JP2006122976A - 熱間圧延方法及びそれを用いた熱延金属帯の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】先端部通板や尾端部尻抜けでの衝撃を受けてもワークロールが割損してしまうのを抑制し、サーマルクラウン全体の大きさを小さくするとともに、その胴長方向の分布も均一に近づけることで、被圧延材の平坦度を良好にし、絞りや、3枚重ねで圧延することに伴う穴あき、そして、破断などの通板トラブルの発生を抑制し、製品品質の向上にも寄与する。
【解決手段】仕上圧延機の少なくとも1つのワークロールに、鉄系材料を外層とし、内部に超硬合金層を有するロールを用いる。
【選択図】 図7

Description

本発明は、熱間圧延方法及びそれを用いた熱延金属帯の製造方法に関する。対象とする被圧延材は鋼帯を主とするが、これに限るものではなく、銅、アルミほかの材質であってもよい。
ちなみに熱間圧延鋼帯(略して熱延鋼帯と称する場合が多い)とは、JIS G 3193などに規定される通り、厚さ1.2mm以上(規格外の極薄品としては0.8mmまであり、それ以上)25mm以下で幅が600mm以上2300mm以下の長さ百m〜数千mに及ぶ帯状に長い薄板状の鋼材のことを指し、平鋼よりも幅広(具体的には幅500mm超)の鋼材を意味する。また、鋼帯は厚鋼板と一部製品厚、 製品幅ともラップする領域があるが、鋼帯と厚鋼板とは、前者が圧延後に巻き取られるのに対し後者は巻き取られないという違いがある。
熱間圧延とは、金属材料を数百〜千数百℃に加熱した後、熱間圧延ライン上に抽出し、一対のロールで挟圧しつつそのロールを回転させることで、薄く延ばすことをいう。図8は、従来から多くある熱間圧延ライン100の一例を示す。加熱炉10により数百〜千数百℃に加熱された厚み150〜300mmの金属材料(以下、被圧延材)8は、粗圧延機12、仕上圧延機18により厚み0.8〜25mmまで圧延されて薄く延ばされる。
粗圧延機12は、図8に示す熱間圧延ライン100の場合、R1、R2、R3の3基であるが、必ずしも基数はこれに限らない。1基だけのものや2基のもののほか、最も一般的なのは4基のものであり、基数の多いものだと6基のものまである。
最も一般的な4基のものの場合、4基のうち一部(多くの場合1機)を往復圧延するものとし、残る圧延機が一方向圧延を行う3/4連続と呼ばれるタイプが多い。しかし、4機中3機が一方向のタイプに限らず、例えば3機中1機が一方向のタイプも含め、3/4連続という。
粗圧延機12のすぐ上流に幅プレス9を設置したものもある。仕上圧延機18を構成する各圧延機(スタンド)の数は、図8に示す熱間圧延ライン100の場合、F1〜F7の7基であるが、6基のものもある。
これら各種基数の違いはあるが、粗圧延機12は、往復圧延あるいは一方向圧延あるいは両者により、一般的に合計で6回あるいは7回の粗圧延を行なって、粗圧延後の被圧延材8を、それにつづく仕上圧延機18に向け供給する。6回あるいは7回というように複数回圧延することを、6パスで圧延するとか7パスで圧延するとも言う。
仕上圧延機18は、数百〜千数百℃の高温の被圧延材8を複数の圧延機で同時に圧延する熱間タンデム圧延機の形式をとるが、略して単に「仕上圧延機」と称することが多い。
ところで、熱間圧延ライン100には、仕上圧延機18の各スタンド間を除いて、その他の圧延機(スタンド)間には図示しない多数(百以上)のテーブルローラが設置されており、被圧延材8を搬送する。
ところで、先述のように数百〜千数百℃に加熱された高温の被圧延材8には、加熱炉10から抽出されたとき、その表裏面に酸化物の層(以下、スケール)が生成している。この他、圧延され薄く延ばされるとともに放熱により降温していく過程でも、被圧延材8は高温の状態で大気に曝されるため、新たなスケールが被圧延材8の表裏面に生成する。このため、粗圧延機12の中の各圧延機の入側には、ポンプからの供給圧にして10〜30MPa内外の高圧水を被圧延材8の表裏面に吹き付けてスケールを除去するデスケーリング装置16が設置され、スケールを除去している。
図8において、14はクロップシャーであり、仕上圧延前に被圧延材8の先後端のクロップ(被圧延材8の先後端の、いびつな平面形状の部分)を切断除去し、仕上圧延機18にスムーズに噛み込みやすい略矩形の平面形状に整形する。
22は冷却ゾーンであり、仕上圧延後の被圧延材8を水冷する。23は冷却ゾーンのテーブルローラ群であり、ランナウトテーブルと呼ばれる。24はコイラーであり、冷却後の被圧延材8を巻き取る。
