JP2006184270A - センサチップ及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】サイズが小さく、生産が容易なセンサチップであって、試料中の複数の成分を、迅速、簡便にかつ正確に定量することができるセンサチップ、及びこのセンサチップを、容易に高い生産性で製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】互いに対向する2枚の基板、該2枚の基板間に挟装されるスペーサ層、及び該2枚の基板それぞれのスペーサ層側の表面に設けられた検知用電極系を有し、該スペーサ層中に、試料導入口を少なくとも1つ有する中空部であって、一方の基板上の検知用電極系のみが露出している反応部が、それぞれの検知用電極系について形成されていることを特徴とするセンサチップ、及びこのセンサチップの製造方法であって、基板となる一枚の基板シート上に、検知用電極系、スペーサ材の層、反応部となる複数の溝を形成した後、折曲げることを特徴とするセンサチップの製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、試料中の特定成分を定量するセンサチップ、特にバイオセンサチップに関する。より具体的には、試料中の複数の成分を、迅速かつ簡便に定量することができるセンサチップに関する。本発明は、さらにこのセンサチップの製造方法に関するものである。
バイオセンサチップは、微量試料をチップ内の反応部に導入し、該チップ内で、該微量試料について酵素反応や抗原−抗体反応等の生化学反応を起こし、該生化学反応により得られる情報をチップ外へ出力するセンサチップである。このバイオセンサチップは、生体の持つ優れた分子識別機能を利用するものであり、微量の化学物質の迅速かつ簡便な測定を可能にするものとして注目されており、例えば、血液中のグルコース量(血糖値)や尿糖値を測定する血糖値センサ等として、糖尿病を自己管理し予防する家庭内健康診断(セルフケア)に使用されている。
特開平4−264246号公報には、このようなバイオセンサチップの一例が記載されている。このバイオセンサチップは、絶縁性の基板上に複数組の電極系を設け、各電極系上に反応部、又各電極系に対応して水素イオン制御部を設けたものであり、多成分の試料を同時に測定することができる。しかし、このバイオセンサチップは、一平面上に並列に反応層及び電極系を複数組並べる構造であるため、チップのサイズが一成分用のチップよりも大きくなってしまう問題がある。また、特殊な形状の部材を精度良く作製し組み立てねばならないため、生産性が悪く製造コストが高くなるとの問題もある。
又、特開平6−109693号公報にも、絶縁性の基板上に、反応層(反応部)と、主電極系と副電極系とを設け、両電極系間に親水性高分子層を設けたバイオセンサチップが開示されている。このバイオセンサチップでは、副電極系において試料液中の還元性の物質を定量し、主電極系において基質濃度と還元性の物質の和を定量するものであり、親水性高分子層により、副電極系上に主電極系の酵素が移動して、還元性の物質の定量の精度が低下することを防いでいる。
このバイオセンサチップは、構造を簡単にするために、反応層を単に親水性高分子で区切る構造とし親水性高分子の膨潤で物質移動を制限させている。しかし親水性高分子層を高精度で配置する必要があるため、製造コストが高くなるのみならず、本来親水性高分子のみで物質移動を完全に防ぐことは困難であり、反応層を別々に設けた場合と比較して精度が劣るとの問題があった。
又、特開平6−109698号公報には、絶縁性の基板と、前記絶縁性の基板上に形成された電極系と、前記絶縁性の基板上に形成した反応層(反応部)とから構成され、前記反応層が少なくとも酵素と電子受容体と親水性高分子からなるバイオセンサにおいて、該バイオセンサに試料液を供給した後、前記電極系に一定電圧を印加して電流値を測定する操作を複数回行なうことを特徴とする基質濃度測定方法が開示されている。この方法により、1つの電極系と1つの反応層(反応部)を備えたバイオセンサにより、複数の成分の定量が可能となる。
しかし、この方法は、基質の反応時間差を利用するため、測定に時間がかかる問題があるとともに、被測定物質間に反応時間差のある特殊な組み合わせにしか用いることができない。
このように、従来は、サイズが小さく、生産が容易なセンサチップであって、試料中の複数の成分を、迅速、簡便かつ正確に定量することができるセンサチップは得られていなかった。
特開平4−264246号公報 特開平6−109693号公報 特開平6−109698号公報
本発明は、サイズが小さく、生産が容易なセンサチップであって、試料中の複数の成分を、迅速、簡便かつ正確に定量することができるセンサチップを提供することを課題とする。本発明はさらに、このセンサチップを、容易に、高い生産性で製造することができる製造方法を提供することも課題とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、検知用電極系が形成された2枚の基板と、その間に挟装されるスペーサ層からなり、該スペーサ層に、一方の基板の検知用電極系のみが露出する中空の反応部を複数設けることにより、サイズが小さく、生産が容易で、かつ試料中の複数の成分を、迅速、簡便かつ正確に定量することができるセンサチップが得られることを見出した。
本発明者は、さらに、センサチップ形成後は2枚の基板のそれぞれとなる1枚のシート上に、各検知用電極系、スペーサ層となる層、中空の反応部となる溝を形成し、その後該シートを折曲げる方法により、前記の本発明のセンサチップを容易に、生産性高く製造できることを見出した。本発明は、上記の知見に基づき完成されたものである。
本発明は、互いに対向する2枚の基板、該2枚の基板間に挟装されるスペーサ層、及び該2枚の基板それぞれのスペーサ層側の表面に設けられた検知用電極系を有し、該スペーサ層中に、試料導入口を少なくとも1つ有する中空部であって、一方の基板上の検知用電極系のみが露出している反応部が、それぞれの検知用電極系について形成されていることを特徴とするセンサチップを提供するものである(請求項1)。
本発明のセンサチップは、互いに対向するすなわち対面して配置されている2枚の基板を有し、そのそれぞれの互いに対面している側の表面上に検知用電極系が形成されている。検知用電極系は、少なくとも作用極と対極を有し、さらに必要により参照極等の他の電極やその他の手段を有してもよい。1つの検知用電極系内の作用極と対極は各基板の表面上に並列して配置されている。
