JP2006181629A - 形鋼の圧延方法および形鋼の製造方法 - Google Patents

形鋼の圧延方法および形鋼の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】形鋼圧延でのロールと被圧延材との間の焼き付きや、ロール表層の亀裂などの発生を抑制し、形鋼製品の表面品質を向上するとともに、形鋼圧延操業において、ロールが割損してしまうのを防止し、圧延能率を向上する。
【解決手段】鉄系材料を外層とし、内部に超硬合金層を有するロールを用いる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、形鋼の圧延方法および形鋼の製造方法に関する。
一般に、素材鋼片を熱間圧延して形鋼となす工程(形鋼圧延工程)では、鋼スラブまたは鋼ビレットを加熱炉で例えば1050〜1350℃に加熱した後、上下の孔型ロールで上下同時に圧延する孔型圧延機(例:ブレークダウン圧延機)、上下の水平ロールと左右の竪ロールとで上下左右同時に圧延するユニバーサル圧延機などの形鋼圧延機を用いて熱間圧延し、所望の寸法形状の形鋼製品となす。形鋼圧延機のロール(孔型圧延機では孔型ロール、ユニバーサル圧延機では水平ロールと竪ロールが該当)には、通常、鋼製のロールが用いられる。
しかし、圧延温度が高いため、ロールと被圧延材との間に焼き付きが発生しやすく、製品形鋼の表面に肌荒れが生じる場合がある、という問題があった。また、圧延反力(圧延荷重)に伴う大きな応力や熱応力を受けることにより、ロール表層に亀裂が入りやすく、ロール研削量が増えてコストが嵩んだり、亀裂が大きい場合にはロールの折損(スポーリング)に至る場合もある、という問題もあった。
また、圧延温度が低い場合、圧延荷重が高く、また、被圧延材表面に比較的硬いスケールが生成していることから、ロールが早期に摩耗してロールプロフィルが変わってしまい、ロール再研磨の頻度が高く、ロールコストが嵩むという問題もあった。耐焼き付き性や耐亀裂性、あるいは耐摩耗性に優れたロールとしては、従来、特許文献1に示すような、ロール外殻層の組成、硬度、残留圧縮応力を規制した高炭素系高速度鋼ロールなどが提案されていた。
しかし、前記特許文献1のロールは、形鋼圧延機のロールに用いても、前述の焼き付きや亀裂等(亀裂、摩耗)を十分に防止できなかった。
そこで、形鋼圧延でのロールと被圧延材との間の焼き付きやロール表層の亀裂などを抑制し、形鋼製品の表面品質を向上するとともに、形鋼圧延操業において圧延能率を向上する、という両方の要求に応えるべく、特許文献2では、表層が超硬合金からなるロールを用いることを提案している。
なお、後述の発明を実施するための最良の形態に引用するため、特許文献3にここで言及しておく。
特開平09−078186号公報 特開2002−224703号公報 特開平10−317102号公報
しかし、ロールの材質を超硬合金とする方法では、超硬合金が脆性材料であるため、ロールが割損しやすいという問題があった。しかも、1本被圧延材を圧延しただけですぐさま割損するというわけではなく、何本も被圧延材を圧延しているうちに突然割損する。何本目に割損するかはばらつきがあって、ひとたび割損すると形鋼圧延操業が突然中断して被圧延材の圧延が何時間かできなくなる。このような問題があるため、適用が困難であった。
本発明は上述のような従来技術の問題を解決するべくなされたものである。すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)鉄系材料を外層とし、内部に超硬合金層を有するロールを用いることを特徴とする形鋼の圧延方法。
(2)(1)の形鋼の圧延方法を用いた形鋼の製造方法。
本発明によれば、特許文献2に示したロールのように割損してしまうのを防止できる。