50は制御装置、70はプロセスコンピュータ、90はビジネスコンピュータである。
15は仕上入側温度計であり、仕上圧延前の被圧延材8の温度を測定し、仕上圧延機18に被圧延材8が噛み込む際の、ロール間隙その他の各種の設定(セットアップ)を、プロセスコンピュータ70内での計算により設定値の決定を行なった結果に基づいて行なうための、その計算の起動の役割と、温度データの制御装置50とプロセスコンピュータ70への提供の役割と、を兼ねて果たす。
21は仕上出側温度計を示し、温度データを制御装置50とプロセスコンピュータ70に提供する役割を果たす。
25はコイラー入側温度計を示し、温度データを制御装置50とプロセスコンピュータ70に提供する役割を果たす。
このような熱間圧延ライン100では、被圧延材8が一本圧延されてはまた次の被圧延材8が圧延され、という具合に仕上圧延機18での圧延が行われるが、このように一本一本断続的に仕上圧延することを、特に、バッチ圧延と呼ぶこともある。
ところで、熱間圧延では、上記のように高温の被圧延材を圧延するため、ワークロールにサーマルクラウンが発生する。
サーマルクラウンとは、熱間圧延において、ワークロールが高温の被圧延材と接触することによって加熱される結果、熱膨張する部分のことを指し、該ワークロールがまだ一本の被圧延材も圧延する前の、ワークロールの初期プロフィール(胴長方向の輪郭)に比べ、熱膨張によってどれだけ出っ張ったか、その大きさのことを指して、サーマルクラウンと称することが多い。
近年、熱間圧延で生産される被圧延材の仕上げ板厚は薄くなる傾向にあり、ワークロールのサーマルクラウンが大きいと、板波のような形状の乱れによる被圧延材の絞り、穴あきあるいは破断などの通板トラブルが発生しやすくなっていた。
図9(a)に示す圧延機は、上バックアップロール20が上ワークロール19とともに、また、下バックアップロール20が下ワークロール19とともに動作し、上と下でクロスする、ペアクロスと呼ばれるタイプの圧延機であるが、近年金属各社に仕上圧延機として導入されつつある。
図9(a)に示すような、上下ワークロール19がクロスする(バックアップロール20もともにであるが)タイプの圧延機の場合、ワークロール19の胴長方向のプロフィールは、図9(b)に模式的に示すような、胴長方向中央部が胴長方向両端部よりも直径の数百ミクロン小さい、いわゆるインカーブであるため、幅差が50mm程度しかない被圧延材8を何本かつづけて圧延すると、サーマルクラウンの肩部が被圧延材8のクォータ部に転写して、同部が局部的に長手方向によく伸びる結果、その圧延機の一つ下流側の圧延機では、図10(a)に示すように、3枚重ねの状態で圧延されることがあり、そうなると、終には図10(b)に示すように断続的に被圧延材8に穴があいて、多くの場合、被圧延材8の破断に至る通板トラブルが頻発していた。
このようなトラブルが発生すると、歩留まりの低下や生産性の低下を招く。
また、被圧延材の仕上圧延後のクラウン(被圧延材幅方向に見て全くの平坦な状態に対し、被圧延材幅中央部がどれだけ出っ張っているか、その大きさのことを指す。ワークロールのサーマルクラウンと区別するため、以降、板クラウンと称する。)も、なるべく小さなものが、製品品質として要求されるようになってきている。
上記のような問題を解決するため、ワークロールのサーマルクラウンを小さくしようと、例えば、発明者ら自身の、特許文献1に記載のような、熱膨張係数の小さいWC系に代表される超硬合金製ワークロールが提案されている。そして、同じく発明者ら自身の、特許文献2では、それを用いた熱間圧延方法が提案されている。
なお、[発明を実施するための最良の形態]及び[実施例]において、以下に示す特許文献3、非特許文献1、非特許文献2を引用するので、ここに記載しておく。
特開2002−224718号公報 特開2001−321804号公報 特開平10−317102号公報 「日立金属技報 Vol.11(1995)」p.91−94(特に、p.93の表1) 「川崎製鉄技報 Vol.19(1987)No.3」p.195−201(特に、p.197のTable 1)
しかし、超硬合金製ワークロールは、超硬合金が脆性材料であるため、先端部通板や尾端部尻抜けでの衝撃により割損しやすい。しかも、1本被圧延材を圧延しただけですぐさま割損するというわけではなく、何本も被圧延材を圧延しているうちに突然割損する。何本目に割損するかはばらつきがあって、ひとたび割損すると熱間圧延操業が突然中断して被圧延材の圧延が何時間かできなくなる。このような問題があるため、適用が困難であった。