前記2枚の基板は、電気絶縁性のフィルムであり、その材質としては、セラミックス、ガラス、紙、生分解性材料(例えば、ポリ乳酸微生物生産ポリエステル等)、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック材料が例示されるが、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート等の絶縁性樹脂が用いられる。
前記2枚の基板の間に挟装されるスペーサ層は、一層又は複数の層からなり、例えば、電極間の絶縁性を高め、かつ電極を物理的に保護する機能を有するレジスト材層と、各層を接着する機能を有する粘着剤層や接着剤層等からなる。一層が、レジスト材層と接着剤層を兼ねる場合もあるし、レジスト材層、粘着剤層、接着剤層がそれぞれ多層からなる場合もある。
レジスト材はセンサチップ形成後スペーサとしての役割を果たすと共に、基板との密着性が強いので、液体の薬剤を反応部に塗布した際に、基板とスペーサ層との界面に薬品が浸透し、界面が剥離することを防止する等の機能を有する。レジスト材層の材質としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、変性ポリイミド樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。粘着剤層を形成する粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤が例示される。接着剤層を形成する接着剤としては、エポキシ系、酢酸ビニル系、シリコーン系等の接着剤が例示され、エポキシ樹脂等の熱硬化樹脂、UV硬化樹脂等を使用することができる。接着剤層や粘着剤層もセンサチップ形成後スペーサとしての役割を果たすが、一般に接着剤や粘着剤はヤング率が低く変形しやすいため、反応部の体積を規定する上ではあまり厚くしない方が良い。両面を接着する機能を有する程度で、最小限の厚さであることが通常好ましい。
本発明のセンサチップは、スペーサ層中に、前記2枚の基板の中の一方基板(以下基板1とする)の表面上に形成された検知用電極系のみが露出しており他方の基板(以下基板2とする)の検知用電極系は露出していない反応部、及び基板2の検知用電極系のみが露出しており基板1の検知用電極系は露出していない反応部の少なくとも2つの反応部を有する。
ここで、反応部とは、スペーサ層中に設けられた中空部であって、この部分で、ここに導入された試料が、検知、定量のための化学反応をし、バイオセンサチップの場合は生化学反応をする。従って、この部分に化学反応に必要な触媒、酵素等が固定されており、これらにより、試料の化学反応が促進される。
固定される触媒、酵素としては、グルコースオキシダーゼ(GOD)、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)、グルコースオキシダーゼ−電子受容体(メディエータ)混合物、グルコースオキシダーゼ−アルブミン混合物等が例示され、又反応を円滑に行うための界面活性剤等が塗布される場合もある。
又、反応部は、試料導入口を少なくとも1つその一端に有する必要があるが、さらに試料導入口の反対側の端にも、開口部を有することが好ましい。反応部を、このようなストロー状の構造とすることで、毛管現象を利用して試料の反応部への充填を容易にすることができる。
このように、本発明のセンサチップは、基板1の検知用電極系のみが露出する反応部と基板2の検知用電極系のみが露出する反応部を、それぞれ1以上有する構造なので、それぞれの反応部に異なった薬剤を塗布することにより、異なる成分について同時に測定をすることができる。しかも、基板1の検知用電極系と基板2の検知用電極系は対面構造を取り、一平面上に並列に並べられていないので、一成分用チップと同じサイズで作製することができる。
それぞれの反応部に異なった薬剤を塗布する代りに、それぞれに同一の薬剤を塗布し、さらに1つの反応部については、前記薬剤塗布箇所とは異なる箇所に、他の薬剤(参照用試薬)を塗布することもでき、薬剤の劣化状態の判定に用いることもできる。
例えば、2つの反応部を有するセンサチップにおいて(各々の反応部を、反応部m、反応部nとする。)、反応部m、nの双方に試料と反応する薬剤aを塗布し、さらに片方の反応部nには、薬剤aの塗布箇所とは異なる箇所に、薬剤aと反応する参照用試薬bを塗布する。試料が反応部m、nに導入されると、反応部mの検知用電極系では、薬剤aと試料との反応による電流値Iaが検出され、反応部nの検知用電極系では、薬剤aと試料との反応による電流値Iaと薬剤aと参照用試薬bとの反応による電流値Ibの合計が検出されるので、反応部m、nより検出された電流値の差が、薬剤aと参照用試薬bとの反応による電流値Ibである。
従って、この電流値の差(Ib)の大きさにより、薬剤aの劣化状態を判定することができる。このようにして、使用者の保管等に起因する薬剤の劣化状態を判定することが可能となる。
又本発明のセンサチップは、ほぼ同時に試料をそれぞれの反応部中に導入することができ、各成分の測定を同時に実施することができるので、測定時間も一成分用のセンサチップを用いて測定する場合と変わらず、迅速、簡便な測定を行うことができる。
又、後述するように、簡単な形状の部材の組み合わせで反応部を形成することができるので、生産性は高く製造コストも下がる。かつ各反応部間は、試料導入口部分で接続、近接している場合はあるものの、他の部分は完全に隔離されているため、測定中に各反応部間の物質移動が生じず、高精度の測定を行なうことができる。
前記のように各反応部間は、隔離されているが、2以上の試料導入口が、互いに近接又は接続していると、試料が少量の場合であっても、該試料を、両者の試料導入口に同時に接触させることができ、1回の試料導入作業で複数の反応部に試料を導入させることができるので好ましい。請求項2は、この好ましい態様に該当する。従って、近接又は接続とは、両者の試料導入口間の距離関係が、少量の試料が両者の試料導入口と同時に接触し、両者に同時に導入される程度であることを意味する。前記2以上の反応部に、異なった検知用電極系についての反応部がいずれも含まれる場合は、2つの成分についての同時測定を少量の試料の1回の試料導入作業で行うことができるので好ましい。
