有する。対向面は、ベース面に実質的に直交する概して平坦な面を形成する外側端部に隣接した凹部を備えていてもよい。この平坦面は、ブラケットを歯に装着するのに使用される歯科矯正用器具、たとえばピンセット用の把持ポイントを提供するよう構成される。

本発明のさらに他の態様では、ブラケット本体に対する結紮スライドの移動は、この結紮スライドがブラケット本体から外れるのを阻止するために制限可能である。ブラケット本体は突出部または受け部の一方を備えることができ、しかも結紮スライドは突出部および受け部の他方を備えることができ、結紮スライドが開ポジションと閉ポジションとの間をスライド係合トラックに沿って移動するとき、突出部または受け部が、他方に対して移動する。受け部は第１の端部を備え、この第１の端部は、結紮スライドが開ポジションにあるとき、突出部がこの第１の端部と係合するよう構成される。このようにして、結紮スライドが偶発的にあるいは意図せずしてブラケット本体から外れるのが阻止される。

ある実施形態では、保持ピンがスライド係合トラックから突出すると共に結紮スライドは保持スロットを有し、この保持スロットは結紮スライドを貫通して延在すると共にそれに沿って結紮スライドが開ポジションと閉ポジションとの間を移動する方向に向けられている。保持ピンは保持スロット内に収容されると共に、保持スロットは、結紮スライドが開ポジションと閉ポジションとの間を動くとき、保持ピンに対して移動する。他の実施形態はさらに、結紮スライドに関連付けられた保持ピン、および上で説明したのと同じ様式で機能するブラケット本体に関連付けられた保持溝を顕示する。ブラケット本体に対する結紮スライドの移動を制限するための他の構成もまた可能である。たとえば、本発明の他の実施形態では、スライド係合トラックは、突出部または受け部の一方を有する少なくとも一つの側壁によって範囲が定められ、しかも結紮スライドは側壁と向き合う周縁部を備える。この周縁部は、突出部または受け部の他方を備える。突出部はたとえば保持ピンあるいは保持ボールとすることができ、そして受け部は保持溝とすることができる。

本発明の上記およびその他の目的および利点は、添付図面およびその説明から明らかになるであろう。

添付図面(これは本明細書に組み込まれておりかつ本明細書の一部をなしている)は本発明の実施形態を示しており、上述した本発明の全般的な説明および以下に挙げる実施形態の詳細な説明と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。

続いて本発明をある実施形態と関連付けて説明するが、本発明はある特定タイプの自己結紮歯科矯正ブラケットを実施することに限定されるものではない。本発明の実施形態の説明は、請求項によって規定される本発明の精神および範囲内に含まれてもよいような、全ての代替物、変更物、および均等装置を包含することを意図している。特に当業者ならば、本明細書で説明した本発明の実施形態の構成要素は無数の異なる方式でアレンジできる、ということを認識するであろう。

図１および図２を参照すると、歯科矯正ブラケット(概して参照数字１０で示す)は、ブラケット本体１２と、このブラケット本体１２にスライド可能に組み付けられた可動式の結紮スライド１４とを具備する。ブラケット本体１２はそれ自身に形成されたアーチワイヤ溝１６を備え、これはアーチワイヤ１８(仮想線で示す)を収容するよう構成されている。結紮スライド１４は開ポジション(このポジションではアーチワイヤ１８はアーチワイヤ溝１６内に挿入可能である)と閉ポジション(このポジションではアーチワイヤ１８がアーチワイヤ溝１６内で保持される)との間を動けるようになっている。ブラケット本体１２および結紮スライド１４は共同で、歯科矯正治療に使用するための歯科矯正ブラケット１０の構造体を形成する。本発明は、第１および／または第２の大臼歯に設置される自己結紮ブラケットにとって好都合であるが、それに限定されるものではない。

さらに詳しく言うと、本発明は、下あごの第１および／または第２の大臼歯に配置される自己結紮ブラケットにとって好都合である。こうした理由から。本発明の歯科矯正ブラケット１０は、本明細書では、下あごの大臼歯に取り付けられる標準フレーム(reference frame)を用いて説明する。したがって、本明細書で用いているように、ブラケット１０を説明するのに用いた、「唇の〜」、「舌の〜」、「近心の〜」、「遠心の〜」、「咬合の〜」、および「歯肉の〜」といったような用語は、選択された標準フレームに関連するものである。だが、本発明は選択された標準フレームおよび説明用語に限定されるものではない。なぜなら、本発明の歯科矯正ブラケット１０は、他の歯の上で、そして口腔内にて他の向きで使用可能だからである。例として、歯科矯正ブラケット１０は上あごの大臼歯上で使用可能であり、しかも結紮スライド１４が咬合または歯肉方向のいずれかに開くような向きで配置できる。当業者ならば、本明細書で用いている説明用語が、標準フレームに変更があったときには、直接適用されないであろうことを認識するだろう。にもかかわらず、本発明では口腔内での位置および向きには無関係であることを意図しており、しかも歯科矯正ブラケット１０を説明するのに用いた相対的用語は単に、本発明に係る適当な説明を提供するものに過ぎない。たとえば、「唇の〜」、「舌の〜」、「近心の〜」、「遠心の〜」、「咬合の〜」、および「歯肉の〜」といった用語は、決して本発明を特定の位置および向きに限定するものではない。

