JP2006186540A - 到来方向推定装置 - Google Patents

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Tomoshige Furutoi
知重 古樋
Makoto Taroumaru
眞 太郎丸
Akihito Hirata
明史 平田
Takashi Ohira
孝 大平
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ATR Advanced Telecommunications Research Institute International
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Abstract

【課題】 小型化、低コスト化が可能であり、信頼性および耐久性に優れるとともに、熟練技術による調整等が不要な到来方向推定装置を提供する。
【解決手段】 結合切換手段20は、アンテナ素子7と素子結合するアンテナ素子1〜6がアンテナ素子7の周囲を回転するように制御電圧セットCLV1〜CLV6によってバラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットを制御し、アレーアンテナ10は、アンテナ素子7と素子結合するアンテナ素子1〜6がアンテナ素子7の周囲を回転したときの受信信号を受信する。そして、周波数偏移検出手段40は、アンテナ素子7から増幅器30を介して受けた受信信号に基づいて到来波の周波数偏移スペクトルを検出し、方向推定手段50は、周波数偏移スペクトルがゼロクロスする角度を到来波の到来方向と推定する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、到来波の到来方向を推定する到来方向推定装置に関するものである。
従来、ドップラー効果を用いた方向探知装置として、水平面の円周上に等間隔に複数のアンテナ素子を配置し、複数のアンテナ素子のうち、受信部に接続するアンテナ素子をアンテナ切換器を用いて切換えるものが知られている(非特許文献1)。
このような従来技術では、アンテナ切換器は、受信部に接続するアンテナ素子を円周に沿って等位相間隔で順次切換えることによって、受信位置が円周上を等速度(等速円運動)で移動する。
一方、送信機は、一定周波数で振動するCW波を送信する。このとき、隣り合うアンテナ素子の間隔がCW波の波長に対して十分に密(例えば半波長以下)であれば、受信部に入力される到来波は、実質的にドップラー効果によってその周波数が周期的に変化し(ドップラー周波数偏移が生じ)、アンテナ素子の切換速度に応じた周波数変調波(FM波)を形成する。このFM波を復調した信号の位相は、CW波の到来方向に依存するので、FM波復調信号の位相に基づいて到来波の到来方向を推定することができる。
電子情報通信学会,「アンテナ工学ハンドブック」,オーム社,1980年10月,p.364−365
しかし、従来技術によるドップラー効果を用いた方向探知装置では、各アンテナ素子を受信部に切換接続するアンテナ切換器が必要であるのに加え、各アンテナ素子とアンテナ切換器との間を接続する伝送路がアンテナ素子の数と同じ数だけ必要であった。このため、構造が複雑で装置が大型化する傾向があり、製造コストが高く、消費電力も大きいという問題があった。
また、アンテナ切換器は、各アンテナ素子と受信部とを切換接続するので、機械的な接点の磨耗等によってアンテナ切換器に故障が生じ易く、信頼性、耐久性が劣る傾向があった。
更に、アンテナ切換えに伴うドップラー周波数偏移の時間変化が正弦波に従うようにするために、各アンテナ素子とアンテナ切換器との間の伝送路は、互いの位相を精密に合わせる必要があった。このため、伝送路をなすケーブルの長さ寸法をケーブル毎に微調整する必要があり、ケーブルの調整作業に長時間を要するとともに、熟練した技術が必要になるという問題があった。
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、小型化、低コスト化が可能であり、信頼性および耐久性に優れるとともに、熟練技術による調整等が不要な到来方向推定装置を提供することである。
この発明によれば、到来方向推定装置は、アレーアンテナと、結合切換手段と、周波数偏移検出手段と、方向推定手段とを備える。アレーアンテナは、給電素子と、給電素子の周囲に配置されたn(nは複数)個の無給電素子とを含む。結合切換手段は、n個の無給電素子に装荷されたn個のインピーダンス素子の少なくとも1つのインピーダンスを変えて給電素子と素子結合する無給電素子を切換える。周波数偏移検出手段は、給電素子と素子結合する無給電素子が給電素子の周囲を回転するように所定の速度で順次切換えられたときにアレーアンテナが受信する到来波の受信信号を給電素子から受け、その受けた受信信号に基づいて到来波の周波数偏移スペクトルを検出する。方向推定手段は、周波数偏移検出手段により検出された周波数偏移スペクトルが、周波数偏移がゼロであることを示す基準線と交差する角度を検出し、その検出した角度を到来波の到来方向と推定する。
好ましくは、方向推定手段は、周波数偏移が正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移スペクトルが基準線と交差する角度を検出し、その検出した角度を到来波の到来方向と推定する。
好ましくは、方向推定手段は、周波数偏移が負の値から正の値に切換わるときに周波数偏移スペクトルが基準線と交差する角度を検出し、その検出した角度を到来波の到来方向と推定する。
好ましくは、結合切換手段は、n個の無給電素子の全てが給電素子と素子結合し、かつ、給電素子と主に素子結合する無給電素子が給電素子の周囲を所定の速度で回転するように給電素子とn個の無給電素子との素子結合を切換える。
好ましくは、結合切換手段は、n個の無給電素子のうち一部の無給電素子が給電素子と素子結合し、かつ、給電素子と素子結合する無給電素子が給電素子の周囲を所定の速度で回転するように給電素子とn個の無給電素子との素子結合を切換える。
好ましくは、到来方向推定装置は、帯域阻止フィルタを更に備える。帯域阻止フィルタは、受信信号から到来波の中心周波数成分を抑圧し、該到来波の中心周波数成分が抑圧された受信信号を周波数偏移検出手段へ出力する。そして、給電素子と前記無給電素子との間隔は、到来波の中心周波数成分を抑圧する間隔に設定される。また、周波数偏移検出手段は、帯域阻止フィルタから出力された受信信号に基づいて、周波数偏移スペクトルを検出する
好ましくは、n個の無給電素子は、給電素子の周囲に略円形に配置される。
好ましくは、インピーダンス素子は、可変容量素子である。
この発明による到来方向推定装置においては、給電素子と結合する無給電素子が給電素子の周囲を回転するように順次切換えられたときにアレーアンテナが受信した受信信号に基づいて、到来波の周波数偏移スペクトルが検出され、その検出された周波数偏移スペクトルがゼロクロスする角度が到来波の到来方向と推定される。そして、給電素子と結合する無給電素子の切換は、無給電素子に装荷されたインピーダンス素子のインピーダンスを変えることによって行なわれる。
従って、この発明によれば、給電素子と結合する無給電素子の切換を電気的に行なうことができ、機械的な無給電素子の切換による故障を防止できる。その結果、信頼性および耐久性を向上できる。
また、給電素子と結合する無給電素子が給電素子の周囲を回転するように順次切換えられる場合にも受信信号は、中心素子である給電素子からのみ検出されるため、受信機までの伝送路を無給電素子ごとに設け、調整する必要がない。
更に、インピーダンス切換のための配線をインピーダンス素子に接続すれば、インピーダンス素子のインピーダンスを変えることができるので、熟練技術による調整を不要にできる。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
図1は、この発明の実施の形態による到来方向推定装置の構成を示す概略図である。図1を参照して、到来方向推定装置100は、アレーアンテナ10と、結合切換手段20と、増幅器30と、周波数偏移検出手段40と、方向推定手段50とを備える。
アレーアンテナ10は、アンテナ素子1〜7と、接地板8と、バラクタダイオード11〜16とを含む。接地板8は、円形の導電性金属材料からなり、x軸、y軸およびz軸からなるxyz直交座標のx−y平面に略平行に配置される。アンテナ素子1〜7は、xyz直交座標におけるz軸に沿って接地板8に略垂直に配置される。この場合、アンテナ素子7は、x−y座標の原点Oに配置される。
図2は、図1に示すx−y平面におけるアンテナ素子1〜7の平面配置図である。図2を参照して、アンテナ素子1〜6は、アンテナ素子7を中心にして半径rの円周CRC上に円形に配置される。即ち、アンテナ素子1〜6は、アンテナ素子7の周囲に円形に配置される。この場合、アンテナ素子1〜6は、等間隔に配置される。また、アレーアンテナ10が送受信する電波の波長をλとしたとき、半径rは、0.25λまたは0.383λに設定される。
