以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図2は本発明の一実施形態に係るノンストップ作動制御装置が適用されたクローラ式の高所作業車1である。この高所作業車1は、走行体(クローラ走行体)10の上部に旋回体20を有し、旋回体20の上部にはブーム(伸縮ブーム)30がフートピン23を介して起伏自在に取り付けられた構成を有している。
旋回体20は旋回体20の内部に設けられた旋回モータ(油圧モータ)21を回転作動させることにより走行体10に対して水平面内360度の範囲で旋回動させることができ、ブーム30は旋回体20との間に設けられた起伏シリンダ(油圧シリンダ)22を伸縮作動させることにより旋回体20に対して起伏動させることができる。ブーム30は基端ブーム30a、中間ブーム30b及び先端ブーム30cが入れ子式に構成されており、ブーム30の内部に設けられた伸縮シリンダ(油圧シリンダ)31を伸縮作動させることにより長手方向に伸縮動させることができる。
ブーム30の先端部には垂直ポスト32が設けられており、この垂直ポスト32には作業者搭乗用の作業台40が回動自在に取り付けられている。作業台40は作業台40の内部に設けられた首振りモータ(油圧モータ)41を回転作動させることにより垂直ポスト32に対して水平面内で首振り動させることができる。なお、垂直ポスト32は図示しない平衡装置により常時垂直姿勢に保持されるため、結果として作業台40の床面は常に水平姿勢が保たれる。
作業台40には上部操作装置50が設けられており、ここにはブーム30の起伏、伸縮及び旋回操作を行うブーム操作レバー51と、作業台40の首振り操作を行う作業台操作レバー52とが設けられている(図1参照)。このため作業台40に搭乗したオペレータ(作業者)OPは、ブーム操作レバー51を操作してブーム30を起伏、伸縮、旋回させ、また作業台操作レバー52を操作して作業台40を垂直ポスト32まわりに首振り作動させることにより、自身の乗った作業台40を自在に移動させて、所望の位置で高所作業を行うことが可能である。
走行体10は、フレーム11の左右両側にクローラ走行装置12を一基ずつ備えている。各クローラ走行装置12はフレーム11の後部に取り付けられた起動輪12aと、フレーム11の前部に取り付けられた遊動輪12bと、これら起動輪12a及び遊動輪12bに巻き掛けられたクローラベルト12cとを有して構成されている。左右のクローラ走行装置12の各起動輪12aはそれぞれフレーム11に取り付けられた走行モータ(油圧モータ)13,14(図2では左側の走行モータ13のみを示す)により図示しないスプロケットを回転させて駆動することが可能であり、左右の走行モータ13,14は上部操作装置50に備えられた走行操作レバー53,54(図1参照)を操作することにより所望に回転・停止動作を行わせることができる。
図1に示すように、走行体10内に設けられた油圧ポンプPは図示しない動力源(エンジンや電動モータ等)により駆動され、油圧ポンプPが吐出した作動油は起伏シリンダ22の作動を制御する起伏シリンダ制御バルブV1、伸縮シリンダ31の作動を制御する伸縮シリンダ制御バルブV2、旋回モータ21の作動を制御する旋回モータ制御バルブV3、首振りモータ41の作動を制御する首振りモータ制御バルブV4及び左右の走行モータ13,14の作動を制御する走行モータ制御バルブV5,V6を介して対応する油圧アクチュエータ(起伏シリンダ22、伸縮シリンダ31、旋回モータ21首振りモータ41及び左右の走行モータ13,14)に供給されるようになっている。