本発明では、形鋼圧延用のロールに鉄系材料を外層とし、内部に超硬合金層を有するロール(以下、本発明用のロール)を用いる。超硬合金は、WC,TaC,TiC等の超硬材料粉末に、Co,Ni,Cr,Ti 等の金属粉末のうちから選ばれる1種または2種以上を質量%にして5〜50%添加した超硬材料混合粉末を焼結したものとするのが好ましく、超硬材料混合粉末としてはWCに質量%にして5〜50%Coを添加した粉末を焼結したものとするのが、ロールの耐焼き付き性、耐亀裂性、耐摩耗性等に優れかつ靭性も良好であるので一層好ましい。形鋼圧延機には前述のように種々の型式があるが、本発明はいずれの型式の圧延機にも適用可能である。
また、一つの形鋼圧延ラインに複数基配置された形鋼圧延機のうちのいずれか1基(1スタンド)とかそれ以上に本発明用のロールを用いる実施形態や、通常、1基の圧延機には上下2本あるいは左右2本のロールを組み入れて圧延を行うものであるところ、上下あるいは左右2本のロールのうちのいずれか片方だけに本発明用のロールを用いるような実施形態も考えられ、それらいずれの場合も本発明の実施形態に入るものとする。
もう少し詳しく説明すると、それは以下に述べるような事情による。
内部の超硬合金層は、圧延荷重が加わった際に、脆性破壊により割損しない限度において、硬質なものを用いた方が、ロール偏平が小さくなって、接触弧長が短くなり、その分、入熱も少なくなって、被圧延材とロールとの間に焼き付きが発生したり、ロールに亀裂が発生したりするのを抑制できる。耐摩耗性も向上であきる。ところが、一つの形鋼圧延ラインに適用する本発明用のロールの本数を増やしていくと、コストが嵩む一方で、製品形鋼の表面に発生する肌荒れ抑制の効果は飽和する。表裏どちらかだけが肌荒れなしの品質要求が強いという場合もあり、そういう場合は肌荒れなしの品質要求が強い側の面と接触する側のロールにだけ本発明用のロールを用いれば十分ということになる。
よって、本発明用のロールは、一部のスタンドや、一つの圧延機の中で上下あるいは左右のうちの片方に限って用いるなどしてもよく、どのスタンドとか上下あるいは左右どちらに適用するかなどは、経済性や、内部の超硬合金層の材質をどのようにするかも考え合わせて適宜決定すべきと言える。
以上のような状況であるが、なかでもとくに好ましい実施形態の一つは、形鋼圧延におけるブレークダウン圧延機の孔型ロールに、鉄系材料を外層とし、内部に超硬合金層を有するロールを適用することである。当該孔型ロールは、胴長方向に配列された互いに形状の異なる複数の孔型を有し、断面積のまだ比較的大きい被圧延材を往復圧延することにより、形鋼圧延の初期の段階で、前記複数の孔型に、往復圧延により順次通して粗成形加工するために使用され、また、この同じ孔型ロールで圧延された被圧延材は、次の段階では、目標寸法毎にサイズの異なる別々のロールで圧延されることから、ブレークダウン圧延機の孔型ロールは、次の段階で用いるロールよりも被圧延材と接触する頻度が高い。
これらのことから、ブレークダウン圧延機の孔型ロールは、焼き付きや亀裂がより発生しやすく、また摩耗の進行速度もより速い。しかも大径長尺である。そのため、この孔型ロールに本発明用のロールを適用すれば、焼き付き、亀裂、あるいは、製品形鋼の肌荒れ抑制などの前述の諸効果がより大きく現れる。
図1、図2は、鉄系材料を外層とし、内部に超硬合金層を有するロールの例を示す断面模式図である。図1の例(第1例)は、鉄系材料を外層1とし、内部に超硬合金層2を有する部材を、軸心4に嵌合し、側端リング6で固定したものである。図2の例(第2例)は、鉄系材料を外層1とし、内部に超硬合金層2を有する部材を、緩衝用の中間層3を介して軸心4に嵌合し、鋼製側端リング6で固定したものである。図示していないが、中間層3は、鉄系材料からなる外層1と、内部の超硬合金層2との間に介挿しても良い。
ちなみに、両図において、(a)はブレークダウン圧延機の上下の孔型ロール、(b)は粗(または中間)ユニバーサル圧延機の水平ロール、(c)は同ユニバーサル圧延機の竪ロールへの適用例を示している。ちなみに図中の点線は接合部を意味する。
以下、本発明用のロールの成分について説明する。
外層1をなす鉄系材料は、鉄系という言葉の通り、鉄を質量%にして50%以上含有するものであればいかなるものでも良いが、例えば、特許文献3に記載されている以下のような合金成分を有するようにするのが好ましい。
