本発明は、表面にバリア型の陽極酸化膜を有する金属配線電極と、その上に酸化珪素等の層間絶縁膜を有する積層体に対し、陽極酸化膜と層間絶縁膜をエッチングして開孔を形成する方法に関する。
本発明は、陽極酸化を施した電極を有する薄膜トランジスタのコンタクトホールの作製方法に関する。
近年、薄膜トランジスタは、液晶ディスプレイやイメージセンサーの動作素子として重要な役割を果たしている。特に、電子移動度の高い結晶系薄膜トランジスタはこれまでシリコン半導体のLSIが行ってきたドライバー回路をガラス、セラミックなどの絶縁性基板上に直接形成することが出来る。配線回路の自由度も上がり、幅1〜5mm以下でシフトレジスター等のドライバー回路を形成出来る。その結果パネル周辺部のデッドスペースをほとんどなくせると言った特徴を有している。
従来より、タンタルやアルミニウムが半導体回路等において微細な配線電極として使われている。特にアルミニウムは比較的安価な材料であり,体積抵抗が低いため大面積基板でも低抵抗かつ微細パターンを形成できる。しかし、これらの金属材料は、加熱プロセスでは安定でなく、金属が粒状に異常成長するヒロックや髭状に成長するホィスカー等が生じ、これらの材料を加熱プロセスを有する半導体回路等の微細な電極構成に使用することは難しかった。
加熱プロセスにおいて金属を安定化させるために、原子半径が比較的大きな、チタン、スカンジウム、シリコン、パラジウム、タンタル、イットリウム等がドーパント金属として0.1〜5%程度添加し、配線金属の安定化を計ることがおこなわれていた。しかしながら、少しでも高温プロセスを目指したい結晶系シリコンの分野では350℃迄の耐熱性が要求される。それを満足するためにはドーパント金属の効果だけでは難しかった。
その他の対策として、これらの金属表面を酸化し、安定な絶縁膜で被覆すると、金属の加熱プロセスに対する耐久性が向上することが知られている。酸化物は金属化合物に比べて融点が高く安定であるために、金属の異常成長を防ぐことができた。また、この安定な絶縁膜で被覆された金属を多層配線に用いると、その表面の絶縁性が充分に取れるため、配線間のショート防止に有効であった。
金属表面の酸化方法としては陽極酸化法が、簡便で有力な手法である。化成溶液(陽極酸化を行なうための電解液)としては3〜10%の酒石酸アンモニウムやほう酸アンモニウム水溶液またはそれらをエチレングリコール中に3〜30%程添加した溶液が利用される。化成溶液の中に基板を入れ、基板上の金属配線を電源の陽極(プラス)側に接続する。陰極(マイナス)側には白金やステンレス等の安定した材料が用いられる。この状態で陽極・陰極間に定電流が流すと、供給された電荷によりアルミニウム等の配線材料が酸化する。形成される酸化物は絶縁性が高いため、酸化が進むと配線材料の電気抵抗が次第に高くなり、電極間の電圧は徐々に増加し、電圧は100〜200Vに達する。その時の陽極酸化膜の膜厚は約1400〜2800Åとなり、配線金属は緻密な安定した酸化膜で被覆される。このようにして形成された緻密な安定した陽極酸化膜をバリア型陽極酸化膜という。
一方、近年は図1に示されるような構造の薄膜トランジスタ(TFT)が提案されている。図1に薄膜トランジスタの構造を示す。すなわち、電極とくにゲイト電極に、表面にバリア型の陽極酸化膜が形成されたアルミニウム、タンタル等の金属電極を用いた薄膜トランジスタである。
図1の薄膜トランジスタ(プレーナー型)の構成を説明する。
半導体からなる活性層(ソース部403、チャネル部404、ドレイン部405)を設け、その上にゲイト絶縁膜406を設け、その上に、緻密なバリア型の陽極酸化膜408を有したゲイト電極407が形成されている。図1に示す薄膜トランジスタにはバリア型陽極酸化膜408だけでなく、その側面部にポーラス型(多孔質型)の陽極酸化膜409が形成されている。
408や409のような薄膜トランジスタのゲイト電極における陽極酸化膜は配線の熱安定性を増加させるだけでなく、ゲイト側面の酸化物の厚さを利用してオフセット領域413、414を形成する事ができる。その上に層間絶縁膜410が形成されている。層間絶縁膜410には酸化珪素または窒化珪素の膜が利用される。
このような、表面に陽極酸化膜を有する金属を電極に用いた構成の薄膜トランジスタにおいて問題となるのは、ソース部活性層(ソース領域)403と接続電極411、ドレイン部活性層(ドレイン領域)405と接続電極412、及びゲイト電極407と接続電極415を、それぞれ接続するためのコンタクトホールの形成である。
このとき、ソース部、ドレイン部では層間絶縁膜410とゲイト絶縁膜406(ゲイト絶縁膜がソース部、ドレイン部に無い構成のときは層間絶縁膜410のみ)に対してエッチングをし、また、ゲイト電極部では層間絶縁膜410と陽極酸化膜408に対してエッチングを行なって、接続用のコンタクトホールが設けることになる。
このような場合、従来の工程では、水で1/10〜1/100に希釈したフッ化水素酸(HF)がエッチャントとして用いられていた。このエッチャントは酸化珪素または窒化珪素からなる層間絶縁膜やゲイト絶縁膜のエッチングに用いられる。さらに、アルミニウムよりなるゲイト電極の場合、その陽極酸化膜(バリア型陽極酸化アルミニウム)に対してもエッチングが行なわれる。
フッ化水素酸をエッチャントとして用いた場合、フッ化水素酸は層間絶縁膜やゲイト絶縁膜を構成する酸化珪素に対するエッチング速度が、陽極酸化アルミニウムに対するエッチング速度と余り差が無く、エッチング選択比が低い。そのため、ソース部およびドレイン部に対するコンタクトホールの形成と、ゲイト部のコンタクトホールの形成を、レジストにより共に開孔を設けて同工程でエッチングを行なおうとすると、ソース/ドレイン部とゲイト部のどちらかにおいて、オーバエッチングやエッチング不足といった事態が発生しやすかった。
したがって、従来は2段階のエッチングが行なわれていた。図8に従来のエッチング工程を示す。まず図8(A)に示すように、ゲイト部をレジスト303で覆いソース部301及びドレイン部302のみをレジストで開孔して層間絶縁膜410及びゲイト絶縁膜406までのエッチングを行いシリコン活性層405を露出させる。次に図8(B)に示すように、ゲイト部304のみをレジストで開孔し、層間絶縁膜410と陽極酸化アルミニウム408のエッチングを行なうといった2段階エッチングが行なわれていた。
この方法では、開孔部のエッチングを行なうのに2枚のマスク工程が必要とされた。さらにフッ化水素酸の陽極酸化アルミニウムのエッチング速度は、陽極酸化アルミニウム408がエッチング除去された後の、アルミニウム407のエッチング速度に比して遅いため、十分な選択比がとれない。すなわち、陽極酸化アルミニウムのエッチングが終了した時点でエッチング速度が加速されてしまうため、アルミニウム407をオーバエッチングしてしまう結果を招きやすい。
アルミニウムのエッチャントとして通常用いられている燐酸、酢酸、硝酸を含んだアルミ混酸でもほぼ同様で陽極酸化アルミニウム/アルミニウムに対して選択比を取るのは難しかった。
本発明は、酸化珪素膜または窒化珪素膜下の、表面に陽極酸化アルミニウム膜を有しているアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする電極に対して、酸化珪素膜または窒化珪素膜と酸化アルミニウム膜をエッチング除去して行なわれるコンタクトホールの形成を、容易かつ確実に実施できる方法を提供する。
また本発明は、酸化珪素膜または窒化珪素膜下であって、陽極酸化アルミニウム膜を表面に有するアルミニウム電極へのコンタクトホールの形成と、酸化珪素膜下または酸化珪素膜と窒化珪素膜下の半導体へのコンタクトホールの形成を、一度のレジスト形成工程(マスク行程)にて行なえる方法を提供する。
上記課題を解決するために、本明細書で開示する発明の一つは、
表面に陽極酸化アルミニウムを有するアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする金属と、
該アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする金属を覆っている酸化珪素膜とを有する積層体に対し、
酢酸とフッ化アンモニウム(NH4 F)とフッ化水素酸(HF)とを含んだ酢酸入り緩衝フッ酸溶液(ABHF)でエッチングする工程と、
該工程の後、無水クロム酸と燐酸を含んだクロム燐酸溶液でエッチングする工程とにより、
前記酸化珪素膜と前記陽極酸化アルミニウムとをエッチングし、前記アルミニウムの少なくとも一部を露呈することを特徴とするコンタクトホールの作製方法である。
他の発明の一つは、
陽極酸化アルミニウムで被覆されたアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする金属よりなるゲイト電極を有するゲイト部と、
半導体よりなるソース部またはドレイン部と、
前記ゲイト部、ソース部、ドレイン部を覆って設けられた酸化珪素膜とを少なくとも有する薄膜トランジスタにおいて、
前記酸化珪素膜に対し、前記ソース部、ドレイン部およびゲイト部の上部に開孔領域を有してレジストを形成する工程と、
前記開孔領域内を、フッ化アンモニウム(NH4 F)とフッ化水素酸(HF)とを含んだ酢酸入り緩衝フッ酸溶液(ABHF)に浸す工程と
該工程の後、前記開孔領域内を、無水クロム酸と燐酸を含んだクロム燐酸溶液に浸す工程とにより、
前記開孔領域内の酸化珪素膜および陽極酸化アルミニウム膜を除去すること
を特徴とするコンタクトホールの作製方法である。
また、他の発明の一つは、
陽極酸化アルミニウムで被覆されたアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする金属よりなるゲイト電極を有するゲイト部と、
半導体よりなるソース部またはドレイン部と、
前記ゲイト部、ソース部、ドレイン部を覆って設けられた酸化珪素膜とを少なくとも有する薄膜トランジスタにおいて、
前記酸化珪素膜に対し、フッ化アンモニウム(NH4 F)とフッ化水素酸(HF)とを含んだ酢酸入り緩衝フッ酸溶液(ABHF)により、開孔を形成する工程と、
無水クロム酸と燐酸を含んだクロム燐酸溶液により、前記開孔より小さい口径を有する開孔を、前記陽極酸化アルミニムウム膜に設けること、