ブラケット本体１２は、舌面２０と、患者の下あごで支持される歯２３に装着されたときの咬合面２２と、歯肉面２４と、近心面２６と、遠心面２８と、唇面３０とを有する。ブラケット本体１２の舌面２０は、既存の手法で、たとえば適当な歯科矯正用セメントまたは接着剤、ないしは隣接する歯の周囲のバンドによって歯２３に固定されるような形状とされる。舌面２０はさらにパッド３２を備えてもよく、このパッド３２は歯２３の外面に固定される。

本発明のある有利な形態では、咬合面２２は、概して歯肉‐唇方向に突出する唇部３４を含むことによって外形を得ている。つまり輪郭が定められている。たとえば、咬合面２２は、唇方向にそこから延在する凹部と共に舌面２０に隣接する凸部を備えていてもよい。このようにして、アーチワイヤ溝１６と咬合面２２との間のブラケット本体１２の厚みは凸部に沿って比較的厚く、そして凹部に沿って薄くなる。つまり減少する。多くの従来型の自己結紮ブラケットは主として唇方向に突出する咬合面を有する。したがって、従来型自己結紮ブラケットが大臼歯上に配置された際、たとえば咀嚼時のような歯が当接するとき、対向するあごの歯がしばしばブラケットの咬合面と接触することがあった。歯と歯科矯正ブラケットとの望ましくない接触を避けるため、本発明の自己結紮ブラケット１０は、同様に歯肉方向に突出する唇部３４を備えた咬合面２２を含む。この輪郭形状は咬合面２２を対向するあごの歯(概して３５で示す)から離れるよう移動させ、この結果、歯２３および３５が当接するとき、対向するあごの歯３５は歯科矯正ブラケット１０の咬合面２２と接触することはなく、これによって咬合干渉が抑止される(図３)。

咬合面２２は唇部３４に凹部３６をさらに含んでいてもよい。凹部３６は好ましくは、口腔内で歯科矯正ブラケット１０を操作するためのピンセットなどの器具(図示せず)用の把持ポイントとなるよう構成された概ね平坦面３８を有するよう構成されてもよい。以下で説明するように、平坦面３８は概して、アーチワイヤ溝１６の底によって画定されるベース面に対して直交する。これは、歯科矯正ブラケットを口腔の奥で大臼歯に取り付ける際に特に有利である。この場所は、ブラケット１０を大臼歯２３に適切に取り付けるためにブラケット１０を操作するのが困難となることがある。多くの従来型自己結紮ブラケットは不規則な咬合面を備えており、したがってピンセットのような器具による把持には役立たない。医療専門家が本発明の自己結紮ブラケット１０を装着するのを助けるため、平坦面３８は凹部領域３６を備える。平坦面３８は自己結紮ブラケット１０を確実に把持するための改良面を提供し、これによって医療専門家は、ブラケット１０を大臼歯２３の上に容易に配置することができる。

図１および図２を続けて参照すると、ブラケット本体１２はベース面４０および一対の対向する溝面４２,４４を備え、この溝面４２,４４はそれぞれ、近心面２６から遠心面２８へと近心／遠心方向に延在するアーチワイヤ溝１６を共同で画定するベース面４０から唇方向に突出している。溝面４２,４４およびベース面４０は実質的にブラケット本体１２の材料内に封じ込められている。すなわち組み込まれている。ブラケット本体１２のアーチワイヤ溝１６は、典型的な従来型自己結紮歯科矯正ブラケットと同様の方式で、歯科矯正アーチワイヤ１８を収容するよう設計される。

ブラケット本体１２はさらに、溝面４４から概して唇‐歯肉方向に突出する概して平坦なサポート面４６を備える。サポート面４６は、その近心‐遠心端部において、咬合‐歯肉方向に延在する一対のスライド溝４８,５０を備えていてもよい。一対の対向するガイド５２,５４はサポート面４６によって支持されかつそのそれぞれの近心および遠心面２６,２８上に配置されている。ガイド５２,５４は概してＬ形状であり、それぞれ、唇方向にサポート面４６から突出する第１の脚を有する。ガイド５２は遠心方向に突出する第２の脚を有し、一方、ガイド５４は近心方向に突出する第２の脚を有し、これによって一体的にガイド５２,５４は部分的にサポート面４６に重なっている。溝４８,５０およびガイド５２,５４を一体的に含む平坦なサポート面４６は、結紮スライド１４を支持しかつ案内するためのスライド係合トラック５６をブラケット本体１２内に画定する。

本発明の他の有利な態様では、スライド係合トラック５６およびアーチワイヤ溝１６は概して非直交関係を持つ。特に、アーチワイヤ溝１６のベース面４０は概してベース面５８を画定し、かつスライド係合トラック５６は概して平行移動平面６０を画定し、この平面６０に沿って結紮スライド１４が開ポジションと閉ポジションとの間を移動する。ベース面４０およびスライド係合トラック５６は正確に平坦である必要はなく、ベース面５８および平行移動平面６０が概ね画定可能であるよう形成されればよい、ということを理解されたい。ベース面５８と平行移動平面６０は、図３に示すように、角度Ａだけ互いに鋭角をなしている。これによって、結紮スライド１４が閉ポジションから開ポジションへとスライド係合トラック５６に沿ってかつ平行移動平面６０と平行に移動させられた際、結紮スライド１４は概して唇‐歯肉方向に移動し、この結果、結紮スライド１４の縁部は、大臼歯２３に装着された際、歯科矯正ブラケット１０に隣接する歯肉６１と接触することはない。結紮スライド１４が歯肉６１と接するのを阻止するため、ベース面５８および平行移動平面６０は、概ね１０度と概ね２５度の間の角度Ａを、好ましくは概ね２０度の角度をなす。だが、本発明はこれに限定されるものではなく、当業者ならばわかるように、特定の用途に好適な他の角度とすることもできる。