質量%にして、C:1.1〜1.5%、Si:0.15〜1.0%、Mn:0.15〜1.5%、Ni:1.0%以下、Cr:9.0〜15.0%、Mo:1.0%未満、V:0.8%未満、Ti:0.3%以下を含有し、残部鉄および不可避的不純物からなる鉄系合金。
一方、内部の超硬合金層2は、WC、TaC、TiCなどの超硬材料粉末に、Co、Ni、Cr、 Ti等の金属粉末のうちから選ばれる1種あるいは2種以上を総質量に対し質量%にして5〜50%の割合で添加した超硬材料混合粉末を焼結したものであり、特に、WCに総質量に対し質量%にして5〜50%の割合でCo粉末を添加した超硬材料混合粉末を焼結したものとするのが、使用時の熱特性、製造時の割損抑制などの耐事故性が良好であるので好ましい。
また、図1、図2に示したロールにおいて、中間層3をなす鉄系材料は、外層1をなす鉄系材料と同一の材質としても良いし、それとは異なる異種の鉄系材料としても良い。それとは異なる鉄系材料としては、例えば、鋳鋼、鍛鋼、黒鉛鋳鉄、炭素鋼及び合金炭素鋼のいずれも好ましく、以下のような合金成分を有するようにするのも好ましい。
質量%にして、C:1.3%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Ni:1.0%以下、Cr:10%以下、Mo:1.0%未満、V:0.8%未満、Ti:0.3%未満を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鉄系合金。
また、超硬合金を中間層3として用いても良く、その場合、超硬合金は、WC、TaC、TiCなどの超硬材料粉末に、Co、Ni、Cr、Ti等の金属粉末のうちから選ばれる1種あるいは2種以上を総質量に対し質量%にして5〜50%の割合で添加した超硬材料混合粉末を焼結したものであり、特に、WCに総質量に対し質量%にして5〜50%の割合でCo粉末を添加した超硬材料混合粉末を焼結したものであって、内部の超硬合金層2よりも軟質になるよう成分調整したものとするのが、使用時の熱特性、製造時の割損抑制などの耐事故性が良好であるので好ましい。
なお、上記のような異種の鉄系材料あるいはそれとは異なる鉄系材料は、溶製材とするのが好ましいので、以下、溶製材の鉄系材料の場合を例に説明するが、本発明用のロールの鉄系材料の部分は溶製材に限定されるものではない。
また、図1、図2に示したロールの軸芯4は、例えば、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、高速度鋼を調質することで製造することもできる。
以上述べた基本的なロールの構造に基づいて、詳細な構造は、ロール寸法、使用条件、製造コストの許容範囲などにより適宜決定すれば良い。
以下、ロールの各部寸法について説明する。
すなわち、鉄系材料からなる外層1の厚みは薄ければ薄いほど、ロール偏平が小さくなって、接触弧長が短くなり、その分、入熱も少なくなって、被圧延材とロールとの間に焼き付きが発生したり、ロールに亀裂が発生したりするのを抑制できるが、製造上、薄い層になればなるほど形成が困難になるという制約、圧延中の剛性の問題から5mm以上とするのが好ましい。上限はロール偏平の抑制効果を確保する観点から、50mm以下とするのが好ましい。
また、内部の超硬合金層2の厚みは、薄ければ薄いほど、ロール偏平が大きくなって、接触弧長が長くなり、その分、入熱も多くなって、被圧延材とロールとの間に焼き付きが発生したり、ロールに亀裂が発生したりするのを抑制できなくなるため、5mm以上とするのが好ましい。上限は特に規定するものではないが、製造に際し、後述の焼結を行った後の熱収縮分の予測がはずれた場合の研削負荷が過大とならないようにしたい観点から、300mm以下とするのが好ましい。