本発明は、上述のような従来技術の問題を解決するべくなされたものである。
すなわち、本発明は、仕上圧延機の少なくとも1つのワークロールに、鉄系材料を外層とし、内部に超硬合金層を有するロールを用いることを特徴とする熱間圧延方法である。また、それを用いた熱延金属帯の製造方法である。
発明者らは、先述の特許文献1、2などに登場するロールの外層に用いられているWC-Co系、または、Ti-Cr-Mo系などの超硬合金が、鉄系材料に比べて熱膨張係数が小さいだけでなく、熱伝導率が高いという点に着目し、外層は割損しにくい鉄系材料とするかわりに、内部に超硬材質の層を形成させたロールを使うことで、先述のような従来技術の問題を克服できると考え、本発明に想到した。
このようなロールによれば、熱膨張係数が小さくてサーマルクラウン全体を小さくできるとともに、局部的なサーマルクラウンの成長も抑制できる一方で、先述のように割損しやすい弱点も克服できる。
本発明の熱間圧延方法に適用するワークロールの外層は、耐衝撃性に優れ、割損しにくい鉄系材料で構成されるので、先端部通板や尾端部尻抜けでの衝撃を受けてもワークロールが割損してしまうようなことはない。さらに、内部に熱伝導率の大きい超硬合金層を有するようにしたので、内部に伝わった熱が胴長方向に拡散しやすく、サーマルクラウン全体の大きさが小さくなるとともに、その胴長方向の分布も均一に近づく。
その上、外層の鉄系材料の熱膨張係数は大きいものの、内部の超硬合金層の熱膨張係数は比較的小さく、そのことも、サーマルクラウン全体の大きさが小さくなるとともに、その胴長方向の分布も均一に近づくように作用する。サーマルクラウンが小さくかつ均一になるので、被圧延材の平坦度が良好になり、絞りや、先述のように3枚重ねで圧延することに伴う穴あき、そして、破断などの通板トラブルの発生を相当程度抑制できるようになるとともに、被圧延材の板クラウンも制御精度が上がって小さな値に所望に制御できるようになることから、製品品質の向上にも寄与する。
加えて、超硬合金はヤング率が高いので、圧延荷重が加わった際のロール偏平が小さくなる分、ワークロールと被圧延材の接触弧長も短かくなる。これにより、圧延の際のワークロールの回転に伴う接触時間も短くなって、ワークロールへの入熱が減少し、さらにサーマルクラウンが小さくなる作用もそれに寄与する。
本発明の熱間圧延方法に用いられるワークロールについて、以下に説明する。
本発明の実施形態に用いるワークロール(以下、ロール)を図1〜図5に示す。それぞれの図において、(a)は半径方向断面図であり、(b)は胴長方向断面図である。それらのロールの基本的な構造上の特徴は、鉄系材料からなる外層1と、その内側に超硬合金からなる内層2を形成したことにある。
図1に示したロールは、内部を全て超硬合金からなる内層2とした場合である。なお、図中の5は、ネック部である。
図2に示したロールは、鉄系材料よりなる軸芯4の周りに、超硬合金からなる内層2を設け、その外側に鉄系材料よりなる外層1を設けたものである。
図3〜図5に示したロールは、図2に示したロールにおいて、超硬合金よりなる内層2に接するようにして、それぞれ、内層2の内側、外側、両側に、鉄系材料または、上記と同じか異なる組成の超硬合金よりなる中間層3を設けたものである。これは、後述するスリーブ状の超硬合金層を形成する場合に発生する残留応力や、圧延時に発生する熱応力により、ロールに内部応力が発生する影響を緩和する目的で設けている。
外層1をなす鉄系材料は、鉄系という言葉の通り、鉄を質量%にして50%以上含有するものであればいかなるものでも良いが、例えば、特許文献3に記載されている以下のような合金成分を有するようにするのが好ましい。
質量%にして、C:1.1〜1.5%、Si:0.15〜1.0%、Mn:0.15〜1.5%、Ni:1.0%以下、Cr:9.0〜15.0%、Mo:1.0%未満、V:0.8%未満、Ti:0.3%以下を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鉄系合金。
また、非特許文献1や、非特許文献2などに記載されている成分とするのも好ましい。