ブーム操作レバー51又は作業台操作レバー52が作業台40上のオペレータOPにより操作されると、そのレバーの操作方向(傾動方向)及び操作量(傾動量)に対応した電圧信号が出力され、それぞれコントローラ60のバルブ作動制御部61入力される。そして、コントローラ60のバルブ作動制御部61は、これらレバー51,52の操作により出力された電圧信号に応じた方向及び量で対応する制御バルブV1,V2,V3,V4の各スプール(図示せず)を電磁駆動する。ここで、制御バルブV1,V2,V3,V4の各スプールの駆動方向は対応する油圧アクチュエータの駆動方向(伸縮若しくは回転方向)に関係し、各スプールの駆動量は対応する油圧アクチュエータに供給される作動油の流量(単位時間当たりの流量)、すなわち各油圧アクチュエータの作動速度に関係する。したがって、各制御バルブのスプールの駆動方向が逆になると対応する油圧アクチュエータの作動方向が逆になり、各制御バルブのスプールの駆動量が大きくなるほど対応する油圧アクチュエータの作動速度は大きくなる。
ここで、ブーム操作レバー51又は首振り操作レバー52の操作により出力される電圧信号の電圧レベルはその操作量にほぼ比例するようになっており、オペレータOPは各操作レバー51,52の操作量を調節することで、対応する上記油圧アクチュエータの作動速度を自在に調節することができる。
また、左右の走行操作レバー53,54がオペレータOPにより操作されると、その操作方向(傾動方向)及び操作量(傾動量)に対応した電圧信号が出力され、それぞれコントローラ60のバルブ作動制御部61に入力される。そして、このバルブ作動制御部61は、これら走行操作レバー53,54の操作により出力された電圧信号に応じた方向及び量で対応する左右の走行モータ制御バルブV5,V6の各スプール(図示せず)を電磁駆動する。ここで、両制御バルブV5,V6の各スプールの駆動方向は対応する走行モータ13,14の回転方向に関係し、各スプールの駆動量は走行モータ13,14に供給される作動油の流量(単位時間当たりの流量)、すなわち走行モータ13,14の回転数(回転速度)に関係する。したがって、制御バルブのスプールの駆動方向が逆になると対応する走行モータ13,14の作動方向が逆になり、各制御バルブのスプールの駆動量が大きくなるほど対応する走行モータ13,14の作動速度は大きくなる。
ここで、左右の走行操作レバー53,54の操作により出力される電圧信号の電圧レベルはその操作量にほぼ比例し、左右の走行操作レバー53,54の操作量が同じであれば出力される電圧レベルは同じになるようになっている。このため、オペレータOPは走行操作レバー53,54の操作量を調節することで、左右の走行モータ13,14の回転速度を自在に調節して直進走行或いはターン走行をすることができる。なお、ターン走行はピボットターン(小半径での旋回ターン)とスピンターン(その場でのターン)とがあり、左右のクローラ走行装置12の一方を(ほぼ)固定した状態で他方を順方向或いは逆方向に回転させることによりピボットターンをすることができ、左右のクローラ走行装置12を互いに異なる方向に回転させることによりスピンターンをすることができる。
また、本高所作業車1には、図2及び図1に示すように、ブーム30の起伏角度θ(図3参照)を検出する起伏角度検出器81、ブーム30の長さL(図3参照)を検出する長さ検出器82及びブーム30の(旋回体20の)旋回角度を検出する旋回角度検出器83が設けられており、これら検出器81,82,83により検出されたブーム30の起伏角度θ、長さL及び旋回角度の各情報はコントローラ60の位置算出部62に入力されるようになっている(図1参照)。ここで、コントローラ60の位置算出部62は、検出器81,82,83からの情報に基づいて走行体10を基準としたブーム30の先端部(このブーム30の先端部とは作業台40をも含む概念である。ブーム先端部と称することがある)の位置を算出し、その結果得られたブーム先端部の位置の情報を検出器81,82,83が検出する各情報とともにコントローラ60の規制制御部63に出力する(図1参照)。
起伏角度検出器81、長さ検出器82、旋回角度検出器83及びコントローラ60の位置算出部62はブーム先端部の位置(座標)を検出する機能を有しており、以下、これらを一組にして位置検出手段80と称する。なお、位置検出手段80は、直接的には、或るブーム30の旋回角度におけるブーム先端部の位置を座標(θ,L)として求めるが、ブーム30の作業半径R(図3に示すようにフートピン23を含む鉛直線PLからブーム30の先端部BPまでの間の水平距離)及びブーム30の先端部高さH(図3に示すようにフートピン23を含む水平線WLからのブーム30の先端部BPの高さ)はそれぞれθとLとを用いて表すことができるので、ブーム先端部の位置を座標(R,H)として求めることも可能である。