を特徴とするコンタクトホールの作製方法である。
また他の発明は、上記した構成において、酸化珪素膜は、酸化珪素膜と窒化珪素膜との積層膜であることを特徴とするコンタクトホールの作製方法である。
また、他の発明の一つは、
表面に陽極酸化アルミニウムを有するアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする金属と、
該アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする金属を覆っている酸化珪素膜または窒化珪素膜または酸化珪素膜と窒化珪素膜との積層膜と、
を有する積層体に対し、
ドライエッチングする工程と、
該工程の後、無水クロム酸と燐酸を含んだクロム燐酸溶液でエッチングする工程とにより、
前記酸化珪素膜または窒化珪素膜または酸化珪素膜と窒化珪素膜との積層膜と前記陽極酸化アルミニウムとをエッチングして、前記アルミニウムの少なくとも一部を露呈させ、
該工程の後、前記積層体上に、前記露呈したアルミニウムと電気的に接続するアルミニウム配線を設けること
を特徴とするコンタクトホールの作製方法である。
また、他の発明の一つは、
表面に陽極酸化アルミニウムを有するアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする金属と、
該アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする金属を覆っている酸化珪素膜または窒化珪素膜または酸化珪素膜と窒化珪素膜との積層膜と、
を有する積層体に対し、
ドライエッチングする工程と、
該工程の後、イオンミリングすることにより、
前記酸化珪素膜または窒化珪素膜または酸化珪素膜と窒化珪素膜との積層膜と前記陽極酸化アルミニウムとをエッチングして、前記アルミニウムの少なくとも一部を露呈させ、
該工程の後、前記積層体上に、前記露呈したアルミニウムと電気的に接続するアルミニウム配線を設けること
を特徴とするコンタクトホールの作製方法である。
また、他の発明の一つは、
表面に陽極酸化アルミニウムを有するアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする金属と、
該アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする金属を覆っている酸化珪素膜または窒化珪素膜または酸化珪素膜と窒化珪素膜との積層膜と、
を有する積層体に対し、
酢酸とフッ化アンモニウム(NH4 F)とフッ化水素酸(HF)とを含んだ酢酸入り緩衝フッ酸溶液(ABHF)でエッチングする工程と、
該工程の後、イオンミリングすることにより、
前記酸化珪素膜または窒化珪素膜または酸化珪素膜と窒化珪素膜との積層膜と前記陽極酸化アルミニウムとをエッチングして、前記アルミニウムの少なくとも一部を露呈させ、
該工程の後、前記積層体上に、前記露呈したアルミニウムと電気的に接続するアルミニウム配線を設けること
を特徴とするコンタクトホールの作製方法である。
また、他の発明の一つは、
表面に陽極酸化アルミニウムを有するアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする金属と、
該アルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする金属を覆っている窒化珪素膜または酸化珪素膜と窒化珪素膜との積層膜とを有する積層体に対し、
酢酸とフッ化アンモニウム(NH4 F)とフッ化水素酸(HF)とを含んだ酢酸入り緩衝フッ酸溶液(ABHF)でエッチングする工程と、
該工程の後、無水クロム酸と燐酸を含んだクロム燐酸溶液でエッチングする工程とにより、
前記窒化珪素膜と前記陽極酸化アルミニウムとをエッチングし、前記アルミニウムの少なくとも一部を露呈することを特徴とするコンタクトホールの作製方法。
また、他の発明の一つは、
陽極酸化アルミニウムで被覆されたアルミニウムまたはアルミニウムを主成分とする金属よりなるゲイト電極と、
前記ゲイト電極を覆って設けられたゲイト絶縁膜とを少なくとも有する薄膜トランジスタにおいて、
前記ゲイト絶縁膜に対し、フッ化アンモニウム(NH4 F)とフッ化水素酸(HF)とを含んだ酢酸入り緩衝フッ酸溶液(ABHF)により、開孔を形成する工程と、
無水クロム酸と燐酸を含んだクロム燐酸溶液により、前記開孔より小さい口径を有する開孔を、前記陽極酸化アルミニウム膜に設けること
を特徴とするコンタクトホールの作製方法。
また、他の発明は、上記構成において、ゲイト絶縁膜は、酸化珪素膜であることを特徴とするコンタクトホールの作製方法である。
また、他の発明は、上記構成において、ゲイト絶縁膜は、窒化珪素膜であること特徴とするコンタクトホールの作製方法である。
また、他の発明は、上記構成において、ゲイト絶縁膜は、酸化珪素膜と窒化珪素膜との積層膜であることを特徴とするコンタクトホールの作製方法である。
また、上記構成において、酢酸入り緩衝フッ酸溶液(ABHF)は、酢酸(98%)と40%フッ化アンモニウム(NH4 F)と50%フッ化水素酸(HF)を 0:1:1〜100:100:1好ましくは0:10:1〜60:60:1(体積比)で混合したものである事を特徴とするものである。
また、他の発明は、断面がテーパー形状であるアルミニウムゲイト電極と、前記ゲイト電極上のゲイト絶縁膜と、前記ゲイト絶縁膜上のチャネル形成領域を構成するI型のアモルファスシリコン膜と、前記I型のアモルファスシリコン膜上の保護膜と、前記I型のアモルファスシリコン膜及び保護膜上のn型のアモルファスシリコン膜からなるソース領域及びドレイン領域と、前記ソース領域に電気的に接続されたアルミニウムソース電極と、前記ドレイン領域に電気的に接続されたアルミニウムドレイン電極と、前記ゲイト絶縁膜上の画素電極と、前記ゲイト電極に電気的に接続されたアルミニウムゲイト配線と、を有し、前記ドレイン領域と前記画素電極とはアルミニウムを介して電気的に接続されている半導体装置である。
また、上記構成において、前記ゲイト絶縁膜は前記ゲイト電極の陽極酸化膜と窒化珪素膜の積層膜である。
また、他の発明は、アルミニウム膜を形成し、前記アルミニウム膜をエッチングして断面がテーパー形状であるアルミニウムゲイト電極を形成し、前記ゲイト電極上にゲイト絶縁膜を形成し、前記ゲイト絶縁膜上にI型のアモルファスシリコン膜を形成し、前記I型のアモルファスシリコン膜上に保護膜を形成し、前記I型のアモルファスシリコン膜及び保護膜上にn型のアモルファスシリコン膜を形成し、前記I型のアモルファスシリコン膜をエッチングするとともに前記n型のアモルファスシリコン膜をエッチングしてソース領域及びドレイン領域を形成し、前記ゲイト絶縁膜上に画素電極を形成し、前記ゲイト絶縁膜に対してエッチングをして前記ゲイト電極へのコンタクトホールを形成し、アルミニウム膜を形成し、前記アルミニウム膜をエッチングして、前記ソース領域と電気的に接続するソース電極、前記ドレイン領域及び前記画素電極と電気的に接続するドレイン電極、前記ゲイト電極と電気的に接続するゲイト配線電極を形成することを特徴とする。
また、上記構成において、前記ゲイト絶縁膜は、前記アルミニウムを陽極酸化した陽極酸化膜及び前記陽極酸化膜上に形成した窒化珪素膜の積層膜からなり、前記ゲイト絶縁膜に対してエッチングをして前記ゲイト電極へのコンタクトホールを形成するに際し、前記窒化珪素膜を酢酸、フッ化アンモニウム及びフッ化水素酸を含んだ溶液によってエッチングする、又は前記窒化珪素膜をCHF3を用いてドライエッチングし、前記陽極酸化膜をリン酸及び無水クロム酸を含んだ溶液でエッチングして前記ゲイト電極へのコンタクトホールを形成することを特徴とする。
本発明により、酸化珪素膜または窒化珪素膜下の、陽極酸化アルミニウム膜を表面に有するアルミニウムに対する、酸化珪素膜、窒化珪素膜および陽極酸化アルミニウム膜をエッチング除去して形成されるコンタクトホールを、極めて容易に制御性良く形成することが可能となった。
また、本発明により、薄膜トランジスタにおいては、ソース部とドレイン部では層間絶縁膜とゲイト絶縁膜のエッチングを、ゲイト部では層間絶縁膜と陽極酸化アルミニウムのエッチングを、1回のレジスト形成工程で行なってコンタクトホールを形成することができた。また、オーバーエッチ等の心配も極めて少なくなり、容易にコンタクトホールを形成することができるようになった。
本発明方法は、液晶電気光学装置や、イメージセンサ、集積回路等、微細な配線を有する回路に対して幅広く応用できる。
(作用)
本出願人は、フッ化アンモニウム(NH4 F)とフッ化水素酸(HF)とを含んだ酢酸入り緩衝フッ酸溶液(以下ABHFと略す)が、酸化珪素膜や窒化珪素膜をエッチングし、かつ陽極酸化アルミニウムに対しては、ある程度エッチングが進行した段階で、エッチングが停止する性質を有していることを見出した。
すなわち、ABHFによってソース部、ドレイン部、ゲイト部上の酸化珪素膜または窒化珪素膜よりなる層間絶縁膜は、それぞれ同じようにエッチングされる。次にソース部及びドレイン部にゲイト絶縁膜(酸化珪素膜または窒化珪素膜)があれば、ゲイト絶縁膜がABHFでエッチング除去され、シリコン活性層が露出した段階でABHFのエッチングを終了し、水洗してエッチャントによる反応を停止する。一方ゲイト部では、このエッチング工程の間に酸化珪素膜または窒化珪素膜下の陽極酸化アルミニウムが露出しており、この陽極酸化アルミニウムはABHFの作用によりエッチングされる。ただしこのとき、陽極酸化アルミニウムは当初300〜600Å程度まではエッチングが進行するがそれ以上の進行は停止する。
図2に、ABHFによる陽極酸化アルミニウム膜のエッチング特性の一例を示す。図2においては、ABHFでは350Å程度エッチングした後は、それ以上エッチングが進まないことが分かる。
その時の陽極酸化アルミニウムのエッチングされた表面には四角形の結晶が密集した状態が観察できる。このような四角形が観察される時には、必ずといってよいほどエッチングは陽極酸化アルミニウムの途中で停止している。この現象は、陽極酸化アルミニウムがエッチャントと反応し不溶性の新たな化合物が形成されるのか、電解質のカチオンがアルミナ膜に進入する表層の部分が同エッチャントで除去され易く、その奥のカチオンの到達しない純アルミナの部分が同エッチャントに対して安定であるのか、その当たりの原因については余り明らかになっていない。