また、鉄系材料または超硬合金からなる中間層3の厚みは、厚いほど超硬合金層を安定化させることができるが、ロールの直径は大体一般的な値が決まっていることから、あまり厚すぎると、設計上、内部の超硬合金層2の厚みの方を薄くせねばならなくなるなどの不合理が生じるため、超硬合金層の20倍以下とするのが好ましい。製造上、薄い層になればなるほど形成が困難になることから、3mm以上とするのが好ましい。
そして、図1、図2に示したロールの軸芯4の直径は、ロールの構造上、ネック部5の代表寸法(小判型断面の部分ではなくて円柱部分の直径)と同一とするのが好ましく、ロールの胴部(ネック部を除くという意味)の直径の1.5分の1ないし4分の1とするのが好ましい。軸芯4の太さを調整することで、結果的に、内部の超硬合金層2や鉄系材料からなる中間層3の厚みも調整できる。
ロールの最終的な寸法は、ロールの胴長方向中央の胴部の円柱部分の直径にして50〜2000mm、胴長方向の長さにして100〜6000mmと幅広い。
以下、本発明用のロールの製作方法について説明する。図2に示したロールの場合を例にとる。
なお、胴部は外径600mmφ以上、胴長は1000mmW以上と、大径長尺のものが殆どであるので、超硬合金部分を一体で製造することは好ましくなく、図3に示すごとく、(a)部分の形状に焼結して製造された胴長数百mmの超硬合金部分を機械加工して所望の各部寸法に整えたものに、(b)対応する形状の、鉄系材料からなる外層1を被せて拡散接合し、(c)複数継ぎ足して一体化し、拡散接合して製造するのが好ましい。あるいは、中空状のものを拡散接合して製造し、軸芯を嵌合するようにしても良い。
そこで、例えば、(a)粉末充填(部分の形状を持つ複数個の成形体を製造する)→CIP(冷間等方加圧)処理→機械加工→仮焼結→機械加工→本焼結・HIP(熱間等方加圧)処理→機械加工→(b)鉄系材料からなる外層1の部分を被せる→拡散接合→(c)複数個の成形体を胴長方向に継ぎ足して一体化→拡散接合→機械加工→軸芯を嵌合という一連の製造プロセスを経て、軸芯用部材の周りに超硬合金層を有するロール部材を製造する。
そして、軸芯4と内部の超硬合金層2との間に中間層3を介挿する場合は、内部の超硬合金層2を中間層3に焼き嵌めするか、中間層3を内部の超硬合金層2に冷やし嵌めする。内部の超硬合金層2と鉄系材料からなる外層1の間に中間層3を介挿する場合は、先述の(b)対応する形状の、鉄系材料からなる外層1を被せて拡散接合する段階で中間層3を介挿した上で拡散接合する。
しかる後、機械加工を施して、各部の寸法を最終的に調整したり、研磨してロール胴部の粗度や光沢度を調整することは、何らこれを妨げない。
以上述べた本発明用のロールの製造方法の一部について補足して説明すると、(c)複数継ぎ足して一体化し、拡散接合した後、軸芯を嵌合するのに先立って、必要に応じて、その内面に研削、研磨等の機械加工を行った上で、次いで、(d)焼き嵌め、冷やし嵌めなどの方法で軸芯に嵌合して固定するなどしても良い。
CIP処理の条件は、例えば、100〜300 MPaで5〜60分保持するのが好ましい。
仮焼結の条件は、例えば、550〜800℃で1〜3時間保持するのが好ましい。
本焼結・HIP処理は、例えば、Ar雰囲気下、100〜200MPa、1100〜1200℃で、30〜120分保持後、さらに1300〜1350℃で60〜180分保持するのが好ましい。
なお、本焼結・HIP処理は、同時処理に限らず、焼結後に熱間等方加圧処理を行っても良い。例えば、HIP後の内部の超硬合金層2と、鉄系材料からなる外層1との間に、肉厚50mmの円筒状SCM−440相当の鍛鋼からなる中間層3を介挿する場合は、Ar雰囲気下、1200〜1300℃で、30〜60分保持することで拡散接合したのち、例えば、100〜200MPa、1100〜1200℃で、5〜60分保持するのが好ましい。
以上説明した製造方法はあくまで一例であり、本発明用のロールの製造方法は、以上説明したものに限るものではない。例えば、鉄系材料からなる外層1の部分は、遠心鋳造、肉盛溶接、あるいは溶射などによって、内部の超硬合金層2の外側に形成するなどしても良い。