図1に示すように、コントローラ60は上述のバルブ作動制御部61、位置算出部62及び規制制御部63のほか、記憶部64、ノンストップ作動制御部65、転倒モーメント算出部66、負荷算出部67、位置読み取り部68及びトレース線設定部69を有している。コントローラ60の記憶部64には、走行体10に作用する転倒モーメントの限界値として設定された許容転倒モーメントM0がブーム30の起伏角度θ及び長さLに対応した値として記憶されている。また、コントローラ60の転倒モーメント算出部66は、起伏シリンダ22の軸力を検出する軸力検出器84(図1参照)からの検出情報及び起伏角度検出器81からの検出情報に基づいて、走行体10に作用する転倒モーメントMを算出する。これら軸力検出器84、起伏角度検出器81及びコントローラ60の転倒モーメント算出部66は、走行体10に作用する転倒モーメントを検出する(検出された転倒モーメントを検出転倒モーメントとする)機能を有しており、以下、これらを一組にして転倒モーメント検出手段90と称する。
コントローラ60の負荷率算出部67は、転倒モーメント検出手段90において検出された検出転倒モーメントMと、その時々で検出されているブーム30の起伏角度θ及び長さLに応じて求められる許容転倒モーメントM0とから、許容転倒モーメントM0に対する検出転倒モーメントMの比である算出負荷率γ(=M/M0)を算出し、その結果を規制制御部63とノンストップ作動制御部65とに出力する。
コントローラ60の負荷率算出部67において算出される(モニターされる)算出負荷率γはブーム30の姿勢(ブーム先端部の位置)及び作業台40の積載荷重に応じて変化し、その値が大きいときほど転倒に対する不安定度が増大していることを示す。但し、算出負荷率γが、予め定められた限界負荷率γ0(例えば100%)を超えるようなブーム30作動は後述するようにコントローラ60の規制制御部63によって規制されるので、算出負荷率γは限界負荷率γ0を超えて大きくなることはない。
図3は作業台40の積載荷重が或る値をとっているときにブーム30の先端部を移動させることができる領域の外縁を示したものである。この外縁において、直線L1、直線L2、曲線L3及び曲線L4はブーム30の長さがとり得る範囲とブーム30の起伏角度がとり得る範囲との関係から自ずと画定される外縁(作動限界線)であり、直線Lγ0は、算出負荷率γが限界負荷率γ0となるときのブーム先端部の位置をブーム30の長さごとにプロットすることにより形成される線である(この線を限界負荷率線と称する)。また、点線で示す曲線L4′は、最大伸長状態のブーム30を倒伏させていったときに、算出負荷率γが限界負荷率γ0を超えることが許されると仮定した場合にブーム30の先端部が描くであろう仮想の作動限界線である。すなわち、限界負荷率線Lγ0と仮想の作動限界線L4′との間の領域は、ブーム30の先端部の移動が禁止される領域(構造上はブーム30の先端部を移動させ得るが、算出負荷率γが限界負荷率γ0を超えないように規制制御部63が働くために、結果としてブーム30の先端部の移動ができない領域)であり、限界負荷率線Lγ0は、このブーム30の先端部の移動が禁止される領域との境界線ということもできる。なお、当然ながら、設定された限界負荷率γ0の値が同じであっても作業台40の積載荷重に応じて限界負荷率線Lγ0の位置は変化し、作業台40の積載荷重が大きいときには限界負荷率線Lγ0は走行体10に寄る側(図3では図の右側)に移動する。また、作業台40の積載荷重が同じであっても、設定した限界負荷率γ0の値が大きいときには限界負荷率線Lγ0は走行体10から離れる側(図3では図の左側)に移動することになる。