本発明のセンサチップとしては、前記2枚の基板が互いに同じ材質及び厚みを有し、並びに、前記2枚の基板と平行でかつ前記2枚の基板から等距離にある平面(以下中心面と言う。)に対し、前記スペーサ層(レジスト材層、粘着剤層)の材質及び形状が対称であることが、好ましい。このような構造を採ることにより、環境の温度や湿度の変化に伴うセンサチップの反りや、経時等による反りを生じないので、信頼性が高く、又外観上も良好なセンサチップが得られる。請求項3は、この好ましい態様に該当する。
ここで、中心面に対し材質が対称であるとは、中心面の両側の厚みが等しくて、中心面より等しい距離にある材質が同じであることを意味する。ただしスペーサ層中の反応部が設けられている部分等、小さな一部のみに非対象な部分を有していてもよく、他の大部分が対象であれば、反りを生じない。
本発明のセンサチップは、特にバイオセンサチップとして、血液中のグルコース量(血糖値)や尿糖値を測定する血糖値センサ、尿糖値センサ等として好適に用いられる。請求項4は、この好ましい態様に該当し、前記のセンサチップであって、バイオセンサチップであることを特徴とするセンサチップを提供するものである。
次に、前記の本発明のセンサチップの製造方法について述べる。
前記の本発明のセンサチップは、例えば、1基板上に電極系を形成し、スペーサ層となる各層、例えばレジスト材層、粘着剤層を積層し、その後前記電極系が露出するように反応部を形成した後、さらにスペーサ層となる他の層を積層し、その後他の反応部を形成し、さらにその後、該他の反応部に電極系が露出するように、該電極系が形成されている基板を積層する方法、2枚の基板のそれぞれに、レジスト材層、接着剤層(又は粘着剤層)の順で積層し、それぞれに反応部を形成した後、両者の接着剤層同士を貼り合せる方法等により製造することができる。
しかし、1枚の電気絶縁性のシート(基板シート)上に、それぞれの検知用電極系を同時に形成し、スペーサ層となる層、中空の反応部となる溝を一時に形成後、該シートを折り曲げ前記スペーサ層となる層同士を接着する方法により、又は前記スペーサ層となる層同士の間に他の層を介在させるように該シートを折り曲げこれらの層を接着する方法により、前記の本発明のセンサチップを容易に、生産性高く製造することができる。本発明の製造方法は、これらの好ましい態様の製造方法に該当する。
互いに対向する2枚の基板、該2枚の基板間に挟装され複数の反応部を含むスペーサ層、及び該2枚の基板それぞれのスペーサ層側の表面に設けられた検知用電極系を有し、該2枚の基板が、一枚の基板シートを折曲げ線を中心に折曲げて形成されているセンサチップは、
該基板シート表面上の、折曲げ線のそれぞれの側に検知用電極系を形成し、
該検知用電極系のそれぞれを、スペーサ層を形成する部材で被覆して被覆層を形成し、
折曲げ線の両方の側の該被覆層に、検知用電極系を露出しかつ該被覆層の外縁に到達する溝を形成し、
その後、該折曲げ線を中心とし、該被覆層同士を貼り合せるように折曲げる方法によっても製造することができる。請求項5は、この態様に該当するセンサチップの製造方法である。
本発明は、さらに前記請求項5の態様で製造されるセンサチップよりも、大きな反応部を有するセンサチップを製造することができる態様として次に示す製造方法を提供する。すなわち、互いに対向する2枚の基板、該2枚の基板間に挟装され複数の反応部を含むスペーサ層、及び該2枚の基板それぞれのスペーサ層側の表面に設けられた検知用電極系を有し、該2枚の基板が、一枚の基板シートを折曲げ線を中心に折曲げて形成されているセンサチップの製造方法であって、
該基板シート表面上の、折曲げ線のそれぞれの側に検知用電極系を形成し、
該検知用電極系のそれぞれを、スペーサ層を形成する部材で被覆して被覆層を形成し、折曲げ線の一方の側の該被覆層に、検知用電極系を露出しかつ該被覆層の外縁に到達する溝A及び検知用電極系を露出することなくかつ該被覆層の外縁に到達する溝Bを形成し、
該折曲げ線の他方の側の該被覆層の、折曲げ線より溝Bと同じ距離に、検知用電極系を露出しかつ該被覆層の外縁に到達する溝C、及び折曲げ線より溝Aと同じ距離に、検知用電極系を露出することなくかつ該被覆層の外縁に到達する溝Dを形成し、
その後、該折曲げ線を中心とし、該被覆層同士を貼り合せるように折曲げることを特徴とするセンサチップの製造方法(請求項6、以下製造方法の態様1とする。)である。
前記及び後述の本発明の製造方法において、基板シートとは、センサチップ形成後は前記2枚の基板となるシート状の部材である。従って、前記の基板の材質と同様なものが、その材質として用いられる。折曲げ線は、通常は、該基板シートを略2等分する位置にあり、その長辺方向に垂直な線である。この基板シートの折曲げ線の一方の側が前記2枚の基板の中の一方の基板を形成し、他方の側が前記2枚の基板の中の他方の基板を形成する。
本発明の製造方法では、この基板シート上の折曲げ線のそれぞれの側に、各基板の検知用電極系が形成される。検知用電極系の形成は、例えば、金属テープを基板シート上に貼り付ける等の方法で行なっても良いし、カーボンインク等の導電性物質を、スクリーン印刷等の手法で塗布することにより行うこともできる。本発明の製造方法では、一枚の基板シートの同一表面上に各基板の検知用電極系が形成されるので、スクリーン印刷等の手法を用いることにより、2枚の基板の検知用電極系を一工程で同時に製造することができる。従って、生産性が向上するので好ましい。
次に、折り曲げ線の両側に形成された検知用電極系をそれぞれ被覆するように、被覆層が形成される。被覆層の形成は、レジスト材や粘着剤層等を積層することにより行うことができる。レジスト材や粘着剤層等の形成は、例えば、スクリーン印刷で行うことができる。本発明の製造方法では、一枚の基板シートの同一表面上に、各基板側の被覆層を形成するので、スクリーン印刷等の方法により、各基板側の被覆層を同時に形成することができ、生産性を向上させることができる。被覆層の形成は、例えば、レジスト材をスクリーン印刷で塗布硬化させ、その後、更に粘着剤層又は接着剤層をスクリーン印刷で塗布させる方法で行うことができる。
前記被覆層には、センサチップ形成後は反応部となる溝が形成される。溝の形成は、被覆層の形成と同時に行ってもよい。前記の製造方法の態様1において、形成される溝は、基板シート上に形成された検知用電極系を露出する溝A、検知用電極系を露出しない溝B、検知用電極系を露出する溝C、及び検知用電極系を露出しない溝Dの少なくとも4本である。