結紮スライド１４は、近心部６４、遠心部６６、および近心部６４と遠心部６６との中間の中央部６８を備えた概して平坦な構造体である。近心部６４および遠心部６６は一体スライドレール７０,７２を含み、これは咬合‐歯肉方向に延在すると共に、結紮スライド１４がブラケット本体１２と係合した際にブラケット本体１２のスライド溝４８,５０と係合するよう構成されている。さらに、ガイド５２,５４は近心部６４および遠心部６６のそれぞれと重なり、かつ中央部６８は、その唇面が実質的にブラケット本体１２の唇面３０と面一になるよう唇方向に突出している。中央部６８の唇面は咬合‐歯肉方向にテーパーをなす、すなわち狭くなるチャネル７４を具備していてもよく、しかもチャネル７４の頂点付近に配置された孔７６を具備していてもよい。以下で説明するように、孔７６は結紮スライド１４を閉ポジションで固定するのを助ける。

弾性係合部材７８は結紮スライド１４を閉ポジションで固定するよう機能する。この弾性係合部材７８は概してＬ形であり、しかもサポート面４６に形成された凹部８２内に収容された、舌側に延在するプロング８０を備える。弾性係合部材７８の自由端は唇方向に延在する爪すなわち突起８４を備え、これは概して断面に関し結紮スライド１４の孔７６の断面と合致する。突起８４は、結紮スライド１４が閉ポジションにあるとき、この結紮スライド１４の孔７６内に突出する。突起８４と孔７６との間の係合は、閉ポジションにある結紮スライド１４を、さもなければスライド１４を開けようとする動きに抗して保持する。この結果、結紮スライド１４は閉ポジションから開ポジションへと意図せずして動くことはない。

突起８４を支持する弾性係合部材７８の自由端は、結紮スライド１４が開ポジションにあるとき弾性的に圧縮され、そして突起８４は結紮スライド１４の舌面と係合する。この結果、弾性係合部材７８の自由端は、結紮スライド１４を閉ポジションでロックするよう突起８４を孔７６と選択的に係合させるために、突起８４が孔７６と整列したとき、唇方向に、そして結紮スライド１４に向かって弾性的に撓むかあるいは変形できる。この目的のために、弾性係合部材７８は唇方向に付勢されており、突起８４を、歯２３から離れるようにかつ結紮スライド１４に向かって押しやっている。

本発明の他の有利な態様では、その中に挿入されているアーチワイヤ１８との密着嵌合をもたらすアーチワイヤ溝１６を提供することが好ましい。したがって、図３および図４に示すように、アーチワイヤ溝１６は、普通、概して長方形状のものである。ベース面４０および側方溝面４２,４４の相互配置は概ね長方形状であり、概して長方形のアーチワイヤ１８に対して密着嵌合する。それでも、アーチワイヤ溝１６のベース面５８およびそれに沿って結紮スライド１４が移動する平行移動平面６０が互いにある角度をなしているので、結紮スライド１４は、アーチワイヤ１８の唇面に対する密着嵌合状態を得るために改変されなければならない。この目的のために、スライドレール７０,７２の舌面は第１および第２の部分８６,８８をそれぞれ含む。第１の部分８６はスライド係合トラック５６のスライド溝４８,５０と係合する。第２の部分８８は、それがベース面５８に対して概ね平行であるよう第１の部分８６に対して、ある角度をなしている。第２の部分８８は、結紮スライド１４が閉ポジションにあるとき、アーチワイヤ溝１６を覆う。第２の部分８８は、ベース面５８と平行移動平面６０との間の角度Ａに実質的に等しい大きさだけ傾斜している。このようにして、結紮スライド１４はアーチワイヤ１８の唇面に対する密着嵌合状態を得る。

本発明のさらに他の有利な態様によれば、咬合面２２の唇部３４は、近心‐遠心方向に延在する凸部(概して９０で示す)を形成するためアーチワイヤ溝１６を越えて唇方向に延在している。凸部９０は、概してベース面５８に平行な唇面９２を有する。結紮スライド１４が閉ポジションへと移動させられたとき、スライドレール７０,７２の第２の部分８８の咬合端部は、凸部９０の唇面９２に当接し、そして咬合面２２の唇部３４によって覆われる。これによって、口腔内の食物や他の物質が結紮スライド１４の咬合縁部に接するのが、そして意図せずしてスライド１４が開ポジションへと押しやられるのが阻止される。さらに唇部３４は、結紮スライドが開ポジションから閉ポジションへと動かされているとき、結紮スライド１４が閉ポジションを通り越してしまうのを阻止するためのストッパーを提供する。

