JP2006182868A - 活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境汚染が少なく、貯蔵安定性に優れ、かつエネルギー線感度が高く、短時間で実用的な塗膜強度を得る水性の活性エネルギー線硬化型組成物を提供する。
【解決手段】(a)環状スルホニウム基とフェノール性ヒドロキシル基を含有する少なくとも1個の芳香環と2個以上のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物と(b)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を必須成分として反応せしめることによって得られる反応生成物をさらに双性イオン化することによって得られる水分散性ポリウレタンを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物であり、さらに(a)、(b)と(c)少なくとも1個の不飽和二重結合と少なくとも1個のヒドロキシル基を有する化合物を必須成分として反応せしめることによって得られる反応生成物をさらに双性イオン化することによって得られる水分散性ポリウレタンと(2)光重合開始剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、活性エネルギー線、特に紫外線照射によって硬化する水性の樹脂組成物であり、さらには水性でありながら硬化後は疎水性の塗膜となる水性樹脂組成物であり、耐久性の優れた塗料、印刷用インキ、インクジェット記録用インキ、接着剤、コーティング材などのバインダーとして有用な活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物に関する。
活性エネルギー線硬化性の樹脂は、実質的に有機溶剤を含有していないため、塗工、印刷での使用時の作業環境の安全性と衛生性に優れている。さらに、硬化速度が速く、生産性向上と省エネルギーの観点から有利のため、無公害の塗料、インキ、コーティング材用の樹脂組成物として期待されており、従来の有機溶剤系塗料、インキ、コーティング材に代わって徐々にその実用化の領域が広がっている。
しかし、従来の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、概して高粘度であるので、塗工粘度やレオロジー特性の調節のために、多量の反応性希釈剤を使用するか、又は有機溶剤を併用することで対処されているのが現状である。反応性希釈剤を多量に使用した場合には、皮膚刺激、過敏性障害や硬化性低下、硬度などの硬化物物性低下などの問題を招き、また、有機溶剤を併用する場合には大気汚染や火災の危険性が高くなり、また労働衛生上好ましくない。
活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物は、上に述べた従来の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の欠点である高粘度、安全性と衛生性の問題を一挙の解決するとともに、塗膜の総合的性能向上、原材料のコスト削減が図れるため、近年特に注目されている。
活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物としてこれまで提案されているものとしては、1.水溶性樹脂型、2.エマルジョン型、3.コロイダルディスパージョン型、4.強制乳化型などがある。これらの中で代表的な素材としては、上記2のタイプの属するウレタンアクリレートディスパージョンが挙げられる。このウレタンアクリレートディスパージョンは、他の水溶性樹脂型、エマルジョン型、強制乳化型に比べると、塗工適性、塗膜性能が総合的に優れている。
ウレタンアクリレートディスパージョンは公知の方法で合成できる。ジイソシアネートとジオールと、カルボン酸を含むジオールとを反応させて、イソシアネート基を末端に有するカルボキシル基含有ポリウレタンオリゴマーを調整した後、ヒドロキシ基含有アクリルモノマーを反応させ、中和後に水中に分散させることによって、分子末端に不飽和二重結合を含有するウレタンアクリレートの水分散液が得られる。
従来技術によるウレタンアクリレートディスパージョンに基づくコーティング組成物においては、水分散化のために必須であるカルボン酸塩またはカルボン酸が硬化後にも存在しているために、活性エネルギー線を照射して架橋させて得られる塗膜の耐水性などの耐久性が不十分であるという問題がある。本発明の目的は、従来技術では達成が困難である、活性エネルギー線の照射による硬化後に優れた耐久性を与える、活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、環状スルホニウム基とフェノール性ヒドロキシル基を含有する少なくとも1個の芳香環と2個以上のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物と(b)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を必須成分として反応せしめることによって得られる反応生成物をさらに双性イオン化することによって得られる水分散性ポリウレタンを用いることによって、従来達成できなかった課題を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