再び、図1を参照して、アンテナ素子1〜6は、無給電素子であり、アンテナ素子7は、給電素子である。バラクタダイオード11〜16は、それぞれ、アンテナ素子1〜6と接地ノードとの間に接続される。これによって、無給電素子であるアンテナ素子1〜6には、可変容量素子であるバラクタダイオード11〜16がそれぞれ装荷される。
このように、アレーアンテナ10は、6本の無給電素子(アンテナ素子1〜6)と、1本の給電素子(アンテナ素子7)とからなる7本のアンテナ素子が給電素子を中心にして円形に配列された構造からなる。
結合切換手段20は、制御電圧セットCVL1〜CVL6をバラクタダイオード11〜16に供給し、無給電素子であるアンテナ素子1〜6と、給電素子であるアンテナ素子7との結合を切換える。バラクタダイオード11〜16は、それぞれ、制御電圧CVL1〜CVL6によって容量(リアクタンス値)が変化する。結合切換手段20は、各バラクタダイオード11〜16におけるリアクタンス値が“hi”(最大値)または“lo”(最小値)になるように各制御電圧CVL1〜CVL6の電圧値を決定し、制御電圧セットCVL1〜CVL6をバラクタダイオード11〜16へ供給する。例えば、結合切換手段20は、20Vからなる制御電圧CLV1〜CLV6をそれぞれバラクタダイオード11〜16へ供給してバラクタダイオード11〜16におけるリアクタンス値を”hi”に設定し、0Vからなる制御電圧CLV1〜CLV6をそれぞれバラクタダイオード11〜16へ供給してバラクタダイオード11〜16におけるリアクタンス値を”lo”に設定する。
この場合、結合切換手段20は、バラクタダイオード11〜16におけるリアクタンス値xm1〜xm6のリアクタンスセットxが表1に示すように変化するように制御電圧セットCVL1〜CVL6をバラクタダイオード11〜16へ供給する。
Figure 2006186540
リアクタンス値xm1が“lo”であり、リアクタンス値xm2〜xm6が“hi”であるとき(m=1)、アレーアンテナ10は、0度の方向に指向性があるビームパターンBPM1を有する。この場合、アンテナ素子1は、アンテナ素子7と強く結合し、アンテナ素子2〜6は、アンテナ素子7と弱く結合している。なお、アンテナ素子7(給電素子)からアンテナ素子1(無給電素子)への方向を0度の方向とする(図2参照)。
また、リアクタンス値xm2が“lo”であり、リアクタンス値xm1,xm3〜xm6が“hi”であるとき(m=2)、アレーアンテナ10は、60度の方向に指向性があるビームパターンBPM2を有する。この場合、アンテナ素子2は、アンテナ素子7と強く結合し、アンテナ素子1,3〜6は、アンテナ素子7と弱く結合している。
以下、同様にして、各リアクタンス値xm3〜xm6が“lo”であり、それ以外のリアクタンス値が“hi”であるとき(m=3〜6)、アレーアンテナ10は、それぞれ、120度、180度、240度および300度の方向に指向性があるビームパターンBPM3〜BPM6を有する(図2参照)。この場合、アンテナ素子3〜6の各々は、アンテナ素子7と強く結合し、他のアンテナ素子(アンテナ素子1〜6のうち、それぞれ、アンテナ素子3〜6を除くアンテナ素子)は、アンテナ素子7と弱く結合している。
このように、結合切換手段20は、無給電素子であるアンテナ素子1〜6に装荷されたバラクタダイオード11〜16のリアクタンス値xm1〜xm6を変えることによってアンテナ素子7(給電素子)と放射結合するアンテナ素子1〜6(無給電素子)を切換え、アレーアンテナ10の指向性を切換える。
到来波の到来方向を推定する場合、結合切換手段20は、給電素子であるアンテナ素子7と結合する無給電素子(アンテナ素子1〜6の少なくとも1本のアンテナ素子)がアンテナ素子7の回りを所定の速度で回転するように制御電圧セットCLV1〜CLV6をバラクタダイオード11〜16へ供給する。
結合切換手段20は、パルス発生器21と、リアクタンス値テーブル22と、可変リアクタンス制御装置23とを含む。パルス発生器21は、一定周期のパルス信号PLSを発生し、その発生したパルス信号PLSを可変リアクタンス制御装置23へ出力する。この場合、パルス信号PLSは、例えば、角周波数ω(ω=2π×1kHz)に無給電素子(アンテナ素子1〜6)の数n(n=6)を乗算した値の角周波数ω(ω=2π×6kHz)を有する。
リアクタンス値テーブル22は、表2〜表4に示すリアクタンステーブルXTB1〜XTB3を格納する。
Figure 2006186540
Figure 2006186540
Figure 2006186540
可変リアクタンス制御装置23は、表2〜表4に示すリアクタンステーブルXTB1〜XTB3のいずれかに従って制御電圧セットCLV1〜CLV6を生成し、その生成した制御電圧セットCLV1〜CLV6をパルス発生器21から受けたパルス信号PLSに同期してバラクタダイオード11〜16へ供給する。
例えば、可変リアクタンス制御装置23は、表2に示すリアクタンステーブルXTB1に従って制御電圧セットCLV1〜CLV6を生成するとき、まず、リアクタンステーブルXTB1のリアクタンスセットXS11に従って、バラクタダイオード11のリアクタンス値xm1が0Ωになり、かつ、バラクタダイオード12〜16のリアクタンス値xm2〜xm6が457.5Ωになるように制御電圧セットCLV1〜CLV6を生成し、その生成した制御電圧CLV1〜CLV6をバラクタダイオード11〜16へ供給する。
次に、可変リアクタンス制御装置23は、リアクタンステーブルXTB1のリアクタンスセットXS12に従って、バラクタダイオード12のリアクタンス値xm2が0Ωになり、かつ、バラクタダイオード11,13〜16のリアクタンス値xm1,m3〜xm6が457.5Ωになるように制御電圧セットCLV1〜CLV6を生成し、その生成した制御電圧CLV1〜CLV6をバラクタダイオード11〜16へ供給する。
以下、同様にして、可変リアクタンス制御装置23は、リアクタンステーブルXTB1のリアクタンスセットXS13〜XS16に従って制御電圧セットCLV1〜CLV6を生成し、その生成した制御電圧セットCLV1〜CLV6をバラクタダイオード11〜16へ供給する。
この場合、可変リアクタンス制御装置23は、リアクタンスセットXS11〜XS16に従って生成した制御電圧セットCLV1〜CLV6をパルス信号PLSに同期してバラクタダイオード11〜16へ順次供給する。即ち、可変リアクタンス制御装置23は、バラクタダイオード11〜16のリアクタンス値xm1〜xm6がリアクタンステーブルXTB1のリアクタンスセットXS11〜XS16に従ってパルス信号PLSの角周波数ωの速度で順次切換わるように制御電圧セットCLV1〜CLV6をバラクタダイオード11〜16へ供給する。
増幅器30は、アレーアンテナ10のアンテナ素子7(給電素子)から出力される受信信号(高周波電流からなる)を増幅し、その増幅した受信信号を周波数偏移検出手段40へ出力する。周波数偏移検出手段40は、増幅器30からの受信信号を受け、その受けた受信信号に基づいて、後述する方法によって、到来波の周波数偏移スペクトルを検出し、その検出した周波数偏移スペクトルを方向推定手段50へ出力する。
方向推定手段50は、周波数偏移検出手段40からの周波数偏移スペクトルが、周波数偏移がゼロであることを示す基準線と交差する角度を検出し、その検出した角度を到来波の到来方向と推定する。
この発明において、到来方向を推定する原理について説明する。給電素子であるアンテナ素子7は、送信機P(図示せず)から送信された搬送波(例えば200MHzの周波数を有する波)Sa1を受信する。この場合、無給電素子であるアンテナ素子1〜6にそれぞれ装荷されたバラクタダイオード11〜16は、結合切換手段20によってそれぞれリアクタンス値xm1〜xm6に設定されているので、複数のアンテナ素子1〜6のうち、少なくとも1本のアンテナ素子がアンテナ素子7と放射結合し、これによって、少なくとも1本のアンテナ素子に高周波電流が誘起される。
また、バラクタダイオード11〜16のリアクタンス値xm1〜xm6は、循環的に変更されるので、アンテナ素子7と放射結合が生じるアンテナ素子は、循環的に円周CRC上を移動する。
一般に、角周波数ωの電磁波を放射する送信機Pが静止しており、受信機Qが速度v(ベクトル)で移動するとき、受信機Qでの受信波の角周波数は、ドップラー効果による周波数偏移を受ける。このときの周波数偏移の大きさをΔωとすると、周波数偏移Δωは、次式によって表される。
Δω=−(<v>・<ePQ>)ω/c・・・(1)
式(1)において、表記<A>は、ベクトルAを表す。また、ベクトル<ePQ>は、送信機Pから受信機Qに向かう単位ベクトルであり、cは、光速である。更に、a・bは、ベクトルaとベクトルbとのスカラー積を表す。
図3は、図1に示すアレーアンテナ10と送信機Pとを示す平面図である。図3を参照して、6本のアンテナ素子1〜6が半径rの円周CRC上に十分に密な状態で配置されていると考えると、アレーアンテナ10は、給電素子(アンテナ素子7)と放射結合する無給電素子が円周CRC上に配置された6本のアンテナ素子1〜6の順で順次切換わって送信機Pからの到来波を受信する。従って、アレーアンテナ10(受信機Q)は、あたかも、半径rの円周CRC上を滑らかに移動しながら送信機Pからの到来波を受信するものと考えることができる。この場合、給電素子であるアンテナ素子7と放射結合する無給電素子(アンテナ素子1〜6の少なくとも1本のアンテナ素子)は、結合切換手段20によって円周CRC上を角周波数ωで移動させられる。