結紮スライド１４のブラケット本体１２に対する移動を規制するため、ブラケット本体１２は突出部または受け部の一方を備えてもよく、結紮スライド１４は突出部または受け部の他方を備えてもよい。この突出部および受け部は協働して結紮スライド１４の移動を規制する。たとえば、図４Ａに示すように、結紮スライド１４は、それを貫通しかつ概して咬合‐歯肉方向に延在する保持長孔９４(図１)を含む。保持長孔９４は図１および図２に示すように、結紮スライド１４の遠心部６６に形成されてもよいが、近心部６４に形成することもできる。保持ピン９６は、結紮スライド１４の長孔９４と整列するサポート面４６に形成された凹部９８内に収容された舌部を含む。保持ピン９６は唇方向に突出し、そして図２に示すように、結紮スライド１４が開ポジションと閉ポジションとの間を動くとき保持長孔９４が保持ピン９６に対して動くよう長孔９４内に収容される。保持ピン／長孔構造は、使用中、結紮スライド１４が開ポジションにあるとき、結紮スライド１４がブラケット本体１２から偶発的にあるいは意図せずして外れるのを阻止する。保持ピン／長孔構造は、結紮スライド１４をいかなるポジションでも係合部材７８がそうするようにはロックしないが、結紮スライド１４の咬合‐歯肉方向の移動を規制する、ということを理解されたい。

さらに、保持長孔９４の長さは結紮スライド１４の咬合‐歯肉範囲の移動を限定する。保持長孔９４は、完全開ポジションではアーチワイヤ１８がアーチワイヤ溝１６内に挿入可能であるよう長尺なものであってよい。たとえば、保持ピン９６は、結紮スライド１４の咬合縁部が概ねアーチワイヤ溝面４４と面一であるとき、第１の長孔端部１００に当接可能である。これによって、アーチワイヤ１８は容易にアーチワイヤ溝１６内に挿入可能である。第２の長孔端部１０２は、閉ポジションでは結紮スライド１４をロックするために、弾性係合部材７８の突起８４が結紮スライド１４の孔７６と整列可能であるよう構成することができる。保持ピン９６は、結紮スライド１４が閉ポジションにあるときには、第２の長孔端部１０２に当接可能である。

自己結紮歯科矯正ブラケット１０の代替実施形態を図４Ｂに示す。ここで、同じ参照数字は図４Ａの特徴部と同じものであることを示している。この実施形態では、受け部はブラケット本体１２に設けられており、突出部が結紮スライド１４に設けられている。特に、ブラケット本体１２は、概して咬合‐歯肉方向に延在するサポート面４６の保持溝１０４を含む。保持溝１０４は、ブラケット本体１２の遠心面２８に隣接するサポート面４６に形成されてもよいが、近心面２６に隣接して形成することもできる。保持ピン１０６は、ブラケット本体１２の保持溝１０４と整列する結紮スライド１４の凹部１０８内に収容された唇部を含む。保持ピン１０６は舌方向に突出すると共に、結紮スライド１４が開ポジションと閉ポジションとの間を動くとき保持ピン１０６が保持溝１０４に対して移動するよう保持溝１０４内に収容されている。使用時、図４Ｂに示す保持ピン／長孔構造は、図４Ａに関して先に図示しかつ説明した保持ピン／長孔構造と実質的に同じ様式で機能する。

図５Ａおよび図５Ｂ(ここでは同じ参照数字は図１〜図４Ａの特徴部と同じものであることを示す)において、突出部および受け部は、ブラケット本体１２に対する結紮スライド１４の移動を規制するための代替形状および／または位置を有する。たとえば図５Ａに示す実施形態では、ブラケット本体１２のガイドの一方、たとえばガイド５２は、近心面２６にそれを貫通して延在する孔１１０を備える。保持ボール１１２が締まり嵌め状態で、この孔１１０内に押し込まれており、これによって保持ボール１１２の一部が、ガイド５２とサポート面４６との間の空間内に突出している。レール７０の近心面は保持溝１１４(仮想線で示す)を備え、これは概して咬合‐歯肉方向に延在しかつ第１および第２の端部１１６,１１８をそれぞれ形成している。保持ボール１１２は遠心方向に突出しかつ保持溝１１４内に収容されている。これによって、結紮スライド１４が開ポジションと閉ポジションとの間を動くとき、保持溝１１４は保持ボール１１２に対して移動する。当業者であれば、保持ボール１１２および対応する保持溝１１４は、ブラケット本体１２の遠心面２８および結紮スライド１４に配置可能であることを理解するであろう。

保持ボール／溝構造は、使用中、結紮スライド１４が開ポジションに位置させられたとき、ブラケット本体１２からの結紮スライド１４の偶発的なあるいは意図しない脱落を阻止し、しかも図４Ａに関して上で図示しかつ説明した保持ピン／長孔構造と実質的に同じ様式で機能する。たとえば、保持溝１１４の長さは、結紮スライド１４の咬合‐歯肉範囲の動きを制限する。保持溝１１４は、完全な開ポジションではアーチワイヤ１８をアーチワイヤ溝１６内に挿入可能であるよう構成される。保持ボール１１２は、結紮スライド１４の咬合端部が概ねアーチワイヤ溝面４４と面一であるとき、第１の溝端部１１６と当接可能である。これによって、アーチワイヤ１８をアーチワイヤ溝１６内に容易に挿入できる。さらに、第２の溝端部１１８は、結紮スライド１４を閉ポジションでロックするため弾性係合部材７８の突起８４が結紮スライド１４の孔７６と整列するのが可能となるよう構成される。保持ボール１１２は、結紮スライド１４が閉ポジションにあるとき、第２の溝端部１１８と当接可能である。