何れにしろ、ABHFによっては陽極酸化アルミニウムは途中までしかエッチングされず、したがって陽極酸化アルミニウムより内部にあるアルミニウムまでエッチングが行なわれることはない。
なお、ABHFでエッチング後に水洗浄し、乾燥させ、再度ABHFエッチャントに浸漬させるとエッチングは再度進行し、新たに数100Åのエッチング深さが進行する。これを数回繰り返すとエッチングは徐々に進行してアルミニウムまで達しさらに進行していく。このようなエッチング/水洗を繰り返しの作業を行なわない限り、エッチングがアルミニウムまで達することはない。
このように、ABHFを用いて酸化珪素膜または窒化珪素膜をエッチングすることによって、陽極酸化アルミニウムに対するエッチングを自己制御的に停止させることができるため、ゲイト部のオーバエッチングやエッチング不足など問題が無くなり、エッチングを実施する者は、ソース部、ドレイン部のゲイト絶縁膜が除去出来たかどうかに対して注意を払うだけで済み、極めて容易に実施できる。
また、陽極酸化アルミニウムのエッチングに関しては、日本工業規格JIS
H 8680「アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化被膜厚さ試験方法」の被膜質量法の中で、またはJIS H 9500「アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化処理作業標準」の酸化膜除去方法の中で詳細が述べられている。1リットル溶液中に燐酸(850g/l)35mlと無水クロム酸20gを添加した溶液の中で60〜95℃に加熱した状態でエッチングを行なうと記されている。この溶液を、表面が陽極酸化されたアルミニウムに用いると、表面の陽極酸化アルミニウムの皮膜のみがエッチングされ、素地のアルミニウムの部分はエッチングされない。すなわち、陽極酸化アルミニウム/アルミニウム界面でのエッチング選択比を高くとれる。
例えば、ABHFのエッチングで四角形の結晶が見えたままエッチング停止していた陽極酸化アルミニウム表面は、クロム燐酸溶液で完全に除去され、アルミニウム界面(陽極酸化アルミニウムとアルミニウムとの界面)に達した時点でエッチングは止まる。
また、クロム燐酸をエッチャントとして陽極酸化アルミニウムをエッチングしている最中には、同エッチャントに酸化珪素または窒化珪素のゲイト絶縁膜及びシリコン活性層も接しているが、これらは同エッチャントに対してエッチング速度は小さく、材料的にはほとんど変化はない。
したがって、酸化珪素膜または窒化珪素膜下の、陽極酸化アルミニウム膜を表面に有するアルミニウムに接触するコンタクトホールは、ABHFで酸化珪素をエッチングし、次にクロム燐酸溶液で陽極酸化アルミニウムのエッチングを行なうという本発明方法により、極めて容易に制御性良く形成することが可能となる。
図3に、クロム燐酸溶液による陽極酸化アルミニウム膜のエッチング特性の一例を示す。所定の時間エッチングしその時に進行する深さを段差計で測定している。アルミニウムを被覆しているの膜厚1500Åの陽極酸化アルミニウムは時間経過に対して直線的に除去され、アルミニウム界面でエッチング深さの進行は良好に停止している。確認の為にクロムリン酸溶液エッチング後にオージェ分光分析法で深さ分析を行なった。表層約50Åの範囲には酸素が検出されていて、それより深層には酸化されていない金属アルミニウムのみしか認められない。陽極酸化をしていないアルミニウム表面の自然酸化物の厚さは約50Åであり、前記エッチング表面の厚さとほぼ一致する。従ってクロム燐酸で陽極酸化アルミニウムのみがエッチングされ、アルミニウム表面が露出した後、大気雰囲気のなかでさらに表面酸化した物と考えられる。
また、エッチング中のレジストの密着性を確保する意味では、JIS規格の濃度より2倍程度希釈した方が安定した工程とすることができる。この場合において、膜厚2000Å程度までの陽極酸化アルミニウムにおけるエッチング時間内でのレジスト剥離は無かった。また、陽極酸化アルミニウムのエッチングも、アルミニウム界面にて問題なく停止する。
このようにして、本発明により、薄膜トランジスタにおいては、ソース部とドレイン部では層間絶縁膜とゲイト絶縁膜のエッチングを、ゲイト部では層間絶縁膜と陽極酸化アルミニウムのエッチングを、1回のレジスト形成工程で行なってコンタクトホールを形成することができる。また、オーバーエッチ等の心配も極めて少なくなり、容易にコンタクトホールを形成することができる。そして上部に接続する電極を成膜することにより、コンタクトホールを介して上部電極とアルミニウムのゲイト電極やソース部、ドレイン部との接続ができる。
本実施例は、表面に陽極酸化膜を有する第1の配線上に、層間絶縁膜を介して第2の配線を設け、陽極酸化膜と層間絶縁膜に対してコンタクトホールを設けて第1および第2の配線を接続した例を示す。本実施例の構成は、液晶ディスプレイやイメージセンサ等の半導体回路における微細配線に用いることができる。
本実施例では配線材料として、アルミニウムを主成分とした例を示す。アルミニウム以外の材料としては、タンタル、チタン、さらにはこれらの混合材料やこれらの材料を主成分とする材料を利用することができる。
図4に本実施例によって作製した微細配線の接続状態を示す。図4は基板101上に、図においては紙面に対し垂直な方向に延びているアルミニウムの第1の電極102、陽極酸化アルミニウム膜103、酸化珪素よりなる層間絶縁膜104、図においては第1の電極と直交方向に設けられている第2の電極105を有する。第1の電極102と第2の電極105は、層間絶縁膜105と陽極酸化膜103がエッチングされて露呈した第1の電極の上面106にて電気的に接続されている。以下にその作製工程を示す。
まず、適当な基板101(一般には絶縁膜や絶縁材料である)上に配線を形成する材料となるアルミニウムの膜をここでは6000Åの厚さにスパッタ法で形成した。このアルミニウムの厚さは、必要とする厚さに形成すればよく、特に限定されるものではない。また、アルミニウム中にはSc(スカンジウム)を0.2wt%添加したものを用いる。これは、後の陽極酸化工程において、アルミニウムのヒロックが起こらないようにするためである。また、高温でのアルミの異常成長防止用にはSc以外の添加物(例えばY)を用いてもよい。
アルミニウムは通常のフォトリソ工程でパターニングした。エッチングにはドライエッチングやウエットエッチングが行なわれる。ドライエッチングではエッチング断面が直角に近くなる。またウエットエッチングでは断面の基板との成す角度が90°より小さくほぼ40〜60°となる。配線電極の場合に、エッチング断面が90°に近いとその上に形成する層間絶縁膜や2層目配線のステップカバレッジが悪くなり、断線や上下配線間でショートを起こす確率が高くなるといった問題が発生する。従って本実施例ではウエットエッチングを採用した。燐酸と酢酸と硝酸を混合した溶液を35〜45℃に加熱したものを用いた。これによりアルミニウム膜を60μm幅のストライプ状の配線に加工し、第1の配線を形成した。
次に陽極酸化に関する説明を行なう。3%の酒石酸をエチレングルコールに溶解し、そこに1/10アンモニア水を添加し、溶液のphを6.8〜7.0に調整した。溶液を、恒温槽に入れ、液温を0〜20℃、望ましくは10±1℃にする。その溶液のなかに加工する基板と陰極となる金属電極材料を30〜50mm隔てて、アルミニウムを内側対向させた。陰極材料としては溶液に対して安定な材料ならば良い。本実施例では、白金板を用いた。電源より陽極側に加工基板を、陰極側に白金板を接続した。
陽極側に接続されたアルミニウムはプラスの電荷の供給を受けて酸化し、絶縁膜が形成される電源を定電流モードにしておくと陽極と陰極間の電位差は暫時増加する。到達電圧が120Vになった時点で電源モードを定電圧に切替え更に30分の化成を行なった。このモードの場合には電流は急激に低下し膜抵抗が引き続き上昇していくことがわかる。この工程により形成した陽極酸化アルミニウム103の厚さは1500Åであった。ここで形成される陽極酸化アルミニウム膜は緻密な組成を有し、素地のアルミニウムの外側に、素地のアルミニウムとほぼ同じ膜厚の陽極酸化アルミニウム膜が等方的に形成された。当然、アルミニウム配線の断面パターンがテーパー(台形)形状をしている為、アルミナ形成後においても同様にテーパー(台形)形状になっている。150〜350℃で焼成した後の膜に電圧を印加し永久破壊が生じる時の耐電圧は100〜110Vであり極めて良好な絶縁膜でアルミニウムが被覆されているのがわかる。このようにして陽極酸化アルミニウムを表面に有するアルミニウム配線として第1の配線を形成した。
次の層間絶縁膜の形成について説明する。層間絶縁膜には酸化珪素や窒化珪素を用いるのが通常である。本実施例では化学的気相反応法(CVD法)による酸化珪素を用いた。対向するプラズマ電極間に加工基板を平行に配置し、高真空下に排気し、テトラエトキシシラン(TEOS)及び酸素ガスを供給し、プラズマ電極間に13.56MHz、50Vの高周波を印加し電極間にプラズマ放電した。加工基板上全面に良好な絶縁性を有する酸化珪素膜が形成された。
層間絶縁膜としては、酸化珪素膜より緻密な膜質を有し、絶縁の確実性が得られる窒化珪素膜を用いてもよいが、窒化珪素膜のみを層間絶縁膜として用いると、窒化珪素膜が有する強い応力により、特にガラス基板を用いた場合など、層間絶縁膜下の配線や素子に歪みが生じ、不良発生を招きやすい。
そこで、層間絶縁膜として、窒化珪素膜を500〜1500Å程度と、5000〜6000Åの酸化珪素膜とを積層した2層構造とし、絶縁性が高くかつ応力の影響を抑えたものとしてもよい。
次にコンタクトホールを形成するために、酸化珪素膜とその下の陽極酸化アルミニウム膜に対しエッチングを施した。
エッチングは、酸化珪素膜上にコンタクトホールのパターンにレジストを形成し、まず酸化珪素のエッチングをABHFで行い、次に陽極酸化アルミニウムに対しクロム燐酸溶液でエッチングを行なった。ABHFは、酢酸と40%フッ化アンモニウム(NH4 F)と50%フッ化水素酸(HF)を50:50:1(体積比)で混合したものを用いた。