一方、送信機Pは、アンテナ素子1〜6が配置される円周CRCの直径2rに対して十分に離れているものとする。また、図3に示すように、上述した直交座標(x,y)に加え、アンテナ素子7の配置位置を原点Oとする極座標(R,θ)を設定する。そして、時刻t=0において、給電素子(アンテナ素子7)と放射結合する無給電素子(アンテナ素子1〜6のうち、アンテナ素子7と最も強く放射結合する1本のアンテナ素子)がθ=πの方向に配置され、送信機Pがθ=αの方向に配置されているものとする。
そうすると、給電素子(アンテナ素子7)と放射結合する1本の無給電素子の速度<v>は、直交座標系においては、次式によって表される。
<v>=(rωsinωt,−rωcosωt)xy・・・(2)
なお、式(2)の添字xyは、直交座標系における表現であることを示す。また、送信機Pから受信機Qへ向かう単位ベクトル<ePQ>は、図3より次式により表される。
<ePQ>=(−cosα,−sinα)xy・・・(3)
そして、式(2)および式(3)を式(1)に代入すると、受信機Qにおける受信波の角周波数偏移Δωの大きさは、次式によって表される。
Δω=rωωsin(ωt−α)/c・・・(4)
式(4)より、給電素子(アンテナ素子7)と放射結合する無給電素子による受信周波数の周波数偏移Δωは、送信機Pの方向αに依存する。
図4は、図1に示すアレーアンテナ10に到来する到来波を示す模式図である。到来波(搬送波Sa1)は、アンテナ素子1の方向から到来するものとする。給電素子(アンテナ素子7)と最も強く放射結合する無給電素子(アンテナ素子1〜6のいずれか)は、円周CRC上を速度<v>で反時計回りに回転している。
そうすると、給電素子(アンテナ素子7)と最も強く放射結合する無給電素子(アンテナ素子1〜6のいずれか)がアンテナ素子1→アンテナ素子2→アンテナ素子3→アンテナ素子4へ順次切換わる期間、アレーアンテナ10は、到来波Sa1から速度<v>で遠ざかりながら到来波Sa1を受信する。その結果、アレーアンテナ10は、ドップラー効果により到来波Sa1の角周波数ωよりも低い角周波数ωを有するFM波Sa21と、到来波Sa1とが混在した受信信号Saを受信する。この場合、FM波Sa21は、到来波Sa1よりも低い角周波数ωを有するので、その周期は、到来波Sa1よりも長くなる。
一方、給電素子(アンテナ素子7)と最も強く放射結合する無給電素子(アンテナ素子1〜6のいずれか)がアンテナ素子4→アンテナ素子5→アンテナ素子6→アンテナ素子1へ順次切換わる期間、アレーアンテナ10は、到来波Sa1に速度<v>で近づきながら到来波Sa1を受信する。その結果、アレーアンテナ10は、ドップラー効果により到来波Sa1の角周波数ωよりも高い角周波数ωを有するFM波Sa22と、到来波Sa1とが混在した受信信号Saを受信する。この場合、FM波Sa22は、到来波Sa1よりも高い角周波数ωを有するので、その周期は、到来波Sa1よりも短くなる。
周波数偏移Δωは、FM波Sa21,Sa22の角周波数ω,ωから到来波Sa1の角周波数ωを減算したものである。従って、周波数偏移Δωは、給電素子(アンテナ素子7)と最も強く放射結合する無給電素子(アンテナ素子1〜6のいずれか)がアンテナ素子1→アンテナ素子2→アンテナ素子3→アンテナ素子4へ順次切換わる期間、負の値になり、給電素子(アンテナ素子7)と最も強く放射結合する無給電素子(アンテナ素子1〜6のいずれか)がアンテナ素子4→アンテナ素子5→アンテナ素子6→アンテナ素子1へ順次切換わる期間、正の値となる。そして、給電素子(アンテナ素子7)と最も強く放射結合する無給電素子(アンテナ素子1〜6のいずれか)がアンテナ素子1またはアンテナ素子4である瞬間、速度<v>は、到来波Sa1の到来方向と平行な方向の成分がゼロであるので、周波数偏移Δωはゼロになる。
そうすると、周波数偏移Δωが正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移Δωがゼロになる角度ωt、または周波数偏移Δωが負の値から正の値に切換わるときに周波数偏移Δωがゼロになる角度ωtが到来波Sa1の到来方向になる。このことは、式(4)において、Δω=0であるとき、ωt=αとなることからも明らかである。
なお、周波数偏移Δωが正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移Δωがゼロになる角度ωtを到来波Sa1の到来方向とするか、周波数偏移Δωが負の値から正の値に切換わるときに周波数偏移Δωがゼロになる角度ωtを到来波Sa1の到来方向とするかは、制御電圧セットCLV1〜CLV6をバラクタダイオード11〜16に供給したときにアレーアンテナ10が放射するビームの位相特性に依存して決定される。
即ち、リアクタンステーブル(リアクタンステーブルXTB1〜XTB3のいずれか)に従ってバラクタダイオード11〜16のリアクタンスを順次切換えたときに、アレーアンテナ10が放射するビームの位相が正から負へ変化する場合、周波数偏移Δωが正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移Δωがゼロになる角度ωtが到来波Sa1の到来方向であると決定される。また、リアクタンステーブル(リアクタンステーブルXTB1〜XTB3のいずれか)に従ってバラクタダイオード11〜16のリアクタンスを順次切換えたときに、アレーアンテナ10が放射するビームの位相が負から正へ変化する場合、周波数偏移Δωが負の値から正の値に切換わるときに周波数偏移Δωがゼロになる角度ωtが到来波Sa1の到来方向であると決定される。
従って、この発明においては、リアクタンステーブル(リアクタンステーブルXTB1〜XTB3のいずれか)に従ってバラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットを順次切換えたときに、アレーアンテナ10が放射するビームの位相が正から負へ変化するか、負から正へ変化するかを予め検出しておく。そして、給電素子(アンテナ素子7)と最も強く放射結合する無給電素子(アンテナ素子1〜6のいずれか)が速度<v>で順次切換えられたときにアレーアンテナ10が受信する受信信号SaからFM波Sa2(FM波Sa21およびSa22からなる)を抽出し、その抽出したFM波Sa2に基づいて、式(4)によって表される周波数偏移Δωを検出して角度ωtに対してプロットした周波数偏移スペクトルを求め、更に、周波数偏移スペクトルが、周波数偏移Δωがゼロになる基準線と交差する角度ωtを検出する。この場合、アレーアンテナ10が放射するビームが正から負へ変わる位相特性を有するとき、周波数偏移Δωが正の値から負の値へ切換わるときに周波数偏移Δωがゼロになる角度ωtが検出され、アレーアンテナ10が放射するビームが負から正へ変わる位相特性を有するとき、周波数偏移Δωが負の値から正の値へ切換わるときに周波数偏移Δωがゼロになる角度ωtが検出される。
図5は、図1に示す周波数偏移検出手段40における周波数偏移の検出方法を説明するための図である。また、図6は、位相差と方位角との関係を示す図である。図5において、縦軸は、電圧を表し、横軸は、瞬時角周波数を表す。また、図6において、縦軸は、位相差を表し、横軸は、方位角を表す。周波数は、位相の時間微分であるため、周波数偏移を位相差で表す(以下、同じ)。なお、方位角は、図3に示す角度θとして定義される。
図5を参照して、電圧と瞬時周波数との関係は、直線k1によって表される。瞬時周波数が到来波Sa1の角周波数ωであるとき、電圧が0Vに変換されるように、電圧と瞬時周波数との関係が決められている。周波数偏移検出手段40は、増幅器30から受信信号Saを受け、その受けた受信信号Saの瞬時周波数を直線k1に従って電圧に変換し、その変換した電圧を方位角に対してプロットして周波数偏移スペクトルを求める。
上述したように、アレーアンテナ10は、到来波Sa1と、FM波Sa2(FM波Sa21,Sa22)とが混在した受信信号Saを受信し、到来波Sa1は、角周波数ωを有するので、周波数偏移検出手段40は、受信信号Saのうち、到来波Sa1の瞬時周波数を0Vの電圧に変換し、FM波Sa2の瞬時周波数を直線k1に従って所定の電圧に変換する。
そして、周波数偏移検出手段40は、その変換した電圧を角度ωtに対して順次プロットする。その結果、図6に示すように、周波数偏移は、方位角(=ωt)に対してプロットされる。この場合、図6に示すピークP1〜P14を結ぶ曲線が周波数偏移スペクトルFHSとなる。
周波数偏移検出手段40は、周波数偏移スペクトルFHSを検出すると、その検出した周波数偏移スペクトルFHSを方向推定手段50へ出力する。方向推定手段50は、周波数偏移スペクトルFHSを受けると、その受けた周波数偏移スペクトルFHSがゼロクロスする方位角を到来波の到来方向と推定する。
図7は、到来波の到来方向を推定する動作を説明するためのフローチャートである。一連の動作が開始されると、バラクタダイオード11〜16のリアクタンスを所定の速度で順次切換えたときにアレーアンテナ10が放射するビームの位相特性が検出される(ステップS1)。