一方、内層2をなす超硬合金は、WC、TaC、TiCなどの超硬材料粉末に、Co、Ni、Cr、 Ti等の金属粉末のうちから選ばれる1種あるいは2種以上を総質量に対し5〜50mass%の割合で添加した超硬材料混合粉末を焼結したものであり、特に、WCに総質量に対し5〜50mass%の割合でCo粉末を添加した超硬材料混合粉末を焼結したものとするのが、使用時の熱特性、製造時の割損抑制などの耐事故性が良好であるので好ましい。
また、図3〜図5に示したロールにおいて、中間層3をなす鉄系材料は、外層1をなす鉄系材料と同一の材質としても良いし、それとは異なる異種の鉄系材料としても良い。異種の鉄系材料としては、例えば、鋳鋼、鍛鋼、黒鉛鋳鉄、炭素鋼及び合金炭素鋼のいずれも好ましく、以下のような合金成分を有するようにするのも好ましい。
質量%にして、C:1.3%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Ni:1.0%以下、Cr:10%以下、Mo:1.0%未満、V:0.8%未満、Ti:0.3%未満を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる鉄系合金。
また、超硬合金を中間層3として用いる場合も、その超硬合金は、WC、TaC、TiCなどの超硬材料粉末に、Co、Ni、Cr、 Ti等の金属粉末のうちから選ばれる1種あるいは2種以上を総質量に対し5〜50mass%の割合で添加した超硬材料混合粉末を焼結したものであり、特に、WCに総質量に対し5〜50mass%の割合でCo粉末を添加した超硬材料混合粉末を焼結したものとするのが、使用時の熱特性、製造時の割損抑制などの耐事故性が良好であるので好ましい。
なお、上記のような鉄系材料あるいはそれとは異なる異種の鉄系材料は、溶製材とするのが好ましいので、以下、溶製材の鉄系材料の場合を例に説明するが、本発明に用いるロールの鉄系材料の部分は溶製材に限定されるものではない。
また、図2〜図5に示したロールの軸芯4は、例えば、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、高速度鋼を調質することで製造することもできる。
以上述べた基本的なロールの構造に基づいて、詳細な構造は、ロール寸法、使用条件、製造コストの許容範囲などにより適宜決定すれば良いが、ロール寸法のうち、各部のものに関しては、以下に述べるようにすることが好ましい。
すなわち、鉄系材料からなる外層1の厚みは薄ければ薄いほどサーマルクラウンの抑制に効果があるが、製造上、薄い層になればなるほど形成が困難になるという制約、圧延中の剛性の問題から、5mm以上とするのが好ましい。上限はサーマルクラウンの抑制効果を確保する観点から、30mm以下とするのが好ましい。
また、超硬合金からなる内層2の厚みは、薄い方がロール胴長方向のサーマルクラウンの分布を小さくするのに好ましいが、サーマルクラウンの大きさを小さくし、ロール偏平を抑制することでさらにその作用を助長する観点からは、厚い方が好ましい。好適な範囲は、外層1の0.5〜20倍、かつ、5mm〜200mmである。
また、鉄系材料または超硬合金からなる中間層3の厚みは、厚いほど超硬合金層を安定化させることができるので、超硬合金層の20倍以下とするのが好ましい。製造上、薄い層になればなるほど形成が困難になることから、3mm以上とするのが好ましい。
そして、図2〜図5に示したロールの軸芯4の太さは、ロールの構造上、ネック部5の代表寸法(円柱部分の直径)と同一とするのが好ましく、ロールの胴部(ネック部を除くという意味)の直径の1.5分の1ないし4分の1とするのが好ましい。軸芯4の太さを調整することで、結果的に、超硬合金からなる内層2や鉄系材料からなる中間層3の厚みも調整できる。
ロールの最終的な寸法は、ロールの胴長方向中央の胴部の円柱部分の直径にして50〜2000mm、胴長方向の長さにして100〜6000mmと幅広い。
次に、図3に示したロールの場合を例に、本発明のロールの製造方法について、以下に説明する。
なお、胴部の外径1300mmφ×胴長2000mmW内外の熱間粗圧延用ワークロール、同900mmφ×2000mmW内外の熱間仕上圧延用ワークロールなどの大径長尺のロールの場合には、超硬合金部分を一体で製造することは好ましくなく、図6に示すごとく、(a)予め焼結にて製造された胴長数百mmのものを、(b)複数継ぎ足して再度焼結するようにして製造するのが好ましい。