ABHFによって層間絶縁膜である酸化珪素膜または窒化珪素膜がエッチングされ、その下の陽極酸化アルミニウムが露出する。この陽極酸化アルミニウム膜はABHFによりエッチングされるが、初めの300〜600Åはエッチング進行するがそれ以上は進行せずエッチングは停止する。
その時に陽極酸化アルミニウム膜のエッチング表面には四角形の結晶が密集した状態が観察できる。このような四角形が観察される時には必ずといってよいほどエッチングは陽極酸化アルミニウムの途中で停止している。この現象は、陽極酸化アルミニウムがエッチャントと反応し不溶性の新たな化合物が形成されるのか、電解質のカチオンがアルミナ膜に進入する表層の部分が同エッチャントで除去され易く、その奥のカチオンの到達しない純アルミナの部分が同エッチャントに対して安定であるのか、その当たりの原因については余り明らかになっていない。何れにしろABHFで陽極酸化アルミニウムは途中までしかエッチングされずその下の素地であるアルミニウムまでエッチングが達する事はない。
次にクロム燐酸溶液でエッチングを行なった。クロム燐酸溶液は、2リットル溶液中に燐酸(850g/l)35mlと無水クロム酸20gを添加した溶液の中で65℃に加熱したものである。ABHFのエッチングで、四方形の結晶が表面に見えたままエッチング停止していた陽極酸化アルミニウムは、クロム燐酸溶液で完全に除去され、アルミニウム界面に達した時点でエッチングは止まった。時間を長く溶液に浸漬してもエッチング深さが進行してオーバーエッチになることはなかった。このようにしてコンタクトホールが形成された。
次に、第2の配線として金属電極を形成した。第1の配線と同様にスカンジウム入りのアルミニウム膜をスパッタ法で形成した。厚さは8000Åであった。これを通常のフォトリソ工程で60μm幅に加工し、図4の接続状態を得た。
第1の配線と第2の配線とのあいだで抵抗測定をした。ヒューレットパカード製4140bを用いて0.1〜2Vの間を0.1V間隔で電圧を印加し、その時の電流を測定した。電圧に対して電流は直線的に変化し、両電極間は形成されたコンタクトホールにてオーム接触していた。したがって電極間に電気的弊害となる絶縁物等と存在しなかったことがわかる。ABHF及びクロム燐酸溶液を用いて、陽極酸化アルミニウムと層間絶縁膜のエッチング除去が良好に行なわれたことを示す。また第1の配線の断面パターンがテーパー形状になっているため第2の配線の断線等もなかった。
本実施例は、陽極酸化を施したアルミニウムゲイト電極及びその上に層間絶縁膜を形成した薄膜トランジスタにおいて、層間絶縁膜を介したコンタクトホールの形成方法に関する実施例である。図5に本実施例で作製する薄膜トランジスタの作製工程を示す。
本実施例で示す薄膜トランジスタは、図5(E)に示すように、低濃度の不純物領域511と512、さらには高濃度の不純物領域510と513とを有した構造を有し、さらにゲイト電極周囲の陽極酸化物層508の厚さで決定されるオフセットゲイト領域を有している。また画素電極が接続された、液晶電気光学装置の画素用スイッチング素子としての構成を有している。
まず、基板(コーニング7059、300mm×400mmもしくは100mm×100mm)501上に下地酸化膜502として厚さ1000〜3000Åの酸化珪素膜を形成した。この酸化膜の形成方法としては、酸素雰囲気中でのスパッタ法を使用した。しかし、より量産性を高めるには、TEOSをプラズマCVD法で分解・堆積した膜を用いてもよい。
その後、プラズマCVD法やLPCVD法によって非晶質珪素膜を300〜5000Å、好ましくは500〜1000Å堆積し、これを、550〜600℃の還元雰囲気に24時間放置して、結晶化せしめた。この工程は、レーザー照射によっておこなってもよい。そして、このようにして結晶化させた珪素膜をパターニングして島状領域503を形成した。さらに、この上にスパッタ法によって厚さ700〜1500Åの酸化珪素膜504を形成した。
その後、厚さ1000Å〜3μm(ここでは6000Å)のアルミニウム(1wt%のSi、もしくは0.1〜0.3wt%のSc(スカンジウム)を含む)膜を電子ビーム蒸着法もしくはスパッタ法によって形成した。
そして、フォトレジスト506の形成前に、陽極酸化法によって厚さ100〜1000Å(ここでは200Å)の酸化アルミニウム膜(陽極酸化物層)500を形成する。この工程は、3%の酒石酸を含むエチレングルコール溶液中において10〜30Vの電圧を印加することによって行われる。この酸化アルミニウム膜は、緻密でこの上に形成されるフォトレジスト506との密着性が良く、また、フォトレジストからの電流のリークを抑制することになるので、後の陽極酸化工程において、多孔質陽極酸化物を側面のみに形成するうえで極めて有効である。
そして、フォトレジスト506(例えば、東京応化製、OFPR800/30cp)をスピンコート法によって形成した。その後、フォトレジストとアルミニウム膜をパターニングして、ゲイト電極505、マスク膜506とした。(図5(A))
さらにこれに電解液中で電流を通じて陽極酸化し、厚さ1000〜5000Å、例えば、厚さ5000Åの多孔質型(ポーラス型)陽極酸化アルミニウム507を形成した。陽極酸化は、3〜20%のクエン酸もしくはショウ酸、燐酸、クロム酸、硫酸等の酸性水溶液を用いておこない、10〜30Vの一定電流をゲイト電極に印加すればよい。本実施例ではシュウ酸溶液(30℃)中で電圧を10Vとし、20〜40分、陽極酸化した。陽極酸化物の厚さは陽極酸化時間によって制御した。(図5(B))
上記の工程は、緻密な陽極酸化アルミニウム膜500が形成されているために、図5に示すように横方向のみに進行し、またその厚さも必要とするだけ得ることができる。
次に、マスクを除去し、再び電解溶液中において、ゲイト電極に電流を印加した。今回は、3〜10%の酒石液、硼酸、硝酸が含まれたエチレングルコール溶液を用いた。溶液の温度は10℃前後の室温より低い方が良好な酸化膜が得られた。このため、ゲイト電極の上面および側面にバリヤ型の陽極酸化アルミニウム膜508が形成された。陽極酸化アルミニウム膜508の厚さは印加電圧に比例し、印加電圧が200Vで2500Åの陽極酸化物が形成された。陽極酸化アルミニウム膜508の厚さは必要とされるオフセット、オーバーラップの大きさによって決定したが、3000Å以上の厚さの陽極酸化アルミニウムを得るには250V以上の高電圧が必要であり、薄膜トランジスタの特性に悪影響を及ぼすので3000Å以下の厚さとすることが好ましい。本実施例では80〜150Vまで上昇させ、必要とする陽極酸化アルミニウム膜508の厚さによって電圧を選択した。(図5(C))
その後、ドライエッチング法によって酸化珪素膜504をエッチングした。このエッチングにおいては、等方性エッチングのプラズマモードでも、あるいは異方性エッチングの反応性イオンエッチングモードでもよい。ただし、珪素と酸化珪素の選択比を十分に大きくすることによって、活性層を深くエッチングしないようにすることが重要である。例えば、エッチングガスとしてCF4 を使用すれば多孔質陽極酸化アルミニウムはエッチングされず、酸化珪素膜504のみがエッチングされる。また、多孔質陽極酸化アルミニウム507の下の酸化珪素膜504’はエッチングされずに残した。(図5(D))
その後、燐酸、酢酸、硝酸の混酸を用いて多孔質陽極酸化アルミニウム507をエッチングした。このエッチングでは多孔質陽極酸化アルミニウム507のみがエッチングされ、エッチングレートは約600Å/分であった。その下のゲイト絶縁膜504’はそのまま残存した。そして、イオンドーピング法によって、薄膜トランジスタの活性層503に、ゲイト電極部(すなわちゲイト電極とその周囲の陽極酸化膜)およびゲイト絶縁膜をマスクとして自己整合的に不純物を注入し、低抵抗不純物領域(ソース/ドレイン領域)510、513、高抵抗不純物領域511、512を形成した。
ドーピングガスとしてはここではフォスフィン(PH3 )を用いたためN型の不純物領域となった。ドーピングガスとしてジボラン(B2 H6 )を用いてP型の不純物領域を形成してもよい。
ドーズ量は5×1014〜5×1015cm-2、加速エネルギーは10〜30keVとした。その後、KrFエキシマーレーザー(波長248nm、パルス幅20nsec)を照射して、活性層中に導入された不純物イオンの活性化を行なった。
SIMS(二次イオン質量分析法)の結果によると、領域510、513の不純物濃度は1×1020〜2×1021cm-3、領域511、512では1×1017〜2×1018cm-3であった。ドーズ量換算では、前者は5×1014〜5×1015cm-2、後者は2×1013〜5×1014cm-2であった。この違いはゲイト絶縁膜504’の有無によってもたらされたのであって、一般的には、低抵抗不純物領域の不純物濃度は、高抵抗不純物領域のものより0.5〜3桁大きくなる。(図5(E))
次に、全面に層間絶縁物514として、CVD法によって酸化珪素膜を厚さ8000Å形成した。そして、薄膜トランジスタのソース部、ドレイン部、ゲイト部のコンタクトホールを形成する。マスクパターンはそれぞれの部分が同時に開孔しているパターンを用いてレジストを形成した。
層間絶縁膜としては、酸化珪素膜より緻密な膜質を有し、絶縁の確実性が得られる窒化珪素膜を用いてもよいが、窒化珪素膜のみを層間絶縁膜として用いると、窒化珪素膜が有する強い応力により、特にガラス基板を用いた場合など、層間絶縁膜下の配線や素子に歪みが生じ、不良発生を招きやすい。
そこで、層間絶縁膜として、窒化珪素膜を500〜1500Å程度と、該膜上に5000〜6000Åの酸化珪素膜を設ける2層構造のものを設けて、絶縁性が高くかつ応力の影響を抑えたものとしてもよい。
エッチングはまず酸化珪素膜である層間絶縁膜514に対し、ABHFをエッチャントとして行い、次に陽極酸化アルミニウム膜508に対し、クロム燐酸溶液でエッチングを行なった。ABHFは、酢酸と40%フッ化アンモニウム(NH4 F)と50%フッ化水素酸(HF)を50:50:1(体積比)で混合したものを用いた。
ABHFによって層間絶縁膜514をエッチングした時のエッチング速度は3400Å/分であった。こうして層間絶縁膜を介してソース領域515、ドレイン領域516に至るコンタクトホールが形成された。