芳香族環状スルホニウム双性イオンは、本来親水性であるが、活性エネルギー線照射により重合反応を起こして水不溶化すると同時に、イオン性を失うために疎水性に変化することが知られている。すなわち、親水性が疎水性に変化し、更に架橋構造を形成する性質を有している。特公平1−57778、特表2000−502463、米国特許4118297に開示されている。しかし、芳香族環状スルホニウム双性イオンを含有する感光性のウレタンエマルジョンやディスパージョンについての報告はこれまでなく、本発明の活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物は新規な材料である。
すなわち、本発明は、(a)環状スルホニウム基とフェノール性ヒドロキシル基を含有する少なくとも1個の芳香環と2個以上のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物と(b)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を必須成分として反応せしめることによって得られる反応生成物をさらに双性イオン化することによって得られる水分散性ポリウレタンを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物であり、さらに(a)、(b)と(c)少なくとも1個の不飽和二重結合と少なくとも1個のヒドロキシル基を有する化合物を必須成分として反応せしめることによって得られる反応生成物をさらに双性イオン化することによって得られる水分散性ポリウレタンと(2)光重合開始剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物に関する。
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、親水性基である芳香族環状スルホニウム双性イオンを含有するために、自己乳化性を有し、安定な水分散体となる。そして、芳香族環状スルホニウム双性イオンは活性エネルギー線照射により疎水性基に変換するために、得られた硬化塗膜には親水性基がないか、又は少なく、又架橋構造を形成するために、耐水性、耐摩耗性に優れた塗膜を形成することができる。このため環境汚染の少ない有用な水性バインダー組成物とすることができる。
以下、本発明の活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物について詳細に説明する。本発明の水分散性ポリウレタンは、例えば次の方法で製造される。まず、有機溶媒中で(a)環状スルホニウム基とフェノール性ヒドロキシル基を含有する少なくとも1個の芳香環と2個以上のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物と(b)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を重付加反応させ、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造した後、末端のイソシアネート基を、(c)少なくとも1個の不飽和二重結合と少なくとも1個のヒドロキシル基を有する化合物と反応させて活性イソシアネート基を封止する。続いて、水を加えることによってO/W型のエマルジョンへ転換させる。続いて、減圧下に有機溶剤と一部の水を回収することによって水分散性ウレタンを得る。さらに適当なイオン交換樹脂で処理するか、またはナトリウムメトキシドを使用して中和することにより双性イオン化して本発明の水分散ウレタンを得ることができる。水を加えることによってエマルジョンへ転換させた後、さらに2級アミノ基またはヒドラジド基を有する化合物によって鎖延長を行い、最後に減圧下に有機溶剤と一部の水を回収することによって本発明の水分散性ウレタンを得ることもできる。
本発明において使用される環状スルホニウム基とフェノール性ヒドロキシル基を含有する双性イオンは下記構造式1;
Figure 2006182868
(式中、Arは置換または未置換芳香族基であり、XおよびYは独立に置換または未置換メチレン基であり、nは1または2である。)で示される。この式中、Arは芳香族系中に6〜18個の炭素原子を有する置換または未置換の芳香族炭素環式または複素環式基(例えばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ピレニル、クリセニル、トリフェニル、ベンズアントリルおよびビフェニル)である。好ましくは、Arは置換または未置換のフェニルまたはナフチル基である。
本発明において使用される環状スルホニウム基とフェノール性ヒドロキシル基を含有する少なくとも1個の芳香環と2個以上のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物としては、〔化1〕に示した双性イオンの前駆体を含有するジオールが挙げられる。具体的には、ジヒドロキシベンゼンやジヒドロキシナフタレンと等モルのジメチロールプロピオン酸クロリドの反応生成物を、テトラヒドロチオフェン1−オキシドおよび塩化水素と反応させるか、又はテトラヒドロチオフェンおよび塩素と反応させることによって合成できる化合物などが挙げられる。好ましい具体例としては、化合物1〜4が挙げられる。