そこで、例えば、粉末充填(ロール1本あたりの胴長を整数で除した寸法に後工程での収縮分を加算したのに実質的に等しい幅(胴長)を持つ複数個の成形体を製造する)→CIP(冷間等方加圧)処理→機械加工→仮焼結→機械加工→本焼結・HIP(熱間等方加圧)処理(複数個の成形体を胴長方向に継ぎ足して一体化し、熱間等方加圧して焼結し、超硬合金製スリーブ(円筒状部材)を製造する)→機械加工→拡散接合処理(超硬合金製スリーブの内面側に中間層として鉄系の円筒状内層部材を設ける場合)→嵌合・固定(スリーブを軸芯用部材に嵌合して固定する)という一連の製造プロセスを経て、軸芯用部材の周りに超硬合金層を有するロール部材を製造する。そして、外層の鉄系材料よりなる円筒状部材を鋳造により作成し、上記の超硬合金層を有するロール部材に焼き嵌めなどにより嵌合し一体化することで、最終的に本発明のロールを製造完了する。
しかる後、機械加工を施して、各部の寸法を最終的に調整したり、研磨してロール胴部の粗度や光沢度を調整することは、何らこれを妨げない。
以上述べた本発明に用いるロールの製造方法の一部について補足して説明すると、超硬合金製スリーブには、必要に応じて、その内面に研削、研磨等の機械加工を行い、次いで、焼き嵌め、冷やし嵌めなどの方法で超硬合金製スリーブを軸芯に嵌合して固定する。CIP成形の条件は、例えば、100〜300 MPaで5〜60分保持するのが好ましい。仮焼結の条件は、例えば、550〜800℃で1〜3時間保持するのが好ましい。
本焼結・HIP処理は、例えば、Ar雰囲気下、100〜200MPa、1100〜1200℃で、0.5〜2時間保持後、さらに1300〜1350℃で1〜3時間保持するのが好ましい。なお、本焼結・HIP処理は、同時処理に限らず、焼結後に熱間等方加圧処理を行っても良い。例えば、超硬合金製スリーブの内面に肉厚50mmの円筒状SCM−440相当の鍛鋼を拡散接合する場合には、Ar雰囲気下、1200〜1300℃で、0.5 〜1時間保持するのが好ましい。
最後に、外層の鉄系材料よりなる円筒状部材を鋳造により製造し、上記の超硬合金層を有するロール部材に焼き嵌めなどにより嵌合・一体化する。外層の鉄系材料よりなる円筒状部材は、必要に応じて、嵌合の前後に焼入れや浸炭により調質あるいは鍛造などを施して必要な強度と性質を与えるようにするのも好ましい。
以上説明した製造方法はあくまで一例であり、本発明に用いるロールの製造方法は、これに限られるものではない。例えば、外層の鉄系材料よりなる部分は遠心鋳造、肉盛溶接、あるいは溶射などによって、ロール部材の外側に形成するなどしても良い。
なお、図1〜図5には示していないが、外層1及び中間層3をなす鉄系材料の層と、内層2をなす超硬合金層との間には、超硬合金材料に適宜、鉄(Fe)や炭素(C)を添加して調整した緩衝層を設けるようにするのも好ましい。緩衝層の成分は、超硬合金の拡散接合条件に応じて調整されることが好ましい。緩衝層の厚みは、超硬合金によるサーマルクラウン抑制の効果を損なわないようにするためには10mm以下とするのが好ましく、2〜5mmとするのがさらに好ましい。
本発明に用いるワークロールの例として、図3に示した構造を有する、胴部の直径600mmφ×胴長2000mmWのロールを製造した。外層1は、特許文献3の範囲に入る、質量%にして、
C:1.4%,Si:0.5%,Mn:0.5%,Ni:0.5%,Cr:12%,Mo:0.8%,V:0.4%,Ti:0.1%で残部はFeと不可避的不純物である成分からなる鉄系材料とし、厚みを15mmとした。
超硬合金層2はWCに15mass%Coを添加したものとし、厚みを120mmとした。中間層3は、0.05 %Cの炭素鋼とし、厚みを5mmとした。
軸芯4の材質は上記外層1と同一とし、直径300mm、長さ4000mmとした。
超硬合金層2は胴長方向5個の仮焼結体から、前記のHIPにより製造し、内側に中間層3を嵌合した。嵌合時は、超硬合金層2を350℃に加熱し、中間層3を−30℃に冷却して、焼き冷やし嵌めした。外層1は遠心鋳造及び機械研削により25mmの厚みの円筒を製造し、これを超硬合金層1の外周に嵌合した。嵌合時、超硬合金層2と中間層3の一体円筒は常温のまま、外層1を250℃に加熱して焼き嵌めた。これら3層の一体円筒を軸芯4に嵌合した。嵌合時、軸芯4は常温のまま、一体円筒を380℃に加熱して焼き嵌めた。最後に、外層1を鍛造及び機械研削して、ロール外周を仕上げた。
一方、従来例として、前記特許文献3に記載の上記と同じ化学成分の鉄系材料で全体が構成される、本発明例と同一サイズのロールを用意した。