本実施例の薄膜トランジスタにおいては、ゲイト絶縁膜504’がソース領域510、ドレイン領域513上に延在していないが、該領域上にゲイト絶縁膜が延在している場合、層間絶縁膜514のエッチング終了と同時にソース領域510とドレイン領域513上では(延在した)ゲイト絶縁膜のエッチングが始まる。本実施例のゲイト絶縁膜に対し、前述のABHFによってエッチングした場合そのエッチング速度は、1700Å/分であった。一方、ゲイト部では層間絶縁膜エッチング終了の時点で陽極酸化アルミニウム膜508の上部が露出しておりABHFにより300〜600Å程度エッチング進行したが、それ以上進行しなかった。
次にクロム燐酸溶液でエッチングを行なった。クロム燐酸溶液は、2リットル溶液中に燐酸(850g/l)35mlと無水クロム酸20gを添加した溶液の中で65℃に加熱したものである。ABHFのエッチングで四角形の結晶が見えたままエッチング停止していた陽極酸化アルミニウム膜508表面は、クロム燐酸溶液で完全に除去され、アルミニウム界面に達した時点でエッチングは止まる。このようにして陽極酸化アルミニウム膜508にコンタクトホールが形成された。陽極酸化アルミニウム膜に対するエッチング速度は約100Å/分であった。エッチング深さは、長時間溶液に浸漬しても進行せず、オーバーエッチになることはなかった。
次に、画素電極518をITO(酸化インジューム・スズ)で形成した。
さらに、アルミニウム配線として電極515、516、517を、層間絶縁膜および陽極酸化アルミニウム膜に形成されたコンタクトホールを介してゲイト電極、ソース領域、ドレイン領域にそれぞれ接続するように形成した。さらに200〜400℃で水素アニールをおこなった。
以上によって、薄膜トランジスタが完成した。(図5(F))
本実施例では、層間絶縁膜に設けたコンタクトホールと、陽極酸化アルミニウム膜に設けたコンタクトホールを、同一のマスク工程により、同一の大きさに設けたが、図7(A)に示すように、異なるマスクを用いて、陽極酸化アルミニウム膜に設けるコンタクトホールの口径を、層間絶縁膜に設けるものより小さくなるようにし、層間絶縁膜のコンタクトホール開孔内に陽極酸化アルミニウム膜の小さいコンタクトホールを設ける構成としてもよい。
このようにすることで、コンタクトホールが擬似的なテーパー形状を有し、その結果コンタクトホール内に設けられるアルミニウム配線電極517の断線等を防ぐことができ、ゲート電極との良好なコンタクトが得られる。
本実施例は、逆スタガ型の薄膜トランジスタにおいて、ゲイト絶縁膜を介したコンタクトホールの形成方法に関する実施例である。
図6に本実施例で作製する薄膜トランジスタの作製工程を示す。本実施例の薄膜トランジスタは、画素電極が接続された、液晶電気光学装置の画素用スイッチング素子としての構成を有している。該素子をマトリクス構成をして各画素に絶縁ゲイト型薄膜トランジスタを設けたアクティブマトリス回路を形成できる。
本実施例では配線材料として、アルミニウムを主成分とした例を示す。アルミニウム以外の材料としては、タンタル、チタン、さらにはこれらの混合材料やこれらの材料を主成分とする材料を利用することができる。
図6に、本実施例で作製したガラス基板上の絶縁ゲイト型薄膜トランジスタの作製工程を示す。図においては1つの薄膜トランジスタのみが示されているが、基板上には接続される画素電極と対になりマトリクス状に形成されている。
まず、基板(コーニング7059、200mm×200mm)701上に下地膜702として厚さ1000〜3000Å、例えば2000Åの窒化珪素膜をスパッタ法により形成した。窒化珪素膜の代わりに酸化珪素膜を同程度の厚さに設けてもよい。この場合、酸化珪素膜の形成方法としては、酸素雰囲気中でのスパッタ法を使用する。しかしより量産性を高めるためには、TEOSをプラズマCVD法で分解・堆積した膜を用いてもよい。
次に、厚さ1000Å〜2μm、例えば、6000Åのアルミニウム膜(1wt%のSi、もしくは0.1〜0.3%wtのScを含む)を電子ビーム蒸着法もしくはスパッタ法で形成した。
形成したアルミニウム膜に対し、リン酸、硝酸、酢酸の混合溶液を用いたウェットプロセスによるフォトエッチングにより、断面をテーパー状にしてパターニングし、ゲイト電極部703を形成した。(図6(A))
次に、このゲイト電極部703に対し陽極酸化を施した。
3%の酒石酸をエチレングルコールに溶解し、そこに1/10アンモニア水を添加し、溶液のphを6.8〜7.0に調整した。溶液を、恒温槽に入れ、液温を0〜20℃、望ましくは10±1℃にする。その溶液のなかに加工する基板と陰極となる金属電極材料を30〜50mm隔てて、アルミニウムを内側対向させた。陰極材料としては溶液に対して安定な材料ならば良い。本実施例では、白金板を用いた。電源より陽極側に加工基板を、陰極側に白金板を接続した。
陽極側に接続されたアルミニウムはプラスの電荷の供給を受けて酸化し、絶縁膜が形成される電源を定電流モードにしておくと陽極と陰極間の電位差は暫時増加する。到達電圧が120Vになった時点で電源モードを定電圧に切替え更に30分の化成を行なった。このモードの場合には電流は急激に低下し膜抵抗が引き続き上昇していくことがわかる。この工程により形成した陽極酸化アルミニウム103の厚さは1500Åであった。ここで形成される陽極酸化アルミニウム膜は緻密な組成を有し、素地のアルミニウムの外側に、陽極酸化アルミニウム膜705が等方的に形成された。
アルミニウム配線の断面パターンがテーパー(台形)形状をしている為、陽極酸化アルミニウム膜705形成後においても同様にテーパー(台形)形状になっている。150〜350℃で焼成した後の膜に電圧を印加し永久破壊が生じる時の耐電圧は100〜110Vであり極めて良好な絶縁膜でアルミニウムが被覆されているのがわかる。
この後、大気中200〜300℃例えば200℃で数〜数十分加熱すると、陽極酸化アルミニウムのリーク電流が一桁以上減少し、好ましかった。
このようにして、ゲイト電極部703は、ゲイト電極704の上面および側面にバリヤ型の陽極酸化アルミニウムよりなるゲイト絶縁膜705が形成された。(図6(B))
次にシランとアンモニアを1:3〜1:8ここでは1:5の割合で用いてプラズマCVD法により、2層目のゲイト絶縁膜706として窒化珪素膜を1000〜3000Å、例えば2000Å形成した。
窒化珪素膜の代わりに酸化珪素膜を同程度の厚さに設けてもよい。
酸化珪素膜の場合、その形成方法としては、酸素雰囲気中でのスパッタ法またプラズマCVD法を使用する。プラズマCVD法を用いる場合には、TEOSを原料とし、酸素とともに基板温度150〜400℃、好ましくは200〜250℃で、RF放電させて、原料ガスを分解・堆積した。TEOSと酸素の圧力比は、1:1〜1:10また、また、圧力は0.05〜0.5torr、RFパワーは100〜250Wとした。あるいはTEOSを原料としてオゾンガスとともに、減圧CVD法もしくは常圧CVD法によって、基板温度を150〜400℃、好ましくは200〜250℃として形成してもよい。
このゲイト絶縁膜706は設けなくてもよいが、設けることにより、電極間短絡の減少、および薄膜トランジスタの相互コンダクタンスの改善等を図ることができる。
また、ゲイト絶縁膜706として、酸化珪素膜を400〜3000Åと、該膜上に窒化珪素膜を300〜2000Å積層した2層構造とし、絶縁性が高くかつ応力の影響を抑えたものとしてもよい。
ゲイト絶縁膜706上に、チャネル形成領域を構成するI型のアモルファスシリコン膜707を200〜2000Å、例えば1000Å形成した。
さらにその上に、500〜3000Å、ここでは1000Åの窒化珪素膜を形成した。形成した窒化珪素膜に対して純水にて1/10〜1/50に希釈したフッ酸にてエッチングを行ない、保護膜708を形成した。
さらにその上に、リンを含んだn+ アモルファスシリコン膜709をプラズマCVD法により200〜1000Å、ここでは300Å厚に形成した。このアモルファスシリコン膜709は、ホウ素を含んだp+ アモルファスシリコン膜にしてもよい。(図6(C))
次に、I型のアモルファスシリコン膜707とn+ アモルファスシリコン膜709に対しドライエッチングを行ない、パターニングした。
一方、画素電極710となるITO(酸化インジウム・スズ)薄膜も形成し、パターニングした。
次にコンタクトホールを形成するために、窒化珪素膜よりなるゲイト絶縁膜706とその下の陽極酸化アルミニウム膜よりなるゲイト絶縁膜705に対しエッチングを施した。
エッチングは、まずゲイト絶縁706に対し、コンタクトホールのパターンにレジストを形成し、ABHFによるウェットエッチングにより行った。
ABHFは、酢酸と40%フッ化アンモニウム(NH4 F)と50%フッ化水素酸(HF)を50:50:1(体積比)で混合したものを用いた。
エッチング終了の時点で陽極酸化アルミニウム膜705の上部が露出しておりABHFにより300〜600Å程度エッチング進行したが、それ以上進行しなかった。
次に陽極酸化アルミニウム膜よりなるゲイト絶縁膜705に対しクロム燐酸溶液でエッチングを行なった。クロム燐酸溶液は、2リットル溶液中に燐酸(850g/l)35mlと無水クロム酸20gを添加した溶液の中で65℃に加熱したものである。陽極酸化アルミニウムは、クロム燐酸溶液で完全に除去され、アルミニウム界面に達した時点でエッチングは止まった。時間を長く溶液に浸漬してもエッチング深さが進行してオーバーエッチになることはなかった。このようにしてコンタクトホールが形成された。
次に、アルミニウム膜を電子ビーム蒸着法またはスパッタ法にて1000〜2μmここでは3000Å厚に形成した。そして、このアルミニウム膜をドライエッチングによりパターニングし、ソース電極711、ドレイン電極712、ゲイト配線電極713を形成した。ゲイト配線電極713はゲイト電極704と良好なコンタクトを形成できた。
またn+ アモルファスシリコン膜をドライエッチングによりエッチング、パターニングし、ソース領域とドレイン領域に分割した。
このようにして薄膜トランジスタが完成した。(図6(D)、図6(D’)(図6(D)の点線における断面図))