図５Ａに示す実施形態はブラケット本体１２と関連付けられた突出部および結紮スライド１４と関連付けられた受け部を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、受け部をブラケット本体１２に関連付けることも可能であり、かつ突出部を結紮スライド１４と関連付けることも可能である。図５Ｂに示す自己結紮歯科矯正ブラケット１０の代替実施形態では、ブラケット本体１２はガイド５２の遠心面に保持溝１２０を備え、これは概して咬合‐歯肉方向に延在すると共に第１および第２の溝端部１２２,１２４をそれぞれ確定する。保持ピン１２６は、ガイド５２の保持溝１２０と整列する、結紮スライド１４の凹部１２８内に収容された遠心部を備える。保持ピン１２６は近心方向に突出し、かつ保持溝１２０内に収容されており、この結果、結紮スライド１４が開ポジションと閉ポジションとの間を移動するとき、保持ピン１２６は保持溝１２０に対して移動する。使用時、図５Ｂに示す保持ピン／長孔構造は、図５Ａに関して上で図示しかつ説明した保持ボール／溝構造と実質的に同じ様式で機能する。

上記実施形態では、ブラケット本体１２は適当な成形技術によって、たとえば金属射出成形(ＭＩＭ)によって、生体適合性金属、たとえばステンレススチール、さらに詳しくは１７‐４ステンレススチールから形成可能である。弾性係合部材７８は、ステンレススチール、チタン合金およびＮｉ／Ｔｉ型超弾性材料を含む適当な材料から形成可能である。結紮スライド１４は適当なプロセス、たとえばＭＩＭによって、たとえばステンレススチールのような金属を含む生体適合性材料から形成可能である。

図２を参照すると、閉ポジションにある結紮スライド１４は、その中にアーチワイヤ１８を捕らえるためのアーチワイヤ溝１６への進入を阻止しており、しかも突起８４と孔７６との間の係合は掛止状態を提供する。結紮スライド１４は、弾性部材７８によって加えられる付勢に打ち勝ちそして非掛止状態を得るために結紮スライド１４の孔７６から突起８４を外すのに十分な力で突起８４を内側(すなわち舌方向)に歯２３に向かって押圧するために設計された器具(図示せず)の端部を用いてロック解除可能である。突起８４がこの器具によって、結紮スライド１４の平たい舌面を実質的に通過するのに十分な距離だけ内側に(すなわち舌方向に)移動させられたとき、結紮スライド１４は、スライド可能な様式でかつガイド５２,５４によって案内されて、開ポジションに向かって咬合‐歯肉方向に器具によって加えられる力によって自由に移動できる。結紮スライド１４の動きは、保持ピン９６と保持長孔９４の第１の長孔端部１００との当接によって開ポジションにおいて確実に停止させることが可能である。

結紮スライド１４を閉ポジションに位置させるため、スライド１４は、突起８４が弾性部材７８によって加えられる付勢力によって外側に跳ね出し、そして孔７６内に収容されるまで、咬合‐歯肉方向に移動させられる。結紮スライド１４は続いて閉ポジションで確実にロックされる。突起８４の孔７６内への係合は触感効果を創出可能である。この効果は医者には知覚可能であり、かつ／またはたとえばクリック音(これも同様に医者は知覚可能である)のような可聴音を発する。図４Ｂ、図５Ａおよび図５Ｂに示す代替実施形態は類似の様式で機能できる。

本発明の自己結紮ブラケットは、従来型の臼歯ブラケット、たとえば頬チューブあるいはコンバーチブル頬チューブに対して多くの利点をもたらす。特に自己結紮ブラケットは、アーチワイヤの移動を拘束することなく、ひどく捩じれている場合でも使用可能である。だが、従来型自己結紮ブラケットは大臼歯に装着する際に、いくつかの問題を呈する。本発明の自己結紮ブラケットはこうした弱点を克服する。特に、本発明の自己結紮ブラケットは結紮スライド用のスライド係合トラックを提供し、このスライド係合トラックは、スライドが開状態とされた際、結紮スライドの縁部が大臼歯を取り囲む歯肉と接触しないよう、ある角度をなしている。本ブラケットはまた、対向するあごの歯との咬合干渉を阻止する輪郭形状面を提供する。本ブラケットはさらに、ブラケット本体から結紮スライドが外れるのを阻止するため結紮スライドの移動を規制するための機構を提供する。

さまざまな実施形態の説明によって本発明を例証すると共にこれら実施形態をかなり詳細に説明してきたが、本出願人は、特許請求の範囲をそうした細部に制限することすなわち何らかの形でそうした細部に限定することを意図してはいない。さらなる利点および変形例は当業者には明白であろう。たとえば、図示するように、自己結紮歯科矯正ブラケット１０は、歯の矯正治療の助けとなる近心および／または遠心フックを備えていてもよい。それゆえ本発明はそのより広範な態様に関して、具体的細部、代表的機構および方法、および図示しかつ説明した例証的実施例に限定されるものではない。したがって、出願人の概括的発明思想の精神または範囲から逸脱することなく、上記細部からの展開が可能である。