Figure 2006182868
Figure 2006182868
Figure 2006182868
Figure 2006182868
本発明の環状スルホニウム基とフェノール性ヒドロキシル基を含有するポリヒドロキシ化合物の使用量は、自己乳化性と硬化塗膜の耐久性や光感度を考慮すると、水分散性ポリウレタンの乾燥重量に対して、30〜1000ミリモル/kg、好ましくは50〜600ミリモル/kg、さらに好ましくは80〜500ミリモル/kgである。
本発明において使用される、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4´−ジベンジルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂肪族または脂肪環族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートも環状三量体などのトリイソシアネートなどが挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。
本発明において使用される、少なくとも1個の不飽和二重結合と少なくとも1個のヒドロキシル基を有する化合物としては次のものが挙げられる。ヒドロキシル基および少なくとも1個の不飽和二重結合を有する好適な化合物は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。不飽和二重結合を2個以上導入するためには、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの多価アルコールのポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。少なくとも2個以上のヒドロキシル基を有する好適なポリオールを用いると、不飽和二重結合はポリウレタン鎖の末端だけでなく、ポリマー骨格の側鎖にも組み込むことができる。この目的に好適な化合物として、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
本発明の水分散性ポリウレタンの製造において、必須成分である、環状スルホニウム基とフェノール性ヒドロキシル基を含有する少なくとも1個の芳香環と2個以上のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物、2個以上のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、少なくとも1個の不飽和二重結合と少なくとも1個のヒドロキシル基を有する化合物に加えて、硬化塗膜の皮膜形成性、弾性率などの物性をコントロールするために、高分子量および、又は低分子量のポリオール、有利にはジオールが使用される。好ましいポリオールの例として、多価アルコールと多塩基酸のエステルから選ばれるポリエステルポリオール、ヘキサメチレンカーボネート。ペンタメチレンカーボネートなどのポリカーボネートジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルジオール、ポリカプロラクンジオール、ポリブチロラクトンジオールなどのポリラクトンジオール、ポリヒドロキシオレフィンなどが挙げられる。
本発明において使用される光重合開始剤としては、活性エネルギー線の照射によって、ビニル重合を開始できる機能を有する物質であれば特に制限されるものではない。具体例としては、2,2−ジメトキシ−ジフェニルメタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、1−[4−2−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、鉄アレン錯体、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−イソプロピリチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントンなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではない。
光重合開始剤の配合量は、水分散性ポリウレタンおよび分子内に2個以上の不飽和二重結合を有する化合物の乾燥重量に対して、0〜10重量%であることが好ましい。
本発明において使用される、分子内に2個以上の不飽和二重結合を有する化合物としては、一般に紫外線硬化性の塗料、インキ、レジストなどで使用されている(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが使用できる。これらの中で好ましいものは、トリメチロールプロマンのプロピレンオキサイド3モル付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロマンのエチレンオキサイド3モル付加物のトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレートなどの不飽和オリゴマー、不飽和ポリエステルなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるわけではない。