本実施例では、ゲイト絶縁膜に設けたコンタクトホールと、陽極酸化アルミニウム膜に設けたコンタクトホールを、同一のマスク工程により、同一の大きさに設けたが、図7(B)に示すように、異なるマスクを用いて、陽極酸化アルミニウム膜に設けるコンタクトホールの口径を、ゲイト絶縁膜に設けるものより小さくなるようにし、ゲイト絶縁膜のコンタクトホール開孔内に陽極酸化アルミニウム膜の小さいコンタクトホールを設ける構成としてもよい。
このようにすることで、コンタクトホールが擬似的にテーパー形状となり、その結果コンタクトホール内に設けられるアルミニウム配線電極713の断線等を防ぐことができ、ゲート電極との良好なコンタクトが得られる。
本実施例は、実施例2と同じく、陽極酸化を施したアルミニウムゲイト電極及びその上に層間絶縁膜を形成した薄膜トランジスタにおいて、層間絶縁膜を介したコンタクトホールの形成方法に関する実施例である。
本実施例においては、層間絶縁膜をドライエッチングした例を示す。
図5に本実施例で作製する薄膜トランジスタの作製工程を示す。本実施例で示す薄膜トランジスタは、図5(E)に示すように、低濃度の不純物領域511と512、さらには高濃度の不純物領域510と513とを有した構造を有し、さらにゲイト電極周囲の陽極酸化物層508の厚さで決定されるオフセットゲイト領域を有している。また画素電極が接続された、液晶電気光学装置の画素用スイッチング素子としての構成を有している。
まず、基板(コーニング7059、300mm×400mmもしくは100mm×100mm)501上に下地酸化膜502として厚さ1000〜3000Åの酸化珪素膜を形成した。この酸化膜の形成方法としては、酸素雰囲気中でのスパッタ法を使用した。しかし、より量産性を高めるには、TEOSをプラズマCVD法で分解・堆積した膜を用いてもよい。
その後、プラズマCVD法やLPCVD法によって非晶質珪素膜を300〜5000Å、好ましくは500〜1000Å堆積し、これを、550〜600℃の還元雰囲気に24時間放置して、結晶化せしめた。この工程は、レーザー照射によっておこなってもよい。そして、このようにして結晶化させた珪素膜をパターニングして島状領域503を形成した。さらに、この上にスパッタ法によって厚さ700〜1500Åの酸化珪素膜504を形成した。
その後、厚さ1000Å〜3μm(ここでは6000Å)のアルミニウム(1wt%のSi、もしくは0.1〜0.3wt%のSc(スカンジウム)を含む)膜を電子ビーム蒸着法もしくはスパッタ法によって形成した。
そして、フォトレジスト506の形成前に、陽極酸化法によって厚さ100〜1000Å(ここでは200Å)の酸化アルミニウム膜(陽極酸化物層)500を形成する。この工程は、3%の酒石酸を含むエチレングルコール溶液中において10〜30Vの電圧を印加することによって行われる。この酸化アルミニウム膜は、緻密でこの上に形成されるフォトレジスト506との密着性が良く、また、フォトレジストからの電流のリークを抑制することになるので、後の陽極酸化工程において、多孔質陽極酸化物を側面のみに形成するうえで極めて有効である。
そして、フォトレジスト506(例えば、東京応化製、OFPR800/30cp)をスピンコート法によって形成した。その後、フォトレジストとアルミニウム膜をパターニングして、ゲイト電極505、マスク膜506とした。(図5(A))
さらにこれに電解液中で電流を通じて陽極酸化し、厚さ1000〜5000Å、例えば、厚さ5000Åの多孔質型(ポーラス型)陽極酸化アルミニウム507を形成した。陽極酸化は、3〜20%のクエン酸もしくはショウ酸、燐酸、クロム酸、硫酸等の酸性水溶液を用いておこない、10〜30Vの一定電流をゲイト電極に印加すればよい。本実施例ではシュウ酸溶液(30℃)中で電圧を10Vとし、20〜40分、陽極酸化した。陽極酸化物の厚さは陽極酸化時間によって制御した。(図5(B))
上記の工程は、緻密な陽極酸化アルミニウム膜500が形成されているために、図5に示すように横方向のみに進行し、またその厚さも必要とするだけ得ることができる。
次に、マスクを除去し、再び電解溶液中において、ゲイト電極に電流を印加した。今回は、3〜10%の酒石液、硼酸、硝酸が含まれたエチレングルコール溶液を用いた。溶液の温度は10℃前後の室温より低い方が良好な酸化膜が得られた。このため、ゲイト電極の上面および側面にバリヤ型の陽極酸化アルミニウム膜508が形成された。陽極酸化アルミニウム膜508の厚さは印加電圧に比例し、印加電圧が200Vで2500Åの陽極酸化物が形成された。陽極酸化アルミニウム膜508の厚さは必要とされるオフセット、オーバーラップの大きさによって決定したが、3000Å以上の厚さの陽極酸化アルミニウムを得るには250V以上の高電圧が必要であり、薄膜トランジスタの特性に悪影響を及ぼすので3000Å以下の厚さとすることが好ましい。本実施例では80〜150Vまで上昇させ、必要とする陽極酸化アルミニウム膜508の厚さによって電圧を選択した。(図5(C))
その後、ドライエッチング法によって酸化珪素膜504をエッチングした。このエッチングにおいては、等方性エッチングのプラズマモードでも、あるいは異方性エッチングの反応性イオンエッチングモードでもよい。ただし、珪素と酸化珪素の選択比を十分に大きくすることによって、活性層を深くエッチングしないようにすることが重要である。例えば、エッチングガスとしてCF4 を使用すれば多孔質陽極酸化アルミニウムはエッチングされず、酸化珪素膜504のみがエッチングされる。また、多孔質陽極酸化アルミニウム507の下の酸化珪素膜504’はエッチングされずに残した。(図5(D))
その後、燐酸、酢酸、硝酸の混酸を用いて多孔質陽極酸化アルミニウム507をエッチングした。このエッチングでは多孔質陽極酸化アルミニウム507のみがエッチングされ、エッチングレートは約600Å/分であった。その下のゲイト絶縁膜504’はそのまま残存した。そして、イオンドーピング法によって、薄膜トランジスタの活性層503に、ゲイト電極部(すなわちゲイト電極とその周囲の陽極酸化膜)およびゲイト絶縁膜をマスクとして自己整合的に不純物を注入し、低抵抗不純物領域(ソース/ドレイン領域)510、513、高抵抗不純物領域511、512を形成した。
ドーピングガスとしてはここではフォスフィン(PH3 )を用いたためN型の不純物領域となった。ドーピングガスとしてジボラン(B2 H6 )を用いてP型の不純物領域を形成してもよい。
ドーズ量は5×1014〜5×1015cm-2、加速エネルギーは10〜30keVとした。その後、KrFエキシマーレーザー(波長248nm、パルス幅20nsec)を照射して、活性層中に導入された不純物イオンの活性化を行なった。
SIMS(二次イオン質量分析法)の結果によると、領域510、513の不純物濃度は1×1020〜2×1021cm-3、領域511、512では1×1017〜2×1018cm-3であった。ドーズ量換算では、前者は5×1014〜5×1015cm-2、後者は2×1013〜5×1014cm-2であった。この違いはゲイト絶縁膜504’の有無によってもたらされたのであって、一般的には、低抵抗不純物領域の不純物濃度は、高抵抗不純物領域のものより0.5〜3桁大きくなる。(図5(E))
次に、全面に層間絶縁物514として、CVD法によって酸化珪素膜を厚さ8000Å形成した。そして、薄膜トランジスタのソース部、ドレイン部、ゲイト部のコンタクトホールを形成する。レジストパターンはそれぞれの部分が同時に開孔しているパターンを用いた。
層間絶縁膜としては、酸化珪素膜より緻密な膜質を有し、絶縁の確実性が得られる窒化珪素膜を用いてもよいが、窒化珪素膜のみを層間絶縁膜として用いると、窒化珪素膜が有する強い応力により、特にガラス基板を用いた場合など、層間絶縁膜下の配線や素子に歪みが生じ、不良発生を招きやすい。
そこで、層間絶縁膜として、窒化珪素膜を500〜1500Å程度と、5000〜6000Åの酸化珪素膜を設ける2層構造、特に窒化珪素膜上に酸化珪素膜を有するものを設けて、絶縁性が高くかつ応力の影響を抑えたものとしてもよい。
エッチングはまず酸化珪素膜である層間絶縁膜514に対しドライエッチングにより行い、次に陽極酸化アルミニウム膜508に対し、クロム燐酸溶液でエッチングを行なった。
ドライエッチングは、CHF3 を用いて、出力1000Wにて行った。エッチング速度は300Å/minであった。
こうして層間絶縁膜を介してソース領域515、ドレイン領域516に至るコンタクトホールが形成された。
本実施例の薄膜トランジスタにおいては、ゲイト絶縁膜504’がソース領域510、ドレイン領域513上に延在していないが、該領域上にゲイト絶縁膜が延在している場合、層間絶縁膜514のエッチング終了と同時にソース領域510とドレイン領域513上では(延在した)ゲイト絶縁膜のエッチングが始まる。
次にクロム燐酸溶液でエッチングを行なった。クロム燐酸溶液は、2リットル溶液中に燐酸(850g/l)35mlと無水クロム酸20gを添加した溶液の中で65℃に加熱したものである。
陽極酸化アルミニウム膜508表面は、クロム燐酸溶液で完全に除去され、アルミニウム界面に達した時点でエッチングは止まる。このようにして陽極酸化アルミニウム膜508にコンタクトホールが形成された。陽極酸化アルミニウム膜に対するエッチング速度は約100Å/分であった。エッチング深さは、長時間溶液に浸漬しても進行せず、オーバーエッチになることはなかった。
次に、画素電極518をITO(酸化インジューム・スズ)で形成した。
さらに、アルミニウム配線として電極515、516、517を、層間絶縁膜および陽極酸化アルミニウム膜に形成されたコンタクトホールを介してゲイト電極、ソース領域、ドレイン領域にそれぞれ接続するように形成した。さらに200〜400℃で水素アニールをおこなった。以上によって、薄膜トランジスタが完成した。(図5(F))
本実施例では、層間絶縁膜に設けたコンタクトホールと、陽極酸化アルミニウム膜に設けたコンタクトホールを、同一のマスク工程により、同一の大きさに設けたが、図7(A)に示すように、異なるマスクを用いて、陽極酸化アルミニウム膜に設けるコンタクトホールの口径を、層間絶縁膜に設けるものより小さくなるようにし、層間絶縁膜のコンタクトホール開孔内に陽極酸化アルミニウム膜の小さいコンタクトホールを設ける構成としてもよい。
このようにすることで、コンタクトホールが擬似的にテーパー形状となり、その結果コンタクトホール内に設けられるアルミニウム配線電極517の断線等を防ぐことができ、ゲート電極との良好なコンタクトが得られる。