4本の溝A、B、C、D等、前記及び後述の本発明の製造方法において形成される溝は、それぞれの少なくとも一端が前記被覆層の外縁に到達する。この外縁に到達した部分が、センサチップ形成後、試料導入口となる。
前記の製造方法の態様1において、溝Aと溝Bは折曲げ線の一方の側にあり、溝Cと溝Dは折曲げ線の他方の側にある。又、溝Aと溝Dは折曲げ線よりの距離が互いに同じであり、溝Bと溝Cも折曲げ線よりの距離が互いに同じである。すなわち、溝Aと溝D、及び溝Bと溝Cは、折り曲げ線を軸として対称の関係にある。対称の関係にある例としては、それぞれの溝が、折り曲げ線と平行で等距離にある直線である場合、互いに鏡像関係にある直線、曲線や折れ線である場合等が挙げられる。製作の容易さや、薬剤の塗布の容易さから、前記及び後述の本発明の製造方法において形成される溝は直線状が好ましく、特に折り曲げ線と平行な直線状が好ましい。
前記及び後述の本発明の製造方法においては、全ての溝が、一枚の基板シートの同一表面上に形成される。そこで、粘着層を有するテープを電極系が形成された基板シート上に貼付け、さらにテープを積層して各溝を形成させる方法や、レジスト材や粘着剤等の樹脂を、スクリーン印刷等の方法で、溝が形成するように塗布する等の方法により、全ての溝を少ない工程で形成することができ、別個に各溝を形成する場合よりも遥かに高い生産性が得られる。特に、スクリーン印刷による方法は生産性が高く、最も経済的である。
例えば、前記の製造方法の態様1において、被覆層が2以上の層からなり、先ず、検知用電極系に接触する側の層(例えばレジスト材層)を、溝A及び溝Cに対応する平面位置に溝を有するように、そして検知用電極系が露出するように形成し、その上に他の層(例えば粘着剤層)を、溝A、溝B、溝C及び溝Dに対応する平面位置に溝を有するように形成する方法によれば、前記のスクリーン印刷等の方法により、前記溝A、溝B、溝C及び溝Dを容易に形成することができ好ましい。請求項7は、この好ましい態様に該当する。
前記の本発明の製造方法においては、各溝を形成後、基板シートと前記被覆層の積層体は、該折曲げ線を中心とし、前記被覆層同士を貼り合せるように折曲げられる。好ましくは、貼り合せには、粘着剤や接着剤が用いられる。すなわち、前記被覆層の最上部には、粘着剤層や接着剤層が設けられることが好ましい。
前記の製造方法の態様1においては、溝Aと溝Dは折曲げ線よりの距離が互いに同じであり、溝Bと溝Cも折曲げ線よりの距離が互いに同じであるので、折り曲げ線を中心として2つ折りされ貼り合わされることにより、溝Aと溝D、溝Bと溝Cは重なり合い、その中に一方の検知電極系のみが露出した反応部が形成される。なお、折り曲げ線を中心として2つ折りする方法には、この折り曲げ線の位置で2つ折りする方法とともに、折り曲げ線に平行でかつ折り曲げ線から等距離にある2本の直線の位置で、断面がコの字型になるように、折り曲げる方法も含まれる。
前記の製造方法では、2つの反応部を対面する位置に形成することができないが、本発明はさらに、2つの反応部を対面する位置に形成することができる方法として、次の態様のセンサチップの製造方法を提供する。すなわち、互いに対向する2枚の基板、該2枚の基板間に挟装され複数の反応部を含むスペーサ層、及び該2枚の基板それぞれのスペーサ層側の表面に設けられた検知用電極系を有し、該2枚の基板が、一枚の基板シートを折曲げ線を中心に折曲げて形成されているセンサチップの製造方法であって、
該基板シート表面上の、折曲げ線のそれぞれの側に検知用電極系を形成し、
該検知用電極系のそれぞれを、スペーサ層を形成する部材で被覆して被覆層アを形成し、
該被覆層アの折曲げ線の両側のそれぞれに、検知用電極系を露出しかつ該被覆層の外縁に到達する溝を形成し、
該被覆層ア及び折曲げ線の両側に形成された溝を、スペーサ層を形成する部材イで被覆し、
その後、該折曲げ線を中心とし、該部材イの露出面同士を貼り合せるように折曲げることを特徴とするセンサチップの製造方法(請求項8、以下製造方法の態様2とする。)である。
本発明は、さらに又、製造方法の態様2と同様に、2つの反応部を対面する位置に形成することができる方法として、次の態様のセンサチップの製造方法を提供する。すなわち、互いに対向する2枚の基板、該2枚の基板間に挟装され複数の反応部を含むスペーサ層、及び該2枚の基板それぞれのスペーサ層側の表面に設けられた検知用電極系を有し、該2枚の基板が、一枚の基板シートを折曲げ線を中心に折曲げて形成されているセンサチップの製造方法であって、
該基板シート表面上の、折曲げ線のそれぞれの側に検知用電極系を形成し、
該検知用電極系のそれぞれを、スペーサ層を形成する部材で被覆して被覆層アを形成し、該被覆層アの折曲げ線の両側のそれぞれに、検知用電極系を露出しかつ該被覆層の外縁に到達する溝を形成し、
その後、該折曲げ線を中心として折曲げ、折曲げ線の両側にある被覆層アの露出面のそれぞれを、スペーサ層を形成する部材イの両面に貼り合せることを特徴とするセンサチップの製造方法(請求項9、以下製造方法の態様3とする。)である。
製造方法の態様2及び3のいずれについても、用いられる基板シート、又検知用電極の形成や被覆層(被覆層ア)の形成方法については、製造方法の態様1の場合と同じである。しかし、製造方法の態様2及び3においては、形成される溝の全てが、検知用電極系を露出するものである。溝の形成方法については、製造方法の態様1の場合と同様であり、複数の溝をスクリーン印刷等により同時に形成することが可能であり、高い生産性が達成される。
溝の形成後、製造方法の態様2では、該被覆層ア及び折曲げ線の両側に形成された溝を、スペーサ層を形成する部材イで被覆し、その後、該折曲げ線を中心とし、該部材イの露出面同士を貼り合せるように折曲げ、センサチップが製造される。製造方法の態様3では、溝がその上に形成された基板を、該折曲げ線を中心として折曲げ、折曲げ線の両側にある被覆層アの露出面のそれぞれを、スペーサ層を形成する部材イの両面に貼り合せて、センサチップが製造される。いずれの方法においても、部材イに貼り合わされているそれぞれの被覆層ア内に、各反応部が形成される。
製造方法の態様2及び3において、被覆層アの折曲げ線の両側のそれぞれに形成される溝を、該折曲げ線より互いに等距離の位置に形成すると、2つの反応部が部材イを介して対向するセンサチップを製造することができる。このセンサチップは、2つの試料導入口が互いに近接しているものであり、従って、前記のような利点を有する。請求項10は、製造方法の態様2及び3であって、この好ましい態様のセンサチップを製造する方法である。