本発明による自己結紮歯科矯正ブラケットの斜視図であり、分かりやすくするためにアセンブリから結紮スライドを取り外してある。 図１の自己結紮歯科矯正ブラケットを、結紮スライドが閉ポジションにある状態で示す斜視図である。 概して線３‐３に沿って取った、図２の自己結紮歯科矯正ブラケットの断面図である。 概して線４Ａ‐４Ａに沿って取った、図２の自己結紮歯科矯正ブラケットの断面図であり、ブラケット本体の保持ピンおよび結紮スライドを貫通する保持長孔を示している。 図４Ａに類似の自己結紮歯科矯正ブラケットの代替実施形態の断面図であり、ブラケット本体の保持溝および結紮スライドの保持ピンを示している。 自己結紮歯科矯正ブラケットの代替実施形態の斜視図であり、ブラケット本体の保持ボールおよび結紮スライドの保持溝を示している。 図５Ａに類似の自己結紮歯科矯正ブラケットの代替実施形態の破断斜視図であり、ブラケット本体の保持溝および結紮スライドの保持ピンを示している。

符号の説明

１０ 歯科矯正ブラケット
１２ ブラケット本体
１４ 可動結紮スライド
１６ アーチワイヤ溝
１８ アーチワイヤ
２０ 舌面
２２ 咬合面
２３,３５ 歯
２４ 歯肉面
２６ 近心面
２８ 遠心面
３０ 唇面
３２ パッド
３４ 唇部
３６ 凹部
３８ 平坦面
４０ ベース面
４２,４４ 溝面
４６ サポート面
４８,５０ スライド溝
５２,５４ ガイド
５６ スライド係合トラック
５８ ベース面
６０ 平行移動平面
６４ 近心部
６６ 遠心部
６８ 中央部
７０,７２ スライドレール
７４ チャネル
７６ 孔
７８ 弾性係合部材
８０ プロング
８２ 凹部
８４ 突起
８６ 第１の部分
８８ 第２の部分
９０ 凸部
９２ 唇面
９４ 保持長孔
９６ 保持ピン
９８ 凹部
１００ 第１の長孔端部
１０２ 第２の長孔端部
１０４ 保持溝
１０６ 保持ピン
１０８ 凹部
１１０ 孔
１１２ 保持ボール
１１４ 溝
１１６ 第１の端部
１１８ 第２の端部
１２０ 保持溝
１２２ 第１の溝端部
１２４ 第２の溝端部
１２６ 保持ピン
１２８ 凹部

Claims (31)