本実施例は、実施例3と同じく、逆スタガ型の薄膜トランジスタにおいて、ゲイト絶縁膜(層間絶縁膜)をしたコンタクトホールの形成方法に関する実施例である。
本実施例においては、ゲイト絶縁膜をドライエッチングした例を示す。
図6に本実施例で作製する薄膜トランジスタの作製工程を示す。本実施例の薄膜トランジスタは、画素電極が接続された、液晶電気光学装置の画素用スイッチング素子としての構成を有している。該素子をマトリクス構成をして各画素に絶縁ゲイト型薄膜トランジスタを設けたアクティブマトリス回路を形成できる。
本実施例では配線材料として、アルミニウムを主成分とした例を示す。アルミニウム以外の材料としては、タンタル、チタン、さらにはこれらの混合材料やこれらの材料を主成分とする材料を利用することができる。
図6に、本実施例で作製したガラス基板上の絶縁ゲイト型薄膜トランジスタの作製工程を示す。図においては1つの薄膜トランジスタのみが示されているが、基板上には接続される画素電極と対になりマトリクス状に形成されている。
まず、基板(コーニング7059、200mm×200mm)701上に下地膜702として厚さ1000〜3000Å、例えば2000Åの窒化珪素膜をスパッタ法により形成した。窒化珪素膜の代わりに酸化珪素膜を同程度の厚さに設けてもよい。この場合、酸化珪素膜の形成方法としては、酸素雰囲気中でのスパッタ法を使用する。しかしより量産性を高めるためには、TEOSをプラズマCVD法で分解・堆積した膜を用いてもよい。
次に、厚さ1000Å〜2μm、例えば、6000Åのアルミニウム膜(1wt%のSi、もしくは0.1〜0.3%wtのScを含む)を電子ビーム蒸着法もしくはスパッタ法で形成した。
形成したアルミニウム膜に対し、リン酸、硝酸、酢酸の混合溶液を用いたウェットプロセスによるフォトエッチングにより、断面をテーパー状にしてパターニングし、ゲイト電極部703を形成した。(図6(A))
次に、このゲイト電極部703に対し陽極酸化を施した。
3%の酒石酸をエチレングルコールに溶解し、そこに1/10アンモニア水を添加し、溶液のphを6.8〜7.0に調整した。溶液を、恒温槽に入れ、液温を0〜20℃、望ましくは10±1℃にする。その溶液のなかに加工する基板と陰極となる金属電極材料を30〜50mm隔てて、アルミニウムを内側対向させた。陰極材料としては溶液に対して安定な材料ならば良い。本実施例では、白金板を用いた。電源より陽極側に加工基板を、陰極側に白金板を接続した。
陽極側に接続されたアルミニウムはプラスの電荷の供給を受けて酸化し、絶縁膜が形成される電源を定電流モードにしておくと陽極と陰極間の電位差は暫時増加する。到達電圧が120Vになった時点で電源モードを定電圧に切替え更に30分の化成を行なった。このモードの場合には電流は急激に低下し膜抵抗が引き続き上昇していくことがわかる。この工程により形成した陽極酸化アルミニウム103の厚さは1500Åであった。ここで形成される陽極酸化アルミニウム膜は緻密な組成を有し、素地のアルミニウムの外側に、陽極酸化アルミニウム膜705が等方的に形成された。
アルミニウム配線の断面パターンがテーパー(台形)形状をしている為、陽極酸化アルミニウム膜705形成後においても同様にテーパー(台形)形状になっている。150〜350℃で焼成した後の膜に電圧を印加し永久破壊が生じる時の耐電圧は100〜110Vであり極めて良好な絶縁膜でアルミニウムが被覆されているのがわかる。
この後、大気中200〜300℃例えば200℃で数〜数十分加熱すると、陽極酸化アルミニウムのリーク電流が一桁以上減少し、好ましかった。
このようにして、ゲイト電極部703は、ゲイト電極704の上面および側面にバリヤ型の陽極酸化アルミニウムよりなるゲイト絶縁膜705が形成された。(図6(B))
次にシランとアンモニアを1:3〜1:8ここでは1:5の割合で用いてプラズマCVD法により、2層目のゲイト絶縁膜706として窒化珪素膜を1000〜3000Å、例えば2000Å形成した。
窒化珪素膜の代わりに酸化珪素膜を同程度の厚さに設けてもよい。
酸化珪素膜の場合、その形成方法としては、酸素雰囲気中でのスパッタ法またプラズマCVD法を使用する。プラズマCVD法を用いる場合には、TEOSを原料とし、酸素とともに基板温度150〜400℃、好ましくは200〜250℃で、RF放電させて、原料ガスを分解・堆積した。TEOSと酸素の圧力比は、1:1〜1:10また、また、圧力は0.05〜0.5torr、RFパワーは100〜250Wとした。あるいはTEOSを原料としてオゾンガスとともに、減圧CVD法もしくは常圧CVD法によって、基板温度を150〜400℃、好ましくは200〜250℃として形成してもよい。
このゲイト絶縁膜706は設けなくてもよいが、設けた場合、電極間短絡の減少、および薄膜トランジスタの相互コンダクタンスの改善等を図ることができる。
また、ゲイト絶縁膜706として、酸化珪素膜を400〜3000Åと、該膜上に窒化珪素膜を300〜2000Å積層した2層構造とし、絶縁性が高くかつ応力の影響を抑えたものとしてもよい。
ゲイト絶縁膜706上に、チャネル形成領域を構成するI型のアモルファスシリコン膜707を200〜2000Å、例えば1000Å形成した。
さらにその上に、500〜3000Å、ここでは1000Åの窒化珪素膜を形成した。形成した窒化珪素膜に対して純水にて1/10〜1/50に希釈したフッ酸にてエッチングを行ない、保護膜708を形成した。
さらにその上に、リンを含んだn+ アモルファスシリコン膜709をプラズマCVD法により200〜1000Å、ここでは300Å厚に形成した。このアモルファスシリコン膜709は、ホウ素を含んだp+ アモルファスシリコン膜にしてもよい。(図6(C))
次に、I型のアモルファスシリコン膜707とn+ アモルファスシリコン膜709に対しドライエッチングを行ない、パターニングした。
一方、画素電極710となるITO(酸化インジウム・スズ)薄膜も形成し、パターニングした。
次にコンタクトホールを形成するために、窒化珪素膜よりなるゲイト絶縁膜706とその下の陽極酸化アルミニウム膜よりなるゲイト絶縁膜705に対しエッチングを施した。
エッチングは、まずゲイト絶縁706に対し、コンタクトホールのパターンにレジストを形成し、ドライエッチングにより行った。
ドライエッチングは、CHF3 を用いて、出力1000Wにて行った。エッチング速度は250Å/minであった。
次に陽極酸化アルミニウム膜よりなるゲイト絶縁膜705に対しクロム燐酸溶液でエッチングを行なった。クロム燐酸溶液は、2リットル溶液中に燐酸(850g/l)35mlと無水クロム酸20gを添加した溶液の中で65℃に加熱したものである。陽極酸化アルミニウムは、クロム燐酸溶液で完全に除去され、アルミニウム界面に達した時点でエッチングは止まった。時間を長く溶液に浸漬してもエッチング深さが進行してオーバーエッチになることはなかった。このようにしてコンタクトホールが形成された。
次に、アルミニウム膜を電子ビーム蒸着法またはスパッタ法にて1000〜2μmここでは3000Å厚に形成した。そして、このアルミニウム膜をドライエッチングによりパターニングし、ソース電極711、ドレイン電極712、ゲイト配線電極713を形成した。ゲイト配線電極713はゲイト電極704と良好なコンタクトを形成できた。
またn+ アモルファスシリコン膜をドライエッチングによりエッチング、パターニングし、ソース領域とドレイン領域に分割した。
このようにして薄膜トランジスタが完成した。(図6(D)、図6(D’)(図6(D)の点線における断面図))
本実施例では、ゲイト絶縁膜に設けたコンタクトホールと、陽極酸化アルミニウム膜に設けたコンタクトホールを、同一のマスク工程により、同一の大きさに設けたが、図7(B)に示すように、異なるマスクを用いて、陽極酸化アルミニウム膜に設けるコンタクトホールの口径を、ゲイト絶縁膜に設けるものより小さくなるようにし、ゲイト絶縁膜のコンタクトホール開孔内に陽極酸化アルミニウム膜の小さいコンタクトホールを設ける構成としてもよい。
このようにすることで、コンタクトホールが擬似的にテーパー形状となり、その結果コンタクトホール内に設けられるアルミニウム配線電極713の断線等を防ぐことができ、ゲート電極との良好なコンタクトが得られる。
本実施例は、実施例2、実施例4で示した薄膜トランジスタの作製工程において、陽極酸化アルミニウム膜の開孔の形成を、イオンミリング法により行った例を示す。
まず、基板(コーニング7059、300mm×400mmもしくは100mm×100mm)501上に下地酸化膜502として厚さ1000〜3000Åの酸化珪素膜を形成した。この酸化膜の形成方法としては、酸素雰囲気中でのスパッタ法を使用した。しかし、より量産性を高めるには、TEOSをプラズマCVD法で分解・堆積した膜を用いてもよい。
その後、プラズマCVD法やLPCVD法によって非晶質珪素膜を300〜5000Å、好ましくは500〜1000Å堆積し、これを、550〜600℃の還元雰囲気に24時間放置して、結晶化せしめた。この工程は、レーザー照射によっておこなってもよい。そして、このようにして結晶化させた珪素膜をパターニングして島状領域503を形成した。さらに、この上にスパッタ法によって厚さ700〜1500Åの酸化珪素膜504を形成した。
その後、厚さ1000Å〜3μm(ここでは6000Å)のアルミニウム(1wt%のSi、もしくは0.1〜0.3wt%のSc(スカンジウム)を含む)膜を電子ビーム蒸着法もしくはスパッタ法によって形成した。
そして、フォトレジスト506の形成前に、陽極酸化法によって厚さ100〜1000Å(ここでは200Å)の酸化アルミニウム膜(陽極酸化物層)500を形成する。この工程は、3%の酒石酸を含むエチレングルコール溶液中において10〜30Vの電圧を印加することによって行われる。この酸化アルミニウム膜は、緻密でこの上に形成されるフォトレジスト506との密着性が良く、また、フォトレジストからの電流のリークを抑制することになるので、後の陽極酸化工程において、多孔質陽極酸化物を側面のみに形成するうえで極めて有効である。
そして、フォトレジスト506(例えば、東京応化製、OFPR800/30cp)をスピンコート法によって形成した。その後、フォトレジストとアルミニウム膜をパターニングして、ゲイト電極505、マスク膜506とした。(図5(A))