前記の製造方法の態様のいずれにおいても、検知、定量の反応をするための薬剤、例えば触媒、酵素等の反応部への固定は、センサチップ形成後に行うことも可能であるが、製造のしやすさの観点からは、センサチップ形成前、すなわち折り曲げ前に行うことが好ましい。そこで、通常、折曲げ線を中心として折曲げる前に、複数の溝の中の少なくとも1つに、薬剤が塗布されている。請求項11は、この好ましい態様に該当する。
薬剤の塗布は、溝形成後に行う必要はなく、溝形成前に、溝が形成される位置に薬剤を塗布してもよい。例えば、基板上であってセンサチップ形成後は反応部となる部分(例えば、前記の溝Aと溝Cに相当する位置)に薬剤を塗布し、その周囲に、前記被覆層の一層を形成する部材(例えば、レジスト材)を貼り付けるあるいは樹脂を塗布する等の方法により前記部材を設け、その後、前記部材上であってセンサチップ形成後は反応部となる部分(例えば、前記の溝Bと溝Dに相当する位置)に薬剤を塗布し、その周囲に、前記被覆層の他の層を形成する部材(例えば、接着剤シート)を貼り付けるあるいは粘着剤を塗布する等の方法により該他の層の部材を積層する方法も採用できる。しかし、溝を先に形成しておくと、薬剤の塗布面積と塗布位置を容易に規定できるので、生産性の観点からは、先に溝を形成する方法が好ましい。
2つの成分についての検知、定量を行うためには、2つの反応部に固定される薬剤が互いに異なる必要がある。例えば、前記の溝A、溝Dに塗布される薬剤と、溝B、溝Cに塗布される薬剤とは、少なくとも1部の薬剤については異なる必要がある。しかし、同一の反応部内の電極系側とその対面側に固定される薬剤、すなわち、溝Aと溝D、又は溝Bと溝Cに塗布される薬剤は、同じでも良いし異なっていてもよい。
例えば、同一反応部を形成する2つの溝のうち一方に酵素、他方に界面活性剤を塗布すると、反応部が小さい場合でも反応部中への試薬の導入が極めてスムーズになり、かつ反応部内の試薬の分布が均一となるので、検査時間が短縮されると共に、検査のバラツキも低減される効果がある。また、両面に同一の酵素を塗布すると、試料と酵素の接触面積を大きくすることができるので、試料中の成分と酵素との反応時間を短縮することができる。例えば、前記の溝A、溝B、溝C及び溝Dに全て異なる薬剤を塗布すれば、2つの反応部を持ち、4種の成分について検知機能を有するセンサチップを作製することもできる。
各溝への薬剤の塗布は、塗布機等を用いて行うことができるが、本発明のセンサチップの製造方法においては、全ての塗布面が同一平面上に存在することを利用し、ディスペンサ等の塗布機を用いて同一工程で2以上の溝に薬剤を塗布することができる。この場合、一つのノズルを用いて、全ての溝に薬剤を塗布する方法も採用できるが、2本以上の溝が互いに平行であれば、1台の塗布機に、ノズル間隔を固定した2以上のノズルを配し、塗布機、又は溝が形成された基板シートのいずれかを移動させるだけで、1本の溝に薬剤を塗布する場合と全く同じ塗布時間で、2本以上の溝に塗布を行なうことができる。その結果生産性が向上するので好ましい。2以上の各ノズルへの薬剤の供給ラインを別々のものとすれば、2本以上の溝に、異なった薬剤を同時に塗布することもできる。
従って、センサチップ形成後反応部となる溝の中の、少なくとも2本以上が互いに平行であることが好ましい。請求項12は、この好ましい態様に該当し、前記のセンサチップの製造方法であって、少なくとも2本以上の溝が互いに平行であり、この互いに平行な溝のそれぞれに、ノズル間隔が固定された複数のノズルを有する塗布機によって薬剤を同時に塗布することを特徴とするセンサチップの製造方法を提供するものである。より好ましくは、より多くの溝が平行な場合であり、特に、全ての溝が互いに平行な場合が好ましい。例えば、前記の溝A、溝B、溝C及び溝Dの4本が平行な場合は、4本の固定ノズルを有する1台の塗布機を用いて、4本の溝に同時に薬剤を塗布することができる。
前記の本発明の製造方法により得られるセンサチップは、請求項3のセンサチップ、すなわち2枚の基板が互いに同じ材質及び厚みを有し、並びに、前記2枚の基板と平行でかつ前記2枚の基板から等距離にある平面に対し、前記スペーサ層の材質及び形状が対称であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセンサチップであり、そりが生じにくいとの特徴を有するものである。
本発明のセンサチップは、試料中の複数の成分を定量することができるセンサチップであって、チップサイズを小さくすることができ、又複雑な形状の構成部材が無いので生産が容易である。又、各反応部間の物質移動が生じないので、高精度の測定を行なうことができ、かつ各成分の測定も同時に実施することができ測定時間も短縮できるので、少量の試料中の複数の成分を、正確かつ迅速、簡便に定量することができる。従ってバイオセンサチップとして好適に用いられる。
本発明のセンサチップの製造方法によれば、前記の本発明のセンサチップであって、そりを生じにくいとの優れた特徴を有するものを、容易に、生産性高く製造することができる。さらに、本発明の製造方法では、一枚の基板シートの同一表面上に、各基板の検知用電極系や、スペーサ層を構成する被覆層を形成するので、スクリーン印刷等の手法を用いれば、少ない工程でこれらを製造することができ、生産性をさらに向上させることができる。
次に本発明を実施するための最良の形態を、図を用いて説明する。なお、本発明はこの形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない限り、他の形態へ変更することができる。
図1、図2は、本発明のセンサチップの一例を示すもので、図1は側面図(平面図の上方側から見た側面図、以下の側面図についても同じ。)であり、図2は平面図である。
図1に示されるように、この例では、基板1と基板2の間に挟装されるスペーサ層3は、レジスト材層4、粘着剤層5、レジスト材層6より構成されている。又基板1と基板2の、スペーサ層3側の表面には、それぞれ、検知用電極系7、検知用電極系8が形成されている。
スペーサ層3中には、反応部9と反応部10が形成されている。反応部9は、レジスト材層4及び粘着剤層5の中に形成されており、検知用電極系7のみがその中に露出している。反応部10は、粘着剤層5及びレジスト材層6の中に形成されており、検知用電極系8のみがその中に露出している。