作業台40の積載荷重が或る値をとっているとき、ブーム30を伸長或いは倒伏作動させていった場合には、負荷率算出部67において算出される算出負荷率γの値は次第に大きくなっていく。ここで、倒伏作動を伴わないブーム30の作動(例えばブーム30の単純伸長作動)が行われた場合であって、算出負荷率γの値が限界負荷率γ0に達したときには(これは、ブーム30の先端部が限界負荷率線Lγ0に達したとみることもできる)、ブーム30の作動は停止される。なお、このようなブーム30の規制は、コントローラ60の規制制御部63において行われる。すなわち、コントローラ60の規制制御部63は、負荷率算出部67により算出された算出負荷率γが限界負荷率γ0を超えるようなブーム30の作動を禁止する働きをする。
コントローラ60の位置読み取り部68は、位置検出手段80により検出されたブーム30の先端部の移動軌跡に基づいて(或いはブーム操作レバー51の操作状態を検出して)現在ブーム30が倒伏作動中であることを検知し、かつコントローラ60の負荷率算出部67により算出されている(モニターされている)算出負荷率γが限界負荷率γ0と同じ若しくは限界負荷率γ0よりも小さい値として予め定められた開始負荷率γs(例えば98%)に達したことを検知したときには、その検知時におけるブーム先端部の位置(座標)を位置検出手段80の出力から読み取り、その位置(座標)のデータをコントローラ60のトレース線設定部69に出力する。なお、上記限界負荷率γ0及び開始負荷率γsのほか、後述する終了負荷率γeの各データは、コントローラ60の記憶部64に記憶されている。
コントローラ60のトレース線設定部69は、位置読み取り部68から出力された座標データ、すなわち位置読み取り部68が読み取った算出負荷率γが開始負荷率γsに達したときのブーム先端部の位置を基準として下方に延びるトレース線TR(図4及び図5参照)を設定する。例えば、図4に示すように、ブーム30の先端部の位置が点P0(θ0,L0)にある状態からブーム30を倒伏作動させていった場合を考えると、ブーム30の倒伏作動に従ってコントローラ60の負荷率算出部67が算出する算出負荷率γは漸減していくが、ブーム30の先端部の位置が点P1(R1,H1)に至ったときに算出負荷率γが開始負荷率γsに達したとすると、その算出負荷率γが開始負荷率γsに達したときのブーム先端部の位置P1(R1,H1)を基準としてトレース線TRを設定する(図5も参照)。
点P1(R1,H1)を基準とするトレース線TRの設定方法は任意であるが、図4及び図5に示すように、点P1(R1,H1)を通り、かつ点P1(R1,H1)を通る鉛直線ZLから傾きαだけ下方が外側に広がる線として設定することが好ましい。このときトレース線TR上の点の作業半径R(図3参照)方向の座標Rcは、点P1(R1,H1)の座標を用いて
Rc=(H1−H)α+R1
と表すことができる。ここで、傾きαの値は任意に設定することができるが、ブーム30の先端部をこのトレース線TRに沿って下降移動させたとき、コントローラ60の負荷率算出部67が算出する算出負荷率γが開始負荷率γsを維持するか、或いは開始負荷率γsから漸減するような角度となるようにすることが好ましい。なお、傾きαがα=0であるときは、トレース線TRは鉛直線ZLそのものとなる。
コントローラ60のノンストップ作動制御部65は、コントローラ60のトレース線設定部69においてトレース線TRが設定されているとき、ブーム30の倒伏作動に併せて収縮作動を行わせることにより、位置検出手段80により検出されるブーム30の先端部の位置とコントローラ60の記憶部64に記憶されたトレース線TRのデータとを比較しつつ、ブーム30の先端部をトレース線TRに沿って下降移動させる制御を行う(図4及び図5参照)。このような制御をノンストップ作動制御と称する。このノンストップ作動制御では、コントローラ60のノンストップ作動制御部65は、位置検出手段80により検出されるブーム30の先端部の位置と、コントローラ60のトレース線設定部69において設定されたトレース線TRのデータとを比較し、ブーム30の先端部のトレース線TRからの距離(水平方向距離)が常に小さくなるようにブーム30の収縮作動を制御する。すなわちコントローラ60のノンストップ作動制御部65は、伸縮シリンダ31のフィードバック制御(サーボ制御)を行ってブーム30の先端部をトレース線TRに沿わせる。図4中に示す点P2(θ2,L2)はこのようなノンストップ作動制御が行われている途中におけるブーム先端部の位置の一例を示している。