さらにこれに電解液中で電流を通じて陽極酸化し、厚さ1000〜5000Å、例えば、厚さ5000Åの多孔質型(ポーラス型)陽極酸化アルミニウム507を形成した。陽極酸化は、3〜20%のクエン酸もしくはショウ酸、燐酸、クロム酸、硫酸等の酸性水溶液を用いておこない、10〜30Vの一定電流をゲイト電極に印加すればよい。本実施例ではシュウ酸溶液(30℃)中で電圧を10Vとし、20〜40分、陽極酸化した。陽極酸化物の厚さは陽極酸化時間によって制御した。(図5(B))
上記の工程は、緻密な陽極酸化アルミニウム膜500が形成されているために、図5に示すように横方向のみに進行し、またその厚さも必要とするだけ得ることができる。
次に、マスクを除去し、再び電解溶液中において、ゲイト電極に電流を印加した。今回は、3〜10%の酒石液、硼酸、硝酸が含まれたエチレングルコール溶液を用いた。溶液の温度は10℃前後の室温より低い方が良好な酸化膜が得られた。このため、ゲイト電極の上面および側面にバリヤ型の陽極酸化アルミニウム膜508が形成された。陽極酸化アルミニウム膜508の厚さは印加電圧に比例し、印加電圧が200Vで2500Åの陽極酸化物が形成された。陽極酸化アルミニウム膜508の厚さは必要とされるオフセット、オーバーラップの大きさによって決定したが、3000Å以上の厚さの陽極酸化アルミニウムを得るには250V以上の高電圧が必要であり、薄膜トランジスタの特性に悪影響を及ぼすので3000Å以下の厚さとすることが好ましい。本実施例では80〜150Vまで上昇させ、必要とする陽極酸化アルミニウム膜508の厚さによって電圧を選択した。(図5(C))
その後、ドライエッチング法によって酸化珪素膜504をエッチングした。このエッチングにおいては、等方性エッチングのプラズマモードでも、あるいは異方性エッチングの反応性イオンエッチングモードでもよい。ただし、珪素と酸化珪素の選択比を十分に大きくすることによって、活性層を深くエッチングしないようにすることが重要である。例えば、エッチングガスとしてCF4 を使用すれば多孔質陽極酸化アルミニウムはエッチングされず、酸化珪素膜504のみがエッチングされる。また、多孔質陽極酸化アルミニウム507の下の酸化珪素膜504’はエッチングされずに残した。(図5(D))
その後、燐酸、酢酸、硝酸の混酸を用いて多孔質陽極酸化アルミニウム507をエッチングした。このエッチングでは多孔質陽極酸化アルミニウム507のみがエッチングされ、エッチングレートは約600Å/分であった。その下のゲイト絶縁膜504’はそのまま残存した。そして、イオンドーピング法によって、薄膜トランジスタの活性層503に、ゲイト電極部(すなわちゲイト電極とその周囲の陽極酸化膜)およびゲイト絶縁膜をマスクとして自己整合的に不純物を注入し、低抵抗不純物領域(ソース/ドレイン領域)510、513、高抵抗不純物領域511、512を形成した。
ドーピングガスとしてはここではフォスフィン(PH3 )を用いたためN型の不純物領域となった。ドーピングガスとしてジボラン(B2 H6 )を用いてP型の不純物領域を形成してもよい。
ドーズ量は5×1014〜5×1015cm-2、加速エネルギーは10〜30keVとした。その後、KrFエキシマーレーザー(波長248nm、パルス幅20nsec)を照射して、活性層中に導入された不純物イオンの活性化を行なった。
SIMS(二次イオン質量分析法)の結果によると、領域510、513の不純物濃度は1×1020〜2×1021cm-3、領域511、512では1×1017〜2×1018cm-3であった。ドーズ量換算では、前者は5×1014〜5×1015cm-2、後者は2×1013〜5×1014cm-2であった。この違いはゲイト絶縁膜504’の有無によってもたらされたのであって、一般的には、低抵抗不純物領域の不純物濃度は、高抵抗不純物領域のものより0.5〜3桁大きくなる。(図5(E))
次に、全面に層間絶縁物514として、CVD法によって酸化珪素膜を厚さ8000Å形成した。そして、薄膜トランジスタのソース部、ドレイン部、ゲイト部のコンタクトホールを形成する。マスクパターンはそれぞれの部分が同時に開孔しているパターンを用いてレジストを形成した。
層間絶縁膜としては、酸化珪素膜より緻密な膜質を有し、絶縁の確実性が得られる窒化珪素膜を用いてもよいが、窒化珪素膜のみを層間絶縁膜として用いると、窒化珪素膜が有する強い応力により、特にガラス基板を用いた場合など、層間絶縁膜下の配線や素子に歪みが生じ、不良発生を招きやすい。
そこで、層間絶縁膜として、窒化珪素膜を500〜1500Å程度と、5000〜6000Åの酸化珪素膜を設ける2層構造、特に窒化珪素膜上に酸化珪素膜を有するものを設けて、絶縁性が高くかつ応力の影響を抑えたものとしてもよい。
まず酸化珪素膜である層間絶縁膜514に対し、ABHFによるウェットエッチング、またはドライエッチングにより行い、次に陽極酸化アルミニウム膜508に対し、イオンミリング法で開孔を形成した。
ウェットエッチングの場合、エッチャントであるABHFは、酢酸と40%フッ化アンモニウム(NH4 F)と50%フッ化水素酸(HF)を50:50:1(体積比)で混合したものを用いた。
ABHFによって層間絶縁膜514をエッチングした時のエッチング速度は3400Å/分であった。こうして層間絶縁膜を介してソース領域515、ドレイン領域516に至るコンタクトホールが形成された。
本実施例の薄膜トランジスタにおいては、ゲイト絶縁膜504’がソース領域510、ドレイン領域513上に延在していないが、該領域上にゲイト絶縁膜が延在している場合、層間絶縁膜514のエッチング終了と同時にソース領域510とドレイン領域513上では(延在した)ゲイト絶縁膜のエッチングが始まる。本実施例のゲイト絶縁膜に対し、前述のABHFによってエッチングした場合そのエッチング速度は、1700Å/分であった。一方、ゲイト部では層間絶縁膜エッチング終了の時点で陽極酸化アルミニウム膜508の上部が露出しておりABHFにより300〜600Å程度エッチング進行したが、それ以上進行しなかった。
ドライエッチングの場合、ここではCHF3 を用いて、出力1000Wにて行った。エッチング速度は300Å/minであった。
次にイオンミリング法により陽極酸化アルミニムウム膜508に開孔を形成した。
まずレジストを除去し、新たにゲイト電極部のみ開孔したパターンを有するレジストを設ける。
次に、イオン飛翔方向に対して垂直より30°傾いた回転ターゲット上に基板を設置し、圧力1.7×10-4Torr、アルゴンガスを10sccmで流入させ、加速電圧600eVで、陽極酸化アルミニウム膜508に対しイオンミリングを施した。
約10分で、陽極酸化アルミニウム膜508に対し開孔を設け、内部のアルミニウムを露呈させることができた。
レジストを除去し、陽極酸化アルミニウム膜508にコンタクトホールが形成された。
次に、画素電極518をITO(酸化インジューム・スズ)で形成した。
さらに、アルミニウム配線として電極515、516、517を、層間絶縁膜および陽極酸化アルミニウム膜に形成されたコンタクトホールを介してゲイト電極、ソース領域、ドレイン領域にそれぞれ接続するように形成した。さらに200〜400℃で水素アニールをおこなった。以上によって、薄膜トランジスタが完成した。(図5(F))
本実施例では、層間絶縁膜に設けたコンタクトホールと、陽極酸化アルミニウム膜に設けたコンタクトホールを、同一のマスク工程により、同一の大きさに設けたが、図7(A)に示すように、異なるマスクを用いて、陽極酸化アルミニウム膜に設けるコンタクトホールの口径を、層間絶縁膜に設けるものより小さくなるようにし、層間絶縁膜のコンタクトホール開孔内に陽極酸化アルミニウム膜の小さいコンタクトホールを設ける構成としてもよい。
このようにすることで、コンタクトホールが擬似的にテーパー形状となり、その結果コンタクトホール内に設けられるアルミニウム配線電極517の断線等を防ぐことができ、ゲート電極との良好なコンタクトが得られる。
薄膜トランジスタの構造を示す。
ABHFによる陽極酸化アルミニウム膜のエッチング特性の一例を示す。
クロム燐酸溶液による陽極酸化アルミニウム膜のエッチング特性の一例を示す。
実施例によって作製した微細配線の接続状態を示す。
実施例のTFTの作製工程を示す。
実施例のTFTの作製工程を示す。
実施例のTFTの作製工程の他の例を示す。
従来のエッチング工程を示す。
符号の説明
101・・・・基板
102・・・・第1の電極(アルミニウム)
103・・・・陽極酸化アルミニウム
104・・・・層間絶縁膜
105・・・・第2の電極
106・・・・第1の電極の上面
301・・・・ソース部開孔
302・・・・ドレイン部開孔
303・・・・レジスト
304・・・・ゲイト部開孔
401・・・・基板
402・・・・下地膜
403・・・・ソース部活性層
404・・・・チャネル部活性層
405・・・・ドレイン部活性層
406・・・・ゲイト絶縁膜
407・・・・ゲイト電極(アルミニウム)
408・・・・陽極酸化アルミニウム膜(バリア型)
409・・・・陽極酸化アルミニウム膜(ポーラス型)
410・・・・層間絶縁膜
411・・・・ソース部接続電極
412・・・・ドレイン部接続電極
413、414・・・・オフセット領域
415・・・・ゲイト部接続電極
500・・・・酸化アルミニウム膜
501・・・・基板
502・・・・下地酸化膜
503・・・・島状領域
504・・・・酸化珪素膜
504・・・・ゲイト絶縁膜
505・・・・ゲイト電極
506・・・・マスク膜
507・・・・多孔質型(ポーラス型)陽極酸化アルミニウム膜
508・・・・バリア型陽極酸化アルミニウム膜
510・・・・低抵抗不純物領域(ソース領域)
513・・・・低抵抗不純物領域(ドレイン領域)
511、512・・・・高抵抗不純物領域
514・・・・層間絶縁膜
515、516、517・・・・電極
518 画素電極
701 基板
702 下地膜
703 ゲイト電極部
704 ゲイト電極
705 ゲイト絶縁膜(陽極酸化アルミニウム)
706 ゲイト絶縁膜
707 I型アモルファスシリコン膜
708 保護膜
709 n+ アモルファスシリコン膜
710 画素電極
711 ソース電極
712 ドレイン電極
713 ゲート配線電極