そして、ステップS1で検出された位相特性が方位角を0度から360度の範囲で変化させたとき、正から負へ変化するか否かが判定される(ステップS2)。ステップS1で検出された位相特性が正から負へ変化する場合(ステップS2において”YES”の場合)、周波数偏移Δωが正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移Δωがゼロになる角度ωtを検出することが設定される(ステップS3)。
一方、ステップS1で検出された位相特性が負から正へ変化する場合(ステップS2において”NO”の場合)、周波数偏移Δωが負の値から正の値に切換わるときに周波周偏移Δωがゼロになる角度ωtを検出することが設定される(ステップS4)。
ステップS3またはステップS4の後、バラクタダイオード11〜16のリアクタンスを所定の速度で順次切換えたときに、アレーアンテナ10は、受信信号Saを受信し(ステップS5)、その受信した受信信号Saをアンテナ素子7(給電素子)から増幅器30へ出力する。
増幅器30は、受信信号Saをアレーアンテナ10から受け、その受けた受信信号Saを増幅して周波数偏移検出手段40へ出力する。周波数偏移検出手段40は、受信信号Saに基づいて、上述した方法によって周波数偏移Δωを検出し、その検出した周波数偏移Δωを角度ωtに対してプロットし、周波数偏移スペクトルFHSを作成する(ステップS6)。そして、周波数偏移検出手段40は、その作成した周波数偏移スペクトルFHSを方向推定手段50へ出力する。
方向推定手段50は、周波数偏移スペクトルFHSを受け、その受けた周波数偏移スペクトルFHSがゼロクロスする角度ωtを検出する。ステップS3の後に、ステップS5〜S7が実行される場合、方向推定手段50は、周波数偏移Δωが正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移Δωがゼロになる角度ωtを検出し、その検出した角度ωtを到来波Sa1の到来方向と推定する。また、ステップS4の後に、ステップS5〜S7が実行される場合、方向推定手段50は、周波数偏移Δωが負の値から正の値に切換わるときに周波数偏移Δωがゼロになる角度ωtを検出し、その検出した角度ωtを到来波Sa1の到来方向と推定する(ステップS7)。
これにより、一連の動作が終了する。
上述したように、到来方向推定装置100においては、バラクタダイオード11〜16のリアクタンスを電気的に切換えることによって給電素子(アンテナ素子7)と放射結合する無給電素子(アンテナ素子1〜6の少なくとも1本のアンテナ素子)を順次切換え、その時にアレーアンテナ10が受信する受信信号Sa(到来波Sa1およびFM波Sa2からなる)に基づいて、到来波Sa1の周波数偏移スペクトルFHSが検出され、その検出された周波数偏移スペクトルFHSがゼロクロスする角度が到来波Sa1の到来方向と推定される。
従って、この発明によれば、給電素子(アンテナ素子7)と結合する無給電素子(アンテナ素子1〜6)の切換を電気的に行なうことができ、機械的な無給電素子の切換による故障を防止できる。その結果、信頼性および耐久性を向上できる。
また、給電素子と結合する無給電素子が給電素子の周囲を回転するように順次切換えられる場合にも受信信号は、中心素子である給電素子からのみ検出されるため、受信機までの伝送路を無給電素子ごとに設け、調整する必要がない。
更に、リアクタンスを切換えるための配線をバラクタダイオード11〜16に接続すれば、バラクタダイオード11〜16のリアクタンスを変えることができるので、熟練技術による調整を不要にできる。
なお、図7に示すフローチャートにおいては、位相特性が正から負へ変化したか否かによって、周波数偏移Δωが正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移Δωがゼロになる角度ωtを到来波Sa1の到来方向と推定するか否かを決定したが(ステップS2〜S4を参照)、この発明は、これに限らず、位相の変化割合が正から負へ変化したとき、周波数偏移Δωが正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移Δωがゼロになる角度ωtを到来波Sa1の到来方向と推定し、位相の変化割合が負から正へ変化したとき、周波数偏移Δωが負の値から正の値に切換わるときに周波数偏移Δωがゼロになる角度ωtを到来波Sa1の到来方向と推定するようにしてもよい。
上述した到来方向推定方法を用いたシミュレーションの結果について説明する。
[シミュレーション1]
図8は、図1に示すアレーアンテナ10の2つのアンテナ素子を結合させた場合のビームの位相特性図である。図8において、縦軸は、位相を表し、横軸は、方位角を表す。2つのアンテナ素子の結合とは、アンテナ素子1〜6のいずれかの1本のアンテナ素子と、アンテナ素子7との結合を言う。
この場合、結合切換手段20は、表2に示すリアクタンステーブルXTB1のリアクタンスセットXS11〜XS16に従ってバラクタダイオード11〜16のリアクタンスxm1〜xm6を順次切換える。
即ち、結合切換手段20は、まず、リアクタンスセットXS11に従って、バラクタダイオード11のリアクタンスxm1を0Ωに設定し、かつ、バラクタダイオード12〜16のリアクタンスxm2〜xm6の全てを457.5Ωに設定する。これにより、アンテナ素子1とアンテナ素子7とが放射結合し、アレーアンテナ10は、ビームBM1をアンテナ素子7からアンテナ素子4の方向へ放射する。
次に、結合切換手段20は、リアクタンスセットXS12に従って、バラクタダイオード12のリアクタンスxm2を0Ωに設定し、かつ、バラクタダイオード11,13〜16のリアクタンスxm1,xm3〜xm6の全てを457.5Ωに設定する。これにより、アンテナ素子2とアンテナ素子7とが放射結合し、アレーアンテナ10は、ビームBM1をアンテナ素子7からアンテナ素子5の方向へ放射する。
以下、同様にして、結合切換手段20は、リアクタンスセットXS13〜XS16に従って、バラクタダイオード13〜16のリアクタンスxm3〜xm6を0Ωに順次設定し、その他のバラクタダイオードxm1,xm2,xm4〜xm6;xm1〜xm3,xm5,xm6;xm1〜xm4,xm6;xm1〜xm5のリアクタンスの全てを457.5Ωに順次設定する。これにより、アンテナ素子7は、アンテナ素子3〜6と順次放射結合し、アレーアンテナ10は、ビームBM1をアンテナ素子7からアンテナ素子6の方向、アンテナ素子7からアンテナ素子1の方向、アンテナ素子7からアンテナ素子2の方向、およびアンテナ素子7からアンテナ素子3の方向へ順次放射する。
このように、結合切換手段20がリアクタンスセットXS11〜XS16に従ってバラクタダイオード11〜16のリアクタンスを表2に示すリアクタンスに順次切換えることによって、給電素子(アンテナ素子7)と放射結合する無給電素子がアンテナ素子1〜6へ順次切換わり、アレーアンテナ10は、反時計回りに回転するビームBM1を放射する。
そして、アレーアンテナ10が放射するビームBM1を反時計回りに回転させたときの位相を方位角に対して示したのが曲線k2の位相特性である。このシミュレーションは、アンテナ素子1〜6とアンテナ素子7との間隔が0.25λであり、到来波Sa1の周波数(即ち、中心周波数)が200MHzであり、信号対ノイズ比(SNR)が無限大(∞)であり、到来波Sa1の真の到来方向が0度の方向(アンテナ素子7からアンテナ素子1への方向)である条件において行なわれた。なお、到来波Sa1を「中心周波数成分」と言う。
位相特性は、0〜360度の範囲の方位角に対して、約40〜80度の範囲で変化し、2つの極大点および2つの極小点を有する。そして、方位角が0度から60度へ変化することにより、位相は、約40度から約70度へ変化し、位相の変化割合は、正になる。また、方位角が60度から120度へ変化することにより、位相は、約80度から約70度へ変化し、位相の変化割合は、負になる。
図9は、図1に示すアレーアンテナ10の2つのアンテナ素子を結合させた場合の受信電力スペクトルの周波数依存性を示す図である。図9において、縦軸は、受信電力スペクトルを表し、横軸は、周波数を表す。受信電力スペクトルは、到来波Sa1の周波数(=200MHz)に対応する成分SS1と、周波数偏移(FM波Sa2)に対応する成分SS2〜SS6とを有する。
図10は、図1に示すアレーアンテナ10の2つのアンテナ素子を結合させた場合の周波数偏移スペクトルを示す図である。図10において、縦軸は、位相差(=周波数偏移)を表し、横軸は、方位角を表す。また、図10は、ビームBM1を反時計回りに2回転させたときの周波数偏移を示す。
上述したように、位相の変化割合は、0度〜60度の範囲において正であり、60〜120度の範囲において負であるので、周波数偏移が正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移がゼロになる方位角を到来波Sa1の到来方向と推定すべきであるが、アレーアンテナ10において、2つのアンテナ素子を放射結合させた場合、アレーアンテナ10が放射するビームBM1は、図8に示すように到来波Sa1の到来方向(矢印で示す方法)と反対方向である。従って、周波数偏移が負の値から正の値に切換わるときに周波数偏移がゼロになる方位角を到来波Sa1の到来方向と推定する。