図2に示されるように、反応部9と反応部10は、互いに平行であり、その両端は、センサチップの両側面において開口している。従って、反応部9と反応部10はストロー状の形状であり、各反応部の一方の端が、試料が導入される試料導入口となる。反応部9と反応部10のそれぞれの底面側と天井側には薬剤(図示されていない。)が固定されている。反応部9と反応部10では、固定される薬剤が異なっており、その結果、2成分について定量することができる。
図3、図4は、本発明のセンサチップの他の一例を示すもので、図3は側面図であり、図4は平面図である。
図3に示されるように、この例でも図1の例と同様に、基板21と基板22の間に挟装されるスペーサ層23は、レジスト材層24、粘着剤層25、レジスト材層26より構成され、又基板21と基板22の表面には、それぞれ、検知用電極系27、検知用電極系28が形成されている。
又、図1の例と同様に、反応部29が、レジスト材層24及び粘着剤層25の中に形成されており、検知用電極系27がその中に露出しており、反応部30は、粘着剤層25及びレジスト材層26の中に形成されており、検知用電極系28がその中に露出している。
しかし、図4に示されるように、この例のセンサチップでは、反応部29と反応部30は、両者でV字を形成するように配置されている。それぞれの両端は、センサチップの両側面において開口しており、ストロー状の形状を有しているが、一方の側面においては、両者の開口部は接続している。その結果、この接続している開口部を試料導入口とすることにより、微量の試料を同時に両者に導入することができる。反応部29と反応部30への薬剤の塗布については図1の例と同様である。
次に、本発明のセンサチップの製造方法について述べる。
図5〜図8は、前記図1の例のセンサチップの、製造方法の各製造工程を示す説明図である。図5(a)は、センサチップが形成される基板シート11を示す平面図である。基板シート11の、折り曲げ線12の左側が、センサチップ形成後は基板1となり、右側が、センサチップ形成後は基板2となる。
基板シート11としては、1枚のPETフィルム等の折り曲げ可能で電気絶縁性のあるフィルムが用いられ、その上にカーボンインクをスクリーン印刷して、検知用電極系7、8を形成する。図5(b)は、検知用電極系が形成された後の基板シート11を示す平面図である。なお、この例では、検知用電極系7、8は、それぞれ、対極と作用極からなる一対本の電極により構成されているが、他に参照極や液絡検知極等の電極を配置してもよく、これらも同様にスクリーン印刷により形成することができる。
検知用電極系7、8の形成後は、その上にレジスト材層4、6が形成される。図6(a)は、レジスト材層4、6が形成された後を示す平面図であり、図6(b)は、レジスト材層4、6が形成された後を示す側面図である。図6より明らかなように、レジスト材層4、6は、溝14、溝15を有するように形成されており、この溝14、溝15は、互いに平行であり、検知用電極系7又は8が露出し、かつ基板シート11の側面に垂直である。このようなレジスト材層4、6は、それらを構成する樹脂を、溝14、溝15を形成するように、スクリーン印刷して硬化する方法により形成することができる。
レジスト材層4、6を形成後、その上に粘着剤層5’が形成される。図7(a)は、粘着剤層5’が形成された後を示す平面図であり、図7(b)は、粘着剤層5’が形成された後を示す側面図である。図7より明らかなように、粘着剤層5’は、溝14、溝15と重なる位置に溝14’、溝15’を有するように、かつ折り曲げ線12を軸として溝14’と対称となる位置に溝16を形成するように、又かつ折り曲げ線12を軸として溝15’と対称となる位置に溝17を形成するように、形成されている。このような粘着剤層5’は、それらを構成する樹脂を、前記の各溝を形成するように、スクリーン印刷する方法により形成することができる。粘着剤層5’が形成された結果、溝14、溝14’は、検知用電極系7が露出している溝Aを形成し、溝15、溝15’は、検知用電極系8が露出している溝Cを形成し、溝16は、検知用電極系が露出していない溝Dを形成し、溝17は、検知用電極系が露出していない溝Bを形成する。
以上のようにして、各溝が形成された後、それらの底部に薬剤の塗布がされる。図8は、薬剤18が塗布された後を示す平面図である。この例では、4本の溝は互いに平行であるので、4種の薬剤18を、ノズル間隔が固定された4本のノズルを有する塗布機により、それぞれの溝に同時に塗布することができる。従って、生産性が高い。
薬剤18の塗布後、基板シート11を、折り曲げ線12を中心として折り曲げ、粘着剤層5’同士を貼り合わせる。その結果、貼り合わされた粘着剤層5’は、粘着剤層5を形成し、溝Aと溝Dは反応部9を形成し、溝Bと溝Cは反応部10を形成し、前記図1の例のセンサチップが得られる。
図9〜図10は、前記図3の例のセンサチップの製造方法の各製造工程を示す説明図である。検知用電極系27、28の形成までは、前記図1の例の場合と同様である。従って、説明を省略する。
検知用電極系27、28の形成後は、その上に、スクリーン印刷によりレジスト材層24、26が形成される。図9(a)は、レジスト材層24、26が形成された後を示す平面図であり、図9(b)は、レジスト材層24、26が形成された後を示す側面図である。図9(b)より明らかなように、レジスト材層24、26は、それぞれ検知用電極系27、28が露出している溝34、溝35を有するように形成されているが、図9(a)より明らかにように、溝34、溝35は、互いに平行ではあるが、基板シートの側面に対し垂直ではない。
レジスト材層24、26を形成後、その上に粘着剤層25’が形成される。図10(a)は、粘着剤層25’が形成された後を示す平面図であり、図10(b)は、粘着剤層25’が形成された後を示す側面図である。図10より明らかなように、粘着剤層25’は、溝34、溝35と重なる位置に溝34’、溝35’を有するように、かつ折り曲げ線32を軸として溝34と対称となる位置に溝36を形成するように、又かつ折り曲げ線32を軸として溝35と対称となる位置に溝37を形成するように、形成されている。又溝34と溝37、溝35と溝36は、センサチップの1側面において接続しており、両者でV字を形成している。
このような粘着剤層25’も、スクリーン印刷により形成することができる。粘着剤層25’が形成された結果、溝34、溝34’は検知用電極系27が露出している溝Aを形成し、溝35、溝35’は検知用電極系28が露出している溝Cを形成し、溝36は検知用電極系が露出していない溝Dを形成し、溝37は検知用電極系が露出していない溝Bを形成する。