このように、ブーム30の倒伏作動中に算出負荷率γが開始負荷率γsに達してトレース線TRが設定されたときには、オペレータOPがブーム30の倒伏作動操作を継続的に或いは断続的に行っている限りは、ブーム30の先端部はこのトレース線TRに沿って下降移動することになるわけであるが、その間に算出負荷率γが開始負荷率γsよりも小さい値として予め定められた終了負荷率γe(例えば95%)以下になったとき(例えば、ブーム30の作動を一旦停止させて図示しないウインチ装置等により作業台40上の積載物を外部に搬出した場合など)には、コントローラ60のトレース線設定部69は、トレース線TRの設定を解除するようになっている。そして、コントローラ60のノンストップ作動制御部65は、トレース線TRの設定が解除された後はノンストップ作動制御を終了する。すなわち、算出負荷率γが終了負荷率γe以下となったときにはコントローラ60のノンストップ作動制御部65によるノンストップ作動制御は解除され、通常のブーム作動制御に復帰する。このため、その後にオペレータOPがブーム30の倒伏作動操作を行ったときには、ブーム30はその操作に従った倒伏作動(ブーム30の収縮作動を伴わない倒伏作動)を行うことになる。但し、上記のようにノンストップ作動制御が解除され、通常のブーム30の作動制御が再開されるようになった場合でも、その後のブーム30の倒伏作動により算出負荷率γが増大して再び開始負荷率γsに達したときには、新たにこの点を基準としてトレース線TRが設定されることになる。
このようなノンストップ作動制御を行うための制御フローの一例を示すと図6のようになる。この制御フローを実施する制御プログラムは、位置検出手段80により検出されるブーム30の先端部の移動軌跡により、或いはブーム操作レバー51の操作状態によりブーム30の倒伏操作状態が検出された後、所定時間おきに(例えば数ミリ秒おきに)実行される。以下、ブーム30の先端部が図7の点P0(R0,H0)の位置にある状態(この状態での算出負荷率はγ<γeとする)からブーム30の倒伏作動を開始し、ブーム30の先端部が図7に示すようにP0(R0,H0)→P1(R1,H1)→P2(R2,H2)→P3(R3,H3)→P4(R4,H4)→P5(R5,H5)と進む場合を例にしてこの制御フローの説明を行う。
この制御フローでは先ず、ステップS1において、現在コントローラ60の負荷率算出部67において算出されている算出負荷率γが開始負荷率γs以上であり、かつフラグ(Flg)が0であるか否かの判断を行う(最初はFlg=0に設定される)。ここで、ステップS1での判断結果が「No」であった場合(算出負荷率γが開始負荷率γsを下回っているか、若しくはFlg=0でない場合)にはステップS2に進み、ステップS1での判断結果が「Yes」であった場合(算出負荷率γが開始負荷率γs以上であり、かつFlg=0である場合)にはステップS5に進む。
ブーム30の先端部が点P0(R0,H0)にある状態からブーム30の倒伏作動が開始された直後は、算出負荷率γは上述のようにγ<γeであり、開始負荷率γsを下回っているので、ステップS1での判断結果は「No」となってステップS2に進む。ステップS2では、現在算出されている算出負荷率γが終了負荷率γeを下回っているか否かの判断を行う。そして、ステップS2での判断結果が「Yes」であった場合(算出負荷率γが終了負荷率γeを下回っている場合)にはステップS3に進み、ステップS2での判断結果が「No」であった場合(算出負荷率γが終了負荷率γe以上である場合)にはステップS8に進む。ここでは(ブーム30の先端部が点P0にある状態からブーム30の倒伏作動が開始された直後は)算出負荷率γは終了負荷率γeを下回っているので、ステップS2での判断結果は「Yes」となってステップS3に進む。