1. アーチワイヤを歯と接合するための自己結紮歯科矯正ブラケットであって、
   前記歯に装着されるよう構成されたブラケット本体と、結紮スライドと、を具備してなり、
   前記ブラケット本体は、概してベース面を画定するベース表面および概して平行移動面を画定するスライド係合トラックを有するアーチワイヤ溝を備え、前記平行移動面は前記ベース面に対して鋭角をなしており、
   前記結紮スライドは、前記スライド係合トラックと係合し、かつ前記スライド係合トラックに対してかつ前記平行移動面に平行に、前記アーチワイヤを前記アーチワイヤ溝に挿入可能な開ポジションと前記結紮スライドが前記アーチワイヤを前記アーチワイヤ溝内で保持する閉ポジションとの間で移動可能であることを特徴とする自己結紮歯科矯正ブラケット。
2. 前記平行移動面は、前記ベース面に対して概ね１０度と２５度の間の角度をなしていることを特徴とする請求項１に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
3. 前記平行移動面は前記ベース面に対して概ね２０度の角度をなしていることを特徴とする請求項２に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
4. 前記結紮スライドは、前記スライド係合トラックと向き合いかつ第１および第２の部分を有する表面を具備してなり、前記第１の部分は前記スライド係合トラックと係合すると共に前記第２の部分は前記第１の部分に対して前記第２の部分が概して前記ベース面に対して平行であるよう、ある角度をなしており、前記第２の部分は前記結紮スライドが前記閉ポジションにあるとき前記アーチワイヤ溝を覆うことを特徴とする請求項１に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
5. 前記結紮スライドは開口部を含み、
   歯科矯正ブラケットはさらに、
   前記ブラケット本体に連結され、かつ前記結紮スライドが前記閉ポジションにあるときには前記開口部と係合するよう構成された自由端部を有する弾性係合部材を具備してなり、
   前記係合部材は、前記開口部と係合したとき、前記ブラケット本体に対する前記結紮スライドの移動を抑止することを特徴とする請求項１に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
6. アーチワイヤを第１のあごの歯と接合するための自己結紮歯科矯正ブラケットであって、
   前記歯に装着されるよう構成されたブラケット本体と、結紮スライドと、を具備してなり、
   前記ブラケット本体は、概してベース面およびスライド係合トラックを画定するベース表面を有するアーチワイヤ溝を含み、前記ブラケット本体はさらに前記ベース表面から突出しかつ対向するあごの歯と向き合うよう構成された対向面を含み、前記対向面は対向するあごの歯との咬合干渉を阻止するような輪郭形状を有し、
   前記結紮スライドは、前記スライド係合トラックと係合すると共に、前記スライド係合トラックに対して、前記アーチワイヤが前記アーチワイヤ溝内に挿入可能である開ポジションと前記結紮スライドが前記アーチワイヤ溝内で前記アーチワイヤを保持する閉ポジションとの間で移動可能であることを特徴とする自己結紮歯科矯正ブラケット。
7. 前記対向面は、前記ベース平面に対して実質的に直交する概して平坦な部分を画定する凹部を有し、前記概して平坦な部分は、前記ブラケットを前記歯に装着するのに使用される器具のための把持ポイントを提供するよう構成されていることを特徴とする請求項６に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
8. 前記対向面は前記結紮スライドの前縁に重なる外側部分を含み、前記外側部分は、前記結紮スライドが前記閉ポジションにあるとき、患者の口腔内の物体を前記前縁から離れるように逸らすよう構成されており、前記外側部分はさらに、前記結紮スライドが前記閉ポジションを通り越すのを阻止するよう構成されていることを特徴とする請求項６に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
9. アーチワイヤを歯と接合するための自己結紮歯科矯正ブラケットであって、
   前記歯に装着されるよう構成されたブラケット本体と、結紮スライドと、を具備してなり、
   前記ブラケット本体はアーチワイヤ溝およびスライド係合トラックを含み、前記スライド係合トラックは突出部を含み、
   前記結紮スライドは、前記スライド係合トラックと係合すると共に、前記スライド係合トラックに対して、前記アーチワイヤが前記アーチワイヤ溝内に挿入可能である開ポジションと前記結紮スライドが前記アーチワイヤを前記アーチワイヤ溝内で保持する閉ポジションとの間で移動可能であり、前記結紮スライドはこの結紮スライドを貫通して延在する保持長孔を含み、前記突出部は前記保持長孔内に収容されかつ前記保持長孔は、前記結紮スライドが前記スライド係合トラックに沿って前記開ポジションと閉ポジションとの間で移動させられるとき前記突出部に対して移動することを特徴とする自己結紮歯科矯正ブラケット。
10. 前記結紮スライドがそれ自身に開口部を含み、
    自己結紮歯科矯正ブラケットはさらに、
    前記ブラケット本体に連結され、かつ前記結紮スライドが前記閉ポジションにあるときには前記結紮スライドの前記開口部と係合するよう構成された自由端部を有する弾性係合部材を具備してなり、
    前記係合部材は、前記開口部と係合したとき、前記ブラケット本体に対する前記結紮スライドの移動を抑止することを特徴とする請求項９に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
11. 前記保持長孔は第１の端部で終端をなしており、前記突出部は前記結紮スライドが前記開ポジションにあるとき前記第１の端部と係合し、これによって前記結紮スライドが前記ブラケット本体から脱落するのを阻止するようになっていることを特徴とする請求項９に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
12. 前記突出部は、保持ピンおよび保持ボールからなるグループから選ばれることを特徴とする請求項９に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
13. 前記保持長孔は概して、それに沿って前記結紮スライドが前記開ポジションと閉ポジションとの間を移動する方向に延在していることを特徴とする請求項９に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
14. 前記スライド係合トラックは、サポート表面および前記サポート表面によって連結された対向面を具備してなり、前記結紮スライドは前記対向面同士の間に配置されかつ前記対向面と係合しており、前記突出部は前記サポート表面に連結されていることを特徴とする請求項９に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
15. アーチワイヤを歯と接合するための自己結紮歯科矯正ブラケットであって、
    前記歯に装着されるよう構成されたブラケット本体と、結紮スライドと、を具備してなり、
    前記ブラケット本体は、アーチワイヤ溝と、側壁によって部分的に境界が定められたスライド係合トラックとを含み、前記側壁は突出部および受け部の一方を含み、