その結果、図10に示す結果から0度および180度の方向が到来方向と推定された。このように、2つの到来方向が存在するのは、図8に示すように、ビームBM1の位相特性が2つの極大点および2つの極小点を有するからである。
このように、給電素子(アンテナ素子7)と無給電素子(アンテナ素子1〜6)とからなるアレーアンテナ10において、2本のアンテナ素子(給電素子と1本の無給電素子)を放射結合させた場合、周波数偏移がゼロになる方位角を到来波の到来方向と推定できる。
図11は、2つのアンテナ素子からなる2素子アレーアンテナにおけるビームの位相特性図である。アレーアンテナ60は、アンテナ素子61〜67と、接地板68とを含む。接地板68は、円形の導電性金属材料からなる。そして、アンテナ素子61〜67は、接地板68に略垂直(紙面に垂直な方向)に配置され、それぞれ、アレーアンテナ10のアンテナ素子1〜7の位置に対応する位置に配置される。そして、アンテナ素子61〜66とアンテナ素子67との間隔rは、0.25λである。
アンテナ素子67をアンテナ素子61に連結し、その連結したアンテナ素子61,67に給電することにより、2素子アレーアンテナが形成される。従って、アンテナ素子61〜66とアンテナ素子67との間に6個のスイッチ(図示せず)を設け、その設けた6個のスイッチを順次切換えることにより、アンテナ素子67と連結する1本のアンテナ素子(アンテナ素子61〜66のいずれか1本のアンテナ素子)を切換えることができる。即ち、2素子アレーアンテナをアンテナ素子67を中心にして反時計回りに回転させることができる。そして、アンテナ素子61とアンテナ素子67とを連結した場合、2素子アレーアンテナは、ビームBM2を放射する。
2素子アレーアンテナが放射するビームBM2を反時計回りに回転させたときの位相を方位角に対して示したのが曲線k3の位相特性である。このシミュレーションにおける条件は、図8〜図10に示すシミュレーション結果が得られたときのシミュレーション条件と同じである。
位相特性は、0度〜360度の範囲の方位角に対して、約20度〜80度の範囲で変化し、2つの極大点および2つの極小点を有する。また、位相の変化割合は、0〜60度の範囲において正であり、60〜120度の範囲において負である。この結果は、図8に示す結果と同じである。
図12は、2つのアンテナ素子からなる2素子アレーアンテナにおける受信電力スペクトルの周波数依存性を示す図である。図12において、縦軸は、受信電力スペクトルを表し、横軸は、周波数を表す。受信電力スペクトルは、到来波Sa1の周波数(=200MHz)に対応する成分SS7と、周波数偏移(FM波Sa2)に対応する成分SS8〜SS12とを有する。この結果は、図9に示す結果と同じである。
図13は、2つのアンテナ素子からなる2素子アレーアンテナにおける周波数偏移スペクトルを示す図である。図13において、縦軸は、位相差(=周波数偏移)を表し、横軸は、方位角を表す。また、図13は、ビームBM1を反時計回りに2回転させたときの周波数偏移を示す。
2素子アレーアンテナが放射するビームBM2を反時計回りに回転させたとき、アレーアンテナ60が放射するビームBM2は、図11に示すように到来波Sa1の到来方向(矢印で示す方法)と反対方向である。従って、周波数偏移が負の値から正の値に切換わるときに周波数偏移がゼロになる方位角を到来波Sa1の到来方向と推定する。
その結果、図13に示す結果から0度および180度の方向が到来波Sa1の到来方向と推定された。この結果は、図10に示す結果と同じである。
上述したように、アレーアンテナ10において、給電素子(アンテナ素子7)と放射結合する1本の無給電素子(アンテナ素子1〜6のいずれか)を反時計回りに回転させて到来波Sa1の到来方向を推定した結果は、2素子アレーアンテナを反時計回りに回転させて到来波Sa1の到来方向を推定した結果と同じである。
従って、アレーアンテナ10において、給電素子(アンテナ素子7)と放射結合する1本の無給電素子(アンテナ素子1〜6のいずれか)を反時計回りに回転させたときの受信信号Saの周波数偏移を検出することにより、到来波Sa1の到来方向を推定できることが解った。
[シミュレーション2]
図14は、図1に示すアレーアンテナ10における給電素子と無給電素子との間隔をシミュレーション1の場合よりも広くした場合のビームの位相特性図である。また、図15は、図1に示すアレーアンテナ10における給電素子と無給電素子との間隔をシミュレーション1の場合よりも広くした場合の受信電力スペクトルの周波数依存性を示す図である。更に、図16は、図1に示すアレーアンテナ10における給電素子と無給電素子との間隔をシミュレーション1の場合よりも広くした場合の周波数偏移スペクトルを示す図である。
シミュレーション2における給電素子(アンテナ素子7)と無給電素子(アンテナ素子1〜6)との間隔は、0.383λである。また、シミュレーション2におけるシミュレーション条件は、シミュレーション1におけるシミュレーション条件と同じである。
図14において、縦軸は、位相を表し、横軸は、方位角を表す。給電素子(アンテナ素子7)と放射結合する無給電素子(アンテナ素子1〜6のいずれか)をリアクタンスセットXS11〜XS16に従って順次切換えたときの位相特性は、曲線k4によって示される。そして、ビームBM1の位相は、0〜360度の範囲の方位角に対して約40度〜90度の範囲で変化し、2つの極大点および2つの極小点を有する。また、位相の変化割合は、0〜60度の範囲において正であり、60〜120度の範囲において負である。この結果は、図8に示す結果とほぼ同じである。
図15において、縦軸は、受信電力スペクトルを表し、横軸は、方位角を表す。受信電力スペクトルは、到来波Sa1の周波数(=200MHz)に対応する成分SS13と、周波数偏移(FM波Sa2)に対応する成分SS14〜SS18とを有する。この結果は、図9に示す結果とほぼ同じである。
図16において、縦軸は、位相差(=周波数偏移)を表し、横軸は、方位角を表す。また、図16は、ビームBM1を反時計回りに2回転させたときの周波数偏移を示す。上述したように、位相の変化割合は、正から負に変わるので、周波数偏移が正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移がゼロになる方位角を到来波Sa1の到来方向と推定すべきであるが、ビームBM1は、到来波Sa1の到来方向と反対方向を向いているので(図8参照)、周波数偏移が負の値から正の値に切換わるときに周波数偏移がゼロになる方位角を到来波Sa1の到来方向と推定する。その結果、0度の方向が到来波Sa1の到来方向と推定された。
図17は、到来波Sa1の周波数成分を除去した場合の受信電力スペクトルの周波数依存性を示す図である。図17において、縦軸は、受信電力スペクトルを表し、横軸は、周波数を表す。受信電力スペクトルは、到来波Sa1に対応する周波数成分を有さず、周波数偏移(FM波Sa2)に対応する成分SS19〜SS23を有する。
図18は、到来波Sa1の周波数成分を除去した場合の周波数偏移スペクトルを示す図である。図18において、縦軸は、位相差(=周波数偏移)を表し、横軸は、方位角を表す。図18に示す結果から、周波数偏移が正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移がゼロになる0度の方位角が到来波Sa1の到来方向と推定された。
このように、アレーアンテナ10のうち、2つのアンテナ素子を放射結合させた場合、到来波Sa1の周波数成分(=中心周波数成分)を抑圧することにより、周波数偏移が正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移がゼロになる方位角を到来波Sa1の到来方向と推定できる。
従って、到来方向推定装置100は、アレーアンテナ10のうち、2つのアンテナ素子を放射結合させて到来波Sa1の到来方向を推定するとき、到来波Sa1の周波数成分(=中心周波数成分)を抑圧する帯域阻止フィルタを増幅器30と周波数偏移検出手段40との間に含む。
図19は、素子間結合がないアンテナを用いた場合の受信電力スペクトルの周波数依存性を示す図である。アンテナ70は、アンテナ素子71〜77と、接地板78とを含む。接地板78は、円形の導電性金属材料からなる。アンテナ素子71〜77は、接地板78に略垂直(紙面に垂直な方向)に配置され、それぞれ、アレーアンテナ10のアンテナ素子1〜7の位置に対応する位置に配置される。そして、アンテナ素子71〜76とアンテナ素子77との間隔rは、0.25λである。
アンテナ70は、アンテナ素子77の周囲に配置されたアンテナ素子71〜76の各々が独立して受信信号Saを受信できるとともに、中心に配置されたアンテナ素子77も独立して受信信号Saを受信できるアンテナである。つまり、アンテナ70は、アンテナ素子71〜77の各々が独立して受信信号Saを受信し、アンテナ素子71〜77の各々から受信信号Saを出力するアンテナである。