ステップS3では、現在トレース線TRが設定されている場合には、その設定を解除する処理を行う。ここでは(ブーム30の先端部が点P0にある状態からブーム30の倒伏作動が開始された直後は)もともとトレース線TRは設定されていないので、このステップS3では何の処理も行わない。ステップS3が終了したらステップS4に進んでフラグ(Flg)を「0」に設定し(ここではFlg=0を維持)、ステップS8に進む。
ステップS8では、現在のフラグが「1」であるか否かの判断を行う。そして、ステップS8での判断結果が「No」であった場合(Flg=0の場合)にはステップS9に進んで通常のブーム作動制御(ノンストップ作動制御でない、ブーム操作レバー51の操作に従ったブーム30の制御)を行い、ステップS8での判断結果が「Yes」であった場合(Flg=1の場合)にはステップS10に進んでノンストップ作動制御を行う。ここでは直前のステップS3においてフラグを「0」に設定しているのでステップS9に進み、通常のブーム作動制御を行う。
このようにステップS1→S2→S3→S4→S8→S9と進む処理は、ブーム30の先端部が点P0にある状態からブーム30の倒伏作動を行い、これにより算出負荷率γが上昇して終了負荷率γeに達するまでの間繰り返される。なお、γ=γeとなるブーム30の先端部の位置は図7中に示す点P1(R1,H1)に相当する。
算出負荷率γが終了負荷率γeに達したときにはステップS1における判断結果は「No」となり、ステップS2に進む。そして、ステップS2における判断結果も「No」となり、テップS8に進む。ステップS8では上述のように現在のフラグが「1」であるか否かの判断を行うが、γ=γeに達した時点では前回のフラグ設定処理過程(ステップS4)において設定された「Flg=0」が維持されるので判断結果は「No」となり、ステップS9に進んで通常のブーム作動制御を行う。すなわち、ブーム30の算出負荷率γが上昇して終了負荷率γeに達しても、算出負荷率γが終了負荷率γeに達する前と同じく通常のブーム作動制御を継続して行うことになる。
このようにステップS1→S2→S8→S9と進む処理は、ブーム30の先端部が点P1を通過した後も更にブーム30が倒伏作動を続けて算出負荷率γが開始負荷率γsに達するまで(γ=γsとなるまで)繰り返される。なお、γ=γsとなるブーム30の先端部の位置は図7中示す点P2(R2,H2)に相当する。
算出負荷率γが開始負荷率γsに達したときにはステップS1における判断結果は「Yes」となり、ステップS5に進む。ステップS5では、そのとき位置検出手段80が検出しているブーム30の先端部の位置P2(R2,H2)を読み取る処理を行う。続いてステップS6に進み、直前のステップS5において読み取ったブーム30の先端部の位置P2(R2,H2)を基準として下方に延びるトレース線TRを設定する(図7参照)。そしてステップS7に進み、フラグ(Flg)を「1」に設定してステップS8に進む。
ステップS8では上述のように現在のフラグが「1」であるか否かの判断を行うが、ここではフラグは直前のステップS7において「1」に設定されているのでステップS10に進み、ノンストップ作動制御、すなわちブーム30の倒伏作動に併せてブーム30の収縮作動を行わせることにより、位置検出手段80により検出されるブーム30の先端部の位置とコントローラ60の記憶部64に記憶されたトレース線TRのデータとを比較しつつ、ブーム30の先端部を設定したトレース線TRに沿って下降移動させる制御を行う。