なお、図1、図2には示していないが、鉄系材料からなる外層1、内部の超硬合金層2、中間層3、のそれぞれの間には、超硬合金に適宜、鉄(Fe)や炭素(C)を添加して調整した緩衝層をさらに設けるようにするのも好ましい。緩衝層の成分は、超硬合金の拡散接合条件に応じて調整するのが好ましい。緩衝層の厚みは、超硬合金によるロール偏平抑制の作用を損なわないようにするためには10mm以下とするのが好ましく、2〜5mmとするのがさらに好ましい。
以下、本発明の形鋼の圧延方法について説明する。
図4は、本発明の対象とする形鋼圧延の一連プロセスの例を、H形鋼圧延の場合について示す図である。図示しない加熱炉で加熱された素材鋼片7はブレークダウン圧延機10で上下の孔型ロール11、12によりH形の粗形に圧延され、つぎに粗(または中間)ユニバーサル圧延機13とエッジャー圧延機18の両方で往復圧延される。粗(または中間)ユニバーサル圧延機13では上下の水平ロール14、15と左右の竪ロール16、17とによりフランジとウエブの肉厚圧下を行い、エッジャー圧延機18では上下のエッジャーロール19、20によりフランジ先端の鍛錬、整形と幅の斉寸を行う。続く仕上ユニバーサル圧延機21で上下の水平ロール22、23と左右の竪ロール24、25により所望寸法形状のH形鋼8に仕上げる。
なお、いうまでもないが、この工程においては、ブレークダウン圧延機10、粗(または中間)ユニバーサル圧延機13、エッジャー圧延機18、仕上ユニバーサル圧延機21のいずれによる圧延も本発明にいう形鋼圧延に該当し、孔型ロール11、12、水平ロール14、15、22、23、竪ロール16、17、24、25、エッジャーロール19、20がいずれも本発明用のロールに該当する。
図4に示したH形鋼圧延において、ブレークダウン圧延機の上下の孔型ロール(非孔部胴径1240mm×胴長2800mm)として、従来例である鋳造ロールと、比較例である超硬合金ロールA(中間層なし:図5(a))、B(中間層あり:図5(b))と、本発明例である鉄系材料を外層とし、内部に超硬合金層を有するロールを用い、各ロール種類毎に300本ずつ、SSC400相当鋼スラブ(400mm厚)を熱間圧延してウエブ厚10×フランジ厚18×ウエブ高さ400×フランジ幅150(mm)の形鋼となした。なお、粗ユニバーサル圧延機および仕上ユニバーサル圧延機の水平ロールには合金複合アダマイトロール、両ユニバーサル圧延機の竪ロールは合金ダクタイルロールとした。
従来例である鋳造ロールは、前述の特許文献3に記載の化学成分範囲の鉄系材料で、質量%にして、C:1.4%、Si:0.5%、Mn:0.5%、Ni:0.5%、Cr:12%、Mo:0.8%、V:0.4%、Ti:0.1%で残部はFeと不可避的不純物である成分からなる合金で全体が構成されるよう、鋳造して製作した。
比較例である超硬合金ロールA(中間層なし)は、次に述べるようにして製作した。タングステンカーバイド(WC)に総質量に対しCoを質量%にして20% 添加したものを素材としてラバー成形(200 MPaで60分保持するCIP)により形成した種々の半径方向厚さ分布×幅を有する16個のWC-Co成形体を、700℃で2時間保持する仮焼結後、Ar雰囲気下、150MPa、1200℃で、30分保持する本焼結・HIPを施して、非孔部胴径1200mm、肉厚400mmの寸法とし、16個のWC-Co成形体を継ぎ足して一体化し、1300℃で、60分保持する拡散接合を施した後、その内面を研磨して、超硬合金接合スリーブ32を製作し、その超硬合金接合スリーブ32を、5質量%Cr鍛鋼からなる直径400mmの軸芯34に、焼き嵌めにより嵌合した。
また、超硬合金ロールB(中間層あり)は、前述のロールAと、超硬合金接合スリーブ32、軸芯34の各部は同じ材質、同じ寸法のものを同様にして製作し、超硬合金接合スリーブ32の内側を厚み10mm研削し、上記と同じ化学成分からなる鉄系材料で肉厚10mmの円筒状の中間層35を冷やし嵌めした後、5質量%Cr鍛鋼からなる軸芯34に、焼き嵌めにより嵌合することで製作した。なお、図中の31は、鋼製側端リングである。