    前記結紮スライドは、前記スライド係合トラックと係合すると共に、前記スライド係合トラックに対して、前記アーチワイヤが前記アーチワイヤ溝内に挿入可能である開ポジションと前記結紮スライドが前記アーチワイヤを前記アーチワイヤ溝内で保持する閉ポジションとの間で移動可能であり、前記結紮スライドは前記側壁と向き合う周囲縁部を有し、前記周囲縁部は前記突出部および前記受け部の他方を含み、前記突出部は前記受け部内に収容され、前記突出部および前記受け部は、前記結紮スライドが前記開ポジションと前記閉ポジションとの間で前記スライド係合トラックに沿って移動させられるとき、互いに相対移動することを特徴とする自己結紮歯科矯正ブラケット。
16. 前記結紮スライドはそれ自身に開口部を有し、
    自己結紮歯科矯正ブラケットはさらに、
    前記ブラケット本体に連結され、かつ前記結紮スライドが前記閉ポジションにあるときには前記結紮スライドの前記開口部と係合するよう構成された自由端部を有する弾性係合部材を具備してなり、
    前記係合部材は、前記開口部と係合したとき、前記ブラケットに対する前記結紮スライドの移動を抑止することを特徴とする請求項１５に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
17. 前記受け部は第１の端部で終端をなしており、前記突出部は前記結紮スライドが前記開ポジションにあるとき前記第１の端部と係合し、これによって前記結紮スライドが前記ブラケット本体から脱落するのを阻止するようになっていることを特徴とする請求項１５に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
18. 前記突出部は、保持ピンおよび保持ボールからなるグループから選ばれることを特徴とする請求項１５に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
19. 前記受け部は保持溝として形成されることを特徴とする請求項１５に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
20. アーチワイヤを歯と接合するための自己結紮歯科矯正ブラケットであって、
    前記歯に装着されるよう構成されたブラケット本体と、結紮スライドと、を具備してなり、
    前記ブラケット本体はアーチワイヤ溝およびスライド係合トラックを含み、前記スライド係合トラックは受け部を含んでおり、
    前記結紮スライドは前記スライド係合トラックと係合すると共に、前記スライド係合トラックに対して、前記アーチワイヤが前記アーチワイヤ溝内に挿入可能である開ポジションと前記結紮スライドが前記アーチワイヤ溝内で前記アーチワイヤを保持する閉ポジションとの間で移動可能であり、前記結紮スライドは前記受け部内に収容された突出部を含み、前記突出部は、前記結紮スライドが前記開ポジションと前記閉ポジションとの間で前記スライド係合トラックに沿って移動させられた際、前記受け部に対して移動するようになっていることを特徴とする自己結紮歯科矯正ブラケット。
21. 前記結紮スライドがそれ自身に開口部を含み、
    自己結紮歯科矯正ブラケットはさらに、
    前記ブラケット本体に連結され、かつ前記結紮スライドが前記閉ポジションにあるときには前記結紮スライドの前記開口部と係合するよう構成された自由端部を有する弾性係合部材を具備してなり、
    前記係合部材は、前記開口部と係合したとき、前記ブラケット本体に対する前記結紮スライドの移動を抑止することを特徴とする請求項２０に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
22. 前記受け部は第１の端部で終端をなしており、前記突出部は前記結紮スライドが前記開ポジションにあるとき前記第１の端部と係合し、これによって前記結紮スライドが前記ブラケット本体から脱落するのを阻止するようになっていることを特徴とする請求項２０に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
23. 前記突出部は、保持ピンおよび保持ボールからなるグループから選ばれることを特徴とする請求項２０に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
24. 前記受け部は保持溝として構成されていることを特徴とする請求項２０に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
25. アーチワイヤを、歯肉によって取り囲まれた大臼歯と接合する方法であって、
    それ自身にアーチワイヤ溝を有する歯科矯正ブラケットを前記大臼歯に接合するステップであって、前記アーチワイヤ溝は概してベース面を画定するベース表面を有し、前記ブラケットはさらに前記アーチワイヤ溝へのアクセスを可能にするための可動部を有しているステップと、
    前記アーチワイヤ溝をアクセス可能とするために、歯肉との接触を伴わずに、前記ブラケットの前記可動部を移動させるステップと、
    前記アーチワイヤを前記アーチワイヤ溝内に挿入するステップと、
    前記ブラケットの前記可動部を移動させて前記アーチワイヤ溝をアクセス不可能とし、これによって前記アーチワイヤを前記アーチワイヤ溝内で保持するステップと、
    を具備することを特徴とする方法。
26. 歯肉との接触を伴わずに前記可動部を移動させるステップは、
    前記可動部を前記ベース面に対して鋭角に移動させることからなることを特徴とする請求項２５に記載の方法。
27. 前記可動部を鋭角に移動させるステップは、
    前記可動部を、前記ベース面に対して概ね１０度と２５度の間の角度をなすよう移動させることからなることを特徴とする請求項２６に記載の方法。
28. アーチワイヤを歯肉によって取り囲まれた大臼歯と接合するための自己結紮歯科矯正ブラケットであって、
    前記大臼歯に装着されるよう構成されたブラケット本体と、前記ブラケット本体と係合させられた可動部と、を具備してなり、
    前記ブラケット本体はアーチワイヤ溝を含み、
    前記可動部は、前記ブラケット本体に対して、前記アーチワイヤが前記アーチワイヤ溝内に挿入可能である開ポジションと前記可動部が前記アーチワイヤ溝内で前記アーチワイヤを保持する閉ポジションとの間で移動可能であり、前記可動部は前記開ポジションにあるとき、前記歯肉との接触を回避するよう構成されていることを特徴とする自己結紮歯科矯正ブラケット。
29. 前記可動部はそれ自身に開口部を含み、
    自己結紮歯科矯正ブラケットはさらに、
    前記ブラケット本体に連結され、かつ前記可動部が前記閉ポジションにあるときには前記可動部の前記開口部と係合するよう構成された自由端部を有する弾性係合部材を具備してなり、
    前記係合部材は、前記開口部と係合したとき、前記ブラケット本体に対する前記可動部の移動を抑止することを特徴とする請求項２８に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
30. 前記アーチワイヤ溝は概してベース面を画定するベース表面を含み、かつ前記ブラケット本体は概して平行移動面を画定するスライド係合トラックを含み、前記平行移動面は前記ベース平面に対して鋭角をなしていることを特徴とする請求項２８に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。
31. 前記平行移動面は、前記ベース面に対して概ね１０度と２５度の間の角度をなしていることを特徴とする請求項３０に記載の自己結紮歯科矯正ブラケット。

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