一方、図1に示すアレーアンテナ10は、アンテナ素子1〜6の少なくとも1つのアンテナ素子とアンテナ素子7とが放射結合して受信信号Saを受信し、アンテナ素子7から受信信号Saを出力するアンテナである。
アンテナ素子71〜76とアンテナ素子77とを放射結合させずに、アンテナ素子71〜76のうちで受信信号を受信するアンテナを順次切換えながらアンテナ素子71〜76のいずれかで受信信号を受信したときの受信電力スペクトルの周波数依存性を示したのが図19に示す結果である。
受信電力スペクトルは、到来波Sa1の周波数に対応する成分SS24と、周波数偏移(FM波Sa2)に対応する成分SS25〜SS29とを有する。
図20は、素子間結合がないアンテナを用いた場合の周波数偏移スペクトルを示す図である。図20において、縦軸は、位相差(=周波数偏移)を表し、横軸は、方位角を表す。図20に示す結果から、周波数偏移が正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移がゼロになる0度の方位角が到来波Sa1の到来方向と推定された。
このように、アレーアンテナ10のアンテナ素子1〜7の配置と同じ配置を有し、素子間結合がないアンテナ70を用いて周波数偏移を検出し、その検出した周波数偏移が正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移がゼロになる方位角を検出することにより、到来波Sa1の到来方向を推定できる。
図21は、素子間結合がないアンテナにおいてアンテナ素子の間隔を広くした場合の受信電力スペクトルの周波数依存性を示す図である。図21において、縦軸は、受信電力スペクトルを表し、横軸は、周波数を表す。また、図21においては、アンテナ70のアンテナ素子71〜76とアンテナ素子77との間隔rは、0.383λに設定された。
受信電力スペクトルは、到来波Sa1の周波数(=200MHz)に対応する成分を有さず、周波数偏移(FM波Sa2)に対応する成分SS30〜SS34を有する。このように、アンテナ素子71〜76とアンテナ素子77との間隔rを0.383λに設定することにより、到来波Sa1の周波数(=200MHz)に対応した成分を除去して周波数偏移(FM波Sa2)に対応する成分SS30〜SS34のみを検出することができる。
そして、周波数偏移に対応する成分SS30〜SS34のうち、成分SS32〜SS34は、アンテナ素子71〜76とアンテナ素子77との間隔rが0.25λである場合(図19参照)よりも大きくなる。
図22は、素子間結合がないアンテナにおいてアンテナ素子の間隔を広くした場合の周波数偏移スペクトルを示す図である。図22において、縦軸は、位相差(=周波数偏移)を表し、横軸は、方位角を表す。図22に示す周波数偏移は、図20に示す周波数偏移よりも大きい。このように、到来波Sa1の周波数(=200MHz)に対応する成分を除去することにより、より大きな周波数偏移を検出できる。
図22に示す結果から、周波数偏移が正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移がゼロになる0度の方位角が到来波Sa1の到来方向と推定された。
このように、アンテナ素子71〜76とアンテナ素子77との間隔rを0.383λに設定することにより、到来波Sa1の周波数(=200MHz)に対応する成分を除去でき、より大きな周波数偏移を検出できるので、到来波Sa1の到来方向を正確に推定できる。
アレーアンテナ10は、到来波Sa1とFM波Sa2(FM波Sa21,Sa22からなる)とが混在した受信信号Saを1本の給電素子(アンテナ素子7)によって受信するので、アンテナ素子1〜6とアンテナ素子7との間隔rを0.383λに設定しても、図15に示すように、アレーアンテナ10は、到来波Sa1の周波数(=200MHz)に対応する成分SS13と、周波数偏移(FM波Sa2)に対応する成分SS14〜SS18とを検出する。
そこで、アレーアンテナ10によって受信された受信信号Sa(到来波Sa1とFM波Sa2とからなる)を帯域阻止フィルタに通して到来波Sa1の周波数(=200MHz)に対応する成分SS13を除去することにより、周波数偏移(FM波Sa2)に対応する成分SS19〜SS23が大きくなる(図17参照)。その結果、図18に示すように、より大きな周波数偏移を検出でき、到来波Sa1の到来方向を正確に推定できる。そして、図18に示す周波数偏移は、図22に示す周波数偏移とほぼ同じ大きさを有する。
従って、アレーアンテナ10のうち、2つのアンテナ素子を放射結合させて到来波Sa1の到来方向を推定する場合、到来波Sa1の周波数(=200MHz)を除去する帯域阻止フィルタを設けることによって、アンテナ素子71〜76とアンテナ素子77との間隔rを0.383λに設定して到来波Sa1の周波数(=200MHz)に対応する成分を検出しないアンテナ70と同様の精度で到来波Sa1の到来方向を推定できる。
この場合、到来方向推定装置100は、アンテナ素子1〜6とアンテナ素子7との間隔が素子間結合のないアンテナ70において周波数偏移が略ゼロである到来波Sa1の成分を抑制する間隔に設定され、増幅器30と周波数偏移検出手段40との間に帯域阻止フィルタを含む構成を有する。
[シミュレーション3]
図23は、図1に示すアレーアンテナ10の全てのアンテナ素子を結合させた場合のビームの位相特性図である。図23において、縦軸は、位相を表し、横軸は、方位角を表す。全てのアンテナ素子の結合とは、アンテナ素子1〜6と、アンテナ素子7とが結合していることを言う。但し、アンテナ素子1〜6の全てが同じ割合でアンテナ素子7と結合しているわけではなく、アンテナ素子1〜6のいずれか1本のアンテナ素子がアンテナ素子7と強く結合しており、その他のアンテナ素子がアンテナ素子7と弱く結合している。
なお、アンテナ素子1〜6とアンテナ素子7との間隔rは、0.25λであり、シミュレーション条件は、上述したシミュレーション1のシミュレーション条件と同じである。
この場合、結合切換手段20は、表3に示すリアクタンステーブルXTB2のリアクタンスセットXS21〜XS26に従ってバラクタダイオード11〜16のリアクタンスxm1〜xm6を順次切換える。
即ち、結合切換手段20は、まず、リアクタンスセットXS21に従って、バラクタダイオード11のリアクタンスxm1を−90Ωに設定し、かつ、バラクタダイオード12〜16のリアクタンスxm2〜xm6の全てを30Ωに設定する。これにより、アンテナ素子1とアンテナ素子7とが強く放射結合するとともにアンテナ素子2〜6とアンテナ素子7とが弱く放射結合する。
次に、結合切換手段20は、リアクタンスセットXS22に従って、バラクタダイオード12のリアクタンスxm2を−90Ωに設定し、かつ、バラクタダイオード11,13〜16のリアクタンスxm1,xm3〜xm6の全てを30Ωに設定する。これにより、アンテナ素子2とアンテナ素子7とが強く放射結合するとともにアンテナ素子1,3〜6とアンテナ素子7とが弱く放射結合する。
以下、同様にして、結合切換手段20は、リアクタンスセットXS23〜XS26に従って、バラクタダイオード13〜16のリアクタンスxm3〜xm6を−90Ωに順次設定し、その他のバラクタダイオードxm1,xm2,xm4〜xm6;xm1〜xm3,xm5,xm6;xm1〜xm4,xm6;xm1〜xm5のリアクタンスの全てを30Ωに順次設定する。これにより、アンテナ素子7は、アンテナ素子3〜6と、順次、強く放射結合するとともにアンテナ素子1,2,4〜6;1〜3,5,6;1〜4,6;1〜5と、順次、弱く放射結合する。
このように、結合切換手段20がリアクタンスセットXS21〜XS26に従ってバラクタダイオード11〜16のリアクタンスを表3に示すリアクタンスに順次切換えることによって、給電素子(アンテナ素子7)と強く放射結合する無給電素子がアンテナ素子1〜6へ順次切換わり、アレーアンテナ10は、反時計回りに回転するビームを放射する。
そして、アレーアンテナ10が放射するビームを反時計回りに回転させたときの位相を方位角に対して示したのが曲線k5の位相特性である。
位相特性は、0〜360度の範囲の方位角に対して、約15度〜約−220度の範囲で変化し、1つの極大点および1つの極小点を有する。そして、方位角が0度から60度へ変化することにより、位相は、正から負に変化する。なお、図23においては、方位角が約100度〜約260度の範囲において、位相は、約140度〜約180度の範囲で変化するように示されているが、これは、表示上の問題であり、実際には、位相は、方位角が約100度〜約260度の範囲において、約−180度〜約−220度の範囲で変化する。
図24は、図1に示すアレーアンテナ10の全てのアンテナ素子を結合させた場合の受信電力スペクトルの周波数依存性を示す図である。図24において、縦軸は、受信電力スペクトルを表し、横軸は、周波数を表す。受信電力スペクトルは、到来波Sa1の周波数(=200MHz)に対応する成分SS35と、周波数偏移(FM波Sa2)に対応する成分SS36〜SS40とを有する。そして、到来波Sa1の周波数(=200MHz)に対応する成分SS35は、周波数偏移(FM波Sa2)に対応する成分SS36〜SS40よりも小さい。