分子内に2個以上の不飽和二重結合を有する化合物の配合量は、水分散性ポリウレタンの乾燥重量に対して、0〜50重量%であることが好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物は、更に密着性、硬度などの特性を向上する目的で必要に応じて、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルムニウム、雲母粉などの公知の無機充填剤が使用できる。その使用量は、本発明の組成中の0〜60重量%が好ましく、特に好ましくは5〜40重量%である。
必要に応じて、着色顔料や染料などの色材を使用できる。着色顔料としては、次のものを挙げることができる。イエロー顔料としては、ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、55、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、128、138、139、150、151、154及び180などを挙げることができる。マゼンタ顔料としては、ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57:1、57(Sr)、57:2、122、123、168、184、202、238等を挙げることができる。シアン顔料としては、ピグメントブルー1、2、3、13、15、16、22、60、及びバットブルー4及び60等を挙げることができる。また黒顔料としてはカーボンブラックを好適に用いることができる。
染料としては、カチオン性の染料を好適に用いることが次のものを挙げることができる。本発明における塩基性染料としてはアクリジン系、メチン系、ポリメチン系、アゾ系、アゾメチン系、キサンテン系、チオキサンテン系、オキサジン系、チオキサジン系、トリアリルメタン系、シアニン系、アントラキノン系、フタロシアニン系等公知の塩基性染料を用いることができる。特にプロセスカラ−の三原色用としては、イエロ−としてC.I.Basic Yellow 11、12、13、21、23、24、33、40、51、54、63、71、87が、マゼンタとしてC.I.Basic Red 13、14、45、19、26、27、34、35、36、38、39、42、43、45、46、50、51、52、53、56、59、63、65、66、71、C.I.Basic Violet 7、11、14、15、16、18、19、20、28、29、30、33、34、35、36、38、39、41、44が、シアンとしてC.I.Basic Blue 3、22、33、41、45、54、63、65、66、67、75、77、85、87、88、109、116が好ましく用いられる。
色材の特殊な例として、染料にて着色されたポリマーの微粒子を用いることが出来る。より具体的には カチオン染料にて染着されたアニオン基含有ポリマーの微粒子、酸性染料、直接染料で染着されたカチオン基含有ポリマー、あるいは油性染料、分散染料などで着色されたポリマー粒子を用いることが可能である。
更にハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ターシャル−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどの重合禁止剤、アスベスト、オルベン、ベントン、モンモリロナイトなどの公知の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤および又は、レベリング剤、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤などの密着性付与剤のような公知の添加剤を用いることができる。また、他の光重合性オリゴマー類の強制分散体、二重結合含有の水性アクリル樹脂及び他の水性ウレタン樹脂、水性アクリル樹脂などの公知のバインダー樹脂を適宜の範囲で混合して使用できる。
本発明の組成物の媒体は基本的には水である。さらに、水に必要に応じて水溶性有機化合物を添加して得られる水性媒体を好適に用いることができる。水溶性有機化合物は、主に、組成物に不揮発性を与え、粘度を低下させ、かつ被塗布基材への組成物の濡れ性を確保するために用いられるものであり、かかる目的に適合するものであれば利用できる。なお、被塗布基材が非吸収性である場合は、水性媒体は水のみで形成するか、または水溶性有機溶媒を用いる場合では、水性媒体の蒸発が容易か、あるいは水性媒体全てが硬化膜中に取り込まれるものであることが好ましい。