そして、ロールを10rpmで回転させながら、ロールの胴長方向中央域に相当する1000mmにわたる部分を500℃の火炎を発するバーナーで10分加熱した後、各幅方向位置におけるロール直径を測定し、加熱前のロール直径(胴長方向で一定)からの変化量を求め、その変化量を2で割った値を熱膨張量として求めた。その結果を図7に示す。
図7に示すように、従来例では、熱膨張量が全体的に大きく、かつ、そのロール胴長方向分布も大きいのに対して、本発明例では、熱膨張量が全体的に小さく、かつ、そのロール胴長方向分布も小さい。その結果、例えば、サーマルクラウンの値を板道に相当する加熱部分の熱膨張量の差、すなわち、ロール胴長方向中央の熱膨張量とロール胴長方向中央から500mm位置の熱膨張量の差で定義したとすると、従来例では、サーマルクラウンの値が60μmと大きいのに対して、本発明例では2μm程度と小さく、サーマルクラウンを著しく抑制できることがわかる。
以上述べたことから、この実施形態においては、内層2として、熱伝導率が鉄系材料の22W/mK内外に対し67W/mK内外と比較的大きい超硬合金層を形成したので、内部に伝わった熱が胴長方向に拡散して熱膨張の胴長方向分布が均一に近づく。その上、鉄系材料の外層に比べ、内部の超硬合金層の熱膨張係数は小さいので、内部まで鉄系材料の場合と比べ、熱膨張自体も小さくなる。その結果、サーマルクラウンの胴長方向分布が均一に近づきかつその大きさも小さくなる。また、さらに、その時間的変化も少なくなるので、製品の板クラウンや形状の品質が良好になるとともに、圧延中の被圧延材の通板不良の発生を抑制でき、高速で能率良く圧延することができるようになる。
加えて、超硬合金層2のヤング率は鉄系材料に比べて高いので、ロール偏平が抑制され、圧延中、ロールと被圧延材との間の接触弧長が短くなる。これにより、圧延中のロールの回転に伴うロールと被圧延材との接触時間も短くなって、ロールへの入熱が減少し、さらにサーマルクラウンが小さくなる作用もある。
本発明の熱間圧延方法においては、このようにして製造したロールを、サーマルクラウン起因のトラブル(絞り、穴あき、破断)が最も発生しやすいF4またはF5スタンド、あるいはその両方に適用するのが最も好ましい。また、サーマルクラウンが直接被圧延材に転写する、最終のF7スタンドに適用するのも好ましい。ただし、本発明はこれらに限るものではなく、必要に応じて適用スタンドを増やすほど、サーマルクラウンに起因する歩留まりと生産性の低下を抑制できるので一層好ましい。なお、このロールを仕上圧延機のバックアップロール19や粗圧延機のワークロール13、粗圧延機のバックアップロール17にも適用することも、本発明は何らこれを妨げるものではない。ところで、通常、仕上圧延機18のどのスタンドも上下2つのワークロール19を組み込むようにできているが、上下いずれか片側にこのロールを適用しても効果があるのは当然であるから、これも本発明の範囲に入る。
なお、本発明を用いて熱延鋼帯を製造するには、JIS G 3101、JIS G 3131、JIS G 3311、JIS G 4304などに規定の成分範囲の溶鋼を溶製後、連続鋳造などで鋼塊とし、それを本発明の熱間圧延方法にて熱間圧延して製造するものとする。
(実施例1)
先に示した図8の熱間圧延ライン100に本発明を適用した。この熱間圧延ライン100の例では、粗圧延機12はR1、R2、R3の3スタンドで構成され、仕上圧延機18はF1、F2、…、F7 の7スタンドで構成されている。仕上圧延機18は全スタンドともペアクロス圧延機である。
仕上圧延機のF4スタンドのワークロールを、本発明例に用いる鉄系材料を外層に有し、内部に超硬合金層を有するロール、従来例に用いる超硬合金製ロール、比較例に用いる鋼系ハイスロール、と変更し、それ以外の仕上圧延機のスタンドのワークロールは、前記比較例と同じ鋼系ハイスロールとした。鋼系ハイスロールの成分は、先述の実施形態での鉄系材料と同じである。
それぞれの条件において、製品厚2〜5mm、製品幅800〜1600mmの低炭素鋼(SPHC)の被圧延材を15本圧延後、製品厚1.2mm、製品幅1600mmの低炭素鋼(SPHC)の被圧延材を10本圧延した。
なお、いずれのケースでも、粗圧延機ワークロールは鋼系ハイスロールで、圧延部寸法は外径1300mmφ×幅(胴長)2000mmWとした。仕上圧延機ワークロールの圧延部寸法はF1〜F4については外径840mmφ×幅(胴長)2000mmWとした。F5〜F7については外径700mmφ×幅(胴長)2000mmWとした。また 、粗圧延パス数は7(=R1×3+R2×3+R3×1)とした。