このステップS1→S5→S6→S7→S8→S10と進む処理は算出負荷率γが開始負荷率γsに達したときにのみ行われ、その後は算出負荷率γが終了負荷率γeを下回らない限りステップS1→S2→S8→S10と進む処理(ノンストップ作動制御)が継続される。しかし、このノンストップ作動の途中で一旦ブーム30の作動を停止し、図示しないウインチ装置などによって作業台40の積載物を外部に搬出したような場合であって、算出負荷率γが終了負荷率γeを下回ったときには、ステップS2における判断結果は「Yes」となるのでステップS3に進んでトレース線TRの設定を解除する。そしてステップS4に進み、フラグ(Flg)を「0」に設定してステップS8に進む。この場合ステップS8では直前のステップS4においてフラグが「0」に設定されているので、ここでの判断結果は「No」となり、ステップS9に進んで通常のブーム作動制御を行う(ノンストップ作動制御は解除される)。なお、ブーム30のノンストップ作動を停止させて作業台40の積載物を外部に搬出した位置は図7中に示す点P3(R3,H3)に相当する。
このステップS1→S2→S3→S4→S8→S9と進む処理は、その後算出負荷率γが終了負荷率γeに達するまで(γ=γeとなるまで)繰り返され、終了負荷率γeに達した後はステップS1→S2→S8→S9と進む処理が、算出負荷率γが再び開始負荷率γsに達するまで(γ=γsとなるまで)繰り返される。なお、ブーム30の先端部が点P3(R3,H3)にある状態からブーム30の倒伏作動操作を再開した後、γ=γsとなるブーム30の先端部の位置は図7中に示す点P4(R4,H4)に相当する。算出負荷率γが開始負荷率γsに達したときにはステップS1における判断結果は「Yes」となるのでステップS5に進み、このステップS5において、そのときのブーム先端部の位置P4(R4,H4)を読み取る。そしてステップS6に進み、直前のステップS5において読み取ったブーム先端部の位置P4(R4,H4)を基準として下方に延びるトレース線TRを設定する(図7参照)。そして、ステップS7に進み、フラグ(Flg)を「1」に設定してステップS8に進む。ステップS8では直前のステップS7においてフラグが「1」に設定されているのでステップS10に進み、コントローラ60のノンストップ作動制御部65はノンストップ作動制御を開始する。そしてその後はステップS1→S2→S8→S10と進む処理が継続されて、ブーム30の先端部はトレース線TRに沿って下降移動する。
このように本実施形態に係るノンストップ作動制御装置では、ノンストップ作動制御を開始するタイミングの検出は算出負荷率γに基づいて行いつつ、ノンストップ作動制御開始後におけるブーム30の先端部の下降移動は比較的正確に検出できるブーム30の先端部の位置情報に基づいて行う構成になっている。このため、制御が簡単なモーメント規制タイプの特質を生かしつつ、ノンストップ作動制御開始後におけるブーム30の先端部の下降移動を作業範囲規制タイプ並に正確に行うことができる。また、これにより高所作業車1が本来有する作業領域を有効に活用することが可能となる。
また、本実施形態に係るノンストップ作動制御装置では、トレース線TRを設定した後、算出負荷率γが開始負荷率γsよりも小さい値として定められた終了負荷率γeを下回ったときにトレース線TRの設定を解除するようになっているので、ノンストップ作動制御の途中で算出負荷率γが或る程度(終了負荷率γe以下になるまで)小さくなったときには、その算出負荷率γに見合う適正な作業領域を自動で確保することができる。このため、一旦設定されたトレース線TRに従ったノンストップ作動制御がいつまでも継続されて作業範囲が徒に狭められる不都合を回避することができる。なお、上記のようにノンストップ作動制御中に算出負荷率γが終了負荷率γe以下となるケースとしては前述のようにノンストップ作動制御の途中で一旦ブーム30の作動を止めて作業台40の積載物を外部に搬出した場合のほか、ブーム30の先端部をトレース線TRに沿って下降移動させることにより算出負荷率γが漸減し、その途中で算出負荷率γが終了所定負荷率γe以下にまで低下した場合がある。ここで、終了負荷率γeは、ブーム30の作動中と停止中とでそれぞれ別の値としてもよい。ノンストップ作動制御によりブーム30の倒伏作動と収縮作動とが同時に行われ、ブーム30の揺れが大きいようなときにはブーム30の作動中における終了負荷率γeを小さめ(例えば80%)に設定しておくことが好ましい。これは、ブーム30の揺れによって算出負荷率γの変動が大きくなり、ノンストップ作動制御の開始と解除とが頻繁に繰り返されることを防止するためである。