水溶性有機化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、セプタノール、C8以上の高級アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジメチルスルホキシド、ダイアセトンアルコール、グリセリンモノアリルエーテル、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール300、チオジグリコール、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルフォラン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、β−ジヒドロキシエチルウレア、ウレア、アセトニルアセトン、ペンタエリスリトール、1,4−シクロヘキサンジオール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、グリセリンモノアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリントリアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノール、1,2−シクロヘキサンジオール、1−ブタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−ヘキセン−2,5−ジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の組成物は、必要な成分を水性媒体中に配合することで調製することができる。各成分の混合順序は特に限定されないが、混合は速やかに不均一な状態を長く保持することなく行うことが好ましい。
本発明の組成物は、ハケ塗り、スプレー塗装、カーテンコート、で一夫コート、スピンコート、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等の定法により塗膜化可能である。処理装置としては、これら塗布機に活性エネルギー線照射装置を装着した構造のものが好適に利用できる。
活性エネルギー線は、塗布部を出た被塗布機剤の塗布面に上部あるいは下部から照射される。透明な被塗布基材の場合は必要に応じて上下両方からの照射も効果的である。塗布から照射エリアへの時間間隔は、組成物に含まれる水分の量により調整できることが必要である。また塗布エリアから活性エネルギー線照射装置との間に、加熱乾燥を行う機構を設置することも可能である。
照射装置に用いる活性エネルギー線源としては、水銀の蒸気圧が点灯中で1〜10Paであるような、いわゆる低圧水銀ランプ、あるいはそれ以上の圧力を有する高圧水銀ランプ、さらに高い圧力の超高圧水銀灯、蛍光体が塗布された水銀灯、レーザー、蛍光管、冷陰極管、その他の放電管等を用いることができ、特に水銀ランプが実用上好ましい。また、いわゆる254nm付近にピークを持つ殺菌灯を用いることもできる。これらの水銀ランプの活性エネルギー線領域の発光スペクトルは184〜450nmの範囲であり、組成物中の活性エネルギー線重合性化合物を効率的に反応させるのに適している。水銀ランプには、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、クセノンフラッシュランプ、ディープUVランプ、UVレーザーなどが実用化されており、発光波長領域としては上記範囲を含むので、電源サイズ、入力強度、ランプ形状などに応じて適宜選択して用いることができる。光源は、硬化型組成物の吸収波長との適性を考慮して選択することが好ましい。
必要な活性エネルギー線強度は、紫外部のエネルギー総量が1〜1000mW/cm2程度のものがより良好な重合速度を得る上で望ましい。照射時間は0.1〜100秒の範囲が実用的である。積算照射量が不足していると固着した組成物の被塗布基材への付着力が十分に出ない場合があり、必要な積算照射量を考慮して照射処理を行うのが好ましい。組成物を活性エネルギー線で硬化させて被塗布基材に固着させることで、良好な定着、擦過性、耐水性などが得られる。それとともに、被塗布基材自体のカール、コックルなどの変形も抑制され、取扱性、保存性を向上させることが可能となる。
(作用)
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、親水性基である芳香族環状スルホニウム双性イオンを含有するために、自己乳化性を有し、安定な水分散体となる。しかも、芳香族環状スルホニウム双性イオンは活性エネルギー線照射により疎水性基に変換して架橋し、また光重合による架橋も起こるために、得られた硬化塗膜には親水性基がないか又は少なく、かつ強固な架橋構造を形成するので、耐水性、耐摩耗性に優れた塗膜を形成することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
合成例1
化合物1の合成
カテコール20g(0.18モル)をジオキサン450mlに溶解させた。この溶液に水酸化ナトリウム18.2g(0.45モル)および硫化水素テトラブチルアンモニウム0.46g(0.001モル)を加えた。この混合物に、150mlのジオキサン中のジメチロールプロピオン酸クロリド27.5g(0.18モル)を滴下ロートを用いて加えた。この反応混合物を室温で一晩攪拌した後、沈殿物をろ別し、ろ液のジオキサンを蒸発させて前駆体粗生成物を得た。この粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製して gの化合物1の前駆体を得た。この前駆体3gを無水メタノール20mlに溶解させ、そして溶液を0℃に冷却した。その溶液に塩化水素ガスを30分間通気し、そして温度が0℃に保たれるようにメタノール10ml中のテトラヒドロチオフェン1.3gを徐々に加えた。その溶液に塩化水素ガスをさらに1時間通気した。得られた生成物を水中に析出させ、ろ過し、そして乾燥させて4gの化合物1を得た。