超硬合金内層ロールは図3の構造を有するものを適用した。外層1の材質は比較例である鋼系ハイスロールと同一とし、厚みを30mmとした。
本発明例に用いた内部に超硬合金層を有するワークロールの超硬合金層2は、タングステンカーバイド(WC)にCoを20mass%添加した粉末を素材として、F1〜F4用は厚みを170mm、F5〜F7用は厚みを100mmとした。中間層3の材質は外層1と同一とし、厚みを70mmとした。
軸芯4の材質は5mass%Cr鍛鋼とし、直径300mm、長さ4000mmとした。
超硬合金層2は胴長方向5個の仮焼結体から、前記のHIPにより製造し、内側に中間層3を嵌合した。嵌合時は、超硬合金層2を350℃に加熱し、中間層3を−30℃に冷却して、焼き冷やし嵌めした。外層1は遠心鋳造及び機械研削により25mmの厚みの円筒を製造し、これを超硬合金層1の外周に嵌合した。嵌合時、超硬合金層2と中間層3の一体円筒は常温のまま、外層1を250℃に加熱して焼き嵌めた。これら3層の一体円筒を軸芯4に嵌合した。嵌合時、軸芯4は常温のまま、一体円筒を380℃に加熱して焼き嵌めした。最後に、外層1を鍛造及び機械研削して、ロール外周を仕上げた。
従来例に用いた超硬合金製ワークロールは、タングステンカーバイド(WC)にCoを20mass%添加した粉末を素材としてラバー成形してCIP(冷間等方加圧)により成形した厚さ125mmt×幅500mmWのWC-Co 合金のスリーブ部材を、ロールの胴長方向に5個連ねHIPを行なって接合し、さらにそれを、5mass%Cr鍛鋼の軸部材に焼嵌めして製造した。最終的なロールの外形寸法は、ネック部も含め、外径、胴長とも本発明例と同じとした。
比較例に用いたワークロールはすべて鋼系ハイスロールである。これも外形寸法は発明例、従来例と同じである。それぞれの適用スタンドを表1−1に、結果を表1−2に示す。
従来例である超硬合金製ロールでは、製品厚1.2mm、製品幅1600mmの3本目の先端部噛み込み時にF4の上ロールの割損が発生したため圧延を継続する事が出来なかった。比較例である鋼系ハイスロールでは、同6本目でF4スタンド出側において板端から200mmの位置(クォータ部)に穴あきが発生した上、F7スタンドを尾端部尻抜けする際、絞りが発生したため圧延を継続する事が出来なかった。本発明例では、トラブル無く圧延を継続する事が出来た。
(実施例2)
実施例1と同様に、先に示した図8の熱間圧延ライン100に本発明を適用した。仕上圧延機18は全スタンドともペアクロス圧延機である。
仕上圧延機のF7スタンドの上ワークロールを、本発明例に用いる外層鉄系材料、内部超硬合金層を有するワークロール、従来例に用いる超硬合金製ロール、比較例に用いる鋼系ハイスロール、と変更し、それ以外の仕上圧延機のスタンドのワークロールは、前記比較例と同じ鋼系ハイスロールとした。鋼系ハイスロールの成分は、先述の実施形態での鉄系材料と同じである。
それぞれの条件において、製品厚2〜5mm、製品幅800〜1600mmの低炭素鋼(SPHC)の被圧延材を15本圧延後、製品厚1.2mm、製品幅1600mmの低炭素鋼(SPHC)の被圧延材を10本圧延した。
なお、いずれのケースでも、粗圧延機ワークロールは鋼系ハイスロールで、圧延部寸法は外径1300mmφ×幅(胴長)2000mmWとした。仕上圧延機ワークロールの圧延部寸法はF1〜F4については外径840mmφ×幅(胴長)2000mmWとし、F5〜F7については外径700mmφ×幅(胴長)2000mmWとした。また 、粗圧延パス数は7(=R1×3+R2×3+R3×1) とした。
内部に超硬合金層を有するワークロールは図2の構造を有するものを適用した。外層1の材質は比較例である鋼系ハイスロールと同一とし、厚みを30mmとした。
本発明例に用いた内部に超硬合金層を有するワークロールの超硬合金層2は、タングステンカーバイド(WC)にCoを20mass%添加した粉末を素材として、厚みを100mmとした。
軸芯4の材質は5mass%Cr鍛鋼とし、直径300mm、長さ4000mmとした。
超硬合金層2は胴長方向6個の仮焼結体から、前記のHIPにより製造し、円筒状とした。ロール軸は、鋳造及び機械加工により作成した。
外層1は肉盛溶接した。これらの一体円筒を400℃に加熱して、軸芯4に嵌合した。嵌合時、軸芯4は常温のままとし、一体円筒を400℃に加熱して焼き嵌めした。最後に、外層1を機械研削して、ロール外周を仕上げた。