図8は別の実施形態を示すものである。この実施形態では、限界負荷率γ0と同じ若しくは限界負荷率γ0よりも小さい値として定められた所定負荷率(第2の所定負荷率γ2とする)のほかに、この所定負荷率(第2の所定負荷率γ2)よりも小さい値として定められたもう一つの所定負荷率(第1の所定負荷率γ1とする)がコントローラ60の記憶部64に記憶されている。そして、コントローラ60のノンストップ作動制御部64は、図8に示すように、ブーム30の先端部が点P0(R0,H0)にある状態から(この状態での算出負荷率はγ<γ1とする)ブーム30を倒伏作動させていった場合に、コントローラ60の負荷率算出部67において算出された負荷算出負荷率γが第1の所定負荷率γ1に達したとき(そのときのブーム先端部の位置をP1(R1,H1)とする)に先ず第1のトレース線TR1を設定し、ブーム30の先端部がこの第1のトレース線TR1に沿って下降移動するようにノンストップ作動制御を行う。但し、ここにおいて設定される第1のトレース線TR1では、その式Rc=(H1−H)α+R1における傾きαの値(=α1。図8参照)は、ブーム30の先端部をこの第1のトレース線TR1に沿って下降移動させたとき、算出負荷率γが開始負荷率γsから漸増するような角度とする。
そして、このブーム30の先端部が第1のトレース線TR1に沿うようにブーム30を作動させている途中で算出負荷率γが第2の所定負荷率γ2に達したとき(そのときのブーム先端部の位置をP2(R2,H2)とする)、第1のトレース線TR1の設定を解除するとともに新たに第2のトレース線TR2を設定し、今度はブーム30の先端部がこの第2のトレース線TR2に沿って下降移動するようにノンストップ作動制御を行う。但し、ここにおいて設定される第2のトレース線TR2では、その式Rc=(H2−H)α+R2における傾きαの値(=α2。図8参照)は、ブーム30の先端部をこの第2のトレース線TR2に沿って下降移動させたとき、算出負荷率γが開始負荷率γsを維持するか、或いは開始負荷率γsから漸減するような角度とする(すなわちα1>α2)。
このような構成では、ノンストップ作動制御開始後、ブーム30の先端部は先ず第1のトレース線TR1に乗って移動した後、最終的な目標軌道である第2のトレース線TR2に乗るようになっているので、ノンストップ作動制御の開始後、ブーム30の先端部に滑らかな移動軌跡を描かせて最終的な下降移動軌道(第2のトレース線TR2)に乗せることが可能である。なお、上記例では傾きαの値が異なる2つのトレース線(第1のトレース線TR1と第2のトレース線TR2)が設けられていたが、傾きαの異なる3つ以上のトレース線を設定することによって、ブーム30の先端部がより滑らかな移動軌跡を描いて最終的な下降移動軌道に乗るようにしてもよい。
また、更に別の実施形態として、トレース線設定部69は、トレース線TRを設定した後、ブーム30の作動が停止されたときにトレース線TRの設定を解除するようになっていてもよい。ここで、ブーム30の作動の停止は、ブーム操作レバー51の操作状態や、位置検出手段80により検出されるブーム先端部の位置の変化状態などから検知することができる。
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示されたものに限定されない。例えば、上述の実施形態では、本発明が適用される対象は走行体がクローラ式である高所作業車であったが、走行体は必ずしもクローラ式でなくてもよい。また、本発明が適用される対象は必ずしも高所作業車でなくてもよく、走行体に起伏及び伸縮動自在に設けたブームの先端部に作業機を有して構成されるブーム作業車であれば他のブーム作業車(例えばクレーン車や穴掘り建柱車など)であってもよい。