このように、アレーアンテナ10のアンテナ素子1〜7の全てを放射結合させることによって、到来波Sa1の周波数(=200MHz)に対応する成分SS35を抑制し、周波数偏移(FM波Sa2)に対応する成分SS36〜SS40を大きくできる場合がある。また、アンテナ素子1〜7の全てを放射結合させることによってビームの指向性利得を向上させることができる。
図25は、図1に示すアレーアンテナ10の全てのアンテナ素子を結合させた場合の周波数偏移スペクトルを示す図である。図25において、縦軸は、位相差(=周波数偏移)を表し、横軸は、方位角を表す。また、図25は、ビームを反時計回りに2回転させたときの周波数偏移を示す。図25に示す周波数偏移は、図22に示す周波数偏移とほぼ同じである。
上述したように、位相は、0〜360度の方位角において正から負に変化するので、周波数偏移が正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移がゼロになる方位角を到来波Sa1の到来方向と推定する。
その結果、図25に示す結果から0度の方向が到来波Sa1の到来方向と推定された。
このように、給電素子(アンテナ素子7)と無給電素子(アンテナ素子1〜6)とからなるアレーアンテナ10において、アンテナ素子1〜7の全てを放射結合させることによって、到来波Sa1とFM波Sa2とが混在した受信信号Saを1本の給電素子(アンテナ素子7)によって検出しても、到来波Sa1の周波数(=200MHz)に対応する成分SS34を抑制し、周波数偏移(FM波Sa2)に対応する成分SS36〜SS40を大きくできる場合があり、到来波Sa1の到来方向を正確に推定できる。
なお、アレーアンテナ10のアンテナ素子1〜7の全てを放射結合させて到来波Sa1の到来方向を推定する場合、次の2つの条件が必要である。
(A)方位角が0度から360度へ変化したとき、位相の極大点および極小点は1個である。
(B)方位角が60度変化したときに、位相は、180度よりも小さい範囲で変化する。
従って、上記の2つの条件(A),(B)を満たせば、バラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットは、表3に示すリアクタンスセットXS21〜XS26に限られず、アンテナ素子1〜7の全てを放射結合させる他のリアクタンスセットであってもよい。
[シミュレーション4]
図26は、図1に示すアレーアンテナ10が放射するビームの各方位角における方向ゲインを示す図である。図26において、縦軸は、方向ゲインを表し、横軸は、方位角を表す。また、曲線k6は、バラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットを表4に示すリアクタンスセットXS31に設定したときにアレーアンテナ10が放射するビームの各方位角における方向ゲインを示す。
図26に示す結果から、バラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットをリアクタンスセットXS31に設定した場合、アレーアンテナ10は、2つの方向に指向性を有するビームを放射する。
図27は、図1に示すアレーアンテナ10が放射するビームの位相特性図である。図27において、縦軸は、位相を表し、横軸は、方位角を表す。また、曲線k7は、バラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットを表4に示すリアクタンスセットXS31に設定したときにアレーアンテナ10が放射するビームの位相特性を示す。
図27に示す結果から、バラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットをリアクタンスセットXS31に設定した場合、位相は、2つの極大点および2つの極小点を有する。
図28は、表4に示すリアクタンスセットXS31〜XS36に従ってバラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットを順次切換えたときの周波数偏移スペクトルを示す図である。
図28において、縦軸は、位相差(=周波数偏移)を表し、横軸は、2つのビーム間の中央の方向、即ち、方位角=180度の方向を表す。また、到来波Sa1の真の到来方向は、0度の方向(図28において矢印で示す方向)であり、アレーアンテナ10が受信する受信信号Saの信号対ノイズ比(SNR)は無限大(∞)である。
図28に示す結果から、周波数偏移が正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移がゼロになる0度の方向が到来波Sa1の到来方向と推定された。
図29は、表4に示すリアクタンスセットXS31〜XS36に従ってバラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットを順次切換えたときの他の周波数偏移スペクトルを示す図である。
図29において、縦軸は、位相差(=周波数偏移)を表し、横軸は、2つのビーム間の中央の方向を表す。また、到来波Sa1の真の到来方向は、0度の方向(図29において矢印で示す方向)であり、アレーアンテナ10が受信する受信信号Saの信号対ノイズ比(SNR)は、20dBである。
図29に示す結果から、周波数偏移が正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移がゼロになる0.2792度の方向および−0.9039度の方向が到来波Sa1の到来方向と推定された。
このように、ノイズが大きくなると、推定された到来方向は、真の到来方向から若干ずれるが、数回の試行を平均化することによって到来波Sa1の到来方向を精度よく推定できる。
図30は、表4に示すリアクタンスセットXS31〜XS36に従ってバラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットを順次切換えたときの更に他の周波数偏移スペクトルを示す図である。
図30において、縦軸は、位相差(=周波数偏移)を表し、横軸は、2つのビーム間の中央の方向を表す。また、到来波Sa1の真の到来方向は、15度の方向(図30において矢印で示す方向)であり、アレーアンテナ10が受信する受信信号Saの信号対ノイズ比(SNR)は無限大(∞)である。
図30に示す結果から、周波数偏移が正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移がゼロになる14.9628度の方向が到来波Sa1の到来方向と推定された。
このように、表4に示すリアクタンステーブルXTB3に従ってバラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットを順次切換えることにより、周波数偏移が正の値から負の値に切換わるときに周波数偏移がゼロになる角度を到来波Sa1の到来方向と推定することができる。
上述したように、2つのピークを有するビームを用いても到来波Sa1の到来方向を正確に推定できる。
なお、上記においては、アンテナ素子1〜6のうち、1本のアンテナ素子がアンテナ素子7と放射結合する場合、およびアンテナ素子1〜6の全てがアンテナ素子7と放射結合する場合について説明したが、この発明は、これに限らず、アンテナ素子1〜6のうち、2本のアンテナ素子、3本のアンテナ素子、4本のアンテナ素子および5本のアンテナ素子がアンテナ素子7と放射結合してもよい。つまり、6本の無給電素子(アンテナ素子1〜6)の一部の無給電素子が給電素子(アンテナ素子7)と放射結合するようにしてもよい。
そして、給電素子(アンテナ素子7)と放射結合する無給電素子(アンテナ素子1〜6)の本数の制御は、バラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットを制御することにより行なわれる。例えば、給電素子(アンテナ素子7)と放射結合する無給電素子の本数を2本とする場合、給電素子と放射結合する無給電素子(アンテナ素子1〜6のうちの2本のアンテナ素子)に装荷されたバラクタダイオードのリアクタンスは、相対的に小さく設定され、給電素子と放射結合しない無給電素子に装荷されたバラクタダイオードのリアクタンスは、相対的に大きく設定される。給電素子と放射結合する無給電素子の本数が2本以外の場合も同様である。
給電素子と放射結合する無給電素子の本数が増加した場合、給電素子と強く放射結合する無給電素子と、給電素子と弱く放射結合する無給電素子とが存在する。そして、到来波Sa1の到来方向を推定するときは、給電素子と強く放射結合する無給電素子が給電素子の周囲を所定の速度<v>で回転するように給電素子と無給電素子との放射結合が切換えられる。
また、上記においては、無給電素子であるアンテナ素子1〜6には、可変容量素子であるバラクタダイオード11〜16が装荷され、バラクタダイオード11〜16のリアクタンスを変えることにより、アンテナ素子7(給電素子)と放射結合する無給電素子(アンテナ素子1〜6の少なくとも1つのアンテナ素子)を順次切換えると説明したが、この発明においては、これに限らず、バラクタダイオード11〜16に代えて抵抗をアンテナ素子1〜6と接地ノードとの間に接続し、アンテナ素子1〜6の抵抗を変えてアンテナ素子7(給電素子)と結合する無給電素子を順次切換えるようにしてもよい。