従来例に用いた超硬合金製ワークロールは、タングステンカーバイド(WC)にCoを20mass%添加した粉末を素材としてラバー成形してCIP(冷間等方加圧)により成形した厚さ120mmt×幅500mmWのWC-Co 合金のスリーブ部材を、ロールの胴長方向に5個連ねHIP接合し、まず、WCにCoを50mass%添加して HIPした厚さ5mmの緩衝材に焼嵌めし、さらにそれを、5mass%Cr鍛鋼の軸部材に焼嵌めして製造した。最終的なロールの外形寸法は、ネック部も含め、外径、胴長とも本発明例と同じとした。
比較例に用いたワークロールはすべて鋼系ハイスロールである。これも外形寸法は本発明例、従来例と同じである。それぞれの適用スタンドを表2−1に、結果を表2−2に示す。
従来例である超硬合金製ロールでは、製品厚1.2mm、製品幅1600mmの5本目の先端部噛み込み時にF7上ロールの割損が発生したため圧延を継続する事が出来なかった。比較例である鋼系ハイスロールでは、同6本目でF7スタンドにおいて絞りが発生したため圧延を継続する事が出来なかった。
本発明例では、トラブル無く圧延を継続する事が出来た。
(実施例3)
実施例1と同様に、先に示した図8の熱間圧延ライン100に本発明を適用した。
本発明例では、仕上圧延機のF1〜F4スタンドの全ワークロールを、実施例1で用いた、本発明例に用いる鉄系材料を外層に有し、内部に超硬合金層を有するワークロールとし、F5〜F7スタンドの全ワークロールを、実施例2で用いた、本発明例に用いる鉄系材料を外層に有し、内部に超硬合金層を有するワークロールとした。
従来例では、使用するワークロールの種類を、仕上圧延機のF1〜F7スタンドの全ワークロールについて、超硬合金製ロールとした。
比較例では、使用するワークロールの種類を、仕上圧延機のF1〜F7スタンドの全ワークロールについて、鋼系ハイスロールとした。
その他の条件は、実施例1、実施例2と同じにした。それぞれの適用スタンドを表3−1に、結果を表3−2に示す。
従来例である超硬合金製ロールでは、製品厚1.2mm、製品幅1600mmの7本目の先端部噛み込み時にF4の上ロールの割損が発生したため圧延を継続する事が出来なかった。比較例である鋼系ハイスロールでは、同6本目でF4スタンド出側において板端から200mmの位置(クォータ部)に穴あきが発生した上、F7スタンドを尾端部尻抜けする際、絞りが発生したため圧延を継続する事が出来なかった。本発明例では、トラブル無く圧延を継続する事が出来た。
本発明に用いるワークロールの断面図である。 本発明に用いるワークロールの断面図である。 本発明に用いるワークロールの断面図である。 本発明に用いるワークロールの断面図である。 本発明に用いるワークロールの断面図である。 本発明の圧延用ロールの製造方法について、一部を説明するための図である。 本発明の効果を示した図である。 本発明を適用する熱間圧延ラインの一例を示す図である。 ワークロールがクロスする圧延機とその問題を説明するための図である。 従来技術の問題を説明するための図である。
符号の説明
1 鉄系材料からなる外層
2 超硬合金からなる内層
3 鉄系材料または異なる組成の超硬合金からなる中間層
4 軸芯
5 ネック部
8 被圧延材
9 幅プレス
10 加熱炉
12、R1、R2、R3 粗圧延機
14 クロップシャー
15 仕上入側温度計
16 デスケーリング装置
18、F1、F2・・・F6 仕上圧延機
19 ワークロール
17、20 バックアップロール
21 仕上出側温度計
22 冷却ゾーン
23 ランナウトテーブル
24 コイラー
25 コイラー入側温度計
50 制御装置
70 プロセスコンピュータ
90 ビジネスコンピュータ
100 熱間圧延ライン
A 搬送方向

Claims (2)

  1. 仕上圧延機の少なくとも1つのワークロールに、鉄系材料を外層とし、内部に超硬合金層を有するロールを用いることを特徴とする熱間圧延方法。
  2. 請求項1の熱間圧延方法を用いた熱延金属帯の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008284561A (ja) * 2007-05-15 2008-11-27 Nippon Steel Corp 熱間仕上圧延機のスタンド間残留破断片検知方法
CN102553929A (zh) * 2011-12-20 2012-07-11 苏州东君橡胶机械厂 一种以熟铁为基材的轧辊及其制作工艺

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