本発明例である鉄系材料を外層1とし、内部に超硬合金層2を有するロールC(中間層なし)は、図1(a)の構造を有し、(a)外層1は、上記と同じ化学成分からなる鉄系材料で肉厚20mmのものとし、超硬合金層2は、次に述べるようにして製作した。タングステンカーバイド(WC)に総質量に対しCoを質量%にして20% 添加したものを素材としてラバー成形(200 MPaで60分保持するCIP)により形成した種々の半径方向厚さ分布×幅を有する16個のWC-Co成形体を、700℃で2時間保持する仮焼結後、Ar雰囲気下、150MPa、1200℃で、30分保持する本焼結・HIPを施して、非孔部胴径1200mm、肉厚400mmの寸法とし、(b)鉄系材料からなる外層1を超硬合金層2に被せ、Ar雰囲気下、1300℃で、40分保持することで拡散接合し、(c)16個のWC-Co成形体を継ぎ足して一体化し、1300℃で、60分保持する拡散接合を施した後、その内面を研磨して、5質量%Cr鍛鋼からなる直径400mmの軸芯に、(d)焼き嵌めにより嵌合した。
本発明例である鉄系材料を外層1とし、内部に超硬合金層2を有するロールDは、図2(a)の構造を有し、前述のロールCと、鉄系材料からなる外層1、内部の超硬合金層2、軸心4、の各部は同じ材質、同じ寸法のものを同様にして製作し、超硬合金層2の内側を厚み10mm研削し、上記鉄系材料からなる外層1と同じ成分の肉厚10mmの中間層3を冷やし嵌めした後、5質量%Cr鍛鋼からなる軸芯に、焼き嵌めにより軸芯に嵌合することで製作した。
各ロール種類毎に最終本目に圧延された形鋼の表面性状を観察するとともに、最終本目の圧延を終えたロールの亀裂深さを調査した。亀裂深さは超音波探傷法で検出したロール表層の亀裂のうち深さ最大のものの深さで評価した。
調査結果を表1に示す。超硬合金ロールA、Bを用いた比較例、図1、図2に示した各構造の本発明例である本発明用のロールC、Dによる圧延による結果はどれも、製品形鋼の表面性状は良好であり、亀裂深さは浅かった。これに対し、従来例である鋳造ロールでは、製品形鋼の表面は肌荒れしており、亀裂も深かった。
なお、300本の圧延を終了後も圧延を継続したが、超硬合金ロールAでは353本目、超硬合金ロールBでは415本目に割損してしまった。従来例である鋳造ロールと、本発明用のロールでは、いずれも、500本以上圧延しても割損しなかった。
Figure 2006181629
なお、形鋼は、高炉などから出る溶銑を、JIS G 3350やJIS G 7101またはこれらに準ずる成分に調整するよう溶製した後、造塊法にて鋳造後のインゴットを分塊圧延するか、あるいは連続鋳造法により直接、スラブ状の鋼塊にし、図示しない形鋼圧延ラインにて、熱間圧延することで製造できるが、圧延する際に、本発明の形鋼の圧延方法を用いて圧延することで、良好な表面品質の形鋼を製造できるとともに、ロールの割損による操業停止も防止することができる。
本発明用のロールの一実施形態を示す断面図である。 本発明用のロールの別の実施形態を示す断面図である。 本発明用のロールの製作方法について説明するための図である。 本発明の形鋼の圧延方法について説明するための図である。 比較例のロールを示す断面図である。
符号の説明
1 鉄系材料からなる外層
2 超硬合金層
3 中間層
4 軸芯
5 ネック部
7 素材鋼片
8 H形鋼
10 ブレークダウン圧延機(形鋼圧延機)
11、12 孔型ロール(ロール)
13 粗(または中間)ユニバーサル圧延機(形鋼圧延機)
14、15、22、23 水平ロール(ロール)
16、17、24、25 竪ロール(ロール)
18 エッジャー圧延機(形鋼圧延機)
19、20 エッジャーロール(ロール)
21 仕上ユニバーサル圧延機(形鋼圧延機)
31 鋼製側端リング
32 超硬合金接合スリーブ
34 軸心
35 中間層

Claims (2)

  1. 鉄系材料を外層とし、内部に超硬合金層を有するロールを用いることを特徴とする形鋼の圧延方法。
  2. 請求項1の形鋼の圧延方法を用いた形鋼の製造方法。
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