以上のようにして、各溝が形成された後、それらの底部に薬剤の塗布がされる(図示されていない。)。この例では、溝Aと溝C、溝Bと溝Dが互いに平行なので、ノズル間隔が固定された2本のノズルを有する塗布機により、それぞれの溝に同時に塗布することができる。
薬剤の塗布後、基板シート31を、折り曲げ線32を中心として折り曲げ、粘着剤層25’同士を貼り合わせる。その結果、貼り合わされた粘着剤層25’は、粘着剤層25を形成し、溝Aと溝Dは反応部29を形成し、溝Bと溝Cは反応部30を形成し、前記図3の例のセンサチップが得られる。
図11は、図3の例のセンサチップを2つ組み合わせ、1枚の基板シートから2組の検知用電極系と4本の反応部と、2つの試料導入口を有する複合センサチップの例を示す平面図である。図12は、この例のセンサチップの製造工程を示す説明図であるが、図11の例のような複雑な形状のセンサチップも、図12のような基板から、図9〜図10で述べた手法と同様の工程で作製することができる。
図13は、製造方法の態様2及び3の一製造工程を示す。図13(a)は、被覆層ア41が形成された後を示す平面図であり、図13(b)は、被覆層ア41が形成された後を示す側面図である。被覆層ア41には、折り曲げ線42から等しい距離に溝43、44が形成されている。溝の形成以前の工程や使用する材料、薬剤の塗布等の方法等は、前記の例と同様である。
その後、製造方法の態様2においては、被覆層ア41は、部材イ45により被覆される。図14は、部材イ45により被覆された後を示す説明図(側面図)である。部材イ45により被覆された後、得られた積層体は折り曲げ線42に沿って折り曲げられ部材イ45の露出面同士が貼り合わされ、本発明のセンサチップが製造される。図15は、このようにして製造されたセンサチップの側面図である。
製造方法の態様3においては、被覆層ア41を、部材イ46の両面に貼り合わすように折り曲げ、本発明のセンサチップが製造される。図16は、このようにして製造されたセンサチップの側面図である。
なお、部材イとしては、被覆層アと同じ材質から形成されるものでもよい。又、部材イの溝の形成部分の巾を、被覆層アの巾より小さくすると、製造されるセンサチップの反応部の試料導入口部分に窪みが形成され、試料の導入を円滑にすることができる。
なお、被覆層ア41に形成されている溝43、44が、折り曲げ線42から異なった距離にある場合は、部材イ45による被覆をせずに、又は部材イ46を用いずに折り曲げ、被覆層ア41の露出面同士を貼り合わす方法によっても、本発明のセンサチップが製造される。
図3及び図4に示されたセンサチップにおいては、その試料導入口は、長辺側に配設されているが、試料導入口を短辺側に配設することも可能である。短辺側に配設することにより、試料導入口を、血液等の微量な試料にあてがいやすくなり試料採取がより容易となる場合がある。
図17〜図18は、2つの反応部を有し、これらの反応部の一方の開口部、すなわち試料導入口が互いに接続しており、かつこの試料導入口が短辺側に配設されているセンサチップの製造方法についての説明図である。
図17に示されるように、先ず、基板シート51を略2等分する折り曲げ線59で分けられた各基板の両方に、それぞれ検知用電極系52a、b(リード線部を含む)が形成される。検知用電極系52a、bのそれぞれは、対極、作用極の対からなり、これらは、折り曲げ線59に平行に形成されている。ここで、基板シート51や検知用電極系52a、bの材質としては、前記の例と同様なものを用いることができる。検知用電極系52a、bの形成も、前記の例と同様にして(スクリーン印刷等)行うことができる。
検知用電極系52a、bの形成後は、その上にレジスト材層53が形成される。図18は、レジスト材層53が形成された後の様子を示す。図18に示されるように、レジスト材層53は、溝54a、bを有するように形成されており、溝54a、b内に検知用電極系52a、bがそれぞれ露出している。レジスト材層53を形成後、その上に粘着剤層(レジスト材層と重なるので、図示せず)が溝54a、bを有するように形成される。その後、溝54a、bの底部に薬剤(図示せず)の塗布がされる。
薬剤の塗布後、基板シート51を、折り曲げ線59を中心として折り曲げ、粘着剤層同士を貼り合わせる。その結果、図19、図20に示すセンサチップが得られる。
ここで、図19は、基板シート51に挟装されたセンサチップ内部の透視図である。ここで、検知用電極系52aは、レジスト材層53の(紙面に対して)上側にあり、その先端が溝54a内に露出している。また、検知用電極系52bは、レジスト材層53の(紙面に対して)下側にあり、その先端が溝54b内に露出している。溝54a、bは、それぞれ反応部を形成し、この反応部内に試料導入口56a、bより試料が導入され、反応が行われる。
図20は、センサチップの平面図である。レジスト材層53や反応部、検知用電極系52a、bは、図に示されるように、基板51で覆われているが、検知用電極系52bのリード線の端部は、基板51に形成された切れ込み55により露出している。センサチップが検出器に接続されたとき、この露出しているリード線の端部が、検出器の端子と接続し、測定が行なわれる。図20における裏面においても、同様に、検知用電極系52aのリード線の端部が露出しており、この部分で検出器の端子と接続し、測定が行なわれる。
本発明のセンサチップの一例を示す側面図である。 本発明のセンサチップの一例を示す平面図である。 本発明のセンサチップの他の一例を示す側面図である。 本発明のセンサチップの他の一例を示す平面図である。 本発明のセンサチップの製造方法の一工程を示す説明図である。 本発明のセンサチップの製造方法の一工程を示す説明図である。 本発明のセンサチップの製造方法の一工程を示す説明図である。 本発明のセンサチップの製造方法の一工程を示す説明図である。 本発明のセンサチップの製造方法の一工程を示す説明図である。 本発明のセンサチップの製造方法の一工程を示す説明図である。 本発明のセンサチップの他の一例を示す平面図である 本発明のセンサチップの製造方法の一工程を示す説明図である。 本発明のセンサチップの製造方法の一工程を示す説明図である。 本発明のセンサチップの製造方法の一工程を示す説明図である。 本発明のセンサチップの他の一例を示す側面図である。 本発明のセンサチップの他の一例を示す側面図である。 本発明のセンサチップの製造方法の一工程を示す説明図である。 本発明のセンサチップの製造方法の一工程を示す説明図である。 本発明のセンサチップの他の一例を示す透視図である。 本発明のセンサチップの他の一例を示す平面図である。