合成例2〜4
化合物2〜4の合成
合成例1のカテコールの代わりに、1,2−ジヒドロ−5−メチルベンゼン、ヒドロキノン、1,5−ジヒドロナフタレンを用いて、同様の操作を行って化合物2〜4を得た。
合成例5
ポリウレタン分散液1
下記組成の原料を還流冷却器、温度計、窒素ガス導入口とスターラーを備えた四つ口フラスコに、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学工業社製PTG−850SN,分子量850)293g、化合物1を69.7g、ハイドロキノン0.35g、酢酸エチル150gを投入し、空気中で攪拌しながら90℃まで昇温して均一に溶解した。
続いて、122gのイソホロンジイソシアネート、0.9gの有機スズ触媒KS−1260(共同薬品株式会社製)および0.2gのアミン系触媒U−CAT―SA102(サンアプロ株式会社製)を添加し、90±5℃で2時間反応させた。得られた溶液を水中に析出させ、ろ過し、乾燥させた。得られたポリマーを無水メタノールに溶解させ、そしてナトリウムメトキシドにより中和し、ポリマーを水中に析出させ、ろ過し、そして乾燥させた。続いて、150gのテトラヒドロフラン150gに溶解し、イオン交換水565gを加え、次に減圧下でテトラヒドロフランを溜去した。さらに、水を添加して固形分25%になるように希釈した後、濡れ改質剤ポリフローKL−260(共栄社化学株式会社製)0.1重量%を添加して、ポリウレタン水性分散液1を得た。
合成例6
ポリウレタン分散液2
下記組成の原料を還流冷却器、温度計、窒素ガス導入口とスターラーを備えた四つ口フラスコに、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学工業社製PTG−850SN,分子量850)293g、化合物1を69.7g、ハイドロキノン0.35g、酢酸エチル150gを投入し、空気中で攪拌しながら90℃まで昇温して均一に溶解した。
続いて、142gのイソホロンジイソシアネート、1.0gの有機スズ触媒KS−1260(共同薬品株式会社製)および0.2gのアミン系触媒U−CAT―SA102(サンアプロ株式会社製)を添加し、90±5℃で2時間反応させた。続いて、反応混合物に23gのアクリル酸2−エチルヘキシルを添加し、さらに2時間、90±5℃で反応を続けた。得られた溶液を水中に析出させ、ろ過し、乾燥させた。得られたポリマーを無水メタノールに溶解させ、そしてナトリウムメトキシドにより中和し、ポリマーを水中に析出させ、ろ過し、そして乾燥させた。続いて、150gのテトラヒドロフラン150gに溶解し、5.5gの光開始剤イルガキュアー907(チバスペシャルティーケミカル社製)を添加し、30分間攪拌を続けた。続いて、イオン交換水565gを加え、次に減圧下でテトラヒドロフランを溜去した。さらに、水を添加して固形分25%になるように希釈した後、濡れ改質剤ポリフローKL−260(共栄社化学株式会社製)0.1重量%を添加して、ポリウレタン水性分散液2を得た。
合成例7〜9
ポリウレタン分散液3、5、7
合成例5において、化合物1を69.7gの代わりに、化合物2を69.7g、化 合物
3を72.5g、化合物4を79.6g用いて、合成例5と同様にして、それぞれポ リウ
レタン分散液3、ポリウレタン分散液5、ポリウレタン分散液7を得た。
合成例10〜12
ポリウレタン分散液4、6、8
合成例6において、化合物1を69.7gの代わりに、化合物2を69.7g、化 合物
3を72.5g、化合物4を79.6g用いて、合成例6と同様にして、それぞれポ リウ
レタン分散液4、ポリウレタン分散液6、ポリウレタン分散液8を得た。
合成例13
ポリウレタン分散液9
イオン交換樹脂による処理をしない他は、合成例5と同様にしてポウレタン分散液9を得た。
合成例14
ポリウレタン分散液10
下記組成の原料を還流冷却器、温度計、窒素ガス導入口とスターラーを備えた四つ口フラスコに、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学工業社製PTG−850SN,分子量850)293g、ジメチロールプロピオン酸を23.6g、ハイドロキノン0.35g、酢酸エチル150gを投入し、空気中で攪拌しながら90℃まで昇温して均一に溶解した。続いて、122gのイソホロンジイソシアネート、0.9gの有機スズ触媒KS−1260(共同薬品株式会社製)および0.2gのアミン系触媒U−CAT―SA102(サンアプロ株式会社製)を添加し、90±5℃で2時間反応させた。続いて、20.2gのトリエチルアミンを加え、さらにイオン交換水565gを加えた。次に減圧下で酢酸エチルを溜去した。さらに、水を添加して固形分25%になるように希釈した後、濡れ改質剤ポリフローKL−260(共栄社化学株式会社製)0.1重量%を添加して、ポリウレタン水性分散液10を得た。
合成例15
ポリウレタン分散液11