即ち、この発明においては、一般に、アンテナ素子1〜6と接地ノードとの間にインピーダンス素子を接続し、アンテナ素子1〜6のインピーダンスを変えてアンテナ素子7(給電素子)と結合する無給電素子を順次切換えるようにしてもよい。
更に、上記においては、無給電素子(アンテナ素子1〜6)の数は、6本であると説明したが、この発明においては、これに限らず、無給電素子の数は、2本以上であればよい。無給電素子が2本あれば、給電素子を中心にして2本の無給電素子を対称に配置し、無給電素子に装荷された2個のバラクタダイオードの容量を変えることにより、給電素子に放射結合する無給電素子を給電素子を中心にして一定の方向に回転できるので、ドップラー効果による周波数偏移を検出し、上述した方法によって到来波の到来方向を推定できるからである。
更に、上記においては、アンテナ素子1〜6の少なくとも1つのアンテナ素子とアンテナ素子7とを放射結合させて信号を受信する場合について説明したが、この発明においては、アレーアンテナ10は、アンテナ素子1〜6の少なくとも1つのアンテナ素子とアンテナ素子7とを放射結合させて信号を送信することもできる。そして、アレーアンテナ10が信号を送信する場合、アレーアンテナ10が信号を受信する場合に設定されたバラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットがそのまま用いられる。つまり、アレーアンテナ10は、バラクタダイオード11〜16のリアクタンスセットを同じリアクタンスセットに設定して信号を送受信できる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
この発明は、小型化、低コスト化が可能であり、信頼性および耐久性に優れるとともに、熟練技術による調整等が不要な到来方向推定装置に適用される。
この発明の実施の形態による到来方向推定装置の構成を示す概略図である。 図1に示すx−y平面におけるアンテナ素子の平面配置図である。 図1に示すアレーアンテナと送信機とを示す平面図である。 図1に示すアレーアンテナに到来する到来波を示す模式図である。 図1に示す周波数偏移検出手段における周波数偏移の検出方法を説明するための図である。 位相差と方位角との関係を示す図である。 到来波の到来方向を推定する動作を説明するためのフローチャートである。 図1に示すアレーアンテナの2つのアンテナ素子を結合させた場合のビームの位相特性図である。 図1に示すアレーアンテナの2つのアンテナ素子を結合させた場合の受信電力スペクトルの周波数依存性を示す図である。 図1に示すアレーアンテナの2つのアンテナ素子を結合させた場合の周波数偏移スペクトルを示す図である。 2つのアンテナ素子からなる2素子アレーアンテナにおけるビームの位相特性図である。 2つのアンテナ素子からなる2素子アレーアンテナにおける受信電力スペクトルの周波数依存性を示す図である。 2つのアンテナ素子からなる2素子アレーアンテナにおける周波数偏移スペクトルを示す図である。 図1に示すアレーアンテナにおける給電素子と無給電素子との間隔をシミュレーション1の場合よりも広くした場合のビームの位相特性図である。 図1に示すアレーアンテナにおける給電素子と無給電素子との間隔をシミュレーション1の場合よりも広くした場合の受信電力スペクトルの周波数依存性を示す図である。 図1に示すアレーアンテナにおける給電素子と無給電素子との間隔をシミュレーション1の場合よりも広くした場合の周波数偏移スペクトルを示す図である。 到来波の周波数成分を除去した場合の受信電力スペクトルの周波数依存性を示す図である。 到来波の周波数成分を除去した場合の周波数偏移スペクトルを示す図である。 素子間結合がないアンテナを用いた場合の受信電力スペクトルの周波数依存性を示す図である。 素子間結合がないアンテナを用いた場合の周波数偏移スペクトルを示す図である。 素子間結合がないアンテナにおいてアンテナ素子の間隔を広くした場合の受信電力スペクトルの周波数依存性を示す図である。 素子間結合がないアンテナにおいてアンテナ素子の間隔を広くした場合の周波数偏移スペクトルを示す図である。 図1に示すアレーアンテナの全てのアンテナ素子を結合させた場合のビームの位相特性図である。 図1に示すアレーアンテナの全てのアンテナ素子を結合させた場合の受信電力スペクトルの周波数依存性を示す図である。 図1に示すアレーアンテナの全てのアンテナ素子を結合させた場合の周波数偏移スペクトルを示す図である。 図1に示すアレーアンテナが放射するビームの各方位角における方向ゲインを示す図である。 図1に示すアレーアンテナが放射するビームの位相特性図である。 表4に示すリアクタンスセットに従ってバラクタダイオードのリアクタンスセットを順次切換えたときの周波数偏移スペクトルを示す図である。 表4に示すリアクタンスセットに従ってバラクタダイオードのリアクタンスセットを順次切換えたときの他の周波数偏移スペクトルを示す図である。 表4に示すリアクタンスセットに従ってバラクタダイオードのリアクタンスセットを順次切換えたときの更に他の周波数偏移スペクトルを示す図である。
符号の説明
1〜7,61〜67、71〜77 アンテナ素子、8,68,78 接地板、10,60 アレーアンテナ、20 結合切換手段、21 パルス発生器、22 リアクタンス値テーブル、23 可変リアクタンス制御装置、30 増幅器、40 周波数偏移検出手段、50 方向推定手段、70 アンテナ、100 到来方向推定装置。

Claims (8)

  1. 給電素子と、前記給電素子の周囲に配置されたn(nは複数)個の無給電素子とを含むアレーアンテナと、
    前記n個の無給電素子に装荷されたn個のインピーダンス素子の少なくとも1つのインピーダンスを変えて前記給電素子と素子結合する無給電素子を切換える結合切換手段と、
    前記給電素子と素子結合する無給電素子が前記給電素子の周囲を回転するように所定の速度で順次切換えられたときに前記アレーアンテナが受信する到来波の受信信号を前記給電素子から受け、その受けた受信信号に基づいて前記到来波の周波数偏移スペクトルを検出する周波数偏移検出手段と、
    前記周波数偏移検出手段により検出された前記周波数偏移スペクトルが、周波数偏移がゼロであることを示す基準線と交差する角度を検出し、その検出した角度を前記到来波の到来方向と推定する方向推定手段とを備える到来方向推定装置。
  2. 前記方向推定手段は、前記周波数偏移が正の値から負の値に切換わるときに前記周波数偏移スペクトルが前記基準線と交差する角度を検出し、その検出した角度を前記到来波の到来方向と推定する、請求項1に記載の到来方向推定装置。
  3. 前記方向推定手段は、前記周波数偏移が負の値から正の値に切換わるときに前記周波数偏移スペクトルが前記基準線と交差する角度を検出し、その検出した角度を前記到来波の到来方向と推定する、請求項1に記載の到来方向推定装置。
  4. 前記結合切換手段は、前記n個の無給電素子の全てが前記給電素子と素子結合し、かつ、前記給電素子と主に素子結合する無給電素子が前記給電素子の周囲を前記所定の速度で回転するように前記給電素子と前記n個の無給電素子との素子結合を切換える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の到来方向推定装置。
  5. 前記結合切換手段は、前記n個の無給電素子のうち一部の無給電素子が前記給電素子と素子結合し、かつ、前記給電素子と素子結合する無給電素子が前記給電素子の周囲を前記所定の速度で回転するように前記給電素子と前記n個の無給電素子との素子結合を切換える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の到来方向推定装置。
  6. 前記受信信号から前記到来波の中心周波数成分を抑圧し、前記到来波の中心周波数成分が抑圧された受信信号を前記周波数偏移検出手段へ出力する帯域阻止フィルタを更に備え、
    前記給電素子と前記無給電素子との間隔は、前記到来波の中心周波数成分を抑圧する間隔に設定され、
    前記周波数偏移検出手段は、前記帯域阻止フィルタから出力された受信信号に基づいて、前記周波数偏移スペクトルを検出する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の到来方向推定装置。
  7. 前記n個の無給電素子は、前記給電素子の周囲に略円形に配置される、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の到来方向推定装置。
  8. 前記インピーダンス素子は、可変容量素子である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の到来方向推定装置。
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WO2014119142A1 (en) * 2013-01-31 2014-08-07 Nec Corporation Communication system

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