符号の説明
1、2、21、22、51 基板
3、23 スペーサ層
4、6、24、26、53 レジスト材層
5、5’、25、25’ 粘着剤層
7、8、27、28、52 検知用電極系
9、10、29、30 反応部
11、31 基板シート
12、32、42、59 折り曲げ線
14、14’、15、15’、16、17 溝
34、34’、35、35’、36、37 溝
43、44、54 溝
41 被覆層ア
45、46 部材イ

Claims (12)

  1. 互いに対向する2枚の基板、該2枚の基板間に挟装されるスペーサ層、及び該2枚の基板それぞれのスペーサ層側の表面に設けられた検知用電極系を有し、該スペーサ層中に、試料導入口を少なくとも1つ有する中空部であって、一方の基板上の検知用電極系のみが露出している反応部が、それぞれの検知用電極系について形成されていることを特徴とするセンサチップ。
  2. 2以上の試料導入口が、互いに近接又は接続していることを特徴とする請求項1に記載のセンサチップ。
  3. 前記2枚の基板が互いに同じ材質及び厚みを有し、並びに、前記2枚の基板と平行でかつ前記2枚の基板から等距離にある平面に対し、前記スペーサ層の材質及び形状が対称であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセンサチップ。
  4. バイオセンサチップであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のセンサチップ。
  5. 互いに対向する2枚の基板、該2枚の基板間に挟装され複数の反応部を含むスペーサ層、及び該2枚の基板それぞれのスペーサ層側の表面に設けられた検知用電極系を有し、該2枚の基板が、一枚の基板シートを折曲げて形成されているセンサチップの製造方法であって、
    該基板シート表面上の、折曲げ線のそれぞれの側に検知用電極系を形成し、
    該検知用電極系のそれぞれを、スペーサ層を形成する部材で被覆して被覆層を形成し、
    折曲げ線の両方の側の該被覆層に、検知用電極系を露出しかつ該被覆層の外縁に到達する溝を形成し、
    その後、該折曲げ線を中心とし、該被覆層同士を貼り合せるように折曲げることを特徴とするセンサチップの製造方法。
  6. 互いに対向する2枚の基板、該2枚の基板間に挟装され複数の反応部を含むスペーサ層、及び該2枚の基板それぞれのスペーサ層側の表面に設けられた検知用電極系を有し、該2枚の基板が、一枚の基板シートを折曲げて形成されているセンサチップの製造方法であって、
    該基板シート表面上の、折曲げ線のそれぞれの側に検知用電極系を形成し、
    該検知用電極系のそれぞれを、スペーサ層を形成する部材で被覆して被覆層を形成し、
    折曲げ線の一方の側の該被覆層に、検知用電極系を露出しかつ該被覆層の外縁に到達する溝A及び検知用電極系を露出することなくかつ該被覆層の外縁に到達する溝Bを形成し、該折曲げ線の他方の側の該被覆層の、折曲げ線より溝Bと同じ距離に、検知用電極系を露出しかつ該被覆層の外縁に到達する溝C、及び折曲げ線より溝Aと同じ距離に、検知用電極系を露出することなくかつ該被覆層の外縁に到達する溝Dを形成し、
    その後、該折曲げ線を中心とし、該被覆層同士を貼り合せるように折曲げることを特徴とするセンサチップの製造方法。
  7. 前記被覆層が2以上の層からなり、該2以上の層中の検知用電極系に接触する側の層を、溝A及び溝Cに対応する位置に検知用電極系が露出する溝を有するように形成し、他の層を、溝A、溝B、溝C及び溝Dに対応する位置に溝を有するように形成することを特徴とする請求項6に記載のセンサチップの製造方法。
  8. 互いに対向する2枚の基板、該2枚の基板間に挟装され複数の反応部を含むスペーサ層、及び該2枚の基板それぞれのスペーサ層側の表面に設けられた検知用電極系を有し、該2枚の基板が、一枚の基板シートを折曲げて形成されているセンサチップの製造方法であって、
    該基板シート表面上の、折曲げ線のそれぞれの側に検知用電極系を形成し、
    該検知用電極系のそれぞれを、スペーサ層を形成する部材で被覆して被覆層アを形成し、該被覆層アの折曲げ線の両側のそれぞれに、検知用電極系を露出しかつ該被覆層の外縁に到達する溝を形成し、
    該被覆層ア及び折曲げ線の両側に形成された溝を、スペーサ層を形成する部材イで被覆し、
    その後、該折曲げ線を中心とし、該部材イの露出面同士を貼り合せるように折曲げることを特徴とするセンサチップの製造方法。
  9. 互いに対向する2枚の基板、該2枚の基板間に挟装され複数の反応部を含むスペーサ層、及び該2枚の基板それぞれのスペーサ層側の表面に設けられた検知用電極系を有し、該2枚の基板が、一枚の基板シートを折曲げて形成されているセンサチップの製造方法であって、
    該基板シート表面上の、折曲げ線のそれぞれの側に検知用電極系を形成し、
    該検知用電極系のそれぞれを、スペーサ層を形成する部材で被覆して被覆層アを形成し、該被覆層アの折曲げ線の両側のそれぞれに、検知用電極系を露出しかつ該被覆層の外縁に到達する溝を形成し、
    その後、該折曲げ線を中心として折曲げ、折曲げ線の両側にある被覆層アの露出面のそれぞれを、スペーサ層を形成する部材イの両面に貼り合せることを特徴とするセンサチップの製造方法。
  10. 該被覆層アの折曲げ線の両側のそれぞれに形成される溝が、該折曲げ線より互いに等距離の位置に形成されることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のセンサチップの製造方法。
  11. 折曲げ線を中心として折曲げる前に、溝の少なくとも1つに薬剤が塗布されていることを特徴とする請求項5ないし請求項10のいずれかに記載のセンサチップの製造方法。
  12. 少なくとも2本以上の溝が互いに平行であり、この互いに平行な溝のそれぞれに、ノズル間隔が固定された複数のノズルを有する塗布機によって薬剤を同時に塗布することを特徴とする請求項5ないし請求項11のいずれかに記載のセンサチップの製造方法。
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