下記組成の原料を還流冷却器、温度計、窒素ガス導入口とスターラーを備えた四つ口フラスコに、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学工業社製PTG−850SN,分子量850)293g、ジメチロールプロピオン酸を23.6g、ハイドロキノン0.35g、酢酸エチル150gを投入し、空気中で攪拌しながら90℃まで昇温して均一に溶解した。続いて、142gのイソホロンジイソシアネート、1.0gの有機スズ触媒KS−1260(共同薬品株式会社製)および0.2gのアミン系触媒U−CAT―SA102(サンアプロ株式会社製)を添加し、90±5℃で2時間反応させた。続いて、反応混合物に23gのアクリル酸2−エチルヘキシルを添加し、さらに2時間、90±5℃で反応を続けた。反応混合物を65℃まで冷却し、20.2gのトリエチルアミンを加え、5.5gの光開始剤イルガキュアー907(チバスペシャルティーケミカル社製)を添加し、30分間攪拌を続けた。この混合物にイオン交換水565gを加え、次に減圧下で酢酸エチルを溜去した。さらに、水を添加して固形分25%になるように希釈した後、濡れ改質剤ポリフローKL−260(共栄社化学株式会社製)0.1重量%を添加して、ポリウレタン水性分散液11を得た
実施例1
ポリウレタン分散液1を冷間圧延鋼板にバーコーターにて乾燥膜厚4g/m2となる
ように塗布した後、80℃で2分間乾燥した。超高圧水銀灯オーク社製ポリマープリンター3000を用いて、この被膜を紫外線照射して硬化させた。
実施例2〜8
ポリウレタン分散液1の代わりにポリウレタン分散液2〜8を用いる他は、実施例1と同様の操作を行い、硬化膜を得た。
比較例1〜3
ポリウレタン分散液1の代わりにポリウレタン分散液9〜11を用いる他は、実施例1と同様の操作を行い、硬化膜を得た。
表1に、各組成物の組成を示した。
Figure 2006182868
各試験方法は以下のとおりである。
(1)接着性
所定量の光照射を行ったサンプルを、JISの塗膜評価方法にあるK5600−5−6付着性(クロスカット法)によるセロテープ(登録商標)剥離試験により評価した。
(2)耐水性
所定量の光照射を行ったサンプルを1時間、80℃の水に浸漬し、取り出した後に、前述の接着性試験を行い、耐水性の評価とした。
(3)耐薬品性
酢酸エチルをガーゼにしみ込ませ、このガーゼを用いて試験片の表面を擦るラビングテストを行い、塗膜外観の変化を見た。評価結果は以下のように表記した。
評価基準;
◎:非常に良好
○:良好
△:やや悪い
×:不良
得られた評価結果を表2に示す。
Figure 2006182868
以上の結果から、芳香族環状スルホニウム双性イオンを含有するポリウレタンに基づく活性エネルギー線硬化型組成物の塗膜は、紫外線照射により塗膜の接着性、耐水性、耐薬品性が明らかに優れていることが解る。
本発明の水性活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線に対する感度が高く、水性でありながら、耐水性、耐摩耗性に優れた塗膜を形成することができ、画像記録用などのインクやコーティング剤などの用途で、環境汚染の少ない有用な水性バインダー組成物として利用が期待できるものである。

Claims (3)

  1. (1)(a)環状スルホニウム基とフェノール性ヒドロキシル基を含有する少なくとも1個の芳香環と2個以上のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物と(b)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を必須成分として反応せしめることによって得られる反応生成物をさらに双性イオン化することによって得られる水分散性ポリウレタンを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物。
  2. (1)(a)環状スルホニウム基とフェノール性ヒドロキシル基を含有する少なくとも1個の芳香環と2個以上のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物、(b)1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、(c)少なくとも1個の不飽和二重結合と少なくとも1個のヒドロキシル基を有する化合物を必須成分として反応せしめることによって得られる反応生成物をさらに双性イオン化することによって得られる水分散性ポリウレタンと(2)光重合開始剤を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物。
  3. 分子内に2個以上の不飽和二重結合を有する化合物を更に含むことを特徴とする請求項2記載の活性エネルギー線硬化型水性樹脂組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011081044A (ja) * 2009-10-02 2011-04-21 Tokyo Ohka Kogyo Co Ltd レジスト組成物、レジストパターン形成方法、新規な化合物及び酸発生剤
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JP2011081044A (ja) * 2009-10-02 2011-04-21 Tokyo Ohka Kogyo Co Ltd レジスト組成物、レジストパターン形成方法、新規な化合物及び酸発生剤
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